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特許7491934オリゴヌクレオチドセットのワンポット合成
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】オリゴヌクレオチドセットのワンポット合成
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/686 20180101AFI20240521BHJP
   C12Q 1/6844 20180101ALI20240521BHJP
   C07H 3/06 20060101ALI20240521BHJP
   C12N 15/10 20060101ALN20240521BHJP
   C12N 15/54 20060101ALN20240521BHJP
【FI】
C12Q1/686 Z
C12Q1/6844 Z
C07H3/06
C12N15/10 Z ZNA
C12N15/54
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021538753
(86)(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2019087048
(87)【国際公開番号】W WO2020141143
(87)【国際公開日】2020-07-09
【審査請求日】2022-11-18
(31)【優先権主張番号】19305007.7
(32)【優先日】2019-01-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516304610
【氏名又は名称】ディーエヌエー スクリプト
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ゴドロン, シャビエル
(72)【発明者】
【氏名】ホルガン, アドリアン
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-509177(JP,A)
【文献】国際公開第2017/009663(WO,A1)
【文献】特開2002-330796(JP,A)
【文献】国際公開第2017/156218(WO,A1)
【文献】Biochimica et Biophysica Acta,Vol.1804,2009年,p.1151-1166
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/686
C12Q 1/6844
C07H 3/06
C12N 15/10
C12N 15/54
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一の反応容器内で複数のオリゴヌクレオチドを合成し、オリゴヌクレオチドベースのアッセイを実施する方法であって、
a)反応容器内で、
(i)伸長条件下で、遊離3’-ヒドロキシルを有するイニシエーターまたは遊離3’-O-ヒドロキシルを有する伸長断片を、3’-Oブロックヌクレオシド三リン酸およびテンプレート非依存性DNAポリメラーゼと接触させて、前記イニシエーターまたは伸長断片が3’-Oブロックヌクレオシド三リン酸の取り込みによって伸長されて、3’-Oブロックされた伸長断片を形成すること、および
(ii)前記伸長断片を脱ブロックして、遊離3’-ヒドロキシルを有する伸長断片を形成するこ
のサイクルを、切断可能なヌクレオチドによって複数のオリゴヌクレオチドが相互に分離されかつ前記イニシエーターからも分離された前記複数のオリゴヌクレオチドをそれぞれ含む伸長断片が形成されるまで繰り返す工程;
b)前記切断可能なヌクレオチドを切断して、前記複数のオリゴヌクレオチドのうちの少なくとも1つを遊離させる工程;
c)前記オリゴヌクレオチドベースのアッセイのための試薬を添加する工程;および
d)前記オリゴヌクレオチドベースのアッセイを実施する工程
を含み、
前記オリゴヌクレオチドベースのアッセイがポリメラーゼ連鎖反応(PCR)であり、
前記複数のオリゴヌクレオチドのうちの少なくとも1つは、標的ポリヌクレオチドを増幅してアンプリコンを産生するための、プライマー結合部位にアニールする順方向プライマーと、プライマー結合部位にアニールする逆方向プライマーとを含み;
順方向プライマーおよび逆方向プライマーは、その5'末端に隣接して切断可能なヌクレオチドを有する、方法。
【請求項2】
記添加する工程が、ポリメラーゼ、ポリメラーゼ反応緩衝液、ヌクレオシド三リン酸を添加することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記切断する工程が酵素活性の適用を含み、切断後に前記酵素活性を不活化する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記オリゴヌクレオチドベースのアッセイが核酸配列ベースの増幅(NASBA)であり、前記添加する工程が、RNAポリメラーゼ、RNAseH、逆転写酵素、NASBA反応緩衝液、ヌクレオシド三リン酸、および1またはそれを超える一本鎖標的核酸であって、前記一本鎖標的核酸のうちの1つが前記オリゴヌクレオチドのうちの少なくとも1つに対する相補セグメントを有し、その結果、前記相補セグメント間の配列がNASBA反応で増幅される、1またはそれを超える一本鎖標的核酸を添加することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記イニシエーターおよび前記伸長断片が支持体に結合しており、前記切断する工程によって前記支持体に結合していた前記複数のオリゴヌクレオチドのうちの1つが遊離する、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記テンプレート非依存性DNAポリメラーゼが末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼである、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
単一の反応容器内で複数のオリゴヌクレオチドを合成する方法であって、
a)1またはそれを超える支持体に2またはそれを超えるイニシエーター集団を提供する工程であって、各集団の前記イニシエーターが、他のあらゆるイニシエーター集団の3’-O-ブロック基の脱ブロック条件とは別の脱ブロック条件により除去可能な集団特異的3’-O-ブロック基を有する切断可能な連結または切断可能なヌクレオチドによって終結している、提供する工程;
b)イニシエーターまたは伸長断片の集団の集団特異的ブロック基を脱ブロックして、遊離3’-ヒドロキシルを有するイニシエーターまたは伸長断片を形成する、脱ブロックする工程;
c)伸長条件下で、前記遊離3’-ヒドロキシルを有するイニシエーターまたはその伸長断片の集団を3’-Oブロックヌクレオシド三リン酸およびテンプレート非依存性DNAポリメラーゼと接触させ、前記イニシエーターまたは伸長断片が3’-Oブロックヌクレオシド三リン酸の取り込みによって伸長されて、3’-Oブロックされた伸長断片を形成する、接触させる工程;
d)前記複数のオリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列を有する伸長断片が形成されるまで、各イニシエーター集団について工程b)およびc)を繰り返す工程
を含む、方法。
【請求項8】
e)前記伸長断片を脱ブロックする工程、およびf)前記切断可能な連結または切断可能なヌクレオチドを切断して前記伸長断片を遊離させる、切断する工程をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
g)前記オリゴヌクレオチドベースのアッセイのための試薬を添加する工程、およびh)前記オリゴヌクレオチドベースのアッセイを実施する工程をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記工程b)からd)を前記イニシエーター集団の各々について連続的に実行し、その結果、前記複数のオリゴヌクレオチドの各々が連続的に合成される、請求項7~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記工程b)からd)を前記イニシエーター集団の各々について択一的に実行し、その結果、前記複数のオリゴヌクレオチドの各々が並行して合成される、請求項7~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記支持体が固体支持体である、請求項7~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記テンプレート非依存性DNAポリメラーゼが末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)である、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記TdTが、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15のうちの1つと少なくとも90パーセント同一のアミノ酸配列を有し、配列番号2、3、4、6、7、12、および14に関する63位のメチオニン;または配列番号9に関する73位のメチオニン;または配列番号10に関する64位のメチオニン;または配列番号11に関する61位のメチオニン;または配列番号15に関する66位のメチオニンが置換されており;配列番号2、3、4、6、7、9、12、および13に関する207位の第1のアルギニン;または配列番号5に関する206位の第1のアルギニン;または配列番号8または10に関する208位の第1のアルギニン;または配列番号11に関する205位の第1のアルギニン;または配列番号14に関する216位の第1のアルギニン;または配列番号15に関する210位の第1のアルギニンが置換されているTdTバリアントである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記TdTバリアントが、1またはそれを超える以下の置換:配列番号2、3、4、6、7、9、12、および13に関する173位のシステイン;または配列番号5に関する172位のシステイン;または配列番号8および10に関する174位のシステイン;または配列番号11に関する171位のシステイン;または配列番号15に関する176位のシステイン;または配列番号14に関する182位のシステイン;または配列番号2、9、および13に関する325位の第2のアルギニン;または配列番号3および4に関する324位の第2のアルギニン;または配列番号5に関する320位の第2のアルギニン;または配列番号6および8に関する331位の第2のアルギニン;または配列番号11に関する323位の第2のアルギニン;または配列番号12および15に関する328位の第2のアルギニン;または配列番号14に関する338位の第2のアルギニン:または配列番号2、7、9、および13に関する328位のグルタミン酸;または配列番号3および4に関する327位のグルタミン酸;または配列番号6および8に関する334位のグルタミン酸;または配列番号10に関する329位のグルタミン酸;または配列番号11に関する326位のグルタミン酸;または配列番号12および15に関する331位のグルタミン酸をさらに有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記メチオニンの置換がRまたはQであり;前記システインの置換がGまたはRであり;前記第1のアルギニンの置換がLまたはNであり;前記第2のアルギニンの置換がP、N、A、またはVであり;前記グルタミン酸の置換がN、L、T、S、またはKである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
単一の反応容器内で複数のオリゴヌクレオチドを合成する方法であって、
(a)1またはそれを超える支持体に結合した複数の異なるイニシエーターを提供する工程であって、前記複数の異なるイニシエーターのうちの少なくとも1つのイニシエーターが遊離3’-ヒドロキシルを有し、前記複数の異なるイニシエーターのうちの少なくとも1つのイニシエーターが3’-O-ブロックされた末端ヌクレオチドを有する、提供する工程;
(b)3’-Oブロックヌクレオシド三リン酸の各々の異なるイニシエーターまたはその伸長産物へのテンプレートなしの酵素的ヌクレオチド付加のサイクルの繰り返しによって前記複数のオリゴヌクレオチドを合成する工程であって、前記3’-Oブロックヌクレオシド三リン酸が、前記複数のイニシエーターのうちの他のイニシエーターのブロック基を除去するための脱ブロック条件と別の脱ブロック条件下で除去可能なブロック基を有する、合成する工程;および
(c)前記伸長産物および前記1またはそれを超える固体支持体からオリゴヌクレオチドを放出させる工程
を含む、方法。
【請求項18】
前記複数のオリゴヌクレオチドが、前記複数の異なるイニシエーターと同数であるか、それを超える、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
(d)オリゴヌクレオチドベースのアッセイのための試薬を添加する工程、および(e)前記オリゴヌクレオチドベースのアッセイを実施する工程をさらに含む、請求項17または18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
オリゴヌクレオチド合成は、医科学および生物科学の基礎テクノロジーである。ある範囲の濃度および純度のレベルにわたって安価なオリゴヌクレオチドを即時利用できることは、大規模DNA配列決定、DNAの増幅および検出テクノロジー、および診断などが含まれる多数のテクノロジーに重要である。
【背景技術】
【0002】
現在、オリゴヌクレオチドは、かかる用途のためにホスホルアミダイト法などの化学的方法を使用して生成されており、前述の方法は、過酷な条件を必要とし、DNA増幅などの酵素過程で用いるオリゴヌクレオチドのin situ産生は不可能である。さらに、かかる方法で使用される試薬は、環境を危険に晒し、取り扱いおよび廃棄に問題がある。
【0003】
塩基の脱保護および精製などの面倒な工程、またはメールオーダー品が到着するまでの待ち時間を必要とせずに増幅または他のオリゴヌクレオチドに依存するアッセイで直接使用することができる反応環境と同一の反応環境で複数のオリゴヌクレオチドを即時製造可能なDNA合成アプローチが利用できれば、特に種々のDNA増幅技術に非常に望ましいであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の要旨
本発明は、単一の反応容器内で複数のオリゴヌクレオチドを合成するための方法およびデバイス(マイクロ流体デバイスが含まれる)に関する。
【0005】
いくつかの実施形態では、本発明は、同一の反応容器内で複数のオリゴヌクレオチドを合成し、1またはそれを超えるオリゴヌクレオチドベースのアッセイを実施する方法に関し、かかる方法は、以下の工程を含む:(a)反応容器内で、(i)伸長条件下で、遊離3’-ヒドロキシルを有するイニシエーターまたは遊離3’-O-ヒドロキシルを有する伸長断片を、3’-Oブロックヌクレオシド三リン酸およびテンプレート非依存性DNAポリメラーゼと接触させ、その結果、前述のイニシエーターまたは伸長断片が3’-Oブロックヌクレオシド三リン酸の取り込みによって伸長されて、3’-Oブロック伸長断片を形成する、接触させること、および(ii)前述の伸長断片を脱ブロックして、遊離3’-ヒドロキシルを有する伸長断片を形成する、脱ブロックすることのサイクルを、切断可能なヌクレオチドによって複数のオリゴヌクレオチドが相互に分離され、かつ前述のイニシエーターからも分離された前述の複数のオリゴヌクレオチドをそれぞれ含む伸長断片が形成されるまで繰り返す工程;(b)前述の切断可能なヌクレオチドを切断して、前述の複数のオリゴヌクレオチドのうちの少なくとも1つを遊離させる、切断する工程;(c)前述のオリゴヌクレオチドベースのアッセイのための試薬を添加する工程;および(d)前述のオリゴヌクレオチドベースのアッセイ(ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)など)を実施する工程。
【0006】
いくつかの実施形態では、本発明は、同一の反応容器内で複数のオリゴヌクレオチドを合成する方法であって、(a)1またはそれを超える支持体に2またはそれを超えるイニシエーター集団を提供する工程であって、各集団の前述のイニシエーターが、他のあらゆるイニシエーター集団の3’-O-ブロック基の脱ブロック条件とは別の(orthogonal)脱ブロック条件により除去可能な集団特異的3’-O-ブロック基を有する切断可能な連結または切断可能なヌクレオチドによって終結している、提供する工程;(b)イニシエーターまたは伸長断片の集団の集団特異的ブロック基を脱ブロックして、遊離3’-ヒドロキシルを有するイニシエーターまたは伸長断片を形成する、脱ブロックする工程;(c)伸長条件下で、前述の遊離3’-ヒドロキシルを有するイニシエーターまたはその伸長断片の集団を3’-Oブロックヌクレオシド三リン酸およびテンプレート非依存性DNAポリメラーゼと接触させ、その結果、前述のイニシエーターまたは伸長断片が3’-Oブロックヌクレオシド三リン酸の取り込みによって伸長されて、3’-Oブロックした伸長断片を形成する、接触させる工程;および(d)前述の複数のオリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列を有する伸長断片が形成されるまで、各イニシエーター集団について工程(b)および(c)を繰り返す工程を含む、方法に関する。いくつかの実施形態では、上記方法は、(e)前述の伸長断片を脱ブロックする工程;および(f)前述の切断可能なヌクレオチドまたは切断可能な連結を切断して前述の伸長断片および/または前述のオリゴヌクレオチド集団を遊離させる、切断する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、上記方法は、(g)前述のオリゴヌクレオチドベースのアッセイのための試薬を添加する工程;および(h)前述のオリゴヌクレオチドベースのアッセイを実施する工程をさらに含む。
【0007】
上記実施形態のいくつかの変形形態では、工程(b)から(d)をイニシエーターの異なる集団の各々について連続的に実行することができ、その結果、複数のオリゴヌクレオチドの各々が連続的に合成される。上記実施形態の他の変形形態では、工程(b)から(d)をイニシエーターの異なる集団の各々について択一的に実行することができ、その結果、前述の複数のオリゴヌクレオチドの各々が並行して合成される。
【0008】
本発明のこれらの上記で特徴づけられた態様および他の態様は、示した実施および適用のいくつかを例示しており、これらのうちのいくつかは、図面に示され、以下の特許請求の範囲の節で特徴づけられている。しかしながら、上記の概要は、本発明の示した実施形態またはあらゆる実施の各々を説明していることを意図しない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A図1Aは、フィルターチャンバーを用いた単一の合成反応における複数のオリゴヌクレオチドの酵素合成の1つの実施形態を示す。
【0010】
図1B図1Bは、図1Aの実施形態の1つの具体例を示す。
【0011】
図2A図2Aは、ビーズを使用した単一の合成反応における複数のオリゴヌクレオチドの酵素合成の別の具体例を示す。
【0012】
図2B図2Bは、図2Aの実施形態の1つの具体例を示す。
【0013】
図3図3は、複数のオリゴヌクレオチドが同一の支持体上で連続的にまたは択一的に合成される本発明の1つの実施形態を示す。
【0014】
図4A図4A~4Eは、Taqmanプローブを用いた定量的PCRの実施形態の工程を示す。
図4B図4A~4Eは、Taqmanプローブを用いた定量的PCRの実施形態の工程を示す。
図4C図4A~4Eは、Taqmanプローブを用いた定量的PCRの実施形態の工程を示す。
図4D図4A~4Eは、Taqmanプローブを用いた定量的PCRの実施形態の工程を示す。
図4E図4A~4Eは、Taqmanプローブを用いた定量的PCRの実施形態の工程を示す。
【0015】
図5図5は、所定の配列のポリヌクレオチドのテンプレートなしの酵素合成の基本工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一般的原理は、特に例(図面に示し、詳述した例など)によって本明細書中でより詳細に開示している。しかしながら、本発明が記載の特定の実施形態に制限されないことを意図していると理解すべきである。本発明は、種々の修正形態および変更形態が可能であり、いくつかの実施形態についてその詳細を示している。本発明は、本発明の原理および範囲に含まれる全ての修正形態、均等物、および変更形態を対象とするものとする。
【0017】
本発明の実施にあたり、別段の指示が無い限り、当業者の範囲内の有機化学、分子生物学(組換え技術が含まれる)、細胞生物学、および生化学の従来技術および説明を使用し得る。かかる従来の技術には、合成ペプチド、合成ポリヌクレオチド、モノクローナル抗体、核酸のクローニング、増幅、配列決定および解析、ならびに関連技術の準備および使用が含まれ得るが、これらに限定されない。かかる従来技術のためのプロトコールを、製造者による製品についての印刷物および標準的な実験マニュアル(Genome Analysis:A Laboratory Manual Series(Vols.I-IV);PCR Primer:A Laboratory Manual;およびMolecular Cloning:A Laboratory Manual(全てCold Spring Harbor Laboratory Press);Lutz and Bornscheuer,Editors,Protein Engineering Handbook(Wiley-VCH,2009);Hermanson,Bioconjugate Techniques,Second Edition(Academic Press,2008);ならびに類似の参考文献など)に見出すことができる。
【0018】
本発明は、単一の反応容器内での複数のオリゴヌクレオチドの合成およびその使用に関する。いくつかの実施形態では、合成されたオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドベースの反応(増幅反応(ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、核酸配列ベースの増幅(NASBA)、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)、非対称PCR、ネスティッドPCR、定量的PCR、および類似の技術など)が含まれるが、これらに限定されない)において直接使用される。本発明は、その一部が、必要とするオリゴヌクレオチドを酵素的に合成し、同一の反応容器内でオリゴヌクレオチドベースのアッセイを実施することによって時間効率および材料効率が大きく改善され得ると認識される。かかる時間効率および材料効率は、化学合成されたオリゴヌクレオチドでは得ることができない。
【0019】
本発明の例示的な実施形態を、図1Aおよび1Bに示す。以下でより詳しく考察するように、テンプレートなしのポリメラーゼ(末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)など)を用いたオリゴヌクレオチドの酵素合成には、イニシエーターと呼ばれる開始オリゴヌクレオチドが必要である。したがって、この例では、イニシエーター(102)は、例えば、Hermanson(上記で引用)に開示の従来の技術を使用してその5’末端が固体支持体(110)に結合しているか、ハイブリッド形成によってその3’末端が相補オリゴヌクレオチドに結合している。所望の配列内へのヌクレオチドの反復付加を、複数の所望のオリゴヌクレオチドを含む合成産物(100)が得られるまで、下記のように進める。この実施形態では、各々の所望のオリゴヌクレオチド(104aおよび104b)は、その5’末端に隣接した切断可能なヌクレオチド「Z」(103)を有する。切断可能なヌクレオチドの例は、デオキシウリジンであり、これは、ヌクレオチドからウラシルを切り出すためのウラシルDNA-グルコシラーゼ(UDG)での処理、その後の糖を切り出してイニシエーターの下流または近接する鎖上の3’-ヒドロキシルを遊離させ、それにより、下流鎖上に伸長可能な末端を遊離させるためのAPエンドヌクレアーゼ(エンドヌクレアーゼVIIIなど)での処理によって切断され得る。かかる切断により、PCRなどのオリゴヌクレオチドベースのアッセイ(112)で用いるオリゴヌクレオチド(104aおよび104b)が放出される(108)。いくつかの実施形態では、放出後、放出されたオリゴヌクレオチドを含む混合物を加熱して切断試薬を不活化することができ、その後に増幅のために標的核酸および増幅試薬を添加することができる。この例では、オリゴヌクレオチド(104b)はプライマー結合部位(114)にアニールする順方向プライマーであり、オリゴヌクレオチド(104a)は標的ポリヌクレオチド(117)を増幅してアンプリコン(118)を産生するためにプライマー結合部位(116)にアニールする逆方向プライマーである。
【0020】
図1Bは、試薬を選択的に除去するためのフィルターチャンバーを含む反応容器内で本発明を実施するための実施形態を示す。反応容器(125)は、例えば、容器(125)からの溶解している塩、タンパク質、および単量体などを含む反応溶媒(126)の減圧駆動の除去、ならびにビーズ(127)およびビーズに結合したポリヌクレオチド(129)の保持を可能にするように選択されるフィルター壁(128)を有する。この実施形態では、イニシエーターは、反応溶媒(126)に懸濁されたビーズ(127)に結合している。合成中、イニシエーターが伸長されて図1Aに示す伸長産物が形成される。各伸長サイクルにおいて、イニシエーターまたは事前に伸長された断片を、所定の種類の単一の3’ブロックヌクレオチドによって伸長し、その後、組み込まれていない保護dNTP、ポリメラーゼ、およびポリメラーゼ反応緩衝液を含み得る伸長試薬を、減圧することによって伸長試薬をフィルター(128)を通過させることによって除去する。所望のオリゴヌクレオチドを含むポリヌクレオチドの合成が完了した後、最終的な合成試薬(130)を、減圧することによってフィルター(128)を通過させて除去し、それにより、容器(125)内にポリヌクレオチドが結合したビーズ(132)が残存する。各オリゴヌクレオチドの上流の切断可能なヌクレオチド(図1AのZ)を切断するための切断試薬を反応容器(125)に添加し(134)、インキュベートしてビーズからオリゴヌクレオチドプライマーを放出させ(136)、その後、切断剤がその後の増幅反応を妨害し得る場合、切断剤を変性または除去することができる(138)。オリゴヌクレオチドの放出および可能である場合の切断試薬の不活化後、増幅試薬および標的ポリヌクレオチドを含む試料を反応容器(125)に直接添加し、この反応容器内で、例えば、サーマルサイクリングによって増幅させる。いくつかの実施形態では、増幅後、アンプリコン配列を、従来の技術(例えば、Millipore Multiscreen(登録商標)フィルタープレートシステム(Billerica,MA))を使用したサイズ排除クロマトグラフィによって分離することができる。
【0021】
図2Aは、本発明の別の実施形態由来の産物を示す。イニシエーター配列(202)は固体支持体(210)に結合しており、各末端に切断可能なヌクレオチド(210および212)を有する複数(この場合、2つ)のオリゴヌクレオチド(204aおよび204b)を含むポリヌクレオチド(200)が合成されている。いくつかの実施形態では、切断可能なヌクレオチド(210)(「Y」として示す)は、切断可能なヌクレオチド(212)(「Z」として示す)を切断するための条件と異なる条件下で切断される。オリゴヌクレオチドベースのアッセイに依存して、ポリヌクレオチド(200)は、例えば、捕捉オリゴヌクレオチドへのハイブリッド形成のための相補配列を提供するためのセグメント(206)を含み得る。いくつかの実施形態では、末端ヌクレオチド(208)は、ポリヌクレオチド(200)が固体支持体(210)から放出された後にポリヌクレオチド(200)を補足することが可能な(例えば)ビオチンまたは類似の部分であり得る捕捉部分「x」を含む。例えば、かかる捕捉部分を、ビオチン化ジデオキシヌクレオシド三リン酸の取り込みによってポリヌクレオチドの最後のヌクレオチドとして付加することができ、ポリヌクレオチドの取り込みおよび第1の固体支持体からの放出後に(以下に言及するように)、ストレプトアビジンでコーティングされた第2の固体支持体によって捕捉することができる。本発明の方法によれば、合成の完了後、ポリヌクレオチド(200)を、切断可能なヌクレオチド「Y」(210)の切断によって固体支持体(210)から放出させ、その後、第2の固体支持体に結合した相補剤(ストレプトアビジンなど)との捕捉部分「x」の相互作用によってポリヌクレオチド(200)が捕捉される。捕捉されたポリヌクレオチドを洗浄することができ、切断可能なヌクレオチド「Z」(212)を切断して、オリゴヌクレオチドベースのアッセイで用いるためのオリゴヌクレオチド(204aおよび204b)を放出させることができる。図2Bは、産物の合成およびプロセシングの工程をさらに示す。反応容器(225)は、図1Bの容器(125)と異なり、減圧濾過によって除去される流動物を含まず、その代わりに、試薬は吸引によって除去され、産物は、ビーズ(磁石を使用した吸引によって除去される流動物から排除可能な磁性ビーズなど)に結合することによって保持される。ビーズ(227)上のイニシエーター配列を、下記のように3’-O-ブロックしたdNTPのテンプレートなしの取り込みおよびその後の脱ブロックのサイクルを用いて伸長し、ここで、かかる各サイクルには、所望のポリヌクレオチド(229)(すなわち、合成産物)の産生が完了するまでの試薬の添加および吸引による試薬の除去を伴う。この実施形態では、合成の完了後、第1の切断反応を使用してポリヌクレオチド(229)をビーズ(227)から切断し、その結果、ポリヌクレオチド(229)が反応混合物(226)中に放出される(231)。いくつかの実施形態では、図2Aに示すように、イニシエーターとポリヌクレオチド(229)との間に切断可能なヌクレオチドを挿入することによってかかる切断を実行することができる。他の実施形態では、多種多様な切断が容易な結合を使用することができ、そのうちのいくつかにより、放出されたポリヌクレオチド上の基または修飾物(放出されたポリヌクレオチドの3’-ヒドロキシル上の修飾物など)が遊離し得る。次いで、放出されたポリヌクレオチド(231)は、容器(225)に添加したビーズ(233)によって捕捉部分「x」(208)またはセグメント(206)を介して捕捉される。捕捉部分(208)は、3’-O-保護基またはブロック基であり得るか、前述の基に結合し得る広範な従来の基(ビオチンなど)を含み得る。あるいは、従来の化学を使用して塩基などの末端ヌクレオチド(208)上の他の位置に結合させることができる。いくつかの実施形態では、捕捉部分を、捕捉部分がポリヌクレオチドから切断されて(それにより、捕捉ビーズ(233)からポリヌクレオチドが放出される)遊離3’-ヒドロキシルを遊離するが、末端ヌクレオチド上の他の部位またはポリヌクレオチドの他の場所での修飾物が遊離しないように捕捉部分を選択する。さらなる他の実施形態では、ポリヌクレオチド(231)を、捕捉ビーズ(233)によって、ビーズ(233)に結合し、かつセグメント(206)に相補的な捕捉オリゴヌクレオチドへのハイブリッド形成によって捕捉することができる。捕捉ビーズ(235)による放出されたポリヌクレオチド(231)の捕捉(234)後、捕捉ビーズ(235)を、例えば、磁場によってビーズ(235)を保持することによって単離し(236)、一方で、容器(225)の試薬を吸引し、第2の切断試薬と置換する。第2の切断試薬は、切断可能なヌクレオチド「Z」(212)を切断して(238)複数のオリゴヌクレオチドを放出させ、このオリゴヌクレオチドを増幅試薬および標的を添加した(240)後に増幅反応のプライマーまたは他の構成成分として直接使用することができる。増幅後(242)、アンプリコン(244)を、容器(225)内で利用可能であり、例えば、サイズ排除クロマトグラフィによって必要に応じて生成することができる。
【0022】
複数のオリゴヌクレオチドを合成し、1またはそれを超えるオリゴヌクレオチドベースのアッセイ(上記アッセイなど)を実施するための本発明の実施形態は、以下の工程によって実行され得る:(a)反応容器内で、(i)伸長条件下で、遊離3’-ヒドロキシルを有するイニシエーターまたは遊離3’-O-ヒドロキシルを有する伸長断片を、3’-Oブロックヌクレオシド三リン酸およびテンプレート非依存性DNAポリメラーゼと接触させ、その結果、前述のイニシエーターまたは伸長断片が3’-Oブロックヌクレオシド三リン酸の取り込みによって伸長されて、3’-Oブロックした伸長断片を形成する、接触させること、および(ii)前述の伸長断片を脱ブロックして、遊離3’-ヒドロキシルを有する伸長断片を形成する、脱ブロックることのサイクルを、切断可能なヌクレオチドまたは切断可能な部位によって複数のオリゴヌクレオチドが相互に分離され、かつ前述のイニシエーターからも分離された前述の複数のオリゴヌクレオチドをそれぞれ含む伸長断片が形成されるまで繰り返す工程;(b)前述の切断可能なヌクレオチドを切断して、前述の複数のオリゴヌクレオチドのうちの少なくとも1つを遊離させる、切断する工程;(c)前述のオリゴヌクレオチドベースのアッセイのための試薬を添加する工程;および(d)前述のオリゴヌクレオチドベースのアッセイを実施する工程。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドベースのアッセイは、添加する工程がポリメラーゼ、ポリメラーゼ反応緩衝液、ヌクレオシド三リン酸を添加することをさらに含み、かつ1またはそれを超える標的ポリヌクレオチドが前述のオリゴヌクレオチドのうちの少なくとも2つに対する相補セグメントを有するようなポリメラーゼ連鎖反応(PCR)であり得、その結果、相補セグメント間の標的ポリヌクレオチドの配列がPCRにおいて増幅される。いくつかの実施形態では、PCRは、複数の標的ポリヌクレオチドが増幅されるマルチプレックスPCRである。いくつかの実施形態では、かかるマルチプレックスPCRは、2~1000個の範囲のいくつかの標的ポリヌクレオチドを増幅することができ;別の実施形態では、かかるマルチプレックスPCRは、2~100個の範囲のいくつかの標的ポリヌクレオチドを増幅することができ;かかるマルチプレックスPCRは、2~10個の範囲のいくつかの標的ポリヌクレオチドを増幅することができる。いくつかの実施形態では、切断する工程は、切断可能なヌクレオチドを酵素活性で処理することおよび切断後に酵素活性を不活化することを含む。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドベースのアッセイは核酸配列ベースの増幅(NASBA)であり、添加する工程は、RNAポリメラーゼ、RNAseH、逆転写酵素、NASBA反応緩衝液、ヌクレオシド三リン酸、および1またはそれを超える一本鎖標的核酸を添加することをさらに含み、一本鎖標的核酸のうちの少なくとも1つが前述のオリゴヌクレオチドのうちの少なくとも1つに対する相補セグメントを有し、その結果、相補セグメント間の配列がNASBA反応において増幅される。いくつかの実施形態では、イニシエーターおよび伸長フラグメントは支持体に結合しており、切断する工程によって支持体に結合した複数のオリゴヌクレオチドのうちの少なくとも1つが遊離する。他の実施形態では、オリゴヌクレオチドベースのアッセイには、ネスティッドPCR、非対称PCR、逆転写酵素PCR、または定量的PCRなどが含まれ得る。
【0023】
合成および増幅のために支持体を使用する上記および他の実施形態では、多種多様の支持体(固体支持体、可溶性ポリマー支持体、および膜などが含まれる)を使用することができる。いくつかの実施形態では、固体支持体は合成工程のために使用され;他の実施形態では、かかる固体支持体は磁性支持体である。
【0024】
いくつかの実施形態(図2Aおよび2Bに示す実施形態など)では、1つを超える支持体を合成工程で使用することができる。例えば、1つを超える支持体を使用するいくつかの実施形態をは、以下の工程によって実行され得る:(a)反応容器内の第1の支持体に結合したイニシエーターを提供する工程であって、前述のイニシエーターが遊離3’-ヒドロキシルを有する、提供する工程;(b)反応容器内で、(i)伸長条件下で、遊離3’-O-ヒドロキシルを有するイニシエーターまたは伸長断片を、3’-Oブロックヌクレオシド三リン酸およびテンプレート非依存性DNAポリメラーゼと接触させ、その結果、前述のイニシエーターまたは伸長断片が3’-Oブロックヌクレオシド三リン酸の取り込みによって伸長されて、3’-Oブロックした伸長断片する、接触させること、および(ii)前述の伸長断片を脱ブロックして、遊離3’-ヒドロキシルを有する伸長断片を形成する、脱ブロックすることのサイクルを、切断可能なヌクレオチドまたは切断可能な連結によって複数のオリゴヌクレオチドが相互に分離された複数のオリゴヌクレオチドを各々が含み、かつ3’末端捕捉部分を各々が有する伸長断片が形成されるまで繰り返す工程;(c)前述の第1の支持体から前述の伸長断片を放出させる工程;(d)第2の支持体上の前述の放出された伸長断片を、前述の第2の支持体上の相補部分への捕捉部分の特異的結合によって捕捉する工程;(e)前述の切断可能なヌクレオチドまたは切断可能な連結を切断して前述の複数のオリゴヌクレオチドを遊離する、切断する工程;および(f)前述のオリゴヌクレオチドベースのアッセイを実施する工程。上記のように、いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドベースのアッセイは、1またはそれを超えるポリメラーゼ連鎖反応を含む。いくつかの実施形態では、捕捉する工程は、工程b)およびc)の反応成分を、例えば、切断工程の実施前に洗浄によって除去することをさらに含む。いくつかの実施形態では、切断可能なヌクレオチドまたは切断可能な連結を切断する工程により、遊離3’-ヒドロキシルを有するオリゴヌクレオチドが産生される。
【0025】
いくつかの実施形態では、合成工程(例えば、上記の工程(a)~(d))によって形成された伸長断片、すなわちポリヌクレオチドは、以下の式によって定義される:
SS-I-Z-[[N]ij-Z-] -[N]-x
前述の式において:
SSは第1の支持体であり;
Iはイニシエーターであり;
Zは、切断可能なヌクレオチドまたは切断可能な連結であり;
[N]ijは、複数のm個のオリゴヌクレオチドを含む伸長断片、すなわちポリヌクレオチド中にj個のヌクレオチドを有するi番目のオリゴヌクレオチドであり;
[N]は、k個のヌクレオチドのオリゴヌクレオチドであり;
xは、[N]のヌクレオチドに結合した前述の捕捉部分である。
いくつかの実施形態では、jは、4~50の範囲;または9~40の範囲の値を有する。いくつかの実施形態では、iは2またはそれを超え;他の実施形態では、iは2~10の範囲の値を有し;さらなる他の実施形態では、iは2~4の範囲の値を有し;さらなる他の実施形態では、iは2または3である。いくつかの実施形態では、xはビオチンである。
【0026】
図2A~2Bは、複数のオリゴヌクレオチドが連続的に合成される1つの実施形態を示す。すなわち、複数の異なるオリゴヌクレオチドの各々が単一のポリヌクレオチド内に連続的に含まれ、合成後に前述のポリヌクレオチドが切断されて複数のオリゴヌクレオチドが産生される。図3は、所定の比率の複数のオリゴヌクレオチド(300)が1またはそれを超える固体支持体上に並行して合成される実施形態を示す。当業者は、本発明が単一の反応容器内で連続的合成および並行合成の両方を行うことを含むと認識するであろう。所定のオリゴヌクレオチド比を用いた並行合成は、標的ポリヌクレオチドの一方の鎖に増幅を偏らせるために一方のプライマーを過剰量の他方のプライマー中で提供する非対称PCR、または2つのプライマーを1つの濃度で提供し、1つのプローブを異なる濃度で提供する定量的PCRなどの技術に特に適用可能である。非対称PCRでは,プライマー比は10:1またはそれを超えてよく;または、他の実施形態では、かかる比は100:1またはそれを超えてよい。これらの比を、従来の化学的技術(例えば、Hermanson(上記で引用))を使用して、異なるオリゴヌクレオチドのためのイニシエーターを固体支持体上に所望の比で結合させることによって実行することができる。あるいは、各々に異なるイニシエーターが結合した異なるビーズ集団などの複数の固体支持体集団を提供することができ、その結果、所望の比のポリヌクレオチドを、合成用の反応容器内に対応する比の異なるビーズを配置することによって合成することができる。いくつかの実施形態では、3’-O-ブロックしたdNTPの異なるセットを使用することができ、各々の異なるセットについてブロック基を別の脱ブロック条件によって除去する。したがって、3つの異なるポリヌクレオチドを並行して合成しようとする場合、第1のポリヌクレオチドのイニシエーターの3’末端のブロック基1は、脱ブロック条件1によって除去されると考えられ、第2のポリヌクレオチドのために使用されるイニシエーター上のブロック基2や第3のポリヌクレオチドと共に使用されるイニシエーター上のブロック基3のいずれも除去されないであろう。次いで、第1のポリヌクレオチドは、3’-ブロック基1-dNTPを使用して合成されるであろう。第1のポリヌクレオチドの合成が完了した後、脱ブロック条件2を使用して第2のポリヌクレオチドのためのイニシエーター上のブロック基2が除去されると考えられ、この条件によりブロック基1やブロック基3は除去されないであろう。かかる脱ブロック後、第2のポリヌクレオチドは、3’-ブロック基2-dNTPを使用して合成されるであろう。第2のポリヌクレオチドの合成が完了した後、脱ブロック条件3を使用して第3のポリヌクレオチドのために使用されるイニシエーターからブロック基3が除去されると考えられ、この条件によりブロック基1やブロック基2は除去されないであろう。次いで、第3のポリヌクレオチドは、3’-ブロック基3-dNTPを使用して合成されるであろう。いくつかの実施形態では、1つのブロック基(例えば、ブロック基1)のための脱ブロッキング条件は、ブロック基1だけでなく、ブロック基2も脱ブロックし得る。このような場合、ブロック基2が脱ブロック条件1に影響を受けないようにポリヌクレオチド合成の順序を選択することができる。例えば、この場合、脱ブロック条件1が完全に直交性ではない場合、第2のポリヌクレオチドを最初に合成して伸長不可能な部分でキャッピングすることができ、その後に第1および第3のポリヌクレオチドを合成することができる。
【0027】
他の実施形態では、別の除去条件に必要な異なるブロック基は、イニシエーターにのみ結合される。したがって、かかる実施形態では、3つの異なるポリヌクレオチドを並行して合成しようとする場合、第1のポリヌクレオチドのイニシエーターの3’末端のブロック基1は、脱ブロック条件1を用いて除去されると考えられ、第1のポリヌクレオチドは、3’-ブロック基1-dNTPを使用して合成され、かつ伸長不可能な部分でキャッピングされるであろう。次に、第2のポリヌクレオチドのイニシエーターの3’末端のブロック基2は脱ブロック条件2を用いて除去されると考えられ、その後に第2のポリヌクレオチドは、3’-ブロック基1-dNTPを使用して合成され、かつ伸長不可能な部分でキャッピングされるであろう。類似の手順を第3のポリヌクレオチドのために続けるであろう。この実施形態は、単一の3’-ブロック基-dNTPセットのみが調製されればよいという利点がある。
【0028】
かかる並行合成の1つの実施形態を図3に示し、この図では2つの異なるオリゴヌクレオチドが合成されている。異なるオリゴヌクレオチドに対応する2つの異なるイニシエーター(301)は、所望の比のオリゴヌクレオチドが合成される比で固体支持体(302)に結合される。いくつかの実施形態では、イニシエーターの最も3’側のヌクレオチドは、切断可能なヌクレオチドであり得る。異なる3’-O-ブロック基を、「x」(304)および「y」(306)として示す。2つのオリゴヌクレオチドを、1つずつ合成することができるか(図3に示すように)、1つおきの伸長工程でオリゴヌクレオチドを交互に伸長することによって同時に合成することができる。図3に示すように、「y」ブロック基を使用したオリゴヌクレオチドの全体を伸長させて(308)、その3’-ヒドロキシルが依然としてブロックされた伸長産物(310)を産生し、その後に(312)「x」ブロック基を使用したオリゴヌクレオチドを伸長させて、伸長産物(314)を産生する。両方の合成の完了後、2つのブロック基を除去し、切断可能なヌクレオチド「Z」を切断することによってオリゴヌクレオチドを固体支持体(302)から放出させることができる。いくつかの実施形態では、2つのブロック基のうちの1つの脱ブロック条件によって両方のブロック基が除去されると考えられるブロック基を使用することができる。かかる状況では、同じ脱ブロック条件が最後に使用されるように脱ブロック工程が順序付けられる場合、依然として2つのブロック基を共に使用することができる。
【0029】
同一の反応容器内で複数のオリゴヌクレオチドを合成するための図3などの本発明のいくつかの実施形態は、以下の工程によって実施され得る:(a)1またはそれを超える支持体に2またはそれを超えるイニシエーター集団を提供する工程であって、各集団の前述のイニシエーターが、他のあらゆるイニシエーター集団の3’-O-ブロック基の脱ブロック条件とは別の脱ブロック条件により除去可能な集団特異的3’-O-ブロック基を有する切断可能な連結または切断可能なヌクレオチドによって終結している、提供する工程;(b)イニシエーターまたは伸長断片の集団の集団特異的ブロック基を脱ブロックして、遊離3’-ヒドロキシルを有するイニシエーターまたは伸長断片を形成する、脱ブロックする工程;(c)伸長条件下で、前述の遊離3’-ヒドロキシルを有するイニシエーターまたはその伸長断片の集団を3’-Oブロックヌクレオシド三リン酸およびテンプレート非依存性DNAポリメラーゼと接触させ、その結果、前述のイニシエーターまたは伸長断片が3’-Oブロックヌクレオシド三リン酸の取り込みによって伸長されて、3’-Oブロックした伸長断片を形成する、接触させる工程;および(d)前述の複数のオリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列を有する伸長断片が形成されるまで、各イニシエーター集団について工程(b)および(c)を繰り返す工程。いくつかの実施形態では、上記方法は、(e)前述の伸長断片を脱ブロックする工程;および(f)前述の切断可能なヌクレオチドまたは切断可能な連結を切断して前述の伸長断片および/または前述のオリゴヌクレオチド集団を遊離させる、切断する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、上記方法は、(g)前述のオリゴヌクレオチドベースのアッセイのための試薬を添加する工程;および(h)前述のオリゴヌクレオチドベースのアッセイを実施する工程をさらに含む。上記実施形態のいくつかの変形形態では、工程(b)から(d)をイニシエーターの異なる集団の各々について連続的に実行することができ、その結果、複数のオリゴヌクレオチドの各々が連続的に合成される。上記実施形態の他の変形形態では、工程(b)から(d)をイニシエーターの異なる集団の各々について択一的に実行することができ、その結果、前述の複数のオリゴヌクレオチドの各々が並行して合成される。上記方法のいくつかの実施形態では、1またはそれを超える支持体は固体支持体である。
【0030】
いくつかの実施形態では、単一の反応容器内で複数のオリゴヌクレオチドを合成する方法は、以下の工程によって実行され得る:(a)1またはそれを超える支持体に結合した複数の異なるイニシエーターを提供する工程であって、前述の複数の異なるイニシエーターのうちの少なくとも1つのイニシエーターが遊離3’-ヒドロキシルを有し、前述の複数の異なるイニシエーターのうちの少なくとも1つのイニシエーターが3’-O-ブロックした末端ヌクレオチドを有する、提供する工程;(b)3’-Oブロックヌクレオシド三リン酸の各々の異なるイニシエーターまたはその伸長産物へのテンプレートなしの酵素的ヌクレオチド付加のサイクルの繰り返しによって前述の複数のオリゴヌクレオチドを合成する工程であって、前述の3’-Oブロックヌクレオシド三リン酸が、前述の複数のイニシエーターのうちの他のイニシエーターのブロック基を除去するための脱ブロック条件と別の脱ブロック条件下で除去可能なブロック基を有する、合成する工程;および(c)前述の伸長産物および前述の1またはそれを超える固体支持体からオリゴヌクレオチドを放出させる工程。いくつかの実施形態では、複数のオリゴヌクレオチドは、前述の複数の異なるイニシエーターと等しいかそれを超える。すなわち、いくつかの場合、複数のオリゴヌクレオチドのうちの各々の異なるオリゴヌクレオチドを、異なるイニシエーターから合成することができ、この場合、複数のイニシエーターは、複数のオリゴヌクレオチドと同一である。他の場合、各々が1つを超えるオリゴヌクレオチドを含む1またはそれを超えるポリヌクレオチドを、異なるイニシエーターから合成することができ、その結果、複数のオリゴヌクレオチドは、複数のイニシエーターを超え得る。異なるイニシエーターは、前述のイニシエーターのブロック基を他のイニシエーターで使用される脱ブロック条件と別の脱ブロック条件によって除去することができる限り、異なるヌクレオチドの配列および/または長さを有し得る。例示的な別の脱ブロック条件は、一方の種類のイニシエーター上のブロック基に対して、他方の種類のイニシエーター上のブロック基に実質的に影響を及ぼすことなく使用することができる光切断、酵素切断、弱酸処理、および塩基での処理などを含み得る。
【0031】
オリゴヌクレオチドのテンプレートなしの酵素合成
一般に、テンプレートなしの(または、等価には「テンプレート非依存性」)酵素DNA合成方法は、図5などに示すように、各サイクルで所定のヌクレオチドがイニシエーターにカップリングするか、その鎖を成長させる工程のサイクルの繰り返しを含む。テンプレートなしの酵素合成の一般的な要素は、以下の参考文献に記載されている:Ybert et al,国際特許公開WO/2015/159023号;Ybert et al,国際特許公開WO/2017/216472号;Hyman,米国特許第5436143号;Hiatt et al,米国特許第5763594号;Jensen et al,Biochemistry,57:1821-1832(2018);Mathews et al,Organic&Biomolecular Chemistry,DOI:0.1039/c6ob01371f(2016);Schmitz et al,Organic Lett.,1(11):1729-1731(1999)。
【0032】
例えば、固体支持体(520)に結合した、遊離3’-ヒドロキシル基(530)を有するイニシエーターポリヌクレオチド(500)を提供する。イニシエーターポリヌクレオチド(500)(または伸長されたイニシエーターポリヌクレオチド)の3’末端上への3’-O保護dNTPの酵素的取り込みに有効な条件下(540)で、イニシエーターポリヌクレオチド(500)(またはその後のサイクルにおける伸長されたイニシエーターポリヌクレオチド)に、3’-O保護dNTPおよびテンプレートなしのポリメラーゼ,(TdTまたはそのバリアントなど(例えば、Ybert et al,WO/2017/216472号;Champion et al,WO2019/135007号))を付加する。この反応により、3’-ヒドロキシルが保護された伸長されたイニシエーターポリヌクレオチド(560)が産生される。伸長された配列が完全でない場合、別の付加サイクルを実行する(580)。伸長されたイニシエーターポリヌクレオチドが完了した配列を含む場合、3’-O-保護基を除去(すなわち、脱保護)することができ、所望の配列を、元のイニシエーターポリヌクレオチドから切断することができる(582)。かかる切断を、種々の一本鎖切断技術のいずれかを使用して(例えば、元のイニシエーターポリヌクレオチド内の所定の位置への切断可能なヌクレオチドの挿入によって)行うことができる。例示的な切断可能なヌクレオチドは、ウラシルDNAグルコシラーゼによって切断されるウラシルヌクレオチドであり得る。伸長されたイニシエーターポリヌクレオチドが完了された配列を含まない場合、3’-O-保護基が除去されて遊離3’-ヒドロキシルが露出し(530)、伸長されたイニシエーターポリヌクレオチドが別のヌクレオチド付加および脱保護サイクルに供される。
【0033】
本明細書中で使用される場合、「イニシエーター」(または「開始断片」、「イニシエーター核酸」、もしくは「イニシエーターオリゴヌクレオチド」などの等価な用語)は、通常、テンプレートなしのポリメラーゼ(TdTなど)によってさらに延長することができる、遊離3’末端を有する短いオリゴヌクレオチド配列を指す。1つの実施形態では、開始断片はDNA開始断片である。別の実施形態では、開始断片はRNA開始断片である。いくつかの実施形態では、開始断片は、3ヌクレオチドと100ヌクレオチドとの間、特に、3ヌクレオチドと20ヌクレオチドとの間を含む。いくつかの実施形態では、開始断片は一本鎖である。別の実施形態では、開始断片は二本鎖である。いくつかの実施形態では、イニシエーターは、TdTが3’-O保護dNTPをカップリングすることができる遊離ヒドロキシルを有する非核酸化合物を含み得る(例えば、Baiga,米国特許出願公開第2019/0078065号および同第2019/0078126号)。
【0034】
図5に戻って、いくつかの実施形態では、各合成工程において3’-O保護dNTPの存在下でテンプレートなしのポリメラーゼ(TdTなど)を用いて、整列したヌクレオチド配列をイニシエーター核酸にカップリングする。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドを合成する方法は、(a)遊離3’-ヒドロキシルを有するイニシエーターを提供する工程;(b)伸長条件下で、遊離3’-ヒドロキシルを有するイニシエーターまたは伸長中間体をテンプレートなしのポリメラーゼと、3’-O保護ヌクレオシド三リン酸の存在下にて反応させて3’-O保護伸長中間体を産生する工程;(c)伸長中間体を脱保護して遊離3’-ヒドロキシルを有する伸長中間体を産生する工程;および(d)ポリヌクレオチドが合成されるまで工程(b)および(c)を繰り返す工程を含む。(時折、用語「伸長中間体」および「延長断片」は、互換的に使用される)。いくつかの実施形態では、イニシエーターは、例えば、その5’末端が固体支持体に結合したオリゴヌクレオチドとして提供される。また、上記の方法は、反応(すなわち、伸長)工程後、および脱保護工程後に洗浄工程を含み得る。例えば、反応させる工程は、所定のインキュベーション期間(すなわち、反応時間)後に、例えば洗浄によって非取り込みヌクレオシド三リン酸を除去する下位工程を含み得る。かかる所定のインキュベーション期間または反応時間は、数秒間(例えば、30秒間)から数分間(例えば、30分間)であり得る。
【0035】
合成支持体上のポリヌクレオチドの配列が逆相補サブシーケンスを含む場合、分子内二次構造または分子交差二次構造を、逆相補領域間の水素結合の形成によって作出することができる。いくつかの実施形態では、環外アミンのための塩基保護部分を、保護された窒素の水素が水素結合に関与できず、それにより、かかる二次構造の形成が防止されるように選択する。すなわち、塩基保護部分を使用して、例えば、ヌクレオシドAとTとの間およびGとCとの間の通常の塩基対合において形成される水素結合の形成を防止することができる。合成終了時に、塩基保護部分を除去することができ、ポリヌクレオチド産物を、例えば、そのイニシエーターからの切断によって固体支持体から切断することによって固体支持体から切断することができる。
【0036】
塩基が保護されていない3’-OブロックdNTPを、販売者から購入するか、公開された技術(例えば、米国特許第7057026号;Guo et al,Proc.Natl.Acad.Sci.,105(27):9145-9150(2008);Benner,米国特許第7544794号および同第8212020号;国際特許公開番号WO2004/005667号,WO91/06678号;Canard et al,Gene(本明細書中で引用);Metzker et al,Nucleic Acids Research,22:4259-4267(1994);Meng et al,J.Org.Chem.,14:3248-3252(3006);米国特許出願公開第2005/037991号)を使用して合成することができる。塩基が保護された3’-OブロックdNTPを、下記のように合成することができる。
【0037】
塩基保護されたdNTPを使用する場合、上記の図5の方法は、(e)塩基保護部分を除去する工程であって、アシルまたはアミジン保護基の場合、(例えば)濃縮アンモニアでの処理を含み得る、除去する工程をさらに含み得る。
【0038】
また、上記の方法は、反応工程(すなわち、伸長工程)後および脱保護工程後のキャッピング工程(複数可)および洗浄工程を含み得る。上記のとおり、いくつかの実施形態では、非伸長遊離3’-ヒドロキシルを、キャッピングされた鎖のいかなるさらなる伸長も防止する化合物と反応させるキャッピング工程が含まれ得る。いくつかの実施形態では、かかる化合物は、ジデオキシヌクレオシド三リン酸であり得る。他の実施形態では、遊離3’-ヒドロキシルを有する非伸長鎖は、3’-エキソヌクレアーゼ活性(例えば、ExoI)での処理によって分解され得る。例えば、Hyman,米国特許第5436143号を参照のこと。同様に、いくつかの実施形態では、脱ブロックされない鎖は、鎖を除去するか、さらなる伸長に不活性になるように処理され得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、伸長工程または延長工程のための反応条件は、以下を含み得る:2.0μM 精製TdT;125~600μM 3’-OブロックdNTP(例えば、3’-O-NHブロックdNTP);約10~約500mMカコジル酸カリウム緩衝液(pH6.5と7.5との間)、および約0.01~約10mMの二価カチオン(例えば、CoC1またはMnC1)、ここで、延長反応は、反応体積50μL、室温から45℃までの範囲内の温度で3分間行い得る。3’-OブロックdNTPが3’-O-NHブロックdNTPである実施形態では、脱ブロック工程のための反応条件は、以下を含み得る:700mM NaNO;1M酢酸ナトリウム(酢酸を用いてpH4.8~6.5の範囲に調整)、ここで、脱ブロック反応は、体積50μL、室温から45℃までの範囲内の温度で30秒間から数分間行い得る。
【0040】
特定の適用に応じて、脱ブロックおよび/または切断工程は、種々の化学的または物理的条件(例えば、光、熱、pH、指定の化学結合を切断することができる酵素などの特異的試薬の存在)を含み得る。3’-O-ブロック基および対応する脱ブロック条件の選択における指針は、以下の参考文献(参考として援用される)に見出され得る:Benner,米国特許第7544794号および同第8212020号;米国特許第5808045号;米国特許第8808988号;国際特許公開WO91/06678号;および以下に引用した参考文献。いくつかの実施形態では、切断剤(時折、脱ブロック試薬または脱ブロック剤とも呼ばれる)は、化学的切断剤(例えば、ジチオスレイトール(DTT)など)である。別の実施形態では、切断剤は、3’リン酸ブロック基を切断し得る酵素切断剤(例えば、ホスファターゼなど)であり得る。脱ブロック剤の選択が使用した3’-ヌクレオチドブロック基のタイプ、1つまたは複数のブロック基が使用されるかどうか、イニシエーターが生きている細胞もしくは生物または固体支持体などに結合されるかどうか(穏やかな処理に必要)に依存することが当業者に理解される。例えば、ホスフィン(トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)など)を使用して3’O-アジドメチル基を切断することができ、パラジウム錯体を使用して3’O-アリル基を切断することができ、あるいは、亜硝酸ナトリウムを使用して3’O-アミノ基を切断することができる。特定の実施形態では、切断反応は、TCEP、パラジウム錯体、または亜硝酸ナトリウムを含む。
【0041】
上述の通り、いくつかの実施形態では、別の脱ブロック条件を使用して除去され得る2またはそれを超えるブロック基を使用することが望ましい。以下の例示的なブロック基の対を、並行合成実施形態で使用してよい。他のブロック基の対または2種超を含む基が、本発明のこれらの実施形態で用いることができる場合があると理解される。
【表A】
【0042】
生細胞に対するオリゴヌクレオチドを合成するには、穏やかな脱ブロック条件または脱保護条件(細胞膜を破壊せず、タンパク質を変性させず、重要な細胞機能に干渉しない条件など)が必要である。いくつかの実施形態では、脱保護条件は、細胞生存に適合する生理学的条件の範囲内にある。かかる実施形態では、酵素的脱保護は、生理学的条件下で実施され得るので望ましい。いくつかの実施形態では、特異的な酵素的に除去可能なブロック基は、その除去に特異的な酵素に関連する。例えば、エステルまたはアシルベースのブロック基は、アセチルエステラーゼなどのエステラーゼまたは類似の酵素を用いて除去され得、リン酸ブロック基は、T4ポリヌクレオチドキナーゼなどの3’ホスファターゼを用いて除去され得る。例として、3’-O-リン酸は、100mM Tris-HCl(pH6.5)、10mM MgC1、5mM 2-メルカプトエタノール、および1単位のT4ポリヌクレオチドキナーゼの溶液での処理によって除去され得る。反応は、37℃で1分間進行する。
【0043】
「3’-リン酸ブロック」または「3’-リン酸保護」ヌクレオチドは、3’位のヒドロキシル基がリン酸含有部分の存在によってブロックされているヌクレオチドを指す。本発明の3’-リン酸ブロックヌクレオチドの例は、ヌクレオチジル-3’-リン酸モノエステル/ヌクレオチジル-2’,3’-環状ホスファート、ヌクレオチジル(nuclcotidyl)-2’-リン酸モノエステルおよびヌクレオチジル-2’または3’-アルキルリン酸ジエステル、ならびにヌクレオチジル-2’または3’-ピロホスファートである。置換がホスファターゼによって遊離3’-OHを生じる脱リン酸化を阻止しない場合、チオホスファートまたはかかる化合物の他のアナログも使用することができる。
【0044】
3’-O-エステル保護dNTPまたは3’-O-リン酸保護dNTPの合成および酵素的脱保護のさらなる例は、以下の参考文献に記載されている:Canard et al,Proc.Natl.Acad.Sci.,92:10859-10863(1995);Canard et al,Gene,148:1-6(1994);Cameron et al,Biochemistry,16(23):5120-5126(1977);Rasolonjatovo et al,Nucleosides&Nucleotides,18(4&5):1021-1022(1999);Ferrero et al,Monatshefte fur Chemie,131:585-616(2000);Taunton-Rigby et al,J.Org.Chem.,38(5):977-985(1973);Uemura et al,Tetrahedron Lett.,30(29):3819-3820(1989);Becker et al,J.Biol.Chem.,242(5):936-950(1967);Tsien,国際特許公開WO1991/006678号。
【0045】
いくつかの実施形態では、改変ヌクレオチドは、プリン塩基またはピリミジン塩基および3’炭素原子が構造:
-O-Z
の基に結合しているように、除去可能な3’-OHブロック基が共有結合で付着したリボース糖部分またはデオキシリボース糖部分を含む改変されたヌクレオチドまたはヌクレオシド分子を含み、ここで、-Zは、-C(R’)-O-R’’、-C(R’)-N(R’’)、-C(R’)-N(H)R’’、-C(R’)-S-R’’、および-C(R’)-Fのうちのいずれかであり、各R’’は、除去可能な保護基であるかまたはその一部であり;各R’は、独立して、水素原子、アルキル、置換アルキル、アリールアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、複素環式、アシル、シアノ、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、もしくはアミド基、または連結基を介して結合した検出可能な標識であり;但し、いくつかの実施形態では、かかる置換基は、10個までの炭素原子および/または5個までの酸素もしくは窒素ヘテロ原子を有し;あるいは、(R’)は、式=C(R’’’)の基を示し、ここで、各R’’’は、同一でも異なっていてもよく、水素原子およびハロゲン原子ならびにアルキル基を含む群から選択され、但し、いくつかの実施形態では、各R’’’のアルキルは、1~3個の炭素原子を有し;分子が反応して中間体を生成してよく、各R’’はHと交換されるか、Zは-(R’)-Fであり、FはOH、SH、またはNH、好ましくはOHと交換され、水性条件下で中間体が解離して遊離3’-OHを有する分子が得られ;但し、Zが-C(R’)-S-R’’である場合、両方のR’基がHというわけではない。ある特定の実施形態では、改変されたヌクレオチドまたはヌクレオシドのR’は、アルキルまたは置換アルキルであり、但し、かかるアルキルまたは置換アルキルは、1~10個の炭素原子および0~4個の酸素または窒素ヘテロ原子を有する。ある特定の実施形態では、改変されたヌクレオチドまたはヌクレオシドの-Zは、式-C(R’)-N3である。ある特定の実施形態では、Zはアジドメチル基である。
【0046】
いくつかの実施形態では、Zは、分子量が200またはそれ未満のヘテロ原子を有するか有さない切断可能な有機部分である。他の実施形態では、Zは、分子量が100またはそれ未満のヘテロ原子を有するか有さない切断可能な有機部分である。他の実施形態では、Zは、分子量が50またはそれ未満のヘテロ原子を有するか有さない切断可能な有機部分である。いくつかの実施形態では、Zは、分子量が200またはそれ未満のヘテロ原子を有するか有さない酵素的に切断可能な有機部分である。他の実施形態では、Zは、分子量が100またはそれ未満のヘテロ原子を有するか有さない酵素的に切断可能な有機部分である。他の実施形態では、Zは、分子量が50またはそれ未満のヘテロ原子を有するか有さない酵素的に切断可能な有機部分である。他の実施形態では、Zは、分子量が200またはそれ未満の酵素的に切断可能なエステル基である。他の実施形態では、Zは、3’-ホスファターゼによって除去可能なリン酸基である。いくつかの実施形態では、1またはそれを超える以下の3’-ホスファターゼを、製造者の推奨するプロトコールを用いて使用することができる:T4ポリヌクレオチドキナーゼ、仔牛腸アルカリホスファターゼ、組換えエビアルカリホスファターゼ(例えば、New England Biolabs,Beverly,MAから入手可能)。
【0047】
さらなる実施形態では、3’ブロックされたヌクレオチド三リン酸は、3’-O-アジドメチル基、3’-O-NH基、または3’-O-アリル基のいずれかによってブロックされる。
【0048】
さらに他の実施形態では、本発明の3’-O-ブロック基には、3’-O-メチル、3’-O-(2-ニトロベンジル)、3’-O-アリル、3’-O-アミン、3’-O-アジドメチル、3’-O-tert-ブトキシエトキシ、3’-O-(2-シアノエチル)、および3’-O-プロパルギルが含まれる。
【0049】
いくつかの実施形態では、3’-O-保護基は、電気化学的に不安定な基である。すなわち、保護基の脱保護または切断を、切断されるように保護基付近の電気化学的状態を変化させることによって行う。物理量(補助種を活性化するための電圧差または光など)を変化させるか印加し、それにより、保護基の部位の電気化学的状態を変化させる(pHの上昇または低下など)ことによってかかる電気化学的状態の変化が生じ得る。いくつかの実施形態では、電気化学的に不安定な基には、例えば、pHが所定の値に変化したときはいつでも切断されるpH感受性保護基が含まれる。他の実施形態では、電気化学的に不安定な基には、例えば、保護基の部位の電圧差の増加または減少によって還元条件または酸化条件が変化したときはいつでも直接切断される保護基が含まれる。
【0050】
いくつかの実施形態では、酵素合成法は、3’-O-改変ヌクレオシド三リン酸に関する取り込み活性が増加するTdTバリアントを使用する。例えば、かかるTdTバリアントは、Champion et al,米国特許第10435676号(本明細書中で参考として援用される)に記載の技術を使用して産生され得る。いくつかの実施形態では、TdTバリアントであって、配列番号2と少なくとも60パーセント同一のアミノ酸配列を有し、207位の第1のアルギニンおよび325位の第2のアルギニン、またはその機能的に等価な残基が置換されているTdTバリアントを使用する。いくつかの実施形態では、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)バリアントであって、配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15から選択されるアミノ酸配列と少なくとも60パーセント同一のアミノ酸配列を有し、配列番号2、3、4、6、7、9、12、および13に関する207位、配列番号5に関する206位、配列番号8および10に関する208位、配列番号11に関する205位、配列番号14に関する216位、および配列番号15に関する210位のアルギニン(「第1のアルギニン」);ならびに配列番号2、9、および13に関する325位、配列番号3および4に関する324位、配列番号320に関する320位、配列番号6および8に関する331位、配列番号11に関する323位、配列番号12および15に関する328位、ならびに配列番号14に関する338位のアルギニン(「第2のアルギニン」);またはその機能的に等価な残基が置換されており;ここで、前記TdTバリアントが、(i)テンプレートなしで核酸断片を合成することができ、(ii)3’-O-改変ヌクレオチドを核酸断片の遊離3’-ヒドロキシル上に組み込むことができる、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)バリアントを使用する。いくつかの実施形態では、上記同一性パーセント値は、示した配列番号と少なくとも80パーセント同一であり;いくつかの実施形態では、上記同一性パーセント値は、示した配列番号と少なくとも90パーセント同一であり;いくつかの実施形態では、上記同一性パーセント値は、示した配列番号と少なくとも95パーセント同一であり;いくつかの実施形態では、上記同一性パーセント値は、少なくとも97パーセント同一であり;いくつかの実施形態では、上記同一性パーセント値は、少なくとも98パーセント同一であり;いくつかの実施形態では、上記同一性パーセント値は、少なくとも99パーセント同一である。本明細書中で使用される場合、参照配列をバリアント配列と比較するために使用される同一性パーセント値は、バリアント配列の置換を含む明確に指定されたアミノ酸の位置を含まない;すなわち、同一性パーセントの関係は、参照タンパク質の配列と、バリアント中の置換を含む明確に指定された位置を除外したバリアントタンパク質の配列との間にある。したがって、例えば、参照配列およびバリアント配列の各々が100個のアミノ酸を含み、かつバリアント配列が25位および81位に変異を有する場合、相同率は、1~24位、26~80位、および82~100位の配列に関する。
【0051】
(ii)に関して、かかる3’-O-改変ヌクレオチドは、3’-O-NH2-ヌクレオシド三リン酸、3’-O-アジドメチル-ヌクレオシド三リン酸、3’-O-アリル-ヌクレオシド三リン酸、3’O-(2-ニトロベンジル)-ヌクレオシド三リン酸、または3’-O-プロパルギル-ヌクレオシド三リン酸を含み得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、上記のTdTバリアントは、表1に示すように、第1および第2のアルギニンに置換を有する。
【表1】
【0053】
いくつかの実施形態では、本発明の方法と共に使用するためのさらなるTdTバリアントは、表1に示すように、メチオニン、システイン、またはグルタミン酸のさらなる置換のうちの1つまたは複数を含む。
【0054】
本発明の方法で使用され得るさらに特異的なTdTバリアントを、表2に示す。表2のTdTバリアントDS1001からDS1018の各々は、配列番号2と少なくとも60パーセント同一のアミノ酸配列を含み、示した位置に置換を含む。いくつかの実施形態では、DS1001からDS1018のTdTバリアントは、配列番号2と少なくとも80パーセント同一のアミノ酸配列を含み、示した位置に置換を含み;いくつかの実施形態では、DS1001からDS1018のTdTバリアントは、配列番号2と少なくとも90パーセント同一のアミノ酸配列を含み、示した位置に置換を含み;いくつかの実施形態では、DS1001からDS1018のTdTバリアントは、配列番号2と少なくとも95パーセント同一のアミノ酸配列を含み、示した位置に置換を含み;いくつかの実施形態では、DS1001からDS1018のTdTバリアントは、配列番号2と少なくとも97パーセント同一のアミノ酸配列を含み、示した位置に置換を含み;いくつかの実施形態では、DS1001からDS1018のTdTバリアントは、配列番号2と少なくとも98パーセント同一のアミノ酸配列を含み、示した位置に置換を含み;いくつかの実施形態では、DS1001からDS1018のTdTバリアントは、配列番号2と少なくとも99パーセント同一のアミノ酸配列を含み、示した位置に置換を含む。
【表2-1】
【表2-2】
【0055】
上記の本発明のTdTバリアントは、各々、指定の配列番号と、示した置換の存在に応じた配列同一性パーセントを有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、配列の数および型は、この様式で記載の本発明のTdTバリアントの間で異なり、指定の配列番号は、置換、欠失、および/または挿入に起因し得、欠失、置換、および/または挿入されたアミノ酸は、任意のアミノ酸を含み得る。いくつかの実施形態では、かかる置換、欠失、および/または挿入は、天然に存在するアミノ酸のみを含む。いくつかの実施形態では、置換は、Grantham,Science,185:862-864(1974)に記載のように、保存的な(すなわち、同義の)アミノ酸の変化のみを含む。すなわち、同義アミノ酸セットのメンバー間のみでアミノ酸を置換することができる。いくつかの実施形態では、使用され得る同義アミノ酸のセットを、表3Aに示す。
【表3A】
いくつかの実施形態では、使用され得る同義アミノ酸セットを、表3Bに記載する。
【表3B-1】
【表3B-2】
切断可能な連結およびヌクレオチド
【0056】
多種多様の切断可能な連結、より具体的には、切断可能なヌクレオチドを、本発明の実施形態と共に使用することができる。本明細書中で使用される場合、用語「切断可能な部位」は、所定の条件下で切り出すか切断し、それにより、単一の標準的な核酸配列を2つに分離することができる単一の標準的な核酸配列のヌクレオチドまたはバックボーンの連結を指す。いくつかの実施形態では、切断可能なヌクレオチドまたは切断可能な連結を切断する工程により切断した鎖上に遊離3’-ヒドロキシルが遊離し、それにより、例えば、切断された鎖をポリメラーゼによって伸長させることが可能である。切断工程を、化学的な、熱的な、酵素的な、または光ベースの切断によって行うことができる。いくつかの実施形態では、切断可能なヌクレオチドは、特異的なグルコシラーゼ(例えば、それぞれ、ウラシルデオキシグルコシラーゼ、その後のエンドヌクレアーゼVIII、および8-オキソグアニンDNAグルコシラーゼ)によって認識されるデオキシウリジンまたは8-オキソ-デオキシグアノシンなどのヌクレオチドアナログであり得る。いくつかの実施形態では、グルコシラーゼおよび/またはエンドヌクレアーゼによる切断には、二本鎖DNA基質が必要であり得る。
【0057】
いくつかの実施形態では、切断可能なヌクレオチドには、エンドヌクレアーゼIIIによって切断可能な塩基アナログ(尿素、チミングリコール、メチルタートニル尿素、アロキサン、ウラシルグリコール、6-ヒドロキシ-5,6-ジヒドロシトシン、5-ヒドロキシヒダントイン、5-ヒドロキシシトシン(cytocine)、トランス-1-カルバモイル-2-オキソ-4,5-ジヒドロオキシイミダゾリジン、5,6-ジヒドロウラシル、5-ヒドロキシシトシン、5-ヒドロキシウラシル、5-ヒドロキシ-6-ヒドロウラシル、5-ヒドロキシ-6-ヒドロチミン、5,6-ジヒドロチミンが含まれるが、これらに限定されない)を含むヌクレオチドが含まれる。いくつかの実施形態では、切断可能なヌクレオチドには、ホルムアミドピリミジンDNAグルコシラーゼによって切断可能な塩基アナログ(7,8-ジヒドロ-8-オキソグアニン、7,8-ジヒドロ-8-オキソイノシン、7,8-ジヒドロ-8-オキソアデニン、7,8-ジヒドロ-8-オキソネブラリン、4,6-ジアミノ-5-ホルムアミドピリミジン、2,6-ジアミノ-4-ヒドロキシ-5-ホルムアミドピリミジン、2,6-ジアミノ-4-ヒドロキシ-5-N-メチルホルムアミドピリミジン、5-ヒドロキシシトシン、5-ヒドロキシウラシルが含まれるが、これらに限定されない)を含むヌクレオチドが含まれる。いくつかの実施形態では、切断可能なヌクレオチドには、hNeil1によって切断可能な塩基アナログ(グアニジノヒダントイン、スピロイミノジヒダントイン、5-ヒドロキシウラシル、チミングリコールが含まれるが、これらに限定されない)を含むヌクレオチドが含まれる。いくつかの実施形態では、切断可能なヌクレオチドには、チミンDNAグルコシラーゼによって切断可能な塩基アナログ(5-ホルミルシトシンおよび5-カルボキシシトシンが含まれるが、これらに限定されない)を含むヌクレオチドが含まれる。いくつかの実施形態では、切断可能なヌクレオチドには、ヒトアルキルアデニンDNAグルコシラーゼによって切断可能な塩基アナログ(3-メチルアデニン、3-メチルグアニン、7-メチルグアニン、7-(2-クロロエチル(chloroehyl))-グアニン、7-(2-ヒドロキシエチル)-グアニン、7-(2-エトキシエチル)-グアニン、1,2-ビス-(7-グアニル)エタン、1,N-エテノアデニン、1,N-エテノグアニン、N,3-エテノグアニン、N,3-エタノグアニン、5-ホルミルウラシル、5-ヒドロキシメチルウラシル、ヒポキサンチンが含まれるが、これらに限定されない)を含むヌクレオチドが含まれる。いくつかの実施形態では、切断可能なヌクレオチドには、5-メチルシトシンDNAグルコシラーゼによって切断可能な5-メチルシトシンが含まれる。
【0058】
本明細書中に記載の方法で用いる化学的に切断可能なヌクレオチド間連結の例には、例えば、-シアノエーテル、5’-デオキシ-5’-アミノカルバマート、3’デオキシ-3’-アミノカルバマート、尿素、2’シアノ-3’,5’-ホスホジエステル、3’-(S)-ホスホロチオアート、5’-(S)-ホスホロチオアート、3’-(N)-ホスホルアミダート、5’-(N)-ホスホルアミダート、-アミノアミド、ビシナルジオール、リボヌクレオシド挿入、2’-アミノ-3’,5’-ホスホジエステル、アリル性スルホキシド、エステル、シリルエーテル、ジチオアセタール、5’-チオ-フルマル、-ヒドロキシ-メチル-ホスホン酸ビスアミド、アセタール、3’-チオ-フルマル、メチルホスホナート、およびホスホトリエステルが含まれる。ヌクレオシド間シリル基(トリアルキルシリルエーテルおよびジアルコキシシランなど)は、フッ化物イオンでの処理によって切断される。塩基切断性部位には、-シアノエーテル、5’-デオキシ-5’-アミノカルバマート、3’-デオキシ-3’-アミノカルバマート、尿素、2’-シアノ-3’,5’-ホスホジエステル、2’-アミノ-3’,5’-ホスホジエステル、エステル、およびリボースが含まれる。チオ含有ヌクレオチド間結合(3’-(S)-ホスホロチオアートおよび5’-(S)-ホスホロチオアートなど)は、硝酸銀または塩化水銀での処理によって切断される。酸切断性部位には、3’-(N)-ホスホルアミダート、5’-(N)-ホスホルアミダート、ジチオアセタール、アセタール、およびホスホン酸ビスアミドが含まれる。-アミノアミドヌクレオチド間結合は、イソチオシアナートでの処理によって切断可能であり、チタンを使用して、2’-アミノ-3’,5’-ホスホジエステル-O-オルソ-ベンジルヌクレオチド間結合を切断することができる。ビシナルジオール連結は、過ヨウ素酸塩での処理によって切断可能である。熱切断性基には、アリル性スルホキシドおよびシクロヘキセンが含まれ、一方で、光解離性連結には、ニトロベンジルエーテルおよびチミジン二量体が含まれる。化学的切断性基、熱切断性基、および光解離性基を含む核酸を合成および切断する方法は、例えば、米国特許第5,700,642号に記載されている。
【0059】
さらなる切断可能な連結は、以下の参考文献に開示されている:Pon,R.,Methods Mol.Biol.20:465-496(1993);Verma et al.,Ann.Rev.Biochem.67:99-134(1998);米国特許第5,739,386号、同第5,700,642号、および同第5,830,655号;ならびに米国特許出願公開第2003/0186226号および同第2004/0106728号、Urdea et alの米国特許第5367066号。
【0060】
切断性部位(例えば、ホスホジエステル基の1つの代わりの修飾された3’-5’ヌクレオチド間連結(リボース、ジアルコキシシラン、ホスホロチオアート、およびホスホルアミダートのヌクレオチド間連結など))を、オリゴヌクレオチドバックボーンに沿って配置することができる。また、切断性オリゴヌクレオチドアナログは、塩基または糖のうちの1つに置換または置き換えを含み得る(7-デアザグアノシン、5-メチルシトシン、イノシン、およびウリジンなど)。
【0061】
化学的切断可能なオリゴヌクレオチドの合成および切断の条件は、米国特許第5,700,642号および同第5,830,655号に記載されている。ホスホロチオアートヌクレオチド間連結を、穏やかな酸化条件下で選択的に切断することができる。ホスホルアミダート結合の選択的切断を、穏やかな酸性条件下(80%酢酸など)で行うことができる。リボースの選択的切断を、希水酸化アンモニウムでの処理によって行うことができる。別の実施形態では、切断可能な連結部分は、アミノリンカーであり得る。ホスホルアミダイト連結を介してリンカーに結合した得られたオリゴヌクレオチドを、80%酢酸を用いて切断して3’-ホスホリル化オリゴヌクレオチドを得ることができ、これを(必要に応じて)ホスファターゼによって除去することができる。
【0062】
いくつかの実施形態では、切断可能な連結部分は、光切断性リンカー(オルソ-ニトロベンジル光切断性リンカーなど)であり得る。固体支持体上の光解離性オリゴヌクレオチドの合成および切断の条件は、例えば、Venkatesan et al.,J.Org.Chem.61:525-529(1996)、Kahl et al.,J.Org.Chem.64:507-510(1999)、Kahl et al.,J.Org.Chem.63:4870-4871(1998)、Greenberg et al.,J.Org.Chem.59:746-753(1994)、Holmes et al.,J.Org.Chem.62:2370-2380(1997)、および米国特許第5,739,386号に記載されている。オルソ-ニトロベンジルベースのリンカー(ヒドロキシメチルリンカー、ヒドロキシエチルリンカー、およびFmoc-アミノエチルカルボン酸リンカーなど)を、購入することもできる。
【0063】
いくつかの実施形態では、リボヌクレオチドを切断可能なヌクレオチドとして使用することができ、ここで、切断工程を、リボヌクレアーゼ(RNaseHなど)を使用して実行することができる。他の実施形態では、切断工程を、ニッカーゼでの処理によって行うことができる。
キット
【0064】
本発明は、本発明の方法を実施するためのキットを含む。いくつかの実施形態では、本発明のキットは、PCRを実行するための複数のオリゴヌクレオチドの連続的な合成のためのものであり、前述のキットは、ポリヌクレオチド産物の所定の位置に切断可能なヌクレオチドを挿入するための3’-Oブロックした切断可能なヌクレオシド三リン酸を含む。いくつかの実施形態では、かかるキットは、イニシエーターが結合した固体支持体をさらに含む。さらなる実施形態では、かかるキットは、複数の固体支持体を含み、前述の複数の固体支持体の各々の異なる固体支持体は、イニシエーターが結合しており、イニシエーターには、各々の異なるブロック基が別の脱ブロック条件によって除去可能なように異なる3’-O-ブロック基が結合している。さらなる実施形態では、かかるキットは、複数の異なるイニシエーターが所定の比で結合した固体支持体を含み、ここで、各々の異なるイニシエーターは、各々の異なるブロック基が別の脱ブロック条件によって除去可能なように異なる3’-O-ブロック基が結合している。前述のキットの各々において、異なるイニシエーターは、同一または異なるヌクレオチド配列を有し得る。
【0065】
前述のキットのいくつかの実施形態では、固体支持体およびイニシエーターは、複数のイニシエーターが2つであり、異なるイニシエーターの所定の比が少なくとも10:1;他の実施形態では、少なくとも100:1であるような非対称PCRを実施するために提供される。前述のキットのいくつかの実施形態では、固体支持体およびイニシエーターは、ポリヌクレオチド産物が合成されたときに増幅反応を行うために2セットの順方向プライマーおよび逆方向プライマーを放出することができるようなネスティッドPCRを実施するために提供される。この実施形態の1つの形態では、2つの固体支持体を提供し、ここで、一方の固体支持体上で2つのプライマーが連続的に合成され、他の固体支持体上で2つのプライマーが連続的に合成され、異なる固体支持体上のイニシエーターが別の脱ブロック条件によって除去され得る異なる3’-O-ブロック基を有する。これらの実施形態の別の形態では、1またはそれを超える種類の3’-Oブロックした切断可能なヌクレオシド三リン酸を提供する。
【0066】
いくつかの実施形態では、キットは、核酸配列ベースの増幅(NASBA)、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)、または定量的PCRを実行するための固体支持体および3’-Oブロックした切断可能なヌクレオシド三リン酸を提供する。
実施例1:qPCRのためのプライマーおよびTaqmanプローブの並行合成
【0067】
プライマーおよびプローブを合成し、一本鎖ファージM13mp10の350bp断片を増幅するためのいくらか修正を加えたHolland et al,Proc.Natl.Acad.Sci.,88:7276-7280(1991)に記載のプロトコールにしたがって定量PCRを実行する。方法の工程を、図4A~4Cに示す。同一の反応において、ウェルを、各々が磁性アガロース樹脂を含む第1の合成支持体(402)および第2の合成支持体(404)に配置し、ここで、第1の支持体(402)は、第1のイニシエーターオリゴヌクレオチド(403)が結合しており、このオリゴヌクレオチドは、遊離3’-ヒドロキシルを有する末端デオキシウリジン(408)を有し、かつ末端デオキシウリジン(deoxyurindine)(408)から4番目と5番目のヌクレオチドの間に5’-ホスホロチオアート連結(406)を有する。第2の支持体(404)は、第2のイニシエーターオリゴヌクレオチド(405)が結合しており、このオリゴヌクレオチドは、その末端に3’-O-アジドメチルブロック基(410)を有する末端デオキシウリジン(408)を有し、かつ末端デオキシウリジン(deoxyurindine)(408)から4番目と5番目のヌクレオチドの間に5’-ホスホロチオアート連結(406)を有する。両方のイニシエーター(403および405)は、従来の連結化学を使用してその5’末端が固体支持体(それぞれ、402および404)に共有結合している。第2の支持体(404)上で、(i)順方向プライマーBW36(28量体、ファージM13mp10上の5241~5268位)(415)および(ii)逆方向プライマーBW42(30量体、ファージM13mp10上の5591~6662位)(上記で引用したHolland et alに開示)(417)を連続して(固体支持体に対して近位から遠位の方向で)含む第2のポリヌクレオチド(427)が合成され(414)、ここで、前述のプライマーは、デオキシウリジン(416)で分離されている。BW42のすぐ3’側にデオキシウリジン(419)、5つのデオキシチミジンのセグメント(419)、および最後のビオチン化されたddU(420)が存在する。かかる合成は、Bennerの米国特許第7544794号およびBenner et alの米国特許第8034923号および同第8212020号に開示のように調製および使用される3’-O-アミノ-dNTPを使用して行われる。プライマー合成の完了後、第1の支持体(402)上で、プローブBW31(30量体)(424)を含む第1のポリヌクレオチド(428)が合成され(422)、ここで、BW31の5’末端シトシンはFAM(425)で標識されており(FAM標識された3’-O-アジドメチル-dCTPは、Liu et alの米国特許第7795454号(本明細書中で参考として援用される)に開示ように作製される)、BW31の3’末端CはTAMRA(426)で標識されている(TAMRA標識された3’-O-アジドメチル-dCTPは、Liu et al(上記で引用)によって開示のように作製される)。そうでなければ、市販の(Jena)非標識の3’-O-アジドメチル-dNTPを合成で使用するか、Liu et al(上記で引用)に記載のように調製することができる。第2のポリヌクレオチド(427)と同様に、BW31のすぐ3’側にデオキシウリジン(432)、5つのデオキシチミジンのセグメント(434)、および最後のビオチン化されたddU(436)が存在する。第1および第2の固体支持体の量を、50μLの反応体積中の切断されたプローブの濃度が.04~0.4μMであるように選択し、プライマーは、プローブ濃度のおよそ2倍で存在するであろう。脱ブロック、洗浄、TdTベースのヌクレオシド三リン酸取り込み、および洗浄のサイクルによって合成反応を進め、ここで、試薬の添加および除去工程を、磁性支持体の磁性固定と連携した従来の流動物の送達および吸引を使用して実行する。第1のポリヌクレオチド(428)の合成が完了したときに、Mag et al,Nucleic Acids Research,19(7):1437-1441(1991)およびMonforte et alの米国特許第5830655号(本明細書中で参考として援用される)に開示のように、硝酸銀溶液でホスホロチオアート連結(406)を処理することによって第1および第2のポリヌクレオチド(428および427)の両方を第1の支持体(402)および第2の支持体(404)から切断する。かかる切断の後、ストレプトアビジンでコーティングした第3の支持体(442)(例えば、磁性アガロースビーズ)を反応混合物に添加し、その結果、放出された第1および第2のポリヌクレオチド(438)が捕捉される。捕捉されたポリヌクレオチド(438)を、磁場を印加した反応容器内に保持した磁性支持体(442、402、および404)で洗浄することができ、その後にプローブ(424)ならびに順方向(415)および逆方向(417)プライマーを、従来のウラシルデオキシグルコシラーゼ反応後のエンドヌクレアーゼVIIIおよび3’-ホスファターゼでの処理を使用したデオキシウリジン(deoxyurindine)部位(408、416、418、および432)でのポリヌクレオチドの切断によって放出させる(450)。切断酵素の熱不活化後、標的および増幅試薬を添加し(460)、Taqポリメラーゼを使用した従来の定量的PCRを行い(470)、それにより、プローブ(424)からFAM分子(425)が放出される。
【0068】
第1の支持体(402および404)のみを使用した別の実施形態を、図4Dに示す。完了したポリヌクレオチド(427および428)を捕捉するために第2の支持体(442)を使用する代わりに(例えば、使用した試薬の除去を容易にするために)、図4Dの実施形態では、第1のポリヌクレオチド(428)の合成中の誤伸長を防止するために第2のポリヌクレオチド(427)をキャッピングし、イニシエーター内の切断可能な連結「W」(406)を排除し;第1および第2のポリヌクレオチドの両方の末端ヌクレオチド上の捕捉部分を排除する。プローブポリヌクレオチド(475)上のキャッピング部分(482)は、増幅中にプローブ配列の見かけ上の伸長を防止するために結合している。合成の完了後(472)、合成試薬を除去または不活化することができる一方で、第1および第2のポリヌクレオチド(475および477)は支持体(402および404)に依然として結合しており、その後に所望の順方向プライマー(415)および逆方向プライマー(417)およびプローブ(424)を、単一の切断反応で放出させることができる。この例では、単一の切断反応は、従来のUDG/エンドヌクレアーゼVIII処理を用いて第1および第2のポリヌクレオチド(475および477)をデオキシウリジン(474、476、478、および480)で切断してプライマーおよびプローブを放出させる。放出されたプライマーを3’-ホスファターゼで処理して伸長可能な遊離3’-ヒドロキシルを生成し、その後に切断酵素およびホスファターゼを、例えば、熱不活化によって不活化し、標的および増幅試薬を添加してqPCRを行うことができる。
実施例2:qPCRのためのプライマーおよびTaqmanプローブの連続合成
【0069】
この実施例では、図4Dに類似のプライマーおよびプローブを、単一の支持体(図4Eの489)上で連続的に合成する。上記のように、プローブ(491)およびプライマー(492および493)を支持体(489)から切断することを可能にするための末端dU(491a)を有するイニシエーター(488)を提供する。あるいは、切断後に遊離3’-ヒドロキシルが遊離する光切断性の連結を、dUの代わりに提供することができる(例えば、本明細書中で参考として援用されるUrdea et alの米国特許第5367066号)。さらなる切断可能なヌクレオチド(例えば、示したdU、490cおよび490a)または切断可能な連結が順方向プライマー(492)、逆方向プライマー(493)、およびプローブ(491)を分離している。鎖を上記のように合成し、ここで、この鎖は、プローブ(491)の3’末端がPCRでの使用時の誤伸長を防止するためのジデオキシU部分などのキャッピング剤で終結している。蛍光レポーター(495)およびクエンチャー(496)を、上記のように直接または間接的に付加することができる。合成の完了後(497)、合成試薬を除去または不活化し、プライマーおよびプローブを従来のUDG/エンドヌクレアーゼVIII処理を使用して放出させることができる。放出されたプライマーを3’-ホスファターゼで処理して伸長可能な遊離3’-ヒドロキシルを生成し、その後に切断酵素およびホスファターゼを、例えば、熱不活化によって不活化し、標的および増幅試薬を添加してqPCRを行うことができる。
【0070】
定義
本明細書中で別段の具体的な定義が無い限り、本明細書中で使用された核酸化学、生化学、遺伝学、および分子生物学の用語および記号は、当該分野の標準的な論文およびテキストに従う(例えば、Kornberg and Baker,DNA Replication,Second Edition(W.H.Freeman,New York,1992);Lehninger,Biochemistry,Second Edition(Worth Publishers,New York,1975);Strachan and Read,Human Molecular Genetics,Second Edition(Wiley-Liss,New York,1999))。
【0071】
「増幅する(amplify)」、「増幅する(amplifies)」、「増幅した(amplified)」、「増幅(amplification)」は、本明細書中で使用される場合、一般に、1またはそれを超えるコピーが標的ポリヌクレオチドまたはその一部から作製される任意の過程を指す。ポリヌクレオチド(例えば、DNAおよび/またはRNA)を増幅する種々の方法が利用可能であり、そのうちのいくつかの例を本明細中に記載している。増幅は、線形増幅、指数関数的増幅であり得るか、多相増幅過程において線形期および指数関数期の両方を含み得る。増幅方法は、温度変化(熱変性工程など)を含み得るか、熱変性を必要としない等温過程であり得る。「アンプリコン」は、ポリヌクレオチド増幅反応の産物;すなわち、一本鎖または二本鎖であり得、1またはそれを超える出発配列から複製されるポリヌクレオチドのクローン集団を意味する。「増幅(amplifying)」は、増幅反応の実施によるアンプリコンの産生を意味する。1またはそれを超える出発配列は、同一配列の1またはそれを超えるコピーであり得るか、異なる配列の混合物であり得る。好ましくは、アンプリコンは、単一の出発配列の増幅によって形成される。アンプリコンは、種々の増幅反応によって産生され得、前記反応の産物は1またはそれを超える出発核酸または標的核酸の複製物を含む。1つの態様では、アンプリコンを産生する増幅反応は、反応物の塩基対合において「テンプレート駆動」され、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドのいずれかは、テンプレートポリヌクレオチド中に、反応産物の作出に必要な相補物を有する。1つの態様では、テンプレート駆動反応は、核酸ポリメラーゼを用いたプライマー伸長または核酸リガーゼを用いたオリゴヌクレオチドライゲーションである。かかる反応には、本明細書中で参考として援用される以下の参考文献に開示されたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リニアポリメラーゼ反応、核酸配列ベースの増幅(NASBA)、およびローリングサークル増幅などが含まれるが、これらに限定されない:Mullis et al,米国特許第4,683,195号;同第4,965,188号;同第4,683,202号;同第4,800,159号(PCR);Gelfand et al,米国特許第5,210,015号(「taqman」プローブを用いたリアルタイムPCR);Wittwer et al,米国特許第6,174,670号;Kacian et al,米国特許第5,399,491号(「NASBA」);Lizardi,米国特許第5,854,033号;Aono et al,特開平4-262799(ローリングサークル増幅)など。1つの態様では、本発明のアンプリコンは、PCRによって生成される。増幅反応が進行するにつれ反応産物を測定可能な検出化学を利用可能な場合、増幅反応は「リアルタイム」増幅(例えば、下記の「リアルタイムPCR」またはLeone et al,Nucleic Acids Research,26:2150-2155(1998)および類似の参考文献に記載の「リアルタイムNASBA」)であり得る。本明細書中で使用される場合、用語「増幅(amplifying)」は、増幅反応を行うことを意味する。「反応混合物」は、反応を実施するのに必要な全ての反応物(反応中にpHを選択したレベルに維持するための緩衝剤、塩類、補因子、および捕捉剤(scavenger)などが含まれ得るが、これらに限定されない)を含む溶液を意味する。
【0072】
「捕捉部分」は、典型的には、特異的結合対の1つのメンバーである。「特異的結合」は、不均一な(不均質の)試料中に同時に存在する2つの分子種が試料中の他の分子種への結合に優先して相互に結合する能力を指す。典型的には、特異的な結合相互作用は、偶発的な結合相互作用より少なくとも2倍、より典型的には少なくとも10倍、しばしば少なくとも100倍区別されるであろう。典型的には、特異的結合反応の親和性またはアビディティは、少なくとも約10-1であり、少なくとも10-1~少なくとも約10-1、しばしばそれを超える(1010-1~1012-1までの親和性またはアビディティが含まれる)を使用する。句「特異的結合対」は、特異的結合を示す分子対、典型的には生体分子対を指す。オリゴヌクレオチドの捕捉のために使用することができる広範な特異的結合対のメンバーが当該分野で公知である。これらのうちで、口語的に「ハプテン」と呼ばれる抗原性と無関係の小型の捕捉部分が含まれる。かかるハプテンには、ビオチン、ジゴキシゲニン、およびジニトロフェニルが含まれる。ビオチンを、アビジン、ストレプトアビジン、キャプトアビジン、ニュートラビジン、または抗ビオチン抗体を使用して捕捉することができる。ジゴキシゲニンおよびジニトロフェニルを、各ハプテンに特異的な抗体を使用して捕捉することができる。
【0073】
2またはそれを超える異なるTdT中のアミノ酸の位置に関する「機能的に等価な」は、(i)それぞれの位置のアミノ酸がTdTの活性において機能的に同一の役割を果たすこと、および(ii)それぞれのTdTのアミノ酸配列中の相同なアミノ酸の位置にアミノ酸が存在することを意味する。配列アラインメントおよび/または分子モデリングに基づいて、2またはそれを超える異なるTdTのアミノ酸配列中の位置が等価であるか相同なアミノ酸残基を同定することが可能である。いくつかの実施形態では、機能的に等価なアミノ酸の位置は、進化的に関連する種(例えば、属または科など)のTdTのアミノ酸配列の間で保存された配列モチーフに属する。かかる保存された配列モチーフの例は、Motea et al,Biochim.Biophys.Acta.1804(5):1151-1166(2010);Delarue et al,EMBO J.,21:427-439(2002);および類似の参考文献に記載されている。
【0074】
「キット」は、本発明の方法を実施するための材料または試薬を送達するための任意の送達系を指す。反応アッセイの文脈では、かかる送達系は、反応試薬(例えば、適切な容器中の相互作用による消光標識などの標識、蛍光標識結合剤、酵素、消光剤など)および/または補助材料(例えば、緩衝液、アッセイ実施のための説明書など)のある場所から別の場所への貯蔵、輸送、または送達が可能な系および/または化合物(希釈剤、界面活性剤、またはキャリアなど)を含む。例えば、キットは、関連する反応試薬および/または補助材料を含む1またはそれを超える包材(例えば、箱)を含む。かかる容器は、意図するレシピエントに一緒にまたは個別に送達され得る。例えば、第1の容器は、アッセイで用いる酵素を含み得る一方で、第2の、またはそれを超える容器は相互作用による消光標識および/または消光剤を含む。
【0075】
本明細書中で互換的に使用される「マイクロフルイディクス」デバイスまたは「ナノフルイディクス」デバイスは、各々が、試料(ひいては、目的の細胞分析物または分子分析物を含有し得るか含み得る)、試薬、希釈剤(dilutant)、またはバッファーなどを含む少量の流体を捕捉、移動、混合、分注、または解析するための統合システムを意味する。一般に、「マイクロフルイディクス」および「ナノフルイディクス」という用語は、デバイスのサイズおよび取り扱われる流体の体積の規模が異なることを示す。いくつかの実施形態では、マイクロ流体デバイスのフィーチャは、断面寸法が数百平方マイクロメートル未満であり、細管寸法の(例えば、最大の断面寸法が約500μmから約0.1μmの)通路(すなわち、流路)を有する。いくつかの実施形態では、マイクロフルイディクスデバイスの容積容量は、1μLから数nL(例えば、10~100nL)の範囲である。ナノフルイディクスデバイスにおける対応するフィーチャ(すなわち、構造)の寸法は、典型的には、マイクロフルイディクスデバイスの寸法より1~3桁小さい。当業者は、特定の適用の環境から、どの次元が適切であるかを知るであろう。いくつかの実施形態では、マイクロ流体デバイスまたはナノ流体デバイスは、1またはそれを超えるチャンバー、ポート、および流路を有し、これらは相互接続および流体連通しており、1またはそれを超える分析反応または分析過程を、単独または支援機能を提供する器具または機器(試料の導入、流体および/または試薬の駆動手段(陽圧もしくは陰圧または音響エネルギーなど)、温度制御、検出システム、ならびにデータ収集および/または統合システムなど)と連携して行うように設計されている。いくつかの実施形態では、マイクロフルイディクスデバイスおよびナノフルイディクスデバイスは、弁、ポンプ、フィルター、および内壁上の特殊機能コーティング(例えば、試料の構成成分または反応物の吸着を防止し、電気浸透による試薬の移動を容易にするため)などをさらに含み得る。かかるデバイスは、ガラス、プラスチック、または他の固体ポリマー材料であり得、かつ特に光学的方法または電気化学的方法を介した試料および試薬の移動の検出およびモニタリングを容易にするための平面形式を有し得る固体基板中の統合デバイスとして作製され得る。いくつかの実施形態では、かかるデバイスは、使い捨て可能である。いくつかの実施形態では、マイクロ流体デバイスおよびナノ流体デバイスには、不混和流体(軽油など)中に浸漬した液滴(水性液滴など)を形成し、その移動、混合、分注、および解析を制御するデバイスが含まれる。マイクロフルイディクスデバイスおよびナノフルイディクスデバイスの作製および操作は、参考として援用される以下の参考文献によって例示されるように、当該分野で周知である:Ramsey,米国特許第6,001,229号;同第5,858,195号;同第6,010,607号;および同第6,033,546号;Soane et al,米国特許第5,126,022号および同第6,054,034号;Nelson et al,米国特許第6,613,525号;Maher et al,米国特許第6,399,952号;Ricco et al,国際特許公開WO02/24322号;Bjornson et al,国際特許公開WO99/19717号;Wilding et al,米国特許第5,587,128号;同第5,498,392号;Sia et al,Electrophoresis,24:3563-3576(2003);Unger et al,Science,288:113-116(2000);Enzelberger et al,米国特許第6,960,437号;Cao,“Nanostructures&Nanomaterials:Synthesis,Properties&Applications,”(Imperial College Press,London,2004);Haeberle et al,LabChip,7:1094-1110(2007);およびCheng et al,Biochip Technology(CRC Press,2001)など。
【0076】
互換的に使用される「変異体」または「バリアント」は、本明細書中に記載の天然または基準のTdTポリペプチドに由来し、かつ1またはそれを超える位置に改変または変更(すなわち、置換、挿入、および/または欠失)を含むポリペプチドを指す。バリアントを、当該分野で周知の種々の技術によって得ることができる。特に、野生型タンパク質をコードするDNA配列を変更するための技術の例には、部位特異的変異誘発、ランダム変異誘発、配列者フリング、および合成オリゴヌクレオチド構築が含まれるが、これらに限定されない。変異誘発活性は、タンパク質の(本発明の場合、ポリメラーゼの)配列中の1つまたは数個のアミノ酸の欠失、挿入、または置換からなる。以下の用語法を用いて置換を命名する:L238Aは、基準(すなわち野生型)配列の238位のアミノ酸残基(ロイシン、L)がアラニン(A)に変更されていることを示す。A132V/I/Mは、親配列の132位のアミノ酸残基(アラニン、A)が以下のアミノ酸のうちの1つで置換されていることを示す:バリン(V)、イソロイシン(I)、またはメチオニン(M)。置換は、保存的置換または非保存的置換であり得る。保存的置換の例は、塩基性アミノ酸(アルギニン、リジン、およびヒスチジン)、酸性アミノ酸(グルタミン酸、およびアスパラギン酸)、極性アミノ酸(グルタミン、アスパラギン、およびトレオニン)、疎水性アミノ酸(メチオニン、ロイシン、イソロイシン、システイン、およびバリン)、芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシン)、および小型のアミノ酸(グリシン、アラニン、およびセリン)のグループ内にある。
【0077】
「核酸配列ベースの増幅」または「NASBA」は、逆転写酵素(通常、トリ骨髄芽球症ウイルス(AMV)逆転写酵素)、RNaseH、およびRNAポリメラーゼ(通常、T7 RNAポリメラーゼ)の同時活動に基づいた増幅反応であり、2つのオリゴヌクレオチドプライマーを使用し、従来の条件下で90~120分間に10~1012倍の範囲で標的配列を増幅することができる。NASBA反応では、核酸は、核酸が一本鎖であり、かつプライマー結合部位を含む場合に限った増幅反応のテンプレートである。NASBAが等温性であるので(通常、上記酵素を使用して41℃で行う)、試料調製手順において二本鎖DNAの変性が防止される場合に、一本鎖RNAを特異的に増幅することができる。すなわち、複雑なゲノムDNAに原因する偽陽性の結果を得ることなく二本鎖DNAバックグラウンド中の一本鎖RNA標的を検出することが可能であり、これはRT-PCRなどの他の技術と対照的である。分子指標などの反応に適合する蛍光指示薬の使用により、NASBAを、アンプリコンのリアルタイム検出を使用して行うことができる。分子指標は、一方の端に蛍光標識を有し、他方の端にクエンチャーを有するステム・アンド・ループ構造のオリゴヌクレオチド(例えば、Tyagi and Kramer(上記で引用)に開示の5’-フルオレセインおよび3’-(4-(ジメチルアミノ)フェニル)アゾ)安息香酸(すなわち、3’-DABCYL))である。例示的な分子標識は、分子標識が反応温度(例えば、41℃)で標的配列と安定なハイブリッドを形成することができるような6つのヌクレオチド(例えば、4つのGまたはCおよび2つのAまたはT)の相補ステム鎖、および約20ヌクレオチドの標的特異的ループを有し得る。典型的なNASBA反応混合物は、80mM Tris-HCl(pH8.5)、24mM MgCl、140mM KCl、1.0mM DTT、2.0mMの各dNTP、4.0mMの各ATP、UTP、およびCTP、3.0mM GTP、および1.0mM ITPを30%DMSO中に含む。プライマー濃度は0.1μMであり、分子標識濃度は40nMである。酵素混合物は、375ソルビトール、2.1μg BSA、0.08U RNaseH、32U T7 RNAポリメラーゼ、および6.4U AMV逆転写酵素である。反応物は、総反応体積20μLについて、5μL試料、10μL NASBA反応混合物、および5μL酵素混合物を含み得る。リアルタイムNASBA反応を実施するためのさらなる指針は、参考として援用される以下の参考文献に開示されている:Polstra et al,BMC Infectious Diseases,2:18(2002);Leone et al,Nucleic Acids Research,26:2150-2155(1998);Gulliksen et al,Anal.Chem.,76:9-14(2004);Weusten et al,Nucleic Acids Research,30(6)e26(2002);Deiman et al,Mol.Biotechnol.,20:163-179(2002)。ネスティッドNASBA反応を、ネスティッドPCRと同様に行う;すなわち、第1のNASBA反応のアンプリコンは、新規のプライマーセット(そのうちの少なくとも1つが第1のアンプリコンの内側の位置に結合する)を使用した第2のNASBA反応のための試料となる。
【0078】
「ポリメラーゼ連鎖反応」または「PCR」は、DNAの相補鎖の同時プライマー伸長による特異的DNA配列のin vitro増幅のための反応を意味する。換言すれば、PCRは、プライマー結合部位に隣接する標的核酸の複数のコピーまたは複製物を作製するための反応であり、かかる反応は、以下の工程の1回またはそれを超える回数の反復を含む:(i)標的核酸を変性させる工程、(ii)プライマーをプライマー結合部位にアニールする工程、および(iii)ヌクレオシド三リン酸の存在下で核酸ポリメラーゼによってプライマーを伸長させる工程。通常は、反応は、サーマルサイクラー装置における各工程のために最適化された異なる温度でサイクリングする。特定の温度、各工程の持続時間、および工程間の変化の速度は、例えば、以下の参考文献によって例示される当業者に周知の多数の要因に依存する:それぞれ、McPherson et al,editors,PCR:A Practical ApproachおよびPCR2:A Practical Approach(IRL Press,Oxford,1991 and 1995)。例えば、Taq DNAポリメラーゼを使用した従来のPCRでは、二本鎖標的核酸は、90℃を超える温度で変性され、プライマーは、50~75℃の範囲の温度でアニールされ、プライマーは、72~78℃の範囲の温度で伸長され得る。用語「PCR」は、反応の派生形(RT-PCR、リアルタイムPCR、ネスティッドPCR、定量的PCR、およびマルチプレックスドPCRなどが含まれるが、これらに限定されない)を包含する。反応体積は、数百ナノリットル(例えば、200nL)から数百μL(例えば、200μL)までの範囲である。いくつかの実施形態では、10~100μLの反応体積を使用し;いくつかの実施形態では、20~50μLの反応体積を使用する。「リアルタイムPCR」は、反応産物(すなわち、アンプリコン)の量を、反応の進行とともにモニタリングするPCRを意味する。リアルタイムPCRには、主に反応産物をモニタリングするために使用される検出化学の相違によって多数の形態がある(例えば、Gelfand et alの米国特許第5,210,015号(「taqman」);Wittwer et alの米国特許第6,174,670号および同第6,569,627号(挿入色素);Tyagi et alの米国特許第5,925,517号(分子標識);これらの特許は、本明細書中で参考として援用される)。リアルタイムPCRの検出化学は、Mackay et al,Nucleic Acids Research,30:1292-1305(2002)(これも本明細書中で参考として援用される)で概説されている。「ネスティッドPCR」は、第1のPCRのアンプリコンが新規のプライマーセット(そのうちの少なくとも1つが第1のアンプリコンの内側の位置に結合する)を使用した第2のPCRのための試料となる2段階PCRを意味する。本明細書中で使用される場合、ネスティッド増幅反応に関連する「最初のプライマー」は、第1のアンプリコンを生成するために使用されるプライマーを意味し、「第2のプライマー」は、第2のネスティッドアンプリコンを生成するために使用される1またはそれを超えるプライマーを意味する。「マルチプレックスドPCR」は、同一の反応混合物中に複数の標的配列(または単一の標的配列および1またはそれを超える基準配列)を同時に含むPCRを意味する(例えば、Bernard et al,Anal.Biochem.,273:221-228(1999)(二色リアルタイムPCR)。通常は、増幅される各配列について個別のプライマーセットを使用する。典型的には、マルチプレックスPCRにおける標的配列数は、2~10、または2~6、またはそれを超える、典型的には、2~4個の範囲である。「定量的PCR」は、試料または標本中の1またはそれを超える特異的標的配列の存在量を測定するように設計されたPCRを意味する。定量的PCRは、かかる標的配列の絶対量および相対量の両方を含む。個別または標的配列と共にアッセイされ得る1またはそれを超える基準配列を使用して定量的に測定する。基準配列は、試料または検体に対して内因性または外因性であり得、後者の場合、1またはそれを超える競合テンプレートを含み得る。典型的な内因性基準配列は、以下の遺伝子の転写物のセグメントを含む:β-アクチン、GAPDH、β-ミクログロブリン、およびリボゾームRNAなど。定量的PCRの技術は、参考として援用される以下の参考文献に例示のように当業者に周知である:Freeman et al,Biotechniques,26:112-126(1999);Becker-Andre et al,Nucleic Acids Research,17:9437-9447(1989);Zimmerman et al,Biotechniques,21:268-279(1996);Diviacco et al,Gene,122:3013-3020(1992);およびBecker-Andre et al,Nucleic Acids Research,17:9437-9446(1989)など。「逆転写PCR」または「RT-PCR」は、標的RNAを相補一本鎖DNAに変換する逆転写反応が先行し、次いで、増幅するPCRを意味する(例えば、Tecott et alの米国特許第5,168,038号(この特許は本明細書中で参考として援用される)。RNAテンプレートを反応混合物に添加し、5’末端上にT7プロモーター領域を有する第1のプライマーは、テンプレートの3’末端の相補部位に結合する。RT-PCRでは、逆転写酵素は、プライマーの3’末端が伸長し、RNAテンプレートに沿って上流に移動する逆相補DNA鎖(「第1のDNA鎖」)を合成する。RNAseHは、DNA-RNA化合物由来のRNAテンプレートを破壊する(RNAseHは、RNA-DNAハイブリッド内のRNAのみを破壊するが、一本鎖RNAを破壊しない)。第2のプライマーは、(アンチセンス)DNA鎖の5’末端に結合する。逆転写酵素は、結合したプライマーから別のDNA鎖(「第2のDNA鎖」)を再度合成し、二本鎖DNAが得られる。T7 RNAポリメラーゼは、二本鎖上のプロモーター領域に結合する。T7 RNAポリメラーゼは3’から5’への方向でのみ転写することができるので、センスDNAが転写され、アンチセンスRNAが産生される。これを繰り返し、ポリメラーゼは、このテンプレートの相補RNA鎖を連続的に産生し、それにより、増幅される。ここで前の工程に類似したサイクル期を開始することができる。しかしながら、ここで、第2のプライマーは(-)RNAに最初に結合する。逆転写酵素は、ここで、(+)cDNA/(-)RNA二重鎖を産生する。RNAseHはRNAおよび第1のプライマーを再度分解し、T7プロモーター領域を有するものは、ここで、一本鎖+(cDNA)に結合する。逆転写酵素は、ここで、相補(-)DNAを産生し、それによりdsDNA二重鎖が作製される。工程6(上記)に非常に類似して、T7ポリメラーゼはプロモーター領域に結合し、RNAを産生し、サイクルを完了する。
【0079】
「ポリヌクレオチド」または「オリゴヌクレオチド」は、互換的に使用され、各々は、ヌクレオチド単量体またはそのアナログの線状ポリマーを意味する。ポリヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドを作り上げる単量体は、規則的な単量体と単量体の相互作用パターン(ワトソン・クリックタイプの塩基対合、塩基の積み重ね、フーグスティーンまたは逆フーグスティーンタイプの塩基対合など)によって天然のポリヌクレオチドに特異的に結合することができる。かかる単量体およびそのヌクレオシド間連結は、天然に存在し得るか、そのアナログ(例えば、天然に存在するアナログまたは天然に存在しないアナログ)であり得る。天然に存在しないアナログには、PNA、ホスホロチオアートヌクレオチド間連結、標識(フルオロフォアなど)を結合することが可能な連結基を含む塩基、またはハプテンなどが含まれ得る。オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを使用するために酵素的プロセシング(ポリメラーゼによる伸長、またはリガーゼによるライゲーションなど)を必要とする場合はいつでも、当業者は、前述の例では、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドが任意の位置またはいくつかの位置にヌクレオチド間連結、糖部分、または塩基のある特定のアナログを含まないと考えられると理解するであろう。ポリヌクレオチドのサイズ範囲は、典型的には、数個の単量体単位(例えば、5~40個)(ポリヌクレオチドが、通常、「オリゴヌクレオチド」と呼ばれる場合)から、数千の単量体単位までである。ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドが文字(大文字または小文字)の配列(「ATGCCTG」など)によって表される場合はいつでも、別段の指示がない限り、または文脈から明白でない限り、ヌクレオチドが左から右に5’から3’への順序で並び、かつ「A」がデオキシアデノシンを示し、「C」がデオキシシチジンを示し、「G」がデオキシグアノシンを示し、「T」がチミジンを示し、「I」がデオキシイノシンを示し、「U」がウリジンを示すと理解されるであろう。他に断りのない限り、用語法および原子番号の慣習は、Strachan and Read,Human Molecular Genetics 2(Wiley-Liss,New York,1999)または類似の参考文献に開示のものに従うであろう。通常、ポリヌクレオチドは、ホスホジエステル結合によって連結された4つの天然のヌクレオシド(例えば、DNAについては、デオキシアデノシン、デオキシシチジン、デオキシグアノシン、デオキシチミジン、またはRNAについてはこれらのリボース対応物)を含む;しかしながら、ポリヌクレオチドは、例えば、改変された塩基、糖、またはヌクレオチド間連結を含む非天然ヌクレオチドアナログも含み得る。酵素が活性のための特異的なオリゴヌクレオチド基質またはポリヌクレオチド基質の要件(例えば、一本鎖DNAまたはRNA/DNA二重鎖など)を有する場合、オリゴヌクレオチド基質またはポリヌクレオチド基質に適切な組成物の選択は、特に、Sambrook et al,Molecular Cloning,Second Edition(Cold Spring Harbor Laboratory,New York,1989)などの専門書および同様の参考文献由来のガイダンスを用いて、十分に当業者の知識の範囲内にあることが当業者に明らかである。同様に、オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドは、一本鎖形態または二本鎖形態のいずれか(すなわち、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの二重鎖およびその各々の相補物)を指し得る。この用語を使用した文脈からどちらかの形態または両方の形態が意図されることが当業者に明らかであろう。
【0080】
「プライマー」は、ポリヌクレオチドテンプレートと二重鎖が形成されると、核酸合成の開始点として作用し、テンプレートに沿ってその3’末端から伸長し、その結果、伸長した二重鎖を形成することができる天然または合成のオリゴヌクレオチドを意味する。プライマーの伸長は、通常、核酸ポリメラーゼ(DNAポリメラーゼまたはRNAポリメラーゼなど)を使用して行う。伸長過程で付加されたヌクレオチド配列は、テンプレートポリヌクレオチドの配列によって決定される。通常は、プライマーは、DNAポリメラーゼによって伸長される。プライマーの長さは、通常は、14~40ヌクレオチドの範囲、または18~36ヌクレオチドの範囲である。プライマーは、種々の核増幅反応(例えば、単一のプライマーを使用した線形増幅反応)、または2またはそれを超えるプライマーを使用したポリメラーゼ連鎖反応で使用される。特定の適用のためのプライマーの長さおよび配列を選択するための指針は、参考として援用される以下の参考文献によって証明されるように、当業者に周知である:Dieffenbach,editor,PCR Primer:A Laboratory Manual,2nd Edition(Cold Spring Harbor Press,New York,2003)。
【0081】
「配列同一性」は、2つの配列(2つのポリペプチド配列または2つのポリヌクレオチド配列など)の間の適合(例えば、同一のアミノ酸残基)の数(または分率、通常、百分率で表す)を指す。配列同一性は、配列ギャップを最小にしながら重複および同一性が最大になるようにアラインメントしたときの配列の比較によって決定される。特に、配列同一性は、2つの配列の長さに応じていくつかある数学的なグローバルまたは局所のアラインメントアルゴリズムのうちのいずれかを使用して決定され得る。類似の長さの配列は、全長にわたって配列を最適にアラインメントするグローバルアラインメントアルゴリズム(例えば、Needleman and Wunschアルゴリズム;Needleman and Wunsch,1970)を使用してアラインメントすることが好ましく、一方で、実質的に異なる長さの配列は、局所アラインメントアルゴリズム(例えば、Smith and Watermanアルゴリズム(Smith and Waterman,1981)またはAltschulアルゴリズム(Altschul et al.,1997;Altschul et al.,2005))を使用してアラインメントすることが好ましい。アミノ酸配列の同一性パーセントを決定するためのアラインメントを、当該分野の技術の範囲内の種々の方法で(例えば、http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/またはttp://www.ebi.ac.uk/Tools/emboss/などのインターネットウェブサイトで利用可能な公的に利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して)行うことができる。当業者は、アラインメントを測定するのに適切なパラメーター(比較される配列の全長にわたって最大にアラインメントするために必要とされる任意のアルゴリズムが含まれる)を決定することができる。本明細書中の目的のために、アミノ酸配列の同一性パーセント値は、Needleman-Wunschアルゴリズムを使用して2つの配列の最適なグローバルアラインメントを作出するペアワイズ配列アラインメントプログラムEMBOSS Needleを使用して生成された値を指し、ここで全ての検索パラメーターは、デフォルト値(すなわち、スコアリング行列=BLOSUM62、ギャップオープン=10、ギャップ伸長=0.5、エンドキャップペナルティ=偽、エンドキャップオープン=10、およびエンドキャップ伸長=0.5)に設定されている。
【0082】
「配列タグ」(または「タグ」)または「バーコード」は、ポリヌクレオチドまたはテンプレート分子に結合され、反応または一連の反応においてポリヌクレオチドまたはテンプレートを同定および/または追跡するために使用されるオリゴヌクレオチドを意味する。配列タグは、ポリヌクレオチドまたはテンプレートの3’末端または5’末端に結合され得るか、かかるポリヌクレオチドまたはテンプレートの内部に挿入されて、線状コンジュゲート(時折、本明細書中で、「タグ化ポリヌクレオチド」、または「タグ化テンプレート」、または「タグ-ポリヌクレオチドコンジュゲート」、または「タグ-分子コンジュゲート」などと呼ばれる)を形成し得る。配列タグのサイズおよび組成は、大きく異なり得る;本明細書中で参考として援用される以下の参考文献は、特定の実施形態に適切な配列タグのセットを選択するための指針を提供している:Brenner,米国特許第5,635,400号;Brenner and Macevicz,米国特許第7,537,897号;Brenner et al,Proc.Natl.Acad.Sci.,97:1665-1670(2000);Church et al,欧州特許第0303459号;Shoemaker et al,Nature Genetics,14:450-456(1996);Morris et al,欧州特許出願公開第0799897A1号;およびWallace,米国特許第5,981,179号など。配列タグの長さおよび組成を大きく変動させることができ、特定の長さおよび/または組成の選択は、いくつかの要因(例えば、ハイブリッド形成反応を介してまたは酵素反応(配列決定など)を介してリードアウトを生成するためのタグの使用方法;例えば、蛍光色素などで標識するかどうか;一連のポリヌクレオチドなどを明確に同定するために必要な識別可能オリゴヌクレオチドタグの数、および信頼できる同定(例えば、クロスハイブリッド形成または配列決定エラーに由来する誤認が存在しないこと)を確実にするためにセットのタグがどの程度異なる必要があるか、が含まれるが、これらに限定されない)に依存する。1つの態様では、各々の配列タグの長さは、それぞれ、2から36ヌクレオチドまで、または4から30ヌクレオチドまで、または8から20ヌクレオチドまで、または6から10ヌクレオチドまでの範囲内であり得る。1つの態様では、セットの各配列タグが、同一セットの他のあらゆるタグにおいて少なくとも2つの塩基が異なる固有のヌクレオチド配列を有する配列タグのセットが使用される;別の態様では、セットの各タグの配列が同一セットの他のあらゆるタグの配列と少なくとも3つの塩基が異なる配列タグのセットが使用される。
【0083】
「置換」は、あるアミノ酸残基が別のアミノ酸残基で置き換えられることを意味する。好ましくは、用語「置換」は、アミノ酸残基の、天然に存在する標準的な20種のアミノ酸残基、稀な天然に存在するアミノ酸残基(例えば、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジン、アロヒドロキシリジン、6-N-メチルリジン(6-N-methylysine)、N-エチルグリシン、N-メチルグリシン、N-エチルアスパラギン、アロ-イソロイシン、N-メチルイソロイシン、N-メチルバリン、ピログルタミン、アミノ酪酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン)、およびしばしば合成で作製される天然に存在しないアミノ酸残基(例えば、シクロヘキシル-アラニン)から選択される別のアミノ酸残基による置き換えを指す。好ましくは、用語「置換」は、あるアミノ酸残基の、天然に存在する標準的な20種のアミノ酸残基から選択される別のアミノ酸残基による置き換えを指す。記号「+」は、置換の組み合わせを示す。アミノ酸を、本明細書において以下の命名法に従ってその1文字表記または3文字表記によって示す:A:アラニン(Ala);C:システイン(Cys);D:アスパラギン酸(Asp);E:グルタミン酸(Glu);F:フェニルアラニン(Phe);G:グリシン(Gly);H:ヒスチジン(His);I:イソロイシン(Ile);K:リジン(Lys);L:ロイシン(Leu);M:メチオニン(Met);N:アスパラギン(Asn);P:プロリン(Pro);Q:グルタミン(Gln);R:アルギニン(Arg);S:セリン(Ser);T:トレオニン(Thr);V:バリン(Val);W:トリプトファン(Trp)、およびY:チロシン(Tyr)。本明細書では、以下の用語法を用いて置換を命名する:L238Aは、親配列の238位のアミノ酸残基(ロイシン、L)がアラニン(A)に変更されていることを示す。A132V/I/Mは、親配列の132位のアミノ酸残基(アラニン、A)が以下のアミノ酸のうちの1つによって置換されていることを示す:バリン(V)、イソロイシン(I)、またはメチオニン(M)。置換は、保存的置換または非保存的置換であり得る。保存的置換の例は、塩基性アミノ酸(アルギニン、リジン、およびヒスチジン)、酸性アミノ酸(グルタミン酸、およびアスパラギン酸)、極性アミノ酸(グルタミン、アスパラギン、およびトレオニン)、疎水性アミノ酸(メチオニン、ロイシン、イソロイシン、システイン、およびバリン)、芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシン)、および小型のアミノ酸(グリシン、アラニン、およびセリン)のグループ内にある。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5
【配列表】
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