(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】光源モジュール
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/04 20060101AFI20240521BHJP
F21S 41/143 20180101ALI20240521BHJP
F21S 41/148 20180101ALI20240521BHJP
B62J 6/024 20200101ALI20240521BHJP
F21W 102/155 20180101ALN20240521BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240521BHJP
F21Y 115/15 20160101ALN20240521BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20240521BHJP
【FI】
B60Q1/04 E
B60Q1/04 D
F21S41/143
F21S41/148
B62J6/024
F21W102:155
F21Y115:10
F21Y115:15
F21Y115:30
(21)【出願番号】P 2021535444
(86)(22)【出願日】2020-07-30
(86)【国際出願番号】 JP2020029347
(87)【国際公開番号】W WO2021020537
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-04-26
(31)【優先権主張番号】P 2019142221
(32)【優先日】2019-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019142222
(32)【優先日】2019-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020118473
(32)【優先日】2020-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】市川 知幸
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 記一
(72)【発明者】
【氏名】小澤 篤
【審査官】當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-054555(JP,A)
【文献】特開2018-026267(JP,A)
【文献】国際公開第2018/043663(WO,A1)
【文献】特開2014-107049(JP,A)
【文献】特開2011-129283(JP,A)
【文献】中国実用新案第206797244(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/04
F21S 41/143
F21S 41/148
B62J 6/024
F21W 102/155
F21Y 115/10
F21Y 115/15
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイビームとロービームを切替可能な車両用の光源モジュールであって、
その出射光が、第1光学系によってロービーム領域に照射されるように配置される第1光源と、
その出射光が、第2光学系によってハイビーム領域に照射されるように配置される第2光源と、
前記ハイビーム、前記ロービームいずれかの点灯指示に応答して前記第1光源に駆動電流を供給するとともに、前記ハイビームの点灯指示に応答して前記第2光源に前記駆動電流を供給するように構成される点灯回路と、
を備
え、
前記第1光源と前記第2光源は直列に接続され、
前記点灯回路は、
前記第2光源と並列に設けられ、前記ハイビームの点灯指示の間オフ、前記ロービームの点灯指示の間オンとなるバイパススイッチと、
前記第1光源と前記第2光源の直列接続回路に前記駆動電流を供給する駆動回路と、
を含み、
前記駆動回路は、前記バイパススイッチがオンの状態において、前記第1光源および前記バイパススイッチを含む経路に、第1電流量の前記駆動電流を供給し、前記バイパススイッチがオフの状態において、前記第1光源および前記第2光源を含む経路に、前記第1電流量よりも少ない第2電流量の前記駆動電流を供給することを特徴とする光源モジュール。
【請求項2】
前記第1光源および前記第2光源は、地面と垂直な面に所定方向に並べて実装され、
前記第1光学系および前記第2光学系は、レンズ光学系であることを特徴とする請求項
1に記載の光源モジュール。
【請求項3】
前記第1光源は、第1半導体発光素子および第2半導体発光素子を含み、
前記第2光源は、第3半導体発光素子を含み、
前記第1光学系は、
前記第1半導体発光素子の出射光を受け、前記ロービーム領域のエルボー点より下側の領域の配光を形成する第1レンズと、
前記第2半導体発光素子の出射光を受け、前記ロービーム領域のエルボー点より上側の領域の配光を形成する第2レンズと、
を含み、
前記第2光学系は、前記第3半導体発光素子の出射光を受け、前記ハイビーム領域を照射する第3レンズを含むことを特徴とする請求項
1または2に記載の光源モジュール。
【請求項4】
前記第1光源は、地面と平行な第1面に実装され、
前記第2光源は、第1面の裏面の第3面に実装され、
前記第1光学系は、前記第1面側に設けられた第1リフレクタを含み、
前記第2光学系は、前記第3面側に設けられた第2リフレクタを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の光源モジュール。
【請求項5】
前記第1光源は、地面と平行な第1面に実装され、
前記第2光源は、地面と垂直な第2面に実装され、
前記第1光学系は、反射光学系を含み、
前記第2光学系は、透過光学系を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の光源モジュール。
【請求項6】
前記第1光源は、水平方向に隣接して配置される複数の発光素子を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の光源モジュール。
【請求項7】
ハイビームとロービームを切替可能な車両用の光源モジュールであって、
その出射光が、第1光学系によってロービーム領域に照射されるように配置される第1光源と、
その出射光が、第2光学系によってハイビーム領域に照射されるように配置される第2光源と、
その出射光が前記第1光学系によって前記ロービーム領域に照射されるように配置される第3光源と、
前記ハイビーム、前記ロービームいずれかの点灯指示に応答して前記第1光源に駆動電流を供給するとともに、前記ハイビームの点灯指示に応答して前記第2光源に前記駆動電流を供給するように構成される点灯回路と、
を備え
、
前記点灯回路は、前記ロービームの点灯指示に応答して、前記第3光源に前記駆動電流を供給するよう構成され、
前記点灯回路は、
前記ロービームの点灯指示に応答してオンとなる第1スイッチと、
前記ハイビームの点灯指示に応答してオンとなる第2スイッチと、
前記駆動電流を生成する駆動回路と、
を含み、
前記第1光源、前記第3光源および前記第1スイッチは直列に接続され、
前記第2光源と前記第2スイッチは、前記第3光源および前記第1スイッチと並列に接続されることを特徴とする光源モジュール。
【請求項8】
前記第1光源および前記第3光源は、地面と平行な第1面に実装され、
前記第2光源は、第1面の裏面の第3面に実装され、
前記第1光学系は、前記第1面側に設けられた第1リフレクタを含み、
前記第2光学系は、前記第3面側に設けられた第2リフレクタを含むことを特徴とする請求項
7に記載の光源モジュール。
【請求項9】
前記第1光源および前記第3光源は、地面と平行な第1面に実装され、
前記第2光源は、地面と垂直な第2面に実装され、
前記第1光学系は、反射光学系を含み、
前記第2光学系は、透過光学系を含むことを特徴とする請求項
7に記載の光源モジュール。
【請求項10】
前記第1光源および前記第3光源は、水平方向に隣接して配置される複数の発光素子を含むことを特徴とする請求項
7から9のいずれかに記載の光源モジュール。
【請求項11】
前記第2光源は水平方向に隣接して配置される複数の発光素子を含むことを特徴とする請求項
7から10のいずれかに記載の光源モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車などの車両に用いられる灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動二輪車において、ハイビームおよびロービームの光源は、独立した2つの点灯回路によって個別に駆動されていた。自動二輪車以外の車両においても、同様の構成が採用される場合が多い。そのため灯具の構造が複雑であり、メンテナンスに手間がかかっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はかかる状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、車両用の光源モジュールの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1. 本発明のある態様は、ハイビームとロービームを切替可能な車両用の光源モジュールに関する。光源モジュールは、その出射光が第1光学系によってロービーム領域に照射されるように配置される第1光源と、その出射光が第2光学系によってハイビーム領域に照射されるように配置される第2光源と、ハイビーム、ロービームのいずれかの点灯指示に応答して第1光源に駆動電流を供給するとともに、ハイビームの点灯指示に応答して第2光源に駆動電流を供給するように構成される点灯回路と、を備える。
【0006】
第1光源と第2光源は直列に接続されてもよい。点灯回路は、第1光源と第2光源の直列接続回路に駆動電流を供給する駆動回路と、第2光源と並列に設けられ、ハイビームの点灯指示の間オフ、ロービームの点灯指示の間オンとなるバイパススイッチと、を含んでもよい。
【0007】
駆動回路は、バイパススイッチのオン状態において、オフ状態に比べて、駆動電流を減少させてもよい。これにより、ハイビームの点灯状態における消費電力および発熱の増大を抑制できる。
【0008】
第1光源および前記第2光源は、地面と垂直な面に所定方向に並べて実装されてもよい。第1光学系および第2光学系は、レンズ光学系であってもよい。所定方向は水平方向であってもよい。
【0009】
第1光源は、第1半導体発光素子および第2半導体発光素子を含んでもよい。第2光源は、第3半導体発光素子を含んでもよい。第1光学系は、第1半導体発光素子の出射光を受け、ロービーム領域のエルボー点より下側の領域の配光を形成する第1レンズと、第2半導体発光素子の出射光を受け、ロービーム領域のエルボー点より上側の領域の配光を形成する第2レンズと、を含んでもよい。第2光学系は、第3半導体発光素子の出射光を受け、ハイビーム領域を照射する第3レンズを含んでもよい。
【0010】
第1光源は、地面と平行な第1面に実装され、第2光源は、第1面の裏面の第3面に実装されてもよい。第1光学系は、第1面側に設けられた第1リフレクタを含んでもよい。第2光学系は、第3面側に設けられた第2リフレクタを含んでもよい。
【0011】
第1光源は、地面と平行な第1面に実装され、第2光源は、地面と垂直な第2面に実装されてもよい。第1光学系は、反射光学系を含んでもよい。第2光学系は、透過光学系を含んでもよい。
【0012】
第1光源は、水平方向に隣接して配置される複数の発光素子を含んでもよい。
【0013】
光源モジュールは、その出射光が第1光学系によってロービーム領域に照射されるように配置される第3光源をさらに備えてもよい。点灯回路は、ロービームの点灯指示に応答して、第3光源に駆動電流を供給するよう構成されてもよい。
【0014】
点灯回路は、ロービームの点灯指示に応答してオンとなる第1スイッチと、ハイビームの点灯指示に応答してオンとなる第2スイッチと、駆動電流を生成する駆動回路と、を含んでもよい。第1光源、第3光源および第1スイッチは直列に接続され、第2光源と第2スイッチは、第3光源および第1スイッチと並列に接続されてもよい。
【0015】
第1光源および第3光源は、地面と平行な第1面に実装され、第2光源は、第1面の裏面の第3面に実装され、第1光学系は、第1面側に設けられた第1リフレクタを含んでもよい。第2光学系は、第3面側に設けられた第2リフレクタを含んでもよい。
【0016】
第1光源および第3光源は、地面と平行な第1面に実装され、第2光源は、地面と垂直な第2面に実装され、第1光学系は、反射光学系を含んでもよい。第2光学系は、透過光学系を含んでもよい。
【0017】
第1光源および第3光源は、水平方向に隣接して配置される複数の発光素子を含んでもよい。
【0018】
第2光源は水平方向に隣接して配置される複数の発光素子を含んでもよい。
【0019】
本発明の別の態様もまた、ハイビームとロービームを切替可能な車両用の光源モジュールに関する。光源モジュールは、その出射光が第1光学系によってロービーム領域に照射されるように配置される第1光源と、その出射光が第2光学系によってハイビーム領域に照射されるように配置される第2光源と、第2光源の出射光をハイビーム領域に照射する第2光学系と、第1光源および第2光源と熱的に結合するヒートシンクと、第1光源および第2光源に駆動電流を供給する点灯回路と、を備える。
【0020】
光源モジュールは、その出射光が第1光学系によってロービーム領域に照射されるように配置される第3光源をさらに備えてもよい。
【0021】
本発明のある態様は、ハイビームとロービームを切替可能な車両用の光源モジュールに関する。光源モジュールは、ロービーム用の第1光源と、第1光源と並列に設けられた第1スイッチと、第1光源と直列に接続されるロービーム用の第2光源および第2スイッチと、第2光源および第2スイッチと並列な経路に、直列に設けられるハイビーム用の第3光源および第3スイッチと、ハイビーム、ロービームいずれかの点灯指示に応答して、駆動電流を生成する駆動回路と、を備える。
【0022】
この態様によると、単一の駆動回路によってハイビームとロービームを切り替えることができる。また、いずれかの経路において断線が発生した場合には、第1スイッチから第3スイッチのオン、オフの組み合わせを切り替えて、駆動電流を断線が生じていない経路に供給することにより、車両前方を照射し続けることができる。
【0023】
光源モジュールは、正常時において、(i)ロービームの点灯指示に応答して第1スイッチをオフ、第2スイッチをオン、第3スイッチをオフし、(ii)ハイビームの点灯指示に応答して、第1スイッチをオフ、第2スイッチをオフ、第3スイッチをオンとするコントローラをさらに備えてもよい。
【0024】
コントローラは、電流遮断を検出すると、第1スイッチをオン状態としてもよい。これにより、第1光源が断線している場合に、駆動電流を第1スイッチに迂回し、第2光源または第3光源に駆動電流を供給し続けることができ、車両前方を照射し続けることができる。
【0025】
コントローラは、第1スイッチをオン状態とした後、電流遮断が所定の第1時間にわたり検出され続けるとき、第1スイッチをオフしてもよい。第1スイッチをオン状態としても電流遮断が解消しない場合、断線箇所が第1光源でないと推定される。その場合、第1スイッチをオフすることで、第1光源を点灯できるようにすることで、ロービーム領域の照度の低下を抑制できる。
【0026】
第1時間は、2ms~500msであってもよい。これくらいの短時間であれば視界が暗くなっても、運転を継続できる。
【0027】
コントローラは、駆動電流がゼロである状態が、所定の第2時間にわたり持続するときに、電流遮断状態と判定してもよい。これにより、ノイズによる誤検出を防止できる。
【0028】
コントローラは、第1スイッチをオン状態に固定する間、ハイビーム、ロービームの点灯指示にかかわらず、第2スイッチをオンしてもよい。これにより、ハイビームとロービームの手動による切り替えが無効となるため、運転者に断線故障を通知することができる。また、ロービームに固定されるため、周囲の交通参加者にグレアを与えるのを防止できる。
【0029】
コントローラは、第1スイッチをオン状態に固定する間、ハイビーム、ロービームの点灯指示にかかわらず、第3スイッチをオンしてもよい。これにより、ハイビームとロービームの手動による切り替えが無効となるため、運転者に断線故障を通知することができる。また、一般的にはロービームで走行する機会の方が多いため、ハイビームのみが有効となり、ロービームが無効となることで、運転者は断線故障に気づきやすくなる。
【0030】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0031】
本発明のある態様によれば、ハイビームとロービームを統合した光源モジュールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】実施形態1に係る光源モジュールを備えるヘッドランプを示す図である。
【
図2】ヘッドランプのレイアウトの一例を示す斜視図である。
【
図3】ヘッドランプのレイアウトの別の一例を示す斜視図である。
【
図4】ヘッドランプのレイアウトのさらに別の一例を示す斜視図である。
【
図5】
図4のヘッドランプが形成する配光を示す図である。
【
図6】実施形態2に係る光源モジュールを備えるヘッドランプを示す図である。
【
図8】
図8(a)、(b)は、駆動電流IOUTの制御例を説明する図である。
【
図9】アナログ調光による減光の利点を説明する図である。
【
図12】変形例に係る光源モジュールの回路図である。
【
図13】
図6のヘッドランプのレイアウトの一例を示す斜視図である。
【
図14】実施形態3に係る光源モジュールを備えるヘッドランプを示す図である。
【
図15】ヘッドランプのレイアウトの一例を示す斜視図である。
【
図16】ヘッドランプおよび光源モジュールのレイアウトの別の一例を示す斜視図である。
【
図17】実施形態4に係る自動二輪車用のヘッドランプを示す図である。
【
図18】光源モジュールの動作を説明するフローチャートである。
【
図19】光源モジュールの第1の動作波形図である。
【
図20】光源モジュールの第2の動作波形図である。
【
図21】光源モジュールの第3の動作波形図である。
【
図22】光源モジュールの第4の動作波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を好適な実施形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0034】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0035】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0036】
また本明細書において、電圧信号、電流信号などの電気信号、あるいは抵抗、キャパシタなどの回路素子に付された符号は、必要に応じてそれぞれの電圧値、電流値、あるいは抵抗値、容量値を表すものとする。
【0037】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る光源モジュール100を備えるヘッドランプ2Aを示す図である。ヘッドランプ2Aは、自動二輪車に搭載され、ハイビームとロービームが切り替え可能であり、光源モジュール100、第1光学系4および第2光学系6を備える。
【0038】
光源モジュール100は、第1光源110、第2光源120および点灯回路130、図示しないヒートシンクを備え、モジュール化されている。第1光源110は、その出射光が、第1光学系4によって、仮想鉛直スクリーン上のロービーム領域12に照射されるように配置される。第2光源120は、その出射光が、第2光学系6によってハイビーム領域14に照射されるように配置される。第1光源110および第2光源120はそれぞれ、少なくともひとつの半導体発光素子、たとえばLED(発光ダイオード)やLD(レーザダイオード)、有機EL素子を含む。
【0039】
光源モジュール100には、車両側からハイビーム、ロービームの点灯指示が入力される。点灯回路130は、ハイビーム、ロービームのいずれかの点灯指示があると、第1光源110に駆動電流IOUTを供給する。また点灯回路130は、ハイビームの点灯指示に応答して、第2光源120に駆動電流IOUTを供給するように構成される。
【0040】
この実施形態において、第1光源110と第2光源120は直列に接続される。そして点灯回路130は、定電流ドライバである駆動回路132と、バイパススイッチ134を含む。駆動回路132は、ハイビームまたはロービームの点灯状態においてイネーブルとなり、第1光源110と第2光源120の直列接続回路に駆動電流IOUTを供給する。
【0041】
バイパススイッチ134は、第2光源120と並列に設けられ、ハイビームの点灯指示の間オフ、ロービームの点灯指示の間オンとなる。
【0042】
この実施例において、第1光源110は二個のLEDを、第2光源120は一個のLEDを含む。したがって、駆動回路132の駆動経路上には、合計三個のLEDが直列に設けられている。一般的に自動二輪車のバッテリ10の電圧VBAT、すなわち駆動回路132の電源電圧は12Vである。一方、白色LEDの順方向電圧は3.5V程度であるから、駆動回路132の負荷の両端間電圧は、3.5V×3=10.5V程度となり、バッテリ電圧VBATより低くなる。そのため駆動回路132は、降圧型のスイッチングコンバータあるいは、リニアレギュレータで構成することができる。
【0043】
以上が光源モジュール100の構成である。続いてその動作を説明する。
【0044】
ハイビーム、ロービームいずれの点灯指示も発生していない状態では、駆動回路132がディセーブル状態であり、駆動電流IOUTは生成されない。
【0045】
ハイビームもしくはロービームいずれかの点灯指示が発生すると、駆動回路132がイネーブルとなり、所定の電流量に安定化された駆動電流IOUTが生成される。
【0046】
ロービームの点灯指示が発生する間は、バイパススイッチ134がオンであり、駆動電流IOUTは、第1光源110およびバイパススイッチ134に流れる。したがって、第2光源120は消灯し、第1光源110のみが点灯し、ロービーム領域12が照射される。
【0047】
ハイビームの点灯指示が発生する間は、バイパススイッチ134がオフであり、駆動電流IOUTは、第1光源110および第2光源120に流れる。したがって、第1光源110および第2光源120が点灯し、ロービーム領域12とハイビーム領域14の両方が照射される。
【0048】
図2は、ヘッドランプ2Aのレイアウトの一例を示す斜視図である。第1光源110は、地面と平行な第1面S1に実装される。第2光源120は地面と垂直な第2面S2に実装される。第1面S1および第2面S2は、ブロック状のヒートシンク8の表面に対応する。
【0049】
好ましくは第1光源110を構成する二個の発光素子は、水平方向に並べて配置される。これにより、ハイビームとロービームの境界である水平方向のカットラインを作りやすくなる。
【0050】
第1光学系4は、反射光学系すなわちミラーを含む。第2光学系6は、透過光学系すなわちレンズを含む。点灯回路130は、ヒートシンク8に実装される。たとえばヒートシンク8は、その内部に空洞あるいは凹部を有し、点灯回路130はこの空洞あるいは凹部に密着して固定されてもよい。
【0051】
図3は、ヘッドランプ2Aのレイアウトの別の一例を示す斜視図である。第1光源110は、地面と平行な第1面S1に実装される。第2光源120は、第1面S1の反対側の第3面S3に実装される。第1光学系4は、第1面S1側に設けられた第1リフレクタを含み、第2光学系6は、第3面側に設けられた第2リフレクタを含む。
【0052】
図3においても、第1光源110を構成する二個の発光素子は、水平方向に並べて配置される。これにより、ハイビームとロービームの境界である水平方向のカットラインを作りやすくなる。
【0053】
図4は、ヘッドランプ2Aのレイアウトのさらに別の一例を示す斜視図である。ヘッドランプ2Aは、光源モジュール100およびレンズモジュール150を備える。光源モジュール100は、第1光源110、第2光源120、点灯回路130、ヒートシンク140、プリント基板142、コネクタ144を備える。第1光源110は、第1半導体発光素子112Aおよび第2半導体発光素子112Bを含み、第2光源120は、第3半導体発光素子122を含む。
【0054】
第1半導体発光素子112A、第2半導体発光素子112B、第3半導体発光素子122は、ヒートシンク140上に、所定方向に並べて実装される。所定方向はこの例では水平方向である。第1半導体発光素子112A、第2半導体発光素子112B、第3半導体発光素子122の配置順序は入れ替えてもよい。第1半導体発光素子112A、第2半導体発光素子112B、第3半導体発光素子122それぞれのアノード電極およびカソード電極は、それらの表面に形成される。
【0055】
プリント基板142上には、点灯回路130の構成部品や、コネクタ144が実装される。また、プリント基板142の配線は、ボンディングワイヤを介して、第1半導体発光素子112A、第2半導体発光素子112B、第3半導体発光素子122の電極と接続される。
【0056】
レンズモジュール150は、第1光学系4に対応する第1レンズ152および第2レンズ154と、第2光学系6に対応する第3レンズ156を含む。第1レンズ152は、第1半導体発光素子112Aの出射ビームを受け、車両前方に投影する。第2レンズ154は、第2半導体発光素子112Bの出射ビームを受け、車両前方に投影する。第3レンズ154は、第3半導体発光素子122の出射ビームを受け、車両前方に投影する。
【0057】
図5は、
図4のヘッドランプ2Aが形成する配光を示す図である。一点鎖線はカットオフラインCLを示しており、カットオフラインCLより下側にロービームの配光が形成され、上側にハイビームの配光が形成される。
【0058】
ロービーム領域は、エルボー点ELBを通る水平ラインより下側の第1部分L1と、上側の第2部分L2を含む。第1レンズ152は、主として第1部分L1をカバーする配光A1を形成し、第2レンズ154は、主として第2部分L2をカバーする配光A2を形成する。また、第3レンズ156は、ハイビーム領域Hをカバーする配光A3を形成する。
【0059】
(実施形態2)
実施形態1では、駆動回路132が生成する駆動電流I
OUTは、ヘッドランプ2Aの点灯モード(ロービーム、ハイビーム)にかかわらず一定であった。そのため、ハイビームモードにおける消費電力すなわち発熱が、ロービームモードにおける消費電力すなわち発熱より大きくなる。具体的には、
図1に示すように、第1光源110が2個のLEDチップを含み、第2光源110が1個のLEDチップを含む場合、ハイビームモードにおける発熱量は、ロービームモードにおける発熱量の1.5倍となる。そのため、ヒートシンクが大型化する場合がある。
【0060】
図6は、実施形態2に係る光源モジュール100Cを備えるヘッドランプ2Cを示す図である。光源モジュール100Cの構成について、実施形態1の光源モジュール100との相違点を中心に説明する。
【0061】
点灯回路130Cは、駆動回路132Cおよびバイパススイッチ134を備える。本実施形態において、駆動回路132Cは、ハイビームモードとロービームモードに応じて、駆動電流IOUTの電流量(時間平均値)が切り替え可能に構成される。具体的には、ハイビームモードにおける駆動電流IOUTの電流量IOUTHを、ロービームモードにおける駆動電流IOUTの電流量IOUTLよりも小さくする。
IOUTH<IOUTL
【0062】
第1光源110が2個の半導体発光素子112A,112Bを含み、第2光源120が1個の半導体発光素子122を含むとする。この場合、IOUTHを、IOUTLの2/3倍程度とすると、ハイビームモードにおける消費電力を、ロービームモードにおける消費電力と変わらないレベルまで減少させることができる。なお、IOUTHは、IOUT
Lの2/3倍より大きくてもよい。IOUTHが2/3×IOUTLより大きいほど、ハイビームモードにおける照度が高くなるが、消費電力の削減の効果が小さくなる。
【0063】
また消費電力すなわち発熱量の低減の結果、ヒートシンクを小型化し、あるいはより簡素な冷却機構に置き換えることが可能となる。
【0064】
図7は、
図6の光源モジュール100の動作波形図である。ハイビーム・ロービームが消灯の状態では、駆動電流I
OUTはゼロである。ロービームの点灯期間中、駆動電流I
OUTの時間平均量は、第1電流量I
OUTLに安定化される。ハイビームの点灯期間中、駆動電流I
OUTの時間平均量は、第2電流量I
OUTHに低下する。
【0065】
図8(a)、(b)は、駆動電流I
OUTの制御例を説明する図である。
図8(a)に示すように、ハイビームモードでは、アナログ調光(電流調光)を利用して、駆動電流I
OUTの電流量を低下させてもよい。
【0066】
図9は、アナログ調光による減光の利点を説明する図である。横軸は駆動電流I
OUTを、縦軸は発光素子1個当たりの発光光量を示す。P
Lはロービームモードの動作点を、P
Hはハイビームモードの動作点を示す。
図9に示すように、LEDの発光効率は、駆動電流I
OUTが少ないほど高い。したがって、駆動電流I
OUTを2/3倍(66.7%)に減らしても、LEDの光量は2/3までは低下せず、たとえば3/4倍(75%)に留まる。したがって、ハイビームモードにおける全光量は、ロービームモードの全光量の0.75×3/2=1.125倍となり、わずかに増加することとなる。
【0067】
図8(b)に示すように、ハイビームモードでは、PWM(パルス幅変調)調光(減光)を利用して、駆動電流I
OUTの電流量を低下させてもよい。白色光源が、青色LEDと黄色の蛍光体で構成される場合、駆動電流I
OUTによって発光色が変化する。したがってアナログ調光を採用すると、ロービームとハイビームとで色度が変化する場合がある。色度変化を抑制したい場合には、PWM調光を利用することで、ロービームとハイビームとで、色度を揃えることができる。
【0068】
図10は、光源モジュール100Cの回路図である。点灯回路130Cは、駆動回路132Cおよびバイパススイッチ134を含む。
【0069】
点灯回路130Cには、外部回路から点灯指示H/Lが入力される。点灯指示H/Lは、ロービームモードにおいて第1状態をとり、ハイビームモードにおいて第2状態をとる。たとえば外部回路がオープンコレクタ/オープンドレインの出力段を有する場合、点灯指示H/Lの第1状態はハイインピーダンス(オープン)であり、第2状態はローレベルでありうる。点灯指示H/Lが第1状態(ハイインピーダンス)であるとき、トランジスタQ12のベースは、抵抗R15によりプルアップされるため、トランジスタQ12はオフとなる。点灯指示H/Lが第2状態(ローレベル)であるとき、トランジスタQ12はオンとなる。点灯指示H/Lを生成する外部回路は、プッシュプルの出力段を有してもよく、その場合、点灯指示H/Lの第1状態はハイレベルであり、第2状態はローレベルでありうる。
【0070】
駆動回路132は定電流ドライバであり、正極出力OUTPと負極出力OUTNの間に駆動電圧を発生し、目標電流に安定化された駆動電流IOUTを出力する。この例では、アナログ調光によって駆動電流IOUTを変化させる。具体的には駆動回路132は調光端子DIMを有しており、駆動電流IOUTの目標量は、調光端子DIMに入力される調光電圧VADIMに応じて変化する。
IOUT=K×VADIM
【0071】
駆動回路132は、基準電圧VREFを発生する。抵抗R11,R12およびトランジスタQ11は、VREF端子と接地の間に直列に設けられる。
【0072】
また駆動回路132は、電源電圧VDDを生成する。バイパススイッチ134は、抵抗R13,R14およびトランジスタQ13,Q14を含む。抵抗R13,R14およびトランジスタQ13は、バイパストランジスタQ14のゲートドライバを形成する。
【0073】
図10の光源モジュール100Cの動作を説明する。
・ロービームモード
点灯指令H/Lが第1状態(ハイインピーダンスあるいはハイレベル)であるとき、トランジスタQ12はオフであり、トランジスタQ13のベースはローとなるから、トランジスタQ13はオフとなり、バイパストランジスタQ14はオンとなるから、第2光源120には駆動電流I
OUTは供給されない。
【0074】
また点灯指令H/Lが第1状態であるとき、トランジスタQ12はオフであり、トランジスタQ1のベースはローとなるから、トランジスタQ11はオフとなり、駆動回路132の調光端子DIMの電圧VADIMは基準電圧VREFとなる。このとき駆動電流IO
UTは、基準電圧VREFに比例した目標量IOUTLに安定化される。
IOUTL=K×VADIM=K×VREF
【0075】
・ハイビームモード
点灯指令H/Lが第2状態(ローレベル)であるとき、トランジスタQ12はオンとなり、トランジスタQ13のベースに電流が供給されるから、トランジスタQ13はオンとなり、バイパストランジスタQ14はオフとなるから、第2光源120に駆動電流IOU
Tが供給される。
【0076】
また点灯指令H/Lが第2状態(ローレベル)であるとき、トランジスタQ12はオンとなり、トランジスタQ11のベースに電流が供給されるから、トランジスタQ11はオンとなり、駆動回路132の調光端子DIMには、分圧された基準電圧VREFが、調光電圧VADIMとして入力される。
VADIM=R12/(R11+R12)×VREF
このとき駆動電流IOUTの目標量IOUTHは、以下の式で表される。
IOUTH=K×VADIM=K×R12/(R11+R12)×VREF
=R12/(R11+R12)×IOUTL
つまり、抵抗R11とR12の分圧比に応じて、減光率を設定できる。
【0077】
図11は、駆動回路132の構成例を示す回路図である。駆動回路132は、極性反転型のコンバータであり、正極出力OUTPから接地電圧0Vを、負極出力OUTNから負電圧-V
OUTを出力する。
【0078】
駆動回路132は、トランジスタM11,M12、インダクタL11、キャパシタC11およびコントローラ136を含む。コントローラ136は、駆動電流IOUTに応じた電流検出信号VCSが、調光端子DIMに入力されるアナログ調光電圧VADIMに応じた目標値に近づくように、トランジスタM11およびM12を駆動する。コントローラ136の制御方式・モードは特に限定されず、電流モードの制御方式であってもよいし、電流検出信号VCSを対象とするリップル制御方式であってもよい。リップル制御方式には、ヒステリシス制御(Bang-Bang制御)、ボトム検出方式、ピーク検出方式などが含まれる。
【0079】
なお、トランジスタM11,M12は、コントローラ136と同一のチップに集積化されてもよい。また、駆動回路132は、基準電圧源160および電源回路162を含む。基準電圧源160は、接地電圧を基準とした基準電圧VREFを生成する。電源回路162は、負極出力(-VOUT)を基準とする電源電圧VDDを生成する。基準電圧源160および電源回路162の少なくとも一方は、コントローラ136に内蔵されていてもよい。
【0080】
なお駆動回路132の構成は極性反転型に限定されず、昇圧コンバータや昇降圧コンバータで構成してもよい。なお、
図11の駆動回路は、実施形態1や実施形態3にも適用可能である。
【0081】
図12は、変形例に係る光源モジュール100Dの回路図である。点灯回路130Dは、
図10の点灯回路130Cに加えて、温度ディレーティング回路138を含む。温度ディレーティング回路138は、NTC(Negative Temperature Coefficient)サーミスタ139、抵抗R21,R22、トランジスタQ21,Q22を含む。
【0082】
抵抗R21およびサーミスタ139は、基準電圧VREFを分圧し、温度が上昇するほど低下する温度検出電圧VTEMPを生成する。トランジスタQ21、抵抗R22およびトランジスタQ22によって、調光端子DIMの電圧VADIMは、温度検出電圧VTE
MPを超えないようにクランプされる。温度が上昇するほど、温度検出電圧VTEMPは低下し、調光端子DIMの電圧VADIMが低下することにより、駆動電流IOUTが減少し、温度ディレーティングがかかる。
【0083】
図13は、
図6のヘッドランプ2Cのレイアウトの一例を示す斜視図である。ヘッドランプ2Cの基本構成は
図4のそれと同様であるため、相違点のみを説明する。上述したように、実施形態2に係るヘッドランプ2Cによれば、ハイビームモードにおける消費電力を削減できるため、第1光源110および第2光源120の冷却構造を簡素化できる。したがって、
図6のヒートシンク140が、
図13では薄い放熱板146に置換されている。これにより、光源モジュール100を小型化することができ、またコストを下げることができる。
【0084】
(実施形態3)
図14は、実施形態3に係る光源モジュール200を備えるヘッドランプ2Bを示す図である。実施形態1と同様にヘッドランプ2Bは、自動二輪車に搭載され、ハイビームとロービームが切り替え可能であり、光源モジュール200、第1光学系4および第2光学系6、図示しないヒートシンクを備える。
【0085】
光源モジュール200は、第1光源210、第2光源220、第3光源230および点灯回路240を備え、モジュール化されている。第1光源210および第3光源230は、それぞれの出射光が、第1光学系4によって、仮想鉛直スクリーン上のロービーム領域12に照射されるように配置される。第2光源220は、その出射光が、第2光学系6によってハイビーム領域14に照射されるように配置される。
【0086】
第1光源210、第2光源220、第3光源230はそれぞれ、少なくともひとつの半導体発光素子、たとえばLED(発光ダイオード)やLD(レーザダイオード)、有機EL素子を含む。実施形態1と同様の理由により、LEDの直列接続数は3であり、これにより駆動回路242を降圧コンバータあるいはリニアレギュレータで構成できる。
【0087】
光源モジュール200には、車両側からハイビーム、ロービームの点灯指示が入力される。点灯回路240は、ハイビーム、ロービームの点灯指示にかかわらず、第1光源210に駆動電流IOUTを供給する。また点灯回路240は、ハイビームの点灯指示に応答して、第2光源220に駆動電流IOUTを供給するように構成される。また点灯回路240は、ロービームの点灯指示に応答して、第3光源230に駆動電流IOUTを供給するように構成される。
【0088】
この実施形態において、点灯回路240は、定電流ドライバである駆動回路242と、第1スイッチ244、第2スイッチ246を含む。駆動回路242は、ハイビームまたはロービームの点灯状態においてイネーブルとなり、駆動電流IOUTを生成する。
【0089】
第1スイッチ244は、第3光源230と直列に設けられ、第2スイッチ246は第2光源220と直列に設けられている。第1スイッチ244は、ロービームの点灯指示に応答してオンとなる。第2スイッチ246は、ハイビームの点灯指示に応答してオンとなる。
【0090】
以上が光源モジュール200の構成である。続いてその動作を説明する。
【0091】
ハイビーム、ロービームいずれの点灯指示も発生していない状態では、駆動回路242がディセーブル状態であり、駆動電流IOUTは生成されない。
【0092】
ハイビームもしくはロービームいずれかの点灯指示が発生すると、駆動回路242がイネーブルとなり、所定の電流量に安定化された駆動電流IOUTが生成される。
【0093】
ロービームの点灯指示が発生する間は、第1スイッチ244がオン、第2スイッチ246がオフであり、駆動電流IOUTは、第1光源210、第3光源230、第1スイッチ244の経路に流れる。したがって第1光源210、第3光源230が点灯、第2光源220は消灯し、ロービーム領域12が照射される。
【0094】
ハイビームの点灯指示が発生する間は、第1スイッチ244がオフ、第2スイッチ246がオンであり、駆動電流IOUTは、第1光源210、第2光源220、第2スイッチ246の経路に流れる。したがって第1光源210、第2光源220が点灯、第3光源230は消灯する。このときハイビーム領域14に照射されるとともに、ロービーム領域12を、ロービームのときよりも低い照度で照射することができる。
【0095】
図15は、ヘッドランプ2Bのレイアウトの一例を示す斜視図である。第1光源210および第3光源230は、地面と平行な第1面S1に実装される。第2光源220は地面と垂直な第2面S2に実装される。第1面S1および第2面S2は、ブロック状のヒートシンク8の表面に対応する。
【0096】
好ましくは第1光源210および第3光源230を構成する3個の発光素子は、水平方向に並べて配置される。これにより、ハイビームとロービームの境界である水平方向のカットラインを作りやすくなる。たとえば第1光源210の発光素子を中央に配置し、第3光源230の二個の発光素子を、それを挟むように配置してもよい。
【0097】
第1光学系4は、反射光学系すなわちミラーを含む。第2光学系6は、透過光学系すなわちレンズを含む。
【0098】
図16は、ヘッドランプ2Bおよび光源モジュール200のレイアウトの別の一例を示す斜視図である。第1光源210および第3光源230は、地面と平行な第1面S1に実装される。第2光源220は、第1面S1の反対側の第3面S3に実装される。第1光学系4は、第1面S1側に設けられた第1リフレクタを含み、第2光学系6は、第3面側に設けられた第2リフレクタを含む。
【0099】
図16においても、第1光源210および第3光源230を構成する3個の発光素子は、水平方向に並べて配置される。同様に、第2光源22を構成する2個の発光素子は、水平方向に並べて配置される。これにより、ハイビームとロービームの境界である水平方向のカットラインを作りやすくなる。
【0100】
なお、ここまでの説明では、自動二輪車用の灯具を説明したが本発明の適用はそれに限定されず、四輪の自動車やトラックなどの車両にも適用可能である。
【0101】
図17は、実施形態4に係る自動二輪車用のヘッドランプ2を示す図である。ヘッドランプ2は、ハイビームとロービームが切り替え可能であり、光源モジュール300、第1光学系4、第2光学系6を備える。
【0102】
光源モジュール300は、LEDストリング302および点灯回路400を備え、モジュール化されている。LEDストリング302は、ロービーム用光源である第1光源310および第2光源320と、ハイビーム用光源である第3光源330を備える。第1光源310および第2光源320の出射光は、第1光学系4によって、仮想鉛直スクリーン20上のロービーム領域22に照射される。第3光源330の出射光は、第2光学系6によってハイビーム領域24に照射される。
【0103】
第1光源310、第2光源320、第3光源330はそれぞれ、少なくともひとつの半導体発光素子、たとえばLED(発光ダイオード)を含む。なお半導体発光素子として、LD(レーザダイオード)や有機EL素子を採用してもよい。
【0104】
この実施例において、第1光源310は1個のLEDを、第2光源320および第3光源330はそれぞれ、二個のLEDを含む。したがって、駆動回路410の駆動経路上には、合計三個のLEDが直列に設けられている。一般的に自動二輪車のバッテリ10の電圧VBAT、すなわち駆動回路410の電源電圧は12Vである。一方、白色LEDの順方向電圧は3.5V程度であるから、駆動回路410の負荷の両端間電圧は、3.5V×3=10.5V程度となり、バッテリ電圧VBATより低くなる。そのため駆動回路410は、降圧型のスイッチングコンバータあるいは、リニアレギュレータで構成することができる。
【0105】
光源モジュール300には、バッテリ電圧VBATに加えて、車両側からハイビーム、ロービームの点灯指示が入力される。点灯回路400は、ハイビーム、ロービームの点灯指示に応じて、駆動電流IOUTの経路を制御し、第1光源310、第2光源320、第3光源330の点灯、消灯を制御する。
【0106】
点灯回路400は、駆動回路410、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2、第3スイッチSW3、コントローラ420を備える。
【0107】
第1スイッチSW1は第1光源310と並列に設けられる。第2光源320および第2スイッチSW2は、直列に接続される。第3光源330および第3スイッチSW3は、第2光源320および第2スイッチSW2と並列な経路上に、直列に設けられる。
【0108】
駆動回路410は、定電流出力のドライバであり、ハイビーム、ロービームいずれかの点灯指示に応答してイネーブル状態となり、所定の電流量に安定化された駆動電流IOU
Tを生成する。
【0109】
コントローラ420は、ハイビーム、ロービームの点灯指示および電流遮断の有無に応じて、第1スイッチSW1~第3スイッチSW3のオン、オフを制御する。
【0110】
コントローラ420は、第1光源310、第2光源320、第3光源330を含むLEDストリングの断線に起因する電流遮断を検出可能に構成される。たとえばコントローラ420は、駆動回路410の出力電流IOUTを監視し、駆動回路410がイネーブル状態であるにもかかわらず、所定量の駆動電流IOUTが流れていない場合に、電流遮断状態と判定する。電流遮断が検出されない状態を正常状態という。
【0111】
たとえばコントローラ420は、駆動回路410がイネーブル状態であるにもかかわらず、所定量の駆動電流IOUTが流れていない状態が、所定の第2時間T2持続すると、電流遮断状態と判定する。第2時間T2は、たとえば2ms~500msの間で定めるとよい。第2時間T2を2msより長くすることでノイズによる電流遮断状態の誤検知を防止できるとともに、第2時間T2を500msより短く定めることにより、短時間で電流遮断状態を検出することができる。さらに以下の処理によって、ヘッドランプを点灯復帰させる場合に、ヘッドランプの消失時間を500ms以下に抑えることができるため、安全性を確保できる。
【0112】
コントローラ420は、正常状態において、第1スイッチSW1を固定的にオフする。またコントローラ420は正常状態において、(i)ロービームの点灯指示に応答して第2スイッチSW2をオン、第3スイッチSW3をオフする。これにより、駆動回路410が生成する駆動電流IOUTは、第1光源310および第2光源320、第2スイッチSW2を含む経路に流れる。このとき、第1光源310および第2光源320が点灯し、ロービーム領域22が照射される。
【0113】
コントローラ420は正常状態において、(ii)ハイビームの点灯指示に応答して、第2スイッチSW2をオフ、第3スイッチSW3をオンとする。これにより、駆動回路410が生成する駆動電流IOUTは、第1光源310および第3光源330、第3スイッチSW3を含む経路に流れる。このとき、第1光源310および第3光源330が点灯し、ハイビーム領域24が照射されるとともに、ロービーム領域22がロービーム時より低い照度で照射される。
【0114】
続いて、断線故障時の制御を説明する。
【0115】
コントローラ420は、電流遮断状態を検出すると、第1スイッチSW1をオン状態とする。もしLEDストリング302のうち、第1光源310の箇所に断線が生じていた場合、第1スイッチSW1がオンすることで、駆動電流IOUTが再び流れ始め、電流遮断状態が解消する。したがって駆動電流IOUTを第1スイッチSW1に迂回し、第2光源320または第3光源330に駆動電流IOUTを供給し続けることができ、車両前方を照射し続けることができる。
【0116】
もしLEDストリング302のうち、第1光源310以外の箇所に断線が生じていたとする。この場合、第1スイッチSW1をオンしても、駆動電流IOUTは流れず、電流遮断状態が継続する。したがってコントローラ420は、第1スイッチSW1をオン状態とした後、電流遮断状態が所定の第1時間T1にわたり持続するとき、第1光源310以外の箇所の断線と判定し、第1スイッチSW1をオフする。
【0117】
図18は、光源モジュール300の動作を説明するフローチャートである。ロービームあるいはハイビームの点灯指示が発生すると(S100)、第1スイッチSW1~第3スイッチSW3が、点灯指示に応じた状態にセットされる(S102)。具体的には第1スイッチSW1はオフであり、ロービームの点灯指示の場合、第2スイッチSW2がオン、第3スイッチSW3がオフされ、ハイビームの点灯指示の場合、第2スイッチSW2がオフ、第3スイッチSW3がオンされる。この状態で駆動回路410がイネーブルとなり、駆動電流I
OUTが生成される(S104)。
【0118】
コントローラ420は、電流遮断の有無を監視する(S106)。正常状態の間(S106のN)、ロービームの点灯状態が維持される。電流遮断が検出されると(S106のY)、第1スイッチSW1がオンとなる(S108)。そして、電流遮断の有無が再判定される(S110)。電流遮断が解消していれば(S110のN)、第1スイッチSW1のオンが維持される。電流遮断が解消していなければ(S110のY)、第1スイッチSW1がオフされる。
【0119】
図19は、光源モジュール300の第1の動作波形図である。
図19は、ロービームの点灯中に、第1光源310に断線故障が発生したときの様子を示す。時刻t
2より前は正常状態である。時刻t
0にロービームの点灯指示が発生する。時刻t
1に第2スイッチSW2がオンとなり、駆動回路410により駆動電流I
OUTが生成される。
【0120】
時刻t2に、第1光源310に断線故障が発生すると、駆動電流IOUTが遮断される。この状態が第2時間T2持続すると、時刻t3に電流遮断状態と判定され、第1スイッチSW1がオンとなる。第1スイッチSW1がオンとなると、断線箇所がバイパスされるため、駆動電流IOUTが再び流れ始め、ロービームの点灯が維持される。ただし、ロービームの照度は、正常状態よりも低下する。
【0121】
図20は、光源モジュール300の第2の動作波形図である。
図20は、ロービームの点灯中に、第2光源320に断線故障が発生したときの様子を示す。時刻t
0~t
2の動作は、
図19と同様である。
【0122】
時刻t2に、第2光源320に断線故障が発生すると、駆動電流IOUTが遮断される。この状態が第2時間T2持続すると、時刻t3に電流遮断状態と判定され、第1スイッチSW1がオンとなる。第1スイッチSW1がオンとなっても断線箇所はバイパスされないため、電流遮断状態が持続する。そして第1スイッチSW1がターンオンしてから第1時間T1経過後の時刻t4に第1スイッチSW1がオフされる。
【0123】
駆動電流IOUTの遮断状態が持続すると、視界が暗くなるため運転者がヘッドランプ2の異常に気がつく。運転者が、時刻t5にロービームからハイビームに切り替えると、第2スイッチSW2がオフ、第3スイッチSW3がオンとなる。そうすると、断線箇所が利用されなくなるため、駆動電流IOUTが再び流れ始め、ヘッドランプ2はハイビームとして使用を継続できる。
【0124】
図21は、光源モジュール300の第3の動作波形図である。
図21は、ハイビームの点灯中に、第1光源310に断線故障が発生したときの様子を示す。時刻t
2より前は正常状態である。時刻t
0にハイビームの点灯指示が発生する。時刻t
1に第3スイッチSW3がオンとなり、駆動回路410により駆動電流I
OUTが生成される。
【0125】
時刻t2に、第1光源310に断線故障が発生すると、駆動電流IOUTが遮断される。この状態が第2時間T2持続すると、時刻t3に電流遮断状態と判定され、第1スイッチSW1がオンとなる。第1スイッチSW1がオンとなると、断線箇所がバイパスされるため、駆動電流IOUTが再び流れ始め、ハイビームの点灯が維持される。ただし、第1光源310は消灯するため、ロービーム領域には光は照射されなくなる。
【0126】
図22は、光源モジュール300の第4の動作波形図である。
図22は、ハイビームの点灯中に、第3光源330に断線故障が発生したときの様子を示す。時刻t
0~t
2の動作は、
図21と同様である。
【0127】
時刻t2に、第3光源330に断線故障が発生すると、駆動電流IOUTが遮断される。この状態が第2時間T2持続すると、時刻t3に電流遮断状態と判定され、第1スイッチSW1がオンとなる。第1スイッチSW1がオンとなっても断線箇所はバイパスされないため、電流遮断状態が持続する。そして第1スイッチSW1がターンオンしてから第1時間T1経過後の時刻t4に第1スイッチSW1がオフされる。
【0128】
駆動電流IOUTの遮断状態が持続すると、視界が暗くなるため運転者がヘッドランプ2の異常に気がつく。運転者が、時刻t5にハイビームからロービームに切り替えると、第3スイッチSW3がオフ、第2スイッチSW2がオンとなる。そうすると、断線箇所が利用されなくなるため、駆動電流IOUTが再び流れ始め、ヘッドランプ2はロービームとして使用を継続できる。
【0129】
続いて実施形態4に関連する変形例を説明する。
【0130】
(変形例1)
図20、
図22の制御では、ヘッドランプ2の不点灯状態に気がついた運転者が、手動で、ロービームからハイビーム(あるいはハイビームからロービーム)への切り替えを行い、ヘッドランプ2を点灯状態に復帰させたが、その限りでない。第1スイッチSW1を一旦、オンとし、その後オフに切り替えた後に、第2スイッチSW2と第3スイッチSW3の状態を、コントローラ420が、外部からの点灯指示とは無関係に、自動的に切り替えてもよい。これにより、
図20あるいは
図22における時刻t4~t5の不点灯期間を短縮することができる。
【0131】
この制御を行うと、不点灯期間を短縮できるため安全性が改善するが、運転者がLEDストリング302の断線に気がつかない可能性もあり、ランプを修理しないまま運転し続けるおそれがある。この場合、ヘッドランプ2の故障を示すインジケータを、コクピットに追加してもよい。
【0132】
(変形例2)
コントローラ420は、第1スイッチSW1をオン状態に固定する間、ハイビーム、ロービームの点灯指示にかかわらず、第2スイッチSW2をオン、第3スイッチSW3をオフすることとしてもよい。
【0133】
この変形例2によれば、ハイビームとロービームの手動による切り替えが無効になるため、運転者に断線故障を通知することができる。また、ロービームに固定されるため、周囲の交通参加者にグレアを与えるのを防止できる。
【0134】
(変形例3)
変形例2とは反対に、コントローラ430は、第1スイッチSW1をオン状態に固定する間、ハイビーム、ロービームの点灯指示にかかわらず、第3スイッチSW3をオン、第2スイッチSW2をオフすることとしてもよい。
【0135】
この変形例3によれば、ハイビームとロービームの手動による切り替えが無効になるため、運転者に断線故障を通知することができる。また一般的にはロービームで走行する機会の方が多いため、ハイビームのみが有効となり、ロービームが無効となることで、運転者は断線故障に気づきやすくなる。
【0136】
(変形例4)
ここまでの説明では、自動二輪車用の灯具を説明したが本発明の適用はそれに限定されず、四輪の自動車やトラックなどの車両にも適用可能である。
【0137】
実施形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明は、自動二輪車などの車両に用いられる灯具に関する。
【符号の説明】
【0139】
2…ヘッドランプ,4…第1光学系,6…第2光学系,8…ヒートシンク,10…バッテリ,100…光源モジュール,110…第1光源,120…第2光源,130…点灯回路,132…駆動回路,134…バイパススイッチ,200…光源モジュール,210…第1光源,220…第2光源,230…第3光源,240…点灯回路,242…駆動回路,244…第1スイッチ,246…第2スイッチ,300…光源モジュール,302…LEDストリング,310…第1光源,320…第2光源,330…第3光源,SW1…第1スイッチ,SW2…第2スイッチ,SW3…第3スイッチ,400…点灯回路,410…駆動回路,420…コントローラ。