(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】吸気マニホルド
(51)【国際特許分類】
F02M 35/104 20060101AFI20240521BHJP
【FI】
F02M35/104 A
(21)【出願番号】P 2021107286
(22)【出願日】2021-06-29
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】川崎 剛
(72)【発明者】
【氏名】藤村 耕司
(72)【発明者】
【氏名】井上 裕史
(72)【発明者】
【氏名】徳永 隆広
(72)【発明者】
【氏名】山田 雄一朗
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-279791(JP,A)
【文献】特開2002-276379(JP,A)
【文献】特開2012-197759(JP,A)
【文献】特開2020-002833(JP,A)
【文献】特開2021-001578(JP,A)
【文献】実開昭63-170567(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2021/0340935(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各吸気ポートに対応する複数の枝管と、複数の前記枝管の基端側に連通する1つの吸気本体とを備えた吸気マニホルドであって、
前記吸気本体の形状が気筒配列方向に長い箱形に設定され、
前記吸気本体のシリンダヘッド側の側壁下部又は底壁から複数の前記枝管が取り出され、前記シリンダヘッド側の側壁は、その長手方向の中間部分が両端部分よりも反シリンダヘッド側に寄った凹状壁に
形成され、
前記吸気本体の長手方向の一端の側壁に吸気入口が
設けられ、
前記吸気本体における前記吸気入口が設けられている側の入口側端部と、前記吸気本体の長手方向の中間部と、の境部分では、
前記シリンダヘッド側の側壁は、シリンダヘッド側に近づくほど前記入口側端部に近づくように傾く傾斜側壁に
形成され、
前記吸気本体の長手方向の中間部における前記入口側端部に寄った箇所又は前記傾斜側壁に、ブローバイガスの戻し口が設けられている
吸気マニホルド。
【請求項2】
前記吸気入口は、前記一端の側壁の幅方向で中央よりもシリンダヘッド側に寄った位置に設けられている
請求項1に記載の吸気マニホルド。
【請求項3】
前記吸気本体における前記吸気入口が設けられていない側である反入口側端部の横幅よりも、前記入口側端部の横幅の方が大に設定されている
請求項1または2に記載の吸気マニホルド。
【請求項4】
前記吸気本体における前記吸気入口が設けられていない側である反入口側端部の上下幅よりも、前記入口側端部の上下幅の方が大に設定されている
請求項1~3の何れか一項に記載の吸気マニホルド。
【請求項5】
前記入口側端部の上下幅は前記中間部の上下幅よりも大に設定され、前記入口側端部と前記中間部との境部分では、前記入口側端部から前記中間部に行くに従って上下幅が減少するように、上下前記吸気本体の天井壁及び/又は底壁に傾斜が付けられている
請求項1~4の何れか一項に記載の吸気マニホルド。
【請求項6】
前記吸気本体の長手方向の他端の側壁に、エンジン関係補機の取付部が設けられている
請求項1~5の何れか一項に記載の吸気マニホルド。
【請求項7】
前記吸気本体の長手方向の中間部の断面形状は、横幅よりも上下幅の長い縦長形状に設定されている
請求項1~6の何れか一項に記載の吸気マニホルド。
【請求項8】
前記吸気入口は、前記一端の側壁における上部に設けられている
請求項1~6の何れか一項に記載の吸気マニホルド。
【請求項9】
複数の前記枝管のうち、気筒配列方向で最も前記一端の側壁の側に位置する第1枝管は、気筒配列方向で前記吸気本体の長手方向の他端の側壁の方向と上方向との双方に向く傾斜姿勢で前記吸気本体から取り出される第1基端管部を有している
請求項8に記載の吸気マニホルド。
【請求項10】
各吸気ポートに対応する複数の枝管と、複数の前記枝管の基端側に連通する1つの吸気本体とを備えた吸気マニホルドであって、
前記吸気本体の形状が気筒配列方向に長い箱形に設定され、
前記吸気本体のシリンダヘッド側の側壁下部又は底壁から複数の前記枝管が取り出され、前記シリンダヘッド側の側壁は、その長手方向の中間部分が両端部分よりも反シリンダヘッド側に寄った凹状壁に
形成され、
前記吸気本体の長手方向の一端の側壁に吸気入口が
設けられ、
前記吸気入口は、前記一端の側壁における上部に
設けられ、
複数の前記枝管のうち、気筒配列方向で最も前記一端の側壁の側に位置する第1枝管は、気筒配列方向で前記吸気本体の長手方向の他端の側壁の方向と上方向との双方に向く傾斜姿勢で前記吸気本体から取り出される第1基端管部を有している
吸気マニホルド。
【請求項11】
前記吸気本体における前記吸気入口が設けられている側の入口側端部と、前記吸気本体の長手方向の中間部と、の境部分では、
前記シリンダヘッド側の側壁は、シリンダヘッド側に近づくほど前記入口側端部に近づくように傾く傾斜側壁に形成されている
請求項10に記載の吸気マニホルド。
【請求項12】
前記吸気本体における前記吸気入口が設けられていない側である反入口側端部の横幅よりも、前記入口側端部の横幅の方が大に設定されている
請求項11に記載の吸気マニホルド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各吸気ポートに対応する複数の枝管と、複数の枝管の基端側に連通する1つの吸気本体とを備えた吸気マニホルドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、立型直列4気筒エンジンにおいては、特許文献1に開示されるように、気筒配列方向に長い箱状の吸気本体(主管:29)と、この吸気本体から枝分かれして各気筒の吸気ポートに吸気を分配する複数(4つ)の枝管(13)とを有する吸気マニホルド(28)が装備されている。
【0003】
各枝管(13)は、吸気本体(主管:29)の背面側(反シリンダヘッド側)から取り出され、下方に約半周で曲げられての水平姿勢でシリンダヘッド(21)の各吸気ポートへ向かう湾曲形状の管に形成されている。吸気本体(主管:29)は、枝管(13)のシリンダヘッド(21)に取付けられる箇所である先端フランジ(符記無し)から、やや反シリンダヘッド側となる横側方に離されて前後向き姿勢で配置されている。
【0004】
吸気本体(主管:29)がシリンダヘッド(21)から横側方に離されて、シリンダヘッド及びヘッドカバーと吸気本体との間にある程度のスペースが確保されているので、エンジン組立て時に工具を取り回し易いとか、点火装置(プラグ又はコイル一体形プラグ)の着脱操作がし易いといった具合に、メンテナンス作業が行い易い利点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、吸気本体がシリンダヘッドから横側方に離され、かつ、枝管が吸気本体から反シリンダヘッド側に出されて取り回される吸気マニホルドの構造では、吸気マニホルドが全体としてシリンダヘッドから横に比較的大きく張り出してしまい、エンジン上部におけるコンパクト化の点では不利であった。
【0007】
本発明の目的は、鋭意研究による構造工夫により、シリンダヘッド回りのメンテナンス作業のし易さを損ねることが無い又は少ないようにしながら、エンジンの横側方への張出しを抑えてエンジン上部のコンパクト化を図ることが可能となるように、より改善された吸気マニホルドを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(請求項1と請求項10に係る発明に共通する発明特定事項)
本発明は、各吸気ポートに対応する複数の枝管と、複数の前記枝管の基端側に連通する1つの吸気本体とを備えた吸気マニホルドにおいて、
前記吸気本体の形状が気筒配列方向に長い箱形に設定され、
前記吸気本体のシリンダヘッド側の側壁下部又は底壁から複数の前記枝管が取り出され、前記シリンダヘッド側の側壁は、その長手方向の中間部が両端部よりも反シリンダヘッド側に寄った凹状壁に形成され、
前記吸気本体の長手方向の一端の側壁に吸気入口が設けられている。
(請求項1に係る発明に固有の発明特定事項)
前記吸気本体における前記吸気入口が設けられている側の入口側端部と、前記吸気本体の長手方向の中間部と、の境部分では、前記シリンダヘッド側の側壁は、シリンダヘッド側に近づくほど前記入口側端部に近づくように傾く傾斜側壁に形成され、
前記吸気本体の長手方向の中間部における前記入口側端部に寄った箇所又は前記傾斜側壁に、ブローバイガスの戻し口が設けられている。
(請求項10に係る発明に固有の発明特定事項)
前記吸気入口は、前記一端の側壁における上部に設けられ、
複数の前記枝管のうち、気筒配列方向で最も前記一端の側壁の側に位置する第1枝管は、気筒配列方向で前記吸気本体の長手方向の他端の側壁の方向と上方向との双方に向く傾斜姿勢で前記吸気本体から取り出される第1基端管部を有している。
【0009】
(請求項1に係る発明に固有の発明特定事項)
前記吸気本体における前記吸気入口が設けられている側の入口側端部と、前記吸気本体の長手方向の中間部と、の境部分では、前記シリンダヘッド側の側壁は、シリンダヘッド側に近づくほど前記入口側端部に近づくように傾く傾斜側壁に形成され、
前記吸気本体の長手方向の中間部における前記入口側端部に寄った箇所又は前記傾斜側壁に、ブローバイガスの戻し口が設けられている。
(請求項10に係る発明に固有の発明特定事項)
前記吸気入口は、前記一端の側壁における上部に設けられ、
複数の前記枝管のうち、気筒配列方向で最も前記一端の側壁の側に位置する第1枝管は、気筒配列方向で前記吸気本体の長手方向の他端の側壁の方向と上方向との双方に向く傾斜姿勢で前記吸気本体から取り出される第1基端管部を有している。
【0010】
本発明に関して、上述した構成(手段)以外の特徴構成や手段ついては、請求項1,10以外の請求項を参照のこと。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、吸気本体のシリンダヘッド側の側壁を凹状とする工夫により、吸気本体の長手方向の中間部とシリンダヘッドとの間には十分なスペースが確保されるようになる。故に、シリンダヘッドの上部にて取り回されるワイヤーハーネスなどの電装部品類の組付け、吸気マニホルドのシリンダヘッドへの組付け、或いは、各種配管類の保守点検など、手や手指を用いての組付け作業やメンテナンス作業が行い易い構成とされている。
【0012】
その結果、シリンダヘッド回りのメンテナンス作業のし易さを損ねることが無い又は少ないようにしながら、エンジンの横側方への張出しを抑えてエンジン上部のコンパクト化が可能となるように、より改善された吸気マニホルドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図4】(A)は吸気マニホルドの正面図、(B)は吸気マニホルドの背面図
【
図6】吸気マニホルドを左前上部から見下ろした斜視図
【
図7】産業用エンジンを左上方から見下ろした平面図
【
図8】産業用エンジンを左後上方から見下ろした平面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明による吸気マニホルド及びそれが適用された産業用エンジンの実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下において、クランク軸方向で伝動ケース5が設けられている側を前、フライホイールハウジング7が設けられている側を後、吸気マニホルド8が設けられている側を右、排気カバー10が設けられている側を左とする。
【0015】
図7及び
図8に、例えば農用トラクタやローントラクタなどの走行可能な作業機に用いられる火花点火式で立形直列多(複数)気筒の産業用エンジンEが示されている。この産業用エンジンEは、シリンダブロック1の上部にシリンダヘッド2が組付けられ、シリンダヘッド2の上部にシリンダヘッドカバー(以下、単にヘッドカバーと略称する)3が組付けられ、シリンダブロック1の下部にオイルパン4が組付けられている。
【0016】
シリンダブロック1の前に伝動ケース5が組付けられ、シリンダブロック1の後にフライホイールハウジング7が配置されている。1Aはクランク軸、6はエンジン冷却ファン軸(ウォータポンプ軸)、8は吸気マニホルド、9はオルタネータ、10は排気カバーである。排気カバー10は、シリンダヘッド2の左横に取付けられる排気マニホルド(図示されていない)を覆うカバーである。なお、シリンダブロック1の上半部はシリンダ部(符記省略)に、そして、下半部はクランクケース(符記省略)である。
【0017】
シリンダヘッド2の右側上部には、ヘッドカバー3の右側に位置して前後に並ぶ4つのコイル一体形プラグ11が、斜め上方に立ち上がる状態で設けられている。ヘッドカバー3は、前部の上壁3aと、上壁3aの後側には上壁3aより少し高さの高い天井壁3bとを有し、上壁3aから立設される通路パイプ12Aの上端にはオイルキャップ12が設けられている。なお、
図7,8において、15はスタータモータ、16はスロットルボディ、17はガスミキサ、18はヒューズボックス(エンジン関係補機の一例)である。
【0018】
天井壁3bの前壁(符記省略)には、ブローバイガスの導出部13が前向きに設けられており、導出部13前方に取り出されて吸気マニホルド8に接続されるパイプ状(管状)のブローバイガス通路14が設けられている。ブローバイガス通路14は、通路パイプ12Aの後で、かつ、上壁3aの上で右に大きく(約180度)曲げられてから、コイル一体形プラグ11の最前のもの11と前から2つ目のもの11との前後間を通されて右方に延ばされている。
【0019】
次に、吸気マニホルド8及びその周辺構造について説明する。
図1~
図6に示されるように、吸気マニホルド8は、シリンダヘッド2の各吸気ポートpa~pdに対応する4つ(複数の一例)の枝管8A~8Dと、4つの枝管8A~8Dの基端側に連通する1つの吸気本体(サージタンク)8Hとを備えている。つまり、吸気マニホルド8は所謂「枝管構造」が採られている。吸気マニホルド8の材質は、アルミ合金などの金属材が望ましいが、その他の材料(合成樹脂材など)からなるものでもよい。
【0020】
図1~
図6に示されるように、吸気本体8Hは気筒配列方向(クランク軸方向であって前後方向)に長い箱形に設定されており、大別して、前側の入口側端部21と、後側の反入口側端部23と、前後中間の中間部22とを有して構成されている。なお、気筒配列方向と、各吸気ポートpa~pdの配列方向と、各枝管8A~8Dの第1~第4開口41~44の配列方向とは同じ(前後方向)である。
入口側端部21は、前後方向視においてほぼ縦長の矩形を呈し、前壁(「長手方向の一端の側壁」の一例)8Fと、前天井壁24と、前左側壁25と、前右側壁26と、前底壁27とを有している〔
図4(A)を参照〕。
【0021】
中間部22は、前後方向視で縦長の断面形状を呈し、中間天井壁28と、中間左側壁29と、中間右側壁30と、中間底壁31とを有している。
反入口側端部23は、前後方向視で上下が左右より若干長い矩形を呈し、後壁(「長手方向の他端の側壁」の一例)8Rと、後天井壁32と、後左側壁33と、後右側壁34と、後底壁35とを有している〔
図4(B)を参照〕。
【0022】
図1、
図2、
図4(A)、
図5、
図6に示されるように、前左側壁25の後部(「入口側端部21と中間部22との境部分」に相当)は、後に行くに従って右に寄る傾斜が付けられた、即ち、前後方向に対する角度α(
図5参照)が施された傾斜側壁8kとされている。前天井壁24の後部24aは、後に行くに従って下がる傾斜が付けられた傾斜天井壁に形成されている(
図6参照)。前底壁27の後部27aは、後に行くに従って上がる傾斜が付けられた傾斜底壁に形成されている(
図2参照)。
【0023】
前壁8Fの左側の大部分には、それ以外の部分より若干前に突出する平らな前面8fが形成されている〔
図2、
図4(A)、
図6を参照〕。この前面8fと、スロットルボディ16との接合面であってその上部には、前壁8Fを前後に貫通する円筒状の吸気入口iが形成されている。吸気入口iは、スロットルボディ16からの混合エアを吸気本体8Hに導入するための孔である。吸気入口iの周囲4カ所にはスロットルボディ16をボルト止めするためのナット部nが形成されている(
図6を参照)。また、吸気入口iは、前壁8Fの幅方向で中央よりもやや左側(シリンダヘッド2側)に寄った位置に設けられている〔
図4(A)を参照〕。
【0024】
図1、
図5,
図6に示されるように、後左側壁33の前部(反入口側端部23と中間部22との境部分)33aは、前に行くに従って右に寄る傾斜が付けられた、即ち、前後方向に対する角度β(
図5参照)が施された傾斜側壁(33a)とされている。後壁8Rの外側には、前述のヒューズボックス18を取付けるための取付部20が左右に2カ所設けられている。取付部20は、例えばヒューズボックス18又はそれの支持部をボルト止めすべく後方突出するナット部に形成されているが、それ以外の手段でもよい。なお、封止栓38(
図5を参照)で閉塞するとか各種センサ類を装着するとか通路を接続するといった多目的に使用可能な孔(円形孔)37が後壁8Rに形成されているが、孔37は無くてもよい。
【0025】
吸気本体8Hの形状は、次に述べるように、前後中間部が絞られたような複雑な形状に設定されている。即ち、後天井壁32と中間天井壁28とは互いに同じ上下幅を有しており(
図2参照)、後右側壁34と中間右側壁30と前右側壁26とは互いに同じ左右位置(一直線に並んでいる)にある(
図5を参照)。
図2に示されるように、前天井壁24は中間天井壁28よりも高く、かつ、前底壁27は中間底壁31よりも低く、入口側端部21の上下幅は、中間部22及び反入口側端部23の上下幅より明らかに長く(大きく)設定されている。
【0026】
そして、
図5に示されるように、前左側壁25は後左側壁33よりも左側(シリンダヘッド2側)に寄せられるとともに、中間部22の左右幅よりも反入口側端部23の左右幅が大きく、かつ、反入口側端部23の左右幅よりも入口側端部21の左右幅が大きくなるように設定されている。なお、角度αは、40度≦α≦70度(例:55度)で、角度βは、10度≦β30度(例:19度)であれば好ましいが、それらの限りではない。
【0027】
具体的には、吸気本体8Hの左側壁(シリンダヘッド2側の側壁)8Wは、その長手方向(前後方向)の中間部分が両端部分よりも右側(反シリンダヘッド2側)に寄った凹状壁に形成されている(
図6参照)。入口側端部21と中間部22との境部分では、入口側端部21から中間部22に行くに従って上下幅が減少するように、前天井壁24の後部24a及び前底壁27の後部27aが形成され、吸気本体8Hの天井壁8T及び底壁8Uに傾斜が付けられている構成とされている(
図2参照)。また、吸気本体8Hの右側壁(反シリンダヘッド2側の側壁)8Qは左右位置が一定の一直線状壁に形成されている(
図5参照)。
【0028】
その結果、吸気本体8Hは、入口側端部21の断面積(容積)>反入口側端部23の断面積(容積)>中間部22の断面積(容積)、となる長手方向で中間部が絞られた形状に設定されている(
図2,5を参照)。ここで言う「断面積」は、上下左右に拡がる平面で切った場合の断面積である。そして、吸気本体8Hの断面形状は基本的に上下に長い矩形であり、特に入口側端部21及び中間部22では縦に長い傾向にある。
【0029】
図1~
図6に示されるように、4つの枝管8A~8Dが前後に配列されており、それら前から順に第1~第4枝管8A~8Dは、吸気本体8Hの左側の側壁8Wの下部及び/又は底壁8Uから取り出されている(
図3参照)。第1~第4枝管8A~8Dの先端部には、それら第1~第4枝管8A~8Dを一体化する取付フランジ36が形成されている。シリンダヘッド2に取付けられる取付フランジ36には、第1~第4枝管8A~8Dそれぞれの内部流路である第1~第4通路8a~8dに対応した第1~第4開口41~44が形成されている(
図1参照)。
【0030】
吸気本体8Hの前に配置されるエンジン補機(スロットルボディ16,ガスミキサ17など)が配置される都合等により、吸気本体8Hの前端(前面8f)の前後方向の位置は、
図3,7,8から分かるように、第1吸気ポートpaと第2吸気ポートpbとの前後中央部に相当するように設定されている。吸気本体8Hの後端(後壁8R)の前後方向の位置は、第4吸気ポートpdよりも後方に設定されている。なお、吸気本体8Hの「シリンダヘッド2側」は、「開口41~44配置(存在)側」や「取付フランジ36配置(存在)側」、或いは「枝管8A~8Dの延伸方向」と言い換えることができる。
【0031】
その結果、
図3,5に示されるように、第4枝管8Dを除き、第1~第3枝管8A~8Cは、上下方向において、左に行く従って前に寄る前向き傾斜角が付けられた斜め管とされている。第2~第4枝管8B~8Dは、主に吸気本体8Hの底壁8Uから前方下向きに取り出され、第1枝管8Aは底壁8U及び前壁8Fに跨る状態で前方下向きに取り出されている(
図2参照)。
【0032】
図7、
図8に示されるように、吸気本体8Hの左側壁8Wには、ブローバイガス通路14が接続される戻し口19が設けられている。具体的には、
図1、
図5、
図6に示されるように、中間部22の中間左側壁29の前部に、僅かに左方に突出した縦長の補強部8sが形成されており、その上部にパイプ19aが貫通支持されている。パイプ19Aは水平から僅かに先上り(左上り)する姿勢で真左に、即ち、前後方向に対して垂直に左横方向に取り出されている。パイプ19aにはブローバイガス通路14が嵌装されて(
図7,8を参照)、ヘッドカバー3と吸気本体8Hとが連通されており、ブローバイガスを吸気通路に戻せるように構成されている。
【0033】
ところで、吸気本体8Hの天井壁8Tには、吸気圧センサや吸気温度センサなどの吸気マニホルド8用の計測装置38(
図7,8を参照)を取付けるための取付座39(
図1,2,6を参照)が設けられている。吸気本体8Hの右側壁8Qには、側方に突出する前後3つの横ボス部45(
図2,3,5を参照)が設けられ、天井壁8Tには上方に突出する前後3つの上ボス部46(
図1,2,6を参照)が設けられている。横ボス45は、例えば、オイルゲージ47(
図7,8を参照)のガイド(図示省略)や、取付部20に代えてヒューズボックス18(又はその支持部材)などの各種部品類を固定するときに使用可能なものである。同様に上ボス部46も、種々の部品類を装着可能とするものである。
【0034】
〔作用効果などについて〕
以上のように、吸気マニホルド8の吸気本体8Hは、左側(シリンダヘッド側)の左側壁8Wが、その長手方向の中間部分(中間部22)が両端部分(入口側端部21、反入口側端部23)よりも右側(反シリンダヘッド側)に寄った凹状壁(
図5,6を参照)に形成されている。中間左側壁29が、前左側壁25及び後左側壁33より右に寄って凹んでいる。
【0035】
従って、中間部22とシリンダヘッド2との左右間には十分なスペースが確保されており、シリンダヘッド2の上部右角部分において前後に亘って配策されるワイヤーハーネス(図示省略)の組付け、取付フランジ36のシリンダヘッド2への組付け、或いは、各種配管類の保守点検など、手や手指を用いての組付け作業やメンテナンス作業が行い易い構成とされている。
【0036】
吸気本体8Hは、その断面が左右に短く上下に長い縦長矩形に形成されて、内部容積も十分に確保されている。故に、右側壁8Qの左右位置を従来品に比べてシリンダヘッド2に近づくように吸気本体8Hを設けて、エンジン上部のコンパクトを図りながら、吸気本体8Hは十分な内部容積があり、かつ、各枝管8A~8Dの通路長さも必要十分に取れている。
その結果、シリンダヘッド回りのメンテナンス作業のし易さを損ねることが無い又は少ないようにしながら、エンジンの横側方への張出しを抑えてエンジン上部のコンパクト化が可能となるように、より改善された吸気マニホルド8が実現されている。
【0037】
吸気マニホルド8においては、吸気入口iが前壁8Fの上端部で左寄りの位置に設けられ〔
図4(A)を参照〕、かつ、比較的大きな角度αが施された傾斜側壁8kにより、吸気本体の内部空間が入口側端部21から中間部22に架けて大きく左に寄る状態に構成されている(
図5参照)。従って、吸気入口iから入る混合気(又はエア)は、
図5に示される4本の実線矢印yのように、大きく右に曲がりながら流れる状態になり、その結果、パイプ19aの内側部分xにおいては負圧状態になり易く、ブローバイガスの吸気本体8Hへの戻し移動が促進される効果が得られる。
【0038】
また、入口側端部21の後部の上下に設けられた傾斜天井壁24a(前天井壁24の後部24a)及び傾斜天井壁27a(前底壁27の後部27a)により、
図2に破線の矢印hで示されるように、吸気入口iから吸気本体8Hに入った混合気(又はエア)は、大きく下に向きを変えての旋回移動がし易くなっている。
そして、複数の枝管8A~8Dのうち、気筒配列方向で最も一端の側壁(前壁)8Fの側に位置する第1枝管8Aは、気筒配列方向で吸気本体8Hの長手方向の他端の側壁(後壁)8Rの方向と上方向との双方に向く複合傾斜姿勢で吸気本体8Hから取り出される第1基端管部40を有している(
図3参照)。
【0039】
従って、吸気入口iとは前後が逆向きであって本来的に最も流れ難い状況にある第1枝管8Aの第1通路8aに、従来の吸気マニホルドに比べて、吸気本体8Hからの混合気(又はエア)が流入され易くなり、第1吸気ポートpaでの吸入効率が向上する、という利点がある(
図2参照)。この場合、吸気入口iが左に寄り、かつ、第1枝管8Aの基端が右に寄っている構成によって、より吸入効率の向上が図れる利点もある(
図5参照)。
【0040】
〔別実施形態〕
枝管8A~8Dの数は、4以外の複数でもよい。入口側端部21、中間部22、反入口側端部23それぞれの気筒配列方向の長さの比(左側壁8Wの全長に対する凹状部分の前後長さの比)は、
図1,5,6などで図示される比以外の任意に設定可能である。
【符号の説明】
【0041】
8A~8D 第1~第4枝管
8F 長手方向の一端の側壁(前壁)
8H 吸気本体
8R 長手方向の他端の側壁(後壁)
8T 天井壁
8U 底壁
8W シリンダヘッド側の側壁(左側壁)
8k 傾斜側壁
18 エンジン関係補機
19 戻し口(ブローバイガス)
20 取付部
21 入口側端部
22 中間部
23 反入口側端部
40 第1基端管部
i 吸気入口
pa~pd 吸気ポート