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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】多層シート及び多層電子装置
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/34 20060101AFI20240521BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240521BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240521BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20240521BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
B32B27/34
B32B27/00 Z
B32B27/30 A
B32B27/40
B32B27/36
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022201565
(22)【出願日】2022-12-16
(65)【公開番号】P2023181965
(43)【公開日】2023-12-25
【審査請求日】2022-12-27
(31)【優先権主張番号】10-2022-0071625
(32)【優先日】2022-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520287378
【氏名又は名称】エスケーマイクロワークス ソリューションズ 株式会社
【氏名又は名称原語表記】SK microworks solutions Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】112, Seonggeo-gil, Seonggeo-eup, Seobuk-gu, Cheonan-si,Chungcheongnam-do 31044, Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】523061191
【氏名又は名称】エスケーマイクロワークス 株式会社
【氏名又は名称原語表記】SK microworks Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】84, Jangan-ro 309beon-gil, Jangan-gu, Suwon-si,Gyeonggi-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ウ、ソクジョン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジュンキ
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ヒョンウ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、クァンホ
(72)【発明者】
【氏名】ハン、クォンヒョン
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-181924(JP,A)
【文献】国際公開第2010/110135(WO,A1)
【文献】特開2020-082440(JP,A)
【文献】特開2021-109327(JP,A)
【文献】特開2019-195994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ISO 13468に準拠した全光線透過率が85%以上である透明フィルムと、
前記透明フィルムの一面上に配置されたコーティング層と、
前記透明フィルムの他面下に配置された弾性フィルムと、を含む多層シートであって、
前記コーティング層は、ウレタンアクリレート系化合物、アクリルエステル系化合物、及びアクリレート系化合物からなる群から選択された1種以上又はこれらの硬化物を含み、
前記弾性フィルムは、ポリエーテルブロックアミドを含み、
前記多層シートは、前記コーティング層の表面で測定したマルテンス硬度HMが180N/mm以上である、多層シート。
【請求項2】
前記多層シートは、前記コーティング層の表面で測定した弾性率ηITが62%以上である、請求項1に記載の多層シート。
【請求項3】
前記弾性フィルムの厚さを基準として前記透明フィルムの厚さが0.5~3の厚さ比率を有する、請求項1に記載の多層シート。
【請求項4】
変形-復元指数TR indexは、下記式1による値であり、
前記コーティング層の表面で測定した前記TR index(単位:/μm)は0.8以上2以下である、請求項1に記載の多層シート。
[式1]
前記式1において、
HMdは、前記コーティング層の表面で測定した前記多層シートの単位厚さ(1μm)当たりのマルテンス硬度値(N/(mm*μm))であり、
CITdは、前記コーティング層の表面で測定した前記多層シートの単位厚さ(1μm)当たりのインデンテーションクリープ値(%/μm)であり、
Rcdは、前記コーティング層の表面で測定した前記多層シートの単位厚さ(1μm)当たりの復元率値(%/μm)であり、
ITは、前記コーティング層の表面で測定した前記多層シートのインデンテーション硬度(N/mm)である。
【請求項5】
透明フィルムと、
前記透明フィルムの一面上に配置されたコーティング層と、
前記透明フィルムの他面下に配置された接着層と、
前記接着層の下に配置された弾性フィルムと、を含む多層シートであって、
前記コーティング層は、ウレタンアクリレート系化合物、アクリルエステル系化合物、及びアクリレート系化合物からなる群から選択された1種以上又はこれらの硬化物を含み、
前記弾性フィルムは、ポリエーテルブロックアミドを含み、
前記多層シートは、前記コーティング層の表面で測定したマルテンス硬度HMが180N/mm以上である、多層シート。
【請求項6】
前記コーティング層の表面で測定した前記多層シートの単位厚さ(1μm)当たりのインデンテーションクリープ値は0.02%/μm~0.05%/μmである、請求項5に記載の多層シート。
【請求項7】
前記コーティング層の表面で測定した前記多層シートの単位厚さ(1μm)当たりの復元率は0.4%/μm~1.2%/μmである、請求項5に記載の多層シート。
【請求項8】
前記弾性フィルムと前記接着層との厚さの比率は1:0.02~1である、請求項5に記載の多層シート。
【請求項9】
前記多層シートは、復元率が66%以上である、請求項5に記載の多層シート。
【請求項10】
請求項1又は5に記載の多層シートと、
前記多層シートの下部に配置された発光機能層とを含む、多層電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
具現例は、ディスプレイなどの保護用として適用可能な多層シート及びそれを含む多層電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、スマートフォン、タブレットなどのモバイル機器、ATM、キオスクなどの情報処理用端末などが多様化されるに伴い、表面保護シートが多様に活用されている。また、フォルダブル、フレキシブル、ローラブルなどの様々な形態のディスプレイ装置が登場し、表面へのスクラッチを抑制する表面硬度に対する要求と共に、繰り返されるフォールディング、ローリングなどにも十分な耐久性を有することが要求される。また、ディスプレイ画面に適用される場合には光学特性が要求されるのは勿論のことである。
【0003】
関連する先行技術として、韓国登録特許第10-1798759号、韓国登録特許第10-1810422などがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
具現例の目的は、多層シート及び多層電子装置を提供することである。前記多層シートは、ディスプレイなどの保護用として活用度が優れる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための一具現例である多層シートは、ISO 13468に準拠した全光線透過率が85%以上である透明フィルムと;前記透明フィルムの一面上に配置されたコーティング層と;前記透明フィルムの他面下に配置された弾性フィルムと;を含む多層シートであって、前記多層シートは、前記コーティング層の表面で測定したマルテンス硬度HMが180N/mm以上である。
【0006】
前記多層シートは、前記コーティング層の表面で測定した弾性率ηITが62%以上であってもよい。
【0007】
前記弾性フィルムの厚さを基準として前記透明フィルムの厚さが0.5~3の厚さ比率を有してもよい。
【0008】
変形-復元指数TR indexは、下記式1による値であり、前記コーティング層の表面で測定した前記多層シートのTR index(単位:/μm)は0.8以上2以下であってもよい。
【0009】
【0010】
前記式1において、HMdは、前記コーティング層の表面で測定した前記多層シートの単位厚さ(1μm)当たりのマルテンス硬度値(N/(mm*μm))であり、CITdは、前記コーティング層の表面で測定した前記多層シートの単位厚さ(1μm)当たりのインデンテーションクリープ値(%/μm)であり、Rcdは、前記コーティング層の表面で測定した前記多層シートの単位厚さ(1μm)当たりの復元率値(%/μm)であり、HITは、前記コーティング層の表面で測定した前記多層シートのインデンテーション硬度(N/mm)である。
【0011】
上記目的を達成するための他の一具現例である多層シートは、透明フィルムと;前記透明フィルムの一面上に配置されたコーティング層と;前記透明フィルムの他面下に配置された接着層と;前記接着層の下に配置された弾性フィルムと;を含む多層シートであって、前記多層シートは、前記コーティング層の表面で測定したマルテンス硬度HMが180N/mm以上である。
【0012】
前記コーティング層の表面で測定した前記多層シートの単位厚さ(1μm)当たりのインデンテーションクリープ値は0.02%/μm~0.05%/μmであってもよい。
【0013】
前記コーティング層の表面で測定した前記多層シートの単位厚さ(1μm)当たりの復元率は0.4%/μm~1.2%/μmであってもよい。
【0014】
前記弾性フィルムと前記接着層との厚さの比率は1:0.02~1であってもよい。
【0015】
前記多層シートは、復元率が66%以上であってもよい。
【0016】
上記目的を達成するための他の一具現例である多層電子装置は、上述した多層シートと、前記多層シートの下部に配置された発光機能層とを含む。
【発明の効果】
【0017】
具現例の多層シート及び多層電子装置は、繰り返されるフォールディング又はローリングにもかかわらず基材との分離(delamination)が実質的に発生せず、表面硬度が優れるのでスクラッチ、打痕などに対して優れる。前記多層シートは、ディスプレイ用カバーシートに活用可能であり、多層電子装置への活用度が優れる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】具現例に係る多層シートの構造を断面で説明する概念図である。
図2】他の具現例に係る多層シートの構造を断面で説明する概念図である。
図3】他の具現例に係る多層電子装置の構造を断面で説明する概念図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明の実施例について添付の図面を参照して詳細に説明する。しかし、本発明は、様々な異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施例に限定されない。明細書全体にわたって類似の部分に対しては同一の図面符号を付した。
【0020】
本明細書において、ある構成が他の構成を「含む」とするとき、これは、特に反対の記載がない限り、それ以外の他の構成を除くものではなく、他の構成をさらに含むこともできることを意味する。
【0021】
本明細書において、ある構成が他の構成と「連結」されているとするとき、これは、「直接的に連結」されている場合のみならず、「それらの間に他の構成を介在して連結」されている場合も含む。
【0022】
本明細書において、A上にBが位置するという意味は、A上に直接当接してBが位置するか、またはそれらの間に他の構成が位置しながらA上にBが位置することを意味し、Aの表面に当接してBが位置することに限定されて解釈されない。
【0023】
本明細書において、各層の上下は図面を基準として説明する。但し、各層の位置は、図面に提示された位置に限定されて解釈されず、上下の区別は、各層の位置を説明するための相対的な概念として理解しなければならない。
【0024】
本明細書において、マーカッシュ形式の表現に含まれた「これらの組み合わせ」という用語は、マーカッシュ形式の表現に記載された構成要素からなる群から選択される1つ以上の混合又は組み合わせを意味するものであって、前記構成要素からなる群から選択される1つ以上を含むことを意味する。
【0025】
本明細書において、「A及び/又はB」の記載は、「A、B、または、A及びB」を意味する。
【0026】
本明細書において、「第1」、「第2」又は「A」、「B」のような用語は、特に説明がない限り、同一の用語を互いに区別するために使用される。
【0027】
本明細書において、単数の表現は、特に説明がなければ、文脈上解釈される単数又は複数を含む意味で解釈される。
【0028】
本明細書において、貯蔵モジュラスは、ASTM D4065に準拠して、HITACHI社のDMA7100モデルにて、-50℃~100℃の範囲で貯蔵モジュラスを測定した。昇温速度は5℃/minを適用したものを基準とする。
【0029】
本明細書において、室温は約20℃を、常温は約25℃を基準とする。
【0030】
本明細書において、面内位相差(in-plane retardation、Ro)は、測定対象(フィルム又はシート、以下、フィルムと混用する)の平面内の直交する2つの軸の屈折率の異方性(△nxy=|nx-ny|)と厚さ(d)との積(△nxy×d)で定義されるパラメータであって、光学的等方性又は異方性を示す尺度である。また、最小面内位相差(Romin)は、フィルムの平面内の複数の地点で面内位相差(Ro)をそれぞれ測定したとき、最も低く測定された値を意味する。
【0031】
本明細書において、厚さ方向の位相差(thickness direction retardation、Rth)とは、フィルムの厚さ方向の断面から見たときの2つの複屈折である△nxz(=|nx-nz|)及び△nyz(=|ny-nz|)にそれぞれフィルムの厚さ(d)を掛けて得られる位相差の平均で定義されるパラメータである。また、最大厚さ方向の位相差(Rthmax)は、フィルムの平面内の複数の地点で厚さ方向の位相差(Rth)をそれぞれ測定したとき、最も高く測定された値を意味する。
【0032】
本明細書において、化合物の名称と共に併記された文字及び/又は数字は、化合物の名称に対する略語を意味する。
【0033】
本明細書において、図面に表示された構成の相対的な大きさ、厚さなどは、容易な説明を目的として誇張して表示され得る。
【0034】
以下、具現例である多層シートをより詳細に説明する。
【0035】
図1は、具現例に係る多層シートの構造を断面で説明する概念図であり、図2は、他の具現例に係る多層シートの構造を断面で説明する概念図である。図1及び図2を参照して、具現例の多層シートをより詳細に説明する。
【0036】
前記目的を達成するために、具現例の一実施例に係る多層シート100は、透明フィルム20と、前記透明フィルムの一面上に配置されたコーティング層10と、前記透明フィルムの他面下に配置された弾性フィルム42とを含む。
【0037】
前記目的を達成するために、具現例の一実施例に係る多層シート100は、透明フィルム20と、前記透明フィルムの一面上に配置されたコーティング層10と、前記透明フィルムの他面下に配置された接着層30と、前記接着層の下に配置された弾性フィルム42とを含む。
【0038】
透明フィルム20
透明フィルム20は、多層シートの支持体であって、コーティング層及び接着層のベース層として活用可能である。
【0039】
透明フィルム20は、ISO 13468に準拠した全光線透過率(光透過率)が85%以上であるフィルムである。透明フィルム20は、光透過率が85%以上であり得る。例えば、前記光透過率は、88%以上又は89%以上、99%以下であってもよい。但し、前記光透過率は、ディスプレイのカバーフィルムの支持層に適用可能な程度であれば、これに限定されるものではない。
【0040】
透明フィルム20のヘイズは3%以下であり得る。例えば、前記ヘイズは、2%以下、1.5%以下、または1%以下であってもよい。前記ヘイズは、0%超であってもよい。このような場合、多層シートをより一層透明にすることができる。
【0041】
透明フィルム20の透過黄色度(yellow index、YI)は3以下であり得る。例えば、前記透過黄色度は、3以下、2.8以下、2.2以下、1.0以下、0.8以下、または0.5以下であってもよい。また、前記透過黄色度は0超であってもよい。
【0042】
透明フィルム20は、優れた位相差(retardation)特性を有することができる。
【0043】
透明フィルム20は、面内位相差(Ro)が600nm以下、500nm以下、400nm以下、300nm以下、または200nm以下であってもよい。前記範囲内である場合、多層シートをディスプレイの前面部に適用する際に、視野角によるニジムラの発生可能性を最小限に減らすことができる。
【0044】
透明フィルム20は、最小面内位相差(Romin)が200nm以下または150nm以下であってもよい。具体的に、前記最小面内位相差は、120nm以下、100nm以下、85nm以下、75nm以下、または65nm以下であってもよい。
【0045】
透明フィルム20は、面内位相差の下限値が0nmであってもよく、または光学特性と機械的物性のバランスのために、前記面内位相差(Ro)の下限値を10nm以上、30nm以上、または50nm以上としてもよい。
【0046】
透明フィルム20は、厚さ方向の位相差(Rth)が4,000nm以上、5,000nm以上、または5,500nm以上であってもよい。
【0047】
透明フィルム20は、最大厚さ方向の位相差(Rthmax)が6,000nm以上、例えば、6,500nm以上、例えば、7,500nm以上、例えば、8,000nm以上、例えば、8,500nm以上であってもよい。
【0048】
透明フィルム20は、面内位相差(Ro)に対する厚さ方向の位相差(Rth)の比(Rth/Ro)が10以上、15以上、または20以上であってもよい。面内位相差(Ro)は小さいほど、厚さ方向の位相差(Rth)は大きいほど、ニジムラが生じることを防止するのに有利であるので、両数値の比(Rth/Ro)は大きく維持されることが良い。
【0049】
透明フィルム20は、最小面内位相差(Romin)に対する最大厚さ方向の位相差(Rthmax)の比(Rthmax/Romin)が30以上、40以上、50以上、または60以上であってもよい。
【0050】
上述した特性を有する透明フィルムは、分子の配向度が大きくて結晶化が促進されることで、適切なレベル以上の機械的物性を有することができる。また、このような場合、ニジムラの発生を効果的に抑制することができる。前記位相差は、厚さ40μm~50μmの透明フィルム20から測定した値を基準とする。
【0051】
透明フィルム20は、引張強度が15kgf/mm以上であり得る。具体的に、前記引張強度は、18kgf/mm以上、20kgf/mm以上、21kgf/mm以上、または22kgf/mm以上であってもよい。
【0052】
透明フィルム20は、伸度が15%以上であり得る。具体的に、前記伸度は、16%以上、17%以上、または17.5%以上であってもよい。
【0053】
透明フィルム20のモジュラスは2.5GPa以上であり得る。例えば、前記モジュラスは、3GPa以上、3.5GPa以上、3.8GPa以上、または4.0GPa以上であってもよい。前記モジュラスは、10GPa以下、または8GPa以下であってもよい。
【0054】
透明フィルム20の圧縮強度は0.4kgf/μm以上であり得る。具体的に、前記圧縮強度は、0.45kgf/μm以上、または0.46kgf/μm以上であってもよい。
【0055】
透明フィルム20として、ポリエステル系フィルムが適用されてもよい。
【0056】
透明フィルム20として、ポリイミド系フィルムが適用されてもよい。
【0057】
透明フィルム20として、ポリアミド系フィルムが適用されてもよい。
【0058】
透明フィルム20として、ポリイミド-アミド系フィルムが適用されてもよい。
【0059】
例示的に、前記透明フィルム20は透明ポリエステル系フィルムであってもよい。
【0060】
前記ポリエステル系フィルムはポリエステル系樹脂を含むものであってもよい。
【0061】
前記ポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸とジオールが重縮合された単一重合体樹脂または共重合体樹脂であってもよい。また、前記ポリエステル系樹脂は、前記単一重合体樹脂または共重合体樹脂が混合されたブレンド樹脂であってもよい。
【0062】
前記ジカルボン酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルスルホンカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、3,3-ジエチルコハク酸、グルタル酸、2,2-ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2-メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸、ドデカンジカルボン酸などがある。
【0063】
また、前記ジオールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、デカメチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホンなどがある。
【0064】
好ましくは、前記ポリエステル系樹脂は、結晶性に優れた芳香族ポリエステル系樹脂であってもよい。例えば、前記ポリエステル系樹脂は、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を主成分とすることができる。
【0065】
前記透明フィルム20がポリエステル系フィルムである場合、前記ポリエステル系フィルムは、ポリエステル系樹脂、具体的にPET樹脂を約85重量%以上含むことができ、より具体的に90重量%以上、95重量%以上、または99重量%以上含むことができる。他の例として、前記ポリエステル系フィルムは、PET樹脂以外に他のポリエステル系樹脂をさらに含むことができる。具体的に、前記ポリエステル系フィルムは、約15重量%以下のポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂をさらに含むことができる。より具体的に、前記ポリエステル系フィルムは、約0.1重量%~10重量%、または約0.1重量%~5重量%のPEN樹脂をさらに含むことができる。
【0066】
前記組成を有するポリエステル系フィルムは、加熱、延伸などを経る製造過程で結晶化度が上昇し、引張強度などの機械的物性が向上することができる。
【0067】
前記透明フィルム20は、ポリエステル系樹脂以外にフィラーをさらに含むことができる。
【0068】
前記フィラーは、硫酸バリウム、シリカ及び炭酸カルシウムからなる群から選択された1種以上であってもよい。前記透明フィルム20は、前記フィラーを含むことによって、粗さ及び巻き取り性を向上させることができ、また、フィルムの作製時の走行性及びスクラッチ改善効果を向上させることができる。
【0069】
前記フィラーの粒径は0.01μm以上1.0μm未満であり得る。例えば、前記フィラーの粒径は0.05μm~0.9μm、または0.1μm~0.8μmであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0070】
前記フィラーは、前記透明フィルム20の総重量を基準として0.01~3重量%の量で含まれ得る。例えば、前記フィラーは、前記透明フィルム20の総重量を基準として0.05~2.5重量%、0.1~2重量%、または0.2~1.7重量%の量で含まれてもよいが、これに限定されるものではない。
【0071】
前記透明フィルム20の厚さは、15μm以上、20μm以上、30μm以上、40μm以上、55μm以上、65μm以上、75μm以上、または100μm以上であってもよく、また、500μm以下、400μm以下、300μm以下、200μm以下、120μm以下、95μm以下、または85μm以下であってもよい。具体例として、前記透明フィルム20の厚さは15μm~120μmであってもよく、より具体的に20μm~95μm、または25μm~85μmであってもよい。このような厚さの範囲で、透明フィルムは、十分な機械的物性と共に優れた光学特性を得ることができる。
【0072】
透明フィルムとして、SKC社で市販中のSH33/34製品、SH37/38製品、TF110製品、V7610製品、V5400製品、V7611製品、TU94製品、TU63A製品、TOF50製品などが適用可能であるが、これに限定されるものではない。
【0073】
透明フィルムの製造方法は、通常の透明フィルムの製造方法に従う。
【0074】
例示的に、ポリエステルフィルムの場合、(1)ポリエステル樹脂を含む組成物を押出して未延伸フィルムを得るステップと、(2)前記未延伸フィルムを長手方向及び幅方向に延伸するステップと、(3)前記延伸されたフィルムを熱固定するステップとを含んで製造されてもよい。
【0075】
前記製造方法において、未延伸フィルムは、原料樹脂を押出し、予熱、延伸及び熱固定を経て製造される。また、前記押出は、230℃~300℃、または250℃~280℃の温度条件で行われてもよい。
【0076】
前記未延伸フィルムは、延伸する前に一定の温度で予熱される。前記予熱温度の範囲は、前記ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)を基準としてTg+5℃~Tg+50℃の範囲を満たし、これと同時に、70℃~90℃の範囲を満たす範囲で決定され得る。前記範囲内である場合に、前記未延伸フィルムが延伸されやすい柔軟性を確保すると同時に、延伸中に前記未延伸フィルムが破断する現象を効果的に防止することができる。
【0077】
前記延伸は、二軸延伸で行われ、例えば、同時二軸延伸法または逐次二軸延伸法を通じて幅方向(テンター方向、TD)及び長手方向(機械方向、MD)の2軸に延伸されてもよい。好ましくは、まず一方向に延伸した後、その方向の直角方向に延伸する逐次二軸延伸法が行われ得る。
【0078】
前記長手方向の延伸比は2.0~5.0の範囲であり、より具体的に2.8~3.5の範囲であり得る。また、前記幅方向の延伸比は2.0~5.0の範囲であり、より具体的に2.9~3.7の範囲であり得る。好ましくは、長手方向の延伸比(d1)と幅方向の延伸比(d2)はほぼ同一であり、具体的に、前記幅方向の延伸比(d2)に対する長手方向の延伸比(d1)の比率(d1/d2)が0.5~1.0、0.7~1.0、または0.9~1.0であってもよい。前記延伸比(d1,d2)は、延伸前の長さを1.0としたとき、延伸後の長さを示す比である。また、前記延伸の速度は6.5m/min~8.5m/minであってもよいが、特に限定されない。
【0079】
前記延伸されたシートは、150℃~250℃、より具体的に160℃~230℃で熱固定され得る。前記熱固定は5秒~1分間行われ得、より具体的には10秒~45秒間行われ得る。
【0080】
熱固定を開始した後に、フィルムは長手方向及び/又は幅方向に弛緩し得、このときの温度範囲は150℃~250℃であり得る。
【0081】
コーティング層10
コーティング層10は、前記透明フィルム20の一面上に配置される。
【0082】
コーティング層10の下面は、透明フィルム20と対向し、上面は、外部に露出された最外郭面であり得る。
【0083】
コーティング層10の下面は、透明フィルム20と直接接触するか、または追加の層を媒介として透明フィルム20と接合されてもよい。
【0084】
コーティング層10は、透明フィルム20の一面と直接当接していてもよい。
【0085】
コーティング層10は、透明フィルム20の機械的物性及び/又は光学的物性を向上させることができる。
【0086】
コーティング層10は、有機成分、無機成分、及び有機無機複合成分のうちの少なくとも1つのコーティング材料を含むことができる。
【0087】
コーティング材料は有機樹脂を含むことができる。具体的に、前記有機樹脂は、硬化性樹脂であってもよく、またはバインダー樹脂であってもよい。
【0088】
コーティング層10は硬化性コーティング層であってもよい。
【0089】
コーティング層10は、ウレタンアクリレート系化合物、アクリルエステル系化合物、アクリレート系化合物及びエポキシアクリレート系化合物からなる群から選択された1種以上又はこれらの硬化物を含むことができる。
【0090】
コーティング層10は、ウレタンアクリレート系化合物、アクリルエステル系化合物、またはこれらの硬化物を含むことができる。
【0091】
コーティング層10は、ウレタンアクリレート系化合物、アクリルエステル系化合物、アクリレート系化合物、またはこれらの硬化物を含むことができる。
【0092】
前記ウレタンアクリレート系化合物は、ウレタン結合を繰り返し単位として含み、複数個の官能基を有することができる。
【0093】
前記ウレタンアクリレート系化合物は、ジイソシアネート化合物とポリオールが反応して形成されたウレタン化合物の末端がアクリレート基で置換されたものであってもよい。
【0094】
例えば、前記ジイソシアネート化合物は、炭素数4~12の直鎖状、分岐状又は環状脂肪族ジイソシアネート化合物、及び炭素数6~20の芳香族ジイソシアネート化合物のうちの少なくとも1つを含むことができる。前記ポリオールは、2~4個のヒドロキシ基(-OH)を含み、炭素数が4~12である直鎖状、分岐状又は環状脂肪族ポリオール化合物、または炭素数が6~20である芳香族ポリオール化合物であってもよい。前記アクリレート基による末端置換は、イソシアネート基(-NCO)と反応できる官能基を有するアクリレート系化合物によって行われ得る。例えば、ヒドロキシ基、アミン基などを有するアクリレート系化合物が使用されてもよく、または炭素数2~10のヒドロキシアルキルアクリレートもしくはアミノアルキルアクリレートが使用されてもよい。
【0095】
前記ウレタンアクリレート系化合物は、2~15個の官能基を含むことができる。
【0096】
前記ウレタンアクリレート系化合物の例としては、重量平均分子量1400~25000の2官能ウレタンアクリレートオリゴマー、重量平均分子量1700~16000の3官能ウレタンアクリレートオリゴマー、重量平均分子量500~2000の4官能ウレタンアクリレートオリゴマー、重量平均分子量818~2600の6官能ウレタンアクリレートオリゴマー、重量平均分子量2500~5500の9官能ウレタンアクリレートオリゴマー、重量平均分子量3200~3900の10官能ウレタンアクリレートオリゴマー、重量平均分子量2300~20000の15官能ウレタンアクリレートオリゴマーなどが挙げられるが、これに制限されない。
【0097】
前記ウレタンアクリレート系化合物のガラス転移温度(Tg)は、-80℃~100℃、-80℃~90℃、-80℃~80℃、-80℃~70℃、-80℃~60℃、-70℃~100℃、-70℃~90℃、-70℃~80℃、-70℃~70℃、-70℃~60℃、-60℃~100℃、-60℃~90℃、-60℃~80℃、-60℃~70℃、-60℃~60℃、-50℃~100℃、-50℃~90℃、-50℃~80℃、-50℃~70℃、または-50℃~60℃であってもよい。
【0098】
前記アクリルエステル系化合物は、置換もしくは非置換のアクリレート、及び置換もしくは非置換のメタクリレートからなる群から選択された1種以上であってもよい。前記アクリルエステル系化合物は1~10個の官能基を含むことができる。
【0099】
前記アクリルエステル系化合物の例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート(TMPEOTA)、グリセリンプロポキシル化トリアクリレート(GPTA)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETA)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)などが挙げられるが、これに制限されない。
【0100】
前記アクリルエステル系化合物の重量平均分子量は、500~6,000、500~5,000、500~4,000、1000~6,000、1000~5,000、1000~4,000、1500~6,000、1500~5,000、または1500~4,000であってもよい。前記アクリルエステル系化合物のアクリレート当量は、50g/eq~300g/eq、50g/eq~200g/eq、または50g/eq~150g/eqであってもよい。
【0101】
前記アクリレート系化合物は1~10個の官能基を含むことができる。前記アクリレート系化合物の例としては、重量平均分子量100~300の1官能アクリレートオリゴマー、重量平均分子量250~2000の2官能アクリレートオリゴマー、または重量平均分子量1000~3000のエポキシアクリレートオリゴマーなどが挙げられる。
【0102】
前記エポキシアクリレート系化合物は1~10個の官能基を含むことができる。前記エポキシアクリレート系化合物の例としては、重量平均分子量100~300の1官能エポキシアクリレートオリゴマー、重量平均分子量250~2000の2官能エポキシアクリレートオリゴマー、または重量平均分子量1000~3000の4官能エポキシアクリレートオリゴマーなどが挙げられるが、これに制限されない。前記エポキシアクリレート系化合物のエポキシ当量は、50g/eq~300g/eq、50g/eq~200g/eq、または50g/eq~150g/eqであってもよい。
【0103】
前記有機樹脂の含量は、コーティング層10の総重量を基準として30~100重量%であってもよく、40~90重量%、または50~80重量%であってもよい。
【0104】
コーティング層10は、選択的にフィラーをさらに含むことができる。
【0105】
前記フィラーは、例えば、無機粒子であってもよい。前記フィラーの例としては、シリカ、硫酸バリウム、酸化亜鉛またはアルミナなどが挙げられる。前記フィラーの粒径は1nm~100nmであってもよい。具体的に、前記フィラーの粒径は、5nm~50nm、または10nm~30nmであってもよい。前記フィラーは、互いに異なる粒径分布を有する無機フィラーを含むことができる。例えば、前記フィラーは、D50が20nm~35nmである第1無機フィラー、及びD50が40nm~130nmである第2無機フィラーを含むことができる。前記フィラーの含量は、前記コーティング層10の総重量を基準として、25重量%以上、30重量%以上、または35重量%以上であってもよい。また、前記フィラーの含量は、前記コーティング層10の総重量を基準として、50重量%以下、45重量%以下、または40重量%以下であってもよい。好ましくは、コーティング層10は、シリカなどの無機フィラーを含まなくてよい。この場合、例えば、前記透明フィルム20と上述した組成のコーティング層10との間の接合力が向上することができる。
【0106】
コーティング層10は、光開始剤またはその反応物をさらに含むことができる。前記樹脂などがコーティング層として硬化する過程に光開始剤が関与し得る。
【0107】
前記光開始剤の例としては、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン、2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-1-プロパノン、メチルベンゾイルホルメート、α,α-ジメトキシ-α-フェニルアセトフェノン、2-ベンゾイル-2-(ジメチルアミノ)-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-(4-モルホリニル)-1-プロパノン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド、またはビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシドなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。また、市販品としては、Irgacure 184、Irgacure 500、Irgacure 651、Irgacure 369、Irgacure 907、Darocur 1173、Darocur MBF、Irgacure 819、Darocur TPO、Irgacure 907、Esacure KIP 100Fなどが挙げられる。前記光開始剤は、単独で、または互いに異なる2種以上を混合して使用してもよい。
【0108】
コーティング層10は、防眩、防汚、帯電防止などの機能をさらに含むことができる。
【0109】
コーティング層10は、防汚剤をさらに含むことができる。例えば、コーティング層10は、フルオロ系化合物を含むことができる。前記フルオロ系化合物は防汚機能を行うことができる。具体的に、前記フルオロ系化合物は、パーフルオロ系アルキル基を有するアクリレート系化合物であり得、具体例としてパーフルオロヘキシルエチルアクリレート(perfluorohexylethyl acrylate)が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0110】
コーティング層10は、帯電防止剤をさらに含むことができる。前記帯電防止剤は、イオン系界面活性剤を含むことができる。例えば、前記イオン系界面活性剤は、アンモニウム塩、または4級アルキルアンモニウム塩などを含むことができ、前記アンモニウム塩及び4級アルキルアンモニウム塩は、塩化物、臭化物などのハロゲン化物を含むことができる。
【0111】
コーティング層10は、界面活性剤、UV吸収剤、UV安定剤、黄変防止剤、レベリング剤、または色相値の改善のための染料などの添加剤をさらに含むことができる。例えば、前記界面活性剤は、1~2官能性のフッ素系アクリレート、フッ素系界面活性剤、またはシリコン系界面活性剤であってもよい。前記界面活性剤は、前記コーティング層10内に分散又は架橋されている形態で含まれてもよい。また、前記UV吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、またはトリアジン系化合物などが挙げられ、前記UV安定剤としては、テトラメチルピペリジン(tetramethyl piperidine)などが挙げられる。これらの添加剤の含量は、前記コーティング層の物性を低下させない範囲内で多様に調節可能である。例えば、前記添加剤の含量は、前記コーティング層全体を基準として0.01~10重量%であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0112】
コーティング層10は、単一の層、または2つ以上の層で構成されてもよい。
【0113】
コーティング層10は、単一の層で形成されることで、多層シートの表面耐久性を増加させると共に、指紋防止又は汚染防止の機能を同時に行うことができる。
【0114】
コーティング層10の厚さは、2μm以上、3μm以上、5μm以上、または7μm以上であってもよく、また、50μm以下、30μm以下、20μm以下、または10μm以下であってもよい。このような厚さを有する場合、薄い厚さで適用されながらも、多層シートに適切なレベル以上に表面硬度などの耐久性を付与し、しかも、多層シートの全体的な柔軟性も維持させることができる。
【0115】
コーティング層10は、コーティング層の製造方法により形成され得る。
【0116】
コーティング層の製造方法は、コーティング層製造用組成物をコーティングした後、硬化するステップを含むことができる。
【0117】
コーティング層製造用組成物は、有機系樹脂組成物、無機系樹脂組成物、及び有機無機複合組成物のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0118】
コーティング層製造用組成物は、アクリレート系化合物、シロキサン化合物、及びシルセスキオキサン化合物のうちの少なくとも1つを含むことができる。また、無機粒子をさらに含むことができる。
【0119】
コーティング層製造用組成物は、具体的な一例として、ウレタンアクリレート系化合物、アクリルエステル系化合物、及びフルオロ系化合物を含むことができる。
【0120】
また、コーティング層製造用組成物は、必要に応じて、光開始剤、防汚添加剤、帯電防止剤、その他の添加剤、及び/又は有機溶媒をさらに含むことができる。
【0121】
有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールのようなアルコール系溶媒;2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノールのようなアルコキシアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルプロピルケトン、シクロヘキサノンのようなケトン系溶媒;プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチルグリコールモノエチルエーテル、ジエチルグリコールモノプロピルエーテル、ジエチルグリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール-2-エチルヘキシルエーテルのようなエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族溶媒;などを単独でまたは混合して使用することができる。
【0122】
前記有機溶媒の含量は、コーティング層の物性を低下させない範囲内で多様に調節することができるので、特に制限されることはない。但し、前記有機溶媒は、前記コーティング層製造用組成物に含まれる成分のうちの固形分を基準として、固形分:有機溶媒の重量比が約1:1~250になるように前記コーティング層製造用組成物に含まれ得る。前記有機溶媒が前記範囲にあるとき、適切な流動性及び塗布性を有することができる。
【0123】
前記コーティング層製造用組成物に10~30重量%の有機樹脂、0.1~5重量%の光開始剤、0.01~2重量%の防汚添加剤、0.1~10重量%の帯電防止剤及び残余量の有機溶媒を含むことができる。
【0124】
前記組成に従う場合、コーティング層の機械的特性及び防汚、帯電防止特性が共に向上することができる。
【0125】
コーティング層製造用組成物は、通常のコーティング方式で透明フィルム上に塗布された後、硬化することができる。コーティング方式は、バーコーティング方式、ナイフコーティング方式、ロールコーティング方式、ブレードコーティング方式、ダイコーティング方式、マイクログラビアコーティング方式、コンマコーティング方式、スロットダイコーティング方式、リップコーティング方式またはソリューションキャスティング(solution casting)方式などが適用可能である。
【0126】
塗布されたコーティング層製造用組成物は、乾燥と硬化工程が順次または同時に行われてもよい。
【0127】
前記乾燥は、塗布されたコーティング層製造用組成物から有機溶媒を除去する過程である。乾燥は40℃~100℃、好ましくは、40℃~80℃、50℃~100℃、または50℃~80℃の温度条件で行われてもよく、約1分~20分、好ましくは1分~10分、または1分~5分間行われてもよい。
【0128】
前記硬化は、コーティング層製造用組成物に化学的反応を誘導して塗膜化する過程である。コーティング層製造用組成物に適用される樹脂などに応じて、適切な光硬化及び/又は熱硬化方法が適用され得る。
【0129】
弾性フィルム42
弾性フィルム42は、広い温度範囲で安定した弾性特性を有するものを適用することが良い。
【0130】
弾性フィルム42は、室温又は常温での貯蔵モジュラスが3GPa以下であってもよい。前記弾性フィルム42は、室温又は常温での貯蔵モジュラスが2GPa以下であってもよい。
【0131】
前記弾性フィルム42は、室温又は常温での貯蔵モジュラスの値が、PETフィルムなどと比較して相対的に低いという特徴を有する。このような特徴により、弾性フィルムやこれを含む多層シートにさらに安定したベンディング特性を付与することができ、外部から加えられる衝撃が裏面に配置される物品に伝達される程度をより一層緩和することができる。
【0132】
弾性フィルム42は、-40℃貯蔵モジュラスが2300Mpa以下であってもよく、または2000Mpa以下であってもよい。弾性フィルムは、-40℃貯蔵モジュラスが200Mpa以上であってもよく、400Mpa以上であってもよく、または500Mpa以上であってもよい。
【0133】
弾性フィルム42は、0℃貯蔵モジュラスが2500Mpa以下であってもよく、または2000MPa以下であってもよい。弾性フィルムは、0℃貯蔵モジュラスが20Mpa以上であってもよく、または150MPa以上であってもよい。弾性フィルムは、0℃貯蔵モジュラスが180~1200MPaであってもよい。
【0134】
弾性フィルム42は、40℃貯蔵モジュラスが10Mpa以上であってもよく、または90Mpa以上であってもよい。弾性フィルムは、40℃貯蔵モジュラスが3000MPa以下であってもよく、または2000MPa以下であってもよい。弾性フィルムは、40℃貯蔵モジュラスが100~1200MPaであってもよい。
【0135】
弾性フィルム42は、80℃貯蔵モジュラスが4Mpa以上であってもよく、または20MPa以上であってもよい。弾性フィルムは、80℃貯蔵モジュラスが2000MPa以下であってもよく、または1000MPa以下であってもよい。弾性フィルムは、80℃貯蔵モジュラスが40~950MPaであってもよく、または60~350MPaであってもよい。
【0136】
弾性フィルム42は、80℃での貯蔵モジュラスと-40℃での貯蔵モジュラスとの差が-1000MPa~1000MPaであってもよい。前記差は、便宜上、大きい値から小さい値を引いたものであって、絶対値で示すことができ、このとき、前記差は1000MPaであってもよい。前記特徴を有する弾性フィルムは、高温から低温の広い温度範囲で比較的小さい貯蔵モジュラスの差を有するので、非常に広い温度範囲で安定した貯蔵モジュラス特性を示すことができる。
【0137】
弾性フィルム42は、下記式2で表される貯蔵モジュラス指数が20~350MPaであってもよい。
【0138】
【0139】
前記式2において、KSMは、前記弾性フィルムの貯蔵モジュラス指数であり、SMは、温度n℃で測定した前記弾性フィルムの貯蔵モジュラス(Mpa)である。
【0140】
例えば、SM-40は、温度-40℃で測定した弾性フィルムの貯蔵モジュラス(Mpa)であり、SM20は、温度20℃で測定した弾性フィルムの貯蔵モジュラス(Mpa)であり、SM80は、温度80℃で測定した弾性フィルムの貯蔵モジュラス(Mpa)である。
【0141】
弾性フィルムが上述した値の貯蔵モジュラス指数を有する場合、相対的に広い温度範囲で比較的安定した貯蔵モジュラスの変化の度合いを有するので、広い温度範囲で安定した弾性特性を有することができる。
【0142】
弾性フィルム42は、2500kJ/m以上の衝撃強度を有してもよく、3500kJ/m以上の衝撃強度を有してもよく、または4500kJ/m以上の衝撃強度を有してもよい。弾性フィルム42は、5000kJ/m以上の衝撃強度を有することができ、10000kJ/m以下の衝撃強度を有することができる。このような特徴を有する弾性フィルムは、外部の衝撃を良好に吸収し、容易に破損又は損傷されないので、カバーフィルムへの活用度に優れる。
【0143】
弾性フィルム42は、1.4J以上の吸収エネルギーを有してもよく、または1.5J以上の吸収エネルギーを有してもよい。弾性フィルム42は、1.6J以上の吸収エネルギーを有することができ、2.0J以下の吸収エネルギーを有することができる。このような特徴を有する弾性フィルムは、外部の衝撃を良好に吸収してフィルム自体が容易に損傷しないと共に、保護対象に伝達される衝撃の程度を緩和するので、カバーフィルムへの活用度に優れる。
【0144】
前記衝撃強度及び前記吸収エネルギーは、それぞれ、JIS K 7160に準拠して弾性フィルムの引張衝撃強度(tensile-impact strength)を評価した結果を基準とし、具体的な測定条件は、以下の実験実施例で提示されたものを基準とする。
【0145】
弾性フィルム42は、2000μm未満の厚さを有することができる。前記弾性フィルムの厚さは1500μm以下であってもよく、1000μm以下であってもよく、500μm以下であってもよく、300μm以下であってもよく、200μm以下であってもよく、または100μm以下であってもよい。前記弾性フィルムの厚さは1μm以上であってもよい。前記弾性フィルムの厚さは10μm以上であってもよく、20μm以上であってもよく、または30μm以上であってもよい。
【0146】
弾性フィルム42は、優れた光学的特性を有する。
【0147】
弾性フィルム42は、ヘイズが3%以下であってもよく、または2%以下であってもよい。弾性フィルム42は、ヘイズが1.5%以下であってもよく、または1.2%以下であってもよい。弾性フィルム42は、ヘイズが0.01%以上であってもよく、または0.1%以上であってもよい。弾性フィルムが前記のようなヘイズを有する場合、ディスプレイ装置の表示領域に適用するのに良い。
【0148】
弾性フィルム42は、可視光線透過度が85%以上であってもよく、88%以上であってもよく、または90%以上であってもよい。弾性フィルムは、可視光線透過度が99.99%以下であってもよい。このような特徴を有する前記弾性フィルム42またはこれを含む多層シート100は、電子機器の保護層(又はカバーウィンドウ)として適用するのに有利である。
【0149】
弾性フィルム42は、黄色度(Y.I、Yellow Index)が1以下であってもよい。前記黄色度は、ハンターラブ社(Hunterlab)が製造したColor meter ultra scanproを適用して、YI E313(D65/10)モードで測定した値であり得る。
【0150】
弾性フィルム42は、280~360nmの波長の紫外線に3.0Wの出力で72時間露出された後の黄色度から、露出される前の黄色度を減じた値が2以下であってもよい。前記弾性フィルムは、280~360nmの波長の紫外線に3.0Wの出力で72時間露出された後の黄色度から、露出される前の黄色度を減じた値が1以下であってもよい。前記弾性フィルムは、280~360nmの波長の紫外線に3.0Wの出力で72時間露出された後の黄色度から、露出される前の黄色度を減じた値が0.1以上であってもよい。このような特徴を有する弾性フィルムは、紫外線に露出されてもコーティング層の黄変が僅かであるか、またはほとんど起こらない優れた紫外線耐久性を有することができる。
【0151】
弾性フィルム42は、白濁感(cloudy現象)が実質的に観察されないものであり得る。実質的に前記弾性フィルムの白濁感が観察される面積が全面積の1%未満であり得る。このとき、全面積は、製品に適用されるフィルムの全面積を基準とする。前記白濁感は、ヘイズの測定を通じて客観化され得、ヘイズの測定値が1%超である場合に、白濁感が感じられるものとして取り扱うことができる。前記白濁感の程度は、弾性フィルムの製造に適用される樹脂のゲル化の程度、分子量の分布などを制御して調節され得る。
【0152】
弾性フィルム42は優れた耐久性を有することができる。前記優れた耐久性は、動的曲げ評価の結果から判断することができる。
【0153】
前記動的曲げ評価は、IEC 62715-6-1規格に従って行われ、弾性フィルムを-40℃で2mmの曲率半径及び2秒/回の曲げの程度で20万回の動的曲げ試験後に、前記弾性フィルムにクラックが発生するか否かを確認する。
【0154】
弾性フィルム42は、IEC 62715-6-1規格に従って-40℃で2mmの曲率半径及び2秒/回の曲げの程度で20万回の動的曲げ試験後にクラックが実質的に発生しない、優れた耐久性を有することができる。
【0155】
低温での弾性が常温や高温での弾性よりも相対的にさらに低くなるという傾向を考慮すると、前記特性は、前記弾性フィルムが、広い温度範囲で反復的な曲げ試験後にも優れた弾性を有するという点を意味することもある。
【0156】
弾性フィルム42は、繰り返し単位としてアミド残基を含む高分子を含むことができる。
【0157】
弾性フィルム42は、繰り返し単位としてアミド残基を有する高分子を含むプラスチックフィルムであってもよい。
【0158】
弾性フィルム42は、繰り返し単位としてアミド残基を有する高分子を含むエラストマーフィルムであってもよい。
【0159】
アミド残基は、前記弾性フィルムに含まれる高分子全体を基準として50重量%以上であってもよく、または60重量%以上であってもよい。前記アミド残基は、前記弾性フィルムに含まれる高分子全体を基準として80重量%以下であってもよく、または70重量%以下であってもよい。このような特徴を有する高分子を前記弾性フィルムに適用する場合、機械的物性がさらに優れた弾性フィルムを提供することができる。
【0160】
弾性フィルム42は、弾性ポリアミド(elastic polyamide、long chain polyamide)を含むことができる。弾性ポリアミドは、例示的に、アルケマ社のRilsan(登録商標)、Rilsamid(登録商標)などであってもよい。
【0161】
弾性フィルム42は、ポリエーテルブロックアミド(polyether block amide、PEBA)を含むことができる。前記ポリエーテルブロックアミドは、剛性領域であるポリアミド領域と軟性領域であるポリエーテル領域の2種類の相(phase)を含む。前記ポリアミド領域は、融点が約80℃以上、具体的に約130~180℃であって、実質的に結晶質相で硬質領域を構成することができる。前記ポリエーテル領域は、ガラス転移温度が約-40℃以下、具体的に-80~-40℃と低い温度領域に存在し、実質的に無定形の軟質領域を構成することができる。前記ポリエーテルブロックアミドは、例示的に、アルケマ社(ARKEMA社)のPebax(登録商標)、Pebax(登録商標) Rnew(登録商標)、エボニック社(EVONIK社)のVESTAMID(登録商標) Eなどであってもよい。
【0162】
弾性フィルム42は、熱可塑性ポリウレタン(thermoplastic polyurethane、TPU)、すなわち、ポリエーテルウレタンとも呼ばれるポリウレタンブロック(PU)とポリエーテルブロック(PE)の共重合体を含むことができる。
【0163】
弾性フィルム42は、ポリエーテルエステル共重合体(copolyetherester、COPE)を含むことができる。
【0164】
弾性フィルムは、大韓民国登録特許第10-2286935号に開示された方法により製造されたフィルムが適用され得る。
【0165】
接着層30
接着層30は、前記透明フィルム20の他面下に配置され得る。
【0166】
接着層30の上面は、透明フィルム20と対向し、透明フィルム20と直接接触するか、または追加の層を媒介として透明フィルム20と接合されてもよい。
【0167】
接着層30の上面は、透明フィルム20の他面と直接当接していてもよい。
【0168】
接着層30の下面は、弾性フィルム42と直接接触するか、または他の層を媒介として弾性フィルム42と接合されていてもよい。
【0169】
接着層30の下面は、弾性フィルムを媒介として直接、またはここに追加の媒介層が介在して、発光機能層と接合されて多層電子装置の一部として適用され得る。
【0170】
接着層30は光学透明接着層が適用され得る。
【0171】
接着層30は、アクリル系接着層、ウレタン系接着層、またはシリコン系接着層が適用されてもよく、具体的にシリコン系接着層が適用され得る。シリコン系接着層を適用すれば、高い光透過度と共に耐熱性、耐候性などを有する接着層を提供できる。特に、後述する具現例の接着層は、薄い厚さでも強い接着力を有するので、アクリル系接着層などの既存のOCA(optically clear adhesive)と比較して、多層シートの物性をさらに向上させることができる。
【0172】
接着層30は、高い接着力を有するものが適用され得る。
【0173】
反復的なベンディング又はフォールディングにも多層シートの物性が良好に維持されるためには、透明フィルムやコーティング層だけでなく、これらを固定し、剥離(delamination)の発生を抑制する接着層の性能も向上しなければならない。発明者らは、シリコン系接着層を適用することで、このような向上した性能を得ることができた。
【0174】
シリコン系接着層は、シリコン接着組成物を塗布した後、乾燥及び/又は硬化して得ることができる。
【0175】
シリコン接着組成物は、シリコン接着剤と触媒、そして、溶媒を含むことができる。
【0176】
具現例では、シリコン系接着層の接着力の向上のために、シリコンMQ樹脂をさらに含むことができる。ここで、シリコンMQ樹脂は、一般式RnSiXmOyで表されるかご状オリゴシロキサン(cage-like oligosiloxanes)の中でシロキサン骨格に少なくとも2以上のメチル基を有する高分子である。一般式において、Rは、炭素数1~5のアルキル基であってもよく、これらのうち少なくとも2つのメチル基を含む。一般式において、Xは、水素、ヒドロキシ基、クロライド基、または炭素数1~5のアルコキシ基である。一般式において、n、m、yは、それぞれ2~200の整数である。具体的に、RSiO1/2で表されるM単位(mono-terminated siloxane units)、及びSiO4/2で表されるQ単位(tetra-terminated siloxane units)を含むことができる。重量平均分子量は2000~8000g/molであってもよい。シリコンMQ樹脂を接着層に適用すれば、接着力を向上させることができ、特に初期接着力を向上させることができる。
【0177】
シリコン接着剤は、光学用として活用可能な市販のシリコン接着剤が適用され得る。具体的に、過酸化物硬化型シリコン接着剤が適用されてもよく、または付加反応型シリコン接着剤が適用されてもよい。
【0178】
過酸化物硬化型シリコン接着剤は、例示的に、信越化学のKR-100、KR-101-10、KR-130、ダウ社のDOWSIL SH 4280、モーメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社のSilGrip PSA 510など、またはこれと同等の製品が適用されてもよい。
【0179】
付加反応型シリコン接着剤は、例示的に、信越化学のKR-3700、KR-3701、X-40-3237、X-40-3240、X-40-3291-1;ダウ社のDOWSIL SD4580、DOWSIL 4584、DOWSIL 4585、DOWSIL 4587L;モーメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社のSilGrip TSR1512、TSR1516;など、またはこれと同等の製品が適用されてもよい。
【0180】
シリコン接着剤は、付加反応型シリコン接着剤を適用することが、工程の便宜性の面で有利であり得る。
【0181】
シリコンMQ樹脂は、接着力を強化する目的でシリコン接着剤と共に適用され得る。シリコンMQ樹脂としては、例示的に、信越化学のX-92-128、X-41-3003;モーメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社のSilGrip SR545、SilGrip SR1000;など、またはこれと同等の製品が適用されてもよい。
【0182】
触媒は、白金触媒が適用され得、例示的に、信越化学のCAT-PL-50Tなど、またはこれと同等の製品が適用されてもよい。前記触媒は、硬化時間を短縮させることで、比較的熱に弱い特性を有する透明フィルム又は基材を適用しても、実質的に基材に損傷なしに接着層を効率的に形成することができる。
【0183】
溶媒は、例示的にトルエンなどが適用されてもよいが、シリコン接着層の性能を低下させない範囲で制限なしに適用可能である。
【0184】
シリコン接着組成物は、シリコン接着剤100重量部を基準として、シリコンMQ樹脂を5重量部以上、8重量部以上、10重量部以上、20重量部以上、30重量部以上、または40重量部以上含むことができる。シリコン接着組成物は、シリコン接着剤100重量部を基準として、シリコンMQ樹脂を90重量部以下、80重量部以下、70重量部以下、または60重量部以下含むことができる。このような比率で前記シリコン接着剤と前記シリコンMQ樹脂を共に適用する場合、非常に薄い厚さでも優れた接着力を有することができる。
【0185】
シリコン接着組成物は、シリコン接着剤100重量部を基準として、触媒を0.5~2重量部、または0.8~1.5重量部含むことができる。前記触媒は、硬化を促進することで、シリコン接着組成物から接着層が効率的に形成されるようにする。
【0186】
シリコン接着組成物は、溶媒をさらに含むことができ、溶媒は、シリコン接着組成物を希釈したり、流動性を付与したりして、コーティングなどの作業性が有利になるようにし、相対的に薄くて全体的に物性が優れた接着層を形成できるように助ける。溶媒は、例示的にトルエンが適用されてもよいが、シリコン接着組成物の物性を損なわない範囲で制限なしに適用可能である。
【0187】
例示的に、前記シリコン接着組成物は、シリコン接着剤を20~30重量%、シリコンMQ樹脂を2~25重量%、触媒を0.2~0.5重量%、溶媒を50~70重量%含むことができる。
【0188】
シリコン接着組成物は、透明フィルム20の他面上に塗布されてシリコン系硬化性接着層を形成することができる。シリコン接着組成物は、別途の基材フィルム(図示せず)の一面上に塗布された後に、前記透明フィルム20の他面上に貼り合わせ(lamination)られて形成され得る。但し、工程の順序によって、乾燥と硬化は塗布直後に行われてもよく、または別途の工程で行われてもよい。シリコン接着組成物がコーティングされて薄い層を形成し、この層が乾燥されて、熱又は光によって完全に硬化する前の状態で接着層に含まれ得る。このように硬化する前に、シリコン接着組成物の乾燥層をシリコン系硬化性接着層の前駆体層と称する。
【0189】
前駆体層は、熱又は光によって硬化して接着層30を形成することができる。例示的に、前記前駆体層と接着する面を直接接するように配置し、90~130℃で1~5分間熱硬化して接着層を形成することができる。
【0190】
接着層30は、シリコン接着剤由来の繰り返し単位、及びシリコンMQ樹脂由来の繰り返し単位を含むことができる。接着層30は、シリコン接着剤由来の繰り返し単位100重量部を基準として、シリコンMQ樹脂由来の繰り返し単位を5重量部以上、8重量部以上、10重量部以上、20重量部以上、30重量部以上、または40重量部以上含むことができる。接着層30は、シリコン接着剤由来の繰り返し単位100重量部を基準として、シリコンMQ樹脂由来の繰り返し単位を90重量部以下、80重量部以下、70重量部以下、または60重量部以下含むことができる。このような場合、より一層薄い厚さでも、優れた光学的特性と共に十分なレベル以上の接着力を得ることができる。
【0191】
安定したベンディング及びローリング特性を有するために、接着層30の貯蔵モジュラスが一定範囲の値を有することが良い。特に、ディスプレイ素子などに活用される様々な環境及び装置の活用によって発熱などが発生し得るという点などを考慮すると、装置の表面側での温度変化範囲で前記接着層が安定した機能を行うことができるモジュラス、接着力などを有することが良い。
【0192】
接着層30の貯蔵モジュラスは、-40℃で100MPa以下、90MPa以下、または80MPa以下であってもよい。接着層30の貯蔵モジュラスは、-40℃で0.1MPa以上であってもよい。
【0193】
接着層30の貯蔵モジュラスは、-20℃で100MPa以下、90MPa以下、または80MPa以下であってもよい。接着層30の貯蔵モジュラスは、-20℃で0.1MPa以上であってもよい。
【0194】
接着層30の貯蔵モジュラスは、0℃で70MPa以下、55MPa以下、または45MPa以下であってもよい。接着層30の貯蔵モジュラスは、0℃で0.1MPa以上であってもよい。
【0195】
接着層30の貯蔵モジュラスは、20℃で50MPa以下、35MPa以下、または25MPa以下であってもよい。接着層30の貯蔵モジュラスは、20℃で0.1MPa以上であってもよい。
【0196】
接着層30の貯蔵モジュラスは、40℃で20MPa以下、15MPa以下、または5MPa以下であってもよい。接着層30の貯蔵モジュラスは、40℃で0.1MPa以上であってもよい。
【0197】
接着層30の貯蔵モジュラスは、60℃で10MPa以下、5MPa以下、または3MPa以下であってもよい。接着層30の貯蔵モジュラスは、60℃で0.1MPa以上であってもよい。
【0198】
接着層30の接着力は200gf/inch以上であり得る。この接着力は、接着層の硬化を行った後の接着力を意味し、具体的な評価方法は、後述する実験実施例に提示した通りである。
【0199】
接着層30の接着力は、200gf/inch以上、250gf/inch以上、300gf/inch以上、350gf/inch以上、400gf/inch以上、450gf/inch以上、500gf/inch以上、または550gf/inch以上であってもよい。接着層30の接着力は2200gf/inch以下であり得る。接着層30の接着力は、2000gf/inch以下、1800gf/inch以下、1500gf/inch以下、1200gf/inch以下、または1000gf/inch以下であってもよい。
【0200】
接着層30の単位厚さ(1μm)当たりの接着力は、80gf/inch以上、100gf/inch以上、110gf/inch以上、140gf/inch以上、150gf/inch以上、または160gf/inch以上であってもよい。接着層30の単位厚さ(1μm)当たりの接着力は、300gf/inch以下、または250gf/inch以下であってもよい。単位厚さ当たり高い接着力を有する接着層を形成することが、より一層薄い厚さで十分な接着力を得るのに有利である。上述した単位厚さ当たりの接着力は、適用する接着層の種類及び厚さによって変わり得、硬化後の厚さを基準とする。
【0201】
接着層30の厚さは1μm超であり得る。
【0202】
接着層30の厚さは、1μm超、1.5μm以上、1.8μm以上、2μm以上、2.5μm以上、3μm以上、または3.5μm以上であってもよい。接着層30の厚さは、20μm以下、10μm以下、8μm以下、または7μm以下であってもよい。この場合に、優れた接着効果を得ることができる。
【0203】
接着層30は優れた光学特性を有する。
【0204】
接着層30は、ISO 13468に準拠した全光線透過率(光透過率)が85%以上であるフィルムである。透明フィルム20は、光透過率が85%以上であり得る。例えば、前記光透過率は、88%以上又は89%以上、99%以下であってもよい。
【0205】
接着層30のヘイズは3%以下であり得る。例えば、前記ヘイズは、2%以下、1.5%以下または1%以下であってもよい。前記ヘイズは0%超であり得る。
【0206】
接着層30の透過黄色度(yellow index、YI)は3以下であり得る。例えば、前記透過黄色度は、3以下、2.8以下、2.2以下、1.0以下、0.8以下または0.5以下であってもよい。また、前記透過黄色度は0超であり得る。
【0207】
接着層30は、光学特性に優れながらも、強い接着力により、反復的なベンディング又はローリングが行われる環境でデラミネーション現象が実質的に発生しないように助ける。
【0208】
多層シート100
多層シート100は、ベンディングとフォールディングが繰り返して発生する環境で安定的に内部装置を保護するために適用され得る。そのため、ベンディング耐久性と共に、外部から加えられる衝撃を吸収し、露出された表面がスクラッチ、打痕などに対して強い特性を有する多層シートが要求される。
【0209】
発明者らは、比較的薄い積層体構造である多層シートにおいて、ナノインデンテーション試験などを通じて表面で測定した硬度、復元率などの特徴が優れた多層シートを提示する。
【0210】
発明者らは、表面の特徴であると考えられていたナノインデンテーション試験により測定された硬度などは、最大押し込み深さがコーティング層の一部のみであるとしても、表面のコーティング層自体だけでなく、その下にある他の層の影響を受けてその値が変わり得るという点を確認した。発明者らは、比較的広い温度範囲でベンディング及びフォールディングに強い耐久性および弾性を有する弾性フィルムと、表面特性が優れたコーティング層とを積層体として形成し、透明度に優れながらも支持の役割を行う透明フィルムをそれらの間に挟む方式により、リカバリー特性及び硬度などの表面特性に優れた多層シートを提示する。
【0211】
ナノインデンテーション(nanoindentation)試験は、一定の幾何学的形状を有するインデンター(indenter)を素材の表面にμN~mNレベルの小さな力(荷重)で加え、除去する過程で得られる力-変位曲線(force-displacement curve)を解析して、硬度、弾性係数だけでなく、引張物性、残留応力などの様々な機械的特性を測定する分析技術である。
【0212】
インデンターチップ(indenter tip)は、様々な幾何学的形状を有することができ、例えば、円錐(conical)、ピラミッドまたは三角錐(Berkovich三角錐またはVickers三角錐)、円筒フラットパンチ(cylindrical flat punch)の形状を有することができる。
【0213】
一般に高分子素材は粘弾性体であるため、インデンターの下端のチップにより押し込まれたとき、最大の力で最大深さ(hmax)に変形され、その後、インデンターを除去しながらインデンターチップによる押し込みを解除すると、高分子の弾性により変形の一部は復元されるが、残りは永久的に復元されずに一定の深さ(h)を有する打痕(dent)を残すようになる。
【0214】
ナノインデンテーション試験により、剛性(stiffness、S)、接触投影面積(projected contact area、A)、試験力(F)、最大の力での最大押し込み深さ(hmax)などが測定され、力-変位曲線が得られ、これらの結果に基づいて、インデンテーションモジュラス(indentation modulus、EIT)、インデンテーション硬度(indentation hardness、HIT)、ビッカース硬度(Vickers hardness、HV)、マルテンス硬度(Martens hardness、HM)、インデンテーションクリープ(indentation creep、CIT)、弾性率(Recovery relation、ηIT)などを算出することができる。前記ナノインデンテーション試験は、例えば、ISO 14577-1:2002(E)標準に準拠して行われてもよい。
【0215】
マルテンス硬度(Martens hardness、HM)は、複合硬度とも呼ばれ、試験力、押し込み深さなどによって算出され、インデンテーション硬度とは異なって、塑性及び弾性素材の物性を提供する。下記においてHMdは、多層シートの厚さ当たりの前記コーティング層の表面で測定した前記多層シートのマルテンス硬度値(N/(mm*μm))であって、HMd値を多層シートの厚さの値で割って得ることができる。
【0216】
インデンテーションクリープ(CIT)は、一定の力で材料のさらなる変形を説明する。インデンテーションクリープ(CIT)を測定するために、インデンターをさらに長い時間(数分から数時間)にわたって一定の力でサンプルに押し込み、これによる持続的な圧力によって増加した押し込み深さを測定して算出することができる。下記においてCITdは、多層シートの厚さ当たりの前記コーティング層の表面で測定した前記多層シートのインデンテーションクリープ値(%/μm)であって、CIT値を多層シートの厚さの値で割って得ることができる。
【0217】
復元率(Recovery)は、ナノインデンテーション試験により測定された値に基づいて、下記の式で算出することができる。
【0218】
Recovery(%)=[(hmax(@30mN)-h)/hmax(@30mN)]×100
【0219】
ここで、hmax(@30mN)は、30mNの力で前記コーティング層の表面を15秒間下方に押し付け、5秒間保持(creep)させる間の最大押し込み深さ(μm)であり、hは、前記力が除去された後にも復元されずに残っている押し込みの深さ(μm)である。
【0220】
Rcdは、多層シートの厚さ当たりの前記コーティング層の表面で測定した多層シートの復元率値(%/μm)であって、復元率(Recovery)の値を多層シートの厚さの値で割って得ることができる。
【0221】
インデンテーション硬度(HIT)は、塑性硬度とも呼ばれ、最大の力での永久(塑性)変形に対する材料の抵抗性を測定したものであって、これから延性、展性、耐衝撃性などの塑性的物性を知ることができる。インデンテーション硬度(HIT)は、最大試験力(Fmax)を浸透深さでの接触投影面積(Ap)で割った値(Fmax/Ap)として算出される。
【0222】
前記測定は、特に事情がなければ、全てISO 14577-1:2002(E)標準に準拠してナノインデンテーション試験によりコーティング層の表面で測定されるものを基準とする。
【0223】
多層シートは、一定レベル以上の表面耐久性、耐衝撃特性などを有すると共に、復元率や外力による回復能力に優れ、永久変形が少なく、同時に薄い厚さを有することが良い。このような特徴を総合的に評価するインデックスとして、TR indexが適用可能である。TR indexの単位は[/μm]であり、下記式1で示す。
【0224】
【0225】
前記式1において、HMdは、前記コーティング層の表面で測定した前記多層シートの単位厚さ(1μm)当たりのマルテンス硬度値(N/(mm*μm))であり、CITdは、前記コーティング層の表面で測定した前記多層シートの単位厚さ(1μm)当たりのインデンテーションクリープ値(%/μm)であり、Rcdは、前記コーティング層の表面で測定した前記多層シートの単位厚さ(1μm)当たりの復元率値(%/μm)であり、HITは、前記コーティング層の表面で測定した前記多層シートのインデンテーション硬度(N/mm)である。
【0226】
多層シート100は、コーティング層の表面で測定したTR index(単位:/μm)が0.8以上2以下であってもよい。前記TR indexは2以下であってもよく、1.8以下であってもよく、または1.6以下であってもよい。前記TR indexは0.9以上であってもよく、1以上であってもよく、1.1以上であってもよく、または1.2以上であってもよい。このような範囲のTR index値を有する多層シートは、相対的に薄い厚さを有すると共に、コーティング層の表面が強固であり、永久変形の発生に抵抗する能力に優れ、復元率に優れる。
【0227】
多層シート100は、前記コーティング層の表面で測定したマルテンス硬度HMが180N/mm以上であってもよく、187N/mm以上であってもよく、190N/mm以上であってもよく、192N/mm以上であってもよく、194N/mm以上であってもよく、196N/mm以上であってもよく、または197N/mm以上であってもよい。多層シート100は、前記コーティング層の表面で測定したマルテンス硬度HMが200N/mm以下であってもよい。
【0228】
前記コーティング層の表面で測定した単位厚さ当たりのマルテンス硬度値をHMd(単位:N/(mm*μm))と示す。
【0229】
前記多層シート100のHMd値は、1.3N/(mm*μm)以上であってもよく、1.4N/(mm*μm)以上であってもよく、1.5N/(mm*μm)以上であってもよく、1.6N/(mm*μm)以上であってもよく、1.7N/(mm*μm)以上であってもよく、1.9N/(mm*μm)以上であってもよく、または2.0N/(mm*μm)以上であってもよい。前記多層シート100のHMd値は、3N/(mm*μm)以下であってもよく、または2.5N/(mm*μm)以下であってもよい。このようなHMd値を有する多層シートは、薄いながらも、優れた表面硬度特性を有する。
【0230】
多層シート100は、前記コーティング層の表面で測定したインデンテーションクリープCITが4.3%以下であってもよく、4.2%以下であってもよく、または4.1%以下であってもよい。多層シート100は、前記コーティング層の表面で測定したインデンテーションクリープCITが3.5%以上であってもよい。
【0231】
前記コーティング層の表面で測定した単位厚さ当たりのインデンテーションクリープ値をCITd(単位:%/μm)と示す。
【0232】
前記多層シート100のCITd値は0.05%/μm以下であってもよく、または0.045%/μm以下であってもよい。前記多層シート100のCITd値は0.02%/μm以上であってもよく、または0.025%/μm以上であってもよい。このようなCITd値を有する多層シートは、薄いながらも、外力に対する変形抵抗性に優れる。
【0233】
多層シート100は、前記コーティング層の表面で測定したインデンテーション硬度HIT(単位:N/mm)が370N/mm以下であってもよく、または360N/mm以下であってもよい。多層シート100は、前記コーティング層の表面で測定したインデンテーション硬度HIT(単位:N/mm)が330N/mm以上であってもよく、335N/mm以上であってもよく、または340N/mm以上であってもよい。このような範囲で、保護フィルムとして適用するのに適切な塑性硬度を有することができる。
【0234】
多層シート100は、前記コーティング層の表面で測定した弾性率ηITが62%以上であってもよい。前記弾性率ηITは65%以下であってもよい。
【0235】
多層シート100は、前記コーティング層の表面で測定した復元率(Recovery、%)が68%以上であってもよい。前記復元率は75%以下であってもよく、または73%以下であってもよい。
【0236】
前記コーティング層の表面で測定した単位厚さ(1μm)当たりの多層シート100の復元率値をRcd(%/μm)と示す。
【0237】
前記多層シート100のRcd値は0.4%/μm以上であってもよく、0.5%/μm以上であってもよく、または0.55%/μm以上であってもよい。前記多層シート100のRcd値は1.2%/μm以下であってもよく、1%/μm以下であってもよく、または0.8%/μm以下であってもよい。このような場合、厚さに比べて相対的に優れた復元率を有し、保護フィルムとして適用するのに良い特性を有することができる。
【0238】
多層シート100は、コーティング層10の上面から弾性フィルム42の下面までの長さが500μm以下であってもよく、300μm以下であってもよく、または200μm以下であってもよい。前記長さは70μm以上であってもよい。
【0239】
弾性フィルムと透明フィルムとの厚さの比率は1:0.5~3であってもよく、または1:1~2.8であってもよい。このような厚さの範囲で両フィルムを共に適用する場合、十分な支持特性とベンディング、弾性回復特性などを共に付与するのに良い。
【0240】
弾性フィルムと接着層との厚さの比率は1:0.02~1であってもよく、1:0.02~0.6であってもよく、1:0.02~0.4であってもよく、または1:0.02~0.25であってもよい。このような厚さの比率で前記弾性フィルムと前記接着層を適用する場合、繰り返されるベンディング、フォールディングなどの外力にもかかわらずデラミネーション現象が発生しないようにすることができる。
【0241】
多層シート100は、優れた光学的特性を有することができる。
【0242】
多層シート100は、ヘイズが3%以下であってもよく、2%以下であってもよく、または1%以下であってもよい。前記ヘイズは0%以上であってもよく、または0.5%以上であってもよい。
【0243】
多層シート100は、透過率が88%以上であってもよく、または90%以上であってもよい。前記透過率は99%以下であってもよく、または95%以下であってもよい。前記透過率は、ISO 13468に準拠した全光線透過率を基準とする。
【0244】
多層シート100は、透過黄色度が1以下であってもよく、0.8以下であってもよく、0.65以下であってもよく、または0.6以下であってもよい。前記透過黄色度は0以上であってもよく、または0.3以上であってもよい。
【0245】
多層電子装置200
図3は、他の具現例に係る多層電子装置の構造を断面で説明する概念図である。図3を参照して多層電子装置200を具体的に説明する。
【0246】
多層電子装置200は、多層シート100、及び前記多層シート100の下に配置された発光機能層150を含む。
【0247】
多層シート100は、多層電子装置200のカバー層として適用され得る。
【0248】
多層電子装置200は、例示的にディスプレイ装置であってもよく、例示的に大面積のディスプレイ装置、フォルダブル(foldable)ディスプレイ装置、ベンダブル(bendable)ディスプレイ装置、またはフレキシブル(flexible)ディスプレイ装置であってもよい。また、ベンダブル移動通信装置(例示、携帯電話)またはベンダブルノートパソコンであってもよい。
【0249】
発光機能層150は発光層(図示せず)を含む。
【0250】
発光層は、ディスプレイ装置において信号に従って光を放出する素子を含む。発光層は、例示的に、外部の電気的な信号を発色層に伝達する信号伝達層と、前記信号伝達層上に配置され、与えられた信号に従って発色する発色層と、前記発色層を保護する封止層とを含むことができる。信号伝達層は、薄膜トランジスタ(TFT)を含むことができ、例示的に、LTPS、a-SiTFT、またはOxide TFTが適用されてもよいが、これに限定されない。封止層は、TFE(Thin Film Encapsulation)が適用されてもよいが、これに限定されない。
【0251】
発光層は、支持層(図示せず)上に配置され得る。支持層は、絶縁特性及び耐熱特性を有する層が適用され得、例示的にポリイミドフィルム、ガラス層、PETフィルムなどが適用されてもよい。
【0252】
発光機能層は、センサ層(図示せず)をさらに含むことができる。センサ層としてはタッチセンサなどが適用されてもよい。
【0253】
発光機能層は、偏光層(図示せず)をさらに含むことができる。偏光層は、発光層上に配置されてもよく、またはセンサ層上に配置されてもよい。
【0254】
以下、具体的な実施例を通じてより具体的に説明する。下記の実施例は本発明の理解を助けるための例示に過ぎず、本発明の範囲がこれに限定されるものではない。
【0255】
1.接着組成物の製造
シリコン接着剤として信越(Shinetsu)社のKR-3700;シリコンMQ樹脂として信越社のX-92-128、そして、触媒として白金系触媒である信越社のCAT-PL-50T、溶媒としてトルエンを用意した。接着層用組成物は、下記表1に提示された含量で混合した後に適用された。
【0256】
2.接着層の形成及び硬化した接着層の物性の評価
硬化後の厚さが下記表1に提示された厚さになるように、PETフィルム(SKC社製のNRF等級)上にダイコーティングした後、乾燥させて前駆体層を得た。乾燥及び硬化は、90℃の温度で5分間行われた。
【0257】
接着力テストは、COMETECH社、QC-M1F UTMモデルを活用してT-Peel形式で接着力を測定し、剥離速度は300mm/minを適用した。
【0258】
【0259】
前記表1を参照すると、接着層の厚さを増加させたとき、概ね接合力が強くなる傾向を示し、同じ厚さで比較したとき、1μmを除外すれば、組成の製造例2を適用した接着層の製造例2が全体的に最も優れていた。但し、製造例1及び製造例3の場合も、厚さの変化に応じて優れた接着力を示した。
【0260】
厚さ対比接着力を確認した単位厚さ当たりの接着力値を見ると、全体的に厚さが増加すると、接着力が増加する傾向を示したが、同じ組成物を適用しても、増加する幅は減少する傾向も示した。
【0261】
相対的に薄い厚さで十分な接着力を有する接着層を得ることができるという点を確認した。
【0262】
3.多層シートの製造
SKC社で製造したNRF(Novel Retardation Film)級のPETフィルムをそれぞれ厚さ別に入手し、透明フィルムとして適用した。
【0263】
コーティング層は、下記表2の組成を有するコーティング層製造用組成物をダイコーティング法により透明フィルムの一面にコーティングした。その後、60℃の温度で3分間熱処理して溶媒を乾燥させ、UV光を1J照射して硬化させることによって、厚さ約5μmのコーティング層を形成した。
【0264】
【0265】
接着層が適用されたサンプルは、積層体(透明フィルムの一面上にコーティング層が形成されたもの)の透明フィルムの他面に、上述したものと同一に接着組成物を適用し、乾燥して前駆体層を、これを硬化させて接着層を形成した。組成は、組成の製造例2のものを適用した。
【0266】
弾性フィルムは、SKC社でARKEMA FRANCE社のPEBA樹脂を適用して製造した弾性フィルムを適用した。大韓民国登録特許第10-2286935号に提示された方法により製造するが、弾性フィルムの厚さは、下記表に提示されたように適用した。略述すると、ポリエーテル-ブロック-アミド樹脂(Arkema PebaxTM RnewTM 72R53または55R53、Arkema社)を押出機に入れ、約220℃で溶融混練した後、単層で押出して厚さ約35μmまたは約50μmのPEBAフィルムを製造した。
【0267】
弾性フィルムの一面を前記接着層の他面と接着及び硬化させて、コーティング層-透明フィルム-接着層-弾性フィルムが順次積層されたサンプルを製造した。
【0268】
具体的な層構造及び各層の厚さは、下記表3に示した通りである。
【0269】
【0270】
4.多層シートの物性の評価
(1)光学的特性及び色相
光学的特性及び色相を測定した。ヘイズメーター(NDH-5000W、日本電色(Nippon Denshoku)社)を用いて、フィルムサンプルの可視光平均透過率をISO 13468標準に準拠して測定し、ヘイズをISO 14782標準に準拠して測定した。サンプルの黄色度(YI)は、分光光度計(UltraScan PRO、Hunter Associates Laboratory)によって、D65光源を用いて10°の条件でASTM-E313標準に準拠して測定した。その結果を下記表4に示した。
【0271】
(2)厚さの測定
各層の厚さは、それぞれ、フィルメトリクス(Filmetrics)社のF-20装備を活用して、製造社のマニュアルに従って厚さを測定した。サンプル内の3点~5点で測定した結果を確認し、その平均値を厚さとして取り扱った。
【0272】
(3)フォールディング耐久性の評価
多層シートの実施例は、35μmの厚さの弾性フィルム(SKC社製、アルケマフランス社のPEBA 72R Gradeの樹脂を適用して製造した単層押出フィルム)に接着させた後、動的曲げ評価(Dynamic folding test)を行った。2mmの曲率半径及び2秒/回の曲げの程度で常温(約20℃)で20万回の動的曲げ試験後にクラックの発生の有無を確認した。クラックの発生の有無は目視で観察した。実施例のサンプルの多層シートは、全て目視でクラックの発生が確認されず、良好と評価された。
【0273】
(4)ナノインデンテーション試験
製造されたサンプルに対してナノインデンテーション試験を行った。多層シートのサンプルをA4サイズに裁断し、別途の前処理なしに、試験前まで25±5℃及び50±5%RHで保管した。その後、サンプルに対してナノインデンテーション表面分析器(FISCHERSCOPE HM2000、FISCHER社)を用いて評価した。具体的には、サンプルホルダーとして厚さ約3TのGLASS TEST PLATE(Fischerscope Part no.600-028)上に、サンプルをコーティング層の表面(又はコーティング層がない場合に透明フィルムの表面)が上に来るように(即ち、押し込み面になるように)位置させた。その後、ダイヤモンドチップを用いて、常温で30mNの力で5秒間下方に押し付けた後、5秒間保持(creep)し、再び上方に上昇させながらナノインデンテーション試験を行って、マルテンス硬度(HM)、インデンテーションモジュラス(EIT)、弾性率(ηIT)、インデンテーションクリープ(CIT)、30mNの力での最大変形(hmax(@30mN))、及び復元率(Recovery)を測定した。測定は、ISO 14577-1:2015及び14577-2:2015に準拠して行われた。また、復元率(Recovery)は、下記式によって算出された。
【0274】
Recovery(%)=[(hmax(@30mN)-h)/hmax(@30mN)]×100
【0275】
ここで、hmax(@30mN)は、30mNの力で前記コーティング層の表面を15秒間下方に押し付け、5秒間保持(creep)させる間の最大押し込み深さ(μm)であり、hは、前記力が除去された後にも復元されずに残っている押し込みの深さ(μm)である。
【0276】
評価結果は下記の表4に示した。
【0277】

【0278】
【0279】
前記式1において、HMdは、前記コーティング層の表面で測定した前記多層シートの単位厚さ(1μm)当たりのマルテンス硬度値(N/(mm*μm))であり、CITdは、前記コーティング層の表面で測定した前記多層シートの単位厚さ(1μm)当たりのインデンテーションクリープ値(%/μm)であり、Rcdは、前記コーティング層の表面で測定した前記多層シートの単位厚さ(1μm)当たりの復元率値(%/μm)であり、HITは、前記コーティング層の表面で測定した前記多層シートのインデンテーション硬度(N/mm)である。
【0280】
前記表2及び表3を参照すると、表面の硬度などの特性が、多層シートの構成がどのように積層されるかによっても変わるという点が確認できた。多層シートがディスプレイ素子などのカバーシートなどとして活用度が優れるためには、光学的特性が優れていることは勿論のこと、表面への引っかき傷がつきにくく、強い力に対しても傷が発生するなどの永久変形に抵抗性が大きく、耐衝撃特性も必要であるので、弾性を有する層が一部適用されることが良く、また、圧痕などが容易に発生しないように復元率に優れることが良い。前記サンプル8~19の場合、それぞれ適用されるフィルムの厚さなどによってその値に差はあるが、適切なレベル以上の硬度、インデンテーションクリープ、復元率などを有し、これを通じて、具現例の多層シートがディスプレイの保護シートなどに適用されるのに優れた物性を有するという点を確認することができる。
【0281】
以上、本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲は、これに限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の様々な変形及び改良形態もまた本発明の権利範囲に属する。
【符号の説明】
【0282】
100 多層シート
10 コーティング層
20 透明フィルム
30 接着層
42 弾性フィルム
150 発光機能層
200 多層電子装置
t1 コーティング層の表面の測定点
図1
図2
図3