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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】燃料電池システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04664 20160101AFI20240521BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20240521BHJP
   H01M 8/0444 20160101ALI20240521BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20240521BHJP
   H01M 8/04225 20160101ALI20240521BHJP
   H01M 8/04302 20160101ALI20240521BHJP
   H01M 8/04313 20160101ALI20240521BHJP
   H01M 8/2475 20160101ALI20240521BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20240521BHJP
【FI】
H01M8/04664
H01M8/04 H
H01M8/0444
H01M8/04746
H01M8/04225
H01M8/04302
H01M8/04313
H01M8/2475
H01M8/12 101
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021144025
(22)【出願日】2021-09-03
(65)【公開番号】P2023037345
(43)【公開日】2023-03-15
【審査請求日】2023-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】木村 匠
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-49267(JP,A)
【文献】特開2013-233017(JP,A)
【文献】特開2006-79847(JP,A)
【文献】特開2017-134929(JP,A)
【文献】特開2017-183275(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04-8/0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ガスを含む燃料ガス、および酸化剤ガスが供給されることによって発電する燃料電池を含み、かつ前記水素ガスを含む排出ガスを排出する燃料電池ユニットと、
前記燃料電池ユニットの周囲での前記水素ガスの濃度をディテクタ値として検出するディテクタと、
前記燃料電池ユニットの周囲に空気の流れを発生させる送風部と、
制御装置と、を備え、
前記送風部が、前記燃料電池ユニットの周囲に前記空気の流れを発生させるための第1モード、
および前記空気の流れを前記第1モードより少なくする、又はゼロとする第2モードのいずれかを取り得る燃料電池システムにおいて前記制御装置によって実行される燃料電池システムの制御方法であって、
前記燃料電池システムが起動された後、
前記送風部が前記第1モードにある状況下で、前記ディテクタ値が、前記ディテクタを異常とみなすためのディテクタ用閾値未満か否かを判定するディテクタ値判定処理と、
前記ディテクタ値判定処理で、前記ディテクタ値が前記ディテクタ用閾値未満であると判定された後、前記燃料電池システムが停止された後に続く次の前記燃料電池システムの起動時、前記送風部を前記第2モードに設定する設定処理と、
前記送風部が前記第2モードにある状況下で、前記ディテクタが正常に機能するか否かを判定するための判定処理と、を有することを特徴とする燃料電池システムの制御方法。
【請求項2】
前記制御装置はカウンタを備え、当該カウンタは前記ディテクタ値が前記ディテクタ用閾値未満であると判定される度に異常カウンタ値を加算し、
前記ディテクタ値判定処理は、前記ディテクタ値が前記ディテクタ用閾値未満であるか否かを判定する第1ステップと、
前記第1ステップにて前記ディテクタ値が前記ディテクタ用閾値未満である場合に、前記カウンタの結果が、前記ディテクタの異常を確定するための確定用カウンタ閾値よりも小さいカウンタ閾値以上であるか否かを判定する第2ステップと、を含み、
前記ディテクタ値判定処理の前記第2ステップにて前記カウンタの結果が前記カウンタ閾値以上であると判定された後、前記設定処理が実行される請求項1に記載の燃料電池システムの制御方法。
【請求項3】
前記燃料電池システムは前記ディテクタを複数備え、前記ディテクタ値判定処理では、複数の前記ディテクタ値のそれぞれが前記ディテクタ用閾値未満であるか否かを判定する請求項1又は請求項2に記載の燃料電池システムの制御方法。
【請求項4】
前記燃料電池ユニットは筐体の内部に配置され、前記送風部はファンであり、当該ファンは、前記筐体の内部を前記空気が通過するように前記燃料電池ユニットの周囲に前記空気の流れを発生させる請求項1~請求項3のうちいずれか一項に記載の燃料電池システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池を含む燃料電池ユニットでは、燃料ガスに含まれる水素ガスが、燃料電池ユニットの各部品からの透過や漏出により、わずかながらも排出される場合があることが知られている。漏洩する水素ガスの濃度を検知するためのディテクタを備える燃料電池ユニットが特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示された燃料電池型産業車両は、ディテクタとしての水素濃度検知器を備える。また、特許文献1に開示された燃料電池型産業車両は、熱媒体が流通する熱媒体通路と、熱媒体通路に設けられたラジエータと、ラジエータに対して空気流を発生させるラジエータファンと、を備えている。また、特許文献1に開示された燃料電池型産業車両は可動板を備えている。可動板は、燃料電池からラジエータに向う空気流の一部を水素濃度検知器に案内するように移動する。これにより、ラジエータファンの運転時においても水素濃度検知器によって、水素濃度を正確に検出できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-233017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、燃料電池ユニットでは、ディテクタが正常に機能していないと、ディテクタによる水素濃度の検出が不可能になってしまう。すると、水素ガスの透過や漏出を検出できなくなってしまう。このため、ディテクタが正常に機能するか否かを精度良く判定することが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための燃料電池システムの制御方法は、水素ガスを含む燃料ガス、および酸化剤ガスが供給されることによって発電する燃料電池を含み、かつ前記水素ガスを含む排出ガスを排出する燃料電池ユニットと、前記燃料電池ユニットの周囲での前記水素ガスの濃度をディテクタ値として検出するディテクタと、前記燃料電池ユニットの周囲に空気の流れを発生させる送風部と、制御装置と、を備え、前記送風部が、前記燃料電池ユニットの周囲に前記空気の流れを発生させるための第1モード、および前記空気の流れを前記第1モードより少なくする、又はゼロとする第2モードのいずれかを取り得る燃料電池システムにおいて前記制御装置によって実行される燃料電池システムの制御方法であって、前記燃料電池システムが起動された後、前記送風部が前記第1モードにある状況下で、前記ディテクタ値が、前記ディテクタを異常とみなすためのディテクタ用閾値未満か否かを判定するディテクタ値判定処理と、前記ディテクタ値判定処理で、前記ディテクタ値が前記ディテクタ用閾値未満であると判定された後、前記燃料電池システムが停止された後に続く次の前記燃料電池システムの起動時、前記送風部を前記第2モードに設定する設定処理と、前記送風部が前記第2モードにある状況下で、前記ディテクタが正常に機能するか否かを判定するための判定処理と、を有することを要旨とする。
【0007】
これによれば、設定処理が実行される前は、第1モードの送風部からの送風によって排出ガスが押し流される。すると、ディテクタの周囲では排出ガスが拡散されてしまうため、排出ガスがディテクタに触れにくくなる。その結果、ディテクタが正常に機能しているにもかかわらず、ディテクタ値がディテクタ用閾値未満になってしまう。
【0008】
そこで、ディテクタ値判定処理で、ディテクタ値がディテクタ用閾値未満であると判定されると、燃料電池システムが停止された後に続く次の燃料電池システムの起動時、制御装置は設定処理を実行する。このため、設定処理実行後の判定処理は、第2モードの状況下で行われる。送風部が第2モードであれば、排出ガスは、送風によって押し流されにくくなる。すると、ディテクタの周囲に排出ガスが比較的触れやすくなるため、排出ガスがディテクタに触れやすくなる。その結果、設定処理後の判定処理は、ディテクタによって検出されたディテクタ値そのものを用いて行われる。このため、ディテクタが正常に機能していれば、正常なディテクタ値が得られ、ディテクタが異常であれば、異常なディテクタ値が得られることになる。したがって、設定処理を実行することで、ディテクタが正常に機能しているにもかかわらず、ディテクタ値がディテクタ用閾値未満になることを抑制できる。その結果として、ディテクタが正常に機能しているにもかかわらず、ディテクタが異常であると判定されることを抑制できる。
【0009】
燃料電池システムの制御方法について、前記制御装置はカウンタを備え、当該カウンタは前記ディテクタ値が前記ディテクタ用閾値未満であると判定される度に異常カウンタ値を加算し、前記ディテクタ値判定処理は、前記ディテクタ値が前記ディテクタ用閾値未満であるか否かを判定する第1ステップと、前記第1ステップにて前記ディテクタ値が前記ディテクタ用閾値未満である場合に、前記カウンタの結果が、前記ディテクタの異常を確定するための確定用カウンタ閾値よりも小さいカウンタ閾値以上であるか否かを判定する第2ステップと、を含み、前記ディテクタ値判定処理の前記第2ステップにて前記カウンタの結果が前記カウンタ閾値以上であると判定された後、前記設定処理が実行されるとよい。
【0010】
これによれば、第2ステップでは、ディテクタ値が、ディテクタ用閾値未満である状態が継続しているか否かを判定することになる。そして、カウンタの結果が、確定用カウンタ閾値未満、かつカウンタ閾値以上である場合、設定処理が実行される。
【0011】
ディテクタ値判定処理が第2ステップを含まずに第1ステップだけの場合と比べると、以下の点で有利である。つまり、偶発的に、ディテクタ値がディテクタ用閾値未満となってしまったときに、設定処理が実行されてしまうことを回避できる。よって、ディテクタ値判定処理が第2ステップを含むことで、ディテクタ値がディテクタ用閾値未満であることの信頼性を高めて、設定処理を実行できる。
【0012】
また、ディテクタ値がディテクタ用閾値未満である状態が継続する場合、その継続状態を時間としてタイマで計測する方法がある。タイマによって時間を計測する場合と比べると、カウンタの方が検出精度が高い。このため、第2ステップを精度良く判定できる。その結果、第2ステップで、ディテクタ値がディテクタ用閾値未満であることの信頼性を高めて、設定処理および判定処理を実行させることができる。
【0013】
燃料電池システムの制御方法について、前記燃料電池システムは前記ディテクタを複数備え、前記ディテクタ値判定処理では、複数の前記ディテクタ値のそれぞれが前記ディテクタ用閾値未満であるか否かを判定してもよい。
【0014】
これによれば、複数のディテクタのそれぞれについて、ディテクタの機能が正常か否かの判定を行う。例えば、複数のうちの、1つのディテクタについて機能が正常か否かの判定を行う場合と比べると、正常に機能するディテクタを1つでも多く確保することに繋がる。
【0015】
燃料電池システムの制御方法について、前記燃料電池ユニットは筐体の内部に配置され、前記送風部はファンであり、当該ファンは、前記筐体の内部を前記空気が通過するように前記燃料電池ユニットの周囲に前記空気の流れを発生させてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ディテクタが正常に機能するか否かを精度良く判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】フォークリフトを示す側面図である。
図2】燃料電池システムを示す概略図である。
図3】燃料電池システムを筐体から示す斜視図である。
図4】ディテクタ判定処理を示すフローチャートである。
図5】第1モードでの燃料電池システムを示す概略図である。
図6】第2モードでの燃料電池システムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、燃料電池システムの制御方法を具体化した一実施形態を図1図6にしたがって説明する。
<燃料電池システム>
図1に示すように、燃料電池システム10は、フォークリフトFに搭載されている。なお、燃料電池システム10は、フォークリフトF以外の産業車両に適用してもよいし、さらに、産業車両以外の車両、例えば乗用車、バス、トラック等に適用してもよい。
【0019】
図2に示すように、燃料電池システム10は、燃料電池ユニット11と、ディテクタ31と、送風部の一例であるファンとしてのラジエータファン21aおよび補機用ファン24と、制御装置51と、を備えている。さらに、燃料電池システム10は、燃料電池ユニット11を収容する筐体12と、ディテクタ31の異常を報知する報知器52と、を備えていてもよい。
【0020】
<フォークリフト>
図1に示すように、フォークリフトFは、座席Faを有している。フォークリフトFは、座席Faの下方に収容部Fbを有している。収容部Fbには燃料電池システム10が収容される。フォークリフトFは、燃料電池システム10により発電された電力により動作する。
【0021】
<筐体>
図2および図3に示すように、筐体12は、底板12aと、天板12bと、周壁12cと、通気口12fと、を備えている。周壁12cは、底板12aの周縁と天板12bの周縁とを繋ぐ筒状である。筐体12が水平面上に置かれているものとして鉛直方向をZ軸で示し、水平面に沿う方向をX軸とY軸で示す。X軸、Y軸、及びZ軸は、互いに直交する。
【0022】
筐体12において、底板12aと天板12bとはZ軸の延びる方向に対向する。周壁12cは、X軸の延びる方向に対向する第1側壁12dと第2側壁12eを備えている。通気口12fは、第1側壁12dに複数配置されている。
【0023】
<燃料電池ユニット>
図2に示すように、燃料電池ユニット11は、燃料電池スタック13、水素タンク14、エアコンプレッサ15、および希釈器16を備えている。また、燃料電池ユニット11は、水素供給路17と、開閉弁17aと、エア供給路18と、第1排出路19aと、第2排出路19bと、ガス排出路20と、を備えている。
【0024】
燃料電池ユニット11は、熱交換器21と、ラジエータファン21aと、循環流路22と、補機23と、補機用ファン24と、を備えている。
<燃料電池スタック>
燃料電池としての燃料電池スタック13は、複数の燃料電池セルをスタック化したものである。燃料電池セルは、固体分子型燃料電池である。燃料電池スタック13は、水素ガスを含む燃料ガス、および酸化剤ガスが供給されることによって発電する。酸化剤ガスは、空気である。
【0025】
<水素タンク、水素供給路、開閉弁>
水素タンク14は、水素ガスを貯蔵する。水素供給路17は、燃料電池スタック13の図示しないアノードと水素タンク14を接続する。開閉弁17aは、水素供給路17を開閉する。開閉弁17aが開かれると、水素タンク14に貯蔵された水素ガスが、水素供給路17を経由して燃料電池スタック13のアノードに供給される。
【0026】
<エアコンプレッサ、エア供給路>
エアコンプレッサ15は、空気を圧縮してエア供給路18に供給する。エア供給路18は、燃料電池スタック13の図示しないカソードとエアコンプレッサ15を接続する。
【0027】
<第1排出路、第2排出路>
第1排出路19aは、燃料電池スタック13の図示しないアノードと希釈器16を接続する。第1排出路19aには、燃料電池スタック13から希釈器16に向けてアノードオフガスが流動する。アノードオフガスには、燃料電池スタック13で未反応の水素と、水素と酸素とが反応したときの水が主に含まれている。
【0028】
第2排出路19bは、燃料電池スタック13の図示しないカソードと希釈器16を接続する。第2排出路19bには、燃料電池スタック13から希釈器16に向けてカソードオフガスが流動する。カソードオフガスには、燃料電池スタック13で未反応の酸素を含む空気と、水素と酸素とが反応したときの水が主に含まれている。
【0029】
<希釈器、ガス排出路>
希釈器16には、燃料電池スタック13から排出されたアノードオフガス及びカソードオフガスが流入する。希釈器16は、流入したアノードオフガスをカソードオフガスで希釈する。希釈器16による希釈によって、水素濃度を所定濃度未満にまで低下させる。希釈器16は、所定濃度未満にまで水素濃度を低下させた排出ガスをガス排出路20に排出する。ガス排出路20からは、所定濃度未満にまで水素濃度を低下させた排出ガスが排出される。したがって、燃料電池ユニット11は、水素ガスを含む排出ガスを排出するといえる。所定濃度未満にまで水素濃度を低下させた排出ガスは、筐体12の内部に排出される。
【0030】
<熱交換器、ラジエータファン、循環流路>
熱交換器21は、外気と熱交換媒体との間で熱交換を行う。ラジエータファン21aは、熱交換器21に向けて送風する。循環流路22は、熱交換媒体を燃料電池スタック13と熱交換器21との間で循環させる。熱交換媒体としては冷却水が用いられるが、その他の媒体を用いてもよい。
【0031】
熱交換器21は、筐体12の第2側壁12eに配置されている。熱交換器21は、燃料電池スタック13の側方に配置されている。ラジエータファン21aは、モータMによって回転する。ラジエータファン21aのモータMには、後に詳述する制御装置51が信号接続されている。
【0032】
循環流路22は、往路22aと、復路22bと、図示しないポンプと、熱交換流路と、を有している。往路22aは、熱交換器21から燃料電池スタック13に向けて冷却水を流すための流路である。復路22bは、燃料電池スタック13から熱交換器21に向けて冷却水を流すための流路である。ポンプは、循環流路22で冷却水を循環させる。図示しない熱交換流路は、燃料電池スタック13内及び熱交換器21内に取り回されている。
【0033】
往路22aを通って燃料電池スタック13内の熱交換流路に流れ込んだ冷却水は、燃料電池スタック13で発生した熱を吸収して燃料電池スタック13を冷却する。復路22bを通って熱交換器21内の熱交換流路に流れ込んだ冷却水は、外気と熱交換されて冷却される。ラジエータファン21aが回転することにより、熱交換器21に向けて送風される。ラジエータファン21aによる送風により、熱交換器21内の熱交換流路での冷却水の冷却効率が高められる。
【0034】
また、ラジエータファン21aが回転することにより、図5の矢印Vに示すように、筐体12の外部から通気口12fを介して筐体12の内部に吸気される。筐体12の内部、つまり燃料電池ユニット11の周囲には、通気口12fからラジエータファン21aに向かう空気の流れWが発生する。
【0035】
ラジエータファン21aは、第1モードM1と第2モードM2とに切替可能である。第1モードM1は、冷却水を冷却することを目的としてラジエータファン21aを回転させるモードである。ラジエータファン21aが第1モードM1で回転すると、上記した空気の流れWを、燃料電池ユニット11の周囲に発生させることができる。つまり、ラジエータファン21aが第1モードM1で回転すると、筐体12の内部を空気が通過するように燃料電池ユニット11の周囲に空気の流れWが発生する。モータMは、ラジエータファン21aを回転させる。モータMの回転数を、ラジエータファン21aの回転数とする。そして、第1モードM1でのモータMの回転数を、ラジエータファン21aの第1動作量とする。
【0036】
第2モードM2は、第1動作量より少ない第2動作量、又は動作量をゼロとするモードである。本実施形態では、第2モードM2は、動作量をゼロとするモードである。このため、第2モードM2ではラジエータファン21aは回転しない。第2モードM2では、燃料電池ユニット11の周囲に空気の流れWは形成されない。したがって、ラジエータファン21aは、燃料電池ユニット11の周囲に空気の流れWを発生させるための第1モードM1、および空気の流れWをゼロとする第2モードM2のいずれかを取り得る。
【0037】
<補機、補機用ファン>
補機23の一例は二次電池である。高温による補機23の劣化を抑制するため、補機23は高温状態に維持されないようにすることが必要である。補機23の劣化を抑制するため、補機23には動作温度範囲が設定されている。
【0038】
燃料電池システム10の起動時、補機用ファン24が回転することにより、筐体12の内部では、図5の矢印Wに示すように、補機23に向けた空気の流れWが発生する。補機23に向けて空気が流れる方向は、ラジエータファン21aが回転することにより熱交換器21に向けて流れる空気の流れ方向と同じ、又は略同じである。
【0039】
補機用ファン24はファンモータ25を有している。補機用ファン24は、ファンモータ25を制御することによって第1モードM1と第2モードM2とに切替可能である。第1モードM1は、補機23を冷却することを目的として補機用ファン24を回転させるモードである。補機用ファン24が第1モードM1で回転すると、燃料電池ユニット11の周囲に空気の流れWを発生させることができる。ファンモータ25の回転数を、補機用ファン24の回転数とする。そして、第1モードM1での補機用ファン24の回転数を、補機用ファン24の第1動作量とする。
【0040】
第2モードM2は、第1動作量より少ない第2動作量、又は動作量をゼロとしたモードである。本実施形態では、第2モードM2は、動作量をゼロとしたモードである。このため、第2モードM2では補機用ファン24は回転しない。第2モードM2では、燃料電池ユニット11の周囲に空気の流れWは形成されない。したがって、補機用ファン24は、燃料電池ユニット11の周囲に空気の流れWを発生させるための第1モードM1、および空気の流れWをゼロとする第2モードM2のいずれかを取り得る。
【0041】
<ディテクタ>
図2および図3に示すように、燃料電池システム10は、2つのディテクタ31を備えている。2つのディテクタ31は、筐体12の天板12bに配置されている。各ディテクタ31の各々は水素ガスの検出面31aを備えている。検出面31aは、筐体12の内部に露出している。一方のディテクタ31は、天板12bの第1側壁12d寄りに配置されているとともに、他方のディテクタ31は、天板12bの第2側壁12e寄りに配置されている。ディテクタ31は、検出面31aに排出ガスが触れることによって水素ガスの濃度を検出する。つまり、ディテクタ31は、燃料電池ユニット11の周囲での水素ガスの濃度をディテクタ値として検出する。ディテクタ31は、燃料電池ユニット11の各部品からの透過や漏出により、わずかながらも排出される水素ガスの濃度を検出する。
【0042】
第1モードM1でラジエータファン21aおよび補機用ファン24が回転すると、ラジエータファン21aおよび補機用ファン24からの送風によって排出ガスが押し流される。すると、ディテクタ31の周囲から排出ガスが拡散されてしまうため、排出ガスがディテクタ31の検出面31aに触れにくくなる。その結果、ディテクタ31が正常に機能しているにもかかわらず、ディテクタ値が正常値よりも低い値になりやすい。
【0043】
一方、ラジエータファン21aおよび補機用ファン24が回転しない第2モードM2では、燃料電池ユニット11の周囲に空気の流れWは発生しない。すると、排出ガスは、送風によって押し流されにくくなる。ディテクタ31の周囲に排出ガスが比較的触れやすくなるため、排出ガスがディテクタ31の検出面31aに触れやすくなる。このため、第2モードM2では、ディテクタ31が正常に機能していれば、ディテクタ値は、正常値になる。
【0044】
<制御装置>
制御装置51は、プロセッサ51aと、記憶部51bと、カウンタ51cと、を備えている。プロセッサ51aとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、又はDSP(Digital Signal Processor)が用いられる。記憶部51bは、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)を含む。記憶部51bは、処理をプロセッサ51aに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。記憶部51b、即ち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。制御装置51は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェア回路によって構成されていてもよい。処理回路である制御装置51は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、ASICやFPGA等の1つ以上のハードウェア回路、或いは、それらの組み合わせを含み得る。
【0045】
制御装置51は、ディテクタ31が正常に機能するか否かを判定する処理を実行させる。ディテクタ31が正常に機能していれば、ディテクタ値は、正常値になる。しかし、ディテクタ31の周囲から排出ガスが拡散されると、排出ガスがディテクタ31の検出面31aに触れにくくなる。すると、上記したように、ディテクタ31が正常に機能しているにもかかわらず、ディテクタ値が正常値よりも低い値になりやすい。ディテクタ値が、予め定めたディテクタ用閾値Tb未満となる場合を、ディテクタ31の「異常」とみなす。したがって、ディテクタ用閾値Tbは、ディテクタ31を異常とみなすための閾値であるといえる。
【0046】
制御装置51の記憶部51bには、ディテクタ31が正常に機能するか否かを判定する処理を実行させるためのプログラムコードまたは指令が記憶されている。以下の説明において、「ディテクタ31が正常に機能するか否かを判定する処理」を、単に「ディテクタ判定処理」と記載する。
【0047】
制御装置51の記憶部51bには、ディテクタ判定処理を実行する際に用いられるディテクタ用閾値Tb、確定用カウンタ閾値Taおよびカウンタ閾値Tcが記憶されている。
ディテクタ用閾値Tbの一例は100ppmである。実際にディテクタ31が異常であると、ディテクタ値がゼロになったり、異常に低い値になったりする。これらを踏まえて予め実験により、ディテクタ用閾値Tbが設定されている。なお、ディテクタ用閾値Tbは、100ppmに限らず、ディテクタ31の性能や、ディテクタ31の周囲での部品の配置に応じて変更してもよい。
【0048】
ここで、カウンタ51cについて説明する。
カウンタ51cは、ディテクタ用閾値Tb未満のディテクタ値が検出される度に、つまり、ディテクタ値がディテクタ用閾値Tb未満であると判定される度に異常カウンタ値を加算する。詳細には、カウンタ51cは、ディテクタ31が異常とみなされる度に、異常カウンタ値を「1」ずつ加算する。
【0049】
制御装置51によるディテクタ判定処理は、所定の制御周期で繰り返し行われる。制御周期は、例えば、数m秒毎である。このため、制御周期と、異常カウンタ値との積算値は、ディテクタ31が異常とみなされた総時間となる。ディテクタ31が異常とみなされた総時間とは、ディテクタ値がディテクタ用閾値Tb未満である状態が継続した場合の総時間のことである。
【0050】
フォークリフトFが起動されている間、ディテクタ値がディテクタ用閾値Tb未満になる度に、つまり、制御周期の度に異常カウンタ値は、「1」ずつ増えていく。そして、カウンタ51cによって計測された異常カウンタ値が、所定値以上になると、ディテクタ31が異常とみなされた総時間が所定時間以上になる。すると、制御装置51は、ディテクタ31が異常であることを確定する。
【0051】
ディテクタ判定処理では、ディテクタ31が異常であることを確定するため、確定用カウンタ閾値Taを用いている。確定用カウンタ閾値Taは、ディテクタ31の異常を確定するための閾値である。
【0052】
確定用カウンタ閾値Taは、「異常とみなされた総時間」に対する閾値である。確定用カウンタ閾値Taの一例は200時間である。燃料電池システム10では、排出ガスがディテクタ31の検出面31aに触れない時間が、200時間以上続くことはほとんどない。言い換えると、200時間経過するまでには、検出面31aに排出ガスが触れてディテクタ値は検出される。
【0053】
このため、ディテクタ31が正常に機能していれば、200時間経過するまでの間に、ディテクタ用閾値Tb以上のディテクタ値が検出される。したがって、200時間経過するまでの間に、ディテクタ用閾値Tb以上のディテクタ値が検出されなければ、ディテクタ31は正常に機能していない、つまり異常であるといえる。
【0054】
なお、確定用カウンタ閾値Taを200時間としているが、確定用カウンタ閾値Taは適宜変更可能である。ディテクタ判定処理によって、ディテクタ31が正常に機能しているか否かを短時間で把握したい場合は、確定用カウンタ閾値Taを200時間より短くしてもよい。一方、ディテクタ判定処理によって、ディテクタ31が正常に機能しているか否かをより精度良く把握したい場合は、確定用カウンタ閾値Taを200時間より長くしてもよい。
【0055】
ディテクタ31が異常であることを確定するにあたり、ディテクタ値がディテクタ用閾値Tb未満となることを条件としている。しかし、燃料電池システム10では、ラジエータファン21aおよび補機用ファン24からの送風により、排出ガスがディテクタ31の検出面31aに触れにくくなっている。
【0056】
排出ガスがディテクタ31の検出面31aに触れにくい状態のまま、ディテクタ値がディテクタ用閾値Tb未満になることが、確定用カウンタ閾値Ta以上続く場合がある。このような場合に、ディテクタ31が異常であることを確定することを避けることが好ましい。そこで、ディテクタ用判定処理では、異常カウンタ値が、確定用カウンタ閾値Taに到達する前に、ラジエータファン21aおよび補機用ファン24を第1モードM1から第2モードM2に切り替えるための処理を実行する。
【0057】
この切り替えのためにカウンタ閾値Tcを用いている。カウンタ閾値Tcは、確定用カウンタ閾値Taより短い時間である。なお、異常カウンタ値は、フォークリフトFが停止されてもリセットされないが、ディテクタ値がディテクタ用閾値Tbを越えるとリセットされる。
【0058】
<報知器>
報知器52は、ディテクタ31の異常が確定した場合、フォークリフトFの操作者にディテクタ31の異常を報知するための装置である。報知器52は、制御装置51に信号接続されている。報知器52は、ディテクタ31の異常を操作者に報知できれば特に限定はない。報知器52は、ブザー、異常を表示できるディスプレイ、異常を音声で表す音声出力器、異常時に点灯、点滅する表示灯が挙げられる。
【0059】
<燃料電池システムの制御方法>
ディテクタ判定処理は、フォークリフトFが起動された後、所定の制御周期で繰り返し行われる。「フォークリフトFが起動されている」とは、フォークリフトFが走行できる状態にあることである。フォークリフトFが起動されている状態は、キーオン状態ともいわれる。また、フォークリフトFが起動されると、燃料電池システム10が起動される。燃料電池システム10が起動されると、燃料電池スタック13は発電する。
【0060】
フォークリフトFが停止されると、フォークリフトFは走行できなくなる。フォークリフトFが停止されている状態は、キーオフ状態ともいわれる。また、フォークリフトFが停止されると、燃料電池システム10が停止される。燃料電池システム10が停止されると、燃料電池スタック13の発電は停止される。
【0061】
制御装置51は、フォークリフトFが起動されると、ディテクタ判定処理を開始する。また、制御装置51は、フォークリフトFが起動されると、ラジエータファン21aおよび補機用ファン24を第1モードM1で回転させる。
【0062】
すると、図5に示すように、ラジエータファン21aから熱交換器21に向けて送風されるとともに、補機用ファン24から補機23に向けて送風される。その結果、筐体12の内部では、燃料電池ユニット11の周囲に空気の流れWが発生する。このため、希釈器16から排出された排出ガスは、空気の流れWによって熱交換器21に向けて押し流される。
【0063】
さて、図4に示すように、ディテクタ判定処理のステップS1では、制御装置51は、2つのディテクタ31から取得されたディテクタ値のそれぞれがディテクタ用閾値Tb未満であるか否かを判定する。
【0064】
ステップS1において、2つのディテクタ値が両方とも、ディテクタ用閾値Tb以上の場合(ステップS1でNO)、制御装置51は、ステップS6に移行する。ステップS6では、制御装置51は、カウンタ51cの異常カウンタ値をリセットしてステップS1に移行する。このとき、2つのディテクタ31は、ディテクタ用閾値Tbより大きい値を検知しているため、ディテクタ31は正常に機能していることになる。
【0065】
一方、ステップS1において、取得された2つのディテクタ値が両方ともディテクタ用閾値Tb未満の場合(ステップS1でYES)、制御装置51は、ステップS2の処理を実行する。ステップS2では、制御装置51は、カウンタ51cによって計測された異常カウンタ値がカウンタ閾値Tc以上であるか否かを判定する。したがって、ステップS1は、ラジエータファン21aおよび補機用ファン24が第1モードM1にある状況下で、ディテクタ値がディテクタ用閾値Tb未満か否かを判定するディテクタ値検出処理である。
【0066】
そして、ステップS1は、ディテクタ値がディテクタ用閾値Tb未満であるか否かを判定するステップである。また、ステップS2は、ステップS1にてディテクタ値がディテクタ用閾値Tb未満である場合にカウンタ51cの結果がカウンタ閾値Tc以上であるか否かを判定するステップである。したがって、ステップS1は、ディテクタ値判定処理の第1ステップに相当するとともに、ステップS2は、ディテクタ値判定処理の第2ステップに相当する。
【0067】
そして、異常カウンタ値がカウンタ閾値Tc未満の場合(ステップS2でNO)、制御装置51は、ステップS4の処理を実行する。ステップS4では、制御装置51は、異常カウンタ値が確定用カウンタ閾値Ta以上であるか否かを判定する。異常カウンタ値が確定用カウンタ閾値Ta未満の場合(ステップS4でNO)、制御装置51は、ステップS5の処理を実行する。ステップS5では、制御装置51は、カウンタ51cに異常カウンタ値を「1」加算する。その後、制御装置51は、ステップS1に移行する。したがって、ディテクタ値がディテクタ用閾値Tb未満の場合は、制御装置51は、異常カウンタ値がカウンタ閾値Tc以上になるまで、ステップS1、ステップS2、ステップS4、およびステップS5の処理を繰り返す。このため、ディテクタ値がディテクタ用閾値Tb未満の場合は、カウンタ51cには異常カウンタ値が「1」ずつ増えていく。つまり、ディテクタ31が異常とみなされた時間が増えていく。このとき、ディテクタ値がディテクタ用閾値Tb未満である状態が継続していることになる。
【0068】
その後、ディテクタ値がディテクタ用閾値Tb未満のまま、フォークリフトFの起動が継続されると、異常カウンタ値がカウンタ閾値Tc以上になる(ステップS2でYES)。つまり、ディテクタ31が異常とみなされた総時間がカウンタ閾値Tc以上になる。すると、制御装置51は、ステップS3の処理を実行する。ステップS3では、制御装置51は、記憶部51bに、モータMおよびファンモータ25を駆動させないためのファン停止フラグをオンにする。
【0069】
制御装置51は、ファン停止フラグがオンの状態でステップS4に遷移しても、ラジエータファン21aおよび補機用ファン24を第2モードM2に設定しない。ファン停止フラグは、ラジエータファン21aおよび補機用ファン24のモードが第1モードM1から第2モードM2に設定変更されることでオフされる。
【0070】
ステップS3の後、制御装置51は、ステップS4およびステップS5の処理を実行する。ステップS3の後、異常カウンタ値が確定用カウンタ閾値Ta以上になるまで、制御装置51は、ステップS1、ステップS2、ステップS4、およびステップS5の処理を繰り返す。このため、ディテクタ値がディテクタ用閾値Tb未満の場合は、カウンタ51cには異常カウンタ値が「1」ずつ増えていく。つまり、ディテクタ31が異常とみなされた時間が増えていく。このとき、ディテクタ値がディテクタ用閾値Tb未満である状態が継続していることになる。
【0071】
その後、異常カウンタ値が確定用カウンタ閾値Ta未満でフォークリフトFが停止されると、ディテクタ判定処理が終了する。このフォークリフトFが停止された後に続く次のフォークリフトFの起動時、制御装置51は、ファン停止フラグに応じて、ラジエータファン21aおよび補機用ファン24を停止状態にする。つまり、ラジエータファン21aおよび補機用ファン24を第2モードM2に設定する設定処理が制御装置51によって実行される。
【0072】
設定処理は、燃料電池システム10が停止された後に続く次の燃料電池システム10の起動時に実行される。設定処理では、制御装置51は、ラジエータファン21aおよび補機用ファン24を第2モードM2に設定する。設定処理後、ラジエータファン21aおよび補機用ファン24は回転しないため、燃料電池ユニット11の周囲には空気の流れWが発生しなくなる。
【0073】
設定処理の実行後に、再びディテクタ判定処理が実行される。この設定処理後に実行されるディテクタ判定処理は、燃料電池システム10の制御方法における判定処理に相当する。この判定処理は、ラジエータファン21aおよび補機用ファン24が第2モードM2にある状況下で、ディテクタ31が正常であるか否かを判定するための処理である。
【0074】
この判定処理において、ステップS1での判定は、燃料電池ユニット11の周囲に空気の流れWが発生していない状況で行われる。つまり、図6に示すように、ステップS1での判定は、ディテクタ31の検出面31aに排出ガスが触れやすい状況で行われる。つまり、排出ガスに含まれる水素がディテクタ31の検出面31aの周囲に比較的触れやすい状況で行われる。
【0075】
このため、ディテクタ31が正常に機能していれば、2つのディテクタ31から取得されたディテクタ値は、両方ともディテクタ用閾値Tb以上になる。そして、2つのディテクタ31から取得されたディテクタ値が両方ともディテクタ用閾値Tb以上になると(ステップS1でNO)、制御装置51は、ステップS6に移行する。ステップS6では、制御装置51は、カウンタ51cの異常カウンタ値をリセットしてステップS1に移行する。つまり、ディテクタ31は正常に機能していることになる。
【0076】
一方、取得された2つのディテクタ値が両方ともディテクタ用閾値Tb未満の場合(ステップS1でYES)、フォークリフトFが起動されている間、制御装置51は、ステップS1、ステップS2、ステップS4、およびステップS5の処理を繰り返す。
【0077】
その後、異常カウンタ値が確定用カウンタ閾値Ta以上となった場合(ステップS4でYES)、ディテクタ31の異常が確定する。ラジエータファン21aおよび補機用ファン24が第2モードM2にある状況下であってもディテクタ値がディテクタ用閾値Tb未満の状態が、確定用カウンタ閾値Ta以上続く場合は、明らかなディテクタ31の異常である。そして、異常カウンタ値が確定用カウンタ閾値Ta以上となった場合(ステップS4でYES)、制御装置51は、ディテクタ31が異常である旨の信号を報知器52に出力する。報知器52は、ディテクタ31の異常を操作者にエラーとして報知する。
【0078】
<作用>
ディテクタ値がディテクタ用閾値Tb未満の状態が、カウンタ閾値Tc以上になると、制御装置51は、ファン停止フラグを記憶部51bにオンする。このため、フォークリフトFの次回起動時以降は、ラジエータファン21aおよび補機用ファン24が第2モードM2に設定される。すると、燃料電池ユニット11の周囲に空気の流れWが発生しにくい状況になる。その結果、ディテクタ31の検出面31aに排出ガスが触れやすくなる。このため、ディテクタ31によって排出ガスに含まれる水素ガスの濃度が検知しやすくなる。
【0079】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)ディテクタ値判定処理で、ディテクタ値がディテクタ用閾値Tb未満であると判定されると、制御装置51は、燃料電池システム10が停止された後に続く次の燃料電池システム10の起動時、設定処理を実行する。このため、設定処理実行後の判定処理は、ラジエータファン21aおよび補機用ファン24が回転しない状況下で行われる。その結果、ディテクタ31が正常に機能していれば、ディテクタ値はディテクタ用閾値Tb未満にならず、正常値となる。
【0080】
燃料電池システム10の制御方法では、ディテクタ値がディテクタ用閾値Tb未満となった時間が確定用カウンタ閾値Taに到達する前に、ラジエータファン21aおよび補機用ファン24が回転しない状況下にする。この状況下で、ディテクタ値がディテクタ用閾値Tb未満であるか否かを判定する。このため、ディテクタ31が正常に機能しているにもかかわらず、ディテクタ値が異常値となることを抑制できる。つまり、ステップS1での判定が正確に行われる。その結果として、ディテクタ31が正常に機能しているにもかかわらず、ディテクタ31が異常であると判定されることを抑制できる。
【0081】
(2)ディテクタ値判定処理の第2ステップでは、ディテクタ値がディテクタ用閾値Tb未満であると判定された状態が継続しているか否かを判定することになる。第2ステップにてカウンタ51cの結果がカウンタ閾値Tc以上である場合、設定処理が実行される。
【0082】
ディテクタ値判定処理が第2ステップを含まずに第1ステップだけを実行する場合と比べると、以下の点で有利である。つまり、偶発的に、ディテクタ値がディテクタ用閾値Tb未満となってしまったときに設定処理が実行されてしまうことを回避できる。よって、ディテクタ値判定処理が第2ステップを含むことで、ディテクタ値がディテクタ用閾値Tb未満であることの信頼性を高めて設定処理を実行できる。
【0083】
(3)ディテクタ値がディテクタ用閾値Tb未満である状態が継続する場合、その継続状態を時間としてタイマで計測する方法がある。タイマによって時間を計測する場合と比べると、カウンタ51cの方が検出精度が高い。このため、第2ステップを精度良く判定できる。その結果、第2ステップで、ディテクタ値がディテクタ用閾値Tb未満であることの信頼性を高めて設定処理を実行できる。
【0084】
(4)燃料電池システム10は、2つのディテクタ31を備えている。2つのディテクタ31のそれぞれについて、ディテクタ31の機能が正常か否かの判定を行う。例えば、2つのうちの1つのディテクタ31について機能が正常か否かの判定を行う場合と比べると、正常に機能するディテクタ31を1つでも多く確保することに繋がる。その結果、正常に機能するディテクタ31を残して、燃料電池システム10における水素ガスの漏洩を検知できる状態を維持できる。
【0085】
(5)燃料電池システム10のディテクタ31は、燃料電池ユニット11の各部品からの透過や漏出により、わずかながらも排出された水素ガスの濃度を検知するために設けられている。このディテクタ31が水素ガスの濃度を検知する機能を利用して、ディテクタ31が正常に機能しているか否かを判定している。そして、ディテクタ判定処理では、ラジエータファン21aおよび補機用ファン24を第2モードM2にする制御を行うだけで、ディテクタ31が正常に機能しているか否かを判定できる。つまり、燃料電池システム10にハードウェアを追加することなく、ディテクタ31が正常に機能しているか否かを判定できる。
【0086】
(6)燃料電池システム10は、燃料電池ユニット11を収容する筐体12を有している。そして、ラジエータファン21aおよび補機用ファン24は、筐体12の内部で回転するため、筐体12の内部では空気の流れWが拡散されにくく、排出ガスはディテクタ31から離れるように流れやすい。このような燃料電池システム10において、設定処理でラジエータファン21aおよび補機用ファン24を第2モードM2にすることによって、ディテクタ31は水素ガスの濃度を精度良く検知できる。したがって、制御装置51によるディテクタ判定処理は、筐体12の内部に燃料電池ユニット11を収容した燃料電池システム10に好適である。
【0087】
(7)ラジエータファン21aおよび補機用ファン24の回転によって、筐体12の内部に空気の流れWが形成される。ラジエータファン21aは、冷却水の冷却のために燃料電池システム10が備える構成である。また、補機用ファン24は、補機23の冷却のために燃料電池システム10が備える構成である。つまり、ラジエータファン21aおよび補機用ファン24は、燃料電池システム10に必要な構成である。その一方で、燃料電池システム10の制御方法に設定処理を追加するだけで、ディテクタ31が正常に機能しているか否かを判定できる。したがって、燃料電池システム10に既存の構成はそのままで、ハードウェアを追加することなく、ディテクタ31が正常に機能しているか否かを判定できる。
【0088】
上記の実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更してもよい。
○ 第2モードM2では、ラジエータファン21aおよび補機用ファン24の回転数である第2動作量を、ゼロより大きく、かつ第1動作量より少なくしてもよい。この場合、第2モードM2では、燃料電池ユニット11の周囲に発生する空気の流れWが、第1モードM1より少なくなるといえる。
【0089】
○ 燃料電池システム10は、筐体12を備えていなくてもよい。この場合、燃料電池ユニット11及びディテクタ31は、フォークリフトFの収容部Fbに直接収容される。
○ 燃料電池システム10は、定置型燃料電池システムであってもよい。この場合、燃料電池システム10は、筐体として外装パネルを備えていてもよいし、筐体を備えていなくてもよい。
【0090】
○ 燃料電池システム10は、補機用ファン24を備えていなくてもよい。この場合、送風部の一例であるファンは、ラジエータファン21aだけとなる。
○ ディテクタ31は1つだけであってもよいし、3つ以上であってもよい。ディテクタ31が3つ以上の場合、ステップS1では、3つ以上のディテクタ値のそれぞれがディテクタ用閾値Tb未満のときに、判定をYESとするのが好ましい。
【0091】
○ ステップS1では、2つのディテクタ値のうち、1つのディテクタ値だけがディテクタ用閾値Tb未満のときに、判定をYESとしてもよい。
○ ステップS1で判定がYESとなった後、異常カウンタ値がカウンタ閾値Tc以上か否かの判定(ステップS2)は行わずに、ファン停止フラグを記憶部51bにオンしてもよい。この場合、カウンタ51cによる異常カウンタ値の計測は行われない。そして、設定処理後の判定処理は、異常カウンタ値とカウンタ閾値Tcとの比較および異常カウンタ値と確定用カウンタ閾値Taとの比較は行わずに、ディテクタ値とディテクタ用閾値Tbとの比較だけで行われる。
【0092】
○ カウンタ51cの代わりにタイマを用いてもよい。そして、ディテクタ31が異常とみなされる時間をタイマにより計測してもよい。
○ 送風部は、通気口12fを開閉する扉であってもよい。第1モードM1では、通気口12fは開かれる。すると、通気口12fを介して、筐体12内には自然の空気の流れWが発生する。第2モードM2では、通気口12fは閉じられるか、第1モードM1よりも開口面積が小さくされる。
【0093】
○ 燃料電池ユニット11の燃料電池は、複数の燃料電池セルをスタック化したものでなく、1つの燃料電池セルでもよい。
○ 燃料電池ユニット11の希釈器16はなくてもよい。
【0094】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)前記送風部は、前記筐体の内部を通過するように前記燃料電池システムの周囲に空気の流れを発生させるファンである。
【符号の説明】
【0095】
10…燃料電池システム、11…燃料電池ユニット、12…筐体、13…燃料電池としての燃料電池スタック、21a…送風部としてのラジエータファン、24…送風部としての補機用ファン、31…ディテクタ、51…制御装置、51c…カウンタ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6