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  • 特許-変圧器及びV結線多段変圧器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】変圧器及びV結線多段変圧器
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/26 20060101AFI20240521BHJP
   H01F 27/245 20060101ALI20240521BHJP
   H01F 30/10 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
H01F27/26 130S
H01F27/245 155
H01F30/10 A
H01F30/10 T
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021112104
(22)【出願日】2021-07-06
(65)【公開番号】P2023008491
(43)【公開日】2023-01-19
【審査請求日】2023-07-31
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】日比野 貴郁
(72)【発明者】
【氏名】阿部 将
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-189348(JP,A)
【文献】特開平08-130122(JP,A)
【文献】実開昭61-111141(JP,U)
【文献】特開平10-092665(JP,A)
【文献】特開2009-283687(JP,A)
【文献】特開平05-175053(JP,A)
【文献】特開平10-092651(JP,A)
【文献】特開2020-113705(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/26
H01F 27/245
H01F 30/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルと、
前記コイルに挿入される巻鉄心と、
凹形状を有しており、前記巻鉄心の上面側及び下面側に配置され、前記巻鉄心の上面側及び下面側を覆って固定する締金具と、
前記巻鉄心と前記締金具の間に配置されて前記コイルと前記巻鉄心の間に挿入されるスペーサと、
を備え、
前記スペーサは、
前記巻鉄心の巻き面側に挿入され、
前記スペーサは、
縦板と、横板と、を備え、
前記縦板は、
前記コイルと前記巻鉄心の間に挿入され、
前記横板は、
前記コイルに沿うように配置される、
とを特徴とする変圧器。
【請求項2】
コイルと、
前記コイルに挿入される巻鉄心と、
凹形状を有しており、前記巻鉄心の上面側及び下面側に配置され、前記巻鉄心の上面側及び下面側を覆って固定する締金具と、
前記巻鉄心と前記締金具の間に配置されて前記コイルと前記巻鉄心の間に挿入されるスペーサと、
を備え、
前記スペーサは、
前記巻鉄心の巻き面側に挿入され、
前記スペーサの端部の一方または両方は、
前記コイルの外側に位置し、且つ、前記コイルの少なくとも一部に沿う厚さを有する、
とを特徴とする変圧器。
【請求項3】
請求項1に記載の変圧器を下段に配置したV結線多段変圧器。
【請求項4】
請求項2に記載の変圧器を下段に配置したV結線多段変圧器。
【請求項5】
請求項3に記載のV結線多段変圧器であって、
上段の変圧器は上締金具と下締金具を備え、
前記スペーサの前記縦板は、
前記下締金具の直下に配置される、
ことを特徴とするV結線多段変圧器。
【請求項6】
請求項4に記載のV結線多段変圧器であって、
上段の変圧器は上締金具と下締金具を備え、
前記スペーサは、
前記下締金具の直下に配置される、
ことを特徴とするV結線多段変圧器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻鉄心タイプの変圧器における中身構造の固定に関する。
【背景技術】
【0002】
単相変圧器の構成は主に鉄心とコイル、また、鉄心とコイルを固定するバンドと締金具から構成されているが、コイル質量が大きい場合等には、コイルと鉄心の構成上、コイルの質量分の荷重が鉄心に加わるため、鉄心の性能を悪化させることがある。そのため、コイルの荷重を受けるためのコイル支えが使用される。また、鉄心とコイルを製作する中で要求寸法通り製作することは困難であるため、鉄心とコイルを組み合わせた際に干渉しないよう互いに寸法の裕度が設けられる。そのため、鉄心とコイルを組み合わせた際には数mm程度のスペースが設けられ、輸送や電磁機械力で動かないようスペースを埋めるためのスペーサが挿入される。そして、このような巻鉄心を用いた単相変圧器の一例が、特許文献1に記載されている。
【0003】
すなわち、特許文献1は、コイル2内に鉄心1を挿入した後、鉄心1を支える下部クランプ5および鉄心1の上部に設けられる上部クランプ4を配した後、鉄製バンド6を鉄心1とコイル2の間を挿通し、上部クランプ4および下部クランプ5に設けたバンド挿入穴(17a,17b,18a,18b)を通した後、鉄製バンド6を締め上げることにより、構成される変圧器中身支持装置において、コイル2内に挿入した鉄心1とコイル2間の鉄心1の側面に、長さ寸法が鉄心1の鉄心高さと略同一寸法または鉄心高さより長い支持板7を挿入し、鉄製バンド締付け時に上部クランプ4および下部クランプ5とこの支持板7が箱形を形成するようにした変圧器中身支持構造を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-294673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の変圧器中身支持構造は、巻鉄心の積層方向の側面に、ダクト及び鉄製バンドと並べて支持板が配置されていることから、支持板の幅が制限されている。そのため十分な強度を確保することができない場合があり、例えば、単相変圧器では、鉄心、コイルの形状により上締金具が傾くことがある。特に、V結線変圧器において上段の変圧器を設置する際に、上段の変圧器は下段の変圧器の上部に乗る構造となるため、下段の変圧器部(鉄心やコイル)の寸法変動によっては下段の上部締金具の角度が地面に対して平行ではない場合もある。そのため、上段に変圧器を設置する際に上段の変圧器が傾き、位置調整のための作業が必要となる。また、締金具が傾くことに伴い、ケースと変圧器固定部の位置がずれ、上段の変圧器部がケース内面に近づき、適切な絶縁距離の確保が困難となる可能性がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、巻鉄心タイプの変圧器の中身固定強度を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、下記の態様の変圧器が提供される。この変圧器は、コイルと、巻鉄心と、締金具と、スペーサと、を備える。巻鉄心は、コイルに挿入される。締金具は、凹形状を有しており、巻鉄心の上面側及び下面側に配置され、巻鉄心の上面側及び下面側を覆って固定する。スペーサは、巻鉄心と締金具の間に配置されてコイルと巻鉄心の間に挿入される。また、スペーサは、巻鉄心の巻き面側に挿入される。
【0008】
また、本発明によれば、前記変圧器を下段に配置したV結線多段変圧器が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、巻鉄心タイプの変圧器の中身固定強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】スペーサ兼コイル支えを挿入したV結線多段変圧器の内側の構造の一例を示す図。
図2】スペーサ兼コイル支えの構造の一例を示す図。
図3】単相変圧器におけるスペーサの挿入を示す図。
図4】スペーサ兼コイル支えの構造の一例を示す図。
図5】スペーサ兼コイル支えの構造の一例を示す図。
図6】スペーサ兼コイル支えの構造の一例を示す図。
図7】スペーサ兼コイル支えの構造の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の静止機器として、変圧器を例に各実施形態を以下詳述する。
【0012】
先ず、図1および図2を参照しながら、第1実施形態について説明する。図1は、ペーサ兼コイル支えを挿入したV結線多段変圧器の内側の構造の一例を示す図である。図2は、単相変圧器及びV結線多段変圧器におけるスペーサ兼コイル支え構造の一例を示す図である。
【0013】
V結線多段変圧器は、複数の変圧器を備える。図1に示すように、本実施形態では、V結線多段変圧器は、上下2段の変圧器を備え、上段の変圧器の大きさは、下段の変圧器の大きさよりも小さくなっている。各段の変圧器は、コイル101と、巻鉄心102と、を備え、巻鉄心102は、コイル101に挿入されている。そして、巻鉄心102は、上締金具103と、下締金具104と、によって固定されている。
【0014】
上締金具103は、巻鉄心102の上面側を覆う凹形状を有しており、その窪みに巻鉄心102の上部を嵌め込んでいる。下締金具104は、巻鉄心102の下面側を覆う凹形状を有しており、その窪みに巻鉄心102の下部を嵌め込んでいる。
【0015】
また、下段の変圧器の上締金具103の窪みには、巻鉄心102を嵌め込んだ状態で巻鉄心102と上締金具103の間に後述するスペーサ兼コイル支え301が挿入される空間Sが形成されている。同様に、下段の変圧器の下締金具104の窪みには、巻鉄心102を嵌め込んだ状態で巻鉄心102と下締金具104の間に後述するスペーサ兼コイル支え301が挿入される空間Sが形成されている。
【0016】
本実施形態では、上段の変圧器の下締金具104の大きさは、下段の変圧器の下締金具104よりも小さくなっている。下段の変圧器の上締金具103、下段の変圧器の下締金具104、及び、上段の変圧器の上締金具103は、それぞれ同じ大きさとなっている。そして、これら(下段の変圧器の上締金具103、下段の変圧器の下締金具104、及び、上段の変圧器の上締金具103)は、端部側に設けられる連結金具105によって、それぞれ接続されている。
【0017】
下段の変圧器には、巻鉄心102の巻き軸方向の側面(巻きが見える側の面であり、巻き面側と呼ぶことがある)とコイル101との間に、スペーサ兼コイル支え301が挿入されている。詳細には、図1におけるA-A断面図に示すように、巻鉄心102の巻き面側それぞれの位置に、スペーサ兼コイル支え301が挿入されている。
【0018】
図2に示すように、スペーサ兼コイル支え301は、縦板301aと、横板301bと、を備える。横板301bは、縦板301aに対して直交するように、縦板301aに接触交差した状態で固定されている。
【0019】
スペーサ兼コイル支え301の縦板301aの一方の先端は、上締金具103に接触している。また、他方の先端は、下側金具104に接触している。このように、スペーサ兼コイル支え301の縦板301aは、その両先端が上締金具103及び下締金具104に接触する長さを有している。
【0020】
本実施形態では、巻鉄心102とコイル101の間に挿入されるスペーサ兼コイル支え301の縦板301aを上締金具103及び下締金具104に固定せずに敢えて接触挿入することで、巻鉄心102の動きを柔らかく抑制することができるようになっている。
【0021】
本実施形態では、スペーサ兼コイル支え301の縦板301aが、巻鉄心102の巻き面両側に配置される。すなわち、鉄心脚102aに近い位置において複数のスペーサ兼コイル支え301が配置されるので、巻き面両側のスペーサ兼コイル支え301により、上締金具103を支持するのに良好な構造が形成される。
【0022】
また、本実施形態では、下段の変圧器のスペーサ兼コイル支え301の縦板301aが、上段の変圧器の下締金具104の直下(真下)に配置されているので、さらに強度が高い構造となっている。
【0023】
スペーサ兼コイル支え301の横板301bは、縦板301aが挿入された状態でコイル101に跨り、コイル101に沿うように設けられる。この横板301bは、コイル101の上下を挟むように配置されることにより、コイル101を上下方向に支えている。このように、本実施形態のスペーサ兼コイル支え301は、鉄心脚102aに近い位置において、強度の高い井桁構造で巻鉄心102とコイル101を支えているので、下段変圧器の上締金具103の傾きを抑制することができている。特に、各板が一枚板なので、各巻鉄心102の動きを全体で吸収することが可能になっている。
【0024】
なお、本実施形態では、図2に示す1枚の縦板に1枚の横板が固定されたスペーサ兼コイル支え301を複数用いる構造を実現しているが、スペーサ兼コイル支え301の構造は、後述するように適宜に変更することができる。
【0025】
次に、図3を参照しながら、第2実施形態について説明する。既に説明した内容と同様の内容については省略することがある。図3は、単相変圧器におけるスペーサ挿入を示す図である。第1実施形態の場合との相違点は、上側の変圧器がない点と、スペーサ兼コイル支え301について横板がないスペーサ201になっている点である。
【0026】
コイル101の質量が軽くコイル支えが必要とならない場合、横板が省略されてもよい。横板を省略する場合であっても、スペーサ201の先端が上締金具103及び下締金具104に接触する長さを有することにより強度が向上しているので、上締金具103の傾きを抑制することが可能となっている。
【0027】
次に、図4から図7を参照しながら、第3実施形態について説明する。既に説明した内容と同様の内容については省略することがある。図4から図7は、単相変圧器及びV結線多段変圧器におけるスペーサ兼コイル支えの構造例を示す。第3実施形態では、スペーサ兼コイル支えの複数の構造例について説明する。
【0028】
図4に示すスペーサ兼コイル支え401は、1枚の縦板401aに複数枚(この例では、2枚)の横板401bを固定した構造を有している。一方の横板401bは、上締金具103とコイル101の間に位置してコイル101に沿うように縦板401aに固定され、他方の横板401bは、下締金具104とコイル101の間に位置してコイル101に沿うように縦板401aに固定される。コイル101を上下方向で支える複数の横板401bが固定されたスペーサ兼コイル支え401を用いて、強度の高い井桁構造を実現することができる。
【0029】
図5に示すスペーサ兼コイル支え501は、第1実施形態の場合と同様に、1枚の縦板501aに1枚の横板501bを固定した構造を有している。このスペーサ兼コイル支え501は、横板501bの寸法が変更されている点について第1実施形態の場合と異なっている。すなわち、スペーサ兼コイル支えの横板は、コイル101を適切に支えることができれば良く、その長さや幅や厚さを適宜に変更してもよい。横板501bの長さは、例えば、コイル101の少なくとも一部に沿うように、コイル101の少なくとも一部に跨るように設定されてもよい。また、横板501bの長さは、例えば、コイル101の全体に沿うように、コイル101の全体に跨るように設定されてもよい。
【0030】
図6に示すスペーサ兼コイル支え601は、横板が省略されて1枚の縦板601aにより構成されている。そして、スペーサ兼コイル支え601の両端側は、その間の厚さよりも厚くなっている。詳細には、このスペーサ兼コイル支え601は、コイル101に挿入された状態で両端側がコイル101の外側に位置する長さを有する。そして、このスペーサ兼コイル支え601において、コイル101の外側に位置する部分の厚さが増しており、この部分(肉厚部601b)の厚さは、コイル101の少なくとも一部に沿うように設定されている。このように、横板に代えて縦板601aの板厚を増加することで、コイル101に跨る部分を形成してコイル101を支えてもよい。
【0031】
図7に示すスペーサ兼コイル支え701は、1枚の縦板701aにより構成され、一端側のみを厚くした(すなわち、一端側にのみ肉厚部701bを形成した)構造を有している。このように、縦板701aの一側のみを厚くした構造を有するスペーサ兼コイル支え701が、例えば、コイル101の荷重や寸法、設置状態等を考慮して、適宜に設けられてもよい。
【0032】
なお、本実施形態では、様々なスペーサ兼コイル支えの構造例について説明されたが、スペーサ兼コイル支えの構造は、適宜に変更してもよく、これらとは異なる構造であってもよい。
【0033】
以上実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。
【0034】
締金具(上締金具103及び下締金具104)は、スペーサまたはスペーサ兼コイル支えを挿入する空間Sを巻鉄心102との間に形成したうえで巻鉄心102を固定することができればよく、適宜の固定金具とすることができる。締金具は、例えば、巻鉄心102を締め付けて固定することができる適宜のクランプとすることができる。
【0035】
連結金具105は、上締金具103を動かして巻鉄心102に圧接させ、且つ、下締金具104を動かして巻鉄心102に圧接させることにより、上締金具103と下締金具104に挟まれる巻鉄心102を固定する締付機構を備える構成であってもよい。
【符号の説明】
【0036】
101 コイル
102 巻鉄心
103 上締金具
104 下締金具
105 連結金具
201 スペーサ
301 スペーサ兼コイル支え
401 スペーサ兼コイル支え
501 スペーサ兼コイル支え
601 スペーサ兼コイル支え
701 スペーサ兼コイル支え
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7