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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】光メモリ、光回折素子、及び、記録方法
(51)【国際特許分類】
   G11B 7/24035 20130101AFI20240521BHJP
   G11B 7/0033 20060101ALI20240521BHJP
   G11B 7/013 20060101ALI20240521BHJP
   G11B 7/1367 20120101ALI20240521BHJP
   G11B 7/1353 20120101ALI20240521BHJP
【FI】
G11B7/24035
G11B7/0033
G11B7/013
G11B7/1367
G11B7/1353
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022572902
(86)(22)【出願日】2021-08-20
(86)【国際出願番号】 JP2021030685
(87)【国際公開番号】W WO2022145084
(87)【国際公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-04-24
(31)【優先権主張番号】P 2020219578
(32)【優先日】2020-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】九内 雄一朗
【審査官】川中 龍太
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/010447(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/014935(WO,A1)
【文献】特開2005-285162(JP,A)
【文献】特許第3793040(JP,B2)
【文献】特開2013-125259(JP,A)
【文献】特表2010-531995(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 7/24035
G11B 7/0033
G11B 7/013
G11B 7/1367
G11B 7/1353
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み又は屈折率が互いに独立に設定された複数のセルと、前記複数のセルに積層された光メモリと、を備えている光回折素子であって、
前記光メモリは、支持体と、光の照射により結晶相と非晶質相との間で相変化する相変化材料により構成された複数のナノ粒子であって、前記支持体により支持されている複数のナノ粒子と、を備え、
各ナノ粒子は、特定の面の面内方向および前記特定の面の法線方向の少なくとも何れかにおいて互いに離間しており、
前記特定の面に各セルの底面を投影することにより得られる領域の各々を前記光メモリの区画として、各区画には、前記複数のナノ粒子の一部である1又は複数のナノ粒子が配置されている、
ことを特徴とする光回折素子。
【請求項2】
光の照射により結晶相と非晶質相との間で相変化する相変化材料により構成された複数のナノ粒子であって、特定の面内方向において互いに離間している複数のナノ粒子を備えている光メモリを用いた記録方法であって、
空間強度分布が特定の情報を表す複数の信号光であって、各々が時間差を有する複数の信号光が光メモリに入射する第1の工程と、
各信号光を書き込み用の光として、各信号光を光メモリに記録する第2の工程と、を含んでいる、
ことを特徴とする記録方法。
【請求項3】
前記第2の工程において、前記各信号光を前記光メモリの異なる領域に記録する、
ことを特徴とする請求項に記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光メモリ、光回折素子、及び、記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスク型であり、記録材料の形状がバルク&プレーン型である光メモリ(DVDやBlu-Ray(登録商標)ディスクなど)が特許文献1に記載されている。このような光メモリは、光ディスクとも呼ばれる。光ディスクには、再生専用のものと、一度だけ書き込み可能なものと、複数回に亘って書き換え可能なものとがある。
【0003】
これらのうち、書き換え可能な光ディスクは、記録材料として、Ge-Sb-Te系に代表される化合物を用いている。これらの化合物は、カルコゲナイドガラスとも呼ばれる。また、その一例としては、GeSbTeが挙げられる。以下において、Ge-Sb-Te系の化合物のことを単にGSTと記載する。
【0004】
GSTは、アモルファス相と結晶相とを利用する相変化型の記録材料である。アモルファス相は、融点以上の温度に加熱したGSTを急冷することによって得られる。また、結晶層は、アモルファス相をガラス転移点以上融点以下の温度においてアニールすることによって得られる。光ディスクにおいては、記録材料の各区画に対して書き込み用のレーザ光を照射する。光ディスクにおいては、このレーザ光照射を用いて記録材料の各区画を所定の温度領域まで加熱することによって、相変化を実現している。
【0005】
なお、アモルファス相と結晶相とでは、光の屈折率、吸収率、および、反射率などの光学的な物性が異なる。そのため、光ディスクにおいては、読み出し用のレーザ光を用いて、記録材料の各区画がアモルファス相及び結晶相の何れであるのか読み出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】日本国公開特許公報「特開2001-325745号」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、書き換え可能な光ディスクにおいて、記録材料であるGSTは、ディスク状の樹脂である基板の上に、当該基板の有効領域の全面を一様に覆うように設けられている。このように、書き換え可能な光ディスクは、プレーン型か、または、溝状のグルーブやランドと呼ばれる凹凸構造を有する記録材料を採用している。これらの書き換え可能な光ディスクのいずれにおいても、記録材料の層は、バルクサイズの連続体として形成されている。そのため、記録材料を構成するGSTの体積が記録材料の各区画の体積と比較して著しく大きくなる。バルクサイズの連続体自身の相転移に要するエネルギーが高いこと、および、レーザ光を吸収することによって生じた熱が熱伝導によって照射スポットよりも外側に広がり失われやすいことから、各区画を相変化させるために高い光のパワー及び/又はエネルギーを要し、エネルギー効率が低い。
【0008】
本発明の一態様は、上述した課題に鑑みなされたものであり、その目的は、光メモリにおいて、各区画を相変化させるときのエネルギー効率を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る光メモリは、支持体と、光の照射により結晶相と非晶質相との間で相変化する相変化材料により構成された複数のナノ粒子であって、前記支持体により支持されている複数のナノ粒子と、を備えている。本光メモリにおいて、各ナノ粒子は、特定の面の面内方向および前記特定の面の法線方向の少なくとも何れかにおいて互いに離間している。
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る光回折素子は、厚み又は屈折率が互いに独立に設定された複数のセルと、上述した第1の態様~第5の態様の何れか一態様に係る光メモリであって、前記複数のセルに積層された光メモリと、を備えている。本光回折素子において、前記特定の面に各セルの底面を投影することにより得られる領域の各々を前記光メモリの区画として、各区画には、前記複数のナノ粒子の一部である1又は複数のナノ粒子が配置されている。
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る記録方法は、光の照射により結晶相と非晶質相との間で相変化する相変化材料により構成された複数のナノ粒子であって、特定の面内方向において互いに離間している複数のナノ粒子を備えている光メモリを用いた記録方法である。本記録方法は、空間強度分布が特定の情報を表す複数の信号光であって、各々が時間差を有する複数の信号光が光メモリに入射する第1の工程と、各信号光を書き込み用の光として、各信号光を光メモリに記録する第2の工程と、を含んでいる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、光メモリにおいて、各区画を相変化させるときのエネルギー効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施形態に係る光メモリの一部を拡大した斜視図である。
図2図1に示した光メモリの断面図である。
図3図1に示した光メモリの一変形例である光メモリの断面図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係る光回折素子の斜視図である。
図5図4に示した光回折素子の一部を拡大した斜視図である。
図6図4に示した光回折素子の一部を拡大した平面図である。
図7】本発明の第3の実施形態に係る記録システムの斜視図である。
図8図7に示した記録システムが実行する記録方法のフローチャートである。
図9図8に示した記録方法により記録された情報を例示する模式図である。
図10】本発明の第3の実施形態に係る記録システムの一変形例である記録システムを構成する光演算装置及び光メモリの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔第1の実施形態〕
<光メモリの構成>
本発明の第1の実施形態に係る光メモリ10について、図1及び図2を参照して説明する。図1は、光メモリ10の一部を拡大した斜視図である。図2は、光メモリ10の一部を拡大した断面図であって、図1に図示したA-A線に沿った断面の断面図である。図1に示すように、光メモリ10は、支持体11と、複数のナノ粒子12とを備えている。
【0015】
(支持体)
図1に示すように、支持体11は、2次元的に延在している層状部材である。図1においては、支持体11の一対の主面である主面111,112がxy平面と平行になるように、すなわち、主面111,112の法線方向がz軸方向と平行になるように、直交座標系を定めている。主面111は、特定の面の一例であり、主面111の面内方向は、特定の面内方向の一例である。また、z軸方向と平行な方向は、特定の面の法線方向の一例である。以下においては、特定の面の法線方向のことを厚み方向と称する。なお、支持体11の厚みは、限定されるものではなく、適宜定めることができる。
【0016】
なお、図1において、支持体11は、他の部材(例えば基板など)に支えられることなく独立した状態で図示されている。このように、支持体11は、他の部材から独立していてもよいし、基板などの他の部材により支持されていてもよい。例えば、基板の一方の主面の上に支持体11を形成することによって、基板を用いて支持体11を支持することができる。
【0017】
支持体11は、透光性を有する材料により構成されていることが好ましい。本実施形態においては、支持体11を構成する材料として、メタアクリル系樹脂を採用している。ただし、透光性を有する材料は、メタアクリル系樹脂に限定されず、一般的なビニル系樹脂やポリイミド類、ポリエーテル類、ポリエステル類、ポリオール類、エポキシ類、オレフィン類、及び脂環式オレフィン類などであってもよい。また、透光性を有する材料は、石英ガラスに代表されるガラスであってもよい。また、基板を用いて支持体11を支持する場合、支持体11を構成する材料も、同様に、透光性を有することが好ましい。
【0018】
また、本実施形態において、支持体11は、主面111,112がxy平面と平行になるように、平面に沿って配置されている。ただし、支持体11は、曲面に沿って配置されていてもよい。
【0019】
(ナノ粒子)
複数のナノ粒子12の各々は、光メモリ10において材料を不揮発的に記録する記録材料として機能する。各ナノ粒子12は、光の照射により結晶相と非晶質相との間で相変化する相変化材料により構成されている。本実施形態においては、各ナノ粒子12を構成する材料として、GeSbTeを用いている。GeSbTeは、カルコゲナイドガラスとも呼ばれるGe-Sb-Te系の化合物の一例である。以下において、Ge-Sb-Te系の化合物のことを単にGSTと記載し、GeSbTeのことをGST225と記載する。GST225は、透光性を有する。
【0020】
なお、各ナノ粒子12を構成する材料は、GST225に限定されない。各ナノ粒子12を構成する材料は、光及び/又は熱のエネルギーにより2つの相間において相変化する相変化材料のなかから適宜選択することができ、GSTのような擬二次元系の化合物の他にも、たとえば、Sb-Teのような二元系の化合物、および、これに少量のGe、Ag、Inなどを添加した多元系の化合物なども好適に用いることが出来る。多元系の化合物としては、Ag-In―Sb-Te(AIST)やGe-Sb-Se-Te(GSST)などが好適に用いられる。このように、相変化材料は、書き換え可能なDVDやBlu-Ray(登録商標)ディスクなどの記録材料として採用されている材料から適宜選択することができる。
【0021】
GST225は、晒された温度履歴に応じて、アモルファス相と結晶相とをとり得る。GST225を融点Tm以上に加熱することにより得られる液相を急冷した場合、アモルファス相が得られる。また、アモルファス相をガラス転移点Tg以上融点Tm以下の温度においてアニールすることによって、結晶層が得られる。光メモリ10においては、光ディスクの場合と同様に、各ナノ粒子12に対して書き込み用の光を照射する。以下において、書き込み用の光のことを信号光とも呼ぶ。光メモリ10においては、この信号光を用いて各ナノ粒子12を所定の温度領域まで加熱することによって、相変化を実現している。
【0022】
なお、アモルファス相と結晶相とでは、光の屈折率、吸収率、および、反射率などの光学的な物性が異なる。そのため、光メモリ10においては、読み出し用の光を用いて、各ナノ粒子12がアモルファス相及び結晶相の何れであるのか読み出すことができる。
【0023】
本実施形態では、各ナノ粒子12の特定の面内方向における粒径である直径Dとして100nmを用いている。ただし、相変化させるときのエネルギー効率を高めるという観点では、直径Dは、小さい方が好ましく、例えば、50nm以下であることが好ましい。ただし、直径Dは、これらの例に限定されず、ナノメートルのオーダーに含まれる範囲内において、すなわち、1nm以上1000nm未満の範囲内において適宜選択することができる。なお、各ナノ粒子12の特定の面内方向における形状が円形ではない場合には、各ナノ粒子12の外接円の直径を直径Dとして用いることができる。
【0024】
また、本実施形態では、各ナノ粒子12の厚みtとして、直径Dよりも小さな60nmを用いている。ただし、厚みtは、これに限定されず、直径Dと略等しくてもよいし、直径Dを上回ってもよい。
【0025】
本実施形態において、各ナノ粒子12は、その一部が支持体11に埋設されている(図2参照)。これにより、各ナノ粒子12は、支持体11により支持されている。ただし、各ナノ粒子12は、その全部が支持体11に埋設されていてもよい。例えば、図3を参照して後述する光メモリ10Aにおいて、各第iのナノ粒子12iは、その全部が支持体11Aに埋設されている。
【0026】
各ナノ粒子12は、主面111の面内方向において互いに離間した状態で配置されている。各ナノ粒子12は、主面111の面内において層状に(2次元的に)散在しているとも言える。本実施形態においては、各ナノ粒子12の特定の面内方向における配置パターンとして正方格子を採用している。ただし、各ナノ粒子12の特定の面内方向における配置パターンは、これに限定されるものではなく、適宜設定することができる。ただし、この配置パターンは、周期的な配置パターンであることが好ましく、各ナノ粒子12は、周期的に配置されていることが好ましい。正方格子以外の配置パターンの例としては、六方格子が挙げられる。
【0027】
<変形例>
光メモリ10の一変形例である光メモリ10Aについて、図3を参照して説明する。図3は、光メモリ10Aの一部を拡大した断面図である。図3は、図2に示した光メモリ10のA-A断面図に対応する断面図である。なお、光メモリ10Aにおける支持体11A、主面11A1,11A2、及びナノ粒子12Aの各々は、それぞれ、光メモリ10における支持体11、主面111,112、及びナノ粒子12に対応する。
【0028】
光メモリ10において、複数のナノ粒子12は、その一部が支持体11に埋設されており、主面111の面内において層状に(2次元的に)散在している。
【0029】
一方、光メモリ10Aにおいて、複数のナノ粒子12Aは、第1のナノ粒子121、第2のナノ粒子122、第3のナノ粒子123、第4のナノ粒子124、及び第5のナノ粒子125により構成されている。以下において、第1~第5のナノ粒子121~125を区別しない場合には、第iのナノ粒子12i(iは、1以上5以下の整数)とも称する。
【0030】
各第iのナノ粒子12iは、光メモリ10のナノ粒子12と同様に、層状に散在している。ただし、各第iのナノ粒子12iは、ナノ粒子12と比較して、散在している深さ(厚み方向における主面11A1からの距離)がそれぞれ異なる。第1のナノ粒子121は、支持体11Aの内部のうち、主面11A1の近傍に設けられている。第2のナノ粒子122は、第1のナノ粒子121の下側(z軸負方向側)であって、距離D12だけ離間した位置に設けられている。第3のナノ粒子123は、第2のナノ粒子122の下側(z軸負方向側)であって、距離D23だけ離間した位置に設けられている。第4のナノ粒子124は、第3のナノ粒子123の下側(z軸負方向側)であって、距離D34だけ離間した位置に設けられている。第5のナノ粒子125は、第4のナノ粒子124の下側(z軸負方向側)であって、距離D34だけ離間した位置に設けられている。このように、各第iのナノ粒子12iは、支持体11Aの内部に積層されている。
【0031】
そのうえで、各第iのナノ粒子12iは、厚み方向に沿って一軸上に配列されている(図3参照)。
【0032】
このように、光メモリ10Aは、厚み方向に沿って一軸上に配列されている第1のナノ粒子121~第5のナノ粒子125を1つのナノ粒子群とした場合に、複数のナノ粒子群を備えている。各ナノ粒子群は、主面11A1をその法線方向から平面視した場合に、互いに離間している。したがって、光メモリ10Aは、複数のナノ粒子12Aのうち一部が厚み方向に沿って配列している光メモリの一例である。ただし、光メモリ10Aの一変形例においては、1つのナノ粒子群のみを備えている構成を採用することもできる。この光メモリ10Aの一変形例は、複数のナノ粒子12Aのうち全部が厚み方向に沿って配列している光メモリの一例である。
【0033】
<光メモリの製造方法>
図1及び図2に示した光メモリ10、及び、図3に示した光メモリ10Aは、スパッタリングや真空蒸着などに代表される成膜技術と、フォトリソグラフィ及び電子線リソグラフィに代表される微細加工技術と、を組み合わせることによって製造することができる。また、FIB(Focused Ion Beam)などによる選択的エッチングや選択的デポジションができる各種手法や、原子1層分ずつを選択的に付加成膜できるALD(Atomic Layer Deposition)と呼ばれる技術なども好適に利用することができる。
【0034】
また、ナノ粒子12、12Aを製造するためには、例えば、量子ドットを製造するために用いられているホットインジェクション技術、マイクロリアクターを用いたナノ粒子製造技術、シリカや酸化チタンなどを形成するのに使用されるゾルゲル法などを転用することができる。ただし、ナノ粒子12、12Aを製造するための技術は、これに限られない。上述のように、所望の相変化材料層をスパッタリングや真空蒸着などの手法で平膜成形し、その上からリソグラフィなどの手法によってナノ粒子状にエッチング加工する方法でもよい。
【0035】
また、光メモリ10,10Aおよびナノ粒子12、12Aを製造するためには、ブロックコポリマーを用いたセルフアッセンブリー型のナノ構造形成技術を用いることができる。特に、ナノ粒子12の直径Dが400nm以下となる場合には、この技術を好適に用いることができる。たとえば、従来のフォトリソグラフィ技術とブロックコポリマーを用いたセルフアッセンブリー技術とを組み合わせることによるSubtractiveな成形方法を利用することもできるし、ALDなどとセルフアッセンブリー技術とを組み合わせることによってadditiveな加工を施すこともできる。Subtractiveな形成方法においては、ブロックコポリマーによって自己形成された微細パターンをマスクとして、エッチング加工により不要な部分を削り取って所望のパターンを形成できる。また、Additiveな形成方法においては、ALDなどを用いて、ブロックコポリマーの片方のポリマー鎖成分にのみ選択的に原子を吸着させていくことで所望の形状を形成することが出来る。これらの手法によって周期的且つ微細な(例えば100nm以下の)パターンを形成することができる。
【0036】
〔第2の実施形態〕
<光回折素子の構成>
本発明の第2の実施形態に係る光回折素子1ついて、図4図6を参照して説明する。図4は、光回折素子1の斜視図である。図5は、光回折素子1の一部(9セル分)を拡大した斜視図である。図6は、光回折素子1の一部(9セル分)を拡大した平面図であって、光回折素子1を、支持体11の主面(図1に示した主面111,112)の法線と精巧な方向(z軸方向)から平面視した場合に得られる平面図である。なお、図5及び図6においては、光回折素子1を構成する基板Sの図示を省略している。
【0037】
図4に示すように、光回折素子1は、平板状の光回折素子であり、厚み又は屈折率が互いに独立に設定された複数のマイクロセルAと、ベースBと、第1の実施形態において説明した光メモリ10と、基板Sとにより構成されている。
【0038】
(マイクロセル)
各マイクロセルAは、セルの一例であり、透光性を有する樹脂製である。光回折素子1に信号光が入射すると、各マイクロセルAを透過した信号光が相互に干渉することによって、予め定められた光演算が行われる。光回折素子1から出力される信号光の強度分布は、その光信号の結果を表す。
【0039】
ここで、「マイクロセル」とは、例えば、セルサイズが10μm未満のセルのことを指す。また、「セルサイズ」とは、セルの面積の平方根のことを指す。例えば、マイクロセルの平面視形状が正方形である場合、セルサイズとは、セルの一辺の長さである。セルサイズの下限は、特に限定されないが、例えば1nmである。
【0040】
図4に例示した光回折素子1は、マトリックス状に配置された2000×2000個のマイクロセルAにより構成されている。各マイクロセルAの平面視形状は、例えば、1μm×1μmの正方形であり、光回折素子1の平面視形状は、例えば、2mm×2mmの正方形である。
【0041】
なお、セルサイズ、各マイクロセルAの平面視形状、及び光回折素子1の平面視形状は、上述した例に限定されず、適宜定めることができる。
【0042】
(1)マイクロセルAの厚みをセル毎に独立に設定することによって、又は、(2)マイクロセルAの屈折率をセル毎に独立に選択することによって、マイクロセルAを透過する光の位相変化量をセル毎に独立に設定することができる。本実施形態において、各マイクロセルAは、図4に示すように、各辺の長さがセルサイズと等しい正方形の底面を有する四角柱状のピラーにより構成される。この場合、マイクロセルAを透過する光の位相変化量は、このピラーの高さに応じて決まる。すなわち、高さの高いピラーにより構成されるマイクロセルAを透過する光の位相変化量は大きくなり、高さの低いピラーにより構成されるマイクロセルAを透過する光の位相変化量は小さくなる。
【0043】
(ベース)
ベースBは、各マイクロセルAと同じ樹脂により構成されている。ベースBの厚さは、例えば100μmであるが、これに限定されない。なお、図4においては、光回折素子1の構成を分かりやすくするために、光回折素子1においてベースBと各マイクロセルAとを分解して図示しているに過ぎない。ベースBと各マイクロセルAとは、同じ樹脂により一体化された光回折素子1として製造されるものである。したがって、図5においては、ベースBと各マイクロセルAとの間の境界を、隣接するマイクロセルA同士の境界と同様に、仮想線(2点鎖線)で図示している。
【0044】
(光メモリ)
図4に示した光メモリ10は、第1の実施形態にて図1,2を参照して説明した光メモリ10と同一に構成されている。したがって、本実施形態では、光メモリ10と、光メモリ10を構成する各部材とについては、同じ符号を付記し、その説明を省略する。本実施形態において、光メモリ10は、後述する基板Sと、光回折素子1のベースBとの間に介在している。
【0045】
本実施形態においては、複数のナノ粒子12の一部である9個のナノ粒子12であって、支持体11の主面の面内方向においてひとかたまりである9個のナノ粒子12が光メモリ10における1区画を構成している(図6参照)。そのうえで、各マイクロセルAには、9個のナノ粒子12からなる各区画のうち何れか1つの区画が割り当てられている。
【0046】
光回折素子1は、空間強度分布を有する光(すなわち信号光)が入射した場合に、各マイクロセルAの厚み又は屈折率に応じて、入射した光の空間強度分布を別の空間強度分布に変換したうえで出力する。光回折素子1によれば、各マイクロセルAと各区画とが1対1の関係で対応しているので、空間強度分布を有する信号光を書き込み用の光として用い、光回折素子1が変換したあとの空間強度分布を記録することができる。
【0047】
なお、光回折素子1においては、空間強度分布を有する信号光を書き込み用の光として用いる代わりに、当該信号光とは異なる書き込み用の光を用いて、光メモリ10の各マイクロセルAになんらかの書き込みを行っておいてもよい。光メモリ10の各マイクロセルAになんらかの書き込みを行うことによって、各マイクロセルAを透過する光の位相変化量を変化させることができる。したがって、光回折素子1において、光メモリ10は、各マイクロセルAを透過する光の位相変化量を事後的に調整する位相変化量可変機構として機能する。
【0048】
(基板)
基板Sは、透光性を有する材料により構成された板状部材である。本実施形態においては、透光性を有する材料として石英ガラスを用いている。ただし、透光性を有する材料は、石英ガラスに限定されず、適宜選択することができる。光メモリ10、ベースB、及び複数のマイクロセルAは、この順番で、基板Sの一方の主面の上に積層されている。なお、光回折素子1は、透過型の構成を採用している。ただし、本発明の一態様に係る光回折素子は、透過型に限定されず、反射型であってもよい。反射型の光回折素子においては、透光性を有する材料により構成された基板Sの代わりに、主面が鏡面からなる基板を用いることができる。また、基板Sの一対の主面のうち、光メモリ10が形成されていない側の主面に、主面が鏡面からなる基板を重ねる構成を採用してもよい。
【0049】
<光メモリの変形例>
光回折素子1においては、図1及び図2に示した光メモリ10の代わりに、図3に示した光メモリ10Aを用いることもできる。光メモリ10の代わりに光メモリ10Aを用いることによって、光回折素子1が変換したあとの空間強度分布をマルチレベルで記録することができる。
【0050】
また、光メモリ10の代わりに光メモリ10Aを用いる場合においても、光メモリ10を位相変化量可変機構として用いいてもよい。光メモリ10Aにおいては、5層の第iのナノ粒子12iが支持体11Aの厚み方向に沿って配列されている。したがって、光メモリ10Aは、光メモリ10と比較して、各マイクロセルAを透過する光の位相変化量を変化させる場合の調整幅を広げることができる。したがって、この構成によれば、各マイクロセルAにおける位相変化量の調整幅がより広い光回折素子1を提供することができる。
【0051】
<複数段の光回折素子>
本実施形態においては、図4及び図5に示すように、1つの光回折素子1が光メモリ10を備えているものとして説明した。ただし、図7を参照して後述するように、光回折素子1と同様に構成された複数段の光回折素子(例えば光回折素子221~225)が積層されており、光メモリ10(図7においては光メモリ10B)は、最後段の光回折素子(例えば光回折素子225)の更に後段に配置されていてもよい。空間強度分布を有する信号光に対して光回折素子221~225の各々が順番に作用することによって、複数段の光回折素子は、光演算装置として機能する。この場合に、光メモリ10は、光回折素子225の後段に設けられているので、光回折素子221~225による光演算結果を記録することができる。なお、これら複数段の光回折素子は、図7に示すように透過型であってもよいし、反射型であってもよい。
【0052】
また、図4及び図5に示すように、1つの光回折素子1が光メモリ10を備えており、このような光回折素子1を複数段積層することによって光演算装置を構成することもできる。この場合、各光回折素子221~225における各マイクロセルAを透過する光の位相変化量を事後的に調整することができるので、演算内容を事後的に調整可能な光演算装置を提供することができる。この場合においても、光メモリ10の代わりに光メモリ10Aを用いることによって、各光回折素子221~225における調整幅をより広げることができる。
【0053】
〔第3の実施形態〕
<記録システムの構成>
本発明の第3の実施形態に係る記録システム20について、図7図10を参照して説明する。図7は、記録システム20の斜視図である。図8は、記録システム20が実行する記録方法M10のフローチャートである。図9は、記録方法M10により記録された情報を例示する模式図である。図10は、記録システム20の一変形例である記録システム20Cを構成する光演算装置22~24及び光メモリ10Cの斜視図である。
【0054】
図7に示すように、記録システム20は、ビームスプリッタ21と、4つの光演算装置22~25と、光メモリ10Bとを備えている。
【0055】
(ビームスプリッタ21)
ビームスプリッタ21は、入射面211及び出射面212を有するトンネル型ビームスプリッタである。なお、出射面212には、それぞれに撮影タイミングが異なる静止画像が結像される第1の領域2121、第2の領域2122、第3の領域2123、及び第4の領域2124が設けられている。
【0056】
ビームスプリッタ21は、図7には図示していないものの、分割投影部と、遅延生成部とを備えている。分割投影部は、入射面211に入射された動画像を複数(本実施形態においては4つ)のサブ動画像に分割投影する。この時点において、分割投影された4つのサブ動画像は、同じ動画像である。ビームスプリッタ21は、たとえば、普通のビームスプリッタの後に回転式の光チョッパーのように時間差をつけることができる機構を設けたようなものであってもよい。また、高速カメラに用いられるような両方の機能を併せ持つような特殊な構造のものも好適に用いられる。
【0057】
遅延生成部は、4つのサブ動画像の各々から、それぞれ、撮影タイミングを異ならせながら静止画像を1フレームずつ生成する。以下において、4つのサブ動画像の各々から生成された各静止画像を、撮影タイミングが早いほうから順番で、第1の静止画像、第2の静止画像、第3の静止画像、及び第4の静止画像と称する。遅延生成部は、第1~第4の静止画像の各々を、それぞれ、第1~第4の領域2121~2124に結像させる。
【0058】
第1~第4の静止画像のうち時間的に隣接する静止画像同士における撮影タイミングの差は、何れも等しい。したがって、第1の静止画像と第2の静止画像との間、第2の静止画像と第3の静止画像との間、及び第3の静止画像と第4の静止画像との間に存在する遅延時間は、何れも等しい。この遅延時間は、観測対象に応じて適宜設定することができるが、本実施形態においては、例えば10n秒以上2m秒以下の範囲内において適宜設定する。遅延時間をこの範囲内において設定することによって、市場に出回っている典型的なハイスピードカメラよりも高速に各静止画像を撮影することができる。
【0059】
(光演算蔵置)
光演算装置22~25の各々は、同一に構成されている。したがって、ここでは、光演算装置22を用いて説明する。
【0060】
光演算装置22は、5枚の光回折素子221~225により構成されている(図7参照)。光回折素子221の入射面をビームスプリッタ21の側から平面視した場合、各光回折素子221~225の有効領域であるマイクロセルAが形成されている領域がぴったりと重なるように、光回折素子221~225は、この順番で積層されている。このように積層された光回折素子221~225は、空間強度分布を有する信号光に対して順番に作用することによって、光演算装置として機能する。
【0061】
したがって、光演算装置22は、第1の領域2121に結像された第1の静止画像を信号光として、この信号光に光回折素子221~225が順番に作用した結果である演算結果を後段に出力する。
【0062】
同様に、光演算装置23~25の各々は、それぞれ、第2~第4の領域2122~2124に結像された第2~第4の静止画像の各々を信号光として、各信号光に5段の光回折素子が順番に作用した結果である演算結果を後段に出力する。
【0063】
(光メモリ)
光メモリ10Bは、図1及び図2に示した光メモリ10と同様に構成された光メモリである。光メモリ10Bは、受光面が第1~第4の領域R1~R4に分割されている。
【0064】
第1~第4の領域R1~R4の各々は、それぞれ、光演算装置22~25の5段目の光回折素子と対向するように配置されている。この構成によれば、第1の領域R1は、第1の静止画像に対して光演算装置22が光演算を行った結果を記録する。同様に、第2の領域R2は、第2の静止画像に対して光演算装置23が演算を行った結果を記録し、第3の領域R3は、第3の静止画像に対して光演算装置24が演算を行った結果を記録し、第4の領域R4は、第4の静止画像に対して光演算装置25が演算を行った結果を記録する。したがって、光メモリ10Bは、第1~第4の静止画像に対して各光演算装置22~25が光演算を行った結果を、異なる第1~第4の領域R1~R4に記録する。
【0065】
以上のように、記録システム20においては、ビームスプリッタ21の遅延生成部によりわずかに時間差が付けられた複数の静止画像に対して、各光演算装置22~25が光演算を行ったうえで、その光演算結果を記録することができる。
【0066】
(記録方法)
記録システム20が実施する記録方法M10は、図8に示すように、第1の工程S11と、第2の工程S12とを含んでいる。
【0067】
第1の工程S11は、ビームスプリッタ21の遅延生成部により時間差が付けられた第1~第4の静止画の各々が、それぞれ、光メモリ10Bの第1~第4の領域R1~R4に入射する工程である。第1~第4の静止画の各々は、それぞれ、空間強度分布が特定の情報を表す複数の信号光の一例である。
【0068】
第2の工程S12は、第1~第4の静止画の各々を書き込み用の光として、第1~第4の静止画を光メモリ10Bに書き込む工程である。
【0069】
なお、第2の工程S12においては、上述したように、第1~第4の静止画の各々を、光メモリ10Bの異なる領域である第1~第4の領域R1~R4に記録してもよいし、図10に示す光メモリ10Cのように、同じ領域に記録してもよい。
【0070】
(記録された情報の読み出し)
記録システム20は、図7に図示されていないものの、光メモリ10Bに記録された情報を読み出すために、読み出し用の光を出射する光源と、読み出し用の光を光メモリ10Bの全面に照射するように構成された光学系と、光メモリ10Bを透過したあとの光を検出する光検出部と、を備えている。
【0071】
読み出し用の光は、書き込み用の信号光である第1~第4の静止画とは異なる光である。読み出し用の光は、光演算装置22~25と、光メモリ10Bとの間に設けられた空隙から、光学系を用いて光メモリ10Bの全面に照射される。
【0072】
一方、光検出部は、光メモリ10Bを構成する各ナノ粒子12を透過した光を検出できるように、複数の光センサがマトリクス状に配置された光センサアレイである。
【0073】
各ナノ粒子12のうち、結晶相であるナノ粒子12と、アモルファス相であるナノ粒子12とは、光の屈折率及び吸収率が異なっている。したがって、記録システム20の制御部は、光検出部の光センサアレイが出力した光強度信号に応じて、光の空間強度分布を取得することができる。したがって、制御部は、光メモリ10Bに書き込まれている情報を、光の空間強度分布として読み出すことができる。
【0074】
図9は、記録方法M10により記録された情報の一例である。図9に示すように、光検出部の光センサアレイが出力した光強度信号は、光メモリ10Bの第1~第4の領域R1~R4に対応付けられている。本実施形態においては、図9に示した状態において、第1~第4の領域R1~R4の各々における左下の点を原点と定めている。
【0075】
制御部は、第1~第4の領域R1~R4の各々に、なんらかのオブジェクトOBが含まれているか否かを判定する。第1~第4の領域R1~R4の各々に、なんらかのオブジェクトOBが含まれている場合、制御部は、オブジェクトOBの重心である点P1~P4の座標を算出する。制御部は、点P1~P4の座標を用いてオブジェクトOBの軌跡を推測することができる。
【0076】
このように構成された記録システム20は、高速で移動している物体(例えば飛翔体)の存在を検知したうえで、その物体の動きを予測することができる。例えば、記録システム20を移動体(例えばドローン)に搭載した場合、その移動体は、高速で移動しており、且つ、障害となったり衝突したりする可能性がある物体の存在を検知したうえで、その物体の動きを予測し、その予測結果に基づき自身の動きを制御することができる。したがって、この移動体は、物体との衝突などを避けることができる。
【0077】
〔まとめ〕
【0078】
本発明の第1の態様に係る光メモリは、支持体と、光の照射により結晶相と非晶質相との間で相変化する相変化材料により構成された複数のナノ粒子であって、前記支持体により支持されている複数のナノ粒子と、を備えている。本光メモリにおいて、各ナノ粒子は、特定の面の面内方向および前記特定の面の法線方向の少なくとも何れかにおいて互いに離間している。
【0079】
本光メモリにおいて、特定の面の面内方向および前記特定の面の法線方向の少なくとも何れかにおいて互いに離間している各ナノ粒子は、記憶材料として機能する。粒径がナノオーダーであるナノ粒子により記憶材料が構成されていることによって、各ナノ粒子において相変化を実現するために要する光のパワー及び/又はエネルギーを、バルク&プレーン型の光メモリの場合よりも抑制することができる。したがって、本光メモリは、各区画を相変化させるときのエネルギー効率を高めることができる。
【0080】
また、本発明の第2の態様に係る光メモリにおいては、上述した第1の態様に係る光メモリの構成に加えて、前記各ナノ粒子は、少なくとも一部が前記支持体に埋設されており、前記支持体を構成する材料の熱伝導率は、前記各ナノ粒子を構成する材料の熱伝導率よりも低い、構成が採用されている。
【0081】
上記の構成によれば、各ナノ粒子を確実に支持することができる。そのうえで、ナノ粒子の周囲に熱伝導率が低い材料により構成された支持体が介在するので、ナノ粒子からの熱伝導によるエネルギーの散逸を抑制することができる。したがって、各ナノ粒子が書き込み用のレーザ光を吸収することによって生じた熱が、周囲に存在する支持体や他のナノ粒子に逃げにくくなるので、エネルギー効率を更に高めることができる。
【0082】
また、本発明の第3の態様に係る光メモリにおいては、上述した第1の態様又は第2の態様に係る光メモリの構成に加えて、前記複数のナノ粒子のうちの一部又は全部のナノ粒子は、前記特定の面の法線方向に沿って配列している、構成が採用されている。
【0083】
上記の構成によれば、書き込み用のレーザ光を照射した場合に、そのレーザ光のパワー及び/又はエネルギーに応じて、相変化するナノ粒子の数を制御することができる。相変化したナノ粒子(例えばアモルファス相のナノ粒子)は、相変化する前のナノ粒子(例えば結晶層のナノ粒子)と比較して、光の屈折率及び吸収率が異なるので、再生用のレーザ光を用いて相変化したナノ粒子の数を検知することができる。したがって、本光メモリによれば、マルチレベルの光メモリを実現することができる。
【0084】
また、本発明の第4の態様に係る光メモリにおいては、上述した第1の態様~第3の態様の何れか一態様に係る光メモリの構成に加えて、前記各ナノ粒子は、前記面内方向において、周期的に配置されている、構成が採用されている。
【0085】
上記の構成によれば、光メモリの内部に各区画が周期的に配置されたメモリアレイを設けることができる。したがって、書き込み用のレーザ光が空間強度分布を有する場合に、本光メモリは、その空間強度分布を記録することができる。
【0086】
また、本発明の第5の態様に係る光メモリにおいては、上述した第1の態様~第4の態様の何れか一態様に係る光メモリの構成に加えて、前記各ナノ粒子及び支持体は、透光性を有する材料により構成されている、構成が採用されている。
【0087】
上記の構成によれば、光メモリに入射した書き込み用の光が、光メモリの後段に向けて出射される。したがって、本光メモリを他の光学素子(例えば光回折素子)の前段に配置することができる。また、この構成によれば、複数のナノ粒子が特定の面の法線方向に沿って配列されたマルチレベルの光メモリである場合に、最後段に設けられたナノ粒子にも書き込むことができる。
【0088】
本発明の第6の態様に係る光回折素子は、厚み又は屈折率が互いに独立に設定された複数のセルと、上述した第1の態様~第5の態様の何れか一態様に係る光メモリであって、前記複数のセルに積層された光メモリと、を備えている。本光回折素子において、前記特定の面に各セルの底面を投影することにより得られる領域の各々を前記光メモリの区画として、各区画には、前記複数のナノ粒子の一部である1又は複数のナノ粒子が配置されている。
【0089】
光回折素子は、空間強度分布を有する光が入射した場合に、各セルの厚み又は屈折率に応じて、入射した光の空間強度分布を別の空間強度分布に変換したうえで出力する。上記の構成によれば、各セルと各区画とが1対1の関係で対応しているので、光回折素子が変換したあとの空間強度分布を記録することができる。また、本光回折素子が備えている光メモリは、第1の態様に係る光メモリと同様に、各区画を相変化させるときのエネルギー効率を高めることができる。したがって、本光回折素子は、光回折素子が変換したあとの空間強度分布を記録する場合におけるエネルギー効率を高めることができる。
【0090】
本発明の第7の態様に係る記録方法は、光の照射により結晶相と非晶質相との間で相変化する相変化材料により構成された複数のナノ粒子であって、特定の面内方向において互いに離間している複数のナノ粒子を備えている光メモリを用いた記録方法である。本記録方法は、空間強度分布が特定の情報を表す複数の信号光であって、各々が時間差を有する複数の信号光が光メモリに入射する第1の工程と、各信号光を書き込み用の光として、各信号光を光メモリに記録する第2の工程と、を含んでいる。
【0091】
上記の構成によれば、各信号光が書き込まれた光メモリを読み出すことによって、各信号光が表す特定の情報の差分を取得することができる。これらの差分は、各信号光の間に生じている時間差に応じたものなので、本記録方法によれば、特定の情報における時間差に応じた変化を検出することができる。なお、この記録方法は、特定の情報における時間差がごく小さい場合(すなわち、ごく短時間の変化を検出する場合)であっても好適に用いることができる。
【0092】
また、本発明の第8の態様に係る記録方法においては、上述した第7の態様に係る記録方法の構成に加えて、前記第2の工程において、前記各信号光を前記光メモリの異なる領域に記録する、構成が採用されている。
【0093】
上記の構成によれば、各信号光が光メモリの異なる領域に記録されるので、各信号光が光メモリの同じ領域に記録される場合と比較して、各信号光が表す特定の情報を容易に読み出すことができる。
【0094】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0095】
1 光回折素子
A マイクロセル
B ベース
S 基板
10,10A,10B 光メモリ
R1~R4 第1~第4の領域
11,11A 支持体
111,11A1 主面(特定の面)
112,11A2 主面
12,12A ナノ粒子
121~125 第1~第5のナノ粒子
20 記録システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10