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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】射出成形システム
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/84 20060101AFI20240521BHJP
   B29C 45/76 20060101ALI20240521BHJP
   B29C 45/42 20060101ALI20240521BHJP
   B22D 17/32 20060101ALI20240521BHJP
   B22D 46/00 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
B29C45/84
B29C45/76
B29C45/42
B22D17/32 J
B22D46/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022547551
(86)(22)【出願日】2021-09-03
(86)【国際出願番号】 JP2021032401
(87)【国際公開番号】W WO2022054704
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-04-05
(31)【優先権主張番号】P 2020150668
(32)【優先日】2020-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】長野 泰昌
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-007099(JP,A)
【文献】特開2017-205932(JP,A)
【文献】特開2014-108515(JP,A)
【文献】特開2001-154717(JP,A)
【文献】特開2004-066682(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00 - 45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形機と、
該射出成形機の外部または内部に設置され、前記射出成形機により製造された成形品を金型から取り出すためのハンドを先端に有する協働ロボットと、
該協働ロボットを制御する制御装置とを備え、
該制御装置が、前記射出成形機の稼働に先立って、該射出成形機内の少なくとも前記金型が設置されている空間内において前記協働ロボットを動作させ、該協働ロボットまたは該協働ロボットの先端に取り付けた前記ハンドの物体との接触が検出された場合に、前記射出成形機に対し稼働不可の信号を送る射出成形システム。
【請求項2】
前記制御装置が、予め設定された経路に従って前記協働ロボットを動作させ、前記経路の終了までに前記物体との接触が検出されなかった場合に、前記射出成形機に対し稼働可能の信号を送る請求項1に記載の射出成形システム。
【請求項3】
前記射出成形機は、前記制御装置からの稼働可能の信号を受け取った場合に、自動的に稼働する請求項2に記載の射出成形システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記空間内の部材の配置を記憶し、記ている前記部材の配置に基づいて、前記経路を生成する請求項2に記載の射出成形システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記空間内において前記協働ロボットを動作させ、該協働ロボットまたは前記ハンドとの接触により前記部材の配置を検出する請求項4に記載の射出成形システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、射出成形システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
安全ドア内に作業員が取り残されていないことを検知するために、少なくとも、安全ドアの開動作によって開口する側の領域にライトカーテンを配置した射出成形システムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-205932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ライトカーテンは光学センサであるため、周囲の環境変化(照度変化)によりうまく検出できない場合がある。また、ライトカーテンが作業者を検出した場合、射出成形機の外部から内部に移動する作業者が検出されたのか、射出成形機の内部から外部に移動する作業者が検出されたのかの区別を他の方法によって管理する必要がある。
したがって、射出成形機の稼働前に、射出成形機内に作業者がいないことを、より簡易にかつ、より確実に確認することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、射出成形機と、該射出成形機の外部または内部に設置され、前記射出成形機により製造された成形品を金型から取り出すためのハンドを先端に有する協働ロボットと、該協働ロボットを制御する制御装置とを備え、該制御装置が、前記射出成形機の稼働に先立って、該射出成形機内の少なくとも金型が設置されている空間内において前記協働ロボットを動作させ、該協働ロボットまたは該協働ロボットの先端に取り付けたハンドの物体との接触が検出された場合に、前記射出成形機に対し稼働不可の信号を送る射出成形システムである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本開示の一実施形態に係る射出成形システムを示す正面図である。
図2図1の射出成形システムに備えられる射出成形機において、協働ロボットが物体検出動作を行う領域の一例を示す正面図である。
図3図2の物体検出動作における協働ロボットの動作軌跡の一例を示す平面図である。
図4図1の射出成形システムの動作を説明するフローチャートである。
図5図2の射出成形システムの射出成形機において、協働ロボットが物体検出動作を行う領域の他の例を説明する正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示の一実施形態に係る射出成形システム1について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る射出成形システム1は、図1に示されるように、射出成形機2と、射出成形機2の外部に設置された協働ロボット3と、該協働ロボット3を制御する制御装置4とを備えている。
【0008】
射出成形機2は、床面Fに設置される機台5と、機台5の上に設置された射出部6および型締部7とを備えている。射出部6は、型締部7に備えられた金型8,9のキャビティ内に溶融樹脂を射出する。
【0009】
型締部7は、機台5に固定され一方の金型8を支持する固定プラテン10と、固定プラテン10に対して水平方向に移動可能に配置され他方の金型9を支持する可動プラテン11とを備えている。可動プラテン11は、水平方向に延びる4本のタイバー12によって、固定プラテン10に対して水平方向に移動可能に支持されている。
【0010】
固定プラテン10と可動プラテン11とが近接させられることにより、一対の金型8,9が組み合わせられ、金型8,9間にキャビティが構成される。また、キャビティ内に溶融樹脂が射出されて成形品が成形された後、固定プラテン10に対して可動プラテン11を離れる方向に移動させることにより、金型8,9が開かれて、金型8,9内から成形品を取り出すことができる。
【0011】
型締部7は、外周の少なくとも一部を覆うカバー13と、開閉可能な安全ドア14とを備えている。図中符号15は、安全ドア14を水平方向に駆動するガイド装置である。図2に示されるように、安全ドア14を開くことにより、カバー13の内部に配置された固定プラテン10、可動プラテン11および一対の金型8,9を外部から視認することができる。
【0012】
射出成形機2を稼働する際には、図1に示されるように、安全ドア14を閉方向に移動させて閉じることにより、射出成形機2内部の固定プラテン10、可動プラテン11および一対の金型8,9と作業者との接触が制限される。また、インサート成形を行うために金型8,9に部品をセットする場合、あるいは、成形品を金型8,9から取り出す場合には、図2に示されるように、安全ドア14を開方向に移動させて開く。これにより、水平方向に離れた状態の一対の金型8,9をカバー13の外部に露出させることができる。
【0013】
協働ロボット3は、例えば、垂直6軸多関節型ロボットであり、射出成形機2の外部の、安全ドア14に近接する位置に設置されている。協働ロボット3の動作範囲は、射出成形機2の外部および内部に及んでいる。協働ロボット3の手首16の先端には、ツール、例えば、射出成形機2により製造された成形品を金型8,9から取り出すためのハンド17が備えられている。
【0014】
協働ロボット3は、図示しない6軸の力センサを内蔵しており、協働ロボット3の表面あるいはハンド17に、作業者あるいは外部の物体が接触した場合には、力センサによる検出値が変動するので、何らかの物体が接触したことを検出することができる。協働ロボット3は、十分に低速で動作させられ、力センサにより接触が検出された場合には停止あるいは減速するよう制御される。
【0015】
制御装置4は、予め教示されたプログラムを記憶するメモリ(記憶部)と、メモリに記憶されているプログラムに従って協働ロボット3を動作させる少なくとも1つのプロセッサとを備える。プロセッサは、メモリに記憶されているプログラム、すなわち金型8,9が設置されている空間内の部材の配置に基づいて、経路を生成する。また、制御装置4は、図4に示されるように、射出成形機2からの安全ドア14の開信号および金型8,9の開信号を受け取って、協働ロボット3を動作させる(ステップS1)。
【0016】
本実施形態に係る射出成形システム1においては、射出成形機2を稼働する前、すなわち射出成形機2による射出成形動作が開始される前に、制御装置4が協働ロボット3に物体検出動作を実施させる(ステップS2)。物体検出動作は、メモリに記憶されているプログラムに従って協働ロボット3を制御して、射出成形機2内部の空間における予期しない物体の有無を検出させる動作である。
【0017】
具体的には、物体検出動作は、制御装置4が、例えば、図3に示される経路Xに沿ってハンド17に設定したツール先端点(TCP)を移動させる協働ロボット3の動作である。この経路Xに従ってTCPを移動させることにより、機台5の上面と金型8,9の下方のタイバー12との間に水平方向に広がる空間の内面に対して微小隙間を空けたほぼ全領域Aに、協働ロボット3のアーム18、手首16あるいはハンド17を通過させることができる。
【0018】
制御装置4は、力センサからの信号に基づいて、物体検出動作中に、協働ロボット3が何らかの物体との接触を検出したか否かを判定する(ステップS3)。接触を検出したと判定された場合には、制御装置4は、射出成形機2に対して、稼働不可信号を送信し(ステップS4)、処理を終了する。
【0019】
ステップS3において、接触が検出されていないと判定された場合には、物体検出動作が終了するまでステップS3の工程を繰り返す(ステップS5)。物体検出動作が終了するまで、協働ロボット3が何らかの物体との接触が検出されなかった場合には、制御装置4は、射出成形機2に対して、稼働可能信号を送信し(ステップS6)、処理を終了する。
【0020】
射出成形機2は、制御装置4から稼働不可信号が送られてきたときには、射出成形動作を開始しない。一方、射出成形機2は、制御装置4から稼働可能信号が送られてきたときには、射出成形動作を自動的に開始する。
【0021】
このように構成された本実施形態に係る射出成形システム1の作用について説明する。
本実施形態に係る射出成形システム1によれば、射出成形機2による射出成形動作に先立って、協働ロボット3が金型8,9の配置されている空間内で動作させられる。
【0022】
協働ロボット3は、図3に示されるように、金型8,9の配置されている空間を平面視したときに、空間の内面の近傍を除くほぼ全領域を、アーム18、手首16あるいはハンド17が通過する経路Xに沿って動作させられるので、空間内の物体の有無を検出することができる。これにより、作業者や予期しない物体が空間内に残ったまま、射出成形機2が稼働することをより確実に防止できるという利点がある。
【0023】
すなわち、協働ロボット3自体または協働ロボット3に取り付けたハンド17により空間内の物体に直接触って検出するので、光学センサによる場合とは異なり、照明の変化によっても精度よく検出することができる。また、協働ロボット3によって空間内における物体の存在を検出するので、ライトカーテンのように、物体の空間内への出入を別途管理する必要がない。
【0024】
なお、本実施形態においては、協働ロボット3として、6軸多関節型ロボットを例示したが、ロボットの形式はこれに限定されるものではなく、任意の形式のロボットを採用してもよい。
また、協働ロボット3を動作させる空間内の領域Aとして、金型8,9が配置されている空間の下部のみにおいて動作させることを例示した。検出すべき物体が作業者である場合、作業者は、通常、機台5の上面に足をつけて作業を行うため、機台5の上面に近い下部のみにおいて協働ロボット3を動作させることにより、作業者の有無を効率的に検出することができる。
【0025】
これに代えて、空間内の下部のみならず、アーム18、手首16あるいはハンド17を挿入可能な空間内の領域Aよりも広い領域において協働ロボットを動作させることにしてもよい。これによれば、作業者がタイバー12に乗るなど、床面Fから足を離していても、あるいは、稼働時には除去すべき治具あるいは検査装置等の物体が金型8,9等に装着されたままの状態となっている場合にもこれを検出することが可能となる。
【0026】
また、本実施形態においては、金型8,9が配置される空間として、機台5の上方の空間を例示した。これに加えて、図5に示されるように、機台5内部の空間が型締部7内の空間と連続している場合には、機台5内部の空間においても協働ロボット3を動作させることにしてもよい。
成形品をバラ落としする際に、成形品を格納する容器あるいは搬送するコンベア等を置くスペースとして、製品落下口エリアBを機台5内部に設けることがある。機台5内部の空間においても協働ロボット3に物体検出動作を実施させることにより、射出成形機2の稼働前に製品落下口エリアBにおいて作業していた作業者が、射出成形機2の稼働中に誤って型締部7内の空間に入ってしまうことを確実に防止することができる。
【0027】
また、本実施形態においては、物体検出動作を、教示により予めメモリに記憶しておくことにしてもよい。また、金型8,9の配置されている空間あるいは機台5内部の空間における安全が確認されている状態で、協働ロボット3を動作させ、協働ロボット3の接触による検出機能を利用して、空間内の金型8,9、タイバー12等の部材の配置を探索し、メモリに記憶しておくことにしてもよい。
【0028】
あるいは、3次元CAD等により、空間内の金型、タイバー12等の部材の配置の3次元データをオフラインで作成し、メモリに記憶しておくことにしてもよい。そして、制御装置4が、メモリに記憶されている部材の配置に基づいて、物体検出動作を自動生成してもよい。
【0029】
また、本実施形態においては、協働ロボット3が射出成形機2の外部に設置されているものを例示したが、協働ロボット3が射出成形機2の内部に設置されているものを採用してもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 射出成形システム
2 射出成形機
3 協働ロボット
4 制御装置
8,9 金型
17 ハンド
図1
図2
図3
図4
図5