(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】電気伝導性ポリエステル組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 67/02 20060101AFI20240521BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240521BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20240521BHJP
H01B 1/24 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
C08L67/02
C08K3/04
C08L23/08
H01B1/24 Z
(21)【出願番号】P 2021532272
(86)(22)【出願日】2019-08-15
(86)【国際出願番号】 US2019046650
(87)【国際公開番号】W WO2020037122
(87)【国際公開日】2020-02-20
【審査請求日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】201810945146.1
(32)【優先日】2018-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519393129
【氏名又は名称】デュポン ポリマーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】ユンフォン ジアオ
【審査官】中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-506607(JP,A)
【文献】特表2008-509261(JP,A)
【文献】特開昭58-136652(JP,A)
【文献】特開2009-242524(JP,A)
【文献】特開2009-132896(JP,A)
【文献】特表2007-520609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
C08G 63/00- 64/42
H01B 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気伝導性ポリマー組成物であって:前記組成物の総重量%を合計100重量%にして、a)
40~92重量%の少なくとも1種の熱可塑性ポリエステル;b)2~15重量%の導電性カーボンブラック;c)4~30重量%の少なくとも1種のエチレンコポリマー系の衝撃改質剤;及びd)0.1~4重量%の少なくとも1種の、80~340mgKOH/gの酸価を有する超分岐ポリエステルを含み、前記少なくとも1種の超分岐ポリエステルが、10~99.9%の範囲の分岐度(DB)を有する、電気伝導性ポリマー組成物。
【請求項2】
前記組成物の総重量を基準として、前記少なくとも1種の熱可塑性ポリエステルを
40~88重量%の量で含む、請求項1に記載の電気伝導性ポリマー組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種の熱可塑性ポリエステルが、PET、PBT、PCT、及びそれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の電気伝導性ポリマー組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1種の超分岐ポリエステルが、90~330mgKOH/gの酸価を有する、請求項1に記載の電気伝導性ポリマー組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種の超分岐ポリエステルが、前記組成物の総重量を基準として、0.2~3.5重量%の量で存在する、請求項1に記載の電気伝導性ポリマー組成物。
【請求項6】
前記導電性カーボンブラックが、前記組成物の総重量を基準として、2.5~13重量%の量で存在する、請求項1に記載の電気伝導性ポリマー組成物。
【請求項7】
前記エチレンコポリマー系の衝撃改質剤が、前記組成物の総重量を基準として、6~25重量%の量で存在する、請求項1に記載の電気伝導性ポリマー組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の電気伝導性ポリマー組成物から形成した物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年8月17日出願の中国特許出願(Chinese Application.)第201810945146.1号に基づく優先権を主張し、この出願はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、優れた靭性を有する電気伝導性ポリエステル組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
熱可塑性ポリエステルは、その成形性、寸法安定性、耐薬品性、耐熱性、及び色安定性のため、自動車部品、電気/電子部品、及び多くの他の用途に使われてきた。エチレンコポリマー系の衝撃改質剤及び導電性カーボンブラックをポリエステルに添加してそれらの機械的強度(例えば、引張り強さ及び耐衝撃性)並びにそれらの電気伝導性をそれぞれ向上させ得ることは、知られている。しかしながら、エチレンコポリマー系の衝撃改質剤と導電性カーボンブラックを合わせてポリエステルに添加すると、導電性カーボンブラックだけを含有する組成物と比較すると、組成物の導電性に悪影響を与えることがあるので、ポリエステル組成物中の機械的強度と電気伝導性の両方を向上させることは、課題であった。したがって、ポリエステルの機械的強度と電気伝導性を同時に向上させる方法を開発する必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
以下のa)~d)を含む電気伝導性ポリマー組成物が提供される:組成物の総重量%を合計100重量%にして、a)少なくとも1種の熱可塑性ポリエステル;b)約2~15重量%の導電性カーボンブラック;c)約4~30重量%の少なくとも1種のエチレンコポリマー系の衝撃改質剤;及びd)約0.1~4重量%の少なくとも1種の、約80~340mgKOH/gの酸価を有する超分岐ポリエステル。
【0005】
電気伝導性ポリマー組成物の一実施形態においては、組成物は、組成物の総重量を基準として、約30~95重量%、又は約35~92重量%、又は約40~88重量%の量で少なくとも1種の熱可塑性ポリエステルを含む。
【0006】
電気伝導性ポリマー組成物の更なる一実施形態においては、少なくとも1種の熱可塑性ポリエステルは、PET、PBT、PCT、及びそれらの2種以上の組み合わせからなる群から選択される、又は少なくとも1種の熱可塑性ポリエステルは、PBTである。
【0007】
電気伝導性ポリマー組成物の尚更なる一実施形態においては、少なくとも1種の超分岐ポリエステルは、約10~99.9%の範囲の、又は約20~99%の範囲の、又は約20~95%の範囲の分岐度(DB)を有する。
【0008】
電気伝導性ポリマー組成物の尚更なる一実施形態においては、少なくとも1種の超分岐ポリエステルは、約90~330mgKOH/gの酸価、又は約100~320mgKOH/gの酸価を有する。
【0009】
電気伝導性ポリマー組成物の尚更なる一実施形態においては、少なくとも1種の超分岐ポリエステルは、組成物の総重量を基準として、約0.2~3.5重量%又は約0.3~3重量%の量で存在する。
【0010】
電気伝導性ポリマー組成物の尚更なる一実施形態においては、導電性カーボンブラックは、組成物の総重量を基準として、約2.5~13重量%又は約3~11重量%の量で存在する。
【0011】
電気伝導性ポリマー組成物の尚更なる一実施形態においては、エチレンコポリマー系の衝撃改質剤は、組成物の総重量を基準として、約6~25重量%又は約8~20重量%の量で存在する。
【0012】
上述の電気伝導性ポリマー組成物から形成される物品が本明細書において更に提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下のa)~d)を含む電気伝導性の熱可塑性ポリエステル組成物が本明細書に開示される:a)少なくとも1種の熱可塑性ポリエステル;b)導電性カーボンブラック;c)少なくとも1種のエチレンコポリマー系の衝撃改質剤;及びd)約80340mgKOH/gの酸価を有する少なくとも1種の超分岐ポリエステル。
【0014】
用語「熱可塑性ポリマー」は、加熱した際に液体に変わり、十分に冷却した際に冷えて剛性状態になるポリマーを指すように本明細書において使用される。本開示に従って、好適な熱可塑性ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)などが挙げられるがこれらに限定されない。本明細書で使用される熱可塑性ポリエステルは又、様々な供給業者から市販され得る。例えば、好適なPETは、E.I.du Pont de Nemours and Company(U.S.A.)(以下「DuPont」)から商品名Rynite(登録商標)で入手可能であり;好適なPBTは、DuPontから商品名Crastin(登録商標)で入手可能であり;好適なPTTは、DuPontから商品名Sorona(登録商標)で入手可能であり;好適なPCTは、Celanese Corporation(Switzerland)から商品名Thermx(商標)で入手可能である。
【0015】
本開示に従って、組成物の総重量を基準として、約30~95重量%、又は約35~92重量%、又は約40~88重量%の熱可塑性ポリエステルが、組成物中に存在できる。
【0016】
導電性カーボンブラック充填剤の粒径、粒子構造、多孔度、又は揮発分の含有量が、導電性に影響を与えることがある。好ましい導電性カーボンブラックは、粒子間距離を小さくして単位体積当たりにより多くの粒子を提供するために、粒径が小さい。電子は炭素を通り抜けるので電子が通って移動する導電パスを増大するために、このようなカーボンブラックは又、ハイストラクチャーを有することができる。理論に拘束されることを望むものではないが、ハイストラクチャーであれば、絶縁ギャップの数は減少し、電子は小さい抵抗でカーボンブラックを通過し、導電性がより高いカーボンブラックを提供する。特定の実施形態においては、低多孔質粒子と比較すると、高多孔度を有するカーボンブラックを使用して単位重量当たりにより多くの粒子をもたらすことができ、高多孔質カーボンブラックは、粒子間距離を更に小さくするように働き、より高い導電率の結果を提供できる。更に、揮発分含有量が低いカーボンブラックを用いて、カーボンブラックを介する電子トンネリングを促進でき、そして次にはより高い導電率を促進できる。
【0017】
本明細書で使用される導電性カーボンブラックの充填剤は、ジブチルフタレート(DBP)吸収量により規定されるので、それらのストラクチャーにより規定できる。DBP吸収量は、ASTM Method Number D3493に従って、測定できる。DBP吸収量は、当技術分野においてはカーボンブラックのストラクチャーに関連している。ハイストラクチャーのカーボンブラックは又、通常はBET表面積も大きい。カーボンブラックのBET表面積は、ASTM Method Number D6556により測定できる。この方法は、カーボンブラックの窒素吸収量を測定する。
【0018】
本明細書で使用される導電性カーボンブラックは、約150~600cc/100gのDBP吸収量を有し得る。その導電性カーボンブラックは、約500~2000m2/gのBET表面積も更に有し得る。好適な導電性カーボンブラック充填剤は又、市販されている。例えば、好適な導電性カーボンブラックは、Cabot Corporation(U.S.A.)から商品名Black Pearls(商標)2000又はVulcan(商標)XCmax(商標)22で;或いはAkzoNobel Polymer Chemistry(the Netherland)から商品名Ketjenblack(商標)EC600JD若しくはEC300J;或いはOrion Engineered Carbons S.A.(Luxembourg)から商品名Printex(商標)XE2-Bで入手可能である。
【0019】
本開示に従って、導電性カーボンブラックは、組成物の総重量を基準として、約2~15重量%、又は約2.5~13重量%、又は約3~11重量%の量で組成物中に存在できる。
【0020】
本明細書で使用される場合、用語「エチレンコポリマー系の衝撃改質剤」は、エチレン及び少なくとも1種の追加のモノマーに由来する(例えば、エチレン及び少なくとも1種の追加のモノマーから生成される)ポリマーを指す。
【0021】
本明細書で使用されるエチレンコポリマー系の衝撃改質剤は、モノマー(a)エチレン;モノマー(b)式CH2=C(R1)CO2R2(式中、R1は、水素又は1~8個の炭素原子を有するアルキル基であり、R2は、メチル、エチル、又はブチルなどの1~8個の炭素原子を有するアルキル基である)の1種又は複数種のオレフィン;そして場合によりモノマー(c)式CH2=C(R3)CO2R4(式中、R3は、水素であり、又はメチルなどの1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり、R4は、グリシジルである)の1種又は複数種のオレフィン;を重合して生成した少なくとも1種のランダムポリマーである。特定の実施形態においては、モノマー(b)は、ブチルアクリレートである。1種又は複数種のn-ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、イソ-ブチルアクリレート、及びsec-ブチルアクリレートが、使用できる。更なる実施形態においては、本明細書で使用されるエチレンコポリマー系の衝撃改質剤は、エチレン、ブチルアクリレート、及びグリシジルメタクリレートに由来し、一般的にE/BA/GMAと呼ばれる。モノマー(a)に由来する繰り返し単位は、エチレンコポリマー系の衝撃改質剤の総重量の約20~95重量%、又は約20~90重量%、又は約40~90重量%、又は約50~80重量%を含むこととなる。モノマー(b)に由来する繰り返し単位は、エチレンコポリマー系の衝撃改質剤の総重量の約3~70重量%、又は約3~40重量%、又は約15~35重量%、又は約20~35重量%を含むこととなる。追加のモノマー(c)に由来する繰り返し単位は、存在するならば、エチレンコポリマー系の衝撃改質剤の総重量の約0.5~25重量%、又は約2~20重量%、又は約3~17重量%を含んでもよい。
【0022】
エチレンコポリマー系の衝撃改質剤は、任意の(d)一酸化炭素(CO)モノマーに更に由来してもよい。存在する場合には、一酸化炭素に由来する繰り返し単位は、好ましくはエチレンコポリマー系の衝撃改質剤の総重量の約20重量%又は約3~15重量%まで含むこととなる。
【0023】
本開示に従って、エチレンコポリマー系の衝撃改質剤は、組成物の総重量を基準として、約4~30重量%、又は約6~25重量%、又は約8~20重量%の量で組成物中に存在できる。
【0024】
超分岐ポリエステルは、分子的に及び構造的に不均一なポリエステルであり、OH、COOH、及びCOOR基から選択される1つ又は複数の官能基を含有してもよい。エステル化されたカルボキシル基におけるラジカルRは、1~60個の炭素原子を有する基を含むことができる。その基は又、ヘテロ原子又は更なる置換基を含有できる。Rの例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、ヘキシル、オクチルラジカルなどのC1~C8アルキルラジカル、又はベンジルラジカルなどのC6~C12アリール若しくはアリールアルキルラジカルが挙げられる。
【0025】
官能基が、ペンダント状に配置されることもあるが、官能基は、本質的には末端基である。
【0026】
特定の実施形態においては、本明細書で使用される超分岐ポリエステルは、OHとCOOH基の両方を含有する。
【0027】
本明細書で使用される超分岐ポリエステルは、約80~340mgKOH/g、又は約90~330mgKOH/g、又は約100~320mgKOH/gの酸価を有することができる。
【0028】
更に、本明細書で使用される超分岐ポリエステルは、約10~99.9%、又は約20~99%、又は約20~95%の範囲の分岐度(DB)、即ち、分子当たりの末端基の平均数を樹状結合の平均数に加えた数を有することができる。
【0029】
超分岐ポリエステルは、任意の好適なプロセスにより、合成できる。例えば、反応するその反応溶液は:
(a)1種又は複数種のジカルボン酸、又は少なくとも3つの官能基を有する1種又は複数種のアルコールとのそれらの1種又は複数種の誘導体、
(b)或いは1種若しくは複数のトリカルボン酸若しくは4官能以上の多価カルボン酸、又は1種又は複数種のジオールとのそれらの1種若しくは複数の誘導体、
(c)或いは1種若しくは複数のトリカルボン酸若しくは4官能以上の多価カルボン酸、又は少なくとも3つの官能基を有する1種若しくはアルコールとのそれらの1種又は複数種の誘導体、
(d)或いは1種若しくは複数のジヒドロキシ又はポリヒドロキシカルボン酸、
(e)或いは1種若しくは複数のヒドロキシジカルボン酸又はヒドロキシポリカルボン酸、
或いは上述の反応溶液のうちの少なくとも2つの混合物
を含むことができる。
【0030】
上述の反応溶液(a)~(e)の変形形態のうちの少なくとも2つの混合物を反応させることも可能である。
【0031】
最も単純な場合には、反応溶液は、互いに反応する成分の混合物のみからなる。反応溶液は、溶媒、好適なエステル化触媒又はエステル交換触媒も含んでよく、そして適切な場合には、更なる添加剤も含むことがある。
【0032】
重合は、通例、約50~200℃の温度で加熱されることにより起こる。重合は、溶媒の存在下で実施できる。好適な例としては、パラフィン又は芳香族炭化水素などの炭化水素が挙げられる。
【0033】
反応の終了後に、高官能性の超分岐ポリエステルは、例えば、濾過により触媒を除去し、濾液を濃縮することにより単離でき、前記濃縮は、通例、減圧下で行われる。反応混合物を後処理する他の非常に好適な方法は、水を添加後に沈殿させ、その後に洗浄し、乾燥させる方法である。
【0034】
本明細書で使用される超分岐ポリエステルも市販され得る。例えば、好適な超分岐ポリエステルは、Wuhan HyperBranched Polymers Science&Technology Co.Ltd.(China)から製品名HyPer C10、HyPer C20、HyPer C30、又はHyPer C40で入手可能であり;又はWeihai CY Dendrimer Technology Co.Ltd.(China)から製品名CYD-C600で入手可能である。
【0035】
本開示に従って、超分岐ポリエステルは、組成物の総重量を基準として、約0.1~4重量%、又は約0.2~3.5重量%、又は約0.3~3重量%の量で組成物中に存在できる。
【0036】
本明細書に開示される電気伝導性ポリエステル組成物は、着色剤、酸化防止剤、UV安定剤、UV吸収剤、熱安定剤、潤滑剤、粘性調整剤、造核剤、可塑剤、離型剤、引掻傷及び擦傷改質剤、衝撃改質剤、乳化剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、酸吸着剤、臭気吸着剤、耐加水分解剤、抗菌剤、密度調整剤、補強充填剤、熱伝導性充填剤、電気伝導性充填剤、カップリング剤、末端封止試薬及びそれらの2種以上の組み合わせなどの他の添加剤を更に含むことがある。本明細書に開示される電気伝導性ポリエステル組成物の総重量を基準として、そのような追加の添加剤は、約0.005~30重量%又は約0.01~25重量%、又は約0.02~20重量%の量で存在できる。
【0037】
本明細書で実証されるように、本明細書に開示されるポリエステル組成物は、優れた機械特性(例えば、引張破壊ひずみ及び耐衝撃性)を維持しながら、高導電性を備えている。
【0038】
本明細書に開示される電気伝導性ポリエステル組成物で形成した物品が、本明細書に更に開示される。そのような電気伝導性ポリエステル組成物は、電気メッキ、並びに帯電防止及び電磁遮蔽をはじめとする多くの領域で使用できる。電気伝導性ポリエステル組成物で形成した例示的物品としては、電子デバイス用の構造部品又はハウジング、プリンター及び複写機の付属品、並びに電子部品用のパッケージが挙げられるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0039】
材料
・PBT - Chang Chun Plastics Co.,Ltd(Taiwan)から購入したポリブチレンテレフタレート樹脂、製品名CCP PBT 1100-211D;
・CB - AkzoNobelから購入した導電性カーボンブラック、商品名Ketjenblack(商標)EC600JD、DBP吸収値495cm3/100g、及びBET表面積1270m2/g;
・マイカ - 株式会社ヤマグチマイカ(日本)からで購入したマイカ、製品名YM-31;
・AO(酸化防止剤) - BASF(Germany)から購入したペンタエリトリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、商品名IRGANOX(商標)1010;
・潤滑剤 - Emery Oleochemicals(Malaysia)から購入したペンタエリトリトールテトラステアレート、商品名LOXIOL(商標)P861/3.5.
・RA(離型剤) - Sinopharm Chemical Reagent Co.,Ltd.(China)から購入したステアリン酸亜鉛;
・衝撃改質剤 - DuPontから購入したエチレン、ブチルアクリレート及びグリシジルメタクリレートのコポリマー、商品名Elvaloy(登録商標)PTW;
・HBP-1 - Wuhan HyperBranched Polymers Science&Technology Co.Ltd.から購入した超分岐ポリエステル、製品名HyPer H102、酸価20mgKOH/g及び分岐度(DB)50~60%;
・HBP-2 - 超分岐ポリエステル(Weihai CY Dendrimer Technology Co.Ltd.から購入、製品名CYD-T1050)、酸価50mgKOH/g及び分岐度(DB)60~70%;
・HBP-3 - Wuhan HyperBranched Polymers Science&Technology Co.Ltd.から購入した超分岐ポリエステル、製品名HyPer C403、酸価120mgKOH/g及び分岐度(DB)60~65%;
・HBP-4 - Wuhan HyperBranched Polymers Science&Technology Co.Ltd.から購入した超分岐ポリエステル、製品名HyPer C103、酸価220mgKOH/g及び分岐度(DB)50~60%;
・HBP-5 - Wuhan HyperBranched Polymers Science&Technology Co.Ltd.から購入した超分岐ポリエステル、製品名HyPer C101、酸価300mgKOH/g及び分岐度(DB)50~60%;
・HBP-6 - Weihai CY Dendrimer Technology Co.Ltd.から購入した超分岐ポリエステル、製品名CYD-C2、酸価360mgKOH/g及び分岐度(DB)60~65%。
【0040】
CE1~CE6及びE1~E5、ポリマー組成物(表1に全ての成分を列挙する)をそれぞれZSK26MC二軸押出機(Coperion GmbH(Germany)製)中で混ぜ合わせて、調製した。バレル温度を約250℃、スクリュー回転数を約300rpm、及び出力回転速度を約20kg/時に設定した。押出機を出た後、溶融温度及び成形温度をそれぞれ約260℃、約90℃に設定した180T成形機(住友商事(日本)製)を用い、ペレットをISO527型1A試験片及び100x100x2mmの立方体片に成形した。
【0041】
ISO527型1A試験片を使用し、Instron3367引張試験機(Instron(U.S.A.)製)を用いISO527-2:2012に従って引張破壊ひずみを求め、及びCEAST9050振子式衝撃試験機(Instron製)を用い、ISO179-1標準に従って、ノッチ付きシャルピー衝撃を求めた。一方、100x100x2mmの立方体片を使用し、RT-3000S/RG-7四探針抵抗試験システム(ナプソン株式会社(Napton Corporation)(日本)製)を用いて、組成物の体積抵抗率を求めた。
【0042】
以下に実証されるように、導電性カーボンブラックをPBTに添加した場合、体積抵抗率は33しかなく低いが、引張破壊ひずみ及びノッチ付きシャルピー衝撃が、非常に低い(CE1)。エチレンコポリマー系の衝撃改質剤(CE2参照)を更に添加すると、引張破壊ひずみ及びノッチ付きシャルピー衝撃を改善するが、しかしながら、組成物の体積抵抗率の増大も生じる。E1~E5により実証されるように、酸価120mgKOH/g、220mgKOH/g、又は300mgKOH/gを有する超分岐ポリエステルを添加すると、引張破壊ひずみ及びノッチ付きシャルピー衝撃抵抗が高く、且つ体積抵抗率が低いPBT組成物を取得する目標が達成される。
【0043】