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特許7491952硫黄除去に使用するための再活性化された水素化処理用触媒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】硫黄除去に使用するための再活性化された水素化処理用触媒
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/86 20060101AFI20240521BHJP
   B01J 27/051 20060101ALI20240521BHJP
   B01J 27/30 20060101ALI20240521BHJP
   B01J 38/06 20060101ALI20240521BHJP
   B01J 38/10 20060101ALI20240521BHJP
   B01J 38/50 20060101ALI20240521BHJP
   C01B 17/16 20060101ALI20240521BHJP
   C10G 70/02 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
B01D53/86 210
B01J27/051 M
B01J27/30 M
B01J38/06
B01J38/10 A
B01J38/50
C01B17/16 B
C01B17/16 D
C10G70/02
【請求項の数】 37
(21)【出願番号】P 2021569559
(86)(22)【出願日】2020-05-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-20
(86)【国際出願番号】 US2020034353
(87)【国際公開番号】W WO2020237200
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】62/852,102
(32)【優先日】2019-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】テレンス マキュー
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ シーマンズ
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン ヴィジオリ
(72)【発明者】
【氏名】ペトゥス キンカノン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ウェズリー トンプソン
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー エンダーリン
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-510399(JP,A)
【文献】特表2014-509926(JP,A)
【文献】特開平5-305235(JP,A)
【文献】米国特許第3752877(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/86
B01J 38/00
C01B 17/16
C10G 70/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テールガス処理プロセスのガス流を処理する方法であって、前記方法は、
前記ガス流を、以前に水素化精製プロセスで使用され、かつ前記テールガス処理プロセスの前記ガス流との接触前に再活性化プロセスによって再活性化された触媒と接触させるステップを含み、
前記ガス流は、単体硫黄(S)、二酸化硫黄(SO)、硫化カルボニル(COS)、および二硫化炭素(CS)からなる群から選択される1つ以上の硫黄含有種を含み、 前記ガス流と前記再活性化された触媒とを水素(H)の存在下で接触させて、前記1つ以上の硫黄含有種を硫化水素(HS)に転化させる、方法。
【請求項2】
前記水素化精製プロセスが、石油の水素化精製プロセス、水素化脱硫(HDS)、水素化脱窒素(HDN)、水素化、水素化脱メタル(HDM)、ナフサ水素化精製(NHT)、ディーゼル水素化精製(DHT)、灯油水素化精製(KHT)、ジェット燃料水素化精製(JHT)、常圧軽油水素化精製、真空軽油(VGO)水素化精製、および流動接触分解装置(FCC)フィード水素化精製からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記触媒が、無機酸化物担体材料に担持された1つ以上の第VIIIB族金属および1つ以上の第VIB族金属を含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記触媒が、酸化アルミニウムに担持されたコバルトおよびモリブデンを含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記触媒が、酸化アルミニウムに担持されたニッケルおよびモリブデンを含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記再活性化プロセスが、再生を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記再生が、酸素含有雰囲気中で前記触媒を300~500℃の温度で30分以上の時間にわたって加熱することを含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
再生処理の前に、溶媒抽出によって、または150~550℃の温度で蒸気、天然ガス燃焼生成物、水素もしくは窒素と前記触媒とを接触させることによって、前記触媒から炭化水素を除去する、請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記再活性化プロセスが、賦活を含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記賦活が、キレート剤を含む溶液を前記触媒に含浸させ、前記触媒を50℃~300℃の温度で乾燥させることを含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記キレート剤が、有機酸である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記再活性化された触媒に対し、前記テールガス処理プロセスの前記ガス流との接触前に、プレサルファライジング処理を行う、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記再活性化された触媒に対し、前記テールガス処理プロセスの前記ガス流との接触前に、プレサルファイディング処理を行う、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記再活性化された触媒に対し、前記テールガス処理プロセスの前記ガス流との接触前に、サイズ変更、形状変更および/または再構成を行う、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記再活性化された触媒に対し、前記触媒の長さを等級分けすることによってサイズ変更を行う、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記サイズ変更、形状変更および/または再構成が、前記再活性化された触媒を粉砕して微粉末にし、その後、前記再活性化された触媒を再形成することを含む、請求項14記載の方法。
【請求項17】
前記再活性化された触媒に対し、1.3~2.5mmの直径を有するものから、3~5mmの直径を有するものへとサイズ変更を行う、請求項14記載の方法。
【請求項18】
前記ガス流を前記再活性化された触媒と接触させることが、前記再活性化された触媒と第2の触媒とを合することを含み、前記第2の触媒は、前記再活性化された触媒よりも低い圧力損失を提供する、請求項1記載の方法。
【請求項19】
前記ガス流を前記再活性化された触媒と接触させることが、前記再活性化された触媒をショートローディングすることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項20】
前記再活性化された触媒が、ソックローディングして周囲空気中で100ft/分の空塔速度で試験した場合に0.05~0.20psi/ftの圧力損失を示す、請求項1記載の方法。
【請求項21】
テールガス処理プロセス用の再活性化された触媒の形成方法であって、前記方法は、
水素化精製プロセスから使用済み触媒を入手するステップと、
前記触媒を再活性化させて、再活性化された触媒を形成するステップと
を含み、ここで、
前記再活性化された触媒は、単体硫黄(S)、二酸化硫黄(SO)、硫化カルボニル(COS)、および二硫化炭素(CS)からなる群から選択される1つ以上の硫黄含有種を含むガス流と接触した際に、水素(H)の存在下での前記1つ以上の硫黄含有種から硫化水素(HS)への転化を触媒することができる、方法。
【請求項22】
前記水素化精製プロセスが、石油の水素化精製プロセス、水素化脱硫(HDS)、水素化脱窒素(HDN)、水素化、水素化脱メタル(HDM)、ナフサ水素化精製(NHT)、ディーゼル水素化精製(DHT)、灯油水素化精製(KHT)、ジェット燃料水素化精製(JHT)、常圧軽油水素化精製、真空軽油(VGO)水素化精製、および流動接触分解装置(FCC)フィード水素化精製からなる群から選択される、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記使用済み触媒が、
20~600m/gの表面積を有する無機酸化物担体材料と、
前記無機酸化物担体材料に担持された1つ以上の第VIIIB族金属および1つ以上の第VIB族金属と
を含む、請求項21記載の方法。
【請求項24】
前記触媒が、酸化アルミニウムに担持されたコバルトおよびモリブデンを含む、請求項21記載の方法。
【請求項25】
前記触媒が、酸化アルミニウムに担持されたニッケルおよびモリブデンを含む、請求項21記載の方法。
【請求項26】
前記再活性化が、再生を含む、請求項21記載の方法。
【請求項27】
前記再生が、酸素含有雰囲気中で前記触媒を300~500℃の温度で30分以上の時間にわたって加熱することを含む、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記再生の前に、溶媒抽出によって、または150~550℃の温度で蒸気、天然ガス燃焼生成物、水素もしくは窒素と前記触媒とを接触させることによって、前記触媒から炭化水素を除去する、請求項26記載の方法。
【請求項29】
前記再活性化が、賦活を含む、請求項21記載の方法。
【請求項30】
前記賦活が、キレート剤を含む溶液を前記触媒に含浸させ、前記触媒を50℃~300℃の温度で乾燥させることを含む、請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記キレート剤が、有機酸である、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記再活性化された触媒に対し、プレサルファライジング処理を行うことをさらに含む、請求項21記載の方法。
【請求項33】
前記再活性化された触媒に対し、プレサルファイディング処理を行うことをさらに含む、請求項21記載の方法。
【請求項34】
前記再活性化された触媒に対し、サイズ変更、形状変更および/または再構成を行うことをさらに含む、請求項21記載の方法。
【請求項35】
前記再活性化された触媒を粉砕して微粉末にし、その後、前記再活性化された触媒を再形成することをさらに含む、請求項21記載の方法。
【請求項36】
再活性化前の前記使用済み触媒が、1.3~2.5mmの直径を有し、前記再活性化および再形成された触媒が、3~5mmの直径を有する、請求項35記載の方法。
【請求項37】
前記水素化精製プロセスで使用されたままの前記使用済み触媒が、0.20~0.80psi/ftの圧力損失を示し、前記方法は、前記再活性化された触媒に対してサイズ変更、形状変更および/または再構成を行うことにより、前記再活性化された触媒が、ソックローディングして周囲空気中で100ft/分の空塔速度で試験した場合に0.05~0.20psi/ftの圧力損失を示すことをさらに含む、請求項21記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、炭化水素処理プロセスにおけるテールガス処理のための触媒および方法に関する。より具体的には、本出願は、水素化処理プロセスで使用される触媒を再活性化させ、再活性化された触媒をテールガス処理に使用することに関する。
【0002】
背景
汚染防止のために、石油および天然ガス誘導体流などの炭化水素流から硫黄を除去する必要性はよく知られている。硫黄が炭化水素化合物から除去されないと、燃焼時に二酸化硫黄および三酸化硫黄が形成される。これらの化合物は、大気中の水分と反応して硫酸を生成し、酸性雨と呼ばれる現象の原因となり得る。このため、ほとんどの地域では、環境への硫黄の排出を最小限に抑えることが法律で義務付けられている。
【0003】
天然ガスやその他の精製石油製品から硫黄を除去するには、一般には水素化脱硫(HDS)と呼ばれる触媒プロセスが用いられ、これは一般的には水素化精製(HDT)または水素化処理(HDP)とも呼ばれる。このプロセスでは、炭化水素流を水素ガスと混合して加熱し、高温高圧で固定触媒床を通過させる。一般的に使用される水素化処理用触媒は、コバルト(Co)やニッケル(Ni)などの1つ以上の第VIIIB族金属、およびモリブデン(Mo)やタングステン(W)などの1つ以上の第VIB族金属を、アルミナ(Al)、シリカアルミナ、ゼオライトまたはそれらの組み合わせなどの担体材料に担持させたものを含む。水素化精製用触媒を水素化精製プロセスで使用する場合、触媒上にコークと呼ばれる炭素含有堆積物が蓄積することにより、および/またはケイ素(Si)、ヒ素(As)、バナジウム(V)などの不活性化無機物質が存在することにより、触媒の活性は時間とともに低下する。これらの触媒の一部は、再生や賦活により再活性化されてHDS触媒として再利用されることもあるが、多くの場合、使用済みの触媒は回収されず、有害廃棄物として処理されている。このように、HDS処理などの炭化水素プロセスから回収された触媒のさらなる使用の開発には、環境的および経済的な誘因が存在する。
【0004】
概要
本明細書において、テールガス処理プロセスのガス流を処理する方法であって、該方法は、ガス流を、以前に水素化精製プロセスで使用され、かつテールガス処理プロセスのガス流との接触前に再活性化プロセスによって再活性化された触媒と接触させるステップを含み、ガス流は、単体硫黄(S)、二酸化硫黄(SO)、硫化カルボニル(COS)、および二硫化炭素(CS)からなる群から選択される1つ以上の硫黄含有種を含み、ガス流と再活性化された触媒とを水素(H)の存在下で接触させて、1つ以上の硫黄含有種を硫化水素(HS)に転化させる、方法が開示される。いくつかの実施形態によれば、水素化精製プロセスは、石油の水素化精製プロセス、水素化脱硫(HDS)、水素化脱窒素(HDN)、水素化、水素化脱メタル(HDM)、ナフサ水素化精製(NHT)、ディーゼル水素化精製(DHT)、灯油水素化精製(KHT)、ジェット燃料水素化精製(JHT)、常圧軽油水素化精製、真空軽油(VGO)水素化精製、および流動接触分解装置(FCC)フィード水素化精製からなる群から選択される。いくつかの実施形態によれば、触媒は、無機酸化物担体材料に担持された1つ以上の第VIIIB族金属および1つ以上の第VIB族金属を含む。いくつかの実施形態によれば、触媒は、酸化アルミニウムに担持されたコバルトおよびモリブデンを含む。いくつかの実施形態によれば、触媒は、酸化アルミニウムに担持されたニッケルおよびモリブデンを含む。いくつかの実施形態によれば、再活性化プロセスは、再生を含む。いくつかの実施形態によれば、再生は、酸素含有雰囲気中で触媒を300~500℃の温度で30分以上の時間にわたって加熱することを含む。いくつかの実施形態によれば、再生処理の前に、溶媒抽出によって、または150~550℃の温度で蒸気、天然ガス燃焼生成物、水素もしくは窒素と触媒とを接触させることによって、触媒から炭化水素を除去する。いくつかの実施形態によれば、再活性化プロセスは、賦活を含む。いくつかの実施形態によれば、賦活は、キレート剤を含む溶液を触媒に含浸させ、触媒を50℃~300℃の温度で乾燥させることを含む。いくつかの実施形態によれば、キレート剤は、有機酸である。いくつかの実施形態によれば、再活性化された触媒に対し、テールガス処理プロセスのガス流との接触前に、プレサルファライジング処理(pre-sulfurized)を行う。いくつかの実施形態によれば、再活性化された触媒に対し、テールガス処理プロセスのガス流との接触前に、プレサルファイディング処理(pre-sulfided)を行う。いくつかの実施形態によれば、再活性化された触媒に対し、テールガス処理プロセスのガス流との接触前に、サイズ変更、形状変更および/または再構成を行う。いくつかの実施形態によれば、再活性化された触媒に対し、触媒の長さを等級分けすることによってサイズ変更を行う。いくつかの実施形態によれば、サイズ変更、形状変更および/または再構成は、再活性化された触媒を粉砕して微粉末にし、その後、再活性化された触媒を再形成することを含む。いくつかの実施形態によれば、再活性化された触媒に対し、1.3~2.5mmの直径を有するものから、3~5mmの直径を有するものへとサイズ変更を行う。いくつかの実施形態によれば、ガス流を再活性化された触媒と接触させるステップは、再活性化された触媒と第2の触媒とを合することを含み、ここで、第2の触媒は、再活性化された触媒よりも低い圧力損失を提供する。いくつかの実施形態によれば、ガス流を再活性化された触媒と接触させるステップは、再活性化された触媒をショートローディングすること(short loading)を含む。いくつかの実施形態によれば、再活性化された触媒は、ソックローディングして(sock-loaded)周囲空気中で100ft/分の空塔速度で試験した場合に0.05~0.20psi/ftの圧力損失を示す。
【0005】
また本明細書において、テールガス処理プロセス用の再活性化された触媒の形成方法であって、該方法は、水素化精製プロセスから使用済み触媒を入手するステップと、触媒を再活性化させて、再活性化された触媒を形成するステップとを含み、ここで、再活性化された触媒は、単体硫黄(S)、二酸化硫黄(SO)、硫化カルボニル(COS)、および二硫化炭素(CS)からなる群から選択される1つ以上の硫黄含有種を含むガス流と接触した際に、水素(H)の存在下での1つ以上の硫黄含有種から硫化水素(HS)への転化を触媒することができる、方法が開示される。いくつかの実施形態によれば、水素化精製プロセスは、石油の水素化精製プロセス、水素化脱硫(HDS)、水素化脱窒素(HDN)、水素化、水素化脱メタル(HDM)、ナフサ水素化精製(NHT)、ディーゼル水素化精製(DHT)、灯油水素化精製(KHT)、ジェット燃料水素化精製(JHT)、常圧軽油水素化精製、真空軽油(VGO)水素化精製、および流動接触分解装置(FCC)フィード水素化精製からなる群から選択される。いくつかの実施形態によれば、使用済み触媒は、20~600m/gの表面積を有する無機酸化物担体材料と、無機酸化物担体材料に担持された1つ以上の第VIIIB族金属および1つ以上の第VIB族金属とを含む。いくつかの実施形態によれば、触媒は、酸化アルミニウムに担持されたコバルトおよびモリブデンを含む。いくつかの実施形態によれば、触媒は、酸化アルミニウムに担持されたニッケルおよびモリブデンを含む。いくつかの実施形態によれば、再活性化は、再生を含む。いくつかの実施形態によれば、再生は、酸素含有雰囲気中で触媒を300~500℃の温度で30分以上の時間にわたって加熱することを含む。いくつかの実施形態によれば、再生の前に、溶媒抽出によって、または150~550℃の温度で蒸気、天然ガス燃焼生成物、水素もしくは窒素と触媒とを接触させることによって、触媒から炭化水素を除去する。いくつかの実施形態によれば、再活性化は、賦活を含む。いくつかの実施形態によれば、賦活は、キレート剤を含む溶液を触媒に含浸させ、触媒を50℃~300℃の温度で乾燥させることを含む。いくつかの実施形態によれば、キレート剤は、有機酸である。いくつかの実施形態によれば、本方法は、再活性化された触媒をプレサルファライジングすることをさらに含む。いくつかの実施形態によれば、本方法は、再活性化された触媒をプレサルファイディングすることをさらに含む。いくつかの実施形態によれば、本方法は、再活性化された触媒に対し、サイズ変更、形状変更および/または再構成を行うことをさらに含む。いくつかの実施形態によれば、本方法は、再活性化された触媒を粉砕して微粉末にし、その後、再活性化された触媒を再形成することをさらに含む。いくつかの実施形態によれば、再活性化前の使用済み触媒は、1.3~2.5mmの直径を有し、再活性化および再形成された触媒は、3~5mmの直径を有する。いくつかの実施形態によれば、水素化精製プロセスで使用されたままの使用済み触媒は、0.20~0.80psi/ftの圧力損失を示し、その際、本方法は、再活性化された触媒に対してサイズ変更、形状変更および/または再構成を行うことにより、再活性化された触媒が、ソックローディングして周囲空気中で100ft/分の空塔速度で試験した場合に0.05~0.20psi/ftの圧力損失を示すことをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】酸性炭化水素フィードを処理するためのプロセスを示す図であり、このプロセスは、水素化処理ステップと硫黄処理ステップとを含む。
図2】再生、高温窒素ストリッピング、および溶媒抽出された触媒の分析を示す表。
図3】1,200GHSVでのテールガス処理における新鮮な触媒、再生された触媒、賦活された触媒、高温窒素ストリッピングされた触媒、および溶媒抽出された触媒の性能を示す表。
図4】全硫黄転化率の算出に用いた式、および異なる触媒を用いた場合の全硫黄転化率の比較を示す図。
図5】3,000GHSVでのテールガス処理における再生された触媒および賦活された触媒の性能を示す表。
図6】異なる触媒を用いた3000GHSVでの二酸化硫黄の転化率の比較を示す図。
図7】異なる触媒を用いた3000GHSVでの二硫化炭素の転化率の比較を示す図。
図8】異なる触媒を用いた3000GHSVでの硫化カルボニルの転化率の比較を示す図。
図9】異なる触媒を用いた3000GHSVでの全硫黄転化率の比較を示す図。
図10】テールガス処理に使用する触媒を再活性化させるプロセスを示す図。
【0007】
詳細な説明
図1に、天然ガス処理設備や石油精製所などの炭化水素処理プラントの態様を示す。上述したように、そのような設備は、1つ以上の水素化脱硫(HDS)反応器102を含み得る。HDS反応器102には、酸性炭化水素フィード(すなわち、有機硫黄化合物を含む炭化水素フィード)が供給される。上述したように、炭化水素流を加熱し、水素ガスと混合し、高温高圧で触媒を通過させる。上述したように、水素化処理用触媒は、典型的には、コバルト(Co)やニッケル(Ni)などの1つ以上の第VIIIB族金属、およびモリブデン(Mo)やタングステン(W)などの1つ以上の第VIB族金属を、アルミナ(Al)、シリカアルミナ、ゼオライトまたはそれらの組み合わせなどの担体材料に担持させたものを含む。生じる反応は水素化分解であり、これはC-S化学結合の切断とC-HおよびH-S化学結合の生成とを特徴とする。このようにして、(埋め込まれた硫黄を含む)炭化水素化合物と水素との反応により、硫化水素ガス(HS)の形成による硫黄の脱離が可能となる。
【0008】
固定床反応器の排出物を冷却し、気液分離を行う。ガスには、他の成分のうち水素および硫化水素が含まれている。このガスをアミンシステム104に供給する。アミンシステム104はアミン吸収システム(特に図示せず)を含み、ここで硫化水素をアミン吸収剤に選択的に吸収させる。このようにしてガスを浄化して硫化水素を除去し、残りの水素リッチガス流を主に循環させて新鮮な補給水素と合し、水素化脱硫反応器102に再度供給する。アミンシステム104内では、「リッチ」なHSを含むアミン溶液をアミン再生装置(特に図示せず)に送る。水素化処理装置の排出ガス分離器で得られた炭化水素液をストリッパー106に送り、ここで炭化水素液から硫化水素をストリッピングする。これにより、さらなる精製のために、液体炭化水素流を浄化して硫化水素を除去する。ストリッピングされた硫化水素を含むガス流を、次いでアミンシステム108(アミンシステム104と同様)に送り、ここでアミン吸収剤を使用して残りのガス流から硫化水素を除去する。リッチな硫化水素を含むアミン吸収剤を再生すると、硫化水素リッチなガス流が得られる。最も一般的には、硫化水素流を硫黄回収システムに送る。この硫黄回収システムは、テールガスの浄化プロセスと組み合わせられた改良型のクラウスプロセスを含むことができ、さらなる処理および単体硫黄への転化を行う。さほど一般的ではないが、いくつかのケースではこれに代えて、硫化水素を含む流れを湿式硫酸(WSA)プラントで硫酸に転化させることができる。
【0009】
なおも図1を参照すると、図示された硫黄回収システム110は、硫化水素を単体硫黄に転化させる改良型のクラウスプロセス112を含む。このプロセスは、典型的には反応炉である熱段階と、それに続く2つ以上の触媒段階とを含む。熱段階では、反応1に従ってフィード流中の硫化水素の3分の1を燃焼させると、二酸化硫黄が得られる。この二酸化硫黄をクラウス反応(反応2)に従って硫化水素と反応させると、単体硫黄が生成される。よって、全反応は反応3により表される。
【0010】
【化1】
【0011】
硫化水素を含むフィード流を燃焼させ、空気の量を制御することで、望ましいレベルの二酸化硫黄が得られるとともに、存在するアンモニアや炭化水素が転化される。通常、改良型のクラウスプロセスに流入する硫黄の約60~70%が熱段階で単体硫黄に転化される。熱段階で得られたガスを、次いで、連続的な触媒段階で処理する。各触媒段階は、再加熱、触媒転化および凝縮の3つのプロセスステップで構成されている。再加熱ステップでは、ガス流を、後続の触媒転化段階に向けて所望の温度に加熱する。触媒転化ステップでは、典型的にはチタニアまたはアルミナベースのクラウス触媒を用いて、反応2に従ってさらなるクラウス転化を実現する。最後の段階では、上流の触媒転化装置で生成されたガス状の硫黄を液体の硫黄に凝縮し、次いでこれを分離および回収する。一般的に、改良型のクラウスプロセスのみでは、97%を超える硫黄回収効率を達成することはできない。多くの地域で要求される例えば98~99.9%の範囲でのより大幅な硫黄回収を行うには、テールガス浄化プロセスが必要である。
【0012】
したがって、図示された硫黄回収システム110は、テールガス浄化プロセス114をも含む。一般的な硫黄回収テールガス浄化システム114は、水素化/アミン処理部を含み、これにより99.8+%の硫黄回収効率を得ることができる。強制的な低排出量および高回収率の制限を課す厳しい環境規制により、多くのサワーガス処理業者は、このような水素化/アミンタイプのテールガス処理プロセスの採用を余儀なくされている。
【0013】
最も一般的な水素化/アミン処理プロセスの1つが、シェル・クラウス・オフガス処理(Shell Claus Offgas Treating、SCOT)プロセスである。SCOTプロセスでは、クラウステールガスに含まれる二酸化硫黄やその他の転化可能な硫黄化合物を、触媒により硫化水素に転化させる。まず、クラウステールガスを加熱し、水素と一酸化炭素とを含む還元ガス流と混合する。還元ガスは、燃料を一酸化炭素および水素に部分的に酸化させるためにサブストイキオメトリ(sub-stoichiometric)の燃焼条件で動作する還元ガス生成器(RGG)116によって一般的に生成される。クラウステールガスと還元ガスとの混合によって得られたガス流は、二酸化硫黄(SO)、硫化カルボニル(COS)、および二硫化炭素(CS)、単体硫黄(S)、および一酸化炭素(CO)を含む種を含んでおり、このガス流を、次いで水素化反応器118において水素化触媒に通す。水素化触媒は、最も典型的には、アルミナ担体上にコバルトおよびモリブデンを含む。この触媒は、残留二酸化硫黄の水素化(反応4)、硫化カルボニルの加水分解(反応5)、二硫化炭素の加水分解(反応6)、および単体硫黄の水素化(反応7)を促進し、いずれもHSに戻す。
【0014】
【化2】
【0015】
また、この触媒は、反応8により一酸化炭素と水が反応して水素と二酸化炭素を生成する水性ガスシフト反応を促進する。
【0016】
【化3】
【0017】
反応器排出物を、通常は廃熱ボイラーで冷却し(低圧蒸気が発生)、次いで水急冷塔システムで冷却し、ここでガスを冷却すると同時に水分量を約30%から5~10%に下げる。冷却/急冷装置120で得られた冷却されたガスを、次にアミン接触塔でアミン吸収剤と接触させる。アミン吸収システム122でテールガス中のHSをリーンアミンに吸収させてリッチ(HSを含んだ状態)にし、ガス流を浄化してHSを除去する。浄化されたオフガス流を、次いで、大気中に放出させる前の最終処理ステップとして焼却炉に送る。リッチアミンをアミン再生装置に送り、そこで加熱してHSを除去し、これをクラウスプラントに返送して単体硫黄に転化させる。このようにして、硫黄を基本的に消滅するまで循環させる。再生されたリーンアミンを、次のHSピックアップサイクルのために吸収剤に戻す。
【0018】
図1はSCOTプロセスの概要を示すためのものであり、すべての機器や変数を説明することを意図したものではないことに留意されたい。また、テールガス浄化システムの他の変形例が当技術分野で知られていることにも留意すべきである。例えば、オリジナルのSCOTプロセスの1つの変形例として、低温SCOTプロセスがある。従来のSCOTプロセスでは、テールガス流を、典型的には水素化反応器118への供給前にインラインバーナー(すなわち、RGG116)で約260~300℃に直接加熱する。低温SCOTプロセスでは、テールガス流を、典型的には、高圧蒸気ヒーターで典型的には約220~230℃に間接的に加熱する。また、低温SCOTプロセスでは、還元ガス発生装置がプロセススキームの一部でなくなるため、外部水素源の使用が必要となる。最後に、低温ユニットでは、典型的には、従来の温度ユニットと同程度の転化率を得るために、通常はより高濃度の活性金属を使用して、特別により高活性に設計された触媒を使用する。
【0019】
もう1つのテールガス浄化プロセスはビーボン硫黄除去(Beavon Sulfur Removal、BSR)プロセスであり、これもクラウステールガスの水素化を特徴とする。BSRプロセスでは、クラウステールガスをインラインバーナー(例えば、還元ガス発生装置RGG)でサブストイキオメトリの条件で加熱し、燃料を部分的に酸化させて還元ガスを生成する。クラウステールガスと還元ガスの混合物を、アルミナにコバルトおよびモリブデンを担持させた触媒を充填した水素化床に供給する。水素化ステップでは、上述のSCOTプロセスと同一の反応(4~8)が起こる。水素化ステップの後、ガスを廃熱ボイラーに送り、低圧蒸気を発生させ、次いで急冷塔システムで温度を下げるとともに水分量を大幅に減少させる。BSRプロセスは、HSガスを再循環させる(例えば、BSR/MDEA)か、またはHSガスを単体硫黄に転化させて回収する(例えば、BSR/SelectoxまたはBSR/Stretford)ことを目的とした別のプロセスと組み合わせるのが一般的である。
【0020】
本明細書に記載のテールガス浄化プロセスはいずれも、上述の反応4~7を行う水素化反応器を含むことに留意されたい。また、テールガス浄化プロセスの水素化反応器に実装される水素化触媒は、典型的には、コバルト(Co)やニッケル(Ni)などの1つ以上の第VIIIB族金属、およびモリブデン(Mo)やタングステン(W)などの1つ以上の第VIB族金属を、アルミナ(Al)、シリカアルミナ、ゼオライトまたはそれらの組み合わせなどの担体材料に担持させたものを含むことにも留意されたい。
【0021】
本開示の態様は、水素化精製プロセスで使用された触媒を入手し、そのように入手した触媒を、次いでテールガス処理プロセスで使用することを含む。水素化精製用触媒の元となる用途としては、水素化脱硫(HDS)、水素化脱窒素(HDN)、水素化脱メタル(HDM)、水素化脱芳香族(HDA)、水素化脱酸素(HDO)、芳香族飽和、ハイドロクラッキング、および他の水素化プロセスで使用される触媒を挙げることができるが、これらに限定されない。例えば、使用済み触媒は、ナフサ水素化精製(NHT)、ディーゼル水素化精製(DHT)、灯油水素化精製(KHT)、ジェット燃料水素化精製(JHT)、常圧軽油水素化精製、真空軽油(VGO)水素化精製、流動接触分解装置(FCC)フィード水素化精製、または他の任意の石油留分の水素化精製の用途に由来するものであってよい。水素化精製用触媒という用語は、以前にクラウステールガス処理プロセスで使用された触媒を含むことを意図したものではないことに留意することが重要である。触媒は、典型的に、コバルト(Co)やニッケル(Ni)などの1つ以上の第VIIIB族金属、およびモリブデン(Mo)やタングステン(W)などの1つ以上の第VIB族金属を、アルミナ(Al)、シリカアルミナ、ゼオライトまたはそれらの組み合わせなどの担体材料に担持させたものを含む。これらの水素化処理用触媒は、タイプIまたはタイプIIの活性サイトを有することもできる。触媒はまた、特にホウ素やリンの助触媒などの助触媒を含むこともできる。
【0022】
本明細書で使用する場合に、「再活性化された触媒」という用語は、水素化精製プロセスから得られ、再活性化処理に供され、その後、テールガス処理プロセスで再利用される触媒を意味する。再活性化された触媒は、再生および/または賦活された(復活された)触媒であってよい。
【0023】
本明細書で使用する場合に、「再生された触媒」という用語は、使用済み触媒を酸素の存在下でイン・サイチュまたはエクス・サイチュでの制御された熱処理に供して、揮発性炭化水素、炭素(コーク)および硫黄などの汚染物質を除去したものを指すために使用される。再生プロセスは当業者に知られており、これらのプロセスは構成の詳細が異なり得るが、いずれも炭化水素、硫黄および炭素を除去し、実質的にすべての金属をその酸化物の形態に転化させて、できるだけ多くの活性を回収することを目的とし、それと同時にいずれも破損を最小限に抑えて、可能な最高の収率と最小の生成物長損失とを実現するものである。大半の触媒再生はエクス・サイチュで行われるが、イン・サイチュでの再生も可能であり、本明細書で使用される場合の再生された、という用語は、その範囲をエクス・サイチュでの再生のみに限定することを意図していない。再生プロセスは、使用済みの水素化精製用触媒に一般的に使用され、使用済み触媒から新たな触媒活性の一部を回収する。再生された触媒は、通常、新鮮な触媒に代わる低コストの代替品として、苛酷性が比較的低い水素化精製ユニットで再利用される。再生プロセスは、金属の凝集による活性低下を元に戻すための金属の再分散のプロセスを備えていない点で、賦活(復活)プロセスとは異なる。
【0024】
いくつかの実施形態によれば、再生された触媒は、上述のように、水素化精製プロセスで使用される触媒を入手することによって調製することができる。入手された触媒は、該触媒を空気中で加熱して、水素化処理プロセスで生じた汚染物質を該触媒から除去することによって再生することができる。例えば、触媒を約200℃~約600℃、より好ましくは380℃~約500℃の温度範囲内で1~24時間、より好ましくは1~3時間加熱することができる。再生プロセスで除去される主要な汚染物質の1つが、コークである。通常、使用済み触媒のコーク濃度は、4重量%超である。再生後のコーク濃度は、通常4重量%未満である。
【0025】
本明細書で使用する場合に、「賦活された」(または復活された)触媒という用語は、使用済み触媒をイン・サイチュまたはエクス・サイチュでの制御された熱処理(再生)に供して揮発性炭化水素、炭素(コーク)および硫黄を除去した後、含浸によりキレート剤をエクス・サイチュで施与して、マイグレートした担体上の活性金属サイトを再分散させることで、金属サイトの成長を生じさせたものを指すために使用される。規定のエージング期間の後、触媒を乾燥させて最終生成物の形態にすることができる。賦活プロセスは当業者に知られており、これらのプロセスは構成の詳細が異なり得るが、いずれも炭化水素、硫黄および炭素を除去し、実質的にすべての金属をその酸化物の形態に転化させ、担体上の活性金属サイトを再分散させて、できるだけ多くの活性を回収することを目的とし、それと同時にいずれも破損を最小限に抑えて、可能な最高の収率と最小の生成物長損失とを実現するものである。賦活プロセスでは、性能的には新鮮な触媒に近い状態まで十分な活性を回復することが多い。場合によっては、特にタイプIの触媒に関しては、使用済み触媒の賦活により、(水素化精製条件下で)元の新鮮な触媒よりもさらに高い性能を得ることができる。再生された触媒に比べて活性回復の度合いが高いため、賦活された触媒は、それを採取したのと同じユニット、または苛酷性が同様のユニットで再利用することができる。再生された触媒の場合にしばしばそうであるように、必ずしも苛酷性の低いユニットにカスケード接続する必要はない。
【0026】
当技術分野で知られている任意の賦活プロセスを、本開示により使用することができる。いくつかの実施形態によれば、賦活された触媒は、上述のように、水素化精製プロセスで使用される触媒を入手することによって調製することができる。いくつかの実施形態によれば、入手された触媒は、まず、上述のように再生される。再生プロセスに続いて、触媒を1つ以上の試薬と接触させて、触媒の賦活を行うことができる。触媒との接触に使用できる試薬の例としては、ブタンジオール、ピルビン酸アルデヒド、グリコール酸アルデヒド、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、トリブチレングリコール、テトラエチレングリコール、テトラペンチレングリコール、ポリエーテル、例えば、ポリエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、およびジエチレングリコールモノブチルエーテルなどの1つ以上の有機添加剤がある。触媒を、有機添加剤を含む溶液、例えば、有機添加剤のアルコール溶液や水溶液などと接触させることができる。これに代えて、またはこれに加えて、グリコール酸、グリオキシル酸、乳酸、ジエチレントリアミン五酢酸、エチレンアミン四酢酸、クエン酸、酒石酸、シュウ酸、マロン酸、リンゴ酸などの酸を触媒と接触させてもよい。接触させた後、触媒をエージングおよび/または乾燥させてもよい。例えば、触媒を、数時間ないし数日、例えば、1時間~24時間、6~24時間、または例えば約14時間の範囲の時間にわたってエージングさせてもよい。いくつかの実施形態によれば、触媒を室温でエージングさせてもよい。本明細書で使用する場合に、「室温」とは、約20~25℃の温度を指す。いくつかの実施形態によれば、乾燥後も有機添加剤の一部が触媒中に残っていてもよい。
【0027】
一般的な商業的な賦活プロセスは、以下のように例示される。米国特許第9,895,679号明細書に記載されているEXCEL(登録商標)(Porocel、テキサス州ヒューストン)、米国特許第7,696,120号明細書に記載されているENCORE(登録商標)(Criterion、テキサス州ヒューストン)、米国特許第7,956,000号明細書に記載されているREACT(登録商標)(Albemarle Corporation、ノースカロライナ州シャーロット)、およびREFRESH(登録商標)(HaldorTopsoe, Inc.、テキサス州ヒューストン)である。米国特許第9,895,679号明細書(以下、「679号特許」という)の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0028】
いくつかの実施形態によれば、再活性化された(すなわち、再生されたまたは賦活された)触媒は、「そのまま」、すなわち、水素化精製プロセスで使用されたままの元のサイズ、形状および組成で施与することができる。他の実施形態によれば、触媒に対し、テールガス処理プロセスでの使用前に、サイズ変更、形状変更、再構成、またはサイズ変更と形状変更と再構成との任意の組み合わせを行うことができる。サイズ変更は、触媒のサイズを変更することを含む。これは例えば、触媒の長さを等級分けすることで達成することができ、これは、最小の触媒粒子を選択的に取り除き、残りの触媒の平均粒子径を効果的に大きくすることを含む。長さの等級分けは、ふるい分け/スクリーン処理、または当業者に知られている他のより専門的な方法によって達成することができる。サイズ変更は、触媒を粉砕して微粉末にし、異なるサイズの触媒を再形成することにより達成することもできる。例えば、サイズ変更は、1.3mm、1.6mm、または2.5mmの触媒押出物を粉砕して微粉末にして再形成し、3.0mmまたは3.5mmの触媒押出物を製造することを含むことができる。形状変更には、触媒の形状を変更することが含まれる。例えば、形状変更には、三葉状または四葉状の触媒押出物を粉砕して微粉末にして再形成し、円筒状の押出物、球状の生成物、または環状/中空円筒状の生成物を製造することが含まれる。サイズ変更および形状変更は、まず、触媒を「そのまま」の形態から粉砕操作によって粉末にすることを含むことができる。次いで、押出(例えば、スクリュー押出またはピストン押出)、打錠、ボール成形、結節形成、造粒、滴下凝固などを含むがこれらに限定されない任意の成形方法によって、新しいサイズや形状の形成を達成することができる。
【0029】
再構成には、再活性化された触媒に追加の成分や材料を組み込むことが含まれる。例えば、ベーマイト/擬ベーマイトアルミナまたはアナターゼ型チタニア粉末を、粉砕した触媒粉末に一定の割合で添加して、再構成された生成物を製造することができる。再構成には、活性金属、助触媒、または他の成分を、例えば、同時ムーリング、混加、プラウミキシング、パドルミキシング、またはリボンミキシングなどの物理的な混合によって添加することが含まれ得る。また、金属、助触媒、または他の成分を、例えば、沈殿や含浸によって添加することも含まれ得る。あるいは再構成には、物理的な混合と含浸とを組み合わせて、再活性化された触媒材料に追加の成分を導入することも含まれ得る。どのような形態であれ、再活性化された触媒に追加の成分を添加する方法は、再構成を構成する。例えば、触媒をそのネイティブな(native)形態で採取し、活性相前駆体、例えば、コバルト(Co)やニッケル(Ni)などの1つ以上の第VIIIB族金属、およびモリブデン(Mo)やタングステン(W)などの1つ以上の第VIB族金属の可溶性金属塩の溶液またはスラリーで触媒を濡らすことにより、触媒を再構成することができる。例えば、過剰な溶液を用いた湿式含浸、乾式含浸(あるいはインシピエントウェットネス(incipient wetness)含浸またはポアボリューム(pore volume)含浸としても知られている)、または沈殿によって触媒を再構成することもできる。
【0030】
総じて、テールガス用触媒は、酸化状態、プレサルファライジング処理された状態、またはプレサルファイディング処理された(予備活性化)状態の3つの状態のうちの1つに設置することができる。酸化状態とは、ほぼすべての金属が金属酸化物の形態で存在し、触媒上に有意な量の硫黄が存在しないだけでなく、有意な量の金属硫化物も存在しない状態と説明することができる。プレサルファライジングとは、単体硫黄および/または硫黄含有化合物を触媒に添加して、典型的には60%未満の金属酸化物を金属硫化物に転化させる処理と説明することができる。プレサルファイディング(予備活性化)とは、典型的には60%超の金属酸化物を金属硫化物に転化させる処理と説明することができる。(酸化状態に対する)プレサルファライジングまたはプレサルファイディング(予備活性化)処理の利点は、主に初期充填後の反応器の起動がより速く、より容易になることである。再活性化された水素化処理用触媒は、ネイティブな状態であっても、サイズ変更、形状変更および/または再構成された状態であっても、対象となる用途での使用前に、プレサルファライジングまたはプレサルファイディング処理に供することができる。本明細書に記載された開示内容および特許請求の範囲は、いずれかの特定のプレサルファライジングまたはプレサルファイディング技術に範囲を限定することを意図しておらず、それらすべてに適用することを意図している。
【0031】
本発明者らは、驚くべきことに、水素化精製用途から得た触媒を再活性化させ、これをテールガスの水素化処理用途での使用に向けて適合させることができることを見出した。開示された方法およびシステムの有益な態様の1つに、使用済みの水素化処理用触媒を再利用することで、作業者による使用済み触媒の廃棄による有害廃棄物の発生を低減できることが挙げられる。最終的にはこれは、触媒寿命の環境への影響(カーボンフットプリント)の低減の一助となる。また、開示された方法およびシステムは、テールガス処理用の高性能触媒の経済的に魅力的な供給源をも提供する。これは、有害な廃棄物の有益な再利用を通じて、使用済み触媒の生成者、触媒の供給者および触媒の消費者にとって有益である。
【0032】
当業者であれば、テールガス処理(すなわち、テールガス成分の水素化)に使用される触媒のいくつかの態様が、非テールガス処理操作(上述の水素化処理や他のプロセスなど)に使用される触媒の態様と異なる場合があることを理解するであろう。言い換えれば、双方のタイプのプロセスに向けた触媒が、同様の担体材料に担持された同様の群の金属を使用していても、その触媒は一方または他方のタイプのプロセスに最適化されている場合がある。例えば、水素化処理用途で使用される触媒とテールガス処理で使用される触媒との一般的な違いは、サイズである。典型的には、水素化処理用触媒は比較的小さいサイズで入手でき、例えば、直径サイズが1.3mm、1.6mm、または2.5mmの押出物が非常に一般的であるのに対し、テールガス用触媒は比較的大きなサイズで入手でき、典型的には直径が3~5mmで様々な形状/形態のものがある。典型的な水素化処理用触媒と典型的なテールガス用触媒とのもう1つの違いは、使用される金属および金属濃度である。現在市販されているテールガス用触媒は、主にコバルトおよびモリブデン(CoMo)活性金属であり、典型的な濃度範囲はCoが2~3.5%、Moが6~11%である。現在市販されている水素化精製用触媒は、主にコバルトおよびモリブデン(CoMo)またはニッケルおよびモリブデン(NiMo)の活性金属の組み合わせである。市販のCoMo水素化精製用触媒の場合、典型的な濃度範囲は、Coが3~4.5%、Moが12~17%である。市販のNiMo水素化精製用触媒の場合、典型的な濃度範囲は、Niが2.5~5%、Moが9~19%である。活性金属の含有量は、一般的にテールガス用触媒よりも水素化精製用触媒の方がはるかに高いことに留意すべきである。また、テールガス用にNiおよび/またはWを含む触媒を使用することは、水素化処理用のような一般的な商習慣ではないことにも留意すべきである。この2つの触媒のもう1つの違いは、その形状である。水素化処理用触媒は主に多葉状の押出物であるのに対し、テールガス用触媒は多葉状の押出物、球状の形態、さらには中空円筒状の押出物など、様々な形状のものがある。この2つのタイプの触媒のもう1つの違いは、水素化精製用触媒はほぼ独占的に、押出成形されたガンマ/デルタ/シータ・アルミナ相触媒担体を含むのに対し、テールガス用触媒は、球状のカイ/ロー/エータ・アルミナ相触媒担体と押出成形されたガンマ/デルタ/シータ・アルミナ相触媒担体との双方を含むことである。
【0033】
再活性化された水素化精製用触媒をテールガス用途で使用する際の制限の1つは、触媒粒子のサイズの違いである。おそらくこれが、本発明者らの知る限り、そうした使用が行われなかった理由の1つである。すでに述べたように、水素化処理用触媒は、テールガス用触媒よりも一般的にサイズが小さい(それぞれ1.3~2.5mm対3~5mm)。触媒のサイズが小さいと、1リニアフィートあたりの充填床の圧力損失が大きくなる。このような高い圧力損失は、テールガスユニットに課せられる水力学的な制限ゆえに受け入れられない場合が多くある。幸いなことに、本発明者らはこの障害を回避するいくつかの方法を発見した。その1つが、触媒の長さの等級分けである。長さの等級分けは、触媒粒子をそのサイズに基づいて分離する商業的に確立されたプロセスである。そうすることで、最小の粒子を効果的に取り除くことができ、残りの触媒触媒押出物粒子の平均長さを長くすることができる。触媒押出物の平均粒子長が長くなり、粒度分布が狭くなることで、床のボイド率も増加する。これらの変化により、1リニアフィートあたりの圧力損失が低減する。一定の範囲内であれば、長さの等級分けの程度は、望ましい圧力損失プロファイルに合わせることができる。長さの等級分けは、スクリーン処理/ふるい分け、またはその他のより専門的な方法のいずれかによって達成することができる。もう1つの選択肢は、新鮮なテールガス用触媒の標準的な充填構成の所望の圧力損失と性能プロファイルとの双方を目標として、新鮮なテールガス用触媒に対して通常充填されるよりも短い、高活性の再活性化された水素化処理用触媒床を充填することである。これは「ショートローディング」と呼ばれており、これが可能であるのは、場合によっては、再活性化された水素化処理用触媒が、現在市販されている競合する新鮮なテールガス用触媒よりも優れた性能を発揮することが判明しているためである。もう1つの選択肢は、所望の性能および圧力損失プロファイルを目標として、高活性で高圧力損失の再活性化された水素化処理用触媒と、低圧力損失(より大きな粒子径)の新鮮なまたは再活性化されたテールガス用触媒とを、層状の床構成で組み合わせることである。もう1つの選択肢は、所望の性能および圧力損失を目標として、高活性で高圧力損失の再活性化された水素化処理用触媒と、低圧力損失(より大きな粒子径)のサイズ変更、形状変更および/または再構成された触媒とを組み合わせることである。
【0034】
これらの各選択肢により、圧力損失の制限が緩和され、再活性化された水素化精製用触媒をテールガスユニットへの適用に適したものとすることができる。いくつかの実施形態によれば、元の水素化精製プロセスで使用されたままの触媒は、ソックローディングして周囲空気中で100ft/分の空塔速度で試験した場合に、約0.20psi/ft~約0.80psi/ft、例えば約0.40psi/ft~約0.60psi/ftの圧力損失を引き起こす。触媒を、サイズ変更、形状変更、再構成、ショートローディングし、かつ/または上述の方法の1つを使用してテールガス処理用の別の低圧力損失触媒と組み合わせた後、触媒は、ソックローディングして周囲空気中で100ft/分の空塔速度で試験した場合に、約0.05psi/ft~約0.20psi/ft、例えば約0.10psi/ft~約0.15psi/ftの圧力損失を引き起こし得る。
【0035】
上述したサイズ変更、形状変更および再構成のステップのうちの1つ以上を使用して、第1の非テールガス処理プロセスから入手した触媒を再構築して、触媒をテールガス処理に向けて最適化することができる。図10に、テールガス処理用の触媒を再活性化させるプロセス1500の一実施形態を示す。まず、1502 非テールガス処理プロセスから触媒を入手する。触媒は、例えば、三葉状または四葉状の触媒であってよく、典型的には約1.3~2.5mmのサイズを有することができる。上述したように、触媒は、アルミナ(Al)、シリカアルミナ、ゼオライトまたはそれらの組み合わせなどの担体材料に担持された1つ以上の第VIIIB族金属および1つ以上の第VIB族金属を含むことができる。
【0036】
入手した触媒に、典型的には触媒から残留炭化水素を除去するために、1504 サーマルストリッピングまたは溶媒抽出を施すことができる。例えば、サーマルストリッピングステップは、150℃~550℃の温度で、触媒を高温の蒸気またはガス、空気、天然ガスの燃焼生成物、水素または窒素と接触させることを含み得る。例えば、溶媒抽出プロセスは、触媒を非極性溶媒と接触させることを含み得る。ストリッピングされたまたは溶媒抽出された触媒を、上述のように1506 再生する。例えば、触媒を、約200℃~約600℃、より好ましくは380℃~約500℃の温度で、1~24時間、より好ましくは1~3時間加熱することができる。再生された触媒を、典型的には再生された触媒を磨砕または粉砕して粉末を形成することにより、1508 サイズ変更することができる。粉末を、例えば、スクリーン処理によって分離することができる。粉末を、1つ以上の態様で1510 再構成することができる。例えば、粉末をアルミナなどの追加の担体材料と組み合わせることで、活性触媒材料(すなわち、金属)の相対的な充填量を調整することができる。例えばサイズ変更および再構成された材料を元の触媒の形状と同じまたは異なる形状に押出成形することによって、触媒を1512 形状変更することができる。例えば、元の触媒は、所定の数の葉状体を有する多葉状(例えば、三葉状または四葉状)のものであってもよいし、形状変更して円筒状または球状の触媒を得てもよい。触媒を、形状変更後にさらに再構成してもよいことに留意すべきである。例えば、形状変更された触媒に、さらなる活性材料(例えば、コバルト、ニッケルおよび/またはモリブデンの前駆体材料)を含浸させてもよい。触媒を、1514 賦活させることができる。例えば、新たに成形された触媒を、上述したような1つ以上の賦活試薬およびプロセスに曝すことができる。いくつかの実施形態によれば、触媒を、上述したようなキレート材料を用いて含浸させ、エージングさせ、乾燥させる。いくつかの実施形態によれば、キレート材は、有機添加剤を含むことができ、その一部は、賦活プロセス後に触媒材料中に残る。
【0037】
プロセス1500は単なる例示的に過ぎないことに留意すべきである。一部のステップが省略されてもよく、またステップが異なる順序で実施されてもよい。例えば、元の(非テールガス処理)プロセスから入手した触媒を、サイズ変更および形状変更の前に再生および賦活させることができ、あるいはサイズ変更も形状変更も行わずに調製することもできる。プロセス1500の他の修正形態は、本開示に基づいて当業者に明らかになるであろう。
【0038】
以下の実施例は、開示された技術および組成物の態様を説明するために含まれるものである。
【0039】
実施例1:現実的な空間速度(1,200GHSV)の試験
内径3.0cm、高さ51cmの円筒状の縦向きのガラス製反応器に、試験する各触媒について70mLの触媒を充填した。新鮮な触媒、再生された触媒、およびExcel(登録商標)で賦活された触媒の各試料(下記リストのNo.1~10およびNo.13)を、同一の試験プロトコルに供した。この試験プロトコルは、まずイン・サイチュでのサルファイディング活性化ステップと、その後の所定の性能試験条件とからなっていた。イン・サイチュでのサルファイディングステップでは、以下のモル組成のガスをダウンフロー方式で触媒に通した:HS 2%、H 10%、N 88%。供給ガスの組成は、各成分について適切に校正されたマスフローコントローラーを用いて設定し、最初にガスクロマトグラフィーで確認した。イン・サイチュでのサルファイディングステップにおけるガスの空間速度は、2,000GHSVであった。温度を、16時間かけて200℃から315℃まで均一に上昇させた。排出ガスの組成を、ガスクロマトグラフィーで2時間ごとに測定した。16時間が経過した時点で、触媒を、イン・サイチュでのサルファイディング条件によって完全に活性化されたものとみなした。活性金属がすでに硫化物状態であったため、イン・サイチュでのサルファイディングが不要であった試験試料が2つあり、それぞれ溶媒抽出および高温窒素ストリッピングを行った(それぞれNo.11およびNo.12)。これらの試験では、予備活性化された(プレサルファイディング処理された)テールガス用触媒に使用される代替的な活性化スタートアップを選択した。代替的な活性化スタートアップでは、以下のモル組成のガスをダウンフロー方式で触媒に通した:H 3%、CO 3%、CO 9%、HO 25%、およびN 60%。供給ガスの組成は、各成分について適切に校正されたマスフローコントローラーを用いて設定し、最初にガスクロマトグラフィーで確認した。活性化ステップにおけるガスの空間速度は、500GHSVであった。温度を、24時間かけて200℃から315℃まで均一に上昇させた。排出ガスの組成を、ガスクロマトグラフィーで2時間ごとに測定した。24時間が経過した時点で、触媒を、完全に活性化されて性能試験の準備が整ったものとみなした。
【0040】
イン・サイチュでのサルファイディングまたは活性化のスタートアップが完了した後、触媒床は性能試験条件が整った。性能試験条件の間、以下のモル組成のガスをダウンフロー方式で触媒に通した:N 70.05%、HO 25%、H 2.33%、CO 1.20%、CO 0.59%、HS 0.47%、SO 0.23%、COS 0.060%、およびCS 0.061%。供給ガスの組成は、各成分について適切に校正されたマスフローコントローラーを用いて設定し、最初にガスクロマトグラフィーで確認した。この性能試験条件におけるガスの空間速度は1,200GHSVであり、これは3秒の滞留時間に相当し、現実的な商業的運転の空間速度の典型を示すことを目的としたものである。この性能試験を、220℃、240℃、280℃、および300℃の4つの異なる温度条件で行った。各条件では、性能が定常状態に達するのに十分な時間を上回る12時間にわたって温度を保持した。反応器排出物の組成分析を、ガスクロマトグラフィーで2時間ごとに行った。各性能試験条件でのフィードおよび平均ガス分析から、SO、CS、およびCOSの転化率を求めた。
【0041】
13個の異なる触媒試料を、上記の試験プロトコルに従って試験した。それらを以下に示す:
1.再生された市販の水素化処理用触媒A(2.5mm、三葉状)
2.Excel(登録商標)で賦活された市販の水素化処理用触媒A(2.5mm、三葉状)
3.再生された市販の水素化処理用触媒B(2.5mm、四葉状)
4.Excel(登録商標)で賦活された市販の水素化処理用触媒B(2.5mm、四葉状)
5.新鮮な市販の水素化処理用触媒C(2.5mm、四葉状)
6.用途1の再生された市販の水素化処理用触媒C(2.5mm、四葉状)
7.用途2の再生された市販の水素化処理用触媒C(2.5mm、四葉状)
8.再生された市販の水素化処理用触媒D(2.5mm、三葉状)
9.Excel(登録商標)で賦活された市販の水素化処理用触媒D(2.5mm、三葉状)
10.再生された市販の水素化処理用触媒E(2.5mm、三葉状)
11.溶媒抽出された市販の水素化処理用触媒F(2.5mm、三葉状)
12.高温窒素ストリッピングされた市販の水素化処理用触媒F(2.5mm、三葉状)、および
13.新鮮な市販のテールガス用触媒(3.2mm、三葉状)。
【0042】
触媒Aは、その再活性化の前に、ディーゼル(ULSD)水素化精製用途で使用されていたものである。ディーゼル水素化精製でのその使用後に、触媒Aを、上記で参照により組み込まれた679号特許に記載されているとおりに再生およびExcel(登録商標)賦活プロセスによって処理した。再生プロセスでは、場合によっては、流動化熱風ストリッピングを行って炭化水素を除去するとともにコーク含有量を低減させ、その後、すべての場合において高滞留時間で可動式ベルトでの加熱ソーキングを行って、触媒の細孔に深く埋め込まれた炭素や硫黄を除去することを特徴とする。Excel(登録商標)賦活プロセスでは、まず前述のように触媒を再生させ、続いてキレート剤の溶液を細孔に含浸させる。含浸された触媒を一定時間エージングさせた後、乾燥させる。この賦活プロセスは、触媒が使用されている間や再生プロセスの結果として起こる金属の凝集を元に戻すのに役立つ。これらの実施例では、Porocel社による再生およびExcel(登録商標)賦活プロセスを使用したが、再生および賦活プロセスは当業者にはよく知られており、例えば、上記で参照された特許文献に記載されている。
【0043】
触媒Bは、その再活性化の前に、流体接触分解フィードの前処理のため真空軽油の処理に使用されていたものである。真空軽油処理でのその使用の後に、触媒Bを、上述のように再生およびExcel(登録商標)賦活プロセスによって処理した。
【0044】
市販の水素化処理用触媒Cの新鮮な試料は、性能試験を目的として余剰触媒市場で入手したものである。
【0045】
用途1の触媒Cは、再生前に、軽油水素化精製用途で使用されていたものである。軽油水素化精製でのその使用の後に、触媒Cを、上述のように再生プロセスによって処理した。
【0046】
用途2の触媒Cは、再生前に、灯油水素化精製用途で使用されていたものである。灯油水素化精製でのその使用の後に、触媒Cを、上述のように再生プロセスによって処理した。
【0047】
触媒Dは、再活性化前に、ディーゼル(ULSD)水素化精製用途で使用されていたものである。ディーゼル(ULSD)水素化精製でのその使用の後に、触媒Dを、上述のように再生およびExcel(登録商標)賦活プロセスで処理した。
【0048】
触媒Eは、再活性化前に、水素化精製用途で使用されていたものである。水素化精製用途でのその使用の後に、触媒Eを再生プロセスで処理した。
【0049】
触媒Fは、使用済み試料の回収の前に、水素化分解のための真空軽油(VGO)前処理用途で使用されていたものである。水素化分解のための真空軽油(VGO)の前処理用途でのその使用の後に、触媒Fを2つの試料に分け、2つの異なる処理に供した。第1の処理は、トルエンにより4時間行うソックスレー溶媒抽出であり、その後、110℃で2時間乾燥させた。この溶媒抽出の目的は、使用済み触媒から残留炭化水素を除去することであった。第2の処理は、回転管式か焼炉での純窒素スイープにおける370℃で1時間の高温ストリッピングであった。この高温ストリッピングも、使用済み触媒試料から残留炭化水素を除去するためのものであった。
【0050】
市販の新鮮なテールガス用触媒は、性能試験を目的として余剰触媒市場で入手したものである。
【0051】
試験した水素化処理用触媒はいずれも、元の用途で使用されたものと同じサイズおよび形状のものであり、再構成を行わなかった。触媒A、B、およびCは、いずれも異なる製造業者によって製造された異なる触媒であり、異なる水素化精製用途で使用されていたものである。触媒Aおよび触媒Dは、同じ製造業者によって製造され、同じ用途で、さらには、元は同じ反応器で使用されていたものであるが、触媒Aはアルミナ担持CoMoであり、触媒Dはアルミナ担持NiMoであるという異なる触媒であった。用途1の触媒Cおよび用途2の触媒Cは、同じ製造業者によって製造され、同じタイプの触媒であったが、異なる水素化精製用途で使用された後、異なる反応器から供給され、双方とも異なる汚染物質プロファイルを有していた。触媒AおよびD~Fは、すべて同じ製造業者によって製造されたが、異なる種類の触媒であり、存在する金属の種類および金属濃度が異なっていた。触媒A~Cはすべてアルミナ担体にコバルトおよびモリブデン(CoMo)を担持させたものであるのに対し、触媒D~Fはアルミナ担体にニッケルおよびモリブデン(NiMo)を担持させたものであった。競合評価に使用した新鮮なテールガス用触媒および新鮮な触媒C参照試料は、以前に使用されたことがなく、製造業者から直接入手したものと同様に変更なく完全に新鮮な形態で使用した。性能試験を行った触媒試料の分析データを表1(図2)に示す。各触媒のExcel(登録商標)で賦活された試料は、再生された試料と同じ原料を使用しており、表1の物理的特性に関してはほぼ同一であると考えられる。触媒Fの場合、金属データは、ラボスケールで再生された試料にXRFを実施して取得したものであり、その他の分析データは、性能試験前の状態で溶媒抽出された試料および高温窒素ストリッピングされた試料から得たものである。触媒AおよびCはどちらも、リン酸塩を助触媒とするアルミナ担持CoMo触媒であるのに対し、触媒Bは、リン酸塩を助触媒としないアルミナ担持CoMo触媒であった。一方で、触媒DおよびFはどちらも、リン酸塩を助触媒とするアルミナ担持NiMo触媒であるのに対し、触媒Eは、リン酸塩を助触媒としないアルミナ担持NiMo触媒であった。触媒Eはケイ素を助触媒としていたが、他の触媒はいずれもそうではなかった。全体として、実施例1で試験した触媒のリストおよび図2は、CoMoからNiMoまで、リン酸塩を助触媒とするものからリン酸塩を助触媒としないものまで、活性金属の担持量が多いものから少ないものまで、ケイ素を助触媒とするものからケイ素を助触媒としないものまで、新鮮なものから再生および賦活されたものまで(高温窒素ストリッピングおよび溶媒抽出されたものも含む)、また異なる触媒タイプ/生成物、製造業者、および水素化処理用途からの、水素化処理用触媒市場の良好な典型的な見本が試験されたことを示している。
【0052】
上述の試験プロトコルおよび触媒の試験結果を表2(図3)に示す。最初にSO転化性能を見ると、図3は、再生および賦活された9つの水素化処理用触媒について、それらのネイティブな形態で、各温度条件で生成された36個の性能データポイントのうち、新鮮なテールガス用競合参照触媒を下回った性能データポイントはわずか4つのみであったことを示している。36個の性能データポイントのうち32個の性能データポイントが優れた性能を示した(ほぼ90%の性能向上率)という事実は、再活性化された水素化処理用触媒がクラウステールガス水素化用途での使用に適し得ることを示す強力な証拠を提供している。全体として、試験した再生および賦活された水素化処理用触媒のすべてについて、それらのネイティブな形態で、転換率は非常に高かった(>98%)。触媒Fの溶媒抽出および高温窒素ストリッピングバージョンでも高いSO転換率が達成され、8つの性能データのうち新鮮なテールガス用競合参照触媒を下回ったのは3つのみであった。実用的な観点から言えば、SOの水素化は、COSおよびCSの加水分解よりもはるかに容易に進行し、多くの場合100%に近い値を示すため、性能のより良好な解決策および差別化のために、COSおよびCSの加水分解の性能を異なる触媒間で比較することは、しばしばより有用である。
【0053】
次にCS転化性能を見てみると、図3は、再生および賦活された9つの水素化処理用触媒について、それらのネイティブな形態で、各条件で生成された36個の性能データポイントのうち、新鮮なテールガス用競合参照触媒を下回った性能データポイントはわずか1つのみであったことを示している。36個の性能データポイントのうち35個の性能データポイントが優れた性能を示した(97%の性能向上率)という事実は、再活性化された水素化処理用触媒がクラウステールガス水素化用途におけるCS加水分解の使用に適し得ることを示す説得力のある証拠を提供している。注目すべき点は、試験したすべての水素化処理用触媒の性能向上率が、新鮮なテールガス用競合参照触媒と比較して、240℃、280℃、および300℃の温度条件ではるかにより顕著であったことである。再生および賦活された9つの水素化処理用触媒のうち3つについて、それらのネイティブな形態で性能が大幅に(>10%)低下したのは、220℃の条件下のみである。しかし、こうして220℃での性能が大幅に低下したにもかかわらず、1つを除くすべての水素化処理用触媒がなおも、より高いCS転化活性を示した。触媒Fの高温窒素ストリッピングおよび溶媒抽出バージョンは、総じて新鮮なテールガス用競合参照触媒を下回っており、8つの性能データポイントのうち7つが新鮮なテールガス用競合参照触媒を下回っていた。注目すべきは、触媒Fの溶媒抽出バージョンは新鮮なテールガス用競合参照体とほぼ同等だがわずかにより低い性能を示したのに対し、触媒Fの高温窒素ストリッピングバージョンは、温度が下がるにつれて性能低下の差分が拡大したことである。
【0054】
次にCOS転化性能を見てみると、図3は、再生および賦活された9つの水素化処理用触媒について、それらのネイティブな形態で、各条件で生成された36個の性能データポイントのうち、新鮮なテールガス用競合参照触媒を下回った性能データポイントは10個であったことを示している。36個の性能データポイントのうち26個の性能データポイントが優れた性能を示し(72%の性能向上率)、これは、これらの再活性化された水素化処理用触媒がクラウステールガス水素化用途におけるCOS加水分解の使用に適し得ることの証拠を提供するものである。注目すべき点は、新鮮なテールガス用競合参照触媒を下回った10個のデータポイントのうち8個が、試験した3つのExcel(登録商標)で賦活された触媒のうちの2つであったことである。総じて、Excel(登録商標)で賦活された触媒は、再生されたその対応物よりも低いCOS転化性能を示すことが観察されたが、これは驚くべき発見である。それでも、Excel(登録商標)で賦活された触媒は非常に高いレベルのCOS転化率を示し、新鮮なテールガス用競合参照体を大幅に下回ることはなかった。再生された水素化処理用触媒のみを、それらのネイティブな形態で考慮すると、24個のうち22個、つまり92%の割合で性能が向上した。このデータは、総じて、賦活はより高いCOS転化性能には寄与しなかったが、より高いCS転化性能には寄与したことも示している。データは全体として、再生された水素化処理用触媒も、賦活された水素化処理用触媒もどちらも、それらのネイティブな形態で、新鮮なテールガス用競合参照触媒と比較して、優れたCOS転化性能を提供し得ることを示している。触媒Fの溶媒抽出および高温窒素ストリッピングバージョンは、新鮮なテールガス用競合参照触媒を大幅に下回る性能を示した。実際に、双方とも最高温度(300℃)では、新鮮な市販のテールガス用参照触媒について観察されたCOS転化率の半分以下を示し、最低温度(220℃)では、転化率が実際には負の値、つまり正味のCOS生成となったことから、これらの触媒はCOS転化には非常に不向きであることがわかる。
【0055】
図3からわかるように、再生および賦活された水素化処理用触媒は、それらのネイティブな形態で、新鮮なテールガス用競合参照触媒に非常に匹敵するものである。触媒の性能が硫黄回収効率(SRE)にどのように影響するかをより包括的に把握するために、SO、CS、およびCOSに含まれる硫黄の全転化に関する統合的な指標を算出した。この指標の算出に用いた式を図4に示し、ここには、13個の触媒を使用して得られた全硫黄転化率の比較(表3)も示した。再生および賦活された9つの水素化処理用触媒のすべてが、それらのネイティブな形態で、240℃以上の温度で新鮮なテールガス用競合参照触媒よりも優れた性能を示した。低温の220℃では、再生および賦活された触媒のうち6つが新鮮なテールガス用競合参照触媒よりも有意に優れた性能を示したが、3つは1%以内と僅差であった。したがって実際には、再生および賦活された水素化処理用触媒は、それらのネイティブな形態で、新鮮な市販のテールガス用参照触媒と同等以上の性能を示した。全体として、硫黄転化性能に関するこの包括的な検討から、再生および賦活された水素化処理用触媒は、正しく適用されれば、試験した新鮮なテールガス用競合参照触媒のような市場で非常に確立されたテールガス用触媒生成物の優れた代替物を提供し得ることがわかる。触媒Fの溶媒抽出および高温窒素ストリッピングバージョンはどちらも、新鮮なテールガス用競合参照触媒を大幅に下回る性能を示した。触媒Fの溶媒抽出および高温窒素ストリッピングバージョンの性能低下の結果は、熱酸化による再生の場合のように、これらの処理によって使用済み触媒のコークの不活性化が排除されないという事実により説明することができる。触媒上に存在するコークを実質的に除去し、この用途に向けた高性能の触媒を実現するには、再生処理が必要である。
【0056】
実施例2 - 高空間速度(3,000GHSV)での「ストレス試験」
実施例1に記載した触媒1~4および13の性能を、同じ実験セットアップを用いて、ただし高空間速度条件下で試験した。この性能試験条件におけるガスの空間速度は3,000GHSVであり、これは1.2秒の滞留時間に相当し、1,200GHSVでの試験に対する相対的な触媒性能をさらに差別化するための「ストレス試験」の典型を示すことを目的としたものである。この性能試験を、220℃、250℃、および280℃の3つの異なる温度条件で行った。各条件で、12時間にわたって温度を保持した。反応器排出物の組成分析を、ガスクロマトグラフィーで2時間ごとに行った。各性能試験条件でのフィードおよび排出ガス分析から、SO、CS、およびCOSの転化率を求めた。表4(図5)および図6~9に、3,000GHSVでの試験結果を示す。
【0057】
図6に、5つの触媒を用いた3000GHSVでのSO転化性能を示す。再生および賦活された4つの水素化処理用触媒について、各条件で生成された12個の性能データポイントのうち、新鮮なテールガス用競合参照触媒を下回った性能データポイントはわずか3つのみであり、この3つのうち2つは、性能低下が1%未満であった。12個の性能データポイントのうち9つが優れた性能を示したという事実は、水素化処理用触媒がクラウステールガス水素化用途におけるSO水素化の使用に適し得ることを示している。全体的に、220℃超では、試験したすべての試料の転換率が依然として非常に高かった(>97%)。220℃では、4つの水素化処理用触媒のうち3つが、新鮮なテールガス用競合参照体よりも高い性能を示した。
【0058】
図7に、5つの触媒を用いた3000GHSVでのCS転化性能を示す。再生および賦活された5つの水素化処理用触媒について、各条件で生成された12個の性能データポイントはいずれも、新鮮なテールガス用競合参照触媒と比較して優れた性能を示した。12個のデータポイントすべてが優れた性能を示したことは、この水素化処理用触媒がクラウステールガス水素化用途におけるCS加水分解の使用に適し得ることを示している。試験した水素化処理用触媒の性能が単に優れていただけでなく、全体的に大差(>20%)をつけていたのは非常に驚くべき発見であった。実施例1で概説した1,200GHSVでの試験と同様に、これらの結果も、賦活プロセスがCS加水分解の活性を向上させることを示唆していることに留意することが重要である。
【0059】
図8に、5つの触媒を用いた3000GHSVでのCOS転化性能を示す。再生および賦活された4つの水素化処理用触媒について、各条件で生成された12個の性能データポイントのうち、新鮮なテールガス用競合参照触媒の性能を下回った性能データポイントは2つのみであった。12個の性能データポイントのうち10個が優れた性能を示していることから、この水素化処理用触媒がクラウステールガス水素化用途におけるCOS加水分解の使用に適し得ることが明らかである。注目すべきは、250℃以上では、試験した水素化処理用触媒試料が新鮮なテールガス用競合参照触媒を約20%上回る性能向上を示したことである。220℃の条件でのみ、4つの水素化処理用触媒のうち2つの触媒のCOS転化率が、新鮮なテールガス用競合参照触媒のCOS転化率を下回った。全体的なテールガス水素化性能については、再生された形態および賦活された形態のどちらも新鮮なテールガス用競合参照触媒と比較して良好な性能を提供できることがデータから示されている。興味深い点として、Excel(登録商標)で賦活された触媒Aの試料は、220℃でCOSの負の転化率、すなわち正味の生成を示したことが挙げられる。これは、この触媒ではCOSの加水分解経路が速度的に制限されているためと考えられ、したがって、算出上の平衡転化率に近づくことができず、反応で消費されるよりも早くCOSが生成され得ることを意味している。このことは、220℃、1,200GHSVでは転化率が約62%であったが(実施例1参照)、本実施例でのより高い空間速度(3000GHSV)では転化率が-20%に減少し、つまり正味の生成量が20%となったことからもわかる。
【0060】
全体的に、再生および賦活された水素化処理用触媒は、新鮮なテールガス用競合参照触媒と比較して良好な結果を得た。図5および図9に、3000GHSVでの硫黄回収効率(SRE、図4の式を参照)に関するこれらの触媒の性能を示す。全硫黄転化性能に関しては、試験したすべての再生および賦活された触媒が、新鮮なテールガス用競合参照触媒と同等またはそれ以上の性能を示した。220℃における再生された触媒Aの試料を除いて、全体的に新鮮なテールガス用競合参照触媒と比較して大幅な性能向上が見られた。この「ストレス試験」の結果は、実施例1の現実的な1,200GHSV試験から得られた知見をさらに裏付けるものである。すなわち、再生および賦活された水素化処理用触媒は、正しく適用されれば、新鮮なテールガス用競合参照触媒のような市場で非常に十分に確立されたテールガス用触媒生成物の優れた代替物を提供し得る。
【0061】
実施例3:コバルト3.39重量%、モリブデン16.57重量%、アルミナ残部の、再生された触媒の調製
以下は、コバルト(CoOとして)3.39重量%およびモリブデン(MoOとして)16.57重量%を有し、残部が主にアルミナ(Al)からなる触媒を製造するための調製手順である。コバルトおよびモリブデンの金属源は、使用済みの2.5mmの三葉状のアルミナ担持CoMo水素化処理用触媒(表1の触媒C-用途1参照)であり、これはXRF分析により3.39%のコバルトおよび16.57%のモリブデンを含んでいた。この水素化処理用触媒を、実施例1で上述したような再生プロセスによって再生させた。このようにして、再生された触媒C-用途1の試料を調製し、これについて、現実的なテールガス条件下で性能試験を行った(表2および3のデータ参照)。
【0062】
本明細書で開示した本発明を、その特定の実施形態および応用例について説明してきたが、当業者は、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲から逸脱することなく、これに多数の修正および変更を加えることができる。
【0063】
実施例4:ニッケル3.50重量%、モリブデン15.86重量%、アルミナ残部の、賦活された触媒の調製
以下は、ニッケル(NiOとして)3.50重量%およびモリブデン(MoOとして)15.86重量%を有し、残部が主にアルミナ(Al)からなる触媒を製造するための調製手順である。ニッケルおよびモリブデンの金属源は、使用済みの2.5mmの三葉状のアルミナ担持NiMo水素化処理用触媒であり、これはXRF分析により3.50%のニッケルおよび15.86%のモリブデンを含んでいた。この触媒を、米国特許第9,895,679号明細書に記載のPorocel社によるExcel(登録商標)賦活プロセスによって調製した。このようにして、Excel(登録商標)で賦活された市販の水素化処理用触媒D(2.5mm、三葉状)試料を調製し、これについて、現実的なテールガス条件下で性能試験を行った(表2および3のデータ参照)。
【0064】
本明細書で開示した本発明を、その特定の実施形態および応用例について説明してきたが、当業者は、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲から逸脱することなく、これに多数の修正および変更を加えることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10