(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】作業機械の油圧シリンダを制御する方法
(51)【国際特許分類】
F15B 11/02 20060101AFI20240521BHJP
E02F 9/20 20060101ALI20240521BHJP
G05B 13/04 20060101ALI20240521BHJP
G05B 11/36 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
F15B11/02 Z
E02F9/20 H
E02F9/20 Q
G05B13/04
G05B11/36 U
(21)【出願番号】P 2022538142
(86)(22)【出願日】2020-12-16
(86)【国際出願番号】 EP2020086384
(87)【国際公開番号】W WO2021122718
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-07-20
(31)【優先権主張番号】102019220501.1
(32)【優先日】2019-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ニルス シュテーカー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ベンツ
(72)【発明者】
【氏名】オザン デミル
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-183670(JP,A)
【文献】特開2001-142506(JP,A)
【文献】特開2017-009071(JP,A)
【文献】特開2019-157521(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0010966(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/00-11/22;21/14
E03F 3/42- 3/43; 3/84- 3/85; 9/20 -9/22
G05B 1/00- 7/04;11/00-13/04;17/00-17/02;21/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械
の油圧シリンダを制御する方法
であって、
前記油圧シリンダの運動パラメータ目標値(11)を制御ユニット(1)によって受信するステップ(110)と、
前記油圧シリンダに対応付けられたバルブユニットのバルブパラメータ目標値(29)を、受信した前記運動パラメータ目標値(11)に依存して、データに基づくモデル(10)
を用い、かつ、前記バルブパラメータ目標値(29)に対して予め設定された及び/又は予め設定可能な許容範囲を考慮しながら、前記制御ユニット(1)によって求めるステップ(120)と、
前記作業機械
の前記油圧シリンダを制御するために、前記油圧シリンダに対応付けられた前記バルブユニットを、求められた前記バルブパラメータ目標値
(29)に依存して、前記制御ユニット(1)により制御するステップ(130)と、
を含
み、
前記バルブパラメータ目標値(29)を求めるステップ(120)は、バルブパラメータ暫定目標値を求めるステップを含み、前記バルブパラメータ暫定目標値に依存して前記バルブパラメータ目標値(29)を、求められる目標値(27)が前記バルブパラメータ目標値(29)に対して予め設定された及び/又は予め設定可能な許容範囲内にあるように求める、方法
。
【請求項2】
前記許容範囲は、前記バルブパラメータ
目標値(29)に対し許可された値範囲を表し、前記許可された値範囲は、前記運動パラメータ
目標値(11)の値に依存する、
請求項
1に記載の方法
。
【請求項3】
前記許可された値範囲は、さらに
、前記油圧シリンダ及び/又は前記作業機械
の運動パラメータ
の実際値、及び/又は
、圧力及び/又は回転数及び/又は温度の時間導関数の実際値に依存する、
請求項
2に記載の方法
。
【請求項4】
前記バルブパラメータ目標値(29)に対する前記許容範囲を求めるステップを含み、前記許容範囲は、前記油圧シリンダの動作時に予め設定された及び/又は予め設定可能な閾値を超えた頻度によって求められた前記バルブパラメータ
目標値(29)の値を含む、
請求項1乃至
3のいずれか一項に記載の方法
。
【請求項5】
前記バルブパラメータ目標値(29)に対する前記許容範囲は、前記バルブパラメータ
目標値(29)の技術的に実現可能な値範囲の部分範囲である、
請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の方法
。
【請求項6】
前記バルブパラメータ目標値(29)は、さらに
、前記油圧シリンダ及び/又は前記作業機械
の運動パラメータ及び/又は圧力及び/又は回転数及び/又は温度の時間導関数に依存する、
請求項1乃至
5のいずれか一項に記載の方法
。
【請求項7】
作業機械
のアタッチメントを制御する方法であって、前記アタッチメントは、油圧シリンダによって前記作業機械に対し相対的に運動可能である、方法において、
前記アタッチメントの目標ポジションを制御ユニット(1)により受信するステップと、
前記油圧シリンダの運動パラメータ目標値(11)を、受信した前記アタッチメント
の前記目標ポジションに依存して前記制御ユニット(1)により求めるステップと、
前記油圧シリンダに対応付けられたバルブユニットのバルブパラメータ目標値(29)を、受信した前記運動パラメータ目標値(11)に依存して、データに基づくモデル(10)
を用い、かつ、前記バルブパラメータ目標値(29)に対して予め設定された及び/又は予め設定可能な許容範囲を考慮しながら、前記制御ユニット(1)によって求めるステップ(120)と、
前記作業機械
の前記アタッチメントを、前記油圧シリンダの制御によって制御するために、前記油圧シリンダに対応付けられた前記バルブユニットを、求められた前記バルブパラメータ目標値(29)に依存して、前記制御ユニット(1)により制御するステップ(130)と、
を含
み、
前記バルブパラメータ目標値(29)を求めるステップ(120)は、バルブパラメータ暫定目標値を求めるステップを含み、前記バルブパラメータ暫定目標値に依存して前記バルブパラメータ目標値(29)を、求められる目標値(27)が前記バルブパラメータ目標値(29)に対して予め設定された及び/又は予め設定可能な許容範囲内にあるように求める、方法。
【請求項8】
前記バルブパラメータ目標値(29)を求める前記ステップ(120)は、前記作業機械の操作部材
の目標位置(27)を求めるステップを含み、前記バルブパラメータ目標値(29)を、前記操作部材の求められた前記目標位置(27)を用いて求める、
請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記データに基づくモデル(10)は、人工ニューラルネットワーク(10)として構成されている、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
作業機械
の油圧シリンダを制御する制御ユニット(1)であって、当該制御ユニット(1)は、
前記油圧シリンダの運動パラメータ目標値(11)を受信し、
前記油圧シリンダに対応付けられたバルブユニットのバルブパラメータ目標値(29)を、受信した前記運動パラメータ目標値(11)に依存して、データに基づくモデル(10)
を用い、かつ、前記バルブパラメータ目標値(29)に対して予め設定された及び/又は予め設定可能な許容範囲を考慮しながら求め、
前記作業機械
の前記油圧シリンダを制御するために、前記油圧シリンダに対応付けられた前記バルブユニットを、求められた前記バルブパラメータ目標値(29)に依存して制御する
ように構成されて
おり、
前記バルブパラメータ目標値(29)を求めることは、バルブパラメータ暫定目標値を求めることを含み、
前記制御ユニット(1)は、前記バルブパラメータ暫定目標値に依存して前記バルブパラメータ目標値(29)を、求められる目標値(27)が前記バルブパラメータ目標値(29)に対して予め設定された及び/又は予め設定可能な許容範囲内にあるように求めるように構成されている、制御ユニット(1)。
【請求項11】
作業機械
のアタッチメントを制御する制御ユニット(1)であって、前記アタッチメントは、油圧シリンダによって前記作業機械に対し相対的に運動可能である、制御ユニット(1)において、当該制御ユニット(1)は、
前記アタッチメントの目標ポジションを受信し、
前記油圧シリンダの運動パラメータ目標値(11)を、受信した前記アタッチメント
の前記目標ポジションに依存して求め、
前記油圧シリンダに対応付けられたバルブユニットのバルブパラメータ目標値(29)を、受信した前記運動パラメータ目標値(11)に依存して、データに基づくモデル(10)
を用い、かつ、前記バルブパラメータ目標値(29)に対して予め設定された及び/又は予め設定可能な許容範囲を考慮しながら求め、
前記作業機械
の前記アタッチメントを、前記油圧シリンダの制御によって制御するために、前記油圧シリンダに対応付けられた前記バルブユニットを、求められた前記バルブパラメータ目標値(29)に依存して制御する
ように構成されて
おり、
前記バルブパラメータ目標値(29)を求めることは、バルブパラメータ暫定目標値を求めることを含み、
前記制御ユニット(1)は、前記バルブパラメータ暫定目標値に依存して前記バルブパラメータ目標値(29)を、求められる目標値(27)が前記バルブパラメータ目標値(29)に対して予め設定された及び/又は予め設定可能な許容範囲内にあるように求めるように構成されている、制御ユニット(1)。
【請求項12】
前記データに基づくモデル(10)は、人工ニューラルネットワーク(10)として構成されている、
請求項10又は11に記載の制御ユニット(1)。
【請求項13】
アタッチメントと、前記アタッチメントの運動のための少なくとも1つの油圧シリンダと、前記アタッチメントを制御する請求項11に記載の制御ユニット(1)と、を備えた作業機械
。
【請求項14】
請求項1乃至
9のいずれか一項に記載の方法
を実施するために構成されたコンピュータプログラム。
【請求項15】
請求項
14に記載のコンピュータプログラムが記憶されている機械可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項の上位概念に記載の、作業機械の油圧シリンダを制御する方法、及び、作業機械のアタッチメントを制御する方法に関する。本発明の保護対象は、作業機械の油圧シリンダを制御する制御ユニット、及び、作業機械のアタッチメントを制御する制御ユニット、並びに、作業機械及びコンピュータプログラムでもある。
【背景技術】
【0002】
最新の作業機械においては、自動化又は半自動化された作業プロセスが益々用いられるようになってきている。機能の内容は、現在のところ、多くの場合には、ツールセンタポイント(TCP)に対し所望の軌跡を追従すること、又は、アシスト機能の場合には所望の軌跡を追従する際に運転者を支援することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
発明の開示
本発明の保護対象は、作業機械、特に可動型作業機械の油圧シリンダを制御する方法である。
【0004】
この方法は、油圧シリンダの運動パラメータ目標値を制御ユニットによって受信するステップを含む。この方法は、さらに、油圧シリンダに対応付けられたバルブユニットのバルブパラメータ目標値を、受信した運動パラメータ目標値に依存して制御ユニットにより求めるステップを含む。ここで、バルブパラメータ目標値は、データに基づくモデル、特に人工ニューラルネットワークを用い、かつ、バルブパラメータ目標値に対して予め設定された及び/又は予め設定可能な許容範囲を考慮しながら求められる。この方法は、さらに、可動型作業機械の油圧シリンダを制御する目的で、油圧シリンダに対応付けられたバルブユニットを、求められたバルブパラメータ目標値に依存して、制御ユニットにより制御するステップを含む。
【0005】
本発明の保護対象は、さらに、作業機械、特に可動型作業機械の油圧シリンダを制御する制御ユニットであり、制御ユニットは、油圧シリンダを制御する前述の方法のステップを実施又は制御するように構成されている。
【0006】
本発明の保護対象は、作業機械、特に可動型作業機械のアタッチメントを制御する方法でもある。ここで、アタッチメントは、油圧シリンダによって作業機械に対し相対的に運動可能である。
【0007】
この方法は、アタッチメント目標ポジションを制御ユニットによって受信するステップを含む。この方法は、さらに、油圧シリンダの運動パラメータ目標値を、受信したアタッチメント目標ポジションに依存して制御ユニットにより求めるステップを含む。しかも、この方法は、油圧シリンダに対応付けられたバルブのバルブパラメータ目標値を、受信した運動パラメータ目標値に依存して制御ユニットにより求めるステップを含む。バルブパラメータ目標値は、データに基づくモデル、特に人工ニューラルネットワークを用い、かつ、バルブパラメータ目標値に対して予め設定された及び/又は予め設定可能な許容範囲を考慮しながら求められる。この方法は、さらに、可動型作業機械のアタッチメントを油圧シリンダによって制御する目的で、油圧シリンダに対応付けられたバルブユニットを、求められたバルブパラメータ目標値に依存して、制御ユニットにより制御するステップを含む。
【0008】
本発明の保護対象は、これに加えて、作業機械、特に可動型作業機械のアタッチメントを制御する制御ユニットであり、制御ユニットは、アタッチメントを制御する前述の方法のステップを実施又は制御するように構成されている。
【0009】
本発明の保護対象はさらに、アタッチメントと、このアタッチメントの運動のための少なくとも1つの油圧シリンダと、アタッチメントを制御する前述の制御ユニットと、を備えた作業機械、特に可動型作業機械である。
【0010】
本発明の保護対象は、さらに、油圧シリンダを制御する前述の方法及び/又はアタッチメントを制御する前述の方法のうちの一方又は両方を実施及び/又は制御するために構成されたコンピュータプログラムである。
【0011】
作業機械は、定置型作業機械とすることができ、又は、好ましくは可動型作業機械とすることができる。作業機械は、建築業、農業、林業又はロジスティクスの用途のための作業機械とすることができる。可動型作業機械は、例えば、ショベル、ホイールローダ、構内運搬車又は高所作業車とすることができる。定置型作業機械は、例えば、油圧により駆動される産業用ロボットとすることができる。
【0012】
作業機械のアタッチメントは、農業及び/又は林業及び/又は建築業において地面を加工及び/又は処理するためのアタッチメント、及び/又は、荷物を搬送するためのアタッチメントとすることができる。アタッチメントは、例えば、シャベル、スコップ又は作業用ケージとすることができる。アタッチメントは、作業機械の作業アーム、昇降フレーム又は昇降台に配置することができる。
【0013】
油圧シリンダ又はハイドロリックシリンダは、アタッチメントと作業機械との間で相対運動を発生させるように構成されている。この目的において、油圧シリンダは、ハウジング及びピストンを含み得る。ピストンは、油圧液体、好ましくは作動油の圧力印加によって、ハウジングに対し相対的に運動可能であり、特に、ハウジング内に導入及び導出可能である。
【0014】
油圧シリンダに対応付けられたバルブユニットは、作動油に規定どおりに圧力を印加するように構成されている。即ち、油圧シリンダに対応付けられたバルブユニットは、油圧シリンダのピストンとハウジングとの間の相対運動を発生させるように構成されている。
【0015】
バルブユニットは、1つ又は複数のバルブを含み得る。バルブは、マグネットバルブ、又は、ニューマチック式に操作可能なバルブ若しくはニューマチックバルブとして構成することができる。バルブユニットは、特に電磁パイロットバルブと、好ましくはこのパイロットバルブに対応付けられた、特にニューマチック式に操作可能なメインバルブと、を含み得る。
【0016】
バルブユニットの制御によって、油圧シリンダのピストンとハウジングとの間の相対運動を制御することができる。この相対運動によって、アタッチメントにおける油圧シリンダの配置に基づき、アタッチメントと作業機械との間の、特に、アタッチメントと作業機械の作業アーム及び/又は昇降フレームとの間の、相対運動を発生させることができる。
【0017】
制御とは、本発明の関連においては、入力量に基づき出力量を生成するという意味における制御であると解することができる。制御とは、またさらに好ましくは、閉ループ制御すべき量の実際値を継続的に求め、この実際値を閉ループ制御すべき量の目標値と継続的に比較するという意味において、閉ループ制御を含む制御であると解することができる。
【0018】
アタッチメント目標ポジションは、アタッチメントを含む作業機械に対し相対的なアタッチメントの空間相対ポジションとすることができ、又は、外部の基準座標系における空間ポジション、例えば、全地球衛星測位システム若しくはポジション検出センサユニットの基準座標系における空間ポジションとすることができる。アタッチメント目標ポジションは好ましくは、アタッチメントのツールセンタポイント(TCP)の空間ポジションである。アタッチメント目標ポジションは、例えば、作業機械により実施すべき1つの作業プロセスの1つの作業ステップのために予め設定することができる。
【0019】
アタッチメント目標ポジションに依存して運動パラメータ目標値を求めるステップは、アタッチメント又は作業機械のためのソフトウェアに基づく軌跡プラニングによって行うことができる。運動パラメータ目標値を求めるステップは、作業機械のキネマティクスの少なくとも一部分を考慮しながら行うことができる。
【0020】
油圧シリンダの運動パラメータは、油圧シリンダの運動の1つのパラメータである。油圧シリンダの運動は、好ましくは、油圧シリンダのピストンとハウジングとの間の相対運動である。油圧シリンダの運動は、等速運動又は好ましくは等加速運動とすることができる。
【0021】
油圧シリンダの運動パラメータは、速度又は加速度とすることができる。好ましくは、運動パラメータは、油圧シリンダのピストンとハウジングとの間の相対速度又は相対加速度である。
【0022】
運動パラメータ目標値は、運動パラメータの1つの値であり、又は、運動パラメータの値の経時的推移であって、この経時的推移に従って油圧シリンダの運動が行われるべきものである。
【0023】
バルブユニットのバルブパラメータは、バルブユニットの1つ又は複数のバルブのパラメータとすることができる。バルブパラメータは、マグネットバルブのバルブ通電又は電流強度とすることができる。バルブパラメータは、ニューマチック式に操作可能なバルブを操作する圧力とすることもできる。バルブパラメータは、さらに、バルブユニットのバルブのバルブ絞り開口面積とすることができる。
【0024】
データに基づくモデルとは、本発明の関連においては、数学的モデル又は数学的アルゴリズムであると解することができ、このモデル又はアルゴリズムは、入力量として運動パラメータの値が予め与えられると、出力量としてバルブパラメータの値を求めるように構成されている。即ち、換言すれば、データに基づくモデルは、運動パラメータの1つの値にバルブパラメータの1つの値を対応付け若しくは相関させ、又は、運動パラメータの値とバルブパラメータの値とを相互に結合する。バルブパラメータの求められた値は、特に、油圧シリンダの1つ又は複数の他のパラメータの値に依存しており、及び/又は、油圧シリンダと相互作用しているユニットに依存している。
【0025】
データに基づくモデルは、学習データセット又はトレーニングデータセットに基づく。これらのトレーニングデータセットは、運動パラメータ及びバルブパラメータ、並びに、好ましくは1つ又は複数の他のパラメータの値の組合せ、例えば値タプルを含む。トレーニングデータセットは、油圧シリンダの動作時に、例えば、油圧シリンダを含む作業機械の動作時に、求めることができる。トレーニングデータセットは、油圧シリンダの動作時に発生した又は存在する値の組合せに対応するものである。
【0026】
データに基づくモデルは、トレーニングデータセットに基づき、例えば、回帰プロセスを用いることにより、油圧シリンダにより技術的に実現可能な運動パラメータの任意の値各々について、バルブパラメータの値を出力するように構成されている。即ち、換言すれば、データに基づくモデルは、トレーニングデータセットには含まれない値の組合せについても、結合若しくは相関を求めるように、又は、機械学習するように構成されている。好ましくは、データに基づくモデルには、油圧シリンダの物理的技術的なモデルは、予め与えられない。即ち、換言すれば、データに基づくモデルは、機械学習方法を用いて生成されるモデルである。
【0027】
データに基づくモデルの性能の良さ又は品質は、データに基づくモデルにより求められたバルブパラメータ目標値を用いて、油圧シリンダに対応付けられたバルブユニットを制御したときの、予め定められた運動パラメータ目標値と運動パラメータ実際値との間の偏差に依存する。トレーニングデータセットが代表的なものである油圧シリンダの動作領域については、即ち、トレーニングデータセットが十分な個数の関係する値の組合せを含む油圧シリンダの動作領域については、運動パラメータの実際値と予め定められた目標値との間で小さい偏差を予期することができる。
【0028】
トレーニングデータセットが代表的なものではない油圧シリンダの動作領域については、即ち、トレーニングデータセットが十分な個数の関係する値の組合せを含まない油圧シリンダの動作領域については、運動パラメータの実際値と予め定められた目標値との間で大きい偏差が発生する可能性がある。
【0029】
データに基づくモデルは、好ましくは、人工ニューラルネットワークとして構成されている。
【0030】
バルブパラメータの許容範囲は、バルブユニットの制御のために許容又は許可されるバルブパラメータの値範囲を表す。有利には、バルブパラメータ目標値に対する許容範囲は、バルブパラメータの技術的に実現可能な又は考えられる値範囲のうちの部分範囲である。例えば、バルブパラメータの技術的に可能な値範囲は、バルブ通電のための第1の電流強度最小値以上かつ第1の電流強度最大値以下の電流強度を含む電流強度範囲とすることができる。許容範囲は、バルブ通電のための第2の電流強度最小値以上かつ第2の電流強度最大値以下の電流強度を含む電流強度範囲とすることができ、ここで、第2の最小値は第1の最小値以上であり、第2の最大値は第1の最大値以下であり、両方の最大値及び両方の最小値が等しいことは除外される。この構成によって、バルブパラメータ目標値を技術的に可能な値範囲の部分集合に制限することができ、これによって、油圧シリンダ、特に作業機械の油圧シリンダの確実な動作状態を保証することができる。
【0031】
当該方法及び対応する制御ユニットにより、油圧シリンダ又は油圧シリンダによって運動可能なアタッチメントの自動化された制御における安全性及び信頼性が高められる。データに基づくモデルを用いることによって、手間をかけることによってしか十分に細分化して物理的技術的にモデリングすることができない複雑な油圧特性を有する作業機械のためにも、当該方法を用いることができる。バルブパラメータ目標値を求める際に許容範囲を考慮することによって、油圧シリンダ又はアタッチメントが常に、即ち、滅多にない動作状態においても、安全な値範囲内において駆動されることが保証される。これによって、部分的に又は完全に自動化された作業機械のために、データに基づく閉ループ制御ストラテジの安全性を高めることができる。
【0032】
バルブパラメータ目標値を求めるステップは、バルブパラメータ暫定目標値を求めるステップを含み、この暫定目標値に依存してバルブパラメータ目標値を、求められた目標値がバルブパラメータ目標値に対して予め設定された及び/又は予め設定可能な許容範囲内にあるように求めるものとすると、有利である。好ましくは、第1のステップにおいてバルブパラメータ暫定目標値が求められ、次いで第2のステップにおいてバルブパラメータ目標値が求められる。
【0033】
バルブパラメータ暫定目標値は、バルブパラメータ目標値に対する許容範囲内又は許容範囲外にあるバルブパラメータの値となる可能性がある。好ましくは、バルブパラメータ目標値は、バルブパラメータ暫定目標値が許容範囲内にあるときには、バルブパラメータ暫定目標値と一致する。
【0034】
バルブパラメータ暫定目標値が許容範囲外にあるときには、目標値を求める際にバルブパラメータ暫定目標値を変更又は整合又は訂正することができる。ここで考えられることは、求められる目標値は、運動パラメータの受信した又は予め定められた目標値に関して暫定目標値に対し最もわずかな間隔を有する、バルブパラメータの許容範囲の値と一致するということである。
【0035】
この構成によって、許容範囲外の暫定目標値は、バルブユニットの制御に用いられることはなく、これによって、危険な動作状態を回避することができる。
【0036】
許容範囲は、バルブパラメータに対し許可された値範囲を表し、この許可された値範囲、特に、許可された値範囲のサイズは、運動パラメータの値に依存すると、同様に有利である。許可された値範囲のサイズ又は幅は、運動パラメータのすべての値について同一に、又は、好ましくはそれぞれ異なるサイズとすることができる。バルブパラメータの値範囲のサイズは、値範囲の幅とすることができる。ここで考えられることは、値範囲のサイズは、値範囲の最大値と値範囲の最小値との間の差分を表すということである。
【0037】
許可された値範囲、特に、許可された値範囲のサイズが、さらに、油圧シリンダ及び/又は作業機械の他のパラメータの実際値に依存するものとすると、有利である。他のパラメータは、運動パラメータの時間導関数に対応させることができる。他のパラメータは、圧力とすることができ、例えば、油圧シリンダの作動油の圧力とすることができる。他のパラメータは、油圧シリンダの作動油の温度であるということも考えられる。さらに、他のパラメータは、作業機械のモータの回転数であるということが考えられる。
【0038】
他のパラメータの実際値は、運動パラメータの定義された値、及び/又は、バルブパラメータの定義された値、及び/又は、データに基づくモデルにより考慮される他のパラメータの少なくとも1つの他の定義された値に関する、複数のトレーニングデータセットを表すということが考えられる。例えば、多数のトレーニングデータセットを有する運動パラメータのある1つの値に対する許容範囲のサイズは、それよりもわずかな個数のトレーニングデータセットを有する運動パラメータのある1つの値に対するものよりも、大きくすることができる。
【0039】
この構成によって、種々の運動パラメータに対するデータに基づくモデルの性能の良さ又は品質に依存して、許容範囲を整合させることができ、これによって、動作の安全性を保証しながら油圧シリンダ又は作業機械の制御の効率が高められる。
【0040】
当該方法は、バルブパラメータ目標値に対する許容範囲を求めるステップを含み、この許容範囲は、油圧シリンダの動作時に予め設定された及び/又は予め設定可能な閾値を超えた頻度によって求められたバルブパラメータの値を含むと、さらに有利である。この目的において、油圧シリンダの動作中に、バルブパラメータ及び運動パラメータの値並びにこれらの値の発生頻度を求めることができる。閾値は、絶対的に、又は、バルブパラメータの値の発生頻度の平均値若しくは最大値に対して相対的に、求めることができる。好ましくは、閾値は、運動パラメータの値が大きくなるにつれて増加する。これによって、許容範囲の幅は、運動パラメータの値がより大きくなると、安全上の理由から小さくなる。
【0041】
油圧シリンダの動作時、バルブパラメータの各値について、運動パラメータの少なくとも1つの対応する値が高められた確率で発生する。バルブパラメータの各値について、油圧シリンダ動作時に最も高い値発生頻度を有する個々の運動パラメータの値は、運動パラメータの理想値又は優勢値を表すことができる。運動パラメータの理想値又は優勢値は、油圧シリンダの定常状態、又は、運動パラメータの値の経時的変化が発生しない油圧シリンダの状態における、運動パラメータの値に対応するものとすることができる。運動パラメータの値の経時的変化が発生する可能性がある油圧シリンダの遷移状態においては、運動パラメータの理想値とは異なる運動パラメータの値も、それ相応に低くなった発生頻度で発生する可能性がある。
【0042】
この構成によって、当該方法を実施する前に特に簡単な方法により許容範囲を求めることができる。さらに、これによって、油圧シリンダ及び作業機械の制御が、センサの故障に対してロバストにもなり、その理由は、許容範囲が当該方法の実施前に求められた値に基づいており又はオフラインにおいて求められており、当該方法の実行時に検出された測定信号には依存しないからである。
【0043】
しかも、バルブパラメータ目標値がさらに、油圧シリンダ及び/又は作業機械の少なくとも1つの他のパラメータに、特にその値に、依存して求められるものとすると、有利である。他のパラメータは好ましくは、運動パラメータとは異なるパラメータである。他のパラメータは、運動パラメータの時間導関数に対応させることもできる。他のパラメータは、圧力とすることができ、例えば、油圧シリンダの作動油の圧力とすることができる。他のパラメータは、好ましくは、油圧シリンダのピストン側における圧力と、油圧シリンダのロッド側における圧力との間の圧力差分である。選択的に又は付加的に、他のパラメータは、油圧シリンダに対応付けられたロードセンシングシステムのLS圧力(ロードセンシング圧力)と、ポンプユニットから作動油の圧力印加のために供給される圧力との間の差分である。
【0044】
他のパラメータは、油圧シリンダの作動油の温度であるということも考えられる。さらに、他のパラメータは、作業機械のモータの回転数であるということが考えられる。
【0045】
1つ又は複数の他のパラメータは、好ましくは、データに基づくモデルが基礎とするトレーニングデータセットの値の組合せに含まれる。即ち、換言すれば、データに基づくモデルは、好ましくは、運動パラメータの値と他のパラメータの値とから成る組合せに、バルブパラメータの1つの値を対応付ける。この構成によって、運動パラメータの値の経時的変化が発生する遷移動作領域においても、バルブパラメータ目標値を改善された精度で求めることができる。
【0046】
さらに、バルブパラメータ目標値を求めるステップは、作業機械の操作部材、特にジョイスティックの目標位置を求めるステップを含み、バルブパラメータ目標値を、操作部材の求められた目標位置を用いて求めるものとすると、有利である。操作部材の目標位置は、データに基づくモデル、特に人工ニューラルネットワークを用い、かつ、バルブパラメータ目標値に対して予め設定された及び/又は予め設定可能な許容範囲を考慮しながら、運動パラメータの受信した目標値に依存して求められる。
【0047】
操作部材は、油圧シリンダの運動を制御する手段として用いられる。作業機械の操作部材の目標位置は、操作部材の目標ポジション又は目標状態とすることができる。油圧シリンダを動作させるために、操作部材の位置又はポジション又は状態に依存して、油圧シリンダに対応付けられたバルブユニットが制御される。この目的において、操作部材の各位置にそれぞれ、バルブユニットを制御する制御信号又はバルブユニットの状態が対応付けられている。
【0048】
この構成によって、運動パラメータ目標値に最初に、操作部材の目標位置を割り当てることができ、それによって、バルブユニットの制御は、既に作業機械に設けられているソフトウェア及びハードウェアに基づき、操作部材の位置に依存して行うことができる。
【0049】
プログラムコードを備えたコンピュータプログラム製品又はコンピュータプログラムも有利であり、このプログラムコードは、半導体メモリ、ハードディスク記憶装置又は光学記憶装置といった機械可読担体又は機械可読記憶媒体に記憶させることができ、特に、プログラム製品又はプログラムがコンピュータ又は装置において実行されるときに、これまで述べてきた実施形態のうちの1つによる方法のステップを実施、実装及び/又は制御するために、このプログラムコードを用いることができる。
【0050】
次に、本発明について添付の図面に基づき例示的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】油圧シリンダを制御する制御ユニットを概略的に示す図である。
【
図2】作業機械のアタッチメントをデータに基づき閉ループ制御する様子を概略的に示す図である。
【
図3】ショベルの操作部材のポジションの頻度を、ショベルの油圧シリンダ目標速度に依存して示す図である。
【
図4】可動型作業機械の油圧シリンダを制御する方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1には、作業機械、例えばショベルの油圧シリンダを制御する制御ユニット1が概略的に示されている。
【0053】
制御ユニット1は、人工ニューラルネットワーク10として構成されたデータに基づくモデル10と、記憶ユニット20と、制限ユニット26と、算出ユニット30とを含む。制御ユニット1は、油圧シリンダの相対速度11として形成された運動パラメータ目標値11に応答して、ショベルのアタッチメントを制御する操作部材の目標位置27又は位置目標値27を求めるように構成されている。制御ユニット1は、さらに、操作部材の目標位置27に基づき、油圧シリンダに対応付けられたバルブユニットのバルブパラメータ目標値29を求めるように構成されており、これにより、求められたバルブパラメータ目標値29に依存して油圧シリンダに対応付けられたバルブユニットを制御することによって、油圧シリンダが制御される。
【0054】
人工ニューラルネットワーク10は、油圧シリンダの相対速度目標値11を受信するように構成されている。さらに人工ニューラルネットワーク10は、圧力差分13、15の実際値を受信するように構成されている。圧力差分13は、好ましくは、油圧シリンダのピストン側における圧力と、油圧シリンダのロッド側における圧力との間の圧力差分である。圧力差分15は、油圧シリンダに対応付けられたロードセンシングシステムのLS圧力(ロードセンシング圧力)と、ポンプユニットから作動油の圧力印加のために供給される圧力との間の差分である。
【0055】
しかも人工ニューラルネットワーク10は、受信した値11、13、15に基づき、操作部材の目標位置暫定値21を求めるように構成されている。これに加えて、人工ニューラルネットワーク10は、以下のような係数23、即ち、値11、13、15により特定された油圧シリンダ動作領域における人工ニューラルネットワーク10の品質に対する尺度を表す係数23の、1つ又は複数の値を出力するように構成されている。トレーニングデータセットが多い動作領域においては、この係数は、データに基づくモデルの品質がより高いことからトレーニングデータセットがより少ない動作領域よりも、この領域においては、データに基づくモデルの品質がより低いゆえに、より大きい値を取り得る。
【0056】
記憶ユニット20は、相対速度11と操作部材の理想位置又は優勢位置25とによる少なくとも1つの特性曲線を含み、これについては、
図3を参照されたい。記憶ユニット20は、油圧シリンダの相対速度目標値11に応答して、操作部材の理想位置又は優勢位置25の値を出力するように構成されている。
【0057】
制限ユニット26は、操作部材の目標位置暫定値21と、操作部材の理想位置25と、係数23とに応答して、操作部材の位置目標値27を出力するように構成されている。この目的において、制限ユニット26は、操作部材の理想位置25の値と係数23とに基づき、操作部材の位置目標値27に対する許容範囲の幅を求めるように構成されている。この許容範囲は、係数23だけ減少させられた理想位置25の値から、係数23だけ増加させられた理想位置25の値まで拡大している。
【0058】
しかも、制限ユニット26は、操作部材の位置目標値27を求める際に、この許容範囲を考慮するように構成されている。この目的において、制限ユニットは、操作部材の位置暫定目標値21が求められた許容範囲内にあるのか許容範囲外にあるのかを求めるように構成されている。操作部材の位置暫定目標値21が許容範囲内にある場合には、目標位置27の値は位置暫定目標値21と一致する。操作部材の位置暫定目標値21が許容範囲外にある場合には、操作部材の位置の目標値27は、油圧シリンダの位置暫定目標値21に対し最小間隔を有する許容範囲の値と一致する。
【0059】
算出ユニット30は、可動型作業機械の油圧シリンダを制御する目的で、操作部材の求められた位置目標値27に応答して、油圧シリンダに対応付けられたバルブユニットのバルブパラメータ目標値29を求め、求められたバルブパラメータ目標値29に依存してバルブユニットを制御するように構成されている。
【0060】
図2には、閉ループ制御ユニット2を用いて、作業機械、特にショベルのアタッチメントをデータに基づき閉ループ制御する様子が概略的に示されている。この閉ループ制御は、
図1と同様に可動型作業機械の油圧シリンダの、モデルに基づく速度閉ループ制御を含む。油圧シリンダは、作業機械の作業アームに配置されたアタッチメントの運動を発生させるように構成されており、その際に作業機械の作業アームのジョイント同士のジョイント角が変化させられる。
【0061】
閉ループ制御ユニット2は、姿勢コントローラ32(“pose controller”)、インバースキネマティクス34(“inverse kinematics”)、速度コントローラ36(“velocity controller”)、被制御系38、フォワードキネマティクス40(“direct kinematics”)、1つ又は複数のセンサ42(“sensors”)、及び、モデルに基づくフィルタ44(“modell based filter”)を含む。
【0062】
姿勢コントローラ32は、軌跡生成のための算出ユニット30(“trajectory generator”)により生成された、作業機械におけるアタッチメントのツールセンタポイント(TCP)目標座標31と、受信したTCP実際座標41との差分に応答して、TCP目標速度33を求めるように構成されている。
【0063】
インバースキネマティクス34は、求められたTCP目標速度33に応答して、ジョイント角速度目標値35、又は、作業機械の油圧シリンダ速度目標値35を求めるように構成されている。
【0064】
速度コントローラ36は、求められたジョイント角速度目標値35に応答して、又は、求められた油圧シリンダ速度目標値35に応答して、調整量目標値37を求めるように構成されている。
【0065】
この目的において、速度コントローラ36は、被制御系38の反転挙動36a(“inverse manipulator behaviour”)及びフィードバック制御装置36b(“Feedback Controller”)を含む。
【0066】
被制御系38の反転挙動36aは、データに基づくモデル10’として、この実施例においては人工ニューラルネットワーク10’として形成されており、求められた速度目標値35と受信した圧力差分51とに応答して、調整量37を出力するように構成されている。圧力差分51は、油圧シリンダのピストン側における圧力と油圧シリンダのロッド側における圧力との間の圧力差分、及び、油圧シリンダに対応付けられたロードセンシングシステムのLS圧力(ロードセンシング圧力)とポンプユニットから作動油の圧力印加のために供給される圧力との間の差分を表す。
【0067】
フィードバック制御装置36bは、求められた速度目標値35、及び、ジョイント角速度実際値45又は油圧シリンダ速度実際値45に応答して、目標値35と実際値45との間の差分又は偏差に基づき、調整量37を整合させるように構成されている。
【0068】
被制御系38は、求められた調整量目標値37に応答し、その結果として、ジョイントの角度実際値39、又は、油圧シリンダのポジション実際値若しくはセッティングポジション実際値39が発生する。
【0069】
被制御系38は、バルブダイナミック38a(“valve dynamics”)、バルブジオメトリ38b(“valve geometry”)、バルブ横断面38c(“valve cross section”)、及び、油圧シリンダ38d(“hydraulic cylinder”)を含む。被制御系38は、ショベルに配置された油圧シリンダを表し、これはアタッチメントを制御するように構成されている。
【0070】
油圧シリンダに対応付けられたバルブのバルブダイナミック38aに基づき、調整量37に対応するバルブのバルブスプールポジション55まで、バルブが制御される。
【0071】
バルブのバルブジオメトリ38bに基づき、バルブは、結果としてバルブスプールポジション55において、バルブの調量オリフィス絞り横断面57を生じさせる。
【0072】
バルブのバルブ横断面38cと圧力差分51とに基づき、この調量オリフィス絞り横断面57により、結果として、バルブにおける作動油の実際体積流59が発生する。
【0073】
油圧シリンダ38dは、作動油の求められた実際体積流59と、油圧シリンダ38dに作用する負荷力53とに応答して、ジョイント角実際値39又は油圧シリンダの位置実際値を調整するように構成されている。
【0074】
フォワードキネマティクス40を介して、ジョイント角実際値39又は油圧シリンダ速度実際値39から、TCP実際座標41が得られる。
【0075】
1つ又は複数のセンサ42は、これらのTCP実際座標41を検出するように構成されている。さらに、これらのセンサは、検出された実際座標を電子的に処理可能な信号43に変換するように構成されている。
【0076】
モデルに基づくフィルタ44は、センサ42の電子的に処理可能な信号43を解析して、TCP実際座標41、ジョイント角実際値39又は油圧シリンダのポジション実際値39、及び、ジョイント角速度実際値45又は油圧シリンダ速度実際値45を求めるように構成されている。モデルに基づくフィルタ44は、さらに、求められたTCP実際座標41を姿勢コントローラ32に、求められたジョイント角実際値39をインバースキネマティクス34に、また、求められたジョイント角速度実際値45を速度コントローラ36に、供給するように構成されている。
【0077】
これまで述べてきた閉ループ制御のために、閉ループ制御実施前に人工ニューラルネットワーク10’がトレーニングされる。
【0078】
人工ニューラルネットワーク10’は、調整量37、圧力差分51及びジョイント角実際値39と人工ニューラルネットワーク10’により求められたジョイント角63との間の差分61、又は、油圧シリンダのポジション実際値39と人工ニューラルネットワーク10’により求められた油圧シリンダのポジション実際値63との間の差分に応答して、機械学習するように構成されている。即ち、人工ニューラルネットワーク10’は、差分61が可能な限りわずかであるように、好ましくはゼロであるように、機械学習するように構成されている。
【0079】
図3には、ショベルの操作部材のポジションの頻度が、ショベルの油圧シリンダ目標速度に依存して示されている。この図面は、ショベル動作時に検出された測定データに基づいている。
【0080】
図3の横軸には、ジョイスティックとして構成された操作部材の位置又はセッティングポジションxが記入されている。
図3の縦軸には、油圧シリンダの相対速度vが記入されている。
【0081】
グレーレベルにより相対頻度が記入されており、ショベル動作時にこの頻度で、セッティングポジションxと相対速度vとの対応する値の組合せが発生している。値の組合せの発生頻度は、
図3の場合においては、黒から白に向かって、又は、暗から明に向かって、高くなっている。即ち、ある1つの値の組合せは、この値の組合せに対応する
図3中のポイントが明るく描かれていればいるほど、頻度が高くなっている。
【0082】
図3から明らかにされていることは、著しく明るいポイントに対応して、ジョイスティックのセッティングポジション各々について、発生確率が明らかに高くなっている優勢速度が発生しているということである。この速度を理想速度とみなすこともできる。優勢速度を中心に速度軸に対し平行に、ばらつきの形態であると捉えることができる領域又は帯域を識別することができる。このばらつき又はこの領域は、理想のショベルにおいては存在しない。理想の作業機械の場合には、各ジョイスティックポジションを1つの速度に一義的に対応付けることができる一方、作業機械の対応するポンプの制御によって、負荷力の作用が最適に補償される。
【0083】
この意味において領域又は帯域の幅は、理想的なハイドロリクスからのショベル油圧システムの偏差に対する尺度である。好ましくは、優勢速度は、油圧シリンダが定常状態において到達する速度でもあり、他方、遷移領域においては、例えば、圧力形成中/加速プロセス中においては、異なる速度も発生する。
【0084】
図4には、可動型作業機械の油圧シリンダを制御する方法のフローチャートが示されている。この方法には、その全体として、参照符号100が付されている。
【0085】
ステップ110において、油圧シリンダの運動パラメータ目標値が、可動型作業機械の制御ユニットによって受信される。
【0086】
ステップ120において、油圧シリンダに対応付けられたバルブユニットのバルブパラメータ目標値が、受信した運動パラメータ目標値に依存して求められる。バルブパラメータ目標値は、データに基づくモデル、特に人工ニューラルネットワークを用い、かつ、バルブパラメータ目標値に対して予め設定された及び/又は予め設定可能な許容範囲を考慮しながら、制御ユニットによって求められる。
【0087】
ステップ130において、可動型作業機械の油圧シリンダを制御する目的で、油圧シリンダに対応付けられたバルブユニットが、求められたバルブパラメータ目標値に依存して、制御ユニットにより制御される。
【0088】
ある1つの実施例に、第1の特徴と第2の特徴との「及び/又は」結合が含まれている場合には、このことは、この実施例は、ある1つの実施形態によれば、第1の特徴も第2の特徴も有し、他の実施形態によれば、第1の特徴だけ又は第2の特徴だけを有するということであると解釈されたい。