IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ TDK株式会社の特許一覧

特許7491838誘電体組成物、誘電体素子および電子部品
<>
  • 特許-誘電体組成物、誘電体素子および電子部品 図1
  • 特許-誘電体組成物、誘電体素子および電子部品 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】誘電体組成物、誘電体素子および電子部品
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/495 20060101AFI20240521BHJP
   H01G 4/12 20060101ALI20240521BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20240521BHJP
   H01B 3/12 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
C04B35/495
H01G4/12 090
H01G4/30 515
H01G4/30 201L
H01B3/12
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020219625
(22)【出願日】2020-12-28
(65)【公開番号】P2022104423
(43)【公開日】2022-07-08
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】野村 涼太
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-135258(JP,A)
【文献】特開2019-099427(JP,A)
【文献】特開2020-037490(JP,A)
【文献】特開2020-038853(JP,A)
【文献】特開2018-104209(JP,A)
【文献】国際公開第2017/163845(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/495
C04B 35/462
H01G 4/12
H01G 4/30
H01B 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式A6-x(Ge1-yx+28-x30+σで表され、タングステンブロンズ型結晶構造を有する複合酸化物を主成分として含む誘電体組成物であって、
Aは、Ba、CaおよびSrからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素、
Bは、Y、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素、
Cは、ZrおよびTiからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素、
Dは、NbおよびTaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素であり、
xおよびyが、0≦x≦3、0.001≦y≦0.04である関係を満足する誘電体組成物。
【請求項2】
前記誘電体組成物は、前記複合酸化物を含む誘電体粒子と、前記誘電体粒子間に存在する粒界と、を有し、
前記誘電体粒子におけるGeの平均濃度をC1質量%とし、前記粒界におけるGeの平均濃度をC2質量%としたときに、C1およびC2が、C1/C2>10である関係を満足する請求項1に記載の誘電体組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の誘電体組成物を備える誘電体素子。
【請求項4】
請求項1または2に記載の誘電体組成物を含む誘電体層と、電極と、を備える電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体組成物、当該誘電体組成物を備える誘電体素子、および、当該誘電体組成物から構成される誘電体層と電極とを備える電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の一例としての積層セラミックコンデンサは、その信頼性の高さやコストの安さから多くの電子機器に搭載されている。
【0003】
具体的な電子機器としては、携帯電話等の情報端末、家電、自動車電装品が挙げられる。この中でも車載用として使用される積層セラミックコンデンサは、家電や情報端末等に使用されている積層セラミックコンデンサに比べて、より高温域までの動作保証が求められている。
【0004】
特許文献1は、(Ba1-x-y,Ca,Sr)(Ti1-a,Ge)Oで表わされるペロブスカイト化合物を主成分として含み、かつ、主成分1mol部に対して、Si化合物をSi換算で0<Si≦0.20mol部含有する誘電体セラミックを開示している。また、特許文献1には、当該誘電体セラミックの125℃で60V印加時の絶縁抵抗の経時変化から求められる高温負荷寿命が良好であると記載されている。
【0005】
特許文献2は、化学式(A6-xx+28-x30、0≦x≦5)で表され、AがBa等、BがY等、CがTi等、DがNb等である主成分と、第1副成分としてのGeの酸化物を主成分100モルに対して2.50モル以上20.0モル以下含む誘電体組成物を開示している。また、特許文献2には、225℃における比抵抗および250℃で40V/μm印加時の絶縁抵抗の経時変化から求められる高温負荷寿命が良好であると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-25592号公報
【文献】特開2018-135258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の誘電体セラミックの高温負荷寿命は125℃において評価されており、たとえば150℃以上の高温度域における比抵抗については評価されていない。さらに、特許文献1に記載の誘電体セラミックの比誘電率は評価されていない。
【0008】
また、特許文献2に記載の誘電体組成物は比誘電率が不十分であった。
【0009】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、比誘電率が高く、高温度域において高い比抵抗を示す誘電体組成物と、その誘電体組成物から構成される誘電体層と電極とを備える電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の態様は以下の通りである。
[1]化学式A6-x(Ge1-yx+28-x30+σで表され、タングステンブロンズ型結晶構造を有する複合酸化物を主成分として含む誘電体組成物であって、
Aは、Ba、CaおよびSrからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素、
Bは、Y、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素、
Cは、ZrおよびTiからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素、
Dは、NbおよびTaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素であり、
xおよびyが、0≦x≦3、0.001≦y≦0.04である関係を満足する誘電体組成物である。
【0011】
[2]誘電体組成物は、複合酸化物を含む誘電体粒子と、誘電体粒子間に存在する粒界と、を有し、
誘電体粒子におけるGeの平均濃度をC1質量%とし、粒界におけるGeの平均濃度をC2質量%としたときに、C1およびC2が、C1/C2>10である関係を満足する[1]に記載の誘電体組成物である。
【0012】
[3][1]または[2]に記載の誘電体組成物を備える誘電体素子である。
【0013】
[4][1]または[2]に記載の誘電体組成物を含む誘電体層と、電極と、を備える電子部品である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、比誘電率が高く、高温度域において高い比抵抗を示す誘電体組成物と、その誘電体組成物から構成される誘電体層と電極とを備える電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの断面図である。
図2図2は、本発明の実施例において、図2に示す線分上におけるGeの点分析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を、具体的な実施形態に基づき、以下の順序で詳細に説明する。
1.積層セラミックコンデンサ
1.1.積層セラミックコンデンサの全体構成
1.2.誘電体層
1.3.内部電極層
1.4.外部電極
2.誘電体組成物
2.1.複合酸化物
3.積層セラミックコンデンサの製造方法
4.本実施形態のまとめ
5.変形例
【0017】
(1.積層セラミックコンデンサ)
(1.1.積層セラミックコンデンサの全体構成)
本実施形態に係る電子部品の一例としての積層セラミックコンデンサ1が図1に示される。積層セラミックコンデンサ1は、誘電体層2と、内部電極層3と、が交互に積層された構成の素子本体10を有する。この素子本体10の両端部には、素子本体10の内部で交互に配置された内部電極層3と各々導通する一対の外部電極4が形成してある。素子本体10の形状に特に制限はないが、通常、直方体状とされる。また、素子本体10の寸法にも特に制限はなく、用途に応じて適当な寸法とすればよい。
【0018】
(1.2.誘電体層)
誘電体層2は、後述する本実施形態に係る誘電体組成物から構成されている。その結果、誘電体層2を有する積層セラミックコンデンサは、比誘電率が高く、高温度域においても高い比抵抗を示すことができる。
【0019】
誘電体層2の1層あたりの厚み(層間厚み)は特に限定されず、所望の特性や用途等に応じて任意に設定することができる。通常は、層間厚みは100μm以下であることが好ましく、より好ましくは30μm以下である。本実施形態では、層間厚みの下限は、特に制限されないが、たとえば0.5μm程度である。また、誘電体層2の積層数は特に限定されないが、本実施形態では、たとえば20以上であることが好ましく、50以上であることがより好ましい。
【0020】
(1.3.内部電極層)
本実施形態では、内部電極層3は、各端面が素子本体10の対向する2端部の表面に交互に露出するように積層してある。
【0021】
内部電極層3に含有される導電材としては特に限定されない。本実施形態では、Ni、Ni系合金、CuまたはCu系合金が好ましい。より好ましくは、NiまたはNi系合金である。さらに好ましくは、内部電極層3の主成分をNiまたはNi系合金とし、副成分としてAl、Si、Li、CrおよびFeから選択される1種以上を含有する導電材である。なお、内部電極層3の主成分とは、内部電極層3全体に対して85質量%以上含有される成分を指す。
【0022】
内部電極層3が、主成分としてNiまたはNi系合金を含有し、副成分としてAl、Si、Li、CrおよびFeから選択される1種以上を含有することで、内部電極層3に含まれるNiが酸化されにくくなる。そして、250℃程度の高温下で積層セラミックコンデンサ1を連続使用しても内部電極層3の酸化による内部電極層3の連続性および導電性の劣化が起こりにくくなる。
【0023】
内部電極層3が副成分としてAl、Si、Li、CrおよびFeから選択される1種以上を含有することで、内部電極層3に含まれるNiが酸化されにくくなる理由は下記の通りである。内部電極層3がAl、Si、Li、CrおよびFeから選択される1種以上を含有する場合には、Niが大気中の酸素と反応しNiOになる前に、上記副成分と酸素とが反応し、内部電極3に含まれるNiの表面に上記副成分の酸化膜を形成する。これにより、大気中の酸素は酸化膜を通過しないとNiと反応できなくなるため、Niが酸化され難くなる。
【0024】
なお、内部電極層3には、P等の各種微量成分が0.1質量%程度以下含まれていてもよい。また、内部電極層3は、市販の電極用ペーストを使用して形成してもよい。内部電極層3の厚さは用途等に応じて適宜決定すればよい。
【0025】
(1.4.外部電極)
外部電極4に含有される導電材は特に限定されない。たとえばNi、Cu、Ag、Pd、Pt、Auあるいはこれらの合金、導電性樹脂など公知の導電材を用いればよい。外部電極4の厚さは用途等に応じて適宜決定すればよい。
【0026】
(2.誘電体組成物)
本実施形態に係る誘電体組成物は、タングステンブロンズ型結晶構造を有する複合酸化物を主成分として含有している。具体的には、複合酸化物は、本実施形態に係る誘電体組成物100mol%中に、50mol%よりも多く含有され、75mol%以上含まれることが好ましい。
【0027】
(2.1.複合酸化物)
当該複合酸化物は、化学式A6-x(Ge1-yx+28-x30+σで表される。化学式において、「A」元素と、「B」元素と、Ge(ゲルマニウム)および「C」元素と、「D」元素と、は、イオン価数を基準として分けられている。具体的には、「A」元素は2価の元素であり、「B」元素は3価の元素であり、Geおよび「C」元素は4価の元素であり、「D」元素は5価の元素である。
【0028】
本実施形態では、「A」元素は、Ba(バリウム)、Ca(カルシウム)およびSr(ストロンチウム)からなる群から選ばれる少なくとも1つの元素である。「A」元素は、Baを少なくとも含むことが好ましく、Baであることがより好ましい。
【0029】
また、「B」元素は、Y(イットリウム)、La(ランタン)、Pr(プラセオジム)、Nd(ネオジム)、Sm(サマリウム)、Eu(ユウロピウム)、Gd(ガドリニウム)、Tb(テルビウム)、Dy(ジスプロシウム)、Ho(ホルミウム)、Er(エルビウム)、Tm(ツリウム)、Yb(イッテルビウム)およびLu(ルテチウム)からなる群から選ばれる少なくとも1つの元素である。「B」元素は、Laを少なくとも含むことが好ましく、Laであることがより好ましい。
【0030】
また、「C」元素は、Zr(ジルコニウム)およびTi(チタン)からなる群から選ばれる少なくとも1つの元素である。「C」元素は、Zrを少なくとも含むことが好ましく、ZrおよびTiを含むことがより好ましい。
【0031】
また、「D」元素は、Nb(ニオブ)およびTa(タンタル)からなる群から選ばれる少なくとも1つの元素である。比誘電率の観点からは、Nbを含むことが好ましく、比抵抗の観点からは、Taを含むことが好ましい。
【0032】
化学式において、「x」は「B」元素の原子数の構成比を示している。本実施形態では、「x」は0≦x≦3である関係を満足する。すなわち、上記の複合酸化物は「B」元素を含んでいなくてもよい。「x」が上記の範囲内である場合、複合酸化物の結晶構造がタングステンブロンズ型結晶構造になりやすい傾向にある。
【0033】
また、「A」元素の構成比(6-x)、Geと「C」元素との合計構成比(x+2)、および、「D」元素の構成比(8-x)は、通常、「x」の値に対応している。しかしながら、複合酸化物がタングステンブロンズ型結晶構造を有している限りにおいて、これらの構成比は、「x」の値に対して一義的に対応しなくてもよい。すなわち、「B」元素の原子数の構成比(x)に対して、「A」元素の構成比は「6-x+α」と表すことができ、Geと「C」元素との合計構成比は「x+2+β」と表すことができ、「D」元素の構成比は「8-x+γ」と表すことができる。本実施形態では、「α」、「β」および「γ」は、独立して、-0.10<α<0.10、-0.10<β<0.10、-0.10<γ<0.10である関係を満足する。
【0034】
化学式において、「y」は、4価の元素の原子数の合計を1としたとき、Geの構成比を示している。本実施形態では、「y」は0.001≦y≦0.04である関係を満足する。「y」は0.005以上であることが好ましく、0.015以上であることがより好ましい。一方、「y」は0.03以下であることが好ましく、0.025以下であることがより好ましい。「y」が上記の範囲内である場合、誘電体組成物の比誘電率および高温度域(たとえば、175℃)における比抵抗が良好になる傾向にある。
【0035】
タングステンブロンズ型結晶構造において、Bサイトを占める元素に酸素が6配位して形成される酸素八面体が互いの頂点を共有した3次元ネットワークを形成している。さらに、酸素八面体の間隙にAサイトを占める元素が位置している。Aサイトは、配位数の違いにより、A1サイトとA2サイトとに分けられる。また、Bサイトも、酸素八面体の位置関係により、B1サイトとB2サイトとに分けられる。
【0036】
上記の複合酸化物を構成する「A」元素、「B」元素、Ge、「C」元素および「D」元素が占めるサイトは、複合酸化物がタングステンブロンズ型結晶構造を有している限り、特に制限されない。しかしながら、価数およびイオン半径等を考慮すると、通常、「A」元素および「B」元素は、Aサイトを占める傾向にあり、Ge、「C」元素および「D」元素は、Bサイトを占める傾向にある。特に、「A」元素はA1サイトを占める傾向にあり、「B」元素はA2サイトを占める傾向にあり、Geおよび「C」元素はB1サイトを占める傾向にあり、「D」元素はB2サイトを占める傾向にある。
【0037】
Geの構成比(y)が上記の範囲内である場合、すなわち、Geが「C」元素を置換する割合が上記の範囲内である場合、「C」元素の酸素八面体の歪みが大きくなり、自発分極が大きくなると考えられる。その結果、誘電体組成物の比誘電率が向上する傾向にある。
【0038】
特に、「C」元素として、ZrおよびTiが含まれている場合、Geは、Zrを置換しやすい傾向にある。GeはZrよりもイオン半径が小さいため、GeがZrを置換すると、Tiの酸素八面体が占める体積が大きくなり、自発分極がより大きくなりやすい。したがって、誘電体組成物の比誘電率がさらに向上する傾向にある。
【0039】
また、Geが誘電体組成物に含まれていると、誘電体組成物において酸素欠陥の移動が抑制される傾向にある。その結果、高温度域における誘電体組成物の比抵抗が向上する。
【0040】
本実施形態に係る誘電体組成物は多結晶体であり、上記の複合酸化物から構成される多数の誘電体粒子と、誘電体粒子間に存在する粒界と、を有している。換言すれば、タングステンブロンズ型結晶構造を有する誘電体粒子が粒界を介して結合している。
【0041】
上述したように、Geが「C」元素を置換することにより、比誘電率および比抵抗が良好な誘電体組成物が得られる。したがって、本実施形態では、Geは、粒界よりもタングステンブロンズ型結晶構造を有する誘電体粒子中に存在することが好ましい。具体的には、誘電体粒子におけるGeの平均濃度をC1質量%とし、粒界におけるGeの平均濃度をC2質量%としたときに、C1およびC2が、C1/C2>10である関係を満足することが好ましい。
【0042】
このような関係が満足されれば、誘電体粒子中のGe量が粒界中のGe量よりも多くなるため、Geがタングステンブロンズ型結晶構造のB1サイトに存在する確率が高くなる。その結果、上述した効果が得られやすい。C1/C2は20以上であることがより好ましく、35以上であることがさらに好ましい。
【0043】
誘電体組成物において、誘電体粒子におけるC1と、粒界におけるC2とを測定する方法としては、本実施形態では以下のような方法が例示される。
【0044】
まず、誘電体組成物の任意の断面において、走査型透過電子顕微鏡(STEM)を用いて、誘電体粒子と誘電体粒子間の粒界とを特定する。観察倍率は、試料である誘電体組成物の状態に応じて、誘電体粒子および粒界を明確に特定できるように決定すればよい。また、誘電体粒子および粒界を特定する方法としては、たとえば、誘電体粒子と粒界とのコントラストの差を用いて特定する方法が例示される。
【0045】
次に、誘電体粒子と粒界とを含む領域において、2つの誘電体粒子と、その間に存在する粒界とを通る線分を設定する。線分の長さは、誘電体粒子中のGe濃度と、粒界中のGe濃度とを明確に区別して測定可能な長さであれば特に制限されない。その線分に対して、STEMに付属のエネルギー分散型X線分光装置(EDS)を用いて十分密な間隔で点分析を行う。本実施形態では、たとえば、設定した線分上において1~2nmの間隔で数十点以上点分析を行うことが好ましい。
【0046】
得られた点分析結果から、誘電体粒子に対応する線分上におけるGe濃度の平均値を算出し、粒界に対応する線分上におけるGe濃度の平均値を算出する。このような点分析を3~15回行い、それらの平均値を、誘電体粒子におけるGeの平均濃度(C1)と、粒界におけるGeの平均濃度(C2)とする。得られたC1およびC2から、C1/C2が算出される。
【0047】
(3.積層セラミックコンデンサの製造方法)
次に、図1に示す積層セラミックコンデンサ1の製造方法の一例について以下に説明する。
【0048】
本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ1は、従来の積層セラミックコンデンサと同様の公知の方法で製造することができる。公知の方法としては、たとえば、誘電体組成物の原料を含むペーストを用いてグリーンチップを作製し、これを焼成して積層セラミックコンデンサを製造する方法が例示される。以下、製造方法について具体的に説明する。
【0049】
まず、誘電体組成物の出発原料を準備する。本実施形態では、当該出発原料は粉末であることが好ましい。誘電体組成物の出発原料として、主成分の仮焼き粉末を準備する。
【0050】
主成分の仮焼き粉末の出発原料としては、主成分である上述した複合酸化物に含まれる各金属の酸化物、または、焼成により当該複合酸化物を構成する成分となる各種化合物を用いることができる。各種化合物としては、たとえば炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物等が例示される。
【0051】
たとえば、「A」元素の炭酸塩粉末、「B」元素の水酸化物粉末または酸化物粉末、Geおよび「C」元素の酸化物粉末、「D」元素の酸化物粉末を準備する。なお、各粉末の平均粒子径は、焼成後の複合酸化物を構成する誘電体粒子の粒子径が、たとえば、200~300nm程度となるように調整すればよい。
【0052】
本実施形態では、Geの酸化物粉末としては、Geと、「A」元素、「B」元素、「C」元素および「D」元素から選ばれる少なくとも1つの元素と、の複合酸化物粉末であることが好ましい。代表的なGeの単一酸化物であるGeOは融点がグリーンチップの焼成温度よりも低いので、GeOがグリーンチップの焼成時に液相化し、粒界に析出しやすいからである。すなわち、Geが誘電体粒子に固溶しにくくなる。
【0053】
Geと「A」元素等との複合酸化物としては、BaGeO、LaGe、LaGe、9Nb・GeO等が例示される。
【0054】
続いて、準備した出発原料を上述した組成となるように秤量した後、ボールミル等を用いて所定の時間、湿式混合を行う。混合粉を乾燥後、大気中において熱処理を行い、主成分である複合酸化物の仮焼き粉末を得る。本実施形態では、熱処理温度は1050~1200℃の範囲であることが好ましい。このような温度範囲で熱処理することにより、Geの酸化物粉末がGeOである場合であっても、熱処理において他の主成分元素と反応しやすくなる。したがって、熱処理後の複合酸化物の前駆体として、Geと他の主成分元素とが反応した前駆体が得られやすい。このような前駆体を含むグリーンチップを焼成しても、Geは粒界に析出しにくく、誘電体粒子に固溶しやすい。また、Geの酸化物粉末が、上述したGeと「A」元素等との複合酸化物である場合、上記の温度範囲で熱処理すると、Geが誘電体粒子により固溶しやすいため好ましい。
【0055】
その後、得られた主成分の仮焼き粉末を解砕し、誘電体組成物の原料粉末を得る。誘電体組成物の原料粉末の平均粒子径は、たとえば、0.5μm~2.0μmである。
【0056】
続いて、グリーンチップを作製するためのペーストを調製する。得られた誘電体組成物原料粉末と、バインダと、溶剤と、を混練し塗料化して誘電体層用ペーストを調製する。バインダおよび溶剤は、公知のものを用いればよい。また、誘電体層用ペーストは、必要に応じて、可塑剤等の添加物を含んでもよい。
【0057】
内部電極層用ペーストは、上述した導電材の原料と、バインダと、溶剤と、を混練して得られる。バインダおよび溶剤は、公知のものを用いればよい。内部電極層用ペーストは、必要に応じて、共材や可塑剤等の添加物を含んでもよい。
【0058】
外部電極用ペーストは、内部電極層用ペーストと同様にして調製することができる。
【0059】
上記した各ペースト中のバインダおよび溶剤の含有量は特に制限はされず、通常の含有量であればよい。たとえば、バインダは1質量%~5質量%程度、溶剤は10質量%~50質量%程度であればよい。また、各ペースト中には、必要に応じて各種分散剤、可塑剤、誘電体材料、絶縁体材料等から選択される添加物が含有されていてもよい。これらの総含有量は10質量%以下とすることが好ましい。
【0060】
分散剤としては、たとえば、界面活性剤型分散剤、高分子型分散剤を用いることができる。可塑剤としては、たとえば、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチルを用いることができる。誘電体材料としては、たとえば、BaTiO系、CaZrO系を用いることができる。絶縁体材料としては、たとえば、Al、SiOを用いることができる。
【0061】
得られた各ペーストを用いて、グリーンシートおよび内部電極パターンを形成し、これらを積層してグリーンチップを得る。
【0062】
焼成前に、グリーンチップに脱バインダ処理を施す。脱バインダ条件としては、昇温速度を好ましくは5℃/時間~300℃/時間、保持温度を好ましくは180℃~500℃、温度保持時間を好ましくは0.5時間~24時間とする。また、雰囲気は、空気もしくは還元雰囲気とする。また、上記した脱バインダ処理において、脱バインダ処理の雰囲気は加湿してもよい。加湿する方法は任意である。たとえばウェッター等を使用すればよい。この場合、水温は5℃~75℃程度が好ましい。
【0063】
脱バインダ処理後、グリーンチップの焼成を行い、素子本体を得る。焼成条件としては、以下のような条件が例示される。焼成温度は、好ましくは1100℃~1400℃である。焼成温度が低すぎると、素子本体の緻密化が不十分となる。焼成温度が高すぎると、内部電極層の異常焼結による電極の途切れ、および、内部電極層を構成する材料の拡散による容量変化率の悪化が生じやすくなる。さらに、主成分から構成される粒子が粗大化して、高温負荷寿命を低下させてしまうおそれがある。
【0064】
また、昇温速度は好ましくは200℃/時間~5000℃/時間である。また、焼成時の温度保持時間、および、焼成後の冷却速度は任意である。焼成後の主成分から構成される誘電体粒子の粒度分布を0.5μm~5.0μmの範囲内に制御し、誘電体粒子同士の体積拡散を抑制するために、温度保持時間は好ましくは0.1時間~1.0時間であり、冷却速度は好ましくは100℃/時間~500℃/時間である。
【0065】
また、焼成雰囲気としては、加湿したNとHとの混合ガスを用い、酸素分圧が10-2~10-6Paであることが好ましい。内部電極層がNiを含む場合、酸素分圧が高い状態で焼成を行うと、Niが酸化してしまい、導電性が低下してしまう場合がある。しかしながら、Niを主成分とする導電材に対し、Al、Si、Li、Cr、Feから選択された1種類以上の内部電極用副成分を含有させることで、Niの耐酸化性が向上し、酸素分圧が高い雰囲気で焼成する場合でも、内部電極層の導電性を確保することが容易となる。
【0066】
焼成後、得られた素子本体に対し、必要に応じてアニール処理を行う。アニール処理条件は、公知の条件とすればよく、たとえば、アニール処理時の酸素分圧を焼成時の酸素分圧よりも高い酸素分圧とし、保持温度を1000℃以下とすることが好ましい。
【0067】
また、上記の脱バインダ処理、焼成およびアニール処理は、独立して行ってもよく、連続して行ってもよい。
【0068】
上記のようにして得られた素子本体の誘電体層を構成する誘電体組成物は、上述した誘電体組成物である。この素子本体に端面研磨を施し、外部電極用ペーストを塗布して焼き付けし、外部電極4を形成する。そして、必要に応じて、外部電極4の表面に、めっき等により被覆層を形成する。
【0069】
このようにして、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサが製造される。
【0070】
(4.本実施形態のまとめ)
本実施形態では、タングステンブロンズ型結晶構造を有する複合酸化物を主成分として有する誘電体組成物において、Geを上述した範囲内で複合酸化物中に含有させている。このようにすることにより、誘電体粒子内において、酸素欠陥の移動が阻害される。すなわち、酸素欠陥と共に生じる電子の移動も阻害される。したがって、高温度域における誘電体組成物の比抵抗が向上する。
【0071】
また、誘電体組成物において、Geが複合酸化物のB1サイトに固溶している場合、「C」元素の酸素八面体の体積が大きくなるため、自発分極が大きくなり、比誘電率が向上する。
【0072】
さらに、誘電体組成物中のGeの平均濃度C1と粒界中のGeの平均濃度C2とが上述した関係を満足することにより、GeがB1サイトに固溶する確率が高くなるので、比誘電率がさらに向上する。
【0073】
(5.変形例)
上述した実施形態では、本実施形態に係る電子部品が積層セラミックコンデンサである場合について説明したが、本実施形態に係る電子部品は、積層セラミックコンデンサに限定されず、上述した誘電体組成物を有する誘電体層と、電極と、を備える電子部品であれば何でもよい。また、上述した誘電体組成物を備える誘電体素子であってもよい。
【0074】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の範囲内において種々の態様で改変してもよい。
【実施例
【0075】
以下、実施例および比較例を用いて、本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0076】
(実験1)
まず、主成分の出発原料として、下記に示す平均粒径1.0μm以下の各粉末を準備した。「A」元素の原料としては、炭酸塩の粉末を用い、「B」元素の原料としては、水酸化物あるいは酸化物の粉末を用い、Ge、「C」元素および「D」元素の原料としては、酸化物の粉末を用いた。
【0077】
なお、試料No.1~51に関して、Geの酸化物粉末として、GeOを用いた。また、試料No.52、53および55に関して、Geの酸化物粉末として、BaGeOを用いた。また、試料No.54に関して、Geの酸化物粉末として、LaGeを用いた。また、試料No.56および57に関して、Geの酸化物粉末として、9NbO5・GeOを用いた。
【0078】
最終的に得られる誘電体組成物に含まれる複合酸化物における各元素の構成比が表1および2に示す比になるように、これらの原料を秤量して混合し、分散媒としてエタノールを用いてボールミルにより24時間湿式混合した。その後、得られた混合物を乾燥して混合原料粉末を得た。なお、試料No.50および51に関して、Geの酸化物粉末(GeO)以外の原料を混合して、混合原料粉末を得た。
【0079】
その後、大気中で保持温度1200℃、保持時間2時間の条件で熱処理を行い、主成分の仮焼き粉末を得た。
【0080】
上記の方法で得られた主成分の仮焼き粉末を解砕し、誘電体組成物原料粉末を得た。なお、試料No.50および51に関して、得られた主成分の仮焼き粉末の解砕後に、秤量したGeの酸化物粉末(GeO)を混合して、誘電体組成物原料粉末を得た。
【0081】
次に、誘電体組成物原料粉末1000gに対して、トルエン+エタノール溶液(トルエン:エタノール=50:50(重量比))、可塑剤(フタル酸ジオクチル(DOP)(ジェイ・プラス製))および分散剤(マリアリムAKM-0531(日油製))を90:6:4(重量比)で混合した溶剤を700g添加し、混合物を得た。次に、得られた混合物を、バスケットミルを用いて2時間分散させ、誘電体層用ペーストを作製した。なお、全ての試料において、誘電体層用ペーストの粘性が約200cpsになるように調整した。具体的には、トルエン+エタノール溶液を微量添加することで粘度の調整を行った。
【0082】
内部電極層の原料として、平均粒径が0.2μmのNi粉末、平均粒径が0.1μm以下のAlの酸化物粉末、および、平均粒径が0.1μm以下のSiの酸化物粉末を準備した。AlおよびSiの合計がNiに対して5質量%となるように、これらの粉末を秤量し、混合した。その後、加湿したNとHとの混合ガス中において1200℃以上で熱処理した。熱処理後の粉末をボールミル等により解砕することで、平均粒径0.20μmの内部電極層の原料粉末を準備した。
【0083】
準備した内部電極層の原料粉末100質量%、有機ビヒクル(エチルセルロース樹脂8質量%をブチルカルビトール92質量%に溶解したもの)30質量%、およびブチルカルビトール8質量%を、3本ロールにより混練、ペースト化し、内部電極層用ペーストを得た。
【0084】
そして、作製した誘電体層用ペーストをPETフィルム上に塗布してグリーンシートを形成した。この際に、乾燥後のグリーンシートの厚みが10μmとなるようにした。次いで、内部電極層用ペーストを用いて、所定パターンの内部電極層をグリーンシート上に印刷した。その後、PETフィルムからグリーンシートを剥離することで、内部電極層が所定パターンで印刷されたグリーンシートを作製した。次いで、内部電極層が所定パターンで印刷されたグリーンシートを複数枚積層し、加圧接着することによりグリーン積層体とした。さらに、グリーン積層体を所定の形状に切断することにより、グリーンチップを得た。
【0085】
次いで、得られたグリーンチップについて、脱バインダ処理、焼成およびアニール処理を行うことで積層セラミック焼成体(素子本体)を得た。脱バインダ処理、焼成およびアニールの条件は以下に示す通りである。また、脱バインダ処理、焼成およびアニール処理において、雰囲気ガスの加湿にはウェッターを用いた。
【0086】
(脱バインダ処理)
昇温速度:100℃/時間
保持温度:400℃
温度保持時間:8.0時間
雰囲気ガス:加湿したNとHとの混合ガス
【0087】
(焼成)
昇温速度:500℃/時間
焼成温度:1200℃~1350℃
温度保持時間:0.5時間
冷却速度:100℃/時間
雰囲気ガス:加湿したNとHとの混合ガス
酸素分圧:10-5~10-9Pa
【0088】
(アニール処理)
保持温度:800℃~1000℃
温度保持時間:2.0時間
昇温、降温速度:200℃/時間
雰囲気ガス:加湿したNガス
【0089】
得られた各積層セラミック焼成体の誘電体層(誘電体組成物)についてICP発光分光分析法を用いて組成分析を行った結果、分析後の組成は、表1および2に記載されている組成と同組成であることが確認できた。また、誘電体組成物に対してX線回折測定を行った結果、得られたX線回析パターンより、試料No.21の誘電体組成物はタングステンブロンズ型結晶構造を有しておらず、試料No.21以外の誘電体組成物はタングステンブロンズ型結晶構造を有していることが確認できた。
【0090】
得られた積層セラミック焼成体の端面をサンドブラストにて研磨した後、外部電極としてIn-Ga共晶合金を塗布し、図1に示す積層セラミックコンデンサと同形状の各積層セラミックコンデンサ試料を得た。得られた積層セラミックコンデンサ試料のサイズは、いずれも3.2mm×1.6mm×1.2mmであり、誘電体層の厚み7μm、内部電極層の厚み2μm、内部電極層に挟まれた誘電体層の数は50層とした。
【0091】
得られた各積層セラミックコンデンサ試料の積層方向に沿った誘電体層(誘電体組成物)の断面を研磨し、走査型透過電子顕微鏡(STEM)を用いて、研磨断面を倍率10万倍で観察し、主成分の複合酸化物から構成される誘電体粒子と、粒界と、を特定した。
【0092】
次に、2つの誘電体粒子と、その間に存在する粒界と、を含む長さ50~100nmの直線を設定し、当該直線上をSTEMに付属のエネルギー分散型X線分光装置(EDS)を用いて、1~2nm間隔で点分析を行い、Ge濃度を測定した。
【0093】
この測定を10回行い、誘電体粒子におけるGe濃度の平均値をC1、粒界におけるGe濃度の平均値をC2とした。得られたC1およびC2から、C1/C2を算出した。結果を表1および2に示す。
【0094】
また、図2に、試料No.38について行った点分析結果を示す。図2は、2つの誘電体粒子21,22と、その間に存在する粒界25と、を含む長さ50nmの直線L上におけるGeの濃度変化をグラフとして示している。
【0095】
得られた積層セラミックコンデンサ試料について、比誘電率および比抵抗を下記に示す方法により測定した。
【0096】
(比誘電率)
積層セラミックコンデンサ試料に対し、25℃において、デジタルLCRメータ(YHP社製4284A)にて、周波数1kHz、入力信号レベル(測定電圧)1Vrmsの信号を入力し、静電容量を測定した。そして、比誘電率(単位なし)を、誘電体層の厚みと、有効電極面積と、測定の結果得られた静電容量とに基づき算出した。比誘電率は高い方が好ましい。本実施例では、比誘電率が400以上である試料を良好であると判断し、500以上である試料をより好ましいと判断した。結果を表1および2に示す。
【0097】
(比抵抗)
積層セラミックコンデンサ試料に対し、175℃において、デジタル抵抗メータ(ADVANTEST社製R8340)にて、測定電圧200V、測定時間60秒の条件で絶縁抵抗を測定した。得られた絶縁抵抗の測定値、積層セラミックコンデンサ試料の電極面積および誘電体層の厚みから比抵抗を算出した。比抵抗は高いほうが好ましい。本実施例では、5.0×1012Ωcm以上である試料を良好であると判断した。結果を表1および2に示す。
【0098】
【表1】
【0099】
【表2】
【0100】
図2より、誘電体粒子中ではGe濃度が高く、粒界におけるGe濃度が非常に低くなっていることが確認できた。すなわち、Geは粒界にはほとんど存在せず、誘電体粒子中に存在していることが確認できた。
【0101】
また、表1および2より、複合酸化物がタングステンブロンズ型結晶構造を有し、Geの構成比が上述した範囲内である場合に、比誘電率が高く、175℃における比抵抗が高い積層セラミックコンデンサが得られることが確認できた。
【0102】
これに対し、複合酸化物がタングステンブロンズ型結晶構造を有していない場合、Geの構成比が上述した範囲外である場合、および、Geと「C」元素の合計構成比が上述した範囲外である場合には、比誘電率および比抵抗の少なくとも1つが低いことが確認できた。
【0103】
また、誘電体組成物に含まれるGeのうち、誘電体粒子内に存在しているGe量が、粒界に存在しているGe量よりも多く、C1/C2が上述した範囲内である場合には、比誘電率がさらに向上することが確認できた。また、Geの酸化物として、複合酸化物を用いた場合には、比誘電率および比抵抗が向上することが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本実施形態に係る誘電体組成物は、高い比誘電率と、高温度域において高い比抵抗を示すことができる。したがって、175℃程度の高温領域での使用が求められる車載用途の電子部品に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0105】
1… 積層セラミックコンデンサ
10… 素子本体
2… 誘電体層
3… 内部電極層
4… 外部電極
図1
図2