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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】ナノファイバーヤーン配置システム
(51)【国際特許分類】
   D02J 1/22 20060101AFI20240521BHJP
   B65H 54/02 20060101ALI20240521BHJP
   C01B 32/158 20170101ALI20240521BHJP
【FI】
D02J1/22 304
D02J1/22 Z
B65H54/02 Z
C01B32/158
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020563529
(86)(22)【出願日】2019-04-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-16
(86)【国際出願番号】 US2019028443
(87)【国際公開番号】W WO2019217060
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2022-04-18
(31)【優先権主張番号】62/668,961
(32)【優先日】2018-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516124627
【氏名又は名称】リンテック オブ アメリカ インク
【氏名又は名称原語表記】LINTEC OF AMERICA, INC.
【住所又は居所原語表記】15930 S. 48th Street, Suite 110, Phoenix, Arizona 85048, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブイコワ ジュリア
(72)【発明者】
【氏名】リマ マルシオ ディー
【審査官】山下 航永
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-523254(JP,A)
【文献】特表2020-507015(JP,A)
【文献】中国実用新案第203095272(CN,U)
【文献】米国特許第03814338(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D02G 1/00 - 3/48
D02J 1/00 - 13/00
C01B 32/158
B65H 57/00 - 73/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヤーンディスペンサーアセンブリと、
配置アセンブリと、
を含む、ナノファイバーヤーン配置システムであって、
前記配置アセンブリは、
伸展性フランジと、
前記伸展性フランジに結合されるガイドであって、前記ガイドはチャンネルを画定し、前記チャンネルは少なくとも1つの内面、及び前記少なくとも1つの内面によって画定される少なくとも1つの隅部を含む、前記ガイドと、
を備える、前記ナノファイバーヤーン配置システム。
【請求項2】
記配置アセンブリは、微調整トランスレータをさらに備え、
前記伸展性フランジは、前記微調整トランスレータに結合される、請求項1に記載のナノファイバーヤーン配置システム。
【請求項3】
基材をさらに含む、請求項1に記載のナノファイバーヤーン配置システム。
【請求項4】
前記基材は接着面、熱可塑性プラスチック及び取り外し可能な表面から選択される面を含む、請求項3に記載のナノファイバーヤーン配置システム。
【請求項5】
前記伸展性フランジは前記基材と接触している、請求項3に記載のナノファイバーヤーン配置システム。
【請求項6】
前記ガイドは、30°から90°の第一隅部を形成するように接合する第一内面及び第二内面を少なくとも含むチャンネルを備えるように構成される、請求項1に記載のナノファイバーヤーン配置システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、表面への糸の適用に関する。具体的には、本開示は、ミクロン直径の糸を表面に適用するためのシステム及び方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
ナノファイバーは、まれな機械的特性、光学的特性、及び電子的特性を有することが知られている。しかし、ナノファイバーは、それらのまれな特性にもかかわらず、多くの市販の製品にまだ融合されていない。ナノファイバーヤーンは、ナノファイバー自体を除くナノファイバーヤーン内に材料及び繊維を含むことによって糸の特性を調整することができるため、商業的な魅力を有することができるナノファイバーの1つの形態である。
【発明の概要】
【0003】
実施例1は、ナノファイバーヤーンを基材に適用する方法であり、この方法は、チャンネルを画定するガイドにナノファイバーヤーンの先端部を通すことであって、このガイドが基材に近接する、通すことと、ナノファイバーヤーンの先端部を基材に結合することと、張力をナノファイバーヤーンに加えることであって、ナノファイバーヤーンの一部分がガイドのエッジに伸展するようになることを張力が引き起こし、チャンネルがナノファイバーヤーン上に加えられた張力に応答してナノファイバーヤーンの移動を制限する、加えることとを含む。
【0004】
実施例2は実施例1の発明の主題を含み、張力は0.1ミリニュートン(mN)から10mNである。
【0005】
実施例3は、実施例1または実施例2のいずれか1つの発明の主題を含み、張力を加えることは、チャンネルを通して第一速度で糸を引くように、円筒形基材を回転させることを含む。
【0006】
実施例4は、実施例3の発明の主題を含み、張力を加えることは、第一速度とは異なる第二速度でナノファイバーヤーンを提供することをさらに含み、第一速度と第二速度との間の差異は、張力をナノファイバーヤーンに加えさせる。
【0007】
実施例5は、先行実施例のいずれかの発明の主題を含み、基材と接触している伸展性フランジを配置することをさらに含み、伸展性フランジはガイドに取り付けられ、ガイドと基材との間の相対移動中にガイドと基材との間に一定の距離を維持するために弾発力を提供する。
【0008】
実施例6は、先行実施例のいずれかの発明の主題を含み、1本のナノファイバーヤーンを基材に付着させるために、ガイドと基材との間に相対移動を引き起こすことをさらに含む。
【0009】
実施例7は、実施例6の発明の主題を含み、ガイドと基材との間に相対移動を引き起こすことは、基材を回転させることを含む。
【0010】
実施例8は、実施例6の発明の主題を含み、ガイドと基材との間に相対移動を引き起こすことは、基材及びガイドを互いに対して横方向に平行移動させることを含む。
【0011】
実施例9は、先行実施例のいずれかの発明の主題を含み、ナノファイバーヤーンの第一部分を基材に適用すること、及びナノファイバーヤーンの第一部分に近接する基材にナノファイバーヤーンの第二部分を10ミクロン未満のピッチで適用することをさらに含む。
【0012】
実施例10は、実施例9の発明の主題を含み、ピッチは約2μmである。
【0013】
実施例11は、実施例10の発明の主題を含み、第一部分及び第二部分は互いに不連続である。
【0014】
実施例12は、先行実施例のいずれかの発明の主題を含み、ナノファイバーヤーンは5ミクロン未満の直径を有する。
【0015】
実施例13は、先行実施例のいずれかの発明の主題を含み、ナノファイバーヤーンは諸糸(multi-ply yarn)である。
【0016】
実施例14は、ヤーンディスペンサーアセンブリ、及び配置アセンブリを含むナノファイバーヤーン配置システムであり、この配置アセンブリは伸展性フランジ、及びこの伸展性フランジに結合されるガイドを含み、このガイドはチャンネルを画定し、このチャンネルは少なくとも1つの内面、及び少なくとも1つの内面によって画定される少なくとも1つの隅部を含む。
【0017】
実施例15は、実施例14の発明の主題を含み、伸展性フランジは配置アセンブリに結合される。
【0018】
実施例16は、実施例14の発明の主題を含み、ヤーンディスペンサーアセンブリ内に少なくとも配置されるナノファイバーヤーンをさらに含む。
【0019】
実施例17は、実施例14~16のいずれかの発明の主題を含み、基材をさらに含む。
【0020】
実施例18は、実施例17の発明の主題を含み、基材は接着面を含む。
【0021】
実施例19は、実施例17の発明の主題を含み、基材は熱可塑性プラスチックを含む。
【0022】
実施例20は、実施例17の発明の主題を含み、基材は取り外し可能な表面をさらに含む。
【0023】
実施例21は、実施例17の発明の主題を含み、伸展性フランジは基材と接触している。
【0024】
実施例22は、実施例14~21のいずれかの発明の主題を含み、ガイドの少なくとも1つの内面は、2つの隣接する表面上で少なくとも0.1mm、隅部から離れて測定されるように、30°から90°の角度で第一隅部に接する第一内面及び第二内面を含む。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】一実施形態における、基材上のナノファイバーの例示的なフォレストを示す。
図2】一実施形態における、ナノファイバーを成長させるための反応器の概略図である。
図3】一実施形態における、ナノファイバーシートの相対的な寸法を識別し、シートの表面に平行な平面内の両端部間でアライメントを取るシート内のナノファイバーを概略的に示すナノファイバーシートの図解である。
図4A】一実施形態における、ナノファイバーフォレストから横方向に引かれるナノファイバーシートの画像であり、ナノファイバーは図4に概略的に示されるように両端部間でアライメントを取る。
図4B】一実施形態における、撚りをかけられ巻かれたカーボンナノファイバーを含む単糸ナノファイバーヤーンの画像である。
図5A】一実施形態における、高精度ナノファイバーヤーン適用システムの平面図を示す。
図5B】一実施形態における、高精度ナノファイバーヤーン適用システムの立面図を示す。
図6】一実施形態における、図5A及び図5Bに示されるナノファイバーヤーン適用システムのいくつかの実施形態で使用されるヤーンディスペンサーの図解である。
図7】一実施形態における、ナノファイバーヤーン適用システムの配置アセンブリの立面図である。
図8】一実施形態における、図7に示される配置アセンブリの側面図である。
図9図9(A)、図9(B)、及び図9(C)は、実施形態において、糸適用システムの配置アセンブリに使用されるガイドのさまざまな構成を示す。
図10】一実施形態における、糸適用システムを使用するための例示的な方法を示す方法流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図面は、例示だけの目的のために、本開示のさまざまな実施形態を示す。多くの変形、構成、及び他の実施形態は、以下の詳細な説明から明らかになる。さらに、認識されるように、図面は、必ずしも一定の比率で描かれていない、または説明された実施形態を示される特定の構成に限定することが意図されない。例えば、いくつかの図は、概して、直線、直角、及び滑面を示すが、開示される技術の実際の実施態様は、完全ではない直線及び直角を有し得、いくつかの特徴は、製作プロセスの現実世界の制限を考慮して、表面トポグラフィを有し得るまたはそうでなければ非平滑であり得る。簡潔に、図は、単に例示的な構造を示すために提供される。
【0027】
概要
ナノファイバー及びナノファイバーヤーンの操作は、難しい場合がある。ナノファイバーは、数十ナノメートルの直径を有する場合がある。ナノファイバーヤーン(単糸、諸糸にかかわりなく)は、わずか数ミクロン(μm)の直径(または糸の長さ全体の平均直径)を有することができ、1キロメートル(km)を超える長さを有することができる。これらの比較的小さい直径は、ナノファイバーヤーンを見ることを難しくし、物理的に握持して操作することさえさらに難しくする。長いナノファイバー及びナノファイバーヤーンは、メートルまたはキロメートルの長いナノファイバーまたは糸に存在する追加の材料を考慮すると、操作をさらに複雑にする。任意の長さ、及び特に長い長さのナノファイバーまたはナノファイバーヤーンのストランド上で整然とした構成を維持することはきわめて重要であり、一度絡まると、ナノファイバー及びナノファイバーヤーンを解くのはほぼ不可能である。
【0028】
ナノファイバー及びナノファイバーヤーンの操作に関して、他の課題が存在する。例えば、ナノファイバー及びナノファイバーヤーンは、密度が非常に低いため(それらの全長に関係なく)、オフィスの換気システムの操作、ナノファイバーヤーンが配置される部屋のドアの開口、またはナノファイバーヤーンから1メートルほど遠く離れた人の呼吸によって生成される気流と同じくらい微妙な気流によって簡単に移動する。多くのナノファイバーヤーンは、織物製造で使用される従来の繊維糸(綿、レーヨン、ナイロン、リネンなど)、及び構造用途のためのケーブルに使用される多くの材料(鋼線及びケーブルなど)よりも単位長さあたりのコストが高いため、廃棄物(例えば、もつれによって引き起こされる)に関連するより高い経済的コストがある。
【0029】
これらの課題にもかかわらず、ナノファイバー及びナノファイバーヤーンの強力な機械的特性、化学的特性、熱的特性、及び電気的特性のために、製品及び製造工程にこれらのナノファイバー及びナノファイバーヤーンを使用することに大きな関心が寄せられる。さらに、ナノファイバーヤーンが基材上に配置される精度が高く、基材上の隣接する糸間の最小中心間距離(本明細書では「ピッチ」と称される)が小さいほど、ナノファイバーヤーンをより多くの技術的用途に適用することができる。
【0030】
これを考慮し、本開示の実施形態は、数十ミクロン、5ミクロン未満、またはさらに1ミクロン未満の直径を基材上で有するナノファイバー、及びナノファイバーから構成される糸(両方とも簡潔にするために「ナノファイバーヤーン」と称される)の配置のための技法を含む。いくつかの実施形態では、これらのナノファイバーヤーン(1ミクロン未満の直径を有するものでさえ)は、100μm未満、50μm未満、10μm未満、及びいくつかの実施形態では2μm以下のピッチで基材上に配置されることができる。
【0031】
いくつかの実施形態では、高精度ナノファイバーヤーン配置システムは、ナノファイバーヤーンディスペンサー、配置アセンブリ、及びナノファイバーヤーンを配置する任意選択の基材を含む。配置のための技法、及び配置システムの実施形態は、すべて以下でより詳細に説明される。しかしながら、これらの実施形態を説明する前に、カーボンナノファイバー、カーボンナノファイバーシート、及びカーボンナノファイバーヤーンの説明が続き、それらの実施形態は、図1から図4Bに示される。
【0032】
カーボンナノファイバー及びカーボンナノファイバーシートの特性
本明細書に使用される場合、用語「ナノファイバー」は、1μm未満の直径を有する繊維を意味する。本明細書では実施形態がカーボンナノチューブから製作されたものとして主に説明されるが、グラフェン、ミクロンまたはナノスケールのグラファイトファイバー及び/またはプレートかどうかにかかわりなく他の炭素同素体、及び窒化ホウ素などのナノスケールの繊維の他の組成物でも、以下に説明される技法を使用してナノファイバーシートを製作するために使用されることができることが理解されよう。本明細書に使用される場合、用語「ナノファイバー」及び「カーボンナノチューブ」は、炭素原子を合わせて結合して円筒形構造を形成する単層カーボンナノチューブ及び/または多層カーボンナノチューブの両方を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に参照されるようなカーボンナノチューブは、4から10の間の層を含む。本明細書に使用される場合、「ナノファイバーシート」または単に「シート」は、引き抜きプロセス(PCT公開番号WO2007/015710に説明され、参照によりその全体が本明細書に援用されるような)によってアライメントを取るナノファイバーのシートを指すので、シートのナノファイバーの長手方向軸は、シートの主面に垂直であるよりもむしろ、シートの主面に平行である(すなわち、多くの場合「フォレスト」と称されるシートの成膜直後の形態になる)。
【0033】
カーボンナノチューブの寸法は、使用される層の数、及び生産方法などに応じて大きく変えることができる。例えば、カーボンナノチューブの直径は0.4nmから100nmであることができ、その長さは10μmから55.5cmを超える範囲であることができる。結果として、カーボンナノチューブは、132,000,000:1と同程度、またはそれよりも高い、非常に高いアスペクト比(長さと直径との比)を有することができる。広範囲の寸法の可能性を考慮すると、カーボンナノチューブの特性は、高度に調節可能または調整可能である。カーボンナノチューブの多くの興味深い特性が確認されているが、実際の適用でカーボンナノチューブの特性を利用するには、カーボンナノチューブの特徴を維持または向上することが可能であるスケーラブルで制御可能な生産方法が必要である。
【0034】
カーボンナノチューブはその特有の構造により、カーボンナノチューブを特定用途に適合させる特定の機械的、電気的、化学的、熱的、及び光学的特性を有する。特に、カーボンナノチューブは優れた導電性、高い機械的強度、良好な熱安定性を示し、また、疎水性である。これらの特性に加えて、カーボンナノチューブは、また、有用な光学特性を示し得る。例えば、カーボンナノチューブは、狭く選択された波長で光を放出または検出するために、発光ダイオード(LED)及び光検出器で使用され得る。カーボンナノチューブは、また、光子輸送及び/またはフォノン輸送に有用であることを証明し得る。
【0035】
ナノファイバーフォレスト
本開示のさまざまな実施形態に従って、ナノファイバー(限定ではないが、カーボンナノチューブを含む)は、「フォレスト」と本明細書で称される構成を含む、さまざまな構成で配列されることができる。本明細書に使用される場合、ナノファイバーまたはカーボンナノチューブの「フォレスト」は、基材上で相互に実質的に平行に配列されるほぼ同等の寸法を有するナノファイバーアレイを指す。図1は、基材上のナノファイバーの例示的なフォレストを示す。基材は任意の形状であり得るが、いくつかの実施形態では、基材は、フォレストが組み立てられる平面を有する。図1に見られることができるように、フォレスト内のナノファイバーは、ほぼ等しい高さ及び/または直径であることができる。
【0036】
本明細書に開示されるようなナノファイバーフォレストは、相対的に高密度であることができる。具体的には、開示されたナノファイバーフォレストは、少なくとも10億ナノファイバー/cmの密度を有することができる。いくつかの特定の実施形態では、本明細書に説明されるようなナノファイバーフォレストは、100億/cm~300億/cmの間の密度を有することができる。他の例では、本明細書に説明されるようなナノファイバーフォレストは、900億ナノファイバー/cmの範囲の密度を有することができる。このフォレストは高密度または低密度の領域を含むことができ、特定の領域はナノファイバーがない場合がある。また、フォレスト内のナノファイバーは、繊維間結合性を示すことができる。例えば、ナノファイバーフォレスト内の隣接するナノファイバーは、ファンデルワールス力によって相互に誘引されることができる。
【0037】
ナノファイバーフォレストを製造する方法の例
本開示に従って、ナノファイバーフォレストを製造するためにさまざまな方法を使用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、ナノファイバーを高温炉で成長させることができる。いくつかの実施形態では、触媒を基材上に析出させ、反応器内に配置した後に、反応器に供給される燃料化合物に曝露することができる。基材は、800℃よりも高い温度から1000℃に耐えることができ、不活性材料であることができる。基材は、下にあるシリコーン(Si)ウェハ上に配置されるステンレス鋼またはアルミニウムを含むことができるが、他のセラミック基材(例えば、アルミナ、ジルコニア、SiO2、ガラスセラミックス)は、Siウェハの代わりに使用されることができる。フォレストのナノファイバーがカーボンナノチューブである例では、アセチレンなどの炭素系化合物を燃料化合物として使用することができる。反応器に導入された後、次に、燃料化合物(複数可)は触媒上に蓄積し始めることができ、基材から上向きに成長することにより集合して、ナノファイバーフォレストを形成することができる。
【0038】
ナノファイバー成長のための例示的な反応器の図が図2に示されている。図2に見られることができるように、反応器は、ナノファイバーフォレストの成長を促進するように基材を配置することができる加熱ゾーンを含むことができる。また、反応器は、燃料化合物(複数可)及びキャリアガスが反応器に供給されることができるガス流入口、ならびに消費した燃料化合物及びキャリアガスが反応器から放出されることができるガス流出口を含むことができる。キャリアガスの例は、水素、アルゴン、及びヘリウムを含む。これらのガス(特に水素)もまた、ナノファイバーフォレストの成長を促進するために反応器に導入されることができる。加えて、ナノファイバーに取り込まれるドーパントをガス流に添加することができる。ナノファイバーフォレストの析出中にドーパントを添加する方法の例は、他の箇所の中でもとりわけ、PCT公開番号WO2007/015710の段落287に記載されており、参照により本明細書に援用されている。フォレストにドーピングまたは添加剤を提供する方法の他の例は、表面コーティング、ドーパント注入、または他の析出及び/または原位置での反応(例えば、プラズマ誘起反応、気相反応、スパッタリング、化学蒸着)を含む。添加剤の例は、ポリマー(例えば、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(フェニレンテトラフタルアミド)タイプの樹脂、ポリ(p-フェニレンベンゾビスオキサゾール)、ポリアクリロニトリル、ポリ(スチレン)、ポリ(エーテルエーテルケトン)及びポリ(ビニルピロジドン)、または誘導体及びそれらの組み合わせ)、元素または化合物のガス(例えば、フッ素)、ダイヤモンド、パラジウム及びパラジウム合金をとりわけ含む。
【0039】
ナノファイバー成長中の反応条件を変更して、得られるナノファイバーフォレストの特性を調整することができる。例えば、触媒の粒径、反応温度、ガス流量、及び/または反応時間を必要に応じて調整して、所望の特異化を有するナノファイバーフォレストを生成することができる。いくつかの実施形態では、基材上の触媒の位置は、所望のパターンを有するナノファイバーフォレストを形成するように制御される。例えば、いくつかの実施形態では、触媒が1つのパターンで基材上に析出し、パターン化された触媒から成長した結果として生じるフォレストが同様にパターン化される。例示的な触媒は、酸化ケイ素(SiO)または酸化アルミニウム(Al)の緩衝層を有する鉄を含む。これらは、化学蒸着(CVD)、圧力支援化学蒸着(PCVD)、電子ビーム(eBeam)蒸着、スパッタリング、原子層堆積(ALD)、レーザー支援CVD、プラズマCVD、熱蒸着、さまざまな電気化学的方法をとりわけ使用して基材上に析出することができる。
【0040】
形成後、ナノファイバーフォレストを任意選択で改質することができる。例えば、いくつかの実施形態では、ナノファイバーフォレストを酸化剤または還元剤などの処理剤に曝露することができる。いくつかの実施形態では、フォレストのナノファイバーは、任意選択で、処理剤によって化学的機能をもつことができる。処理剤は、化学蒸着(CVD)または上記に提示されるその他の技法及び添加剤/ドーパントのいずれかを含むがこれらに限定されない任意の適切な方法によってナノファイバーフォレストに導入されることができる。いくつかの実施形態では、ナノファイバーフォレストは、パターン化されたフォレストを形成するように改質されることができる。フォレストのパターン化は、例えば、フォレストからナノファイバーを選択的に除去することなどによって達成されることができる。除去は、化学的または物理的手段によって達成されることができる。
【0041】
ナノファイバーシート
フォレスト構成での配置に加えて、対象用途のナノファイバーもまたシート構成で配置されることができる。本明細書で使用される場合、「ナノファイバーシート」、「ナノチューブシート」、または単に「シート」という用語は、ナノファイバーが平面内の両端部間でアライメントを取るナノファイバーの配置を指す。いくつかの実施形態では、シートは、シートの厚さよりも100倍大きい長さ及び/または幅を有する。いくつかの実施形態では、長さ、幅または両方は、シートの平均厚さよりも10倍、10倍、または10倍超大きい。ナノファイバーシートは、例えば、約5nmから30μmの間の厚さ、ならびに意図された用途に適している任意の長さ及び幅を有することができる。いくつかの実施形態では、ナノファイバーシートは、1cmから10メートルの間の長さ、及び1cmから1メートルの間の幅を有することができる。これらの長さは、説明のために提供されるに過ぎない。ナノファイバーシートの長さ及び幅は、ナノチューブ、フォレスト、またはナノファイバーシートのうちのいずれかの物理的特性または化学的特性ではなく、製造機器の構成によって制約される。例えば、連続プロセスは、任意の長さのシートを製造することができる。これらのシートは、製造されるときにロール上に巻かれ得る。
【0042】
例示的なナノファイバーシートの図は、相対的な寸法で図示されている図3に示される。図3に見られるように、ナノファイバーが両端部間でアライメントを取る軸は、ナノファイバーアライメントの方向と称される。いくつかの実施形態では、ナノファイバーアライメントの方向は、ナノファイバーシート全体にわたって連続的であり得る。ナノファイバーは必ずしも互いに完全に平行である必要はなく、ナノファイバーアライメントの方向がナノファイバーアライメントの方向の平均的または一般的な尺度であることが理解される。
【0043】
ナノファイバーシートを互いの上に積み重ねて、多層シートスタックを形成することができる。ナノファイバーシートは、同じ方向のナノファイバーアライメントを有するように、または異なる方向のナノファイバーアライメントを有するように積み重ねられ得る。任意の数のナノファイバーシートを互いの上に積み重ねて、多層ナノファイバーシートスタックを形成することができる。例えば、いくつかの実施形態では、ナノファイバーシートスタックは、2、3、4、5、10、またはそれ以上の個々のナノファイバーシートを含むことができる。スタック内の隣接するシート上のナノファイバーアライメントの方向は、1°未満、5°未満または10°未満で異なることができる。他の実施形態では、隣接しているシート、または交互積層したシート上のナノファイバーアライメントの方向は、40°超、45°超、60°超、80°超、または85°超で異なることができる。特定の実施形態では、隣接しているシート、または交互積層したシート上のナノファイバーアライメントの方向は90°であることができる。多層シートスタックは、個々の非繊維シートの間にポリマー類、金属類及び接着剤類などの他の材料を含むことができる。
【0044】
ナノファイバーシートは、シートを製造することができる任意のタイプの適切なプロセスを使用して構築されることができる。いくつかの例示的な実施形態では、ナノファイバーシートは、ナノファイバーフォレストから引き抜かれることができる。ナノファイバーフォレストから引き抜かれるナノファイバーシートの例が図4Aに示されている。
【0045】
図4Aに見られるように、ナノファイバーは、フォレストから横方向に引き抜かれた後に、両端部間でアライメントを取って、ナノファイバーシートを形成することができる。ナノファイバーシートがナノファイバーフォレストから引き抜かれる実施形態では、フォレストの寸法を制御して、特定の寸法を有するナノファイバーシートを形成することができる。例えば、ナノファイバーシートの幅は、シートが引き抜かれたナノファイバーフォレストの幅にほぼ等しくてもよい。さらに、シートの長さは、例えば、所望のシート長が達成されたときに引き抜きプロセスを終了することなどによって制御されることができる。
【0046】
ナノファイバーシートは、さまざまな用途に利用されることができる多くの特性を有する。例えば、ナノファイバーシートは、調整可能な不透明度、高い機械的強度及び可撓性、熱及び電気伝導度を有することができ、そしてまた疎水性を示すことができる。シート内のナノファイバーの高度なアライメントを考慮すると、ナノファイバーシートは極端に薄い可能性がある。いくつかの例では、ナノファイバーシートは約10nmオーダーの厚さであり(通常の測定公差内で測定した場合)、その厚さはほぼ2次元で表される。他の例では、ナノファイバーシートの厚さは、200nmまたは300nmになり得る。そのため、ナノファイバーシートは構成要素に最小限の追加の厚さを加えることができる。
【0047】
ナノファイバーフォレストと同様に、ナノファイバーシート中のナノファイバーに、シートのナノファイバーの表面に化学基または元素を追加することによって処理剤で機能をもたせることができ、それはナノファイバー単独とは異なる化学活性を提供する。ナノファイバーシートの機能付与は、以前に機能をもたせたナノファイバーで実行され得る、または以前に機能をもたせていないナノファイバーで実行され得る。この機能付与は、CVD及びさまざまなドーピング技法を含むがこれらに限定されない、本明細書に記載の技法のいずれかを使用して実行されることができる。
【0048】
本明細書に開示されるように、メタライゼーション及び/またはポリマー含浸前のナノファイバーシートもまた、高純度を有することがあり、いくつかの例では、ナノファイバーシートの重量パーセントの90%超、95%超または99%超は、ナノファイバーに起因することができる。同様に、ナノファイバーシートは、90重量%超、95重量%超、99重量%超または99.9重量%超の炭素を含むことができる。
【0049】
ナノファイバーヤーン
フォレストから引き抜かれるナノファイバーは、「実撚り」技術または「仮撚り」技術によって単糸に紡績されることができる。「実撚り」技術では、繊維集合体の第一端部が固定され、固定された第一端部に対して、対向する繊維の第二端部が撚りをかけられる。「仮撚り」技術では、ねじれはナノファイバー集合体の第一端部と第二端部との間に加えられる。理論に束縛されることを望まないが、仮撚り技術ではナノファイバーに加えられる圧縮及び撚りかけにより、ファンデルワールス力を介してナノファイバーを相互に結合させ、それは加えられたねじれを維持するのに役立つと信じられている。一例では、仮撚りは、回転リングまたはバンド上に、このリングの回転方向に対して0°超、及び180°未満の角度でナノファイバー集合体(例えば、ナノファイバーシート)を通過させることによって適用されることができる。いくつかの例では、リングまたはバンドは、ナノファイバーに撚りをかけるのに十分なナノファイバーストランドに対する摩擦係数を有する材料で、また混入物の蓄積に抵抗するのに十分に低い表面エネルギーで製造される。一実施形態では、リングまたはバンドはシリコーンゴムから製造される。ナノファイバーヤーンの仮撚り紡績技術は、国際出願番号PCT/US2017/066665に記載されており、これは、参照によりその全体が本明細書に援用される。順に巻き取られる撚りをかけられたナノファイバーを含むように、撚りをかけられた単糸ナノファイバーヤーンの一例は図4Bに出現する。
【0050】
いくつかの実施形態では、上述される技法に従って製造される複数の単糸ナノファイバーヤーンを共に撚り合わせ、諸糸を形成することができる。これらの例では、撚りをかけられたナノファイバー、巻き取られたナノファイバー、または両方を含む2本以上のナノファイバーヤーンが共に撚り合わされる(例えば、実撚り、仮撚り、またはある他の撚り合わせ技法によって)。いくつかの実施形態では、ナノファイバーヤーン(単糸、諸糸、撚りをかけられた、撚りなし、巻き取られた、及びそれらの組み合わせにかかわりなく)は、ナノまたはマイクロ粒子を含むことができる。これらの材料の例は、銀ナノ粒子(ナノワイヤを含む)、グラフェン、及び/またはTiOを含むことができるが、これらに限定されない。さらに、糸は、溶液または懸濁液(除去されることができる溶媒/溶剤)として糸に含浸することができる、さまざまなポリマー類またはオリゴマー類(多くの場合、後で除去される溶媒を使用する)または他の化学種のいずれかによって含浸されることができる。
【0051】
高精度ナノファイバーヤーン適用システム
上記に示されるように、高精度ナノファイバーヤーン適用システムの実施形態が本明細書に記載される。これらの実施形態のいくつかでは、この適用システムは、100μm未満、10μm未満、5μm未満、及びさらに1μm未満の直径を有するナノファイバーヤーンを、それらを基材上にわずか約2μm(+/-10%)であるピッチで配置することによって操作することができる。図5A及び図5Bは、ナノファイバーヤーン適用システム500の一実施形態のそれぞれ平面図及び側面図を示す。図5A及び図5Bへの同時参照は、説明を容易にする。
【0052】
適用システム500は、高レベルで、3つのサブシステムを含む。これら3つのサブシステムは、ヤーンディスペンサーアセンブリ504、配置アセンブリ508、及び基材512を含む。これらの要素のそれぞれは、下記に順に説明される。ナノファイバーヤーン502は、図5A及び図5Bに示されるシステム全体にわたって延びるが、それ自体はこのシステムの要素とは見なされない。
【0053】
示される実施形態では、ヤーンディスペンサーアセンブリ504は、基部516(図5Bのみに示される)、粗調整トランスレータ520(便宜上「第一トランスレータ」とも称される)、ヤーンディスペンサー524、任意選択のコンジット530、ならびに電極532A及び532B(図5Aのみに示される)を含む。
【0054】
基部516は、ヤーンディスペンサーアセンブリ504及び配置アセンブリ508を結合することができる構造体を提供する。基部516の例は、テーブル、ワークベンチ、または他の同様の構造体を含む。
【0055】
粗調整トランスレータ520は、そのいくつかの要素が基部516に固定して結合されており、ナノファイバーヤーン適用システム500の他の要素(例えば、とりわけヤーンディスペンサー524、任意選択のコンジット530、電極532A、532B及び/または配置アセンブリ508など)を、例えば、粗調整トランスレータ520に関連する矢印によって図5Aに示される方向などに前後に移動させる、スクリュー型またはサーボ型機構を含むことができる。他のタイプの機構を使用して、示される方向の前後に適用システム500のさまざまな要素を移動させることができることが理解されよう。機構のタイプに関係なく、粗調整トランスレータ520は、ヤーンディスペンサーアセンブリ504及び配置アセンブリ508のさまざまな他の要素を、10分の1秒、ミリ秒、またはマイクロ秒の時間尺度にわたってメートル及び/またはセンチメートルの距離尺度で移動させる。次にこれは、基材512上の所望の位置及び所望のパターンでのナノファイバーヤーンの配置を容易にする。
【0056】
ヤーンディスペンサーアセンブリ504のヤーンディスペンサー524は、ナノファイバーヤーン502のスプール526を含む。ヤーンディスペンサー524は、スプール526の周りに巻き取られる1本のナノファイバーヤーン502を、絡み合いまたは損傷のリスクが低いままで保管することを可能にし、同時に、基材512へのナノファイバーヤーン502の制御された供給及び適用を可能にする。一例では、ヤーンディスペンサー524は、単純な円筒形スプール526であることができ、その円筒形スプールの周りにナノファイバーヤーン502が配置される。別の例では、ヤーンディスペンサー524は、円筒形スプール526を回転させるモーター(または他の類似の機構)を含むことで、基材512へのナノファイバーヤーン502の供給を支援する。一例では、ナノファイバーヤーン502は、0.5メートル(m)/分(min)から10m/minの速度で分配される。以下に説明されるように、ヤーンディスペンサー524から糸が分配される速度、及び糸が基材512に付着(または接着)される速度は、0.01ミリニュートン(mN)から10mNのナノファイバーヤーン502に張力が加えられ、このナノファイバーヤーン内に維持されるように選択されることができる。さらに別の例では、ヤーンディスペンサー524は、図5A及び図5Bに示されるように、保護ハウジング内に配置される円筒形スプール(例えば、スプール526)を含む。さらに別の実施形態では、ヤーンディスペンサー524は、図6に示され、参照によりその全体が本明細書に援用されるPCT出願番号PCT/US2017/064122に記載されているものであることができる。ヤーンディスペンサー524の詳細な説明は、図6の文脈に続く。
【0057】
いくつかの実施形態では、ナノファイバーヤーン502は、ヤーンディスペンサー524から任意選択のコンジット530に進むことができる。コンジット530は、以下に説明される、システム500の他の要素に向かう途中でナノファイバーヤーン502をさらに保護する、及び/またはガイドするために使用されることができる。コンジット530に使用される材料の例は、ポリエチレンチューブ、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)チューブ、ステンレス鋼チューブをとりわけ含む。
【0058】
システム500は、いくつかの実施形態では、2つの電極532A及び532Bを含む非接触ナノファイバーヤーン切断システムを含むことができる。電極532A及び532Bを使用して、ナノファイバーヤーン502を糸セグメントに切断することができる。これにより、不連続な糸セグメントは、基材512に適用されることが可能になり、またシステム500の他の要素の動作により、相互に直交かつ斜交して配向されることができる線形セグメント、閉形状(例えば、正方形または円形)、及びらせん形を含むがこれらに限定されないさまざまな構成で適用されることが可能になる。追加の実施形態では、糸セグメントは、先に堆積した糸セグメントにまたがることができる。糸セグメントの2、3、4またはそれ以上の層を堆積させることができる。一実施形態では、追加のセグメントを既存のセグメントに対して約90°で堆積させて、クロスハッチパターンを提供することができる。場合によっては、先に堆積したセグメントとの接触を回避するために、下にある糸の接合部で糸セグメントを切断することができる。これらの実施形態では、糸セグメントの1つのグループは連続的であることができ、別のグループは不連続であることができる。他の場合、接触が望ましい場合、糸は先に適用された層の上に直接かつ連続的に堆積することができる。
【0059】
電極は、さまざまな技術のいずれかを使用することができる。例えば、2つの電極532A及び532Bを電源に接続して、電気アークを形成することができ、この電気アークは、電極532A及び532Bとの間の距離にまたがるときに、ナノファイバーヤーン502から材料を除去する。他のタイプの非接触切断技術を使用することができることが理解されよう。例えば、単一電極(例えば、532A)を使用して、この単一電極とナノファイバーヤーン502との間に電気アークを形成することができ、この電気アークはナノファイバーヤーンを切断する。別の実施形態では、1つ以上の電極は、コロナ放電を生じるように構成されることができ、コロナ放電はナノファイバーヤーン502を切断する、またはその他の方法で切る。次に、1つ以上の電極は、電源及びコントローラに接続され、これらの電源及びコントローラは、放電加工装置(EDC)、アーク溶接機、プラズマ切断機(プラズマガス源も含むことができる)、及び他の同様のデバイスの電源及びコントローラを含むがこれらに限定されない。電極がアーク放電を促進する、または阻止するために、ナノファイバーヤーン502に対して固定位置にあることができる、またはナノファイバーヤーン502に対して移動することができることも理解されよう。
【0060】
代替の実施形態では、レーザーシステムを使用して、ナノファイバーヤーン502を切断することができる。この代替案では、レーザーは、上述されるように、糸をセグメントに切断する、または切るナノファイバーヤーン502上の1点に集束する。
【0061】
さらに他の実施形態では、接触切断システムを使用することができる。一例では、高温電気抵抗器または他の熱エネルギー源を使用して、この抵抗器をナノファイバーヤーンに近づけ、任意選択で接触させるときに、ナノファイバーヤーン502を切断することもできる。他の実施形態では、さまざまな他のギロチン式または、はさみ型のブレード配置を使用することができる。
【0062】
示される実施形態では、配置アセンブリ508は、微調整トランスレータ540、伸展性フランジ546、及びガイド544を含む。配置アセンブリ508を使用して、ナノファイバーヤーンの直径に関係なく、そしてわずか2μm以下であるピッチで、ナノファイバーヤーンを基材上に正確に(すなわち、目標位置の数ミクロンまたは10分の1ミクロン以内に)位置決めすることができる。
【0063】
一実施形態では、微調整トランスレータ540は、粗調整トランスレータ520(図示せず)に取り付けられ、伸展性フランジ546にも取り付けられる。微調整トランスレータ540は、わずかミリ秒またはマイクロ秒の時間尺度にわたるミリメートル、マイクロメートル、または10分の1マイクロメートルの距離尺度で、ナノファイバーヤーン502が基材512上に配置される横方向の位置を制御する(すなわち、基材512の基準軸514に平行で、矢印によって示される方向(複数可)に)ことができる。一例では、微調整トランスレータ540は、圧電アクチュエータを含むことができ、この圧電アクチュエータは、小さな変位を適用する(ミクロン、10分の1ミクロン、または100分の1ミクロンのオーダーで)ことができ、次に、これらの小さな変位は、対応する変位(例えば、0.05ミクロンから5ミリメートル)を伸展性フランジ546及びガイド544内に引き起こす。別の実施形態では、圧電アクチュエータの代わりに、電磁アクチュエータが微調整トランスレータ540に使用される。それにもかかわらず、一実施形態では、微調整トランスレータ540は、キロヘルツの周波数で平行移動を行うことができるので、ガイド544の方向に頻繁かつ寸法的に微細な変化を引き起こすため、対応して小さな寸法増分で基材512上のナノファイバーヤーン502の配置を制御することができる。
【0064】
伸展性フランジ546は、ガイド544及び微調整トランスレータ540を共に結合する。伸展性フランジ546は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ナイロン、または他の熱可塑性材料によって示されるような、低い弾性率及び/または曲げ弾性率(例えば、5GPa未満)を有する。例では、伸展性フランジ546は2mm未満の厚さである。
【0065】
示されるように、伸展性フランジ546の第一側面は、微調整トランスレータ540に取り付けられ、第一側面に対向する、伸展性フランジ546の第二側面は、いくつかの実施形態では、基材512に載置され得る(ガイド544が第一側面と第二側面との間の伸展性フランジ546の表面に取り付けられる)。これを図5B(他の図の中で)に示す。図5Aは、システム500の代替構成として、そして平面図での描写を明確にするために、伸展性フランジ546と基材512との間の分離を示す。
【0066】
それにもかかわらず、基材512(例えば、シリンダ上の)に載置しているときに、この例では微調整トランスレータ540と基材512との間で圧縮される伸展性フランジ546の弾性は、基材512の外面に対するガイド544の位置を維持する付勢力を提供する。基材512の外面に関連するトポグラフィは、伸展性フランジ546をさらに圧縮させる(すなわち、基材512上の突出した特徴によって伸展性フランジ546に加えられる圧縮力に応答して)または緩和させる(すなわち、基材512の表面上の、または表面内の逆突出した特徴に応答して)ことができる。伸展性フランジ546のこの可撓性、及び基材512の外面のトポグラフィに応答する関連した屈曲及び緩和により、基材512の外面に対して、ガイド544は、全体として、ほぼ(例えば、0.5cm、1mm、またはそれ未満内の)一定距離(それ自体は1cm、1mm、またはそれ未満であることができる)を維持することができる。したがって、ガイド544は、基材に接触することなく、基材に近接することができる。次にこれは、ナノファイバーヤーン502が基材に適用される精度を改善するので、糸配置における精度、及び上記の隣接するナノファイバーヤーン間のファインピッチを達成するのに役立つ。伸展性フランジ546の復元性もまた、基材512とガイド544との間の接触を防ぐ。この分離(ほぼ一定の距離に維持される)もまた、基材512上のナノファイバーヤーン502の隣接するセグメント間の配置及びファインピッチの精度を保つのに役立つ。
【0067】
ガイド544は、チャンネル548を画定し、ナノファイバーヤーン502は、基材512上に配置される前に、ガイド544によって画定されるこのチャンネルを通過する。ガイド544、チャンネル548の特徴及び利点は、図7図10の文脈でより詳細に以下に説明される。
【0068】
図5A及び図5Bに示される基材512は円筒形の基材であり、その回転は、図5A及び図5Bの曲線矢印によって示される。ただし、表面トポグラフィまたは形状における変化がナノファイバーヤーンを正確かつ的確に配置するのを困難にする可能性があるものでさえ、基材の任意の形状、幾何学的形状または構成に、本明細書に記載される実施形態は適用可能であることが理解されよう。基材512を使用して、ナノファイバーヤーン502の先端部を固定することができるため、基材512の移動(回転か平面平行移動かどうかにかかわりなく)が、ディスペンサーからナノファイバーヤーン502の追加部分を引き抜くことを可能にする。例では、基材512は、基材の構成要素として以下の、接着フィルム(紫外線硬化性接着剤を含む)、ガラス転移温度及び/またはナノファイバーヤーンに接着するようにポリマーが粘着性である温度以上の熱可塑性ポリマー、基材512とは反対の磁気極性を有する磁性粒子が含浸したナノファイバーヤーンを引き抜くことができる基材512を含む磁場のいずれかを使用することによって、ナノファイバーヤーン502の先端部を固定することができる。他の例では、ファンデルワールス力、真空、静電力、機械的接着(例えば、面ファスナーに見られるような表面の粗さまたは絡み合いの特徴に基づく)、または基材上の1つのコンポーネントと、ナノファイバーヤーン上もしくはこのナノファイバーヤーン内の相補的な反応性成分との間の反応からの相補的な化学的接着はすべて、ナノファイバーヤーン502の先端部(または任意の他の部分)を基材512に結合するために使用されることができる。さらに別の実施形態では、ナノファイバーヤーン502は、接着剤によって含浸される、または基材512に付着する接着剤によってコーティングすることができる(基材512自体が接着剤を含むかどうかにかかわりなく)。さらに別の実施形態では、ナノファイバーヤーン502に第一前駆体を含浸させ、この第一前駆体が基材512上に配置される第二前駆体と接触すると反応することで、ナノファイバーヤーン502及び基材512を共に連結することができる。
【0069】
場合によっては、1つ以上の取り外し可能な表面(前述の結合技術のいずれか1つ以上を使用する)は、基材512の外面を形成することができる。ナノファイバーヤーン502を基材512上の1つ以上の取り外し可能な表面に適用する、接着する、またはその他の方法で結合させると、取り外し可能な表面を基材512から取り外すことができるため、別の表面への糸の便利な適用、出荷のための取り外し可能な表面及び付着した糸のパッケージ化、または他の用途を可能にする。
【0070】
上述される実施形態は、より伝統的な技術及びシステムを使用する場合に基材上へのナノファイバーヤーンの配置中に通常存在する、さまざまな変動源を克服することができる。例えば、図5A及び図5Bに示されるこの例では、円筒形基材512の断面が完全に円形ではない場合があり、これはナノファイバーヤーン502を基材512上に配置する均一性、一貫性、及び精度に影響する場合がある(上記で示唆されるように)ことが理解されよう。
【0071】
本明細書に記載される実施形態は、図5A及び図5Bに示されるものを含むがこれらに限定されず、基材の形状、基材のトポグラフィ、及び/または基材と、この基材にナノファイバーヤーンを提供するために使用される構造体との間の相対移動に関連する公差における不規則さを克服するために適用されることができる。
【0072】
ヤーンディスペンサー
図6は、システム500に統合されるナノファイバーヤーンディスペンサー524の一例の斜視図を示す。ナノファイバーヤーンディスペンサー524は、ナノファイバーヤーンの廃棄及び混入の可能性を低減させながら、ナノファイバーヤーンの操作の利便性を改善する方式でナノファイバーヤーンを固定して保管し、分配するように構成される。
【0073】
図6に示される例示的なディスペンサー524は、ハウジング604、流入口608、ガス源612、スプール616、心棒620、ノズル624、ライナー632、及び流出口636を含む。
【0074】
ハウジング604は、ナノファイバーヤーンのスプールを収容するために使用されるハウジング604内にチャンバ606を画定することによって、ナノファイバーヤーンを固定して保管し、分配するように構成される。ナノファイバーヤーンは、ハウジングによる混入から保護されており、以下でより詳細に説明されるように、ハウジングによって画定される流出口から分配される。
【0075】
一実施形態では、ハウジング604は、流体(例えば、水、空気)及び混入物の意図しない侵入または浸透を防止するために気密封止される(ハウジング604によって画定され、以下により詳細に説明される流入口608及び流出口636を除いて)。いくつかの例では、ハウジング604もまた、チャンバ606内に保管される流体(ガス、ゲル、ポリマー、膨潤ポリマー、ポリマー溶液、接着剤、接着性ポリマー、または他の流体かどうかにかかわりなく)がハウジング604から流出する意図しない流出を防ぐ方式で封止される。目的に関係なく、気密封止されたハウジング604の形成は、射出成形または付加製造(「3Dプリント」としても知られている)を介して単一の材料からハウジング604を形成すること、接着剤(例えば、シロキサンポリマー)を使用してハウジング604の隣接部分の間の継ぎ目を充填すること、またはハウジング604の部分を合わせて溶接して継ぎ目を充填することを含む任意の数の技術を使用して達成されることができる。
【0076】
一例では、ハウジング604は、ナノファイバーヤーンのスプール616をハウジング604内で挿入する、除去する、及び/または交換することを可能にするのに十分な大きさのアクセスカバー626を含むように構成されることができる。アクセスカバー626は、例えば、シリコーングリースまたは圧縮性ガスケット(例えば、ネオプレンまたはシリコーンゴムガスケット)などのシーラントを使用して、ハウジング604に気密封止されることができる。アクセスカバー626は、ハウジング、圧縮性ガスケット(図示せず)、及びアクセスカバー626の間に圧力を加えて維持するように、クランプ、ねじ付きボルトもしくはねじ、または他の機構を使用して固定されることができる。シールは永続的または一時的であることができる。本明細書で使用されるように、シールは、ハウジングまたはカバーに損傷を与えることなく容易に開封されることができない場合に永続的である。
【0077】
上述されるように封止されたハウジング604の別の利点は、ナノファイバーヤーンの自由端部を配置するための負圧(すなわち、真空)の使用を含む。例えば、ナノファイバーヤーンの自由端部を含むスプールは、封止されたハウジング604内に配置されることができる。真空は、ハウジング604の流出口636に適用されることができ、真空がチャンバ606のいかなるガス状内容物も除去するときに、チャンバ606からナノファイバーヤーンの自由端部を引き抜く。このプロセスは、ガスまたは流体が流入口608及び/またはガス源612を通りチャンバ606に流入して流出口636を通るので、ナノファイバーヤーンの自由端部をチャンバ606から導き、流出口636に通すことを可能にすることも含むことができる。それにもかかわらず、真空、及び流体(液体または気体)の流れを使用してナノファイバーヤーンの自由端部を配置することは、ナノファイバーヤーンの自由端部を迅速に、そして困難な手動検査及び/または手動操作なしで配置することができるため、ナノファイバーヤーンを操作するのに役立つ。一旦配置されると、ナノファイバーヤーンの自由端部は、機械類と係合されること、表面に適用されること、またはその他の方法でディスペンサー600を使用してナノファイバーヤーンの制御された適用のための開始点として機能することができる。
【0078】
ハウジング604によって画定される流入口608は、流体が流れることができる通路である。上記に示されるように、流入口608を使用してハウジング604によって画定されるチャンバ606に正圧及び流れを提供することができ、この正圧及び流れを使用してナノファイバーヤーンの自由端部を移動させ、ディスペンサー600の流出口636に通す。
【0079】
また、流入口608を使用して他の種類のガスまたは流体をハウジング604に提供することができ、そのハウジング内にナノファイバーヤーンのスプール616を配置する。例えば、流入口608を介して不活性ガス(例えば、アルゴン、窒素)を導入することができる。これは、例えば、空気中の成分(例えば、酸素、水蒸気、粉塵粒子)による腐食、分解、または混入の影響を受けやすい第二材料(例えば、金属ナノ粒子)がナノファイバーヤーンに組み込まれている場合に行われ得る。
【0080】
任意選択のガス源612は、流入口608と流体連通している。図示されるように、ガス源612は、ハウジング604と一体になるように、流入口608に近接するハウジング604の一部分に連結される(そして封止される)管である。このようにして、ガス源612は、ガス(または他の流体)が流入口608を介してチャンバ606に供給されることを可能にすると同時に、混入物のチャンバ606中への侵入を防止する。
【0081】
スプール616は、1本のナノファイバーヤーン614がそのスプールの周りに巻かれ、巻かれると、ディスペンサー600内に配置されることができるように構成される。また、スプール616は、ディスペンサー600から引き抜かれるナノファイバーヤーン614の自由端部に応答して、ハウジング604によって画定されるチャンバ606内に配置されている間に回転するように構成される。
【0082】
一例では、任意選択の心棒620は、スプール616とハウジング604との間の接触誘起摩擦を低減する、スプール616の円形断面の中心に配置される円筒形構造体である。心棒620は、スプールの回転に対して静止していることを意味する受動的であることができる、またはスプールの回転を容易にするために回転することを意味する能動的であることができる。任意選択の心棒620を含むことの利点は、スプールをハウジング内で中心に置くこと、加えられた力の所与の単位について回転速度を上げること、及び/またはスプール616からナノファイバーヤーン614を引き抜くのに必要な力を減らすことを備える。心棒620の別の利点は、潤滑剤が塗布される表面積を減らすことで、ハウジング604によって画定されるチャンバ606中に導入される潤滑剤の量を減らすため、潤滑剤によるナノファイバーヤーンの混入の可能性を減らすことである。
【0083】
ノズル624は、ハウジング604に取り付けられている、またはその他の方法でハウジング604と一体になっている。任意選択のノズル624は、図6の実施形態に示され、図6はハウジング604内の流出口636からナノファイバーヤーンを直接分配することではなく、ノズル624を含むことの利点のいくつかを示す。
【0084】
ノズル624は、ハウジング604によって画定される流出口636と連通しているチャンネル628を画定する。チャンネル628は、スプール616から巻き戻されているときに細長いナノファイバーヤーンの一部分を含むのに十分大きいが、可撓性かつ伸展性のナノファイバーヤーンがチャンバ606に押し戻されるのを防ぐのに十分小さい直径を有する。いくつかの例では、チャンネル628の内径は、この特徴を達成するためにそこで使用されるナノファイバーヤーンの外径よりも大きい、10%、15%、25%、50%、100%、250%、またはこれらの間の値である。また、チャンネル628は、水の侵入を防ぐのに十分小さい流出口636の開口部とは反対の開口部(すなわち、開口部の内径)を含むことができる。すなわち、チャンネルの開口部は、水滴がチャンネル628の内面を濡らすのを水の表面張力が防ぐように十分小さいことができる。水の侵入を防ぐことができるチャンネルの半径を計算するために使用される関係の一例は、式1に従う。
r=2γ/ΔP 式1
【0085】
式中、rは水の侵入を防ぐ開口部の半径、γは水の表面張力、ΔPは液滴の内部と液滴の外面との間の圧力差である。いくつかの例では、ΔPは、重力による加速度(9.81メートル/秒)、及び水の密度(1気圧及び「標準」温度(すなわち、0℃)で約1000kg/m)に比例する。いくつかの例では、ノズル624の表面上の水(または他の液体材料)の表面張力は、ノズル624によって画定されるチャンネル中への水の侵入に影響することができる。例えば、シリコーン及びポリテトラフルオロエチレンなどの低表面エネルギー材料、ならびに同様の低表面エネルギー及び/または同様の疎水性を有する他の材料は、水の侵入を防ぐのに役立つ。
【0086】
また、チャンネル628を含むことは、流入口608を通して供給されるガスの流れを容易にし、このガスの流れは、チャンバ606内に配置されるナノファイバーヤーンの自由端部を位置づけ、流出口636から出た糸をその後の使用のためにチャンネル628に「通す」ために使用されることができる。
【0087】
任意選択のライナー632は、チャンネル628内に嵌合するように構成される。ライナー632は、ナノファイバーヤーンがディスペンサー600を出ることができる代替の表面を提供する。ライナー632は、便利に交換されるように取り外し可能であってもよい。例えば、ノズル624によって画定されるチャンネル628は、ほとんどのナノファイバーヤーンに望まれるサイズよりもはるかに大きいサイズを有する寸法に形成されることができる。一例では、ライナー632は、チャンネル628の内面と締まりばめを形成するのに十分に大きい外径を有し、ナノファイバーヤーンにチャンネルを提供するのに十分に小さい内(interior)径(または内(inner)径)を有し、このチャンネルは、上述されるように、ナノファイバーヤーンのもつれのリスクを低減させる、及び/または水の侵入を防止する。続いて、異なる内径を有する異なるライナー632をチャンネル628に挿入して、異なる直径のナノファイバーヤーンに対応することができる。一般に、ライナー632(またはライナー632がディスペンサー600で使用されない場合にはチャンネル628)の直径は、ディスペンサー600からライナー632を通して分配されることが求められるナノファイバーヤーンの直径よりも少なくとも50%大きくすることができる。他の例では、ライナー632(またはチャンネル628)の直径は、ディスペンサー600からライナー632を通して分配されることが求められるナノファイバーヤーンの直径よりも70%から100%、または100%から200%大きい。一例では、直径30μmのナノファイバーヤーンは、直径50μmのライナーを通して分配されることができる。別の例では、直径100μmのナノファイバーは、直径200μmのライナーを通して分配されることができる。チャンネル628及びライナー632の直径の両方を使用する実施形態に調和して、これらの直径を選択することができることが理解されよう。
【0088】
ライナー632の別の利点は、ナノファイバーヤーンを分配することができる、交換しやすい表面をライナーが提供することである。これは、ポリマー、空気賦活化接着剤(例えば、メタクリレート系接着剤)、他の接着剤(例えば、感圧接着剤、エポキシ、エラストマー接着剤、ゾルゲル前駆体)、及び/または基材への接着もしくは重なり合う糸の間の接着を改善する接着剤内に配置される高表面積のグラフェンフレーク、酸化グラフェンもしくは他のフィラー粒子、溶媒、またはチャンネル628を占めて潜在的に閉塞させる可能性もあるチャンバ内に配置される他の流体成分を含むディスペンサー600の実施形態に特に有用である。ライナー632を使用する場合、単純に、閉塞したライナー632を取り外し、それをきれいなライナー632と交換し、上述される技術を使用してきれいなライナー632にナノファイバーヤーンを再度通すことによって、いかなる閉塞も取り除くことができる。
【0089】
上述されるように、流出口636は、ハウジング604によって画定され、開口部を提供し、ナノファイバーヤーンは、ディスペンサー600から分配されるときに、この開口部を通過することができる。流出口636は、上述されるように、チャンネル628及びライナー632のうちの1つ以上と連通していることができる。
【0090】
配置アセンブリ
図7は、基材512にナノファイバーヤーン502を提供するプロセスにおける配置アセンブリ508の立面図を示す。上記に示されるように、システム500の他の要素に加えて、配置アセンブリ508は、100μm未満、50μm未満、10μm未満、及びいくつかの実施形態ではわずか2μmのピッチで、基材512上に複数のナノファイバーヤーン502を配置することができる。また上記に示されるように、配置アセンブリ508は、わずか1μm以下である直径を有するナノファイバーヤーンに対してこれらのファインピッチを達成することができる。
【0091】
図7に示されるように、配置アセンブリ508の伸展性フランジ546は、ガイド544と基材512との間のおよそ(例えば、1mm以内)の分離を維持するように、基材512(この例では回転シリンダ)と接触している。ナノファイバーヤーン502は、ガイド544によって画定されるチャンネル548を通過する。チャンネル548を通過すると、ナノファイバーヤーン502は、上記で示される最小値(またはそれ以上)のいずれかを有するピッチ「P」で基材512上に配置される。
【0092】
図8は、図7に示される構成の断面図(基準軸514に垂直に取られる)を示す。示されるように(及び前述されるように)、伸展性フランジ546は、基材512(円筒形基材のこの例では、その一部が示される)と接触するため、上述されるように、基材512のトポグラフィの変化に関係なく一定のままであるように、ガイド544と基材512との間の距離を維持する。示されるように、ガイド544は、ナノファイバーヤーン502が基材512の表面に適用される前に通過するチャンネル548を画定する。より具体的には、ガイド544は、内面804(この断面図では804A及び804B)を含み、次に、これらの内面は、この例では2つの内面804の接合部に見られる1つ以上の隅部808(この例では808A及び808B)を画定する。いくつかの例では、隅部808(これをナノファイバーヤーン502が通過する)は、30°から90°の角度で2つの内面804の接合部によって形成される。いくつかの例では、この角度は、隅部808から0.1mmまたは0.2mmの巨視的距離で隅部808に隣接する表面804上で測定される。この角度は、この範囲の角度に限定されず、むしろ、ナノファイバーヤーン502の直径に応じて選択され、また、隅部808がガイドを通るナノファイバーヤーン502の移動を妨げないように十分に鈍角であるが、ナノファイバーヤーン502が隅部に留まることで基材512に対する位置に意図しない変化を有さないように十分に鋭角であるように選択される。「隅部」という用語は本明細書に記載される実施形態の使用中にナノファイバーヤーン502がそこに移動し、その中に留まる位置を指すために便宜上使用され、狭い幾何学的解釈(例えば、原子スケール90°の角度)を課すことが意図されないことが理解されよう。
【0093】
ガイド544は、ナノファイバーヤーン502が張力下にあるときに、ナノファイバーヤーン502が隅部808に自然に移動し、この隅部を通過するように配向される。ナノファイバーヤーン502における張力は、基材512の表面上へのナノファイバーヤーン502の適用中に自然に発生する。ナノファイバーヤーン502は、第一制御速度でディスペンサー524から放出され、同様に、第二制御速度で基材512に適用される。第一及び第二制御速度は、0.1ミリニュートン(mN)から10mNの張力をナノファイバーヤーン502上に与えるように制御される(粗調整トランスレータ520、微調整トランスレータ528、及び基材512自体のうちの1つ以上の移動によるかどうかにかかわらず)。それにもかかわらず、ナノファイバーヤーン502上の張力は、ガイド544によって画定されるチャンネル548内の最上部の隅部に糸を自然に引き寄せる。本明細書に記載されるチャンネル548及び隅部808の構成が説明の便宜のためにのみ選択されていることが理解されよう。さまざまな構成(例えば、ヤーン502の移動を同様に最小化するのに十分小さい直径、例えば、ミクロンスケールの直径を有する、楕円形チャンネル、涙滴形チャンネル、円形チャンネル)のいずれかが同様の効果を生み出すことが理解されよう。
【0094】
隅部808にナノファイバーヤーン502を配置することは、ナノファイバーヤーン502が配置される一貫性、正確さ、及び精度を改善し、すでに上述された糸のピッチを容易にする多くの利点を有する。1つの利点は、ナノファイバーヤーン502が、隅部808に配置されると、対応するガイド間の糸の一部分に加えられる横方向の力(例えば、隣接する(そして場合により当たる)内面によってナノファイバーヤーン502に課せられる物理的幾何学的制約による基材512及び/または粗調整及び微調整トランスレータの横方向の移動が原因である)に関係なく隅部808に残る可能性が高いことである。ナノファイバーヤーンがいずれかの意図せずに加えられた力に応じて基材に対して移動する可能性が低いので、隅部808におけるナノファイバーヤーン502の、このしっかりした配置は、上述されるように、ナノファイバーヤーン502の配置における可変性を低減させる。すなわち、隅部808の構成は、チャンネルの隣接する内面が、ヤーン502の横方向の平行移動に対する抵抗を与えることで、ヤーン502を適所に維持するようなものである。
【0095】
図9(A)、図9(B)、及び図9(C)は、ガイドのさまざまな実施形態を示す。図9(A)は、この場合、チャンネル916を画定する4つの内面912(明確にするために、それらのうちの1つのみがラベル付けされている)を含む、ディスク908から製造されるガイド904を示す。この例では、ディスク908は、3mmの直径、及び200μmの厚さを有する。これらの内面912はそれぞれ3mmの長さを有する。上述されるように、内面912は、隅部920で互いに交差する(明確にするために、それらのうちの1つのみがラベル付けされている)。ガイド904についての寸法が例示のために過ぎず、多くの異なるガイドの寸法、幾何学的形状、及び構成が本明細書に開示された概念と一致していることが理解されよう。
【0096】
図9(B)は、チャンネル936を画定する内面932(明確にするために、それらのうちの1つのみがラベル付けされている)を含む、ディスク928から製造されるガイド924を示す。この例では、ディスク928は、3mmの直径、及び200μmの厚さを有する。これらの内面932はそれぞれ0.5mmの長さを有する。上述されるように、内面932は、隅部940(明確にするために、それらのうちの1つのみがラベル付けされている)で互いに交差する。ガイド924についての寸法が例示のために過ぎず、多くの異なるガイドの寸法、幾何学的形状、及び構成が本明細書に開示された概念と一致していることが理解されよう。
【0097】
図9(C)は、チャンネル956を画定する内面962(明確にするために、それらのうちの1つのみがラベル付けされている)を含む、ディスク948から製造されるガイド944を示す。この例では、ディスク948は、3mmの直径、及び200μmの厚さを有する。図9(C)に示されるように、2つの内面962は0.5mmの長さを有し、2つの内面962は1.5mmの長さを有し、矩形を形成する。上述されるように、内面962は、隅部960(明確にするために、それらのうちの1つのみがラベル付けされている)で互いに交差する。ガイド944についての寸法が例示のために過ぎず、多くの異なるガイドの寸法、幾何学的形状、及び構成が本明細書に開示された概念と一致していることが理解されよう。
【0098】
前述のガイドのいずれかは、シリコーンまたはゲルマニウムの単結晶から製造されることができる。これらの材料の単結晶は、この結晶の一部の結晶面のみを除去し、他の面は除去しないエッチング液の化学物質を使用して選択的にエッチングされることができるため、チャンネル及び対応する内面の形成を容易にする。他の実施形態では、ガイドの前述の実施形態のいずれかは、とりわけ、石英、セラミックス(酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化チタンなど)、金属類(鋼、ステンレス鋼、タングステン、銅など)から製造されることができる。場合によっては、ガイドは、その上を通過する糸に特性を与える材料から作製されることができる。例えば、それは、糸に静電荷を加えて、その糸が基材に接着することを可能にする材料を含むことができる。
【0099】
上述される実施形態、例えば、システム500の実施形態は、単一のガイド及びナノファイバーヤーンのみが単一の基材に適用されることを示すが、複数の糸が1つ以上のガイドを介して提供され、同時に1つ以上の基材上に配置されるようにシステムが構成されることができることが理解されよう。
【0100】
図10は、上述される実施形態のいくつかに従ってナノファイバーヤーンを適用するための例示的な方法1000を示す。この方法1000は、チャンネルを画定するガイドにナノファイバーヤーンの先端部を通す(1004)ことから始まり、このガイドは基材に近接する。ナノファイバーヤーンの先端部を基材と結合する(1008)。次に、張力をナノファイバーヤーンに加える(1012)。この張力は、チャンネル内に配置されるナノファイバーヤーンの一部分をチャンネルの隅部に移動させ、隅部はナノファイバーヤーン上に加えられた張力に応答して、チャンネル内のナノファイバーヤーンの移動を制限する。上述されるように、張力は、0.1mNから10mNの間であり得る。いくつかの例では、張力を加えることは、ナノファイバーヤーンが提供される第二速度とは異なる第一速度で、チャンネルを通してナノファイバーヤーンを引くように円筒形基材を回転させることを含む。第一速度と第二速度との間のこの差異は、張力をもたらすことができる。
【0101】
いくつかの実施形態では、方法1000は、基材と接触し、ガイドに取り付けられる伸展性フランジを配置する(1010)ことを任意選択でさらに含む。上述されるように、伸展性フランジは、ガイドと基材との間の相対移動中にガイドと基材との間の一定の距離を維持するために弾発力を与える。
【0102】
方法1000は、ガイドと基材との間に相対移動を引き起こす(1020)ことを含む。この相対移動が起こる場合、この相対移動は、相対移動に対応するさまざまな位置で、1本のナノファイバーヤーンを基材に付着させることができる。相対移動は、ガイドの平行移動(例えば、上述されるシステムを介する)、基材の回転もしくは平行移動、またはそれら両方によって引き起こされることができる。場合によっては、ナノファイバーヤーンの隣接部分は、上述されるように、10μm未満、及び任意選択で約2μm未満のピッチで配置される(1024)。
【0103】
用途
上述される実施形態は、さまざまな用途のために、基材上に正確に配置されたカーボンナノチューブ(または同等のナノファイバー)の糸を適用するために特に有用である。例えば、糸のパターン(平行な糸のパターン及び/または糸の直交グリッド)を基材上に配置することができ、そのとき、糸のパターンは高周波(RF)放射を含む電磁放射(EMI)の偏光子またはシールドとして機能する。また、ナノファイバーヤーンは、ナノファイバーヤーンに対応する電気抵抗を提供する材料で構成される、及び/または含浸されるときに、抵抗加熱装置として機能するように配列されることができる。また、ナノファイバーヤーンは、非常に低い導電率(例えば、銅、アルミニウム、及び/または金によって示される導電率以下の)を有するように調整され、電子部品間の電気接続として使用されることができる。
【0104】
さらなる考察
本開示の実施形態の前述の説明は、例示の目的で提示されている。網羅的であること、または請求項を開示された正確な形式に限定することを意図していない。当業者は、上記の開示を考慮して、多くの修正及び変化が可能であることを認識することができる。
【0105】
本明細書で使用される言葉は、主に読みやすさ及び指示の目的のために選択されており、その言葉は、本発明の主題を記述または制限するために選択されていない場合がある。したがって、本開示の範囲は、この「発明を実施する形態」によってではなく、むしろ本明細書に基づく出願において生じるいずれかの請求項によって制限されることが意図される。し-+たがって、本実施形態の開示は、限定ではないが、以下の「特許請求の範囲」に記載されている本発明の範囲を例示することを意図している。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10