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特許7491919フルピリミンを含有するイネ害虫防除用固形製剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】フルピリミンを含有するイネ害虫防除用固形製剤
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/12 20060101AFI20240521BHJP
   A01N 43/40 20060101ALI20240521BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20240521BHJP
   A01M 1/20 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
A01N25/12
A01N43/40 101Q
A01P7/04
A01M1/20 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021526897
(86)(22)【出願日】2020-06-19
(86)【国際出願番号】 JP2020024076
(87)【国際公開番号】W WO2020256091
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】P 2019115270
(32)【優先日】2019-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】303020956
【氏名又は名称】三井化学クロップ&ライフソリューション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】弁理士法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀越 亮
(72)【発明者】
【氏名】武内 晴香
(72)【発明者】
【氏名】小野▲崎▼ 保道
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 篤志
(72)【発明者】
【氏名】薮崎 光之
(72)【発明者】
【氏名】尾山 和彦
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-509908(JP,A)
【文献】特開2017-160138(JP,A)
【文献】特開2013-35761(JP,A)
【文献】ONOZAKI, Yasumichi et al.,Flupyrimin: A Novel Insecticide Acting at the Nicotinic Acetylcholine Receptors,Journal of Agricultural and Food Chemistry,2017年,Vol. 65, No. 36,pp. 7865-7873,ISSN: 0021-8561
【文献】米村 伸二,2.粒剤,農薬製剤ガイド,社団法人日本植物防疫協会,1997年10月30日,pp. 14-16
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 25/12
A01N 43/40
A01P 7/04
A01M 1/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】
で表されるフルピリミン及びその塩からなる群から選択される少なくとも1種の有効成分、固体担体、界面活性剤、並びに結合剤を含有し、
押出型粒剤であり、前記固体担体が増量剤を含み、前記界面活性剤が造粒性改良剤及び崩壊・分散剤を含み、
前記造粒性改良剤が、0.1%水溶液としたときに25℃において10~35mN/mの表面張力値を示す界面活性剤であり、
前記崩壊・分散剤が、前記造粒性改良剤以外の界面活性剤である、
イネ害虫防除用固形製剤。
【請求項2】
前記増量剤が、クレー、タルク、炭酸カルシウム、カオリン、二酸化ケイ素、及びベントナイトからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のイネ害虫防除用固形製剤。
【請求項3】
前記造粒性改良剤が、ラウリル硫酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、及びアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載のイネ害虫防除用固形製剤。
【請求項4】
前記崩壊・分散剤が、リグニンスルホン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸カルシウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシアルキレンスチレンフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシアルキレンスチレンフェニルエーテルリン酸ナトリウム、及びポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンポリマー硫酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1~3のうちのいずれか一項に記載のイネ害虫防除用固形製剤。
【請求項5】
前記結合剤が、ポリビニルアルコール、デキストリン、糖類、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びメチルセルロースからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1~4のうちのいずれか一項に記載のイネ害虫防除用固形製剤。
【請求項6】
請求項1~のうちのいずれか一項に記載のイネ害虫防除用固形製剤の有効量を、イネ害虫、イネ、土壌、及び田水面からなる群から選択される少なくとも1種に施用する工程を含む、イネ害虫防除方法。
【請求項7】
前記イネ害虫がウンカ類及びメイチュウ類からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項に記載のイネ害虫防除方法。
【請求項8】
前記イネ害虫が薬剤抵抗性害虫である、請求項又はに記載のイネ害虫防除方法。
【請求項9】
前記イネ害虫防除用固形製剤の有効量が、前記有効成分量で、耕地10アール当たり1g~1kgである、請求項のうちのいずれか一項に記載のイネ害虫防除方法。
【請求項10】
請求項1~5のうちのいずれか一項に記載のイネ害虫防除用固形製剤の製造方法であり、
前記有効成分、前記増量剤、及び前記結合剤を混合して粉砕、又は、前記有効成分、前記増量剤、及び前記結合剤と前記造粒性改良剤及び/又は前記崩壊・分散剤とを混合して粉砕し、第2の混合粉砕物を得る混合粉砕工程と、
第2の混合粉砕物及び水を混練、又は、第2の混合粉砕物及び水と前記造粒性改良剤及び/又は前記崩壊・分散剤とを混練し、混練物を得る混練工程と、
前記混練物を押出型造粒機で成型して押出型粒剤を得る工程と、
を含む、イネ害虫防除用固形製剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフルピリミンを含有するイネ害虫防除用固形製剤に関し、より詳しくは、被覆型粒剤又は押出型粒剤であるイネ害虫防除用固形製剤、及びそれを用いたイネ害虫防除方法、並びに、前記イネ害虫防除用固形製剤の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アジア地域の主食である米は、90%以上がアジアにおいて生産されており、特に、中国、インド、インドネシアの3国の生産量が全世界の60%を占める(非特許文献1)。これらの地域の米栽培(イネ栽培)においては、地上部を食害するチョウ目害虫、及び茎葉部を吸汁するカメムシ目害虫の被害による収量低下が問題となっており、特にチョウ目害虫であるメイチュウ類、カメムシ目害虫であるウンカ類が甚大な被害をもたらしている。病害虫による米の生産量被害はおよそ45%に上り(非特許文献2)、米の生産量向上のためには、これらイネ害虫の防除が必須となる。
【0003】
現在、異なる時期に発生するこれらのイネ害虫に対しては、各害虫に有効な薬剤を、別々に若しくは混合して使用することで防除(体系防除)を行っており、複数回の処理を行う場合、薬剤処理に関わる人件費や労力がかかっている。また、既存薬剤に対する感受性が低下した害虫の発生が問題となっている(非特許文献3、4)他、有機リン、カーバメート、合成ピレスロイドなどの既存薬剤は、非標的生物への悪影響のために使用規制がなされている。したがって、防除活性の汎用性が広くかつその持続期間が長く、既存薬剤と交差抵抗性を示さず、さらに、環境への影響も低い、新規製剤の創出が望まれている。
【0004】
フルピリミンは、有害生物防除剤として、イネ(水稲等)に発生するウンカ類などのカメムシ目害虫やメイチュウ類などのチョウ目害虫に対して殺虫効力を有することや、既存薬剤と交差抵抗性を示さず、かつ、環境への影響が低いことが報告されており(特許文献1)、また、ウンカ類、メイチュウ類等の防除用に他の殺虫剤や殺菌剤と混合して使用できることも報告されている(特許文献2)。しかしながら、米の生産の実用場面における具体的な製剤形態や使用方法、特に防除活性の持続期間については未だ研究が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2012/029672号
【文献】国際公開第2013/129688号
【非特許文献】
【0006】
【文献】AMIS Market Database,2018年9月20日検索,インターネット,<URL:http://statistics.amis-outlook.org/data/index.html>
【文献】India Crop Protection Chemicals(Pesticides)Market-Growth,Trends and Forecast(2017-2022),Mordor Intelligenceレポート(2017年12月)
【文献】Pest Management Science,Vol.73(6),1169-1178(2017)
【文献】Scientific Reports,(2018)8:4586|DOI:10.1038/s41598-018-22906-5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、有害生物、特にイネ害虫を防除するための、防除活性の持続期間が十分に長い新たな固形製剤、及びそれを用いたイネ害虫防除方法、並びに、前記イネ害虫防除用固形製剤の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、固形製剤として、フルピリミン及びその塩からなる群から選択される少なくとも1種の有効成分に、特定の固体担体、界面活性剤、及び結合剤を組み合わせ、特定の被覆型粒剤又は押出型粒剤とすることによって、イネ害虫に対して優れた防除活性を示し、かつ、前記防除活性が特に長期間持続することを見い出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下を提供するものである。
【0009】
[1]
下記式(1):
【0010】
【化1】
【0011】
で表されるフルピリミン及びその塩からなる群から選択される少なくとも1種の有効成分、固体担体、界面活性剤、並びに結合剤を含有し、被覆型粒剤又は押出型粒剤である、イネ害虫防除用固形製剤。
【0012】
[2]
被覆型粒剤であり、前記固体担体が核粒子及び増量剤を含む、[1]に記載のイネ害虫防除用固形製剤。
【0013】
[3]
前記核粒子の粒子径が63μm~6mmである、[2]に記載のイネ害虫防除用固形製剤。
【0014】
[4]
前記核粒子が、珪砂、粒状炭酸カルシウム、珪藻土粒、粒状クレー、及び軽石からなる群から選択される少なくとも1種である、[2]又は[3]に記載のイネ害虫防除用固形製剤。
【0015】
[5]
前記増量剤が、クレー、炭酸カルシウム、カオリン、及び二酸化ケイ素からなる群から選択される少なくとも1種である、[2]~[4]のうちのいずれか一項に記載のイネ害虫防除用固形製剤。
【0016】
[6]
前記結合剤が、流動パラフィン、植物油脂、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコールからなる群から選択される少なくとも1種である、[2]~[5]のうちのいずれか一項に記載のイネ害虫防除用固形製剤。
【0017】
[7]
押出型粒剤であり、前記固体担体が増量剤を含み、前記界面活性剤が造粒性改良剤及び崩壊・分散剤を含む、[1]に記載のイネ害虫防除用固形製剤。
【0018】
[8]
前記増量剤が、クレー、タルク、炭酸カルシウム、カオリン、二酸化ケイ素、及びベントナイトからなる群から選択される少なくとも1種である、[7]に記載のイネ害虫防除用固形製剤。
【0019】
[9]
前記造粒性改良剤が、ラウリル硫酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、及びアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種である、[7]又は[8]に記載のイネ害虫防除用固形製剤。
【0020】
[10]
前記崩壊・分散剤が、リグニンスルホン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸カルシウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシアルキレンスチレンフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシアルキレンスチレンフェニルエーテルリン酸ナトリウム、及びポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンポリマー硫酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種である、[7]~[9]のうちのいずれか一項に記載のイネ害虫防除用固形製剤。
【0021】
[11]
前記結合剤が、ポリビニルアルコール、デキストリン、糖類、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びメチルセルロースからなる群から選択される少なくとも1種である、[7]~[10]のうちのいずれか一項に記載のイネ害虫防除用固形製剤。
【0022】
[12]
[1]~[11]のうちのいずれか一項に記載のイネ害虫防除用固形製剤の有効量を、イネ害虫、イネ、土壌、及び田水面からなる群から選択される少なくとも1種に施用する工程を含む、イネ害虫防除方法。
【0023】
[13]
前記イネ害虫がウンカ類及びメイチュウ類からなる群から選択される少なくとも1種である、[12]に記載のイネ害虫防除方法。
【0024】
[14]
前記イネ害虫が薬剤抵抗性害虫である、[12]又は[13]に記載のイネ害虫防除方法。
【0025】
[15]
前記イネ害虫防除用固形製剤の有効量が、前記有効成分量で、耕地10アール当たり1g~1kgである、[12]~[14]のうちのいずれか一項に記載のイネ害虫防除方法。
【0026】
[16]
[2]~[6]のうちのいずれか一項に記載のイネ害虫防除用固形製剤の製造方法であり、
前記核粒子に、前記結合剤、又は、前記結合剤及び前記界面活性剤を加えて湿潤させ、湿潤核粒子を得る湿潤工程と、
前記有効成分、前記界面活性剤、及び前記増量剤、又は、前記有効成分及び前記増量剤を混合して粉砕し、第1の混合粉砕物を得る混合粉砕工程と、
前記湿潤核粒子と第1の混合粉砕物とを混合し、前記湿潤核粒子の表面が第1の混合粉砕物で被覆された被覆型粒剤を得る工程と、
を含む、イネ害虫防除用固形製剤の製造方法。
【0027】
[17]
[7]~[11]のうちのいずれか一項に記載のイネ害虫防除用固形製剤の製造方法であり、
前記有効成分、前記増量剤、及び前記結合剤を混合して粉砕、又は、前記有効成分、前記増量剤、及び前記結合剤と前記造粒性改良剤及び/又は前記崩壊・分散剤とを混合して粉砕し、第2の混合粉砕物を得る混合粉砕工程と、
第2の混合粉砕物及び水を混練、又は、第2の混合粉砕物及び水と前記造粒性改良剤及び/又は前記崩壊・分散剤とを混練し、混練物を得る混練工程と、
前記混練物を押出型造粒機で成型して押出型粒剤を得る工程と、
を含む、イネ害虫防除用固形製剤の製造方法。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、有害生物、特にイネ害虫を防除するための、防除活性の持続期間が長い新たな固形製剤、及びそれを用いたイネ害虫防除方法、並びに、前記イネ害虫防除用固形製剤の製造方法を提供することが可能となる。
【0029】
また、フルピリミン及び/又はその塩(好ましくは酸付加塩)は、他の薬剤と交差抵抗性を示さず、非標的生物への安全性が高く、かつ、低濃度で十分に優れた防除活性を奏するが、本発明によれば、これらをいずれも特に長期間持続させることが可能となる。例えば、有効成分であるフルピリミン及び/又はその酸付加塩を含有する本発明の固形製剤を1回処理することにより、異なる時期に発生し、イネに多大な被害をもたらすメイチュウ類及びウンカ類を含む2種類以上のイネ害虫も、長期間低密度に抑えることができる。そのため、本発明によれば、米の収穫量の向上が見込まれ、薬剤感受性の低下、環境への影響、効果の持続性、非標的生物への影響、農作業従事者の労力低減化といった既存薬剤が直面する課題を解決することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0031】
<固形製剤>
本発明は、下記式(1):
【0032】
【化2】
【0033】
で表されるフルピリミン及びその塩からなる群から選択される少なくとも1種の有効成分、固体担体、界面活性剤、並びに結合剤を含有し、被覆型粒剤又は押出型粒剤である、イネ害虫防除用固形製剤(以下、場合により単に「固形製剤」という)を提供する。
【0034】
本発明の固形製剤の一つの態様によれば、
被覆型粒剤であり、前記固体担体が核粒子及び増量剤を含む、固形製剤(以下、場合により単に「被覆型粒剤」という)が提供される。また、本発明の固形製剤の別の態様によれば、
押出型粒剤であり、前記固体担体が増量剤を含み、前記界面活性剤が造粒性改良剤及び崩壊・分散剤を含む、固形製剤(以下、場合により単に「押出型粒剤」という)が提供される。
【0035】
なお、本発明において、「イネ害虫防除用固形製剤」には、下記のイネ害虫を殺虫又は衰弱させるための剤の他、下記のイネからイネ害虫を除くための剤、イネ害虫のイネへの寄生を防止するための剤、イネ害虫からイネを保護するための剤を含む。
【0036】
(フルピリミン)
本発明に係る有効成分であるフルピリミンは、上記式(1)で示される化合物、すなわち、N-〔1-((6-クロロピリジン-3-イル)メチル)ピリジン-2(1H)-イリデン〕-2,2,2-トリフルオロアセタミドである。フルピリミンは、例えば、国際公開第2012/029672号(特許文献1)に記載の製造方法に従って合成することができる。
【0037】
また、本発明に係る有効成分であるフルピリミンの塩としては、酸付加塩であることが好ましく、フルピリミンの酸付加塩としては、農薬上許容可能な酸付加塩であることがより好ましい。前記酸付加塩としては、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、又は酢酸塩などが挙げられる。
【0038】
本発明に係る有効成分としては、フルピリミン及び前記フルピリミンの塩のうちの1種を単独であっても、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0039】
(イネ害虫)
本発明の固形製剤が防除活性を示すイネ害虫とは、イネの葉、茎、根、穂を食しうる害虫;イネの葉、茎、穂から吸汁しうる害虫を示す。このようなイネ害虫としては、特に限定されるものではないが、例えば、農園芸上の害虫としては、鱗翅目(チョウ目)害虫(アワヨトウ(Mythimna Separata)、コブノメイガ、Cnaphalocrocis patnalis(Marasmia patnalis)、フタオビコヤガ(Naranga aenescens)、イネツトムシ(Parnara guttata)、イネキンウワバ(Plusia festucae)、クサシロキヨトウ(Mythimna loreyi)、シロマダラコヤガ(Protodeltote distinguenda)、スギキリヨトウ(Spodoptera depravata)、チャバネセセリ(Pelopidas mathias)など;ニカメイガ(ニカメイチュウ、Chilo suppressalis)、サンカメイガ(サンカメイチュウ、Scirpophaga incertulas)、イネヨトウ(Sesamia inferens)、Scirphophaga innotata、Chilo polychrysus、Chilo auriciliusなどのメイチュウ類)、半翅目(カメムシ目)害虫(ムギクビレアブラムシ、ムギヒゲナガアブラムシ、オカボノアカアブラムシ、オカボノクロアブラムシなどのアブラムシ類;ツマグロヨコバイ、イナズマヨコバイなどのヨコバイ類;ヒメトビウンカ、トビイロウンカ、セジロウンカなどのウンカ類;アカスジカスミカメ、イネクロカメムシ、クモヘリカメムシ、トゲシラホシカメムシ、ホソハリカメムシ、シラホシカメムシ、ミナミアオカメムシ、アカヒゲホソミドリカスミカメなどのカメムシ類など)、鞘翅目害虫(イネミズゾウムシ、イネゾウムシ、マメハンミョウ、イネドロオイムシ、Dicladispa armigeraなど)、ダニ目(Steneotarsonemus spinkiなど)、膜翅目害虫、直翅目害虫(コバネイナゴ、クサキリ類、ケラなど)、双翅目害虫(イネヒメハモグリバエ、イネカラバエ、Orseolia oryzaeなど)、アザミウマ目害虫(イネアザミウマ、イネクダアザミウマなど)、植物寄生性線虫(イネシンガレセンチュウ、Meloidogynae graminicolaなど)などが挙げられ、これらのうちの1種を単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。中でも、好ましくは、鱗翅目害虫、半翅目害虫、アザミウマ目害虫、双翅目害虫、及び鞘翅目害虫が挙げられ、さらに好ましくは、ウンカ類、メイチュウ類、及びヨコバイ類が挙げられ、より好ましくは、ニカメイガ、サンカメイガ、ヒメトビウンカ、トビイロウンカ、セジロウンカ、ツマグロヨコバイ、イナズマヨコバイが挙げられ、さらに好ましくは、これらのうちのウンカ類及びメイチュウ類が挙げられる。
【0040】
また、前記イネ害虫としては、イミダクロプリドなどのニコチン性アセチルコリン受容体作用薬;フィプロニル、エチプロールなどのGABA受容体作用性化合物;クロラントラニリプロールなどのジアミド化合物等の既存薬剤に対して感受性を低下させた薬剤抵抗性害虫であってもよい。
【0041】
(他の有害生物防除剤)
本発明の固形製剤としては、有効成分であるフルピリミン及びその塩がそれ自体で上記イネ害虫に対して優れた防除活性を示すものであるから、当該フルピリミン及び/又はその塩を含有していればよいが、他の有害生物防除剤と混合して使用することで、より多くの害虫に対してさらに優れた防除活性を示すこともできるため、他の有害生物防除剤をさらに含有していてもよい。含有可能な他の有害生物防除剤としては、殺虫剤(殺ダニ剤及び殺線虫剤を含む)、殺菌剤、除草剤、及び植物成長調節剤などが挙げられ、具体的な薬剤としては、例えば、ペスティサイド マニュアル(The Pesticide Manual,第17版 The British Crop Protection Council 発行)及びシブヤインデックス(SHIBUYA INDEX,2014年,SHIBUYA INDEX RESEARCH GROUP 発行)に記載のものが挙げられる。これらの中でも、前記他の有害生物防除剤として好ましいのは、殺虫剤及び殺菌剤である。
【0042】
前記他の有害生物防除剤の好ましい例としては、例えば、有機リン酸エステル系化合物、カーバメート系化合物、ネライストキシン誘導体、有機塩素系化合物、ピレスロイド系化合物、ベンゾイルウレア系化合物、幼若ホルモン様化合物、脱皮ホルモン様化合物、ネオニコチノイド系化合物、神経細胞のナトリウムチャンネルブロッカー、殺虫性大環状ラクトン、γ-アミノ酪酸(GABA)拮抗剤、リヤノジンレセプター作用性化合物、殺虫性尿素類、BT剤、昆虫病原ウイルス剤、ポリエーテル系抗生物質、チアミン拮抗薬、及びサルファ剤・葉酸拮抗薬配合剤などが挙げられる。
【0043】
より具体的には、殺虫剤として、アセフェート(acephate)、ジクロルボス(dichlorvos)、EPN、フェニトロチオン(fenitrothion)、フェナミホス(fenamifos)、プロチオホス(prothiofos)、プロフェノホス(profenofos)、ピラクロホス(pyraclofos)、クロルピリホスメチル(chlorpyrifos-methyl)、ダイアジノン(diazinon)、ホスチアゼート(fosthiazate)、イミシアホス(imicyafos)、フォレート(phorate)のような有機リン酸エステル系化合物;メソミル(methomyl)、チオジカルブ(thiodicarb)、アルジカルブ(aldicarb)、オキサミル(oxamyl)、プロポキスル(propoxur)、カルバリル(carbaryl)、フェノブカルブ(fenobucarb)、エチオフェンカルブ(ethiofencarb)、フェノチオカルブ(fenothiocarb)、ピリミカーブ(pirimicarb)、カルボフラン(carbofuran)、カルボスルファン(carbosulfan)、ベンフラカルブ(benfuracarb)のようなカーバメート系化合物;カルタップ(cartap)、チオシクラム(thiocyclam)のようなネライストキシン誘導体;ジコホル(dicofol)、テトラジホン(tetradifon)のような有機塩素系化合物;ペルメトリン(permethrin)、テフルトリン(tefluthrin)、シペルメトリン(cypermethrin)、デルタメトリン(deltamethrin)、シハロトリン(cyhalothrin)、フェンバレレート(fenvalerate)、フルバリネート(fluvalinate)、エトフェンプロックス(ethofenprox)、シラフルオフェン(silafluofen)、シハロスリン(cyhalothrin)のようなピレスロイド系化合物;ジフルベンズロン(diflubenzuron)、テフルベンズロン(teflubenzuron)、フルフェノクスロン(flufenoxuron)、クロルフルアズロン(chlorfluazuron)のようなベンゾイルウレア系化合物;メトプレン(methoprene)のような幼若ホルモン様化合物;クロマフェノジドのような脱皮ホルモン様化合物;イミダクロプリド(imidacloprid)、クロチアニジン(c1othianidin)、チアメトキサム(thiamethoxam)、アセタミプリド(acetamiprid)、ニテンピラム(nitenpyram)、チアクロプリド(thiacloprid)、ジノテフラン(dinotefuran)、スルフォキサフロル(sulfoxaflor)、フルピラジフロン(flupyradifurone)、ジクロロメゾチアズ(dicloromezotiaz)、トリフルメゾピリム(triflumezopyrim)のようなニコチン性アセチルコリン受容体作用薬;フルベンジアミド(flubendiamide)、クロラントラニリプロール(chlorantraniliprole)、シアントラニリプロール(cyantraniliprole)、シクラニリプロール(cyclaniliprole)、テトラニリプロール(tetraniliprole)のようなジアミド化合物;エチプロール(ethiprole)、フィプロニル(fipronil)、ピラフルプロール(pyrafluprole)、ピリプロール(pyriprole)、ブロフラニリド(broflanilide)、フルキサメタミド(fluxametamide)のようなGABA受容体作用性化合物;ピリダベン(pyridaben)、フェンピロキシメート(fenpyroxymate)、ピリミジフェン(pyrimidifen)、テブフェンピラド(tebufenpyrad)、トルフェンピラド(tolfenpyrad)のような呼吸鎖電子伝達系複合体I阻害化合物;シフルメトフェン(cyflumetofen)、シエノピラフェン(cyenopyrafen)、ピフルブミド(pyflbumide)のような呼吸鎖電子伝達系複合体II阻害化合物;フルアクリピリム(fluacrypyrim)、アセキノシル(acequinocyl)、フロメトキン(flometoquin)のような呼吸鎖電子伝達系複合体III阻害化合物;スピロジクロフェン(spirodiclofen)、スピロメシフェン(spiromesifen)、スピロテトラマト(spirotetramat)のようなACCase阻害化合物;スピノサド(spinosad)、アバメクチン(avermectin)、ミルベマイシン(milbemycin)、スピネトラム(spinetoram)、レピメクチン(lepimectin)、エマメクチン安息香酸塩(emamectin benzoate)のようなマクロライド化合物が挙げられる。
【0044】
さらに、その他の化合物として、ブプロフェジン(buprofezin)、ヘキシチアゾクス(hexythiazox)、アミトラズ(amitraz)、クロルジメホルム(chlordimeform)、エトキサゾール(ethoxazole)、ピメトロジン(pymetrozine)、ビフェナゼート(bifenazate)、フロニカミド(flonicamid)、クロルフェナピル(chlorfenapyr)、ピリプロキシフェン(pyriproxyfen)、インドキサカルブ(indoxacarb)、ピリダリル(pyridalyl)、ピリフルキナゾン(pyrifluquinazon)、メタフルミゾン(metaflumizone)、ヒドラメチルノン(hydramethylnon)、トリアザメート(triazamate)、アフィドピロペン(afidopyropen)、レノフルスリン(renofluthrin)、クロロプパラレスリン(chloroprallethrin)、シハロジアミド(cyhalodiamide)、フルアザインドリジン(fluazaindolizine)、イプシロン-メトフルスリン(epsilon-metofluthrin)、イプシロン-モムフルオロスリン(epsilon-momfluorothrin)、カッパ-ビフェントリン(kappa-bifenthrin)、カッパ-テフルトリン(kappa-tefluthrin)、フルヘキサホン(fluhexafon)、チオキサザフェン(tioxazafen)、モムフルオロスリン(momfluorothrin)、ヘプタフルスリン(heptafluthrin)、ピリミノストロビン(pyriminostrobin)、シクロキサプリド(cycloxaprid)、イソシクロセラム(isocycloseram)、オキサゾスルフィル(oxazosulfyl)、チクロピラゾフロル(tyclopyrazoflor)、スピロピディオン(spiropidion)、アシノナピル(acynonapyr)、ジムプロピリダズ(dimpropyridaz)、有機金属系化合物、ジニトロ系化合物、有機硫黄化合物、尿素系化合物、トリアジン系化合物、ヒドラジン系化合物が挙げられ、BT剤、昆虫病原ウイルス剤などのような微生物農薬も挙げられる。また、前記殺虫剤としては、これらの農薬上許容可能な酸付加塩も挙げられる。
【0045】
前記殺虫剤としては、上記のうちの1種を単独であっても2種以上の組み合わせであってもよいが、中でも、好ましい殺虫剤としては、カルタップ(cartap)、チオシクラム(thiocyclam)、フォレート(phorate)、フルベンジアミド(flubendiamide)、クロラントラニリプロール(chlorantraniliprole)、シアントラニリプロール(cyantraniliprole)、カルボフラン(carbofuran)、フィプロニル(fipronil)が挙げられる。
【0046】
また、より具体的には、殺菌剤として、例えば、アゾキシストルビン(azoxystrobin)、クレソキシムメチル(kresoxym-methyl)、トリフロキシストロビン(trifloxystrobin)、メトミノストロビン(metominostrobin)、オリサストロビン(orysastrobin)などのストロビルリン系化合物;メパニピリム(mepanipyrim)、ピリメサニル(pyrimethanil)、シプロジニル(cyprodinil)のようなアニリノピリミジン系化合物;トリアジメホン(triadimefon)、ビテルタノール(bitertanol)、トリフルミゾール(triflumizole)、メトコナゾール(metoconazole)、プロピコナゾール(propiconazole)、ペンコナゾール(penconazole)、フルシラゾール(flusilazole)、ミクロブタニル(myclobutanil)、シプロコナゾール(cyproconazole)、テブコナゾール(tebuconazole)、ヘキサコナゾール(hexaconazole)、プロクロラズ(prochloraz)、シメコナゾール(simeconazole)のようなアゾール系化合物;キノメチオネート(quinomethionate)のようなキノキサリン系化合物;マンネブ(maneb)、ジネブ(zineb)、マンコゼブ(mancozeb)、ポリカーバメート(polycarbamate)、プロビネブ(propineb)のようなジチオカーバメート系化合物;ジエトフェンカルブ(diethofencarb)のようなフェニルカーバメート系化合物;クロロタロニル(chlorothalonil)、キントゼン(quintozene)のような有機塩素系化合物;ベノミル(benomyl)、チオファネートメチル(thiophanate-methyl)、カーベンダジム(carbendazole)のようなベンズイミダゾール系化合物;メタラキシル(metalaxyl)、オキサジキシル(oxadixyl)、オフラセ(ofurase)、ベナラキシル(benalaxyl)、フララキシル(furalaxyl)、シプロフラン(cyprofuram)のようなフェニルアミド系化合物;ジクロフルアニド(dichlofluanid)のようなスルフェン酸系化合物;水酸化第二銅(copper hydroxide)、オキシキノリン銅(oxine-copper)のような銅系化合物;ヒドロキシイソキサゾール(hydroxyisoxazole)のようなイソキサゾール系化合物;ホセチルアルミニウム(fosetyl-aluminium)、トルクロホス-メチル(tolclofos-methyl)のような有機リン系化合物;キャプタン(captan)、カプタホール(captafol)、フォルペット(folpet)のようなN-ハロゲノチオアルキル系化合物;プロシミドン(procymidone)、イプロジオン(iprodione)、ビンクロゾリン(vinchlozolin)のようなジカルボキシイミド系化合物;フルトラニル(flutolanil)、メプロニル(mepronil)、フラメトピル(furametpyr)、チフルザミド(thifluzamide)、ボスカリド(boscalid)、ペンチオピラド(penthiopyrad)のようなカルボキシアニリド系化合物;フェンプロピモルフ(fenpropimorph)、ジメトモルフ(dimethomorph)のようなモルフォリン系化合物;水酸化トリフェニルスズ(fenthin hydroxide)、酢酸トリフェニルスズ(fenthin acetate)のような有機スズ系化合物;フルジオキソニル(fludioxonil)、フェンピクロニル(fenpiclonil)のようなシアノピロール系化合物が挙げられる。
【0047】
さらに、その他化合物として、トリシクラゾール(tricyclazole)、ピロキロン(pyroquilon)、カルプロパミド(carpropamid)、ジクロシメット(diclocymet)、フェノキサニル(fenoxanil)、フサライド(fthalide)、フルアジナム(fluazinam)、シモキサニル(cymoxanil)、トリホリン(triforine)、ピリフェノックス(pyrifenox)、フェナリモル(fenarimol)、フェンプロピディン(fenpropidin)、ペンシクロン(pencycuron)、フェリムゾン(ferimzone)、シアゾファミド(cyazofamid)、イプロバリカルブ(iprovalicarb)、ベンチアバリカルブイソプロピル(benthiavalicarb-isopropyl)、イミノクタジンアルベシル酸塩(iminoctadin-albesilate)、シフルフェナミド(cyflufenamid)、カスガマイシン(kasugamycin)、バリダマイシン(validamycin)、ストレプトマイシン(streptomycin)、オキソリニック酸(oxolinic-acid)、テブフロキン(tebufloquin)、プロベナゾール(probenazole)、チアジニル(tiadinil)イソチアニル(isotianil)、イソプロチオラン(isoprothiolane)、トルプロカルブ(tolprocarb)、ピジフルメトフェン(pydiflumetofen)、ピカルブトラゾクス(picarbutrazox)、マンデストロビン(mandestrobin)、ジピメチトロン(dipymetitrone)、ピラジフルミド(pyraziflumid)、オキサチアピプロピリン(oxathiapiprolin)、ペンフルフェン(penflufen)、フルオキサピプロリン(fluoxapiprolin)、フロリルピコキサミド(florylpicoxamid)、フルオピモミド(fluopimomide)、イプフェノキン(ipfenoquin)、フルインダピル(fluindapyr)、イソフルシプラム(isoflucypram)、キノフメリン(quinofumelin)、メチルテトラプロール(methyltetraprole)、ピリダクロメチル(pyridachlometyl)、ピラプロポイン(pyrapropoyne)、アミノピリフェン(aminopyrifen)、インピリフルキサム(inpyrifluxam)、ジクロベンチアゾクス(dichlobentiazox)などが挙げられる。また、前記殺菌剤としては、これらの農薬上許容可能な酸付加塩も挙げられる。
【0048】
前記殺菌剤としては、上記のうちの1種を単独であっても2種以上の組み合わせであってもよいが、中でも、好ましい殺菌剤としては、アゾキシストルビン(azoxystrobin)、オリサストロビン(orysastrobin)、チフルザミド(thifluzamide)、フラメトピル(furametpyr)、フサライド(fthalide)、プロベナゾール(probenazole)、アシベンゾラルSメチル(acibenzolar-S-methyl)、チアジニル(tiadinil)、イソチアニル(isotianil)、イソプロチオラン(isoprothiolane)、トルプロカルブ(tolprocarb)、カルプロパミド(carpropamid)、ジクロシメット(diclocymet)、フェノキサニル(fenoxanil)、トリシクラゾール(tricyclazole)、ピロキロン(pyroquilon)、フェリムゾン(ferimzone)、テブフロキン(tebufloquin)、シメコナゾール(simeconazole)、バリダマイシン(validamycin)、カスガマイシン(Kasugamycin)、ペンシクロン(pencycuron)、ペンフルフェン(penflufen)、ジクロベンチアゾクス(dichlobentiazox)が挙げられる。
【0049】
(添加剤)
本発明の固形製剤は、有効成分であるフルピリミンに添加剤(好ましくは農薬上許容可能な添加剤)を用いることで製造することができる。その形態としては粒剤が挙げられ、より具体的には、固体担体、界面活性剤、及び結合剤を含有する、被覆型粒剤又は押出型粒剤である。
【0050】
〔固体担体〕
前記固体担体としては、タルク、ベントナイト、クレー、カオリン、珪藻土、バーミキュライト、ゼオライト、二酸化ケイ素、炭酸カルシウム、硫酸アンモニウム、珪砂、珪石、軽石等が挙げられる。
【0051】
本発明の被覆型粒剤は、前記固体担体のうち、核粒子及び増量剤を含有する。また、本発明の押出型粒剤は、前記固体担体のうち、増量剤を含有し、さらに、前記核粒子は含有しないこと、すなわち前記固体担体が前記増量剤のみからなることが好ましい。
【0052】
本発明において、「核粒子」とは、粒子径が63μm以上の固体担体を示し、前記粒子径としては、63μm~6mmの範囲内にあることが好ましく、75μm~2mmの範囲内にあることがより好ましく、106μm~2mmの範囲内にあることがさらに好ましい。本発明に係る核粒子又は固体担体の「粒子径」は、粒子を平面へ投影した場合の円の直径であり、投影面が円形ではない場合(粒子が平板状、板状等、棒状、多角状等の形状である場合)には、その外接円の直径のことをいう。このような核粒子としては、前記粒子径を満たすものであれば特に制限されないが、粒状の、珪砂、珪藻土、軽石、クレー、炭酸カルシウムなどが挙げられ、これらのうちの1種を単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。また、本発明において、粒状の炭酸カルシウム(粒状炭酸カルシウム)及び粒状のクレー(粒状クレー)には、それぞれ、各鉱物の粉砕物である粒子の他、粒子径の小さい鉱物微粉を、ベントナイトや下記の結合剤等と混合して混錬し、押出造粒や破砕造粒などによって粒状とした造粒物である粒子も含まれる。
【0053】
本発明において、「増量剤」とは、主に有効成分を希釈する目的で用いられるものであり、具体的には、粒子径が63μm未満の固体担体を示す。このような増量剤としては、前記粒子径を満たすものであれば特に制限されないが、前記被覆型粒剤において好ましくは、下記の被覆型粒剤の製造方法における粉砕工程が容易となる観点から、クレー、炭酸カルシウム、カオリン、及び二酸化ケイ素からなる群から選択される少なくとも1種である。また、前記押出型粒剤において好ましくは、同様の観点から、クレー、タルク、炭酸カルシウム、カオリン、二酸化ケイ素、及びベントナイトからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0054】
〔界面活性剤〕
前記界面活性剤としては、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、及び非イオン性界面活性剤などが挙げられる。
【0055】
本発明の被覆型粒剤に含有される界面活性剤としては、上記の中でも、前記核粒子の湿潤作用を有するものであることが好ましく、具体的には、例えば、リグニンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシアルキレンスチレンフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシアルキレンスチレンフェニルエーテルリン酸ナトリウムなどの陰イオン性界面活性剤;ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリオキシアルキレンソルビタンモノラウレート等)、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンヒマシ油、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシアルキレンアルキルアミンなどの非イオン性界面活性剤が挙げられ、これらのうちの1種を単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。前記界面活性剤の中でも、前記非イオン界面活性剤又はその組み合わせは、本発明の被覆型粒剤において、下記の結合剤と同様の目的で用いてもよい。
【0056】
なお、本明細書において、「ポリオキシアルキレン」は、ポリオキシエチレン及びポリオキシプロピレンのうちの1種、又はこれらの混合物を示す。
【0057】
本発明の押出型粒剤は、前記界面活性剤のうち、造粒性改良剤及び崩壊・分散剤を含有する。
【0058】
本発明において、「造粒性改良剤」とは、上記界面活性剤の中でも、下記の製造方法の混錬工程において水と他の成分との馴染みを向上させる作用を有するものを示し、具体的には、0.1%水溶液としたときに、25℃において、10~35mN/mの表面張力値を示す界面活性剤を示す。このような造粒性改良剤としては、上記表面張力を満たすものであれば特に制限されないが、前記押出型粒剤において好ましくは、ラウリル硫酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、及びアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0059】
本発明において、「崩壊・分散剤」とは、上記界面活性剤の中でも、前記造粒性改良剤に相当するもの以外であって、前記有効成分の他の成分への分散性及び崩壊性のうちの少なくともいずれかを向上させる作用を有するものを示す。このような崩壊・分散剤としては陰イオン性界面活性剤が好ましく、より好ましくは、リグニンスルホン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸カルシウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシアルキレンスチレンフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシアルキレンスチレンフェニルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンポリマー硫酸ナトリウムが挙げられ、これらのうちの1種を単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。
【0060】
〔結合剤〕
本発明において「結合剤」は、主に固形製剤の強度を増す、及び/又は、固体原料同士の結びつきを強める目的で用いられる。このような結合剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はメチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリアクリル酸ナトリウム等のポリアクリレート類;ポリメタクリル酸メチル等のポリメタクリレート類;ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドン等のポリビニル誘導体;キサンタンガム、グアーガム、アラビアガム等のガム類(植物ガム類等);スターチ;デキストリン;単糖類(フルクトース、グルコース、ガラクトース等)や二糖類(スクロース、マルトース、ラクトース等)などの糖類;ニカワ;カゼイン;ゼラチン;流動パラフィン;大豆油や菜種油等の植物油脂;ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール等のグリコール類が挙げられ、これらのうちの1種を単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。
【0061】
本発明の被覆型粒剤に含有される結合剤としては、上記の中でも、流動パラフィン、植物油脂、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコールからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。また、本発明の押出型粒剤に含有される結合剤としては、上記の中でも、ポリビニルアルコール、デキストリン、糖類、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びメチルセルロースからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0062】
〔その他〕
さらに、本発明の固形製剤(好ましくは被覆型粒剤)としては、赤色色素や青色色素等の着色剤をさらに含有していてもよい。
【0063】
また、本発明の固形製剤としては、本発明の効果を阻害しない範囲内で、上記以外の界面活性剤、乳化剤、分散剤、崩壊剤、湿潤剤、展着剤、増粘剤、結合剤、凍結防止剤、消泡剤、着色剤、防黴剤等の他の添加剤のうちの少なくとも1種を、必要に応じてさらに含有していてもよい。
【0064】
〔組成〕
本発明の固形製剤に含有される有効成分量(フルピリミン又はその塩、2種以上が含有される場合にはそれらの合計量、以下同じ)としては、使用目的や処理方法にもよるものであるため特に限定されないが、通常、フルピリミンのフリー体換算で0.1~80重量%であり、好ましくは、0.1~10重量%である。
【0065】
本発明の固形製剤の好ましい態様としては、以下のものが挙げられる。
(1)フルピリミンを0.1~10重量%、核粒子(珪砂などの粒状の固体担体)を20~98重量%、増量剤、界面活性剤、及び結合剤をそれぞれ0.2~30重量%(より好ましくは0.5~30重量%)、含有し、合計が100重量%となる被覆型粒剤(Coated granule)、
(2)フルピリミンを0.1~10重量%、界面活性剤及び結合剤をそれぞれ0.5~30重量%、増量剤(固体担体)を20~98重量%、含有し、合計が100重量%となる押出型粒剤(Extruded granule)、
(3)フルピリミンを0.1~10重量%、増量剤(固体担体)を20~98重量%、造粒性改良剤を0.1~2.0重量%、崩壊・分散剤を0.5~5.0重量%、結合剤を0.5~30重量%、含有し、合計が100重量%となる押出型粒剤。
【0066】
<固形製剤の製造方法>
本発明は、本発明の固形製剤の製造方法の一態様として、
前記核粒子に、前記結合剤、又は、前記結合剤及び前記界面活性剤を加えて湿潤させ、湿潤核粒子を得る湿潤工程と、
前記有効成分、前記界面活性剤、及び前記増量剤、又は、前記有効成分及び前記増量剤を混合して粉砕し、第1の混合粉砕物を得る混合粉砕工程と、
前記湿潤核粒子と第1の混合粉砕物とを混合し、前記湿潤核粒子の表面が第1の混合粉砕物で被覆された被覆型粒剤を得る工程と、
を含む、製造方法(以下、場合により「被覆型粒剤の製造方法」という)、並びに、
前記有効成分、前記増量剤、及び前記結合剤を混合して粉砕、又は、前記有効成分、前記増量剤、及び前記結合剤と前記造粒性改良剤及び/又は前記崩壊・分散剤とを混合して粉砕し、第2の混合粉砕物を得る混合粉砕工程と、
第2の混合粉砕物及び水を混練、又は、第2の混合粉砕物及び水と前記造粒性改良剤及び/又は前記崩壊・分散剤とを混練し、混練物を得る混練工程と、
前記混練物を押出型造粒機で成型して押出型粒剤を得る工程と、
を含む、製造方法(以下、場合により「押出型粒剤の製造方法」という)、
を提供する。
【0067】
〔被覆型粒剤の製造方法〕
本発明の被覆型粒剤は、前記核粒子表面に、前記有効成分及び前記増量剤等を結合剤で被覆させて粒剤とするものである。前記核粒子は、被覆されやすいように、事前に前記結合剤により湿潤させておく(湿潤工程)。かかる湿潤工程においては、前記界面活性剤(好ましくは非イオン界面活性剤)をさらに加えてもよい。このような湿潤工程としては、特に制限されず、従来公知の方法又はそれに準じた方法を適宜採用することができるが、例えば、前記核粒子に前記結合剤及び必要に応じて前記界面活性剤を噴霧しながら混合する方法が挙げられる。このときの結合剤としては、水やエタノール等の溶媒により希釈して用いてもよい。
【0068】
他方、被覆させる成分は事前に増量剤を加え、均一に混合し粉砕しておく。すなわち、前記有効成分、前記界面活性剤、及び前記増量剤を混合して粉砕(少なくとも前記有効成分及び前記増量剤を粉砕)し、第1の混合粉砕物を得る(混合粉砕工程)。このとき、前記湿潤工程において前記界面活性剤を加えた場合には、前記有効成分及び前記増量剤を混合して粉砕し、第1の混合粉砕物を得る。前記界面活性剤としては、湿潤工程及び混合粉砕工程の両工程に分けて用いてもよい。このような粉砕方法としては、特に制限されず、適宜従来公知の方法又はそれに準じた方法を採用することができ、例えば、ピンミル、ハンマーミル等の衝撃式粉砕機や、ジェットミル等の気流式粉砕機を用いた方法が挙げられる。
【0069】
前記湿潤工程と混合粉砕工程とは、いずれが先であっても、また、同時であってもよい。次いで、前記湿潤核粒子と第1の混合粉砕物とを混合し、前記湿潤核粒子の表面が第1の混合粉砕物で被覆された被覆型粒剤を得る。このような混合方法としても特に制限されず、適宜従来公知の方法又はそれに準じた方法を採用することができ、例えば、コンクリートミキサー等の容器回転型混合機;リボン型ミキサーや円錐型スクリューミキサー等の容器固定型混合機を用いた方法が挙げられる。
【0070】
被覆型粒剤の製造方法としては、必要に応じて、前記被覆型粒剤を乾燥させる乾燥工程をさらに含んでいてもよい。このような乾燥方法としては特に制限されず、適宜従来公知の方法又はそれに準じた方法を採用することができる。
【0071】
〔押出型粒剤の製造方法〕
本発明の押出型粒剤は、前記有効成分及び前記増量剤等の成分を均一に混合して粉砕したものに水を加えて混練し、それを成型して粒剤とするものである。すなわち、先ず、前記有効成分、前記増量剤、前記造粒性改良剤、前記崩壊・分散剤、及び前記結合剤を混合して粉砕(少なくとも前記有効成分及び前記増量剤を粉砕)し、第2の混合粉砕物を得る(混合粉砕工程)。かかる混合粉砕工程では前記造粒性改良剤及び/又は前記崩壊・分散剤を加えず、次の混練工程で加えてもよい。このような粉砕方法としては、被覆型粒剤の製造方法に挙げた粉砕方法と同様の方法を適宜採用することができる。また、このときの結合剤としては、水やエタノール等の溶媒を用いて溶解し溶液状として用いてもよい。
【0072】
次いで、第2の混合粉砕物及び水、或いは、前記粉砕工程で前記造粒性改良剤及び/又は前記崩壊・分散剤を加えなかった場合には、第2の混合粉砕物及び水と前記造粒性改良剤及び/又は前記崩壊・分散剤とを混練(練合)し、混練物を得る。また、前記造粒性改良剤及び前記崩壊・分散剤としては、それぞれ独立に、混合粉砕工程及び混練工程の両工程に分けて用いてもよい。このような混練方法としては、特に制限されず、適宜従来公知の方法又はそれに準じた方法を採用することができ、例えば、リボン型ミキサー、円錐型スクリューミキサー、ヘンシェル型ミキサー、双腕型ニーダー等の混合混練機を用いた方法が挙げられる。
【0073】
次いで、前記混練物を押出型造粒機で成型して押出型粒剤を得る。このような成型方法としても特に制限されず、適宜従来公知の方法又はそれに準じた方法を採用することができる。例えば、前記押出型造粒機としては、押し出す構造によって、横押出型、前押出型、堅型、ローラー押出型が挙げられ、前記混練物にスクリューやローラーなどで圧力をかけ、スクリーンやダイスから押し出す方法が挙げられる。
【0074】
前記押出型粒剤の成型後は、必要に応じて、これを乾燥させる乾燥工程をさらに含んでいてもよい。このような乾燥方法としては特に制限されず、適宜従来公知の方法又はそれに準じた方法を採用することができる。
【0075】
本発明の別の好ましい態様によれば、組み合わせ物として、本発明の固形製剤である第1の組成物と、他の有害生物防除剤を有効成分として含んでなる組成物である第2の組成物と、の組み合わせが提供される。この場合、第2の組成物は、適当な添加剤を加えて任意の剤形であることができる。当該組み合わせ物は、薬剤セットなどの形態で提供されてもよい。
【0076】
本発明のさらに別の態様によれば、イネ害虫からイネを保護する方法であって、本発明の固形製剤と、他の有害生物防除剤の少なくとも一種とを、対象(処理すべき領域)に同時又は別々に(好ましくは、各成分を同時に)適用することを含んでなる方法が提供される。この方法において、「同時に」適用することには、本発明の固形製剤と他の有害生物防除剤の少なくとも一種とを対象に施用する前に混合して、その混合物を適用することも包含される。「別々に」適用することには、それらを予め混合することなく、本発明の固形製剤を他方の成分よりも先に適用すること、本発明の固形製剤を他方の成分よりも後に適用することが包含される。
【0077】
<イネ害虫防除方法>
本発明は、上記の本発明の固形製剤を、前記イネ害虫、イネ、土壌、及び田水面からなる群から選択される少なくとも1種に施用する工程を含む、イネ害虫防除方法(以下、場合により単に「防除方法」という)を提供する。
【0078】
なお、本発明において、「イネ害虫防除方法」には、前記イネ害虫を殺虫又は衰弱させる方法の他、下記のイネからイネ害虫を除く方法、イネ害虫のイネへの寄生を防止する方法、イネ害虫からイネを保護する方法を含む。
【0079】
〔イネ〕
本発明の固形製剤を施用できる植物としては、特に限定されないが、イネ(Oryza sativa, Oryzaglaberrima)が好ましい。イネはイネ科イネ属の植物であり、具体的には、ジャポニカ種(O.sativa subsp.japonica)とインディカ種(O.sativa subsp.indica)との2つの生態型、及びこれらの交雑による中間的品種に分けられる。ジャバニカ米はジャポニカ種に含まれる。
【0080】
イネは、アジアのモンスーン地帯を中心に非常に広範囲な地域で、種々の気候条件下で栽培されている。北はロシアと中国との国境のアムール川河畔から、南はアルゼンチンに渡って栽培されている。ネパール、インドの山岳地帯;パキスタン、イラン、エジプトの砂漠地帯では、灌漑により栽培されており、アジアの一部とアフリカ、ラテンアメリカでは、灌漑せずに栽培されている。また、アジアのデルタ地帯では、浮稲として栽培されている。
【0081】
栽培方法によって、イネは陸稲と水稲とに分けられる。陸稲は畑に直接播種し、畑状態で栽培する。水稲は水田へ直接播種する直播栽培もあるが、日本では苗を本田へ移植する(田植え)栽培法が一般的である。
【0082】
通常の栽培可能温度は、20℃以上で、水稲は湛水条件(水田)で栽培される。生育最低温度は10~12℃、開花結実には23℃を必要とする。逆に35℃以上くらいになると高温障害が発生する。
【0083】
元来が水生植物であるイネは要求水量の大きな作物の一つであり、潅水がなく土壌水分が表面層で水分10%以下、下層土で12%以下では、干ばつ害が発生する。しかし、塩類集積土壌、アルカリや酸性土壌でも栽培されている。
【0084】
本発明の固形製剤は、イネ栽培、特に好ましくは水稲栽培において、播種から(好ましくは移植後から)収穫までの任意の期間に施用することができる。例えば、苗を移植2~5週間後、本発明の固形製剤を移植後の本田(水稲本田)の水面(田水面)へ施用することで、異なる時期に発生する前記イネ害虫を一度に防除することが可能である。なお、前記田水面には、ワグネルポット等の水耕栽培器材における水面も含む。本発明の固形製剤は、前記田水面の他、移植前の栽培担体を含む土壌や、又は前記陸稲等を栽培する土壌等に施用してもよいし、前記イネ害虫やイネ(好ましくは茎葉部)に直接施用してもよい。これらの中でも、本発明の固形製剤を施用する対象としては、前記土壌(移植前の栽培土壌及び栽培担体、陸稲等を栽培する土壌等)及び前記田水面のうちの少なくとも1種であることが好ましい。
【0085】
また、本発明の防除方法においては、本発明の固形製剤が有効量となるように、前記固形製剤を、そのままで、或いは希釈して施用してもよい。
【0086】
本発明の別の態様によれば、本発明の固形製剤の有効量を、前記イネ害虫、前記イネ(好ましくは茎葉部)、前記土壌、及び前記田水面からなる群から選択される少なくとも1種に施用する工程を含む、イネ害虫からイネを保護する方法が提供される。
【0087】
また、本発明の別の態様によれば、イネ害虫からイネを保護するための本発明の固形製剤の使用が提供される。
【0088】
本発明の固形製剤を対象に施用する手法としては、散布処理、田面水処理、土壌処理(散布、混和、灌注など)などが挙げられ、好ましくは田面水処理及び土壌処理が挙げられる。
【0089】
本発明の固形製剤を田面水処理及び土壌処理に用いる方法としては、そのまま固形製剤を田水面又は土壌表面に散布しても良いが、肥料や砂と混和させた後に、任意の量を耕地(田圃)に散布してもよい。田面水処理及び土壌処理により施用する場合の処理量(すなわち有効量)としては、本発明の固形製剤中の有効成分量(フルピリミン又はその塩のフリー体換算での量、これらの2種以上が含有される場合にはそれらの合計量、以下同じ)で、耕地10アール当たり0.1g~10kg、好ましくは1g~1kgであることが望ましい。
【0090】
また、本発明の固形製剤による土壌処理方法としては、特に限定されないが、好ましくは、本発明の固形製剤を土壌中又は土壌表面上に直接施用する方法が挙げられる。より好ましい土壌処理方法は、散布、帯、溝、及び植付け穴適用法である。
【0091】
他の施用方法としては、薄膜水耕(NFT)や湛液水耕(DFT)などの水耕栽培、ロックウール耕などの固形培地耕栽培のような養液栽培システムにおける養液への本発明の固形製剤の施用や、バーミキュライトを含む人工培土及び育苗用人工マットを含む固形培地への直接の施用が挙げられる。また、防除活性を長期間継続させる観点からは好ましくないが、本発明の固形製剤は、水中に分散させること、或いは乳化又は溶解した溶液を土壌に潅注することによって施用してもよい。
【実施例
【0092】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、各製剤例の原料は全て市販品を使用した。また、各製剤例においては、粒子径が63μm以上の固体担体(核粒子)にのみ粒子径を記す。
【0093】
(製剤例)
製剤例1〔押出型粒剤〕
フルピリミン 2重量%
リグニンスルホン酸ナトリウム 3重量%
ラウリル硫酸ナトリウム 0.5重量%
二酸化ケイ素 2重量%
ポリビニルアルコール 1.5重量%
クレー 91重量%
上記成分を均一に混合粉砕し、水を加えてよく練合した後、この混練物を押出型造粒機に通し、造粒乾燥して粒剤を得た。
【0094】
製剤例2〔押出型粒剤〕
フルピリミン 2重量%
リグニンスルホン酸カルシウム 3重量%
アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム 0.5重量%
二酸化ケイ素 2重量%
ポリビニルアルコール 1重量%
クレー 91.5重量%
上記成分を均一に混合粉砕し、水を加えてよく練合した後、この混練物を押出型造粒機に通し、造粒乾燥して粒剤を得た。
【0095】
製剤例3〔押出型粒剤〕
フルピリミン 2重量%
ポリアクリル酸ナトリウム 2重量%
ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム 0.3重量%
カルボキシメチルセルロースナトリウム 1.5重量%
炭酸カルシウム 94.2重量%
ポリアクリル酸ナトリウムを除く、上記の成分を均一に混合粉砕し、そこへポリアクリル酸ナトリウムと水を加えてよく練合した後、この混練物を押出型造粒機に通し、造粒乾燥して粒剤を得た。
【0096】
製剤例4〔押出型粒剤〕
フルピリミン 2重量%
リグニンスルホン酸ナトリウム 3重量%
アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム 0.3重量%
デキストリン 5重量%
カオリン 10重量%
クレー 79.7重量%
上記成分を均一に混合粉砕し、水を加えてよく練合した後、この混練物を押出型造粒機に通し、造粒乾燥して粒剤を得た。
【0097】
製剤例5〔押出型粒剤〕
フルピリミン 2重量%
ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物 3重量%
ラウリル硫酸ナトリウム 0.3重量%
カルボキシメチルセルロースナトリウム 1.5重量%
タルク 30重量%
炭酸カルシウム 63.2重量%
上記成分を均一に混合粉砕し、水を加えてよく練合した後、この混練物を押出型造粒機に通し、造粒乾燥して粒剤を得た。
【0098】
製剤例6〔被覆型粒剤〕
フルピリミン 2重量%
珪砂(粒状:粒子径0.3~1.4mm) 95.55重量%
ラウリル硫酸ナトリウム 0.1重量%
二酸化ケイ素 0.5重量%
流動パラフィン 1.15重量%
赤色色素 0.2重量%
カオリン 0.5重量%
上記の珪砂及び流動パラフィン以外の成分を均一に混合粉砕して、粉砕物を得た。珪砂に流動パラフィンを加えて均一に湿潤させた後、前記粉砕物を加え、均一に混合して前記核粒子に前記粉砕物を被覆させ、粒剤を得た。
【0099】
製剤例7〔被覆型粒剤〕
フルピリミン 2重量%
珪砂(粒状:粒子径0.3~1.4mm) 95.85重量%
ラウリル硫酸ナトリウム 0.1重量%
二酸化ケイ素 0.75重量%
ポリプロピレングリコール 1.1重量%
赤色色素 0.2重量%
上記の珪砂及びポリプロプレングリコール以外の成分を均一に混合粉砕して、粉砕物を得た。珪砂にポリプロピレングリコールを加えて均一に湿潤させた後、前記粉砕物を加え、均一に混合して前記核粒子に前記粉砕物を被覆させ、粒剤を得た。
【0100】
製剤例8〔被覆型粒剤〕
フルピリミン 2重量%
アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム 0.1重量%
カオリン 1重量%
赤色色素 0.2重量%
ポリエチレングリコール 1.15重量%
粒状炭酸カルシウム
(粒子径0.42~0.85mm) 95.55重量%
上記の粒状炭酸カルシウム及びポリエチレングリコール以外の成分を均一に混合粉砕して、粉砕物を得た。粒状炭酸カルシウムにポリエチレングリコールを加えて均一に湿潤させた後、粉砕物を加え、均一に混合して前記核粒子に前記粉砕物を被覆させ、粒剤を得た。
【0101】
製剤例9〔被覆型粒剤〕
フルピリミン 2重量%
アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム 0.1重量%
二酸化ケイ素 0.5重量%
カオリン 0.5重量%
青色色素 0.2重量%
ポリプロピレングリコール 1.15重量%
珪砂(粒状:粒子径0.25~1.0mm) 95.55重量%
上記珪砂及びポリプロピレングリコール以外の成分を均一に混合粉砕して、粉砕物を得た。珪砂にポリプロピレングリコールを加えて均一に湿潤させた後、粉砕物を加え、均一に混合して前記核粒子に前記粉砕物を被覆させ、粒剤を得た。
【0102】
製剤例10〔被覆型粒剤〕
フルピリミン 2重量%
カオリン 1.5重量%
青色色素 0.2重量%
ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム 0.1重量%
ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル 0.2重量%
大豆油 1重量%
珪砂(粒状:粒子径0.25~1.0mm) 95重量%
フルピリミン、カオリン、青色色素を均一に混合粉砕して、粉砕物を得た。珪砂に、あらかじめ混合したジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、及び大豆油の混合物を加えて均一に湿潤させた後、粉砕物を加え、均一に混合して前記核粒子に前記粉砕物を被覆させ、粒剤を得た。
【0103】
比較製剤例1〔フロアブル剤〕
フルピリミン 10重量%
リグニンスルホン酸ナトリウム 2.5重量%
ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム 0.2重量%
プロピレングルコール 10重量%
キサンタンガム 0.3重量%
シリコーン系消泡剤 0.5重量%
防黴剤
(有機窒素硫黄系複合物、有機臭素系化合物) 0.03重量%
水 76.47重量%
水に、フルピリミン、リグニンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、プロピレングリコール、及びシリコーン系消泡剤を加えて混合した後、ビーズミルによる湿式粉砕を行い、スラリーを得た(A液)。次に、キサンタンガム、防黴剤、及び水を混合して溶解し、水溶液を得た(B液)。調製したA液780重量部とB液230重量部とを混合し、フロアブル剤を得た。
【0104】
比較製剤例2〔顆粒水和剤〕
フルピリミン 20重量%
ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム 1重量%
リグニンスルホン酸ナトリウム 7重量%
二酸化ケイ素 1重量%
クレー 71重量%
上記成分を均一に混合粉砕し、水を加えてよく練合した後、この混練物を押出型造粒機に通し、造粒乾燥して顆粒水和剤を得た。
【0105】
(試験例1 メイチュウ類及びウンカ類に対する圃場試験)
田植え25日後の水稲圃場へ、原体量(有効成分量、フルピリミン剤においてはフルピリミン量、以下同じ)が所定量となるように、製剤例1の粒剤(押出型粒剤)を水面施用により処理(田面水処理)した。対照製剤については、同じく田植え25日後にメイチュウ類防除用製剤のカルタップ4%粒剤を原体量(カルタップ量)が所定量となるように水面施用により処理し、さらにその処理から3週間(21日)後、ウンカ類防除用製剤のブプロフェジン25%フロアブル剤を原体量(ブプロフェジン量)が所定量となるように茎葉散布により処理した。無処理区については、いずれの製剤も施用しなかった。
【0106】
製剤処理をした日(田植え25日後)の14、21、28、35日後に、各区無作為に抽出された20株における分げつ数、及びメイチュウ類(主にサンカメイチュウ)による被害茎数を集計した。以下の式に従い、被害茎率を算出した。
被害茎率(%)=(各処理日の被害茎数/20株の総分げつ数)×100
結果を下記の表1に示す。また、同14、21、28、35、42日後に、各区無作為に抽出された20株の各株に寄生するウンカ類(トビイロウンカ及びセジロウンカの合計)の固体数(成虫及び幼虫数の合計)を集計し、ウンカ類の寄生虫数とした。結果を下記の表2に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
【表2】
【0109】
試験の結果、表1~2に示したように、本発明の固形製剤であるフルピリミン粒剤では、100g/haの処理量において、メイチュウ類に対する対照製剤よりも高い被害抑制効果を示すのみならず、ウンカ類の寄生虫数も著しく抑えることが確認された。一方、対照製剤であるカルタップ粒剤及びブプロフェジンフロアブル剤の処理区(体系防除処理区)においては、メイチュウ類による被害茎率は無処理区よりも低く抑えたが、ウンカ類の寄生虫数の減少率が少なく、ウンカ類に対する密度抑制効果は低いという結果であった。このように、本発明のフルピリミン粒剤は1回のみの処理で長期の持続性を有し、対照製剤のメイチュウ類防除用製剤及びウンカ類防除用製剤の体系処理よりも、メイチュウ類及びウンカ類に対して高い防除活性を示すことが確認された。
【0110】
また、各処理区から収穫された米の重量を比較することにより、各製剤の米の収量への影響を評価した。結果を下記の表3に示す。
【0111】
【表3】
【0112】
表3に示したように、フルピリミン粒剤の処理区では、対照製剤の体系防除処理区よりも高い、無処理区に対して12%の収量向上効果が認められた。以上の結果より、本発明の固形製剤(押出型粒剤)によれば、1回の処理により、イネ害虫防除作業の労力を低減化させるのみならず、対照製剤よりも優れた増収効果を示すことが確認された。
【0113】
(試験例2 トビイロウンカに対する室内試験)
播種3週間後のイネをワグネルポット(1/5000a)へ移植し、移植3日後に、原体量が所定量となるように、製造例1の粒剤(押出型粒剤)若しくは製造例6の粒剤(被覆型粒剤)、又は、フルピリミン原体を水面施用により処理(田面水処理)した。無処理区については、いずれの製剤及び薬剤も施用しなかった。製剤又は薬剤処理をした日(移植3日後)の3、29、42日後に、各ポットへトビイロウンカの2令幼虫を放飼し、その放飼6日後、若しくは、7日後に幼虫生死を観察し、以下の式に従って補正死虫率を算出した。
補正死虫率(%)=[{(無処理区の生存虫数/放飼虫数)―(処理区の生存虫数/放飼虫数)}/(無処理区の生存虫数/放飼虫数)]×100
試験は2連制で行った。結果を下記の表4に示す。
【0114】
【表4】
【0115】
試験の結果、表4に示したように、本発明の固形製剤であるフルピリミンの被覆型粒剤及び押出型粒剤では、各処理の29、42日後にイネ害虫を放飼しても、フルピリミン原体よりも高い補正死虫率を示した。よって、これらの粒剤とすることで原体よりも長期の持続性に優れることが確認された。
【0116】
(試験例3 メイチュウ類に対する圃場試験)
製剤例1の粒剤(押出型粒剤)を適当量の砂と混和後、移植25日後の水稲圃場へ、原体量が所定量となるように、均一に水面施用により処理(田面水処理)した。また、同日に、比較製剤例1のフロアブル剤を40L/10aの処理水量となるように水で希釈し、原体量が所定量となるように、噴霧器により茎葉部へ噴霧処理した。無処理区については、いずれの製剤も施用しなかった。製剤処理時にはメイチュウ類(優占種サンカメイチュウ)による茎部への被害は観察されなかったが、処理の28日後及び42日後に、各株の茎数及びメイチュウ類(優占種サンカメイチュウ)による芯枯茎数を目視によりカウントした。25mの区当たり30株の調査を行い、以下の式に従い、被害茎率を算出した。
被害茎率(%)={(30株当たりの芯枯茎数)/(30株当たりの総茎数)}×100
結果を下記の表5に示す。
【0117】
【表5】
【0118】
試験の結果、表5に示したように、本発明の押出型粒剤は、メイチュウ類(優占種サンカメイチュウ)に対してフロアブル剤よりも長期間に渡って高い防除活性を示した。
【0119】
(試験例4 トビイロウンカに対する圃場試験)
製剤例1の粒剤(押出型粒剤)を適当量の砂と混和後、移植25日後の水稲圃場へ、原体量が所定量となるように、均一に水面施用により処理(田面水処理)した。また、同日に、比較製剤例1のフロアブル剤を40L/10aの処理水量となるように水で希釈し、原体量が所定量となるように、噴霧器により茎葉部へ噴霧処理した。無処理区については、いずれの製剤も施用しなかった。製剤処理時にはウンカ類の稲への寄生は観察されなかったが、各処理の31、49、56日後に、各株元に寄生するトビイロウンカ成虫及び幼虫数を目視によりカウントした。25mの区当たり30株の調査を行った結果を、株当たりの寄生虫数(成虫及び幼虫の合計)で下記の表6に示す。
【0120】
【表6】
【0121】
試験の結果、表6に示したように、本発明の押出型粒剤は、トビイロウンカに対しても、フロアブル剤より長期間に渡って高い防除活性を示した。
【0122】
(参考試験例 顆粒水和剤とフロアブル剤との対比試験)
比較製剤例1のフロアブル剤又は比較製剤例2の顆粒水和剤を、150L/10aの処理水量となるように水で希釈し、原体量が所定量となるように、噴霧器により移植48日後の水稲茎葉部へ噴霧処理した。無処理区については、いずれの製剤も施用しなかった。各処理前及び処理の4、7、19、33日後に、A4サイズの粘着板へ各株元に寄生するウンカ類を払い落とし、目視によりヒメトビウンカ成虫及び幼虫数をカウントした。24mの区当たり30株の調査を行った結果を、株当たりの寄生虫数(成虫及び幼虫の合計)で下記の表7に示す。
【0123】
【表7】
【0124】
試験の結果、表7に示したように、フロアブル剤と顆粒水和剤とでは、ヒメトビウンカに対して同程度の防除活性を示した。よって上記の結果より、本発明の押出型粒剤は、顆粒水和剤と比べても長期間に渡って高い防除活性を示すものといえる。
【産業上の利用可能性】
【0125】
以上説明したように、本発明によれば、有害生物、特にイネ害虫を防除するための、防除活性の持続期間が長い新たな固形製剤、及びそれを用いたイネ害虫防除方法、並びに、前記イネ害虫防除用固形製剤の製造方法を提供することが可能となる。例えば、本発明のイネ害虫防除用固形製剤では、イネの移植2~5週間後に田面水処理することにより、従来一度の薬剤処理では十分に防除できなかったウンカ類及びメイチュウ類の防除が一度に可能となり、米栽培農家の薬剤防除にかかる労力の低減及び収穫率の向上にも有効である。