(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】毛髪挟持装置
(51)【国際特許分類】
A45D 1/00 20060101AFI20240521BHJP
【FI】
A45D1/00 501Z
A45D1/00 503A
A45D1/00 502B
A45D1/00 507A
A45D1/00 501D
A45D1/00 504Z
(21)【出願番号】P 2020217469
(22)【出願日】2020-12-25
【審査請求日】2023-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000114628
【氏名又は名称】ヤーマン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 貴三代
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-312807(JP,A)
【文献】特開2018-175725(JP,A)
【文献】特開2006-087628(JP,A)
【文献】特表2010-534537(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0071312(US,A1)
【文献】特開2011-098001(JP,A)
【文献】特開2020-062401(JP,A)
【文献】特開2009-254796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 1/00~ 7/06
A45D 20/12
A46B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛髪挟持装置であって、
筐体と、第1の導電部と、第2の導電部とを備え、
前記筐体は、その内側に、操作箇所に対するユーザの把握開放動作に伴って互いに接触又は離間可能な一対のプレートを備え、
ここで
前記一対のプレートは、長手方向と短手方向とを規定可能な矩形状に形成され、
前記一対のプレートのうちの少なくとも一方は、前記筐体に対して位置又は向きが可変に構成され、
前記第1の導電部及び前記第2の導電部は、
前記一対のプレートの一方の
、前記短手方向の両端に設けられた電極であり、
前記長手方向に関しては前記プレートに沿って延在し且つ前記短手方向に関しては外側にいくにしたがって前記一対のプレートの他方から遠ざかるように湾曲する湾曲面を有し、
前記ユーザの把握動作によって毛髪が挟持された際に、
前記毛髪と前記湾曲面とが接触し、前記毛髪を介して通電さ
れる、もの。
【請求項2】
請求項1に記載の毛髪挟持装置において、
前記一対のプレートの少なくとも一方に、発光素子を備える、もの。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の毛髪挟持装置において、
前記筐体の内側に凹部が設けられる、もの。
【請求項4】
請求項3に記載の毛髪挟持装置において、
前記凹部は、前記一対のプレートの
前記長手方向に沿って形成される、もの。
【請求項5】
請求項1~請求項4の何れか1つに記載の毛髪挟持装置において、
前記一対のプレートは、前記位置又は向きが2軸に可変に構成される、もの。
【請求項6】
請求項1~請求項5の何れか1つに記載の毛髪挟持装置において、
前記一対のプレートのうちの少なくとも一方は、前記ユーザの把握動作によって毛髪を挟持し、前記毛髪に対して通電によるイオンの導出入を実行可能に構成される、もの。
【請求項7】
請求項6に記載の毛髪挟持装置において、
制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記イオンの導出入に係る通電の態様を制御するように構成される、もの。
【請求項8】
請求項7に記載の毛髪挟持装置において、
前記制御部は、極性を所定のタイミングで又は無作為に入れ替えた通電を実行させる、もの。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪挟持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪挟持装置が、美容室や家庭等で広く利用されている。特許文献1には、このような毛髪を一対のプレートで挟持して加熱することでヘアセットを行うことができる毛髪挟持装置、いわゆるヘアアイロンの一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような毛髪挟持装置において、毛髪を挟持して移動させる際のユーザの操作性のさらなる向上と、毛髪に対する負担減少むしろ毛髪に対する良い影響とが求められている。
【0005】
本発明では上記事情を鑑み、操作性が高く、毛髪への負担を抑制し且つむしろ毛髪へ良い影響を与えることができる毛髪挟持装置を提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、毛髪挟持装置が提供される。この毛髪挟持装置は、筐体を備える。筐体は、その内側に、操作箇所に対するユーザの把握開放動作に伴って互いに接触又は離間可能な一対のプレートを備える。一対のプレートのうちの少なくとも一方は、ユーザの把握動作によって毛髪を挟持し、毛髪に対して通電によるイオンの導出入を実行可能に構成される。筐体に対して位置又は向きが可変に構成される。
【0007】
このような態様によれば、操作性を向上させ、毛髪への負担を抑制し且つむしろ毛髪へ良い影響を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】毛髪挟持装置1の斜視図であって、特に筐体11の内側11bに設けられた第1のプレート21を示している。
【
図4】筐体11の内側11bの態様を示す平面図である。
【
図5】毛髪挟持装置1の斜視図であって、特に筐体12の内側12bに設けられた第2のプレート22を示している。
【
図6】筐体12の内側12bの態様を示す平面図である。
【
図7】プレート2に含まれる機能部材を示すブロック図である。
【
図8】毛髪挟持装置1が有する電気的構成を示すブロック図である。
【
図9】プレート2に電極である第1の導電部31を設けた態様を示す図である。
【
図10】プレート2に電極である第1の導電部31及び第2の導電部32を設けた態様を示す図である。
【
図11】第1のプレート21に電極である第1の導電部31を設け、第2のプレート22に第2の導電部32を設けた態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0010】
ところで、本実施形態に登場するソフトウェアを実現するためのプログラムは、コンピュータが読み取り可能な非一時的な記録媒体として提供されてもよいし、外部のサーバからダウンロード可能に提供されてもよいし、外部のコンピュータで当該プログラムを起動させてクライアント端末でその機能を実現(いわゆるクラウドコンピューティング)するように提供されてもよい。
【0011】
また、本実施形態において「部」とは、例えば、広義の回路によって実施されるハードウェア資源と、これらのハードウェア資源によって具体的に実現され得るソフトウェアの情報処理とを合わせたものも含み得る。また、本実施形態においては様々な情報を取り扱うが、これら情報は、例えば電圧・電流を表す信号値の物理的な値、0または1で構成される2進数のビット集合体としての信号値の高低、または量子的な重ね合わせ(いわゆる量子ビット)によって表され、広義の回路上で通信・演算が実行され得る。
【0012】
また、広義の回路とは、回路(Circuit)、回路類(Circuitry)、プロセッサ(Processor)、およびメモリ(Memory)等を少なくとも適当に組み合わせることによって実現される回路である。すなわち、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、およびフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等を含むものである。
【0013】
1.基本構成
本節では、本実施形態に係る毛髪挟持装置1の基本構成について説明する。この毛髪挟持装置1で毛髪を挟持して移動させることで、美容師等のユーザが、被検者のヘアスタイルの調整、トリートメント、ストレートパーマ、縮毛矯正等の美容施術を実施することができる。あるいは、被検者自身が毛髪挟持装置1を使用して、自身の毛髪を挟持して、これらの美容施術を実施してもよい。特に本実施形態では、被検者の毛髪に薬剤を塗布した後に、毛髪挟持装置1を用いて薬剤を浸透させるトリートメントを実施することを想定して説明する。
【0014】
(筐体11,12)
図1は、毛髪挟持装置1の外観を示す平面図である。
図2は、毛髪挟持装置1の外観を示す正面図である。
図1及び
図2に示されるように、毛髪挟持装置1は、筐体11,12と、ヒンジ13とを備える。また、毛髪挟持装置1は、操作箇所14と、作用箇所15とに大別される。
【0015】
筐体11,12は、それぞれ長尺な薄板状に形成される。また、安全性を考慮して、全体として丸みを帯びた形状を有しているが、あくまれも一例でありこの限りではない。
【0016】
筐体11は、ヒンジ13の中心を支点として、筐体12に対して回動するように構成されている。ユーザは、毛髪挟持装置1を使用するにあたって、筐体11,12の外側11a,12aの、図示における左側にあたる操作箇所14を把握又は解放する。これにより、筐体11,12の外側11a,12aの、図示における右側における作用箇所15が、ヒンジ13の中心を支点として開閉する。このような動作によって、毛髪挟持装置1のヘアアイロンといった毛髪挟持装置としての機能が実現される。
【0017】
ところで、
図1及び
図2においては、筐体11と筐体12とが接近している状態が図示されているが、ユーザが操作箇所14を把握しない場合には、筐体11と筐体12とが離間するように、不図示のバネ等で付勢されていることが好ましい。
【0018】
(プレート2)
筐体11,12は、その内側11b,12bに、操作箇所14に対するユーザの把握開放動作に伴って、互いに接触又は離間可能な一対のプレート2を備える。
図2においては、一対のプレート2は、筐体11に設けられた第1のプレート21と、筐体12に設けられた第2のプレート22とから構成される。
【0019】
図3は、毛髪挟持装置1の斜視図であって、特に筐体11の内側11bに設けられた第1のプレート21を示している。
図4は、筐体11の内側11bの態様を示す平面図である。
図3及び
図4に示されるように、第1のプレート21は、作用箇所15の大部分を占めるように、筐体11の内側11bに設けられている。また、第1のプレート21は、筐体11の長手方向である方向Xが自身の長手方向となるように、矩形状に形成されている。
【0020】
図5は、毛髪挟持装置1の斜視図であって、特に筐体12の内側12bに設けられた第2のプレート22を示している。
図6は、筐体12の内側12bの態様を示す平面図である。
図5及び
図6に示されるように、第2のプレート22は、作用箇所15の両側の大部分を占めるように、筐体12の内側12bに2つ設けられている。また、2つの第2のプレート22は、筐体12の長手方向である方向Xが自身の長手方向となるように、矩形状に形成されている。2つの第2のプレート22の間には、凹部16が形成されている。凹部16については、後に詳述する。
【0021】
このような、第1のプレート21及び第2のプレート22からなる一対のプレート2の少なくとも一方が、ユーザの把握動作によって毛髪を挟持し、毛髪に対して加熱と通電によるイオンの導出入とを実行可能に構成されている。加熱と通電とについては、後に詳述する。
【0022】
ここで好ましくは、プレート2は、筐体11,12に対して位置又は向きが可変に構成されている。換言すると、プレート2は、可動領域を有するように構成されるとよい。より具体的には、プレート2は、位置又は向きが2軸、例えば方向X及び方向Yに可変に構成されているとよい。
図4を参照すると、第1のプレート21が、例えば辺SX又は軸AXを略支軸(場合によっては略支点)とし、紙面方向に回転又は傾斜変位するように実施されるとよい。回転角又は傾斜角は10度以下等の微小な角度であることが好ましい。同様に、辺SY又は軸AYを略支軸(場合によっては略支点)とし、紙面方向に回転又は傾斜変位するように実施されるとよい。あるいは、第1のプレート21が方向X及び方向Yの2軸方向に、微小な範囲で並進変位可能に構成されるとよい。
【0023】
一方、
図6を参照すると、2つの第2のプレート22が、例えば辺SX1,SX2又は軸AX1,AX2それぞれを略支軸(場合によっては略支点)とし、紙面方向に回転又は傾斜変位するように実施されるとよい。回転角又は傾斜角は10度以下等の微小な角度であることが好ましい。同様に、辺SY又は軸AYを略支軸(場合によっては略支点)とし、紙面方向に回転変位するように実施されるとよい。あるいは、2つの第2のプレート22が方向X及び方向Yの2軸方向に、微小な範囲で並進変位可能に構成されるとよい。
【0024】
このように位置又は向きを変位させる内部構成は特に限定されず、例えば、矩形状に形成されたプレート2の4つの頂点近傍のうちの少なくとも3箇所を、バネ等の弾性部材やゴム等の伸縮部材によって固定すればよい。これにより、2軸の並進変位と、回転又は傾斜変位とを同時に実現することができる。
【0025】
ところで、回転又は傾斜変位させる角度は、10度以下であることが好ましい。この角度は、具体的には例えば、10,9.7,9.4,9.1,8.8,8.5,8.2,7.9,7.6,7.3,7,6.7,6.4,6.1,5.8,5.5,5.2,4.9,4.6,4.3,4,3.7,3.4,3.1,2.8,2.5,2.2,1.9,1.6,1.3,1,0.9,0.8,0.7,0.6,0.5,0.4,0.3,0.2,0.1度であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0026】
また、並進変位させる距離は、プレート2の短手方向である方向Yの長さの0.5倍以下であることが好ましい。この比は、具体的には例えば、0.5,0.4,0.3,0.2,0.1,0.09,0.08,0.07,0.06,0.05,0.04,0.03,0.02,0.01,0.009,0.008,0.007,0.006,0.005,0.004,0.003,0.002,0.001であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0027】
このようにプレート2の位置又は向きが2軸に可変に構成されていることで、毛髪を挟持して移動させる際のユーザの操作感を向上させることができる。また、ユーザの過度な力が、プレート2の変位によって伝わらない構造となっているため、誤って被検者の毛髪が抜かれてしまうという事態が抑制される。その結果、被検者の痛みも緩和されることとなる。
【0028】
また、前述の通り、筐体12の内側12bには凹部16が設けられている。ここでは、凹部16は2つの第2のプレート22の間に挟まれた位置に長尺に1つ形成されている。換言すると、凹部16は、一対のプレート2の長手方向である、方向Xに沿って形成されている。もちろん、形状や数はこの限りではない。
【0029】
毛髪挟持装置毛髪におけるキューティクルの内部には、水分が含まれている。しかし、プレート2によって毛髪が挟持された状態で加熱されると、毛髪において、いわゆる水蒸気爆発と呼ばれる急激な水分蒸発を引き起こすことがある。特に、加熱によって毛髪の表面のキューティクルが開いているため、必要な毛髪内の水分を過度に蒸発させてしまったり、場合によっては、栄養素も抜けてしまうこと等が想定されうる。さらに、毛髪の表面が濡れた状態で、毛髪がプレート2に挟持されると、このような水蒸気爆発によって毛髪にダメージを引き起こすことがある。本実施形態では、凹部16を内側12bに設けることで、密閉度を減少させ、水蒸気爆発を抑制することができる。
【0030】
図7は、プレート2に含まれる機能部材を示すブロック図である。
図7に示されるように、プレート2は、ヒータ23を備えている。ヒータ23は、毛髪挟持装置1の電源がオンになっている状態で、電気エネルギーをジュール熱に変換し、毛髪を加熱することができる。プレート2の温度は、例えば、40~230度とすることが可能であり、施術ごとに適した温度を設定可能であるとよい。特に、プレート2の温度を50~70度程度とすることが好ましい。最も好ましくは、プレート2の温度は、60度である。プレート2の温度は、具体的には例えば、50,51,52,53,54,55,56,57,58,59,60,61,62,63,64,65,66,67,68,69,70度であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。毛髪にトリーメント用の薬剤を塗布した状態で、60度程度に加熱されたプレート2が毛髪に当てられることで、薬剤の浸透効果を高めることができる。
【0031】
また、
図7に示されるように、一対のプレート2の少なくとも一方には、発光素子24が含まれている。発光素子24は、例えば、赤色や赤外の発光ダイオードである。好ましくは、発光素子24によって照射される光の波長は、590~780nmであり、さらに好ましくは、600~650nmである。光の波長は、具体的には例えば、590,595,600,605,610,615,620,625,630,635,640,645,650,655,660,665,670,675,680,685,690,695,700,705,710,715,720,725,730,735,740,745,750,755,760,765,770,775,780nmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。このように加熱するだけではなく、所定の波長を有する光を毛髪に照射することで、毛髪のキューティクルを効果的に開くことができる。
【0032】
さらに、
図7に示されるように、プレート2には、導電部3の一例である第1の導電部31が設けられている。これについては、次にさらに説明する。
【0033】
(導電部3)
毛髪挟持装置1は、導電部3の一例である第1の導電部31と、第2の導電部32とを備えている。第1の導電部31は、一対のプレート2の一方、例えば第1のプレート21に設けられる。第1の導電部31と第2の導電部32との間で通電させることで、イオンの導出入を実行するように構成される。このような態様により、毛髪挟持装置1にイオンの導出入機能を持たせ、毛髪に対してより良い美容効果を与えることができる。特に、前述のヒータ23によって60度程度に加熱された状態で、イオンの導出入を実施することが好ましい。
【0034】
導電部3の形態は特に限定されるものではないが、好ましくは、第1の導電部31は、プレート2に対するコーティングである。導電性を有するコーティングは、例えば、導電性ウレタン、フッ素樹脂等によるコーティングが挙げられるが、好ましくは、セラミックコーティング、テフロンコーティング、シリコンコーティング等のすべりの良い素材が採用されるとよい。すなわち、プレート2が第1の導電部31として機能するようにシリコンコーティングが施されているとよい。第1の導電部31を、導電性を有するコーティングとすることで、プレート2全体に導電性を持たせ、挟持した際に毛髪全体にイオンの導出入を行うことができる。また、電極がないことによる意匠性の向上もはかられる。
【0035】
また、第2の導電部32を、第1の導電部31と同じくプレート2に設けてもよいが、好ましくは、
図2、
図3及び
図5に示されるように、第2の導電部32は、筐体11,12の少なくとも一部、例えば操作箇所14を含むヒンジ13の付近に設けられ、ユーザの手指と接触可能に構成される。このような第2の導電部32は、電極として構成され、手元電極と称してもよい。特にユーザが被検者自身であれば、手元電極を採用することで、手元と、毛髪との間でイオンの導出入が実行され、毛髪だけでなく、被検者の身体に美容効果を与えることができる。
【0036】
2.電気的構成
本節では、毛髪挟持装置1の電気的構成について説明する。まず、
図1及び
図2に示されるように、毛髪挟持装置1は、ケーブル5を有し、ケーブル5を介して電力を供給されている。
図8は、毛髪挟持装置1が有する電気的構成を示すブロック図である。
図8に示されるように、毛髪挟持装置1は、通信部41と、記憶部42と、制御部43とを備え、これらの構成要素が通信バス40を介して接続されている。
【0037】
通信部41は、毛髪挟持装置1と外部機器との間で情報通信を実行することができる。これにより、毛髪挟持装置1のファームウェアのバージョンを更新することや、ユーザのスマートフォン等との機能連携を行うことができる。記憶部42は、前述の記載により定義される様々な情報を記憶する。これは、例えば、制御部43によって実行される毛髪挟持装置1に係る種々のプログラム等又はプログラムの演算に係る一時的に必要な情報(引数、配列等)を記憶する揮発性又は不揮発性のメモリとして実施されうる。また、これらの組合せであってもよい。制御部43は、毛髪挟持装置1に関連する全体動作の処理・制御を行う。制御部43は、例えば不図示のマイコンやCPUである。制御部43は、記憶部42に記憶された所定のプログラムを読み出すことによって、毛髪挟持装置1に備えられた種々の機能を実現する。
【0038】
毛髪挟持装置1に実行させる機能は、制御部43によって自動的に選択されてもよいし、不図示のスイッチ等によってユーザによって選択されてもよい。かかる機能とは、ヒータ23による加熱でもよいし、発光素子24による遠赤外光の照射でもよいし、導電部3によるイオンの導出入でもよい。
【0039】
さらに具体的には、毛髪挟持装置1は、制御部43は、イオンの導出入に係る通電の態様を制御するように構成される。このような態様により、毛髪挟持装置1が毛髪の状態等に合わせて適切なイオンの導出入を行うことができる。好ましくは、この制御部43は、極性を所定のタイミングで又は無作為に入れ替えた通電を実行させてもよい。このような態様により、毛髪にダメージを与える静電気を除去することができる。さらに好ましくは、制御部43は、極性を交互に入れ替えてもよいし、かたよりをもたせて入れ替えてもよい。例えば、正を2パルス、負を1パルスのようにかたよらせることで、静電気の除去をしつつイオン導出入の効果をも高めることができる。
【0040】
本実施形態によれば、操作性を向上させ、毛髪への負担を抑制し且つむしろ毛髪へ良い影響を与えることができる毛髪挟持装置1を提供することができる。
【0041】
3.その他
本実施形態に係る毛髪挟持装置1を、次のような態様で実施してもよい。
【0042】
(1)導電性を有するコーティングに代えて、第1の導電部31が電極であってもよい。より具体的には、第1の導電部31を、プレート2に設けられた電極として採用してもよい。
図9は、プレート2に電極である第1の導電部31を設けた態様を示す図である。
図9に示されるように、プレート2の中央部に矩形状に第1の導電部31が形成されている。このような態様によっても、被検者の毛髪にイオンの導出入を実行することができる。特に、第1の導電部31は、プレート2から突出した凸形状としてもよい。凸形状の高さは、好ましくは、0.01~5mmであり、具体的には例えば、0.01,0.02,0.03,0.04,0.05,0.06,0.07,0.08,0.09,0.1,0.2,0.3,0.4,0.5,0.6,0.7,0.8,0.9,1,1.1,1.2,1.3,1.4,1.5,1.6,1.7,1.8,1.9,2,2.1,2.2,2.3,2.4,2.5,2.6,2.7,2.8,2.9,3,3.1,3.2,3.3,3.4,3.5,3.6,3.7,3.8,3.9,4,4.1,4.2,4.3,4.4,4.5,4.6,4.7,4.8,4.9,5mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。このような凸形状とすることで、プレート2が毛髪に接触するとき、第1の導電部31がより確実に毛髪に接触するので、イオンの導出入をより効果的に行うことができる。
【0043】
(2)第2の導電部32も電極であってよい。
図10は、プレート2に電極である第1の導電部31及び第2の導電部32を設けた態様を示す図である。より具体的には、第2の導電部32は、第1の導電部31とともに一対のプレート2の一方に設けられている。また、第1の導電部31と、第2の導電部32とは、プレート2の両端に形成されている。
図10に示されるように、プレート2の両端に矩形状に第1の導電部31及び第2の導電部32が形成されている。このような態様によっても、被検者の毛髪にイオンの導出入を実行することができる。特に、第1の導電部31と、第2の導電部32とは、プレート2よりも低く形成されてもよい。あるいは、第1の導電部31と、第2の導電部32とは、外側にいくにしたがって湾曲する湾曲面を有していてもよい。これらの態様によって、ユーザが毛髪挟持装置1を移動させる際の微小な傾きによって、より自然に毛髪と導電部3とが接触することとなる。これにより、毛髪を強い力で挟み込んだ事による痛みの軽減とイオン導出入効果の両立をはかることができる。
【0044】
(3)第1の導電部31及び第2の電極部が電極である場合に、第2の導電部32は、一対のプレート2の他方、例えば第2のプレート22に設けられてもよい。
図11は、第1のプレート21に電極である第1の導電部31を設け、第2のプレート22に第2の導電部32を設けた態様を示す図である。
図11に示されるように、第1のプレート21の中央部に矩形状に第1の導電部31が形成され、第2のプレート22の中央部に矩形状に第2の導電部32が形成されている。このような態様によっても、被検者の毛髪にイオンの導出入を実行することができる。特に両側から挟持してイオンの導出入を行うことで、効率的なイオンの導出入が実現されうる。
【0045】
(4)凹部16とは異なる凹部が、一対のプレート2の短手方向である、方向Yに沿って、複数形成されていてもよい。このような構成とすることで、毛髪を挟持したまま毛髪挟持装置1を移動させる際に、櫛のような感覚をユーザに提供することができ、操作性の向上がはかられる。同様に、内側11b,12bの端部に、シリコンや金属の凹凸部を有する不図示の櫛部を設けてもよい。これにより、毛髪挟持装置1を用いるだけで、ユーザは、被検者の毛髪の仕上げ艶出しのためのブラッシングを実施することができる。
【0046】
(5)本実施形態において、一対のプレート2の両方が、筐体11,12に対して2軸に位置又は向きが可変に構成されているが、これに代えて、一対のプレート2のうちの何れか一方が、筐体11,12の何れか一方に対して2軸に位置又は向きが可変に構成されていてもよい。さらに、一対のプレート2のうちの何れか一方又は両方の位置又は向きが、1軸、例えば方向X又は方向Yに可変であるようにしてもよい。
【0047】
(6)本実施形態では、プレート2で毛髪を挟持して加熱する説明をしたが、これに限らず超音波による処理など毛髪に好ましい効果をもたらす別の処理を行うように実施してもよい。
【0048】
(7)本実施形態において、手元電極と称した第2の導電部32を操作箇所14に設けるものとしたが、あくまれも一例であり、筐体11,12の一部において構成すればよい。筐体の形状によって処理中に手指が触れやすい箇所に構成する事が好ましい。
【0049】
(8)第1の導電部31が矩形状を有するものとして示したが、これに限らず円形や多角形であってもよい。例えば、第1の導電部31を楕円形で構成すれば、第1の導電部31の上端及び下端での処理の程度を弱くし、毛髪が大量に重なる中央部での処理の程度を高くする等、設計の自由度を高めることができる。
【0050】
(9)第1の導電部31及び第2の導電部32の表面に凹凸を設けることで、より髪への接地面積を広げるように実施してもよい。
【0051】
さらに、次に記載の各態様で提供されてもよい。
前記毛髪挟持装置において、第1の導電部と、第2の導電部とをさらに備え、前記第1の導電部は、前記一対のプレートの一方に設けられ、前記第1の導電部と前記第2の導電部との間で通電させることで、前記イオンの導出入を実行するように構成される、もの。
前記毛髪挟持装置において、前記第1の導電部は、一対のプレートに対するコーティングである、もの。
前記毛髪挟持装置において、前記第2の導電部は、前記筐体の少なくとも一部に設けられ、前記ユーザの手指と接触可能に構成される、もの。
前記毛髪挟持装置において、前記第1の導電部及び前記第2の導電部は、電極であり、前記第2の導電部は、前記第1の導電部とともに前記一対のプレートの一方に設けられ、前記第1の導電部と、前記第2の導電部とは、前記プレートの両端に形成される、もの。
前記毛髪挟持装置において、前記第1の導電部及び前記第2の導電部は、電極であり、前記第2の導電部は、前記一対のプレートの他方に設けられる、もの。
前記毛髪挟持装置において、前記一対のプレートの少なくとも一方に、発光素子を備える、もの。
前記毛髪挟持装置において、前記筐体の内側に凹部が設けられる、もの。
前記毛髪挟持装置において、前記凹部は、前記一対のプレートの長手方向に沿って形成される、もの。
前記毛髪挟持装置において、前記一対のプレートは、前記位置又は向きが2軸に可変に構成される、もの。
前記毛髪挟持装置において、制御部をさらに備え、前記制御部は、前記イオンの導出入に係る通電の態様を制御するように構成される、もの。
前記毛髪挟持装置において、前記制御部は、極性を所定のタイミングで又は無作為に入れ替えた通電を実行させる、もの。
もちろん、この限りではない。
【0052】
最後に、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0053】
1 :毛髪挟持装置
11 :筐体
11a :外側
11b :内側
12 :筐体
12a :外側
12b :内側
13 :ヒンジ
14 :操作箇所
15 :作用箇所
16 :凹部
2 :プレート
21 :第1のプレート
22 :第2のプレート
23 :ヒータ
24 :発光素子
3 :導電部
31 :第1の導電部
32 :第2の導電部
40 :通信バス
41 :通信部
42 :記憶部
43 :制御部
5 :ケーブル
AX :軸
AX1 :軸
AX2 :軸
AY :軸
SX :辺
SX1 :辺
SX2 :辺
SY :辺
X :方向
Y :方向