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特許7491910熱的に安定な物体の三次元インクジェット印刷
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】熱的に安定な物体の三次元インクジェット印刷
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/321 20170101AFI20240521BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240521BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20240521BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20240521BHJP
   B29C 64/112 20170101ALI20240521BHJP
   B29C 64/314 20170101ALI20240521BHJP
   B29C 64/343 20170101ALI20240521BHJP
   B29C 64/264 20170101ALI20240521BHJP
   C08G 73/06 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
B29C64/321
B33Y10/00
B33Y80/00
B33Y70/00
B29C64/112
B29C64/314
B29C64/343
B29C64/264
C08G73/06
【請求項の数】 48
(21)【出願番号】P 2021517579
(86)(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-12
(86)【国際出願番号】 IL2019051070
(87)【国際公開番号】W WO2020065655
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-09-14
(31)【優先権主張番号】62/738,084
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513131464
【氏名又は名称】ストラタシス リミテッド
【住所又は居所原語表記】1 Holtzman Street, Science Park, P.O. Box 2496, 7612401 Rehovot, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】クノ, レヴ
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-527442(JP,A)
【文献】特表2017-524565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00
B33Y 80/00
B33Y 70/00
C08G 73/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元インクジェット印刷によって三次元物体を製作する方法であって、物体が、その少なくとも一部において、シアネートエステル含有ポリマーネットワークを含み、方法が、物体の形状に対応する構成パターンで複数の層を逐次形成し、第一硬化条件に前記層の各々をさらし、それによって三次元物体を製作することを含み、ただし、前記第一硬化条件では、前記層の少なくとも一部の形成が、少なくとも二つの造形用材料配合物を吐出することを含み、各造形用材料配合物が、異なる吐出ヘッド及び/又はノズルから吐出され、前記少なくとも二つの造形用材料配合物のうちの第一造形用材料配合物が、熱硬化性シアネートエステルである第一硬化性材料を含み、前記少なくとも二つの造形用材料配合物のうちの第二造形用材料配合物が、前記シアネートエステルの重合を促進するための活性剤を含みかつ前記第一硬化性材料を欠いており、前記少なくとも二つの造形用材料配合物が、前記第一硬化性材料とは異なる第二硬化性材料、及び任意選択的に前記第二硬化性材料の硬化を促進するための薬剤をさらに含み、
前記第二硬化性材料が、硬化したとき、100℃より高い又は150℃より高いTgを具備し、
前記第一硬化条件が、放射線照射を含む、方法。
【請求項2】
前記第一造形用材料配合物及び第二造形用材料配合物の各々の粘度が、68℃で50cps又は40cps又は30cpsを越えない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第一硬化条件が、前記第二硬化性材料の硬化を実施するためのものである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第一硬化条件が、熱エネルギーの付与を含まない、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記層を第二硬化条件にさらし、それによって前記熱硬化性シアネートエステルの重合を実施することをさらに含み、前記第二硬化条件が、熱エネルギーを含む、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記層の前記少なくとも一部の形成が、
前記少なくとも二つの造形用材料配合物の前記吐出、及び前記第一硬化条件前記層の各々をさらすことを繰り返すこと;及び
前記第二硬化条件に前記複数の層をまとめてさらすこと
を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第二硬化条件が、前記層を少なくとも80℃の温度で少なくとも一時間の時間期間、加熱することを含む、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記第一造形用材料配合物が、前記第一硬化性材料、及び前記第二硬化性材料の重合を促進するための前記薬剤を含む、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記第二造形用材料配合物が、前記第二硬化性材料、及び前記シアネートエステルの重合を促進するための前記薬剤を含む、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記第二硬化性材料が、光硬化性材料である、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記第二硬化性材料の硬化を促進するための前記薬剤が、光開始剤である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第二硬化性材料が、アクリル材料であるか、又はアクリル材料を含む、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記アクリル材料が、二官能及び/又は多官能アクリル材料を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記シアネートエステルの重合を促進するための前記薬剤が、前記第一硬化条件にさらすことにより活性化可能である、請求項1~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、前記層を第二硬化条件にさらし、それによって前記熱硬化性シアネートエステルの重合を実施することをさらに含み、前記第二硬化条件が、熱エネルギーを含み、前記シアネートエステルの重合を促進するための前記薬剤が、前記第二硬化条件にさらすことにより活性化可能である、請求項1~13のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記シアネートエステルの重合を促進するための前記薬剤が、前記第一硬化条件にさらすことの前に前記シアネートエステルの重合を促進することに対して不活性であるか、又は部分的に活性である、請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記方法が、前記層を第二硬化条件にさらし、それによって前記熱硬化性シアネートエステルの重合を実施することをさらに含み、前記第二硬化条件が、熱エネルギーを含み、前記シアネートエステルの重合を促進するための前記薬剤が、前記第二硬化条件にさらすことの前に前記シアネートエステルの重合を促進することに対して不活性であるか、又は部分的に活性である、請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも二つの造形用材料配合物が、前記シアネートエステルの重合を促進するための前記薬剤を活性化する薬剤をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記薬剤が、前記第一硬化条件にさらすことにより前記シアネートエステルの重合を促進するための前記薬剤を活性化する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも二つの造形用材料配合物が、前記シアネートエステルの重合を促進するための前記薬剤を活性化する薬剤をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記薬剤が、前記第二硬化条件にさらすことにより前記シアネートエステルの重合を促進するための前記薬剤を活性化する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記シアネートエステルの重合を促進するための前記薬剤が、求核基を含む、請求項1~21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記求核基が、チオールである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記求核基が、アミンである、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記アミンが、第一アミン、第二アミン、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記シアネートエステルの重合を促進するための前記薬剤が、芳香族アミンである、請求項24又は25に記載の方法。
【請求項27】
前記シアネートエステルの重合を促進するための前記薬剤が、芳香族第二アミンである、請求項1~26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記第二造形用材料配合物が、前記シアネートエステルの重合を促進する金属種をさらに含む、請求項1~27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記少なくとも二つの造形用材料配合物が、前記シアネートエステルと相互作用し、それによってコポリマーネットワークを形成することができる追加の硬化性材料をさらに含む、請求項1~28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記追加の硬化性材料が、前記第一硬化条件にさらすことにより前記シアネートエステルと相互作用することができる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記方法が、前記層を第二硬化条件にさらし、それによって前記熱硬化性シアネートエステルの重合を実施することをさらに含み、前記第二硬化条件が、熱エネルギーを含み、前記追加の硬化性材料が、前記第二硬化条件にさらすことにより前記シアネートエステルと相互作用することができる、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記追加の硬化性材料が、エポキシ含有硬化性材料であるか、又はエポキシ含有硬化性材料を含む、請求項29~31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記追加の硬化性材料が、室温で1000未満又は500未満のセンチポアズの粘度を具備する、請求項2932のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
前記層の各々における前記第一造形用材料配合物と前記第二造形用材料配合物の重量比が、50:50~70:30の範囲である、請求項1~33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
前記第一造形用材料配合物及び前記第二造形用材料配合物の吐出が、ボクセル化された態様で行なわれ、前記第一造形用材料配合物のボクセルが、前記第二造形用材料配合物のボクセルでインターレースされている、請求項1~34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
前記第一造形用材料配合物の前記ボクセルと前記第二造形用材料配合物の前記ボクセルの重量比が、50:50~70:30の範囲である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記第一造形用材料配合物が、前記第一硬化性材料及び光開始剤を含み、前記第二造形用材料配合物が、硬化したとき、少なくとも150℃のTgを具備する多官能アクリル材料、及び芳香族アミンを含む、請求項1~36のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
前記多官能アクリル材料の全量が、前記第一造形用材料配合物及び前記第二造形用材料配合物の全重量の20~40又は20~30又は25~30重量%の範囲である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記芳香族アミンの量が、前記第一造形用材料配合物及び前記第二造形用材料配合物の全重量の2~4重量%の範囲である、請求項37又は38に記載の方法。
【請求項40】
前記光開始剤の量が、前記第一造形用材料配合物及び前記第二造形用材料配合物の全重量の0.5~1.5重量%の範囲である、請求項3739のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
前記芳香族アミンが、芳香族第二アミンである、請求項3740のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
前記少なくとも二つの造形用材料配合物が、前記シアネートエステルと相互作用することができる追加の硬化性材料をさらに含む、請求項3741のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
前記第一造形用材料配合物が、前記追加の硬化性材料を欠いている、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記追加の硬化性材料が、第二造形用材料配合物中に含まれる、請求項42又は43に記載の方法。
【請求項45】
前記第一硬化性材料及び前記追加の硬化性材料(もし存在するなら)の全量が、前記少なくとも二つの造形用材料配合物の全重量の50~80又は60~80又は60~70重量%の範囲である、請求項3744のいずれかに記載の方法。
【請求項46】
前記複数の層を形成することが、第三造形用材料配合物を吐出することをさらに含み、前記吐出が、前記少なくとも二つの造形用材料配合物が内側領域を形成しかつ前記第三造形用材料配合物が前記内側領域の少なくとも一部を包囲する外側領域を形成するように構成される、請求項1~45のいずれかに記載の方法。
【請求項47】
前記第三造形用材料配合物が、前記第一硬化条件にさらすことにより硬化可能である第三硬化性材料を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
三次元物体の付加製造に使用可能な配合系を含むキットであって、物体が、その少なくとも一部において、シアネートエステル含有ポリマーネットワークを含み、配合系が、熱硬化性シアネートエステルである第一硬化性材料、及び前記第一硬化性材料とは異なる第二硬化性材料を含み、前記配合系が、少なくとも二つの造形用材料配合物を含み、前記少なくとも二つの造形用材料配合物のうちの第一造形用材料配合物が、前記第一硬化性材料、及び前記第二硬化性材料の硬化を促進するための薬剤を含み、前記少なくとも二つの造形用材料配合物のうちの第二造形用材料配合物が、前記シアネートエステルの重合を促進するための活性剤を含みかつ前記第一硬化性材料を欠いており、
前記第一造形用材料配合物及び前記第二造形用材料配合物が、キット内で別個に包装されており、
前記第二硬化性材料が、硬化したとき、100℃より高い又は150℃より高いTgを具備する、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2018年9月28日出願の米国仮特許出願No.62/738084の優先権の利益を主張し、その内容は、参考としてその全体をここに組み入れる。
【0002】
発明の分野
本発明は、その一部の実施形態では、三次元印刷に関し、特に限定されないが、熱硬化性シアネートエステルを使用する三次元インクジェット印刷の方法、及びこれらの方法によって得られる物体に関する。
【背景技術】
【0003】
三次元(3D)インクジェット印刷は、予め決められた画像データに従って、構築材料配合物を、インクジェット印刷ヘッドノズルを介して連続層で印刷トレイの上に選択的に噴射することによって三次元物体を構築するための公知の方法である。3Dインクジェット印刷は、構築材料配合物の層ごとのインクジェット堆積によって実施される。従って、一種以上の配合物は、一組のノズルを有する吐出ヘッドから小滴で吐出され、受容媒体上に層を形成する。吐出された層の各々は、次いで、好適な方法を使用して独立して硬化又は凝固され、構築材料からなる凝固又は部分的に凝固した層を形成することができる。
【0004】
構築材料配合物は、最初は液体であり、続いて固化(硬化又は凝固)されて必要な層形状を形成することができる。固化は、例えば構築材料を硬化条件に、例えば熱エネルギーのような硬化エネルギーにさらすことによって(例えば構築材料を加熱することによって)、もしくは放射線照射(例えばUV又は他の光照射)にさらすことによって実施されることができ、又は化学活性化に、例えば硬化を促進する化学試薬(例えば酸又は塩基活性化)にさらすことによって活性化されることができる。
【0005】
それゆえ、3Dインクジェット印刷法で使用される配合物は、工程条件に合致するように、即ち噴射時に好適な速度を示し(従って噴射条件下で硬化可能でない)、一般的には刺激(硬化条件)にさらされると受容媒体上で迅速(例えばミリ秒又は秒内)に硬化又は凝固するように選択される。構築材料は、造形用材料及び支持材料を含むことができ、それらは、物体、及び任意選択的に物体が構築されるときに物体を支持する一時的な支持構造を形成する。造形用材料(それは、一種以上の材料を含むことができる)は、希望の物体を作り上げ、支持材料(それは、一種以上の材料を含むことができる)は、造形用材料要素と共に又は造形用材料なしで使用され、構築時に物体の特定の領域のための支持構造を与え、例えば物体が湾曲した幾何学形状、負角、間隙などの突き出ている特徴又は形状を含む場合には、連続する物体層の適切な垂直配置を確実にする。
【0006】
造形用材料及び支持材料はともに、それらが吐出される作業温度で液体であり、続いて材料の硬化に影響する条件にさらすと固化され、必要な層形状を形成する配合物から形成されることが好ましい。印刷完了後、支持構造は、存在するなら除去され、製作された3D物体の最終形状を出現する。
【0007】
3Dインクジェット印刷システムで使用される一般的に利用可能な印刷ヘッドのほとんどと適合するために、硬化されていない構築材料は、次の特徴を具備するべきである:作業(例えば噴射)温度での相対的に低い粘度(例えば50cps以下又は35cps以下、好ましくは8~25cpsのブルックフィールド粘度);約25~約55ダイン/cm、好ましくは約25~約40ダイン/cmの表面張力;ニュートン液体挙動、及び1分以下、好ましくは20秒以下の硬化条件にさらすと噴射された層のすぐの凝固を可能にするための選択された硬化条件への高い反応性。
【0008】
最終物体を形成する硬化された造形用材料は、その使用可能性を確保するために室温より高い加熱撓み温度(HDT)を示すことが好ましい。望ましくは、硬化された造形用材料は、少なくとも35℃のHDTを示すべきである。物体が様々な条件で安定であるためには、より高いHDTが望ましい。ほとんどの場合において、相対的に高いアイゾッドノッチ付き衝撃強度(例えば50J/mより大きいか又は60J/mより大きい値)を示すことが望ましい。
【0009】
様々な三次インクジェット元印刷技術が存在し、例えば米国特許第6,259,962号、第6,569,373号、第6,658,314号、第6,850,334号、第7,183,335号、第7,209,797号、第7,225,045号、第7,300,619号、第7,479,510号、第7,500,846号、第7,962,237号及び第9,031,680号に開示される。それらは、出願人が全て同じであり、その内容は、参考としてここに組み入れられる。
【0010】
三次元インクジェット印刷を含む幾つかの付加製造(AM)プロセスは、一種より多い造形用材料を使用する物体の付加形成を可能にする(「複数材料(multi-material)」AMプロセスとしても言及される)。例えば、本出願人の公開No.2010/0191360を有する米国特許出願は、複数の印刷ヘッドを有する固体自由形状製作装置、複数の構築材料を製作装置に供給するように構成された構築材料供給装置、及び製作装置及び供給装置を制御するために構成された制御ユニットを含むシステムを開示する。システムは、複数の操作モードを持つ。一つのモードでは、全ての印刷ヘッドが製作装置の単一構築走査サイクル時に作動する。別のモードでは、印刷ヘッドの一つ以上が単一構築走査サイクル又はその一部の時に作動しない。
【0011】
Polyjet(商品名)(Stratasys Ltd.、イスラエル)のような3Dインクジェット印刷プロセスでは、構築材料は、一つ以上の印刷ヘッドから選択的に噴射され、ソフトウェアファイルによって規定されるような予め決定された構成に従って連続層で製作トレイの上に堆積される。
【0012】
本出願人による米国特許第9227365号は、複数の層、及び芯領域を構成する層状の芯、及び外被領域を構成する層状の鞘から構成される、鞘で覆われた物体の固体自由形状製作のための方法及びシステムを開示する。
【0013】
Polyjet(商品名)技術は、各ボクセル(ボリュームピクセル)の位置及び組成に対する制御を可能にし、それは、複数材料構造の巨大なデザインバーサティリティ及びデジタルプログラミングを与える。Polyjet(商品名)技術の他の利点は、14μm層高さまでの極めて高い印刷解像度、及び単一の物体において、同時に複数材料を印刷する能力である。この複数材料3D印刷プロセスは、異なる剛性、性能、カラー、又は透明性を有する要素からなる複合部分及び構造の製作のために役立つことが多い。ボクセルレベルでプログラムされた新しい範囲の材料は、少数(2,3)の出発材料のみを使用して、Polyjet(商品名)印刷プロセスによって作られることができる。
【0014】
本出願人による国際PCT特許出願公開No.WO2013/128452は、カチオン重合可能な系及び/又はラジカル重合可能な系の二成分の別個の噴射を含む複数材料のアプローチを開示し、それらの系は、印刷トレイ上で混合し、それは、噴射前に二成分の予備混合と同様の重合反応をもたらす一方で、インクジェットヘッドノズルプレート上のそれらの早期の重合を防止する。
【0015】
今日まで、ほとんどの3Dインクジェット法は、重合可能な材料、及び光誘発硬化、一般的にはUV硬化を利用してきており、従ってこの技術で利用されることができる材料や化学反応の選択が狭かった。例えば、「PolyJet」技術(Stratasys Ltd.,イスラエル)に現在使用される例示的な光重合可能な構築材料は、アクリルベースの材料である。
【0016】
現在のPolyjet(商品名)技術は、例えば剛くかつ硬い材料(例えばVero(商品名)ファミリー材料として販売される硬化性配合物)から柔軟で可撓性の材料(例えばTango(商品名)及びAgilus(商品名)ファミリーとして販売される硬化性配合物)までの範囲の種々の特性を具備するポリマー材料を与える硬化性(例えば重合性)材料の範囲を使用する能力を与え、それは、二つの出発材料(例えばRGD515&RGD535/531)から作られた複数材料を含み、エンジニアリングプラスチックの特性をシミュレートするデジタルABSを使用して作られた物体も含む。現在実践されるPolyjet材料のほとんどは、放射線、ほとんどはUV放射線及び/又は熱に露出すると硬化又は凝固する硬化性材料であり、ほとんどの実践されている材料は、アクリルベースの材料である。
【0017】
アクリルベースの材料は、一般的に最適な熱安定性(耐熱変形性)を持たない。例えば、硬化したとき、200℃を越えるTgを具備する、多官能アクリル材料のようなアクリルベースの材料は、印刷された物体のカール及び/又は変形をもたらすことが多い高い体積収縮を示す。
【0018】
硬化したときに体積収縮を示す硬化性材料は、例えばエポキシド、ポリウレタン、ポリアミド、ベンズオキサジン、及びシアネートエステル(CE)を含む。しかしながら、これらの材料のほとんどは、インクジェットの印刷ヘッドの作用温度でのそれを含む造形用材料配合物の高い粘度、不安定性、及び毒性のような技術的制限のためにPolyJet(商品名)法と適合しない。
【0019】
シアネートエステルは、高い熱安定性及び良好な機械特性を具備するポリマー材料を与えることが知られ、そして様々なグレートで入手可能であり、一部のシアネートエステルはまた、PolyJet(商品名)のシステム条件に合致する。しかしながら、シアネートエステルは、高温(例えば180℃より高い)での熱の付与でのみ硬化可能であり、遅い反応速度(PolyJet(商品名)材料を一般的に特徴づけるミリ秒スケールに対して分スケール)によってさらに特徴づけられ、従ってPolyJet(商品名)におけるそれらの使用は、制限されている。
【0020】
米国特許第9780440及び9873761号は、光硬化性、過酸化物硬化性、EB硬化性及び/又はカチオン硬化性であることができる硬化性成分、及び熱硬化性である別の硬化性の成分の二段階硬化によって形成される、付加製造に使用可能であり、かつシアネートエステルを含むことができる熱硬化性樹脂組成物を記載する。
【0021】
WO2017/040883はまた、光に露出し、次いで熱又はマイクロ波放射線に露出することによって硬化される二重硬化樹脂組成物、及びそれらの付加製造における使用を記載する。
【0022】
追加の背景技術は、WO2009/013751;WO2016/063282;WO2016/125170;WO2017/134672;WO2017/134673;WO2017/134674;WO2017/134676;WO2017/068590;WO2017/187434;WO2018/055521;及びWO2018/055522を含み、それらは全て、本出願人のものである。
【発明の概要】
【0023】
3Dインクジェット印刷システム及び方法の条件に合致しながら、高い熱安定性を示す硬化された材料を与える造形用材料配合物を使用して3Dインクジェット印刷を実施するための研究において、本発明者らは、シアネートエステル硬化性材料、及び熱硬化にさらされるとその重合を促進する活性剤から構成され、かつ希望の粘度、表面張力、及び3Dインクジェット印刷システムの他の条件、及び良好な印刷性を示し、高い熱安定性及び他の改良された機械特性を具備する物体を与える配合系を設計し、うまく実践した。新しく設計された配合系は、噴射されるときに相対的に安定しており(未硬化のままであり)、吐出されると部分硬化、及び得られた未加工体(green body)の追加の印刷後硬化を受ける。
【0024】
本発明の一部の実施形態の態様によれば、三次元インクジェット印刷によって三次元物体を製作する方法であって、物体が、その少なくとも一部において、シアネートエステル含有ポリマーネットワークを含み、方法が、物体の形状に対応する構成パターンで複数の層を逐次形成し、それによって三次元物体を製作することを含み、前記層の少なくとも一部の形成が、熱硬化性シアネートエステルである第一硬化性材料を含む第一造形用材料配合物、及び前記シアネートエステルの重合を促進するための活性剤を含みかつ前記第一硬化性材料を欠く第二造形用材料配合物を吐出することを含み、前記少なくとも二つの造形用材料配合物が、前記第一硬化性材料とは異なる第二硬化性材料、及び任意選択的に前記第二硬化性材料の硬化を促進するための薬剤をさらに含む、方法が提供される。
【0025】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部によれば、前記第一造形用材料配合物及び第二造形用材料配合物の各々の粘度が、68℃で50cps又は40cps又は30cpsを越えない。
【0026】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部によれば、前記方法は、前記第二硬化性材料の硬化を実施するための第一硬化条件に前記層の各々を露出することをさらに含む。
【0027】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部によれば、前記第一硬化条件が、熱エネルギーの付与を含まない。
【0028】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部によれば、前記第一硬化性材料及び前記第一硬化条件が、前記シアネートエステルの重合度が20%以下であるようなものである。
【0029】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部によれば、前記方法は、前記層を第二硬化条件に露出し、それによって前記熱硬化性シアネートエステルの重合を実施することをさらに含み、前記第二硬化条件が、熱エネルギーを含む。
【0030】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部によれば、前記層の前記少なくとも一部の形成が、
前記少なくとも二つの造形用材料配合物の前記吐出、及び前記第一硬化条件への前記層の各々の前記露出を繰り返すこと;及び前記第二硬化条件に前記複数の層をまとめて露出することを含む。
【0031】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部によれば、前記第二硬化条件が、前記層を少なくとも80℃の温度で少なくとも一時間の時間期間、加熱することを含む。
【0032】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部によれば、前記第一造形用材料配合物が、前記第一硬化性材料、及び前記第二硬化性材料の重合を促進するための前記薬剤を含む。
【0033】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部によれば、前記第二造形用材料配合物が、前記第二硬化性材料、及び前記シアネートエステルの重合を促進するための前記薬剤を含む。
【0034】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部によれば、前記第二硬化性材料が、光硬化性材料、好ましくはUV硬化性材料である。
【0035】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部によれば、前記第一硬化条件が、放射線照射、好ましくはUV放射線照射を含む。
【0036】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部によれば、前記第二硬化性材料の硬化を促進するための前記薬剤が、光開始剤である。
【0037】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部によれば、前記光硬化性材料が、硬化したとき、少なくとも150℃のTgを具備する。
【0038】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部によれば、前記第二硬化性材料が、アクリル材料であるか、又はアクリル材料を含む。
【0039】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部によれば、前記アクリル材料が、二官能及び/又は多官能アクリル材料を含む。
【0040】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部によれば、前記第二硬化性材料が、硬化したとき、100℃より高い又は150℃より高いTgを具備する。
【0041】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部によれば、前記シアネートエステルの重合を促進するための前記薬剤が、前記第一硬化条件及び/又は前記第二硬化条件への前記露出により活性化可能である。
【0042】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部によれば、前記シアネートエステルの重合を促進するための前記薬剤が、前記第一硬化条件及び/又は前記第二硬化条件への前記露出の前に前記シアネートエステルの重合を促進することに対して不活性であるか、又は部分的に活性である。
【0043】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部によれば、前記少なくとも二つの造形用材料配合物が、前記シアネートエステルの重合を促進するための前記薬剤を活性化する薬剤をさらに含む。
【0044】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部によれば、前記薬剤が、前記第一硬化条件及び/又は前記第二硬化条件への露出により前記シアネートエステルの重合を促進するための前記薬剤を活性化する。
【0045】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部によれば、前記シアネートエステルの重合を促進するための前記薬剤が、求核基を含む。
【0046】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部によれば、前記求核基が、チオールである。
【0047】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部によれば、前記求核基が、アミンである。
【0048】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部によれば、前記アミンが、第一アミン、第二アミン、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0049】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部によれば、前記シアネートエステルの重合を促進するための前記薬剤が、芳香族アミンである。
【0050】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部によれば、前記シアネートエステルの重合を促進するための前記薬剤が、芳香族第二アミンである。
【0051】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部によれば、前記第二造形用材料配合物が、前記シアネートエステルの重合を促進する金属種をさらに含む。
【0052】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部によれば、前記少なくとも二つの造形用材料配合物が、前記シアネートエステルと相互作用し、それによってコポリマーネットワークを形成することができる追加の硬化性材料をさらに含む。
【0053】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部によれば、前記追加の硬化性材料が、前記第一硬化条件及び/又は前記第二硬化条件への露出により前記シアネートエステルと相互作用することができる。
【0054】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部によれば、前記追加の硬化性材料が、エポキシ含有硬化性材料であるか、又はエポキシ含有硬化性材料を含む。
【0055】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部によれば、前記追加の硬化性材料が、室温で1000未満又は500未満のセンチポアズの粘度を具備する。
【0056】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部によれば、前記層の各々における前記第一造形用材料配合物と前記第二造形用材料配合物の重量比が、50:50~70:30の範囲である。
【0057】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部によれば、前記第一造形用材料配合物及び前記第二造形用材料配合物の吐出が、ボクセル化された態様で行なわれ、前記第一造形用材料配合物のボクセルが、前記第二造形用材料配合物のボクセルでインターレースされている。
【0058】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部によれば、前記第一造形用材料配合物の前記ボクセルと前記第二造形用材料配合物の前記ボクセルの重量比が、50:50~70:30の範囲である。
【0059】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部によれば、前記第一造形用材料配合物が、前記第一硬化性材料及び光開始剤を含み、前記第二造形用材料配合物が、硬化したとき、少なくとも150℃のTgを具備する多官能アクリル材料、及び芳香族アミンを含む。
【0060】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部によれば、前記多官能アクリル材料の全量が、前記第一造形用材料配合物及び前記第二造形用材料配合物の全重量の20~40又は20~30又は25~30重量%の範囲である。
【0061】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部によれば、前記芳香族アミンの量が、前記第一造形用材料配合物及び前記第二造形用材料配合物の全重量の2~4重量%の範囲である。
【0062】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部によれば、前記光開始剤の量が、前記第一造形用材料配合物及び前記第二造形用材料配合物の全重量の0.5~1.5重量%の範囲である。
【0063】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部によれば、前記芳香族アミンが、芳香族第二アミンである。
【0064】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部によれば、前記少なくとも二つの造形用材料配合物が、前記シアネートエステルと相互作用することができる追加の硬化性材料をさらに含む。
【0065】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部によれば、前記第一造形用材料配合物が、前記追加の硬化性材料を欠いている。
【0066】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部によれば、前記追加の硬化性材料が、第二造形用材料配合物中に含まれる。
【0067】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部によれば、前記第一硬化性材料及び前記追加の硬化性材料(もし存在するなら)の全量が、前記少なくとも二つの造形用材料配合物の全重量の50~80又は60~80又は60~70重量%の範囲である。
【0068】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部によれば、前記複数の層を形成することが、第三造形用材料配合物を吐出することをさらに含み、前記吐出が、前記少なくとも二つの造形用材料配合物が内側領域を形成しかつ前記第三造形用材料配合物が前記内側領域の少なくとも一部を包囲する外側領域を形成するように構成される。
【0069】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部によれば、前記第三造形用材料配合物が、前記第一硬化条件への露出により硬化可能である第三硬化性材料を含む。
【0070】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部によれば、複数の層を形成することは、支持体材料配合物を吐出することをさらに含む。
【0071】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部によれば、前記方法は、支持体材料配合物から形成された(固化、凝固)支持体材料を除去することをさらに含む。
【0072】
本発明の一部の実施形態の態様によれば、本明細書に記載される方法によってそれぞれの実施形態のいずれか及びそれらのいずれかの組み合わせにおいて得られる三次元物体が提供される。
【0073】
本発明の一部の実施形態の態様によれば、三次元物体の付加製造に使用可能な配合系であて、物体が、その少なくとも一部において、シアネートエステル含有ポリマーネットワークを含み、配合系が、熱硬化性シアネートエステルである第一硬化性材料を含む第一造形用材料配合物、及び前記シアネートエステルの重合を促進するための活性剤を含みかつ前記第一硬化性材料を欠く第二造形用材料配合物を含み、配合系が、前記第一硬化性材料とは異なる第二硬化性材料、及び任意選択的に前記第二硬化性材料の硬化を促進するための薬剤をさらに含む、配合系が提供される。
【0074】
本発明の一部の実施形態の態様によれば、前記第一造形用材料配合物及び前記第二造形用材料配合物が、キット内で別個に包装されている、それぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載される配合系を含むキットが提供される。
【0075】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的用語および/または科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載される方法および材料と類似または同等である方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、例示的な方法および/または材料が下記に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【0076】
本発明の実施形態の方法および/またはシステムを実行することは、選択されたタスクを、手動操作で、自動的にまたはそれらを組み合わせて実行または完了することを含んでいる。さらに、本発明の方法および/またはシステムの実施形態の実際の機器や装置によって、いくつもの選択されたステップを、ハードウェア、ソフトウェア、またはファームウェア、あるいはオペレーティングシステムを用いるそれらの組合せによって実行できる。
【0077】
例えば、本発明の実施形態による選択されたタスクを実行するためのハードウェアは、チップまたは回路として実施されることができる。ソフトウェアとして、本発明の実施形態により選択されたタスクは、コンピューターが適切なオペレーティングシステムを使って実行する複数のソフトウェアの命令のようなソフトウェアとして実施されることができる。本発明の例示的な実施形態において、本明細書に記載される方法および/またはシステムの例示的な実施形態による1つ以上のタスクは、データプロセッサ、例えば複数の命令を実行する計算プラットフォームで実行される。任意選択的に、データプロセッサは、命令および/またはデータを格納するための揮発性メモリ、および/または、命令および/またはデータを格納するための不揮発性記憶装置(例えば、磁気ハードディスク、および/または取り外し可能な記録媒体)を含む。任意選択的に、ネットワーク接続もさらに提供される。ディスプレイおよび/またはユーザ入力装置(例えば、キーボードまたはマウス)も、任意選択的にさらに提供される。
【図面の簡単な説明】
【0078】
本明細書では本発明のいくつかの実施形態を単に例示し添付の図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の実施形態を例示考察することだけを目的としていることを強調するものである。この点について、図面について行う説明によって、本発明の実施形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
【0079】
図1A図1Aは、本発明の一部の実施形態による付加製造システムの概略図である。
図1B-1C】図1B-1Cは、本発明の一部の実施形態による付加製造システムの概略図である。
図1D図1Dは、本発明の一部の実施形態による付加製造システムの概略図である。
【0080】
図2A-2C】図2A-2Cは、本発明の一部の実施形態による印刷ヘッドの概略図である。
【0081】
図3A-3B】図3A及び3Bは、本発明の一部の実施形態による座標変換を実証する概略図である。
【0082】
図4図4は、本発明の一部の実施形態による物体の3Dインクジェット印刷の例示的方法を与える簡略フローチャートである。
【0083】
図5A-5B】図5A及び5Bは、「ドロップオンドロップ」印刷プロトコルが使用される本発明の実施形態におけるビットマップの概略図を与える。第一組成物の堆積のために好適なビットマップは、図5Aに示され、第二組成物の堆積のために好適なビットマップは、図5Bに示されている。両組成物の小滴が同じ又はほぼ同じ重量を有するとき、ビットマップは、50:50(又は1:1)w/w比のために有用である。白いボックスは、空白位置を表わし、ドットボックスは、第一組成物の小滴を表わし、波線ボックスは、第二組成物の小滴を表わす。各パターン化(波線/ドット)ボックスは、一つの層中に一つの画素(例えば一つの組成物小滴)を表わす。両組成物は、印刷ヘッドの移動時に、同じ位置に、しかし異なる時間に堆積されることができる。
【0084】
図6A-6B】図6A及び6Bは、「サイドバイサイド」印刷プロトコルが使用される本発明の実施形態におけるビットマップの概略図を与える。第一組成物の堆積のために好適なビットマップは、図6Aに示され、第二組成物の堆積のために好適なビットマップは、図6Bに示されている。両組成物の小滴が同じ又はほぼ同じ重量を有するとき、ビットマップは、50:50(又は1:1)w/w比のために有用である。白いボックスは、空白位置を表わし、ドットボックスは、第一組成物の小滴を表わし、波線ボックスは、第二組成物の小滴を表わす。各パターン化(波線/ドット)ボックスは、一つの画素(例えば一つの組成物小滴)を表わす。第一組成物の小滴(ドットボックス)は、第二組成物の小滴に隣接して堆積される。
【0085】
図7図7は、本発明の一部の実施形態による例示的な方法の概略図を示す。
【0086】
図8図8は、本発明の一部の実施形態による例示的な配合系、及び放射線に露出した時のその成分の相互作用の概略図を示す。
【0087】
図9図9は、本発明の例示的な実施形態による配合系を吐出し、吐出された層の各々を放射線に露出して未加工体を形成し、未加工体を後硬化に露出することで実施される例示的な化学反応を示す。
【0088】
図10図10(背景技術)は、Bauer and Bauer,Microsystem Technologies 8(2002)58-62からとったものであり、異なる触媒及びコモノマーを有するシアネートエステルの混合物のDSCサーモグラムを示す。
【0089】
図11A-11B】図11A-11Bは、本発明の一部の実施形態による第三配合物で形成された外殻によって包囲された本発明の一部の実施形態による配合系で満たされた芯で製作された物体の横断面図(図11A)、及び物体の単一層の平面図(図11B)の簡略概略図であり、ともに本発明の一部の例示的な実施形態に従ったものである。
【0090】
図12図12は、本発明の一部の実施形態による物体の3Dインクジェット印刷の例示的な方法の簡略フローチャートであり、そこでは本実施形態による配合系から作られた芯は、本発明の一部の実施形態による第三配合物から作られた外殻によって包囲されている。
【0091】
図13図13は、図12に示された方法を実施するための例示的なインクジェット印刷システムの簡略ブロック図である。
【0092】
図14図14は、本発明の一部の実施形態に従って印刷された例示的なカール形成バーを示す。
【0093】
図15図15は、本発明の一部の実施形態に従って印刷された例示的な物体を示す。
【0094】
図16図16は、65℃で維持されるときの本実施形態の一部による例示的な第二配合物の粘度における変化がないことを示すグラフである。
【0095】
図17図17は、様々な温度で維持されるとき、本発明の一部の実施形態による配合系の粘度の経時的な変化を示す比較プロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0096】
本発明は、その一部の実施形態では、三次元印刷に関し、特に限定されないが、熱硬化性シアネートエステルを使用する三次元インクジェット印刷の方法、及びこれらの方法によって得られる物体に関する。
【0097】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳しく説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明に示されるか、および/または図面および/または実施例において例示される構成要素および/または方法の組み立ておよび構成の細部に必ずしも限定されないことを理解しなければならない。本発明は、他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実施または実行されることが可能である。
【0098】
上記のように、シアネートエステルは、高い熱安定性及び良好な機械特性を具備するポリマー材料を与えることが知られ、様々なグレードで入手可能である。しかしながら、PolyJet(商品名)のような3Dインクジェット印刷にシアネートエステルを含有する配合物を使用することは制限されている。なぜならかかる配合物は、一般的にインクジェット印刷ヘッドの作用温度における不安定性及び/又は高い粘度によって特徴づけられ、高温(例えば180℃超)での熱の付与によってのみ硬化可能であり、さらに遅い硬化反応速度(PolyJet(商品名)材料を一般に特徴づけるミリ秒スケールに対して分スケール)によって特徴づけられるからである。
【0099】
高い熱安定性及び良好な機械特性を具備するポリマー材料を与える造形用材料配合物に対する研究において、本発明者らは、3Dインクジェット印刷の条件に合致しながら硬化性材料としてシアネートエステルを使用することを可能にする配合系を設計しかつうまく実践した。
【0100】
それゆえ、本発明の実施形態は、3Dインクジェット印刷のような付加製造に使用可能である新規な配合系、これらの配合系を含むキット、これらの配合系を利用する付加製造、及びそれによって得られる3D物体に関する。
【0101】
本明細書の全体を通して、用語「物体」は、付加製造の最終生成物を記載する。この用語は、支持材料が構築材料の一部として使用されたなら、支持材料の除去後で、かつ全ての造形用材料が硬化された後の、本明細書に記載されたような方法によって得られた生成物を示す。「物体」は、それゆえ硬化(例えば固化)された造形用材料から本質的になる(例えば少なくとも90重量%又は95重量%からなる)。
【0102】
本明細書の全体を通して使用される用語「物体」は、物品全体又は物品の一部を示す。
【0103】
本実施形態による物体は、その少なくとも一部又は一部分がポリシアヌレート(重合化(シクロ三量化)シアネートエステル)を含むようなものである。物体は、その複数の部又は部分が、任意選択的にかつ好ましくは別の重合化又は硬化材料と組み合わせて、ポリシアヌレート材料から作られるようなものであることができる。
【0104】
本明細書の全体を通して、表現「構築材料配合物」、「未硬化構築材料」、「未硬化構築材料配合物」、「構築材料」及び他の変形は、それゆえ集合して、本明細書に記載されるように、層を連続して形成するために吐出される材料を記載する。この表現は、物体、即ち一つ以上の未硬化造形用材料配合物を形成するように吐出された未硬化材料、及び支持体、即ち未硬化支持材料配合物を形成するように吐出された未硬化材料を包含する。
【0105】
表現「硬化(した又はされた)造形用材料」、「固化(した又はされた)造形用材料」、「凝固(した又はされた)造形用材料配合物」又は「硬化/固化/凝固(した又はされた)造形用材料配合物」は、構築材料が(支持材料配合物ではなく)造形用材料配合物のみからなる硬化構築材料として見なすことができる。即ち、この表現は、構築材料の一部を示し、それは、最終物体を与えるために使用される。
【0106】
本明細書の全体を通して、表現「造形用材料配合物」(それはまた、交換可能に、「造形用配合物」、「造形用材料」、「造形材料」、又は単に「配合物」として示される)は、本明細書に記載されるように、物体を形成するように吐出される未硬化の構築材料の一部又は全てを記載する。造形用材料配合物は、(特に他で示さない限り)未硬化の造形用配合物であり、それは、硬化を行なう硬化条件にさらすと物体又はその一部を形成することができる。
【0107】
本発明の一部の実施形態では、造形用材料配合物は、三次元インクジェット印刷に使用するために配合され、それ自身で、即ちいかなる他の物質と混合したり又は組み合わせたりする必要なしで三次元物体を形成することができる。
【0108】
未硬化の構築材料は、一つ又はそれより多い種類の造形用材料配合物を含むことができ、硬化されると物体の異なる部分が異なる硬化された造形用材料配合物から作られ、従って異なる硬化(例えば固化)された造形用材料又は硬化(例えば固化)された造形用材料の異なる混合物から作られるように吐出されることができる。
【0109】
最終の三次元物体は、造形用材料又は造形用材料の組み合わせ又は造形用材料と支持体材料の組み合わせ又はそれらの変性物(例えば硬化後)から作られる。全てのこれらの操作は、固体自由造形製作の当業者に良く知られている。
【0110】
本発明の一部の例示的実施形態では、物体は、二種以上の異なる造形用材料配合物を含む構築材料を吐出することによって製造され、各造形用材料配合物は、異なる吐出ヘッド及び/又はインクジェット印刷装置のノズルからのものである。造形用材料配合物は、任意選択的にかつ好ましくは、印刷ヘッドの同じ通過中に層で吐出される。層内の造形用材料配合物及び/又は配合物の組み合わせは、物体の希望の特性に従って、及び本明細書に記載される方法に従って選択される。
【0111】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部によれば、造形用材料配合物は、一種以上の硬化性材料を含む。
【0112】
本明細書の全体を通して、「硬化可能な(硬化性)材料」又は「凝固可能な(凝固性)材料」は、本明細書に記載されるように硬化条件(例えば硬化エネルギー)にさらされるとき、凝固又は固化して本明細書に規定されるような硬化された造形用材料を形成する化合物(例えばモノマー又はオリゴマー又はポリマー化合物)である。硬化性材料は、一般的に重合可能な材料であり、それは、好適なエネルギー源にさらされるときに重合及び/又は架橋を受ける。硬化性材料又は凝固性材料は、一般的にそれが硬化条件にさらされるときにその粘度が少なくとも一桁の大きさだけ増加するようなものである。
【0113】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部において、硬化性材料は、モノマー、オリゴマー、又は短鎖ポリマーであることができ、各々は、本明細書に記載されるように重合可能である。
【0114】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部において、硬化性材料が硬化エネルギー(例えば放射線)にさらされるとき、それは、鎖延長及び架橋のいずれか一つ又はそれらの組み合わせによって重合する。シアネートエステルの場合には、重合は、熱エネルギーにさらすと実行され、例えば図8に示すように、ポリシアヌレートを形成するためのシクロ三量化を含む。
【0115】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部において、硬化性材料は、重合反応が起こる硬化条件にさらされるとき、重合反応でポリマー造形用材料を形成することができるモノマー又はモノマーの混合物である。かかる硬化性材料はまた、本明細書においてモノマー硬化性材料として言及される。
【0116】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部において、硬化性材料は、重合反応が起こる硬化条件にさらされるとき、重合反応でポリマー造形用材料を形成することができるオリゴマー又はオリゴマーの混合物である。かかる硬化性材料はまた、本明細書においてオリゴマー硬化性材料として言及される。
【0117】
本明細書に記載される実施形態のいずれかの一部において、硬化性材料は、モノマーであるか又はオリゴマーであるかにかかわらず、単官能硬化性材料又は多官能硬化性材料であることができる。
【0118】
本明細書では、単官能硬化性材料は、硬化条件(例えば硬化エネルギー)にさらされるときに重合を受けることができる一つの官能基を含む。
【0119】
多官能硬化性材料は、硬化条件にさらされると重合を受けることができる、2つ又はそれより多い、例えば2つ、3つ、4つ又はそれより多い官能基を含む。多官能硬化性材料は、例えば二官能、三官能、又は四官能硬化性材料であることができ、それらは、それぞれ重合を受けることができる、2つ、3つ又は4つの基を含む。多官能硬化性材料における2つ以上の官能基は、一般的に本明細書に規定されるように、連結部分によって互いに連結される。連結部分がオリゴマー部分であるとき、多官能基は、オリゴマー多官能硬化性材料である。
【0120】
付加製造及び本実施形態の一部に一般に使用される例示的な硬化性材料は、アクリル材料である。
【0121】
本明細書の全体を通して、用語「アクリル材料」は、一つ以上のアクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、及び/又はメタアクリルアミド基を持つ材料をまとめて包含する。
【0122】
本明細書に記載される造形用材料配合物に含まれる硬化性材料は、硬化されたとき、各材料によって与えられる特性によって規定されることができる。即ち、材料は、硬化条件にさらすと(例えば重合すると)形成される材料の特性によって規定されることができる。これらの特性(例えばTg,HDT)は、記載された硬化性材料のいずれかを単独で硬化すると形成されるポリマー材料のものである。
【0123】
本明細書に使用される用語「硬化」又は「固化」は、配合物が硬化されるプロセスを記載する。この用語は、(硬化前に存在するポリマー、又はモノマーもしくはオリゴマーの重合で形成されたポリマー材料のいずれかの)ポリマー鎖の架橋、及び/又はモノマー及び/又はオリゴマーの重合を包含する。それゆえ、硬化反応又は固化の生成物は、一般にポリマー材料であり、一部の場合には架橋されたポリマー材料である。
【0124】
本明細書に使用される部分的な硬化又は固化は、完了(即ち、例えば以下で規定されるような硬化の程度まで実行されるプロセス)に到達しない硬化又は固化プロセスを包含する。その硬化の程度は、100%未満又は90%未満又は80%未満又はそれより小さい値未満である。部分的に硬化された材料は、液体-ゼリー状態であることができる。本明細書に使用される完全な硬化又は固化は、例えば凝固された材料をもたらす硬化又は固化プロセスで少なくとも80%、少なくとも90%又は約100%の硬化又は固化の程度である。
【0125】
本明細書に使用される「硬化の程度(硬化度)」は、硬化が実行される程度、即ち硬化性材料が重合及び/又は架橋を受けた程度を表わす。硬化性材料が重合可能な材料であるとき、この用語は、硬化条件にさらすと、重合及び/又は架橋を受けた配合物中の硬化性材料のmol%、及び/又は重合及び/又は架橋が実行された程度、例えば鎖延長及び/又は架橋の程度を包含する。硬化の程度(例えば重合度)を決定することは、当業者に公知の方法によって実施されることができる。
【0126】
本明細書に使用される「未加工物体(green body object)」は、部分的に硬化又は凝固されたにすぎない少なくとも一部を持ち、完全に凝固された物体を得るために追加の硬化を要求する、付加製造(AM)プロセスによって形成された物体である。
【0127】
本明細書において、「硬化に影響する条件」又は「硬化を誘導する条件」は、本明細書において「硬化条件」又は「硬化誘導条件」と交換可能に言及され、それは、硬化性材料を含有する配合物に付与されるとき、モノマー及び/又はオリゴマーの重合、及び/又は重合鎖の架橋を誘導する条件を記載する。かかる条件は、例えば本明細書に後述されるような硬化エネルギーの硬化性材料への付与、及び/又は触媒、共触媒、及び活性剤のような化学反応成分と硬化性材料の接触を含むことができる。
【0128】
硬化を誘導する条件が硬化エネルギーの付与を含むとき、「硬化条件にさらす(露出する)」は、吐出された層の各々が硬化エネルギーに露出され、その露出が一般に硬化エネルギーを吐出された層に付与することによって実施されることを意味する。
【0129】
「硬化エネルギー」は、一般に放射線の付与又は熱の付与を含む。
【0130】
放射線は、硬化される材料に依存して、電磁放射線(例えば紫外又は可視光)、又は電子ビーム線、又は超音波放射線又は無線周波数(RF)放射線(高周波及びマイクロ波を含む)であることができる。
【0131】
放射線の付与(放射線照射)は、好適な放射線源によって実行される。例えば、紫外又は可視又は赤外又はキセノンランプが、本明細書に記載されるように使用されることができる。
【0132】
放射線への露出で硬化を受ける硬化性材料又は系は、「光重合可能(光重合性)」又は「光活性可能」又は「光硬化可能(光硬化性)」として本明細書において交換可能に示される。
【0133】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、硬化性材料は、本明細書に記載されるように、放射線への露出で重合するか又は架橋を受ける光重合性材料であり、一部の実施形態では、硬化性材料は、本明細書に記載されるように、UV-vis放射線への露出で重合するか又は架橋を受けるUV硬化性材料である。
【0134】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるような硬化性材料は、光誘導ラジカル重合によって重合する重合可能な材料を含む。
【0135】
硬化エネルギーが熱を含むとき、硬化はまた、本明細書及び業界では「熱硬化」として示され、熱エネルギーの付与を含む。熱エネルギーの付与は、例えば本明細書に記載されるように、層が上に吐出された受容媒体、又は受容媒体が入ったチャンバーを加熱することによって実施されることができる。一部の実施形態では、加熱は、抵抗ヒーターを使用して実施される。
【0136】
一部の実施形態では、加熱は、熱誘導放射線によって吐出された層を照射することによって実施される。かかる照射は、例えば吐出された層の上に放射線を放出するように操作されたIRランプ又はキセノンランプによって実施されることができる。
【0137】
熱にさらすと硬化を受ける硬化性材料又は系は、本明細書では「熱硬化性」又は「熱活性可能」又は「熱重合可能」として言及される。
【0138】
一部の実施形態では、本明細書に記載される硬化性材料は、熱誘導ラジカル重合によって重合する重合可能な材料を含む。
【0139】
一部の硬化性材料は、放射線及び/又は熱にさらすと硬化可能であり、従って熱及び/又は光誘導硬化によって固化することができる。
【0140】
本発明の一部の実施形態の態様によれば、好ましくは3Dインクジェット印刷による三次元物体の付加製造の方法であって、前記物体が、その少なくとも一部において(以下にさらに詳細に記載される)、本明細書に規定されるように、ポリシアヌレート材料を含む、方法が提供される。
【0141】
この方法は、一般に、物体の形状に対応する構成パターンで複数の層を逐次形成し、例えばかくして前記層の少なくとも二つ、三つの各々、又は前記層の各々の形成は、一種以上の造形用材料配合物を含む構築材料(未硬化)を吐出することを含み;及び吐出された造形用材料を硬化条件(例えば硬化エネルギー)にさらし、それによって本明細書に記載されるように硬化した造形用材料を形成することによって実施される。
【0142】
本発明の一部の実施形態による、物体112のAMに適したシステム110の代表的かつ非限定的実施例を、図1Aに示す。システム110は、複数の吐出(例えば印刷)ヘッドを含む吐出ユニット16を有する付加製造装置114を備える。各ヘッドは、下述する図2A図2Cに示すように、液状構築材料配合物124が吐出される1つ以上のノズル122のアレイを含むことが好ましい。
【0143】
装置114は、三次元印刷装置であることが好ましいが、必須ではない。その場合、吐出ヘッドは、印刷ヘッドであり、構築材料配合物は、インクジェット技術によって吐出される。用途によっては、付加製造装置は、三次元印刷技術を採用する必要がない場合があるので、これは必ずしも該当しない。本発明の様々な例示的実施形態に従って構想される付加製造装置の代表的実施例は、熱溶解積層造形装置および熱溶解材料配合物堆積装置を含むが、それらに限定されない。
【0144】
各吐出ヘッドは、任意選択的にかつ好ましくは一つ以上の構築材料配合物リザーバを介して供給され、リザーバは、任意選択的に、温度制御ユニット(例えば温度センサおよび/または加熱装置)および材料レベルセンサを含んでもよい。構築材料配合物を吐出するために、例えば圧電式インクジェット印刷技術の場合のように、吐出(例えば印刷)ヘッドノズルを介して材料配合物の液滴が選択的に堆積されるように、電圧信号が吐出ヘッドに印加される。各ヘッドの吐出率は、ノズルの個数、ノズルの種類、および印加電圧の信号レート(周波数)に依存する。そのような吐出ヘッドは、立体自由造形の当業者には知られている。
【0145】
吐出ノズルまたはノズルアレイの総数は、吐出ノズルの半数が支持体材料配合物を吐出するように設計され、かつ吐出ノズルの半数が造形用材料配合物を吐出するように設計され、すなわち造形用材料配合物を噴出するノズルの個数が支持体材料配合物を噴出するノズルの個数と同数になるように、選択されることが好ましいが、必須ではない。図1Aの代表的実施例には4つの吐出ヘッド16a、16b、16c、および16dが示される。ヘッド16a、16b、16c、および16dの各々がノズルアレイを有する。この実施例では、ヘッド16aおよび16bは造形用材料配合物用に設計することができ、ヘッド16cおよび16dは支持体材料配合物用に設計することができる。こうして、ヘッド16aは第一造形用材料配合物を吐出することができ、ヘッド16bは第二造形用材料配合物を吐出することができ、ヘッド16cおよび16dは両方とも支持体材料配合物を吐出することができる。代替的実施形態では、例えばヘッド16cおよび16dは、支持体材料配合物を吐出するための2つのノズルアレイを有する単一のヘッドに組み合わされてよい。
【0146】
それにも関わらず、それは本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、造形用材料配合物吐出ヘッド(造形用ヘッド)の個数および支持体材料配合物吐出ヘッド(支持体用ヘッド)の個数は異なってもよいことを理解されたい。一般的に、それぞれのアレイにおいて、造形用材料配合物を吐出するノズルのアレイの個数、支持体材料配合物を吐出するノズルのアレイの個数は、支持体材料配合物の最大吐出率と造形用材料配合物の最大吐出率との間に所定の比率αがもたらされるように選択される。所定の比率αの値は、形成される各層における造形用材料配合物の高さが支持体材料配合物の高さに等しいことを確実にするように選択されることが好ましい。αの典型値は約0.6~約1.5である。
【0147】
例えばα=1の場合、全てのノズルのアレイが作動しているときに、支持体材料配合物の総吐出率は、造形用材料配合物の総吐出率と略同一である。
【0148】
好ましい実施形態では、ノズルp個のアレイm個を各々有する造形用ヘッドM個、およびノズルq個のアレイs個を各々有する支持体用ヘッドS個が存在しうるので、M×m×p=S×s×qとなる。M×m個の造形用アレイおよびS×s個の支持体用アレイの各々は、別個の物理ユニットとして製造することができ、それをアレイ群に組み立てたり、そこから分解したりすることができる。この実施形態では、そのようなアレイの各々は、任意選択的にかつ好ましくは、それ自体の温度制御ユニットおよび材料配合物レベルセンサを含み、かつその動作のために個々に制御された電圧を受け取る。
【0149】
装置114は、凝固装置324をさらに含むことができ、それは、堆積された材料配合物を硬化させる光、熱などを放出するように構成された任意の装置を含むことができる。例えば凝固装置324は、1つ以上の放射源を含むことができ、それは、使用される造形用材料配合物に応じて、例えば紫外線もしくは可視光もしくは赤外線ランプ、または他の電磁放射源、または電子ビーム源とすることができる。本発明の一部の実施形態では、凝固装置324は、造形用材料配合物を硬化または凝固させるように働く。
【0150】
本発明の一部の実施形態では、装置114は、一つ以上のファンなどの冷却システム134を含む。
【0151】
吐出ヘッドおよび放射源は、作業面として働くトレイ360上を往復運動するように動作することが好ましいフレームまたはブロック128に取り付けられることが好ましい。本発明の一部の実施形態では、放射源は、吐出ヘッドによって吐出されたばかりの材料配合物を少なくとも部分的に硬化または凝固するために、放射源が吐出ヘッドの後に追従するようにブロックに取り付けられる。トレイ360は水平に配置される。一般的な取決めに従って、X‐Y‐Zデカルト座標系はX‐Y面がトレイ360と平行になるように選択される。トレイ360は、垂直方向に(Z方向に沿って)、通常は下方に移動するように構成されることが好ましい。本発明の様々な例示的実施形態では、装置114は、1つ以上のレベリング装置132、例えばローラ326をさらに備える。レベリング装置326は、新たに形成された層の厚さを、その上に次の層が形成される前に矯正し、平準化し、かつ/または確立するように働く。レベリング装置326は、レベリング中に発生した余分な材料配合物を回収するために、廃棄物回収装置136を含むことが好ましい。廃棄物回収装置136は、廃棄物タンクまたは廃棄物カートリッジに材料配合物を送達する何らかの機構を含んでよい。
【0152】
使用中に、ユニット16の吐出ヘッドは、本書ではX方向と呼ぶ走査方向に移動し、それらがトレイ360上を通過する過程で所定の構成に構築材料配合物を選択的に吐出する。構築材料配合物は通常、1種類以上の支持体材料配合物および1種類以上の造形用材料配合物を含む。ユニット16の吐出ヘッドの通過に続いて、放射源126による造形用材料配合物の硬化が行われる。堆積されたばかりの層のためのヘッドの出発点に戻るヘッドの逆方向の通過中に、所定の構成に従って構築材料配合物の追加吐出が実行されてよい。吐出ヘッドの順方向または逆方向の通過中に、こうして形成された層は、レベリング装置の順方向および/または逆方向の移動中に好ましくは吐出ヘッドの経路に従うレベリング装置326によって矯正される。吐出ヘッドがX方向に沿ってそれらの出発点に戻ると、吐出ヘッドは、本書ではY方向と呼ぶ割出し方向に沿って別の位置に移動し、X方向に沿った往復運動によって同じ層を構築し続けてよい。代替的に、吐出ヘッドは、順方向および逆方向の移動の間に、または2回以上の順方向‐逆方向移動の後に、Y方向に移動してよい。単一の層を完成させるために吐出ヘッドによって実行される一連の走査は、本書で単一走査サイクルと呼ばれる。
【0153】
層が完成すると、次に印刷される層の所望の厚さに応じて、トレイ360は、Z方向に所定のZレベルまで下降する。この手順は、三次元物体112が層毎に形成されるように繰り返される。
【0154】
別の実施形態では、トレイ360は、層内で、ユニット16の吐出ヘッドの順方向および逆方向の通過の間に、Z方向に変位されてよい。そのようなZ変位は、レベリング装置を1方向に表面と接触させ、かつ他の方向の接触を防止するために実行される。
【0155】
システム110は、任意選択的にかつ好ましくは、構築材料配合物容器またはカートリッジを含みかつ複数の構築材料配合物を製造装置114に供給する構築材料配合物供給システム330を備える。
【0156】
制御ユニット340は、製造装置114および任意選択的にかつ好ましくは供給システム330をも制御する。制御ユニット340は通常、制御動作を実行するように構成された電子回路を含む。制御ユニット340は、コンピュータ物体データ、例えば標準テッセレーション言語(STL)フォーマットなどの形式でコンピュータ可読媒体に表されたCAD構成に基づいて、製作命令に関するデジタルデータを送信するデータプロセッサ154と通信することが好ましい。通常、制御ユニット340は、各吐出ヘッドまたはノズルアレイに印加される電圧、およびそれぞれの印刷ヘッドの構築材料配合物の温度を制御する。
【0157】
製造データが制御ユニット340にロードされると、制御ユニットは、ユーザの介入なしに動作することができる。一部の実施形態では、制御ユニット340は、例えばデータプロセッサ154を用いて、あるいはユニット340と通信するユーザインタフェース116を用いて、オペレータから追加の入力を受信する。ユーザインタフェース116は、例えばキーボード、タッチスクリーンなど、しかしそれらに限らず、当業界で公知の任意の種類とすることができる。例えば制御ユニット340は、追加の入力として、1つ以上の構築材料配合物の種類および/または属性、例えば色、特性歪み、および/または転移温度、粘度、電気特性、磁気特性などを受信することができるが、それらに限定されない。他の属性および属性群も考えられる。
【0158】
本発明の一部の実施形態に係る物体のAMに適したシステム10の別の代表的かつ非限定的実施例を図1B図1Dに示す。図1B図1Dは、システム10の上面図(図1B)、側面図(図1C)、および等角図(図1D)を示す。
【0159】
本実施形態では、システム10は、トレイ12と、各々が複数の分離したノズルを有する複数のインクジェット印刷ヘッド16とを備える。トレイ12は、円板の形状を有することができ、あるいは環状とすることができる。垂直軸線を中心に回転することができることを前提として、非円形の形状も考えられる。
【0160】
トレイ12およびヘッド16は、任意選択的にかつ好ましくは、トレイ12とヘッド16との間の相対的回転運動ができるように取り付けられる。これは、(i)トレイ12がヘッド16に対して垂直軸線14を中心に回転するようにトレイを構成することによって、(ii)ヘッド16がトレイ12に対して垂直軸線14を中心に回転するようにヘッドを構成することによって、または(iii)トレイ12およびヘッド16の両方が垂直軸線14を中心に、しかし異なる回転速度で回転(例えば逆方向に回転)するように構成することによって、達成することができる。以下の実施形態は、トレイが、ヘッド16に対して垂直軸線14を中心に回転するように構成された回転トレイである構成(i)を特に重点的に記載するが、本願は構成(ii)および(iii)をも企図していることを理解されたい。本書に記載する実施形態はいずれも、構成(ii)および(iii)のいずれかに適用できるように調整することができ、本書に記載する詳細を前提として、そのような調整をどのように行うかが当業者には分かるであろう。
【0161】
以下の説明では、トレイ12と平行で軸線14から外向きの方向を半径方向rと呼び、トレイ12と平行で半径方向rに垂直な方向をここでは方位角方向φと呼び、トレイ12に直角な方向をここでは垂直方向zと呼ぶ。
【0162】
本書で使用する用語「半径方向位置」とは、軸線14から特定の距離にあるトレイ12上またはトレイ12より上の位置を指す。この用語が印刷ヘッドに関連して使用される場合、この用語は、軸線14から特定の距離にあるヘッドの位置を指す。この用語がトレイ12上の点に関連して使用される場合、この用語は、半径が軸線14から特定の距離にあってその中心が軸線14にある円を描く点の軌跡に属する任意の点に対応する。
【0163】
本書で使用する用語「方位角位置」は、所定の基準点に対して特定の方位角にあるトレイ12上またはトレイ12より上の位置を指す。したがって、半径方向位置は、基準点に対して特定の方位角を形成する直線を描く点の軌跡に属する任意の点を指す。
【0164】
本書で使用する用語「垂直位置」は、特定の点で垂直軸線14と交差する面全体の位置を指す。
【0165】
トレイ12は、三次元印刷のための支持体構造として働く。1つ以上の物体が印刷される作業領域は通常、トレイ12の総面積より小さいが、必ずしもそうである必要はない。本発明の一部の実施形態では、作業領域は、環状である。作業領域は、符号26で示される。本発明の一部の実施形態では、トレイ12は、物体の形成中ずっと、同一方向に連続的に回転し、本発明の一部の実施形態では、トレイは、物体の形成中に少なくとも1回(例えば振動するように)回転方向を逆転する。トレイ12は、任意選択的にかつ好ましくは取外し可能である。トレイ12の取外しは、システム10の保守のために、あるいは希望する場合には、新しい物体を印刷する前にトレイを交換するために、行うことができる。本発明の一部の実施形態では、システム10には1つ以上の異なる交換トレイ(例えば交換トレイのキット)が提供され、2つ以上のトレイが異なる種類の物体(例えば異なる重量)、異なる動作モード(例えば異なる回転速度)等のために設計される。トレイ12の交換は希望通り手動または自動にすることができる。自動交換が採用された場合、システム10は、トレイ12をヘッド16の下にあるその位置から取り外して、それを交換トレイ(図示せず)と交換するように構成されたトレイ交換装置36を含む。図1Bの代表図では、トレイ交換装置36は、トレイ12を引っ張るように構成された可動アーム40を持つドライブ38として示されるが、他の種類のトレイ交換装置も考えられる。
【0166】
印刷ヘッド16の例示的実施形態を図2A図2Cに示す。これらの実施形態は、システム110およびシステム10を含め、それらに限らず、上述したAMシステムのいずれかに採用することができる。
【0167】
図2A図2Bは、1つ(図2A)および2つ(図2B)のノズルアレイ22を持つ印刷ヘッド16を示す。アレイにおけるノズルは直線に沿って線状に並ぶことが好ましい。特定の印刷ヘッドが2つ以上のリニア・ノズル・アレイを有する実施形態では、ノズルアレイは、任意選択的にかつ好ましくは、相互に平行にすることができる。
【0168】
システム110と同様のシステムが使用される場合、全ての印刷ヘッド16は、任意選択的にかつ好ましくは、走査方向に沿ったそれらの位置が互いにずらされ、割出し方向に沿って向き付けられる。
【0169】
システム10と同様のシステムが使用される場合、全ての印刷ヘッド16は、任意選択的にかつ好ましくは、それらの方位角位置が互いにずらされ、放射状に(放射方向と平行に)向き付けられる。したがって、これらの実施形態では、異なる印刷ヘッドのノズルアレイは互いに平行ではなく、むしろ互いに角度を成しており、その角度はそれぞれのヘッド間の方位角のずれに略等しい。例えば1つのヘッドは放射状に向き付け、かつ方位角位置φに配置することができ、別のヘッドは放射状に向き付け、かつ方位角位置φに配置することができる。この実施例では、2つのヘッド間の方位角のずれはφ-φであり、2つのヘッドのリニア・ノズル・アレイ間の角度もまたφ-φである。
【0170】
一部の実施形態では、2つ以上の印刷ヘッドを組み立てて、1ブロックの印刷ヘッドにすることができる。その場合、そのブロックの印刷ヘッドは一般的に、互いに平行である。幾つかのインクジェット印刷ヘッド16a、16b、16cを含むブロックが図2Cに示される。
【0171】
一部の実施形態では、システム10は、トレイ12が支持体構造30とヘッド16との間に来るように、ヘッド16の下に位置する支持体構造30を含む。支持体構造30は、インクジェット印刷ヘッド16が作動している間に発生することのあるトレイ12の振動を防止または低減するように働く。印刷ヘッド16が軸線14を中心に回転する構成では、支持体構造30が常にヘッド16の真下にくるように(トレイ12と共にヘッド16とトレイ12の間で)支持体構造30も回転することが好ましい。
【0172】
トレイ12および/または印刷ヘッド16は、任意選択的にかつ好ましくは、トレイ12と印刷ヘッド16との間の垂直距離が変動するように垂直方向zに沿って垂直軸線14と平行に移動するように構成される。トレイ12を垂直方向に沿って移動させることによって垂直距離が変動する構成では、支持体構造30もトレイ12と共に垂直方向に移動することが好ましい。トレイ12の垂直位置は固定されたままで、垂直距離がヘッド16によって垂直方向に沿って変動する構成では、支持体構造30もまた固定垂直位置に維持される。
【0173】
垂直移動は、垂直ドライブ28によって確立することができる。ある層が完成すると、次に印刷される層の所望の厚さに応じて所定の垂直間隔だけ、トレイ12とヘッド16との間の垂直距離を増大させることができる(例えばヘッド16に対してトレイ12を下降させる)。この手順は、三次元物体112が層毎に形成されるように繰り返される。
【0174】
インクジェット印刷ヘッド16の向き、および任意選択的にかつ好ましくは、システム10の1つ以上の他の構成部品の向き、例えばトレイ12の移動の向きも、コントローラ20によって制御される。コントローラは、電子回路および回路によって読出し可能な不揮発性記憶媒体を有することができ、記憶媒体は、回路によって読み出されたときに、以下でさらに詳述するように制御動作を回路に実行させるプログラム命令を格納する。
【0175】
コントローラ20はまた、例えば標準テッセレーション言語(STL)またはステレオリソグラフィ輪郭(SLC)フォーマット、仮想現実モデリング言語(VRML)、付加製造ファイル(AMF)フォーマット、図面交換フォーマット(DXF)、ポリゴン・ファイル・フォーマット(PLY)、またはコンピュータ支援設計(CAD)に適したいずれかの他のフォーマットの形のコンピュータ物体データに基づいて、製作命令に関するデジタルデータを送信するホストコンピュータ24と通信することもできる。物体データフォーマットは一般的に、デカルト座標系に従って構成される。このような場合、コンピュータ24は、コンピュータ物体データにおける各スライスの座標をデカルト座標系から極座標系に変換するための手順を実行することが好ましい。コンピュータ24は、任意選択的にかつ好ましくは、変換された座標系で製作命令を送信する。代替的に、コンピュータ24は、コンピュータ物体データによって提供された元の座標系で、製作命令を送信することができ、その場合、座標の変換はコントローラ20の回路によって実行される。
【0176】
座標の変換は、回転トレイ上の三次元印刷を可能にする。従来の三次元印刷では、印刷ヘッドは、静止トレイ上を直線に沿って往復運動する。そのような従来のシステムでは、ヘッドの吐出率が均一であることを前提として、印刷解像度はトレイ上のどの点でも同じである。従来の三次元印刷とは異なり、ヘッド点の全てのノズルが同時にトレイ12全体で同一距離をカバーするわけではない。座標の変換は、任意選択的にかつ好ましくは、異なる半径方向位置における過剰な材料配合物の均等な量が確保されるように実行される。本発明の一部の実施形態に係る座標変換の代表的実施例が、物体の3つのスライスを示す図3A図3Bに提示される(各スライスは物体の異なる層の製作命令に対応する)。図3Aは、スライスをデカルト座標系で示し、図3Bは、座標変換手順がそれぞれのスライスに適用された後の同じスライスを示す。
【0177】
通常、コントローラ20は、製作命令に基づき、かつ下述する格納されたプログラム命令に基づいて、システム10のそれぞれの構成部品に印加される電圧を制御する。
【0178】
一般的に、コントローラ20は、トレイ12の回転中に、トレイ12上で三次元物体を印刷するために構築材料配合物の液滴を層状に吐出するように、印刷ヘッド16を制御する。
【0179】
システム10は、任意選択的にかつ好ましくは、1つ以上の放射源18を備え、それは、使用する造形用材料配合物に応じて、例えば紫外線もしくは可視光もしくは赤外線ランプ、または他の電磁放射源、または電子ビーム源とすることができる。放射源は、発光ダイオード(LED)、デジタル・ライト・プロセシング(DLP)システム、抵抗ランプ等をはじめ、それらに限らず、任意の種類の放射線放出素子を含むことができる。放射源18は、造形用材料配合物を硬化または凝固させるように働く。本発明の様々な例示的実施形態では、放射源18の動作はコントローラ20によって制御され、それは、放射源18を作動させたり停止させたりすることができ、かつ任意選択的に放射源18によって発生する放射線の量も制御することができる。
【0180】
本発明の一部の実施形態では、システム10は、ローラまたはブレードとして製造することのできる1つ以上のレベリング装置32をさらに備える。レベリング装置32は、新たに形成された層を、次の層がその上に形成される前に矯正するのに役立つ。一部の実施形態では、レベリング装置32は、円錐ローラの形状を有し、その対称軸線34がトレイ12の表面に対して傾斜し、かつその表面がトレイの表面と平行になるように配置される。この実施形態をシステム10の側面図に示す(図1C)。
【0181】
円錐ローラは、円錐または円錐台の形状を有することができる。
【0182】
円錐ローラの開き角は、その軸線34に沿った任意の位置における円錐の半径と、その位置と軸線14との間の距離との比率が一定になるように選択されることが好ましい。ローラが回転する間、ローラの表面上の点pはどれも、点pの鉛直下方に位置する点のトレイの線速度に比例する(例えば同一の)線速度を有するので、この実施形態は、ローラ32が層を効率的に平準化することを可能にする。一部の実施形態では、ローラは高さh、軸線14から最も近い距離位置における半径R、および軸線14から最も遠い距離位置における半径Rを有する円錐台の形状を有する。ここでパラメータh、R、およびRは、R/R=(R-h)/hの関係を満たし、ここでRは軸線14からのローラの最遠距離である(例えばRはトレイ12の半径とすることができる)。
【0183】
レベリング装置32の動作は、任意選択的にかつ好ましくは、コントローラ20によって制御される。コントローラは、レベリング装置32を作動させたり停止させたりすることができ、かつ任意選択的に、垂直方向(軸線14と平行)に沿ったその位置、および/または放射方向(トレイ12と平行に、軸線14に近づくかまたはそれから離れる方向)に沿ったその位置をも制御することができる。
【0184】
本発明の一部の実施形態では、印刷ヘッド16は、径方向rに沿ってトレイに対して往復運動するように構成される。これらの実施形態は、ヘッド16のノズルアレイ22の長さがトレイ12上の作業領域26の径方向に沿った幅より短いときに、有用である。径方向に沿ったヘッド16の運動は、任意選択的にかつ好ましくはコントローラ20によって制御される。
【0185】
一部の実施形態は、異なる吐出ヘッドから異なる材料配合物を吐出することによって物体を製作することを企図している。これらの実施形態は、とりわけ、所与の数の材料配合物から材料配合物を選択し、かつ選択された材料配合物およびそれらの性質の所望の組合せを画定する能力を提供する。本実施形態によれば、異なる材料配合物による異なる三次元空間位置の占有を達成するか、あるいは2つ以上の異なる材料配合物による略同一の三次元位置または隣接する三次元位置の占有を達成するように、層における各材料配合物の堆積の空間位置が画定され、層内の材料配合物の堆積後の空間的組合せが可能になり、それによってそれぞれの位置(単数または複数)で複合材料配合物を形成することが可能になる。
【0186】
造形用材料配合物の任意の堆積後の組合せまたは混合が企図される。例えば特定の材料配合物が吐出された後、それはその元の性質を維持することができる。しかし、別の造形用材料配合物または他の吐出材料配合物と同時に、同じ位置あるいは近傍位置で吐出された場合、吐出された材料配合物とは異なる性質を有する複合材料配合物が形成される。
【0187】
こうして本実施形態は、広範囲の材料配合物の組合せの堆積を可能にし、かつ物体の各部分を特徴付けるために望ましい特性に応じて、物体の異なる部分を複数の異なる材料配合物の組合せから構成することのできる物体の製作を可能にする。
【0188】
本実施形態に適したAMシステムの原理および動作のさらなる詳細は米国公開出願第20100191360号に見られ、その内容を参照によって本書に援用する。
【0189】
図4は、本発明の一部の実施形態による例示的な方法を記載するフローチャートを与える。
【0190】
他に規定されない限り、以下に記載される操作は、多くの実施の組み合わせ又は順序で同時に又は連続して実施されることができることが理解されるべきである。特に、フローチャート図の順序は、限定として考えられるべきではない。例えば、特定の順序でフローチャート図に又は以下の記載に現われる二つ以上の操作は、異なる順序で(例えば逆の順序で)又は実質的に同時に実施されることができる。さらに、以下に記載される複数の操作は、任意であり、実施されなくてもよい。
【0191】
本実施形態の方法を実施するコンピュータープログラムは、一般にフロッピーディスク、CD-ROM、フラッシュメモリー装置、及び携帯可能なハードドライブのような限定されない配布媒体でユーザーに配布されることができる。配布媒体から、コンピュータープログラムは、ハードディスク又は同様の中間記憶媒体にコピーされることができる。コンピュータープログラムは、コンピューター指示をそれらの配布媒体又はそれらの中間記憶媒体から本発明の方法に従ってコンピューターを作動するように構成するコンピューターの実施記憶装置にロードすることによって実行されることができる。全てのこれらの操作は、コンピューターシステムの分野の熟練者に周知である。
【0192】
本実施形態のコンピューター実施される方法は、多くの形態で実現されることができる。例えば、それは、方法操作を実施するためのコンピューターのような有形的表現媒体で実現されることができる。それは、方法操作を実施するためのコンピューター可読指示を含む、コンピューター可読媒体で実現されることができる。それは、コンピュータープログラムを有形的表現媒体に実行させたり、又は指示をコンピューター可読媒体に実施させたりするように配置されたデジタルコンピューター能力を有する電子装置で実現されることもできる。
【0193】
方法は、500で開始し、任意選択的にかつ好ましくは501に続き、そこで物体の形状に相当するコンピューター物体データ(例えば3D印刷データ)を受けとる。データは、例えばホストコンピューターから受けとられることができ、それは、例えばコンピューター物体データ、例えばSTL,SLCフォーマット、VRML,AMFフォーマット、DXF,PLY、又はいずれかの他のCADのために好適なフォーマットの形のものに基づいて製作指示に関するデジタルデータを送信する。
【0194】
方法は、502に続き、そこで本明細書に記載されるような未硬化の構築材料(例えば本明細書に記載されるような一種以上の造形用材料配合物、及び任意選択的に支持材料配合物)の液滴は、コンピューター物体データ(例えば印刷データ)に従って、かつ本明細書に記載されるように、システム110又はシステム10(これらに限定されない)のようなAMシステムを任意選択的にかつ好ましくは使用して、受容媒体上に層状に吐出される。本明細書に記載される実施形態のいずれかにおいて、吐出502は、少なくとも二つの異なるマルチノズルインクジェット印刷ヘッドによって及び/又は少なくとも二つの異なるノズルアレイによって行なわれる。受容媒体は、本明細書に記載されるようにAMシステムのトレイ(例えばトレイ360又は12)、又は前に堆積された層であることができる。
【0195】
本発明の一部の実施形態では、吐出502は、周囲環境下で実施される。
【0196】
任意選択的に、未硬化の構築材料、又はその一部(例えば構築材料の一種以上の配合物)は、吐出される前に加熱される。これらの実施形態は、3Dインクジェット印刷システムの作業室の操作温度で相対的に高い粘度を有する未硬化の構築材料配合物のために特に有用である。配合物の加熱は、3Dインクジェット印刷システムの印刷ヘッドのノズルを通してそれぞれの配合物を噴射することを可能にする温度にすることが好ましい。本発明の一部の実施形態では、加熱は、それぞれの配合物がそれぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載されるような粘度を示す温度にする。
【0197】
加熱は、AM(例えば3Dインクジェット印刷)システムの印刷ヘッドへのそれぞれの配合物の充填前、又は配合物が印刷ヘッド中にある間、又は組成物が印刷ヘッドのノズルを通過する間に実施されることができる。
【0198】
一部の実施形態では、加熱は、配合物の粘度が高すぎる場合に配合物による吐出(例えばインクジェット印刷)ヘッドの詰まりを避けるように、吐出(例えばインクジェット印刷)ヘッド中へのそれぞれの配合物の充填前に実施される。
【0199】
一部の実施形態では、加熱は、少なくとも吐出(例えばインクジェット印刷)ヘッドのノズルを造形用材料配合物が通過する間、吐出(例えばインクジェット印刷)ヘッドを加熱することによって実施される。
【0200】
いったん未硬化の構築材料がコンピューター物体データ(例えば印刷データ)に従って受容媒体上に吐出されたら、方法は、任意選択的にかつ好ましくは503に続き、そこで硬化条件(例えば硬化エネルギー)が、例えば本明細書に記載されるような放射線源によって堆積された層に付与される。好ましくは、硬化は、層の堆積後及び前の層の堆積前に各個々の層に付与される。
【0201】
一部の実施形態では、硬化エネルギーの付与は、本明細書に記載されるように、ほぼ乾燥した不活性環境下で実施される。
【0202】
方法は、504で終了する。
【0203】
一部の実施形態では、方法は、それぞれの実施形態のいずれか及びそのいずれかの組み合わせにおいて本明細書に記載されるような例示的なシステムを使用して実施される。
【0204】
造形用材料配合物は、固体自由形状製作装置の特定の容器もしくはカートリッジ、又は装置の異なる容器から堆積された造形用材料配合物の組み合わせに含まれることができる。
【0205】
一部の実施形態では、少なくとも一つ、又は少なくとも二つもしくは三つ(例えば少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも80、またはそれより多く)、又は全ての層は、それぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載されるように、単一の造形用材料配合物の202におけるような液滴の吐出によって形成される。
【0206】
一部の実施形態では、少なくとも一つ、又は少なくとも二つもしくは三つ(例えば少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも80、またはそれより多く)、又は全ての層は、それぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載されるように、二種以上の造形用材料配合物(各々が異なる吐出(例えばインクジェット印刷)ヘッド又は本明細書に記載される異なるノズルアレイからのもの)の202におけるような液滴の吐出によって形成される。
【0207】
これらの実施形態は、特に所定数の材料から材料を選択し、選択された材料の希望の組み合わせ及びそれらの特性を規定する能力を与える。本実施形態によれば、層での各材料の堆積の空間位置は、異なる材料による異なる三次元空間位置の占有を実施するか、又は二種以上の異なる材料による実質的に同じ三次元位置又は隣接三次元位置の占有を実施し、層内で材料の後で堆積空間組み合わせを可能とし、それによってそれぞれの位置で複合材料を形成するために規定される。
【0208】
造形用材料のいかなる後での堆積組み合わせ又は混合も考えられる。例えば、いったんある材料が吐出されると、それは、その元の特性を保持することができる。しかしながら、それが同じ又は隣接位置で吐出される別の造形用材料又は他の吐出された材料と同時に吐出されるとき、吐出された材料とは異なる特性を持つ複合材料が形成される。
【0209】
実施形態の一部は、幅広い範囲の材料組み合わせの吐出、及び複数の異なる材料組み合わせからなりうる物体の製作を、物体の異なる部分において、物体のそれぞれの部分を特徴づけるために望ましい特性に従って可能にする。
【0210】
本発明の一部の例示的実施形態では、物体は、二種以上の異なる造形用材料配合物を含む構築材料(未硬化)を吐出することによって製造され、各造形用材料配合物は、異なる吐出(例えば印刷)ヘッドから又はインクジェット印刷装置の異なるノズルもしくは異なるアレイのノズルからのものである。造形用材料配合物は、任意選択的にかつ好ましくは、吐出(例えば印刷)ヘッドの同じ通過中に層で吐出される。層内の造形用材料配合物及び/又は配合物の組み合わせは、物体の希望の特性に従って、以下に詳細にさらに記載されるように選択される。
【0211】
本明細書及び業界で使用される表現「デジタル材料」(DMと略される)は、特定の材料の印刷された領域が2,3個のボクセルのレベルで又は1個のボクセルのレベルであるように微視的なスケール又はボクセルレベルで二種以上の材料の組み合わせを記載する。かかるデジタル材料は、材料のタイプ及び/又は二種以上の材料の比率及び相対的な空間分布の選択によって影響される新しい特性を示すことができる。
【0212】
例示的なデジタル材料では、硬化で得られた、各ボクセル又はボクセルブロックの造形用材料は、硬化で得られた、隣接ボクセル又はボクセルブロックの造形用材料から独立しており、従って各ボクセル又はボクセルブロックは、異なる造形用材料をもたらし、全体の部分の新しい特性は、複数の異なる造形用材料のボクセルレベルでの空間組み合わせの結果である。
【0213】
本明細書において全体を通じて、表現「ボクセルレベルで」が異なる材料及び/又は特性の文脈において使用されるときはいつでも、ボクセルブロック間の差、並びに複数のボクセル又は2,3個のボクセルのグループの間の差を含むことが意味される。好ましい実施形態では、全体の部分の特性は、複数の異なる造形用材料のボクセルブロックレベルでの空間組み合わせの結果である。
【0214】
これらの実施形態の一部では、二種以上の造形用材料配合物は、ボクセル方式で吐出され、前記造形用材料配合物のうちの一種のボクセルは、少なくとも一つの別の種類の造形用材料配合物のボクセルとインターレースされる。
【0215】
本発明の一部の実施形態では、「ドロップオンドロップ(Drop on Drop)」印刷プロトコルが使用される。これらの実施形態は、図5A及び5Bに概略的に示される。第一造形用配合物の堆積のために好適なビットマップは、図5Aに示され、第二造形用配合物の堆積のために好適なビットマップは、図5Bに示される。白いボックスは、空白位置を表わし、ドットボックスは、第一造形用配合物の小滴を表わし、波線ボックスは、第二造形用配合物の小滴を表わす。これらの実施形態における印刷データは、各層について、両造形用配合物が同じ位置で、しかし印刷ヘッドの移動時に異なる回数で堆積されるようなものである。例えば、第一造形用配合物の各小滴は、第二造形用配合物の小滴の上に噴射されることができ、又はその逆もある。好ましくは、必須ではないが、二つの配合物の部分は、同じ重量及び/又は速度で小滴で噴射される。これらの実施形態は、望ましい重量比が1:1であるときに特に有用である。他の望ましい重量比については、二つの配合物の部分は、異なる重量の小滴で噴射されることが好ましく、そこでは重量の比は、望ましい比に相当する。
【0216】
本実施形態のために好適な解像度の代表例は、X方向に1200dpiであり、Y方向に300dpiである。ドロップオンドロップ印刷プロトコルは、二つのタイプの小滴が、堆積される材料の結晶化前に組み合わせかつ混合することを可能にする。
【0217】
本発明の一部の実施形態では、「サイドバイサイド(side by side)」印刷プロトコルが使用される。これらの実施形態は、図6A及び6Bに概略的に示される。第一造形用配合物の堆積のために好適なビットマップは、図6Aに示され、第二造形用配合物の堆積のために好適なビットマップは、図6Bに示される。白、ドット、波線のボックスは、それぞれ空白位置、第一造形用配合物の小滴、及び第二造形用配合物の小滴を表わす。これらの実施形態における印刷データは、各層について、第一造形用配合物の各小滴が第二造形用配合物の小滴に隣接して噴射され、又はその逆もあるようなものである。小滴の分散のため、隣接小滴は、部分的に重なる傾向を有する。結果として、二つの小滴は、互いに向かって拡散し、堆積後に反応する。
【0218】
図5A-6Bに示された概略図では、チェスボードのビットマップが示されているが、これは必ずしもこのようである必要はない。なぜなら一部の用途に対して、他のビットマップパターンを使用することができるからである。
【0219】
本発明の実施形態のいずれかの一部では、いったん層が本明細書に記載されるように吐出されると、本明細書に記載されるような硬化条件(例えば硬化エネルギー)への露出が実行される。吐出された層の各々がAMプロセス(例えば3Dインクジェット印刷)中に露出される硬化条件は、本明細書では、第一硬化条件として言及される。
【0220】
一部の実施形態では、構築材料が支持体材料配合物も含む場合、方法は、硬化された支持体材料を除去することを行なう。これは、当業者によって認識されるように、機械的及び/又は化学的手段によって実施されることができる。
【0221】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、方法は、支持材料(もしこれが構築材料に含まれているなら)の除去の前又は後のいずれかに硬化された又は部分的に硬化された造形用材料を後処理条件に露出することをさらに含む。後処理条件は、典型的には第一硬化条件への露出及び任意選択的に支持体材料の除去により得られた未加工体をさらに硬化することを目的としている。
【0222】
一部の実施形態では、後処理は、部分的に硬化された材料を固化し、それによって硬化された材料を得る。
【0223】
一部の実施形態では、後処理は、本明細書のそれぞれの実施形態のいずれかに記載されるように、熱又は放射線に露出することによって実施される。一部の実施形態では、条件が熱(熱的後処理)であるとき、後処理は、数分(例えば10分)から数時間(例えば1~24時間)までの範囲の時間で実施されることができる。
【0224】
一部の実施形態では、熱的後処理は、少なくとも200℃、例えば250℃の熱へ物体を徐々に露出することを含む。例えば、物体は、第一温度(例えば80~100℃)に第一時間期間、次いで第二のより高い温度(例えば150~200℃)に第二時間期間、次いで第三のさらにより高い温度(例えば200℃~250℃)に第三時間期間露出される。各時間期間は、1~4時間であることができる。
【0225】
後処理条件への露出はまた、本明細書において複数の層を第二硬化条件に露出することとして言及される。
【0226】
本発明を考えながら、本発明者は、インクジェット印刷ヘッドで希望の粘度(例えば50センチポアズ以下)を示す配合系を探求した。かかる粘度は、一般に65℃以上の温度でシアネートエステルを含む配合物について得られることができるが、かかる温度では、シアネートエステルに接触する活性剤は、重合を少なくともある程度促進することができ、かくして粘度が増加され、印刷ヘッド詰まりが生じるおそれがある。他方、もしより高い温度でシアネートエステルの重合を促進する活性剤が使用されるなら、高温の付与前にシアネートエステルの重合は、実施されることができず、印刷された(例えば未加工)体の溶脱が実施されることができる。
【0227】
上述の制限に対する解決策を探求しているとき、本発明者らは、求核剤であり、かつ層ごとの付加製造のために好適な動力学で低温でもある程度シアネートエステルの重合を促進することができ、従って配合物を吐出するときにシアネートエステルのある程度の重合を与えることができる活性剤を選択した。
【0228】
さらに、本発明者らは、熱エネルギー(例えば高温)以外の硬化条件にさらすと硬化可能である追加の硬化性材料をさらに含む二重硬化配合系を利用することを考えた。本発明者らは、印刷時の可能な変形を避けるように、かかる硬化性材料が硬化したとき、高いTg及び/又は高いHDTを具備する材料を与えることが好ましいと考えた。
【0229】
かかる活性剤及び追加の硬化性材料の選択は、部分的に硬化され、高温にさらすとさらに硬化されることができる、本明細書に規定されるような未加工体を複数の層の形成により得ることを可能にする。
【0230】
一部の実施形態では、得られた未加工体は、自己支持性であり、変形を受けない。
【0231】
本明細書の用語「高温」は、80℃より高い、又は100℃より高い、一般的には80℃~300℃の範囲の温度を記載する。
【0232】
新しく設計された方法は、二つ(又はそれより多い)造形用材料配合物を含む配合系を使用し、そこでは一つの配合物(本明細書では部分A配合物としても言及)は、シアネートエステルを含み、他の配合物(本明細書では部分B配合物としても言及)は、高温(熱エネルギー)にさらすとポリシアヌレート材料を与えるようにシアネートエステルの重合を促進する活性剤を含む。二つの配合物を吐出する前、活性剤は、シアネートエステルと接触せず、従ってその重合に対して不活性である。配合物が吐出され、互いに接触すると、活性剤は、まだ不活性であるか、又は本明細書に規定されるように、シアネートエステルの重合を促進することに対して十分に活性でない(部分的に活性である)。
【0233】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、配合系中の配合物の各々は、(硬化条件にさらす前でかつ他の配合物に接触する前に)噴射温度(吐出ヘッド、例えば印刷ヘッドの温度)で約8~約50センチポアズ(cps)、又は約16~約50センチポアズの、3Dインクジェット印刷のような付加製造のために好適な粘度を具備する。一部の実施形態では、噴射温度は、50~90℃であり、一部の実施形態では、それは、60~70℃である。一部の実施形態では、配合物は、68℃で、約20~約50センチポアズ(cps)、又は約20~約40センチポアズの粘度を具備する。
【0234】
本実施形態によれば、配合系は、少なくとも、熱硬化性シアネートエステルを含む第一造形用材料配合物(本明細書において第一配合物又は部分A配合物としても交換可能に言及される)、及びシアネートエステルの重合を促進する活性剤を含みかつ第一硬化性材料を欠く第二造形用材料配合物(本明細書において第二配合物又は部分B配合物としても交換可能に言及される)を含み、かくして配合物の吐出前に活性剤とシアネートエステルの間のいかなる接触も防止する。
【0235】
従って、配合系は、少なくとも、本明細書に記載されるような第一及び第二配合物を含む。
【0236】
本実施形態によれば、配合系(二種以上の造形用材料配合物)はさらに、第一硬化性材料(シアネートエステル)とは異なる第二硬化性材料、及び任意選択的に第二硬化性材料の硬化を促進するための薬剤を含む。
【0237】
本実施形態の一部によれば、配合系は、いったん層が第一及び第二配合物を吐出することによって形成され、第一硬化条件にさらされると、第二硬化性材料は、第一硬化性材料(シアネートエステル)より高い程度で重合するように選択される。一部の実施形態では、第一硬化条件にさらされたときの第二硬化性材料の重合度は、少なくとも50%、又は60%、好ましくは少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%であり、又は100%であることができる。一部の実施形態では、第一硬化条件にさらされたときの第二硬化性材料の重合度は、第一硬化性材料の重合度より少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は100%、150%、200%、又はそれより多く高い。
【0238】
本実施形態の一部によれば、配合系及び第一硬化条件は、吐出された層を第一硬化条件にさらすと、第一硬化性材料(シアネートエステル)の重合度が50%以下、又は40%以下、又は30%以下、又は20%以下、又は10%以下であるように選択される。
【0239】
本実施形態の一部によれば、配合系は、少なくとも二つの硬化可能な系を含み、各々は、硬化性材料、及び硬化性材料の重合を促進するための薬剤を含む。第一の硬化可能な系は、第一硬化性材料、及び第一硬化性材料の重合を促進する薬剤を含み、第二の硬化可能な系は、第二硬化性材料、及び第二硬化性材料の重合を促進する薬剤を含む。少なくとも第一の硬化可能な系の成分は、一つの配合物が第一硬化性材料を含みかつ第一硬化性材料の重合を促進する薬剤を欠き、別の配合物が第一硬化性材料の重合を促進する薬剤を含むように分離される。好ましくは、第二の硬化可能な系の成分はまた、一つの配合物が第二硬化性材料を含みかつ第二硬化性材料の重合を促進する薬剤を欠き、別の配合物が第二硬化性材料の重合を促進する薬剤を含むように分離される。
【0240】
各々が、硬化性材料、及び任意選択的にそれぞれの硬化性材料の重合を促進するための薬剤を含む追加の硬化可能な系を含めることもできる。追加の硬化可能な系の成分はまた、一つの配合物が硬化性材料を含みかつその重合を促進するための薬剤を欠き、別の配合物が硬化性材料の重合を促進するための薬剤を含むように分離されることが好ましい。
【0241】
本実施形態によれば、第一硬化性材料は、シアネートエステルである。
【0242】
用語「シアネートエステル」は、一種以上のシアネートエステル化合物及び/又は一種以上のそのプレポリマー(ホモプレポリマー及び/又はヘテロプレポリマーを含む)を包含する。
【0243】
プレポリマーは、200~400g/molから4000~8000g/molまでの分子量を有するプレポリマーに導く、(初期のシアネート官能の)1~5%から20~40%までのシアネート基の変換度まで重合されるシアネートエステルを含む。
【0244】
シアネートエステル化合物は、まとめて式Iによって表わされることができる:
式I中、mは、1~6の整数であり、例えば1,2,3,4,5又は6、好ましくは2,3,4又は5、より好ましくは2又は3、例えば2であり、Rは、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式である。あるいは、Rは、任意選択的にSi,P,S,O,Nのような一つ以上のヘテロ原子によって中断及び/又は置換されてもよい炭化水素(飽和又は不飽和)である。
【0245】
一部の実施形態では、Rは、アリール、例えばフェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、又はピレニル基であり、各々は、置換又は非置換である。
【0246】
一部の実施形態では、Rは、アリール、例えばフェニル、ビフェニル、ナフチル、ビス(フェニル)メタン、ビス(フェニル)エタン、ビス(フェニル)プロパン、ビス(フェニル)ブタン、ビス(フェニル)エーテル、ビス(フェニル)チオエーテル、ビス(フェニル)スルホン、ビス(フェニル)ホスフィンオキサイド、ビス(フェニル)シラン、ビス(フェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(フェニル)トリフルオロエタン、又はビス(フェニル)ジシクロペンタジエン、又はフェノールホルムアルデヒド樹脂であり、各々は、例えば1~6個の置換基によって置換されるか、又は置換されない。
【0247】
例示的なシアネートエステル化合物は、1,3-又は1,4-ジシアネートベンゼン;1,3,5-トリシアネートベンゼン;1,3-,1,4-,1,6-,1,8-,2,6-又は2,7-ジシアネートナフタレン;1,3,6-トリシアネートナフタレン;2,2’又は4,4’-ジシアネートビフェニル;ビス(4-シアネートフェニル)メタン;2,2-ビス(4-シアネートフェニル)プロパン;2,2-ビス(3,5-ジクロロ-4-シアネートフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-ジブロモ-4-ジシアネートフェニル)プロパン;ビス(4-シアネートフェニル)エーテル;ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル;ビス(4-シアネートフェニル)スルホン;トリス(4-シアネートフェニル)ホスファイト;トリス(4-シアネートフェニル)ホスフェート;ビス(3-クロロ-4-シアネートフェニル)メタン:4-シアネートビフェニル;4-クミルシアネートベンゼン;2-ターシャリブチル-1,4-ジシアネートベンゼン;2,4-ジメチル-1,3-ジシアネートベンゼン;2,5-ジターシャリブチル-1,4-ジシアネートベンゼン;テトラメチル-1,4-ジシアネートベンゼン;4-クロロ-1,3-ジシアネートベンゼン;3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’ジシアネートジフェニル;ビス(3-クロロ-4-シアネートフェニル)メタン;1,1,1-トリス(4-シアネートフェニル)エタン;1,1-ビス(4-シアネートフェニル)エタン;2,2-ビス(3,5-ジクロロ-4-シアネートフェニル)プロパン;2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-シアネートフェニル)プロパン;ビス(p-シアノフェノキシフェノキシ)ベンゼン;及び前述のものの混合物を含むが、これに限定されない。
【0248】
mが2である式Iのシアネートエステルは、以下の式のポリシアヌレートを形成することによって重合を受ける:
式中、Rは、式Iについて規定される通りである。
【0249】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、配合系は、金属成分を欠く。
【0250】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、配合系は、シアネートエステルの重合を促進する金属触媒を欠く。
【0251】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、配合系は、WO2017/040883に記載された金属触媒を欠く。
【0252】
本実施形態の文脈では、硬化性材料の重合を促進する薬剤は、重合可能な材料の重合及び/又は架橋を開始及び/又は促進(その速度の増加、及び/又はそのために必要なエネルギーを減少)する化学材料である。
【0253】
一部の実施形態では、重合を促進する薬剤は、開始剤であり、それは、反応を開始及び/又は促進(その速度の増加、及び/又はそのために必要なエネルギーを減少)する反応種を生成する。例えば、フリーラジカル重合の開始剤は、フリーラジカルを生成し、フリーラジカルの存在は、フリーラジカル重合を開始及び/又は促進する。同様に、カチオン重合の開始剤は、カチオンを生成し、アニオン重合の開始剤は、アニオンを生成し、他の開始剤は、重合を開始又は促進する他の種を形成する。
【0254】
重合を促進する薬剤(例えば開始剤又は活性剤)は、それぞれの硬化性材料に接触したときに重合に対して活性であることができるか、又は硬化条件に露出することなしでは硬化性材料の重合に対して化学的に不活性であることができ、例えばそれは、硬化条件に露出することなしでは重合可能な材料の重合及び/又は架橋を開始又は促進しない。かかる実施形態では、硬化条件は、開始剤を活性化し、一般に活性化された開始剤は、それぞれの重合可能な材料の重合を開始及び/又は促進する反応種をその近くで発生する。
【0255】
光照射によって活性化される開始剤は、本明細書及び当業者において光開始剤として言及される。熱によって活性化される開始剤は、本明細書及び当業者において熱開始剤として言及される。開始剤は、活性剤としても知られる別の化学薬剤に接触することによって代替的に化学的に活性化されることができる。さらに代替的に、開始剤は、硬化条件によって活性化されることができ、活性剤に接触することによって反応種を生成することができる。
【0256】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、シアネートエステルの重合を促進するための薬剤は、第一硬化条件及び/又は第二硬化条件をさらす前にシアネートエステルの重合を促進することに対して不活性(非活性、非反応性)であるか、又は部分的に活性(部分的に反応性)である。
【0257】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、シアネートエステルの重合を促進するための薬剤は、第二硬化条件にさらす前にシアネートエステルの重合を促進することに対して不活性(非活性、非反応性)であるか、又は部分的に活性(部分的に反応性)である。即ち、シアネートエステルの重合を促進するための薬剤は、第一硬化条件にさらすとシアネートエステルの重合を促進することに対して不活性(非活性、非反応性)のままであるか、又は部分的に活性(部分的に反応性)のままである。
【0258】
一部の実施形態によれば、シアネートエステルの重合を促進するための薬剤は、第一硬化条件及び/又は第二硬化条件にさらすことによって活性化可能である。
【0259】
一部の実施形態によれば、シアネートエステルの重合を促進するための薬剤は、第一硬化条件及び第二硬化条件にさらすことによって活性化可能である。
【0260】
「不活性」又は「非活性」又は「部分的に活性」は、薬剤が第一硬化性材料(シアネートエステル)に接触し、任意選択的に硬化条件(例えば第一硬化条件)にさらされると、硬化性材料の30%以下、又は20%以下、又は10%以下の重合しか一つの層の吐出から続く層の吐出までの時間期間(一般的には数ミリ秒から数分、但しそれらの間のいかなる中間値及び下位範囲を含む)の中で起こらないということを意味する。
【0261】
本発明の一部の実施形態によれば、第一硬化性材料(シアネートエステル)の重合を促進する薬剤は、求核性、即ちシアネートエステルに対して反応性である求核基を含む化合物である。例示的な求核基は、アミン、チオレート、ヒドロキシド、アルコキシドなどを含む。
【0262】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、第一硬化性材料の重合を促進する薬剤は、それが第一硬化条件にさらされないとき、噴射温度(例えば50~90℃)で第二硬化性材料及び任意選択的にいずれかの他の硬化性材料(もし存在するなら)の重合に対して非反応性である。任意選択的に、第一硬化性材料の重合を促進する薬剤は、第一硬化条件にさらされると、第二硬化性材料、及び任意選択的にいずれかの他の硬化性材料(もし存在するなら)の重合に対して非反応性である。
【0263】
示された(例えば第二)硬化性材料の重合に対して「非反応性」又は「非活性」であることは、第一硬化性材料の重合を促進する薬剤が噴射温度で他の硬化性材料に接触すると、他(例えば第二)の硬化性材料の10mol%以下の重合しか1分以内に起こらないということを意味する。重合度は、粘度の変化によって決定されることができ、それは、最小又はゼロである。
【0264】
一部の実施形態では、薬剤は、薬剤とそれぞれの硬化性材料の混合物がある条件に供されるとき、混合物の粘度の変化を決定することによって、示される重合に対して非反応性又は非活性であるとして決定される。条件は、例えば噴射温度又は硬化条件(例えば第一硬化条件)であることができる。関連時間期間(例えば1分)以内の10%以下の混合物の粘度の変化は、薬剤が重合に対して非反応性であることを示す。
【0265】
一部の実施形態では、第二硬化性材料、及び第一硬化性材料の硬化を促進する薬剤が混合されるとき、得られる混合物は、2週間65℃で維持されると、10%以下、又は5%以下、又は2%以下しか粘度の変化を示さない。
【0266】
シアネートエステルの重合を促進する文脈において使用可能な求核化合物であって、第二硬化性材料、及び任意選択的にいずれかの他の硬化性材料(もし存在するなら)に対して非反応性であるものが、考えられる。
【0267】
例示的な実施形態では、第一硬化性材料の重合を促進する薬剤は、チオール化合物、即ち一つ以上のチオール基を含む化合物である。
【0268】
業界で知られているように、チオールは、チオレートを形成するために活性化されることができ、それは、シアネートエステルの重合における反応性求核種である。
【0269】
一部の実施形態では、チオール化合物は、一つ以上の炭素原子に結合された一つ以上のチオール基を含み、これらの一つ以上の炭素原子は、例えばメチルのようなアルキルによってさらに置換される。
【0270】
例示的なチオール化合物は、商品名Karenzの下で販売されるファミリーに属するものである。
【0271】
一部の実施形態では、シアネートエステルの重合を促進する薬剤としてチオール化合物を含むシアネートエステルの硬化可能な系は、チオレート種を生成するための薬剤をさらに含むことが好ましい。
【0272】
一部の実施形態では、かかる薬剤は、塩基、例えばアミン、好ましくは第三アミンである。
【0273】
一部の実施形態では、チオレートを生成する薬剤は、光塩基であり、それは、光照射にさらすと塩基を生成する。例示的な光塩基は、光照射にさらすと第三アミンのような塩基を生成するものである。
【0274】
一部の実施形態では、配合系中の第一の硬化可能な系は、本明細書に記載されるようにシアネートエステル、シアネートエステルの重合を促進する薬剤としてのチオール、及びチオレートを生成することによってチオールを活性化するための塩基を含む。これらの実施形態の一部では、シアネートエステル及び塩基は、第一配合物に含められ、チオールは、第二配合物に含められる。
【0275】
これらの実施形態の一部では、塩基は、光照射にさらすと第三アミンを生成する光塩基である。
【0276】
例示的なかかる硬化可能な系は、図8に与えられ、プロセス時に実施される反応は、図9に与えられる。
【0277】
チオールは、第一硬化条件にさらされることによって(チオレート基が生成されるとき)及び第二硬化条件にさらされることによって(チオレートが重合を促進するとき)活性可能である、シアネートエステルの重合を促進するための薬剤の一例である。
【0278】
例示的な実施形態では、第一硬化性材料の重合を促進する薬剤は、アミン、即ち一つ以上のアミン基を含む化合物である。
【0279】
図10に示されるように、アミンは、他の活性剤と比べて実質的に低い温度でシアネートエステルの重合に対して極めて反応性である。
【0280】
アミンは、芳香族又は非芳香族(脂肪族又は脂環族)アミンであることができる。
【0281】
アミンは、第一、第二、又は第三アミンであることができるが、第一又は第二アミンが好ましい。
【0282】
一部の実施形態では、アミンは、芳香族アミンであり、それは、一つ以上のアミン基によって及び/又はアミン基を含む一つ以上の置換基によって、及び任意選択的に一つ以上の追加の置換基によって置換されるアリールを含む。アミン置換基の各々は、独立して第一又は第二アミンであることができる。
【0283】
例示的な芳香族アミンはEthacure 100LC(第一アミン)、Ethacure 320(第一アミン)、及びEthacure 420(第二アミン)の商品名下で販売されている。
【0284】
一部の実施形態では、アミンは、第二アミンである。
【0285】
一部の実施形態では、アミンは、第二芳香族アミンであり、それは、一つ以上のアミン含有置換基によって置換されたアリールを含み、一つ以上のアミン含有置換基は、第二アミンである。
【0286】
アミン(例えば本明細書に記載される)は、熱、例えば80℃以上の温度にさらすとシアネートエステルの重合に対して活性である。
【0287】
アミン(例えば芳香族アミン)は、第二硬化条件にさらすことによって活性可能である、シアネートエステルの重合を促進するための薬剤の一例である。
【0288】
一部の実施形態では、配合系中の第一の硬化可能な系は、本明細書に記載されるようなシアネートエステル、及びシアネートエステルの重合を促進する薬剤としてのアミン(例えば芳香族アミン)を含む。シアネートエステルは、第一配合物に含まれ、アミンは、第二配合物に含まれる。
【0289】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、シアネートエステルの重合を促進する薬剤は、第一硬化条件にさらすと、本明細書に規定されるように、重合に対して不活性であるか、又は部分的に活性である。一部の実施形態では、薬剤が第一硬化条件にさらされると活性可能であるとき、それは、第二硬化条件にさらされる前にシアネートエステルの重合に対して不活性又は部分的に活性であるままである。
【0290】
本実施形態の一部によれば、第一の硬化可能な系は、第一硬化性材料、第一硬化性材料の重合を促進する薬剤、及びそれを活性化する薬剤(もし存在するなら)が互いに接触し、第一硬化条件にさらされるとき、シアネートエステルの30%以下、又は20%以下、又は10%以下の重合しか起こらないように選択される。
【0291】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、シアネートエステルの重合を促進する薬剤は、熱(例えば熱エネルギー)、例えば本明細書に記載されるような高温(例えば80℃以上又は100℃以上)にさらすと重合に対して活性である。
【0292】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、第一硬化条件は、70℃以上での、好ましくは50℃以上での熱の付与を含まない。
【0293】
一部の実施形態では、第一硬化条件は、熱の付与を欠く。
【0294】
一部の実施形態では、第一硬化条件は、第二硬化性材料の少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%の重合を実施するように選択される。
【0295】
一部の実施形態では、第一硬化条件は、好ましくは本明細書に記載されるような熱の付与なしで、照射を含む。
【0296】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、第二の硬化可能な系は、光硬化可能な系、例えばUV硬化可能な系であり、第二硬化性材料は、光硬化性材料、例えばUV硬化性材料である。
【0297】
一部の実施形態では、第二の硬化可能な系は、好ましくは第一硬化条件にさらすと、第二硬化性材料の重合を促進する薬剤をさらに含む。例示的な実施形態では、この薬剤は、光開始剤である。
【0298】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、第二硬化性材料の重合を促進する薬剤は、第一配合物に含まれ、第二硬化性材料は、第二配合物に含まれる。
【0299】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、第一配合物は、第一硬化性材料、及び第二硬化性材料の硬化を促進する薬剤(例えば光開始剤)を含み、第二配合物は、第二硬化性材料(例えばUV硬化性材料)、及びシアネートエステルの重合を促進する薬剤を含む。これらの実施形態の一部では、第一配合物は、シアネートエステルの硬化を促進する薬剤を活性化する薬剤をさらに含む。
【0300】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、第二硬化性材料の重合を促進する薬剤は、シアネートエステルの重合に対して、本明細書に規定されるように、不活性であるか、又は部分的に活性である。
【0301】
例示的なかかる薬剤は、本明細書に記載されるような噴射温度でシアネートエステルの重合に対して活性である基を欠く。例示的な実施形態では、かかる薬剤は、本明細書に記載されるような求核基を欠く。一部の実施形態では、それは、第三アミン、及び/又はヒドロキシル及び/又はチオール及び/又はチオエーテルを欠く。一部の実施形態では、それは、ヒドロキシを欠く。
【0302】
本実施形態の文脈において使用可能な例示的な光開始剤は、以下の実施例の部分に記載される。
【0303】
一部の実施形態では、第二の硬化可能な系は、フリーラジカル重合によって重合可能であるアクリル化合物及び/又は他の光硬化性材料を含み、光開始剤は、フリーラジカル光開始剤である。
【0304】
フリーラジカル光開始剤は、それが本明細書に記載されるような求核基を含有、生成又は要求しない限り、紫外線又は可視線のような光照射にさらすとフリーラジカルを生成し、それによってアクリル材料の重合反応を開始するいずれかの化合物であることができ、シアネートエステルに可溶性であることが好ましい。
【0305】
フリーラジカル光開始剤は、それが本明細書に記載されるような求核基を含有、生成又は要求しない限り、紫外線又は可視線のような光照射にさらすとフリーラジカルを生成し、それによってアクリル材料の重合反応を開始するいずれかの化合物であることができ、シアネートエステルに可溶性であることが好ましい。
【0306】
例示的な光開始剤は、ベンゾフェノン、芳香族α-ヒドロキシケトン、ベンジルケタール、芳香族α-アミノケトン、フェニルグリオキザル酸エステル、モノ-アシルホスフィンオキシド、ビス-アシルホスフィンオキシド、トリス-アシルホスフィンオキシド、及び/又は芳香族ケトンから誘導されたオキシムエステルを含む。
【0307】
例示的な光開始剤は、限定されないが、カンファキノン;ベンゾフェノン、ベンゾフェノン誘導体、例えば2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、2-メチルベンゾフェノン、3-メチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2-メトキシカルボニルベンゾフェノン、4,4’-ビス(クロロメチル)-ベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシ-ベンゾフェノン、[4-(4-メチルフェニルチオ)フェニル]-フェニルメタノン、メチル-2-ベンゾイル-ベンゾエート、3-メチル-4’-フェニルベンゾフェノン、2,4,6-トリメチル-4’-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン;チオキサントン、チオキサントン誘導体、例えばOMNIPOL TXのようなポリマーチオキサントン;例えばベンジルジメチル-ケタール(IRGACURE(登録商標)651)のようなケタール化合物;アセトフェノン、アセトフェノン誘導体、例えばα-ヒドロキシ-シクロアルキルフェニルケトン又はα-ヒドロキシアルキルフェニルケトン、例えば2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン(DAROCUR(登録商標)1173)、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(IRGACURE(登録商標)184)、1-(4-ドデシルベンゾイル)-1-ヒドロキシ-1-メチル-エタン、1-(4-イソプロピルベンゾイル)-1-ヒドロキシ-1-メチル-エタン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(IRGACURE(登録商標)2959);2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン(IRGACURE(登録商標)127);2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオン-イル)-フェノキシ]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン;ジアルコキシアセトフェノン、α-ヒドロキシ-又はα-アミノ-アセトフェノン、例えば(4-メチルチオベンゾイル)-1-メチル-1-モルフォリノエタン(IRGACURE(登録商標)907)、(4-モルフォリノベンゾイル)-1-ベンジル-1-ジメチルアミノプロパン(IRGACURE(登録商標)369)、(4-モルフォリノベンゾイル)-1-(4-メチルベンジル)-1-ジメチルアミノプロパン(IRGACURE(登録商標)379)、(4-(2-ヒドロキシエチル)アミノベンゾイル)-1-ベンジル-1-ジメチルアミノプロパン)、(3,4-ジメトキシベンゾイル)-1-ベンジル-1-ジメチルアミノプロパン;4-アロイル-1,3-ジオキソラン、ベンゾインアルキルエーテル及びベンジルケタール、例えばジメチルベンジルケタール、フェニルグリオキザル酸エステル及びその誘導体、例えばメチル-α-オキソベンゼンアセテート、オキソ-フェニル酢酸2-(2-ヒドロキシ-エトキシ)-エチルエステル、二量体フェニルグリオキザル酸エステル、例えばオキソ-フェニル-酢酸1-メチル-2-[2-(2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ)-プロポキシ]-エチルエステル(IRGACURE(登録商標)754);ケトスルホン、例えばESACURE KIP 1001 M(登録商標);オキシム-エステル、例えば1,2-オクタンジオン1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-2-(O-ベンゾイルオキシム)(IRGACURE(登録商標)OXE01)、エタノン1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾル-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)(IRGACURE(登録商標)OXE02)、9H-チオキサンテン-2-カルボキシアルデヒド9-オキソ-2-(O-アセチルオキシム)、パーエステル,ベンゾフェノンテトラカルボキシパーエステル、モノアシルホスフィンオキシド、例えば(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシド(DAROCUR(登録商標)TPO)、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニル)ホスフィン酸エステル;ビスアシル-ホスフィンオキシド、例えばビス(2,6-ジメトキシ-ベンゾイル)-(2,4,4-トリメチル-ペンチル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド(IRGACURE(登録商標)819)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-2,4-ジペントキシフェニルホスフィンオキシド、トリスアシルホスフィンオキシド、ハロメチルトリアジン、例えば2-[2-(4-メトキシ-フェニル)-ビニル]-4,6-ビス-トリクロロメチル-[1,3,5]トリアジン、2-(4-メトキシ-フェニル)-4,6-ビス-トリクロロメチル-[1,3,5]トリアジン、2-(3,4-ジメトキシ-フェニル)-4,6-ビス-トリクロロメチル-[1,3,5]トリアジン、2-メチル-4,6-ビス-トリクロロメチル-[1,3,5]トリアジン、ヘキサアリールビスイミダゾール/共開始剤系、例えば2-メルカプト-ベンズチアゾールと組み合わされたオルト-クロロヘキサフェニル-ビスイミダゾール、フェロセニウム化合物、又はチタノセン、例えばビス(シクロペンタジエニル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-ピリール-フェニル)チタン(IRGACURE(登録商標)784)を含む。
【0308】
例示的なアルファ-ヒドロキシケトンPIは、限定されないが、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(IRGACURE(登録商標)184,I-184)、2-ヒドロキシ-1-{1-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-フェニル]-1,3,3-トリメチル-インダン-5-イル}-2-メチル-プロパン-1-オン(ESACURE ONE(登録商標))、及び1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(IRGACURE(登録商標)2959,I-2959)を含む。
【0309】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部によれば、光開始剤は、ホスフィンオキシドタイプ(例えばモノアクリレート化又はビスアクリレート化ホスフィンオキシドタイプ;BAPO又はBPO)光開始剤を含むか、又はそれから本質的になる。
【0310】
例示的なモノアシル及びビスアシルホスフィンオキシドは、限定されないが、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ジベンゾイルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、トリス(2,4-ジメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、トリス(2-メトキシベンゾイル)ホスフィンオキシド、2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6-ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,3,5,6-テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾイル-ビス(2,6-ジメチルフェニル)ホスホネート、及び2,4,6-トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシドを含む。約380nm~約450nmの範囲の波長で照射されたとき、フリーラジカル開始反応できる商業的に入手可能なホスフィンオキシド光開始剤は、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(IRGACURE 819)、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-(2,4,4-トリメチルフェニル)ホスフィンオキシド(CGI 403)、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルフェニルホスフィンオキシドと2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンの25:75の重量比の混合物(IRGACURE 1700)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドと2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンの1:1の重量比の混合物(DAROCUR 4265)、及びエチル2,4,6-トリメチルベンジルフェニルホスフィネート(LUCIRIN LR8893X)を含む。
【0311】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、第二硬化性材料の重合を促進する薬剤は、第一硬化性材料に溶解可能又は分散可能であり、この薬剤の量及びタイプは、印刷ヘッド及び/又はノズルの詰まりを起こしうる大きな粒子を形成することなしで第二配合物を噴射することを可能にするようなものである。
【0312】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、第二硬化性材料は、UV硬化性アクリル材料、又は二種以上のアクリル材料の組み合わせである。
【0313】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、第二硬化性材料は、硬化されたとき、少なくとも150℃のTgを与えるように選択される。
【0314】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、第二硬化性材料は、一種以上の多官能硬化性材料を含む。
【0315】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、第二硬化性材料は、一種以上の多官能硬化性材料を含み、これらの材料の少なくとも一種は、硬化されたとき、少なくとも150℃のTgを与える。
【0316】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、第二硬化性材料は、一種以上の多官能硬化性材料を含み、これらの材料のタイプ及び量は、硬化されたとき、少なくとも150℃の平均Tgを与えるように選択される。
【0317】
本明細書を通じて、平均Tgは、各成分のTgの合計にその相対重量部を掛け、それぞれの重量部の合計で割ったものを意味する。
【0318】
例えば、もし材料AがX重量%の量で含められ、Tg1を具備し、材料BがY重量%の量で含められ、Tg2を具備するなら、そのとき材料A及びBの平均Tgは、本明細書では以下のように計算される:
【0319】
本実施形態の文脈において使用可能な例示的な二官能硬化性材料は、まとめて式IIによって表わされる:
式中、Xは-O-及び-O-C(=O)-から選択され、
Dは、それぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書に規定されるような炭化水素であり、
Rx及びRyは、それぞれ独立して水素、アルキル、及びシクロアルキルから選択される。
【0320】
XがOであるとき、二官能硬化性材料は、ジビニルエーテルである。
【0321】
Xが-O-C(=O)-であるとき、二官能硬化性材料は、ジ(メタ)アクリレートである。
【0322】
Xが-O-C(=O)-であり、Rx及びRyが各々水素であるとき、二官能材料は、ジアクリレートである。
【0323】
Xが-O-C(=O)-であり、Rx及びRyが各々メチルであるとき、二官能材料は、ジメタクリレートである。
【0324】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、二官能硬化性材料は、式IIに描かれるジビニルエーテルである。
【0325】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、二官能硬化性材料は、式IIに描かれるジメタクリレートである。
【0326】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、炭化水素は、硬い部分、例えばシクロアルキル(脂環式部分)及び/又はアリール(例えばフェニル)又はアルカリール(例えばベンジル)のような環状部分であるか、又はそれを含む。
【0327】
多官能(メタ)アクリレートの限定されない例は、商品名SR-9003の下でSartomer Company(米国)によって販売される、プロポキシル化(2)ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ-アクリレート(DiTMPTTA)、ペンタエリスリトールテトラ-アクリレート(TETTA)、ジペンタエリスルトールペンタ-アクリレート(DiPEP)、及び脂肪族ウレタンジアクリレート、例えばEbecryl 230として販売されるもの、エトキシル化又はメトキシル化ポリエチレングリコールジアクリレート又はジメタクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート、ポリエチレングリコール-ポリエチレングリコールウレタンジアクリレート、部分的にアクリレート化されたポリオールオリゴマー、ポリエステルベースのウレタンジアクリレート、例えばCNN91として販売されるものを含む。
【0328】
150℃より高いTgを具備し、かつそれぞれの実施形態の文脈において使用可能である多官能(メタ)アクリレートの例は、限定されないが、商品名SR834,SR444D,SR368,SR833s,SR351,SR355及びSR299の下でSartomerによって販売される材料を含む。他の材料も考えられる。
【0329】
一部の実施形態では、第二硬化性材料は、二官能アクリル材料、好ましくは二官能アクリレート又はメタクリレートを含む。
【0330】
一部の実施形態では、第二硬化性材料は、二官能アクリル材料、好ましくは二官能アクリレート又はメタクリレート、及び別の多官能アクリレート又はメタクリレート、例えば三官能又は四官能アクリレート又はメタクリレートを含む。
【0331】
これらの実施形態の一部では、二官能アクリレート又はメタクリレートと他の官能アクリレート又はメタクリレートの重量比は、約10:1~2:1の範囲であり、それは、それらの間のいずれかの中間値及び下位範囲を含む。
【0332】
第二硬化性材料は、代替的に単官能であることができ、又は単官能アクリレート及び/又はメタクリレートのような一種以上の単官能硬化性材料を含む。
【0333】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、第二配合物中のシアネートエステルの重合を促進する薬剤の量は、第二配合物の全重量の約5~約25、又は約8~約20重量%の範囲であり、それは、それらの間のいずれかの中間値及び下位範囲を含む。
【0334】
例示的な実施形態では、第一硬化性材料の重合を促進する薬剤は、チオール化合物であり、チオール化合物の量は、第二配合物の全重量の10~25重量%の範囲である。図8及び9に示されているように、チオール化合物の一部は、第一硬化条件にさらすと第二硬化性材料とラジカル反応することができ、従ってその量は、極めて多いことが好ましい(十分な量のチオール化合物がシアネートエステルの重合を実施するために反応されないままであることを確実にするため)。
【0335】
例示的な実施形態では、第一硬化性材料の重合を促進する薬剤は、アミン化合物であり、アミン化合物の量は、第二配合物の全重量の5~15重量%の範囲である。
【0336】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、第一配合物中の第二硬化性材料の重合を促進する薬剤の量は、第一配合物の全重量の約0.1~約5、又は約0.1~約3、又は約0.5~約3、又は約0.5~約2、又は約0.5~約1.5重量%の範囲であり、それは、それらの間のいずれかの中間値及び下位範囲を含む。
【0337】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、一種以上の造形用材料は、シアネートエステルの重合を促進する金属種(それはまた、本明細書では金属触媒として言及される)をさらに含む。
【0338】
(金属触媒として)シアネートエステルの重合を促進するために業界で知られているいずれの金属ベース材料も考えられる。これらは、例えば銅、亜鉛、マンガン、スズ、鉛、コバルト、ニッケル、鉄、アルミニウム、もしくはチタンのような金属のキレート又は酸化物、又は有機酸の金属塩(その金属は、銅、亜鉛、鉛、ニッケル、鉄、スズ、又はコバルトである)を含む。
【0339】
金属種は、第一配合物に含められないことが好ましく、第二配合物又は追加の造形用配合物に含められることができる。
【0340】
一部の実施形態では、金属種は、第二配合物に含められ、この配合物に溶解可能又は分散可能であるように選択される。
【0341】
例示的な金属種は、亜鉛イオン及び有機部分(好ましくは疎水性部分)の錯体であり、例えばネオデカノエート亜鉛であるが、これに限定されない。
【0342】
一部の実施形態では、金属種(金属触媒)の量は、それを含む配合物(例えば第二配合物)の全重量の約0.01~約0.5重量%、又は約0.01~約0.2重量%の範囲である。
【0343】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、本明細書に記載されるような方法に使用される二種の造形用材料配合物は、シアネートエステルと相互作用することができる追加の硬化性材料をさらに含むことができ、それによってコポリマーネットワークを形成できる。かかる材料は、任意選択的に、第一硬化性材料の一部と見なすことができる。なぜならそれは、シアネートエステルから作られたポリマーネットワークの一部を形成するからである。
【0344】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、追加の硬化性材料は、第一硬化条件及び/又は第二硬化条件にさらすとシアネートエステルと相互作用することができる。
【0345】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、追加の硬化性材料は、第一硬化条件にさらすとシアネートエステルと相互作用することができる。
【0346】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、追加の硬化性材料は、第二硬化条件にさらすとシアネートエステルと相互作用することができる。
【0347】
例示的なかかる材料は、エポキシ含有硬化性材料である。
【0348】
エポキシ含有硬化性材料は、芳香族、脂肪族又は脂環族部分を置換する一つ以上の硬化可能なエポキシ基を含む。
【0349】
本明細書の全体を通じて、「芳香族部分」は、一つ以上のアリール又はヘテロアリール基であるか又はそれを含む部分を記載する。
【0350】
本明細書の全体を通じて、「脂肪族部分」は、アリール又はヘテロアリール基を含まない部分を記載し、それは、非環式又は環式であることができ、後者の場合においてそれはまた、本明細書において脂環式部分として言及される。
【0351】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、追加の硬化性材料は、室温で1000未満又は500未満のセンチポアズの粘度を具備する。
【0352】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、エポキシ含有硬化性材料は、室温で1000未満又は500未満のセンチポアズの粘度を具備する。例示的なかかる材料は、一般的に脂肪族又は脂環式エポキシ含有材料であり、それは、単官能又は多官能であることができる。
【0353】
例示的なエポキシ含有硬化性材料は、限定されないが、ビス-(3,4-シクロヘキシルメチル)アジペート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、1,2エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン、1,2-エポキシヘキサデカン、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(それは、例えばCytec Surface Specialties SA/NV(ベルギー)からの商品名UVACURE 1500の下で入手可能である)、及びPolyset Company(米国)から入手可能であるPC 1000のような単又は多官能シリコーンエポキシ樹脂を含む。
【0354】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、追加の硬化性材料(例えばエポキシ含有材料)は、第一配合物に含められない。
【0355】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、追加の硬化性材料(例えばエポキシ含有材料)は、第二配合物に含められる。
【0356】
追加の硬化性材料の量は、得られたシアネートエステル含有ポリマーネットワークの機械特性及びコストのような考慮事項に従って希望により選択されることができる。
【0357】
一部の実施形態では、第二配合物に含められるときの追加の硬化性材料の量、及び第一及び第二配合物の重量比は、シアネートエステル及び追加の硬化性材料の全重量が第一及び第二配合物の全重量の約60~約80重量%の範囲であるように選択される。以下は、本実施形態の文脈において使用可能な例示的な限定されない配合系を記載する。
【0358】
第一の例示的な配合系は、シアネートエステル及び本明細書に記載されるような光開始剤を含む第一配合物、及び一種以上の多官能アクリレート又はメタクリレート及び芳香族アミンを含む第二配合物を含む。これらの実施形態の一部では、芳香族アミンは、第二芳香族アミンであるか、又はそれを含む。
【0359】
これらの実施形態のいずれかの一部では、多官能アクリル材料の全量は、第一及び第二配合物の全重量の20~40、又は20~30、又は25~30重量%の範囲である。
【0360】
これらの実施形態の一部では、芳香族アミンの量は、第一及び第二配合物の全重量の2~4重量%の範囲である。
【0361】
第二の例示的な配合系は、シアネートエステル及び本明細書に記載されるような光開始剤を含む第一配合物、及び一種以上の多官能アクリレート又はメタクリレート及びチオール化合物を含む第二配合物を含む。この例示的な配合系の一部の実施形態では、光開始剤は、第一硬化条件にさらされると第三アミンを生成する。
【0362】
例示的な配合系は、第一硬化性材料及び光開始剤を含む第一配合物、及び硬化されたとき、少なくとも150℃の平均Tgを具備する多官能アクリル材料、及び芳香族アミンを含む第二配合物を含む。
【0363】
これらの実施形態の一部では、芳香族アミンは、第二芳香族アミンである。
【0364】
これらの実施形態のいずれかの一部では、多官能アクリル材料の全量は、第一及び第二配合物の全重量の20~40、又は20~30、又は25~30重量%の範囲である。
【0365】
これらの実施形態の一部では、芳香族アミンの量は、第一及び第二配合物の全重量の2~4重量%の範囲である。
【0366】
これらの実施形態の一部では、光開始剤の量は、第一及び第二配合物の全重量の0.5~1.5重量%の範囲である。
【0367】
例示的な実施形態では、第一配合物は、以下のものを含む:
第一配合物の全重量の90~99重量%の量の、それぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載されたようなシアネートエステルである第一硬化性材料;及び
第一配合物の全重量の0.5~3、又は1~2.5重量%の量の、それぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載されたような光開始剤。
【0368】
例示的な実施形態では、第二配合物は、以下のものを含む:
第二配合物の全重量の86~95重量%の全量の、硬化されたとき、少なくとも150℃の平均Tgを具備する一種以上の多官能アクリル材料;及び
第二配合物の全重量の5~10重量%の全量の、芳香族アミン(第一、第二、又はそれらの混合物)。
【0369】
これらの例示的な実施形態の一部では、第一及び第二配合物は、60:40~70:30(第一配合物:第二配合物)の範囲の比率で吐出される。
【0370】
これらの例示的な実施形態の一部では、第二配合物は、本明細書に記載されたような量で本明細書に記載されたような金属触媒をさらに含む。
【0371】
これらの実施形態の一部では、金属触媒の量は、第一及び第二配合物の全重量の1000ppm以下又は500ppm以下である。
【0372】
例示的な実施形態では、第一配合物は、本明細書に例示的な実施形態において記載されたようなものであり、第二配合物は、以下のものを含む:
第二配合物の全重量の40~60重量%の全量の、硬化されたとき、少なくとも150℃の平均Tgを具備する一種以上の多官能アクリル材料;
第二配合物の全重量の3~8重量%の全量の、芳香族アミン(第一、第二、又はそれらの混合物);及び
第二配合物の全重量の30~50重量%の量の、それぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載されたようなエポキシ含有硬化性材料。
【0373】
これらの例示的な実施形態の一部では、第一及び第二配合物は、60:40~40:60の範囲、又は50:50の比率(第一配合物:第二配合物)で吐出される。
【0374】
これらの例示的な実施形態の一部では、第二配合物は、本明細書に記載されたような量で本明細書に記載されるような金属触媒をさらに含む。
【0375】
これらの実施形態の一部では、金属触媒の量は、第一及び第二配合物の全重量の1000ppm以下又は500ppm以下である。
【0376】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、第一配合物は、追加の硬化性材料を欠く。
【0377】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、第一硬化性材料及び追加の硬化性材料(もし存在するなら)の全量は、少なくとも二つの配合物の全重量の50~80、又は60~80、又は60~70重量%の範囲である。
【0378】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、方法は、層の少なくとも一部において、吐出が第一及び第二配合物のものであり、一部の実施形態では、第一及び第二配合物が本明細書に記載されるようにボクセル化された態様で吐出されるように実施される。
【0379】
これらの実施形態の一部では、各ボクセル中の第一及び第二配合物の重量比は、約80:20~約20:80、又は約70:30~約30:70、又は約70:30~約50:50の範囲であり、それは、それらの間のいずれかの中間値及び下位範囲を含む。
【0380】
実施形態の一部では、複数の層中の第一及び第二配合物の全重量比は、約80:20~約20:80、又は約70:30~約30:70、又は約70:30~約50:50の範囲であり、それは、それらの間のいずれかの中間値及び下位範囲を含む。
【0381】
吐出の終わりに、複数の層から作られた未加工体が、例えば図7に示されるように得られる。
【0382】
一部の実施形態では、未加工体は、重合された第二硬化性材料、及び重合されない又は部分的に重合されたシアネートエステルを含む。未加工体は、任意選択的にかつ好ましくは本明細書に記載されるように第二硬化条件に供され、高い程度で、例えば少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%のシアネートエステルの重合を実施し、それによって最終的な物体を得る。
【0383】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、本明細書に記載されたような配合物は、各配合物が別個に貯蔵されるとき、高温であっても相対的に安定であり、貯蔵中の配合物の粘度の変化は、最小又はゼロである(例えば1日あたり1%未満)。
【0384】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、二つの配合物が互いに混合されるとき、粘度が増加する速度は、配合系が混合されるときに維持される温度に相関する。一部の実施形態では、25℃において、粘度増加速度は、1%/分未満である。40℃において、粘度は、2%/分未満又は1.5%/分未満の増加速度である。68℃では、粘度増加速度は、50%/分未満、例えば30~40%/分である。
【0385】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、方法は、第三配合物を吐出することをさらに含み、(少なくとも第一及び第二配合物の)本明細書に記載された配合系が第三配合物によって少なくとも部分的に包含又は包皮される内部領域を形成する。
【0386】
一部の実施形態では、第三造形用材料配合物は、第一硬化条件にさらすと硬化可能である第三硬化性材料、例えばアクリル材料のような一種以上のUV硬化性材料を含む。
【0387】
一部の実施形態では、第三配合物は、本明細書に記載されるような第一及び第二造形用材料配合物を含む配合系より高い程度の第三配合物の硬化を促進するために十分な量で、第一硬化条件にさらすと硬化を促進する光開始剤又はいずれかの他の薬剤を含む。
【0388】
図11A及び11Bを参照すると、それらは、両方ともに一部の例示的な実施形態に従った、本明細書に記載されたような第三配合物で形成された外殻によって包含される本明細書に記載されるような配合系で満たされた芯で製作された物体の横断面図、及び物体の単一層の平面図の簡略概略図を示す。
【0389】
一部の例示的な実施形態によれば、物体112は、本明細書に記載されるような配合系で形成された芯210、及びAMプロセス時に十分に硬化されるように構成される第三造形用材料配合物で形成された外殻220を含んでもよい。任意選択的に、一つ以上の支持体構造115は、物体112を支持するために形成されてもよい。支持体構造は、AMプロセス時に硬化によって凝固されてもよい。一部の例示的な実施形態によれば、芯210は、半固体状態に維持される。例えばAMプロセス時に外殻220が凝固されながらAMプロセス時に液体ゼリー状態に維持される。
【0390】
図11Bを参照すると、一部の例示的な実施形態によれば、AMプロセス中、層113は、層113の周囲を規定しうる第三配合物で形成された外部領域221、及び外部領域221によって部分的に包含される本実施形態の配合系で形成された内部領域221と共に印刷されることができる。一部の例示的な実施形態によれば、物体112を形成する複数の層は、外部領域221及び内部領域211の両方を含む層113と同様の方法で形成される。複数の層は、任意選択的に外殻220及び芯210を形成してもよい。外殻220は、芯210を封入するように規定されてもよい。他の例示的な実施形態では、物体112は、外殻220によって完全に封入されなくてもよい。外部領域221の厚さは、一つの印刷されたボクセルの厚さ、又は0.1~2mm、例えば0.3~1mm又は0.3mmの厚さを有するように規定されてもよい。
【0391】
任意選択的に、外部領域221を形成するために付与される第三配合物は、反応性であり、光開始剤を含む。従って、第三構築材料配合物は、硬化プロセス、例えばAMプロセス時に照射されるUV放射線に基づいて凝固する。一部の例示的な実施形態では、内部領域211は、本実施形態の配合系で形成され、その少なくとも一部に部分的に硬化されるだけのものを含む。むしろ、複数の内部領域211で形成された芯210は、後処理プロセス、例えば熱硬化プロセスで凝固されることができる。
【0392】
図12は、一部の例示的な実施形態による実施例の簡略フローチャートである。一部の例示的な実施形態によれば、インクジェット印刷システムと関連するデータプロセッサーは、物体データを受けとり、物体のまわりの外殻の幾何学形状を規定するように構成される(ブロック310)。外殻の幾何学形状を規定することは、外殻の厚さを規定することを含んでもよい。任意選択的に、厚さは、物体の幾何学形状に基づいて変化するように選択的に規定されてもよい。外殻は、物体の容積の一部であってもよいし、又は物体の外部にあり、AMプロセスの終わりに除去されるように構成されてもよい。一部の例示的な実施形態では、芯中の希望の凝固の程度もまた、例えば第一及び第二配合物の重量比を規定することによって規定されることができる(ブロック320)。芯の凝固の程度は、芯中の反応配合物のvol%を追加することに基づいて選択的に規定されることができる。
【0393】
一部の例示的な実施形態では、規定された外殻及び芯を含む物体の造形物は、印刷可能な層に分割される(ブロック330)。印刷中、プリンターは、配合系、第三配合物及び任意選択的に支持体材料を層ごとに選択的に吐出する(ブロック340)。任意選択的に、層は、平らにされ(ブロック350)、次いで第一硬化条件にさらされる(ブロック360)。このプロセスは、全ての層が構築されるまで継続してもよい(ブロック370)。層構築プロセスの終わりに、第二硬化条件(例えば熱後処理)への露出(ブロック380)は、物体、例えば芯の凝固を完了するために実施されることができる。熱後処理は、例えば80℃~250℃又は150℃~250℃の温度で1~10時間物体を加熱することを含むことができる。熱後処理は、上で示された範囲の第一温度に第一時間期間(例えば1~4時間)加熱し、次いで第一温度より高い第二温度に第二時間期間(例えば1~4時間)加熱し、任意選択的に第三、第四などの温度に追加の時間期間加熱することによって徐々に実施されることができる。支持体材料(存在するとき)は、第二硬化条件にさらす前又は後に除去されることができる(ブロック390)。
【0394】
図13は、一部の例示的な実施形態による三次元印刷のためのインクジェット印刷システムの一例の簡略ブロック図である。一部の例示的な実施形態によれば、インクジェット印刷システム200は、インクジェットシステム100と同様であることができるが、本実施形態による材料で印刷するためのシステムを構成するために複数の適応を持つ。一部の例示的な実施形態によれば、好ましくは構築材料供給システム又は装置130’は、第一配合物を有する少なくとも一つの容器又はカートリッジ、第二配合物を有する別の容器又はカートリッジ、及び第三配合物を有する別の容器又はカートリッジを含む。一部の例示的な実施形態によれば、データープロセッサ―154’は、コンピューター物体データを得、物体112の外殻及び芯を規定するデジタルデータを計算するように構成される。外殻の厚さは、物体112の形状、物体112のサイズ、及び物体112を製作するために選択される材料に基づいてデータープロセッサ―154’で規定されることができる。一部の例示的な実施形態では、芯中で本明細書に記載されるような第一及び第二配合物をインターレースするためのパラメーターはまた、物体112の形状、物体112のサイズ、及び物体112を製作するために選択された材料に基づいてデータープロセッサ―154’によって規定される。パラメーターは、各ボクセル及び/又は層中の配合物のvol%を含んでもよい。一部の例示的な実施形態によれば、インクジェット印刷システム200は、インクジェットプリンター114で印刷された物体112を受け、インクジェットプリンター114でAMプロセスの終わりに物体を後処理するために構成された加熱室190をさらに含む。
【0395】
本発明の一部の実施形態によれば、吐出された層の少なくとも一部において、配合系及び第三配合物は、本明細書に記載されるように吐出され、第一硬化条件にさらされる。配合系及び第三配合物及び第一硬化条件は、第一硬化条件にさらされると、第三配合物が配合系より高い程度に硬化されるように選択される。配合系及び第三配合物及び第一硬化条件は、第一硬化条件にさらされると、第三配合物が高い硬化度を有する硬化材料を与え、それによって配合系が第二硬化性材料のみの硬化を受け、第三配合物によって与えられるものより低い硬化度の材料を与えるように選択される。
【0396】
本発明の一部の実施形態によれば、配合系及び第三配合物及び第一硬化条件は、第一硬化条件にさらされると、第三配合物の硬化動力学パラメーターが配合系のそれより高いように選択される。一部の実施形態では、硬化動力学パラメーターは、配合物の粘度の変化の速度及び/又は配合物のtanδの変化の速度のような流動学的な動力学パラメーターである。これらの動力学パラメーターは、当業者に公知の方法によって測定されることができる。
【0397】
一部の実施形態では、第三配合物の硬化動力学パラメーターは、配合系のそれより少なくとも2倍、又は少なくとも5倍、又は少なくとも10倍高い。
【0398】
粘度の変化の速度は、異なる時点で第一硬化条件にさらされるときに一定温度で配合物の粘度を測定することによって測定されることができる。粘度は、例えばブルックフィールド粘度計によって測定されることができる。
【0399】
「Tanδ」は、「tan(正接)デルタ」、「タンジェント(正接)デルタ」、「損失タンジェント(正接)」としても業界で使用されかつ知られているが、貯蔵弾性率に対する損失弾性率の割合、又は応力と歪の間の位相遅れの正接を意味する。
【0400】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、第一硬化条件にさらすと、第三配合物は、第一硬化条件に配合系をさらすと形成される材料の硬化度より少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又はそれより大きく高い、本明細書に規定されるような硬化度を具備する材料を与える。
【0401】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、第三配合物は、第一硬化条件にさらすと、少なくとも50%、又は少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又はさらには100%の本明細書に規定されるような硬化度を与えるようなものである。例えば、一部の実施形態では、第三配合物は、重合可能な材料である一種以上の硬化性材料を含み、硬化度は、硬化条件にさらすと重合する硬化性材料のmol%を表わし、例えば重合可能な材料の少なくとも50mol%、又は少なくとも60mol%、好ましくは少なくとも70mol%、又は少なくとも80mol%、又は少なくとも90mol%、又は全てが重合を受け、それによって硬化された第三配合物を与える。第三配合物は、第一硬化条件にさらすと高い硬化度を受けるので、それは、本明細書では反応性配合物として言及され、即ち第三配合物は、第一硬化条件にさらすと硬化に対して反応性である。
【0402】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、配合系は、第一硬化条件にさらすと、50%以下、又は40%以下、好ましくは30%以下、又は20%以下、又は10%以下、又は5%以下、又はさらにはゼロの本明細書に規定されるような全硬化度を与えるようなものである。例えば、配合系は、シアネートエステルである第一硬化性材料、及び本明細書に規定されるような第二硬化性材料を含み、硬化度は、硬化条件にさらすと重合する全硬化性材料のmol%を表わし、例えば重合可能な材料の50mol%以下、又は40mol%以下、好ましくは30mol%以下、又は20mol%以下、又は10mol%以下、又は5mol%が重合を受けるか、又は全く重合を受けないようなものである。第一硬化性材料は、第一硬化条件にさらすと低い重合度又はゼロの重合度を受けるので、それは、本明細書では部分的に反応性の配合物として言及される。即ち、配合系は、第一硬化条件にさらすと硬化に対して部分的に反応性である。
【0403】
本明細書に規定されるような硬化度は、例えば第一硬化条件にさらしたときの配合系及び第三配合物の硬化パラメーターを決定することによって決定又は測定されることができる。
【0404】
硬化パラメーターは、例えば第一硬化条件にさらしたときの配合物の粘度、及び/又は第一硬化条件にさらしたときの配合物の損失正接(tanδ)のような流動学的パラメーターであることができる。
【0405】
本発明の一部の実施形態によれば、配合系及び第三配合物及び第一硬化条件は、第一硬化条件にさらすと、第三配合物の硬化パラメーターの変化が配合系の硬化パラメーターの変化より大きいように選択される。
【0406】
「第一硬化条件にさらすと(露出すると)」の文脈における「硬化パラメーターの変化」は、時間Tの間の本明細書に記載されるような硬化パラメーターの変化を意味し、Tは、第一硬化条件が吐出された層に付与された時点から続く層が吐出された時点までの時間期間を表わす。
【0407】
本発明の一部の実施形態によれば、配合系及び第三配合物及び第一硬化条件は、第一硬化条件にさらすと、第三配合物の粘度の変化が配合系の粘度の変化より大きいようなものである。
【0408】
これらの実施形態の一部によれば、第三配合物の粘度の変化は、配合系のそれより少なくとも2倍、又は少なくとも5倍、又は少なくとも10倍高い。
【0409】
これらの実施形態の一部によれば、本明細書に規定されるような時間Tの間の第三配合物の粘度の変化は、第三配合物の粘度が少なくとも2倍又は少なくとも5倍又は少なくとも10倍増加するようなものである。これらの実施形態の一部によれば、本明細書に規定されるような時間Tの間の配合系の粘度の変化は、ゼロ、即ち1倍であるか、又は2倍未満であり、例えば1.1,1.2,1.3,1.4又は1.5倍であることができる。
【0410】
本発明の一部の実施形態によれば、配合系及び第三配合物及び第一硬化条件は、第一硬化条件にさらすと、第三配合物の損失正接の変化が配合系の損失正接の変化より大きいように選択される。
【0411】
これらの実施形態の一部によれば、第三配合物の損失正接の変化は、配合系のそれより少なくとも2倍、又は少なくとも5倍、又は少なくとも10倍大きい。
【0412】
これらの実施形態の一部によれば、本明細書に規定された時間T中の第三配合物の損失正接の変化は、少なくとも一単位を有し、例えば第三配合物の損失正接が少なくとも一単位、又は少なくとも二単位又はそれより多く増加する。これらの実施形態の一部によれば、本明細書に規定された時間T中の配合系の損失正接の変化は、ゼロであるか、又は一単位より小さく、又は0.5単位より小さく、例えば0.1,0.2,0.3,0.4、又は0.5単位であることができる。
【0413】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、第三配合物は、第一硬化条件にさらすと硬化し、配合系は、第一硬化条件にさらすと本明細書に記載されるように低い程度に硬化し、第一硬化条件とは異なる第二硬化条件にさらすと硬化するか又はさらに硬化する。一部の実施形態では、第三配合物は、第二硬化条件にさらすとさらに硬化することができることに注意すべきである。
【0414】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、第一硬化条件は、本明細書に記載されるように、光放射線、例えばUV放射線であり、第二硬化条件は、本明細書に記載されるように、熱である。
【0415】
配合系の硬化度と比べて本明細書に記載されているような硬化度を与えるいかなる配合物も、本明細書に記載されるような外部領域を形成する第三配合物として使用されることができる。
【0416】
例示的な実施形態では、第三配合物は、本明細書に記載されるように、一種以上のUV硬化性材料及び光開始剤を含む。
【0417】
一部の実施形態では、第三配合物は、硬化したとき、相対的に高いHDTの材料(例えば100℃を越えるHDT)を与える。例示的な第三配合物は、Stratasys(登録商標)Ltd.、イスラエルによって入手可能なRGD515(商品名)である。任意選択的に、RGD515(商品名)は、改良された耐衝撃性を与える。
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、第一及び/又は第二及び/又は第三配合物は、一種以上の追加の材料を独立してさらに含み、それは、非反応性材料(非硬化性材料)としても本明細書において言及される。
【0418】
かかる材料は、例えば表面活性剤(界面活性剤)、抑制剤、酸化防止剤、充填剤、顔料、染料、及び/又は分散剤を含む。
【0419】
界面活性剤は、配合物の表面張力を噴射のため又は印刷プロセスのために要求される値(それは、一般に約30dyne/cmである)に減少するために使用されることができる。かかる界面活性剤は、シリコーン材料、例えばBYKタイプ界面活性剤として商業的に入手可能なもののようなPDMS及びその誘導体の如き有機ポリシロキサンを含む。
【0420】
好適な分散剤はまた、シリコーン材料、例えばBYKタイプ界面活性剤として商業的に入手可能なもののようなPDMS及びその誘導体の如き有機ポリシロキサンであることができる。
【0421】
好適な安定剤は、例えば熱安定剤を含み、それは、高温で配合物を安定にする。
【0422】
用語「充填剤」は、ポリマー材料の特性を改変したり、及び/又は最終製品の品質を調整する不活性材料を記載する。充填剤は、無機粒子、例えば炭酸カルシウム、シリカ、及びクレーであることができる。
【0423】
充填剤は、例えば熱膨張係数を減少し、強度を高め、熱安定性を増加し、コストを減少し、かつ/又は流動特性を導入するために、重合時又は冷却時の収縮を減少するように造形用材料配合物に添加されることができる。ナノ粒子充填剤は、一般的にインクジェット用途のような低粘度を要求する用途において有用である。
【0424】
一部の実施形態では、界面活性剤及び/又は分散剤及び/又は安定剤及び/又は充填剤(もし存在するなら)の各々の濃度は、各配合物の全重量の0.01~2重量%、又は0.01~1重量%の範囲である。分散剤は、一般的に各配合物の全重量の0.01~0.1重量%、又は0.01~0.05重量%の範囲の濃度で使用される。
【0425】
一部の実施形態では、第一及び/又は第二及び/又は第三配合物は、抑制剤をさらに含む。抑制剤は、硬化条件にさらす前の硬化を防止又は減少するために含められる。好適な抑制剤は、例えば「Genorad」タイプとして又はMEHQとして商業的に入手可能なものを含む。いかなる他の好適な抑制剤も考えらえる。
【0426】
顔料は、有機及び/又は無機及び/又は金属顔料であることができ、一部の実施形態では、顔料は、ナノスケール顔料であり、それは、ナノ粒子を含む。
【0427】
例示的な無機顔料は、酸化チタン及び/又は酸化亜鉛及び/又はシリカのナノ粒子を含む。例示的な有機顔料は、ナノサイズのカーボンブラックを含む。
【0428】
一部の実施形態では、顔料の濃度は、各配合物の全重量の0.1~2重量%、又は0.1~1.5重量%の範囲である。
【0429】
一部の実施形態では、白色顔料と染料の組み合わせは、着色された硬化材料を作るために使用される。
【0430】
染料は、広い範囲の溶剤溶解性染料のいずれかであることができる。一部の限定されない例は、黄、オレンジ、茶、及び赤であるアゾ染料;緑及び青であるアントラキノン及びトリアリールメタン染料;及び黒であるアジン染料である。
【0431】
本明細書に記載された実施形態のいずれかの一部では、それぞれの実施形態のいずれか及びそれらのいずれかの組み合わせにおいて本明細書に記載されるように、配合系を構成する一種以上の造形用材料配合物を含むキットが提供される。
【0432】
一部の実施形態では、キットがそれぞれの実施形態のいずれか及びそれらのいずれかの組み合わせにおいて本明細書に記載されるように、二種以上の配合物を含む配合系を含むとき、各配合物は、キット内に個々に包装される。
【0433】
一部の実施形態では、キットは、本明細書に記載されるような第三配合物、又は第三配合物と組み合わせて配合系を使用するための指示をさらに含む。
【0434】
例示的な実施形態では、配合物は、好適な包装材料、好ましくは不透過性材料(例えば水及び気体不透過性材料)、さらに好ましくは不透明材料でキット内に包装される。
【0435】
一部の実施形態では、キットは、付加製造プロセス、好ましくは本明細書に記載されるような3Dインクジェット印刷プロセスにおいて配合物を使用するための指示をさらに含む。キットは、本明細書に記載されたような方法に従ったプロセスで配合物を使用するための指示をさらに含むことができる。
【0436】
本発明の実施形態は、本明細書に規定されるように、少なくとも一部においてポリシアヌレート材料を含む三次元物体を提供する。
【0437】
一部の実施形態によれば、三次元物体は、それぞれの実施形態のいずれかにおいて本明細書に記載されるような方法によって作られる。
【0438】
一部の実施形態によれば、物体中のポリシアヌレート材料は、高いHDT(この用語は、本明細書において規定される)、例えば200℃より高いHDT、又は250℃より高いHDT、又はそれより高いHDTによって特徴づけられる。
【0439】
本出願から成熟する特許の存続期間の期間中には、多くの関連する硬化性材料及び/又は硬化性材料の重合を促進するための各薬剤が開発されることが予想され、第一硬化性材料、第二硬化性材料、及びそれらの重合を促進する薬剤の用語の範囲は、すべてのそのような新しい技術を先験的に包含することが意図される。
【0440】
本明細書中で使用される用語「約」は、±10%又は±5%を示す。
【0441】
用語「含む/備える(comprises、comprising、includes、including)」、「有する(having)」、およびそれらの同根語は、「含むが、それらに限定されない(including but not limited to)」ことを意味する。
【0442】
用語「からなる(consisting of)」は、「含み、それらに限定される(including and limited to)」ことを意味する。
【0443】
表現「から本質的になる(consisting essentially of)」は、さらなる成分、工程および/または部分が、主張される組成物、方法または構造の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合にだけ、組成物、方法または構造がさらなる成分、工程および/または部分を含み得ることを意味する。
【0444】
用語「例示的」は、本明細書では「例(example,instance又はillustration)として作用する」ことを意味するために使用される。「例示的」として記載されたいかなる実施形態も必ずしも他の実施形態に対して好ましいもしくは有利なものとして解釈されたりかつ/または他の実施形態からの特徴の組み入れを除外するものではない。
【0445】
用語「任意選択的」は、本明細書では、「一部の実施形態に与えられるが、他の実施形態には与えられない」ことを意味するために使用される。本発明のいかなる特定の実施形態も対立しない限り複数の「任意選択的」な特徴を含むことができる。
【0446】
本明細書中で使用される場合、単数形態(「a」、「an」および「the」)は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の参照物を包含する。例えば、用語「化合物(a compound)」または用語「少なくとも1つの化合物」は、その混合物を含めて、複数の化合物を包含し得る。
【0447】
本出願の全体を通して、本発明の様々な態様が範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は単に便宜上および簡潔化のためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈すべきでないことを理解しなければならない。従って、範囲の記載は、具体的に開示された可能なすべての部分範囲、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値を有すると見なさなければならない。例えば、1~6などの範囲の記載は、具体的に開示された部分範囲(例えば、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6など)、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値(例えば、1、2、3、4、5および6)を有すると見なさなければならない。このことは、範囲の広さにかかわらず、適用される。
【0448】
数値範囲が本明細書中で示される場合には常に、示された範囲に含まれる任意の言及された数字(分数または整数)を含むことが意味される。第1の示された数字および第2の示された数字「の範囲である/の間の範囲」という表現、および、第1の示された数字「から」第2の示された数「まで及ぶ/までの範囲」という表現は、交換可能に使用され、第1の示された数字と、第2の示された数字と、その間のすべての分数および整数とを含むことが意味される。
【0449】
本明細書中で使用される用語「方法(method)」は、所与の課題を達成するための様式、手段、技術および手順を示し、これには、化学、物理および工学の技術分野の実施者に知られているそのような様式、手段、技術および手順、または、知られている様式、手段、技術および手順から、化学、物理および工学の技術分野の実施者によって容易に開発されるそのような様式、手段、技術および手順が含まれるが、それらに限定されない。
【0450】
本明細書及び業界で使用されているように、貯蔵弾性率(E′)は、動的機械分析で測定された材料の剛さを表わすものとして、ISO 6721-1に従って規定され、負荷サイクル中に標本に貯蔵されるエネルギーに比例する。一部の実施形態では、貯蔵弾性率は、後述の実施例の部分に記載されるように決定される。一部の実施形態では、貯蔵弾性率は、ASTM D4605に従って決定される。
【0451】
本明細書において「Tg」は、E′′曲線の極大値の位置として規定されたガラス転移温度を示し、E′′は、温度の関数として材料の損失弾性率である。広く言うと、温度がTg温度を含む温度の範囲内で上昇するにつれて、材料(特にポリマー材料)の状態がガラス状態からゴム状態に徐々に変化する。
【0452】
本明細書において「Tg範囲」は、E′′値が上で規定されたTg温度でのその値の少なくとも半分である(例えば、その値までであることができる)温度範囲である。
【0453】
いかなる特定の理論に拘束されることを望まないが、ポリマー材料の状態が上で規定されたTg範囲内でガラス状態からゴム状態に徐々に変化することが想定される。Tg範囲の最も低い温度は、本明細書においてTg(low)として言及され、Tg範囲の最も高い温度は、本明細書においてTg(high)として言及される。
【0454】
本明細書に記載された実施形態のいずれかでは、「Tgより高い温度」は、Tg温度より高い温度、又はより好ましくはTg(high)より高い温度を意味する。
【0455】
本明細書で使用されるHDTは、それぞれの材料がある温度で予め決められた負荷の下で変形する温度を示す。材料のHDTを決定するために好適な試験手順は、ASTM D-648シリーズ、特にASTM D-648-06及びASTM D-648-07法である。一部の実施形態では、HDTは、0.45MPaの圧力で決定される。
【0456】
本明細書中全体を通して、用語「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリル材料を包含する。
【0457】
本明細書中全体を通して、表現「連結部分」又は「連結基」は、化合物中の二つ以上の部分又は基を接続する基を記載する。連結部分は、一般的に二又は三官能化合物から誘導され、二つ又は三つのラジカル部分として見なされることができ、二つ又は三つのラジカルは、それぞれ、その二つ又は三つの原子を介して二つ又は三つの他の部分に接続される。
【0458】
例示的な連結部分は、本明細書に規定されるように、一つ以上のヘテロ原子によって任意選択的に中断される、炭化水素部分又は鎖、及び/又は連結基として規定されるとき、以下に挙げられる化学基のいずれかを含む。
【0459】
化学基が本明細書において「末端基」として言及されるとき、それは、置換基として中断され、置換基は、その一つの原子によって別の基に接続される。
【0460】
本明細書中全体を通して、用語「炭化水素」は、主として炭素及び水素原子から構成される化学基を集合的に記載する。炭化水素は、アルキル、アルケン、アルキン、アリール、及び/又はシクロアルキルからなることができ、各々は、置換されても置換されなくてもよく、一つ以上のヘテロ原子によって中断されてもよい。炭素原子の数は、2~30の範囲であり、好ましくはそれより低く、例えば1~10、又は1~6、又は1~4の範囲であることができる。炭化水素は、連結基又は末端基であることができる。
【0461】
ビスフェノールAは、2つのアリール基及び1つのアルキル基から構成される炭化水素の一例である。ジメチレンシクロヘキサンは、2つのアルキル基及び1つのシクロアルキル基から構成される炭化水素の一例である。
【0462】
本明細書で使用される用語「アミン」は、-NR’R”基および-NR’-基の両方を記載し、ここでR’およびR”はそれぞれ独立して水素、アルキル、シクロアルキル、またはアリールであり、これらの用語は本明細書中下記で定義される。
【0463】
本明細書で使用される用語「アミン」は、-NR’R”基および-NR’-基の両方を記載し、ここでR’およびR”はそれぞれ独立して水素、アルキル、シクロアルキル、またはアリールであり、これらの用語は本明細書中下記で定義される。
【0464】
代替的に、R’およびR”は、それぞれ独立してヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、アミン、ハリド、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、カルボニル、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカーバメート、O-チオカーバメート、尿素、チオ尿素、N-カーバメート、O-カーバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン、またはヒドラジンであることができる。
【0465】
用語「アミン」は、アミンが末端基である場合には、本明細書中下記で定義されるように、-NR’R”基を表すために本明細書中では使用され、また、アミンが連結基または連結部分の一部である場合には-NR’-基を表すために本明細書中では使用される。
【0466】
用語「アルキル」は、直鎖基および分枝鎖基を含む飽和した脂肪族炭化水素を記載する。好ましくは、アルキル基は1個~3個又は1個~20個の炭素原子を有する。数値範囲、例えば「1個~20個」が本明細書で述べられる場合は常に、それは基(この場合はアルキル基)が1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子などの20個までの炭素原子を含むということを意味する。アルキル基は、置換または非置換であり得る。置換されたアルキルは一つ以上の置換基を有することができ、それぞれの置換基は独立して、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、アミン、ハリド、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルフォンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカーバメート、O-チオカーバメート、尿素、チオ尿素、N-カーバメート、O-カーバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン、またはヒドラジンであることができる。
【0467】
アルキル基は、単一の隣接原子に結合された末端基(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)、またはその鎖中の少なくとも二つの炭素を介して二つ以上の部分を連結する連結基(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)であることができる。アルキルが連結基であるとき、それはまた、「アルキレン」または「アルキレン鎖」として本明細書中に言及される。
本明細書中で使用されるアルケンおよびアルキンは、一つ以上の二重結合または三重結合をそれぞれ含む、本明細書中で定義されるアルキルである。
【0468】
用語「シクロアルキル」基は、環の1つまたは複数が完全共役のπ電子系を有しない、すべて炭素からなる単環基または縮合環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を記載する。例示は、限定されないが、シクロヘキサン、アダマチン、ノルボルニル、イソボルニル、及びその類似物を含む。シクロアルキル基は、置換または非置換であることができる。置換されたシクロアルキルは一つ以上の置換基を有することができ、それぞれの置換基は独立して、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、アミン、ハリド、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルフォンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカーバメート、O-チオカーバメート、尿素、チオ尿素、N-カーバメート、O-カーバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン、またはヒドラジンであることができる。シクロアルキル基は、単一の隣接原子に結合された末端基(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)、またはその鎖中の少なくとも二つの炭素を介して二つ以上の成分を連結する連結基(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)であることができる。
【0469】
用語「複素脂環(ヘテロ脂環)」基は、例えば、窒素、酸素およびイオウなどの1個または複数個の原子を環(1つまたは複数)に有する単環基または縮合環基を記載する。環はまた、1つまたは複数の二重結合を有することができる。しかしながら、環は、完全共役のπ電子系を有しない。代表的な例は、ピペリジン、ピペラジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、モルホリノおよびその類似物である。
【0470】
複素脂環は、置換または非置換であることができる。置換された複素脂環は、一つ以上の置換基を有することができ、それぞれの置換基は、独立して、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、アミン、ハリド、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルフォンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカーバメート、O-チオカーバメート、尿素、チオ尿素、N-カーバメート、O-カーバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン、またはヒドラジンであることができる。複素脂環基は、単一の隣接原子に結合された末端基(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)、またはその鎖中の少なくとも二つの炭素を介して二つ以上の成分を連結する連結基(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)であることができる。
【0471】
用語「アリール」基は、完全共役のπ電子系を有する、すべて炭素からなる単環基または縮合多環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を記載する。アリール基は、置換または非置換であることができる。置換されたアリールは、一つ以上の置換基を有することができ、それぞれの置換基は独立して、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、アミン、ハリド、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルフォンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカーバメート、O-チオカーバメート、尿素、チオ尿素、N-カーバメート、O-カーバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン、またはヒドラジンであることができる。アリール基は、単一の隣接原子に結合された末端基(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)、またはその鎖中の少なくとも二つの炭素を介して二つ以上の成分を連結する連結基(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)であることができる。
【0472】
用語「ヘテロアリール」基は、例えば、窒素、酸素およびイオウなどの1個または複数個の原子を環(1つまたは複数)に有し、さらには完全共役のπ電子系を有する単環基または縮合環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を記載する。ヘテロアリール基の非限定的な例には、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリンおよびプリンが含まれる。ヘテロアリール基は、置換または非置換であることができる。置換されたヘテロアリールは、一つ以上の置換基を有することができ、それぞれの置換基は独立して、例えば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素脂環、アミン、ハリド、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルフォンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカーバメート、O-チオカーバメート、尿素、チオ尿素、N-カーバメート、O-カーバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン、またはヒドラジンであり得る。ヘテロアリール基は、単一の隣接原子に結合された末端基(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)、またはその鎖中の少なくとも二つの炭素を介して二つ以上の成分を連結する連結基(この用語は本明細書中上記で定義される通りである)であることができる。代表的な例はピリジン、ピロール、オキサゾール、インドール、プリンおよびその類似物である。
【0473】
用語「ハリド(ハライド)」および「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素、または沃素を記載する。
【0474】
用語「ハロアルキル」は、1つまたは複数のハリドによってさらに置換された、上記で定義されるアルキル基を記載する。
【0475】
用語「スルファート」は、-O-S(=O)-OR’末端基または-O-S(=O)-O-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0476】
用語「チオスルファート」は、-O-S(=S)(=O)-OR’末端基または-O-S(=S)(=O)-O-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0477】
用語「スルファイト」は、-O-S(=O)-O-R’末端基または-O-S(=O)-O-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0478】
用語「チオスルファイト」は、-O-S(=S)-O-R’末端基または-O-S(=S)-O-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0479】
用語「スルフィナート」は、-S(=O)-OR’末端基または-S(=O)-O-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0480】
用語「スルホキシド」または「スルフィニル」は、-S(=O)R’末端基または-S(=O)-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0481】
用語「スルホネート」は、-S(=O)-R’末端基または-S(=O)-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0482】
用語「S-スルホンアミド」は、-S(=O)-NR’R”末端基または-S(=O)-NR’-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’およびR”は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0483】
用語「N-スルホンアミド」は、R’S(=O)-NR”末端基または-S(=O)-NR’-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’およびR”は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0484】
用語「ジスルフィド」は、-S-SR’末端基またはS-S-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0485】
用語「ホスホナート」は、本明細書中で定義されるようなR’およびR”を有する-P(=O)(OR’)(OR”)末端基または-P(=O)(OR’)(O)-連結基を表す(これらの表現は本明細書中上記で定義される通りである)。
【0486】
用語「チオホスホナート」は、本明細書中で定義されるようなR’およびR”を有する-P(=S)(OR’)(OR”)末端基または-P(=S)(OR’)(O)-連結基を表す(これらの表現は本明細書中上記で定義される通りである)。
【0487】
用語「ホスフィニル」は、本明細書中上記で定義されるようなR’およびR”を有する-PR’R”末端基または-PR’-連結基を表す(これらの表現は本明細書中上記で定義される通りである)。
【0488】
用語「ホスフィンオキシド」は、本明細書中で定義されるようなR’およびR”を有する-P(=O)(R’)(R”)末端基または-P(=O)(R’)-連結基を表す(これらの表現は本明細書中上記で定義される通りである)。
【0489】
用語「ホスフィンスルフィド」は、本明細書中で定義されるようなR’およびR”を有する-P(=S)(R’)(R”)末端基または-P(=S)(R’)-連結基を表す(これらの表現は本明細書中上記で定義される通りである)。
【0490】
用語「ホスファイト」は、本明細書中で定義されるようなR’およびR”を有する-O-PR’(=O)(OR”)末端基または-O-PH(=O)(O)-連結基を表す(これらの表現は本明細書中上記で定義される通りである)。
【0491】
用語「カルボニル」または用語「カルボネート」は、本明細書中で使用される場合、本明細書中で定義されるようなR’を有する-C(=O)-R’末端基または-C(=O)-連結基を表す(これらの表現は本明細書中上記で定義される通りである)。
【0492】
用語「チオカルボニル」は、本明細書中で使用される場合、本明細書中で定義されるようなR’を有する-C(=S)-R’末端基または-C(=S)-連結基を表す(これらの表現は本明細書中上記で定義される通りである)。
【0493】
用語「オキソ」は、本明細書中で使用される場合、(=O)基を表し、この場合、酸素原子が、示された位置における原子(例えば、炭素原子)に二重結合によって連結される。
【0494】
用語「チオオキソ」は、本明細書中で使用される場合、(=S)基を表し、この場合、イオウ原子が、示された位置における原子(例えば、炭素原子)に二重結合によって連結される。
【0495】
用語「オキシム」は、=N-OH末端基または=N-O-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0496】
用語「ヒドロキシル」は、-OH基を記載する。
【0497】
用語「アルコキシ」は、本明細書中で定義される通り-O-アルキル基および-O-シクロアルキル基の両方を記載する。
【0498】
用語「アリールオキシ」は、本明細書中で定義される通り-O-アリール基および-O-ヘテロアリール基の両方を記載する。
【0499】
用語「チオヒドロキシ」は、-SH基を記載する。
【0500】
用語「チオアルコキシ」は、本明細書中で定義される通り-S-アルキル基および-S-シクロアルキル基の両方を記載する。
【0501】
用語「チオアリールオキシ」は、本明細書中で定義される通り-S-アリール基および-S-ヘテロアリール基の両方を記載する。
【0502】
「ヒドロキシアルキル」は、本明細書中で「アルコール」としても言及され、ヒドロキシ基によって置換される、本明細書中で定義されるアルキルを記載する。
【0503】
用語「シアノ」は、-C≡N基を記載する。
【0504】
用語「イソシアネート」は、-N=C=O基を記載する。
【0505】
用語「イソチオシアネート」は、-N=C=S基を記載する。
【0506】
用語「ニトロ」は、-NO基を記載する。
【0507】
用語「アシルハリド」は、-(C=O)R””基(式中、R””は本明細書中上記で定義される通りハリドである)を記載する。
【0508】
用語「アゾ」または「ジアゾ」は、-N=NR’末端基または-N=N-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0509】
用語「パーオキソ」は、-O-OR’末端基または-O-O-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0510】
用語「カルボキシレート」は、本明細書中で使用される場合、C-カルボキシレートおよびO-カルボキシレートを包含する。
【0511】
用語「C-カルボキシレート」は、-C(=O)-OR’末端基または-C(=O)-O-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0512】
用語「O-カルボキシレート」は、-OC(=O)R’末端基または-OC(=O)-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0513】
カルボキシレートは直鎖または環状であることが可能である。環状であるとき、R’と炭素原子とが一緒に連結されて、C-カルボキシレートで環を形成し、この基はまた、ラクトンとして示される。あるいは、R’とOとが一緒に連結されて、O-カルボキシレートで環を形成する。環状カルボキシレートは、例えば、形成された環における原子が別の基に連結されるときには、連結基として機能することができる。
【0514】
用語「チオカルボキシレート」は、本明細書中で使用される場合、C-チオカルボキシレートおよびO-チオカルボキシレートを包含する。
【0515】
用語「C-チオカルボキシレート」は、-C(=S)OR’末端基または-C(=S)-O-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0516】
用語「O-チオカルボキシレート」は、-OC(=S)R’末端基または-OC(=S)-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0517】
チオカルボキシレートは直鎖または環状であることが可能である。環状であるとき、R’と炭素原子とが一緒に連結されて、C-チオカルボキシレートで環を形成し、この基はまた、チオラクトンとして示される。あるいは、R’とOとが一緒に連結されて、O-チオカルボキシレートで環を形成する。環状チオカルボキシレートは、例えば、形成された環における原子が別の基に連結されるときには、連結基として機能することができる。
【0518】
用語「カーバメート(カルバメート)」は、本明細書中で使用される場合、N-カーバメートおよびO-カーバメートを包含する。
【0519】
用語「N-カーバメート」は、R”OC(=O)-NR’-末端基または-OC(=O)-NR’-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’およびR”は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0520】
用語「O-カーバメート」は、-OC(=O)-NR’R”末端基または-OC(=O)-NR’-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’およびR”は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0521】
カーバメートは、直鎖または環状であることが可能である。環状であるとき、R’と炭素原子とが一緒に連結されて、O-カーバメートで環を形成する。あるいは、R’とOとが一緒に連結されて、N-カーバメートで環を形成する。環状カーバメートは、例えば、形成された環における原子が別の基に連結されるときには、連結基として機能することができる。
【0522】
用語「カーバメート」は、本明細書中で使用される場合、N-カーバメートおよびO-カーバメートを包含する。
【0523】
用語「チオカーバメート」は、本明細書中で使用される場合、N-チオカーバメートおよびO-チオカーバメートを包含する。
【0524】
用語「O-チオカーバメート」は、-OC(=S)-NR’R”末端基または-OC(=S)-NR’-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’およびR”は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0525】
用語「N-チオカーバメート」は、R”OC(=S)NR’-末端基または-OC(=S)NR’-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’およびR”は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0526】
チオカーバメートは、カーバメートについて本明細書中に記載したように、直鎖または環状であることが可能である。
【0527】
用語「ジチオカーバメート」は、本明細書中で使用される場合、S-ジチオカーバメートおよびO-チオジチオカーバメートを包含する。
【0528】
用語「S-ジチオカーバメート」は、-SC(=S)-NR’R”末端基または-SC(=S)NR’-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’およびR”は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0529】
用語「N-ジチオカーバメート」は、R”SC(=S)NR’-末端基または-SC(=S)NR’-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’およびR”は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0530】
用語「尿素(ウレア)」(「ウレイド」とも称される)は、-NR’C(=O)-NR”R”’末端基または-NR’C(=O)-NR”-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’およびR”は本明細書中上記で定義される通りであり、R”’はR’およびR”について本明細書中で定義される通りである)を記載する。
【0531】
用語「チオ尿素(チオウレア)」(「チオウレイド」とも称される)は、-NR’C(=S)-NR”R”’末端基または-NR’-C(=S)-NR”-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’,R”およびR”’は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0532】
用語「アミド」は、本明細書中で使用される場合、C-アミドおよびN-アミドを包含する。
【0533】
用語「C-アミド」は、-C(=O)-NR’R”末端基または-C(=O)-NR’-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’およびR”は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0534】
用語「N-アミド」は、R’C(=O)-NR”-末端基またはR’C(=O)-N-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’およびR”は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0535】
アミドは、直鎖または環状であることが可能である。環状であるとき、R’と炭素原子とが一緒に連結されて、C-アミドで環を形成し、この基はまた、ラクタムとして示される。環状アミドは、例えば、形成された環における原子が別の基に連結されるときには、連結基として機能することができる。
【0536】
用語「グアニル」は、R’R”NC(=N)-末端基または-R’NC(=N)-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’およびR”は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0537】
用語「グアニジン」は、-R’NC(=N)-NR”R”’末端基または-R’NC(=N)-NR”-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’,R”およびR”’は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0538】
用語「ヒドラジン」は、-NR’-NR”R”’末端基または-NR’-NR”-連結基(これらの用語は本明細書中上記で定義される通りである)(式中、R’,R”およびR”’は本明細書中上記で定義される通りである)を記載する。
【0539】
本明細書中で使用される場合、用語「ヒドラジド」は、R’、R”およびR”’が本明細書中で定義される通りである-C(=O)-NR’-NR”R”’末端基または-C(=O)-NR’-NR”-連結基を表す(これらの表現は本明細書中上記で定義される通りである)。
【0540】
本明細書中で使用される場合、用語「チオヒドラジド」は、R’、R”およびR”’が本明細書中で定義される通りである-C(=S)-NR’-NR”R”’末端基または-C(=S)-NR’-NR”-連結基を表す(これらの表現は本明細書中上記で定義される通りである)。
【0541】
本明細書中で使用される場合、用語「アルキレングリコール」は-O-[(CR’R”)-O]-R”’末端基または-O-[(CR’R”)-O]-連結基を表し、ただし、式中、R’、R”およびR”’は本明細書中で定義される通りであり、zは1~10の整数であり、好ましくは2~6の整数であり、より好ましくは2または3の整数であり、yは1またはそれ以上の整数である。好ましくは、R’およびR”はともに水素である。zが2であり、かつ、yが1であるとき、この基はエチレングリコールである。zが3であり、かつ、yが1であるとき、この基はプロピレングリコールである。yが2~4であるとき、アルキレングリコールは、本明細書ではオリゴ(アルキレングリコール)として言及される。yが4よりも大きいとき、このアルキレングリコールは、本明細書ではポリ(アルキレングリコール)として示される。
【0542】
明確にするため別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴が、単一の実施形態に組み合わせて提供されることもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施形態で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで、あるいは本発明の他の記載される実施形態において好適なように提供することもできる。種々の実施形態の文脈において記載される特定の特徴は、その実施形態がそれらの要素なしに動作不能である場合を除いては、それらの実施形態の不可欠な特徴であると見なされるべきではない。
【0543】
本明細書中上記に描かれるような、および、下記の請求項の部分において特許請求されるような本発明の様々な実施形態および態様のそれぞれは、実験的裏付けが下記の実施例において見出される。
【実施例
【0544】
次に下記の実施例が参照されるが、下記の実施例は、上記の説明と一緒に、本発明を非限定様式で例示する。
【0545】
材料及び方法
配合系-一般:
本発明の一部の実施形態による例示的な配合系は、二つの造形用材料配合物から構成され、一つの配合物(部分A、本明細書に記載されるような第二造形用材料配合物に相当)は、高Tgアクリル光硬化性材料(第二硬化性材料)を含み、かつシアネートエステルベースの熱硬化性材料の硬化を促進する薬剤を含み、別の配合物(部分B、本明細書に記載されるような第一造形用材料配合物に相当)は、シアネートエステルベースの熱硬化性材料(第一硬化性材料)、及び任意選択的に光硬化性材料の硬化を促進する光開始剤を含む。各配合物は、任意選択的に界面活性剤、抑制剤、及び追加の活性剤をさらに含む。
【0546】
試験された配合物を構成する全ての試薬及び材料は、既知の販売者から得られた。
【0547】
配合物は、成分のTm(溶融温度)に依存して、室温から約80℃の範囲の温度で成分を混合することによって作られた。例示的な手順では、シアネートエステル硬化性材料の硬化を促進する薬剤(もし配合物中に存在するなら)を除いて、室温で液体である全ての成分は、室温で混合され、固形成分が添加され、混合物は、約80℃までの温度に加熱される。より高い温度での加熱も考えられるが、かかる加熱は、配合物の安定性を低下しうることが観察された。混合物は、次いで室温に冷却され、シアネートエステル硬化性材料の硬化を促進する薬剤(もし配合物中に存在するなら)が次いで添加される。
【0548】
3Dインクジェット印刷:
実験は、配合物の温度依存粘度プロファイルに依存して、約40℃~約100℃の範囲のインクジェット印刷ヘッド作用温度で操作される、E1印刷ヘッドを備えた、Connex(商品名)及びTriplex印刷システムを使用して行なわれた。典型的な実験では、印刷は、約68℃のインクジェット印刷ヘッド温度で実施された。
【0549】
他に示されない限り、造形物は、チェス(「サイドバイサイド」)50:50デジタルモード(DM)で印刷され、それは、図6A及び6Bに示されるように、トレイ上の部分A及び部分Bの均質な混合を可能にする。
【0550】
一部の場合では、造形物は、30:70~40:60(例えば30:70又は37.5:62.5)の部分B:部分Aの重量比を使用してデジタルモードで印刷された。
【0551】
一部の場合では、印刷は、DMにおいて、本明細書に記載されるような二つの配合物から作られた内部領域、及び本明細書に記載されるようなアクリルベースの配合物から作られた、一般的に0.1~0.5mm厚さの外部被覆を形成しながら、実施された。
【0552】
硬化:
例示的な第一硬化条件は、広い波長スペクトル(250~380nm)及び約1.4W/cmの光強度(合計)を有する標準中圧水銀ランプを使用する照射を含む。硬化層の上の印刷ヘッドの通過時間は、35~50℃の周囲温度で数ミリ秒である。
【0553】
熱硬化(熱エネルギーにさらすことによる硬化)は、標準実験/工業加熱オーブンで、約80~約250℃の温度(上限は、硬化された材料のTgに依存する)で、1~10時間、一般的に2~6時間、実施された。例示的な手順では、加熱は、85℃で2~4時間、次いで150℃で2~4時間、次いで220℃で2~4時間実施された。
【0554】
特性決定:
粘度は、ブルックフィールドのLVDV-II+粘度計を使用して測定された。
【0555】
HDT測定は、ASTM D-648-06に従ってCeast vicat/HDT器具で実施された。
【0556】
他の特性の測定は、他に示さない限り、標準的なプロトコルに従って実施された。
【0557】
実施例1
以下の表1は、例示的な部分A配合物の組成を与え、以下の表2は、例示的な部分B配合物の組成を与える。
【0558】
【0559】
【0560】
これらの及び他の実施形態に使用されうる例示的な光開始剤は、ITX-2とIrgacure I369の組み合わせである。ITX-2は、長波長(360~400nm)の光照射を吸収し、かつI369から生成される水素ラジカルによって活性化されるイソプロピルチオキサントンNorrishタイプII光開始剤である。
【0561】
(ASTM D256に従って)64×12.7×3.2mmの寸法を有する棒が、図14に示されるように、本明細書に記載されるような第三配合物としてRGD 515+を使用して印刷された。以下の表3は、印刷された棒物体の機械特性を与える。
【0562】
【0563】
実施例2
以下の表4は、例示的な部分A配合物の組成を与え、以下の表5は、例示的な部分B配合物の組成を与える。
【0564】
【0565】
【0566】
様々な形状の物体が、(本明細書に記載されるような第三配合物として)0.3mmの厚さのRGD515+被覆を有するDMモード37.5/62.5比で、図15に示されるように印刷された。以下の表6は、印刷された棒物体の機械特性を与える。
【0567】
【0568】
実施例3
粘度測定
一般に、部分A及び部分B配合物の安定性の試験のために、配合物が、好ましくは室温で作られ、65℃で貯蔵され、各配合物の粘度が、68℃で毎日測定された。
【0569】
(例えば表2及び5に描かれるような)例示的な部分B配合物は、4日間の貯蔵中に試験され、その粘度の変化は、全く観察されなかった。
【0570】
(芳香族アミン活性剤を含有する)表4に描かれるような例示的な部分A配合物は、4日間の貯蔵中に試験され、その粘度の変化は、全く観察されなかった。
【0571】
(チオール活性剤を含有する)以下の表7に描かれるような例示的な部分A配合物は、14日間の貯蔵中に試験され、以下の表8及び図16に示すように、その粘度の変化が全く観察されなかった。
【0572】
これらの試験で14日間で測定された配合物の安定性は、室温で8ヶ月間貯蔵されたときの配合物の安定性を示す。
【0573】
【0574】
【0575】
本明細書の実施例1に示されるような例示的な部分A及び部分B配合物の混合物が同じ条件下で試験されるとき、14時間後に粘度の増加が観察された、この時に混合物がゲル化したことが注目される。
【0576】
以下の表9及び図17は、様々な温度で、本明細書の実施例2に示されるような例示的な部分A及び部分B配合物の混合物の粘度測定を与える。
【0577】
そこに示されるように、粘度が増加する速度は、温度に相関し、それは、温度依存硬化速度を示す。25℃では、粘度は、約27%/30分の増加速度が観察され、それは、1%/分未満である。40℃では、約35%/30分の粘度増加速度が観察され、それは、約1.2%/分である。68℃では、約100%/30分の粘度増加速度が観察され、それは、約33%/分である。
【0578】
実施例4
部分Aがシアネートエステルの重合を促進する薬剤として金属触媒と芳香族第二アミンの組み合わせを含む配合系が使用された。
【0579】
芳香族第二アミンは、その改良された安定性(それは、酸化しにくい)及び親水性(それは、形成された未加工体及び物体の水吸収の減少をもたらす)によって有利であるが、かかる薬剤はまた、シアネートエステルの重合を促進する際に反応性に劣る。従って、シアネートエステルの重合に使用可能な金属触媒とかかる薬剤の組み合わせが使用された。
【0580】
例示的な金属触媒として、ネオデカノエート亜鉛(Alfa Aesarによって製造)が使用された。
【0581】
例示的な芳香族第二アミンとして、Ethacure 420(Albemarleによって製造)が使用された。
【0582】
以下の表9は、例示的な部分A配合物の組成を与え、以下の表10は、例示的な部分B配合物の組成を与える。
【0583】
【0584】
【0585】
68℃における上記の部分A及び部分B配合物の粘度は、それぞれ16.3センチポアズ及び20センチポアズであり、表面張力は、それぞれ29dyne/cm及び28dyne/cmである。
【0586】
第一アミン基を具備する芳香族アミン(例えばEthacure 100又はEthacure 320)を使用して、同様の配合系が作られ、実践された。
【0587】
これらの配合系は、本明細書に記載されるように、30:70(部分A:部分B)の重量比を使用して、本明細書に記載されるような方法に従って使用され、本明細書の実施例1及び2に記載された配合物と比較して改良された反応性を示した。
【0588】
改良された反応性は、二つの配合物の混合物又はそれから得られた未加工体が85℃の熱(熱硬化)にさらされるときに85℃より高いTgを具備する材料を得るために必要な時間によって観察された。かかる時間が一時間以内であるとき、反応性は、条件に合致すると考えられる。かかる時間が二時間より多いとき、反応性は、劣ると考えられる。
【0589】
この配合系から作られた物体は、第二硬化条件(熱硬化)にさらすと約285℃のTgを示した。全ての他の特性は、本明細書の実施例1及び2で得られた物体に対するものと実質的に同じままであった。
【0590】
実施例5
部分Aがシアネートエステルの重合を促進する薬剤として金属触媒と芳香族第二アミンの組み合わせを含み、さらにエポキシ樹脂を含む配合系が、使用された。
【0591】
エポキシ樹脂は、シアネートエステルと相互作用して共重合ネットワークを形成することが知られている。シアネートエステルとの共重合に関与する従来公知のエポキシ樹脂のいずれか一つ又は組み合わせが考えられ、それは、芳香族、脂肪族、及び脂環式エポキシド含有材料を含み、さらに本明細書に規定されるように、単官能又は多官能である上記の各々を含む。
【0592】
例示的な金属触媒として、ネオデカノエート亜鉛(Alfa Aesarによって製造)が使用された。
【0593】
例示的な芳香族第二アミンとして、Ethacure 420(Albemarleによって製造)が使用された。
【0594】
例示的なエポキシ樹脂(エポキシ含有硬化性材料)として、例えば商品名IndigotS105の下でLambsonによって販売される、室温で500cps未満の粘度を具備する脂環式二官能エポキシドが使用された。
【0595】
以下の表11は、例示的な部分A配合物の組成を与え、以下の表12は、例示的な部分B配合物の組成を与える。
【0596】
【0597】
【0598】
68℃での上記の部分A及び部分B配合物の粘度は、それぞれ18.7センチポアズ及び20センチポアズであり、両方の表面張力は、28dyne/cmである。
【0599】
この配合系は、本明細書に記載されるように、50:50(部分A:部分B)の重量比で、本明細書に記載されるような方法に従って使用され、本明細書の実施例1及び2に記載される配合物と比較して(本明細書に記載されるような)改良された反応性を示した。
【0600】
この配合系から作られた物体は、約255℃のTgを示した。全ての他の特性は、本明細書の実施例1及び2で得られた物体に対するものと実質的に同じままであった。
【0601】
この実施例に記載された配合系は、シアネートエステル含有ポリマーネットワークから作られた物体に対して一般的に観察されるものより低い水吸収を具備する3D物体を与える。
【0602】
本明細書の全体を通して及び業界において、用語「水吸収(water absorption)」は、「水吸収(water absorbance)」として交換可能に本明細書及び業界で使用され、これらの用語はともに、本明細書ではWAとして略され、24時間室温で水に浸漬されるとき、材料の重量に対して材料が吸収することができる水の量を記載する。試料の水吸収は、ASTM D57098に従って決定されることができる。
【0603】
本発明はその特定の実施態様と関連して説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形すべてを包含するものであることを意図される。
【0604】
本明細書で挙げた刊行物、特許および特許出願はすべて、個々の刊行物、特許および特許出願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。節の見出しが使用されている程度まで、それらは必ずしも限定であると解釈されるべきではない。
【0605】
さらに、この出願のいかなる先行文献も参考としてその全体をここに組み入れられる。
図1A
図1B-1C】
図1D
図2A-2C】
図3A-3B】
図4
図5A-5B】
図6A-6B】
図7
図8
図9
図10
図11A-11B】
図12
図13
図14
図15
図16
図17