(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】Pt-キサンテン-臭素錯体
(51)【国際特許分類】
C07F 9/655 20060101AFI20240521BHJP
C07F 15/00 20060101ALI20240521BHJP
C07C 45/50 20060101ALI20240521BHJP
C07C 47/02 20060101ALI20240521BHJP
B01J 31/24 20060101ALI20240521BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240521BHJP
【FI】
C07F9/655 CSP
C07F15/00 F
C07C45/50
C07C47/02
B01J31/24 Z
C07B61/00 300
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022193970
(22)【出願日】2022-12-05
【審査請求日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】523448406
【氏名又は名称】エボニック オクセノ ゲーエムベーハー ウント コー. カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カロリン シュナイダー
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ ジャックステル
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ベルラー
(72)【発明者】
【氏名】ロバート フランケ
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-526110(JP,A)
【文献】英国特許第01368434(GB,B)
【文献】特開昭49-020112(JP,A)
【文献】BOTTEGHI,C. et al,Synthesis of 2-chromanol by hydroformylation of 2-hydroxystyrene derivatives,Journal of Molecular Catalysis A: Chemical ,2003年,Vol.200, No.1-2,147-156,pp.147-156,DOI:10.1016/S1381-1169(03)00121-3
【文献】PETOCZ,G. et al,Xantphos as cis- and trans-chelating ligand in square-planar platinum(II) complexes. Hydroformylation of styrene with platinum-xantphos-tin(II)chloride system,Journal of Organometallic Chemistry ,2004年,Vol.689, No.7,pp.1188-1193,DOI:10.1016/j.jorganchem.2003.10.045
【文献】Zhang, Y. et al.,Binuclear Pd(I)-Pd(I) Catalysis Assisted by Iodide Ligands for Selective Hydroformylation of Alkenes and Alkynes,Journal of the American Chemical Society ,2020年,Vol.142, No.42,pp.18251-18265,DOI:10.1021/jacs.0c0925
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)Ptと、
b)下記一般式(I)に適合するリガンドと、
【化1】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8は、-H、-(C
1~C
12)アルキル及び-(C
6~C
20)アリールから選択される。R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8が-(C
6~C
20)アリールの場合、アリール環は-(C
1~C
12)アルキル及び-O-(C
1~C
12)アルキルから選択される置換基を有していてもよい。)
c)
リガンドとして臭素と、
を含む錯体。
【請求項2】
R
2、R
3、R
5、R
6、R
7、R
8は、-(C
1~C
12)アルキル及び-(C
6~C
20)アリールから選択されることを特徴とする請求項1記載の錯体。
【請求項3】
R
5、R
6、R
7、R
8は、-(C
6~C
20)アリールであることを特徴とする請求項1又は2記載の錯体。
【請求項4】
R
2及びR
3は、-(C
1~C
12)アルキルであることを特徴とする請求項1
又は2記載の錯体。
【請求項5】
R
1及びR
4は、それぞれ-Hであることを特徴とする請求項1
又は2記載の錯体。
【請求項6】
前記一般式(I)で表される化合物が、下記式(1)の構造を有することを特徴とする請求項1
又は2記載の錯体。
【化2】
【請求項7】
前記錯体が、前記式(I)に相当するリガンドを1つ有することを特徴とする請求項1
又は2記載の錯体。
【請求項8】
前記錯体が、臭素リガンドを少なくとも2つ有することを特徴とする請求項1
又は2記載の錯体。
【請求項9】
前記錯体が、臭素リガンドを2つ有することを特徴とする請求項1
又は2記載の錯体。
【請求項10】
前記錯体が、次の構造:
Pt(キサントフォス)Br
2
を有することを特徴とする請求項1
又は2記載の錯体。
【請求項11】
ヒドロホルミル化の触媒としての請求項1
又は2記載の錯体の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Pt-キサンテン-臭素錯体、及びヒドロホルミル化の触媒のためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
C. Botteghi et al., Journal of Molecular Catalysis A: Chemical 200, (2003), 147-156 は、2-トシルオキシスチレンのヒドロホルミル化のためのPt(キサントフォス)Cl2の使用を記載している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、新規の錯体を提供することである。ここでの錯体は、先行技術に記載されたPt(キサントフォス)Cl2と比較して、ヒドロホルミル化反応の触媒作用において高い収率を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、請求項1記載の錯体により達成される。
a)Ptと、
b)下記一般式(I)に適合するリガンドと、
【0005】
【0006】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8は、-H、-(C1~C12)アルキル及び-(C6~C20)アリールから選択される。R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8が-(C6~C20)アリールの場合、アリール環は-(C1~C12)アルキル及び-O-(C1~C12)アルキルから選択される置換基を有していてもよい。)
c)臭素リガンドと、
を含む錯体。
【0007】
(C1-C12)-アルキルという表現は、1~12個の炭素原子を有する直鎖および分枝アルキル基を包含する。これらは、好ましくは(C1-C8)-アルキル基、より好ましくは(C1-C6)-アルキル、最も好ましくは(C1-C4)-アルキルである。
【0008】
適切な(C1-C12)-基は、特にメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、2-ペンチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、1 ,2-ジメチルプロピル, 1,1-ジメチルプロピル, 2,2-ジメチルプロピル, 1-エチルプロピル, n-ヘキシル, 2-ヘキシル, 2-メチルペンチル, 3-メチルペンチル, 4-メチルペンチル, 1,1-ジメチルブチル, 1,2-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチルブチル、1-エチル-2-メチルプロピル、n-ヘプチル、2-ヘプチル、3-ヘプチル、2-エチルペンチル、1-プロピルブチル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルヘプチル、ノニル、デシルである。
【0009】
(C6-C20)-アリールという表現は、6~20個の炭素原子を有する単環式または多環式芳香族ヒドロカルビル基を包含する。 これらは、好ましくは(C6-C14)-アリール、より好ましくは(C6-C10)-アリールである。
【0010】
適切な(C6-C20)-アリール基は、特にフェニル、ナフチル、インデニル、フルオレニル、アントラセニル、フェナントレニル、ナフタセニル、クリセニル、ピレニル、コロネニルである。 好ましい(C6-C20)-アリールは、フェニル、ナフチルおよびアントラセニルである。
【0011】
1つの形態では、R2、R3、R5、R6、R7、R8は、-(C1~C12)アルキル及び-(C6~C20)アリールから選択される。
【0012】
1つの形態では、R5、R6、R7、R8は、-(C6~C20)アリールである。
【0013】
1つの形態では、R5、R6、R7、R8は、Phである。
【0014】
1つの形態では、R2及びR3は、-(C1~C12)アルキルである。
【0015】
1つの形態では、R2及びR3は、-CH3である。
【0016】
1つの形態では、R1及びR4は、それぞれ-Hである。
【0017】
1つの形態では、一般式(I)で表される化合物が、下記式(1)の構造を有する。
【0018】
【0019】
1つの形態では、錯体が、前記式(I)に相当するリガンドを1つ有する。
【0020】
1つの形態では、錯体が、臭素リガンドを少なくとも2つ有する。
【0021】
1つの形態では、錯体が、臭素リガンドを2つ有する。
【0022】
1つの形態では、錯体が、次の構造:
Pt(キサントフォス)Br2
を有する。
【0023】
錯体それ自体と同様に、ヒドロホルミル化反応の触媒作用のためのその使用も特許請求されている。
【0024】
ヒドロホルミル化の触媒としての上述した錯体の使用。
【0025】
本発明は、以下、実施例によって詳細に説明される。
【実施例】
【0026】
バイアルにPtX2(X=ハロゲン)、リガンド、およびオーブンで乾燥させたスターラー バーを入れました。バイアルを、セプタム (PTFE コーティング スチレン-ブタジエン ゴム) とフェノール樹脂キャップで密閉した。 バイアルを排気し、アルゴンを3回再充填した。シリンジを使用して、トルエンおよびオレフィンをバイアルに添加した。バイアルを合金板に入れ、これをアルゴン雰囲気下でパー・インスツルメント社の4560シリーズのオートクレーブに移した。オートクレーブをCO/H2で3回パージした後、合成ガスの圧力を室温で40バールに上げた。反応は120℃で20時間/18時間行った。反応が終了したら、オートクレーブを室温まで冷却し、注意深く減圧した。収率および選択性をGC分析によって決定した。
【0027】
【0028】
反応条件:20mmolの1-オクテン、1.0mol%のPt、2.2当量のキサントフォス(Xantphos)(1)、溶媒:トルエン、p(CO/H2):40バール、T:120℃、t:20h
収率:
PtBr2:99%
PtCl2:30%
【0029】
【0030】
反応条件:20mmolの2-オクテン、1.0mol%のPt、1.1当量のキサントフォス(Xantphos)(1)、溶媒:トルエン、p(CO/H2):40バール、T:120℃、t:20h
収率:
PtBr2:99%
PtCl2:16%
【0031】
<ハロゲンの変化(1-オクテン)>
反応条件:10.0mmolの1-オクテン、0.1mol%のPtX2、2.2当量のリガンド、溶媒:トルエン、p(CO/H2):40バール、T:120℃、t:20h
【0032】
【0033】
<リガンドとハロゲンの変化>
反応条件:1.0mmolの2-オクテン、0.5mol%のPtX2、2.0当量のリガンド、溶媒:トルエン、p(CO/H2):40バール、T:120℃、t:18h
【0034】
【0035】
<当量数とハロゲンの変化>
反応条件:1.0mmolの1-オクテン、1.0mol%のPt(acac)2、 LiX(X=ハロゲン)、2.2当量のキサントフォス(1)、溶媒:トルエン、p(CO/H2):40バール、T:120℃、t:20h
【0036】
【0037】
実験結果が示すように、この問題は本発明による触媒によって解決される。