(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】酸化還元フローバッテリーシステム、並びに製造及び操作方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/18 20060101AFI20240521BHJP
H01M 8/008 20160101ALI20240521BHJP
H01M 8/02 20160101ALI20240521BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20240521BHJP
H01M 8/043 20160101ALI20240521BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20240521BHJP
H01M 8/0444 20160101ALN20240521BHJP
H01M 8/04746 20160101ALN20240521BHJP
【FI】
H01M8/18
H01M8/008
H01M8/02
H01M8/04 Z
H01M8/043
H01M8/04537
H01M8/0444
H01M8/04746
(21)【出願番号】P 2021568882
(86)(22)【出願日】2020-05-18
(86)【国際出願番号】 US2020033376
(87)【国際公開番号】W WO2020236700
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2023-05-09
(32)【優先日】2020-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522464300
【氏名又は名称】クーガー クリーク テクノロジーズ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ クイ
(72)【発明者】
【氏名】リ リユ
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-064863(JP,A)
【文献】特表2014-532284(JP,A)
【文献】国際公開第2018/147682(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0084482(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00- 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
酸化還元フローバッテリーシステムであって、
アノード液と、
カソード液と、
前記アノード液と接する第1の電極を備える第1の半電池と、
前記カソード液と接する第2の電極を備える第2の半電池と、
前記第1の半電池を前記第2の半電池と分離する、第1のセパレータと、
を備える、酸化還元フローバッテリーシステムと、
バランス設備であって、
溶液中にバナジウムイオンを含むバランス電解質と、
前記アノード液又は前記カソード液と接する第3の電極を備える第3の半電池と、
前記バランス電解質と接する第4の電極を備える第4の半電池と、
前記第3の半電池を前記第4の半電池と分離する、第2のセパレータと、
ジオキソバナジウムイオンを還元するための、前記バランス電解質内の、又は、前 記バランス電解質に導入可能な還元剤と、
を備えるバランス設備と、
を備える、システム。
【請求項2】
前記第3及び前記第4の電極に接続した、又は接続可能であり、前記第3の電極と前記第4の電極との間に電位を生じさせる、電位源を更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
システムであって、
酸化還元フローバッテリーシステムであって、
アノード液と、
カソード液と、
前記アノード液と接する第1の電極を備える第1の半電池と、
前記カソード液と接する第2の電極を備える第2の半電池と、
前記第1の半電池を前記第2の半電池と分離する、第1のセパレータと、
を備える、酸化還元フローバッテリーシステムと、
バランス設備であって、
溶液中にバナジウムイオンを含むバランス電解質と、
a)V
3+及びV
2+イオン、又はb)Fe
3+及びFe
2+イオンのいずれかの任意の組 み合わせを含む中間電解質と、
前記アノード液又は前記カソード液と接する第3の電極を備える第3の半電池と、
中間電解質と接した第5の電極を備える第5の半電池と、
前記第3の半電池と前記第5の半電池との間の第2のセパレータと、
前記バランス電解質と接する第4の電極を備える第4の半電池と、
前記中間電解質と接した第6の電極を備える第6の半電池と、
前記第4の半電池と前記第6の半電池との間の第3のセパレータと、
ジオキソバナジウムイオンを還元するための、前記バランス電解質内の、又は、前 記バランス電解質に導入可能な還元剤と、
を備えるバランス設備と、
を
備える、システム。
【請求項4】
a)前記第3の電極と前記第5の電極との間に電位を生じさせる、前記第3の電極及び前記第5の電極、並びに、b)前記第4の電極と前記第6の電極との間に電位を生じさせる、前記第4の電極及び前記第6の電極に接続した、又は接続可能な、少なくとも1つの電位源を更に含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記還元剤が有機化合物を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記還元剤が糖、カルボン酸、アルデヒド、又はアルコールを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記還元剤がフルクトース、グルコース、又はスクロースを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記システムが、前記酸化還元フローバッテリーシステムの操作中に、前記バランス設備を継続して操作するように構成される、請求項1~7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記システムが、前記酸化還元フローバッテリーシステムの操作中に、前記バランス設備を間欠的に、又は周期的に操作するように構成される、請求項1~7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記システムが、前記酸化還元フローバッテリーシステムとは独立して、前記バランス設備を操作するように構成される、請求項1~9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記バランス設備及び前記酸化還元フローバッテリーシステムが一体化されており、少なくとも1つの共通構成要素を利用する、請求項1~10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のシステムの操作方法であって、
前記バランス電解質中で前記バナジウムイオンをジオキソバナジウムイオンに酸化して水素イオンを生成することと、
前記還元剤を用いて前記ジオキソバナジウムイオンを還元して、前記バナジウムイオンを再生成することと、
を含む、方法。
【請求項13】
前記バナジウムイオンを再生成することが、前記バランス設備のバランスタンクに前記還元剤を添加することを含み、前記バランスタンクが、前記バランス電解質の一部を含有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記バナジウムイオンを再生成することが、前記還元剤を前記バランス電解質に、間欠的に又は周期的に添加することを含む、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記バナジウムイオンを再生成することが、
前記バランス電解質の少なくとも一部を前記バランス設備から取り出すことと、
前記還元剤を、前記バランス電解質の前記取り出した一部に導入することと、
前記バランス電解質の前記取り出した一部を前記バランス設備に戻すことと、
を含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本特許出願は、2019年5月20日に出願された、米国特許仮出願番号第62/849,959号の優先権を主張し、本特許出願は、米国特許出願番号第16/824,027号、同第16/824,073号、同第16/824,119号、同第16/824,144号、同第16/824,159号、及び同第16/824,195号のそれぞれの一部継続出願であり、これらの一部継続出願は全て、2020年3月19日に出願されており、これらはそれぞれ、2019年5月20日に出願された米国特許仮出願番号第62/849,959号の優先権もまた主張し、これらの一部継続出願は全て、それら全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明は、酸化還元フローバッテリーシステムの領域、並びに、酸化還元フローバッテリーシステムの製造方法及び操作方法に関する。本発明は、イオン-クロム(Fe-Cr)酸化還元フローバッテリーシステム、並びに、Fe-Cr酸化還元フローバッテリーシステムの作製方法及び使用方法にもまた関する。
【背景技術】
【0003】
再生可能な発電のコストは、過去10年間で急速に下がっており、より再生可能な発電要素、例えばソーラーパネルが実装されるにつれ、低下し続けている。しかし、再生可能な電源、例えば太陽光源、水力電気源、及び風力源は多くの場合、間欠的なものであり、ユーザ負荷のパターンは典型的には、源の間欠的な性質と一致しない。利用可能なときに、再生可能電力源により生成した電力を貯蔵し、再生可能電力源からの電力生成が不十分な際に、ユーザに電力を供給する、手頃かつ信頼のできるエネルギー貯蔵システムが必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
一実施形態は、アノード液と、カソード液と、アノード液と接した第1の電極を有する第1の半電池と、カソード液と接した第2の電極を有する第2の半電池と、第1の半電池を第2の半電池と分離する、第1のセパレータと、を備える酸化還元フローバッテリーシステムを備えるシステムである。システムは、溶液中にバナジウムイオンを有するバランス電解質と、アノード液又はカソード液と接した第3の電極を有する第3の半電池と、バランス電解質と接した第4の電極を有する第4の半電池と、ジオキソバナジウムイオンを還元するための、バランス電解質内の、又は、バランス電解質に導入可能な還元剤と、を備えるバランス設備もまた備える。
少なくともいくつかの実施形態では、システムは、第3の半電池を第4の半電池と分離する第2のセパレータを更に備える。少なくともいくつかの実施形態では、システムは、第3及び第4の電極に接続した、又は接続可能であり、第3の電極と第4の電極との間に電位を生じさせる、電位源を更に備える。
少なくともいくつかの実施形態では、システムは、a)V3+及びV2+イオン、又はb)Fe3+及びFe2+イオンのいずれかの任意の組み合わせを有する中間電解質と、中間電解質と接した第5の電極を有する第5の半電池と、第3の半電池と第5の半電池との間の第2のセパレータと、中間電解質と接した第6の電極を有する第6の半電池と、第4の半電池と第6の半電池との間の第3のセパレータと、を更に備える。少なくともいくつかの実施形態では、システムは、a)第3の電極と第5の電極との間に電位を生じさせる、第3の電極及び第5の電極、並びに、b)a)第4の電極と第6の電極との間に電位を生じさせる、第4の電極及び第6の電極に接続した、又は接続可能な、少なくとも1つの電位源を更に備える。
少なくともいくつかの実施形態では、第3の半電池はカソード液と接する。少なくともいくつかの実施形態では、還元剤は有機化合物を含む。少なくともいくつかの実施形態は、糖、カルボン酸、アルデヒド、又はアルコールを含む。少なくともいくつかの実施形態では、還元剤は水素ガスを含む。少なくともいくつかの実施形態では、還元剤はフルクトース、グルコース、又はスクロースを含む。
少なくともいくつかの実施形態では、システムは、酸化還元フローバッテリーシステムの操作中に、バランス設備を継続して操作するように構成される。少なくともいくつかの実施形態では、システムは、酸化還元フローバッテリーシステムの操作中に、バランス設備を間欠的に、又は周期的に操作するように構成される。
少なくともいくつかの実施形態では、システムは、酸化還元フローバッテリーシステムとは独立して、バランス設備を継続して操作するように構成される。少なくともいくつかの実施形態では、バランス設備及び酸化還元フローバッテリーシステムは一体化されており、少なくとも1つの共通構成要素を利用する。
少なくともいくつかの実施形態では、アノード液は、溶液中にクロムイオンを有する。少なくともいくつかの実施形態では、カソード液は、溶液中に鉄イオンを有する。
【0005】
別の実施形態は、上述したシステムのいずれかの操作方法である。方法は、バランス電解質中でバナジウムイオンをジオキソバナジウムイオンに酸化させて水素イオンを生成することと、還元剤を用いてジオキソバナジウムイオンを還元して、バナジウムイオンを再生成することと、を含む。
少なくともいくつかの実施形態では、バナジウムイオンを再生成することは、バランス設備のバランスタンクに還元剤を添加することを含み、バランスタンクは、バランス電解質の一部を含有する。少なくともいくつかの実施形態では、バナジウムイオンを再生成することは、還元剤をバランス電解質に、間欠的に、又は周期的に、又は連続して添加することを含む。
少なくともいくつかの実施形態では、バナジウムイオンを再生成することは、バランス電解質の少なくとも一部分をバランス設備から取り出すことと、還元剤を、バランス電解質の取り出した一部分に導入することと、バランス電解質の取り出した一部分をバランス設備に戻すことと、を含む。
【0006】
一実施形態は、アノード液及びカソード液を含む酸化還元フローバッテリーシステムの、貯蔵能力又は平均酸化状態(AOS)の測定方法である。方法は、所定の放出速度の10%以内の放出速度で、酸化還元フローバッテリーシステムのアノード液及びカソード液の一部分を放出することと、酸化還元フローバッテリーシステムのアノード液及びカソード液の一部分を放出した後で、エンドOCVを測定することと、エンドOCVから貯蔵能力又はAOSを測定することと、を含む。
少なくともいくつかの実施形態では、貯蔵能力又はAOSを測定することは、所定のOCV曲線、ルックアップテーブル、較正表、又はエンドOCVに関連する数学的関係から、事前に選択した放電速度の元での貯蔵能力又はAOSへの、貯蔵能力又はAOSを測定することを含む。少なくともいくつかの実施形態では、放出することは、アノード液中のCr2+イオンが10%以下となるまで、酸化還元フローバッテリーシステムのアノード液及びカソード液の一部分を放出することを含む。少なくともいくつかの実施形態では、放出することは、酸化還元フローバッテリーシステムを自己放出することを含む。
【0007】
少なくともいくつかの実施形態では、酸化還元フローバッテリーシステムは、少なくとも2つの半電池と、少なくとも2つの電極と、を備え、電極のそれぞれが、半電池の一方と関連する。少なくともいくつかの実施形態では、放出することは、少なくとも2つの半電池内のアノード液及びカソード液を放出することを含む。少なくともいくつかの実施形態では、本方法は更に、放出の前、及び放出中に、酸化還元フローバッテリーシステム内で、アノード液又はカソード液のうち少なくとも1つの流れを止めることを含む。少なくともいくつかの実施形態では、少なくとも2つの半電池は、酸化還元フローバッテリーシステムのバッテリースタックの一部である。少なくともいくつかの実施形態では、少なくとも2つの半電池は、酸化還元フローバッテリーシステムのバッテリースタックの一部ではない。
【0008】
別の実施形態は、鉄及びクロムを含むカソード液及びアノード液を含む酸化還元フローバッテリーシステムの、貯蔵能力又は平均酸化状態(AOS)を測定する方法である。方法は、酸化還元フローバッテリーシステムの開放電圧(OCV)を測定することと、a)又はb)の少なくとも1つ:a)カソード液中での、1つの鉄イオン種の量若しくは濃度の測定、又はb)アノード液中での、1つのクロムイオン種の量若しくは濃度の測定、を行うことと、i)1つの鉄イオン種の測定された量若しくは濃度、1つのクロムイオン種の測定された量若しくは濃度、又は、1つの鉄イオン種と1つのクロムイオン種の両方の、測定された量若しくは濃度、ii)測定されたOCV、並びに、iii)貯蔵能力又はAOSと、それぞれ、測定されたOCVにて、カソード液又はアノード液中で、1つの鉄イオン種又は1つのクロムイオン種の、量又は濃度との所定の関係を用いて、貯蔵能力又はAOSを測定することと、を含む。
少なくともいくつかの実施形態では、貯蔵能力又はAOSを測定することは、所定のOCV曲線、ルックアップテーブル、較正表、又はOCVに関する数学的関係から、以下の1つ:バランス酸化還元フローバッテリーシステムでの、1つの鉄イオン種の量若しくは濃度、バランス酸化還元フローバッテリーシステムでの、1つのクロムイオン種の量若しくは濃度、又は、バランス酸化還元フローバッテリーシステムでの、鉄イオン種又は1つのクロムイオン種の両方の量又は濃度への、貯蔵能力又はAOSを測定することを含む。少なくともいくつかの実施形態では、カソード液中の鉄に対する、アノード液中のクロムのモル比は、少なくとも1.25である。
【0009】
少なくともいくつかの実施形態では、酸化還元フローバッテリーシステムは、少なくとも2つの半電池と、少なくとも2つの電極と、を備え、電極のそれぞれが、半電池の一方と関連する。少なくともいくつかの実施形態では、本方法は更に、測定の前、及び測定中に、酸化還元フローバッテリーシステム内で、アノード液又はカソード液のうち少なくとも1つの流れを止めることを含む。少なくともいくつかの実施形態では、2つの半電池は、酸化還元フローバッテリーシステムのバッテリースタックの一部である。少なくともいくつかの実施形態では、2つの半電池は、酸化還元フローバッテリーシステムのバッテリースタックの一部ではない。
【0010】
少なくともいくつかの実施形態では、本方法は更に、測定に応答してAOSをリバランスすることを含む。少なくともいくつかの実施形態では、AOSのバランスをリバランスすることは、バランス電解質中でバナジウムイオンをジオキソバナジウムイオンに酸化させて水素イオンを生成することと、還元剤を使用してジオキソバナジウムイオンを還元することにより、バナジウムイオンを再生成することと、を含み、酸化還元フローバッテリーシステムのアノード液又はカソード液が、少なくとも2つの半電池を使用して、バランス電解質を含むバランス設備を構成する。
少なくともいくつかの実施形態では、1つの鉄イオン種を測定すること、又は、Cr3+を測定することは、それぞれ、Fe3+又はCr3+を還元することと、バナジウムイオンを酸化することと、を含む。少なくともいくつかの実施形態では、本方法は更に、還元剤を使用してジオキソバナジウムイオンを還元することにより、バナジウムイオンを再生成することを含む。
【0011】
一実施形態は、酸化還元フローバッテリーシステムの平均酸化状態(AOS)を測定する方法である。方法は、酸化還元フローバッテリーシステムの放電状態から開始し、充電電圧の変更点までの、低電位充電期間の間、充電容量を測定することと、酸化還元フローバッテリーシステムの、測定した充電容量並びにアノード液及びカソード液の体積を使用して、AOSを測定することと、を含む。
少なくともいくつかの実施形態では、酸化還元フローバッテリーシステムのアノード液及びカソード液は共に、クロムイオン及び鉄イオンを含み、AOSを測定することは、アノード液及びカソード液中でのクロムイオン及び鉄イオンの初期濃度を用いて、AOSを測定することを更に含む。少なくともいくつかの実施形態では、カソード液中の鉄に対する、アノード液中のクロムのモル比は、少なくとも1.25である。少なくともいくつかの実施形態では、低電位充電期間は、アノード液でのFe3+の還元期間に対応する。
【0012】
少なくともいくつかの実施形態では、本方法は更に、測定に応答してAOSをリバランスすることを含む。少なくともいくつかの実施形態では、AOSのバランスをリバランスすることは、バランス電解質中でバナジウムイオンをジオキソバナジウムイオンに酸化させて水素イオンを生成することと、還元剤を使用してジオキソバナジウムイオンを還元することにより、バナジウムイオンを再生成することと、を含み、酸化還元フローバッテリーシステムのアノード液又はカソード液が、少なくとも2つの半電池を使用して、バランス電解質を含むバランス設備を構成する。
少なくともいくつかの実施形態では、本方法は更に、充電容量を測定する前に、電位を印加して酸化還元フローバッテリーシステムを放電することを含む。少なくともいくつかの実施形態では、充電容量を測定することは、酸化還元フローバッテリーシステム内のアノード液の充電容量を測定することを含む。少なくともいくつかの実施形態では、充電容量を測定することは、酸化還元フローバッテリーシステムから取り出したアノード液の一部で、充電容量を測定することを含む。
【0013】
別の実施形態は、共に鉄及びクロムイオンを含むカソード液及びアノード液を含む、酸化還元フローバッテリーシステムの平均酸化状態(AOS)を測定する方法である。方法は、カソード液又はアノード液のいずれかの第1のものでの、第1のイオン種の量又は濃度をin situで測定することと、カソード液又はアノード液のいずれかの第2のものでの、第2のイオン種の量又は濃度をin situで測定することと、測定した量又は濃度、カソード液及びアノード液中での鉄及びクロムの初期濃度又は量、並びに、酸化還元フローバッテリーシステムのアノード液及びカソード液の体積を使用してAOSを測定することと、を含む。
少なくともいくつかの実施形態では、カソード液中の鉄に対する、アノード液中のクロムのモル比は、少なくとも1.25である。少なくともいくつかの実施形態では、本方法は更に、測定に応答してAOSをリバランスすることを含む。少なくともいくつかの実施形態では、AOSのバランスをリバランスすることは、バランス電解質中でバナジウムイオンをジオキソバナジウムイオンに酸化させて水素イオンを生成することと、還元剤を使用してジオキソバナジウムイオンを還元することにより、バナジウムイオンを再生成することと、を含み、酸化還元フローバッテリーシステムのアノード液又はカソード液が、少なくとも2つの半電池を使用して、バランス電解質を含むバランス設備を構成する。
少なくともいくつかの実施形態では、第1のイオン種の量又は濃度をin situで測定することは、流れていないカソード液又はアノード液のいずれかの第1のもの、及び、流れているカソード液又はアノード液の別のものにより、第1のイオン種の量又は濃度を測定することを含む。少なくともいくつかの実施形態では、第2のイオン種の量又は濃度をin situで測定することは、流れていないカソード液又はアノード液のいずれかの第2のもの、及び、流れているカソード液又はアノード液の別のものにより、第2のイオン種の量又は濃度を測定することを含む。
少なくともいくつかの実施形態では、第1のイオン種の量又は濃度をin situで測定することは、バランス電解質中のバナジウムイオンを用いて、第1のイオン種を電気滴定することにより、第1のイオン種の量又は濃度を測定することを含む。
【0014】
更に別の実施形態は、共に鉄及びクロムイオンを含むカソード液及びアノード液を含む、酸化還元フローバッテリーシステムの平均酸化状態(AOS)を測定する方法である。方法は、酸化還元フローバッテリーシステムの放電中に放電速度を測定することと、放電の変更点を測定し、変更点の後で開回路電圧(OCV)を測定することと、測定したOCVを用いてFe3+の濃度を推定することと、酸化還元フローバッテリーシステムの、測定した濃度並びにアノード液及びカソード液の体積を使用して、AOSを測定することと、を含む。
少なくともいくつかの実施形態では、カソード液中の鉄に対する、アノード液中のクロムのモル比は、少なくとも1.25である。少なくともいくつかの実施形態では、本方法は更に、測定に応答してAOSをリバランスすることを含む。少なくともいくつかの実施形態では、AOSのバランスをリバランスすることは、バランス電解質中でバナジウムイオンをジオキソバナジウムイオンに酸化させて水素イオンを生成することと、還元剤を使用してジオキソバナジウムイオンを還元することにより、バナジウムイオンを再生成することと、を含み、酸化還元フローバッテリーシステムのアノード液又はカソード液が、少なくとも2つの半電池を使用して、バランス電解質を含むバランス設備を構成する。
【0015】
一実施形態は、溶液中に第1のイオン種を有するアノード液と、溶液中に第2のイオン種を有するカソード液と、アノード液と接する第1の電極であって、第1の電極が、アノード液中で還元された金属様不純物の粒子を収集するためのチャネルを含む、第1の電極と、カソード液と接する第2の電極と、アノード液をカソード液と分離するセパレータと、を備える酸化還元フローバッテリーシステムであり、酸化還元フローバッテリーシステムが、充電中に、アノード液中の第1のイオン種を還元し、カソード液中の第2のイオン種を酸化するように構成されている。
少なくともいくつかの実施形態では、第1のイオン種は、クロムイオン種を含む。少なくともいくつかの実施形態では、第2のイオン種は、鉄イオン種を含む。少なくともいくつかの実施形態では、金属様不純物は、ニッケル、アンチモン、亜鉛、白金、パラジウム、金、又は銅のうちの少なくとも1つを含む。
少なくともいくつかの実施形態では、酸化還元フローバッテリーシステムは、溶液を洗浄することを更に含み、酸化還元フローバッテリーシステムは、第1の電極に洗浄溶液を流し、還元された金属様不純物の粒子を取り除くように構成される。少なくともいくつかの実施形態では、洗浄溶液は、カソード液の少なくとも一部分である。少なくともいくつかの実施形態では、洗浄溶液は、過酸化水素又は塩化第二鉄を含む。
【0016】
別の実施形態は、酸化還元フローバッテリーシステムのアノード液中での、金属様不純物の還元方法である。方法は、アノード液中で金属様不純物を還元することと、還元された金属様不純物の粒子を収集することと、収集した粒子を、洗浄溶液を使用して取り除くことと、を含む。
少なくともいくつかの実施形態では、粒子を収集することは、還元された金属様不純物の粒子の少なくとも一部分を、酸化還元フローバッテリーシステムの電極上で収集することを含む。少なくともいくつかの実施形態では、電極は、還元された金属様不純物の粒子を収集するための、互いにかみ合った開口部又は陥凹部を備える。少なくともいくつかの実施形態では、金属様不純物は、ニッケル、アンチモン、亜鉛、白金、パラジウム、金、又は銅のうちの少なくとも1つを含む。
少なくともいくつかの実施形態では、洗浄溶液は第二鉄イオンを含む。少なくともいくつかの実施形態では、洗浄溶液は、酸化還元フローバッテリーシステムのカソード液の少なくとも一部分である。少なくともいくつかの実施形態では、洗浄溶液は、過酸化水素又は塩化第二鉄を含む。
少なくともいくつかの実施形態では、収集した粒子を取り除くことは、酸化還元フローバッテリーシステムの保全サイクルの間に、収集した粒子を取り除くことを含む。少なくともいくつかの実施形態では、本方法は更に、保全サイクルを行う前に、少なくとも5回の充電放電サイクルを行うことを含む。
少なくともいくつかの実施形態では、粒子を収集することは、微粒子フィルターで、還元された金属様不純物の粒子の少なくとも一部分を収集することを含む。少なくともいくつかの実施形態では、アノード液はクロムイオンを含み、カソード液は鉄イオンを含む。少なくともいくつかの実施形態では、アノード液は鉄イオンを更に含み、カソード液はクロムイオンを更に含む。少なくともいくつかの実施形態では、アノード液中でのクロムの利用は、カソード液中での鉄の量の80%以下に制限される。
【0017】
一実施形態は、溶液中にクロムイオンを有するアノード液と、溶液中に鉄イオンを有するカソード液と、アノード液と接する第1の電極と、カソード液と接する第2の電極と、アノード液をカソード液と分離するセパレータと、を備え、カソード液中の鉄に対するアノード液中のクロムのモル比は、少なくとも1.25である、酸化還元フローバッテリーシステムである。
少なくともいくつかの実施形態では、アノード液は、溶液中に鉄イオンを更に含み、カソード液は、溶液中にクロムイオンを更に含む。少なくともいくつかの実施形態では、アノード液中の鉄イオンのモル濃度は、カソード液中の鉄イオンのモル濃度の25%以内であり、アノード液中のクロムイオンのモル濃度は、カソード液中のクロムイオンのモル濃度の25%以内である。少なくともいくつかの実施形態では、アノード液中のH+の初期モル濃度は、カソード液中のH+の初期モル濃度の少なくとも10%未満である。
少なくともいくつかの実施形態では、アノード液中のクロムイオンのモル濃度は、カソード液中の鉄イオンのモル濃度の少なくとも1.25倍である。少なくともいくつかの実施形態では、アノード液中のクロムイオンのモル濃度は、カソード液中の鉄イオンのモル濃度の少なくとも1.43倍である。少なくともいくつかの実施形態では、アノード液中のクロムイオンのモル濃度は、カソード液中の鉄イオンのモル濃度の少なくとも1.67倍である。
少なくともいくつかの実施形態では、アノード液の体積は、カソード液の体積の少なくとも1.25倍である。少なくともいくつかの実施形態では、アノード液中のクロムイオンのモル濃度は、カソード液中の鉄のモル濃度に等しい。少なくともいくつかの実施形態では、アノード液の体積は、カソード液の体積の少なくとも1.43倍である。少なくともいくつかの実施形態では、アノード液の体積は、カソード液の体積の少なくとも1.67倍である。
少なくともいくつかの実施形態では、カソード液中の鉄イオンに対するアノード液中のクロムイオンのモル比は、少なくとも1.43である。少なくともいくつかの実施形態では、カソード液中の鉄イオンに対するアノード液中のクロムイオンのモル比は、少なくとも1.67である。
【0018】
少なくともいくつかの実施形態では、アノード液は塩化クロムを含み、クロムイオンをもたらす。少なくともいくつかの実施形態では、カソード液は塩化鉄を含み、鉄イオンをもたらす。少なくともいくつかの実施形態では、アノード液及びカソード液は共に、塩酸を更に含む。
少なくともいくつかの実施形態では、アノード液中でのクロムの利用は、カソード液中の鉄の量により制限される。少なくともいくつかの実施形態では、アノード液中でのクロムの利用は、カソード液中での鉄の量の80%以下に制限される。
少なくともいくつかの実施形態では、酸化還元フローバッテリーシステムは、均質な触媒を含まない。少なくともいくつかの実施形態では、酸化還元フローバッテリーシステムは金属触媒を含まない。
【0019】
本発明の非源的かつ非網羅的な実施形態が、以下の図面を参照して説明される。図面では、別途記載のない限り、同一の参照番号は、種々の図を通して同一のパーツを言及する。
本発明をより良く理解するために、以下の詳細の説明を参照し、これは、添付図面に関連して読み取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に従った酸化還元フローバッテリーシステムの一実施形態の概略図である。
【
図2】本発明に従った酸化還元フローバッテリーシステム用電極の一実施形態の概略図である。
【
図3】本発明に従った酸化還元フローバッテリーシステム中の不純物を取り除く、又は還元する一実施形態のフローチャートである。
【
図4】本発明に従った、保全のためにカソード液が第2の半電池に移された酸化還元フローバッテリーシステムの、別の実施形態の概略図である。
【
図5A】本発明に従った、バランス設備と共に酸化還元フローバッテリーシステムを備えるシステムの一実施形態の概略図である。
【
図5B】本発明に従った、
図5Aのシステムのバランス設備の一実施形態の概略図である。
【
図5C】本発明に従った、バランス設備と共に酸化還元フローバッテリーシステムを備えるシステムの別の実施形態の概略図である。
【
図5D】本発明に従った、
図5Cのシステムのバランス設備の一実施形態の概略図である。
【
図5E】本発明に従ったバランス設備の別の実施形態の概略図である。
【
図6A】本発明に従った、圧力開放弁を備える酸化還元フローバッテリーシステムの電解質タンクの概略図である。
【
図6B】本発明に従った、圧力軽減のための液体含有U字管設備を備える酸化還元フローバッテリーシステムの電解質タンクの概略図である。
【
図6C】本発明に従った、タンク間でのガスの移動用設備を備える酸化還元フローバッテリーシステムの電解質タンクの概略図である。
【
図7】本発明に従った、第2の容器を備える酸化還元フローバッテリーシステムの別の実施形態の概略図である。
【
図8】本発明に従った、温度ゾーンを備える酸化還元フローバッテリーシステムの別の実施形態の概略図である。
【
図9】本発明に従った、1つのバランス酸化還元フローバッテリーシステム、及び2つのアンバランス酸化還元フローバッテリーシステムに対する、充電容量と充電電圧のグラフである。
【
図10】本発明に従った、酸化還元フローバッテリーシステムの平均酸化状態(AOS)の測定方法の一実施形態のフローチャートである。
【
図11】本発明に従った、酸化還元フローバッテリーシステムの平均酸化状態(AOS)の測定方法の別の実施形態のフローチャートである。
【
図12】本発明に従った、アンバランス酸化還元フローバッテリーシステムに対する、自己放電時間と放電電圧のグラフである。
【
図13】本発明に従った、酸化還元フローバッテリーシステムの平均酸化状態(AOS)の測定方法の第3の実施形態のフローチャートである。
【
図14】本発明に従った、酸化還元フローバッテリーシステムの更に別の実施形態の概略図であり、開放電圧(OCV)を測定するための電池を含む。
【
図15】本発明に従った、エンドOCVの測定による、貯蔵又は充電容量を測定する一方法のフローチャートである。
【
図16】本発明に従った、OCVの測定値を用いる、AOSを測定する一方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、酸化還元フローバッテリーシステムの領域、並びに、酸化還元フローバッテリーシステムの作製方法及び使用方法に関する。本発明は、イオン-クロム(Fe-Cr)酸化還元フローバッテリーシステム、並びに、Fe-Cr酸化還元フローバッテリーシステムの作製方法及び使用方法にもまた関する。
酸化還元フローバッテリーシステムは、太陽光源、風力源、及び水力発電源などの再生可能エネルギー源、加えて、再生不可能な、及び他のエネルギー源により生成されるエネルギーを貯蔵するための、有望な技術である。本明細書に記載するように、少なくともいくつかの実施形態では、酸化還元フローバッテリーシステムは、以下の特性:長寿命、再利用可能エネルギー貯蔵、又は調整可能な電力及び貯蔵能力のうちの1つ以上を有することができる。用語「貯蔵能力」、「エネルギー容量」、及び「充電容量」は、特に断りのない限り同じ意味で用いられる。
【0022】
図1は、酸化還元フローバッテリーシステム100の一実施形態を示す。他の酸化還元フローバッテリーシステム100は、より多い、又は少ない要素を含むことができ、要素は、図示した実施形態に示すのとは異なって配置することが可能であることが理解されよう。構成要素、方法、システムなどについての以下の記載は、図示した実施形態とは異なる他の酸化還元フローバッテリーシステムに適用可能であることもまた理解されよう。
図1の酸化還元フローバッテリーシステム100は、2つの電極102、104、及び、セパレータ110により分離されている、関連した半電池106、108を含む。電極102、104は、セパレータと接することができる、又はセパレータから分離することができる。電解液は半電池106、108を通して流れ、アノード液112、及びカソード液114と呼ばれる。酸化還元フローバッテリーシステム100は、アノード液タンク116、カソード液タンク118、アノード液ポンプ120、カソード液ポンプ122、アノード液分配設備124、及び、カソード液分配設備126を更に含む。アノード液112はアノード液タンク116に貯蔵され、少なくとも部分的には、アノード液ポンプ120の作用により、アノード液分配設備124の周りを半電池106に向かって流れる。カソード液114はカソード液タンク118に貯蔵され、少なくとも部分的には、カソード液ポンプ122の作用により、カソード液分配設備126の周りを半電池108に向かって流れる。
図1に図示した実施形態は、単一の各構成要素を含むものの、他の実施形態は、図示したいずれか1つ以上の構成要素を、2つ以上含むことができることが理解されよう。例えば、他の実施形態は、複数の電極102、複数の電極104、複数のアノード液タンク116、複数のカソード液タンク118、複数の半電池112、若しくは複数の半電池114、又はこれらのいずれかの組み合わせを含むことができる。
アノード液及びカソード液は電解質であり、同一の電解質であるか、又は異なる電解質であることができる。エネルギーが酸化還元フローバッテリーシステム100に向かって、又は酸化還元フローバッテリーシステム100から外に流れる間、半電池106、108の一方の電解質は酸化され電子を失い、半電池の他の一方の電解質は還元され電子を得る。
【0023】
酸化還元フローバッテリーシステム100は、
図1に図示するように、ロード/ソース130/132に取り付けられることができる。充電モードでは、酸化還元フローバッテリーシステム100は、フローバッテリーをソース132に取り付けることにより充電又は放電されることができる。ソース132は、化石燃料電力源、核電力源、他のバッテリー又はセル、及び、風力源、太陽光源、又は水力電気電力源などの再生可能電力源を含むがこれらに限定されない任意の電力源であることができる。放電モードでは、酸化還元フローバッテリーシステム100はロード130にエネルギーを供給することができる。放電モードでは、酸化還元フローバッテリーシステム100は、ソース132から電気エネルギーを化学ポテンシャルエネルギーに変換する。放電モードでは、酸化還元フローバッテリーシステム100は、化学ポテンシャルエネルギーを、ロード130に供給される電気エネルギーに変換しなおす。
酸化還元フローバッテリーシステム100はまた、酸化還元フローバッテリーシステムを操作可能なコントローラー128に接続可能である。例えば、コントローラー128は、酸化還元フローバッテリーシステム100をロード130若しくはソース132に接続、又はロード130若しくはソース132から切断することができる。コントローラー128は、アノード液ポンプ120及びカソード液ポンプ122の操作を制御することができる。コントローラー128は、アノード液タンク116、カソード液タンク118、アノード液分配システム124、カソード液分配システム126、又は半電池106、108と関連する弁の操作を制御することができる。コントローラー128を使用して、充電モードと、放電モードと、及び任意に、保全モード(又は、システム操作の任意の他の好適なモード)との間の切り替えを含む、酸化還元フローバッテリーシステム100の一般的な操作を制御することができる。少なくともいくつかの実施形態では、コントローラー又は酸化還元フローバッテリーシステムは、システムの半電池又は他の要素内の温度を制御することができる。少なくともいくつかの実施形態では、半電池(又は、一般的なシステム、若しくはシステムの一部)の温度は、操作中に65、60、55、又は50℃以下となるように制御される。
任意の好適なコントローラー128は、1つ以上のコンピューター、ラップトップコンピューター、サーバー、任意の他のコンピューターデバイスなど、又はこれらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されずに使用することができ、1つ以上のプロセッサー、1つ以上のメモリー、1つ以上の入力デバイス、1つ以上の表示デバイスなどといった構成要素を含むことができる。コントローラー128は、任意の有線若しくは無線接続、又はこれらの任意の組み合わせにより、酸化還元フローバッテリーシステムに接続されることができる。コントローラー128(又は、コントローラーの少なくとも一部分)は、酸化還元フローバッテリーシステム100に対して局所的に位置することができるか、又は、酸化還元フローバッテリーシステムに対して部分的に又は完全に、非局所的に位置することができる。
電極102、104は、グラファイト又は他の炭素材料(グラファイト若しくは炭素で作製された固体、フェルト、紙、若しくは布地電極)、金、チタン、鉛などを含むがこれらに限定されない任意の好適な材料で作製することができる。2つの電極102、104は、同一の又は異なる材料で作製されることができる。少なくともいくつかの実施形態では、酸化還元フローバッテリーシステム100は、アノード液若しくはカソード液又はその両方に、酸化還元反応のためのあらゆる均質な又は金属様の触媒を含まない。これにより、電極に使用可能な材料の種類を制限することができる。
セパレータ110は、2つの半電池106、108を分離する。少なくともいくつかの実施形態では、酸化還元フローバッテリーシステム100の充電又は放電中の、セパレータ110により、選択されたイオン(例えばH
+、Cl
-、若しくは鉄若しくはクロムイオン、又はこれらの任意の組み合わせ)の輸送が可能になる。いくつかの実施形態では、セパレータ110は微孔性膜である。任意の好適なセパレータ110を使用することができ、好適なセパレータの例としては、イオン輸送膜、アニオン輸送膜、カチオン輸送膜、微多孔性セパレータなど、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
酸化還元フローバッテリーシステムは安全で信頼でき、再利用可能なエネルギー貯蔵媒体を提供することができる。しかし、長寿命を備えた所望の貯蔵エネルギーを有し(例えば、多くの充電/放電サイクルの間、その貯蔵能力を維持するフローバッテリーシステム)、十分な入手可能性を有する材料(例えば、地球上で十分に存在し、商業的に採掘され、比較的大量に入手可能な材料)で作製される酸化還元フローバッテリーシステムを識別するのは困難であり続けている。現在のリチウム及びバナジウムバッテリーは、入手可能性が制限された材料を利用する。多くの従来の電池システムの貯蔵能力は、10、50、又は100回以上の充電/放電サイクルに供したときにもまた、劣化する。水性酸化還元フローバッテリーシステムの更なる課題は、水から水素又は酸素を放出することを管理、又は回避することである。
本明細書に記載されるように、好適かつ有用な酸化還元フローバッテリーシステムは、Fe3+/Fe2+及びCr3+/Cr2+酸化還元化学現象を利用する、鉄-クロム(Fe-Cr)酸化還元フローバッテリーシステムである。鉄及びクロムは一般に、容易に市販されているものであり、少なくともいくつかの実施形態では、Fe-Cr酸化還元フローバッテリーシステムの貯蔵能力は、少なくとも100、200、250、又は500回の充電/放電サイクルにわたり、10%又は20%を超えて劣化しないか、又は、保全手順を用いて、少なくとも100、200、250、又は500回の充電/放電サイクルにわたり、少なくとも70%、80%、又は90%の貯蔵能力を維持するように構成することができる。
【0025】
少なくともいくつかの実施形態では、Fe-Cr酸化還元フローバッテリーシステムの電解質(即ち、カソード液又はアノード液)は、溶媒に溶解した鉄含有化合物若しくはクロム含有化合物(又は両方)を含む。いくつかの実施形態では、アノード液及びカソード液は、鉄含有化合物及びクロム含有化合物の両方を含有する。アノード液及びカソード液中のこれら2つの化合物の濃度は、同一であるか又は異なることができる。他の実施形態では、カソード液は鉄含有化合物のみを含み、アノード液はクロム含有化合物のみを含む。
鉄含有化合物は例えば、塩化鉄、硫酸鉄、臭化鉄など、又はこれらの任意の組み合わせであることができる。クロム含有化合物は例えば、塩化クロム、硫酸クロム、臭化クロムなど、又はこれらの任意の組み合わせであることができる。溶媒は水;塩酸、臭化水素酸、硫酸などの酸性水溶液であることができる。少なくともいくつかの実施形態では、Fe-Cr酸化還元フローバッテリーシステムのカソード液及びアノード液の両方は、塩酸に溶解した塩化鉄及び塩化クロムを含む。少なくともいくつかの実施形態では、Fe-Cr酸化還元フローバッテリーシステムのカソード液は、塩酸に溶解した塩化鉄を含み、アノード液は、塩酸に溶解した塩化クロムを含む。
少なくともいくつかの場合では、塩素錯体化クロムイオン(例えば、Cr(H2O)5Cl2+/+)は、少なくともいくつかの他のクロムイオン錯体(例えばCr(H2O)6
3+/2+)よりも速い反応速度、及び低いH2産生を有することが発見されている。従って、アノード液に(例えば、クロム含有化合物、溶媒、又は両方から)塩素を含めることが有益であり得る。
少なくともいくつかの実施形態では、カソード液若しくはアノード液、又は両方での鉄のモル濃度は、0.5~2の範囲である。少なくともいくつかの実施形態では、アノード液若しくはカソード液、又は両方でのクロムのモル濃度は、0.5~2の範囲である。少なくともいくつかの実施形態では、塩酸若しくは他の酸性水溶液、又は塩基のモル濃度は、0.5~4の範囲である。
【0026】
以前のFe-Cr酸化還元フローバッテリーでの課題の1つは、酸化還元反応の結果として、負極で水素(H2)が発生又は放出することである。少なくともいくつかの場合では、酸化還元フローバッテリーにて、クロムの利用を増加させることにより、水素の産生が増加する。酸化還元フローバッテリーにて、水素の産生を制限する、又は低下させることが、多くの場合望ましい。
酸化還元フローバッテリーシステムでの十分なエネルギー密度を維持しながら、クロムの利用を制限することにより、水素生成の低下がもたらされることが発見されている。少なくともいくつかの実施形態では、酸化還元フローバッテリーシステムのアノード液でのクロムの利用は、80%、70%、又は60%以下に制限されている。少なくともいくつかの実施形態では、アノード液でのクロムの利用は、カソード液での鉄の利用により制限されるか、又はカソード液での鉄の100%の利用により制限される。
【0027】
クロムの利用は、少なくとも部分的には、酸化還元フローバッテリーシステムでのクロム及び鉄の相対量を管理することにより管理されることができる。用語「モル比」とは、本明細書で使用する場合、第2の構成要素のモル量に対する、一方の構成要素のモル量の比率を意味する。少なくともいくつかの実施形態では、カソード液での鉄に対する、アノード液でのクロムのモル比(Cr(アノード液)/Fe(カソード液))は1ではなく、代わりに、Cr(アノード液)/Fe(カソード液)のモル比は、少なくとも1.25以上(例えば、少なくとも1.43、1.67以上)である。少なくともいくつかの実施形態では、カソード液での鉄のモル量は、アノード液でのクロムのモル量の80%、70%、又は60%以下である。少なくともいくつかの実施形態では、利用可能な鉄の量が少なければ、利用可能なクロムの利用が80%、70%、又は60%以下に制限される。少なくともいくつかの実施形態では、アノード液及びカソード液は共に、混合鉄/クロム溶液である。
少なくともいくつかの実施形態では、カソード液での鉄の濃度は、アノード液でのクロムの濃度と異なることで、所望のモル比が得られる。少なくともいくつかの実施形態では、カソード液での鉄の濃度は、アノード液でのクロムの濃度の80%、70%、又は60%以下である。
少なくともいくつかの実施形態では、カソード液での鉄の濃度、及びアノード液でのクロムの濃度は同一である。このような実施形態では、アノード液及びカソード液でのクロム及び鉄のモル比はそれぞれ、アノード液及びカソード液の体積を選択することで選択することができる。少なくともいくつかの実施形態では、カソード液に対するアノード液の体積比は、少なくとも、1.25:1以上(例えば、少なくとも1.43:1又は1.67:1以上)であり、これにより、アノード液でのクロム、及びカソード液での鉄の濃度が同一のときに、体積比に等しいモル比がもたらされる。少なくともいくつかの実施形態では、カソード液の体積は、アノード液の体積の80%、70%、又は60%以下である。
【0028】
いくつかの実施形態では、アノード液及びカソード液の体積は、対応する半電池106、108の体積に基づくことができる。いくつかの実施形態では、アノード液及びカソード液の体積は、酸化還元フローバッテリーシステム100の対応するカソード液及びアノード液部分の体積に基づくことができる。例えば、カソード液部分は半電池108、カソード液タンク118、及びカソード液分配設備126を含むことができる。アノード液部分は半電池106、アノード液タンク116、及びアノード液分配設備124を含むことができる。
異なる鉄及びクロム濃度、並びに、異なるカソード液及びアノード液体積の両方の組み合わせを用いて、アノード液でのクロム、及びカソード液での鉄の所望のモル比を達成することができることが理解されよう。これらの実施形態の少なくともいくつかにおいて、カソード液の体積は、アノード液の体積の95%、90%、80%、70%、又は60%以下である。
【0029】
少なくともいくつかの場合では、アノード液でのH
+濃度が高ければ、水素生成が促進されることが発見されている。アノード液による水素生成を低減するために、初期アノード液でのH
+濃度は、初期カソード液でのH
+濃度を下回ることができる。少なくともいくつかの実施形態では、初期アノード液でのH
+濃度は、初期カソード液でのH
+濃度を少なくとも10、20、25、又は50%下回ることができる。
表1は、異なる充電状態(SOC)における、カソード液に対するアノード液の体積比(1:1)を示し、表中、充電状態は、還元/酸化されたイオン種に対する、アノード液及びカソード液での初期活性イオン種の割合変換を示す。H
+の濃度が変化することで、アノード液とカソード液との充電バランスが維持されることが理解されよう。表1において、初期アノード液は1.25MのFe
2+、1.25MのCr
3+、及び1.25MのH
+であり、初期カソード液は1.25MのFe
2+、1.25MのCr
3+、及び2.5MのH
+である。これらの特定の濃度は、H
+濃度が50%充電状態にて等しくなるように選択する。
【表1】
表2は、異なる充電状態(SOC)における、カソード液に対するアノード液の体積比(2:1)を示す。表2において、初期アノード液は1.25MのFe
2+、1.25MのCr
3+、及び1.5625MのH
+であり、初期カソード液は1.25MのFe
2+、1.25MのCr
3+、及び2.5MのH
+である。これらの特定の濃度は、アノード液が25%SOCであり、カソード液が50%SOCであるときに、H
+濃度が等しくなるように選択される。アノード液とカソード液とのSOCの差は、アノード液がカソード液の2倍の体積を有するために生じる。
【表2】
【0030】
Fe-Cr酸化還元フローバッテリーシステム、加えて他の酸化還元フローバッテリーシステムによる別の課題は、ニッケル、アンチモン、及び銅などの金属不純物が存在することである。少なくともいくつかの場合では、これらの金属不純物は、負極表面での水素の発生を増加させる可能性がある。このような金属様不純物は、天然不純物として、又は、酸化還元フローバッテリーシステムの鉄及びクロム化合物、又は他の部分を精製又は製造する一部として、又は、任意の他のメカニズムにより、存在することができる。
少なくともいくつかの実施形態では、酸化還元フローバッテリーシステム100は、これらの不純物を取り除くか、又はこれらの不純物の濃度を低減するように構成することができる。
図3に示すように、少なくともいくつかの実施形態では、これらの不純物を取り除くか、これらの不純物の濃度を低減するために、酸化還元フローバッテリーシステム100は、不純物の少なくともいくつかを金属形態に電気化学的に還元し(工程350)、後述するかみ合った電極にて、微粒子フィルター又は他の設備を使用して、得られた金属様粒子を収集し(工程352)、酸化種を含有する洗浄溶液を用いて、これらの不純物を取り除く(工程354)ように構成される。
少なくともいくつかの実施形態では、不純物は酸化還元反応の一部として、アノード液内で還元される。不純物は、充電中に還元された場合、金属様粒子又は微粒子を形成する。酸化還元フローバッテリーシステム100は、金属様粒子又は微粒子を捕捉するために、半電池106又は他の場所に、微粒子フィルターを備えることができる。いくつかの実施形態では、負極102は、金属様粒子又は微粒子の濾過に役立ち得る。不純物の取り除きもまた容易にするために、負極102は、
図2に示すように、かみ合った構造を有することができる。かみ合った構造は、酸化還元フローバッテリーシステム100の操作中に、金属様不純物の粒子を収集するための、空の、又はくぼみのあるチャネル240を備える。これらの粒子を次に、後述のように保全サイクル中に、電極から取り除くことができる。
少なくともいくつかの実施形態では、本明細書に記載するFe-Cr酸化還元フローバッテリーシステムは、Fe
3+などの酸化種を含む溶液を用いて、これらの不純物を取り除くように配置される。酸化還元フローバッテリーシステム100の保全の一部として、保全サイクルの間に、Fe
3+(又は他の酸化)溶液は、システムのアノード液部分を通って流れ、システム内の電極102又は他の場所から不純物を取り除くことができる。少なくともいくつかの実施形態では、Fe
3+溶液は、カソード液であるか、又はカソード液の一部分であることができる。代替の酸化溶液としては、過酸化水素溶液、塩化第二鉄溶液、硝酸などが挙げられるが、これらに限定されない。
少なくともいくつかの実施形態では、金属様不純物の除去又は還元は、酸化還元フローバッテリーシステムの製造中に、酸化還元フローバッテリーシステムの操作開始前に、若しくは酸化還元フローバッテリーシステムの操作中に、又はこれらの任意の組み合わせで行われる。金属様不純物を取り除くためのこれらの方法及びシステムは、Fe-Cr酸化還元フローバッテリーシステムに限定されず、バナジウム、バナジウム-臭素、バナジウム-鉄、亜鉛-臭素、及び有機酸化還元フローバッテリーシステムなどの他の酸化還元フローバッテリーシステムでもまた利用可能であることが理解されよう。
少なくともいくつかの実施形態では、電極102をカソード液114に時折暴露することにより、電極102の表面のパッシベーションを促進し、水素生成を低減することができることもまた発見された。一例として、あるFe-Cr酸化還元フローバッテリーシステムでは、電極102を17回の充電/放電サイクルの後1時間、カソード液114で処理すると、水素発生速度は38.9mL/分から10.2mL/分に下がった。少なくともいくつかの実施形態では、酸化還元フローバッテリーシステムの操作は周期的に(又は、オペレーターにより開始される、若しくは要求されるときに)半電池106又は電極102が一定期間(例えば、5、10、15、30、45、60分又はそれ以上)、カソード液(又は、カソード液に関して上述したものなどの構成成分を有する電解質)に暴露される、保全期間を含むことができる。カソード液は半電池106又は電極102に、保全期間の間に一度に、周期的に、間欠的に、又は連続的に導入されることができる。これらの実施形態の少なくともいくつかにおいて、カソード液114は、保全期間の後にカソード液タンク118に戻されることができる。少なくともいくつかの実施形態では、保全期間は、アノード液の充電状態が少なくとも50%、75%、又は90%のときに行うことができる。
図4は、半電池106からアノード液分配システム124を切断し、カソード液分配システム126を半電池106に接続して、カソード液114を半電池106に流すためのスイッチ434を備える酸化還元フローバッテリーシステムの一実施形態を示す。このような設備を使用して、金属様不純物を還元する若しくは取り除く、若しくは、電極102を不動態化する、又はこれらの任意の組み合わせを行うことができる。ポンプ122を使用して、保全が完了したときに、カソード液114を半電池106に流すか、又はカソード液114を半電池106から取り除くことができる。
【0031】
Fe-Cr酸化還元フローバッテリーシステムは、少なくとも部分的には、システムのアノード液側にて少なくともある程度のレベルの水素生成をもたらす、標準的な低電位のCr2+/Cr3+ペアから生じる、経時的な貯蔵能力の低下を有することができる。その結果、システム内の活性種の平均酸化状態(AOS)は増加し、システムはバランスを失い、貯蔵能力が低下する。それ故、AOSを回復することより貯蔵能力を少なくとも部分的に復元するための方法又は設備を有するのが有用である。
少なくともいくつかの実施形態では、Fe-Cr酸化還元フローバッテリーシステム用のAOSは、以下のとおりに記載することができる:AOS=((カソード液及びアノード液中のFe3+のモル)*3+(カソード液及びアノード液中でのFe2+のモル)*2+(アノード液及びカソード液中でのCr3+のモル)*3+(アノード液及びカソード液中でのCr2+のモル)/(カソード液及びアノード液中でのFeのモル+アノード液及びカソード液中でのCrのモル)。
【0032】
酸化還元フローバッテリーシステムをリバランスするために、少なくともいくつかの実施形態では、酸化還元フローバッテリーシステムは、システムをリバランスし、貯蔵能力を復元するための、アノード液又はカソード液のいずれかと接したバランス設備を備える。少なくともいくつかの実施形態では、バランス設備は、バナジウム源(オキソバナジウム(VO
2+)及びジオキソバナジウム(VO
2
+)イオン種)、並びに被酸化性炭化水素化合物などの還元剤を利用し、システムをリバランスし、貯蔵能力を復元する。以下の実施形態は、バランス設備をFe-Cr酸化還元フローバッテリーシステムに加えることを示す。このようなバランス設備を、他の酸化還元フローバッテリーシステム、又は他の化学及び/若しくは電気化学システムと共に用いることができることが理解されよう。
図5Aは、酸化還元フローバッテリーシステム100及びバランス設備500の一部の一実施形態を示す。
図5Bは、バランス設備500の一実施形態を示す。本実施形態では、カソード液114はバランス電解質562(例えば、VO
2+/ VO
2
+を含有する電解質)、及び還元剤563と組み合わせて使用し、酸化還元フローバッテリーシステム100をリバランスする。バランス設備500は、カソード液タンク118、バランス電極552、554、バランス半電池556、558、バランスセパレータ560、カソード液バランスポンプ572、カソード液バランス分配システム576、バランスタンク566、還元剤タンク567、バランス電解質ポンプ570、バランス電解質分配設備574、及び電位源561を備える。
以下の反応式は、電位源561から、少なくとも0.23Vの外部電位を印加するとともに、鉄ベースのカソード液114、オキソバナジウムイオンを含有するバランス電解質562、及び、フルクトースを含有する還元剤563を用いる、システムのリバランシングの一例を示す:
VO
2+ + H
2O + Fe
3+ → VO
2
+ +Fe
2+ + 2H
+
24VO
2
+ + 24H
+ +C
6H
12O
6 → 24VO
2+ + 6CO
2 + 18H
2O
これらの反応により、酸化還元フローバッテリーシステム100のAOSを還元することができ、水素生成にて失われたH+イオンが復元される。少なくともいくつかの実施形態では、このリバランシング(又は、AOSの復元若しくは貯蔵能力の回復)には、任意の金属触媒を利用しない。なぜなら、このような触媒は多くの場合水素生成を増加させるためである。少なくともいくつかの実施形態では、バランス電解質562のVO
2+は、VO
2+イオンが、還元剤563を用いて再生成されるため、均質な触媒と考えられる。少なくともいくつかの実施形態では、VO
2
+イオンの還元は、バランス半電池566にて生じる。
【0033】
少なくともいくつかの実施形態では、還元剤563の酸化は、半電池556の代わりにバランスタンク566で行うことができ、VO2
+イオンが利用可能であれば、外部電位の印加を必要としない場合がある。好適な還元剤としては、糖類(例えば、フルクトース、グルコース、スクロースなど、若しくはこれらの任意の組み合わせ)、カルボン酸(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸など、若しくはこれらの任意の組み合わせ)、アルデヒド(例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなど、若しくはこれらの任意の組み合わせ)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなど、若しくはこれらの任意の組み合わせ)、他の炭化水素、又は水素ガスが挙げられる。少なくともいくつかの実施形態では、還元剤は水溶性であるか、又は少なくとも部分的に水溶性である。
少なくともいくつかの実施形態では、還元剤563は、還元剤タンク567からバランス電解質562に、周期的に、間欠的に、又は連続的に、のいずれかで添加される。少なくともいくつかの実施形態では、この(貯蔵能力を回復する、又はAOCを復元するための)リバランシングプロセスは連続的に、間欠的に、又は周期的に生じる。例えば、カソード液バランスポンプ572及びバランス電解質ポンプ570は連続的に、間欠的に、又は周期的に操作することができる。少なくともいくつかの実施形態では、カソード液ポンプ122はカソード液バランスポンプ572としてもまた使用可能である。更に、カソード液バランス分配設備576は、カソード液タンク118に接続可能な、又はカソード液タンク118から切断可能な弁を備えることができる。
【0034】
図5C及び5Dは、カソード液の代わりに、アノード液112(並びに、対応するアノード液ポンプ572’、及びアノード液バランス分配設備576’)により操作される、バランス設備500’を備える酸化還元フローバッテリーシステム100の別の実施形態を示す。少なくともいくつかの実施形態では、アノード液ポンプ120はアノード液バランスポンプ572’としてもまた使用可能である。
以下の反応式は、電位源561から、少なくとも1.40Vの外部電位を印加するとともに、クロムベースのアノード液112、オキソバナジウムイオンを含有するバランス電解質562、及び、フルクトースを含有する還元剤563を用いる、システムのリバランシングの一例を示す:
VO
2+ + H
2O + Cr
3+ → VO
2
+ +Cr
2+ + 2H
+
24VO
2
+ + 24H
+ +C
6H
12O
6 → 24VO
2+ + 6CO
2 + 18H
2O
【0035】
図5Eは、カソード液又はアノード液のいずれか、及び、酸化還元フローバッテリーシステム100の残りに接続される、対応するカソード液/アノード液タンク118/116により操作されるように適合可能なバランス設備500’’の別の実施形態を示す。本実施形態は、カソード液/アノード液タンク118/116と、バランスタンク562と、対応する半電池556/558との間に、中間タンク584、及び2つの中間半電池586、588を組み込む。(バランスタンクと同様に、2つの半電池586、588、と、ソース電位との間に、中間ポンプ及び中間分配設備、加えて、中間セパレータが存在し、2つの半電池586、588の電極の間に電位を印加することができる。)一実施形態では、中間タンク584中の中間電解質は、V
2+/V
3+イオンを含有する。
以下の反応式は、酸化還元フローバッテリーシステム100(
図1)のバランス設備500’’及びカソード液114を用いる、システムのリバランシングの一例を示す:
VO
2+ + H
2O - e
- → VO
2
+ + 2H
+(半電池556)
V
3+ + e
- → V
2+(半電池558)
V
2+ - e
- → V
3+(半電池586)
Fe
3+ + e
- → Fe
2+(半電池588)
24VO
2
+ + 24H
+ +C
6H
12O
6 → 24VO
2+ + 6CO
2 + 18H
2O(バランスタンク562若しくは半電池556、又は両方)
別の実施形態は、中間電解質及びバランス電解質と共に、カソード液の代わりに、アノード液(Cr
2+/Cr
3+)を用いる。更に別の実施形態ではアノード液を用い、V
2+/V
3+中間電解質をFe
2+/Fe
3+中間電解質で置き換える。
【0036】
本明細書に記載するバランス設備を、他の酸化還元フローバッテリーシステム、及び特には、水素ガスを生成可能なものと共に利用することができることが理解されよう。このような酸化還元フローバッテリーシステムの例としては、Zn-Br若しくはZn-Cl酸化還元フローバッテリーシステム、バナジウムベースの(例えば、全バナジウム、V-Br、V-Cl、若しくはV-ポリハライド)酸化還元フローバッテリーシステム、Fe-V若しくは他のイオンベース酸化還元フローバッテリーシステム(例えば、全鉄酸化還元フローバッテリーシステム)、又は有機酸化還元フローバッテリーシステムが挙げられるが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態では、Fe
2+過充電状態の間に、塩素ガス(Cl
2)を、酸化還元フローバッテリーシステム100のカソード液側で生成することができる。塩素は、例えば、カソード液タンク118若しくは半電池108など、又はこれらの任意の組み合わせのカソード液の上部空間で閉じ込めることができる。塩素ガスが連続して生成されることにより、閉じ込められたカソード液の上部空間での圧力が増加する。少なくともいくつかの実施形態では、これにより、任意に1つ以上の、流れを制御するための弁又はスイッチ639を含む、連結部638C(
図6C)を通した、塩素ガスのアノード液への移動がもたらされ得る。少なくともいくつかの実施形態では、塩素ガスの少なくとも一部分は、アノード液溶液により吸収されることができる。少なくともいくつかの実施形態では、以下の反応が、塩素とアノード液溶液との間で生じ、過充電されたシステムを化学的に放電することができる:
2Cr
2+ + Cl
2 → 2Cr
3+ +2Cl
-
2Fe
2+ + Cl
2 → 2Fe
3+ + 2Cl
-
少なくともいくつかの実施形態では、酸化還元フローバッテリーシステム100は、カソード液又はアノード液の上部空間での圧力を管理するための、圧力開放システムを備えることができる。例えば、圧力軽減弁638a(
図6A)、又は液体含有U字管設備638b(
図6B)をカソード液の上部空間に接続して、圧力を管理することができる。同様に、圧力軽減弁、又は液体含有U字管設備は、アノード液の上部空間に接続されることができる。少なくともいくつかの実施形態では、アノード液又はカソード液の上部空間内の気体は、U字管設備などの、双方向気体圧力制御システムにより、環境大気と交換することができる。少なくともいくつかの実施形態では、U字管設備は、気体漏れモニターとして使用することもまた可能である。少なくともいくつかの実施形態では、U字管設備内の液体は、酸化還元フローバッテリーシステムにより環境に開放される酸含有気体の量を推定するために使用可能な、酸レベルインディケーターを含有することができる。
少なくともいくつかの場合では、電解質、及び酸化還元反応の化学生成物の漏れによる酸性溶液及び化学蒸気は、酸化還元フローバッテリーシステム100内の電子デバイス(例えば、コントローラー128、スイッチ、弁、ポンプ、センサーなど)を損傷する可能性がある。加えて、漏れは、環境の損傷又は汚染をもたらし得る。
少なくともいくつかの実施形態では、アノード液若しくはカソード液、又は両方を含有する酸化還元フローバッテリーシステム100の全て又は一部分は、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、又は酸化カルシウムなどといった酸吸収性材料を含有する二次容器790(
図7)に位置することができる。少なくともいくつかの実施形態では、二次容器は、アノード液若しくはカソード液、又は両方の、少なくとも10、25、40、50、60、70、75、90%を中和するのに十分な酸吸収性材料を含有することができる。
【0037】
いくつかの実施形態では、酸化還元フローバッテリーシステム100の、アノード液又はカソード液タンク116、118、半電池106、108、アノード液又はカソード液配分システム124、126の少なくともいくつかの部分、電極102、104などなどの、アノード液及びカソード液含有構成要素は、
図8に示すように、温度ゾーン892おいて、充電又は放電期間の間、少なくとも50、60、70、又は80℃、又はそれ以上の温度で維持される。これらの構成要素の温度は、1つ以上の加熱装置894を用いて維持することができる。更に、コントローラー128の1つ以上、ポンプ120、122、1つ以上のセンサー、1つ以上の弁などといった、酸化還元フローバッテリーシステムの電子構成要素の1つ以上は、40、35、30、25、又は20℃以下の温度で維持される。これらの構成要素の温度は、1つ以上の冷却装置896を用いて維持することができる。
酸化還元フローバッテリーシステムにおいて、カソード液若しくはアノード液(又は両方)での活性種の平均酸化状態(AOS)は特に、システム内の水素生成又は酸素侵入といった条件下で変化し得る。AOS変化の結果として、システムがアンバランスになり得、システムの貯蔵能力が低下し得、若しくは、水素生成などの副反応が加速し得、又は、これらの効果の任意の組み合わせが起こり得る。
酸化還元フローバッテリーシステムのAOSを知るのが有用である。従来のAOS測定法は、試料を採取し、オフライン電位滴定分析を行うこと、及び、in situでUV-Vis測定値を得ること;又は、in situで、参照電極に対する電位差測定を行うことを含む。これらの技術は遅い、又は相対的に不正確である可能性がある。
【0038】
これらの従来技術と対照的に、比較的速く正確な方法が、本明細書で提示される。方法は、低電位充電プロセスの間に、電解質のうちの少なくとも1つにて、イオンの容量を測定することと、この放電能力、及び電解質の既知の体積を用いて、AOSを測定することと、を含む。
図9は、酸化還元フローバッテリーシステムの3つの異なる充電曲線を示す。第1の充電曲線990は、バランスのとれたシステムである。第2の充電曲線992及び第3の充電曲線994は、2つの異なるアンバランスなシステムの関するものである。アンバランスなシステムにおいて、低電位充電領域992a、994a、及び高電位充電領域992b、994bが存在する。低電位充電領域992a、994aで1回以上の測定を行うことで、AOSを測定することができる。
【0039】
このAOS測定法は、上述のFe-Cr酸化還元フローバッテリーシステムを用いて図解される。しかし、これらの方法は、任意の他の好適な酸化還元フローバッテリーシステムと共に用いることができることが理解されよう。本実施例では、カソード液及びアノード液の両方が、鉄及びクロムイオンを含む。バランスの取れたシステムに関しては、酸化還元フローバッテリーシステムが完全に充電されたときに、Fe2+及びCE3+のみが、アノード液及びカソード液の両方に存在する。充電の適用時に、システムは以下の酸化還元反応を受ける:
Fe
2+
- → Fe
3+ + e (E
O = +0.77V、正極側)
Cr
3+ + e
- → Cr
2+ (E
O = -0.40V、負極側)
正電解質と負電解質との間の電位差は、
図9で第1の充電曲線990により示すように、少なくともいくつかの実施形態では、直ちに0.9Vを超えるまでに増加することができる。
しかし、システムがアンバランスであると、AOSは副反応により増加する。例えば、Fe
2+/Fe
3+/Cr
3+の混合物は、アンバランスなFe-Cr酸化還元フローバッテリーシステムの放電された電解質で発見することができる。このようなイオンの混合物に関しては、充電が酸化還元フローバッテリーシステムに適用されるときに、システムはまず、以下の酸化還元反応を受ける:
Fe
2+
- → Fe
3+ + e (正極側)
Fe
3+ + E
- → Fe
2+(負極側)
これらの反応は、Fe
3+イオンの全てが負電解質で消費されるまで、低電位で生じる。これは、
図9の低電位充電領域992a、994aに対応する。高電位充電領域992b、994bに示すように、Fe
3+イオンの全てを消費した後でのみ、より高い充電電位にてクロムイオンが還元される。
この低電位充電プロセスの充電容量は、アノード液中のFe
3+イオンを測定するために使用することができる。例えば、26.8Ah/モル(電子1モルでの電荷)で除した、
図9の変更点993における充電容量により、アノード液でのFe
3+のモル量が与えられる。正電解質及び負電解質の体積をこのように組み合わせることを用いて、酸化還元フローバッテリーシステムのAOSを測定することができる。
この情報はまた、例えば、上述のバランス設備を用いて、酸化還元フローバッテリーシステムをリバランスするために使用することもできる。一例として、
図5A及び5Bに示すバランス設備500を用いて、電位源561から、少なくとも0.23Vの外部電位を印加するとともに、オキソバナジウムイオンを含有するバランス電解質562、及びフルクトースを含有する還元剤563 は、以下の反応を生み出す:
VO
2+ + H
2O + Fe
3+ → VO
2
+ +Fe
2+ + 2H
+
24VO
2
+ + 24H
+ +C
6H
12O
6 → 24VO
2+ + 6CO
2 + 18H
2O
【0040】
AOSをリバランスすることは、還元剤563(フルクトース)をバランス電解質562に供給することで達成することができる。例えば、理想的には、(1/24)を乗じたFe3+のモル量に等しいモル量のフルクトースを供給することで、AOSをリバランスすることができる。システム内の理想的でない要素により、より多くのフルクトースを使用して、AOSを完全にリバランスすることができることが理解されよう。
図10は、AOSの測定法の一実施形態のフローチャートである。工程1060において、低電位充電期間の間の充電容量が測定される。例えば、充電曲線が低電位充電期間から高電位充電期間に変化するときの、例えば、
図9の変更点993、995におけるような充電容量として、充電容量を測定することができる。工程1062において、AOSは次に、この測定値(又は一連の測定値)、並びに、それぞれ、アノード液及びカソード液の既知の体積、並びに、カソード液及びアノード液の既知の鉄及びクロム濃度を用いて測定することができる。少なくともいくつかの実施形態では、工程1060の前に、酸化還元フローバッテリーシステム100のアノード液112及びカソード液114は、外部電位を印加することで、又は、アノード液及びカソード液を完全に混合することで、完全に放電することができる。少なくともいくつかの実施形態では、カソード液及びアノード液は、充電容量を測定する前に完全に混合することができる。
【0041】
別の実施形態は、完全に放電されたシステムを必要としないものの、クーロン滴定(columbic titration)を用いて、任意の充電状態条件を測定することができる。
図11は、本方法の一実施形態のフローチャートである。工程1166において、あるイオン種(例えば、Fe
3+又はCr
3+)の量は、電解質の流れを止め、流れを止めた電解質で第1のイオン種のin situ滴定を行うことにより、電解質のうちの1つ(カソード液又はアノード液)で測定される。バランス設備500又は他の電解質、好ましくは酸化還元フローバッテリーシステムを流れ続けているものを使用して、イオン種を滴定することができる。一例として、Fe
3+の量は、カソード液の流れを止め、a)バランス設備500でのバナジウムイオン、又はb)アノード液でのCr
2+のいずれかを用いて、Fe
3+を滴定することで、カソード液中で測定することができ、アノード液は、Fe
3+の全てを滴定するための十分なCr
2+イオンが確実に存在するように、酸化還元バッテリーシステムを流れ続けることができる。
工程1168において、第2のイオン種(例えば、Cr
2+又はFe
2+)の量は、電解質の流れを止め、流れを止めた電解質で第2のイオン種のin situ滴定を行うことにより、電解質のうちの1つ(アノード液又はカソード液)で測定される。第2のイオン種は、1つのイオン種がカソード液で測定され、1つのイオン種がアノード液で測定されるように、第1のイオン種が測定される電解質とは異なる電解質で測定されるのが好ましい。少なくともいくつかの実施形態では、第1のイオン種の測定値により、第2のイオン種の量又は濃度が変化し、これにより、第2のイオン種の測定値が、この変化を考慮に入れるように調節される。バランス設備500又は他の電解質、好ましくは酸化還元フローバッテリーシステムを流れ続けているものを使用して、イオン種を滴定することができる。一例として、Cr
2+の量は、カソード液の流れを止め、a)バランス設備500でのバナジウムイオン、又はb)カソード液でのFe
3+のいずれかを用いて、Cr
2+を滴定することで、カソード液中で測定することができ、カソード液は、Cr
2+の全てを滴定するための十分なFe
3+イオンが確実に存在するように、酸化還元バッテリーシステムを流れ続けることができる。
工程1170において、AOSは次に、これらの2つの測定値、鉄及びクロムの初期濃度又は量、半電池の体積、並びにアノード液及びカソード液の体積を用いて測定することができる。
【0042】
別の実施形態では、充電プロセスの代わりに、放電プロセスを観察することができる。充電された、又は部分的に充電されたシステムに関して、放電又は自己放電プロセスを使用して、2つの異なる電気化学ペア(ここでは、Fe
2+/Fe
3+とCr
2+/Cr
3+)と、異なる濃度の1つのペア(Fe
2+/Fe
3+)との放電速度の差に基づき、正電解質での過剰なFe
3+を推定することができる。電気化学的デバイスでの、2つの電気化学ペアにおける放電速度の変化は、異なる濃度の1つの電気化学ペアの放電速度の変化よりもはるかに速い。その結果、
図12に図示するように、変更点1297が、放電曲線1296において観察することができる。少なくともいくつかの実施形態では、この変更点1297を使用して、カソード液での過剰Fe3+の量を推定することができる。
図13は、放電曲線を用いるAOSの測定方法の一実施形態である。工程1374において、放電速度は、初期放電の間に測定される。工程1376において、電圧放電での変更点が測定され、開回路電圧が測定される。工程1378において、変更点後の開回路電圧を使用して、ネルンストの式を用いた活性電気化学ペア(ここではFe
3+/Fe
2++)の過剰濃度を推定することができる。少なくともいくつかの実施形態では、放電終点を、アノード液中に1%、5%、又は10%以下の(全クロムの)Cr
2+イオンが存在する時点となるように選択する。工程1380において、AOSは、推定される濃度、及び電解質の既知の体積から測定することができる。これは、
図10に示す前述の方法の逆プロセスである。
少なくともいくつかの実施形態では、上述し、
図9~13を用いて示す、AOSの測定方法を、半電池106、108、アノード液112、カソード液114、酸化還元フローバッテリーシステム100の他の要素、又はバランスシステム500の要素を使用してin situで行うことができる。他の実施形態において、AOSの測定方法は、アノード液112若しくはカソード液114、又は両方の一部が、測定のために1つ以上の他の半電池に流れることを含むことができる。更に他の実施形態において、AOSの測定方法は、アノード液112若しくはカソード液114、又は両方の一部を取り除くことと、酸化還元フローバッテリーシステム100の外で測定を行うことと、を含むことができる。
少なくともいくつかの実施形態では、測定したAOSを使用して、生成した水素の量、又は他の副生物の生成を推定することができる。少なくともいくつかの実施形態では、
図10、11、及び13でのAOSの測定の後に、上述のバランス設備の操作を続け、酸化還元フローバッテリーシステムをリバランスしてAOSを復元することができる。このような操作としては、例えば、バランス電解質562に加える還元剤563の量を測定することを挙げることができる。
【0043】
所与の酸化還元フローバッテリーシステムに関して、バッテリースタック、及び全バッテリーシステム内での、電解質体積は固定比率となっている。バッテリースタック内の電解質体積は、電解質タンク外の電解質体積よりも常に、はるかに小さい。従って、全システムで電解質を充電及び放電するよりも、スタック内で電解質を充電及び放電するほうが、はるかに速い。酸化還元フローバッテリーの利用可能な能力を素早く測定するための解決策は、所与の操作条件で、電解質を流すことのみ行わず、スタックで電解質を充電又は放電し、その後結果を、システム設計パラメーターに基づいて全システムに変換することである。
多くの場合、酸化還元フローバッテリーシステムの、利用可能なエネルギー若しくは貯蔵能力、又は、当該エネルギー若しくは貯蔵能力の変化を知ることが所望される。このような測定のための従来の方法としては、例えば、酸化還元フローバッテリーシステムから試料を採取し、オフライン滴定若しくは他の分析、in situ紫外線-可視光(UV-Vis)測定、又は、参照電極に対するin situ電位差測定を行うことが挙げられる。これらの方法は低速であるか、又は不正確である可能性がある。
【0044】
酸化還元フローバッテリーシステムの操作中に、活性物質がアンバランスになったとき、所与のまとまりの放電条件に関する酸化還元フローバッテリーシステムのエンドOCV(開回路電圧)が変化することが発見されている。エンドOCVの差は、その使用可能な貯蔵又は充電容量と直接関係する。更に、エンドOCVは、AOSと直接関係する可能性がある。具体的には、所与の酸化還元フローバッテリーシステムに関して、同一の放電速度で、エンドOCVと、システム貯蔵又は充電容量又はAOSとの間には、信頼のおける関係がある。システムのアノード液側でのH2の生成、又は、O2のシステムへの侵入といった特定の条件下で、システム内の活性種はアンバランスとなる。その結果、システムの貯蔵又は充電容量は低下し、副反応が更に加速する。OCVと、システムの貯蔵又は充電容量又はAOSとの関係もまた変化する。
一例として、Fe-Cr酸化還元フローバッテリーシステムの一実施形態に関して、1.100VのOCVまで充電し、33mW/cm
2にて0.60Vまで放電した後、放電エネルギー及び関連するエンドOCVは、下表に示すとおりである。
【表3】
本表で示すように、同一の放電条件でのエンドOCVを、システムの、利用可能な貯蔵又は充電容量に対する指標として使用することができる。従って、エンドOCVは、AOSの指標としても使用可能である。
従って、少なくとも、いくつかの実施形態では、利用可能な貯蔵若しくは充電容量、又はAOSは、事前に選択した放電速度又は電力などにおける、一連の所与の条件下で、システムの全放電により測定することができ、これに、エンドOCVの測定が続く。このエンドOCVは、所定のOCV曲線;所定のルックアップテーブル若しくは他の較正表、チャートなどと比較することができるか、又は、所定の数学的関係に当てはめ、酸化還元フローバッテリーシステムの貯蔵若しくは充電容量、又はAOSを測定することができる。
少なくともいくつかの実施形態では、放電及びエンドOCV測定は、半電池106、108、及び電極102、104を用いて行うことができる。少なくともいくつかの実施形態では、酸化還元フローバッテリーシステム全体が放電される。
【0045】
酸化還元フローバッテリーシステムに関して、典型的には、バッテリースタック(例えば、半電池106、108)と、全システムとの電解質体積は固定比率となっている。バッテリースタック内の電解質体積は典型的には、電解質タンク116、118の体積よりもはるかに小さい。従って、全システムで電解質を充電及び放電するよりも、半電池106、108内で電解質を充電及び放電するほうが、はるかに速い可能性がある。従って少なくともいくつかの実施形態では、電解質(アノード液及びカソード液)の流れを、この貯蔵能力測定の間に止めることで、半電池106、108内の電解質のみが放電されるようにすることができる。典型的には、半電池106、108内の電解質のエンドOCV測定値は、全体としての全酸化還元フローバッテリーシステムを示す。
更に、バッテリースタック(例えば、半電池106、108)ではなく、はるかに小さい体積のセルを使用して放電を行い、エンドOCVを測定するのが有利である場合がある。少なくともいくつかの実施形態では、酸化還元フローバッテリーシステム100は、
図14に示すように、半電池1406、1408と、電極1402、1404とを備えるOCVセル1401を備えることができる。少なくともいくつかの実施形態では、OCVセル1401は、半電池106、108及び電極102、104よりも、体積が少なくとも25%、30%、40%、50%、60%、又は75%小さくてよい。OCVセル1401は、
図14に示すように、半電池106、108を通って、電解質(アノード液及びカソード液)の流れとインラインであることができる。或いは、OCVセル1401は、アノード液分配設備124及びカソード液分配設備126を通って、電解質のインライン流れの外に配置されることができ、OCVセル1401は弁、スイッチなどを用いて、電解質で充填することができる。OCVセルでの放電プロセスが、(電解質の流れが止まった)半電池106、108よりも速く、より速いエンドOCVの測定、及び貯蔵能力の測定がもたらされる可能性があるため、比較的小さなOCVセル1401を有するのが有利な場合がある。従って少なくともいくつかの実施形態では、電解質(アノード液及びカソード液)の流れを、この貯蔵能力測定の間に止めることで、OCVセル1401内の電解質のみが放電されるようにすることができる。
【0046】
図15は、酸化還元フローバッテリーシステムの貯蔵若しくは充電容量、又はAOSの測定方法の一実施形態のフローチャートである。工程1574において、酸化還元フローバッテリーシステムは事前に選択した放電速度で放電される。少なくともいくつかの実施形態では、実際の放電速度は、所定の放電速度よりも1、5、又は10%以下で変化する。少なくともいくつかの実施形態では、放電は酸化還元フローバッテリーシステムの自己放電である。少なくともいくつかの実施形態では、放電の終了時は、アノード液中のCr2+イオンの量が、全クロムの1%、5%、又は10%以下となるときである。他の放電終了時を用いることができる。
放電後、工程1576において、エンドOCVを測定する。工程1578において、測定したエンドOCVは、所定のOCV曲線;所定のルックアップテーブル若しくは他の較正表、チャートなどと比較されるか、又は、エンドOCVを、1つ以上の活性種の濃度、貯蔵若しくは充電容量、又は酸化還元フローバッテリーシステムのAOSと関連付ける、所定の数学的関係に当てはめる。少なくともいくつかの実施形態では、所定のエンドOCV曲線、所定のルックアップテーブル若しくは他の較正表、チャートなど、又は、当てはめられた所定の数学的関係は、異なる値の、1つ以上の活性種の濃度、貯蔵若しくは充電容量、又はAOSを有する、酸化還元フローバッテリーシステムの事前に選択した放電速度を使用して、末端部OCVを実験で測定することにより得られる。
任意の工程1580において、1つ以上の活性種の濃度、貯蔵若しくは充電容量、又はAOSが工程1578で測定されたとき、1つ以上の活性種の濃度、又は貯蔵若しくは充電容量を使用して、電解質体積を用いてAOSを測定することができる。
【0047】
少なくともいくつかの実施形態では、貯蔵若しくは充電容量、又はAOSが測定され、システムがアンバランスになったと示すとき、上述の技術のいずれかを用いて、酸化還元フローバッテリーシステムをリバランスすることができる。
AOSはまた、OCVの他の測定値を用いて測定することができる。
図16は、酸化還元フローバッテリーシステムのAOSの測定方法の一実施形態のフローチャートである。工程1680において、酸化還元フローバッテリーシステムのOCVが測定される。工程1682において、以下の手順の一方又は両方が行われる:a)カソード液の1つの鉄イオン種(例えば、Fe
3+若しくはFe
2+)の量が測定されるか、又は、b)アノード液の1つのクロムイオン種(例えば、Cr
3+若しくはCr
2+)の量が測定される。アノード液若しくはカソード液のいずれか(又は、他の種類の酸化還元フローバッテリーシステム)における、他のイオン種の測定値を、本工程で用いることができることが理解されよう。少なくともいくつかの実施形態では、1つの鉄イオン種、又は1つのクロムイオン種の量を測定するために用いる2つの半電池は、半電池106、108などの、酸化還元フローバッテリーシステムのバッテリースタックの一部であることができる。他の実施形態では、2つの半電池は、バッテリースタックの一部ではないが、例えば
図14のOCVセル1401であることができる。少なくともいくつかの実施形態では、測定は、酸化還元フローバッテリーシステム内で電解質を流すことなく行われる。少なくともいくつかの実施形態では、測定の対象である電解質の流れは止められる一方で、他の電解質の流れは維持され、測定されるイオン種の完全な滴定を促進する。少なくともいくつかの実施形態では、1つの鉄イオン種、又は1つのクロムイオン種の測定は、
図5Aのバランス設備500を利用することができ、測定工程は、上述のとおり、1つの鉄イオン種、又は1つのクロムイオン種の還元、及びバナジウムイオンの酸化、続いて、還元剤を用いてジオキソバナジウムイオンを還元することによる、バナジウムイオンの再生成を含むことができる。少なくともいくつかの実施形態では、1つの鉄イオン種、又は1つのクロムイオン種の測定は、オフラインで行うことができるか、又はin situで行うことができる。
【0048】
工程1684において、AOSは、i)1つの鉄イオン種の測定された量、1つのクロムイオン種の測定された量、又は、1つの鉄イオン種と1つのクロムイオン種の両方の測定された量、ii)測定されたOCV、及び、iii)それぞれ、カソード液又はアノード液での1つの鉄イオン種又は1つのクロムイオン種の量又は濃度と、OCVとの関係を用いて測定される。少なくともいくつかの実施形態では、AOSは、所定のOCV曲線、ルックアップテーブル、較正表、又は、OCVを、以下のうちの1つ:1つの鉄イオン種の濃度若しくは量、1つのクロムイオン種の濃度若しくは量、又は、1つの鉄イオン種若しくは1つのクロムイオン種の両方の、濃度若しくは量に関連付ける数学的関係から測定することができる。
少なくともいくつかの実施形態では、所定のOCV曲線、ルックアップテーブル、較正表、又は数学的関係は、バランスのとれたシステムの、OCVと、測定した又は計算したイオン種との関係であることができる。測定したOCVは、当該イオン種の予想される濃度又は量を提供することができる。1)測定したイオン種の予想される濃度又は量と、2)イオン種の測定した濃度又は量との差を用いて、AOSを測定することができる。
少なくともいくつかの実施形態では、所定のOCV曲線、所定のルックアップテーブル若しくは他の較正表、チャートなど、又は、当てはめられた所定の数学的関係は、バランスのとれたシステムでの、異なる量又は濃度の選択したイオン種に関して、OCVを実験で測定することで得られる。
少なくともいくつかの実施形態では、AOSが測定され、システムがアンバランスになったことを示すとき、上述の技術のいずれかを用いて、酸化還元フローバッテリーシステムをリバランスすることができる。
【0049】
上記明細書は、本発明の製造及び使用の説明を示す。本発明の多くの実施形態は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく行うことができるため、本発明は、以下に添付の特許請求の範囲にもまた属する。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕システムであって、
酸化還元フローバッテリーシステムであって、
アノード液と、
カソード液と、
前記アノード液と接する第1の電極を備える第1の半電池と、
前記カソード液と接する第2の電極を備える第2の半電池と、
前記第1の半電池を前記第2の半電池と分離する、第1のセパレータと、
を備える、酸化還元フローバッテリーシステムと、
バランス設備であって、
溶液中にバナジウムイオンを含むバランス電解質と、
前記アノード液又は前記カソード液と接する第3の電極を備える第3の半電池と、
前記バランス電解質と接する第4の電極を備える第4の半電池と、
ジオキソバナジウムイオンを還元するための、前記バランス電解質内の、又は、前記バランス電解質に導入可能な還元剤と、を備えるバランス設備と、を備える、システム。
〔2〕前記第3の半電池を前記第4の半電池と分離する第2のセパレータを更に含む、前記〔1〕に記載のシステム。
〔3〕前記第3及び前記第4の電極に接続した、又は接続可能であり、前記第3の電極と前記第4の電極との間に電位を生じさせる、電位源を更に含む、前記〔1〕又は〔2〕に記載のシステム。
〔4〕a)V
3+
及びV
2+
イオン、又はb)Fe
3+
及びFe
2+
イオンのいずれかの任意の組み合わせを含む中間電解質と、
中間電解質と接した第5の電極を備える第5の半電池と、
前記第3の半電池と前記第5の半電池との間の第2のセパレータと、
前記中間電解質と接した第6の電極を備える第6の半電池と、
前記第4の半電池と前記第6の半電池との間の第3のセパレータと、
を更に含む、前記〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載のシステム。
〔5〕a)前記第3の電極と前記第5の電極との間に電位を生じさせる、前記第3の電極及び前記第5の電極、並びに、b)a)前記第4の電極と前記第6の電極との間に電位を生じさせる、前記第4の電極及び前記第6の電極に接続した、又は接続可能な、少なくとも1つの電位源を更に含む、前記〔4〕に記載のシステム。
〔6〕前記第3の半電池が前記カソード液と接する、前記〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載のシステム。
〔7〕前記第3の半電池が前記アノード液と接する、前記〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載のシステム。
〔8〕前記還元剤が有機化合物を含む、前記〔1〕~〔7〕のいずれか一項に記載のシステム。
〔9〕前記還元剤が糖、カルボン酸、アルデヒド、又はアルコールを含む、前記〔1〕~〔8〕のいずれか一項に記載のシステム。
〔10〕前記還元剤がフルクトース、グルコース、又はスクロースを含む、前記〔1〕~〔9〕のいずれか一項に記載のシステム。
〔11〕前記システムが、前記酸化還元フローバッテリーシステムの操作中に、前記バランス設備を継続して操作するように構成される、前記〔1〕~〔10〕のいずれか一項に記載のシステム。
〔12〕前記システムが、前記酸化還元フローバッテリーシステムの操作中に、前記バランス設備を間欠的に、又は周期的に操作するように構成される、前記〔1〕~〔10〕のいずれか一項に記載のシステム。
〔13〕前記システムが、前記酸化還元フローバッテリーシステムとは独立して、前記バランス設備を継続して操作するように構成される、前記〔1〕~〔12〕のいずれか一項に記載のシステム。
〔14〕前記バランス設備及び前記酸化還元フローバッテリーシステムが一体化されており、少なくとも1つの共通構成要素を利用する、前記〔1〕~〔12〕のいずれか一項に記載のシステム。
〔15〕前記アノード液が溶液中にクロムイオンを有する、前記〔1〕~〔14〕のいずれか一項に記載のシステム。
〔16〕前記カソード液が溶液中に鉄イオンを有する、前記〔1〕~〔15〕のいずれか一項に記載のシステム。
〔17〕前記〔1〕~〔16〕のいずれか一項に記載のシステムの操作方法であって、前記方法が、
前記バランス電解質中で前記バナジウムイオンをジオキソバナジウムイオンに酸化させて水素イオンを生成することと、
前記還元剤を用いて前記ジオキソバナジウムイオンを還元して、前記バナジウムイオンを再生成することと、
を含む、方法。
〔18〕前記バナジウムイオンを再生成することが、前記バランス設備のバランスタンクに前記還元剤を添加することを含み、前記バランスタンクが、前記バランス電解質の一部を含有する、前記〔17〕に記載の方法。
〔19〕前記バナジウムイオンを再生成することが、前記還元剤を前記バランス電解質に、間欠的に又は周期的に添加することを含む、前記〔17〕又は〔18〕に記載の方法。
〔20〕前記バナジウムイオンを再生成することが、
前記バランス電解質の少なくとも一部分を前記バランス設備から取り出すことと、
前記還元剤を、前記バランス電解質の前記取り出した一部分に導入することと、
前記バランス電解質の前記取り出した一部分を前記バランス設備に戻すことと、
を含む、前記〔17〕に記載の方法。
〔21〕アノード液及びカソード液を含む酸化還元フローバッテリーシステムの、貯蔵能力又は平均酸化状態(AOS)の測定方法であって、前記方法が、
所定の放出速度の10%以内の放出速度で、前記酸化還元フローバッテリーシステムの前記アノード液及びカソード液の一部分を放出することと、
前記酸化還元フローバッテリーシステムの前記アノード液及びカソード液の前記一部分を放出した後で、エンドOCVを測定することと、
前記エンドOCVから前記貯蔵能力又はAOSを測定することと、
を含む、方法。
〔22〕前記貯蔵能力又はAOSを測定することが、前記エンドOCVに関連する、所定のOCV曲線、ルックアップテーブル、較正表、又は数学的関係から、事前に選択した放電速度の元での前記貯蔵能力又はAOSへの、前記貯蔵能力又はAOSを測定することを含む、前記〔21〕に記載の方法。
〔23〕前記酸化還元フローバッテリーシステムが、少なくとも2つの半電池、及び少なくとも2つの電極を備え、前記電極のそれぞれが、前記半電池の一方と関連する、前記〔21〕又は〔22〕に記載の方法。
〔24〕前記放出することが、少なくとも2つの前記半電池内の前記アノード液及び前記カソード液を放出することを含む、前記〔23〕に記載の方法。
〔25〕前記放出の前、及び前記放出中に、前記酸化還元フローバッテリーシステム内で、前記アノード液又は前記カソード液のうち少なくとも1つの流れを止めることを更に含む、前記〔24〕に記載の方法。
〔26〕前記少なくとも2つの前記半電池が、前記酸化還元フローバッテリーシステムのバッテリースタックの一部である、前記〔24〕又は〔25〕に記載の方法。
〔27〕前記少なくとも2つの前記半電池が、前記酸化還元フローバッテリーシステムのバッテリースタックの一部ではない、前記〔24〕又は〔25〕に記載の方法。
〔28〕前記放出することが、前記アノード液中でCr
2+
イオンが10%以下となるまで、前記酸化還元フローバッテリーシステムの前記アノード液及びカソード液の一部分を放出することを含む、前記〔21〕~〔27〕のいずれかに記載の方法。
〔29〕前記放電することが、前記酸化還元フローバッテリーシステムの自己放電を含む、前記〔21〕~〔28〕のいずれかに記載の方法。
〔30〕鉄及びクロムを含むカソード液及びアノード液を含む酸化還元フローバッテリーシステムの貯蔵能力又は平均酸化状態(AOS)の測定方法であって、前記方法が、
酸化還元フローバッテリーシステムの開放電圧(OCV)を測定することと、
以下のa)又はb)のうちの少なくとも1つを行うことと、
a)前記カソード液中での、1つの鉄イオン種の量若しくは濃度の測定、又は
b)前記アノード液中での、1つのクロムイオン種の量若しくは濃度の測定、
i)前記1つの鉄イオン種の前記測定された量若しくは濃度、前記1つのクロムイオン種の前記測定された量若しくは濃度、又は、前記1つの鉄イオン種と前記1つのクロムイオン種の両方の、前記測定された量若しくは濃度、ii)前記測定されたOCV、並びに、iii)前記貯蔵能力又はAOSと、それぞれ、前記測定されたOCVにて、前記カソード液又はアノード液中で、前記1つの鉄イオン種又は前記1つのクロムイオン種の、前記量又は濃度との所定の関係を用いて、前記貯蔵能力又はAOSを測定することと、
を含む、方法。
〔31〕前記貯蔵能力又はAOSを測定することが、所定のOCV曲線、ルックアップテーブル、較正表、並びにOCVに関する数学的関係から、以下の1つ:バランス酸化還元フローバッテリーシステムでの、前記1つの鉄イオン種の量若しくは濃度、バランス酸化還元フローバッテリーシステムでの、前記1つのクロムイオン種の量若しくは濃度、又は、バランス酸化還元フローバッテリーシステムでの、前記鉄イオン種及び前記1つのクロムイオン種の両方の量又は濃度への、前記貯蔵能力又はAOSを測定することを含む、前記〔30〕に記載の方法。
〔32〕前記カソード液中の鉄に対する、前記アノード液中のクロムのモル比が、少なくとも1.25である、前記〔30〕又は〔31〕のいずれか一項に記載の方法。
〔33〕前記酸化還元フローバッテリーシステムが、少なくとも2つの半電池、及び少なくとも2つの電極を備え、前記電極のそれぞれが、前記半電池の一方と関連する、前記〔30〕~〔32〕のいずれか一項に記載の方法。
〔34〕前記測定の前、及び前記測定中に、前記酸化還元フローバッテリーシステム内で、前記アノード液又は前記カソード液のうち少なくとも1つの流れを止めることを更に含む、前記〔33〕に記載の方法。
〔35〕前記2つの半電池が、前記酸化還元フローバッテリーシステムのバッテリースタックの一部である、前記〔33〕又は〔34〕に記載の方法。
〔36〕前記2つの半電池が、前記酸化還元フローバッテリーシステムのバッテリースタックの一部ではない、前記〔33〕又は〔34〕のいずれか一項に記載の方法。
〔37〕前記測定に応じて、前記AOSをリバランスすることを更に含む、前記〔30〕~〔36〕のいずれか一項に記載の方法。
〔38〕前記AOSをリバランスすることが、バランス電解質中でバナジウムイオンをジオキソバナジウムイオンに酸化させて水素イオンを生成することと、還元剤を使用して前記ジオキソバナジウムイオンを還元することにより、前記バナジウムイオンを再生成することと、を含み、前記酸化還元フローバッテリーシステムの前記アノード液又はカソード液が、少なくとも2つの半電池を使用して、前記バランス電解質を含むバランス設備を構成する、前記〔37〕に記載の方法。
〔39〕前記鉄イオン種を測定すること、又は前記クロムイオン種を測定することが、それぞれ、Fe
3+
又はCr
3+
を還元することと、バナジウムイオンを酸化することと、を含む、前記〔30〕~〔38〕のいずれかに記載の方法。
〔40〕還元剤を使用してジオキソバナジウムイオンを還元することにより、前記バナジウムイオンを再生成することを更に含む、前記〔39〕に記載の方法。
〔41〕酸化還元フローバッテリーシステムの平均酸化状態(AOS)を測定する方法であって、前記方法が、
前記酸化還元フローバッテリーシステムの放電状態から開始し、充電電圧の変更点までの、低電位充電期間の間、充電容量を測定することと、
前記酸化還元フローバッテリーシステムの、前記測定した充電容量並びにアノード液及びカソード液の体積を使用して、前記AOSを測定することと、
を含む、方法。
〔42〕前記酸化還元フローバッテリーシステムの前記アノード液及び前記カソード液が共に、クロムイオン及び鉄イオンを含み、前記AOSを測定することが、前記アノード液及びカソード液中でのクロムイオン及び鉄イオンの初期濃度を用いて、前記AOSを測定することを更に含む、前記〔41〕に記載の方法。
〔43〕前記カソード液中の鉄に対する、前記アノード液中のクロムのモル比が、少なくとも1.25である、前記〔42〕に記載の方法。
〔44〕前記低電位充電期間が、前記アノード液でのFe
3+
の還元期間に対応する、前記〔42〕又は〔43〕に記載の方法。
〔45〕前記測定に応じて、前記AOSをリバランスすることを更に含む、前記〔41〕~〔44〕のいずれか一項に記載の方法。
〔46〕前記AOSをリバランスすることが、バランス電解質中でバナジウムイオンをジオキソバナジウムイオンに酸化させて水素イオンを生成することと、還元剤を使用して前記ジオキソバナジウムイオンを還元することにより、前記バナジウムイオンを再生成することと、を含み、前記酸化還元フローバッテリーシステムの前記アノード液又はカソード液が、少なくとも2つの半電池を使用して、前記バランス電解質を含むバランス設備を構成する、前記〔45〕に記載の方法。
〔47〕前記充電容量を測定する前に、電位を印加して前記酸化還元フローバッテリーシステムを放電することを更に含む、前記〔41〕~〔46〕のいずれか一項に記載の方法。
〔48〕前記充電容量を測定することが、前記酸化還元フローバッテリーシステム内の前記アノード液中で前記充電容量を測定すること、前記〔41〕~〔47〕のいずれかに記載の方法。
〔49〕前記充電容量を測定することが、前記酸化還元フローバッテリーシステムから取り出した前記アノード液の一部で、前記充電容量を測定することを含む、前記〔41〕~〔47〕のいずれかに記載の方法。
〔50〕共に鉄及びクロムイオンを含むカソード液及びアノード液を含む酸化還元フローバッテリーシステムの平均酸化状態(AOS)の測定方法であって、前記方法が、
前記カソード液又は前記アノード液のいずれかの第1のものでの、第1のイオン種の量又は濃度をin situで測定することと、
前記カソード液又は前記アノード液のいずれかの第2のものでの、第2のイオン種の量又は濃度をin situで測定することと、
前記測定した量又は濃度、前記カソード液及びアノード液中での鉄及びクロムの初期濃度又は量、前記酸化還元フローバッテリーシステムのアノード液及びカソード液の体積を使用して前記AOSを測定することと、
を含む、方法。
〔51〕前記カソード液中の鉄に対する、前記アノード液中のクロムのモル比が、少なくとも1.25である、前記〔50〕に記載の方法。
〔52〕前記測定に応じて、前記AOSをリバランスすることを更に含む、前記〔50〕又は〔51〕のいずれか一項に記載の方法。
〔53〕前記AOSをリバランスすることが、バランス電解質中でバナジウムイオンをジオキソバナジウムイオンに酸化させて水素イオンを生成することと、還元剤を使用して前記ジオキソバナジウムイオンを還元することにより、前記バナジウムイオンを再生成することと、を含み、前記酸化還元フローバッテリーシステムの前記アノード液又はカソード液が、少なくとも2つの半電池を使用して、前記バランス電解質を含むバランス設備を構成する、前記〔52〕に記載の方法。
〔54〕前記第1のイオン種の前記量又は濃度をin situで測定することが、流れていない前記カソード液又はアノード液のいずれかの第1のもの、及び、流れている前記カソード液又はアノード液の別のものにより、前記第1のイオン種の前記量又は濃度を測定することを含む、前記〔50〕~〔53〕のいずれかに記載の方法。
〔55〕前記第2のイオン種の前記量又は濃度をin situで測定することが、流れていない前記カソード液又はアノード液のいずれかの第2のもの、及び、流れている前記カソード液又はアノード液の別のものにより、前記第2のイオン種の量又は前記濃度を測定することを含む、前記〔54〕に記載の方法。
〔56〕前記第1のイオン種の前記量又は濃度をin situで測定することが、バランス電解質中のバナジウムイオンを用いて、前記第1のイオン種を電気滴定することにより、前記第1のイオン種の前記量又は濃度を測定することを含む、前記〔50〕~〔55〕のいずれかに記載の方法。
〔57〕共に鉄及びクロムイオンを含むカソード液及びアノード液を含む酸化還元フローバッテリーシステムの平均酸化状態(AOS)の測定方法であって、前記方法が、
酸化還元フローバッテリーシステムの放電中に放電速度を測定することと、
放電の変更点を測定し、前記変更点の後で開回路電圧(OCV)を測定することと、
前記測定したOCVを用いてFe
3+
の濃度を推定することと、
前記酸化還元フローバッテリーシステムの、前記測定した濃度、並びにアノード液及びカソード液の体積を使用して、前記AOSを測定することと、
を含む、方法。
〔58〕前記カソード液中の鉄に対する、前記アノード液中のクロムのモル比が、少なくとも1.25である、前記〔57〕に記載の方法。
〔59〕前記測定に応じて、前記AOSをリバランスすることを更に含む、前記〔57〕又は〔58〕に記載の方法。
〔60〕前記AOSをリバランスすることが、バランス電解質中でバナジウムイオンをジオキソバナジウムイオンに酸化させて水素イオンを生成することと、還元剤を使用して前記ジオキソバナジウムイオンを還元することにより、前記バナジウムイオンを再生成することと、を含み、前記酸化還元フローバッテリーシステムの前記アノード液又はカソード液が、少なくとも2つの半電池を使用して、前記バランス電解質を含むバランス設備を構成する、前記〔59〕に記載の方法。
〔61〕酸化還元フローバッテリーシステムであって、
溶液中に第1のイオン種を含むアノード液と、
溶液中に第2のイオン種を含むカソード液と、
前記アノード液と接する第1の電極であって、前記第1の電極が、前記アノード液中で還元された金属様不純物の粒子を収集するための複数のチャネルを含む、第1の電極と、
前記カソード液と接する第2の電極と、
前記アノード液を前記カソード液と分離するセパレータと、
を備え、前記酸化還元フローバッテリーシステムが、充電中に、前記アノード液中の前記第1のイオン種を還元し、前記カソード液中の前記第2のイオン種を酸化するように構成されている、
酸化還元フローバッテリーシステム。
〔62〕前記第1のイオン種がクロムイオン種を含む、前記〔61〕に記載の酸化還元フローバッテリーシステム。
〔63〕前記第2のイオン種が鉄イオン種を含む、前記〔61〕又は〔62〕に記載の酸化還元フローバッテリーシステム。
〔64〕前記金属様不純物がニッケル、アンチモン、亜鉛、白金、パラジウム、金、又は銅のうちの少なくとも1つを含む、前記〔61〕~〔63〕のいずれか一項に記載の酸化還元フローバッテリーシステム。
〔65〕洗浄溶液を更に含み、前記酸化還元フローバッテリーシステムが、前記第1の電極に洗浄溶液を流し、還元された金属様不純物の前記粒子を取り除くように構成される、前記〔61〕~〔64〕のいずれか一項に記載の酸化還元フローバッテリーシステム。
〔66〕前記洗浄溶液が前記カソード液の少なくとも一部分である、前記〔65〕に記載の酸化還元フローバッテリーシステム。
〔67〕前記洗浄溶液が過酸化水素又は塩化第二鉄を含む、前記〔65〕に記載の酸化還元フローバッテリーシステム。
〔68〕酸化還元フローバッテリーシステムのアノード液中での、金属様不純物の還元方法であって、前記方法が、
アノード液中で前記金属様不純物を還元することと、
前記還元された金属様不純物の粒子を収集することと、
前記収集した粒子を洗浄溶液を用いて取り除くことと、
を含む、方法。
〔69〕前記粒子を収集することが、前記還元された金属様不純物の粒子の少なくとも一部分を、前記酸化還元フローバッテリーシステムの電極上で収集することを含む、前記〔68〕に記載の方法。
〔70〕前記電極が、前記還元された金属様不純物の前記粒子を収集するための、互いにかみ合った開口部又は陥凹部を備える、前記〔69〕に記載の方法。
〔71〕前記金属様不純物がニッケル、アンチモン、亜鉛、白金、パラジウム、金、又は銅のうちの少なくとも1つを含む、前記〔68〕~〔70〕のいずれかに記載の方法。
〔72〕前記洗浄溶液が第二鉄イオンを含む、前記〔68〕~〔71〕のいずれか一項に記載の方法。
〔73〕前記洗浄溶液が、前記酸化還元フローバッテリーシステムのカソード液の少なくとも一部分である、前記〔68〕~〔72〕のいずれかに記載の方法。
〔74〕前記洗浄溶液が過酸化水素又は塩化第二鉄を含む、前記〔68〕~〔72〕のいずれか一項に記載の方法。
〔75〕前記収集した粒子を取り除くことが、前記酸化還元フローバッテリーシステムの保全サイクルの間に、前記収集した粒子を取り除くことを含む、前記〔68〕~〔74〕のいずれかに記載の方法。
〔76〕保全サイクルを行う前に、少なくとも5回の充電放電サイクルを行うことを更に含む、前記〔75〕に記載の方法。
〔77〕粒子を収集することが、微粒子フィルターで、前記還元された金属様不純物の粒子の少なくとも一部分を収集することを含む、前記〔68〕~〔76〕のいずれかに記載の方法。
〔78〕前記アノード液がクロムイオンを含み、前記カソード液が鉄イオンを含む、前記〔68〕~〔77〕のいずれかに記載の方法。
〔79〕前記アノード液が鉄イオンを更に含み、前記カソード液がクロムイオンを更に含む、前記〔78〕に記載の方法。
〔80〕前記アノード液中でのクロムの利用は、前記カソード液中での鉄の量の80%以下に制限される、前記〔78〕又は〔79〕に記載の方法。
〔81〕酸化還元フローバッテリーシステムであって、
溶液中にクロムイオンを含むアノード液と、
溶液中に鉄イオンを含むカソード液と、
前記アノード液と接する第1の電極と、
前記カソード液と接する第2の電極と、
前記アノード液を前記カソード液と分離するセパレータと、
を含み、前記カソード液中の鉄に対する前記アノード液液中のクロムのモル比が、少なくとも1.25である、酸化還元フローバッテリーシステム。
〔82〕前記アノード液が、前記溶液中に鉄イオンを更に含み、前記カソード液が、前記溶液中にクロムイオンを更に含む、前記〔81〕に記載の酸化還元フローバッテリーシステム。
〔83〕前記アノード液中の前記鉄イオンのモル濃度が、前記カソード液中の鉄イオンのモル濃度の25%以内であり、前記アノード液中の前記クロムイオンのモル濃度は、前記カソード液中のクロムイオンのモル濃度の25%以内である、前記〔82〕に記載の酸化還元フローバッテリーシステム。
〔84〕前記アノード液中のH
+
の初期モル濃度が、前記カソード液中のH
+
の初期モル濃度の少なくとも10%未満である、前記〔81〕~〔83〕のいずれか一項に記載の酸化還元フローバッテリーシステム。
〔85〕前記アノード液中の前記クロムイオンのモル濃度が、前記カソード液中の鉄イオンのモル濃度の少なくとも1.25倍である、前記〔81〕~〔84〕のいずれか一項に記載の酸化還元フローバッテリーシステム。
〔86〕前記アノード液中の前記クロムイオンのモル濃度が、前記カソード液中の鉄イオンのモル濃度の少なくとも1.43倍である、前記〔81〕~〔84〕のいずれか一項に記載の酸化還元フローバッテリーシステム。
〔87〕前記アノード液中の前記クロムイオンのモル濃度が、前記カソード液中の鉄イオンのモル濃度の少なくとも1.67倍である、前記〔81〕~〔84〕のいずれか一項に記載の酸化還元フローバッテリーシステム。
〔88〕前記アノード液の体積が、前記カソード液の体積の少なくとも1.25倍である、前記〔81〕~〔87〕のいずれか一項に記載の酸化還元フローバッテリーシステム。
〔89〕前記アノード液中の前記クロムイオンのモル濃度が、前記カソード液中の前記鉄のモル濃度に等しい、前記〔88〕に記載の酸化還元フローバッテリーシステム。
〔90〕前記アノード液の体積が、前記カソード液の体積の少なくとも1.43倍である、前記〔81〕~〔89〕のいずれか一項に記載の酸化還元フローバッテリーシステム。
〔91〕前記アノード液の体積が、前記カソード液の体積の少なくとも1.67倍である、前記〔81〕~〔90〕のいずれか一項に記載の酸化還元フローバッテリーシステム。
〔92〕前記カソード液中の鉄イオンに対する前記アノード液中のクロムイオンのモル比が、少なくとも1.43である、前記〔81〕~〔91〕のいずれか一項に記載の酸化還元フローバッテリーシステム。
〔93〕前記カソード液中の鉄イオンに対する前記アノード液中のクロムイオンのモル比が、少なくとも1.67である、前記〔81〕~〔91〕のいずれか一項に記載の酸化還元フローバッテリーシステム。
〔94〕前記アノード液が塩化クロムを含み、前記クロムイオンをもたらす、前記〔81〕~〔93〕のいずれか一項に記載の酸化還元フローバッテリーシステム。
〔95〕前記カソード液が塩化鉄を含み、前記鉄イオンをもたらす、前記〔81〕~〔94〕のいずれか一項に記載の酸化還元フローバッテリーシステム。
〔96〕前記アノード液及びカソード液が共に、塩酸を更に含む、前記〔81〕~〔95〕のいずれか一項に記載の酸化還元フローバッテリーシステム。
〔97〕前記アノード液中でのクロムの利用が、前記カソード液中の鉄の量により制限される、前記〔81〕~〔96〕のいずれか一項に記載の酸化還元フローバッテリーシステム。
〔98〕前記アノード液中でのクロムの利用が、前記カソード液中での鉄の量の80%以下に制限される、前記〔97〕に記載の酸化還元フローバッテリーシステム。
〔99〕前記酸化還元フローバッテリーシステムが均質な触媒を含まない、前記〔81〕~〔98〕のいずれか一項に記載の酸化還元フローバッテリーシステム。
〔100〕前記酸化還元フローバッテリーシステムが金属触媒を含まない、前記〔81〕~〔99〕のいずれか一項に記載の酸化還元フローバッテリーシステム。