(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】作業機モーメントを推定する方法
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20240521BHJP
【FI】
E02F9/20 M
(21)【出願番号】P 2021026407
(22)【出願日】2021-02-22
【審査請求日】2023-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 賢佑
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 年晃
(72)【発明者】
【氏名】小山 幹
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-065655(JP,A)
【文献】特開2020-158961(JP,A)
【文献】特開2020-165256(JP,A)
【文献】特開2020-165253(JP,A)
【文献】特開平07-252091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、前記車体に対して相対移動可能な作業機とを備え、前記作業機は、前記車体に回動支点軸により支持された第1リンク部材と、前記第1リンク部材の先端に取り付けられた第2リンク部材とを有する、作業機械における、前記回動支点軸をつり合い中心とする前記作業機のモーメントを推定する方法であって、
前記作業機を第1の姿勢にする第1ステップと、
前記第1の姿勢にある前記作業機に積載された荷の重量である第1のペイロード演算値を取得する第2ステップと、
前記作業機を、前記第1リンク部材の重心位置から前記第1リンク部材の基端までの水平方向の距離と前記作業機に積載された荷の重心位置から前記基端までの前記水平方向の距離との比が前記第1の姿勢と等しい、第2の姿勢にする第3ステップと、
前記第2の姿勢にある前記作業機に積載された荷の重量である第2のペイロード演算値を取得する第4ステップと、
前記第1のペイロード演算値と、前記第2のペイロード演算値とを比較する第5ステップと、
前記第1のペイロード演算値と前記第2のペイロード演算値との比較の結果、前記第1のペイロード演算値と前記第2のペイロード演算値とが異なっていると判断されると、前記第2リンク部材の重量を変更して、前記第1ステップから前記第5ステップまでの処理を繰り返す、方法。
【請求項2】
前記第1のペイロード演算値と前記第2のペイロード演算値との比較の結果、前記第1のペイロード演算値と前記第2のペイロード演算値とが等しいと判断されたときの前記第2リンク部材の重量を、前記モーメントを推定するための前記第2リンク部材の重量とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記作業機を第3の姿勢にする第6ステップと、
前記第3の姿勢にある前記作業機に積載された荷の重量である第3のペイロード演算値を取得する第7ステップと、
前記作業機を、前記第2リンク部材の重心位置から前記基端までの前記水平方向の距離と前記作業機に積載された荷の重心位置から前記基端までの前記水平方向の距離との比が前記第3の姿勢と等しい、第4の姿勢にする第8ステップと、
前記第4の姿勢にある前記作業機に積載された荷の重量である第4のペイロード演算値を取得する第9ステップと、
前記第3のペイロード演算値と、前記第4のペイロード演算値とを比較する第10ステップと、
前記第3のペイロード演算値と前記第4のペイロード演算値との比較の結果、前記第3のペイロード演算値と前記第4のペイロード演算値とが異なっていると判断されると、前記第1リンク部材の重量を変更して、前記第6ステップから前記第10ステップまでの処理を繰り返す、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第3のペイロード演算値と前記第4のペイロード演算値との比較の結果、前記第3のペイロード演算値と前記第4のペイロード演算値とが等しいと判断されたときの前記第1リンク部材の重量を、前記モーメントを推定するための前記第1リンク部材の重量とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1ステップから前記第5ステップまでの一連の処理の後に、前記第6ステップから前記第10ステップまでの一連の処理を実行する、請求項3または請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業車両における作業機モーメントを推定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機に積載された荷の重量は、作業機械の仕事量を知る上で重要である。特開昭60-102436号公報(特許文献1)には、ブーム回動支点を中心とするモーメントの釣り合い式から積荷の重量を演算する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業機を構成する各リンク部材の重量および重心位置の設計値が不明な場合、実測も困難であるため、積荷重量の演算の精度を高くすることができない。
【0005】
本開示では、積荷重量をより精度よく演算するための技術が提案される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従うと、作業機械における、作業機モーメントを推定する方法が提案される。作業機械は、車体と、車体に対して相対移動可能な作業機とを備えている。作業機は、車体に回動支点軸により支持された第1リンク部材と、第1リンク部材の先端に取り付けられた第2リンク部材とを有している。作業機モーメントは、回動支点軸をつり合い中心とする作業機のモーメントである。上記方法は、以下のステップを備えている。第1ステップは、作業機を第1の姿勢にするステップである。第2ステップは、第1の姿勢にある作業機に積載された荷の重量である第1のペイロード演算値を取得するステップである。第3ステップは、作業機を第2の姿勢にするステップである。第1リンク部材の重心位置から第1リンク部材の基端までの水平方向の距離と、作業機に積載された荷の重心位置から基端までの水平方向の距離と、の比が、第1の姿勢と第2の姿勢とで等しくなっている。第4ステップは、第2の姿勢にある作業機に積載された荷の重量である第2のペイロード演算値を取得するステップである。第5ステップは、第1のペイロード演算値と、第2のペイロード演算値とを比較するステップである。上記方法は、第1のペイロード演算値と第2のペイロード演算値との比較の結果、第1のペイロード演算値と第2のペイロード演算値とが異なっていると判断されると、第2リンク部材の重量を変更して、第1ステップから第5ステップまでの処理を繰り返すステップをさらに備えている。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る方法によれば、作業機モーメントを正確に推定することで、精度のよい積荷重量の値を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の実施形態に基づく作業機械の構成を概略的に示す図である。
【
図2】
図1に示される作業機械のシステムの概略構成を示すブロック図である。
【
図3】
図2に示されるコントローラ内の機能ブロックを示す図である。
【
図4】実施形態に基づく作業機の重量を調整する方法を示すフロー図である。
【
図5】ブーム重心位置とアーム重心位置とを模式的に示す図である。
【
図6】アームの質量を調整するための姿勢を模式的に示す図である。
【
図7】作業機重量の調整前後の荷重計算値の精度の比較を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について図面に基づいて説明する。以下の説明では、同一部品には、同一の符号を付している。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0010】
本開示は、油圧ショベル以外に、作業機を備え、作業機は複数のリンク部材を有する作業機械であれば、適用可能である。以下の説明において、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」とは、運転室2a内の運転席2bに着座したオペレータを基準とした方向である。
【0011】
<作業機械の構成>
図1は、本開示の実施形態に基づく作業機械の一例としての油圧ショベル100の構成を概略的に示す側面図である。
図1に示されるように、本実施の形態の油圧ショベル100は、走行体1と、旋回体2と、作業機3とを主に有している。走行体1と旋回体2とにより作業機械の車体が構成されている。
【0012】
走行体1は左右一対の履帯装置1aを有している。この左右一対の履帯装置1aの各々は履帯を有している。左右一対の履帯が回転駆動されることにより油圧ショベル100が自走する。
【0013】
旋回体2は走行体1に対して旋回自在に設置されている。この旋回体2は、運転室(キャブ)2aと、運転席2bと、エンジンルーム2cと、カウンタウェイト2dとを主に有している。運転室2aは、旋回体2のたとえば前方左側(車両前側)に配置されている。運転室2aの内部空間には、オペレータが着座するための運転席2bが配置されている。
【0014】
エンジンルーム2cおよびカウンタウェイト2dの各々は、運転室2aに対して旋回体2の後方側(車両後側)に配置されている。エンジンルーム2cは、エンジンユニット(エンジン、排気処理構造体など)を収納している。エンジンルーム2cの上方はエンジンフードにより覆われている。カウンタウェイト2dは、エンジンルーム2cの後方に配置されている。
【0015】
作業機3は、旋回体2の前方側であって運転室2aのたとえば右側にて軸支されている。作業機3は、たとえばブーム3a、アーム3b、バケット3c、ブームシリンダ4a、アームシリンダ4b、バケットシリンダ4cなどを有している。ブーム3aの基端部は、ブームフートピン5aにより旋回体2に回転可能に連結されている。ブームフートピン5aは、ブーム3aの回動支点軸である。アーム3bの基端部は、アーム連結ピン5bによりブーム3aの先端部に回転可能に連結されている。バケット3cは、アタッチメント連結ピン5cによりアーム3bの先端部に回転可能に連結されている。
【0016】
ブーム3aは、ブームシリンダ4aにより駆動可能である。この駆動により、ブーム3aは、ブームフートピン5aを中心に旋回体2に対して上下方向に回動可能である。アーム3bは、アームシリンダ4bにより駆動可能である。この駆動により、アーム3bは、アーム連結ピン5bを中心にブーム3aに対して上下方向に回動可能である。バケット3cは、バケットシリンダ4cにより駆動可能である。この駆動によりバケット3cは、アタッチメント連結ピン5cを中心にアーム3bに対して上下方向に回動可能である。このように作業機3は駆動可能である。
【0017】
作業機3は、バケットリンク3dを有している。バケットリンク3dは、第1部材3daと、第2部材3dbとを有している。第1部材3daの先端と第2部材3dbの先端とは、バケットシリンダトップピン3dcを介して、相対回転可能に連結されている。バケットシリンダトップピン3dcは、バケットシリンダ4cの先端に連結されている。したがって第1部材3daおよび第2部材3dbは、バケットシリンダ4cにピン連結されている。
【0018】
第1部材3daの基端は、第1リンクピン3ddによりアーム3bに回転可能に連結されている。第2部材3dbの基端は、第2リンクピン3deによりバケット3cの根元部分のブラケットに回転可能に連結されている。
【0019】
ブームシリンダ4aのヘッド側には、圧力センサ6aが取り付けられている。圧力センサ6aは、ブームシリンダ4aのシリンダヘッド側油室40A内の作動油の圧力(ヘッド圧)を検出することができる。ブームシリンダ4aのボトム側には、圧力センサ6bが取り付けられている。圧力センサ6bは、ブームシリンダ4aのシリンダボトム側油室40B内の作動油の圧力(ボトム圧)を検出することができる。
【0020】
ブームシリンダ4aには、ストロークセンサ7aが取り付けられている。ストロークセンサ7aは、ブームシリンダ4aにおけるシリンダ4aaに対するシリンダロッド4abの変位量を検出する。アームシリンダ4bには、ストロークセンサ7bが取り付けられている。ストロークセンサ7bは、アームシリンダ4bにおけるシリンダロッドの変位量を検出する。バケットシリンダ4cには、ストロークセンサ7cが取り付けられている。ストロークセンサ7cは、バケットシリンダ4cにおけるシリンダロッドの変位量を検出する。
【0021】
ブームフートピン5aの周囲には、角度センサ9aが取り付けられている。アーム連結ピン5bの周囲には、角度センサ9bが取り付けられている。アタッチメント連結ピン5cの周囲には、角度センサ9cが取り付けられている。角度センサ9a,9b,9cは、ポテンショメータであってもよく、ロータリーエンコーダであってもよい。
【0022】
図1に示されるように、側方視のブーム動作領域において、ブームフートピン5aとアーム連結ピン5bとを通る直線(
図1中に二点鎖線で図示)と、上下方向に延びる直線(
図1中に破線で図示)とのなす角度を、ブーム角θbとする。ブーム角θbは、旋回体2に対するブーム3aの角度を表す。ブーム角θbは、ストロークセンサ7aの検出結果から算出することができ、または角度センサ9aの測定値から算出することができる。
【0023】
側方視のアーム動作領域において、ブームフートピン5aとアーム連結ピン5bとを通る直線(
図1中に二点鎖線で図示)と、アーム連結ピン5bとアタッチメント連結ピン5cとを通る直線(
図1中に二点鎖線で図示)とのなす角度を、アーム角θaとする。アーム角θaは、ブーム3aに対するアーム3bの角度を表す。アーム角θaは、ストロークセンサ7bの検出結果から算出することができ、または角度センサ9bの測定値から算出することができる。
【0024】
側方視のバケット動作領域において、アーム連結ピン5bとアタッチメント連結ピン5cとを通る直線(
図1中に二点鎖線で図示)と、アタッチメント連結ピン5cとバケット3cの刃先とを通る直線(
図1中に二点鎖線で図示)とのなす角度を、バケット角θkとする。バケット角θkは、アーム3bに対するバケット3cの角度を表す。バケット角θkは、ストロークセンサ7cの検出結果から算出することができ、または角度センサ9cの測定値から算出することができる。
【0025】
旋回体2、ブーム3a、アーム3bおよび第1部材3daのそれぞれには、IMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)8a,8b,8c,8dが取り付けられている。IMU8aは、前後方向、左右方向および上下方向における旋回体2の加速度と、前後方向、左右方向および上下方向まわりの旋回体2の角速度とを計測する。IMU8b,8c,8dのそれぞれは、前後方向、左右方向および上下方向におけるブーム3a、アーム3b、バケット3cの加速度と、前後方向、左右方向および上下方向まわりのブーム3a、アーム3b、バケット3cの角速度とを計測する。
【0026】
旋回体2に取り付けられたIMU8aで測定された加速度とブーム3aに取り付けられたIMU8bで測定された加速度との差分に基づいてブームシリンダ4aの伸縮の加速度(ブームシリンダ4aの伸縮速度の変化量)を取得することができる。ブーム角θb、アーム角θa、バケット角θkは、IMUで算出されてもよい。
【0027】
<作業機械のシステムの概略構成>
次に、作業機械のシステムの概略構成について
図2を用いて説明する。
図2は、
図1に示される作業機械のシステムの概略構成を示すブロック図である。
【0028】
図2に示されるように、本実施形態におけるシステムは、荷重値を決定するためのシステムである。本実施形態におけるシステムは、
図1に示す作業機械の一例としての油圧ショベル100と、
図2に示されるコントローラ10とを含んでいる。コントローラ10は、油圧ショベル100に搭載されていてもよい。コントローラ10は、油圧ショベル100の外部に設置されていてもよい。コントローラ10は、油圧ショベル100の作業現場に配置されてもよく、油圧ショベル100の作業現場から離れた遠隔地に配置されてもよい。
【0029】
エンジン31は、たとえばディーゼルエンジンである。エンジン31への燃料の噴射量がコントローラ10によって制御されることにより、エンジン31の出力が制御される。
【0030】
油圧ポンプ33は、エンジン31に連結されている。エンジン31の回転駆動力が油圧ポンプ33に伝達されることにより、油圧ポンプ33が駆動される。油圧ポンプ33は、たとえば斜板を有し、斜板の傾転角が変更されることにより吐出容量を変化させる可変容量型の油圧ポンプである。油圧ポンプ33から吐出された油の一部は、作動油として方向制御弁34に供給される。油圧ポンプ33から吐出された油の一部は、減圧弁によって一定の圧力に減圧されて、パイロット油として使用される。
【0031】
方向制御弁34は、たとえばロッド状のスプールを動かして作動油が流れる方向を切り換えるスプール方式の弁である。スプールが軸方向に移動することにより、油圧アクチュエータ40に対する作動油の供給量が調整される。方向制御弁34には、スプールの移動距離(スプールストローク)を検出するスプールストロークセンサが設けられる。
【0032】
油圧アクチュエータ40への油圧の供給および排出が制御されることにより、作業機3の動作、旋回体2の旋回、および走行体1の走行動作が制御される。上記油圧アクチュエータ40は、
図1に示されるブームシリンダ4a、アームシリンダ4b、バケットシリンダ4c、図示しない旋回モータなどを含んでいる。
【0033】
なお、本例においては、油圧アクチュエータ40を作動するために、その油圧アクチュエータ40に供給される油は作動油と称される。また、方向制御弁34を作動するためにその方向制御弁34に供給される油はパイロット油と称される。また、パイロット油の圧力はパイロット油圧と称される。
【0034】
油圧ポンプ33は、上記のように作動油とパイロット油との両方を送出するものであってもよい。油圧ポンプ33は、作動油を送出する油圧ポンプ(メイン油圧ポンプ)と、パイロット油を送出する油圧ポンプ(パイロット油圧ポンプ)とを別々に有してもよい。
【0035】
操作装置25は、運転室2a内に配置されている。操作装置25は、オペレータにより操作される。操作装置25は、作業機3を駆動するオペレータ操作を受け付ける。また操作装置25は、旋回体2を旋回させるオペレータ操作を受け付ける。操作装置25は、オペレータ操作に応じた操作信号を出力する。本例においては、操作装置25は、たとえばパイロット油圧方式の操作装置であるが、電気方式の操作装置であってもよい。
【0036】
操作装置25は、第1操作レバー25Rと、第2操作レバー25Lとを有している。第1操作レバー25Rは、たとえば運転席2bの右側に配置されている。第2操作レバー25Lは、たとえば運転席2bの左側に配置されている。第1操作レバー25Rおよび第2操作レバー25Lでは、前後左右の動作が2軸の動作に対応する。
【0037】
第1操作レバー25Rにより、たとえばブーム3aおよびバケット3cが操作される。第1操作レバー25Rの前後方向の操作は、たとえばブーム3aの操作に対応し、前後方向の操作に応じてブーム3aが下降する動作および上昇する動作が実行される。第1操作レバー25Rの左右方向の操作は、たとえばバケット3cの操作に対応し、左右方向の操作に応じてバケット3cの掘削方向(上向き)およびダンプ方向(下向き)への動作が実行される。
【0038】
第2操作レバー25Lにより、たとえばアーム3bおよび旋回体2が操作される。第2操作レバー25Lの前後方向の操作は、たとえば旋回体2の旋回に対応し、前後方向の操作に応じて旋回体2の右旋回動作および左旋回動作が実行される。第2操作レバー25Lの左右方向の操作は、たとえばアーム3bの操作に対応し、左右方向の操作に応じてアーム3bのダンプ方向(上向き)および掘削方向(下向き)への動作が実行される。
【0039】
油圧ポンプ33から送出され、減圧弁によって減圧されたパイロット油が、操作装置25に供給される。操作装置25の操作量に基づいて、パイロット油圧が調整される。
【0040】
操作装置25と方向制御弁34とは、パイロット油路450を介して接続されている。パイロット油は、パイロット油路450を介して方向制御弁34に供給される。これにより、方向制御弁34のスプールが軸方向に移動して、ブームシリンダ4a、アームシリンダ4bおよびバケットシリンダ4cに供給される作動油の流れ方向および流量が調整され、ブーム3a、アーム3b、バケット3cの上下方向への動作が実行される。
【0041】
パイロット油路450には、圧力センサ36が配置されている。圧力センサ36は、パイロット油圧を検出する。圧力センサ36の検出結果は、コントローラ10に出力される。パイロット油圧の増加量は、操作レバー25L,25Rの各々を中立位置から傾倒させる角度によって異なる。圧力センサ36によるパイロット油圧の検出結果によって、操作装置25の操作内容を判断することができる。
【0042】
コントローラ10には、ストロークセンサ7a~7c、IMU8a~8d、角度センサ9a~9cおよび圧力センサ6a、6bの検出信号も入力される。
【0043】
コントローラ10は、ストロークセンサ7a~7c、IMU8a~8d、角度センサ9a~9cおよび圧力センサ6a、6b、36の各々と有線で電気的に接続されていてもよく、また無線で通信可能とされていてもよい。コントローラ10は、たとえばコンピュータ、サーバー、携帯端末などであり、CPU(Central Processing Unit)であってもよい。
【0044】
上記においては操作装置25がパイロット油圧方式である場合について説明したが、操作装置25は電気方式であってもよい。操作装置25が電気方式である場合、第1操作レバー25Rおよび第2操作レバー25Lの各々の操作量は、たとえばポテンショメータにより検出される。ポテンショメータとは、機械的な位置に比例した電気(電圧)出力を得る変位センサである。ポテンショメータの検出結果は、コントローラ10に出力される。ポテンショメータの検出結果によって、操作装置25の操作内容を判断することができる。
【0045】
<コントローラ10内の機能ブロック>
次に、コントローラ10内の機能ブロックについて
図3を用いて説明する。
図3は、
図2に示されるコントローラ10内の機能ブロックを示す図である。
【0046】
図3に示されるように、コントローラ10は、操作指令値取得部11と、ブームシリンダ伸縮速度取得部12と、荷重計算値演算部13と、記憶部14とを有している。
【0047】
操作指令値取得部11には、圧力センサ36により検出されたパイロット油圧の信号が入力される。操作指令値取得部11は、圧力センサ36により検出されたパイロット油圧の信号から、たとえばブームシリンダ4aを動作させる操作指令値を検出する。操作指令値取得部11により取得された操作指令値は、記憶部14へ出力され、記憶部14に記憶される。
【0048】
ブームシリンダ伸縮速度取得部12には、IMU8a~8dの各々により検出された加速度などの信号が入力される。ブームシリンダ伸縮速度取得部12は、たとえば旋回体2に取り付けられたIMU8aで検出された加速度とブーム3aに取り付けられたIMU8bで検出された加速度との差分に基づいて、ブームシリンダ4aの伸縮の加速度(ブームシリンダ4aの伸縮速度の変化量)を検出する。
【0049】
ブームシリンダ伸縮速度取得部12には、ストロークセンサ7a~7cにより検出されたシリンダロッドの変位量の信号が入力される。またブームシリンダ伸縮速度取得部12には、角度センサ9a~9cにより検出された作業機の角度(ブーム角θb、アーム角θa、バケット角θk)の信号が入力される。ブームシリンダ伸縮速度取得部12は、たとえばストロークセンサ7aにより検出されたシリンダロッドの変位量または角度センサ9aにより検出された作業機の角度(ブーム角θb)に基づいて、ブームシリンダ4aの伸縮の速度を検出する。
【0050】
ブームシリンダ伸縮速度取得部12により検出されたブームシリンダ4aの伸縮速度(またはその伸縮速度の変化量)は、記憶部14へ出力され、記憶部14に記憶される。
【0051】
荷重計算値演算部13には、圧力センサ6a、6bにより検出されたブームシリンダ4aのヘッド圧およびボトム圧の信号が入力される。また荷重計算値演算部13には、ストロークセンサ7a~7cにより検出されたシリンダロッドの変位量の信号が入力される。また荷重計算値演算部13には、角度センサ9a~9cにより検出された作業機の角度(ブーム角θb、アーム角θa、バケット角θk)の信号が入力される。
【0052】
荷重計算値演算部13は、入力された上記信号から荷重計算値を演算する。荷重計算値演算部13により演算された荷重計算値は、記憶部14へ出力され、記憶部14に記憶される。
【0053】
<荷重計算>
実施形態においては、ブームフートピン5a回りの各モーメントの釣り合いから、バケット3c内の現在の荷重計算値(CalcuPayload)が演算される。荷重計算値(CalcuPayload)の演算は、
図3に示される荷重計算値演算部13により行われる。
【0054】
まず作業機3の自重によるモーメントMXweは、以下の式(1)により算出される。
【0055】
【0056】
式(1)において、Mboomは、ブーム3aの重量である。MboomCは、ブームシリンダ4aのシリンダ部分の重量である。MboomCRは、ブームシリンダ4aのシリンダロッド部分の重量である。Marmは、アーム3bの重量である。MarmCは、アームシリンダ4bのシリンダ部分の重量である。MarmCRは、アームシリンダ4bのシリンダロッド部分の重量である。Mbucketは、バケット3cの重量である。
【0057】
これらの重量Mboom、MboomC、MboomCR、Marm、MarmC、MarmCRおよびMbucketの各々は、たとえば、
図3に示される入力操作部21にて記憶部14への入力操作を行なうことにより、記憶部14に記憶されている。
【0058】
式(1)において、Xboom_cは、ブームフートピン5a(の回動中心軸)からブーム3aの重心までの水平方向の距離である。XboomC_cは、ブームフートピン5aからブームシリンダ4aのシリンダ部分の重心までの水平方向の距離である。XboomCR_cは、ブームフートピン5aからブームシリンダ4aのシリンダロッド部分の重心までの水平方向の距離である。Xarm_cは、ブームフートピン5aからアーム3bの重心までの水平方向の距離である。XarmC_cは、ブームフートピン5aからアームシリンダ4bのシリンダ部分の重心までの水平方向の距離である。XarmCR_cは、ブームフートピン5aからアームシリンダ4bのシリンダロッド部分の重心までの水平方向の距離である。Xbucket_cは、ブームフートピン5aからバケット3cの重心までの水平方向の距離である。
【0059】
これらの距離Xboom_c、XboomC_c、XboomCR_c、Xarm_c、XarmC_c、XarmCR_cおよびXbucket_cの各々は、ストロークセンサ7a~7c、角度センサ9a~9cの検出結果などから算出することができる。
【0060】
次に、ブームフートピン5a周りのモーメントの釣り合いは、以下の式(2)により表される。
【0061】
【0062】
式(2)において、Fは、ブームシリンダ4aの負荷(押す力)であり、ブームシリンダ4aのヘッド圧とボトム圧とから得られる。このためFは、圧力センサ6aにより検出された圧力(ヘッド圧)と、圧力センサ6bにより検出された圧力(ボトム圧)とから得られる。
【0063】
式(2)において、hは、ブームフートピン5aとブームシリンダ4aとの間の最短距離(ブームシリンダ4aの延在方向に対する直交方向の距離)である(
図1も併せて参照)。hは、ストロークセンサ7a、角度センサ9aの検出値などから算出することができる。F×hにより、ブームシリンダ4aの負荷Fを、延在方向の異なるブームの負荷に調整している。
【0064】
式(2)において、Xpayload_cは、ブームフートピン5aとバケット3c内の荷の重心との間の距離である。バケット3c内の荷の重心位置は、バケット3cに保持可能な満杯の荷の重心位置としてよい。Xpayload_cは、ストロークセンサ7a~7c、角度センサ9a~9cの検出値などから算出することができる。
【0065】
式(2)から、荷重計算値(CalcuPayload)は以下の式(3)により表される。
【0066】
【0067】
<作業機重量の推定>
作業機3を構成する各リンク部材、たとえばブーム3aおよびアーム3b、の重量および重心位置は、実測が困難である。ブーム3aの重心位置は、距離Xboom_cを算出するために用いられ、アーム3bの重心位置は、距離Xarm_cを算出するために用いられる。上記のとおり、ブーム3aの重量Mboom、アーム3bの重量Marm、距離Xboom_cおよび距離Xarm_cは、荷重計算値の演算に用いられる。
【0068】
上記のとおり、荷重計算値はモーメントの釣り合いによる計算で求める。作業機構成部材のモーメントは、構成部材の重量(正確には質量)と、回転中心軸から重心位置までの距離との積で示される。そのため、荷重計算値の演算に用いられるブーム3aの重量Mboomおよび重心位置、ならびにアーム3bの重量Marmおよび重心位置が真値から外れていると、ブームフートピン5a回りのモーメントの計算が正しく行えず、作業機3の姿勢によって荷重計算値の演算値が異なることになる。荷重計算値の精度を高くするには、ブーム3aおよびアーム3bの重量および重心位置の設計値が不明な場合においても、ブーム3aおよびアーム3bのモーメントを精度よく推定できることが求められる。
【0069】
本開示の方法によると、構成部材の重心位置を仮定して複数の作業機姿勢で荷重計算値を取得し、取得された複数の作業機姿勢での荷重計算値が等しくなるように構成部材の重量を調整することにより、従来より正確に構成部材のモーメントを取得できる。
図4は、実施形態に基づく作業機3の重量を調整する方法を示すフロー図である。以下、
図4および
図5-6を適宜参照して、実施形態に基づく作業機3の重量の調整方法について説明する。
【0070】
まず、ステップS1において、アーム3bの質量を調整するための第1の姿勢(以下、姿勢(1)と称する)と、アーム3bの質量を調整するための第2の姿勢(以下、姿勢(2)と称する)とを後述のように選定する。
【0071】
図5は、ブーム重心位置Gaとアーム重心位置Gbとを模式的に示す図である。
図5に示されるブーム重心位置Gaは、ブーム3aの重心の位置を示す。
図5に示されるアーム重心位置Gbは、アーム3bの重心の位置を示す。
図5に示される「ブームのモーメント距離」は、モーメントつり合い中心(ブームフートピン5a)からブーム重心位置Gaまでの水平方向の距離、すなわち、上述した距離Xboom_cを示す。
図5に示される「アームのモーメント距離」は、モーメントつり合い中心(ブームフートピン5a)からアーム重心位置Gbまでの水平方向の距離、すなわち、上述した距離Xarm_cを示す。
【0072】
図6は、アーム3bの質量を調整するための姿勢を模式的に示す図である。
図6に示される距離Xpayloadは、作業機3(バケット3c)に積載された荷の重心位置Gpからモーメントつり合い中心(ブームフートピン5a)までの水平方向の距離を示す。
【0073】
ブーム3aの質量の真値に対するずれをΔMboomとすると、この質量のずれ分のブームフートピン5a回りのモーメントは、質量のずれΔMboomと、上述したブーム3aのモーメント距離Xboom_cとの積で求められる。
【0074】
ブーム3aの質量のずれに起因して、荷重計算値に誤差が生じる。この荷重計算値の誤差によるブームフートピン5a回りのモーメントは、荷重計算値の誤差ΔCalcuPayloadと、距離Xpayloadとの積で求められる。
【0075】
ブーム3aの質量のずれにより発生するブームフートピン5a回りのモーメントは釣り合うはずであるので、以下の式(4)が成立する。
【0076】
【0077】
式(4)を変形して、式(5)が得られる。
【0078】
【0079】
式(5)より、荷重計算値の誤差ΔCalcuPayloadは、距離Xboom_cと距離Xpayloadとの比によって変動する。一方、(Xboom_c/Xpayload)の値が同じになる2つの姿勢で荷重計算値を比較すると、ブーム3aの質量のずれによる荷重計算値の誤差ΔCalcuPayloadが同じになるので、ブーム3aの質量のずれが荷重計算値に及ぼす影響を無くすことができる。その2つの姿勢で、空荷で荷重計算値の演算を行なうと、2つの姿勢で異なる荷重計算値が算出され、その誤差はアーム3bの質量のずれのみが要因である。したがって、
図6に示される、距離Xboom_cと距離Xpayloadとの比と距離X’boom_cと距離X’payloadとの比とが同じになる2つの姿勢を選定し、これら2つの姿勢をそれぞれ姿勢(1)、姿勢(2)とする。
【0080】
次に、ステップS2において、ブーム3aの質量を調整するための第3の姿勢(以下、姿勢(3)と称する)と、ブーム3aの質量を調整するための第4の姿勢(以下、姿勢(4)と称する)とを後述のように選定する。
【0081】
上述した姿勢(1)および姿勢(2)の選定と同じように、アーム3bの質量のずれが荷重計算値に及ぼす影響をなくせる2つの姿勢を選定する。具体的には、距離Xarm_cと距離Xpayloadとの比が等しくなる2つの姿勢を選定し、これら2つの姿勢をそれぞれ姿勢(3)、姿勢(4)とする。
【0082】
作業機3を動作させ、作業機3の姿勢を姿勢(1)にする。ステップS3で、作業機3の姿勢が姿勢(1)になったか否かの判断が行われる。作業機3の姿勢が姿勢(1)ではないと判断されると(ステップS3においてNO)、ステップS3の判断が繰り返される。作業機3の姿勢が姿勢(1)になるまで、ステップS3の判断が繰り返される。
【0083】
作業機3の姿勢が姿勢(1)になったと判断されると(ステップS3においてYES)、ステップS4に進み、姿勢(1)における荷重計算値の演算が行われる。荷重計算値を演算する際に、ブーム重心位置Gaおよびアーム重心位置Gbの設計値の情報がない場合には、同じ体格の作業機械についての、既知のブーム重心位置Gaおよびアーム重心位置Gbの設計値を、ブーム重心位置Gaとアーム重心位置Gbとして仮定して、式(3)に従って荷重計算値を演算することができる。
【0084】
作業機3を動作させ、作業機3の姿勢を姿勢(2)にする。ステップS5で、作業機3の姿勢が姿勢(2)になったか否かの判断が行われる。作業機3の姿勢が姿勢(2)ではないと判断されると(ステップS5においてNO)、ステップS5の判断が繰り返される。作業機3の姿勢が姿勢(2)になるまで、ステップS5の判断が繰り返される。
【0085】
作業機3の姿勢が姿勢(2)になったと判断されると(ステップS5においてYES)、ステップS6に進み、姿勢(2)における荷重計算値の演算が行われる。
【0086】
ステップS7において、ステップS4で演算された姿勢(1)のときの荷重計算値と、ステップS6で演算された姿勢(2)のときの荷重計算値との比較が行われる。
【0087】
ステップS7の荷重計算値の比較の結果、姿勢(1)のときに演算された荷重計算値と姿勢(2)のときに演算された荷重計算値とが異なっていると判断されると(ステップS7においてNO)、ステップS8に進み、アーム3bの重量が調整される。具体的には、姿勢(1)および姿勢(2)における異なる荷重計算値から逆算して、アーム3bの質量のずれを算出する。この質量のずれを低減するように、荷重計算値に用いられるアーム3bの質量を変更する。その後ステップS3の判断に戻り、ステップS3からステップS7までの処理が繰り返される。
【0088】
ステップS7の荷重計算値の比較の結果、姿勢(1)のときに演算された荷重計算値と姿勢(2)のときに演算された荷重計算値とが等しいと判断されると、そのときのアーム3bの質量を、アーム3bのモーメント計算のための質量とする。アーム3bの質量は、記憶部14へ出力され、記憶部14に記憶される。
【0089】
続いて、作業機3を動作させ、作業機3の姿勢を姿勢(3)にする。ステップS9で、作業機3の姿勢が姿勢(3)になったか否かの判断が行われる。作業機3の姿勢が姿勢(3)ではないと判断されると(ステップS9においてNO)、ステップS9の判断が繰り返される。作業機3の姿勢が姿勢(3)になるまで、ステップS9の判断が繰り返される。
【0090】
作業機3の姿勢が姿勢(3)になったと判断されると(ステップS9においてYES)、ステップS10に進み、姿勢(3)における荷重計算値の演算が行われる。
【0091】
作業機3を動作させ、作業機3の姿勢を姿勢(4)にする。ステップS11で、作業機3の姿勢が姿勢(4)になったか否かの判断が行われる。作業機3の姿勢が姿勢(4)ではないと判断されると(ステップS11においてNO)、ステップS11の判断が繰り返される。作業機3の姿勢が姿勢(4)になるまで、ステップS11の判断が繰り返される。
【0092】
作業機3の姿勢が姿勢(4)になったと判断されると(ステップS11においてYES)、ステップS12に進み、姿勢(4)における荷重計算値の演算が行われる。
【0093】
ステップS13において、ステップS10で演算された姿勢(3)のときの荷重計算値と、ステップS12で演算された姿勢(4)のときの荷重計算値との比較が行われる。
【0094】
ステップS13の荷重計算値の比較の結果、姿勢(3)のときに演算された荷重計算値と姿勢(4)のときに演算された荷重計算値とが異なっていると判断されると(ステップS13においてNO)、ステップS14に進み、ブーム3aの重量が調整される。具体的には、姿勢(3)および姿勢(4)における異なる荷重計算値から逆算して、ブーム3aの質量のずれを算出する。この質量のずれを低減するように、荷重計算値に用いられるブーム3aの質量を変更する。その後ステップS9の判断に戻り、ステップS9からステップS13までの処理が繰り返される。
【0095】
ステップS13の荷重計算値の比較の結果、姿勢(3)のときに演算された荷重計算値と姿勢(4)のときに演算された荷重計算値とが等しいと判断されると、そのときのブーム3aの質量を、ブーム3aのモーメント計算のための質量とする。ブーム3aの質量は、記憶部14へ出力され、記憶部14に記憶される。
【0096】
【0097】
<作用および効果>
上述した説明と一部重複する記載もあるが、本実施形態の特徴的な構成および作用効果についてまとめて記載すると、以下の通りである。
【0098】
実施形態に係る、作業機のモーメントを推定する方法では、
図4に示されるように、ステップS1において、距離Xboom_cと距離Xpayloadとの比が互いに等しい2つの姿勢が、姿勢(1)および姿勢(2)として選定される。ステップS3において、作業機3の姿勢を姿勢(1)にする。ステップS4において、姿勢(1)の姿勢にある作業機3に積載された荷の重量である第1のペイロード演算値が取得される。ステップS5において、作業機3の姿勢を姿勢(2)にする。ステップS6において、姿勢(2)の姿勢にある作業機3に積載された荷の重量である第2のペイロード演算値が取得される。ステップS7において、第1のペイロード演算値と第2のペイロード演算値とが比較される。ステップS7の比較の結果、第1のペイロード演算値と第2のペイロード演算値とが異なっていると判断されると、ステップS8において、ペイロード演算に使用されるアーム3bの質量が変更される。そして、ステップS3からステップS7までの処理が繰り返される。
【0099】
ブーム3aの質量のずれの影響の無い複数の姿勢で荷重計算値を演算し、姿勢毎の荷重計算値の誤差がなくなるまでアーム3bの質量を調整することで、アーム3bのモーメントをより正確に推定することができる。アーム3bの質量の設計情報がない作業機械であっても、アーム3bの正確なモーメントを使って荷重計算値を演算することができるので、精度のよい積荷重量の値を算出することができる。
【0100】
ステップS7の比較の結果、第1のペイロード演算値と第2のペイロード演算値とが等しいと判断されると、そのときのアーム3bの質量を、アーム3bのモーメント計算のための質量とする。このようにすることで、アーム3bのモーメントを正確に推定することが可能になる。
【0101】
図4に示されるように、ステップS2において、距離Xarm_cと距離Xpayloadとの比が互いに等しい2つの姿勢が、姿勢(3)および姿勢(4)として選定される。ステップS9において、作業機3の姿勢を姿勢(3)にする。ステップS10において、姿勢(3)の姿勢にある作業機3に積載された荷の重量である第3のペイロード演算値が取得される。ステップS11において、作業機3の姿勢を姿勢(4)にする。ステップS12において、姿勢(4)の姿勢にある作業機3に積載された荷の重量である第4のペイロード演算値が取得される。ステップS13において、第3のペイロード演算値と第4のペイロード演算値とが比較される。ステップS13の比較の結果、第3のペイロード演算値と第4のペイロード演算値とが異なっていると判断されると、ステップS14において、ペイロード演算に使用されるブーム3aの質量が変更される。そして、ステップS3からステップS7までの処理が繰り返される。
【0102】
アーム3bの質量のずれの影響の無い複数の姿勢で荷重計算値を演算し、姿勢毎の荷重計算値の誤差がなくなるまでブーム3aの質量を調整することで、ブーム3aのモーメントをより正確に推定することができる。ブーム3aの質量の設計情報がない作業機械であっても、ブーム3aの正確なモーメントを使って荷重計算値を演算することができるので、精度のよい積荷重量の値を算出することができる。
【0103】
ステップS13の比較の結果、第3のペイロード演算値と第4のペイロード演算値とが等しいと判断されると、そのときのブーム3aの質量を、ブーム3aのモーメント計算のための質量とする。このようにすることで、ブーム3aのモーメントを正確に推定することが可能になる。
【0104】
図4に示されるように、ステップS3からステップS7までの一連の処理の後に、ステップS9からステップS13までの一連の処理が実行される。
【0105】
ブーム3aの質量のずれがモーメントに及ぼす影響が同じ2姿勢でアーム3bの質量を調整し、その後、アーム3bの質量のずれがモーメントに及ぼす影響が同じ2姿勢でブーム3aの質量を調整する、というように、順番に調整することで、アーム3bおよびブーム3aの両方の質量を的確に調整することができる。
【0106】
なお、上記の実施形態の説明では、アーム3bの質量を調整した後にブーム3aの質量を調整したが、質量調整の順序はこれに限られない。アーム3bの質量のずれの影響のない姿勢でブーム3aの質量を調整した後に、ブーム3aの質量のずれの影響のない姿勢でアーム3bの質量を調整してもよい。
【0107】
ブーム3aおよびアーム3bに加えて、バケット3cの設計値が不明な場合には、ブーム3a、アーム3bおよびバケット3cのうちいずれか2つの質量のずれの影響のない姿勢で残りの1つの質量を調整することができる。この場合においても、ブーム3a、アーム3bおよびバケット3cの質量の調整を、6通りの順序のうちどの順序で行ってもよい。
【検証例】
【0108】
以下、検証例について説明する。ブームおよびアームの重量および重心位置が未知の油圧ショベルについて、ブームおよびアームの質量を調整する前に作業機の姿勢を変えて複数の姿勢で荷重計算値を演算し、実施形態の方法でブームおよびアームの質量を調整した後に作業機の姿勢を変えて同じ複数の姿勢で荷重演算値を演算し、調整の前後での荷重計算値の比較を行った。
【0109】
図7は、作業機重量の調整前後の荷重計算値の精度の比較を示すチャートである。ブーム3aを、ブーム角θbが30°、50°、70°となる3通りの姿勢とし、各姿勢のブーム3aについて、アーム角θaが40°、95°、150°となる3通りの姿勢とする合計9つの姿勢で、荷重計算値を演算した。
図7に示される正9角形の太線は、実荷重値を示す。
図7に示される複数の正9角形の細線は、実荷重値からのずれの大きさを示す。正9角形に付記される+3~-4の数値は、荷重演算値の実荷重値からのずれの方向と大きさの指標を示す。正9角形の頂点は、それぞれ上述の9つの姿勢の一つを示す。
【0110】
図7に示される破線のチャートは、作業機の重量の調整前の各姿勢における荷重演算値を示す。
図7に示される実線のチャートは、作業機の重量の調整後の各姿勢における荷重演算値を示す。
【0111】
図7に示されるように、姿勢毎の荷重計算値の誤差は、作業機の重量の調整前においてより大きく、作業機の重量の調整後においてより小さかった。作業機の設計値が不明な作業機械であっても、ブームおよびアームの重量を調整してブームおよびアームのモーメントをより正確に推定することで、荷重計算値の演算の精度を向上できることが示された。
【0112】
以上のように実施形態および実施例について説明を行ったが、今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0113】
1 走行体、1a 履帯装置、2 旋回体、2a 運転室、2b 運転席、3 作業機、3a ブーム(第1リンク部材)、3b アーム(第2リンク部材)、3c バケット、4a ブームシリンダ、4aa シリンダ、4ab シリンダロッド、4b アームシリンダ、4c バケットシリンダ、5a ブームフートピン(回動支点軸)、5b アーム連結ピン、5c アタッチメント連結ピン、6a,6b,36 圧力センサ、7a,7b,7c ストロークセンサ、9a,9b,9c 角度センサ、10 コントローラ、11 操作指令値取得部、12 ブームシリンダ伸縮速度取得部、13 荷重計算値演算部、14 記憶部、21 入力操作部、25 操作装置、25L 第2操作レバー、25R 第1操作レバー、100 油圧ショベル(作業機械)。