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特許7491949ポリウレタン樹脂組成物、撥剤、繊維撥水剤および防汚コート剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】ポリウレタン樹脂組成物、撥剤、繊維撥水剤および防汚コート剤
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/08 20060101AFI20240521BHJP
   C08G 18/79 20060101ALI20240521BHJP
   C08G 18/73 20060101ALI20240521BHJP
   C08G 18/38 20060101ALI20240521BHJP
   C08G 18/28 20060101ALI20240521BHJP
   C09K 3/18 20060101ALI20240521BHJP
   C09D 5/16 20060101ALI20240521BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
C08G18/08 009
C08G18/79 020
C08G18/73
C08G18/38 019
C08G18/28 015
C09K3/18 101
C09D5/16
C09D175/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021567449
(86)(22)【出願日】2020-12-21
(86)【国際出願番号】 JP2020047711
(87)【国際公開番号】W WO2021132170
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-06-13
(31)【優先権主張番号】P 2019233547
(32)【優先日】2019-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(72)【発明者】
【氏名】甲田 千佳子
(72)【発明者】
【氏名】福田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】野口 太甫
(72)【発明者】
【氏名】中村 佳介
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/038466(WO,A1)
【文献】特開2019-173185(JP,A)
【文献】特表2016-524628(JP,A)
【文献】特開2017-160354(JP,A)
【文献】特開2009-203316(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
C09K
C08G
D06M
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均イソシアネート基数2以上の脂肪族ポリイソシアネート誘導体と、
炭素数12以上30以下の炭化水素基および1つの水酸基を併有する長鎖活性水素化合物と、
活性水素基およびカチオン性基を併有するカチオン性活性水素化合物と、
カチオン性基と塩を形成する酸化合物との反応生成物を含み、
前記脂肪族ポリイソシアネート誘導体は、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体またはペンタメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体を含み、
前記カチオン性活性水素化合物は、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-プロピルジエタノールアミン、N-ブチルジエタノールアミン、および、N-メチルジプロパノールアミンからなる群より選択される少なくとも1つであり、
前記反応生成物は、第2中間反応生成物および前記酸化合物のみの反応生成物であり、
前記第2中間反応生成物は、第1中間反応生成物および前記カチオン性活性水素化合物のみからなる反応生成物であり、
前記第1中間反応生成物は、前記脂肪族ポリイソシアネート誘導体および前記長鎖活性水素化合物のみからなる反応生成物であり、
前記炭化水素基の濃度が、30%以上85%以下であり、
前記長鎖活性水素化合物が、直鎖状飽和炭化水素基含有アルコールを含むことを特徴とする、ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
前記カチオン性活性水素化合物において、
前記カチオン性基が、3級アミノ基であり、
前記活性水素基が、水酸基であり、
前記カチオン性活性水素化合物は、1分子あたり2つ以上の水酸基を有することを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
前記酸化合物が、有機酸を含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1に記載のポリウレタン樹脂組成物を含むことを特徴とする、撥剤。
【請求項5】
請求項1に記載のポリウレタン樹脂組成物を含むことを特徴とする、繊維撥水剤。
【請求項6】
請求項1に記載のポリウレタン樹脂組成物を含むことを特徴とする、防汚コート剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン樹脂組成物、撥剤、繊維撥水剤および防汚コート剤に関し、詳しくは、ポリウレタン樹脂組成物、そのポリウレタン樹脂組成物を含む撥剤、そのポリウレタン樹脂組成物を含む繊維撥水剤、および、そのポリウレタン樹脂組成物を含む防汚コート剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撥水剤として、フッ素化合物を含むフッ素系撥水剤が知られている。この撥水剤を、繊維製品などの基材に対して処理すると、良好な撥水性を示す。
【0003】
一方、近年、フッ素による環境負荷に対する影響を考慮して、フッ素化合物を含まない非フッ素系撥水剤の需要が高まっている。
【0004】
このような非フッ素系撥水剤として、例えば、ポリイソシアネート化合物と、アルキルソルビタンとの反応生成物である化合物が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2016-524628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、非フッ素系撥水剤には、撥水性の向上が要求されている。
【0007】
また、非フッ素系撥水剤には、繊維に対する洗濯耐久性も要求されている。
【0008】
本発明は、撥水性、および、繊維に対する洗濯耐久性に優れるポリウレタン樹脂組成物、そのポリウレタン樹脂組成物を含む撥剤、そのポリウレタン樹脂組成物を含む繊維撥水剤、および、そのポリウレタン樹脂組成物を含む防汚コート剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明[1]は、平均イソシアネート基数2以上の脂肪族ポリイソシアネート誘導体と、炭素数12以上30以下の炭化水素基および活性水素基を併有する長鎖活性水素化合物と、カチオン性基および活性水素基を併有するカチオン性活性水素化合物と、カチオン性基と塩を形成する酸化合物との反応生成物を含み、前記炭化水素基の濃度が、30%以上85%以下である、ポリウレタン樹脂組成物である。
【0010】
本発明[2]は、前記脂肪族ポリイソシアネート誘導体が、脂肪族ポリイソシアネートのイソシアヌレート誘導体を含む、上記[1]に記載のポリウレタン樹脂組成物を含んでいる。
【0011】
本発明[3]は、前記カチオン性活性水素化合物において、前記カチオン性基が、3級アミノ基であり、前記活性水素基が、水酸基であり、前記カチオン性活性水素化合物は、1分子あたり2つ以上の水酸基を有する、上記[1]または[2]に記載のポリウレタン樹脂組成物を含んでいる。
【0012】
本発明[4]は、前記酸化合物が、有機酸を含む、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載のポリウレタン樹脂組成物を含んでいる。
【0013】
本発明[5]は、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載のポリウレタン樹脂組成物を含む、撥剤を含んでいる。
【0014】
本発明[6]は、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載のポリウレタン樹脂組成物を含む、繊維撥水剤を含んでいる。
【0015】
本発明[7]は、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載のポリウレタン樹脂組成物を含む、防汚コート剤を含んでいる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、長鎖活性水素化合物を用いて得られる反応生成物を含み、炭化水素基の濃度が所定の割合である。そのため、このポリウレタン樹脂組成物は、撥水性に優れる。
【0017】
また、このポリウレタン樹脂組成物は、カチオン性活性水素化合物を用いて得られる反応生成物を含む。
【0018】
そのため、このポリウレタン樹脂組成物は、繊維との親和性が向上し、その結果、繊維に対する洗濯耐久性に優れる。
【0019】
本発明の撥剤は、本発明のポリウレタン樹脂組成物を含んでいる。
【0020】
そのため、この撥剤は、撥水性、撥油性、耐油性に優れ、また、繊維に対する洗濯耐久性に優れる。
【0021】
本発明の繊維撥水剤は、本発明のポリウレタン樹脂組成物を含んでいる。
【0022】
そのため、この繊維撥水剤は、撥水性に優れ、また、繊維に対する洗濯耐久性に優れる。
【0023】
本発明の防汚コート剤は、本発明のポリウレタン樹脂組成物を含んでいる。
【0024】
そのため、この防汚コート剤は、防汚性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、脂肪族ポリイソシアネート誘導体と、長鎖活性水素化合物と、カチオン性活性水素化合物と、酸化合物との反応生成物を含む。
【0026】
脂肪族ポリイソシアネート誘導体は、脂肪族ポリイソシアネートの誘導体である。
【0027】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(ヘキサンジイソシアネート)(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(ペンタンジイソシアネート)(PDI)、テトラメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、1,2-、2,3-または1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-または2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。
【0028】
また、脂肪族ポリイソシアネートには、脂環族ポリイソシアネートが含まれる。
【0029】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、4,4′-、2,4′-または2,2′-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)もしくはその混合物(H12MDI)、1,3-または1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンもしくはその混合物(HXDI)、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン(NBDI)、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネートが挙げられる。
【0030】
脂肪族ポリイソシアネートとして、好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(以下、単に、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンとする。)、より好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。
【0031】
脂肪族ポリイソシアネート誘導体としては、例えば、上記した脂肪族ポリイソシアネートの多量体(例えば、2量体、3量体(例えば、イソシアヌレート誘導体、イミノオキサジアジンジオン誘導体)、5量体、7量体など)、アロファネート誘導体(例えば、上記した脂肪族ポリイソシアネートと、1価アルコールまたは2価アルコールとの反応より生成するアロファネート誘導体など)、ポリオール誘導体(例えば、上記した脂肪族ポリイソシアネートと3価アルコール(例えば、トリメチロールプロパンなど)との反応より生成するポリオール誘導体(アルコール付加体、好ましくは、トリメチロールプロパン付加体)など)、ビウレット誘導体(例えば、上記した脂肪族ポリイソシアネートと、水またはアミン類との反応により生成するビウレット誘導体など)、ウレア誘導体(例えば、上記した脂肪族ポリイソシアネートとジアミンとの反応により生成するウレア誘導体など)、オキサジアジントリオン誘導体(例えば、上記した脂肪族ポリイソシアネートと炭酸ガスとの反応により生成するオキサジアジントリオンなど)、カルボジイミド誘導体(上記した脂肪族ポリイソシアネートの脱炭酸縮合反応により生成するカルボジイミド誘導体など)、ウレトジオン誘導体、ウレトンイミン誘導体などが挙げられる。
【0032】
脂肪族ポリイソシアネート誘導体として、好ましくは、イソシアヌレート誘導体、トリメチロールプロパン付加体、アロファネート誘導体、ビウレット誘導体が挙げられ、より好ましくは、イソシアヌレート誘導体が挙げられる。
【0033】
脂肪族ポリイソシアネート誘導体が、イソシアヌレート誘導体を含むと、風合いが良好になる。
【0034】
そして、脂肪族ポリイソシアネート誘導体として、より好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体、ヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート誘導体、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット誘導体、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのイソシアヌレート誘導体、さらに好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体が挙げられる。
【0035】
脂肪族ポリイソシアネート誘導体は、単独使用または2種類以上併用することができ、好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体の単独使用、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体と、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのイソシアヌレート誘導体、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体、ヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート誘導体、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット誘導体からなる群から選択される少なくとも1種との併用が挙げられる。
【0036】
その場合には、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体の配合割合は、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体と、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのイソシアヌレート誘導体、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体、ヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート誘導体、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット誘導体からなる群から選択される少なくとも1種との総量100質量部に対して、例えば、60質量部以上、好ましくは、70質量部以上であり、また、例えば、85質量部以下であり、また、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのイソシアヌレート誘導体、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体、ヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート誘導体、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の配合割合は、、例えば、15質量部以上であり、また、例えば、40質量部以下、好ましくは、30質量部以下である。
【0037】
また、脂肪族ポリイソシアネート誘導体は、公知の方法により製造することができる。
【0038】
脂肪族ポリイソシアネート誘導体の平均イソシアネート基数は、2以上、好ましくは、2.5、より好ましくは、2.9であり、また、例えば、3.8以下である。
【0039】
上記平均イソシアネート基数が、上記下限以上であれば、撥水性を向上させることができる。
【0040】
なお、平均イソシアネート基数の測定方法は、後述する実施例において、詳述する。
【0041】
また、脂肪族ポリイソシアネート誘導体が、2種類以上併用される場合の上記の平均イソシアネート基数は、脂肪族ポリイソシアネート誘導体の重量比とその平均イソシアネート官能基数とにより、算出される。
【0042】
長鎖活性水素化合物は、炭素数12以上30以下の炭化水素基、および、脂肪族ポリイソシアネート誘導体と反応する活性水素基を併有する。
【0043】
炭素数12以上30以下の炭化水素基としては、例えば、炭素数12以上30以下の直鎖状または分岐鎖状の飽和炭化水素基(例えば、アルキル基など)、例えば、炭素数12以上30以下の直鎖状または分岐鎖状の不飽和炭化水素基(例えば、アルケニル基など)などが挙げられる。
【0044】
活性水素基としては、例えば、水酸基が挙げられる。
【0045】
このような炭化水素基および活性水素基を併有する長鎖活性水素化合物としては、例えば、直鎖状飽和炭化水素基含有活性水素化合物、分岐鎖状飽和炭化水素基含有活性水素化合物、直鎖状不飽和炭化水素基含有活性水素化合物、分岐鎖状不飽和炭化水素基含有活性水素化合物などが挙げられる。
【0046】
直鎖状飽和炭化水素基含有活性水素化合物は、炭素数12以上30以下の直鎖状飽和炭化水素基を含有する活性水素化合物であって、例えば、n-トリデカノール、n-テトラデカノール、n-ペンタデカノール、n-ヘキサデカノール、n-ヘプタデカノール、n-オクタデカノール(ステアリルアルコール)、n-ノナデカノール、エイコサノールなどの直鎖状飽和炭化水素基含有アルコール、例えば、ソルビタントリステアレートなどの直鎖状飽和炭化水素基含有ソルビタンエステルなどが挙げられる。
【0047】
分岐鎖状飽和炭化水素基含有活性水素化合物は、炭素数12以上30以下の分岐鎖状の飽和炭化水素基を含有する活性水素化合物であって、例えば、イソミリスチルアルコール、イソセチルアルコール、イソステアリルアルコール、イソイコシルアルコールなどの分岐鎖状飽和炭化水素基含有アルコールなどが挙げられる。
【0048】
直鎖状不飽和炭化水素基含有活性水素化合物は、炭素数12以上30以下の直鎖状不飽和炭化水素基を含有する活性水素化合物であって、例えば、テトラデセニルアルコール、ヘキサデセニルアルコール、オレイルアルコール、イコセニルアルコール、ドコセニルアルコール、テトラコセニルアルコール、ヘキサコセニルアルコール、オクタコセニルアルコールなどの直鎖状不飽和炭化水素基含有アルコールなどが挙げられる。
【0049】
分岐鎖状不飽和炭化水素基含有活性水素化合物は、炭素数12以上30以下の分岐鎖状の不飽和炭化水素基を含有する活性水素化合物であって、例えば、フィトールなどが挙げられる。
【0050】
長鎖活性水素化合物として、好ましくは、直鎖状飽和炭化水素基含有活性水素化合物、直鎖状不飽和炭化水素基含有活性水素化合物が挙げられる。
【0051】
長鎖活性水素化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0052】
長鎖活性水素化合物を単独使用する場合には、好ましくは、直鎖状飽和炭化水素基含有活性水素化合物の単独使用、より好ましくは、直鎖状飽和炭化水素基含有アルコールの単独使用、さらに好ましくは、ステアリルアルコールの単独使用が挙げられる。
【0053】
長鎖活性水素化合物を2種類以上併用する場合には、好ましくは、直鎖状飽和炭化水素基含有活性水素化合物および直鎖状不飽和炭化水素基含有活性水素化合物の併用、より好ましくは、直鎖状飽和炭化水素基含有アルコールおよび直鎖状不飽和炭化水素基含有アルコールの併用、直鎖状飽和炭化水素基含有アルコールと直鎖状飽和炭化水素基含有ソルビタンエステルと直鎖状不飽和炭化水素基含有アルコールとの併用が挙げられる。
【0054】
直鎖状飽和炭化水素基含有アルコールおよび直鎖状不飽和炭化水素基含有アルコールの併用する場合には、直鎖状飽和炭化水素基含有アルコールの配合割合は、直鎖状飽和炭化水素基含有アルコールおよび直鎖状不飽和炭化水素基含有アルコールの総量100質量部に対して、例えば、40質量部以上、好ましくは、55質量部以上、より好ましくは、70質量部以上である。また、直鎖状不飽和炭化水素基含有アルコールの配合割合は、直鎖状飽和炭化水素基含有アルコールおよび直鎖状不飽和炭化水素基含有アルコールの総量100質量部に対して、例えば、60質量部以下、好ましくは、45質量部以下、より好ましくは、30質量部以下である。
【0055】
直鎖状飽和炭化水素基含有アルコールの配合割合が、上記下限以上であれば、炭化水素基の結晶性が向上し、その結果、撥水性を向上させることができる。
【0056】
また、直鎖状飽和炭化水素基含有アルコールと直鎖状飽和炭化水素基含有ソルビタンエステルと直鎖状不飽和炭化水素基含有アルコールとを併用する場合には、直鎖状飽和炭化水素基含有アルコールの配合割合は、直鎖状飽和炭化水素基含有アルコールと直鎖状飽和炭化水素基含有ソルビタンエステルと直鎖状不飽和炭化水素基含有アルコールとの総量100質量部に対して、例えば、30質量以上であり、また、例えば、60質量部以下である。また、直鎖状飽和炭化水素基含有ソルビタンエステルの配合割合は、直鎖状飽和炭化水素基含有アルコールと直鎖状飽和炭化水素基含有ソルビタンエステルと直鎖状不飽和炭化水素基含有アルコールとの総量100質量部に対して、例えば、20質量部以上であり、また、例えば、50質量部以下である。また、直鎖状不飽和炭化水素基含有アルコールの配合割合は、直鎖状飽和炭化水素基含有アルコールと直鎖状飽和炭化水素基含有ソルビタンエステルと直鎖状不飽和炭化水素基含有アルコールとの総量100質量部に対して、例えば、10質量部以上であり、また、例えば、20質量部以下である。
【0057】
長鎖活性水素化合物を2種類以上併用する場合には、さらに好ましくは、直鎖状飽和炭化水素基含有アルコールおよび直鎖状不飽和炭化水素基含有アルコールを併用、とりわけ好ましくは、ステアリルアルコールおよびオレイルアルコールを併用する。
【0058】
カチオン性活性水素化合物は、活性水素基、および、カチオン性基を併有する。
【0059】
活性水素基は、上記したように、脂肪族ポリイソシアネート誘導体と反応する活性水素基であって、例えば、水酸基が挙げられる。
【0060】
また、カチオン性活性水素化合物は、好ましくは、1分子あたり2つ以上の水酸基を有する。
【0061】
カチオン性基としては、例えば、3級アミノ基が挙げられる。
【0062】
つまり、カチオン性活性水素化合物は、好ましくは、活性水素基として、1分子あたり2つ以上の水酸基と、カチオン性基として、3級アミノ基とを併有する。
【0063】
このようなカチオン性活性水素化合物によれば、ポリウレタン樹脂組成物の水への良好な分散性を付与でき、また、繊維(後述)に親和性を持つカチオン基を樹脂に導入することができるため洗濯耐久性を向上させることができる。
【0064】
より好ましくは、カチオン性活性水素化合物は、活性水素基として、1分子あたり2つの水酸基と、カチオン性基として、3級アミノ基とを併有する。
【0065】
このようなカチオン性活性水素化合物としては、例えば、N-メチルジエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-プロピルジエタノールアミン、N-ブチルジエタノールアミン、N-メチルジプロパノールアミンなどのアルキルジアルカノールアミンなどが挙げられ、好ましくは、N-メチルジエタノールアミンが挙げられる。
【0066】
カチオン性活性水素化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0067】
酸化合物は、カチオン性基と塩を形成する化合物である。
【0068】
酸化合物としては、例えば、有機酸、無機酸などが挙げられる。
【0069】
有機酸としては、例えば、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸などが挙げられ、好ましくは、酢酸、乳酸、より好ましくは、酢酸が挙げられる。
【0070】
無機酸としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸などが挙げられ、好ましくは、塩酸が挙げられる。
【0071】
酸化合物としては、好ましくは、有機酸が挙げられる。
【0072】
酸化合物が有機酸を含めば、熱処理により酸が揮発することにより、イオン性が低下し耐水性が向上する観点から、撥水性を向上させることができる。また、熱処理により酸が揮発することにより、カチオン基が繊維に吸着しやすくなる観点から、繊維(後述)に対する洗濯耐久性を向上させることができる。
【0073】
酸化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0074】
そして、ポリウレタン樹脂組成物を得るには、脂肪族ポリイソシアネート誘導体と、長鎖活性水素化合物と、カチオン性活性水素化合物と、酸化合物とを反応させる。
【0075】
脂肪族ポリイソシアネート誘導体と、長鎖活性水素化合物と、カチオン性活性水素化合物と、酸化合物とを反応させるには、まず、脂肪族ポリイソシアネート誘導体に、長鎖活性水素化合物を配合し、脂肪族ポリイソシアネート誘導体と、長鎖活性水素化合物とを反応させる。
【0076】
このとき、長鎖活性水素化合物は、例えば、脂肪族ポリイソシアネートのイソシアヌレート誘導体の平均イソシアネート基数が3の場合には、好ましくは、脂肪族ポリイソシアネートのイソシアヌレート誘導体のうち、2つのイソシアネート基が、長鎖活性水素化合物によって、炭素数12以上30以下の炭化水素基に変性され、脂肪族ポリイソシアネートのイソシアヌレート誘導体のうち、1つのイソシアネート基が残存するように、かつ、未反応の脂肪族ポリイソシアネートのイソシアヌレート誘導体が残存しないように、配合される。
【0077】
具体的には、活性水素基に対するイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/活性水素基)が、例えば、1.2以上、好ましくは、1.5以上、また、例えば、2.0以下となるように、脂肪族ポリイソシアネート誘導体に、長鎖活性水素化合物を配合する。
【0078】
これによって、脂肪族ポリイソシアネート誘導体と長鎖活性水素化合物との反応生成物(以下、第1中間反応生成物とする)の分子末端が、炭素数12以上30以下の炭化水素基およびイソシアネート基となる。
【0079】
また、上記の反応は、窒素雰囲気下で実施される。また、反応条件は、反応温度が、例えば、70℃以上120℃以下であり、また、反応時間が、1時間以上6時間以下である。
【0080】
また、上記の反応は、第1中間反応生成物のイソシアネート濃度が、所定の計算値に到達するまで、実施する。
【0081】
なお、イソシアネート濃度は、電位差滴定装置を用いて、JIS K-1556に準拠したn-ジブチルアミン法により、測定することができる。
【0082】
また、上記の反応において、メチルエチルケトンなどの公知の溶媒(溶剤)を、適宜の割合で配合することもできる。
【0083】
次いで、第1中間反応生成物を含む反応液に、カチオン性活性水素化合物を配合し、第1中間反応生成物と、カチオン性活性水素化合物とを反応させる。
【0084】
このとき、カチオン性活性水素化合物は、カチオン性活性水素化合物の活性水素基に対するイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/活性水素基)が、例えば、0.95以上、また、例えば、1.05以下となるように第1中間反応生成物に、配合される。
【0085】
また、上記の反応は、窒素雰囲気下で実施される。また、反応条件は、反応温度が、例えば、70℃以上120℃以下であり、また、反応時間が、0.5時間以上4時間以下である。
【0086】
また、上記の反応は、第1中間反応生成物と、カチオン性活性水素化合物との反応が完結するまで、実施する。
【0087】
また、上記の反応において、メチルエチルケトンなどの公知の溶媒を、適宜の割合で配合することもできる。
【0088】
これにより、第1中間反応生成物と、カチオン性活性水素化合物との反応生成物(以下、第2中間反応生成物とする。)が得られる。
【0089】
第2中間反応生成物は、炭素数12以上30以下の炭化水素基およびカチオン性基を有する。
【0090】
次いで、第2中間反応生成物に、酸化合物を配合する。
【0091】
酸化合物の配合割合は、カチオン性活性水素化合物のカチオン性基1モルに対して、例えば、0.5モル以上、好ましくは、3モル以上であり、また、例えば、10モル以下、好ましくは、4モル以下である。
【0092】
これにより、酸化合物は、第2中間反応生成物のカチオン性基と塩を形成し、脂肪族ポリイソシアネート誘導体と、長鎖活性水素化合物と、カチオン性活性水素化合物と、酸化合物との反応生成物を含む反応液が得られる。
【0093】
上記の反応生成物は、炭素数12以上30以下の炭化水素基を有し、かつ、カチオン性基を有する。
【0094】
また、上記の反応生成物は、炭素数12以上30以下の炭化水素基を有するため、分散剤(乳化剤)によらず、水中で、自己分散(自己乳化)することができる。換言すれば、上記の反応生成物は、内部乳化することができる。
【0095】
次いで、この反応液の温度を、例えば、50℃以上100℃以下に保ちながら、この反応液に、水を加えて、乳化する。
【0096】
その後、この反応液から、溶媒を除去する。
【0097】
これにより、上記の反応生成物を含む水分散液(ポリウレタン樹脂組成物の水分散液)が得られる。
【0098】
水分散液の固形分濃度は、例えば、10質量%以上であり、また、例えば、30質量%以下である。
【0099】
このようなポリウレタン樹脂組成物は、長鎖活性水素化合物を用いて得られる反応生成物を含むため、撥水性に優れるとともに、撥油性、耐油性および防汚性に優れる。
【0100】
また、ポリウレタン樹脂組成物は、カチオン性活性水素化合物を用いて得られる反応生成物を含むため、繊維(後述)との親和性が向上し、その結果、繊維(後述)に対する洗濯耐久性に優れる。
【0101】
また、このようなポリウレタン樹脂組成物において、炭化水素基の濃度は、30%以上であり、また、85%以下、好ましくは、50%である。
【0102】
炭化水素基の濃度が上記下限以上であれば、撥水性を向上させることができる。
【0103】
一方、炭化水素基の濃度が上記下限未満であれば、撥水性が低下する。
【0104】
また、炭化水素基の濃度が上記上限以下であれば、ポリウレタン樹脂の安定性を向上させることができる。
【0105】
一方、炭化水素基の濃度が上記上限を超過すると、ポリウレタン樹脂の安定性が低下する。
【0106】
なお、上記の炭化水素基の濃度は、上記した各成分の仕込み量から算出することができる。
【0107】
なお、上記した説明では、まず、脂肪族ポリイソシアネート誘導体と、長鎖活性水素化合物とを反応させ、第1中間反応生成物を含む反応液を得、次いで、第1中間反応生成物と、カチオン性活性水素化合物とを反応させ、第2中間反応生成物を含む反応液を得、次いで、第2中間反応生成物と、酸化合物とを反応させたが、反応の順序は特に制限されず、例えば、脂肪族ポリイソシアネート誘導体とカチオン性活性水素化合物とを反応させ他後に、長鎖活性水素化合物と酸化合物とを反応させることでもきる。また、脂肪族ポリイソシアネート誘導体と、長鎖活性水素化合物と、カチオン性活性水素化合物と、酸化合物とを一括で配合して、これらを反応させることもできる。
【0108】
そして、ポリウレタン樹脂組成物は、例えば、水(イオン交換水)で希釈した撥水性処理液として用いることができる。
【0109】
このような撥水性処理液に、後述する繊維(繊維製品)を含浸させることによって、繊維(繊維製品)に、撥油性、耐油性および防汚性を付与することができる。
【0110】
また、撥水性処理液には、ブロックイソシアネート組成物を配合することもできる。
【0111】
ブロックイソシアネート組成物は、ポリイソシアネートと、親水性基含有活性水素化合物との反応生成物のイソシアネート基がブロック剤によってブロックされたブロックイソシアネートを含有する。
【0112】
ポリイソシアネートとしては、好ましくは、脂肪族ポリイソシアネート誘導体、より好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体が挙げられる。
【0113】
親水性基含有活性水素化合物は、ポリオキシエチレン基などのノニオン性基や、アニオン性基またはカチオン性基などのイオン性基などの親水性基と、活性水素基とを併有する化合物であって、例えば、2,2-ジメチロールプロピオン酸などのアニオン性活性水素化合物、例えば、上記したカチオン性活性水素化合物、例えば、メトキシポリオキシエチレングリコールなどのノニオン性活性水素化合物などが挙げられ、好ましくは、カチオン性活性水素化合物、より好ましくは、N-メチルジエタノールアミンが挙げられる。
【0114】
好ましくは、ブロックイソシアネート組成物は、脂肪族ポリイソシアネートとカチオン性活性水素化合物との反応生成物のイソシアネート基がブロック剤によってブロックされたブロックイソシアネートを含有する。
【0115】
ブロック剤としては、特に限定されず、公知のブロック剤が採用され、例えば、3,5-ジメチルピラゾールなどのピラゾール系化合物などが挙げられる。
【0116】
そして、このようなブロックイソシアネート組成物を得るには、まず、脂肪族ポリイソシアネート誘導体と、カチオン性活性水素化合物とを反応させる。
【0117】
その後、脂肪族ポリイソシアネート誘導体と、カチオン性活性水素化合物との反応生成物を含む反応液に、ブロック剤を配合し、この反応生成物のイソシアネート基をブロックする。
【0118】
そのあと、この反応生成物のカチオン性基を、酸化合物で中和することにより、ブロックイソシアネート組成物が得られる。
【0119】
ブロックイソシアネート組成物の配合割合は、撥水性処理液に対して、例えば、20質量%以上であり、また、例えば、40質量%以下である。
【0120】
また、ブロックイソシアネート組成物の配合割合は、ポリウレタン樹脂組成物およびブロックイソシアネート組成物の総量100質量部に対して、例えば、20質量部以上であり、また、例えば、40質量部以下である。
【0121】
上記したように、上記のポリウレタン樹脂組成物は、撥水性に優れるとともに、撥油性、耐油性に優れるため、撥剤用として(撥剤の成分として)、好適に用いることができる。
【0122】
本発明の撥剤は、具体的には、撥水剤、撥油剤、耐油剤であり、上記のポリウレタン樹脂組成物を含む。
【0123】
撥剤は、上記のポリウレタン樹脂組成物を含むため、撥水性、撥油性、耐油性に優れ、また、繊維(後述)に対する洗濯耐久性に優れる。
【0124】
このような撥剤で処理される被処理物は、特に限定されず、例えば、繊維(繊維製品)(後述)、紙、石材、ガラス、金属、セメント、樹脂フィルムなどが挙げられる。
【0125】
また、上記したように、上記のポリウレタン樹脂組成物は、繊維に対する洗濯耐久性に優れるため、繊維(繊維製品)に用いるための撥水剤(繊維撥水剤)の成分として、より好適に用いることができる。
【0126】
本発明の繊維撥水剤は、繊維(繊維製品)を撥水処理するものであり、上記のポリウレタン樹脂組成物を含む。
【0127】
繊維としては、例えば、綿または羊毛などなどの天然繊維、例えば、ビスコースレーヨン、レオセルなどの化学繊維、例えば、ポリエステル、ポリアミド、アクリル、ポリウレタン繊維などの合成繊維などが挙げられる。また、繊維製品は、上記の繊維を材料とする製品であって、例えば、布(織物、編物および不織布)などが挙げられる。
【0128】
繊維撥水剤は、上記のポリウレタン樹脂組成物を含むため、撥水性に優れ、また、繊維に対する洗濯耐久性に優れる。
【0129】
また、上記したように、上記のポリウレタン樹脂組成物は、防汚性に優れるため、防汚コート剤の成分として、好適に用いることができる。
【0130】
本発明の防汚コート剤は、上記のポリウレタン樹脂組成物を含む。
【0131】
防汚コート剤は、上記のポリウレタン樹脂組成物を含むため、防汚性に優れる。
【0132】
このような防汚コート剤で処理される被処理物は、特に限定されず、撥剤の被処理物として例示した被処理物などが挙げられる。
【実施例
【0133】
以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。また、以下の記載において特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。
1.脂肪族ポリイソシアネート誘導体の調製
合成例1(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体)
温度計、攪拌装置、窒素導入管および冷却管が装着された反応器において、窒素雰囲気下、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI、三井化学社製、商品名:タケネート700)500質量部、2,6-ジ(tert-ブチル)-4-メチルフェノール(別名:ジブチルヒドロキシトルエン、BHT、ヒンダードフェノール系酸化防止剤)0.25質量部、テトラフェニル・ジプロピレングリコール・ジホスファイト(有機亜リン酸エステル、助触媒)0.25質量を混合した後、この混合液に1,3-ブタンジオール10.7質量部を加え、窒素を、その液相に1時間導入した。その後、混合液を80℃に昇温し3時間反応後、60℃に降温した。その後、イソシアヌレート化触媒として、トリメチル-N-2-ヒドロキシプロピルアンモニウム・2-エチルヘキサノエート 0.2質量部加え、1.5時間反応させた。その後、HDI 100質量部に対して、o-トルエンスルホンアミド 0.04質量部を添加した。その後、この反応混合液を、薄膜蒸留装置(温度150℃、真空度93.3Pa)に通液して、残存HDIモノマー量が0.5%以下になるまで蒸留し、脂肪族ポリイソシアネート誘導体(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体)を得た。得られた脂肪族ポリイソシアネート誘導体の、イソシアネート基含有率は20.9%、平均イソシアネート官能基数は3.0であった。
【0134】
合成例2(ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのイソシアヌレート誘導体) 温度計、攪拌装置、窒素導入管および冷却管が装着された反応器において、窒素雰囲気下、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI、三井化学社製、商品名:タケネート600) 485.2 g およびイソブチルアルコール14.8gを仕込み、90℃に加温し、2時間保持した。その後、反応触媒として、トリメチル-N-2-ヒドロキシプロピルアンモニウム2-エチルヘキサノエート0.2gを加え、反応温度を90±5℃ に調節しながら、2時間反応させた。その後、触媒失活剤として、o-トルエンスルホン酸アミド0.02gを加えて反応触媒を失活させ、反応を停止させた。その後、この反応混合液を、薄膜蒸留装置(温度150℃、真空度93.3Pa)に通液して、残存HXDIモノマー量が0.5%以下になるまで蒸留した。得られた反応液のイソシアネート基含有率は20.2%であった。さらに、この反応液に酢酸エチルを加え、濃度75%の脂肪族ポリイソシアネート誘導体(ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのイソシアヌレート誘導体)を含む反応液を得た。得られた脂肪族ポリイソシアネート誘導体の、イソシアネート基含有率は15.2%、平均イソシアネート官能基数は3.0であった。
【0135】
合成例3(ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体)
温度計、攪拌装置、窒素導入管および冷却管が装着された反応器において、窒素雰囲気下、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI、三井化学社製、商品名:タケネート700)500質量部、および、トリメチロールプロパン(略号:TMP)45.8質量部を装入した。窒素雰囲気下、75℃まで昇温し、トリメチロールプロパンが溶解したことを確認した後、イソシアネート基濃度が計算値(未反応のイソシアネート基の理論量)37.9%に達するまで、83℃で反応させた。その後、この反応溶液を55℃まで降温し、混合抽出溶剤(n-ヘキサン/酢酸エチル=90/10(質量比))を350質量部加え、10分間撹拌し、10分間静置した後、抽出溶剤層を除去した。同抽出操作を4回繰り返した。その後、得られた反応液から、減圧下、80℃に加熱して、反応液中に残留する抽出溶剤を除去した。この反応液のイソシアネート基濃度は17.1質量%であった。さらに、酢酸エチルを加え、濃度75%の脂肪族ポリイソシアネート誘導体(ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体)を含む反応液を得た。得られた脂肪族ポリイソシアネート誘導体の、イソシアネート基含有率は12.8%、平均イソシアネート官能基数は3.3であった。
【0136】
合成例4(ヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート誘導体)
温度計、攪拌装置、窒素導入管および冷却管が装着された反応器において、窒素雰囲気下、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI、三井化学社製、商品名:タケネート700)500質量部、イソブチルアルコール24質量部、2,6-ジ(tert-ブチル)-4-メチルフェノール(別名:ジブチルヒドロキシトルエン、BHT、ヒンダードフェノール系酸化防止剤)0.3質量部、トリス(トリデシル)ホスファイト0 .30質量部を挿入し、85℃で3時間ウレタン化反応させた。その後、アロファネート触媒としてトリス(2-エチルヘキサン酸)ビスマス0.02質量部を添加し、イソシアネート基濃度が計算値(46.7%)に達するまで反応させた後、o-トルエンスルホンアミド0.02質量部を添加した。その後、この反応混合液を、薄膜蒸留装置(温度150℃、真空度93.3Pa)に通液して、残存HDIモノマー量が0.5%以下になるまで蒸留した。その後、反応液100質量部に対し、o-トルエンスルホンアミド0.02質量部を添加し、脂肪族ポリイソシアネート誘導体(ヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート誘導体)を得た。得られた脂肪族ポリイソシアネート誘導体の、イソシアネート基含有率は19.3%、平均イソシアネート官能基数は2.1であった。
【0137】
合成例5(ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット誘導体)
温度計、攪拌装置、窒素導入管および冷却管が装着された反応器において、窒素雰囲気下、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI、三井化学社製、商品名:タケネート700)500質量部、トリス(トリデシル)ホスファイト0.3質量部、トリメチルリン酸8質量部、水3.57質量部を装入し、130℃に昇温し、イソシアネート基含有率が44.6%に達するまで反応させた。その後、この反応混合液を、薄膜蒸留装置(温度150℃、真空度93.3Pa)に通液して、残存HDIモノマー量が0.5%以下になるまで蒸留し、脂肪族ポリイソシアネート誘導体(ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット誘導体)を得た。得られた脂肪族ポリイソシアネート誘導体の、イソシアネート基含有率は22.6%であり、平均イソシアネート官能基数は2.8であった。
2.ポリウレタン樹脂組成物および撥水性処理液の調製
実施例1
攪拌機、温度計、冷却器および窒素ガス導入管を備えた反応器に、脂肪族ポリイソシアネート誘導体として、合成例1の脂肪族ポリイソシアネート誘導体100.08g、長鎖活性水素化合物として、カルコール8098(ステアリルアルコール、花王株式会社製)90.03gを混合し、窒素雰囲気化110℃で、イソシアネート基の濃度が3.67%になるまで4時間反応させた。
【0138】
次いで、反応液を80℃に冷却し、カチオン性活性水素化合物として、N-メチルジエタノールアミン9.89gを加え、80℃で1時間反応させた。
【0139】
次いで、溶剤として、メチルエチルケトン 50.00gを加え、80℃で、赤外吸収スペクトルによりイソシアネート基が消失したことが確認できるまで反応させた。
【0140】
次いで、反応液にメチルエルケトン 57.69gを加え、80℃に昇温し、反応液が完全に溶解するまで混合した後、75℃に冷却した。
【0141】
その後、酸化合物として酢酸 18.93gを加えて中和させた。
【0142】
次いで、反応液を75℃に保ちながら、70℃に加温したイオン交換水 800.0gを徐々に加えて乳化(内部乳化)させた。
【0143】
次いで、エバポレーターにて、水浴温度60℃減圧下で、固形分濃度が20質量%以上となるまで脱溶剤した。
【0144】
次いで、酸化合物(酢酸)を除く固形分濃度が20質量%となるようにイオン交換水にて調整することにより、脂肪族ポリイソシアネート誘導体と長鎖活性水素化合物とカチオン性活性水素化合物と酸化合物との反応生成物を含む水分散液(ポリウレタン樹脂組成物を含む水分散液)を得た。
【0145】
また、得られたポリウレタン樹脂組成物を含む水分散液5gに、イオン交換水95gを加えて希釈し、酸化合物を除いた固形分濃度が1%となるように、撥水性処理液を調製した。
【0146】
実施例2および実施例3、実施例5、実施例8~11、および、比較例1
表1に従って、配合処方を変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリウレタン樹脂組成物を含む水分散液、および、撥水性処理液を調製した。
【0147】
実施例4
表1に従って、配合処方を変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリウレタン樹脂組成物を含む水分散液を製造した。
【0148】
そして、ポリウレタン樹脂組成物と、後述する参考例1のブロックイソシアネート組成物とが、7:3となるように、混合した。そして、この混合物5gに、イオン交換水95gを加えて希釈し、酸化合物を除いた固形分濃度が1%となるように、撥水性処理液を調製した。
【0149】
実施例6
攪拌機、温度計、冷却器および窒素ガス導入管を備えた反応器に、脂肪族ポリイソシアネート誘導体として、合成例1の脂肪族ポリイソシアネート誘導体79.88g、および、合成例2の脂肪族ポリイソシアネート誘導体27.55g、長鎖活性水素化合物として、カルコール8098(ステアリルアルコール、花王株式会社製)67.37g、オレイルアルコール22.22gを混合し、窒素雰囲気下80℃で、固形分あたりのイソシアネート基の濃度が3.66%になるまで反応させた。
【0150】
次いで、カチオン性活性水素化合物として、N-メチルジエタノールアミン9.86gを加え、80℃で1時間反応させた。
【0151】
次いで、反応液に、メチルエチルケトン78.83gを加え、80℃で、赤外吸収スペクトルによりイソシアネート基が消失したことが確認できるまで反応させた。
【0152】
次いで、反応液に、メチルエルケトン 77.92gを加え、80℃に昇温し、反応液が完全に溶解するまで混合した後、75℃に冷却した。
【0153】
次いで、酸化合物として、酢酸18.89gを加えて中和させた。
【0154】
次いで、反応液を75℃に保ちながら、70℃に加温したイオン交換水800.0gを徐々に加えて乳化(内部乳化)させた。
【0155】
次いで、エバポレーターにて、水浴温度60℃減圧下で、固形分濃度が20質量%以上となるまで脱溶剤した。
【0156】
次いで、酸化合物(酢酸)を除く固形分濃度が20質量%となるようにイオン交換水にて調整することにより、脂肪族ポリイソシアネート誘導体と長鎖活性水素化合物とカチオン性活性水素化合物と酸化合物との反応生成物を含む水分散液(ポリウレタン樹脂組成物を含む水分散液)を得た。
【0157】
また、得られたポリウレタン樹脂組成物を含む水分散液5gに、イオン交換水95gを加えて希釈し、酸化合物を除いた固形分濃度が1%となるように、撥水性処理液を調製した。
【0158】
実施例7
表1に従って、配合処方を変更した以外は、実施例6と同様にして、ポリウレタン樹脂組成物を含む水分散液、および、撥水性処理液を調製した。
【0159】
比較例2
攪拌機、温度計、冷却器および窒素ガス導入管を備えた反応器に、合成例1の脂肪族ポリイソシアネート誘導体99.46g、長鎖活性水素化合物として、カルコール8098(ステアリルアルコール、花王株式会社製)89.48gを混合し、窒素雰囲気下110℃で、固形分あたりのイソシアネート基濃度が3.67%になるまで4時間反応させた。
【0160】
次いで、反応液を80℃に冷却し、ジメチロールプロピオン酸11.06gを加え、80℃で1時間反応させた。
【0161】
次いで、反応液に、メチルエチルケトン85.71gを加え、80℃で、赤外吸収スペクトルによりイソシアネート基が消失したことが確認できるまで反応させた。
【0162】
次いで、反応液に、メチルエルケトン98.90gを加え、80℃に昇温し、反応液が完全に溶解するまで混合した後、75℃に冷却した。
【0163】
次いで、中和剤として、トリエチルアミン25.03gを加えて中和させた。
【0164】
次いで、反応液を75℃に保ちながら、70℃に加温したイオン交換水 800.0gを徐々に加えて乳化(内部乳化)させた。
【0165】
次いで、エバポレーターにて、水浴温度60℃減圧下で、固形分濃度が20質量%以上となるまで脱溶剤した。
【0166】
次いで、中和剤(トリエチルアミン)を除く固形分濃度が20質量%となるようにイオン交換水にて調整することにより、ポリウレタン樹脂組成物を含む水分散液を得た。
【0167】
また、得られたポリウレタン樹脂組成物を含む水分散液5gに、イオン交換水95gを加えて希釈し、中和剤を除いた固形分濃度が1%となるように、撥水性処理液を調製した。
【0168】
比較例3
オーバーヘッド撹拌機、熱電対、ディーン・スターク/コンデンサを備えた250mlの四つ口丸底フラスコに、レオドールSP-S30V(ソルビタントリステアレート、花王株式会社製)116.0gと、4-メチル-2-ペンタノン(MIBK)150gを添加した。得られた反応液を1時間還流させ、残留水分を全て除去した。1時間後、反応液を50℃まで冷却し、デスモデュール(DESMODUR)N-100(ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット誘導体、Bayer社製)30gを加え、次いで、触媒を添加して、溶液を80℃まで1時間加熱した。これにより、ソルビタンウレタン/MIBK溶液を調製した。
【0169】
別途、水300g、アルミーン(ARMEEN)DM-18D(Akzo-Nobel社製、N,N-ジメチル-n-オクタデシルアミン)5.6g、タージトール(TERGITOL)TMN-10(Sigma-Aldrich製、ポリエチレングリコールトリメチルノニルエーテル)2.8gおよび酢酸3.4gを、ビーカーに添加して、撹拌し、界面活性剤溶液を製造し、この界面活性剤溶液を60℃まで加熱した。次いで、上記のソルビタンウレタン/MIBK溶液を60℃まで冷却し、ソルビタンウレタン/MIBK溶液に、界面活性剤溶液をゆっくりと添加し、混合物を得た。これにより、乳白色のエマルションが生成された(外部乳化)。そして、この混合物を、41MPa(6000psi)で均質化し、得られたエマルションを減圧下で蒸溜し、溶媒を除去して、25質量%のポリウレタン樹脂組成物を含む水分散液を得た。
【0170】
また、得られたポリウレタン樹脂組成物を含む水分散液5gに、イオン交換水95gを加えて希釈し、酸化合物を除いた固形分濃度が1%となるように、撥水性処理液を調製した。
【0171】
参考例1
攪拌機、温度計、冷却器および窒素ガス導入管を備えた反応器に、合成例1の脂肪族ポリイソシアネート誘導体141.09g、カチオン性活性水素化合物として、N-メチルジエタノールアミン13.94g、溶剤として、メチルエチルケトン 85.71gを混合し、窒素雰囲気化60℃で2時間、その後、70℃に昇温し、固形分あたりのイソシアネート基濃度が12.7%になるまで反応させた。
【0172】
次いで、この反応液を22℃に冷却し、ブロック剤として、3,5-ジメチルピラゾール44.97gを反応溶液の温度が50℃を超えないよう数回に分けて加え、その後、50℃で1時間反応させ、赤外吸収スペクトルにより、イソシアネート基がブロック化されていることを確認した。
【0173】
次いで、反応液を25℃に冷却し、酸化合物として、酢酸7.02gを加えて中和させた。
【0174】
次いで、反応液にイオン交換水 800.0gを徐々に加えて乳化させた。
【0175】
次いで、エバポレーターにて、水浴温度40℃減圧下で、固形分濃度が20質量%以上となるまで脱溶剤した。
【0176】
次いで、酸化合物(酢酸)を除く固形分濃度が20質量%となるようにイオン交換水にて調整することにより、ブロックイソシアネート組成物を得た。
【0177】
また、得られたポリウレタン樹脂組成物を含む水分散液5gに、イオン交換水95gを加えて希釈し、酸化合物を除いた固形分濃度が1%となるように、撥水性処理液を調製した。
3.評価
a)平均イソシアネート官能基数
各合成例の脂肪族ポリイソシアネート誘導体の平均イソシアネート官能基数は、脂肪族ポリイソシアネート誘導体のイソシアネート基濃度A、固形分濃度B、および、以下の装置および条件にて測定されるゲルパーミエーションクロマトグラフィーの数平均分子量Cから、下記式(1)により算出した。
【0178】
平均イソシアネート官能基数=A/B×C/42.02 (1)
(式中、Aは、脂肪族ポリイソシアネート誘導体のイソシアネート基濃度を示し、Bは、固形分濃度を示し、Cは、数平均分子量を示す。)
また、脂肪族ポリイソシアネート誘導体を、2種併用する実施例6~実施例9の平均イソシアネート官能基数は、脂肪族ポリイソシアネート誘導体の重量比とその平均イソシアネート官能基数により算出した。その結果を表1に示す。
(数平均分子量の測定条件)
装置:HLC-8220GPC(東ソー製)
カラム:TSKgelG1000HXL、TSKgelG2000HXL、およびTSKgelG3000HXL(東ソー製)を直列に連結した
検出器:示差屈折率計
注入量:100μL
溶離液:テトラヒドロフラン
流量:0.8mL/min
温度:40℃
検量線:106~22450の範囲の標準ポリエチレンオキシド(東ソー製、商品名:TSK標準ポリエチレンオキシド)
b)撥水性および洗濯耐久性
(処理布の準備)
各実施例および各比較例の撥水性処理液に、試験用綿布(カナキン3号)を1回含浸した後、この試験用綿布を1回絞り(ピックアップ100%)、その後、110℃で2分乾燥した。
【0179】
その後、170℃で2分加熱し、処理布(170℃2分)を得、別途、170℃で10分加熱し、処理布(170℃10分)を得た。
(洗濯前撥水性)
各実施例および各比較例の処理布(170℃2分)および処理布(170℃10分)に、スポイトで水滴を10滴落とし、その水滴が、処理布に染み込まないで残っていた水滴の数を、計測した。
【0180】
なお、計測は、スポイトで水滴を10滴落とした後から、15分経過後、30分経過後に実施した。その結果を表2に示す。
(洗濯後撥水性)
各実施例および各比較例の処理布(170℃2分)および処理布(170℃10分)を、以下の条件で洗濯した後(5回または10回洗濯した後)、スポイトで水滴を10滴落とし、その水滴が、処理布に染み込まないで残っていた水滴の数を、計測した。なお、計測は、スポイトで水滴を10滴落とした後から、15分経過後と、30分経過後または90分経過後とに実施した。その結果を表2に示す。
【0181】
<洗濯条件>
洗濯:東芝 AW-F42S(パルセーター式洗濯機)標準モード
洗剤:洗濯用合成洗剤 ボールド フレッシュピュアクリーン(プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン株式会社製)記載の濃度(水45Lに対して洗剤約43g)
乾燥:東芝 ED-50(タンブラー式乾燥機) 標準モード
(撥水性および洗濯耐久性の評価)
各実施例および各比較例について、以下の基準に基づいて、撥水性を評価した。その結果を表2に示す。
〇:処理布(170℃10分)に関して、洗濯前撥水性評価(15分経過後)および洗濯前撥水性評価(30分経過後)における水滴の数が、ともに、10である。
△:処理布(170℃10分)に関して、洗濯前撥水性評価(15分経過後)および洗濯前撥水性評価(30分経過後)のうち、少なくとも一方おける水滴の数が、1以上10未満である。
×:処理布(170℃10分)に関して、洗濯前撥水性評価(15分経過後)および洗濯前撥水性評価(30分経過後)のうち、少なくとも一方における水滴の数が、0である。
【0182】
また、各実施例および各比較例について、以下の基準に基づいて、洗濯耐久性を評価した。その結果を表2に示す。
〇:処理布(170℃10分)に関して、洗濯後撥水性評価(10回洗濯後、15分経過後)および洗濯後撥水性評価(10回洗濯後、30分経過後)における水滴の数が、ともに、10である。
△:処理布(170℃10分)に関して、洗濯後撥水性評価(10回洗濯後、15分経過後)および洗濯後撥水性評価(10回洗濯後、30分経過後))のうち、少なくとも一方における水滴の数が、1以上10未満である。
×:処理布(170℃10分)に関して、洗濯後撥水性評価(10回洗濯後、15分経過後)および洗濯後撥水性評価(10回洗濯後、30分経過後))のうち、少なくとも一方における水滴の数が、0である。
(防汚性)
実施例2の撥水性処理液を、以下の条件で各基材(ガラス、ボンデ鋼板、アクリル(白)およびPETフィルム)に塗布し塗膜を作成した。
【0183】
実施例2の撥水性処理液を、ガラスの一方面の半分に、乾燥後の厚みが約5μmとなるようにバーコーターで塗布し、その後、室温で乾燥し、さらに、110℃1時間加熱した。これにより、塗膜を得、ガラスの一方面に、塗膜が形成されたコート部分と、塗膜が形成されていない非コート部分とを形成した。
【0184】
別途、実施例2の撥水性処理液を、ボンデ鋼板(株式会社テストピース)の一方面の半分に、乾燥後の厚みが約5μmとなるようにバーコーターで塗布し、その後、室温で乾燥し、さらに、110℃1時間加熱した。これにより、塗膜を得、ボンデ鋼板の一方面に、塗膜が形成されたコート部分と、塗膜が形成されていない非コート部分とを形成した。
【0185】
別途、実施例2の撥水性処理液を、アクリル(白)(株式会社テストピース)の一方面の半分に、乾燥後の厚みが約5μmとなるようにバーコーターで塗布し、その後、室温で乾燥し、さらに110℃1時間加熱した。これにより、塗膜を得、アクリル(白)の一方面に、塗膜が形成されたコート部分と、塗膜が形成されていない非コート部分とを形成した。
【0186】
別途、実施例2の撥水性処理液を、PETフィルム(東洋紡社製、商品名E5102、厚み12μm)の一方面(コロナ処理面)の半分に、乾燥後の厚みが約2μmとなるようにバーコーターで塗布し、110℃2分加熱した。これにより、塗膜を得、PETフィルムの一方面に、塗膜が形成されたコート部分と、塗膜が形成されていない非コート部分とを形成した。
【0187】
各基材の一方面における、コート部分と非コート部分とに、水を垂らした。
【0188】
すべての基材において、コート部分の方が、非コート部分に比べて、よく水を弾いた。
【0189】
これにより、ポリウレタン樹脂組成物を用いれば、各基材に対して、撥水性を付与できるとわかった。
【0190】
また、各基材のコート部分を水拭きすると、コート部分に付着した指紋の跡を容易に除去することができた。
【0191】
これにより、ポリウレタン樹脂組成物を用いれば、各基材に対して、防汚性を付与できるとわかった。
【0192】
【表1】
【0193】
【表2】
【0194】
4.考察
炭化水素基の濃度が、30%以上85%以下である実施例1~実施例11は、炭化水素基の濃度が、30%未満である比較例1よりも、撥水性および洗濯耐久性に優れる。
【0195】
このことから、炭化水素基の濃度が、30%以上85%以下であれば、撥水性および洗濯耐久性を向上できることがわかった。
【0196】
また、カチオン性活性水素化合物を用いた実施例1~実施例11は、アニオン性活性水素化合物を用いた比較例2よりも、撥水性および洗濯耐久性に優れる。
【0197】
このことから、カチオン性活性水素化合物を用いれば、撥水性および洗濯耐久性を向上できることがわかった。
【0198】
また、内部乳化により得られた実施例5、外部乳化により得られた比較例3に比べて、洗濯耐久性に優れる。
【0199】
このことから、内部乳化によって、反応生成物を調製すれば、洗濯耐久性を向上できることがわかった。
【0200】
また、内部乳化した実施例5は、外部乳化した比較例3よりも、洗濯耐久性に優れる。
【0201】
洗濯前の撥水性能が同等でも、内部乳化した実施例5では、繊維に親和性を持つカチオン基が樹脂に導入されているため、繊維との相互作用ができ、洗濯後も脱落せずに撥水性を保持するが、外部乳化した比較例3では、繊維と親和するカチオン基が樹脂には導入されていないため、洗濯により樹脂が脱落しやすいため、洗濯後に撥水性が低下したと推認される。
【0202】
なお、上記発明は、本発明の例示の実施形態として提供したが、これは単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。当該技術分野の当業者によって明らかな本発明の変形例は、後記請求の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0203】
本発明のポリウレタン樹脂組成物、撥剤、繊維撥水剤および防汚コート剤は、各種産業製品に利用でき、例えば、表面処理剤用途に好適に用いることができる。