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特許7491909エアロゾル発生システム用のヒーター組立品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】エアロゾル発生システム用のヒーター組立品
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/46 20200101AFI20240521BHJP
   A24F 40/42 20200101ALI20240521BHJP
   A24F 40/70 20200101ALI20240521BHJP
   A24F 40/10 20200101ALI20240521BHJP
   H05B 3/10 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
A24F40/46
A24F40/42
A24F40/70
A24F40/10
H05B3/10 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021516415
(86)(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 EP2019076324
(87)【国際公開番号】W WO2020065077
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-09-26
(31)【優先権主張番号】18197741.4
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】クルバ ジェローム クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】タウリーノ イレーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ジノヴィク イハル ニコラエヴィッチ
【審査官】野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108451045(CN,A)
【文献】特表2018-523990(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/46
A24F 40/42
A24F 40/70
A24F 40/10
H05B 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル発生システム用のヒーター組立品であって、
液体エアロゾル形成基体を加熱してエアロゾルを形成するための流体透過性ヒーターと、
液体エアロゾル形成基体を前記流体透過性ヒーターに運ぶための多孔性部材と、を備え、
前記流体透過性ヒーターが前記多孔性部材の多孔性外表面上に堆積されていて、前記流体透過性ヒーターが、
堆積された導電性材料の第一の層と、
堆積された導電性材料の第二の層と、を備え、前記第二の層が前記流体透過性ヒーターの電気抵抗を必要な抵抗に修正するように、前記第二の層の導電率が前記第一の層の導電率よりも大きい、ヒーター組立品。
【請求項2】
前記第一の層が前記多孔性部材の前記多孔性外表面上に直接堆積されている、請求項1に記載のヒーター組立品。
【請求項3】
前記流体透過性ヒーターが、前記多孔性部材の前記多孔性外表面と前記第一の層との間に配設された第三の層をさらに備える、請求項1に記載のヒーター組立品。
【請求項4】
前記第三の層が接着層としての機能を果たし、前記第一の層と前記多孔性部材の前記多孔性外表面との間の接着を改善する、請求項3に記載のヒーター組立品。
【請求項5】
前記第三の層が、タンタル、チタン、およびクロムのうちの一つ以上から選択される材料を含む、請求項3または4に記載のヒーター組立品。
【請求項6】
前記第二の層が前記第一の層上に堆積されている、請求項1~5のいずれか一項に記載のヒーター組立品。
【請求項7】
前記第二の層が、5x10-8Ωm未満の抵抗率を有する材料を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のヒーター組立品。
【請求項8】
前記第二の層の厚さが10~20nmである、請求項1~7のいずれか一項に記載のヒーター組立品。
【請求項9】
前記第三の層の厚さが10~20nmである、請求項3~のいずれか一項に記載のヒーター組立品。
【請求項10】
前記第二の層が前記流体透過性ヒーターの電気抵抗を0.3~4オームに修正する、請求項1~9のいずれか一項に記載のヒーター組立品。
【請求項11】
エアロゾル発生システムで使用するためのカートリッジであって、前記カートリッジが、液体エアロゾル形成基体を保持するための液体貯蔵部分と、請求項1~10のいずれか一項に記載のヒーター組立品とを備える、カートリッジ。
【請求項12】
前記流体透過性ヒーターが前記多孔性部材の多孔性の第一の端上に堆積されていて、前記多孔性部材の第二の端が、その中の前記液体エアロゾル形成基体と接触するために前記液体貯蔵部分の中に延びる、請求項11に記載のカートリッジ。
【請求項13】
エアロゾル発生システムであって、
エアロゾル発生装置と、
請求項11または12に記載のカートリッジとを備え、
前記カートリッジが前記エアロゾル発生装置に取り外し可能なように結合され、かつ前記エアロゾル発生装置が前記ヒーター組立品のための電源を含む、エアロゾル発生システム。
【請求項14】
エアロゾル発生システム用のヒーター組立品の製造方法であって、
多孔性部材を提供することと、
流体透過性ヒーターを前記多孔性部材の多孔性外表面上に堆積させることと、を含み、前記流体透過性ヒーターが、
堆積された導電性材料の第一の層と、
堆積された導電性材料の第二の層と、を備え、
前記第二の層が、前記流体透過性ヒーターの電気抵抗を必要な抵抗に修正するように、前記第二の層の導電率が前記第一の層の導電率よりも大きい、ヒーター組立品の製造方法
【請求項15】
前記第一の層および第二の層が、物理蒸着(PVD)またはプラズマ増強化学蒸着(PECVD)によって堆積されている、請求項14に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロゾル発生システム、およびエアロゾル発生システム用のヒーター組立品に関し、ヒーター組立品はエアロゾル形成基体を気化するために適切な電気ヒーターを備える。特に本発明は、手持ち式の電気的に作動するエアロゾル発生システムに関する。本発明の態様は、エアロゾル発生システム用のヒーター組立品、エアロゾル発生システム用のカートリッジ、およびヒーター組立品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
手持ち式の電気的に作動する喫煙システムは典型的に、電池および制御電子機器を備える装置部分と、エアロゾル形成基体の供給および電気的に作動する気化器を備えるカートリッジ部分とを備える。エアロゾル形成基体の供給および気化器の両方を備えるカートリッジは、時々「カトマイザー」または「アトマイザー」と呼ばれる。気化器は、典型的にはヒーター組立品であり、カートリッジ部分はマウスピースも備えることができ、それをユーザーは使用時に吸ってエアロゾルを口の中に引き出す。
【0003】
一部の周知の実施例において、エアロゾル形成基体は液体エアロゾル形成基体であり、気化器は、液体エアロゾル形成基体中に浸された細長い芯の周りに巻かれたヒーターワイヤのコイルを備える。ワイヤを通過する電流は、芯の中の液体を気化するワイヤの抵抗加熱を生じさせる。芯は典型的に気流経路内に保持され、これによって空気は芯を通って引き出され、ベイパーを同伴する。その後、ベイパーは冷却されてエアロゾルを形成する。
【0004】
このタイプのシステムは、エアロゾルを生成するのに有効でありうるが、また低コスト、かつ再現性のある方法で製造するには課題を呈しうる。さらに、芯およびコイル組立品は、関連付けられた電気的接続とともに、特に自動化生産ライン上では、壊れやすくかつ取り扱いが困難でありうる。
【0005】
改善されたエアロゾル特性を有する、エアロゾル発生システムのためのヒーター組立品を提供することが望ましいであろう。製造がより容易であるかまたは安価な、エアロゾル発生システムのためのより堅牢なヒーター組立品を提供することがさらに望ましいであろう。加えて、改善されたエアロゾル特性を有する、エアロゾル発生システムのためのカートリッジを提供することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の第一の態様によれば、エアロゾル発生システム用のヒーター組立品が提供されており、ヒーター組立品は、液体エアロゾル形成基体を加熱してエアロゾルを形成するための流体透過性ヒーターと、液体エアロゾル形成基体を流体透過性ヒーターに運ぶための多孔性部材とを備え、流体透過性ヒーターは多孔性部材の多孔性外表面上に堆積されていて、流体透過性ヒーターが、堆積された導電性材料の第一の層と、堆積された導電性材料の第二の層とを備え、第二の層が流体透過性ヒーターの電気抵抗を必要な抵抗に修正するように、第二の層の導電率は第一の層の導電率よりも大きい。
【0007】
流体透過性ヒーターは、電気ヒーターとしうる。流体透過性ヒーターは、抵抗加熱によって加熱されてもよく、すなわち、電気エネルギーがヒーターの抵抗損失を通して熱に変換されるように、ヒーターに電流を流すことによって加熱されてもよい。別の方法として、流体透過性ヒーターは、誘導によって加熱されてもよく、すなわち、例えば、渦電流がヒーターに誘導され、抵抗損失をもたらし、ヒーターの加熱を引き起こすように、時間的に変化する磁場、例えば、高周波交番磁界内にヒーターを定置することによって加熱されてもよい。従って、流体透過性ヒーターの電気抵抗を修正することによって、ヒーターの加熱特性を変更することができる。
【0008】
有利なことに、多層ヒーター、特に第一の層よりも導電性が高い第二の層を備えるヒーターを提供することにより、ヒーターの電気抵抗を修正して、必要な抵抗を達成することが可能になる。これは、単一層のみの提供によって必要な抵抗を達成する必要はなく、第二の層の提供によって抵抗に対するより細かい調整を行うことができることを意味する。例えば、これは、必要な抵抗を完全には提供しないが、製造がより安価またはより容易な材料から第一の層を形成し、比較的少量のより高価な材料から形成された第二の層を使用することによって、抵抗を必要な値に修正することを可能にする。
【0009】
流体透過性ヒーターを多孔性部材の多孔性外表面上に堆積させることによって、ヒーターと多孔性部材の間の接触が改善されうる。それは、例えば、多孔性部材の外表面上の表面粗さまたは表面むらを補正することによる。これは、ヒーターが多孔性部材と完全に接触していない場合に起こりうる、多孔性部材の外表面上の「ホットスポット」(加熱増大の局所的領域)の数または重大度の低減を可能にする場合があり、従って、エアロゾルの特徴の改善をもたらしうる。ヒーターと多孔性部材の間の接触の改善はまた、液体エアロゾル形成基体のヒーターへの送達の改善を可能にしうる。
【0010】
さらに、流体透過性ヒーターを多孔性部材の多孔性外表面上に堆積させることによって、多孔性部材がヒーターに対して構造支持を提供し、薄いヒーターを使用することができる。これは、ヒーターと多孔性部材の間の機械的および熱的ストレスを低減し、ヒーターの寿命を増加させる。
【0011】
さらなる利点は、ヒーターを、多孔性部材の外表面の実質的に全ての上に、例えば、多孔性部材の一方の端の上に堆積できることであり、これによってより大きなヒーター表面および多孔性部材の外表面のより効率的な使用が可能になる。
【0012】
本明細書で使用される、ヒーターに関する「流体透過性」という用語は、ヒーターが、例えば、気体または液体などの流体がそれを通過することを可能にすることを意味する。例えば、流体透過性は、液体エアロゾル形成基体がヒーターの空孔の中を通過して気化されることを可能にし、ヒーターにて形成された気化エアロゾル形成基体がヒーターの空孔を出ることを可能にする。
【0013】
本明細書で使用される「多孔性」という用語は、液体エアロゾル形成基体に対して透過性があり、かつ液体エアロゾル形成基体がそれを通じて移動することを可能にする材料で形成されることを意味する。
【0014】
本明細書で使用される「多孔性部材」という用語は、毛細管作用によって液体エアロゾル形成基体をヒーターに運ぶことができる、ヒーター組立品の構成要素を指す。
【0015】
本明細書で使用される「導電性材料」という用語は、1×10-2Ωm以下の抵抗率を有する材料を意味する。
【0016】
本明細書で使用される「堆積された」という用語は、固体の前もって形成された化合物として多孔性部材上に単純に置かれるよりもむしろ、後で凝縮または凝集されてヒーターの第一または第二の層を形成する、例えば液体、プラズマまたは蒸気の形態で、多孔性部材の外表面上への被覆として加えられることを意味する。
【0017】
第一の層は、適切な任意の導電性材料から形成されてもよい。ある特定の好ましい実施形態では、導電性材料は、金属、導電性ポリマーおよび導電性セラミックのうちの一つ以上を含む。
【0018】
第一の層に適した導電性金属には、タングステン、タンタル、鋼、白金、モリブデン、チタン、コバルトおよび/またはその合金が含まれる。第一の層に適した他の材料には、ドープポリシリコン、またはNiCr合金などの導電性ポリシリコンが含まれる。
【0019】
第一の層に適した導電性ポリマーには、PEDOT(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン))、PSS(ポリ(p-フェニレンスルフィド))、PEDOT:PSS (PEDOTとPSSの両方の混合物)、PANI(ポリアニリン)、PPY(ポリ(ピロール)s)、PPV(ポリ(p-フェニレンビニレン))、またはこれらの任意の組合せが含まれる。
【0020】
第一の層に適した導電性セラミックには、ITO(インジウムスズ酸化物)、SLT(ランタンドープチタン酸ストロンチウム)、SYT(イットリウムドープチタン酸ストロンチウム)、酸化アルミニウムまたはこれらの任意の組合せが含まれる。
【0021】
第一の層は、多孔性部材の多孔性外表面上に直接堆積されてもよい。これは、第一の層を多孔性部材に接着するのを支援し、例えば、組み立ての間または使用中に誘発される熱応力による、ヒーターの変形によって引き起こされるヒーターと多孔性部材の間の接触が失われるリスクを減少する。
【0022】
別の方法として、流体透過性ヒーターは、多孔性部材の多孔性外表面と第一の層の間に配設された第三の層をさらに備えてもよい。第三の層は、多孔性部材の多孔性外表面に直接堆積されてもよく、第一の層と多孔性部材の多孔性外表面の間の接着を改善するために接着層として作用してもよい。第三の層は、タンタル、チタン、およびクロムのうちの一つ以上から選択される材料を含みうる。これらは、第一の層と多孔性部材の多孔性外表面の接着性を改善するために適した材料であることが見い出された。
【0023】
多孔性部材の多孔性外表面と接触している層に応じて、第一または第三の層は、多孔性外表面に少なくとも部分的に放散されてもよい。
【0024】
本明細書で使用される「多孔性外表面に放散される」という用語は、第一または第三の層が、例えば、多孔性外表面の空孔の中に延びることによって、および多孔性部材の近くの表面の中に部分的に移動することによって、第一または第三の層と多孔性部材の間の境界面で多孔性外表面の材料に埋め込まれているまたは多孔性外表面の材料と混ざり合っていることを意味する。
【0025】
この配設を用いると、ヒーターと多孔性部材の間の接触がさらに改善され、多孔性部材の多孔性外表面上の「ホットスポット」の数または重大度のさらなる低減、およびエアロゾルの特徴の改善につながりうる。さらに、多孔性部材の多孔性外表面の中に延びることにより、ヒーターと多孔性部材の間の接触面積が増える。これは、多孔性部材による液体エアロゾル形成基体のヒーターへの送達のさらなる改善、およびヒーターによる液体エアロゾル形成基体の加熱の改善をもたらしうる。それはまた、流体透過性ヒーターと多孔性部材の間の接着をさらに増加させ、例えば、組み立ての間または使用中に誘発される熱応力による、ヒーターの変形によって引き起こされるヒーターと多孔性部材の間の接触が失われるリスクをさらに減少させる。
【0026】
第二の層は、第一の層の上にまたは上を覆って堆積されてもよい。別の方法として、第一の層は、第二の層の上にまたは上を覆って堆積されてもよい。これらの配設は、第一の層と電気接触している第二の層を使用することによって、ヒーターの抵抗を必要な値に修正することを可能にする。第二の層は、第一の層と比較して比較的少量のより高価な材料から形成されてもよい。第二の層は、第一の層よりも高い導電率を有する任意の適切な導電性材料から形成されうる。ある特定の実施形態では、第二の層は、好ましくは5x10-8Ωm未満の抵抗率、より好ましくは4x10-8Ωm未満の抵抗率、さらにより好ましくは3x10-8Ωm未満の抵抗率を有する材料を含みうる。第二の層は、金、銀、アルミニウム、または銅のうちの一つ以上から選択される材料を含んでもよく、これらの材料は、流体透過性ヒーターの電気抵抗を修正するために適した特性を有することが見い出された。当業者であれば、適切な特性を有する他の材料も使用されうることを理解するであろう。
【0027】
第一の層の厚さは、第二の層の厚さよりも一桁大きくてもよく、任意に、第一の層の厚さは、第二の層の厚さよりも二桁以上大きくてもよい。第一の層の厚さと第二の層の厚さとの比は、1000:1以下、より具体的には500:1以下、さらにより具体的には250:1以下であってもよい。第一の層の厚さと第二の層の厚さとの比は、2.5:1~1000:1、より具体的には2.5:1~500:1、さらにより具体的には2.5:1~250:1であってもよい。第一の層の厚さは、10μm以下、より具体的には2.5μm以下、より具体的には0.5μm以下、さらにより具体的には0.1μm以下であってもよい。第一の層の厚さは、5nm~10μm、より具体的には50nm~2.5μm、より具体的には50nm~0.5μm、さらにより具体的には50nm~0.1μmであってもよい。これらの厚さの範囲は、多孔性外表面が多孔性のままであるように、多孔性部材の多孔性外表面の空孔を充填または塞ぐ可能性を低減するのに十分な薄さである一方で、「ホットスポット」の数または重大度を減少させるのを助けるためにヒーターに十分な導電率を提供することが見い出された。第一の層の厚さは、多孔性部材の粒径および空孔サイズに依存する。粒径および空孔サイズがより小さい多孔性材料は、上述の厚さの範囲からより薄い厚さを選択する必要がある。
【0028】
第二の層の厚さは10~20nmであってもよい。この厚さの範囲は、ヒーターの電気抵抗を修正するために十分であることが見い出された。第二の層の厚さは第一の層と比べて比較的小さく、従って、第二の層は、比較的少量の導電性材料のみを含む必要がある。第二の層が流体透過性ヒーターの厚さを著しく増加させないことを考慮すると、多孔性外表面が多孔性のままであるように、多孔性部材の多孔性外表面の空孔を充填または塞ぐリスクは著しく増加しない。
【0029】
第三の層の厚さは10~20nmであってもよい。この厚さの範囲は、第一の層と多孔性部材の多孔性外表面の間の接着を改善するために十分であることが見い出された。ここでも、第三の層は流体透過性ヒーターの厚さを著しく増加させず、従って、多孔性外表面が多孔性のままであるように、多孔性部材の多孔性外表面の空孔を充填または塞ぐリスクは著しく増加しない。
【0030】
第二の層は、流体透過性ヒーターの電気抵抗を0.3~4オーム、より具体的には0.5~1.5オーム、さらにより具体的には1オームに修正しうる。電源が電池であるエアロゾル発生システムでヒーター組立品が使用される場合、流体透過性ヒーターは全体的に低い抵抗を有することが一般的に有利である。低抵抗での大電流のシステムにより、流体透過性ヒーターに高電力を送達することが可能になる。これにより、ヒーターは望ましい温度に素早く加熱されうる。
【0031】
第一、第二、および第三の層は、任意の適切な方法で多孔性部材の多孔性外表面上に堆積されうる。例えば、第一、第二、および第三の層のうちの一つ以上が、蒸着、物理蒸着(PVD)または真空蒸着プロセス、スパッタリング、物理蒸着(PVD)、またはプラズマ増強化学蒸着(PECVD)などの一つ以上の真空堆積プロセスによって、多孔性外表面上に堆積されてもよい。
【0032】
一部の実施形態では、第一、第二、および第三の層は、多孔性部材の多孔性外表面上に印刷された印刷可能な導電性材料を含んでもよい。こうした実施形態では、任意の適切な周知の印刷技法が使用されうる。それは、例えば、エアロゾルジェット印刷、スタンピング、パッド印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷およびインクジェット印刷のうちの一つ以上である。
【0033】
印刷可能な導電性材料は、接着剤中に懸濁された金属粒子を含んでもよい。印刷可能な導電性材料は、溶剤、硬化剤、接着促進剤、界面活性剤、粘度低下剤、および凝集阻害剤から成る群より選択される一つ以上の添加剤をさらに含んでもよい。こうした添加剤は、多孔性部材の多孔性外表面上への導電性材料の堆積を支援するため、導電性材料が多孔性部材の多孔性外表面に放散される量を増やすため、導電性材料が定着するのに必要な時間を減少させるため、導電性材料と多孔性部材の間の接着の程度を増加するため、または多孔性部材の多孔性外表面上への導電性材料の適用前に金属粒子もしくは金属粉末などの懸濁粒子の凝集量を減少させるために、使用されうる。
【0034】
ヒーター組立品は、流体透過性ヒーターを電源に接続するための第一および第二の導電性接点パッドまたは部分を備えてもよい。一部の実施形態では、接点部分は、それらが流体透過性ヒーターと電気接触するように、流体透過性ヒーターに直接固定されてもよい。こうした実施形態では、第一および第二の導電性接点部分は、多孔性部材の多孔性外表面上または流体透過性ヒーター上に直接堆積された導電性材料で形成されうる。
【0035】
他の実施形態では、導電性接点部分は流体透過性ヒーターと一体であってもよい。例えば、流体透過性ヒーターの第二の層は、接点部分を含んでもよく、すなわち、第二の層は、接点部分を形成するために特に堆積されてもよく、または第二の層は、接点部分の領域の厚さが増加していてもよい。流体透過性ヒーターと一体型である導電性接点部分の提供により、信頼性がありかつ単純なヒーターの電源への接続が可能になる。
【0036】
流体透過性ヒーターの電気抵抗は、接点部分の電気抵抗よりも少なくとも1桁大きいことが好ましく、また少なくとも2桁大きいことがより好ましい。これは、電流がヒーター組立品に供給された時、発生した熱が流体透過性ヒーターに局在することを確実にする。導電性接点部分が流体透過性ヒーターと一体型である実施形態では、これは、流体透過性ヒーターの第二の層から導電性接点部分を形成することによって、または流体透過性ヒーターの熱発生部分に対する接点部分の電気抵抗を低減するために接点部分の領域の第二の層を厚くすることによって、達成されうる。こうした配設はまた、接点部分と流体透過性ヒーターの間の接触抵抗を低減するのにも役立つ可能性があり、これは電力損失を最小化するためにも望ましい。
【0037】
多孔性部材は、複数の小さい穴またはチャネルを形成する繊維状または多孔性の構造を有する毛細管材料を含んでもよく、この複数の小さい穴またはチャネルを通して液体エアロゾル形成基体を毛細管作用によって運ぶまたは搬送することができる。多孔性部材は、毛細管の束、例えば複数の繊維もしくは糸、またはその他の細孔チューブを含んでもよい。繊維または糸は、液体エアロゾル形成基体を搬送材料に向かって運ぶために概して整列していてもよい。別の方法として、多孔性部材はスポンジ様または発泡体様構造を有してもよい。多孔性部材は適切な任意の材料または材料の組み合わせを含んでもよい。適切な材料の例には、海綿体材料もしくは発泡体材料、繊維もしくは焼結粉末の形態のセラミック系またはグラファイト系の材料、発泡性の金属材料もしくはプラスチック材料、繊維状材料、例えば紡糸繊維または押出成形繊維(セルロースアセテート、ポリエステル、または結合されたポリオレフィン、ポリエチレン、テリレンもしくはポリプロピレン繊維、ナイロン繊維またはセラミックなど)で作製された繊維状材料が含まれる。
【0038】
特定の好ましい実施形態では、多孔性部材は、空隙率40%以上の多孔性ガラス、石英、プラスチック、またはセラミック材料のうちの一つ以上から選択される材料を含みうる。前述の材料の粒子または粒径は、適切な空隙率を提供するために焼結されうる。適切なセラミック材料には、例えば、SiO2、AlNまたはAl23を含み、適切なプラスチックには、例えば、ポリイミド、ポリアミド、またはポリエーテルエーテルエーテルケトン(PEEK)を含む。他の好ましい実施形態では、多孔性部材は、ガラス繊維、綿またはケブラーを含んでもよい。
【0039】
多孔性部材は異なる液体の物理的特性で使用されるように、適切な任意の毛細管現象および空隙率を有してもよい。液体エアロゾル形成基体は、毛細管作用により毛細管装置を通過して搬送できるようにする粘性、表面張力、密度、熱伝導率、沸点および蒸気圧を含むがこれに限定されない物理的特性を有する。
【0040】
ヒーター組立品は、液体エアロゾル発生基体を多孔性部材に保持および搬送するために、多孔性部材と接触して配設された保持材料をさらに含みうる。保持材料はまた、複数の小さい穴またはマイクロチャネルを形成する繊維状または多孔性の構造を有する毛細管材料も備えてもよく、この複数の小さい穴またはマイクロチャネルを通して液体エアロゾル形成基体を毛細管作用によって搬送することができる。保持材料は、毛細管の束、例えば複数の繊維もしくは糸、またはその他の微細チューブを含んでもよい。繊維または糸は、液体エアロゾル形成基体を多孔性部材に向かって運ぶために概して整列していてもよい。別の方法として、保持材料は、海綿体様または発泡体様の材料を含んでもよい。保持材料は、任意の適切な材料または材料の組み合わせを含んでもよい。適切な材料の例は、海綿体材料もしくは発泡体材料、繊維もしくは焼結粉末の形態のセラミック系またはグラファイト系の材料、発泡性の金属材料もしくはプラスチック材料、繊維状材料、例えば紡糸繊維または押出成形繊維(セルロースアセテート、ポリエステル、または結合されたポリオレフィン、ポリエチレン、テリレンもしくはポリプロピレン繊維、ナイロン繊維またはセラミックなど)で作製された繊維状材料である。特定の好ましい実施形態において、保持材料は、高密度ポリエチレン(HDPE)またはポリエチレンテレフタラート(PET)を含んでもよい。保持材料は、多孔性部材よりも単位堆積当たりより多くの液体を保持するように、多孔性部材と比較して優れた吸い出し性能を有してもよい。さらに、多孔性部材は、保持材料より高い熱分解温度を有してもよい。
【0041】
保持材料は、多孔性部材によって流体透過性ヒーターから間隙を介していてもよく、多孔性部材は、保持材料より高い熱分解温度を有してもよい。この配設は、多孔性部材が、流体透過性ヒーターを保持材料から分離するスペーサーとしての機能を効果的に果たし、結果として、保持材料がその熱分解温度を上回る温度に曝露されないことを意味する。一部の実施形態では、多孔性部材の熱分解温度は少なくとも160℃であり、少なくとも250℃であることが好ましい。
【0042】
保持材料は、有利には、多孔性部材よりも大きな体積を占有してもよく、多孔性部材よりも多くの液体エアロゾル形成基体を保持してもよい。保持材料は、多孔性部材と比較して優れた吸い出し性能を有しうる。保持材料は、多孔性部材よりも安価な材料を含むか、またはより高い充填能力を有しうる。
【0043】
多孔性部材は、2~6mmの範囲の厚さを有してもよい。
【0044】
一部の実施形態では、流体透過性ヒーターはパターン化されていなくてもよく、すなわち、ヒーターは、パターンを有さない多孔性部材上に連続層として堆積される。流体透過性ヒーターは、多孔性部材の外表面の実質的にすべての上に堆積されてもよい。流体透過性ヒーターは、多孔性部材の多孔性の第一の端の実質的にすべての上に堆積されてもよい。
【0045】
別の方法として、流体透過性ヒーターは、ヒーターの長さに沿って延びる導電性フィラメントのアレイを備えてもよく、複数の開口部は導電性フィラメントの間の隙間によって画定される。こうした実施形態では、複数の開口部のサイズは、隣接したフィラメント間の隙間のサイズを増加または減少することによって変化しうる。これは、導電性フィラメントの幅を変化させることによって、または隣接したフィラメント間の間隔を変化させることによって、または導電性フィラメントの幅および隣接したフィラメント間の間隔の両方を変化させることによって達成されうる。
【0046】
本明細書で使用される「フィラメント」という用語は、二つの電気接点間に配設された電気経路を指す。好ましい実施形態では、フィラメントは実質的に平面の断面を有する。本明細書で使用される「実質的に平坦な」とは、単一の平面の状態に形成され、また例えば湾曲した形状もしくはその他の非平面形状にフィットするように周りに巻かれたり、または他に適合されたりしないことを意味することが好ましい。平面のヒーターは、製造中に簡単に取り扱うことができ、かつ頑丈な構造を提供する。フィラメントは、真っ直ぐな様態または湾曲した様態で配設されてもよい。
【0047】
液体エアロゾル形成基体は、エアロゾルを形成できる揮発性化合物を放出する能力を有する液体基体である。揮発性化合物はエアロゾル形成基体を加熱することによって放出されてもよい。
【0048】
液体エアロゾル形成基体は植物由来材料を含んでもよい。液体エアロゾル形成基体は、たばこを含んでもよい。液体エアロゾル形成基体は、加熱に伴いエアロゾル形成基体から放出される揮発性のたばこ風味化合物を含有するたばこ含有材料を含んでもよい。別の方法として、液体エアロゾル形成基体は非たばこ含有材料を含んでもよい。液体エアロゾル形成基体は均質化した植物由来材料を含んでもよい。液体エアロゾル形成基体は均質化したたばこ材料を含んでもよい。液体エアロゾル形成基体は少なくとも一つのエアロゾル形成体を含んでもよい。エアロゾル形成体は、使用時に密度の高い安定したエアロゾルの形成を容易にし、またシステムの作動の使用温度で熱分解に対して実質的に抵抗性のある、任意の適切な公知の化合物または化合物の混合物である。適切なエアロゾル形成体は当業界で周知であり、これには多価アルコール(トリエチレングリコール、1,3-ブタンジオール、グリセリンなど)、多価アルコールのエステル(グリセロールモノアセテート、ジアセテート、またはトリアセテートなど)、およびモノカルボン酸、ジカルボン酸、またはポリカルボン酸の脂肪族エステル(ドデカン二酸ジメチル、テトラデカン二酸ジメチルなど)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましいエアロゾル形成体は、多価アルコールまたはその混合物(トリエチレングリコール、1,3-ブタンジオールおよび最も好ましくはグリセリンなど)である。液体エアロゾル形成基体は、その他の添加物および成分(風味剤など)を含んでもよい。
【0049】
本発明の第二の態様によると、エアロゾル発生システムで使用するためのカートリッジが提供されていて、カートリッジは、液体エアロゾル形成基体を保持するための液体貯蔵部分と、上述のヒーター組立品実施形態のいずれかを含む。
【0050】
流体透過性ヒーターは、多孔性部材の多孔性の第一の端上に堆積されてもよく、多孔性部材の第二の端は、その中の液体エアロゾル形成基体と接触するために液体貯蔵部分の中に延びる。
【0051】
液体貯蔵部分は、液体エアロゾル形成基体を保持するためのハウジングを含みうる。ハウジングは、気化したエアロゾル形成基体が脱出できるための開口部を有してもよく、多孔性部材は、流体透過性ヒーターが開口部を横切って延びるように配設されている。開口部は適切な任意の形状のものであってもよい。例えば、開口部は円形、正方形、または長方形の形状を有してもよい。開口部の面積は小さくてもよく、約25平方ミリメートル以下であることが好ましい。液体貯蔵部分は、本明細書に記載の保持材料を含みうる。
【0052】
一部の実施形態において、流体透過性ヒーターは、ヒーターが液体貯蔵部分の周辺全体の周りで接触している場合と比較して、液体貯蔵部分との物理的な接触面積が減少するように配設されている。流体透過性ヒーターは、液体貯蔵部分の周辺と直接接触しないことが好ましい。これは、流体透過性ヒーターの外縁と開口部の周辺の間に間隔を提供することによって達成されてもよく、この間隔は、熱的接触が著しく低減されるように寸法設定されうる。ヒーターと開口部周辺の間の間隔は、25ミクロン~40ミクロンとしうる。このようにして、液体貯蔵部分への熱的接触が低減されて、より少ない熱が液体貯蔵部分に伝達され、よって、加熱の効率、従ってエアロゾル発生が増加する。
【0053】
代替的実施形態では、ヒーター組立品は、エアロゾル発生システムで使用するためのカートリッジの形成部分というよりもむしろ、エアロゾル発生システムの一体型の部分として提供されうる。
【0054】
本発明の第三の態様によると、エアロゾル発生装置および上述のようなカートリッジを備えるエアロゾル発生システムが提供されていて、カートリッジはエアロゾル発生装置に取り外し可能なように結合され、またエアロゾル発生装置はヒーター組立品のための電源を含む。
【0055】
本明細書で使用される場合、カートリッジが装置に「取り外し可能なように結合される」とは、装置またはカートリッジのいずれも著しく損傷することなく、カートリッジおよび装置が互いに結合および分離できることを意味する。
【0056】
カートリッジは消費後に交換可能である。カートリッジがエアロゾル形成基体および流体透過性ヒーターを保持するので、主要ユニットを長めに使用した後でさえも一貫した気化条件が維持されるようにヒーターも定期的に交換される。
【0057】
エアロゾル発生システムは、流体透過性ヒーターおよび電源に接続された電気回路をさらに備えてもよく、電気回路は、流体透過性ヒーターの電気抵抗をモニターするように、かつモニターされた電気抵抗に基づいて、電源からヒーターへの電力供給を制御するように構成されている。ヒーターの温度をモニターすることにより、システムはヒーターの過熱または加熱不足を防止し、一貫した気化条件が提供されることを確実にする。
【0058】
電気回路はマイクロプロセッサを備えてもよく、これはプログラマブルマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、または特定用途向け集積回路チップ(ASIC)、もしくは制御を提供する能力を有するその他の電子回路であってもよい。電気回路はさらなる電子構成要素を備えてもよい。電気回路はヒーターへの電力供給を調節するように構成されてもよい。電力はシステムの起動後、流体透過性ヒーターに連続的に供給することも、毎回の吸煙ごとなど断続的に供給することもできる。電力は、電流パルスの形態でヒーターに供給されてもよい。
【0059】
電源は、リン酸鉄リチウム電池など、装置内の電池であってもよい。代替として、電源は別の形態の電荷蓄積装置(コンデンサーなど)であってもよい。電源は再充電を必要としてもよく、1回以上の喫煙の体験のために十分なエネルギーを蓄積できる容量を有してもよい。例えば、電力供給源は従来の紙巻たばこ1本を喫煙するのにかかる典型的な時間に対応する約6分間、または6分の倍数の時間にわたるエアロゾルの連続的な生成を可能にするのに十分な容量を有してもよい。別の実施例では、電力供給源が所定の吸煙回数、またはヒーターの不連続的な起動を可能にするための十分な容量を有してもよい。
【0060】
液体貯蔵部分は、流体透過性ヒーターの第一の側面の上に位置付けられてもよく、また気流チャネルは、ヒーターを通過する気流が気化したエアロゾル形成基体を同伴するように、貯蔵部分に対してヒーターの反対側の上に位置付けられる。
【0061】
このシステムは手持ち式エアロゾル発生システムであってもよい。エアロゾル発生システムは従来の葉巻たばこまたは紙巻たばこに匹敵するサイズを有してもよい。喫煙システムは、およそ30ミリメートル~およそ150ミリメートルの全長を有してもよい。喫煙システムは、およそ5ミリメートル~およそ30ミリメートルの外径を有してもよい。
【0062】
本発明の第四の態様によれば、エアロゾル発生システム用のヒーター組立品を製造する方法が提供されており、方法は、多孔性部材を提供することと、流体透過性ヒーターを多孔性部材の多孔性外表面上に堆積させることとを含み、流体透過性ヒーターは、堆積された導電性材料の第一の層と、堆積された導電性材料の第二の層とを備え、第二の層が流体透過性ヒーターの電気抵抗を必要な抵抗に修正するように、第二の層の導電率は第一の層の導電率よりも大きい。
【0063】
方法は、流体透過性ヒーターに第三の層を提供することをさらに含み、第三の層は、多孔性部材の多孔性外表面と第一の層の間に配設されている。
【0064】
第一、第二、および第三の層は、任意の適切な方法で多孔性部材の多孔性外表面上に堆積されうる。例えば、第一、第二、および第三の層のうちの一つ以上が、蒸着、物理蒸着(PVD)または真空蒸着プロセス、スパッタリング、物理蒸着(PVD)、またはプラズマ増強化学蒸着(PECVD)などの一つ以上の真空堆積プロセスによって、多孔性外表面上に堆積されてもよい。
【0065】
第一、第二、または第三の層のうちの一つ以上が印刷可能な導電性材料を含む場合、層は、任意の適切な周知の印刷技術を使用して、多孔性部材の多孔性外表面上に印刷されてもよい。それは、例えば、エアロゾルジェット印刷、スタンピング、パッド印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷およびインクジェット印刷のうちの一つ以上である。こうした印刷プロセスは、特に高速の製造プロセスに適合可能でありうる。
【0066】
多孔性部材の多孔性外表面上に印刷されると、第一、第二および第三の層のうちの一つ以上の印刷された導電性材料は、流体透過性ヒーターを形成するために任意の適切な周知の手法で硬化されうる。例えば、印刷された導電性材料は、熱または紫外線への暴露によって硬化されうる。別の方法として、または追加的に、印刷された導電性材料は、焼結によりまたは化学反応の開始により硬化されうる。
【0067】
一つ以上の態様に関して説明した特徴は、本発明の他の態様に等しく適用されてもよい。特に、第一の態様のヒーター組立品に関して説明した特徴は、第二の態様のカートリッジに等しく適用されてもよく、またその逆も言える。そして第一の態様のヒーター組立品または第二の態様のカートリッジに関して説明した特徴は、第三の態様のエアロゾル発生システムまたは第四の態様の製造の方法に等しく適用されてもよい。
【0068】
ここで、例証としてのみであるが、以下の添付図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1図1は、本発明の一実施形態によるエアロゾル発生システムの概略図である。
図2図2は、本発明によるカートリッジ(マウスピースを含む)の断面の概略図である。
図3図3は、本発明の実施形態によるヒーター組立品の断面の概略図である。
図4図4は、本発明の実施形態によるヒーター組立品の断面の概略図である。
図5図5は、多孔性部材の多孔性外表面の粒径または粒子上に堆積された導電性材料の層を有する多孔性部材を通した液体エアロゾル形成基体の浸透を示す、本発明の実施形態によるヒーター組立品の一部の拡大断面の概略図である。
図6図6は、PVDによって堆積されたタングステンの層を有する石英多孔性部材を含み、第二の層の堆積前の、本発明の実施形態によるヒーター組立品の一部を示す、150倍の拡大倍率の走査電子顕微鏡によって撮影された画像である。
図7図7は、PVDによって堆積されたタングステンの層を有するガラス繊維多孔性部材を含み、第二の層の堆積前の、本発明の実施形態によるヒーター組立品の一部を示す、150倍の拡大倍率の走査電子顕微鏡によって撮影された画像である。
【0070】
図1を参照すると、これは本発明の実施形態によるエアロゾル発生システムの概略図を示す。システムは、二つの主構成要素、カートリッジ100、および主本体部200を備える。カートリッジ100の接続端115は、主本体部200の対応する接続端205に取り外し可能に接続されている。主本体部200は、電池210(この例では再充電可能リチウムイオン電池である)と、制御回路220とを包含する。エアロゾル発生システムは携帯型であり、また従来の葉巻たばこまたは紙巻たばこに匹敵するサイズを有する。マウスピースは、接続端115とは反対側のカートリッジ100の端に配設されている。
【0071】
カートリッジ100は、ヒーター組立品120と、第一の部分130および第二の部分135を有する液体貯蔵区画とを包含するハウジング105を備える。液体エアロゾル形成基体は液体貯蔵区画の中に保持されている。図1には図示していないが、液体貯蔵区画の第一の部分130は、第一の部分130の中の液体が第二の部分135に移動することができるように、液体貯蔵区画の第二の部分135に接続されている。ヒーター組立品120は、液体貯蔵区画の第二の部分135から液体を受容する。ヒーター組立品120は流体透過性ヒーターを備える。
【0072】
気流通路140、145は、ハウジング105の側面に形成された空気吸込み口150からヒーター組立品120を通り過ぎ、そしてヒーター組立品120から、接続端115とは反対のカートリッジ100の端にてハウジング105の中に形成されたマウスピース開口110に、カートリッジ100を通って延びる。
【0073】
カートリッジ100の構成要素は、液体貯蔵区画の第一の部分130がヒーター組立品120とマウスピース開口部110の間にあるように配設されていて、液体貯蔵区画の第二の部分135は、マウスピース開口部110とは反対の、ヒーター組立品100の側に位置付けられている。言い換えれば、ヒーター組立品120は、液体貯蔵区画の二つの部分130、135の間に置かれ、液体を第二の部分135から受容する。液体貯蔵区画の第一の部分130は、液体貯蔵区画の第二の部分135よりもマウスピース開口部110に近い。気流通路140、145はヒーター組立品110を通り過ぎ、また液体貯蔵区画の第一の部分130と第二の部分135の間に延びる。
【0074】
システムは、ユーザーがカートリッジのマウスピース開口部110を吸煙するかまたはそれを吸って、エアロゾルを自分の口の中に引き出すことができるように構成されている。動作時、ユーザーがマウスピース開口部110を吸煙する時に、空気は空気吸込み口150から気流通路140、145を通して、ヒーター組立品120を通り過ぎて、マウスピース開口部110に引き出される。制御回路220は、システムが起動された時に、電池210からカートリッジ100への電力の供給を制御する。これは結果として、ヒーター組立品120によって生成されるベイパーの量および特性を制御する。制御回路220は気流センサー(図示せず)を含んでもよく、また制御回路220は、ユーザーの吸煙が気流センサーによって検出された時に、ヒーター組立品120に電力を供給してもよい。このタイプの制御配設は、吸入器およびeシガレットなどのエアロゾル発生システムで良好に確立される。そのため、ユーザーがカートリッジ100のマウスピース開口部110を吸煙する時に、ヒーター組立品120が起動されて、気流通路140を通過する気流中に同伴されるベイパーを発生する。ペイパーは通路145の中の気流内で冷めてエアロゾルを形成し、次いでこれはマウスピース開口部110を通してユーザーの口の中に引き出される。
【0075】
動作時、マウスピース開口部110は典型的に、システムの最高点である。カートリッジ100の構造、および特に液体貯蔵区画の第一の部分130と第二の部分135の間のヒーター組立品120の配設は、液体貯蔵区画が空になり始める中でさえも重力を活用して液体基体がヒーター組立品120に送達されることを確実にするが気流通路140の中への液体の漏れにつながりうるヒーター組立品120への液体の過剰供給を防止するので、有利である。
【0076】
図2は、本発明の実施形態によるカートリッジ100の概略断面である。カートリッジ100は、マウスピース開口部110を有するマウスピースを有する外部ハウジング105と、マウスピースとは反対側の接続端115とを備える。ハウジング105内には液体エアロゾル形成基体131を保持する液体貯蔵区画がある。液体貯蔵区画は、第一の部分130および第二の部分135を有し、また液体は、三つのさらなる構成要素、すなわち上方貯蔵区画ハウジング137、ヒーターマウント134、および端部キャップ138によって、液体貯蔵区画の中に包含されている。流体透過性ヒーター122および多孔性部材124を備えるヒーター組立品120は、ヒーターマウント134の中に保持されている。接点パッド(図示せず)は、流体透過性ヒーター122の両側に提供され、流体透過性ヒーター122に電力を供給する。ヒーター組立品120は接続端115により近くにあり、これによって電源へのヒーター組立品120の電気的接続を、簡単かつ頑丈に達成することができる。保持材料136は、液体貯蔵区画の第二の部分135の中に提供されていて、かつヒーター組立品120の多孔性部材124に当接する。保持材料136は、液体をヒーター組立品120の多孔性部材124に搬送するように配設されている。
【0077】
液体貯蔵区画の第一の部分130は、貯蔵区画の第二の部分135より大きく、かつヒーター組立品120とカートリッジ100のマウスピース開口部110との間の空間を占める。貯蔵区画の第一の部分130の中の液体は、ヒーター組立品120の両側の液体チャネル133を通して液体貯蔵区画の第二の部分135に移動することができる。この実施例では二つのチャネルが提供されていて、対称的な構造を提供するが、一つのチャネルのみが必要である。チャネルは、上方貯蔵区画ハウジング137とヒーターマウント134の間に画定された囲まれた液体流路である。
【0078】
流体透過性ヒーター122は多孔性部材124の多孔性外表面上に堆積されており、かつ液体貯蔵区画の第一の部分130およびマウスピース開口部110に面するヒーター組立品120の側の上に配設されている。特に、流体透過性ヒーター122は、多孔性部材124の多孔性の第一の端上に堆積されている。多孔性部材124の多孔性の第二の端は、多孔性部材124が保持材料136から液体エアロゾル形成基体を受容できるように、保持材料136と接触する液体貯蔵区画の第二の部分135の中に延びる。多孔性部材によって占められていない液体貯蔵区画の第二の部分135の残りの部分は、液体チャネル133を介して送達される液体エアロゾル形成基体131と流体連通している保持材料136によって占められている。
【0079】
気流通路140は、貯蔵区画の第一の部分と第二の部分の間に延びる。気流通路140の底部壁は、流体透過性ヒーター122を備える。気流通路140の側壁はヒーターマウント134の部分を備え、また気流通路の上部壁は上方貯蔵区画ハウジング137の表面を備える。気流通路は、液体貯蔵区画の第一の部分130を通して、マウスピース開口部110に向かって延びる垂直部分(図示せず)を有する。
【0080】
当然のことながら、図2の配設は、エアロゾル発生システム用のカートリッジの単なる一例である。その他の配設も可能である。例えば、流体透過性ヒーター、多孔性部材、および保持材料を、カートリッジハウジングの一方の端に配設して、液体貯蔵区画をもう一方の端に配設することが可能である。
【0081】
図3は、本発明の実施形態によるヒーター組立品300の断面の概略図である。図面は縮尺通りではない。ヒーター組立品300は、多孔性部材324と、多孔性部材324の第一の端324aの多孔性外表面上に堆積された複数層の流体透過性ヒーター322とを備える。流体透過性ヒーター322は、導電性材料の第一の層326および第二の層328で形成される。本実施例では、多孔性部材324は多孔性石英を含み、第一の層326はタングステンを含み、第二の層328は金を含む。多孔性部材324の厚さは、およそ2.5mmである。タングステンの第一の層326の厚さはおよそ1200nmであり、銀の第二の層328の厚さはおよそ15nmである。第一の層326は、物理蒸着(PVD)によって多孔性部材324上に直接堆積され、次いで第二の層328もPVDによって第一の層326上に堆積された。第一の層326および第二の層328に対する前述の厚さは、ヒーターが堆積された多孔性外表面が多孔性のままであるように、多孔性部材324の空孔を充填または塞ぐことなく、流体透過性ヒーター322に対して十分な導電率を提供する。当業者であれば、例えば、本出願の先述のように、適切な材料および厚さの異なる組み合わせが使用されうることを理解するであろう。
【0082】
図4は、本発明のさらなる実施形態によるヒーター組立品400の断面の概略図である。ここでも、図面は縮尺通りではない。ヒーター組立品は、流体透過性ヒーターが追加的な第三の層432を備えることを除いて、図3に示すヒーター組立品300と実質的に同じである。下記の説明では、図3に示すヒーター組立品300と共通する部分を示すために同様の参照符号が使用される。
【0083】
ヒーター組立品400は、多孔性部材424と、多孔性部材424の第一の端424aの多孔性外表面上に堆積された複数層の流体透過性ヒーター422とを備える。流体透過性ヒーター422は、タングステンの第一の層326および銀の第二の層328で形成される。流体透過性ヒーターは、多孔性部材424と第一の層426の間に配設された第三の層432をさらに含む。第三の層432はタンタルで形成され、およそ15nmの厚さである。タンタルの層は、多孔性部材424への流体透過性ヒーターの接着を改善するのに役立つ。第三の層432の厚さは、ヒーターの全体的な厚さと比較して比較的小さいため、この追加的な層は、ヒーターが堆積される多孔性外表面が多孔性のままであるように、多孔性部材324の空孔を充填または塞ぐことなく追加することができる。当業者であれば、例えば、本出願の先述のように、適切な材料および厚さの異なる組み合わせが使用されうることを理解するであろう。
【0084】
図5は、本発明の実施形態によるヒーター組立品500の部分の拡大断面の概略図である。多孔性部材524は、一緒に焼結された複数の粒径または粒子524cを含む。粒子のサイズおよび焼結の程度は、多孔性部材524の空隙率および空孔のサイズを決定しうる。例えば、より低い空隙率が必要な場合、焼結を増加させたより小さい粒子を使用することができ、より高い空隙率が必要な場合、焼結の少ないより大きな粒子を使用することができる。液体エアロゾル形成基体531は、多孔性部材524の空孔内で起こる毛細管作用によって、多孔性部材524を通して運ばれる。液体エアロゾル形成基体は、液体エアロゾル形成基体の貯蔵物と接触している多孔性部材524の第二の端524bから、流体透過性ヒーター522を有する第一の端524aに運ばれ、ここで、気化したエアロゾル形成基体531aが、多孔性部材524の第一の端524aに配設された多孔性外表面の空孔から放出されるように気化される。
【0085】
流体透過性ヒーター522は、多孔性部材524の第一の端524aでPVDによって多孔性外表面上に堆積される。流体透過性ヒーター522は複数の層を備えるが、簡略化のために、これらは図5には示されていない。複数の層は、堆積された導電性材料の第一の層と、第一の層よりも高い導電率を有する堆積された導電性材料の第二の層とを含む。第二の層は、流体透過性ヒーター522の電気抵抗を必要な抵抗に修正するために使用される。流体透過性ヒーター522はまた、第一の層の多孔性部材への接着を改善するために、多孔性部材524と第一の層の間に配設された接着層などの第三の層(図示せず)を有してもよい。
【0086】
流体透過性ヒーター522は、多孔性部材524の第一の端524で多孔性外表面に部分的に放散する、すなわち、流体透過性ヒーター522は、多孔性外表面の空孔の中に部分的に延びる。これは、流体透過性ヒーター522と多孔性部材524の間の接触を改善するのに役立ち、ヒーター522と多孔性部材524の間の接着を増加させるのを助ける。多孔性部材524の空隙率および流体透過性ヒーター522の厚さは、多孔性部材524の第一の端524における多孔性外表面の空孔を残すように、すなわち空孔を塞がないように選択されうる。図5は、多孔性部材514を通って透過した液体エアロゾル形成基体が流体透過性ヒーター522で気化され、気化したエアロゾル形成基体531aとして流体透過性ヒーター522の開放された空孔から放出されるように、開放されている空孔を示す。
【0087】
図6は、本発明の実施形態によるヒーター組立品の部分を150倍の倍率で撮影した走査型電子顕微鏡画像である。ヒーター組立品は、PVDによって多孔性部材上に第一の層として堆積されたタングステンの層を有する石英多孔性部材を備え、この層はおよそ1200nmの平均厚さを有する。図6から分かるように、石英多孔性部材の空孔、すなわち、図6の石英の粒子間の暗い領域は開いたままであり、第一の層のこの厚さによって塞がれていない。図6は、第二の層の堆積前のヒーター組立品を示す。しかしながら、上述のように、第二の層の厚さ(すなわち10~20nm)は、第一の層の厚さと比べて比較的薄いため、第一の層上のその堆積は空孔を塞ぐ可能性が低い。
【0088】
図7は、本発明の実施形態によるヒーター組立品の部分を150倍の倍率で撮影した走査型電子顕微鏡画像である。ヒーター組立品は、PVDによって多孔性部材上に第一の層として堆積されたタングステンの層を有するガラス繊維多孔性部材を備え、この層はおよそ500nmの平均厚さを有する。図7から分かるように、ガラス繊維多孔性部材の空孔、すなわち、図7のガラス繊維の粒子間の暗い領域は開いたままであり、第一の層のこの厚さによって塞がれていない。図7は、第二の層の堆積前のヒーター組立品を示す。しかしながら、上述のように、第二の層の厚さ(すなわち10~20nm)は、第一の層の厚さと比べて比較的薄いため、第一の層上のその堆積は空孔を塞ぐ可能性が低い。
図1
図2
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図5
図6
図7