(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】水素貯蔵システム
(51)【国際特許分類】
F17C 11/00 20060101AFI20240521BHJP
F17C 5/06 20060101ALI20240521BHJP
F17C 13/00 20060101ALI20240521BHJP
C22C 19/03 20060101ALI20240521BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20240521BHJP
H01M 8/0438 20160101ALI20240521BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20240521BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20240521BHJP
【FI】
F17C11/00 C
F17C5/06
F17C13/00 301A
C22C19/03 Z
H01M8/04 J
H01M8/0438
H01M8/0432
H01M8/04746
(21)【出願番号】P 2021562072
(86)(22)【出願日】2020-04-07
(86)【国際出願番号】 EP2020059860
(87)【国際公開番号】W WO2020212197
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2021-12-14
(32)【優先日】2019-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521455006
【氏名又は名称】ジーアールゼット・テクノロジーズ・エスアー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ノリス・ギャランダート
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-332757(JP,A)
【文献】特開2011-052742(JP,A)
【文献】特表2017-515976(JP,A)
【文献】国際公開第2018/154050(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 11/00
F17C 5/06
F17C 13/00
C22C 19/03
H01M 8/04
H01M 8/0438
H01M 8/0432
H01M 8/04746
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が少なくとも1つの金属水素化物(MH)貯蔵材料を含有する複数の水素貯蔵タンク(6、6a、6b)と、前記水素貯蔵タンクに接続された水素ガス流回路(8)と、各水素貯蔵タンク内の圧力及び温度を測定するために配置された圧力センサ(P)及び温度センサ(T)を含む制御システムとを含み、前記水素ガス流回路は、前記複数の水素貯蔵タンクを水素貯蔵システムの入口(10)、出口(12)それぞれに結合する弁(V、V1...Vn)を含み、前記入口及び出口は共通であっても別々であってもよい、水素貯蔵システム(4)であって、少なくとも第1の水素貯蔵タンクが第1の組成の第1の金属水素化物(MH1)を含みかつ少なくとも第2の水素貯蔵タンクが第2の組成の第2の金属水素化物(MH2)を含み、前記第1の金属水素化物が、最小動作圧力(P2)から最大動作圧力(P1)までの圧力動作範囲に対応する第1の最小動作温度(TLP1)から第1の最大動作温度(TLP2)までの温度動作範囲を有し、前記第2の金属水素化物が、前記最小動作圧力(P2)から前記最大動作圧力(P1)までの前記圧力動作範囲に対応する第2の最小動作温度(THP1)から第2の最大動作温度(THP2)までの温度動作範囲を有し、前記第1の最大動作温度は前記第2の最大動作温度より大きく(TLP2>THP2)、前記第2の最小動作温度は前記第1の最小動作温度より小さく(THP1<TLP1)、前記第2の最大動作温度は前記第1の最小動作温度より大きく(THP2>TLP1)、前記第1の水素貯蔵タンク及び前記第2の水素貯蔵タンクは、前記最小動作圧力(P2)から前記最大動作圧力(P1)までの圧力動作範囲に対応する前記第2の最小動作温度(THP1)から前記第1の最大動作温度(TLP2)まで前記水素貯蔵システムのチャージ及びディスチャージを動作させる方式で、前記入口又は出口圧力に応じて第1の水素貯蔵タンク及び第2の水素貯蔵タンク(6a、6b)の間を切り替えるために配置された少なくとも1つの
入口弁(Vnai、Vnbi
)及び少なくとも1つの出口弁(Vnao、Vnbo)を介して並列に一緒に結合され、
前記第1の水素貯蔵タンク及び前記第2の水素貯蔵タンクは、水素貯蔵タンクのグループに組み合わされ、前記水素貯蔵タンクのグループは前記グループの順番に充填及び放出されるように構成され、水素貯蔵タンクの異なるグループの前記弁は、前記水素ガス流回路によって前記弁に及ぼされる異なる圧力(弁開放圧力)において開放すること、前記水素ガス流回路によって前記弁に及ぼされる異なる圧力(弁閉止圧力)において閉止することのそれぞれを行い、一連のそれらの対応する弁開放圧力で水素貯蔵タンクの前記グループを充填するように、及び一連のそれらの対応する弁閉止圧力で水素貯蔵タンクの前記グループを放出するように動作可能であり、前記制御システムは、フルとして測定されるか又は空として測定される前記水素貯蔵タンクの個数の合計の、水素貯蔵タンクの総数に対する割合に基づいて前記水素貯蔵システムのチャージの状態を計算する、ことを特徴とする、水素貯蔵システム。
【請求項2】
前記弁の作動が、電気制御システムによって制御される、請求項1に記載の水素貯蔵システム。
【請求項3】
前記弁は電磁弁である、請求項2に記載の水素貯蔵システム。
【請求項4】
前記弁は、各水素貯蔵タンクに接続された機械式圧力開放弁である、請求項1に記載の水素貯蔵システム。
【請求項5】
水素貯蔵タンクの異なるグループの前記弁は、より高い動作圧力を有する前記水素貯蔵タンクを最初に充填するという優先度の順番に水素貯蔵タンクの前記グループを充填するように、及びより低い動作圧力を有する前記水素貯蔵タンクを最初に放出するという優先度の順番に水素貯蔵タンクの前記グループを放出するように動作可能であり、一方で、幾つかの弁が貯蔵のチャージの間に同時に開いている場合、前記より高い圧力を有する前記水素貯蔵タンクはフルであって水素をそれ以上吸収できず、幾つかの弁がディスチャージの間に同時に開いている場合、前記より低い圧力を有する前記水素貯蔵タンクは空である、請求項1に記載の水素貯蔵システム。
【請求項6】
各グループは、1つの第1の水素貯蔵タンク及び1つの第2の水素貯蔵タンクによって構成されるペアである、請求項5に記載の水素貯蔵システム。
【請求項7】
前記第1の金属水素化物(MH1)は、主に、ファミリーAB5タイプの金属合金を含むか又はそれらから構成され、ここでAは、セリウム、ネオジム及び/又はプラセオジムで部分的に置換され得るランタンであり、Bは、コバルト、アルミニウム、マンガン及び鉄から成るグループから選択される少なくとも1つの成分又は複数の成分で部分的に置換され得るニッケルである、請求項1から6のいずれか一項に記載の水素貯蔵システム。
【請求項8】
前記第1の金属水素化物(MH1)は、
主成分としてのLaNi
5
と、Ce、Co、Mnから成るグループから選択される
任意の追加の元素
とを含むか又はそれらから構成される、請求項7に記載の水素貯蔵システム。
【請求項9】
前記第1の金属水素化物(MH1)はAB5タイプであり、ランタンの割合は0.5から1まで変化し、Niは置換されない、請求項7又は8に記載の水素貯蔵システム。
【請求項10】
前記第1の金属水素化物(MH1)は、主に、ファミリーAB2タイプの金属合金を含むか又はそれらから構成され、ここでAは、ジルコニウムで部分的に置換されてもされなくてもよいチタンであり、Bは、バナジウム、マンガン、鉄、コバルト及びニッケルから成るグループから選択される複数の成分を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の水素貯蔵システム。
【請求項11】
前記第1の金属水素化物(MH1)は、
主成分としてのZrV
2
と、クロム、マンガン及びコバルトから成るグループから選択される
任意の追加の元素
とを含むか又はそれらから構成される、請求項10に記載の水素貯蔵システム。
【請求項12】
前記第2の金属水素化物(MH2)は、ファミリーAB5タイプの金属合金を含むか又はそれらから構成され、ここでAは、セリウム、ネオジム及び/又はプラセオジムで部分的に置換され得るランタンであり、Bは、コバルト、アルミニウム、マンガン及び鉄から成るグループから選択される少なくとも1つの成分又は複数の成分で部分的に置換され得るニッケルである、請求項1から11のいずれか一項に記載の水素貯蔵システム。
【請求項13】
前記第2の金属水素化物(MH2)はAB5タイプであり、ランタンの割合は0.9から1まで変化し、Niは置換されない、請求項12に記載の水素貯蔵システム。
【請求項14】
前記第1の金属水素化物(MH1)はLa
0.5Ce
0.5N
i5であり、前記第2の金属水素化物(MH2)はLa
0.9Ce
0.1Ni
5である、請求項7から9及び12から13のいずれか一項に記載の水素貯蔵システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属水素化物を使用して水素を貯蔵するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素貯蔵は、再生可能エネルギーによる化石燃料の脱炭素化技術における重要段階である。加圧ガス、水素液化及び固体材料内の吸収を含む多様な貯蔵方法が考察されてきた。
【0003】
多くの金属及び合金は、かなりの量の水素を可逆的に吸収することができ、それにより、150kgH2/m3の高い体積密度が到達可能であるので、金属水素化物は、低圧の下での水素の貯蔵に関して高い関心をもたれている。
【0004】
分子状水素は、吸収の前に表面において解離する。2つのH原子は、次いで、脱着するときにH2に再結合する。気体の水素からの水素化物形成の熱力学的側面は、金属水素化物内のH
2の典型的な吸収及び脱着の等温線を示す
図1a及び
図1bに示す圧力-組成等温線によって説明される。材料内の水素吸収反応は、一般的に発熱(熱を発生する)である一方で、水素脱着反応は、その反対に吸熱(熱を吸収する)である。金属水素化物システムの低い圧力及び熱力学は、システムの安全性のレベルを高め、コンテナ不良の場合に、水素はゆっくりと開放され、そのプロセスは、吸熱性脱着反応によって熱的に制限される。
【0005】
金属水素化物貯蔵システムは、このようにして、圧縮された気体の又は液化されたH2貯蔵システムと比較して安全で、信頼性が高く、コンパクトである。さらに、それらは、最小のメンテナンスしか必要とせず、長い寿命を有する。
【0006】
しかしながら、金属水素化物貯蔵は、
図1cに最もよく示されるように、広範囲の濃度が小さいか又は無視できる圧力変化の影響下にある平坦なエリアによって特徴づけられる。他の圧縮又は液化水素貯蔵方法と違って、平坦なエリアにおける圧力測定値は、金属水素化物システムのチャージの状態の正確な決定を可能にしない。
【0007】
チャージの状態の正確な決定は、様々な用途における固体吸収の実装形態に対する主要な制約の1つである。これは、大部分の吸着材料の挙動に起因する。大部分の等温吸着プロセスは、
図1a~
図1cに示す圧力組成等温線(pcI)によって特徴づけられる。一方では、チャージの状態における変化の大部分は、小さい圧力変化しか存在しない平坦なエリアにおいて発生する。これは、
図1cにおいて「チャージの状態の検出は困難」として説明されている。他方では、チャージの小さい変化がシステムの圧力における大きい変化を暗示する2つのゾーンがあり、そこでは、システムは、空に近いか又はフルに近いかのいずれかである。これは、
図1cにおいて「チャージの状態の検出は容易」として説明されている。
【0008】
既存の水素貯蔵方法の別の課題は、動作の制限された温度範囲に関連する。典型的な水素貯蔵システムは、最大の燃料供給圧力(fuelling pressure)PFと最小の水素開放圧力PRとの間で働き、PF>PRである。しかしながら、吸着システムの圧力は、温度に大きく依存する。それゆえ、動作温度の範囲は、前記材料の内在する熱力学特性によって各水素貯蔵材料に対して制限され、したがって、季節貯蔵又は移動車両上の貯蔵など、顕著な温度勾配が発生する多くの用途において、その使用は制限される。
【0009】
燃料供給圧力PFは、例えば、使用される電解槽のタイプによって制限され得る。商用電解槽の典型的な圧送(pressure delivery)は、30barまでであるか、又はそれをわずかに超える。大部分のデバイスは、10~15barまで水素を配送する。必要な最小水素配送圧力は、特定の用途に依存する。例えば、プロトン交換膜燃料電池(PEMFC)の場合、動作圧力は、通常、大気圧に近い。単一の材料に対する動作温度の範囲は、これらの2つの圧力によって規定される。
【0010】
異なる金属水素化物は、異なる動作圧力範囲を有することが知られている。この特性は、所与の用途に対して適切な材料を選択するために利用され得る。この特性は、圧縮ガスタンクを補充するために使用される水素圧縮器においても利用され、それによって、圧縮ガスタンク内の圧力が高くなるにつれて、脱着が低圧金属水素化物タンクから高圧金属水素化物タンクに逐次実行されるように、脱着のために逐次加熱される異なるタンク内に複数の異なる金属水素化物を有することが知られている。そのようなシステムは、特許文献1において記載されている。しかしながら、水素圧縮器は、受動(すなわち、熱的に駆動されない/加熱されない)水素貯蔵タンクと比較して、必要な出口圧力を生成してシステムを制御するために実装される加熱及び冷却システムに必要な、増加する体積及びコストにかんがみて、水素貯蔵にあまり適していないことに留意されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許出願公開第2005/0003246号明細書
【非特許文献】
【0012】
【文献】Schlapbach等,2001年,Nature,414号,353-358頁
【文献】Zuttel,2004年,Naturwissenchaften,91号: 157-172頁
【文献】Young等,2013年,Materials,6号,4574-4608頁
【文献】Lototskyy等,2014年,International Journal of Hydrogen Energy,39,11,5818-5851頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、コンパクトで、安全で、使用及びメンテナンスが容易な水素貯蔵システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
大きい温度動作範囲を有する水素貯蔵システムを提供することは有益である。
【0015】
コスト効率の良い水素貯蔵システムを提供することは有益である。
【0016】
水素発生システム内に容易に実装され得る水素貯蔵システムを提供することは有益である。
【0017】
発明の目的は、同じく、コンパクトで、安全で、使用及びメンテナンスが容易な水素貯蔵システムを有する水素発生システムを提供することである。
【0018】
本発明の目的は、請求項1による水素貯蔵システムを提供することによって達成された。
【0019】
本発明の目的は、請求項16による水素貯蔵システムを提供することによって達成された。
【0020】
加熱手段を採用せずに水素ガスを受動的にディスチャージするための水素貯蔵システムが本明細書で開示され、水素貯蔵システムは、各々が少なくとも1つの金属水素化物(MH)貯蔵材料を含有する複数の水素貯蔵タンクと、貯蔵タンクに接続された水素ガス流回路と、各貯蔵タンク内の圧力及び温度を測定するために配置された圧力センサ(P)及び温度センサ(T)を含む制御システムとを含む。ガス流回路は、前記複数の貯蔵タンクを水素貯蔵システムの入口、出口それぞれに(an inlet, respectively an outlet)結合する弁(V、V1...Vn)を含み、それにより、入口及び出口は共通であっても別々であってもよい。
【0021】
第1の態様によれば、少なくとも第1の材料貯蔵タンクは、第1の組成の第1の金属水素化物(MH1)を含み、少なくとも第2の材料貯蔵タンクは、第2の組成の第2の金属水素化物(MH2)を含む。第1の金属水素化物は、最小動作圧力(P2)から最大動作圧力(P1)までの圧力動作範囲に対応する第1の最小動作温度(TLP1)から第1の最大動作温度(TLP2)までの温度動作範囲を有し、第2の金属水素化物は、前記最小動作圧力(P2)から前記最大動作圧力(P1)までの前記圧力動作範囲に対応する第2の最小動作温度(THP1)から第2の最大動作温度(THP2)までの温度動作範囲を有し、それにより、第1の最大動作温度(TLP2)は第2の最大動作温度(THP2)より大きく、第2の最小動作温度(THP1)は前記第1の最小動作温度(TLP1)より低い。第2の最大動作温度は、前記第1の最小動作温度より大きい(THP2>TLP1)。第1及び第2の貯蔵タンクは、最小動作圧力(P2)から最大動作圧力(P1)までの圧力動作範囲に対応する第2の最小動作温度(THP1)から第1の最大動作温度(TLP2)まで貯蔵システムのチャージ及びディスチャージを動作させる方式で、入口又は出口圧力に応じて第1及び第2の材料貯蔵タンクの間を切り替えるために配置された少なくとも1つの弁を介して、並列に一緒に結合される。
【0022】
第2の態様によれば、複数の貯蔵タンクは、各々が対応する専用の弁を介して水素貯蔵システムの入口、出口それぞれに結合された貯蔵タンクを含み、異なる貯蔵タンクの弁は異なる圧力において開放、閉止それぞれを行い、一連のそれらの対応する弁開放圧力で前記水素貯蔵タンクを充填するように、及び一連のそれらの対応する弁閉止圧力で前記水素貯蔵タンクを放出する(empty)ように動作可能である。制御システムは、フルとして測定された又は空として測定された貯蔵タンクの合計の、貯蔵タンクの全数に対する割合に基づいて、水素貯蔵システムのチャージの状態を計算するように構成される。
【0023】
有利な一実施形態では、弁の作動は、電気/電子制御システムによって制御される。
【0024】
有利な一実施形態では、弁は、電気的に作動する弁、好ましくは電磁弁である。
【0025】
別の実施形態では、弁は、各貯蔵タンクに接続された機械式圧力開放弁であってよく、各貯蔵タンクの圧力開放弁は、異なる圧力において作動するために異なる開放圧力に較正される。
【0026】
有利な一実施形態では、制御システムは、各個別の前記水素貯蔵タンクのチャージの状態を、前記水素貯蔵タンクの圧力測定値が規定された最小貯蔵圧力(Pmin)の10%未満である場合に空として、及び前記水素貯蔵タンクの圧力測定値が規定された最大貯蔵圧力(Pmax)の90%を超える場合にフルとして計算するように構成される。
【0027】
有利な一実施形態では、制御システムは、各個別の前記水素貯蔵タンクのチャージの状態を、前記水素貯蔵タンクの圧力測定値が、規定された最小貯蔵圧力(Pmin)の前記10%と規定された最大貯蔵圧力(Pmax)の90%との間である場合にフルの半分として計算するように構成される。
【0028】
有利な一実施形態では、圧力センサは、各貯蔵タンクの入口、出口それぞれに搭載された少なくとも1つの圧力センサを含む。
【0029】
温度センサは、各貯蔵タンクのコンテナ内に延在するコアチューブに挿入され、前記コンテナの内側から密封された少なくとも1つの温度センサを含み得る。
【0030】
有利な一実施形態では、第1及び第2の材料貯蔵タンクは、貯蔵タンクのグループに組み合わされ、貯蔵タンクのグループは前記グループの順番に充填及び放出されるように構成され、貯蔵タンクの異なるグループの弁は異なる圧力において開放、閉止それぞれを行い、一連のそれらの対応する弁開放圧力で貯蔵タンクの前記グループを充填するように、及び一連のそれらの対応する弁閉止圧力で貯蔵タンクの前記グループを放出するように動作可能であり、制御システムは、フルとして測定された又は空として測定された貯蔵タンクの合計の、貯蔵タンクの総数に対する割合に基づいて水素貯蔵システムのチャージの状態を計算するように構成される。
【0031】
有利な一実施形態では、貯蔵タンクの異なるグループの弁は、より高い動作圧力を有する貯蔵タンクを最初に充填するという優先度の順番に貯蔵タンクの前記グループを充填するように、及びより低い動作圧力を有する貯蔵タンクを最初に放出するという優先度の順番に貯蔵タンクの前記グループを放出するように動作可能であり、一方で、幾つかの弁が貯蔵のチャージの間に同時に開いている場合、より高い圧力を有するタンクはフルであって水素をそれ以上吸収できず、幾つかの弁がディスチャージの間に同時に開いている場合、より低い圧力を有するタンクは空である。
【0032】
有利な一実施形態では、各グループは、1つの第1の材料貯蔵タンク及び1つの第2の材料貯蔵タンクによって構成されるペアである。
【0033】
有利な一実施形態では、第1の金属水素化物(MH1)は、主に、ファミリーAB5タイプの金属合金を含むか又はそれらから構成され、ここでAは、セリウム、ネオジム及び/又はプラセオジムで部分的に置換され得るランタンであり、Bは、コバルト、アルミニウム、マンガン及び鉄から成るグループから選択される少なくとも1つの成分又は複数の成分で部分的に置換され得るニッケルである。
【0034】
有利な一実施形態では、第1の金属水素化物(MH1)は、主に、LaNi5及び随意にCe、Co、Mnから成るグループから選択される追加の元素を含むか又はそれらから構成される。
【0035】
有利な一実施形態では、第1の金属水素化物(MH1)はAB5タイプであり、ランタンの割合は0.5から1まで変化し、Niは置換されない。
【0036】
有利な一実施形態では、第1の金属水素化物(MH1)は、主に、ファミリーAB2タイプの金属合金を含むか又はそれらから構成され、ここでAは、ジルコニウムで部分的に置換されてもされなくてもよいチタンであり、Bは、バナジウム、マンガン、鉄、コバルト及びニッケルから成るグループから選択される複数の成分を含む。
【0037】
有利な一実施形態では、第1の金属水素化物(MH1)は、主に、ZrV2及び随意にクロム、マンガン及びコバルトから成るグループから選択される追加の元素を含むか又はそれらから構成される。
【0038】
有利な一実施形態では、第2の金属水素化物(MH2)は、ファミリーAB5タイプの金属合金を含むか又はそれらから構成され、ここでAは、セリウム、ネオジム及び/又はプラセオジムで部分的に置換され得るランタンであり、Bは、コバルト、アルミニウム、マンガン及び鉄から成るグループから選択される少なくとも1つの成分又は複数の成分で部分的に置換され得るニッケルである。
【0039】
有利な一実施形態では、第2の金属水素化物(MH2)はAB5タイプであり、ランタンの割合は0.9から1まで変化し、Niは置換されない。
【0040】
有利な一実施形態では、第1及び第2の金属水素化物(MH1及びMH2)は、同じファミリーの金属水素化物からのものである。
【0041】
有利な一実施形態では、第1の金属水素化物(MH1)はLa0.5Ce0.5Ni5であり、第2の金属水素化物(MH2)はLa0.9Ce0.1Ni5である。
【0042】
本発明のさらなる目的及び有利な態様は、特許請求の範囲から、ならびに以下の発明を実施するための形態及び添付の図面から明らかになろう。
【0043】
本発明は、次に、本発明の実施形態を例として示す添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1a】金属水素化物の圧力-組成等温線の概略的グラフ表現である。
【
図1b】金属水素化物の圧力-組成等温線の概略的グラフ表現である。
【
図1c】金属水素化物の圧力-組成等温線の概略的グラフ表現である。
【
図2】本発明の一実施形態による水素貯蔵システムの概略図である。
【
図3】本発明の一実施形態による水素貯蔵システムの水素貯蔵タンクの概略図である。
【
図4】
図2の水素貯蔵システムの変異形態の概略図である。
【
図5】本発明の別の実施形態による水素貯蔵システムの概略図である。
【
図6】本発明のさらに別の実施形態による水素貯蔵システムの概略図である。
【
図7a】第1の(高圧の)金属水素化物水素貯蔵材料のファントホッフプロット[圧力(log n)対逆温度(1/T)特性]のグラフである。
【
図7b】第2の(低圧の)金属水素化物水素貯蔵材料のファントホッフプロット[圧力(log n)対逆温度(1/T)特性]のグラフである。
【
図7c】第1及び第2の材料を組み合わせたプロットのグラフである。
【
図8a】低圧貯蔵材料及び高圧貯蔵材料に対する、経時的に変動する温度のプロット及び対応する動作範囲のグラフである。
【
図8b】低圧貯蔵材料及び高圧貯蔵材料に対する、経時的に変動する温度のプロット及び対応する動作範囲のグラフである。
【
図9】本発明の一実施形態による、10個の容器のシステムを使用する充填プロセスの間の経時的なチャージの状態の進展を示すプロットのグラフである。
【
図10a】本発明の一実施形態による、水素発生システムのチャージモードにおけるプロセス値の一例を示す概略図である。
【
図10b】本発明の一実施形態による、水素発生システムのディスチャージモードにおけるプロセス値の一例を示す概略図である。
【
図11】本発明の一実施形態による水素発生システムの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図を参照すると、水素発生システム1は、水素発生器2などの水素源に接続された水素貯蔵システム4を含む。特に、水素発生器2は、水を水素ガスと酸素ガスとに分解する電解槽であり得る。特に、電解槽は、再生可能エネルギー、特に太陽光エネルギーの源に接続され得る。水素発生システム1は、水素ガスから電気を発生させるために、例えば水素燃料電池の形態で発電機3などの水素消費体と、随意に、電解槽2に対する水を貯蔵するため及び/又は燃料電池3によって出力される水を回収するための水タンク7とをさらに含み得る。
【0046】
図10a、
図10b及び
図11に示す構成では、水素発生システム1は、太陽電池パネルによって捕捉された太陽光エネルギーを水素ガスに変換するための手段として使用され得、水素ガスは、捕捉されたエネルギーを貯蔵する燃料として働き、捕捉されたエネルギーは電力に再変換され得る。このようにして、水素貯蔵システムは、太陽光エネルギーの供給と電力の需要との間のバッファとして働き得る。しかしながら、水素貯蔵システム4は、他の用途において、例えば様々な移動の又は固定の用途のために気体又は液体の形態で水素を供給するために実装され得る。このようにして、貯蔵システムは、様々な移動の及び産業の用途のために圧縮水素ガスをタンクに供給する水素圧縮器に結合され得る。
【0047】
電解槽2及び水素貯蔵システム4は、同じく、流体結合回路で一緒に接続された別々のユニットとして設けられ得る。
【0048】
典型的な電解槽によって出力される水素ガスの最大圧力は、例えば、10~20barの範囲内にある。したがって、この電解槽出力圧力は、水素貯蔵システム4に入力される水素ガスの圧力を構成する。水素貯蔵システム4が燃料電池の形態で発電機3に接続される場合、燃料電池への水素ガスの圧力入力は、一般的に、ちょうど1barを超えて10barまでの範囲内、例えば、1.2~8barの範囲内にある。したがって、水素貯蔵システムの水素ガス出力圧力は、一般的に、ちょうど1.2barから10barまでの範囲内にあるが、幾つかの用途では、貯蔵タンク内で使用される金属水素化物材料のタイプに応じて、約50barまで上昇することができる。
【0049】
水素貯蔵システムからの水素が圧縮水素ガス又は液化水素として容器内に充填される必要がある場合、貯蔵システム4からの水素ガス出力に対する圧縮システムが必要であり、圧縮システムは、例えば、それ自体よく知られている金属水素化物タンク圧縮システムの形態であり得る。
【0050】
本発明では、水素貯蔵システム4は、それが、脱着プロセスの間に水素ガスの圧力を高めるための加熱手段を有しないという意味で、受動的である。しかしながら、水素貯蔵システムは、幾つかのタンク内の発熱プロセスによって生成された熱が、他のタンクに伝達すること又は自然対流もしくは強制対流によってシステムから排出されることを可能にするために、タンクの間に熱交換システムを有し得る。熱交換器は、水素貯蔵システムのタンク間の熱の交換を改善するために、水素貯蔵システムの個々のタンクの間に搭載され得る。
【0051】
本発明による水素貯蔵システム4は、ガス流回路8に接続された複数の貯蔵タンク6と、少なくとも圧力センサP及び温度センサTを含む制御システムとを含む。ガス流回路は、貯蔵タンク6に接続された弁V、V1、V2、V3...Vnを含み、貯蔵タンクの各々は、他のタンクに対して別々に制御される、貯蔵タンクを出入りするガスの個々の制御を可能にするために少なくとも1つの弁を含む。
【0052】
ガス回路は、H2入口回路8aとH2出口回路8bとを含んでよく、入口回路は少なくとも1つの水素入口10を含み、出口回路8bは少なくとも1つの水素出口12を含む。しかしながら、各タンク6は別々の入口10及び出口12を含んでよいが、入口と出口の両方として働く、タンクへの単一の接続10、12が設けられてもよいことに留意されたい。
【0053】
図2に最もよく示されるように、水素出口12及び入口10は、弁Vioを介して、例えば、貯蔵タンク結合を入口10、出口12、及び随意に入口と出口がともに閉じられる第3の位置に選択的に切り替えることを可能にする三方弁Vioを介して複数の貯蔵タンク6に結合され得る。
【0054】
図4~
図6に示す実施形態では、貯蔵タンクは、専用の出口回路及び対応する弁から分離した専用の入口回路及び対応する弁を有し得る。このようにして、入口及び出口は、水素発生器2から出口への水素ガスの貫流を可能にするために、同時に開かれ得る。
【0055】
有利な一実施形態では、弁は、システムの動作の状態に応じて電気制御システムによって開閉される電磁弁の形態であり得る。弁は、制御システムによって制御される、他のタイプの電気アクチュエータ(例えば、リニアモータ)によって又は油圧もしくは空圧システムによっても作動され得る。システム1は、
図10aに示すチャージモード、又は
図10bに示すディスチャージモード、又は休止状態にあり得る。貯蔵タンク6の各々は、金属水素化物で充填される。金属水素化物は、コンテナの体積を好ましくは70%を超えて充填する、ゆるい粒子又はグレインの形態であり得る。水素貯蔵金属水素化物材料の分野でそれ自体知られているように、金属水素化物粒子は、一般的に、約1~10mmの範囲内の平均直径を有してよく、水素化時に、金属水素化物粒子は、一般的に、5~10マイクロメートルの範囲内の平均直径を有してよい。
【0056】
各貯蔵タンクは、貯蔵タンク内の温度を測定するように構成された少なくとも1つの温度センサTを含む。一実施形態では、温度センサは、貯蔵タンクのコンテナ内に延在する密封されたコアチューブ9内に搭載され得る。コアチューブ9は、例えば、貯蔵タンクの中心の中に挿入され、タンクコンテナの壁の端面においてオリフィスに溶接された閉端チューブであり得る。タンク6は、特に、円筒形の形状を有し得る。しかしながら、一変異形態(図示せず)では、入口又は出口ポート11を通して挿入され、入口及び出口ポートのキャップに取り付けられた温度センサをタンク内に搭載することが可能である。
【0057】
各水素貯蔵タンクは、貯蔵タンクの入口及び出口のガスを測定するために、共通の入口/出口11に、又は入口及び出口が別々である場合は入口11aと出口11bの両方に搭載され得る圧力センサPをさらに含み、圧力センサは、貯蔵タンク弁V1...Vnとタンク6との間に搭載される。ガス圧力センシングの分野でそれ自体知られている、様々なタイプの圧力センサが使用され得る。
【0058】
圧力及び温度のセンサは、吸収及び脱着プロセスの間に関連する圧力-組成等温線の曲線を参照しながらチャージの状態を決定することを可能にする。
【0059】
本発明の一態様によれば、貯蔵システム4のチャージの状態の決定を改善するために、複数の貯蔵タンクは、順番に水素ガスで充填可能であり、逆の順番にディスチャージ可能である。
図1cに示す圧力-組成等温線において最もよく分かるように、チャージの状態の関数としての圧力変動の勾配は、貯蔵タンクがほぼ空の又はほぼフルの状態にあるときに非常に高いが、それらの間の広い帯域において非常に小さい勾配を有し、それが、チャージの状態を決定することを非常に困難にする。順番に充填及び放出を行うように構成され、それにより、後続の貯蔵タンク6が充填、放出それぞれを行われ、現在動作中のタンクが一度だけフル、空それぞれになる、複数のタンクを接続することによって、フル及び空の状態が、上記で説明したように容易に測定可能になる。
【0060】
制御システムは、各タンクの圧力及び温度のセンサP、Tからの測定信号を受信し、電磁弁V1...Vnを、フル及び空の状態を示す温度及び圧力の測定値に基づいて順番に開きかつ閉じるように制御し得る。
図9に最もよく示されるように、大きい複数の貯蔵タンク(容器とも呼ばれる)がある場合、チャージの状態は、段階的に測定され得、エラーの度合は、システム内の容器の総数に対する容器1個の割合である。
【0061】
一変異形態では、各貯蔵タンクに対する電磁電子制御弁V1...Vnの代わりに、各貯蔵タンクに接続された機械式圧力開放弁を実装することも可能であり、各貯蔵タンクの圧力開放弁は、異なる圧力において作動するために異なる開放圧力において較正される。例えば、充填されるべき第1のタンクの入口弁は、充填されるべき後続のタンクより低い入口圧力において動作する弁を有し、以下同様である。それゆえ、貯蔵タンクは、開放圧力が上昇していく一連の弁で充填される。ディスチャージモードに対して、最低圧力において開く弁が最初に空になり、次の圧力レベルにおける弁を有するタンクが後続し、以下同様である。
【0062】
図5及び
図6に最もよく示される本発明の別の態様によれば、貯蔵タンクは、弁V1a、V1b...Vna、Vnbを介して並列に接続された低圧貯蔵タンク6a及び高圧貯蔵タンク6bを含み得る。各タンクは、それぞれ、共通の入口及び出口の弁を含んでよく、又は各タンクは、別々の入口弁V1ai、V1bi...Vnai、Vnbiと別々出口弁V1ao、V1bo...Vnao、Vnboとを含んでよい。
【0063】
高圧貯蔵タンク6b内の金属水素化物の組成は、特に、
図7a~
図7cに示す異なる動作温度範囲を有する低圧貯蔵タンク6a内の金属水素化物の組成とは異なる。高圧貯蔵金属水素化物材料は、P1からP2までの圧力動作範囲に対応するT
HP1からT
HP2までの温度動作範囲を有し、低圧貯蔵金属水素化物材料は、P1からP2までの前記圧力動作範囲に対応するT
LP1からT
LP2までの温度動作範囲を有し、T
LP2はT
HP2より大きく、T
LP1はT
HP1より大きい。それゆえ、異なる金属水素化物組成を有する2つの貯蔵タンクを組み合わせることによって、より大きい温度範囲にわたる貯蔵システム4の動作が、
図8a~
図8bを参照しながら示されるように達成され得る。
【0064】
動作温度が高圧貯蔵金属水素化物材料の最大動作温度THP1を超えると、低圧貯蔵金属水素化物材料を含有するタンクが動作可能になり、一方で、動作温度が、低圧貯蔵材料の最小動作温度TLP2より低下すると、高圧貯蔵材料を含有するタンクが動作可能になる。2つの値THP2とTLP1との間で、タンク6a及び6bは、ともにチャージ及びディスチャージするために動作可能であり得る。
【0065】
電磁弁は、測定された温度の関数として高圧及び低圧の貯蔵タンクへの入口及び出口を開閉するように動作され得る。チャージする間に、金属水素化物を水素でチャージすることは発熱プロセスであるので、タンク内の温度が上昇する一方で、ディスチャージする間に、プロセスは吸熱性であるので、タンクは冷たくなる。チャージする間に、低圧貯蔵タンク6aが優先的にチャージされ、続いて高圧貯蔵タンク6bがチャージされる。ディスチャージする間に、高圧貯蔵タンクが優先的にディスチャージされ、次いで、低圧貯蔵タンクがディスチャージされる。発熱又は吸熱プロセスのみに依存するのではなく、貯蔵タンク周りの環境温度にも依存する、
図8a及び
図8bに示す動作温度における変動に応じて、1つのタンクから他のタンクへの切り替えが発生し得る。例えば、
図5に示す、並列に搭載された低圧及び高圧の貯蔵タンクは、
図6に示す貯蔵タンクの複数のペアとして組み合わされてもよく、貯蔵タンクの複数のペアは、上記で説明したチャージの状態のよりよい決定を可能にするために、順番に充填及び放出されるように構成される。そのような構成では、第1のペアの低圧貯蔵タンク及び高圧貯蔵タンクは、次の順番の低圧貯蔵タンク及び高圧貯蔵タンクが満杯になる前に満杯になり、以下同様であり、ディスチャージ又は放出の動作はその逆である。
【0066】
本発明に関連して有用な金属水素化物(MH)は、非特許文献1、非特許文献2、及び非特許文献3に記載されているような、それらの温度動作範囲に基づいて、知られているMH材料(低圧貯蔵材料:LPSM、及び高圧貯蔵材料:HPSM)の中から選択され得る。
【0067】
高圧貯蔵材料(HPSM)は、有利には、ファミリーAB5タイプの金属合金を含むか又は主にそれらから構成され、ここでAは、セリウム、ネオジム及び/又はプラセオジムで部分的に置換され得るランタンであり、Bは、コバルト、アルミニウム、マンガン及び鉄から成るグループから選択される少なくとも1つの成分又は複数の成分で部分的に置換され得るニッケルである。
【0068】
特定の実施形態によれば、HPSMはLaNi5である。有利には、HPSMは、異なる割合においてCe、Co、Mnなどの追加の元素を含み得る。さらなる特定の実施形態によれば、HPSMはAB5タイプであり、ランタンの割合は0.5から1.0まで変化し、Niは置換されない。
【0069】
別のさらなる特定の実施形態によれば、HPSMはAB5タイプであり、ランタンはCoで部分的に置換される。
【0070】
一変異形態では、HPSMは、主に、ファミリーAB2タイプの金属合金を含むか又はそれらから構成されることができ、ここでAは、ジルコニウムで置換又は部分的置換をされてもされなくてもよいチタンであり、Bは、バナジウム、マンガン、鉄、コバルト及びニッケルから成るグループから選択される複数の成分を含む。
【0071】
別の特定の実施形態によれば、HPSMはZrV2及び随意に、クロム、マンガン及びコバルトから成るグループから選択される追加の元素である。
【0072】
HPSMに対する雰囲気温度(25℃)における典型的な平衡圧は、理想的には、5barと15barとの間の範囲内にあるが、選択された材料に応じて50barまで上昇することができる。
【0073】
低圧貯蔵材料(LPSM)は、有利には、ファミリーAB5タイプの金属合金を含むか又は主にそれらから構成され、ここでAは、セリウム、ネオジム及び/又はプラセオジムで部分的に置換され得るランタンであり、Bは、コバルト、アルミニウム、マンガン及び鉄から成るグループから選択される少なくとも1つの成分又は複数の成分で部分的に置換され得るニッケルである。
【0074】
低圧貯蔵材料(LPSM)は、有利には、HPSMと同じファミリーの金属水素化物からのものであり得る。
【0075】
さらなる特定の実施形態によれば、LPSMはAB5タイプであり、ランタンの割合は0.9から1まで変化し、Niは置換されない。
【0076】
LPSMに対する雰囲気温度(25℃)における典型的な平衡圧は、理想的には、1barと10barとの間に含まれるが、選択された材料に応じて50barまで上昇することができる。
【0077】
LPSM及びHPSM貯蔵タンク6a、8bに対する金属水素化物材料MH1、MH2は、有利には、以下の方法に従って選択され得る、
- 再供給の最大圧力P_max、例えば、電解槽によって配送される圧力又は水素供給ライン内の圧力又は任意の他の水素源の圧力を規定する、
- システムの動作の最大温度を規定する、
- システムの最大動作温度における材料の平衡平坦圧力が、再供給の最大圧力にできるだけ近く、しかしこの値を超えないようにLPSMを選択する、
- 水素消費体によって必要とされる最小圧力p_minを規定する、
- p_minを維持しながら、LPSMからの水素の脱着に必要なシステムの最小温度T_min_LPSMを計算する、
- T_min_LPSMにおける材料の圧力がP_maxにできるだけ近く、しかしこの値を超えないようHPSMを選択する。
【0078】
本発明の実施形態で有利に使用され得る金属水素化物のいくつかは、以下のTable 1(表1)に表され、25℃におけるそれらの対応する平衡圧力(bar)を示している。
【0079】
【0080】
本発明の有利な実施形態による選択された材料の一例は、以下の材料のペアを含む。
- HPSM: La0.5Ce0.5Ni5、25℃における平衡圧力=8.6bar
- LPSM: La0.9Ce0.1Ni5、25℃における平衡圧力=2.2bar
【0081】
上記の材料の典型的な流量(吸収及び脱着)は、水素貯蔵材料の1キログラム当たり約0.5NL H2/min(ノルマルリットル水素毎分)である。流量は、水素貯蔵材料の1キログラム当たり約2.5NL H2/minまで上昇することができる。
【0082】
圧力は、タンクに接続された入口/出口パイプ11上のデジタル又はアナログ圧力センサPを使用して測定され得る。幾つかのタンクが並列に接続される場合、接続線上に1つの圧力センサで十分である。温度は、測定点とタンクコンテナ内の金属水素化物ベッドとの間の温度勾配を最小にするために、必要な最小の壁厚さで製造された金属挿入物の形体を有し得るコアチューブ9を介してタンク内で測定される。1つのタンク当たりに最低1つの温度測定点が必要であり、理想的には、温度は、より正確な値を取得するために数か所(例えば、タンクの長手方向軸において100mmごと)において測定される。
【0083】
チャージモードの例(
図10a)
1. 水素源、例えば入口ポート11に接続された電解槽2が、例えば10~20barの範囲内、例えば16barの燃料供給圧力P
Sにおいて水素を供給する。
2. 高圧貯蔵タンク6b内の圧力P
HPが、(入口)圧力センサPによって測定され、電子制御システムのマイクロプロセッサによって燃料供給圧力P
Sと比較される。
3. 高圧貯蔵タンク6b内の圧力P
HPが燃料供給圧力P
Sより低い場合、高圧入口弁V1biが、制御システムからの制御コマンドによって開かれ、高圧貯蔵タンク6bが充填される。
4. 高圧貯蔵タンク6b内の圧力P
HPが燃料供給圧力P
Sより高い場合、低圧入口弁V1aiが、制御システムからのコマンドによって開かれ、低圧貯蔵タンク6aが充填される。高圧入口弁V1biは、このステップの間は閉じられる。
【0084】
ディスチャージモードの例(
図10b)
1. 水素消費体、例えば出口ポート11bに接続された水素燃料電池システムなどの発電機が、例えば1~10barの範囲内、例えば1.5barの消費圧力P
Cにおいて水素を受ける。
2. 低圧貯蔵タンク6a内の圧力P
LPが、(出口)圧力センサPによって測定され、制御システムのマイクロプロセッサによって消費圧力P
Cと比較される。
3. 低圧貯蔵タンク6a内の圧力P
LPが消費圧力P
Cより高い場合、低圧出口弁V1aoが、制御システムからのコマンドによって開かれ、LPSM貯蔵タンク6aが放出される。
4. 低圧貯蔵タンク6a内の圧力P
LPが消費圧力P
Cより低い場合、高圧出口弁V1boが、制御システムからのコマンドによって開かれ、HPSM貯蔵タンク6bが放出される。低圧出口弁V1aoは、このステップの間は閉じられる。
【0085】
チャージの状態の決定の例(
図9)
1. 現在チャージ又はディスチャージされている少なくとも貯蔵タンク6、6a、6b内の温度が測定され、測定値が制御システムに送信される。幾つかの温度の点が取られている場合、平均が電子制御システムのマイクロプロセッサによって計算され、温度測定値として使用される。
2. 現在チャージ又はディスチャージされている前記少なくとも貯蔵タンク6、6a、6b内の圧力が測定され、測定値が制御システムに送信される。
3. 圧力-温度測定値対(pressure - temperature measurement couple)が、制御システムのメモリに記憶されている圧力組成等温線(pcI)プロット(例えば、
図1a、
図1b、
図1cに示す)の内部データベースと、制御システムのマイクロプロセッサによって比較される。
4. 所与の温度に対して、
図1cに示すように、圧力Pmin<P<Pmaxのドメインが規定される。
5. 上記の情報から、対応する貯蔵タンクの以下のチャージ状態が、制御システム内に設定され得る。
a. P<Pmin: タンクはフルの10%未満であると見なされ、制御システムのメモリのチャージ状態レジスタ内で「空」に設定される。
b. Pmin<P<Pmax: タンクはフルの半分と見なされ、制御システム内のチャージ状態レジスタ内で、例えばフルの50%として設定される。
c. Pmax<P: タンクは90%を超えると見なされ、制御システムのチャージ状態レジスタ内で「フル」に設定される。
6. この手順は、所与の間隔で、例えば10秒ごとに又は1分に一度繰り返され得る。
7. 好ましくは、上記のステップは、現在チャージ又はディスチャージされている貯蔵タンクのみでなく、貯蔵タンクの各々(すなわち、すべて)に対して実行される。しかしながら、貯蔵タンクは、順番にチャージ、ディスチャージそれぞれを行われ得るので、測定手順は、必ずしも、同時に又は同じ間隔ですべての貯蔵タンクに対して実行される必要があるとは限らず、閉じられて現在動作していない完全にフル又は完全に空のタンクのチャージの状態は、制御システムのチャージレジスタ内で知られており、記録されている。それにもかかわらず、信頼性のために、上記で説明したように一定間隔で(例えば、10秒ごとに)すべての貯蔵タンクのチャージの状態を測定することが望ましい。
8. チャージ状態レジスタ内に記録されている上記で説明した設定に基づいて、システム全体のチャージの状態が、(1/N)*100%の精度で制御システムのマイクロプロセッサによって計算され得、ここでNは貯蔵タンク6、6a、6bの数である。例えば、10個の貯蔵タンクを有するシステムは、約10%の精度でシステムのチャージの状態を決定することができる。
【符号の説明】
【0086】
1 水素発生システム
2 水素発生器
3 発電機
4 水素貯蔵システム
6 貯蔵タンク
6a 低圧貯蔵タンク
6b 高圧貯蔵タンク
7 水タンク
8 ガス流回路
8a H2入口回路
8b H2出口回路
9 コアチューブ
10 水素入口
11 入口又は出口ポート
11a 入口
11b 出口
12 水素出口
V、V1、V2、V3...Vn 弁
P 圧力センサ
T 温度センサ