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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】衣類乾燥機
(51)【国際特許分類】
   D06F 58/50 20200101AFI20240521BHJP
   D06F 33/74 20200101ALI20240521BHJP
【FI】
D06F58/50
D06F33/74
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020204260
(22)【出願日】2020-12-09
(65)【公開番号】P2022091428
(43)【公開日】2022-06-21
【審査請求日】2023-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】温 召航
【審査官】石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-010959(JP,A)
【文献】特開2004-215943(JP,A)
【文献】特開昭60-188786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 58/50
D06F 33/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外郭を構成する筐体と、
前記筐体内に設けられ、衣類を収容する乾燥槽と、
圧縮機、凝縮器、減圧器、蒸発器を有するヒートポンプ機構と、
前記乾燥槽に設けられている空気流出口と空気流入口との間を接続する風路であって、前記空気流出口側に前記蒸発器が収容され、前記空気流入口側に前記凝縮器が収容されている乾燥風路と、
前記乾燥風路のうち前記蒸発器よりも前記空気流出口側に設けられている導通口に接続されている圧縮機収容部と、
前記凝縮器の温度を検知する温度検知部と、
前記乾燥風路のうち前記導通口よりも前記空気流出口側に設けられている排気口と、
前記導通口の開閉および前記排気口の開閉を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記温度検知部によって検知される前記凝縮器の温度が所定温度を超えていない場合には、前記導通口を閉塞するとともに前記排気口を閉塞することにより、前記乾燥槽内の空気を前記乾燥風路を通して循環させ、
前記温度検知部によって検知される前記凝縮器の温度が前記所定温度を超えた場合には、前記導通口を開放するとともに前記排気口を開放することにより、前記筐体内の空気を前記圧縮機収容部内に吸い込み、その吸い込んだ空気を前記導通口から前記乾燥風路内に導入し、その導入した空気を前記排気口から排出することに伴い、前記圧縮機によって加熱された空気を前記蒸発器に供給する衣類乾燥機。
【請求項2】
前記排気口から排出される空気に含まれる異物を捕獲する排気口フィルタを備えている請求項1に記載の衣類乾燥機。
【請求項3】
前記乾燥風路内を流れる空気に含まれる異物を捕獲する乾燥フィルタを備え、
前記排気口フィルタのメッシュサイズは、前記乾燥フィルタのメッシュサイズよりも粗い請求項2に記載の衣類乾燥機。
【請求項4】
前記導通口を開閉する導通口ダンパと、
前記排気口を開閉する排気口ダンパと、
を備える請求項1から3の何れか1項に記載の衣類乾燥機。
【請求項5】
前記制御部は、前記温度検知部によって検知される前記凝縮器の温度が前記所定温度を超えた後において、前記温度検知部によって検知される前記凝縮器の温度が前記所定温度よりも低くなると、前記排気口から排出する空気の量を減少させる制御を行う請求項1から4の何れか1項に記載の衣類乾燥機。
【請求項6】
前記圧縮機収容部は、前記筐体内の空気を吸い込む吸込口を有する請求項1から5の何れか1項に記載の衣類乾燥機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、衣類乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されている洗濯乾燥機は、衣類を乾燥する衣類乾燥機の一例であり、衣類を収容する乾燥槽に乾燥風路が接続された構成となっている。乾燥風路内には、ヒートポンプ機構を構成する蒸発器や凝縮器が収容されている。蒸発器は、乾燥風路内を流れる空気と熱交換することにより、当該空気を除湿する。凝縮器は、乾燥風路内を流れる空気と熱交換することにより、当該空気を加熱する。これにより、乾燥槽内の空気は、乾燥風路を通して循環される過程で除湿よび加熱され、温風化されて乾燥槽内に戻される。衣類乾燥機は、このように乾燥槽内の空気を循環することにより、乾燥槽内の衣類を乾燥する乾燥行程を実行可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-224492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、乾燥風路を通して循環される空気には、例えば、衣類から発生したリントや塵埃などといった異物が含まれている。そのため、この種の衣類乾燥機においては、蒸発器や凝縮器よりも上流側に、乾燥風路内を流れる空気に含まれる異物を捕獲する乾燥フィルタを備えるようにしている。この構成によれば、蒸発器や凝縮器に異物が到達してしまうことを乾燥フィルタによって抑制することができる。
【0005】
そして、このように乾燥風路に備えられる乾燥フィルタにおいては、捕獲した異物が蓄積して詰まってしまうという課題がある。特に、例えば、乾燥フィルタの清掃などのメンテナンスが長期間にわたって行われていない場合や、衣類から発生するリントなどの異物が多量である場合などには、乾燥フィルタが異物で詰まってしまう可能性が高くなる。
【0006】
そして、乾燥フィルタが異物で詰まってしまうと、その乾燥フィルタが風路抵抗となってしまい、乾燥風路内において空気が流れにくくなる。そして、乾燥風路内を流れる空気と蒸発器および凝縮器との熱交換効率が低下してしまい、凝縮器が過剰に高温となった状態つまり過熱状態となってしまう場合がある。
【0007】
このような現象つまり凝縮器が過熱状態となる現象が発生した場合には、圧縮機の駆動を停止して、凝縮器の過熱を抑制する必要がある。しかしながら、乾燥行程において、いったん圧縮機の駆動を停止してしまうと、その後に圧縮機の駆動を再開したとしても、蒸発器による冷却や凝縮器による加熱を良好に行うことができない場合があり、また、乾燥風路内を流れる空気と蒸発器や凝縮器との熱交換を良好に行うことができない場合がある。つまり、乾燥行程の途中に圧縮機の駆動を停止してしまうと、その後に圧縮機の駆動を再開したとしても、衣類の乾燥を良好に行うことができない場合がある。そのため、乾燥行程の途中において圧縮機の駆動を停止することは極力避けることが好ましい。
【0008】
そこで、乾燥行程の途中において凝縮器の過熱状態が発生するような場合であっても、圧縮機の駆動を停止することなく衣類の乾燥を続行できるようにした衣類乾燥機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施形態に係る衣類乾燥機は、外郭を構成する筐体と、前記筐体内に設けられ、衣類を収容する乾燥槽と、圧縮機、凝縮器、減圧器、蒸発器を有するヒートポンプ機構と、前記乾燥槽に設けられている空気流出口と空気流入口との間を接続する風路であって、前記空気流出口側に前記蒸発器が収容され、前記空気流入口側に前記凝縮器が収容されている乾燥風路と、前記乾燥風路のうち前記蒸発器よりも前記空気流出口側に設けられている導通口に接続されている圧縮機収容部と、前記凝縮器の温度を検知する温度検知部と、前記乾燥風路のうち前記導通口よりも前記空気流出口側に設けられている排気口と、前記導通口の開閉および前記排気口の開閉を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記温度検知部によって検知される前記凝縮器の温度が所定温度を超えていない場合には、前記導通口を閉塞するとともに前記排気口を閉塞することにより、前記乾燥槽内の空気を前記乾燥風路を通して循環させ、前記温度検知部によって検知される前記凝縮器の温度が前記所定温度を超えた場合には、前記導通口を開放するとともに前記排気口を開放することにより、前記筐体内の空気を前記圧縮機収容部内に吸い込み、その吸い込んだ空気を前記導通口から前記乾燥風路内に導入し、その導入した空気を前記排気口から排出することに伴い、前記圧縮機によって加熱された空気を前記蒸発器に供給する
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る洗濯乾燥機の構成例を概略的に示すものであって、通常制御の実行時における状態例を示す図
図2】第1実施形態に係る洗濯乾燥機の構成例を概略的に示すものであって、特別制御の実行時における状態例を示す図
図3】第1実施形態に係るヒートポンプ機構の構成例を概略的に示す図
図4】第1実施形態に係る洗濯乾燥機の制御系の構成例を概略的に示すブロック図
図5】第2実施形態に係る洗濯乾燥機の制御例を概略的に示すフローチチャート
図6】本実施形態の変形例に係る導通口の構成例を概略的に示す図
図7】本実施形態の変形例に係る吸込口の構成例を概略的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、衣類乾燥機に係る複数の実施形態について図面を参照ながら説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0012】
(第1実施形態)
図1および図2に例示する洗濯乾燥機1は、衣類に所定の処理、この場合、少なくとも、衣類を洗う洗い処理、衣類をすすぐすすぎ処理、衣類を脱水する脱水処理、衣類を乾燥する乾燥処理を施すことが可能な衣類乾燥機の一例である。また、洗濯乾燥機1は、回転槽の回転中心軸が水平方向あるいは水平方向に対して傾斜する方向に延びる、いわゆるドラム式の洗濯乾燥機である。
【0013】
洗濯乾燥機1は、その外郭を構成する矩形箱状の筐体2の内部に、衣類を洗浄したり乾燥したりするための衣類処理槽3を備えている。衣類処理槽3は、衣類を収容することが可能な乾燥槽の一例である。衣類処理槽3は、有底円筒状の水槽の内部に、同じく有底円筒状の図示しないドラムを回転可能に備えた構成である。ドラムの周壁には多数の小孔が設けられており、また、ドラムの内周面には、衣類をかき上げるための複数のバッフルが設けられている。
【0014】
また、衣類処理槽3の前面開口部は、筐体2の前面に設けられた図示しないドアによって開閉可能となっている。使用者は、このドアを開くことにより、衣類処理槽3の前面開口部を通して当該衣類処理槽3内に衣類を収容したり、あるいは、当該衣類処理槽3内から衣類を取り出したりすることができる。また、衣類処理槽3の背面の中央部には、上述したドラムを回転させるための図示しないドラムモータが設けられている。
【0015】
また、洗濯乾燥機1は、衣類処理槽3内に水を供給するための図示しない給水部、および、衣類処理槽3内の水を機外に排出するための図示しない排水部を備えている。給水部は、例えば水道などの図示しない水源から衣類処理槽3に延びる給水経路の途中に給水弁や注水ケースなどを備えた構成となっている。注水ケースには、例えば洗剤や柔軟剤などの衣類処理剤を自動で投入するための自動投入部、衣類処理剤を手動で投入するための手動投入部などが設けられている。また、排水部は、衣類処理槽3の底部から機外に延びる排水経路の途中に排水弁などを備えた構成となっている。
【0016】
また、衣類処理槽3には、空気流出口3aおよび空気流入口3bが設けられている。空気流出口3aは、例えば、衣類処理槽3の上面の前部に設けられている。また、空気流入口3bは、例えば、衣類処理槽3の後面の上部に設けられている。なお、衣類処理槽3における空気流出口3aおよび空気流入口3bの位置は、適宜変更して実施することができる。
【0017】
また、洗濯乾燥機1は、乾燥風路4を備えている。乾燥風路4は、衣類処理槽3に設けられている空気流出口3aと空気流入口3bとの間を連通接続している。また、洗濯乾燥機1は、周知のヒートポンプ機構5を備えている。
【0018】
図3に例示するように、ヒートポンプ機構5は、圧縮機5a、凝縮器5b、減圧器5c、蒸発器5dを冷媒管5eによってサイクル接続した周知の冷凍サイクルを構成している。このうち、熱交換器を構成する凝縮器5bおよび蒸発器5dは、図1に例示するように、乾燥風路4の内部に配置されている。
【0019】
また、乾燥風路4には、循環送風機6が備えられている。循環送風機6は、衣類処理槽3内の空気を、乾燥風路4を通して循環させるものである。この循環送風機6が駆動されることにより、図1に矢印Aで例示するように、衣類処理槽3内の空気は、空気流出口3aから乾燥風路4内に導入されて、空気流出口3a側である風上側から空気流入口3b側である風下側に向かって流れて、空気流入口3bから衣類処理槽3内に戻されるようになっている。即ち、循環送風機6が駆動されることにより、衣類処理槽3内の空気は、乾燥風路4を介して循環される。
【0020】
そして、乾燥風路4内において、蒸発器5dは、衣類処理槽3の空気流出口3a側、つまり、乾燥風路4内の風上側に収容されている。一方、凝縮器5bは、衣類処理槽3の空気流入口3b側、つまり、乾燥風路4内の風下側に収容されている。即ち、乾燥風路4内において、蒸発器5dは、凝縮器5bよりも風上側に配置されている。
【0021】
蒸発器5dは、除湿部の一例であり、乾燥風路4内を空気流出口3a側から空気流入口3b側、つまり、風上側から風下側に向かって流れる空気を冷却して除湿する除湿手段として機能する。一方、凝縮器5bは、加熱部の一例であり、乾燥風路4内を空気流出口3a側から空気流入口3b側、つまり、風上側から風下側に向かって流れる空気を加熱する加熱手段として機能する。
【0022】
また、乾燥風路4には、導通口7が設けられている。導通口7は、乾燥風路4のうち蒸発器5dよりも空気流出口3a側、つまり、乾燥風路4内の風上側に設けられている。また、この導通口7には、当該導通口7を開閉する導通口ダンパ7aが備えられている。
【0023】
そして、洗濯乾燥機1は、この導通口7に接続されている圧縮機収容部8を備えている。圧縮機収容部8内には、上述した圧縮機5aが収容されている。また、この圧縮機収容部8には、導通口7とは反対側に吸込口9が設けられている。圧縮機収容部8内には、この吸込口9を通して、筐体2内の空気を吸い込むことが可能となっている。
【0024】
また、乾燥風路4には、乾燥フィルタ10が設けられている。乾燥フィルタ10は、乾燥風路4内を流れる空気に含まれる例えば糸くずや塵埃などの異物を捕獲する。この場合、乾燥フィルタ10は、乾燥風路4のうち導通口7よりも空気流出口3a側、つまり、乾燥風路4内の風上側に設けられている。乾燥風路4内を流れる空気には、衣類処理槽3内の衣類から発生した例えば糸くずや塵埃などの異物が含まれる。よって、乾燥フィルタ10は、衣類処理槽3内の衣類から発生した異物を捕獲することが可能となっている。
【0025】
また、乾燥風路4には、排気口11が設けられている。排気口11は、乾燥風路4のうち導通口7や乾燥フィルタ10よりも空気流出口3a側、つまり、乾燥風路4内の風上側に設けられている。また、この排気口11には、当該排気口11を開閉する排気口ダンパ11aが備えられている。また、この排気口11には、当該排気口11から排出される空気に含まれる異物を捕獲する排気口フィルタ11bが備えられている。本実施形態では、この排気口フィルタ11bのメッシュサイズは、上述した乾燥フィルタ10のメッシュサイズよりも粗くなっている。よって、排気口フィルタ11bは、乾燥フィルタ10に比べ、例えば糸くずや塵埃などの異物が詰まりにくくなっている。
【0026】
また、洗濯乾燥機1は、例えば周知のサーミスタなどで構成される温度検知センサ12を備えている。温度検知センサ12は、温度検知部の一例であり、この場合、凝縮器5bの温度を検知可能となっている。
【0027】
次に、洗濯乾燥機1の制御系の構成例について説明する。図4に例示する制御装置20は、制御部の一例であり、例えばマイクロコンピュータを主体として構成されている。制御装置20は、制御プログラムや各種の設定情報に基づいて、洗濯乾燥機1の動作全般を制御する。制御装置20には、図示しない給水弁、排水弁、ドラムモータなどが接続されている。また、制御装置20には、上述した循環送風機6、導通口ダンパ7a、排気口ダンパ11a、温度検知センサ12などが接続されている。
【0028】
制御装置20は、導通口ダンパ7aの駆動を制御することにより、導通口7の開閉を制御すること、換言すれば、導通口7の開度を調整することが可能である。また、制御装置20は、排気口ダンパ11aの駆動を制御することにより、排気口11の開閉を制御すること、換言すれば、排気口11の開度を調整することが可能である。また、制御装置20は、導通口ダンパ7aおよび排気口ダンパ11aの駆動制御、換言すれば、導通口7および排気口11の開閉制御を、温度検知センサ12によって検知される凝縮器5bの温度に基づいて行うことが可能となっている。
【0029】
即ち、制御装置20は、乾燥行程の途中において、温度検知センサ12によって検知される凝縮器5bの温度が所定温度Tを超えていない場合には、通常制御を実行する。この通常制御では、制御装置20は、圧縮機5aおよび循環送風機6の駆動を継続しながら、図1に例示するように、導通口ダンパ7aによって導通口7を閉塞するとともに、排気口ダンパ11aによって排気口11を閉塞する。これにより、制御装置20は、図1に矢印Aで例示するように、衣類処理槽3内の空気を、乾燥風路4を通して循環させる。
【0030】
一方、制御装置20は、乾燥行程の途中において、温度検知センサ12によって検知される凝縮器5bの温度が所定温度Tを超えた場合には、特別制御を実行する。この特別制御では、制御装置20は、圧縮機5aおよび循環送風機6の駆動を継続しながら、図2に例示するように、導通口ダンパ7aを開いて導通口7を開放するとともに、排気口ダンパ11aを開いて排気口11を開放する。これにより、制御装置20は、図2に矢印Bで例示するように、筐体2内の空気を吸込口9から圧縮機収容部8内に吸い込み、その吸い込んだ空気を導通口7から乾燥風路4内に導入し、その導入した空気を衣類処理槽3を経由させた上で排気口11から乾燥風路4の外部に排出する。
【0031】
ここで、乾燥風路4に乾燥フィルタ10を備えている洗濯乾燥機1によれば、乾燥フィルタ10において捕獲した異物が当該乾燥フィルタ10に蓄積して詰まってしまうことが懸念される。そして、乾燥フィルタ10が異物で詰まってしまうと、その乾燥フィルタ10が風路抵抗となってしまい、乾燥風路4内において空気が流れにくくなる。そして、乾燥風路4内を流れる空気と蒸発器5dおよび凝縮器5bとの熱交換効率が低下してしまい、凝縮器5bが過剰に高温となった状態つまり過熱状態となってしまう場合がある。なお、凝縮器5bの過熱状態は、例えば90度以上の高温となった状態である。
【0032】
そこで、本実施形態では、上述した所定温度Tとして、凝縮器5bが過熱状態となる手前の温度、例えば85度が設定されている。そのため、上述した制御装置20による制御によれば、乾燥行程の途中において凝縮器5bの温度が所定温度Tを超えない限りは、通常制御が継続され、これにより、衣類処理槽3内の空気が乾燥風路4を通して循環されて衣類処理槽3内の衣類の乾燥が行われる。つまり、通常の乾燥動作が行われる。
【0033】
しかし、乾燥行程の途中において凝縮器5bの温度が所定温度Tを超えるような場合には、通常制御から特別制御に切り換えられ、これにより、筐体2内の空気が吸込口9から圧縮機収容部8内に吸い込まれ、その吸い込まれた空気が導通口7から乾燥風路4内に導入され、その導入された空気が衣類処理槽3を経由した上で排気口11から乾燥風路4の外部に排出されるようになる。これにより、筐体2内の比較的低温の空気を圧縮機収容部8内の高温の圧縮機5aによって加熱して乾燥風路4内ひいては衣類処理槽3内に供給することができるようになり、筐体2内の比較的低温の空気を導入しながらも、衣類処理槽3内に温かい空気を供給して衣類の乾燥を継続することができる。また、筐体2内の比較的低温の空気を圧縮機収容部8内の高温の圧縮機5aに接触させることによって、当該圧縮機5aの冷却を図ることができる。また、筐体2内の比較的低温の空気を乾燥風路4内に導入することにより、凝縮器5bの冷却も図ることができる。
【0034】
また、圧縮機5aの駆動を停止しない場合、ヒートポンプ機構5における冷媒の循環が継続されることから、蒸発器5dの冷却が継続される。そのため、冷却が継続される蒸発器5dに対し温かい空気を供給して熱交換を行い続けないと、蒸発器5dから圧縮機5aに液状のままの冷媒が流れてしまうことが懸念される。圧縮機5aに液状の冷媒が流入すると、当該圧縮機5aによる冷媒の圧縮効率が低下してしまうため、好ましくない。上述した制御装置20による特別制御によれば、高温の圧縮機5aによって加熱された空気を蒸発器5dに供給することができ、従って、凝縮器5bが過熱状態となるような状態において圧縮機5aの駆動を継続したとしても、蒸発器5dにおける熱交換を行うことができる。よって、圧縮機5aに液状の冷媒が流入してしまうことを回避することができる。
【0035】
以上に例示した洗濯乾燥機1によれば、乾燥行程の途中において凝縮器5bの過熱状態が発生するような場合には、衣類処理槽3内の空気を乾燥風路4を介して循環させる通常制御を継続するのではなく、通常制御から特別制御に切り換えて、筐体2内の比較的低温の空気を取り込み、その取り込んだ空気を圧縮機5aで加熱して蒸発器5dに供給するようにした。これにより、圧縮機5aの駆動を継続したとしても、蒸発器5dにおける熱交換を継続することができ、圧縮機5aに液状の冷媒が流入することを回避することができる。よって、乾燥行程の途中において凝縮器5bの過熱状態が発生するような場合であっても、圧縮機5aの駆動を停止することなく衣類の乾燥を続行することができる。
【0036】
また、洗濯乾燥機1によれば、排気口11から排出される空気に含まれる異物を捕獲する排気口フィルタ11bを備えている。この構成によれば、排気口11から空気が排出される特別制御において、乾燥風路4の外部に異物が排出されてしまうことを抑制することができる。
【0037】
また、洗濯乾燥機1によれば、排気口フィルタ11bのメッシュサイズは、乾燥フィルタ10のメッシュサイズよりも粗くなっている。この構成によれば、排気口フィルタ11bを詰まりにくくすることができ、特別制御における排気口11からの排気を良好に行うことができる。
【0038】
また、洗濯乾燥機1によれば、導通口7を開閉する導通口ダンパ7a、および、排気口11を開閉する排気口ダンパ11aを備えている。この構成によれば、導通口7の開閉制御および排気口11の開閉制御を、それぞれ別個に精度良く行うことができる。
【0039】
また、洗濯乾燥機1によれば、圧縮機収容部8は、筐体2内の空気を吸い込む吸込口9を有している。この構成によれば、特別制御において、筐体2内の空気を圧縮機収容部8内ひいては乾燥風路4内に効率良く導入することができる。
【0040】
(第2実施形態)
第2実施形態では、制御装置20は、風量調整制御を実行可能に構成されている。この風量調整制御は、温度検知センサ12によって検知される凝縮器5bの温度が所定温度Tを超えた後において、つまり、上述した特別制御の実行中において、温度検知センサ12によって検知される凝縮器5bの温度が所定温度Tよりも低くなった場合に、排気口11から排出する空気の量を減少させるようにした制御である。
【0041】
即ち、図5に例示するように、制御装置20は、特別制御を開始すると(S1)、排気口ダンパ11aを開いて排気口11を全開状態とする(S2)。なお、制御装置20は、特別制御の開始当初から排気口11を全開状態としている場合には、そのまま全開状態を維持する。そして、制御装置20は、圧縮機5aの駆動周波数を通常の駆動周波数から所定の最低周波数、例えば、40Hzまで低下させる(S3)。なお、圧縮機5aの通常の駆動周波数は、例えば75Hzであるが、実行中の乾燥運転のモードや周囲環境の温度などに応じて変動する場合がある。また、最低周波数は、通常の駆動周波数よりも低い周波数において適宜変更して設定することができる。
【0042】
そして、制御装置20は、所定条件が満たされたか否かを監視する(S4)。この場合、所定条件は、条件1:「凝縮器5bの温度が所定温度T、例えば、85度以上である状態が所定時間、例えば、5分以上継続した場合」、または、条件B:「凝縮器5bの温度が所定温度Tよりも高い温度、例えば、88度を超えた場合」である。そして、制御装置20は、所定条件が満たされた場合、つまり、条件Aまたは条件Bのうち何れかの条件が満たされた場合には(S4:YES)、排気口ダンパ11aを閉じる方向に回動させて排気口11を半開状態とする(S5)。なお、半開状態における排気口11の開度は、全開状態における排気口11の開度の1/2の大きさである。
【0043】
そして、制御装置20は、排気口11を半開状態としてから所定時間、例えば1分が経過したか否かを監視する(S6)。そして、制御装置20は、排気口11を半開状態としてから所定時間が経過すると(S6:YES)、凝縮器5bの温度を再検知する(S7)。
【0044】
そして、制御装置20は、再検知した凝縮器5bの温度が所定の第1温度帯内の温度である場合には(S8:YES)、排気口ダンパ11aを開く方向に回動させて排気口11を全開状態とする(S9)。なお、この場合、第1温度帯は、85度以上つまり所定温度T以上の温度範囲が設定されている。また、第1温度帯の上限値は、設定しなくてもよいし、85度よりも高い温度において適宜変更して設定することができる。
【0045】
また、制御装置20は、再検知した凝縮器5bの温度が所定の第2温度帯内の温度である場合には(S10:YES)、排気口11を半開状態のまま維持する(S11)。なお、この場合、第2温度帯は、75度以上85度未満の温度範囲が設定されている。
【0046】
また、制御装置20は、再検知した凝縮器5bの温度が所定の第3温度帯内の温度である場合には(S12:YES)、さらに排気口ダンパ11aを閉じる方向に回動させて排気口11の開度を全開状態の例えば1/4の大きさに調整する(S13)。なお、この場合、第3温度帯は、75度未満の温度範囲が設定されている。また、第3温度帯の下限値は、設定しなくてもよいし、75度よりも低い温度において適宜変更して設定することができる。また、このステップS13においては、排気口11の開度は、全開状態の1/4の大きさに限られるものではなく、少なくとも全開状態の1/2の大きさよりも小さい開度において適宜変更して設定することができる。
【0047】
以上の通り、制御装置20は、温度検知センサ12によって検知される凝縮器5bの温度が所定温度Tを超えた後において、温度検知センサ12によって再検知される凝縮器5bの温度が所定温度Tよりも低くなると、排気口11から排出する空気の量を減少させる風量調整制御、つまり、排気口11の開度を減少させる制御を行う。
【0048】
ここで、凝縮器5bの温度が低くなると、衣類処理槽3内に供給される空気の温度が低下して衣類の乾燥効率が悪化することが懸念される。上述した風量調整制御によれば、特別制御の実行中において凝縮器5bの温度が低くなるような場合には、排気口11の開度を減少させるように調整することによって、当該排気口11から排出される空気の量を減少させることができる。よって、凝縮器5bの温度が低くなったとしても、衣類処理槽3内に供給される空気の温度が低下することを抑制することができる。
【0049】
なお、上述した第1温度帯、第2温度帯、第3温度帯のそれぞれの温度範囲は、適宜変更して設定することができる。
【0050】
(その他の実施形態)
本実施形態は、上述した複数の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変形や拡張を行うことができる。例えば、衣類乾燥機は、上述した複数の実施形態を適宜組み合わせた構成としてもよい。
【0051】
また、導通口7の大きさや形状、吸込口9の大きさや形状は、適宜変更して実施することができる。例えば図6に例示するように、導通口7は、格子状に形成された縦リブ7Raおよび横リブ7Rbを備える構成としてもよい。この構成によれば、導通口7を通過する空気に含まれる異物を縦リブ7Raや横リブ7Rbに引っ掛けることができ、異物が乾燥風路4内に進入してしまうことを抑制することができる。
【0052】
また、図7に例示するように、吸込口9は、少なくとも縦リブ9Raを備える構成としてもよい。この構成によれば、例えば作業者の指が吸込口9を通して圧縮機収容部8内に入り込んでしまうことを縦リブ9Raによって抑制することができる。なお、吸込口9は、少なくとも横リブを備える構成としてもよいし、縦リブ9Raおよび横リブを備える構成としてもよい。
【0053】
また、制御装置20は、通常制御から特別制御に切り換えた場合には、そのことを報知するように構成してもよい。また、このような報知動作は、例えば、洗濯乾燥機1が備える図示しない操作パネルの画面に情報を表示することで行うことができる。また、操作パネルの画面に表示する情報は、例えば、「通常制御から特別制御に切り換えました。」といった単に処理内容をそのまま伝えるような情報であってもよいし、このような情報に基づき加工した情報、例えば、「乾燥フィルタが詰まっています。」といった情報や「乾燥フィルタを清掃してください。」といった情報であってもよい。つまり、通常制御から特別制御に切り換えた理由を示す情報や、通常制御から特別制御に切り換えた場合に行うことが推奨される作業を示す情報などであってもよい。また、制御装置20は、外部の情報処理端末などとの通信機能を有する場合には、外部の情報処置端末などに情報を送信する構成としてもよい。
【0054】
また、洗濯乾燥機1は、吸込口9にもダンパを備える構成としてもよい。また、洗濯乾燥機1は、導通口ダンパ7aや排気口ダンパ11aを備えない構成としてもよい。また、導通口7や排気口11を開閉する構成要素は、例えば、シャッターなどであってもよい。また、洗濯乾燥機1は、導通口7、吸込口9、排気口11に、それぞれ空気の流れを促進するための送風ファンを備えた構成としてもよい。また、洗濯乾燥機1は、圧縮機収容部8における導通口7と吸込口9の高さを異ならせた構成としてもよい。この構成によれば、圧縮機収容部8内における空気の流路長を長くすることができ、圧縮機5aに対する空気の接触を促進して当該圧縮機5aの冷却を効率良く行うことができる。
【0055】
また、洗濯乾燥機1は、圧縮機5aの周囲に放熱部を備えた構成としてもよい。この構成によれば、例えば、筐体2内から圧縮機収容部8内に導入された空気による圧縮機5aの冷却作用を放熱部によって補助することができ、圧縮機5aの冷却を一層効率良く行うことができる。なお、放熱部は、例えば、周知の放熱材などであってもよいし、放熱用のフィン構造を有する部材などであってもよい。
【0056】
また、本実施形態は、衣類処理槽内の空気を循環させる循環風路を備える構成の衣類乾燥機であれば、いわゆるドラム式の洗濯乾燥機に限らず、例えば縦軸型の洗濯乾燥機など、その他のタイプの装置にも適用することができる。また、本実施形態は、例えば、衣類の消臭、脱臭、除菌、漂白など、衣類に対して何らかの処理を施す機能を有する衣類乾燥機にも適用することができる。
【0057】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
図面中、1は洗濯乾燥機(衣類乾燥機)、2は筐体、3は衣類処理槽(乾燥槽)、3aは空気流出口、3bは空気流入口、4は乾燥風路、5はヒートポンプ機構、5aは圧縮機、5bは凝縮器、5cは減圧器、5dは蒸発器、7は導通口、7aは導通口ダンパ、8は圧縮機収容部、9は吸込口、10は乾燥フィルタ、11は排気口、11aは排気口ダンパ、11bは排気口フィルタ、12は温度検知センサ(温度検知部)、20は制御装置(制御部)、を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7