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特許7491988自動車トラクションバッテリーアセンブリ
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  • 特許-自動車トラクションバッテリーアセンブリ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】自動車トラクションバッテリーアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/284 20210101AFI20240521BHJP
   B60L 50/64 20190101ALI20240521BHJP
   B60L 58/18 20190101ALI20240521BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20240521BHJP
   H01M 50/30 20210101ALI20240521BHJP
   H01M 50/367 20210101ALI20240521BHJP
   H01M 50/507 20210101ALI20240521BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20240521BHJP
   H05K 5/06 20060101ALI20240521BHJP
   H01M 50/574 20210101ALI20240521BHJP
【FI】
H01M50/284
B60L50/64
B60L58/18
H01M50/249
H01M50/30
H01M50/367
H01M50/507
H01M50/204 101
H05K5/06 D
H01M50/574
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022198684
(22)【出願日】2022-12-13
(65)【公開番号】P2023088312
(43)【公開日】2023-06-26
【審査請求日】2022-12-13
(31)【優先権主張番号】10 2021 133 014.9
(32)【優先日】2021-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510238096
【氏名又は名称】ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D-70435 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100202647
【弁理士】
【氏名又は名称】寺町 健司
(72)【発明者】
【氏名】イェンス クリューガー
【審査官】梅野 太朗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/186878(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/019559(WO,A1)
【文献】特開2015-208213(JP,A)
【文献】特開2016-072004(JP,A)
【文献】特開2020-098689(JP,A)
【文献】特開2013-110040(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M50/20、50/30、50/50
B60L1/00-3/12;7/00-13/00;15/00-58/40
H05K5/00-5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリー制御ユニット(50)及び複数のバッテリーモジュール(20)を有する、自動車トラクションバッテリーアセンブリ(10)であって、前記複数のバッテリーモジュールが各々、ガス抜き開口部(22)を備えかつ前記バッテリー制御ユニット(50)に電気的に接続されており、
車両長手方向(X)に延在するレールトンネル(14)が、設けられており、前記バッテリーモジュール(20)が、前記レールトンネルに対して直接当接しており、
複数のバスバー(16)が、前記レールトンネル(14)内に配置されており、前記バッテリーモジュール(20)が、前記複数のバスバーに電気的に接続されており、
前記レールトンネル(14)が、トンネル蓋(18)によって流体的に遮蔽されており、
前記バッテリー制御ユニット(50)が、気密なバッテリー制御ユニットハウジング本体(52)からなる、内部(53)を備え、接続レール(58)及び電子バッテリーコントローラ(54)が、前記内部内に収容されており、
前記バスバー(16)と前記接続レール(58)との間の電気的接続が、前記レールトンネル(14)とバッテリー制御ユニットの前記内部(53)との間の水平面(X、Y)内にある接続開口部(55)を通過する、垂直接触体(30)によって形成されており、
前記接続開口部(55)が、シール壁(40)によって流体的にシールされており、前記接触体(30)が、前記接続開口部を液密に通過
前記バッテリー制御ユニット(50)が、少なくとも1つの遮蔽されていない接触器スイッチ(56)を備える、自動車トラクションバッテリーアセンブリ。
【請求項2】
前記シール壁(40)が、プラスチック本体(40’)によって形成された、請求項1に記載の自動車トラクションバッテリーアセンブリ(10)。
【請求項3】
前記シール壁(40)が、絶縁シェル(34)を形成し、前記絶縁シェルが、ピン様の前記接触体(30)をそれぞれ包む、請求項2に記載の自動車トラクションバッテリーアセンブリ(10)。
【請求項4】
前記シール壁(40)が、前記プラスチック本体(40’)に埋め込まれた補剛要素(44)を備える、請求項2又は3のいずれかに記載の自動車トラクションバッテリーアセンブリ(10)。
【請求項5】
前記シール壁(40)が、前記トンネル蓋(18)のフランジ(18’’)と、前記バッテリー制御ユニットハウジング本体(52)の結合フランジ(23)との間にフランジシールを形成する、請求項1に記載の自動車トラクションバッテリーアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気トラクション駆動部を有する自動車用の自動車トラクションバッテリーアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
トラクションバッテリーアセンブリは、複数のバッテリーモジュールと、中央バッテリー制御ユニットとから本質的になる。このようなトラクションバッテリーアセンブリは、とりわけ、特許文献1、特許文献2及び特許文献3から知られている。
【0003】
特に乗用車では、トラクションバッテリーは、典型的には層状に構築され、自動車の床領域内に収容される。トラクションバッテリーのバッテリー部分は、複数のバッテリーモジュールで構成され、ここで当該複数のバッテリーモジュールは、互いに隣接して水平面内に配置され、かつ車両長手方向に延在して2列又は3列で配置され、各々が複数のバッテリーモジュールを有する。バッテリー制御ユニットは、すべてのバッテリーモジュールの後端の後方又は前端の前方に長手方向に配置され、バッテリーモジュールを監視する。
【0004】
車両長手方向に延在するレールトンネルが、2つのバッテリーモジュール列の間に設けられ、バッテリーモジュールは、当該レールトンネルに対して直接当接し、車両長手方向に延在する複数のバスバーが、当該レールトンネル内に収容され、それによってバッテリーモジュールとバッテリー制御ユニットとの間の電気的接続が確立される。レールトンネルは、バッテリー制御ユニットのハウジング内へ開放している。
【0005】
バッテリーモジュールのバッテリーセルのタイプ、化学、及び設計によって、ガス放出がバッテリーモジュールの寿命にわたって発生し、バッテリーモジュールから放出されるガスは、可燃性ガス混合物を形成し得る。
【0006】
とりわけ、バッテリー制御ユニットは、保護機能を有し、したがって、保護イベント、例えば検出された車両衝突においてバッテリーモジュールを電気的に絶縁することができるように、接触器スイッチを備える。高電圧をスイッチングするときに電気アークが発生するため、接触器スイッチは、潜在的に引火性のガス混合物に対して、対応するスイッチハウジングによって気密に密閉されなければならない。スイッチハウジングを設けることによって、接触器スイッチは、比較的かさばる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】独国特許出願公開第102018101115号明細書
【文献】独国特許発明第102019128946号明細書
【文献】独国特許出願公開第102019200234号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述に照らして、本発明によって対処される問題は、複数のバッテリーモジュール及びコンパクトなバッテリー制御ユニットを有する、自動車トラクションバッテリーアセンブリを生み出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この問題は、請求項1に記載の特徴を有する自動車トラクションバッテリーアセンブリによって、本発明に従って解決される。
【0010】
本発明による自動車トラクションバッテリーアセンブリは、複数のバッテリーモジュールを備え、当該複数のバッテリーモジュールはそれら自体、ガス抜き開口部を各々備え、それらは、当該ガス抜き開口部を通してガス抜きすることができる。バッテリーモジュールは、隣接するバッテリー制御ユニットに電気的に接続される。この目的のために、車両長手方向に延在するレールトンネルが設けられ、バッテリーモジュールは、バッテリーモジュールのガス抜き開口部から漏れるガスがレールトンネルに入るように、当該レールトンネルに対して流体的に直接当接する。複数のバスバーが、レールトンネル内に延在し、バッテリーモジュールは、当該バスバーに直接又は間接に電気的に接続され、当該バスバーは、バッテリーモジュールとバッテリー制御ユニットとの間の電気的接続を確立する。レールトンネルは、トンネル蓋によって環境に対して流体的に遮蔽され、その結果、ガスは、この領域内で放出されることができない。このようにして、ガスがレールトンネルから出て車両内部へ放出されることを、防止する。
【0011】
バッテリー制御ユニットは、気密なバッテリー制御ユニットハウジング本体からなる、内部を備え、電気接続レール及び電子バッテリーコントローラは、当該内部内に収容される。バッテリーコントローラはバッテリーモジュールを監視し、車両衝突が起きた場合にバッテリーモジュールを電気的に絶縁する。
【0012】
一方のバスバーの端、及び他方の開口部の対応する端は、例えば垂直接触体がプラグイン接続、ねじ接続、又はマテリアルロック接続を介してバスバーのそれぞれの端及び末端バーに確実に電気的に接続されるという点において、接触体によって互いに電気的に接続される。接触体は実質的にレールトンネルとバッテリー制御ユニット内部との間の水平面内に配置された接続開口部を通して突出し、このようにして、異なる水平面内に配置されたバスバー及び接続レールを接続する。
【0013】
本発明によれば、レールトンネルからのガスがバッテリー制御ユニットのハウジング本体内部に入ることができないように、この接続開口部が別個のシール壁によって流体的にシールされることが、提供される。このようにして、バッテリーモジュールからバッテリー制御ユニットに入る引火性ガスに起因する出火危険及び火災危険が完全に排除される。したがって、バッテリー制御ユニット内の引火性ガスに対する保護対策は、それに応じて削減することができる。
【0014】
例えばポジティブロック、マテリアルロック、又はフォースロックの態様で固定された、プラスチック本体によってシール壁が形成されることが、提供されることが好ましい。例えば、エラストマー、例えば熱可塑性エラストマー(TPE)は、プラスチックと考えることができる。
【0015】
特に好ましくは、シール壁又はシール壁を形成するプラスチック本体は、具体的には少なくとも円筒形にピン様接触体の長さの大部分にわたって、接触体をそれぞれ囲むか又は包む、スリーブ形状の絶縁シェルを形成する。それによって、接触体に対する電気的接触保護が実現される。さらに、接触体を大部分囲む、絶縁シェルと接触体との間の長いシールギャップが実現され、その結果、絶縁シェルと接触体との間のリングギャップを通るガスの通路が排除される。
【0016】
シール壁は、プラスチック本体に埋め込まれた機械的な補剛要素を備えることが好ましい。比較的薄いプラスチックシール壁は、法線方向に高い安定性を示さない。法線方向におけるシール壁の機械的安定性は、例えば、埋め込まれた金属体からなり得る、補剛要素によって大幅に改善される。
【0017】
バッテリー制御ユニットは、周囲ガスに対して密閉されていない、少なくとも1つの遮蔽されていない接触器スイッチを備えることが好ましい。シール壁がバッテリーセルのガス放出からもたらされ得る引火性ガスが入ることを排除するため、各接触器スイッチのための気密なハウジングを省略することができる。バッテリー制御ユニットは、典型的には、4~6個又はそれより多くの接触器スイッチを有するため、バッテリー制御ユニットは、著しくよりコンパクトに実現することができる。
【0018】
シール壁は、トンネル蓋のフランジとバッテリー制御ユニットハウジング本体のフランジとの間にフランジシールを形成することが好ましい。したがって、トンネル蓋とバッテリー制御ユニットハウジング本体との間の境界面の気密なシールのための別個のフランジシールは、もはや必要とされない。実際のフランジシールは、接続開口部内にあるシール壁のシール体とは異なる材料からなり得、例えばマテリアルロックの態様で二成分射出成形によって、シール体に接続され得る。
【0019】
本発明の例示的な実施形態は、図面を参照して以下でより詳細に説明される。図は、以下を示す。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、12個のバッテリーモジュール及び前面バッテリー制御ユニットを有する、自動車トラクションバッテリーアセンブリの斜視図である。
図2図2は、図1のバッテリー制御ユニットのII-II垂直断面である。
図3図3は、図1のトラクションバッテリーアセンブリのIII-III垂直縦断面である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図は、6つのバッテリーモジュール20を各々有する、2つの長手方向列20’、20’’と、2つのバッテリーモジュール長手方向列20’、20’’に中央で当接する、1つのバッテリー制御ユニット50と、によって実質的に形成された自動車トラクションバッテリーアセンブリ10を示す。すべてのバッテリーモジュール20及びバッテリー制御ユニット50は、単一の水平面XY上にある。互いに同一であるバッテリーモジュール20は各々、平坦なボルトの形状で細長く、それらの小さい端面21は、垂直長手方向面XZ内にある。バッテリーモジュール20の近位端面21は各々、ガス抜き開口部22を有し、バッテリーモジュール20は、当該ガス抜き開口部を通してレールトンネル14内へガス抜きすることができる。
【0022】
バッテリーモジュール20の上方にレールトンネル14が設けられ、当該レールトンネルは、車両長手方向Xに延在し、複数のバスバー16が、当該レールトンネル内に長手方向に配置され、バッテリーモジュール20は各々、当該レールトンネルによって直接又は間接に電気的に接続される。レールトンネル14は、車両に対して中心にある、細長い、最上部に位置付けられた蓋18によって、液密に環境に対して遮蔽される。バッテリーモジュール20及びバッテリー制御ユニット50の真下に、能動的に液体冷却される、ヒートシンクプレート12が設けられる。
【0023】
気密な金属ハウジング本体52からなる、内部53内に、バッテリー制御ユニット50は、複数の接触器スイッチ56を備える電子バッテリーコントローラ54を備える。バッテリーコントローラ54は、バスバー16に対応する接続レール58を備え、当該レールは、垂直かつ導電性の接触体30によって、互いに電気的に接続される。その上端によって、接触体30は、それぞれのレセプタクル32に挿入される、例えば押し込まれ、関連するバスバー16に接続される。
【0024】
図2及び図3に示す通り、水平面XY内にある接続開口部55は、レールトンネル14とバッテリー制御ユニット内部53との間に画定され、垂直接触体30は、当該開口部を通過する。
【0025】
流密シール壁40は、接続開口部55内に配置され、ガスがレールトンネル14からバッテリー制御ユニット内部53に入ることができないように、接続開口部55を流体的にシールする。
【0026】
シール壁40は、プラスチック本体40’によって形成され、当該プラスチック本体はまた、円筒形接触スリーブ34を形成し、当該円筒形接触スリーブは、円筒形ピン様接触体30をその周囲及び垂直延在部にわたってそれぞれ完全に包む。シール壁のプラスチック本体40’には、水平面XY内にあり、かつシール壁40を法線方向に補剛する、層状の金属補剛要素44が埋め込まれる。
【0027】
シール壁40はさらに、接続開口部55から突出するトンネル蓋18の部分18’のフランジ18’’と、バッテリー制御ユニットハウジング本体52の対応する嵌合フランジ23との間にフランジシールを形成する。2つのフランジ18’’、23は、フランジボルト19によって互いに垂直に張力をかけられている。
図1
図2
図3