(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】通信制御デバイス用のインターフェースモジュール、シリアルバスシステムの加入者局用の送信/受信デバイス、およびシリアルバスシステムで通信するための方法
(51)【国際特許分類】
H04L 12/40 20060101AFI20240521BHJP
H04L 25/49 20060101ALI20240521BHJP
G06F 13/42 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
H04L12/40 Z
H04L25/49 H
G06F13/42 350Z
(21)【出願番号】P 2022565624
(86)(22)【出願日】2021-04-09
(86)【国際出願番号】 EP2021059265
(87)【国際公開番号】W WO2021219341
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-10-26
(31)【優先権主張番号】102020205275.1
(32)【優先日】2020-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100161908
【氏名又は名称】藤木 依子
(72)【発明者】
【氏名】ムッター,アルトゥール
(72)【発明者】
【氏名】ハートビヒ,フロリアン
【審査官】速水 雄太
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-536862(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0116045(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/40
H04L 25/49
G06F 13/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリアルバスシステム(1)の加入者局(10)の通信制御デバイス(11;110)用のインターフェースモジュール(15;150)であって、
フレーム(450)の第1の通信フェーズ(451、452、454、455)のビット時間(T_B1)、および/または前記バスシステム(1)の加入者局(10、20、30)間でメッセージ(45;46)が交換される前記フレーム(450)の第2の通信フェーズ(453)のビット時間(T_B2)を構成するための少なくとも1つの構成レジスタ(151~154)と、
送信信号(TxD_PRT)を、変調された送信信号(TxD_PWM)に変調するための変調器(156)であって、前記変調された送信信号(TxD_PWM)のPWMシンボル(PWM_SYB)間隔は、前記第2の通信フェーズ(453)の前記ビット時間(T_B2)よりも短いか、または同じであり、前記ビット時間(T_B2)は、前記第1の通信フェーズ(451、452、454、455)の前記ビット時間(T_B1)とは異なる、前記少なくとも1つの構成レジスタ(151~154)で構成される、変調器(156)とを備え、
前記インターフェースモジュール(15;150)が、前記第1の通信フェーズ(451、452、454、455)において、前記変調器(156)を介さずに前記送信信号(TxD_PRT)を直接、前記加入者局(10)の送信/受信デバイス(12;120)に出力して、前記送信信号(TxD_PRT)を前記バスシステム(1)のバス(40)に送信するように設計されており、
前記インターフェースモジュール(15;150)が、前記第2の通信フェーズ(453)において、前記変調器(156)によって生成された前記変調された送信信号(TxD_PWM)を、前記加入者局(10)の前記送信/受信デバイス(12;120)に出力するように設計されており、
前記変調器(156)が、前記送信信号(TxD_PRT)のパルス幅変調のために設計されており、前記少なくとも1つの構成レジスタ(152)が、前記変調器(156)の前記パルス幅変調のためのPWMオフセット構成パラメータとして変調オフセット(PWM_OS)を有し、前記変調オフセット(PWM_OS)は、前記第2の通信フェーズ(453)での前記送信信号(TxD_PRT)のビットと、前記変調された送信信号(TxD_PWM)でのシンボル(PWM_SYB)との間の位相シフトが最小化されるように、時間遅延を伴って前記送信信号(TxD_PRT)の変調を開始するように働く、
インターフェースモジュール(15;150)。
【請求項2】
さらに、前記通信制御デバイス(11;110)から制御信号(TC_TM)を受信するため、ならびに前記送信信号(TxD_PRT)および前記変調された送信信号(TxD_PWM)を受信するため、ならびに前記制御信号(TC_TM)に応じて前記送信信号(TxD_PRT)または前記変調された送信信号(TxD_PWM)を前記送信/受信デバイス(12;120)に出力するための第1のマルチプレクサ(157)を備える、請求項1に記載のインターフェースモジュール(15;150)。
【請求項3】
前記通信制御デバイス(11;110)が前記送信信号(TxD_PRT)を生成するクロック信号(CAN_CLK)と、前記少なくとも1つの構成レジスタ(151)で構成されるパラメータとに基づいて、クロック信号(PWM_CLK)を生成するためのクロック分周器ブロック(155)をさらに備え、
前記変調器(156)が、前記クロック分周器ブロック(155)によって生成された前記クロック信号(PWM_CLK)に基づいて、前記変調された送信信号(TxD_PWM)を生成するように設計されている、
請求項1または2に記載のインターフェースモジュール(15;150)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの構成レジスタ(153、154)が、PWMシンボルの2つの位相の長さを決定するための少なくとも2つのパラメータを有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のインターフェースモジュール(150)。
【請求項5】
前記バス(40)から受信された信号(CAN_H、CAN_L)から前記送信/受信デバイス(12;120)によって生成されたデジタル受信信号(RxD_TC)、および前記デジタル受信信号(RxD_TC)の反転である受信信号(RxD_Inv)を受信するため、ならびに結果として得られる差動信号(RxD_TC、RxD_lnv)を非差
動信号(RxD1)に復号化するための復号化ブロック(158)と、
前記送信/受信デバイス(12;32;120)が前記第2の通信フェーズ(453)の動作モード(453_B)に切り替えられているとき、前記復号化ブロック(158)によって生成された前記非差動信号(RxD1)を前記通信制御デバイス(110)に出力するための第2のマルチプレクサ(159)と
をさらに備える、請求項1から4までのいずれか一項に記載のインターフェースモジュール(150)。
【請求項6】
前記第1および第2のマルチプレクサ(154、159)が同じ制御信号(TC_MD)によって制御されるように設計されている、請求項4に記載のインターフェースモジュール(150)。
【請求項7】
シリアルバスシステム(1)の加入者局(10)用の通信制御デバイス(11;110)であって、
前記加入者局(10)と前記バスシステム(1)の少なくとも1つの他の加入者局(10;20;30)の通信を制御するための送信信号(TxD_PRT)を生成するための通信制御モジュール(113)であり、前記バスシステム(1)において、前記バスシステム(1)の加入者局(10、20、30)間でのメッセージ(45;46)の交換のために、少なくとも第1の通信フェーズ(451、452、454、455)および第2の通信フェーズ(453)が使用される、通信制御モジュール(113)と、
請求項1から6のいずれか一項に記載のインターフェースモジュール(15;150)とを備え、
前記通信制御モジュール(113)が、さらに、制御信号(TC_MC)を生成して前記インターフェースモジュール(15;150)に出力するように設計されており、前記制御信号(TC_MC)が、前記変調器(156)によって生成された前記変調された送信信号(TxD_PWM)が前記加入者局(10)の前記送信/受信デバイス(12;120)にいつ出力されるべきかを示す、
通信制御デバイス(11;110)。
【請求項8】
動作モードシグナリング信号(TC_MD)が、前記バス(40)での通信に応じて前記送信/受信デバイス(12;32)がどの動作モード(451_B;453_B)に切り替わるべきかを、前記インターフェースモジュール(15;150)に信号通知する、請求項7に記載の通信制御デバイス(11;110)。
【請求項9】
前記送信信号(TxD_PRT)を前記送信/受信デバイス(120)に送信するための第1の端子(111)と、
デジタル受信信号(RxD)を前記送信/受信デバイス(120)から受信するための第2の端子(112)と、
前記送信/受信デバイス(120)からの、前記デジタル受信信号(RxD)の反転であるデジタル受信信号(RxD)をSTB端子(114)で受信するための第3の端子(114)であって、前記デジタル受信信号(RxD)が、前記送信/受信デバイス(120)に待機状態を信号通知するために提供されており、前記バス(40)で通信が行われない、第3の端子(114)と
をさらに備える、請求項7または8に記載の通信制御デバイス(110)。
【請求項10】
前記通信制御モジュール(11
3)が、前記第1の通信フェーズ(451、452、454、455)における前記送信信号(TxD_PRT)を、第1のビット時間(T_B1)を備えるビットで生成するように設計されており、前記第1のビット時間(T_B1)が、前記第2の通信フェーズ(453)における前記通信制御モジュール(11
3)が前記送信信号(TxD_PRT)において生成するビットの第2のビット時間(T_B2)の少なくとも10倍である、請求項
7から9のいずれか一項に記載の通信制御デバイス(11;110)。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載のインターフェースモジュール(15;150)とデータの送受信を行う、シリアルバスシステム(1)の加入者局(10;30)用の送信/受信デバイス(12;32;120)であって、
前記バスシステム(1)の加入者局(10、20、30)間でメッセージ(45;46)を交換するために少なくとも第1の通信フェーズ(451、452、454、455)および第2の通信フェーズ(453)が使用される前記バスシステム(1)のバス(40)上に送信信号(TxD_TC)を送信するため、ならびに前記バス(40)から受信された信号からデジタル受信信号(RxD_TC)を生成するための、送信/受信モジュール(123)と、
通信制御デバイス(11;31)から送信信号(TxD)を受信するための第1の端子(121)と、
前記デジタル受信信号(RxD_TC)を前記通信制御デバイス(11;31)に送信するための第2の端子(122)と、
前記デジタル受信信号(RxD_TC)の反転である受信信号(Rx_Inv)を生成するための符号化ブロック(16)と、
前記反転である受信信号(Rx_Inv)を前記通信制御デバイス(11;31)に送信するための第3の端子(124)と
を備える、送信/受信デバイス(12;32;120)。
【請求項12】
前記送信/受信モジュール(123)が、前記送信信号(TxD_TC)を差動信号(CAN_H、CAN_L)として前記バス(40)に送信するように設計されており、
前記第3の端子(124)が、入出力切替え可能なSTB端子(124)であり、前記STB端子(124)が、前記送信/受信デバイス(120)に待機状態を信号通知するために提供されており、前記バス(40)で通信が行われない、
請求項11に記載の送信/受信デバイス(120)。
【請求項13】
前記第1の通信フェーズ(451、452、454、455)において前記バス(40)から受信された前記信号が、前記第2の通信フェーズ(453)において前記バス(40)から受信された前記信号とは異なる物理層で生成されており、
前記第1の通信フェーズ(451)において、前記バスシステム(1)の前記加入者局(10、20、30)のどれが後続の第2の通信フェーズ(453)で前記バス(40)への少なくとも一時的に排他的で衝突のないアクセスを得るかが交渉される、
請求項7から12のいずれか一項に記載のデバイス(11;12;32;110;120)。
【請求項14】
バス(40)と、
少なくとも2つの加入者局(10;20;30)とを備え、前記加入者局(10;20;30)が前記バス(40)を介して互いに接続されており、互いにシリアル通信することができ、前記加入者局(10;20;30)のうちの少なくとも1つの加入者局(10;30)が、請求項7から10のいずれか一項に記載の通信制御デバイス(11;31)と、請求項11または12に記載の送信/受信デバイス(12;32;110;120)と、
を有するバスシステム(1)。
【請求項15】
シリアルバスシステム(1)で通信するための方法であって、バスシステム(1)のために加入者局(10;30)によって実行され、前記バスシステム(1)において、前記バスシステム(1)の加入者局(10、20、30)間でのメッセージ(45;46)の交換のために、少なくとも第1の通信フェーズ(451、452、454、455)および第2の通信フェーズ(453)が使用され、前記加入者局(10;30)が、請求項1から6のいずれか一項に記載のインターフェースモジュールを使用し、
変調器(156)によって、送信信号(TxD_PRT)を、変調された送信信号(TxD_PWM)に変調するステップであって、前記変調された送信信号(TxD_PWM)のPWMシンボル(PWM_SYB)間隔は、前記第2の通信フェーズ(453)の前記ビット時間(T_B2)よりも短いか、または同じであり、前記ビット時間(T_B2)は、前記第1の通信フェーズ(451、452、454、455)のビット時間(T_B1)とは異なる、前記少なくとも1つの構成レジスタ(151~154)で構成される、ステップと、
前記インターフェースモジュールによって、前記第1の通信フェーズ(451、452、454、455)において、前記変調器(156)を介さずに前記送信信号(TxD_PRT)を直接、前記加入者局(10;100)の送信/受信デバイス(12;120)に出力するステップと、
前記インターフェースモジュールによって、前記第2の通信フェーズ(453)において、前記変調器(156)によって生成された前記変調された送信信号(TxD_PWM)を、前記加入者局(10;100)の前記送信/受信デバイス(12;120)に出力するステップと、
を有し、
前記少なくとも1つの構成レジスタ(152)が、前記変調器(156)の前記パルス幅変調のためのPWMオフセット構成パラメータとして変調オフセット(PWM_OS)を有し、前記変調オフセット(PWM_OS)は、前記第2の通信フェーズ(453)での前記送信信号(TxD_PRT)のビットと、前記変調された送信信号(TxD_PWM)でのシンボル(PWM_SYB)との間の位相シフトが最小化されるように、時間遅延を伴って前記送信信号(TxD_PRT)の変調を開始するように働く、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高いデータレートおよび高いエラーロバスト性で動作する、通信制御デバイス用のインターフェースモジュール、シリアルバスシステムの加入者局用の送信/受信デバイス、およびシリアルバスシステムで通信するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両でのセンサと制御機器との間の通信のために、CAN FDを用いたCANプロトコル仕様としての規格ISO11898-1:2015でメッセージとしてデータが伝送されるバスシステムが使用されることが多い。メッセージは、センサ、制御機器、送信機などのバスシステムのバス加入者間で伝送される。
【0003】
CANよりも高いビットレートでデータを伝送することができるようにするために、CAN FDメッセージフォーマットには、メッセージ内でより高いビットレートに切り替えるための選択肢がある。ここでは、データフィールドの領域でより高いクロッキングを使用することにより、可能な最大データレートが増加されて1Mbit/sの値を超える。そのようなメッセージは、以下ではCAN FDフレームまたはCAN FDメッセージとも呼ばれる。CAN FDでは、使用データ長が8バイトから64バイトに拡張され、データ転送速度がCANよりも大幅に高くなる。
【0004】
送信元バス加入者から受信元バス加入者へのデータ伝送をCAN FDよりも高速化するために、CAN FD後継バスシステムが現在開発されている。ここで、データフェーズにおいて、CAN FDよりも高いデータレートに加えて、CAN FDで従来達成されている最大64バイトの使用データ長も増加されるべきである。しかし、CANまたはCAN FDベースの通信ネットワークのロバスト性の利点は、CAN FDの後継バスシステムでも保持すべきである。
【0005】
既知のOSIモデル(Open Systems Interconnection Model)のビット伝送レイヤまたはレイヤ1に相当する物理層にさらに切り替えることによって、データフェーズでのより高いデータレートをさらに高めることも考えられる。しかし、この場合、信号をバス上にドライブする、および信号をバスから受信する送信/受信デバイスの動作モードを切り替える必要がある。ロバストなデータ伝送のために、個々の送信動作モードと受信動作モードとの間での送信/受信デバイスの動作モードの切替えは、できるだけスムーズに機能しなければならない。そうすることでのみ、送信/受信デバイスの動作モードの誤った切替えによる伝送エラーに起因する追加の伝送をなくすことができる。
【0006】
データがバス上で高速に伝送されるほど、加入者局のプロトコルコントローラがバスから受信する信号の品質に対する要求が高くなる。例えば、受信された信号のビットのエッジ急峻度が低すぎて、プロトコルコントローラでの仕様が十分に正確でない場合、受信信号を正しく復号化することができない。
【0007】
受信される信号のビットのエッジ急峻度が増加される場合、より高い放射が生じる。プロトコルコントローラの仕様がより正確でなければならないほど、プロトコルコントローラのコストが高くなり、受信される信号の復号化が複雑になる。
【発明の概要】
【0008】
したがって、本発明の目的は、上記の問題を解決する通信制御デバイス用のインターフェースモジュール、シリアルバスシステムの加入者局用の送信/受信デバイス、およびシリアルバスシステムにおいて通信するための方法を提供することである。特に、高いエラーロバスト性で、高いデータレート、およびフレームあたりの使用データの量の増加を実現することができる、通信制御デバイス用のインターフェースモジュール、シリアルバスシステムの加入者局用の送信/受信デバイス、およびシリアルバスシステムで通信するための方法が提供される。
【0009】
この目的は、請求項1の特徴を有するシリアルバスシステムの加入者局のための通信制御デバイス用のインターフェースモジュールによって達成される。このインターフェースモジュールは、フレームの第1の通信フェーズのビット時間、および/またはバスシステムの加入者局間でメッセージが交換されるフレームの第2の通信フェーズのビット時間を構成するための少なくとも1つの構成レジスタと、送信信号を、第1の通信フェーズのビット時間とは異なる、少なくとも1つの構成レジスタで構成された第2の通信フェーズのビット時間を有する変調された送信信号に変調するための変調器とを有し、インターフェースモジュールが、第1の通信フェーズにおいて、変調器に入力された送信信号を、加入者局の送信/受信デバイスに出力して、送信信号をバスシステムのバスに送信するように設計されており、インターフェースモジュールが、第2の通信フェーズにおいて、変調器によって生成された変調された送信信号を、加入者局の送信/受信デバイスに出力して、変調された送信信号をバスシステムのバスに送信するように設計されている。
【0010】
インターフェースモジュールは、様々な通信フェーズに関して送信/受信デバイスの動作モードの切替えを非常に確実にかつロバストに信号通知することができる。ここで、インターフェースモジュールは、通信フェーズに応じて、2つのビット時間(ビット持続時間またはビット長とも呼ぶことができる)を互いに独立して構成可能であるように設計されている。ここで、インターフェースモジュールは、通信制御デバイスと送信/受信デバイスとの間の追加の高価な接続なしで、CAN FD後継バスシステムに所要の高速データ伝送を提供することを可能にする。
【0011】
任意選択で、インターフェースモジュールはさらに、バスから受信された信号から送信/受信デバイスを生成して通信制御デバイスに送信する受信信号RxDにおいて、ビットの対称性が保持されるように設計されている。これは、CANフレームの送信時と受信時との両方に当てはまる。せいぜい、受信信号RxDのビットの非対称性がごくわずかに増加されるだけである。この場合、インターフェースモジュールは、信号の対称性を維持するために、PWM符号化やマンチェスタ符号化などのライン符号化法よりも単純な方法を使用する。これにより、データ伝送と受信信号RxDの復号化との複雑さが低減される。
【0012】
さらに、送信/受信デバイス(トランシーバ)と通信制御デバイス(マイクロコントローラ)との間の受信信号RxDの差動伝送時にも、NRZ符号化(NRZ=Non-Return-To-Zero)を保つことができる。これにより、送信/受信デバイス(トランシーバ)と通信制御デバイス(マイクロコントローラ)との間のデータ伝送のために、遅いエッジを有する端子(ピン)を使用することができる。その結果生じる、受信された信号、特に受信信号RxDのビットの低いエッジ急峻度は、システムの放射を大幅に減少させる。
【0013】
したがって、インターフェースモジュールを用いて、受信された信号、特に受信信号RxDのビットのそのようなエッジ急峻度を選択することができ、放射の要件を問題なく満たすことができる。さらに、通信制御デバイスは、信号の対称性を維持するために、PWM符号化やマンチェスタ符号化などの複雑なライン符号化法を使用する必要がない。これにより、データ伝送と受信信号RxDの復号化との複雑さが低減される。
【0014】
さらに、通信フェーズの1つで通信制御デバイスと送信/受信デバイスと間のインターフェースモジュールを用いて、CANで知られている通信調停を維持することができ、それでもCANまたはCAN FDに比べて伝送速度をさらに大幅に向上させることができる。これは、異なるビットレートを有する2つの通信フェーズが使用され、通信調停におけるよりも高いビットレートで使用データが伝送される第2の通信フェーズの開始を送信/受信デバイスが確実に識別することによって達成することができる。したがって、送信/受信デバイスは、第1の通信フェーズから第2の通信フェーズに確実に切り替えることができる。
【0015】
その結果、送信元から受信元へのビットレート、したがって伝送速度の大幅な増加が実現可能である。しかしここで、同時に、高いエラーロバスト性が保証される。これは、少なくとも10Mbpsの正味データレートの実現に寄与する。さらに、使用データのサイズは、64バイトよりも大きくすることができ、特にフレームあたり最大4096バイトにすることができ、または必要に応じて任意の長さを有することもできる。
【0016】
通信制御デバイスによって実行される方法は、CANプロトコルおよび/またはCAN FDプロトコルに従ってメッセージを送信する少なくとも1つのCAN加入者局および/または少なくとも1つのCAN FD加入者局もバスシステム内に存在するときにも使用することができる。
【0017】
通信制御デバイスの有利なさらなる形態は、従属請求項に記載されている。
さらに、インターフェースモジュールは、通信制御デバイスから制御信号を受信するため、ならびに送信信号および変調された送信信号を受信するため、ならびに制御信号に応じて送信信号または変調された送信信号を送信/受信デバイスに出力するための第1のマルチプレクサを有し得る。
【0018】
インターフェースモジュールが、通信制御デバイスが送信信号を生成するクロック信号と、少なくとも1つの構成レジスタで構成されるパラメータとに基づいて、クロック信号を生成するためのクロック分周器ブロックをさらに有し、変調器が、クロック分周器ブロックによって生成されたクロック信号に基づいて、変調された送信信号を生成するように設計されていることが考えられる。
【0019】
場合により、変調器は、送信信号のパルス幅変調(PWM)のために設計されており、少なくとも1つの構成レジスタが、PWMシンボルの2つの位相の長さを決定するための少なくとも2つのパラメータを有する。追加または代替として、少なくとも1つの構成レジスタは、変調器のパルス幅変調のためのパラメータとして変調オフセットを有することができる。
【0020】
1つの例示的実施形態によれば、インターフェースモジュールは、バスから受信された信号から送信/受信デバイスによって生成されたデジタル受信信号、およびデジタル受信信号の反転である受信信号を受信するため、ならびに結果として得られる差動信号を非差動受信信号に復号化するための復号化ブロックと、送信/受信デバイスが第2の通信フェーズの動作モードに切り替えられているとき、復号化ブロックによって生成された非差動信号を通信制御デバイスに出力するための第2のマルチプレクサとをさらに有する。ここで、第1および第2のマルチプレクサが同じ制御信号によって制御されるように設計されていることが可能である。
【0021】
上述したインターフェースモジュールは、シリアルバスシステムの加入者局用の通信制御デバイスの一部であってもよく、通信制御デバイスは、加入者局とバスシステムの少なくとも1つの他の加入者局の通信を制御するための送信信号を生成するための通信制御モジュールを有し、バスシステムにおいて、バスシステムの加入者局間でのメッセージの交換のために、少なくとも第1の通信フェーズおよび第2の通信フェーズが使用され、通信制御モジュールは、さらに、制御信号を生成してインターフェースモジュールに出力するように設計されており、制御信号が、変調器によって生成された変調された送信信号が加入者局の送信/受信デバイスにいつ出力されるべきかを示す。ここで、動作モードシグナリング信号は、バスでの通信に応じて送信/受信デバイスがどの動作モードに切り替わるべきかを、場合によってはインターフェースモジュールに信号通知する。
【0022】
通信制御デバイスは、送信信号を送信/受信デバイスに送信するための第1の端子と、デジタル受信信号を送信/受信デバイスから受信するための第2の端子と、送信/受信デバイスからの、デジタル受信信号の反転であるデジタル受信信号をSTB端子で受信するための第3の端子であって、デジタル受信信号が、送信/受信デバイスに待機状態を信号通知するために提供されており、バスで通信が行われない、第3の端子とをさらに有してもよい。
【0023】
任意選択で、通信制御モジュールは、第1の通信フェーズにおける送信信号を、第1のビット時間を備えるビットで生成するように設計されており、第1のビット時間が、第2の通信フェーズにおける通信制御モジュールが送信信号において生成するビットの第2のビット時間の少なくとも10倍である。
【0024】
上述した目的は、さらに、請求項11の特徴を有するシリアルバスシステムの加入者局用の送信/受信デバイスによっても達成される。この送信/受信デバイスは、バスシステムの加入者局間でメッセージを交換するために少なくとも第1の通信フェーズおよび第2の通信フェーズが使用されるバスシステムのバス上に送信信号を送信するため、ならびにバスから受信された信号からデジタル受信信号を生成するための、送信/受信モジュールと、通信制御デバイスから送信信号を受信するための第1の端子と、デジタル受信信号を通信制御デバイスに送信するための第2の端子と、デジタル受信信号の反転である受信信号を生成するための符号化ブロックと、反転である受信信号を通信制御デバイスに送信するための第3の端子とを有する。
【0025】
送信/受信デバイスは、インターフェースモジュールおよび/または通信制御デバイスに関して上述したのと同じ利点を提供する。送信/受信デバイスの有利なさらなる形態は、従属請求項に記載されている。
【0026】
任意選択で、送信/受信モジュールは、送信信号を差動信号としてバスに送信するように設計されており、第3の端子が、入出力切替え可能なSTB端子であり、STB端子が、送信/受信デバイスに待機状態を信号通知するために提供されており、バスで通信が行われない。
【0027】
1つの選択肢によれば、第1の通信フェーズにおいてバスから受信された信号は、第2の通信フェーズにおいてバスから受信された信号とは異なる物理層で生成されている。
第1の通信フェーズにおいて、バスシステムの加入者局のどれが後続の第2の通信フェーズでバスへの少なくとも一時的に排他的で衝突のないアクセスを得るかが交渉されることが考えられる。
【0028】
上述した通信制御デバイスおよび上述した送信/受信デバイスは、バスシステムの加入者局の一部であってもよく、バスシステムは、バスと、少なくとも2つの加入者局とをさらに含み、加入者局がバスを介して互いに接続されており、互いにシリアル通信することができる。この場合、少なくとも2つの加入者局のうちの少なくとも1つは、上述した通信制御デバイスおよび上述した送信/受信デバイスを有する。
【0029】
上述した目的は、請求項15に記載のシリアルバスシステムで通信する方法によってさらに達成される。この方法は、バスシステムのために加入者局によって実行され、バスシステムにおいて、バスシステムの加入者局間でのメッセージの交換のために、少なくとも第1の通信フェーズおよび第2の通信フェーズが使用され、加入者局が、上述したインターフェースモジュールを使用し、変調器によって、送信信号を、第1の通信フェーズのビット時間とは異なる、少なくとも1つの構成レジスタで構成された第2の通信フェーズのビット時間を有する変調された送信信号に変調するステップと、インターフェースモジュールによって、第1の通信フェーズにおいて、変調器に入力された送信信号を、加入者局の送信/受信デバイスに出力して、送信信号をバスシステムのバスに送信するステップと、インターフェースモジュールによって、第2の通信フェーズにおいて、変調器によって生成された変調された送信信号を、加入者局の送信/受信デバイスに出力して、変調された送信信号をバスシステムのバスに送信するステップとを有する。
【0030】
この方法は、インターフェースモジュールおよび/または通信制御デバイスおよび/または送信/受信デバイスに関して上述したのと同じ利点を提供する。
本発明のさらなる可能な実装形態は、例示的実施形態に関して上述または後述する特徴または実施形態の、明示的には言及されていない組合せも含む。ここで、当業者は、本発明のそれぞれの基本形態への改良または補完として個別の態様を追加することもできる。
【0031】
以下、添付図面を参照し、例示的実施形態に基づいて、本発明をより詳細に述べる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】第1の例示的実施形態によるバスシステムの簡略化されたブロック図である。
【
図2】第1の例示的実施形態によるバスシステムの加入者局によって送信することができるメッセージの構造を示す図である。
【
図3】第1の例示的実施形態によるインターフェースモジュールを有するバスシステムの加入者局の簡略化された概略ブロック図である。
【
図4】第1の例示的実施形態によるバスシステムでメッセージを送信するときの一連の通信フェーズ、および
図3の加入者局の送信/受信デバイスの動作モードを切り替えるための関連の制御信号の、時間の関数としての図である。
【
図5】
図3の加入者局の送信/受信デバイスの動作モードの変更時の信号の、時間の関数としての図である。
【
図6】
図3の加入者局の送信/受信デバイスの動作モードの変更時の信号の、時間の関数としての図である。
【
図7】
図3の加入者局の送信/受信デバイスの動作モードの変更時の信号の、時間の関数としての図である。
【
図8】バスシステムのバスを介して送信されるメッセージのデータフェーズにおける加入者局の送信信号のPWM符号化を示すための、
図3の加入者局における信号または状態の、時間の関数としての図である。
【
図9】バスシステムのバスを介して送信されるメッセージのデータフェーズにおける加入者局の送信信号のPWM符号化を示すための、
図3の加入者局における信号または状態の、時間の関数としての図である。
【
図10】バスシステムのバスを介して送信されるメッセージのデータフェーズにおける加入者局の送信信号のPWM符号化を示すための、
図3の加入者局における信号または状態の、時間の関数としての図である。
【
図11】バスシステムのバスを介して送信されるメッセージのデータフェーズにおける加入者局の送信信号のPWM符号化を示すための、
図3の加入者局における信号または状態の、時間の関数としての図である。
【
図12】バスシステムのバスを介して送信されるメッセージのデータフェーズにおける加入者局の送信信号のPWM符号化を示すための、
図3の加入者局における信号または状態の、時間の関数としての図である。
【
図13】パルス幅変調PWMによる状態データ0およびデータ1の符号化の、時間の関数としての図である。
【
図14】パルス幅変調PWMによる状態データ0およびデータ1の符号化の、時間の関数としての図である。
【
図15】第2の例示的実施形態によるインターフェースモジュールを有するバスシステムの加入者局の簡略化された概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図面中、特に指示のない限り、同一の要素または機能的に同一の要素には同じ参照符号が付されている。
図1は、例としてバスシステム1を示し、バスシステム1は、特に基本的には、以下に述べるように、CANバスシステム、CAN FDバスシステム、CAN FD後継バスシステム、および/またはそれらの変形システムのために設計されている。以下、CAN FD後継バスシステムをCAN XLと呼ぶ。バスシステム1は、特に自動車や航空機などの車両、または病院などで使用することができる。
【0034】
図1では、バスシステム1は、多数の加入者局10、20、30を有し、加入者局10、20、30はそれぞれ、第1のバスワイヤ41および第2のバスワイヤ42を有するバス40に接続されている。バスワイヤ41、42は、CAN_HおよびCAN_Lとも呼ぶことができ、送信状態で信号のためのドミナントレベルのカップリング後またはレセシブレベルの生成後に電気信号伝送に使用される。バス40を介して、メッセージ45、46を、個々の加入者局10、20、30間で信号の形式でシリアル伝送可能である。加入者局10、20、30は、例えば自動車の制御機器、センサ、表示装置などである。
【0035】
図1に示されるように、加入者局10は、通信制御デバイス11、送信/受信デバイス12、およびインターフェースモジュール15を有する。これに対して、加入者局20は、通信制御デバイス21および送信/受信デバイス22を有する。加入者局30は、通信制御デバイス31、送信/受信デバイス32、およびインターフェースモジュール35を有する。加入者局10、20、30の送信/受信デバイス12、22、32は、
図1には図示されていないが、それぞれバス40に直接接続されている。
【0036】
各加入者局10、20、30で、メッセージ45、46が符号化され、それぞれの通信制御デバイス11、21、31と関連の送信/受信デバイス12、22、32との間で、TXDラインおよびRXDラインを介してフレームの形でビット毎に交換される。これについては、以下でより詳細に述べる。
【0037】
通信制御デバイス11、21、31は、それぞれの加入者局10、20、30と、バス40に接続されている加入者局10、20、30のうちの少なくとも1つの他の加入者局とのバス40を介した通信をそれぞれ制御する働きをする。
【0038】
通信制御デバイス11、31は、例えば修正されたCANメッセージ45(以下では、CAN XLメッセージ45とも呼ぶ)である第1のメッセージ45の作成および読取りを行う。ここで、修正されたCANメッセージ45またはCAN XLメッセージ45は、
図2を参照してより詳細に述べられているCAN FD後継フォーマットに基づいて構成されている。さらに、通信制御デバイス11、31は、必要に応じて、CAN XLメッセージ45またはCAN FDメッセージ46を送信/受信デバイス12、32に対して提供する、または送信/受信デバイス12、32から受信するように実装されていてもよい。したがって、通信制御デバイス11、31は、第1のメッセージ45または第2のメッセージ46の作成および読取りを行い、ここで、第1および第2のメッセージ45、46は、それらのデータ伝送規格が異なり、すなわちこの場合にはCAN XLまたはCAN FDである。
【0039】
通信制御デバイス21は、ISO11898-1:2015に準拠した従来のCANコントローラのように、特にCAN FD許容の従来のCANコントローラまたはCAN FDコントローラのように実装されていてもよい。通信制御デバイス21は、第2のメッセージ46、例えば従来のCAMメッセージまたはCAN FDメッセージ46の作成および読取りを行う。CAN FDメッセージ46には、0~64データバイトが含まれていることがあり、これらはさらに、従来のCANメッセージよりも明らかに速いデータレートで伝送される。この場合、通信制御デバイス21は、従来のCAN FDコントローラのように実装されている。
【0040】
送信/受信デバイス12、32は、以下でより詳細に述べる相違点を除いて、CAN XLトランシーバとして実装されていてもよい。
送信/受信デバイス12、32は、追加または代替として、従来のCAN FDトランシーバのように実装可能である。送信/受信デバイス22は、従来のCANトランシーバまたはCAN FDトランシーバのように実装されていてもよい。
【0041】
2つの加入者局10、30を用いて、CAN XLフォーマットでのメッセージ45の作成および伝送、ならびにそのようなメッセージ45の受信を実現可能である。
図2は、メッセージ45に関してCAN XLフレーム450を示し、CAN XLフレーム450は、送信/受信デバイス12または送信/受信デバイス32によって送信される。CAN XLフレーム450は、バス40でのCAN通信のために、様々な通信フェーズ451~455、すなわち通信調停フェーズ451、第1の切替えフェーズ452、データフェーズ453、第2の切替えフェーズ454、およびフレーム終了フェーズ455に分割されている。
【0042】
通信調停フェーズ451では、例えば、SOFビットとも呼ばれ、フレームの開始(Start of Frame)を示すビットが最初に送信される。さらに、通信調停フェーズ451では、メッセージ45の送信元を識別するための例えば11ビットを有する識別子も送信される。通信調停時、識別子を用いて、どの加入者局10、20、30がメッセージ45、46を最高の優先順位で送信したいか、したがって後続の時間に関して切替えフェーズ452およびそれに続くデータフェーズ453での送信のためにバスシステム1のバス40への排他的なアクセスを得るかが、ビット毎に加入者局10、20、30間で交渉される。
【0043】
この例示的実施形態では、第1の切替えフェーズ452で、通信調停フェーズ451からデータフェーズ453への切替えが準備される。切替えフェーズ452は、通信調停フェーズ451のビットのビット持続時間T_B1を有し、通信調停フェーズ451の物理層で送信されるビットを有することができる。
【0044】
データフェーズ453では、フレーム450のビットは、データフェーズ453の物理層で、通信調停フェーズ451のビットのビット持続時間T_B1よりも短いビット持続時間T_B2で送信される。データフェーズ453では、CAN XLフレーム450またはメッセージ45の使用データが送信される。使用データは、メッセージ45のデータフィールドと呼ぶこともできる。このために、データフェーズ453で、データフィールド内のコンテンツのタイプを識別するデータフィールド識別子の後に、例えば11ビット長のデータ長コード(Data-Length-Code)が送信され得る。コードは、例えば、1~2048の値または他の値を増分1で取ることができる。代替として、データ長コードは、より少数またはより多数のビットを含むことができ、値範囲および増分が別の値を取ることができる。続いて、ヘッダチェックサムフィールドなどさらなるフィールドが続く。その後、CAN XLフレーム450またはメッセージ45の使用データが送信される。データフェーズ453の最後に、例えばチェックサムフィールドに、データフェーズ453のデータおよび通信調停フェーズ451のデータに関するチェックサムが含まれていてもよい。メッセージ45の送信元は、それぞれ所定数の同一のビット、特に10個の同一のビットの後に、反転ビットとして、スタッフビットをデータストリームに挿入することができる。特に、チェックサムは、チェックサムフィールドまでのフレーム450のすべてのビットが保証されるフレームチェックサムF_CRCである。
【0045】
この例示的実施形態では、第2の切替えフェーズ454で、データフェーズ453からフレームエンドフェーズ455への切替えが準備される。これは、通信調停フェーズ451に従って伝送動作モードに再び切り替えられることを意味する。切替えフェーズ454は、通信調停フェーズ451のビットのビット持続時間T_B1を有し、通信調停フェーズ451の物理層で送信されるビットを有することができる。しかし、ここで、CAN XLフレーム、CANフレーム、またはCAN FDフレームを区別する必要はない。
【0046】
フレーム終了フェーズ455では、2ビットAL2、AH2の後、終了フィールドに少なくとも1ビットの確認ビットACKが含まれていてもよい。その後、CAN XLフレーム450の終了を示す7つの同一のビットのシーケンスが続く。少なくとも1つの確認ビットACKを用いて、受信されたCAN XLフレーム450またはメッセージ45においてエラーを検出したか否かを受信元が知らせることができる。
【0047】
少なくとも通信調停フェーズ451およびフレーム終了フェーズ455では、CANおよびCAN-FDと同様に物理層が使用される。さらに、切替えフェーズ452、454で少なくとも部分的に、すなわち最初に第1の切替えフェーズ452で、および最後に第2の切替えフェーズ454で、CANおよびCAN-FDと同様に物理層が使用され得る。物理層は、既知のOSI参照モデル(Open Systems Interconnection(開放型システム間相互接続)参照モデル)のビット伝送レイヤまたはレイヤ1に対応する。
【0048】
これらのフェーズ451、452、454、455における重要な点は、既知のCSMA/CR法が使用されることであり、CSMA/CR法は、より優先順位の高いメッセージ45、46が破壊されることなく、加入者局10、20、30がバス40に同時にアクセスすることを許可する。これにより、さらなるバス加入者局10、20、30がバスシステム1に比較的容易に追加され得、これは非常に有利である。
【0049】
CSMA/CR法により、バス40上にいわゆるレセシブ状態が存在することになり、このレセシブ状態は、バス40上で他の加入者局10、20、30がドミナント状態で上書きされ得る。
【0050】
フレーム450またはメッセージ45、46の開始時の通信調停、およびフレーム450またはメッセージ45、46のフレーム終了フェーズ455での確認は、ビット持続時間またはビット時間が、バスシステム1の任意の2つの加入者局10、20、30間の信号伝搬時間の2倍を大幅に超えるときにのみ可能である。したがって、通信調停フェーズ451、フレーム終了フェーズ454、および少なくとも部分的に切替えフェーズ452、454におけるビットレートは、フレーム450のデータフェーズ453よりも遅くなるように選択される。特に、フェーズ451、452、454、455でのビットレートは、500kbit/sとして選択され、そこから、約2μsのビット持続時間またはビット時間となり、一方、データフェーズ453でのビットレートは、5~10Mbit/s以上として選択され、そこから、約0.1μsのより短いビット時間となる。したがって、他の通信フェーズ451、452、454、455での信号のビット時間は、データフェーズ453での信号のビット時間の少なくとも10倍大きい。
【0051】
加入者局10が送信元として通信調停に勝ち、したがって加入者局10が送信元として送信のためにバスシステム1のバス40への排他的アクセスを得たときに初めて、メッセージ45の送信元、例えば加入者局10は、バス40への切替えフェーズ452およびそれに続くデータフェーズ453のビットの送信を開始する。送信元は、切替えフェーズ452の一部の後に、より高速のビットレートおよび/または他の物理層に変更することができ、またはそれに続くデータフェーズ453の第1のビットで、すなわちデータフェーズ453の開始時に、より高速のビットレートおよび/または他の物理層に変更することができる。
【0052】
ごく一般に、CANまたはCAN FDと比較して、CAN XLを用いるバスシステムでは特に以下の異なる特性が実現され得る。
a)CANおよびCAN FDのロバスト性および使いやすさに寄与する実証済みの特性、特に識別子を用いたフレーム構造およびCSMA/CR法による通信調停の採用および場合によっては適応。
b)毎秒約10メガビットへの正味データ伝送レートの増加。
c)約2キロバイトまたは任意の値への、フレーム当たりの使用データのサイズの増加。
【0053】
図3は、通信制御デバイス11、送信/受信デバイス12、およびインターフェースモジュール15を備えた加入者局10の基本構造を示す。
加入者局30は、インターフェースモジュール35が通信制御デバイス31に統合されておらず、通信制御デバイス31および送信/受信デバイス32から独立して提供されていること以外は、
図3に示されるのと同様に構成されている。したがって、加入者局30およびモジュール35を個別には述べない。以下に述べるインターフェースモジュール15の機能は、インターフェースモジュール35でも同じである。
【0054】
代替または追加として、加入者局30の場合と同様に、インターフェースモジュール15がデバイス11に統合されておらず、通信制御デバイス11および送信/受信デバイス12から独立して提供されていることも可能である。
【0055】
送信/受信デバイス12は、バス40に接続されており、より正確には、CAN_H用の第1のバスワイヤ41およびCAN_L用の第2のバスワイヤ42に接続されている。バスシステム1の動作中、送信/受信デバイス12は、通信制御デバイス11の送信信号TxDを、バスワイヤ41、42のための対応する信号CAN_HおよびCAN_Lに変換し、これらの信号CAN_HおよびCAN_Lをバス40に送信する。ここで送信/受信デバイス12に関して信号CAN_HおよびCAN_Lに言及するが、これらは、メッセージ45に関しては信号CAN-XL_HおよびCAN-XL_Lとして理解されるべきであり、信号CAN-XL_HおよびCAN-XL_Lは、データフェーズ453において、従来の信号CAN_HおよびCAN_Lとは少なくとも1つの特徴が異なり、特に、信号TxDの様々なデータ状態に関するバス状態の生成に関して、および/または電圧もしくは物理層および/またはビットレートに関して異なる。
【0056】
バス40には、差動信号VDIFF=CAN_H-CAN_Lが生成される。アイドルまたはスタンバイ状態(idleまたはStandby)を除いて、送信/受信デバイス12は、通常動作では、加入者局10がメッセージ45の送信元であるか否かに関係なく、バス40でのデータまたはメッセージ45、46の伝送を常にリッスンする。送信/受信デバイス12は、以下でより詳細に述べられるように、バス40から受信された信号CAN_HおよびCAN_Lから受信信号RxDを生成し、この受信信号RxDを通信制御デバイス11に転送する。
【0057】
インターフェースモジュール15、通信制御デバイス11、または加入者局10の以下に述べられる構造は、通信制御デバイス11から送信/受信デバイス12へ、送信/受信デバイス12の動作モードの切替えのためのシグナリングをロバストにかつ単純に行うことができるようにする。
【0058】
図3によれば、通信制御デバイス11は、インターフェースモジュール15に加えて、デジタル送信信号TxD用の第1の端子111、デジタル受信信号RxD用の第2の端子112、および通信制御モジュール114を有する。端子111は出力端子である。端子112は入力端子である。送信/受信デバイス12は、デジタル送信信号TxD用の第1の端子121、デジタル受信信号RxD用の第2の端子122、および送信/受信モジュール123を有する。端子121は入力端子である。端子122は出力端子である。
【0059】
通信制御デバイス11は、マイクロコントローラとして設計されている、またはマイクロコントローラを有する。通信制御デバイス11は、例えばエンジン用の制御装置、機械または車両用のセキュリティシステム、または他のアプリケーションなど、任意のアプリケーションの信号を処理する。しかし、システムASIC(ASIC=特定用途向け集積回路)は示されていない。システムASICは、代替として、加入者局10の電子アセンブリに必要な複数の機能が組み合わされたシステムベースチップ(SBC)でよい。システムASICには、とりわけ、送信/受信デバイス12と、送信/受信デバイス12に電気エネルギーを供給するエネルギー供給デバイス(図示せず)とが組み込まれていてもよい。エネルギー供給デバイスは通常、5Vの電圧CAN_Supplyを送達する。しかし、必要に応じて、エネルギー供給デバイスは、異なる値を有する異なる電圧を送達することができ、および/または電流源として設計されていてもよい。
【0060】
さらに、送信/受信デバイス12は、送信信号TxDをバス40に送信するため、および/またはバス40から信号CAN_H、CAN_Lを受信するための送信/受信モジュール123を有する。送信/受信モジュール123は、物理的な媒体、すなわちバスワイヤ41、42を有するバス40への接続を行う。送信/受信モジュール123は、バスワイヤ41、42またはバス40に関して、信号CAN_HおよびCAN_Lをドライブして復号化する。
【0061】
通信制御モジュール113は、ビットレートプリスケーラブロック1131またはBRPブロック1131、時間量子発生器1132、およびプロトコルコントローラ1133を有する。BRPブロック1131では、1~64のビットレートプリスケーラ(BRP)を構成可能である。時間量子発生器1132は、構成されたビットレートプリスケーラ(BRP)およびクロック信号CAN_CLKを受信し、それらから時間量子クロック信号TQ_CLKを生成する。時間量子発生器1132は、時間量子クロック信号TQ_CLKをプロトコルコントローラ1133に出力する。プロトコルコントローラ1133は、CANプロトコル、特にCAN XLまたはCAN FDに関するプロトコルを実装する。通信制御モジュール113、より正確にはプロトコルコントローラ1133は、以下の出力信号を出力する、または以下の入力信号を受信するように設計されている。
【0062】
信号TxD_PRTは、送信信号TxDに対応する出力信号である。通信制御モジュール113、より正確にはプロトコルコントローラ1133は、信号TxD_PRTをインターフェースモジュール15に出力する。
【0063】
信号RxD_PRTは、受信信号RxDに対応する入力信号である。通信制御モジュール113、より正確にはプロトコルコントローラ1133は、信号RxD_PRTをインターフェースモジュール15から受信する。代替として、通信制御モジュール113、より正確にはプロトコルコントローラ1133は、信号RxD_PRTを第2の端子112から直接受信する。
【0064】
これらの信号に加えて、通信制御モジュール113は、制御信号TC_MDを生成して出力するように設計されている。制御信号TC_MDは、送信/受信デバイス12がデータフェーズ動作モード453_Bで動作されるべきか否かを示す。
【0065】
データフェーズ453では、送信/受信デバイス12は、動作モード453_TXまたはTXデータフェーズモードで動作することができる。動作モード453_TXは、FAST_TXモードまたは第1の動作モードとも呼ばれる。動作モード453_TXまたはTXデータフェーズモードでは、加入者局10は、通信調停フェーズ451で通信調停に勝ち、後続のデータフェーズ453でフレーム450の送信元である。この場合、加入者局10は、送信ノードと呼ぶこともできる。代替として、送信/受信デバイス12は、データフェーズ453において、動作モード453_RXまたはRXデータフェーズモードで動作する。動作モードは、FAST_RXモードまたは第2の動作モードとも呼ばれる。動作モード453_RXまたはRXデータフェーズモードでは、加入者局10は、通信調停フェーズ451で通信調停に負け、後続のデータフェーズ453ではフレーム450の受信元にすぎず、すなわち送信元ではない。この場合、加入者局10は、受信ノードと呼ばれることもある。
【0066】
オンに切り替えるべき動作モードを送信/受信デバイス12に信号通知するための回路は、以下で説明するように、インターフェースモジュール15で実装されている。
インターフェースモジュール15は、構成のためのパラメータを記憶し、必要に応じて出力するための少なくとも1つの構成レジスタ151、152、153、154を有する。少なくとも1つの構成レジスタ151、152、153、154は、例えば、PWMビットレートプリスケーラレジスタ151またはPWM-BRPレジスタ151、PWMオフセット構成レジスタ152、PWMフェーズ1構成レジスタ153、PWMフェーズ2構成レジスタ154である。当然、構成レジスタ151、152、153、154の少なくとも1つ、または他の構成パラメータのための少なくとも1つの追加の他の構成レジスタが可能である。さらに、インターフェースモジュール15は、クロック分周器ブロック155またはプリスケーラブロック、変調器156、およびマルチプレクサ157を有する。
【0067】
インターフェースモジュール15は、通信制御モジュール113が出力する上述した信号を受信する。さらに、インターフェースモジュール15、より正確にはそのクロック分周器ブロック155は、クロック信号CAN_CLKを受信する。
【0068】
したがって、インターフェースモジュール15は、通信制御モジュール113、より正確にはプロトコルコントローラ1133と同じクロックCAN_CLKで動作する。構成可能な構成レジスタ151~154でのパラメータによって、変調器155によって実行される変調を構成可能である。構成レジスタ153~155の構成パラメータは、フレーム450の通信調停フェーズ451とデータフェーズ453でのビット長(ビット時間またはビット持続時間)を互いに独立させることができるようにする。したがって、変調器155は、特にパルス幅変調を用いて、信号TxD_PRTを少なくとも一時的に変調することができる。変調器155は、構成レジスタ151~154の構成パラメータに従って生成された送信信号TxD_PWMをマルチプレクサ157に出力する。
【0069】
マルチプレクサ157は、通信制御モジュール113、より正確にはプロトコルコントローラ1133によって制御される。通信制御モジュール113、より正確にはプロトコルコントローラ1133による制御に応じて、マルチプレクサ157は、変調信号TxD-PWMまたは非変調信号TxD-PRTを出力端子111を介して送信/受信デバイス12に出力する。
【0070】
ここでは、通信制御モジュール113、より正確にはプロトコルコントローラ1133は、信号TxD_PRTが送信/受信デバイス12に直接転送されるように、データフェーズ453外で、特に通信調停フェーズ451でマルチプレクサ157を制御する。データフェーズ453において、通信制御モジュール113、より正確にはプロトコルコントローラ1133は、インターフェースモジュール15が変調された信号TxD_PWMを送信/受信デバイス12に転送するようにマルチプレクサ157を制御する。
【0071】
図4は、送信/受信デバイス12がデータフェーズ動作モード453_Bで動作されるべきか否かを示す制御信号TC_MDを示す。このために、制御信号TC_MDは、通信調停フェーズ451の最後のビット451_LBでそのレベルを変更する。
図4の例では、制御信号TC_MDは、通信調停フェーズ451の最後のビット451_LBで、そのレベル0からレベル1に切り替わる。次いで、制御信号TC_MDは、次の通信調停フェーズ451の第1のビット451_FBで再びそのレベルを変更する。
図4の例では、制御信号TC_MDは、次の通信調停フェーズ451の第1のビット451_FBでレベル1からレベル0に切り替わる。
【0072】
したがって、
図4の例による制御信号TC_MDは、値「1」で、送信/受信デバイス12がデータフェーズ453の動作モード453_Bで動作されることを特徴付ける。
図4の例による制御信号TC_MDは、値「0」で、送信/受信デバイス12が通信調停フェーズ451の動作モード453_1で動作されることを特徴付ける。
【0073】
言い換えると、
図4に示されているように、送信/受信デバイス12のデータフェーズ453の動作モード453_Bは、通信調停フェーズ451の最後のビット451_LBですでに始まり、フレーム450のデータフェーズ453の持続時間にわたって続き、次の通信調停フェーズ451の第1のビット451_FBで終わる。したがって、プロトコルコントローラ1133のビットレートと、送信/受信デバイス12の動作モードまたは物理層とは、同時には切り替えられない。
【0074】
図5は、通信調停フェーズ451からデータフェーズ453に切り替わるときの制御信号TC_MDを示す。そこで、
図6の例によれば、送信信号TxD_PRTで、まず、通信調停フェーズ451のビット持続時間またはビット時間T_B1を有するもう1ビットが送信され、このビット内で、送信/受信デバイス12の動作モード、特にその送信/受信モジュール123の動作モードが切り替えられる。その後、データフェーズ453で、ビット持続時間またはビット時間T_B2を有するビットが続く。
図6の例では、ビット持続時間T_B1を有するビットは、ビット持続時間またはビット時間T_B2を有するビットよりも長い。したがって、ビットまたはデータは、データフェーズ453では通信調停フェーズ451よりも速く送信され、バス40を介して伝送される。しかし、上述および後述されるように、望みに応じて、構成レジスタ151~154に、ビット持続時間またはビット時間T_B1、T_B2を導出するための他の値を調整することができる。
【0075】
図6に示されるように、プロトコルコントローラ1133の出力での信号TxD_PRTは、NRZ符号化される(NRZ=No-Return-to-Zero)。それにより、信号TxD_PRTは、ビット時間の長さにわたって安定する。エッジは、信号のレベル(状態)が変化したとき、すなわち0から1に変化したとき、または1から0に変化したときにのみ生じる。
【0076】
送信/受信デバイス12が特にフレーム450のデータフェーズ453に関して動作モード453_Bに切り替えなければならないことをデバイス11が送信/受信デバイス12に信号通知するとき、変調器156が使用される。変調器156は、プロトコルコントローラ1133の送信信号TxD_PRTのパルス幅変調(PWM)を実行するように設計されている。前述したように、変調器156は、例えば
図7に示されるように、TxD_PWM信号を出力する。信号TxD_PWMは、時間オフセットPWM_OSおよび変調遅延PWM_DLYを有し、これらについては後でより詳細に述べられる。通信調停フェーズ451の最後のビット451_LBには、シンボルPWM_SYBで、送信/受信デバイス12、特にその送信/受信モジュール123がどの動作モード453_Bに切り替えるべきかについて、送信/受信デバイス12のための情報が含まれている。
【0077】
図7の例では、シンボルPWM_SYBは、データフェーズ453の約1ビット持続時間またはビット時間T_B2の期間を有する。さらに、通信調停フェーズ451の最後のビット451_LBには、3つのシンボルPWM_SYBが含まれている。シンボルPWM_SYBは、異なる値を信号通知する。したがって、データフェーズ453に関する様々な動作モード453_Bに加えて、他の情報も送信/受信デバイス12に信号通知され得る。
【0078】
送信/受信デバイス12、特にその送信/受信モジュール123は、変調された信号TxD_PWMを復調し、結果として生じる変調された信号TxD_PWMにおける変調を認識するように設計されている。
【0079】
変調された信号TxD_PWMにおける情報に応じて、送信/受信デバイス12、特にその送信/受信モジュール123は、その動作モードを切り替える。さらに、送信/受信デバイス12、特にその送信/受信モジュール123が動作モード453_TXに切り替えられるべきとき、送信/受信デバイス12、特にその送信/受信モジュール123は、変調された信号TxD_TCをバス40に送信するように設計されている(送信ノード)。上述されたように、加入者局10がデータフェーズ453において受信元(受信ノード)にすぎない場合、送信/受信デバイス12、特にその送信/受信モジュール123は、その入力コンパレータのみを動作モード453_RXに切り替える。この場合、入力コンパレータの受信閾値が他の受信レベルに調整される。しかし、送信のための送信/受信デバイス12での調整は、変更される必要がない。
【0080】
図8~
図10は、
図7の変調された信号TxD_PWMを生成するための変調器156の機能様式を示す。
図8によれば、クロック信号CAN_CLKは、クロック周期Tcanclkを有する。
図9の例では、レジスタ151でBRP=1が選択されているので、クロック周期Tcanclkは、時間量子クロック信号TQ_CLKのクロック周期に等しい。信号TxD_PRTに関する
図10と共に見るとわかるように、時間量子クロック信号TQ_CLKは、通信調停フェーズ451でのビット時間T_B1に関して例えば16個の時間量子TQを定める。したがって、信号TxD_PRTの各ビットは16個の時間量子TQに分割されている。
【0081】
図11の例によれば、調整パラメータ=4を有するクロック分周器ブロック155は、クロック周期Tpwmclkを有するPWMクロック信号PWM_CLKを生成する。したがって、
図8~
図11の例では、Tpwmclk=4*Tcanclkが成り立つ。
【0082】
このPWMクロック信号PWM_CLKを使用して、変調器156は、例えば、
図12の変調された送信信号TxD_PWMを生成する。ここで、デジタル信号TxD_PWMの状態D_0が、
図13の原理に従って生成される。デジタル信号TxD_PWMの状態D_1が、
図14の原理に従って生成される。
【0083】
図12の例では、固定長の2つのPWMシンボルがあり、それぞれ、
図13および
図14にも示されているように、フェーズ1(ハイフェーズ)およびフェーズ2(ローフェーズ)に分割されている。
図13で、デジタル「0」は、例えば短いハイフェーズと長いローフェーズとして示される(D_0)。デジタル「1」では逆である。したがって、
図14でのデジタル「1」は、短いローフェーズおよび長いハイフェーズとして示される(D_1)。
【0084】
シンボルPWM_SYB全体が例えば4クロック長である場合、
図13および
図14のフェーズ1、フェーズ2は、1または3クロックまたはクロック周期Tpwmclkの長さである。フェーズ1の長さは、PWMフェーズ1構成レジスタ153で調整可能である。フェーズ2の長さは、PWMフェーズ2構成レジスタ154で調整可能である。
【0085】
このようにして、CANビット時間T_B1またはT_B2は、単一のシンボルPWM_SYBとしてまたは複数のシンボルPWM_SYBとして伝送され得る。ビット時間T_B1またはT_B2は、常にシンボルPWM_SYBのシンボル長の整数倍でなければならない。したがって、レジスタ153、154でのフェーズ1、フェーズ2の長さの構成により、ビット時間T_B1、T_B2の長さも最終的に調整される。インターフェースモジュール15は、プロトコルコントローラ1133と同じクロックで動作する。
【0086】
シンボルPWM_SYBを構成することができる様々な選択肢がある。第1の選択肢によれば、シンボルPWM_SYBのフェーズ1、フェーズ2が別々に構成される。
第2の選択肢によれば、シンボル長と、シンボルPWM_SYBの2つのフェーズフェーズ1、フェーズ2のうちの一方の長さとが構成される。次いで、他方のフェーズが、構成された2つの長さの差として計算される。
【0087】
当然、変調器156の上述した変調を実行するために、他の構成またはレジスタ151~154も可能である。
追加の構成パラメータは、
図7によるオフセットPWM OSである。この構成パラメータは、クロック信号PWM_CLK Tpwmclkのクロック周期のオフセットである。オフセットPWM OSは、
図7に示されるように、データフェーズ453での信号TxD_PRTのビットと、変調された送信信号TxD_PWMでのシンボルPWM_SYBとの間の位相シフトが最小化されるように、時間遅延を伴って信号TxD_PRTの変調を開始するように働く。
【0088】
構成可能なオフセットPWM OSの大きな利点は、オフセットPWM OSの構成が、通信調停フェーズ451のビット時間T_B1がデータフェーズ453でのビット時間T_B2の整数倍でないときに生じる位相ジャンプを補償することもできることである。したがって、2つのビット時間T_B1、T_B2は、モジュール15および通信制御デバイス11または加入者局10のユーザが任意に調整可能である。したがって、加入者局10用のモジュールは十分な融通性を提供する。
【0089】
構成レジスタ151~154は、加入者局10の動作中に変調パラメータの最適化を可能にする。
モジュール15、16の上述した形態の第1の修正形態によれば、モジュール15、16の少なくとも一方だけが、動作モード453_TXまたはTXデータフェーズモードへの切替えをできるようにすることが可能である。そのような変形形態は、例えば、機能を実施するためにそれ自体は信号を送信するだけでよく、バス40から信号を受信する必要はないバスシステム1の加入者局10、20の場合に有利であり得る。そのような加入者局の形態に関する例は純粋な制御要素であり、その制御はバス40を介して伝送されるが、制御に関するイベントをバスでの通信とは独立して受信または生成する。
【0090】
モジュール15、16の上述した形態の第2の修正形態によれば、モジュール15、16の少なくとも一方だけが、動作モード453_RXまたはRXデータフェーズモードへの切替えをできるようにすることが可能である。そのような変形形態は、例えば、機能を実施するためにそれ自体は信号を送信する必要はなく、バス40から信号を受信するだけでよいバスシステム1の加入者局10、20の場合に有利であり得る。そのような加入者局の形態に関する例は、送信機、特にロータリエンコーダ、アクチュエータなどである。
【0091】
当然、デバイス11、12の前述の機能を、CAN FDおよび/またはCANの修正に関して、少なくとも使用データの送信に関して使用可能である。
図15は、通信制御デバイス110および送信/受信デバイス120ならびにインターフェースモジュール150を備える加入者局100の基本構造を示す。
【0092】
加入者局100の以下に述べる構造は、信号のビットを通信制御デバイス110と送信/受信デバイス120との間で対称的に伝送するロバストで簡単な方法を提供する。これは、フレーム450のデータフェーズ453中のデータの伝送中に特に有利である。
【0093】
加入者局10とは対照的に、通信制御デバイス110は、第3の端子114をさらに有する。端子114は入力端子である。任意選択で、端子114は、入力または出力のいずれかとして切替え可能な端子である。
【0094】
送信/受信デバイス120は、前述した例示的実施形態の送信/受信デバイス12に加えて、端子121、122、124と送信/受信モジュール123との間に接続された符号化ブロック16を有する。したがって、送信/受信デバイス120も、第3の端子124をさらに有する。端子124は出力端子である。任意選択で、端子124は、入力または入力のいずれかとして切替え可能な端子である。符号化ブロック16は、送信/受信デバイスが第2の通信フェーズで切り替えられる動作モードに応じて、第3の端子の伝送方向を選択するように設計されていてもよい。
【0095】
インターフェースモジュール150は、前述した例示的実施形態のインターフェースモジュール15に加えて、復号化ブロック158およびマルチプレクサ159を有する。
送信/受信デバイス120の受信信号RxD_TCは、端子122、124(RxDおよびRx_Invとも呼ばれることもある)を介して差動信号としてデバイス11に出力される。Rx_Invは、常に信号RxD_TCの反転値を有する。インターフェースモジュール150での2つの信号RxD、Rx_Invから、単一のデジタル信号RxD1が再び復号化される。
【0096】
加入者局10の形態によって、送信/受信モジュール123は、バス40から受信されたフレーム450を、端子122、124、112、114を介して差動信号RxD、Rx_Invとして通信制御モジュール113に送信することができる。したがって、通信制御モジュール113は、以下でより詳細に述べるように、バス40を介して送信されたフレーム450を、端子111、112を介して差動信号として受信することができる。
【0097】
符号化ブロック16は、信号RxD_TC、すなわち受信信号RxDから信号Rx_Invを生成する。信号Rx_Invは、信号RxD_TCの反転信号である。符号化ブロック16は、信号Rx_Invを端子124に出力する。それにより、送信/受信デバイス12は、端子122、124を介して、信号RxD、Rx_Invを差動出力信号として通信制御デバイス11に出力することができる。最も単純な場合、符号化ブロック16は、信号RxD_TCを反転するインバータである。
【0098】
インターフェースモジュール150の復号化ブロック158は、その入力で端子112、114に接続されている。復号化ブロック158は、端子112、114から、信号RxDおよび信号Rx_Invからなる差動入力信号を受信する。復号化ブロック158は、信号RxD、Rx_Invを非差動信号RxD1に復号化する。復号化ブロック158は、信号RxD1をマルチプレクサ159に出力する。
【0099】
プロトコルコントローラ1133は、制御信号TC_MDによってマルチプレクサ159を制御する。制御信号TC_MDの信号値に応じて、復号化ブロック158によって復号化された信号RxD1または信号RxDが端子122からプロトコルコントローラ1133に信号RxD_PRTとして提供されるかどうかが選択される。
【0100】
任意選択で、送信/受信モジュール123は、データフェーズ453の動作モード453_Bにおいてのみ、端子122、124を介して差動信号RxD、Rx_Invを通信制御デバイス11に送信する。
【0101】
差動信号としてのこの伝送の目的は、送信/受信モジュール123からデバイス11、12間の接続ラインを介する途中で、および集積回路(IC)のパッドセルを介して、0から1および1から0への2つの信号エッジに関する信号伝搬時間をできるだけ対称的に保つことである。エッジの高度な対称性は、2つのバスレベルの一方が非対称の伝搬時間によって大幅に短縮され、確実にサンプリングすることができなくなるのを防ぐ。
【0102】
用途に応じて、2つのマルチプレクサ157、159は、同じ信号、特に制御信号TC_MD、または2つの異なる信号によって制御することができる。
その他の点では、第1の例示的実施形態に関して述べたのと同様に、加入者局10、30およびバスシステム1で通信を行うことができる。
【0103】
第3の例示的実施形態によれば、動作モードシグナリング信号を送信/受信デバイス120に送信するためにデバイス110、120に提供されるSTB端子が、端子114、124に関してそれぞれ使用される。
【0104】
この場合、CAN XL通信が行われないときに、デバイス110はSTB端子をドライブして、送信/受信デバイスが待機状態(スタンバイ)に切り替えられるべきであること、またはアクティブ状態に戻るべきであることを送信/受信デバイス120に信号通知することができる。待機状態では、バス40での通信は行われない。アクティブ状態では、デバイス110は端子STBを入力としてドライブし、次いで、送信/受信デバイスは、RxD_TC信号の差動伝送のためにこの端子を使用する。したがって、デバイス110は、バスでの通信に応じて、送信/受信デバイスがどの動作モードまたは状態に切り替えられるべきかについて、送信/受信デバイスに信号通知することができる。
【0105】
加入者局100の形態により、送信/受信デバイス120の別の動作モードへの切替えを行うべきであることを通信制御デバイス110が送信/受信デバイス120に信号通知することができるようにするために、それぞれ通信制御デバイス110およびそれに関連する送信/受信デバイス120での追加の端子によるガルバニック接続は必要ない。さらに、デバイス110、120間のデータ伝送の対称性を保証することができるようにするために、通信制御デバイス110およびそれに接続される送信/受信デバイス120での追加の端子は不要である。すなわち、有利には、デバイス110、120の標準ハウジングで利用可能でない追加の端子は必要ない。したがって、追加の端子を提供するために、別のより大型で高コストのハウジングに変更する必要はない。
【0106】
デバイス110、120の上述した形態により、データフェーズ453では、CANまたはCAN-FDよりもはるかに高いデータレートを実現することができる。さらに、前述したように、データフェーズ453のデータフィールド内のデータ長を任意に選択することができる。これにより、通信調停に関するCANの利点を維持しながら、大量のデータを、従来よりも短時間で非常に確実に、したがって効果的に伝送することができ、すなわちエラーに起因するデータの反復が必要ない。
【0107】
その他の点では、第1または第2の例示的実施形態に関して述べたのと同様に、加入者局10、30およびバスシステム1で通信を行うことができる。
デバイス11、12、31、32、モジュール15、16、35、加入者局10、20、30、バスシステム1、およびそこで実施される方法の前述したすべての形態は、個別に、またはすべての可能な組合せで使用することができる。特に、上述した例示的実施形態のすべての特徴および/またはそれらの修正形態は、任意に組み合わせることができる。追加または代替として、特に以下の修正形態が考えられる。
【0108】
CANバスシステムの例で本発明を前述してきたが、本発明は、異なる通信フェーズのために生成されるバス状態が異なる、2つの異なる通信フェーズが使用される各通信ネットワークおよび/または通信方法で使用することができる。特に、本発明の上述した原理は、異なる通信フェーズのためにプロトコルコントローラまたはモジュール113からの切替え信号を必要とし、および/またはここでデバイス11、12間のデータ交換を必要とするインターフェースにおいて使用可能である。
【0109】
例示的実施形態による上述したバスシステム1を、CANプロトコルに基づくバスシステムに従って述べてきた。しかし、例示的実施形態によるバスシステム1は、データが2つの異なるビットレートでシリアル伝送可能である別のタイプの通信ネットワークでもよい。バスシステム1において、共通のチャネルへの加入者局10、20、30の排他的で衝突のないアクセスが少なくとも特定の期間にわたって保証されていることは、有利であるが、必須の前提条件ではない。
【0110】
例示的実施形態のバスシステム1における加入者局10、20、30の数および配置は任意である。特に、バスシステム1での加入者局20は省略することができる。加入者局10または30のうちの1つまたは複数がバスシステム1に存在することが可能である。バスシステム1内のすべての加入者局が同一に設計される、すなわち加入者局10のみまたは加入者局30のみが存在することも考えられる。