(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】配線基板
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20240521BHJP
H01L 23/373 20060101ALI20240521BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20240521BHJP
H01L 23/15 20060101ALI20240521BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
H01L23/36 C
H01L23/36 M
H01L23/12 J
H01L23/14 C
H05K1/02 J
H05K1/02 Q
(21)【出願番号】P 2020209047
(22)【出願日】2020-12-17
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142745
【氏名又は名称】伊藤 世子
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100148275
【氏名又は名称】山内 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100143498
【氏名又は名称】中西 健
(72)【発明者】
【氏名】高木 桂二
(72)【発明者】
【氏名】奈須 孝有
(72)【発明者】
【氏名】近藤 洋右
(72)【発明者】
【氏名】奥田 明大
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-059798(JP,A)
【文献】国際公開第2006/019090(WO,A1)
【文献】特開2020-188198(JP,A)
【文献】特開2002-261445(JP,A)
【文献】特開平05-067864(JP,A)
【文献】特開2004-063811(JP,A)
【文献】特開平11-121645(JP,A)
【文献】特開2001-007522(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36
H01L 23/373
H01L 23/12
H01L 23/15
H05K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化アルミニウムを主成分として含有する基板と、
前記基板の表面に設けられており、タングステンおよびモリブデンの少なくとも何れかを含有する、少なくとも一つの導電パターンと
を備え、
前記導電パターンの少なくとも一部が前記基板内に埋まって
おり、
前記導電パターンにおいて、前記基板に埋め込まれている部分の最大幅は、前記基板から突出している部分の最大幅よりも大きくなっている、配線基板。
【請求項2】
前記導電パターンは、前記基板の表面と直交する厚み方向の寸法の半分よりも多くの部分が前記基板内に埋まっている、
請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記導電パターンの一部は、前記基板の表面から突出している、
請求項1または2に記載の配線基板。
【請求項4】
前記導電パターンは、前記基板の厚み方向に沿った断面視で、前記基板の内部から表面へ向かって前記表面に沿った長さが小さくなる方向に傾斜した側面形状を有している、
請求項1から3の何れか1項に記載の配線基板。
【請求項5】
前記基板の表面には、アルミニウム酸化被膜が設けられており、
前記基板内の前記導電パターンが埋め込まれている部分において、前記基板と前記導電パターンとの境界面には、前記アルミニウム酸化被膜は設けられていない、
請求項1から4の何れか1項に記載の配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化アルミニウムを含有する基板を備えている配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、発光ダイオード(LED)素子などの半導体素子が搭載される配線基板には、半導体素子から発生する熱を効率よく放散させることへの要求がある。そこで、配線基板を構成する絶縁基板として、高い熱伝導率を有する窒化アルミニウム(AlN)の焼結体を用いることが検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、熱伝導率が190W/m・K以上の高熱伝導率を有する窒化アルミニウム基板に関する発明が開示されている。この窒化アルミニウム基板の表面には、同時焼成法により形成されたWまたはMoを主成分とするメタライズ層が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1などに記載されているように、半導体素子が搭載される配線基板に熱伝導率の高い窒化アルミニウム基板を用いることで、半導体素子から発生する熱の放熱性を高めることができる。しかし、配線基板の放熱性を向上させることに関しては、さらなる改善の余地がある。例えば、基板の表面に搭載されている導電パターンには、半導体素子が接合される。そのため、導電パターンから窒化アルミニウム基板への熱伝導を促進することで、配線基板の放熱性をより向上させることができることが期待される。
【0006】
そこで、本発明では、基板の表面に形成されている導電パターンから基板への熱伝導性をより向上させることのできる配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面にかかる配線基板は、窒化アルミニウムを主成分として含有する基板と、前記基板の表面に設けられており、タングステンおよびモリブデンの少なくとも何れかを含有する、少なくとも一つの導電パターンとを備えており、前記導電パターンの少なくとも一部が前記基板内に埋まっている。
【0008】
上記の構成によれば、窒化アルミニウムを主成分として含有する基板を備えていることで、例えば、アルミナを主成分とするセラミック基板と比較して、放熱性をより向上させることができる。また、導電パターンの少なくとも一部が基板に埋め込まれていることで、導電パターンから基板への熱伝達を促進させることができる。これにより、配線基板に接続された半導体素子などから導電パターンに伝達された熱を基板側へより効率的に伝達させることができる。
【0009】
上記の本発明の一局面にかかる配線基板において、前記導電パターンは、前記基板の表面と直交する厚み方向の寸法の半分よりも多くの部分が前記基板内に埋まっていてもよい。
【0010】
上記の構成によれば、導電パターンは、基板の表面から突出している部分の表面積よりも、基板内に埋め込まれている部分の表面積の方が大きくなる。このように、導電パターンにおいて基板に埋め込まれている部分の表面積がより大きくなることで、導電パターンから基板への熱伝達性をより向上させることができる。
【0011】
上記の本発明の一局面にかかる配線基板において、前記導電パターンの一部は、前記基板の表面から突出していてもよい。
【0012】
導電パターンの一部が基板の表面から突出していることで、半導体素子などの他の電子部品との電気的な接続がより容易となる。したがって、上記の構成によれば、導電パターンが他の電子部品との接続パッドとして利用される場合に、導電パターン上に電子部品の実装領域を確保しやすくすることができる。
【0013】
上記の本発明の一局面にかかる配線基板において、前記導電パターンは、前記基板の厚み方向に沿った断面視で、前記基板の内部から表面へ向かって前記表面に沿った長さが小さくなる方向に傾斜した側面形状を有していてもよい。
【0014】
上記の構成によれば、導電パターンの表面積は、基板の表面から突出している部分よりも、基板内に埋め込まれている部分の方が大きくなる。これにより、基板と導電パターンとの接触面の面積がより大きくなるため、導電パターンから基板への熱伝導をより促進させることができる。
【0015】
上記の本発明の一局面にかかる配線基板において、前記基板の表面には、アルミニウム酸化被膜が設けられており、前記基板内の前記導電パターンが埋め込まれている部分において、前記基板と前記導電パターンとの境界面には、前記アルミニウム酸化被膜は設けられていなくてもよい。
【0016】
窒化アルミニウムを主成分とする基板の表面にアルミニウム酸化被膜が設けられていると、当該被膜が設けられている表面から基板内への熱伝達性は低下する。上記の構成によれば、基板内の導電パターンが埋め込まれている部分において、基板と導電パターンとの境界面にアルミニウム酸化被膜が設けられていない構成とすることで、導電パターンと基板との間の熱伝達性が低下することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一局面にかかる配線基板によれば、基板の表面に形成されている導電パターンから基板への熱伝導性をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1の実施形態にかかる配線基板の内部構成を示す断面模式図である。
【
図2】
図1に示す配線基板のAで示す部分を拡大して示す断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態にかかる配線基板の製造工程を示すフローチャートである。
【
図4】
図3に示す製造工程中の露光工程および現像工程を説明する模式図である。
【
図5】第2の実施形態にかかる半導体パッケージの構成を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0020】
〔第1の実施形態〕
本実施形態では、本発明にかかる配線基板の一例として、配線基板1を例に挙げて説明する。配線基板1は、例えば、発光ダイオード(LED)素子などの半導体素子を搭載するための配線基板として利用される。
【0021】
図1には、配線基板1の一部分の断面構成を示す。本実施形態では、便宜上、略平板状の配線基板1において半導体素子が搭載される側の面を表面10aとし、その反対側の面を裏面10bとする。但し、配線基板1の表面および裏面の定義はこれに限定はされず、任意に決めることができる。
【0022】
配線基板1は、主として、セラミック基板(基板)10と、複数の導電パターンとで構成されている。
【0023】
セラミック基板10は、配線基板1の土台となる部材である。セラミック基板10は、窒化アルミニウム(AlN)を主成分として含有する。ここで、窒化アルミニウム(AlN)を主成分として含有するとは、セラミック基板10に含まれる種々の化合物のうち、AlNの含有量が最も多いことを意味する。セラミック基板10に含まれるAlNの含有量は、質量比で90%以上であることが好ましい。
【0024】
セラミック基板10は、1つまたは複数のセラミックグリーンシート(AlNシートとも呼ばれる)を焼成して得られる。セラミック基板10が複数のAlNシートから形成される場合には、セラミック基板10は、積層された複数のAlN層を有している。例えば、
図1に示す例では、セラミック基板10は、表面10a側に位置する第1AlN層11と、裏面10b側に位置する第2AlN層12とを有している。
【0025】
導電パターンは、セラミック基板10の表面10a、裏面10b、および内部などに設けられている。各導電パターンは、それぞれ所定の形状に形成されており、例えば、配線、接続パッド、および電極などとして機能する。
【0026】
例えば、
図1に示す例では、セラミック基板10の表面10aに、導電パターンの一例である接続パッド21が2個設けられている。また、セラミック基板10の裏面10bに、導電パターンの一例である裏面側パッド22が2個設けられている。接続パッド21および裏面側パッド22は、他の電子部品との接続端子などとして用いられる。例えば、接続パッド21は、LED素子などの半導体素子の接続端子(バンプとも呼ばれる)と電気的に接続される。
【0027】
また、第1AlN層11と第2AlN層12との間には、導電パターンの一例である内層配線23が設けられている。内層配線23は、例えば、メッキ用配線などとして利用される。
【0028】
導電パターンは、タングステン(W)およびモリブデン(Mo)の少なくとも何れかを含有する。本実施形態では、導電パターンは、タングステン(W)およびモリブデン(Mo)の何れかを主成分として含有する。ここで主成分として含有するとは、導電パターンに含まれる金属元素のうち、WまたはMoの含有量が最も多いことを意味する。導電パターンは、WまたはMoという1種類の金属元素のみを含むものであってもよい。導電パターンに含まれるWおよび/またはMoの含有量は、質量比で90%以上であることが好ましい。
【0029】
また、配線基板1には、複数の導電性ビア25および26が設けられている。導電性ビア25は、第1AlN層11を貫通するように配置され、接続パッド21と内層配線23とを電気的に接続する。導電性ビア26は、第2AlN層12を貫通するように配置され、裏面側パッド22と内層配線23とを電気的に接続する。
【0030】
導電性ビア25および26は、タングステン(W)およびモリブデン(Mo)の少なくとも何れかを含有する。本実施形態では、導電パターンは、タングステン(W)およびモリブデン(Mo)の何れかを主成分として含有する。例えば、導電性ビア25および26は、接続パッド21などの導電パターンと同じ材料で形成されている。
【0031】
セラミック基板10の表面10aおよび裏面10bに設けられている導電パターンの表面(セラミック基板10から露出している部分)は、メッキ層で覆われている。例えば、接続パッド21の表面には、メッキ層31が設けられている。また、裏面側パッド22の表面には、メッキ層32が設けられている。
【0032】
メッキ層31および32は、例えば、Niメッキ、およびAuメッキなどを含む。メッキ層31および32は、単層のメッキ層で構成されていてもよいし、複数のメッキ層で構成されていてもよい。メッキ層31および32は、例えば、従来公知の電解めっき法などを用いて形成することができる。電解めっき法を行うことで、セラミック基板10から露出している導電パターン(例えば、接続パッド21および裏面側パッド22)の表面にメッキ被膜を形成することができる。
【0033】
本実施形態では、メッキ層31および32は、Niメッキ層とAuメッキ層とが積層された積層構造を有している。この場合、導電パターンの表面を覆うようにNiメッキ層が設けられ、Niメッキ層を覆うようにAuメッキ層が設けられていることが好ましい。これにより、接続パッド21は、金属元素Auを含有するメッキ層31で覆われる。したがって、半導体素子50の接続端子に含まれる金(Au)との間で、Au-Auフリップチップ接続が実現できる。
【0034】
続いて、セラミック基板10の表面10aに設けられている接続パッド21のより具体的な構成について説明する。
図2には、接続パッド21の拡大図を示す。
図2は、
図1においてAで示す部分を拡大して示す図である。
【0035】
図2に示すように、接続パッド21は、その少なくとも一部がセラミック基板10内に埋まった状態となっている。そして、接続パッド21の一部(具体的には、頂部)は、セラミック基板10の表面10aから突出している。
【0036】
具体的には、接続パッド21は、セラミック基板10の表面10aと直交する厚み方向の寸法の半分よりも多くの部分がセラミック基板10内に埋まっている。すなわち、
図2に示すように、接続パッド21の厚み方向の寸法をHとし、接続パッド21におけるセラミック基板10内に埋まっている部分(セラミック基板10の表面10aの延長面(破線で示す)よりも下方の部分)の厚み方向の寸法H1とすると、H1>1/2×Hとなっている。
【0037】
また、接続パッド21は、その全表面積の50%よりも多くの部分がセラミック基板10内に埋まっているということもできる。この構成によれば、接続パッド21は、セラミック基板10の表面10aから突出している部分の表面積よりも、セラミック基板10内に埋め込まれている部分(セラミック基板10の表面10aよりも下方の部分)の表面積の方が大きくなる。このように、接続パッド21においてセラミック基板10に埋め込まれている部分の表面積がより大きくなることで、接続パッド21からセラミック基板10への熱伝達性をより向上させることができる。
【0038】
なお、接続パッド21において、セラミック基板10内に埋まっている部分の割合は、接続パッド21の厚み方向の寸法Hの60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。
【0039】
また、接続パッド21の一部(具体的には、頂部)が、セラミック基板10の表面10aから突出していることで、接続パッド21を覆うように設けられるメッキ層31において、半導体素子との接合に寄与する領域を増やすことができる。これにより、接続パッド21上に実装される半導体素子の実装エリアをより確保しやすくなる。この点を踏まえると、接続パッド21の頂部のセラミック基板表面10aからの突出量は、接続パッド21の厚み方向の寸法Hの割合で5%以上であることが好ましい。
【0040】
このように、本実施形態にかかる配線基板1では、セラミック基板10の表面10aに設けられている導電パターンは、その少なくとも一部がセラミック基板10内に埋まっている。また、セラミック基板10の裏面10bに設けられている導電パターンも、その少なくとも一部がセラミック基板10内に埋まっている。これにより、導電パターンに接続されている半導体素子から導電パターンへ伝わった熱を、より効率的にセラミック基板10へ伝えることができる。
【0041】
上記のような構成を有するセラミック基板10は、後述するように、焼成前のAlNシート上に所定形状の導電パターンを形成した後に、AlNシートと導電パターンとを同時に焼成する、いわゆる同時焼成法によって形成することができる。
【0042】
また、
図2に示すように、セラミック基板10の表面10aには、例えば、アルミナ(Al
2O
3)などを含むアルミニウム酸化被膜15(以下、酸化被膜15とも呼ぶ)が形成されている。この酸化被膜15は、導電パターンが形成されたAlNシートの焼成時に、AlNシートに含まれるアルミニウムが酸化することによって形成される。
【0043】
酸化被膜15に含まれているアルミナなどの酸化アルミニウムは、セラミック基板10内に含まれている窒化アルミニウムと比べて、化学的な安定性が高い。そのため、セラミック基板10の表面10aを覆うように酸化被膜15が設けられていることで、セラミック基板10を保護することができ、セラミック基板10に含まれる窒化アルミニウムの変質を抑制することができる。
【0044】
なお、酸化アルミニウムの熱伝導率は、窒化アルミニウムの熱伝導率と比較して小さい。そのため、導電パターンとセラミック基板との接触面(境界面)にアルミニウム酸化被膜15が設けられていると、導電パターンとセラミック基板との間の熱伝達が低下する可能性がある。
【0045】
そこで、セラミック基板10内の導電パターンが埋め込まれている部分において、セラミック基板10と導電パターンとの境界面には、酸化被膜15が設けられていないことが好ましい。本実施形態では、酸化被膜15は、接続パッド21が形成されている領域には形成されておらず、セラミック基板10の表面10aのみに設けられている。
【0046】
具体的には、
図2に示すように、セラミック基板10の接続パッド21が埋め込まれている部分では、接続パッド21の底面との境界面および接続パッド21の傾斜面21aとの境界面のいずれにも酸化被膜15は形成されていない。これにより、接続パッド21からセラミック基板10への熱伝達は、酸化被膜15によって妨げられることがなくなる。したがって、接続パッド21とセラミック基板10との間の熱伝導性をより高めることができる。
【0047】
また、
図2に示すように、セラミック基板10の表面10aに設けられている接続パッド21の断面形状は、基板の内部から表面へ向かって(
図2では下方から上方へ向かって)幅が小さくなる略台形状となっている。すなわち、セラミック基板10の表面10aに設けられている接続パッド21などの導電パターンは、基板の厚み方向に沿った断面視で、基板の内部から表面へ向かって表面に沿った長さ(
図2では、横方向の長さ)が小さくなる方向に傾斜した傾斜面21aを有している。
【0048】
これにより、接続パッド21などの導電パターンの表面積は、セラミック基板10の表面10aから突出している部分よりも、セラミック基板10内に埋め込まれている部分の方が大きくなる。このように、セラミック基板10と導電パターンとの接触面の面積がより大きくなることで、導電パターンからセラミック基板10への熱伝導をより促進させることができる。
【0049】
このような形状の導電パターンは、例えば、後述する転写法などによって形成することができる。
【0050】
続いて、配線基板1の製造方法について説明する。ここでは、接続パッド21などの導電パターンを形成する工程を中心に説明する。この工程以外の配線基板1の製造方法については、従来公知の配線基板の製造方法が適用できる。
【0051】
図3には、配線基板1の製造工程の一部を工程順に示す。
図3では、主に、ビア形成工程(S10)から焼成工程(S30)までの各工程を示している。
【0052】
図3に示す各工程を行うにあたって、先ず、AlNシートを準備する。AlNシートは、主原料である窒化アルミニウム(AlN)に、焼結助剤(例えば、イットリア、カルシアなど)及び適当な有機溶剤、溶媒などを添加混合してスラリーを作製した後、シート状に成形することで得られる。
【0053】
AlNシートを準備した後、ビア形成工程(S10)を行う。この工程では、AlNシート内の所定の位置(導電性ビア25および26が形成される位置)に貫通孔を形成し、貫通孔内に導電性ペーストを埋め込む。導電性ペーストは、例えば、タングステン(W)およびモリブデン(Mo)の何れかを主成分として含有する。これにより、AlNシート内の所定位置に導電性ビア25および26となる領域が形成される。
【0054】
次に、導電パターン形成工程(S20)を行う。
図3に示すように、この導電パターン形成工程(S20)には、準備工程(S21)、塗布工程(S22)、露光工程(S23)、現像工程(S24)、および転写工程(S25)などが含まれる。
【0055】
準備工程(S21)では、キャリアフィルム61と、導電性ペースト62を準備する。キャリアフィルム61としては、例えば、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)などの樹脂製のフィルムを用いることができる。
【0056】
導電性ペースト62は、タングステン(W)およびモリブデン(Mo)の少なくとも何れかを含有する金属粉末と、感光性樹脂とを含む。感光性樹脂としては、紫外光が照射されると光硬化するネガ型感光材が用いられる。本実施形態では、例えば、ビスアジド化合物が用いられる。導電性ペーストに感光性樹脂が含まれることで、フォトリソグラフィによって所定形状の導電パターンを形成することができる。そのため、より精細なパターン形状を有する導電パターンを形成することができる。
【0057】
塗布工程(S22)では、準備したキャリアフィルム61上に、導電性ペースト62を塗布する。その後、露光工程(S23)を行う。
図4には、露光工程(S23)、および、その後に行われる現像工程(S24)の様子を、工程Aから工程Cの順に示す。
【0058】
露光工程(S23)では、キャリアフィルム61上に塗布された導電性ペースト62に光を照射する。具体的には、ガラスマスク70を用いてキャリアフィルム61上の導電性ペースト62に光を照射し、配線基板1に形成される各導電パターンの形状に合わせて、導電性ペースト62内の感光性樹脂を光硬化させる。
【0059】
この工程では、
図4の「A」に示すように、導電性ペースト62の上方に、ガラスマスク70が配置される。ガラスマスク70には、平板状のガラス71に、導電パターン20の形状にあわせて遮光膜72が設けられている。露光工程(S23)では、キャリアフィルム61上の導電性ペースト62に対して、ガラスマスク70を介して、導電性ペースト62に含まれる感光性樹脂が光硬化する紫外光Lが照射される。
【0060】
これにより、遮光膜72が設けられていない領域の導電性ペースト62には紫外光Lが照射される一方、遮光膜72が設けられている領域の導電性ペースト62には紫外光Lが照射されない。その結果、キャリアフィルム61上の導電性ペースト62では、紫外光Lが照射された領域に存在する感光性樹脂のみが光硬化し、遮光膜72によって紫外光が遮られる領域に存在する感光性樹脂は光硬化することなくキャリアフィルム61上に残る。
【0061】
なお、このようにして紫外光Lを照射すると、導電性ペースト62内に含まれる金属粉末によって紫外光が散乱されるため、照射された紫外光Lの一部は、導電性ペースト62のキャリアフィルム61側にまで到達しない。そのため、キャリアフィルム61に近い側の導電性ペースト62内の感光性樹脂は光硬化が阻害される傾向にある。
【0062】
すなわち、導電性ペースト62において光硬化される領域は、紫外光Lが入射する側からキャリアフィルム61に向かって狭くなる。
図4の「B」では、導電性ペースト62において光硬化した領域を20Aとして示す。
図4に示すように、光硬化した領域20Aの断面形状は、紫外光Lが入射する側からキャリアフィルム61に向かって幅が小さくなる略台形状となっている。
【0063】
その後、現像工程(S24)を行う。現像工程(S24)では、キャリアフィルム61上に、導電パターン20を形成する。具体的には、導電性ペースト62の未感光部分(領域20A以外の部分)が現像液によって除去される。
【0064】
これにより、
図4の「C」に示すように、光硬化した感光性樹脂を含む導電性ペースト62の領域20Aの部分が残り、導電パターン20が形成される。導電パターン20は、キャリアフィルム61の厚み方向に沿った断面視で、紫外光Lが入射する側からキャリアフィルム61側へ向かって幅が狭くなる方向に傾斜した傾斜面20aを有している。
【0065】
続いて、転写工程(S25)を行う。転写工程(S25)では、キャリアフィルム61上に形成された導電パターン20を、AlNシート上に転写する。具体的には、ビア形成工程(S10)を経たAlNシートの表面に接着溶剤を塗布し、導電パターン20が形成された面をAlNシート側にして、キャリアフィルム61を載せて、加圧し、加熱する。その後、キャリアフィルム61を剥がすことにより、導電パターン20がAlNシート上に形成される。ここで、導電パターン20の一部は、AlNシートに埋まった状態となっている。
【0066】
以上のようにして、導電パターン形成工程(S20)が行われる。これにより、例えば、
図2に示すような傾斜面21aを有する接続パッド21が、AlNシートの表面に形成される。
【0067】
複数のAlN層を有する配線基板1の場合には、上記の方法で、複数のAlNシートを形成した後、各シートを決められた順序で積層する。
【0068】
その後、焼成工程(S30)を行う。焼成工程(S30)では、導電パターン20が転写されたAlNシート、またはその積層体をコファイヤ焼成(同時焼成)する。これにより、AlNシートはセラミック基板10となる。なお、焼成工程(S30)を行うことによって、導電パターン20内に含まれている感光性樹脂は焼失する。また、焼成工程(S30)を行うことによって、セラミック基板10の表面10aおよび裏面10bに酸化被膜15が形成される。
【0069】
焼成工程(S30)が終了すると、メッキ工程などの後工程が行われる。メッキ工程は、従来公知の電解めっき法によって実施される。電解めっき法を行うことで、セラミック基板10から露出している導電パターンの表面にメッキ被膜を形成することができる。これにより、例えば、
図1に示すようなメッキ層31および32が形成される。
【0070】
(第1の実施形態のまとめ)
以上のように、本実施形態にかかる配線基板1は、セラミック基板10と、少なくとも一つの導電パターン(例えば、接続パッド21、裏面側パッド22、配線、および電極など)とを備えている。セラミック基板10は、窒化アルミニウム(AlN)を主成分として含有する。導電パターンは、タングステン(W)およびモリブデン(Mo)の少なくとも何れかを含有する。
【0071】
配線基板1が窒化アルミニウム(AlN)を主成分として含有するセラミック基板10で形成されていることで、例えば、アルミナを主成分とするセラミック基板と比較して、放熱性をより向上させることができる。したがって、配線基板1は、例えば、LED素子などの発熱性の高い半導体素子を搭載するための配線基板として好適に用いられる。
【0072】
導電パターンの一例である接続パッド21は、セラミック基板10の表面10aに設けられている。また、導電パターンの一例である裏面側パッド22は、セラミック基板10の裏面10bに設けられている。これらの導電パターンの少なくとも一部は、セラミック基板10内に埋め込まれている。
【0073】
上記の構成によれば、導電パターンの少なくとも一部がセラミック基板10に埋め込まれていることで、導電パターンからセラミック基板10への熱伝達を促進させることができる。これにより、配線基板1に接続された半導体素子などから導電パターンに伝達された熱をセラミック基板10側へより効率的に伝達させることができる。
【0074】
少なくとも一部がセラミック基板10に埋め込まれている導電パターンは、上述した転写法などを用いて形成することができる。なお、従来のスクリーン印刷法などを用いて導電パターンを形成すると、セラミック基板内に埋め込まれた構造とはならない。
【0075】
転写法を用いて導電パターンを形成すると、スクリーン印刷法を用いて導電パターンを形成した場合と比較して、導電パターン表面の平坦性を向上させることができる。そのため、本実施形態にかかる配線基板1において、転写法を用いて形成された導電パターンを接続パッド21として利用すると、半導体素子50の接続端子51との接続信頼性を向上させることができる。
【0076】
〔第2の実施形態〕
続いて、第2の実施形態にかかる半導体パッケージ100について、
図5および
図6を参照しながら説明する。本実施形態にかかる半導体パッケージ100は、例えば、LEDパッケージなどの電子部品として好適に利用され得る。
【0077】
半導体パッケージ100は、主として、配線基板101と、半導体素子50とを備えている。配線基板101は、第1の実施形態で説明した配線基板1と同様の構成が適用できる。なお、本実施形態では、配線基板101を構成するセラミック基板10が、1つのAlN層(第1AlN層11)で形成されている例を挙げて説明する。
【0078】
配線基板101は、主として、セラミック基板(基板)10と、複数の導電パターンとで構成されている。第1の実施形態と同様に、セラミック基板10は、窒化アルミニウム(AlN)を主成分として含有する。本実施形態では、便宜上、略平板状のセラミック基板10において半導体素子が搭載される側の面を表面10aとし、その反対側の面を裏面10bとする。
【0079】
導電パターンは、セラミック基板10の表面10a、および裏面10bなどに設けられている。各導電パターンは、それぞれ所定の形状に形成されており、例えば、配線、接続パッド、および電極などとして機能する。
【0080】
図5に示す例では、セラミック基板10の表面10aに、導電パターンの一例である接続パッド21が2個設けられている。
図5では、それ以外の導電パターンの図示は省略している。接続パッド21の表面には、メッキ層31が設けられている。接続パッド21およびメッキ層31の構成については第1の実施形態と同様であるため、詳しい説明を省略する。
【0081】
半導体素子50は、本体部の下面50aに少なくとも一つの接続端子51が設けられている。
図5に示す例では、配線基板1に設けられている2つの接続パッド21と対応する位置に、2つの接続端子51が設けられている。接続端子51の表面は、金(Au)を含有する金属被膜(例えば、メッキ層)などで形成されている。
【0082】
これにより、配線基板101の接続パッド21表面のメッキ層31に含まれる金(Au)と、半導体素子50の接続端子51に含まれる金(Au)との間で、Au-Auフリップチップ接続が実現できる。
【0083】
また、セラミック基板10がAlNを主成分とする材料で形成されていることで、例えば、アルミナを主成分とするセラミック基板と比較して、放熱性をより向上させることができる。そのため、LED素子などのように発熱量のより大きい半導体素子50を実装する場合に、本実施形態の構成を適用することで、半導体素子50で発生した熱を、接続端子51と接続パッド21との接続部分を介して、より効率的にセラミック基板10へ伝達させることができる。そして、配線基板101に接続されたヒートシンクなどの放熱部材から熱を放出することで、半導体素子50が高温となることを抑制することができる。
【0084】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、本明細書で説明した異なる実施形態の構成を互いに組み合わせて得られる構成についても、本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0085】
1 :配線基板
10 :セラミック基板(基板)
10a :(セラミック基板の)表面
11 :第1AlN層
12 :第2AlN層
15 :酸化被膜(アルミニウム酸化被膜)
20 :導電パターン
21 :接続パッド(導電パターン)
21a :(接続パッドの)傾斜面
22 :裏面側パッド(導電パターン)
23 :内層配線
31 :メッキ層
32 :メッキ層
50 :半導体素子
100 :半導体パッケージ
101 :配線基板