(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】電流センサ
(51)【国際特許分類】
G01R 19/00 20060101AFI20240521BHJP
G01R 35/00 20060101ALI20240521BHJP
G01R 15/00 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
G01R19/00 M
G01R35/00 E
G01R15/00 500
G01R19/00 B
(21)【出願番号】P 2021132747
(22)【出願日】2021-08-17
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】根塚 智裕
(72)【発明者】
【氏名】古田 善一
(72)【発明者】
【氏名】和田 祥太郎
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-98343(JP,A)
【文献】特開2015-21731(JP,A)
【文献】特開2010-8121(JP,A)
【文献】特開2000-292463(JP,A)
【文献】特開2009-128285(JP,A)
【文献】特開2000-201074(JP,A)
【文献】特開2017-96628(JP,A)
【文献】特開2011-69809(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 19/00
G01R 35/00
G01R 15/00
G01R 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出電流が流れる経路に直列に設けられたシャント抵抗(4)の端子電圧と前記シャント抵抗の抵抗値に対応する検出用抵抗値とを用いて前記被検出電流を検出するものであり、前記検出用抵抗値を補正する抵抗値補正回路(17、53、75、86、96)を備えた電流センサであって、
前記抵抗値補正回路は、
前記被検出電流が流れる経路とは異なる経路において前記シャント抵抗と直列に接続されたものであり且つ前記シャント抵抗に比べて抵抗精度が高い補正抵抗(5)と、
前記シャント抵抗および前記補正抵抗の直列回路に対して交流信号を印加する信号印加部(6、52)と、
前記直列回路に前記交流信号が印加される際における前記シャント抵抗の端子電圧を検出する第1電圧検出部(7)と、
前記直列回路に前記交流信号が印加される際における前記補正抵抗の端子電圧を検出する第2電圧検出部(8)と、
前記第1電圧検出部による端子電圧の検出値である第1電圧検出値および前記第2電圧検出部による端子電圧の検出値である第2電圧検出値に基づいて前記シャント抵抗の抵抗値を算出するとともに、その算出した前記シャント抵抗の抵抗値である算出抵抗値に基づいて前記検出用抵抗値を補正する補正部(16)と、
を備える電流センサ。
【請求項2】
前記第1電圧検出部は、前記シャント抵抗の端子の信号を入力するとともに前記交流信号の周波数と同じ周波数で同期検波して信号を抽出して出力する第1同期検波回路(12)を備え、前記第1同期検波回路の出力信号に基づいて前記シャント抵抗の端子電圧を検出する構成であり、
前記第2電圧検出部は、前記補正抵抗の端子の信号を入力するとともに前記交流信号の周波数と同じ周波数で同期検波して信号を抽出して出力する第2同期検波回路(14)を備え、前記第2同期検波回路の出力信号に基づいて前記補正抵抗の端子電圧を検出する構成である請求項1に記載の電流センサ。
【請求項3】
前記第1電圧検出部は、前記シャント抵抗の端子電圧および前記補正抵抗の端子電圧を検出するためのA/D変換動作を行うことができる第1A/D変換器(11)を備え、
前記第2電圧検出部は、前記シャント抵抗の端子電圧および前記補正抵抗の端子電圧を検出するためのA/D変換動作を行うことができる第2A/D変換器(13)を備え、
前記抵抗値補正回路(75)は、さらに、
前記第1A/D変換器および前記第2A/D変換器のそれぞれが前記シャント抵抗および前記補正抵抗のそれぞれに接続することができるように接続状態を切り替えることができる切替部(72)と、
前記切替部の接続状態を切り替えることにより前記第1A/D変換器および前記第2A/D変換器のゲイン誤差を低減するゲイン誤差低減部(74)と、
を備える請求項1または2に記載の電流センサ。
【請求項4】
前記抵抗値補正回路(86、96)は、さらに、
前記シャント抵抗の温度を検出する第1温度検出部(84)と、
前記第1温度検出部による温度の検出値である第1温度検出値に基づいて前記被検出電流の検出値を補正する電流値補正部(85、95)と、
を備える請求項1から3のいずれか一項に記載の電流センサ。
【請求項5】
前記抵抗値補正回路(96)は、さらに、前記補正抵抗の温度を検出する第2温度検出部(94)を備え、
前記電流値補正部(95)は、前記第1温度検出値および前記第2温度検出部による温度の検出値である第2温度検出値に基づいて前記被検出電流の検出値を補正する請求項4に記載の電流センサ。
【請求項6】
前記信号印加部は、パルス波または正弦波の前記交流信号を前記直列回路に対して印加するようになっている請求項1から4のいずれか一項に記載の電流センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検出電流が流れる経路に直列に設けられたシャント抵抗の端子電圧とシャント抵抗の抵抗値に対応する検出用抵抗値とを用いて被検出電流を検出する電流センサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2に開示されるように、従来の電流センサでは、被検出電流が流れる経路に直列に設けられたシャント抵抗の端子電圧を測定し、その測定された電圧値とシャント抵抗の抵抗値に対応する検出用抵抗値とに基づいて計測対象の電流値を算出するようになっている。この場合、シャント抵抗の抵抗値が経年劣化などにより変化することから、電流値の算出に用いられる検出用抵抗値を随時補正する必要がある。なお、以下の説明では、特許文献1に開示される従来の電流センサのことを第1従来技術と称するとともに、特許文献2に開示される従来の電流センサのことを第2従来技術と称することとする。
【0003】
第1従来技術では、次のようにして検出用抵抗値の補正が行われる。すなわち、第1従来技術は、通常時にシャント抵抗と同様に被検出電流が流れるように設けられたサブ抵抗と、通常時に被検出電流が流れることがないように設けられた補正抵抗と、を備えている。上記構成によれば、サブ抵抗は、シャント抵抗と同様に劣化するものの、補正抵抗は、ほとんど劣化することがない。第1従来技術では、補正時、サブ抵抗および補正抵抗の各抵抗値を比較することにより、サブ抵抗、ひいてはシャント抵抗の劣化度合いを求め、それに基づいて検出用抵抗値を補正するようになっている。
【0004】
第2従来技術では、次のようにして検出用抵抗値の補正が行われる。すなわち、第2従来技術は、シャント抵抗を複数備え、それら複数のシャント抵抗の相互接続ノードから補正電流を流す構成、またはシャント抵抗の中央部分に入力端子を設け、その入力端子から補正電流を流す構成とされている。第2従来技術では、補正電流を流した際における各抵抗の端子電圧を測定し、その測定結果に基づいて個々の抵抗値を算出することで検出用抵抗値を補正するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第8779777号明細書
【文献】米国特許第10473724号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
第1従来技術では、シャント抵抗を用いて直接的に補正を行っておらず、サブ抵抗がシャント抵抗と同様に劣化するものであると仮定したうえで、そのサブ抵抗を用いて間接的にシャント抵抗の抵抗値に対応する検出用抵抗値の補正を行っている。そのため、第1従来技術では、上記した仮定が成立しない場合には、検出用抵抗値の補正を精度良く行うことができなくなり、その結果、電流の検出精度が低下するおそれがある。
【0007】
第2従来技術では、シャント抵抗を複数設けるか、または、シャント抵抗の中央部分に入力端子を設ける必要があることから、構成が複雑化する問題が生じる。また、第2従来技術では、検出用抵抗値の補正についての精度が補正電流の精度に大きく依存することから、補正の精度を十分に高めることが困難であった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、構成の複雑化を招くことなく、検出用抵抗値の補正を精度良く行うことができる電流センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の電流センサは、被検出電流が流れる経路に直列に設けられたシャント抵抗(4)の端子電圧とシャント抵抗の抵抗値に対応する検出用抵抗値とを用いて被検出電流を検出するものであり、検出用抵抗値を補正する抵抗値補正回路(17、53、75、86、96)を備えている。抵抗値補正回路は、補正抵抗(5)、信号印加部(6、52)、第1電圧検出部(7)、第2電圧検出部(8)および補正部(16)を備えている。補正抵抗は、被検出電流が流れる経路とは異なる経路においてシャント抵抗と直列に接続されたものであり且つシャント抵抗に比べて抵抗精度が高い。
【0010】
信号印加部は、シャント抵抗および補正抵抗の直列回路に対して交流信号を印加する。第1電圧検出部は、直列回路に交流信号が印加される際におけるシャント抵抗の端子電圧を検出する。第2電圧検出部は、直列回路に交流信号が印加される際における補正抵抗の端子電圧を検出する。補正部は、第1電圧検出部による端子電圧の検出値である第1電圧検出値および第2電圧検出部による端子電圧の検出値である第2電圧検出値に基づいてシャント抵抗の抵抗値を算出するとともに、その算出したシャント抵抗の抵抗値である算出抵抗値に基づいて検出用抵抗値を補正する。
【0011】
このような構成によれば、第1従来技術のようにサブ抵抗を用いて間接的に検出用抵抗値を補正することなく、シャント抵抗を用いて直接的に検出用抵抗値を補正することができる。また、上記構成によれば、第2従来技術のように、シャント抵抗を複数設けたり、シャント抵抗の中央部分に入力端子を設けたりする必要がなく、1つのシャント抵抗を設けるだけでよいことから、電流センサ全体の構成が複雑化することがない。
【0012】
さらに、上記構成によれば、算出抵抗値の算出精度、ひいては検出用抵抗値の補正の精度は、補正抵抗の抵抗値の精度と、第1電圧検出値および第2電圧検出値の検出精度とに大きく依存する。この場合、補正抵抗は、シャント抵抗に比べて抵抗精度が高くなっているため、検出用抵抗値の補正の精度が十分に高められる。したがって、上記構成によれば、電流センサ全体の構成の複雑化を招くことなく、検出用抵抗値の補正を精度良く行うことができるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態に係る電流センサの構成を模式的に示す図
【
図2】第1実施形態に係る信号印加部の具体的な第1構成例を示す図
【
図3】第1実施形態に係る信号印加部の具体的な第2構成例を示す図
【
図4】第1実施形態に係る信号印加部の具体的な第3構成例を示す図
【
図5】第1実施形態に係る信号印加部の具体的な第4構成例を示す図
【
図6】第1実施形態に係る各同期検波回路の具体的な構成例を示す図
【
図7】第2実施形態に係る電流センサの構成を模式的に示す図
【
図8】第2実施形態に係る信号印加部の具体的な第1構成例を示す図
【
図9】第2実施形態に係る信号印加部の具体的な第2構成例を示す図
【
図10】第3実施形態に係る電流センサの構成を模式的に示す図
【
図11】第3実施形態に係る第1接続状態に切り替えられた電流センサの構成を模式的に示す図
【
図12】第3実施形態に係る第2接続状態に切り替えられた電流センサの構成を模式的に示す図
【
図13】第3実施形態に係る第3接続状態に切り替えられた電流センサの構成を模式的に示す図
【
図14】第4実施形態に係る電流センサの構成を模式的に示す図
【
図15】第5実施形態に係る電流センサの構成を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、複数の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各実施形態において実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について
図1~
図6を参照して説明する。
【0015】
<全体構成>
図1に示す本実施形態の電流センサ1は、例えば自動車などの車両に搭載されるものであり、測定対象2に流れる電流である被検出電流を検出する。測定対象2としては、車両を走行させるための駆動部に電力を供給する主機バッテリや車両の補機に電力を供給する補機バッテリなどの電池、DC/DCコンバータなどが想定される。DC/DCコンバータは、車両を走行させるための駆動力を発生するモータに対して電力を供給するものであり、そのモータとともに上記した駆動部を構成する。
【0016】
この場合、測定対象2に対して負荷3が直列接続されており、測定対象2、負荷3および図示しないスイッチなどによりループ回路が構成される。負荷3としては、測定対象2が上記した電池である場合、例えば上記したモータ、上記したDC/DCコンバータ、電動コンプレッサなどが想定される。また、負荷3としては、測定対象2が上記したDC/DCコンバータである場合、例えば上記したモータなどが想定される。
【0017】
電流センサ1は、シャント抵抗4、補正抵抗5、信号印加部6、第1電圧検出部7、第2電圧検出部8および制御部9を備えている。シャント抵抗4の一方の端子は、負荷3を介して測定対象2の高電位側端子に接続され、その他方の端子は、回路の基準電位となるグランドに接続されるとともに測定対象2の低電位側端子に接続されている。つまり、シャント抵抗4は、被検出電流が流れる経路に直列に設けられている。電流センサ1は、このように設けられたシャント抵抗4の端子電圧と、シャント抵抗4の抵抗値に対応する検出用抵抗値と、を用いて被検出電流を検出する。
【0018】
補正抵抗5の一方の端子は、信号印加部6に接続され、その他方の端子はシャント抵抗4の一方の端子に接続されている。つまり、補正抵抗5は、被検出電流が流れる経路とは異なる経路においてシャント抵抗4と直列に接続されている。この場合、被検出電流は、比較的大きな電流となることから、シャント抵抗4の抵抗値は、例えばμΩオーダといった比較的小さい値となっている。
【0019】
一方、補正抵抗5には比較的大きい被検出電流が流れることがないため、その抵抗値は、例えばmΩオーダといった比較的大きい値となっている。一般に、抵抗値が小さい抵抗を精度良く作成することは難しいものの、抵抗値が大きい抵抗を精度良く作成することは比較的容易である。このようなことから、本実施形態において、補正抵抗5の抵抗精度は、シャント抵抗4の抵抗精度に比べて十分に高いものとなっている。
【0020】
信号印加部6は、後述する検出用抵抗値の補正が行われる補正時、シャント抵抗4および補正抵抗5の直列回路に対してパルス波または正弦波の交流信号を印加する。言い換えると、信号印加部6は、補正時、シャント抵抗4および補正抵抗5に対して同一の交流信号を印加する。この場合、信号印加部6は、例えば+5Vの電源電圧VDDが供給される電源線10から上記直列回路に対して交流の電流を供給する電流源として構成されている。第1電圧検出部7は、シャント抵抗4および補正抵抗5の直列回路に交流信号が印加される際におけるシャント抵抗4の端子電圧を検出するものであり、第1A/D変換器11および第1同期検波回路12を備えている。なお、
図1などの図面では、A/D変換器のことをADCと省略している。
【0021】
第1A/D変換器11は、シャント抵抗4の端子電圧を検出するために次のようなA/D変換動作を行う。すなわち、第1A/D変換器11は、シャント抵抗4の各端子の信号を入力し、それら各信号をA/D変換することによりシャント抵抗4の各端子電圧の差、つまりシャント抵抗4の端子間電圧に対応したデジタル信号を出力する。このようにして第1A/D変換器11から出力されるデジタル信号は、シャント抵抗4の端子の信号に対応した信号となっている。
【0022】
第1同期検波回路12は、第1A/D変換器11から出力されるデジタル信号を入力するとともに信号印加部6における交流信号の周波数と同じ周波数で同期検波して信号を抽出し、その抽出した信号を制御部9へと出力する。第1同期検波回路12の出力信号は、シャント抵抗4の端子電圧に対応した信号となる。このように、補正時、第1電圧検出部7は、第1同期検波回路12の出力信号に基づいてシャント抵抗4の端子電圧を検出する構成となっており、その端子電圧の検出値である第1電圧検出値を表す信号を制御部9へと出力する。
【0023】
第1電圧検出部7は、シャント抵抗4および補正抵抗5の直列回路に交流信号が印加されないとき、つまり通常時、次のようにシャント抵抗4の端子電圧を検出する。すなわち、通常時、第1A/D変換器11は、補正時と同様にA/D変換動作を行う。この場合、第1A/D変換器11から出力されるデジタル信号は、第1同期検波回路12に入力されることなく、制御部9へと出力される。つまり、通常時、第1電圧検出部7は、第1A/D変換器11の出力信号に基づいてシャント抵抗4の端子電圧を検出するようになっており、その端子電圧の検出値である第1電圧検出値を表す信号を制御部9へと出力する。
【0024】
第2電圧検出部8は、シャント抵抗4および補正抵抗5の直列回路に交流信号が印加される際における補正抵抗5の端子電圧を検出するものであり、第2A/D変換器13および第2同期検波回路14を備えている。第2A/D変換器13は、補正抵抗5の端子電圧を検出するために次のようなA/D変換動作を行う。すなわち、第2A/D変換器13は、補正抵抗5の各端子の信号を入力し、それら各信号をA/D変換することにより補正抵抗5の各端子電圧の差、つまり補正抵抗5の端子間電圧に対応したデジタル信号を出力する。このようにして第2A/D変換器13から出力されるデジタル信号は、補正抵抗5の端子の信号に対応した信号となっている。
【0025】
第2同期検波回路14は、第2A/D変換器13から出力されるデジタル信号を入力するとともに信号印加部6における交流信号の周波数と同じ周波数で同期検波して信号を抽出し、その抽出した信号を制御部9へと出力する。第2同期検波回路14の出力信号は、補正抵抗5の端子電圧に対応した信号となる。このように、補正時、第2電圧検出部8は、第2同期検波回路14の出力信号に基づいて補正抵抗5の端子電圧を検出する構成となっており、その端子電圧の検出値である第2電圧検出値を表す信号を制御部9へと出力する。
【0026】
制御部9は、第1電圧検出部7および第2電圧検出部8とともに、同一のASICなどの半導体集積回路として構成されている。なお、ASICは、Application Specific Integrated Circuitの略称である。制御部9は、電流検出部15および補正部16などの機能ブロックを備えている。これら各機能ブロックは、ハードウェアにより実現されている。なお、制御部9は、第1電圧検出部7および第2電圧検出部8とは別の半導体集積回路として構成することができる。例えば、制御部9は、CPU、RAM、ROMなどを備えたマイクロコンピュータにより構成することができる。この場合、上記した各機能ブロックは、制御部9のCPUがROMなどに格納されているコンピュータプログラムを実行してコンピュータプログラムに対応する処理を実行することにより実現されている、つまりソフトウェアにより実現されている。なお、この場合、各機能ブロックのうち少なくとも一部をハードウェアにより実現する構成としてもよい。
【0027】
電流検出部15は、通常時に第1電圧検出部7から出力されるシャント抵抗4の端子電圧に対応した信号と、シャント抵抗4の抵抗値に対応する検出用抵抗値とを用いて被検出電流を検出する。検出用抵抗値は、実際に用いられるシャント抵抗4の初期の抵抗値に基づいて設定されたものであり、制御部9が備えるメモリに予め記憶されている。ただし、シャント抵抗4は、通常時に比較的大きい電流である被検出電流が流れることから、その抵抗値が経年劣化などにより初期値から変化してゆく。
【0028】
そこで、上記した検出用抵抗値は、補正部16の動作によって随時補正されるようになっている。補正部16は、補正時、第1電圧検出部7から出力される第1電圧検出値を表す信号および第2電圧検出部8から出力される第2電圧検出値を表す信号と、補正抵抗5の抵抗値に対応する補正抵抗値と、に基づいてシャント抵抗4の抵抗値を算出する。補正部16は、その算出したシャント抵抗4の抵抗値である算出抵抗値に基づいて検出用抵抗値を補正する。例えば、補正部16は、検出用抵抗値を算出抵抗値に一致させるように補正することができる。
【0029】
上記した補正抵抗値は、実際に用いられる補正抵抗5の初期の抵抗値であり、制御部9が備えるメモリに予め記憶されている。なお、補正抵抗5は、通常時に被検出電流が流れないことから、その抵抗値が経年劣化などにより初期値から変化することがほとんどない。このように、上記構成では、補正抵抗5、信号印加部6、第1電圧検出部7、第2電圧検出部8および補正部16により、検出用抵抗値を補正する抵抗値補正回路17が構成されている。
【0030】
<信号印加部の具体的な構成>
信号印加部6の具体的な構成としては、例えば
図2に示す第1構成例、
図3に示す第2構成例、
図4に示す第3構成例、
図5に示す第4構成例などが挙げられる。
[1]第1構成例
図2に示すように、第1構成例の信号印加部6aは、トランジスタ21、信号生成部22、OPアンプ23などを備えている。トランジスタ21は、例えばNチャネル型のMOSFETであり、そのドレインは補正抵抗5を介して電源線10に接続され、そのソースはシャント抵抗4を介してグランドに接続されている。信号生成部22は、シャント抵抗4および補正抵抗5の直列回路に印加する交流の電流と同じ周波数を有するパルス波または正弦波の信号を生成して出力する。
【0031】
信号生成部22の出力信号は、OPアンプ23の非反転入力端子に与えられている。OPアンプ23の反転入力端子は、トランジスタ21のドレインに接続され、その出力端子は、トランジスタ21のゲートに接続されている。上記構成によれば、トランジスタ21がOPアンプ23により駆動されることでシャント抵抗4および補正抵抗5の直列回路に交流電流である交流信号が印加される。このように、第1構成例の信号印加部6aは、アンプ駆動の構成となっている。なお、この場合、補正抵抗5は、信号印加部6aの電流源としても機能する。
【0032】
[2]第2構成例
図3に示すように、第2構成例の信号印加部6bは、
図2に示した第1構成例の信号印加部6aに対し、抵抗24が追加されている点などが異なっている。この場合、トランジスタ21のドレインは抵抗24を介して電源線10に接続され、そのソースは補正抵抗5およびシャント抵抗4を介してグランドに接続されている。
【0033】
上記構成によっても、第1構成例と同様、トランジスタ21がOPアンプ23により駆動されることでシャント抵抗4および補正抵抗5の直列回路に交流電流である交流信号が印加される。このように、第2構成例の信号印加部6bは、第1構成例の信号印加部6aと同様、アンプ駆動の構成となっている。なお、この場合、補正抵抗5とは別に設けられた抵抗24およびトランジスタ21が、信号印加部6bの電流源として機能する。
【0034】
[3]第3構成例
図4に示すように、第3構成例の信号印加部6cは、
図2に示した第1構成例の信号印加部6aに対し、OPアンプ23に代えてバッファ25を備えている点などが異なっている。この場合、信号生成部22の出力信号は、バッファ25の入力端子に与えられている。バッファ25の出力端子は、トランジスタ21のゲートに接続されている。上記構成によれば、トランジスタ21がバッファ25により駆動されることでシャント抵抗4および補正抵抗5の直列回路に交流電流である交流信号が印加される。このように、第3構成例の信号印加部6cは、バッファ駆動の構成となっている。
【0035】
[4]第4構成例
図5に示すように、第4構成例の信号印加部6dは、
図3に示した第2構成例の信号印加部6bに対し、OPアンプ23に代えてバッファ25を備えている点などが異なっている。この場合、信号生成部22の出力信号は、バッファ25の入力端子に与えられている。バッファ25の出力端子は、トランジスタ21のゲートに接続されている。上記構成によれば、トランジスタ21がバッファ25により駆動されることでシャント抵抗4および補正抵抗5の直列回路に交流電流である交流信号が印加される。このように、第4構成例の信号印加部6dは、バッファ駆動の構成となっている。
【0036】
[5]各構成例の特徴
第1構成例および第3構成例は、補正抵抗5が電源線10に近い配置であるとともにシャント抵抗4がグランドに近い配置となっているため、第1電圧検出部7および第2電圧検出部8が互いに大きく異なる電位で電圧検出することになる。そのため、第1構成例および第3構成例によれば、第2構成例および第4構成例に対し、シャント抵抗4および補正抵抗5の端子電圧の検出誤差が生じ易いものの、補正抵抗5が信号印加部6a、6cの電流源を兼ねることにより素子数を少なく抑えることができるというメリットがある。
【0037】
第2構成例および第4構成例は、信号印加部6b、6dの電流源を構成するために補正抵抗5とは別の抵抗24を設ける必要があるため、第1構成例および第3構成例に対し、素子数が増えるというデメリットがある。しかし、第2構成例および第4構成例は、補正抵抗5およびシャント抵抗4の両方がグランドに近い配置となっているため、第1電圧検出部7および第2電圧検出部8が互いに同じような電位で電圧検出することになる。そのため、第2構成例および第4構成例によれば、第1構成例および第3構成例に対し、シャント抵抗4および補正抵抗5の端子電圧の検出誤差を小さく抑えることができるというメリットがある。
【0038】
アンプ駆動の構成である第1構成例および第2構成例によれば、OPアンプ23の動作によりトランジスタ21のドレイン電圧が一定に制御されるため、バッファ駆動の構成である第3構成例および第4構成例に対し、シャント抵抗4および補正抵抗5の直列回路に印加する交流電流の精度を高めることができるというメリットがある。一方、第3構成例および第4構成例によれば、第1構成例および第2構成例に対し、OPアンプ23に代えてバッファ25を用いる分だけ、回路規模を小さく抑えることができるというメリットがある。
【0039】
<各同期検波回路の具体的な構成>
第1同期検波回路12および第2同期検波回路14の具体的な構成としては、例えば
図6に示すような構成が挙げられる。この場合、信号印加部6によりシャント抵抗4および補正抵抗5の直列回路に印加される交流の電流である交流信号が「Io・cos(ωt)」であり、補正抵抗5の抵抗値がR1であり、シャント抵抗4の抵抗値がR2であるものとする。ただし、ωは角周波数であり、tは時間である。
【0040】
図6に示すように、第1同期検波回路12は、乗算器31、32、ローパスフィルタ33、34および演算器35を備えている。なお、本明細書では、ローパスフィルタのことをLPFと省略することがある。シャント抵抗4および補正抵抗5の直列回路に交流信号が印加される補正時、第1同期検波回路12の乗算器31、32の各一方の入力端子には、第1A/D変換器11から出力されるデジタル信号が入力される。このデジタル信号は、補正時におけるシャント抵抗4の端子電圧に対応する信号であり、「R2・Io・cos(ωt+φ2)」と表すことができる。
【0041】
乗算器31の他方の入力端子には、COS波信号「cos(ωt)」が入力されている。乗算器32の他方の入力端子には、SIN波信号「-sin(ωt)」が入力されている。これにより、乗算器31、32の各出力信号では、角周波数ωの信号がDC成分として取り出されるようになる。乗算器31、32の各出力信号は、それぞれLPF33、34に入力されている。
【0042】
LPF33の出力信号I2は、入力信号の同相成分に比例する低周波の信号となり、LPF34の出力信号Q2は、入力信号の直交位相成分に比例する低周波の信号となる。演算器35は、信号I2と信号Q2の二乗和の平方根を演算し、その演算結果を表す信号を出力する。演算器35の出力信号は、「R2・Io」と表すことができる。演算器35の出力信号は、第1同期検波回路12の出力信号となり、制御部9の補正部16に与えられる。
【0043】
第2同期検波回路14は、乗算器36、37、ローパスフィルタ38、39および演算器40を備えている。シャント抵抗4および補正抵抗5の直列回路に交流信号が印加される補正時、第2同期検波回路14の乗算器36、37の各一方の入力端子には、第2A/D変換器13から出力されるデジタル信号が入力される。このデジタル信号は、補正時における補正抵抗5の端子電圧に対応する信号であり、「R1・Io・cos(ωt+φ1)」と表すことができる。
【0044】
乗算器36の他方の入力端子には、COS波信号「cos(ωt)」が入力されている。乗算器37の他方の入力端子には、SIN波信号「-sin(ωt)」が入力されている。これにより、乗算器36、37の各出力信号では、角周波数ωの信号がDC成分として取り出されるようになる。乗算器36、37の各出力信号は、それぞれLPF38、39に入力されている。
【0045】
LPF38の出力信号I1は、入力信号の同相成分に比例する低周波の信号となり、LPF39の出力信号Q1は、入力信号の直交位相成分に比例する低周波の信号となる。演算器40は、信号I1と信号Q1の二乗和の平方根を演算し、その演算結果を表す信号を出力する。演算器40の出力信号は、「R1・Io」と表すことができる。演算器40の出力信号は、第2同期検波回路14の出力信号となり、制御部9の補正部16に与えられる。
【0046】
補正部16は、第1同期検波回路12の出力信号「R2・Io」を第2同期検波回路14の出力信号「R1・Io」で除算することにより、値「R2/R1」を求める。ここで、補正抵抗5の抵抗値R1は、既知の値であり、制御部9のメモリなどに予め記憶されている。そのため、補正部16は、上述したようにして求めた値「R2/R1」に対して予め記憶されている抵抗値R1を乗算することにより、現時点におけるシャント抵抗4の抵抗値R2、つまり算出抵抗値を算出することができる。
【0047】
以上説明した本実施形態によれば、次のような効果が得られる。
本実施形態の電流センサ1は、被検出電流が流れる経路に直列に設けられたシャント抵抗4の端子電圧とシャント抵抗4の抵抗値に対応する検出用抵抗値とを用いて被検出電流を検出するものであり、検出用抵抗値を補正する抵抗値補正回路17を備えている。抵抗値補正回路17は、補正抵抗5、信号印加部6、第1電圧検出部7、第2電圧検出部8および補正部16を備えている。補正抵抗5は、被検出電流が流れる経路とは異なる経路においてシャント抵抗4と直列に接続されたものであり且つシャント抵抗4に比べて抵抗精度が高い。
【0048】
信号印加部6は、シャント抵抗4および補正抵抗5の直列回路に対して交流信号を印加する。第1電圧検出部7は、上記直列回路に交流信号が印加される際におけるシャント抵抗4の端子電圧を検出する。第2電圧検出部8は、上記直列回路に交流信号が印加される際における補正抵抗5の端子電圧を検出する。補正部16は、第1電圧検出部7による端子電圧の検出値である第1電圧検出値および第2電圧検出部8による端子電圧の検出値である第2電圧検出値に基づいてシャント抵抗4の抵抗値を算出するとともに、その算出したシャント抵抗4の抵抗値である算出抵抗値に基づいて検出用抵抗値を補正する。
【0049】
このような構成によれば、第1従来技術のようにサブ抵抗を用いて間接的に検出用抵抗値を補正することなく、シャント抵抗4を用いて直接的に検出用抵抗値を補正することができる。また、上記構成によれば、第2従来技術のように、シャント抵抗を複数設けたり、シャント抵抗の中央部分に入力端子を設けたりする必要がなく、1つのシャント抵抗4を設けるだけでよいことから、電流センサ1全体の構成が複雑化することがない。
【0050】
さらに、上記構成によれば、算出抵抗値の算出精度、ひいては検出用抵抗値の補正の精度は、補正抵抗5の抵抗値の精度と、第1電圧検出値および第2電圧検出値の検出精度とに大きく依存する。この場合、補正抵抗5は、シャント抵抗4に比べて抵抗精度が高くなっているため、検出用抵抗値の補正の精度が十分に高められる。したがって、本実施形態によれば、電流センサ1全体の構成の複雑化を招くことなく、検出用抵抗値の補正を精度良く行うことができるという優れた効果が得られる。
【0051】
この場合、第1電圧検出部7は、シャント抵抗4の端子の信号を入力するとともに交流信号の周波数と同じ周波数で同期検波して信号を抽出して出力する第1同期検波回路12を備え、第1同期検波回路12の出力信号に基づいてシャント抵抗4の端子電圧を検出する構成である。また、この場合、第2電圧検出部8は、補正抵抗5の端子の信号を入力するとともに交流信号の周波数と同じ周波数で同期検波して信号を抽出して出力する第2同期検波回路14を備え、第2同期検波回路14の出力信号に基づいて補正抵抗5の端子電圧を検出する構成である。
【0052】
このような構成によれば、シャント抵抗4および補正抵抗5に印加する交流信号の周波数と同じ周波数で同期検波して取り出された信号によりシャント抵抗4の端子電圧および補正抵抗5の端子電圧が検出される。そのため、本実施形態によれば、熱起電力、回路側のオフセットなどのノイズの影響により第1電圧検出値および第2電圧検出値の検出精度が低下することが抑制され、その結果、検出用抵抗値の補正の精度を一層高めることができる。
【0053】
信号印加部6は、パルス波または正弦波の交流信号をシャント抵抗4および補正抵抗5の直列回路に対して印加するようになっている。信号印加部6が正弦波の交流信号を印加する場合、その交流信号を生成するための構成、具体的には信号生成部22の構成が複雑化するものの、交流信号として所望する周波数成分だけを含む信号とすることができることから第1電圧検出値および第2電圧検出値の検出誤差を低く抑えること、言い換えると、検出用抵抗値の補正の精度を高めることができる。これに対し、信号印加部6がパルス波の交流信号を印加する場合、その交流信号に高調波成分が含まれることから第1電圧検出値および第2電圧検出値の検出に関して誤差が生じるおそれがあるものの、交流信号を生成するための構成、具体的には信号生成部22の構成を簡素化することができる。
【0054】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について
図7~
図9を参照して説明する。
<全体構成>
図7に示すように、本実施形態の電流センサ51は、
図1に示した第1実施形態の電流センサ1に対し、信号印加部6に代えて信号印加部52を備えている点などが異なっている。
【0055】
信号印加部52は、信号印加部6と同様、補正時にシャント抵抗4および補正抵抗5の直列回路に対してパルス波または正弦波の交流信号を印加する。この場合、信号印加部52は、シャント抵抗4および補正抵抗5の直列回路に対して交流の電圧を供給する電圧源として構成されている。上記構成では、補正抵抗5、信号印加部52、第1電圧検出部7、第2電圧検出部8および補正部16により、検出用抵抗値を補正する抵抗値補正回路53が構成されている。
【0056】
<信号印加部の具体的な構成>
信号印加部52の具体的な構成としては、例えば
図8に示す第1構成例、
図9に示す第2構成例などが挙げられる。
[1]第1構成例
図8に示すように、第1構成例の信号印加部52aは、トランジスタ61、信号生成部62、OPアンプ63などを備えている。トランジスタ61は、例えばNチャネル型のMOSFETであり、そのドレインは例えば+5Vの電源電圧VDDが供給される電源線64に接続され、そのソースは補正抵抗5およびシャント抵抗4を介してグランドに接続されている。
【0057】
信号生成部62は、シャント抵抗4および補正抵抗5の直列回路に印加する交流の電圧と同じ周波数を有するパルス波または正弦波の信号を生成して出力する。信号生成部62の出力信号は、OPアンプ63の非反転入力端子に与えられている。OPアンプ63の反転入力端子は、トランジスタ61のソースに接続され、その出力端子は、トランジスタ61のゲートに接続されている。上記構成によれば、トランジスタ61がOPアンプ63により駆動されることでシャント抵抗4および補正抵抗5の直列回路に交流電圧である交流信号が印加される。このように、第1構成例の信号印加部52aは、アンプ駆動の構成となっている。
【0058】
[2]第2構成例
図9に示すように、第2構成例の信号印加部52bは、
図8に示した第1構成例の信号印加部52aに対し、OPアンプ63に代えてバッファ65を備えている点などが異なっている。この場合、信号生成部62の出力信号は、バッファ65の入力端子に与えられている。バッファ65の出力端子は、トランジスタ61のゲートに接続されている。上記構成によれば、トランジスタ61がバッファ65により駆動されることでシャント抵抗4および補正抵抗5の直列回路に交流電圧である交流信号が印加される。このように、第2構成例の信号印加部52bは、バッファ駆動の構成となっている。
【0059】
[3]各構成例の特徴
アンプ駆動の構成である第1構成例によれば、OPアンプ63の動作によりトランジスタ61のソース電圧が一定に制御されるため、バッファ駆動の構成である第2構成例に対し、シャント抵抗4および補正抵抗5の直列回路に印加する交流電圧の精度を高めることができるというメリットがある。一方、第2構成例によれば、第1構成例に対し、OPアンプ63に代えてバッファ65を用いる分だけ、回路規模を小さく抑えることができるというメリットがある。
【0060】
以上説明したように、本実施形態の電流センサ51は、補正時にシャント抵抗4および補正抵抗5の直列回路に対して印加される交流信号が交流電流から交流電圧に変更されている点を除いて第1実施形態の抵抗値補正回路17と同様の動作を行うことができる抵抗値補正回路53を備えている。そのため、本実施形態によっても、第1実施形態と同様に検出用抵抗値の補正を行うことが可能となり、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0061】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について
図10~
図13を参照して説明する。
図10に示すように、本実施形態の電流センサ71は、
図1に示した第1実施形態の電流センサ1に対し、切替部72が追加されている点、制御部9に代えて制御部73を備えている点などが異なっている。切替部72は、例えばマルチプレクサなどにより構成されており、シャント抵抗4および補正抵抗5の各端子と第1電圧検出部7および第2電圧検出部8の各入力端子との間の接続状態を切り替える。切替部72の動作は、制御部73により制御される。
【0062】
具体的には、切替部72は、
図11に示すような第1接続状態、
図12に示すような第2接続状態および
図13に示すような第3接続状態といった3つの接続状態に切り替えることができる。
図11に示すように、第1接続状態では、第1電圧検出部7の各入力端子にシャント抵抗4の各端子が接続されるとともに、第2電圧検出部8の各入力端子に補正抵抗5の各端子が接続される。つまり、第1接続状態は、切替部72を備えていない第1実施形態の電流センサ1などと同様の接続状態となっている。
【0063】
図12に示すように、第2接続状態では、第1電圧検出部7の各入力端子に補正抵抗5の各端子が接続されるとともに、第2電圧検出部8の各入力端子に補正抵抗5の各端子が接続される。
図13に示すように、第3接続状態では、第1接続状態では、第1電圧検出部7の各入力端子に補正抵抗5の各端子が接続されるとともに、第2電圧検出部8の各入力端子にシャント抵抗4の各端子が接続される。
【0064】
制御部73は、制御部9に対し、ゲイン誤差低減部74という機能ブロックが追加されている点などが異なっている。上記構成では、補正抵抗5、信号印加部6、第1電圧検出部7、第2電圧検出部8、補正部16およびゲイン誤差低減部74により、検出用抵抗値を補正する抵抗値補正回路75が構成されている。ゲイン誤差低減部74は、第1電圧検出部7の第1A/D変換器11および第2電圧検出部8の第2A/D変換器13のゲイン誤差を低減する。
【0065】
ゲイン誤差低減部74は、ゲイン誤差低減のための動作を行わないとき、つまり通常時または検出用抵抗値を補正する補正時、切替部72の接続状態を第1接続状態に切り替える。そして、ゲイン誤差低減部74は、切替部72の接続状態を第2接続状態または第3接続状態に切り替えることにより、第1A/D変換器11および第2A/D変換器13のゲイン誤差を低減することができる。
【0066】
すなわち、第2接続状態では、第1電圧検出部7および第2電圧検出部8は、いずれも補正抵抗5の端子電圧を検出することができる。そして、これらの検出値を表す信号は、ゲイン誤差低減部74に与えられる。そのため、第2接続状態では、ゲイン誤差低減部74は、第1電圧検出部7により検出された補正抵抗5の端子電圧の検出値および第2電圧検出部8により検出された補正抵抗5の端子電圧の検出値に基づいて、第1A/D変換器11および第2A/D変換器13の相対的なゲイン誤差を低減することができる。この場合、ゲイン誤差低減部74は、例えば、第1A/D変換器11および第2A/D変換器13のそれぞれのゲインが同じになるように補正を行うことができる。
【0067】
また、第1接続状態では、第1電圧検出部7はシャント抵抗4の端子電圧を検出することができ、第2電圧検出部8は補正抵抗5の端子電圧を検出することができる。第3接続状態では、第1接続状態とは逆に、第1電圧検出部7は補正抵抗5の端子電圧を検出することができ、第2電圧検出部8はシャント抵抗4の端子電圧を検出することができる。そして、これらの検出値を表す信号は、ゲイン誤差低減部74に与えられる。
【0068】
そのため、ゲイン誤差低減部74は、第1接続状態において第1電圧検出部7により検出されたシャント抵抗4の端子電圧の検出値と第3接続状態において第2電圧検出部8により検出されたシャント抵抗4の端子電圧の検出値とに基づいて、第1A/D変換器11および第2A/D変換器13のゲイン誤差を低減することができる。また、ゲイン誤差低減部74は、第1接続状態において第2電圧検出部8により検出された補正抵抗5の端子電圧の検出値と第3接続状態において第1電圧検出部7により検出された補正抵抗5の端子電圧の検出値とに基づいて、第1A/D変換器11および第2A/D変換器13のゲイン誤差を低減することができる。これらの場合、ゲイン誤差低減部74は、例えば、2つの検出値を平均化して各ゲイン誤差を打ち消すことにより、ゲイン誤差を低減することができる。
【0069】
以上説明したように、本実施形態の電流センサ71の抵抗値補正回路75は、第1電圧検出部7の第1A/D変換器11および第2電圧検出部8の第2A/D変換器13の各ゲイン誤差を低減するゲイン誤差低減部74を備えている。このような構成によれば、第1A/D変換器11および第2A/D変換器13のゲイン誤差を例えば0.1%といった非常に小さい値に低減することができる。したがって、本実施形態によれば、第1電圧検出部7によるシャント抵抗4の端子電圧の検出精度および第2電圧検出部8による補正抵抗5の端子電圧の検出精度が一層高められ、その結果、検出用抵抗値の補正の精度が一層向上するといった効果が得られる。
【0070】
(第4実施形態)
以下、第4実施形態について
図14を参照して説明する。
図14に示すように、本実施形態の電流センサ81は、
図1に示した第1実施形態の電流センサ1に対し、温度センサ82が追加されている点、制御部9に代えて制御部83を備えている点などが異なっている。温度センサ82は、シャント抵抗4の近傍に設けられており、シャント抵抗4の温度に応じた第1温度検出信号を出力する。制御部83は、制御部9に対し、第1温度検出部84および電流値補正部85という機能ブロックが追加されている点などが異なっている。
【0071】
上記構成では、補正抵抗5、信号印加部6、第1電圧検出部7、第2電圧検出部8、補正部16、第1温度検出部84および電流値補正部85により、検出用抵抗値を補正する抵抗値補正回路86が構成されている。第1温度検出部84は、温度センサ82から出力される第1温度検出信号に基づいてシャント抵抗4の温度を検出する。電流値補正部85は、補正部16と協働して次のような動作を行う。すなわち、電流値補正部85は、算出抵抗値および第1温度検出部84による温度の検出値である第1温度検出値に基づいて検出用抵抗値を補正する。具体的には、電流値補正部85は、第1温度検出値に基づいてシャント抵抗4の温度を把握したうえで、算出抵抗値に基づく検出用抵抗値の補正、ひいては被検出電流の検出値の補正を行う。このように、電流値補正部85は、第1温度検出値に基づいて被検出電流の検出値を補正するようになっている。
【0072】
以上説明したように、本実施形態の電流センサ81の抵抗値補正回路86は、シャント抵抗4の温度を検出する第1温度検出部84および第1温度検出部84による温度の検出値である第1温度検出値に基づいて検出用抵抗値、ひいては被検出電流の検出値を補正する電流値補正部85を備えている。このような構成によれば、シャント抵抗4の抵抗値の温度特性をも考慮したうえで検出用抵抗値を精度良く補正すること、ひいては被検出電流を精度良く検出することができる。
【0073】
(第5実施形態)
以下、第5実施形態について
図15を参照して説明する。
図15に示すように、本実施形態の電流センサ91は、
図14に示した第4実施形態の電流センサ81に対し、温度センサ92が追加されている点、制御部83に代えて制御部93を備えている点などが異なっている。温度センサ92は、補正抵抗5の近傍に設けられており、補正抵抗5の温度に応じた第2温度検出信号を出力する。制御部93は、制御部83に対し、第2温度検出部94という機能ブロックが追加されている点、電流値補正部85に代えて電流値補正部95が設けられている点などが異なっている。
【0074】
上記構成では、補正抵抗5、信号印加部6、第1電圧検出部7、第2電圧検出部8、補正部16、第1温度検出部84、第2温度検出部94および電流値補正部95により、検出用抵抗値を補正する抵抗値補正回路96が構成されている。第2温度検出部94は、温度センサ92から出力される第2温度検出信号に基づいて補正抵抗5の温度を検出する。電流値補正部95は、電流値補正部85と同様の動作に加え、補正部16と協働して次のような動作を行う。すなわち、電流値補正部95は、第2温度検出部94による温度の検出値である第2温度検出値に基づいて補正抵抗値を補正し、その補正後の補正抵抗値を用いて算出抵抗値を算出する。言い換えると、電流値補正部95は、第2温度検出値に基づいて算出抵抗値を補正する。そして、電流値補正部95は、その補正後の算出抵抗値および第1温度検出値に基づいて検出用抵抗値を補正する、ひいては被検出電流の検出値を補正する。このように、電流値補正部95は、第1温度検出値および第2温度検出値に基づいて被検出電流の検出値を補正するようになっている。
【0075】
以上説明したように、本実施形態の電流センサ91の抵抗値補正回路96は、シャント抵抗4の温度を検出する第1温度検出部84、補正抵抗5の温度を検出する第2温度検出部94および電流値補正部95を備えている。この場合、電流値補正部95は、第1温度検出部84による温度の検出値である第1温度検出値および第2温度検出部94による温度の検出値である第2温度検出値に基づいて検出用抵抗値、ひいては被検出電流の検出値を補正する。このような構成によれば、シャント抵抗4の抵抗値の温度特性だけでなく補正抵抗5の抵抗値の温度特性をも考慮したうえで検出用抵抗値を精度良く補正すること、ひいては被検出電流を精度良く検出することができる。
【0076】
(その他の実施形態)
なお、本発明は上記し且つ図面に記載した各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で任意に変形、組み合わせ、あるいは拡張することができる。
上記各実施形態で示した数値などは例示であり、それに限定されるものではない。
信号印加部6、52の具体的な構成としては、上記各実施形態において説明した構成に限らずともよく、シャント抵抗4および補正抵抗5の直列回路に対して交流信号を印加することができる構成であればよい。
【0077】
第1同期検波回路12の具体的な構成としては、上記各実施形態において説明した構成に限らずともよく、シャント抵抗4の端子の信号を入力するとともに交流信号の周波数と同じ周波数で同期検波して信号を抽出して出力することができる構成であればよい。第2同期検波回路14の具体的な構成としては、補正抵抗の端子の信号を入力するとともに交流信号の周波数と同じ周波数で同期検波して信号を抽出して出力することができる構成であればよい。
【0078】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0079】
1、51、71、81、91…電流センサ、4…シャント抵抗、5…補正抵抗、6、52…信号印加部、7…第1電圧検出部、8…第2電圧検出部、11…第1A/D変換器、12…第1同期検波回路、13…第2A/D変換器、14…第2同期検波回路、16…補正部、17、53、75、86、96…抵抗値補正回路、72…切替部、74…ゲイン誤差低減部、84…第1温度検出部、85、95…電流値補正部、94…第2温度検出部。