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特許7491848血液悪性腫瘍の治療のための併用免疫療法及び化学療法
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  • 特許-血液悪性腫瘍の治療のための併用免疫療法及び化学療法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】血液悪性腫瘍の治療のための併用免疫療法及び化学療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 51/10 20060101AFI20240521BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240521BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240521BHJP
   A61K 38/19 20060101ALI20240521BHJP
   A61K 31/136 20060101ALI20240521BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240521BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20240521BHJP
   A61K 31/7076 20060101ALI20240521BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240521BHJP
   A61K 101/02 20060101ALN20240521BHJP
   A61K 103/30 20060101ALN20240521BHJP
   A61K 103/00 20060101ALN20240521BHJP
   A61K 103/40 20060101ALN20240521BHJP
【FI】
A61K51/10 100
A61P35/02
A61P35/00
A61K38/19
A61K31/136
A61P43/00 121
A61K31/7068
A61K31/7076
A61K39/395 N
A61K101:02
A61K103:30
A61K103:00
A61K103:40
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020557132
(86)(22)【出願日】2019-01-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-04-01
(86)【国際出願番号】 US2019012647
(87)【国際公開番号】W WO2019136422
(87)【国際公開日】2019-07-11
【審査請求日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】62/614,658
(32)【優先日】2018-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517405552
【氏名又は名称】アクティニウム ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】バーガー マーク
【審査官】濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-500003(JP,A)
【文献】American Society of Clinical Oncology Educational Book 34,2014年05月15日,p.e126-e131,doi: 10.14694/EdBook_AM.2014.34.e126
【文献】Blood,2016年,Vol.128, No.22,#4050,http://doi.org/10.1182/blood.V128.22.4050.4050
【文献】J Hematol Oncol Pham.,2015年,Vol. 5, No. 1,p. 17-20
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
A61P 35/00
A61K 38/19
A61K 31/136
A61P 43/00
A61K 31/7068
A61K 31/7076
A61K 51/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4つの個々の化学療法剤の組み合わせと組み合わされる、対象におけるCD33を発現する細胞の成長及び/又は増殖を阻害するための医薬組成物であって、前記医薬組成物が、抗CD33標的化剤を含み、
前記4つの個々の化学療法剤が、以下、
3~7mgのクラドリビン/前記対象の1m2の体表面積/1日、
1~3gのシタラビン/前記対象の1m2の体表面積/1日、
5~15mgのミトキサントロン/前記対象の1m2の体表面積/1日、及び
100~500μgのフィルグラスチム又は顆粒球コロニー刺激因子/1日、
を含み、
前記抗CD33標的化剤が、225Acで標識されたHuM195を含み、前記抗CD33標的化剤が、0.1~10μCi/前記対象の体重kg、又は0.2~8μCi/前記対象の体重kg、又は0.5~4μCi/前記対象の体重kg、又は0.2~2.0μCi/前記対象の体重kgの放射線量で投与されるものであり、
前記 225 Acで標識されたHuM195が、単回用量で投与されるものであり、
前記CD33を発現する細胞が、芽細胞を含み、そして、
前記医薬組成物が、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群及び骨髄増殖性新生物からなる群から選択される血液学的疾患又は障害を治療するためのものであることを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
前記4つの個々の化学療法剤が、
5mgのクラドリビン/前記対象の1m2の体表面積/1日、
2gのシタラビン/前記対象の1m2の体表面積/1日、
10mgのミトキサントロン/前記対象の1m2の体表面積/1日、及び
300μgのフィルグラスチム/1日、
として投与されるものである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記4つの個々の化学療法剤が、
治療期間の1日目、2日目、3日目、4日目、及び5日目にクラドリビン、
治療期間の1日目、2日目、3日目、4日目、及び5日目にシタラビン、
治療期間の1日目、2日目、及び3日目にミトキサントロン、並びに
治療期間の0日目、1日目、2日目、3日目、4日目、及び5日目にフィルグラスチムとして前記対象に投与されるものである、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記抗CD33標的化剤が、前記治療期間の5日目~30日目、又は前記治療期間の9日目~20日目、又は前記治療期間の14日目のいずれかに投与されるものである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記抗CD33標的化剤が、16mg未満/前記対象の体重kg、又は10mg未満/前記対象の体重kg、又は6mg未満/前記対象の体重kg、又は50μg未満/前記対象の体重kg、又は20μg未満/前記対象の体重kgのタンパク質用量で投与されるものである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群及び骨髄増殖性新生物からなる群から選択される血液学的疾患又は障害を治療するための請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記対象における再発性/難治性の急性骨髄性白血病を治療するための、請求項1に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119(e)条の下で、2017年1月8日に出願された先行の米国仮出願第62/614,658号(その内容全体が本明細書に組み込まれる)の利益を主張する。
【0002】
配列リスト
本出願は、参照により本明細書に組み込まれるコンピュータ可読形式の配列表を含む。37 CFR 1.52(e)(5)及び規則13ter.1(a)に準拠してEFSを介し提出されたテキストファイル「Sequencelisting17046_ST25」は、この国際出願の一部を形成する配列リストと同一である。
【0003】
本開示の発明は、CD33のエピトープに対する免疫療法剤及び化学療法薬の投与によって増殖性障害を有する対象を治療する方法に関し、より具体的には、本発明は、血液学的疾患又は障害の治療のための抗CD33抗体及びCLAG-M化学療法薬の投与に関する。
【背景技術】
【0004】
血液悪性腫瘍は、歴史的に、高用量の化学療法及び/又は放射線を使用して治療されてきた。現在の治療プロトコルは、一般に、ビンクリスチン、カルムスチン、シタラビン、メルファラン、シクロホスファミド、ダウノルビシン、及びプレドニゾン又はデキサメタゾン等のステロイド剤等の化学療法剤の組み合わせを含む。しかしながら、そのような治療は、急性骨髄性白血病(AML)等の血液学的疾患には低い寛解率及び不良な全生存率をもたらす。
【0005】
例えば、大量化学療法に続いて自己骨髄移植又は末梢血単核細胞移植を用いる最近の進歩により、多発性骨髄腫(MM)の完全寛解率及び寛解持続期間が増加した。しかしながら、治癒の証拠は得られなかった。MMは、低い増殖率を示し、多剤耐性を獲得し、かつアポトーシスに対する高い耐性を有するため、MMに対するこれらの利用可能な化学療法治療レジメンの有効性が制限される。全ての癌の約1%、及び全ての血液悪性腫瘍の10%余りがMMに起因し得る。MM患者の大部分は数年以内に再発し、多くの場合、再発患者は救援療法に反応しない。MM患者の90%超にとって、この疾患は最終的には化学療法抵抗性となる。
【0006】
成人における再発性/難治性の急性骨髄性白血病(RR-AML)は、特に難しい治療課題である。幹細胞移植に進むために疾患の寛解を達成することを目的とした異なる救援化学療法レジメンの使用により、その治療反応は様々である。これまで普遍的に許容されたレジメンは存在しないが、CLAG-M(クラドリビン、シタラビン、ミトキサントロン、及びフィルグラスチム)、FLAG(フルダラビン、シタラビン、イダルビシン、及びフィルグラスチム)、又はMEC(ミトキサントロン、エトポシド、及びシタラビン)等の様々なレジメンが使用されてきた。CLAG-Mは、RR-AML治療に関する前向き臨床試験において、58%の形態学的完全奏効率をもたらすことが分かった。
【0007】
最近の後ろ向き試験では、RR-AMLにおいて一般的に使用される2つのレジメンである、CLAG(クラドリビン、シタラビン、及びフィルグラスチム)及びMEC(ミトキサントロン、エトポシド及びシタラビン)が比較された。Price et al.,Leukemia Research,vol.35,issue 3,pages 301-304を参照されたい。完全奏効率は、CLAG(n=97)では37.9%、MEC(n=65)では23.8%であり(P=0.048)、全生存期間中央値は、それぞれ7.3ヶ月及び4.5ヶ月であった(P=0.05)。原発性難治性疾患において、完全奏功率は、CLAGでは45.5%、MECでは22.2%であり(P=0.09)、全生存期間中央値は、それぞれ11ヶ月及び4.5ヶ月であった(P=0.07)。再発AMLを有する患者において、完全奏功率は、CLAGでは36.8%、MECでは25.9%であり(P=0.35)、全生存中央値は、それぞれ6.7ヶ月及び6.7ヶ月であった(P=0.87)。プリンヌクレオシド類似体(クラドリビン)とシタラビンの組み合わせは、白血病芽球において細胞傷害を引き起こすAra-C-5’三リン酸(ara-C TP)の細胞内蓄積を増加させる。顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の添加は、白血病細胞を活性化して化学療法の効果を受けやすくすることによって、Ara-Cと組み合わせたプリンヌクレオシド類似体の効果を更に高める。
【0008】
同じ組織又は細胞型に由来する正常細胞から癌細胞を区別する表現型変化は、正常な細胞表面構成成分の喪失又は他の構成成分(すなわち、対応する正常な非癌細胞で検出不能な抗原)の獲得を含む、特定の遺伝子産物の発現における1つ以上の変化と関連していることが多い。癌細胞によって発現される(すなわち、癌細胞内又は癌細胞上にある)が、正常細胞によっては発現されない抗原、又は正常細胞中に見られるレベルよりも実質的に高いレベルで癌細胞によって発現される抗原は、しばしば「腫瘍特異的抗原」又は「腫瘍関連抗原」と称される。そのような腫瘍特異的抗原は、腫瘍表現型のマーカーとしての役割を果たすことができ、癌免疫療法の標的として使用されてきた。
【0009】
そのため、化学療法に追加された場合に白血病芽球を殺傷する有効性を高めることができる重要な戦略は、白血病細胞又は悪性細胞で発現されるマーカーに対するモノクローナル抗体である。本開示の発明の目的は、血液学的疾患等の増殖性障害の治療のために改善された方法を提供することである。
【発明の概要】
【0010】
本開示の発明は、CD33に対するモノクローナル抗体等の少なくとも1つの免疫療法剤を含む組み合わせ、並びにクラドリビン、シタラビン、ミトキサントロン、及び顆粒球コロニー刺激因子もしくはフィルグラスチムの組み合わせ(CLAG-M)等の2つ以上の化学療法剤の組み合わせの投与が、治療的相乗作用を有し、かつ/又は、免疫療法剤のみ又は化学療法剤(複数可)のみの使用と比べて増殖性疾患の治療における有効性を改善するという発見に基づいている。
【0011】
したがって、本開示の発明は、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、又は骨髄増殖性新生物等の増殖性障害を有する対象を治療するための方法、及び特にこれらの疾患の再発性又は難治性状態の治療に関する。本方法は一般に、有効量のCD33に対する免疫療法薬と、有効量の2つ以上の化学療法剤の組み合わせとを投与することを含む。特定の態様によれば、3つ以上の化学療法剤が開示される方法に使用され得る。
【0012】
本開示の発明はまた、CD33を発現する細胞の成長及び/又は増殖を阻害する方法、並びにCD33を発現する細胞を伴う疾患又は障害を治療する方法にも関する。両方の方法は、有効量のCD33に対する免疫療法薬、有効量の2つ以上の化学療法剤の組み合わせ、又は有効量の3つ以上の化学療法剤を対象に投与することを含む。
【0013】
本開示の発明の特定の態様によれば、2つ以上の化学療法剤の組み合わせ、及び3つ以上の化学療法剤の組み合わせは、クラドリビン、シタラビン、ミトキサントロン、及び顆粒球コロニー刺激因子又はフィルグラスチムから選択される個々の化学療法剤の組み合わせを含み得る。化学療法剤は、各化学療法剤に特化した毎日の又は時間ごとのスケジュール等に沿って、治療期間中に一緒に及び/又は別個に送達され得る。
【0014】
本開示の発明の特定の態様によれば、免疫療法剤は、放射標識にコンジュゲートされた抗CD33抗体等のCD33に対する免疫療法薬を含み得る。抗CD33抗体は、治療期間の1日目~30日目のいずれか1日以上に投与されてもよい。複数用量の抗CD33抗体が投与される場合、その用量は同じであってもよいか、又は異なっていてもよい。
【0015】
本開示の発明の目的は、添付の特許請求の範囲に具体的に概説される組み合わせによって実現され、かつ達成される。本発明の前述の概略的な説明並びに後述の詳細な説明及び例は、本開示の発明の様々な態様を説明するために提供されるのであって、決して記載される実施形態のいずれかを限定するものとして見なされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】GenBank受入れ番号NP_001763に示されるようなヒトCD33のアミノ酸配列を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示の発明は、有効量のCD33標的化剤等の免疫療法薬と、有効量のCLAG-M等の化学療法薬とを投与することによって、増殖性疾患又は障害を治療するための方法に関する。各治療レジメン(すなわち、免疫療法薬及び化学療法薬)は、特異的な投薬スケジュールに従って投与され得、本方法は、投薬スケジュールにしたがって連続的に(抗体投薬スケジュールは化学療法投薬スケジュールが開始される前に完了する、又はその逆)又は同時に各治療薬の投与を提供する。
【0018】
定義
本明細書全体を通して、また添付の特許請求の範囲において、特に明記されていない限り、単数形の使用は複数形を含み、複数形は単数形を包含する。例えば、本明細書において「an」抗体、「a」の放射性核種、及び「the」化学療法薬に言及するが、これらの構成要素のうちのいずれか1つ以上及び/又は本明細書に記載される任意の他の構成要素が使用され得る。
【0019】
本明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、「含む」という語及び「含む」という語の形態は、任意の変形例又は追加例を除外するように本開示の発明を限定しない。更に、本開示の発明は、「含む」の観点から説明されているが、本明細書に詳述されるプロセス、材料、及び組成物は、本質的になるか又はなるとして記載されてもよい。例えば、本発明の特定の態様は、CD33に対する免疫療法薬と、CLAG-M等の化学療法治療レジメンとを投与することを含む方法に関して説明されているが、CD33に対する免疫療法薬及び化学療法治療レジメンの投与「から本質的になる」又は「からなる」方法もまた、本発明の範囲内である。この文脈では、「~から本質的になる」は、任意の追加の構成要素が方法の有効性に実質的に影響を与えないことを意味する。
【0020】
更に、例における以外にも、又は別途示されている場合、例えば、本明細書で使用される成分の量を表す全ての数字は、全ての場合において「約」という用語によって修飾されていると理解されるべきである。したがって、そうではないと示されない限り、以下の明細書に記載される数値パラメータは、本開示の発明によって得られる所望の特性に応じて変動し得る近似値である。最低でも、また特許請求の範囲への均等物の原則の適用を制限する試みとしてではなく、各数値パラメータは、少なくとも、報告されている有効桁の数に照らして、また通常の丸め技法を適用することによって解釈されるべきである。したがって、数字表示、例えば、(範囲を含む)温度、時間、量、及び濃度の前に使用される場合の「約」という用語は、±10%、±5%、又は±1%だけ変化し得る近似値を示す。
【0021】
本明細書で使用される場合、抗体、抗体断片、Fab断片、又はアプタマー等の標的化剤に関する「投与する」という用語は、抗体送達に適した任意の既知の方法によって薬剤を対象の体に送達するための手段を意味する。特定の投与様式は、限定されないが、静脈内、経皮、皮下、腹腔内、くも膜下腔内及び腫瘍内投与を含む。抗体の例示的な投与方法は、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第WO2016/187514号に実質的に記載される通りであり得る。例えば、特定の態様によれば、標的化剤は、単回投与容器に含まれ得る患者特異的治療組成物として投与されてもよく、その総体積は単一治療セッションで患者に投与され得る。組成物は、モノクローナル抗体又は抗体断片及び薬学的に許容可能な担体を含んでもよく、モノクローナル抗体のエフェクター分子(例えば、放射性核種)の用量、及びモノクローナル抗体の総タンパク質量は、少なくとも1つの患者特異的パラメータに依存し得る。患者特異的パラメータは、限定されないが、患者の体重、患者の年齢、患者の身長、患者の性別、患者の病状、及び患者の病歴を含む。
【0022】
更に、本発明では、抗体又は抗体断片は、1つ以上の日常的に使用される薬学的に許容される担体を使用して製剤化することができる。そのような担体は、当業者に周知である。例えば、注射可能な薬物送達系は、溶液、懸濁液、ゲル、ミクロスフェア及び高分子注射剤を含み、可溶性改変剤(例えば、エタノール、プロピレングリコール及びスクロース)及びポリマー(例えば、ポリカプリラクトン及びPLGA)等の賦形剤を含んでもよい。例示的な製剤は、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第WO2017/155937号に実質的に記載される通りであり得る。例えば、特定の態様によれば、製剤は、アスコルビン酸、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒト血清アルブミン(HSA)、HSAの水溶性塩、及びそれらの混合物からなる群から選択される賦形剤を0.5%~5.0%(w/v)を含んでもよい。特定の製剤は、50Mm PBS緩衝液(Ph7)中に、0.5~5%のアスコルビン酸、0.5~4%のポリビニルピロリドン(PVP)、及びモノクローナル抗体を含み得る。
【0023】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、限定されないが、(a)2つの重鎖及び2つの軽鎖を含み、抗原を認識する免疫グロブリン分子、(b)ポリクローナル及びモノクローナル免疫グロブリン分子、(c)その一価及び二価断片(例えば、ジ-Fab)、並びに(d)その二重特異性形態を含む。免疫グロブリン分子は、IgA、分泌IgA、IgG及びIgMを含むがこれらに限定されない、一般的に知られるクラスのいずれかに由来し得る。IgGサブクラスも当業者に周知であり、限定されないが、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4を含む。抗体は、天然及び非天然起源(例えば、IgG-Fcサイレント)の両方であり得る。更に、抗体は、キメラ抗体、完全合成抗体、単鎖抗体、及びそれらの断片を含む。抗体は、ヒト、ヒト化又は非ヒトであり得る。
【0024】
本明細書で使用される場合、「免疫反応性」は、特定の抗原を認識して結合する免疫グロブリンの能力の尺度を指す。「特異的結合」又は「特異的に結合する」又は「結合する」は、他の抗原に対するよりも高い親和性で抗原又は抗原内のエピトープに結合する抗体を指す。典型的には、抗体は、約1×10-8M以下、例えば約1×10-9M以下、約1×10-10M以下、約1×10-11M以下、又は約1×10-12M以下の平衡解離定数(KD)で、典型的には、非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)に結合するためのそのKDよりも少なくとも100倍少ないKDで、抗原又は抗原内のエピトープに結合する。解離定数は、標準的な手順を使用して測定されてもよい。しかしながら、抗原又は抗原内のエピトープに特異的に結合する抗体は、他の関連抗原、例えば、ヒト又はサル、例えば、Macaca fascicularis(カニクイザル、cyno)、Pan troglodytes(チンパンジー、chimp)又はCallithrix jacchus(コモンマーモセット、マーモセット)等の他の種からの同じ抗原(相同体)に対して交差反応性を有し得る。
【0025】
本明細書で使用される場合、「抗CD33標的化剤」は、CD33の任意の利用可能なエピトープに結合する抗体、抗体断片、ペプチド、Fab断片、又はアプタマーである。特定の態様によれば、抗CD33標的化剤は、リンツズマブ(HuM195)、ゲムツズマブ、又はバダスツキシマブ等の、CD33に対するヒト化抗体である。特定の態様によれば、抗CD33標的化剤は、モノクローナル抗体「リンツズマブ」又は「HuM195」によって認識されるエピトープに結合する。HuM195は既知であり、また同様に、それを作製する方法も既知である。
【0026】
「エピトープ」は、抗体、抗体断片、Fab断片、又はアプタマー等の標的化剤によって認識され、かつそれによって結合され得る標的分子部位(例えば、抗原の少なくとも一部)を指す。タンパク質抗原の場合、例えば、これは抗体によって結合されるタンパク質の領域(すなわち、アミノ酸、及び特にそれらの側鎖)を指し得る。重複するエピトープは、少なくとも1~5個の共通のアミノ酸残基を含む。抗体のエピトープを特定する方法は当業者に既知であり、例えば、Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Ed Harlow and David Lane(1988)に記載されているものを含む。
【0027】
本明細書で使用される場合、「癌」は、限定されないが、固形癌(例えば、腫瘍)及び血液悪性腫瘍を含む。
【0028】
「血液学的疾患」又は「血液学的障害」は、少なくとも血液癌を指すと理解され得る。そのような癌は、骨髄又は免疫系の他の細胞等の血液形成組織から発生する。血液学的疾患又は血液学的障害は、限定されないが、白血病(例えば、急性骨髄性白血病(AML)、急性前骨髄球性白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性混合系統白血病、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、ヘアリーセル白血病及び大顆粒リンパ球性白血病)、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性疾患(真性多血症、本態性血小板増加症、原発性骨髄線維症及び慢性骨髄性白血病)、リンパ腫、多発性骨髄腫、MGUS及び類似の障害、ホジキンリンパ腫(HL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、形質転換濾胞性リンパ腫、脾臓周辺帯リンパ腫、リンパ球性リンパ腫、T細胞リンパ腫、並びに他のB細胞悪性腫瘍を含む。
【0029】
「固形癌」は、限定されないが、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭部又は頸部の癌、皮膚又は眼球内の悪性黒色腫、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、直腸癌、肛門部の癌、胃癌、精巣癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、膣癌、外陰部癌、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、小児腫瘍、膀胱癌、腎臓又は尿管の癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮癌、扁平上皮癌、アスベストによって誘発されるものを含む環境誘発性の癌を含む。
【0030】
「抗体依存性細胞傷害」、「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」又は「ADCC」は、エフェクター細胞上で発現されるFcガンマ受容体(FcγR)を介した、抗体被覆標的細胞と、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、マクロファージ及び好中球等の溶解活性を有するエフェクター細胞との相互作用に依存する、細胞死を誘導するための機序である。例えば、NK細胞はFcγRIIIaを発現する一方で、単球は、FcγRI、FcγRII及びFcvRIIIaを発現する。CD38発現細胞等の抗体被覆標的細胞の死は、膜孔形成タンパク質及びプロテアーゼの分泌によるエフェクター細胞活性の結果として起こる。
【0031】
「補体依存性細胞傷害」又は「CDC」は、標的結合抗体のFcエフェクタードメインが補体成分C1qに結合してそれを活性化し、次に補体成分C1qが補体カスケードを活性化して標的細胞の死をもたらす、細胞死を誘導するための機序を指す。補体の活性化は、白血球上の補体受容体(例えば、CR3)に結合することによってADCCを促進する標的細胞表面上の補体成分の堆積ももたらし得る。
【0032】
「アポトーシス」は、標的細胞への抗体結合が、不可欠な細胞シグナル伝達経路を妨害して細胞の自己破壊をもたらすプログラム細胞死の機序を指す。
【0033】
特定の態様によれば、抗CD33標的化剤は、放射性同位元素で標識され得る。放射性同位元素131I又は225Ac等の放射性同位元素で抗体等のタンパク質を標識する方法は既知である。これらの方法は、例えば、国際公開第WO2017/155937号又は国際出願第PCT/US18/44531号に記載されている。例えば、特定の態様によれば、抗CD33標的化剤は、(a)標的化剤を緩衝液中のキレート剤と反応させ、(b)キレート化された標的化剤を緩衝液中の放射性核種と反応させ、(c)消光性のキレート剤(例えば、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA))の添加により反応を停止させ、(d)放射標識されたキレート化標的剤を精製することによって、標識されてもよい。例示的なキレート剤は、金属イオンを封鎖することに加えて、抗体等の生物学的担体に共有結合する能力という二重官能性を有する化合物を含む。例示的なキレート剤は、限定されないが、S-2-(4-イソチオシアナトベンジル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン四酢酸(p-SCN-Bn-DOTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA);エチレンジアミン四酢酸(EDTA);1,4,7,10-テトラ-アザシクロドデカン-N,N′,N″,N′″-四酢酸(DOTA);p-イソチオシアナトベンジル-1,4,7,10-テトラ-アザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(p-SCN-Bz-DOTA);1,4,7,10-テトラ-アザシクロドデカン-N,N′,N″-三酢酸(DO3A);1,4,7,10-テトラ-アザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラキス(2-プロピオン酸)(DOTMA);3,6,9-トリアザ-12-オキサ-3,6,9-トリカルボキシメチレン-10-カルボキシ-13-フェニル-トリデカン酸(「B-19036」);1,4,7-トリアザシクロノナン-N,N′,N″-三酢酸(NOTA);1,4,8,11-テトラ-アザシクロテトラデカン-N,N′,N″,N′″-四酢酸(TETA);トリエチレンテトラアミン六酢酸(TTHA);トランス-1,2-ジアミノヘキサン四酢酸(CYDTA);1,4,7,10-テトラ-アザシクロドデカン-1-(2-ヒドロキシプロピル)-4,7,10-三酢酸(HP-DO3A);トランス-シクロヘキサン-ジアミン四酢酸(CDTA);トランス(1,2)-シクロヘキサンジエチレントリアミン五酢酸(CDTPA);1-オキサ-4,7,10-トリアザシクロドデカン-N,N′,N″-三酢酸(OTTA);1,4,7,10-テトラ-アザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラキス{3-(4-カルボキシル)-ブタン酸};1,4,7,10-テトラ-アザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラキス(酢酸-メチルアミド);1,4,7,10-テトラ-アザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラキス(メチレンホスホン酸);及びその誘導体等の化合物を含む。
【0034】
本明細書で使用される場合、「放射性同位元素」と「放射性核種」は互換的に使用されてもよく、α線放出同位元素、β線放出同位元素、及び/又はγ線放出同位元素であり得る。放射性同位元素の例として以下が挙げられる:131I、125I、123I、90Y、177Lu、186Re、188Re、89Sr、153Sm、32P、225Ac、213Bi、213Po、211At、212Bi、213Bi、223Ra、227Th、149Tb、137Cs、212Pb及び103Pd。
【0035】
特定の態様によれば、抗CD33標的化剤は、131Iで放射標識された抗体であってもよく(「131I標識」)、有効量は、例えば、1200mCi未満であってもよい(すなわち、対象に投与された131Iの量が、1200mCi未満の全身放射線量を送達する)。特定の態様によれば、抗体が131Iで標識される場合、有効量は、1000mCi未満、750mCi未満、500mCi未満、250mCi未満、200mCi未満、150mCi未満、100mCi未満、50mCi未満、40mCi未満、30mCi未満、20mCi未満又は10mCi未満であり得る。
【0036】
特定の態様によれば、131I標識抗体の有効量は10mCi~200mCiである。有効量の例として、限定されないが、50mCi~100mCi、50mCi~150mCi、50mCi~200mCi、60mCi~140mCi、70mCi~130mCi、80mCi~120mCi、90mCi~110mCi、100mCi~150mCi、50mCi、60mCi、70mCi、80mCi、90mCi、100mCi、110mCi、120mCi、130mCi、140mCi、150mCi、又は200mCiが挙げられる。
【0037】
特定の態様によれば、131I標識抗体の有効量は200mCi~1200mCiである。有効量の例として、限定されないが、200mCi~300mCi、200mCi~400mCi、200mCi~500mCi、200mCi~600mCi、200mCi~700mCi、200mCi~800mCi、200mCi~900mCi、200mCi~1000mCi、200mCi~1100mCi、300mCi~1200mCi、400mCi~1200mCi、500mCi~1200mCi、600mCi~1200mCi、700mCi~1200mCi、800mCi~1200mCi、900mCi~1200mCi、1000mCi~1200mCi、50mCi、100mCi、150mCi、200mCi、300mCi、400mCi、500mCi、600mCi、700mCi、800mCi、900mCi、1000mCi、又は1100mCiが挙げられる。
【0038】
特定の態様によれば、抗CD33標的化剤は、225Acで放射標識された抗体であってもよく(「225AC標識」)、有効量は、例えば、5.0μCi/kg未満であってもよい(すなわち、対象に投与された225Ac投与の量が、対象の体重1キログラム当たり5.0μCi未満の放射線量を送達する)。特定の態様によれば、抗体が225ACで標識される場合、有効量は4.5μCi/kg、4.0μCi/kg、3.5μCi/kg、3.0μCi/kg、2.5μCi/kg、2.0μCi/kg、1.5μCi/kg、1.0μCi/kg、0.9μCi/kg、0.8μCi/kg、0.7μCi/kg、0.6μCi/kg、0.5μCi/kg、0.4μCi/kg、0.3μCi/kg、0.2μCi/kg、0.1μCi/kg又は0.05μCi/kg未満である。
【0039】
特定の態様によれば、抗体が225ACで標識される場合、有効量は0.05μCi/kg~0.1μCi/kg、0.1μCi/kg~0.2μCi/kg、0.2μCi/kg~0.3μCi/kg、0.3μCi/kg~0.4μCi/kg、0.4μCi/kg~0.5μCi/kg、0.5μCi/kg~0.6μCi/kg、0.6μCi/kg~0.7μCi/kg、0.7μCi/kg~0.8μCi/kg、0.8μCi/kg~0.9μCi/kg、0.9μCi/kg~1.0μCi/kg、1.0μCi/kg~1.5μCi/kg、1.5μCi/kg~2.0μCi/kg、2.0μCi/kg~2.5μCi/kg、2.5μCi/kg~3.0μCi/kg、3.0μCi/kg~3.5μCi/kg、3.5μCi/kg~4.0μCi/kg、4.0μCi/kg~4.5μCi/kg、又は4.5μCi/kg~5.0μCi/kgである。
【0040】
特定の態様によれば、抗体が225ACで標識される場合、有効量は0.05μCi/kg、0.1μCi/kg、0.2μCi/kg、0.3μCi/kg、0.4μCi/kg、0.5μCi/kg、0.6μCi/kg、0.7μCi/kg、0.8μCi/kg、0.9μCi/kg、1.0μCi/kg、1.5μCi/kg、2.0μCi/kg、2.5μCi/kg、3.0μCi/kg、3.5μCi/kg、4.0μCi/kg又は4.5μCi/kgである。
【0041】
本開示の発明の特定の態様によれば、抗CD33標的化剤が放射性同位元素で標識される場合、対象に投与される標的化剤(抗体、抗体断片等)の大部分は、典型的には標識されていない標的化剤からなり、標識された標的化剤は少数である。標識されていない標的化剤に対する標識された標的化剤の比は、既知の方法を使用して調節され得る。したがって、本開示の発明の特定の態様によれば、抗CD33標的化剤は、最大100mg、例えば最大60mg、例えば5mg~45mgの総タンパク質量、又は0.01mg/患者体重kg~16.0mg/患者体重kg、例えば、0.01mg/患者体重kg~10.0mg/kg、又は0.05mg/患者体重kg~5.0mg/kg、又は0.01mg/患者体重kg~1.0mg/kg、又は0.01mg/患者体重kg~0.6mg/患者体重kg、又は0.01mg/患者体重kg、0.015mg/患者体重kg、0.02mg/患者体重kg、又は0.04mg/患者体重kg、又は0.06mg/患者体重kgの総タンパク質量で提供され得る。本開示の発明の特定の態様によれば、抗CD33抗体の有効用量は、10mg/m2未満、例えば、約6mg/m2、又は3mg/m2、又は更には2mg/m2の用量であり得る。
【0042】
本開示の発明の特定の態様によれば、抗CD33標的化剤が放射標識される場合、放射標識された抗CD33標的化剤は、標識画分と非標識画分を含み得るが、標識画分:非標識画分の比は約0.01:10~1:1であってもよく、例えば、標識画分:非標識画分が0.1:10~1:1であってもよい。更に、放射標識された抗CD33標的化剤は、特定の患者に合わせた単回投与組成物として提供されてもよく、組成物中の標識及び非標識抗CD33標的化剤の量は、国際公開第WO2016/187514号に詳述されるように、少なくとも患者の体重、年齢、及び/又は病状に依存し得る。
【0043】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、限定されないが、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウサギ、ブタ、ラット、及びマウス等の哺乳動物を含む。対象がヒトである場合、対象は任意の年齢であり得る。例えば、対象は60歳以上、65歳以上、70歳以上、75歳以上、80歳以上、85歳以上、又は90歳以上であり得る。代替として、対象は50歳以下、45歳以下、40歳以下、35歳以下、30歳以下、25歳以下、又は20歳以下であり得る。癌に罹患したヒト対象の場合、対象は、新たに診断され得るか、又は再発及び/もしくは難治性であり得るか、又は寛解期にあり得る。
【0044】
本明細書で使用される場合、癌に罹患した対象を「治療すること」は、限定されないが、(i)癌の進行を遅延、停止又は逆転させること、(ii)癌の症状の進行を遅延、停止又は逆転させること、(iii)癌の再発の可能性を低減すること、及び/又は(iv)癌の症状が再発する可能性を低減することを含む。特定の好ましい態様によれば、癌に罹患した対象を治療することは、(i)理想的には癌が排除されるまで、癌の進行を逆転させること、及び/又は(ii)理想的には症状が排除されるまで、癌の症状の進行を逆転させること、及び/又は(iii)再発の可能性を低減もしくは排除すること(すなわち、理想的には残存するあらゆる癌細胞を破壊する地固め療法)を意味する。
【0045】
本発明の文脈における「化学療法薬」は、増殖細胞を抑制する又は死滅させる化合物を意味し、癌の治療に使用され得るか、又は癌の治療における使用のために承認されている。例示的な化学療法剤は、核分裂又は細胞質分裂レベルで細胞分裂を防止、阻害、妨害又は遅延させる、アルキル化剤、植物アルカロイド、代謝拮抗薬、抗腫瘍抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤、有糸分裂阻害剤、副腎皮質ステロイド、及び細胞分裂阻害剤を含む。
【0046】
「治療有効量」又は「有効量」は、所望の治療結果を達成するために、必要な投与量でかつ必要な期間にわたって有効な量を指す。治療有効量は、個体の病態、年齢、性別、及び体重等の要因、並びに個体において所望の反応を引き出す治療薬又は治療薬の組み合わせの能力に応じて異なり得る。有効な治療薬又は治療薬の組み合わせの指標の例として、例えば、患者の健康の改善、腫瘍量の減少、腫瘍の成長の停止もしくは鈍化、及び/又は体内の他の場所への癌細胞の転移の不在が挙げられる。特定の態様によれば、「治療有効量」又は「有効量」は、CD33を発現する細胞を枯渇させ得るもしくはその全体数を減少させ得る、又はCD33を発現する細胞の成長を阻害し得る、抗CD33標的化剤の量を指す。
【0047】
本明細書で使用される場合、CD33を発現する細胞に関する「枯渇させる」は、CD33を発現又は過剰発現する少なくとも1種類(例えば、対象の末梢血リンパ球の少なくとも1種類又は対象の骨髄リンパ球の少なくとも1種類)の細胞の集団を減少させることを意味するものとする。本発明の特定の態様によれば、対象のリンパ球減少は、対象の末梢血リンパ球レベルを測定することによって決定される。そのため、また一例として、対象の末梢血リンパ球の少なくとも1種類の集団が、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は99%等減少した場合、対象のリンパ球集団は枯渇している。
【0048】
「成長を阻害する」は、治療薬又は治療薬の組み合わせの非存在下で同じ細胞又は組織の成長における低下又は遅延と比較した場合に、治療薬又は治療薬もしくは薬物の組み合わせと接触させたときのインビトロ又はインビボでの悪性細胞又は組織(例えば、腫瘍)の成長における測定可能な低下又は遅延を指す。インビトロ又はインビボでの悪性細胞又は組織の成長の阻害は、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%であり得る。
【0049】
本明細書で使用される場合、「相乗的組み合わせ」は、有害な副作用、例えば、非標的組織、免疫状態、及び他の臨床徴候に対する損傷を軽減する一方で、単剤療法の有効性に匹敵する治療効果を提供することができる単剤療法の組み合わせである。代替として、相乗的組み合わせは、全腫瘍細胞数、再発までの時間の長さ、及び患者の健康についての他の徴候によって測定され得る改善された有効性を提供することができる。
【0050】
本開示の発明の相乗的組み合わせは、CD33に対する免疫療法薬、すなわち、CD33に対するモノクローナル抗体等のCD33の機能を抑制又はブロックすることを標的とする薬剤と、化学療法剤又は化学療法剤の組み合わせ等の特定の細胞型の増殖を減少させることを標的とする薬剤とを組み合わせる。
【0051】
本出願全体を通して、様々な刊行物が引用されている。これらの刊行物の開示は、本発明が関連する先行技術をより完全に説明するために、本出願への参照により本明細書に組み込まれる。
【0052】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示の発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似又は同等の方法及び材料を本明細書に記載の実施又は試験で使用することができるが、適切な方法及び材料を以下に記載する。
【0053】
本発明の態様
CD33の過剰発現は、AML、CML及びMDSを含む多くの血液悪性腫瘍において一般的に見られる。AMLでは、患者の85~90%がCD33を発現し、これがゲムツズマブ・オゾガマイシン(Mylotarg)等の標的治療薬の開発につながった。MDS患者の約96%は、骨髄芽球にCD33を発現する(Sanford et al.,“CD33 is frequently expressed in cases of myelodysplastic syndrome and chronic myelomonocytic leukemia with elevated blast count,”2016,Leukemia&Lymphoma,vol.57(8):1965-1968)。別の研究において、MDS患者は、対照試料よりも骨髄細胞当たり約2倍多くのCD33分子を示した(Jilani,et al.,“Differences in CD33 intensity between various myeloid neoplasms,”2002,Am J Clin Pathol 2002,vol.118:560-566)。CD33抗原は、実質的に全てのCMLの症例において発現される。更に、60歳以上の患者の予後は不良であり、AMLの場合、4年間の無病生存期間を有するのはわずか10%~15%である。AML患者のこの高い再発率及び高齢患者の予後不良は、CD33+細胞を優先的に標的とする新規治療薬の必要性を強調する。
【0054】
したがって、本明細書に開示される方法は、CD33に対する免疫療法薬の投与を含む。本方法は、血液学的疾患又は障害等の増殖性障害を治療するために使用されてもよく、かつ/又はCD33を発現する細胞の成長及び/もしくは増殖を阻害するために使用されてもよく、かつ/又はCD33を発現もしくは過剰発現する細胞が関与する疾患もしくは障害を治療するために使用されてもよい。更に、本方法は、再発性/難治性の血液学的疾患又は障害を治療することができ、血液学的疾患又は障害は、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、及び骨髄増殖性新生物から選択される。
【0055】
ヒトCD33は、GenBank受入れ番号NP_001763及び配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する(図1)。CD33は、シアル酸依存性の細胞接着分子として機能することができる67KdのI型膜貫通型受容体糖タンパク質である。CD33は、長いN末端細胞外ドメイン、らせん膜貫通ドメイン、及び短いC末端細胞質ドメインを有する。CD33は、初期骨髄系前駆細胞及び骨髄性白血病(例えば、急性骨髄性白血病、AML)細胞上で発現されるが、幹細胞上では発現されない。
【0056】
図1を参照すると、アミノ酸残基1~259は細胞外ドメインを表し、アミノ酸260~282はらせん膜貫通ドメインを表し、アミノ酸283~364は細胞質ドメイン(細胞内)を表す。CD33の細胞外ドメイン(すなわち、W22R、R69G、S128N)には、少なくとも3つの既知の単一ヌクレオチド多型(「SNP」)が存在する。したがって、ヒト(Homo sapiens)CD33の細胞外ドメインは、これらのSNPのうちのいずれか1つ以上を有する配列番号1のアミノ酸配列を有し得る。
【0057】
最近の研究では、チロシンキナーゼ駆動シグナル伝達経路に対する減衰効果による炎症反応及び免疫応答の調節におけるCD33の役割が示唆されている。例えば、インビトロ研究は、CD33が、シアル酸リガンド依存性及びSOCS3依存性の様式で、ヒト単球によるIL-1β、TNF-α、及びIL-8等の炎症性サイトカインの産生を構成的に抑制することを実証した。反対に、細胞表面CD33の減少又はシアル酸結合の中断は、p38マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)の活性を増加させ、サイトカイン分泌及びサイトカイン誘導性の細胞増殖を増強させ得る。
【0058】
リンツズマブ(HuM195)、ゲムツズマブ、及びバダスツキシマブ等のCD33に対する抗体は、これまで、そして現在も、急性骨髄性白血病(AML)を含む血液悪性腫瘍及び形質細胞障害を治療するそれらの有効性について臨床で評価されている。各抗体は、CD33の細胞外領域の異なる部分に結合することが分かっており、それぞれが異なる臨床応答(例えば、抗腫瘍効果)を示す。ゲムツズマブはPfizerからMylotarg(商標)として入手可能であり、バダスツキシマブはSeattle Geneticsからバダスツキシマブタリリンとして入手可能である。
【0059】
例えば、抗体リンツズマブ(HuM195)は、AMLの治療において抗白血病効果を示した。HuM195は、Protein Design Labs, Inc.(Fremont,California)によって最初に製造された組換えヒト化抗CD33モノクローナル抗体である。M195は、CD33に結合するモノクローナルIgG2a抗体である。M195は、生ヒト白血病性骨髄芽球で免疫されたマウスに由来する。HuM195は、M195の相補性決定領域をヒトIgG1フレームワーク及び骨格に移植することによって構築された。HuM195は、エフェクターとしてヒト末梢血単核細胞を使用した抗体依存性細胞媒介性細胞傷害を誘発した。4つの臨床試験により、再発性又は難治性のAML及びCMLの患者において、ネイティブ(すなわち、非コンジュゲート)HuM195のみを調査した。発熱、悪寒、及び悪心は、最も多くみられた毒性であった。ヒト抗ヒト抗体応答は見られなかった。一部の患者に、骨髄芽球細胞の減少の観点から有益な生物学的活性が見られた。最も恩恵を受けた人々は、治療開始時により少ない芽球を有していたことから、Hum195は、微小残存病変又は細胞減少性疾患(cytoreduced disease)の治療により効果的であり得ることが示唆される。
【0060】
これらの抗体がCD33陽性細胞を除去する提案される方法は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、補体依存性細胞傷害(CDC)、及びアポトーシスを含む。
【0061】
CD33に対する抗体等の、特異的抗体に結合する抗体のADCC活性を評価するために、抗体を免疫エフェクター細胞と組み合わせて抗原発現細胞に添加してもよく、それを抗原発現細胞の細胞溶解をもたらす抗原-抗体錯体によってそれぞれ活性化することができる。細胞溶解は、通常、溶解細胞からの標識(例えば、放射性基質、蛍光染料又は天然の細胞内タンパク質)の放出によって検出される。そのようなアッセイのための例示的なエフェクター細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)及びNK細胞を含む。
【0062】
例として、抗CD33抗体のADCC活性の例示的なアッセイにおいて、CD33発現細胞を51Crで標識して十分に洗浄してもよい。抗CD33抗体は、様々な濃度でCD33発現細胞に添加されてもよく、エフェクター細胞(例えば、末梢血単核細胞からのNK細胞)を添加することによってアッセイが開始される。37℃で様々な時間間隔でインキュベーションした後、遠心分離によりアッセイを停止させ、溶解細胞からの51Cr放出をシンチレーションカウンターで測定する。細胞傷害性の割合は、CD33発現細胞に3%の過塩素酸を添加することによって誘導され得る最大溶解%として算出することができる。
【0063】
細胞傷害性の例示的アッセイでは、様々な量の抗CD33抗体で処理したCD33発現細胞にテトラゾリウム塩が添加され得る。生きたミトコンドリアにおいて、XTTが、ミトコンドリア脱水素酵素によって橙色の生成物に還元され、細胞表面に移される。橙色の生成物は、光学的に定量化することができ、生細胞の数を反映する。代替として、生細胞からのエステラーゼは、無色のカルセインを蛍光分子として加水分解することが分かっている。蛍光は、測定及び定量化することができ、試料中の生細胞の数を反映する。死滅細胞の総量は、インタクトな膜によって生細胞から除外されるヨウ化プロピジウムを使用して測定されてもよい。死滅細胞におけるヨウ化プロピジウムによる蛍光は、フローサイトメトリーによって定量化され得る。
【0064】
CDCを評価するために、細胞傷害性のアッセイに補体タンパク質を含める必要があり得る。アポトーシス誘導の測定は、細胞傷害性のアッセイにおいてNK細胞又は補体タンパク質の添加を必要としない。
【0065】
上述のように、CD33に対するモノクローナル抗体を用いた特定の癌の治療は、様々な成功をもたらした。非コンジュゲートマウス抗CD33抗体(M195)を用いた初期研究では、少数の患者が飽和用量又は超飽和用量で末梢芽球数の一時的な減少を示した。その後の研究では、M195よりも8倍高い結合親和力を有するM195のヒト化バージョンであるリンツズマブ(HuM195)を用いたところ、M195とは異なり、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を示した。更に、微小残存病変を有する患者に使用した場合、限られた試験が急性前骨髄球性白血病(APL)においていくらかの活性を示したが、リンツズマブは、たとえ超飽和用量であってもAMLにおける単一薬剤として非常にわずかな活性を有し、4週間を通してCD33結合部位を完全にブロックし、低腫瘍量を有する患者に限定された完全寛解又は部分寛解の達成は稀であった。非常に高い用量のリンツズマブが5週間にわたって毎週投与され、その後、臨床的利益のあった患者には隔週で投与された小規模臨床試験によって推奨されるように、超飽和用量が繰り返し投与された場合、恐らく有効性を増加させることができる。
【0066】
免疫療法剤(すなわち、抗CD33抗体)の有効性を改善するための1つのアプローチは、多重特異性抗体の使用を含む。したがって、本開示の発明の特定の態様によれば、本方法は、免疫療法薬の投与を含んでもよく、免疫療法薬は、CD33の第1のエピトープ及びCD33の第2のエピトープに対する、又はCD33のエピトープ及び1つ以上の追加の異なる抗原のエピトープに対する多重特異性抗体を含んでもよい。したがって、免疫療法薬は、CD33のエピトープに特異的に結合する少なくとも第1の標的認識成分と、CD33以外の抗原のエピトープに特異的に結合する第2の標的認識成分とを含む多重特異性抗体を含み得る。
【0067】
追加の異なる抗原は、血液学的疾患もしくは障害に関与する細胞、及び/又は固形腫瘍に関与する細胞上で差次的に発現される抗原であってもよい。例えば、追加の異なる抗原は、メソテリン、TSHR、CD19、CD123、CD22、CD30、CD45、CD171、CD138、CS-1、CLL-1、GD2、GD3、B細胞成熟抗原(BCMA)、Tn Ag、前立腺膜抗原(PSMA)、ROR1、FLT3、FAP、TAG72、CD38、CD44v6、CEA、EPCAM、B7H3、KIT、IL-13Ra2、インターロイキン-11受容体α(IL-11Rα)、PSCA、PRSS21、VEGFR2、LewisY、CD24、血小板由来増殖因子-β(PDGFR-β)、SSEA-4、CD20、葉酸受容体α(FRa)、ERBB2(Her2/neu)、MUCl、上皮増殖因子受容体(EGFR)、EGFRvIII、NCAM、Prostase、PAP、ELF2M、Ephrin B2、IGF-I受容体、CAIX、LMP2、gplOO、bcr-abl、チロシナーゼ、EphA2、フコシルGM1、sLe、GM3、TGS5、HMWMAA、o-アセチル-GD2、葉酸受容体β、TEM1/CD248、TEM7R、CLDN6、GPRC5D、CXORF61、CD97、CD 179a、ALK、ポリシアル酸、PLAC1、GloboH、NY-BR-1、UPK2、HAVCR1、ADRB3、PANX3、GPR20、LY6K、OR51E2、TARP、WT1、NY-ESO-1、LAGE-la、MAGE-A1、Legumain、HPV E6,E7、MAGE Al、MAGEA3、MAGEA3/A6、ETV6-AML、精子タンパク質17、XAGE1、Tie 2、MAD-CT-1、MAD-CT-2、Fos関連抗原1、Prostein、サバイビン及びテロメラーゼ、PCTA-l/ガレクチン8、KRAS、MelanA/MARTl、Ras変異体、hTERT、肉腫転座切断点、ML-IAP、ERG(TMPRSS2 ETS融合遺伝子)、NA17、PAX3、アンドロゲン受容体、サイクリンB1、MYCN、RhoC、TRP-2、CYP1B 1、BORIS、SART3、PAX5、OY-TES 1、LCK、AKAP-4、SSX2、RAGE-1、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2、腸管カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、CD79a、CD79b、CD72、LAIR1、FCAR、LILRA2、CD300LF、CLEC12A、BST2、EMR2、LY75、GPC3、FCRL5、GPA7、並びにIGLL1から選択され得る。
【0068】
第1の標的認識成分は、第1の完全長重鎖及び第1の完全長軽鎖、第1のFab断片、又は第1の単鎖可変断片(scFv)のうちの1つを含み得る。更に、第1の標的認識成分は、リンツズマブ(HuM195)、ゲムツズマブ又はバダスツキシマブに由来し得る。第2の標的認識成分は、第2の完全長重鎖及び第2の完全長軽鎖、第2のFab断片、又は第2の単鎖可変断片(scFv)のうちの1つを含み得る。更に、第2の標的認識成分は、上に列挙される追加の異なる抗原のいずれかに由来し得る。
【0069】
多重特異性抗体は、組み換え抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、又は抗体断片であり得る。
【0070】
代替として、本開示の発明は、CD33の少なくとも1つの抗原に対する第1の抗体の投与、及び第2の抗体の投与を含む方法を企図し、第2の抗体は、第1の抗体よりもCD33の異なるエピトープに対するものであるか、又は上に提示したリストから選択される抗原等の異なる抗原のエピトープに対するものである。
【0071】
本発明の方法で使用されるモノクローナル抗体の治療効果を改善するための別のアプローチは、放射性核種で抗体を標識することを含む。CD33に対する放射性核種標識モノクローナル抗体を用いた患者の治療において、放射性核種を腫瘍部位等でCD33を発現する細胞にそれぞれ局在化させて、それらの腫瘍細胞を死滅させることができる。したがって、本開示の発明は、有効量のCD33に対するモノクローナル抗体と、有効量の化学療法治療レジメンとを投与することを含む増殖性障害を治療する方法に関し、抗体は放射性核種等のエフェクター分子で標識される。本開示の発明の特定の態様によれば、CD33に対するモノクローナル抗体は、リンツズマブ(HuM195)、ゲムツズマブ、及び/又はバダスツキシマブであってもよい。
【0072】
本開示の発明の特定の態様によれば、放射標識された抗CD33標的化剤は、放射標識されたHuM195(リンツズマブ)である。本発明において想定される放射標識抗体は、限定されないが、131I-HuM195、125I-HuM195、123I-HuM195、90Y-HuM195、177Lu-HuM195、186Re-HuM195、188Re-HuM195、89Sr-HuM195、153Sm-HuM195、32P-HuM195、225Ac-HuM195、213Bi-HuM195、213Po-HuM195、211At-HuM195、212Bi-HuM195、213Bi-HuM195、223Ra-HuM195、227Th-HuM195、149Tb-HuM195、131I-HuM195、137Cs-HuM195、212Pb-HuM195及び103Pd-HuM195を含む。放射線標識抗CD33抗体は、131I-HuM195又は225Ac-HuM195である。
【0073】
本開示の発明の特定の態様によれば、標的化剤は、131I又は225Acで標識されてもよく、リンパ芽球又は骨髄腫細胞の細胞死を引き起こす際に対照モノクローナル抗体と比較して少なくとも5倍効果的であり得、対照標的化剤は、131I又は225Acで標識された標的化剤と同じ抗原のエピトープに対する非標識標的化剤を含む。例えば、131I又は225Acで標識したモノクローナル抗体は、リンパ芽球又は骨髄腫細胞の細胞死を引き起こす際に対照モノクローナル抗体と比較して少なくとも10倍効果的、少なくとも20倍効果的、少なくとも50倍効果的、又は少なくとも100倍効果的であり得る。
【0074】
本開示の発明の特定の態様によれば、本方法は、抗体、抗体断片等の抗CD33標的化剤の標識及び非標識(例えば、「裸の」)画分の投与を含み得る。例えば、非標識画分は、標識画分と同じエピトープに対する同じ抗体を含んでもよい。このようにして、抗体の総放射活性を変化させることができるか又は一定に維持することができる一方で、全体的な抗体タンパク質濃度を一定に維持することができるか又はそれぞれ変化させることができる。例えば、投与される非標識抗体画分の総タンパク質濃度は、治療される疾患の正確な性質、患者の年齢及び体重、モノクローナル抗体の同一性、及びモノクローナル抗体の標識のために選択される標識(例えば、放射性核種)に応じて変化し得る。
【0075】
本開示の発明の特定の態様によれば、抗CD33標的化剤は、既に詳述したように、10mCi~1,200mCiの放射線量で投与される131I-HuM195であり得る。本開示の発明の特定の態様によれば、抗CD33標的化剤は、131Iで標識された抗CD33抗体であり、対象が20mCi~200mCi、又は20mCi~100mCi等の10mCi~300mCiの累積放射線量を受けるまで、本明細書に列挙される投薬スケジュールのいずれかに従って1回以上の用量として投与され得る。
【0076】
本開示の発明の特定の態様によれば、抗CD33標的化剤は、既に詳述したように、5.0μCi/kg未満の放射線量で投与される225Ac-HuM195であり得る(すなわち、対象に投与される225Acで標識された抗体は、対象の体重kg当たり5.0μCi未満の放射線量を送達する}。本開示の発明の特定の態様によれば、225Acで標識された抗CD33抗体は、対象が1μCi/患者の体重kg、2μCi/患者の体重kg、3μCi/患者の体重kg、4μCi/患者の体重kg、5μCi/患者の体重kg、6μCi/患者の体重kg、7μCi/患者の体重kg、8μCi/患者の体重kg、9μCi/患者の体重kg、又は10μCi/患者の体重kgの累積放射線量を受けるまで、本明細書に列挙される投薬スケジュールのいずれかに従って1回以上の用量として投与され得る。本開示の発明の特定の態様によれば、有効量の抗CD33抗体は、0.5~4μCi/患者の体重kgの放射線量を含み得る。
【0077】
一般に、有効量の抗CD33抗体は、16mg/体重kg未満、例えば、0.01mg/kg~10mg/kg、又は0.01mg/患者の体重kg~1.0mg/kg、又は0.01mg/患者の体重kg~0.1mg/kgのタンパク質用量を含む。
【0078】
本開示の発明の特定の態様によれば、抗CD33抗体の有効量は、抗CD33抗体の最大耐量(MTD)である。
【0079】
本開示の発明の特定の態様によれば、放射標識モノクローナル抗体は、対照モノクローナル抗体と本質的に同じ抗原に対する免疫反応性を示すことができ、対照モノクローナル抗体は、放射標識モノクローナル抗体と同じ抗原のエピトープに対する非標識モノクローナル抗体を含む。
【0080】
本開示の発明の例示的な実施形態において、抗CD33抗体は、225Ac等の放射標識にコンジュゲートされたリンツズマブであってもよい。本発明の製剤は、放射標識抗体の安定性の改善を提供する、すなわち、少なくとも24時間、抗体の安定性を維持する等であるが(WO2017/155937を参照のこと)、最終的には放射性同位元素が抗体を分解する。したがって、抗CD33標的化剤を本明細書に開示される放射性核種又は放射線療法剤にコンジュゲートする追加の利点は、そのような薬剤が標的細胞(CD33抗原を発現する細胞)に到達した後であるが正常細胞に損傷を及ぼし得る前に、抗体を減衰させ得ることである。
【0081】
本開示の発明の方法は更に、2つ以上の個々の化学療法剤の組み合わせ及び免疫療法剤の投与、並びに2つ以上の個々の化学療法剤の組み合わせ及び免疫療法剤の投与を含む。そのため、本開示の発明は、CD33に対する抗体の投与と、クラドリビン、シタラビン、ミトキサントロン、及び顆粒球コロニー刺激因子又はフィルグラスチムのうちの2つ以上等の2つ以上の個々の化学療法剤の投与とを含む、増殖性疾患又は障害を治療する方法を企図する。特定の態様によれば、本開示の発明の方法は、CD33に対する抗体の投与と、クラドリビン、シタラビン、ミトキサントロン、及び顆粒球コロニー刺激因子又はフィルグラスチムのうちの3つ以上等の3つ以上の個々の化学療法剤の投与とを含む。化学療法剤は、各化学療法剤に特化した毎日又は時間ごとのスケジュール等に沿って、治療期間中に一緒に及び/又は別個に送達され得る。
【0082】
本開示の発明は、CD33に対する抗体の投与と、CLAG-M等の化学療法レジメンの投与とを含む、増殖性疾患又は障害を治療する方法を更に企図する。そのような免疫療法剤と化学療法レジメンの組み合わせは、単剤療法の有害な副作用を軽減する一方で、単剤療法の有効性に匹敵する治療効果を提供することができ、かつ/又は全腫瘍細胞数の減少、再発までの時間の長さの増加、及び患者の健康についての他の徴候によって測定され得る改善された有効性を有する:例えば、単剤療法(すなわち、免疫療法剤又は化学療法レジメンのいずれか)に優る相乗効果を提供することができる。
【0083】
化学療法レジメンCLAG-Mは、化学療法剤の組み合わせの投与を含む:クラドリビン(Leustatin(登録商標))、フィルグラスチム(Neupogen(登録商標))、シタラビン(Cytosar-U(登録商標))、及びミトキサントロン(Novantrone(登録商標))。
【0084】
クラドリビンは、抗悪性腫瘍薬、代謝拮抗薬及びプリン拮抗薬である。クラドリビンは、フルダラビン及びペントスタチンに構造的に関連しているが、異なる作用機序を有する。正確な作用機序は完全に判明していないが、クラドリビンがデオキシシチジンキナーゼによってヌクレオチドであるクラドリビン三リン酸(CdATP;2-クロロ-2′-デオキシアデノシン5′-三リン酸)にリン酸化され、それが凝集して、高レベルのデオキシシチジンキナーゼと低レベルのオキシヌクレオチダーゼを含むリンパ球等の細胞のDNAに取り込まれ、DNA鎖破壊並びにDNA合成及び修復が阻害される結果となるという証拠が示されている。高レベルのCDatPもリボヌクレオチドレダクターゼを阻害すると考えられ、これは三リン酸化(DnTP)プール及びその後のDNA鎖破壊、DNA合成及び修復の阻害、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)及びATPの枯渇、並びに細胞死につながる。他の代謝拮抗薬とは異なり、クラドリビンは休息時に細胞傷害作用を有し、またリンパ球を増殖させる。しかしながら、G1/S相接合部で細胞が蓄積する原因となるため、細胞傷害性はS相への細胞進入に重要な事象と関連していることが示唆される。またこれはプリンヌクレオシドホスホラーゼ(PNP)に結合するが、この結合と作用機序との間の関係は確立されていない。クラドリビン(2-CDa)は、3~7mg/対象の1m2の体表面積/1日、例えば、5mg/対象の1m2の体表面積/1日で投与され得る。
【0085】
シタラビンは、代謝拮抗性抗悪性腫瘍薬である。シタラビンは、直接DNA損傷を通して作用し、DNAに組み込まれる。シタラビンは、培養中の多種多様な増殖哺乳類細胞に対して細胞傷害性である。これは、細胞相特異性を呈し、主にDNA合成中(S相)の細胞を死滅させ、特定の条件下でG1相からS相への細胞の進行を妨げる。作用機序は完全には理解されていないが、シタラビンがDNAポリメラーゼの阻害を通して作用すると考えられる。DNA及びRNAの両方への、限定されてはいるが有意なシタラビンの取り込みも報告されている。シタラビン(Ara-C)は1~3g/対象の1m2の体表面積、例えば、2g/対象の1m2の体表面積/1日で投与され得る。
【0086】
ミトキサントロンは、アントラセンジオン由来抗悪性腫瘍薬である。水素結合によってデオキシリボ核酸(DNA)にインターカレートするDNA反応性物質であるミトキサントロンは、架橋及び鎖破壊を引き起こす。またミトキサントロンは、リボ核酸(RNA)にも干渉し、損傷したDNAをほどいて修復することに関与する酵素であるトポイソメラーゼIIの強力な阻害剤である。これは増殖及び非増殖培養されたヒト細胞の両方に対して殺細胞作用を有することから、細胞周期相特異性の欠如が示唆される。ミトキサントロンは、5~15mg/対象の1m2の体表面積、例えば、10mg/対象の1m2の体表面積/1日で投与され得る。
【0087】
フィルグラスチムは、好中球の増殖及び成熟を誘発する175アミノ酸タンパク質、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の組み換え型非グリコシル化形態である。フィルグラスチムはG-CSF受容体に結合し、骨髄中の好中球の産生を刺激する。G-CSF類似体として、関与する前駆細胞の増殖を制御し、成熟した好中球への成熟に影響を与える。フィルグラスチムはまた、骨髄貯蔵プールからの好中球の放出を刺激し、それらの成熟時間を短縮する。フィルグラスチムは、成熟した好中球の貪食活性を増加させる役割を果たす。細胞傷害性化学療法を受けている患者では、フィルグラスチムは好中球回復を加速させ、好中球相の持続期間の短縮をもたらす可能性がある。フィルグラスチムは、100~500ugのフィルグラスチム/1日、例えば300ugのフィルグラスチム/1日で投与され得る。
【0088】
本開示の発明の特定の態様によれば、クラドリビンは静脈内投与されてもよく、シタラビンは静脈内投与されてもよく、ミトキサントロンは静脈内投与されてもよく、フィルグラスチムは皮下投与されてもよい。
【0089】
本開示の発明の方法の特定の態様によれば、抗CD33抗体及び化学療法治療レジメンは、同時に投与され得る。そのため、それらは単一組成物中に提供されてもよいか、又は投与前に組み合わされるいくつかの異なる組成物として提供されてもよいか、又は類似の短い期間内(例えば、互いに数分又は数時間以内)に投与されてもよい。代替として、抗CD33抗体及び化学療法治療レジメンは、連続的に投与され得る。そのため、抗CD33抗体は、化学療法治療レジメンの前、化学療法治療レジメンの後、又は化学療法治療レジメンの前及び後の両方に投与されてもよい。更に、化学療法治療レジメンは、抗CD33抗体の前、抗CD33抗体、又は抗CD33抗体の前及び後の両方の前に投与されてもよい。
【0090】
本開示の発明の方法の特定の態様によれば、抗CD33抗体は、治療期間全体を通して5、7、10、12、14、20、21、24、28、30、35、及び42日ごとに1回からなる群から選択される投薬スケジュールに従って投与されてもよく、治療期間は少なくとも2回の投与を含む。
【0091】
本開示の発明の特定の態様によれば、抗CD33標的化剤は、2回の投与、例えば、治療期間の1日目、及び5日目、6日目、7日目、8日目、9日目、もしくは10日目、又は治療期間の1日目及び8日目に、投薬スケジュールに従って投与されてもよい。
【0092】
本開示の発明の特定の態様によれば、化学療法治療レジメンは、治療期間全体にわたって1、2、3、4、5、又は6日ごとに1回から選択される投薬スケジュールに従って投与されてもよく、治療期間は少なくとも2回の投与を含む。
【0093】
本開示の発明の特定の態様によれば、CLAG-M化学療法レジメンの標準投与プロトコルは、約2時間の期間にわたるクラドリビンの静脈内投与と、それに続く約4時間の期間にわたるシタラビンの静脈内投与とを含む。シタラビンの投与は、クラドリビンの投与後約2時間であってもよい。これらの2つの薬剤は、5日間毎日投与されてもよい。更に、ミトキサントロンが、投与プロトコルの1日目~3日目に静脈内投与されてもよい。最後に、フィルグラスチムが、投与プロトコルの0日目~5日目に皮下投与されてもよい。
【0094】
本開示の発明の特定の態様によれば、免疫療法剤(抗CD33抗体)は、CLAG-M化学療法レジメンの標準投与プロトコルの5日目~30日目のいずれか1日に投与され得る。例えば、抗CD33抗体は、CLAG-M化学療法レジメンの標準投与プロトコルの9日目~20日目、又はCLAG-M化学療法レジメンの標準投与プロトコルの12日目、13日目、14日目、15日目、もしくは16日目、又はCLAG-M化学療法レジメンの標準投与プロトコルの14日目に投与されてもよい。
【0095】
本開示の発明の特定の態様によれば、本方法は、画分のCD33に対するモノクローナル抗体の標識及び非標識(例えば、「裸の」)画分の投与を含み得る。非標識画分は、標識画分と同じエピトープに対する同じ抗体を含んでもよい。このようにして、抗体の総放射活性を減少させる又は設定することができる一方で、全体的な抗体濃度を変化させることができる。例えば、投与される非標識抗体画分の総タンパク質濃度は、治療される疾患の正確な性質、患者の年齢及び体重、モノクローナル抗体の同一性、及びモノクローナル抗体の標識のために選択される標識(例えば、放射性核種)に応じて変化し得る。
【0096】
本開示の発明の特定の態様によれば、複数用量の免疫療法剤(抗CD33抗体)が投与され得る。更に、各用量は同じであってもよいか、又は異なっていてもよい。例えば、免疫療法剤の第1の用量(誘導用量)は、免疫療法剤の追加の用量(連続投与)より多くてもよい。
【0097】
特定の態様によれば、本開示の発明の方法は、単一特異性及び/又は多重特異性の免疫学的薬剤、並びに化学療法レジメンCLAG-Mの投与を含み、1つ以上の追加の治療剤を投与することを更に含み得る。追加の治療剤は、治療される疾患又は症状に関連し得る。そのような投与は、本明細書に詳述される有効量の免疫療法剤及びCLAG-M化学療法レジメンの投与と同時、別個、又は連続的であってもよい。同時投与の場合、薬剤は、必要に応じて、1つの組成物として、又は別個の組成物として投与され得る。
【0098】
例示的な追加の治療剤は、少なくとも、化学療法剤、抗炎症剤、免疫抑制剤、免疫調節剤、又はそれらの組み合わせを含む。更に、1つ以上のさらなる治療剤は、デキサメタゾン、メルファラン、ドキソルビシン、ボルテゾミブ、レナリドミド、プレドニゾン、カルムスチン、エトポシド、シスプラチン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、及びサリドマイド等の抗骨髄腫剤を含み得る。
【0099】
例示的な化学療法剤は、例えば、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、フルダラビン、5-フルオロウラシル、ダカルバジン、ヒドロキシウレア、アスパラギナーゼ、ゲムシタビン、及び類似の薬剤等の代謝拮抗薬を含む。
【0100】
例示的な化学療法剤は、例えば、メクロレタミン、チオテパ、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)、ロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、ダカルバジン(DTIC)、プロカルバジン、マイトマイシンC、シスプラチン及びカルボプラチン等の他の白金誘導体、並びに類似の薬剤等のアルキル化剤を含む。
【0101】
例示的な化学療法剤は、例えば、ダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、カリチアマイシン、ダウノルビシン(以前はダウノマイシン)、ドキソルビシン、イダルビシン、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、プリカマイシン、アントラマイシン(AMC)及び類似の薬剤等の抗生物質を含む。
【0102】
例示的な化学療法剤は、例えば、ドセタキシン及びパクリタキセル等のタキサン、並びにビンカアルカロイド、例えば、ビンデシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、及びビノレルビン等の有糸分裂阻害剤を含む。
【0103】
例示的な化学療法剤は、トポテカン等のトポイソメラーゼ阻害剤を含む。
【0104】
例示的な化学療法剤は、例えば、ErBb1(EGFR)の阻害剤(ゲフィチニブ(Iressa(登録商標))、セツキシマブ(Erbitux(登録商標))、エルロチニブ(Tarceva(登録商標))、HuMax-EGFr(WO2002/100348に開示されている2F8)及び類似の薬剤等)、ErBb2(Her2/neu)の阻害剤(トランスツズマブ(Herceptin(登録商標)及び類似の薬剤等)等の成長因子阻害剤を含む。一実施形態において、そのような成長因子阻害剤は、SCH-66336及びR115777等のファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤であってもよい。一実施形態において、そのような成長因子阻害剤は、ベバシズマブ(Avastin(登録商標))等の血管内皮成長因子(VEGF)阻害剤であってもよい。
【0105】
例示的な化学療法剤は、イマチニブ(Glivec、Gleevec ST1571)、ラパチニブ、PTK787/ZK222584及び類似の薬剤等のチロシンキナーゼ阻害剤を含む。
【0106】
例示的な化学療法剤は、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤を含む。そのようなヒストンデアセチラーゼ阻害剤の例として、SAHA(サブロイアニリドヒドロキサム酸)等のヒドロキサム酸系ハイブリッド化合物が挙げられる。
【0107】
例示的な化学療法剤は、SCIO-469等のP38a MAPキナーゼ阻害剤を含む。
【0108】
例示的な化学療法剤は、血管形成、新血管新生、及び/又は他の血管新生の阻害剤を含む。そのような阻害剤の例として、ウロキナーゼ阻害剤、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤(マリマスタット、ネオバスタット、BAY 12-9566、AG 3340、BMS-275291及び類似の薬剤等)、内皮細胞遊走及び増殖の阻害剤(TNP-470、スクアラミン、2-メトキシエストラジオール、コンブレタスタチン、エンドスタチン、アンジオスタチン、ペニシルアミン、SCH66336(Schering-Plough Corp、Madison,N.J.)、R115777(Janssen Pharmaceutica,Inc、Titusville,N.J.)及び類似の薬剤等)、血管形成成長因子のアンタゴニスト(ZD6474、SU6668、血管形成作用物質及び/又はそれらの受容体(VEGF、bFGF、及びアンジオポエチン-1等)に対する抗体、サリドマイド(Thalomid(登録商標))、サリドマイド誘導体(CC-5013(レナリドミド、Revlimid(商標)等)及びCC4047(Actimid(商標))、Sugen 5416、SU5402、抗血管形成リボザイム(アンジオザイム等)、インターフェロンα(インターフェロンα2α等)、スラミン及び類似の薬剤)、VEGF-Rキナーゼ阻害剤及び他の抗血管形成チロシンキナーゼ阻害剤(SU011248等)、内皮特異的インテグリン/生存シグナル伝達の阻害剤(ビタキシン及び類似の薬剤等)、銅アンタゴニスト/キレーター(テトラチオモリブデート、カプトプリル、及び類似の薬剤等)、カルボキシアミド-トリアゾール(CAI)、ABT-627、CM101、インターロイキン-12(IL-12)、IM862、PNU145156E、並びに血管形成を阻害するヌクレオチド分子(アンチセンス-VEGF-cDNA、アンジオスタチンをコードするcDNA、p53をコードするcDNA、及び欠損VEGF受容体-2をコードするcDNA)並びに類似の薬剤が挙げられる。
【0109】
そのような血管形成、新血管新生、及び/又は他の血管新生の阻害剤の他の例は、抗血管形成ヘパリン誘導体及び関連分子(例えば、ヘパリナーゼIII)、テトゾロミド、NK4、マクロファージ遊走阻害因子(MIF)、シクロオキシゲナーゼ-2阻害剤、低酸素誘導因子1の阻害剤、抗血管形成大豆イソフラボン、オルチプラズ、フマギリン及びその誘導体、ソマトスタチン誘導体、ポリ硫酸ペントサン、テコガランナトリウム、ダルテパリン、ツムスタチン、トロンボスポンジン、NM-3、コンブレスタチン、カンスタチン、アバスタチン、他の関連標的に対する抗体(抗α-v/β-3インテグリン抗キニノスタチンmAb等)並びに類似の薬剤である。
【0110】
例示的な化学療法剤は、サリドマイド(Thalomid(登録商標))、サリドマイド類似体(CC-5013(レナリドミド、Revlimid(商標))及び/又はCC4047(Actimid(商標))を含む。
【0111】
例示的な化学療法剤は、追加の抗体治療薬、又はプロテアソーム阻害剤、例えば、ボルテゾミブ(Velcade(登録商標))、コルチコステロイド、例えば、プレドニゾン、プレドニゾロン、デキサメタゾン等、ビスホスホネート等の薬剤を含んでもよい。潜在的に好適なビスホスホネートの例は、パミドロネート(Aredia(登録商標))、ゾレドロン酸(Zometa(登録商標))、クロドロネート(Bonefos(登録商標))、リセンドロネート(Actonel(登録商標))、イバンドロネート(Boniva(登録商標))、エチドロネート(Didronel(登録商標))、アレンドロネート(Fosamax(登録商標))、チルドロネート(Skelid(登録商標))、インカドロネート(Yamanouchi Pharmaceutical)及びミノドロネート(YM529、Yamanouchi)である。
【0112】
例示的な化学療法剤は、赤血球造血剤を含む。好適な赤血球造血剤の例は、エポエチンアルファ(例えば、Procrit(登録商標)、Epogen(登録商標)、及びEprex(登録商標))及びエポエチンベータ(例えば、NeoRecormon(登録商標))等のエリスロポエチン(EPO)、並びに赤血球生成促進タンパク質(例えば、Aranesp(登録商標))である。
【0113】
例示的な化学療法剤は、抗アネルギー剤(例えば、腫瘍及び癌抗原に対する寛容性を破壊する小分子化合物、タンパク質、糖タンパク質、又は抗体)を含む。
【0114】
例示的な化学療法剤は、ウイルス、ウイルスタンパク質等を含む。通常、インビボで1回又はほんの数回の複製が可能であり、かつ腫瘍細胞に標的化される複製欠損ウイルスが、例えば、そのような組成物及び方法の有用な構成要素であり得る。そのようなウイルス剤は、GM-CSF及び/又はIL-2等の免疫刺激物質をコードする核酸を含み得るか、又はそれと関連し得る。天然の腫瘍溶解性ウイルス及びそのような組換え型腫瘍溶解性ウイルス(例えば、HSV-1ウイルス、レオウイルス、複製欠損及び複製感受性アデノウイルス等)の両方が、そのような方法及び組成物の有用な構成要素であり得る。
【0115】
例示的な抗炎症剤は、ステロイド性薬物及びNSAID(非ステロイド性抗炎症薬)から選択され得る。他の抗炎症剤は、アスピリン及び他のサリチル酸塩、Cox-2阻害剤(ロフェコキシブ及びセレコキシブ等)、NSAID(イブプロフェン、フェノプロフェン、ナプロキセン、スリンダック、ジクロフェナック、ピロキシカム、ケトプロフェン、ジフルニサル、ナブメトン、エトドラック、オキサプロジン、及びインドメタシン等)、抗IL6R抗体、抗IL8抗体、抗IL15抗体、抗IL15R抗体、抗CD4抗体、抗CD11a抗体(例えば、エファリズマブ)、抗α4/β-1インテグリン(VLA4)抗体(例えば、ナタリズマブ)、炎症性疾患の治療のためのCTLA4-1g、プレドニゾロン、プレドニゾン、メトトレキサート等の疾患修飾抗リウマチ薬(DMARD)、スルファサラジン、ピリミジン合成阻害剤(レフルノミド等)、IL-1受容体遮断薬(アナキンラ等)、TNF-α遮断薬(エタネルセプト、インフリキシマブ、及びアダリムマブ等)並びに類似の薬剤から選択されてもよい。
【0116】
免疫抑制剤及び/又は免疫調節剤の例として、シクロスポリン、アザチオプリン、ミコフェノール酸、ミコフェノレートモフェチル、プレドニゾン等の副腎皮質ステロイド、メトトレキサート、金塩、スルファサラジン、抗マラリア薬、ブレキナール、レフルノミド、ミゾリビン、15-デオキシスペルグアリン、6-メルカプトプリン、シクロホスファミド、ラパマイシン、タクロリムス(FK-506)、OKT3、抗胸腺細胞グロブリン、チモペンチン、チモシン-α及び類似の薬剤が挙げられる。
【0117】
本開示の発明の特定の態様によれば、追加の治療剤は、抗骨髄腫剤を含み得る。例示的な抗骨髄腫剤は、デキサメタゾン、メルファラン、ドキソルビシン、ボルテゾミブ、レナリドミド、プレドニゾン、カルムスチン、エトポシド、シスプラチン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、及びサリドマイドを含み、それらのうちのいくつかは、化学療法剤、抗炎症剤、又は免疫抑制剤として上に示される。
【0118】
本開示の発明の特定の態様によれば、追加の治療剤は、治療期間の1日目に開始して300~600mg/日の用量で経口投与され、CD33標的化剤の少なくとも7日後まで継続されるアロプリノールを含み得る。500/ul未満の絶対好中球数を有する患者のために、予防抗生物質及び抗真菌療法を含めることができる。注入に関連する反応を軽減するために、鎮痛剤及び抗ヒスタミン剤も、注入によるCD33標的化剤の投与の前に含まれ得る。
【0119】
追加の治療剤は、当該技術分野で既知の任意の標準的なレジメンに従って投与され得る。例えば、治療剤は1~500mg/m2の範囲の濃度で投与されてもよく、その量は患者の表面積の関数として算出される(m2)。例えば、パクリタキセルの例示的な用量は15mg/m2~275mg/m2を含んでもよく、ドセタキセルの例示的な用量は60mg/m2~100mg/m2を含んでもよく、エポチロンの例示的な用量は10mg/m2~20mg/m2を含んでもよく、カリチアマイシンの例示的な用量は1mg/m2~10mg/m2を含んでもよい。例示的な用量が本明細書に列挙されているが、それらは参考のために提供されているだけであって、本開示の発明の薬剤の用量範囲を限定することを意図するものではない。
【0120】
本開示の発明の方法は更に、抗CD33抗体の投与後に、自己又は同種幹細胞を対象に移植することを含む。抗CD33抗体が放射性核種で標識される場合、抗CD33抗体の投与後、抗CD33抗体からの放射線量が移植された細胞に対して有害でないとき、例えば、抗CD33抗体の投与後8~20日、又は更には抗CD33抗体の投与後10~16日に、幹細胞が移植され得る。
【0121】
本開示の発明は、増殖性障害を有する対象を治療するための方法、CD33を発現する細胞の成長及び/又は増殖を阻害するための方法、並びにCD33を発現する細胞を伴う疾患又は障害を治療するための方法を提供する。増殖性障害は、血液悪性腫瘍であり得る。
【0122】
したがって、本開示の発明は、増殖性障害を有する対象を治療するための方法を提供する。特定の場合、増殖性障害は血液悪性腫瘍であり得る。本開示の発明の特定の態様によれば、血液悪性腫瘍は、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、及び骨髄増殖性新生物のうちの1つ以上であり得る。本発明の特定の態様によれば、CD33を発現する細胞は多発性骨髄腫細胞である。
【0123】
本開示の発明の特定の態様によれば、対象の固形癌を治療するための方法が提供され、該方法は、治療有効量の本明細書に詳述されるモノクローナル抗体(すなわち、抗CD33抗体、並びに/又はCD33及び上に詳述した別の抗原のエピトープに対する二特異性抗体を用いた単剤療法)と、化学療法レジメンCLAG-Mとを対象に投与することを含む。いずれか特定の理論によって拘束されることを望むものではないが、本明細書に記載される抗CD33モノクローナル抗体で観察された免疫調節効果に基づいて、本開示の発明の方法は固形腫瘍の治療に有効であり得る。治療は、免疫療法剤の静脈内、腹腔内、又は腫瘍内注入を含み得る。
【0124】
本出願には、以下の態様が開示されている。
【0125】
態様1.CD33を発現する細胞の成長及び/又は増殖を阻害する方法であって、有効量の抗CD33標的化剤と、有効量の2つ以上の個々の化学療法剤の組み合わせと、を対象に投与することを含む、方法。
【0126】
態様2.2つ以上の個々の化学療法剤の組み合わせは、クラドリビン、シタラビン、ミトキサントロン、及びフィルグラスチムのうちの2つ以上を含む、態様1に記載の方法。
【0127】
態様3.2つ以上の個々の化学療法剤の組み合わせは、静脈内投与されるクラドリビン、静脈内投与されるシタラビン、静脈内投与されるミトキサントロン、及び皮下投与されるフィルグラスチムのうちの2つ以上を含む、態様1又は2のいずれか1つに記載の方法。
【0128】
態様4.2つ以上の個々の化学療法剤の組み合わせの有効量は、3~7mgのクラドリビン/対象の1m2の体表面積/1日、1~3gのシタラビン/対象の1m2の体表面積/1日、5~15mgのミトキサントロン/対象の1m2の体表面積/1日、及び100~500ugのフィルグラスチム/1日、のうちの2つ以上を含む、態様1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0129】
態様5.2つ以上の個々の化学療法剤の組み合わせの有効量は、5mgのクラドリビン/対象の1m2の体表面積/1日、2gのシタラビン/対象の1m2の体表面積/1日、10mgのミトキサントロン/対象の1m2の体表面積/1日、及び300ugのフィルグラスチム/1日、を含む、態様1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0130】
態様6.組み合わせの有効量が、以下のように対象に投与される、態様2~5のいずれか1つに記載の方法:治療期間の1日目、2日目、3日目、4日目、及び5日目にクラドリビン、治療期間の1日目、2日目、3日目、4日目、及び5日目にシタラビン、治療期間の1日目、2日目、及び3日目にミトキサントロン、並びに治療期間の0日目、1日目、2日目、3日目、4日目、及び5日目にフィルグラスチム。
【0131】
態様7.抗CD33標的化剤が、治療期間の1日目~30日目のいずれか1日、又は治療期間の9日目~20日目のいずれか1日、又は治療期間の12日目、13日目、14日目、15日目、もしくは16日目、又は治療期間の14日目に投与される、態様1~6のいずれか1つに記載の方法。
【0132】
態様8.抗CD33標的化剤及び化学療法剤が連続的に投与される、態様1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0133】
態様9.抗CD33標的化剤が化学療法剤の前に投与されるか、又は抗CD33標的化剤が化学療法剤の後に投与される、態様1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0134】
態様10.抗CD33標的化剤は、CD33に対する放射標識抗体を含み、放射標識は、131I、125I、123I、90Y、177Lu、186Re、188Re、89Sr、153Sm、32P、225Ac、213Bi、213Po、211At、212Bi、213Bi、223Ra、227Th、149Tb、137Cs、212Pbもしくは103Pd、又はそれらの組み合わせから選択される、態様1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0135】
態様11.抗CD33標的化剤は、リンツズマブ、ゲムツズマブ、バダスツキシマブ、又はそれらの組み合わせを含む、態様1~10のいずれか1つに記載の方法。
【0136】
態様12.抗CD33標的化剤はHuM195を含む、態様1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0137】
態様13.抗CD33標的化剤は、225ACで標識され、抗CD33標的化剤の有効量は、0.1~10uCi/対象の体重kg、又は0.2~8uCi/対象の体重kg、又は0.5~4uCi/対象体重kg、又は0.2~2.0uCi/対象体重kgの放射線量を含む、態様1~12のいずれか1つに記載の方法。
【0138】
態様14.抗CD33標的化剤は131Iで標識され、抗CD33標的化剤の有効量は、10mCi~200mCi、又は50mCi~150mCi、又は50mCi~100mCiの放射線量を含む、態様1~13のいずれか1つに記載の方法。
【0139】
態様15.抗CD33標的化剤の有効量は、16mg/対象の体重kg未満、10mg/対象の体重kg未満、又は6mg/対象の体重kg未満、500μg/対象の体重kg未満、100μg/対象の体重kg未満、50μg/対象の体重kg未満、又は20μg/対象の体重kg未満のタンパク質用量を含む、態様1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0140】
態様16.方法は、以下の1つ以上から選択される血液学的疾患又は障害を治療することができる、態様1~15のいずれか1つに記載の方法:急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄単球性白血病、赤血球性白血病、急性巨核芽球性白血病、組織球性白血病、骨髄肉腫、肥満細胞増殖性障害、及び骨髄異形成症候群。
【0141】
態様17.方法は、再発性/難治性の血液学的疾患又は障害を治療することができ、血液学的疾患又は障害は、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、及び骨髄増殖性新生物から選択される、態様1~16のいずれか1つに記載の方法。
【0142】
態様18.CD33を発現する細胞は、骨髄芽球細胞又は悪性形質細胞等の芽球細胞である、態様1~17のいずれか1つに記載の方法。
【実施例
【0143】
実施例1:CD33特異性及び安定性
アクチニウム-225(Ac225)にコンジュゲートされたリンツズマブを、CD33を発現する特定の細胞型に対する細胞傷害性について試験した。例えば、HL60(白血球細胞)の懸濁液を、様々な用量の放射標識リンツズマブ(リンツズマブ-Ac225)とともにインキュベートしたところ、細胞の50%が殺傷された用量(LD50)は、細胞懸濁液1mL当たり8Pciであることが分かった。
【0144】
放射標識リンツズマブと、非ヒト霊長類及びヒト凍結組織からの末梢血細胞及び骨髄細胞との反応性を利用するための研究では、放射標識リンツズマブは、単核細胞のみに反応性を示し、特異性が証明された。更に、抗体上の放射標識の安定性を決定するための研究では、10匹の正常なマウス(Taconic,Germantown,New Yorkからの8週齢の雌Balb/cマウス)の尾部に300nCiの放射標識リンツズマブ(0.12ml)を注射した。5日間にわたって採取された血清試料では、アクチニウム-225がリンツズマブに結合したままであったことが示され、抗体に対する放射標識のインビボでの安定性が実証された。
【0145】
放射標識リンツズマブの単回注射の最大耐量(MTD)は、3Uci/患者体重kgであると決定された。分割用量(例えば、4~7日間投与された2回の等量)として、MTDは、投与1回当たり2Uci/kg、又は4Uci/kgの合計であると決定された。このデータは、再発性/難治性AMLを有する患者への注射によって決定された:21人の患者に、漸増用量の放射標識リンツズマブ(0.5Uci/kg~4Uci/kg)を注射した。MTDの決定は、各用量レベルで観察された有害作用の重症度に基づくものであった。抗白血病効果には、19人の評価可能な患者のうち13人の末梢血芽球の除去が含まれた。治療後4週で評価可能であった18人の患者のうち12人に、骨髄芽球の減少が見られた(≧50%の減少を示した9人を含む)。1uCi/kg、3uCi/kg及び4uCi/kgでそれぞれ治療された3人の患者は、治療後に≦5%の芽球を有していた。
【0146】
実施例2:CD33ヒト最大耐量及び有効性
第I相試験は、各サイクルにおいて、リンツズマブ-Ac225の分割投与のMTDと、それに続く顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)による支持療法を決定するために用いられる。一般的なサイクルは約42日である。サイクルは、第1日目のリンツズマブ-Ac225の分割用量の投与から開始し、その後、9日目にGCSFの投与が続き、絶対好中球数(ANC)が1,000を超える(5~10日以内に起こることが予想される)まで適切な投薬指示に従ってGCSFを継続する。14日目、21日目、28日目、35日目及び42日目に、末梢血をパラプロテイン負荷量について評価する。42日目に、形質細胞浸潤を評価するために、骨髄液穿刺を行う。42日目に奏功が部分奏功であるか、又は以前よりは良好だが完全奏功ではなく、かつ患者がその他の点では適格である場合、患者は、第1のサイクルの1日目から60日以降に同じ用量レベルで新しいサイクルにおいて再投与される。用量制限毒性が認められない場合、患者が4μCi/kgのリンツズマブAc225の累積用量を受けるまで、サイクルは上記アルゴリズムを使用し続ける。
【0147】
実施例3:CLAG-Mを追加した場合のCD33最大耐量
CLAG-M治療レジメンは、以下の薬剤からなる:1日目~5日目に2時間にわたるクラドリビン5mg/m2IV;1日目~5日目に4時間にわたるシタラビン2gm/m2IV(クラドリビン注入完了の2時間後に開始);1日目~3日目にミトキサントロン10mg/m2IV;0日目~5日目に300μgの用量のG-CSF(フィルグラスチム)。リンツズマブ-Ac225を、治療の14日目にIV注入として30分間投与する。3つの試験コホートのためのリンツズマブ-Ac225の用量225を以下に述べる。放射線誘発性腎毒性の予防は、治療後最大1年間、経口スピロノラクトンを使用して行われる。
【表1】
【0148】
モニタリング及び奏功評価:ベースライン時(再発が診断された場合)、及びCLAG-M療法後に、リンツズマブ-Ac225の投与後42日までに、又は血球数が回復したときのいずれか早い方で骨髄生検を得る。入院中は毎日、患者の完全血球数及び代謝パネルを観察する。治療に対する反応は、国際ワーキンググループによって開発された標準的な定義に従って評価され、完全寛解は、骨髄芽球<5%、絶対好中球数≧1000/L及び血小板数≧100,000/Lとする。血小板回復を伴わない完全寛解(CR)はCRpと定義され、白血球数の回復を伴わない完全寛解(CR)はCRiと定義される。部分寛解(PR)は、骨髄中の芽球の割合の少なくとも50%から5~25%への減少と、正規化血球数とによって定義される。CR、Cri、CRp又はPRを達成しない者は、無効(NR)群として定義される。無増悪生存期間(PFS)は、寛解の第1日目から再発が確認されるまでと算出される。全生存期間(OS)は、救援療法の第1日目から死亡までと算出される。CTCAE基準に従って、血液学的及び過剰な血液毒性を評価する。DLTは、治療以外の代替的な原因に起因する場合を除き、後続の事象を含む。
【0149】
実施例4:化学療法剤を用いたCD33併用療法
第I相試験では、再発AMLを有する18人の患者を、1日目及び8日目に、低用量Ara-C(LDAC)と併用して分割用量で投与される225Ac-リンツズマブで処理した。治療は、0.5uCi/kg/画分を超える用量で、未治療AMLを有する高齢患者に寛解を誘発することが分かった。臨床試験の第2相部分では、細胞傷害性化学療法に適合しないと考えられた、AMLの初期症状を有する13人の患者を、LDACなしで1日目~8日目に分割用量で投与される225Ac-リンツズマブで処理した。予備データは、年齢中央値75歳(範囲:65~82)及びPS中央値2(患者2人が0~1、患者3人が2、及び患者2人が3)について9で入手可能である。6人(67%)は、以前にAHDの治療を受けていた(MDSが5人、非定型CMLが1人)。ベースラインでは、5人の患者がANC≧500/μLを有し、2人のみがANC≧1000/μLを有し、1人のみが血小板>50,000/μLを有していた。
【0150】
3人の患者における治療後6週間超の間、評価可能な患者全員に、骨髄形成不全を伴うグレード4の血小板減少症を含む骨髄抑制が見られた。1点以上で報告されたグレード3を超える非血液毒性は、肺炎及び蜂巣炎のみであった。静脈閉塞症は発生しなかった。30日間死亡率は33%であった(疾患進行、急性又は慢性呼吸不全、及び転倒後の外傷性頭蓋内出血)。
【0151】
目標とする奏効は、9人の患者のうち5人(56%)に確認された:不完全な血小板数回復を伴う完全寛解(CRp)が2人、及び不完全な血液学的回復を伴う完全寛解(CRi)が3人。2人の患者は抵抗性疾患を有する。
【0152】
好中球回復(ANC≧500/μl)の中央値は、225Ac-リンツズマブの最初の投与から36日(範囲:20~60)であった。CRpを有する2人の患者は60日目及び36日目に好中球が回復した。CRiを有する患者のうち2人は、65日目及び56日目に感染期間が切れた時にはANC≧500/μLに達せず、3人目はANCが回復することなく66日目超に感染期間が切れた。先行血液疾患(AHD)を有する患者は、正常な好中球産生まで回復する能力を持たない場合があるため、AHDを有しない患者がより有益であり得る。AHDを有しない3人の患者のうち、1人は36日目にANCが回復し、1人はANCが回復することなく56日目に感染症から死亡し、1人は66日目超の時点でANC回復の結果は出ていない。輸注なしで血小板数>20,000/μLに達した患者はいなかった。
【0153】
2μCi/kg/画分の225Ac-リンツズマブ単剤療法に関するこの第2相試験からの予備データから、強力な治療法に適さない高齢患者、多くはAHDを有する、において56%の寛解率が確認された。この用量での骨髄抑制は、この集団で許容されるよりも長いと考えられたが、回復時間を短縮する目的で追加の試験を1.5μCi/kg/画分で継続する。
【0154】
実施例5:CLAG-Mを用いたCD33併用療法
第I相臨床試験では、患者はCLAG-M化学療法薬の投与のために入院する。年齢、性別、人種、AMLサブタイプ、最初の診断日、再発日、診断と再発との間隔、診断時の細胞遺伝学及び分子変異、以前の化学療法又はヒト幹細胞移植のサイクル(HSCT)、入院時のベースライン臨床検査、診断時及び再発時の末梢血及び骨髄中の芽球の割合等のベースライン特性を得る。CLAG-M化学療法レジメンは、本明細書に記載されるように投与される。入院中は毎日、患者の完全血球数及び代謝パネルを観察する。RR-AMLの診断時に得られた骨髄(BM)試験をベースラインとして使用する。絶対好中球数(ANC)が>1000細胞/cu.mmまで回復したとき、又はリンツズマブ-Ac225の投与後42日まで(49日目超)のいずれか早い方で、治療の完了後に反復BM試験を得る。治療に対する反応は、国際ワーキンググループによって開発された標準的な定義に従って評価される。治療に反応を示した患者は、後に同種幹細胞移植について考慮され得る。PRを示した患者又は無効の患者には、治療担当医の裁量及び患者の忍容性において、追加の化学療法薬を投与されてもよい。「有害事象の共通用語基準」バージョン4.0に従って、血液学的及び過剰な血液毒性を評価する。
【0155】
用量漸増は、3+3デザインに従って行われる。CLAG-M化学療法薬は、固定用量及びスケジュールで投与される。リンツズマブ-AC225の初期用量は0.25uCi/kg(用量レベル1)であり、投与される最も高い用量は0.75uCi/kgである。
【0156】
用量漸増のための用量制限毒性(DLT)観察期間は、1サイクルである。各新しい用量レベルの最初の患者は、2番目の患者をその用量レベルで治療する前に、AEの発生について1サイクルの間観察しなければならない。患者は、連続的に各用量レベルに進む。
【0157】
各用量レベルで、そのレベルの最初の3人の患者がDLTを経験しなかった場合、新しい患者を次に高い用量レベルに進めることができる。3人の患者のうち1人がDLTを経験した場合、最大3人の患者が同じ用量レベルで治療される。その用量レベルで追加の3人の患者がDLTを経験しなかった場合、新しい患者を次に高い用量レベルに参加させることができる。しかしながら、追加の3人の患者のうち1人以上がDLTを経験した場合、その用量レベルでさらなる患者を開始させず、前回の用量をMTDとする。MTDは、最初に治療された3人の患者のうちの誰も、又は6人の最初に治療された患者のうち1人しかDLTを経験しない、最も高い用量レベルとして定義される。
図1
【配列表】
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