(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】流量制御弁
(51)【国際特許分類】
F16K 1/34 20060101AFI20240521BHJP
F16K 31/04 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
F16K1/34 H
F16K31/04 Z
(21)【出願番号】P 2021017330
(22)【出願日】2021-02-05
【審査請求日】2022-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000204033
【氏名又は名称】太平洋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】藤本 聡
(72)【発明者】
【氏名】見津 輝聖
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-17663(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109323006(CN,A)
【文献】特開2018-35840(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0074994(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00- 1/54
F16K 31/00-31/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を途中部分で仕切る仕切壁に備えた弁孔にニードル形の弁体が嵌合され、前記弁体をその軸方向に移動して前記弁体の外側面と前記弁孔の内側面との間を通過する流体の流量を制御する流量制御弁であって、
前記弁孔の前記内側面に含まれるテーパ内側面と、
前記弁体の前記外側面に含まれ、前記テーパ内側面に対して内側から対向し、前記テーパ内側面に沿って傾斜したテーパ外側面と、を有
し、
前記テーパ外側面の大径側端部の外径は、前記テーパ内側面の大径側端部の内径より小さく、
前記弁体の前記外側面のうち前記テーパ外側面の大径側端部の隣には、前記テーパ外側面の大径側端部と同一外径かそれより外径が大きい円筒外側面が備えられていて、
前記弁孔の前記内側面のうち前記テーパ内側面の大径側端部の隣には、前記テーパ内側面の大径側端部と同一内径かそれより内径が大きく、前記テーパ外側面に外側から対向する円筒内側面が備えられている流量制御弁。
【請求項2】
前記テーパ外側面より前記テーパ内側面のテーパ角が小さい請求項1に記載の流量制御弁。
【請求項3】
前記弁体の移動距離をL1[mm]とし、前記テーパ外側面と前記テーパ内側面と間の最短距離の増加をL2[mm]とすると、
0<L2/L1<0.18
である請求項1又は2に記載の流量制御弁。
【請求項4】
駆動源としてステッピングモータを有し、
前記ステッピングモータの1ステップの動作角に対する前記弁体の移動する距離が0.5~20[μm]である請求項3に記載の流量制御弁。
【請求項5】
前記弁孔は、前記テーパ内側面より一端側に向かうに従って拡径すると共に、前記テーパ内側面より他端側に向かうに従って拡径し、
前記テーパ内側面の軸長は、前記テーパ外側面の軸長より小さくなっている請求項1から4の何れか1の請求項に記載の流量制御弁。
【請求項6】
前記弁体及び前記弁孔のうち前記テーパ外側面及び前記テーパ内側面よりも大径側に配されて、互いに当接して流量制御弁を閉弁状態にする当接部を備え、
前記閉弁状態において、前記テーパ外側面と前記テーパ内側面との間に隙間がある請求項1から5の何れか1の請求項に記載の流量制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流路に設けられ、流体の流量を制御する流量制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の流量制御弁として、弁体をその軸方向に移動して弁体の外側面と弁孔の内側面との間を通過する流体の流量を制御するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の流量制御弁においては、弁体の外側面と弁孔の内側面とが対向している状態で弁体が径方向で振動すると、弁体の外側面と弁孔の内側面との一方又は両方が摩耗し、流量制御に不具合が生じることがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の流量制御弁は、流路を途中部分で仕切る仕切壁に備えた弁孔にニードル形の弁体が嵌合され、前記弁体をその軸方向に移動して前記弁体の外側面と前記弁孔の内側面との間を通過する流体の流量を制御する流量制御弁であって、前記弁孔の前記内側面に含まれるテーパ内側面と、前記弁体の前記外側面に含まれ、前記テーパ内側面に対して内側から対向し、前記テーパ内側面に沿って傾斜したテーパ外側面と、を有し、前記テーパ外側面の大径側端部の外径は、前記テーパ内側面の大径側端部の内径より小さく、前記弁体の前記外側面のうち前記テーパ外側面の大径側端部の隣には、前記テーパ外側面の大径側端部と同一外径かそれより外径が大きい円筒外側面が備えられていて、前記弁孔の前記内側面のうち前記テーパ内側面の大径側端部の隣には、前記テーパ内側面の大径側端部と同一内径かそれより内径が大きく、前記テーパ外側面に外側から対向する円筒内側面が備えられている流量制御弁である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、
図1から
図8を参照して本開示の流量制御弁10について説明する。
図1に示される流量制御弁10は、所謂、「電動膨張弁」であって、モータ11(ステッピングモータ)により、弁体27を有するシャフト部材25を駆動する。以下、便宜上、
図1における上下方向を流量制御弁10及びその構成部品の上下方向とするが、流量制御弁10はどのような姿勢で用いられてもよい。
【0008】
モータ11は、ステータ12とロータ20とから構成されている。ステータ12は、概円筒状のバルブボディ13の中間部分に、電磁コイル12Aを複数収容する環状ケース12Cが取り付けられてなる。バルブボディ13は、一端有底の円筒ケース13Aと、円筒ケース13Aの底壁13Bに形成された貫通孔13Dを貫通して延びた内筒部13Nと、を有している。円筒ケース13Aの上端開口13Cは蓋体13Fにより閉塞されている。環状ケース12Cは円筒ケース13Aの下端部に配されている。なお、円筒ケース13Aは、両端が開放され、円筒ケース13Aと内筒部13Nとの間が別の部材により閉塞される構成であってもよい。
【0009】
内筒部13Nの上部には、内側に延長管15が圧入されている。延長管15の下部の内面には、雌螺子部15Nが形成されている。
【0010】
内筒部13Nの下端部には、弁孔31が形成された仕切壁30が備えられている。内筒部13Nのうち仕切壁30寄り位置には、側壁を貫通する貫通孔29が形成され、その貫通孔29に、第1接続管14Aが取り付けられている。また、仕切壁30の下面には、下方に延びる第2接続管14Xが取り付けられている。これにより仕切壁30の弁孔31を介して、第2接続管14Xから第1接続管14Aへ(又はその逆方向へ)流体の流動が可能となる。つまり、仕切壁30は、第2接続管14Xから第1接続管14Aへの流路100を途中部分で仕切っている。
【0011】
図1に示すように、ロータ20は、上端有底円筒状の永久磁石20Aと、永久磁石20Aの上端壁に貫通固定されたシャフト部材25とからなり、円筒ケース13Aの内側に回転可能に収容されている。シャフト部材25のうち永久磁石20Aへの固定部分より下側には、下方へ開放した弁体収容部屋25Uが形成されている。弁体収容部屋25Uには、内筒部13Nの軸方向に延びるニードル形の弁体部材26の基端部と、弁体部材26の基端部より奥側に配された圧縮コイルバネ25Dと、が収容され、弁体収容部屋25Uの開口側端部には、筒状の弁体抜止部材25Tが固定されている。弁体部材26の基端部は、弁体抜止部材25Tの内径よりも側方に張り出していて、弁体部材26は圧縮コイルバネ25Dにより下方へ付勢され、弁体抜止部材25Tに押し当てられている。弁体部材26の下端部(先端部)は、弁体27となっている。
【0012】
シャフト部材25の外側面の下部には、雄螺子部25Aが形成されていて、この雄螺子部25Aは、延長管15の雌螺子部15Nと螺合している。これにより、永久磁石20Aと共にシャフト部材25が回転する(即ち、ロータ20が回転する)と、シャフト部材25(即ち、ロータ20)が上下方向に移動し、弁体27が弁孔31を開閉する(
図2及び
図3参照)。なお、弁体部材26は、シャフト部材25と共に回転してもよいし、バルブボディ13に対して回転しないように構成されていてもよい。例えば、弁体部材26の一部の断面を非円形にして、バルブボディ13にその非円形の断面に対応した非円形の貫通孔を形成する等してもよい。
【0013】
シャフト部材25のうち永久磁石20Aへの固定部分より上側には、螺旋ガイド22が固定されている。螺旋ガイド22は、シャフト部材25の上端部に線材を螺旋状に巻回してなる。なお、シャフト部材25の上端部がスリット加工され、その間に線材のストレート部が挿入されてカシメ固定されることで、螺旋ガイド22は、シャフト部材25に固定される。また、螺旋ガイド22の固定を、線材の上端部をシャフト部材25の上端部に側方から貫通させることにより行ってもよい。
【0014】
螺旋ガイド22にはスライダ23が係合している。スライダ23は、螺旋ガイド22のうち軸方向で隣り合った線材同士の隙間の一部に収まったリング状をなしかつ側方にスライダアーム23Aを張り出して備えている。また、円筒ケース13Aの上端開口を閉塞する蓋体13Fからは、シャフト部材25と平行にストッパ17が垂下されている。そして、スライダアーム23Aがこのスライダ23に当接した状態で、ロータ20が回転するとスライダ23が螺旋ガイド22に対して相対回転して上下動し、螺旋ガイド22の上端部又は下端部まで移動したときに回動不能となる。これにより、ロータ20の回転量(即ち、弁体27の直動量)が規制される。
【0015】
流量制御弁10は、例えば、カーエアコンの冷媒用の流路100に組み込まれていて、第1接続管14Aと第2接続管14Xとの間の冷媒の流量を制御する。具体的には、
図1に示すように、スライダ23が螺旋ガイド22の上端部で回転規制されている状態では、
図2に示すように、弁体部材26の弁体27が仕切壁30の弁孔31内に進入して弁座32に当接することで、弁孔31を閉塞して第1接続管14Aと第2接続管14Xとの間の流動を規制する。そして、
図3に示すように、弁体27が上方に移動し、弁孔31を開放することで、第1接続管14Aと第2接続管14Xとの間の流動が可能となる。
【0016】
以下、弁体27と弁孔31とについて説明する。
図1及び
図2に示すように、弁体27の外側面27Xは、上から順に、シャフト部27Aと、第1ニードルテーパ部27B(特許請求の範囲中の「当接部」に相当する)と、ニードルストレート部27C(特許請求の範囲中の「円筒外側面」に相当する)と、第2ニードルテーパ部27D(特許請求の範囲中の「テーパ外側面」に相当する)と、第3ニードルテーパ部27Eと、を有している。シャフト部27Aは、弁孔31の最小内径よりも大きい一定の外径を有した円筒面をなしている。第1ニードルテーパ部27Bは、シャフト部27Aの下端から縮径して延びている。ニードルストレート部27Cは、第1ニードルテーパ部27Bの下端から垂下し、その軸方向の長さは、第1ニードルテーパ部27Bの軸方向の長さの1/3~1/5程になっている。第2ニードルテーパ部27Dは、ニードルストレート部27Cの下端から縮径して延び、その軸方向の長さは、第1ニードルテーパ部27Bの軸方向の長さの2~5倍程になっている。
【0017】
第1ニードルテーパ部27Bと第2ニードルテーパ部27Dとはテーパ角が異なっており、第2ニードルテーパ部27Dは、第1ニードルテーパ部27Bよりもテーパ角が小さくなっている。例えば、第1ニードルテーパ部27Bのテーパ角(全角)は40~60度である一方、第2ニードルテーパ部27Dのテーパ角(全角)は1~10度となっている。
【0018】
第3ニードルテーパ部27Eは、第2ニードルテーパ部27Dの下端から第1ニードルテーパ部27Bのテーパ角より大きい角度で縮径していて、その軸方向の長さは、ニードルストレート部27Cの軸方向の長さと略同一になっている。
【0019】
図2~
図4に示すように、弁孔31は、仕切壁30を貫通しており、仕切壁30の内側面の上端部が弁座32(特許請求の範囲中の「当接部」に相当する)となっている。弁座32は、第1ニードルテーパ部27Bに対応して第1ニードルテーパ部27Bと同じか第1ニードルテーパ部27Bより僅かに(差が10度未満)大きい角度で傾斜している。この弁座32に対して、弁体27の第1ニードルテーパ部27Bが接離することで弁孔31が閉開される。
【0020】
仕切壁30の内側面30X(弁孔31の内側面30X)は、弁座32の下方に、上部ストレート部30Aと、上部テーパ部30Bと、流量制御ストレート部30C(特許請求の範囲中の「円筒内側面」に相当する)と、対向テーパ部30D(特許請求の範囲中の「テーパ内側面」に相当する)と、下部テーパ部30Eと、を有している。上部テーパ部30Bは、上部ストレート部30Aの下端から縮径して延びている。流量制御ストレート部30Cは、上部テーパ部30Bの下端から下方へ垂下している。対向テーパ部30Dは、流量制御ストレート部30Cの下端から縮径していて、第2ニードルテーパ部27Dに沿って傾斜している。例えば、対向テーパ部30Dのテーパ角(全角)は、第2ニードルテーパ部27Dと同じか、第2ニードルテーパ部27Dより僅かに(差が1.0度未満。より好ましくは0.5度未満)小さくなっている。対向テーパ部30Dの軸方向の長さは、例えば、流量制御ストレート部30Cの軸方向の長さの1.2~2倍程の長さになっている。
【0021】
また、流量制御ストレート部30Cの軸方向の長さは、弁体27のニードルストレート部27Cの軸方向の長さより大きく(本実施形態では、1.2倍程)なっていて、対向テーパ部30Dの軸方向の長さは、弁体27の第2ニードルテーパ部27Dの軸方向より小さく(本実施形態では、1/4~1/5倍程)なっている。
【0022】
下部テーパ部30Eは、対向テーパ部30Dの下端から拡径して延びている。この下部テーパ部30Eの軸方向の長さは、対向テーパ部30Dの軸方向の長さの4~5倍程となっている。
【0023】
図2に示すように、閉弁時には、弁座32に弁体27の第1ニードルテーパ部27Bが当接して弁孔31を閉塞する。このとき、弁体27のニードルストレート部27Cの下部が、弁孔31の流量制御ストレート部30Cの上端部と隙間を有して対向すると共に、弁体27の第2ニードルテーパ部27Dの上部が、弁孔31の流量制御ストレート部30C及び対向テーパ部30Dと隙間を有して対向している。
【0024】
図5には、流量制御弁10が全閉状態(
図2参照)から全開状態(
図4参照)になるまでの開口断面積の変化が示されている。
図5のグラフの横軸は、弁体27の直動位置(弁開度)をモータ11(ステッピングモータ)の入力パルス数によって表現したものである。このグラフにおいて、入力パルス数が「0」のとき、弁体27の先端部は弁孔31に対して最も突入した位置(弁開度が最小)となり、入力パルス数が大きくなるに従って、弁体27の先端部は弁孔31から後退する。また、開口断面積とは、弁孔31と弁体27との間の最も小さい隙間の断面積を指しており、この開口断面積の変化に応じて、流体の流量が変化する。本実施形態では、モータ11の1ステップの動作角に対する弁体27の移動する距離が0.5~20[μm]となっていて、弁体27の位置を細やかに制御可能となっている。
【0025】
まず、全閉状態(
図2参照)から開弁し、弁座32と弁体27の第1ニードルテーパ部27Bとの間の隙間が大きくなるにつれて開口断面積が徐々に大きくなる(
図5中の※1)。弁座32と弁体27の第1ニードルテーパ部27Bとの間の隙間の断面積が弁体27のニードルストレート部27Cと弁孔31の流量制御ストレート部30Cとの間の隙間の断面積を超えると、ニードルストレート部27Cが流量制御ストレート部30Cを抜けるまで(
図6参照)、開口断面積は一定となる(
図5中の※2)。
【0026】
そして、ニードルストレート部27Cが流量制御ストレート部30Cを抜けると、弁体27の第2ニードルテーパ部27Dと流量制御ストレート部30Cとの間の隙間が徐々に大きくなっていき(
図3参照)、再び、開口断面積が徐々に大きくなる(
図5中の※3)。この部分の開口断面積の変化により、小流量域での流量制御が可能となる。この区間の弁体27の移動距離をL1とし、第2ニードルテーパ部27Dと流量制御ストレート部30Cとの間の最短距離の変位量をL2とすると、0<L2/L1<0.18となっていて、第2ニードルテーパ部27Dのテーパ角を小さくすることにより開口断面積を細やかに制御可能となっている。
【0027】
第2ニードルテーパ部27Dが流量制御ストレート部30Cを抜けると(
図7参照)、第2ニードルテーパ部27Dの下端と、弁孔31の上部テーパ部30B、
上部ストレート部30A及び弁座32と、の間の隙間の断面積が開口断面積となり、その後、弁座32の上端と弁体27の第3ニードルテーパ部27Eとの間が開口断面積となる(
図8参照)。そして、弁体27の全体が弁孔31から抜けて、全開状態となる(
図4参照)。
【0028】
ところで、従来の流量制御弁では、例えば、ロータの偏心回転等により弁体が径方向で振動すると、弁体又は弁孔が摩耗することがあった。特に、本実施形態の流量制御弁10の流量制御ストレート部30Cと上部テーパ部30Bとの境界部のように、小流量域で開口断面積を形成する部分がエッジになっている部分に弁体27が線当りしてエッジが摩耗してしまうと、小流量域での流量制御に不具合が生じることがあった。
【0029】
これに対して、本実施形態の流量制御弁10によれば、弁孔31の内側面に、弁体27の第2ニードルテーパ部27Dに略平行に対向する対向テーパ部30Dを備えているので、弁体27が径方向で振動したときに、弁体27(第2ニードルテーパ部27D)が弁孔31の対向テーパ部30Dに面当りする。これにより、弁体27又は弁孔31が摩耗しにくくなる。特に、弁孔31のエッジへの線当りが抑制され、エッジが摩耗しにくくなる。
【0030】
また、略同じテーパ角の弁孔31の対向テーパ部30Dと弁体27の第2ニードルテーパ部27Dとが当接して閉弁状態になる構成とすると、弁体27の弁孔31への食い込みが懸念されるところ、小流量域で開口断面積を形成する第2ニードルテーパ部27Dとは別に、弁座32に当接する第1ニードルテーパ部27Bを設け、対向テーパ部30Dと第2ニードルテーパ部27Dとの間は常にクリアランスがあるように構成されているので、弁体27の食い込みを防ぎつつ、閉弁時のシール性を保つことができる。
【0031】
また、弁体27や弁孔31に、ニードルストレート部27C及び流量制御ストレート部30Cを設けることで、弁体27が軸方向や径方向で多少振動しても開口断面積が変化しにくく、小流量域での流量のばらつきを小さくすることができる。
【0032】
弁孔31の内側面が弁体27の第2ニードルテーパ部27Dに略平行に対向する範囲が大きすぎると、流体の流動時に抵抗が大きくなり、流動制御に不具合が生じることも考えられる。これに対して、弁孔31の対向テーパ部30Dの軸方向の長さは、第2ニードルテーパ部27Dの軸方向の長さより小さくなっているので、弁体27(第2ニードルテーパ部27D)が弁孔31の対向テーパ部30Dに面当りする構成にしつつも、流体の流動時の抵抗の増加が抑制される。
【0033】
また、弁体27の第2ニードルテーパ部27Dのテーパ角と弁孔31の対向テーパ部30Dのテーパ角とが等しい場合、両者の間の接触面積が大きくなり、弁体27又は弁孔31の摩耗がより抑制される。一方、第2ニードルテーパ部27Dのテーパ角より対向テーパ部30Dのテーパ角が大きい場合、弁体27の弁孔31への当接が大径側(上側)よりも小径側(下側)で起こりやすくなるので、弁孔31のエッジ(流量制御ストレート部30Cと上部テーパ部30Bとの境界部)が摩耗しにくくなり、流量制御弁10を長く使用できるようになる。
【0034】
[他の実施形態]
(1)上記実施形態では、弁体27や弁孔31が、ニードルストレート部27C及び流量制御ストレート部30Cを有していたが、これらを有していなくてもよい。
【0035】
(2)上記実施形態では、弁孔31の対向テーパ部30Dの軸方向の長さが、第2ニードルテーパ部27Dの軸方向の長さよりも小さくなっていたが、同じであってもよいし、第2ニードルテーパ部27Dの軸方向の長さよりも大きくなっていてもよい。
【0036】
(3)上記実施形態では、弁体27が弁座32に当接して閉弁する構成であったが、弁体27が弁孔31内に最も進入した状態でも両者の間にクリアランスがあり、流体が微小量流動する構成であってもよい。
【0037】
なお、本明細書及び図面には、特許請求の範囲に含まれる技術の具体例が開示されているが、特許請求の範囲に記載の技術は、これら具体例に限定されるものではなく、具体例を様々に変形、変更したものも含み、また、具体例から一部を単独で取り出したものも含む。また、本明細書中の数値は例示であり、特許請求の範囲に記載の技術はこれら数値に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0038】
10 流量制御弁
11 モータ
25 シャフト部材
27 弁体
27B 第1ニードルテーパ部(当接部)
27C ニードルストレート部(円筒外側面)
27D 第2ニードルテーパ部(テーパ外側面)
27X 外側面
30 仕切壁
30C 流量制御ストレート部(円筒内側面)
30D 対向テーパ部(テーパ内側面)
30X 内側面
31 弁孔
32 弁座(当接部)