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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】成形装置、成形方法、及び金属パイプ
(51)【国際特許分類】
   B21D 26/033 20110101AFI20240521BHJP
   B21D 26/047 20110101ALI20240521BHJP
   B21D 37/16 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
B21D26/033
B21D26/047
B21D37/16
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023029631
(22)【出願日】2023-02-28
(62)【分割の表示】P 2020504872の分割
【原出願日】2019-02-06
(65)【公開番号】P2023065552
(43)【公開日】2023-05-12
【審査請求日】2023-03-20
(31)【優先権主張番号】P 2018043312
(32)【優先日】2018-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】井手 章博
(72)【発明者】
【氏名】石塚 正之
(72)【発明者】
【氏名】上野 紀条
(72)【発明者】
【氏名】野際 公宏
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/038692(WO,A1)
【文献】特開2001-259754(JP,A)
【文献】特開2006-061944(JP,A)
【文献】特開2015-171731(JP,A)
【文献】特開2009-263780(JP,A)
【文献】特開2006-212690(JP,A)
【文献】特開2006-104527(JP,A)
【文献】特開2016-002577(JP,A)
【文献】国際公開第2009/014233(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/088665(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 26/00 - 26/059
B21D 19/00
B21D 37/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属パイプ材料を膨張させて、パイプ部及びフランジ部を有する金属パイプを成形する成形装置であって、
互いに対となり、前記パイプ部を成形するためのパイプ成形面、及び前記フランジ部を成形するためのフランジ成形面を有する第1の金型及び第2の金型と、
前記フランジ成形面に設けられ、前記フランジ部の硬度を前記パイプ部よりも低下させる第1の硬度低下部と、を備え、
前記第1の硬度低下部は、前記フランジ部の長手方向に沿って間欠的に形成される、成形装置。
【請求項2】
第1の硬度低下部は、成形時における前記フランジ成形面の温度を前記パイプ成形面よりも高くする温度調整部によって構成される、請求項1に記載の成形装置。
【請求項3】
成形開始前において加熱された状態の前記金属パイプ材料のうち、前記フランジ部となる部分を冷却する冷却部によって構成される第2の硬度低下部を更に備える、請求項1または2に記載の成形装置。
【請求項4】
前記冷却部は、前記金属パイプ材料のうち、前記フランジ部となる部分に固体を接触させることで冷却を行う、請求項3に記載の成形装置。
【請求項5】
金属パイプ材料を膨張させて、パイプ部及びフランジ部を有する金属パイプを成形する成形方法であって、
互いに対となり、前記パイプ部を成形するためのパイプ成形面、及び前記フランジ部を成形するためのフランジ成形面を有する第1の金型及び第2の金型を用いて前記金属パイプを成形し、
前記フランジ成形面で前記フランジ部を成形するときに、前記フランジ部において、前記パイプ部よりも硬度を低下させる部分を形成し、
前記硬度を低下させる部分を、前記フランジ部の長手方向に沿って間欠的に形成する、成形方法。
【請求項6】
パイプ部及びフランジ部を有し、
前記フランジ部の硬度が前記パイプ部よりも低く、
前記フランジ部には、互いに硬度が異なる高硬度部及び低硬度部が形成され、前記低硬度部の硬度は、前記高硬度部に比して低く、
前記低硬度部は、前記フランジ部の長手方向に沿って、間欠的に前記フランジ部に形成されている、金属パイプの製造方法であって、
互いに対となり、前記パイプ部を成形するためのパイプ成形面、及び前記フランジ部を成形するためのフランジ成形面を有する第1の金型及び第2の金型を用い、
前記フランジ成形面に前記長手方向に沿って間欠的に設けられた硬度低下部によって、前記低硬度部を形成する、金属パイプの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形装置、成形方法、及び金属パイプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属パイプ材料を膨張させて成形金型により金属パイプを成形する成形装置が知られている。例えば、特許文献1に開示された成形装置は、パイプ部とフランジ部を有する金属パイプを成形することができる。この成形装置では、通電加熱された金属パイプ材料を成形金型内に配置し、成形金型を型閉してフランジ部を成形しながら金属パイプ材料を膨張させることによって、金属パイプを成形する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-190248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような成形装置で成形されたフランジ付きの金属パイプは、フランジ部にて他の部材に溶接される。このとき、フランジ部を他の部材に加圧しながら溶接が行われる場合がある。このとき、フランジ部の硬度が高すぎると、加圧しながらの溶接を行い難くなる場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、フランジ部を他の部材に加圧しながら溶接する場合に、容易に溶接を行うことができる成形装置、成形方法、及び金属パイプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る成形装置は、金属パイプ材料を膨張させて、パイプ部及びフランジ部を有する金属パイプを成形する成形装置であって、フランジ部の硬度をパイプ部よりも低下させる硬度低下部を備える。
【0007】
本発明の一態様に係る成形装置は、フランジ部の硬度をパイプ部よりも低下させる硬度低下部を備える。これにより、パイプ部の硬度を低下させることなく、硬度低下部によってフランジ部の硬度を低下させることができる。従って、強度が要求されるパイプ部の強度は確保しつつ、フランジ部は、加圧しながらの溶接を行い易い状態とすることができる。以上により、フランジ部を他の部材に加圧しながら溶接する場合に、容易に溶接を行うことができる。
【0008】
成形装置は、互いに対となり、パイプ部を成形するためのパイプ成形面、及びフランジ部を成形するためのフランジ成形面を有する第1の金型及び第2の金型を更に備え、硬度低下部は、成形時におけるフランジ成形面の温度をパイプ成形面よりも高くする温度調整部によって構成されてよい。これにより、温度調整部が、成形時においてフランジ成形面の温度をパイプ成形面よりも高くすることで、フランジ部がフランジ成形面と接触したときの冷却時間が長くなる。冷却時間が長くなることで、フランジ部での焼き入れ性が低下し、硬度がパイプ部よりも低くなる。
【0009】
成形装置において、温度調整部は、フランジ成形面の長手方向に沿って、間欠的にフランジ成形面に形成されていてよい。これにより、フランジ部の長手方向の沿った部分のうち、溶接を行う部分については硬度を低下させ、その他の部分については硬度を低下させることなく、強度を高くすることができる。
【0010】
成形装置において、硬度低下部は、成形開始前において加熱された状態の金属パイプ材料のうち、フランジ部となる部分を冷却する冷却部によって構成されてよい。これにより、成形開始前に予めフランジ部となる部分を冷却することで、当該部分における最大到達温度が低くなる。従って、フランジ部の焼き入れ性が低下することで、硬度を低くすることができる。
【0011】
成形装置において、冷却部は、金属パイプ材料のうち、フランジ部となる部分に固体を接触させることで冷却を行ってよい。これにより、固体がフランジ部となる部分から熱を吸収することで、当該部分を冷却することができる。
【0012】
本発明に係る成形方法は、金属パイプ材料を膨張させて、パイプ部及びフランジ部を有する金属パイプを成形する成形方法であって、フランジ部の硬度をパイプ部よりも低下させる。
【0013】
本発明に係る成形方法によれは、上述の成形装置と同様の作用・効果を得ることができる。
【0014】
本発明に係る金属パイプは、パイプ部及びフランジ部を有する金属パイプであって、フランジ部の硬度がパイプ部よりも低い。
【0015】
本発明に係る金属パイプによれば、強度が要求されるパイプ部の強度は確保しつつ、フランジ部は、加圧しながらの溶接を行い易い状態とすることができる。以上により、フランジ部を他の部材に加圧しながら溶接する場合に、容易に溶接を行うことができる。
【0016】
金属パイプにおいて、フランジ部には、互いに硬度が異なる高硬度部及び低硬度部が形成され、低硬度部の硬度は、高硬度部に比して低い。これにより、溶接が行われる部分を低硬度部とすることで、容易に溶接を行えるようにしつつ、他の部分は高硬度部とすることで、強度を確保することができる。
【0017】
金属パイプにおいて、低硬度部は、フランジ部の長手方向に沿って、間欠的にフランジ部に形成されていてよい。これにより、フランジ部の長手方向の沿った部分のうち、溶接を行う部分については低硬度部とし、その他の部分については高硬度部とすることで、強度を高くすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、フランジ部を他の部材に加圧しながら溶接する場合に、容易に溶接を行うことができる成形装置、成形方法、及び金属パイプを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る成形装置を示す概略構成図である。
図2】電極周辺の拡大図であって、(a)は電極が金属パイプ材料を保持した状態を示す図、(b)は電極に気体供給ノズルを押し付けた状態を示す図、(c)は電極の正面図である。
図3】成形金型の断面図である。
図4】成形金型の拡大断面図である。
図5】(a)はフランジ成形面を上方から見た図であり、(b)は金属パイプを上方から見た図である。
図6】(a)はフランジ成形面を上方から見た図であり、(b)は金属パイプを上方から見た図である。
図7】温度調整部の具体的な構成を示す概略図である。
図8】変形例に係る硬度低下部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明による成形装置の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0021】
〈成形装置の構成〉
図1は、本実施形態に係る成形装置の概略構成図である。図1に示されるように、金属パイプを成形する成形装置10は、上型(第1の金型)12及び下型(第2の金型)11からなる成形金型13と、上型12及び下型11の少なくとも一方を移動させる駆動機構80と、上型12と下型11との間に配置される金属パイプ材料14を保持するパイプ保持機構30と、パイプ保持機構30で保持されている金属パイプ材料14に通電して加熱する加熱機構50と、上型12及び下型11の間に保持され加熱された金属パイプ材料14内に高圧ガス(気体)を供給するための気体供給部60と、パイプ保持機構30で保持された金属パイプ材料14内に気体供給部60からの気体を供給するための一対の気体供給機構40,40と、成形金型13を強制的に水冷する水循環機構72とを備えると共に、上記駆動機構80の駆動、上記パイプ保持機構30の駆動、上記加熱機構50の駆動、及び上記気体供給部60の気体供給をそれぞれ制御する制御部70と、を備えて構成されている。
【0022】
成形金型13の一方である下型11は、基台15に固定されている。下型11は、大きな鋼鉄製ブロックで構成され、その上面に例えば矩形状のキャビティ(凹部)16を備える。下型11には冷却水通路19が形成され、略中央に下から差し込まれた熱電対21を備えている。この熱電対21はスプリング22により上下移動自在に支持されている。
【0023】
更に、下型11の左右端(図1における左右端)近傍にはスペース11aが設けられており、当該スペース11a内には、パイプ保持機構30の可動部である後述する電極17,18(下側電極)等が、上下に進退動可能に配置されている。そして、下側電極17,18上に金属パイプ材料14が載置されることで、下側電極17,18は、上型12と下型11との間に配置される金属パイプ材料14に接触する。これにより、下側電極17,18は金属パイプ材料14に電気的に接続される。
【0024】
下型11と下側電極17との間及び下側電極17の下部、並びに下型11と下側電極18との間及び下側電極18の下部には、通電を防ぐための絶縁材91がそれぞれ設けられている。それぞれの絶縁材91は、パイプ保持機構30を構成するアクチュエータ(不図示)の可動部である進退ロッド95に固定されている。このアクチュエータは、下側電極17,18等を上下動させるためのものであり、アクチュエータの固定部は、下型11と共に基台15側に保持されている。
【0025】
成形金型13の他方である上型12は、駆動機構80を構成する後述のスライド81に固定されている。上型12は、大きな鋼鉄製ブロックで構成され、内部に冷却水通路25が形成されると共に、その下面に例えば矩形状のキャビティ(凹部)24を備える。このキャビティ24は、下型11のキャビティ16に対向する位置に設けられる。
【0026】
上型12の左右端(図1における左右端)近傍には、下型11と同様に、スペース12aが設けられており、当該スペース12a内には、パイプ保持機構30の可動部である後述する電極17,18(上側電極)等が、上下に進退動可能に配置されている。そして、下側電極17,18上に金属パイプ材料14が載置された状態において、上側電極17,18は、下方に移動することで、上型12と下型11との間に配置された金属パイプ材料14に接触する。これにより、上側電極17,18は金属パイプ材料14に電気的に接続される。
【0027】
上型12と上側電極17との間及び上側電極17の上部、並びに上型12と上側電極18との間及び上側電極18の上部には、通電を防ぐための絶縁材101がそれぞれ設けられている。それぞれの絶縁材101は、パイプ保持機構30を構成するアクチュエータの可動部である進退ロッド96に固定されている。このアクチュエータは、上側電極17,18等を上下動させるためのものであり、アクチュエータの固定部は、上型12と共に駆動機構80のスライド81側に保持されている。
【0028】
パイプ保持機構30の右側部分において、電極18,18が互いに対向する面のそれぞれには、金属パイプ材料14の外周面に対応した半円弧状の凹溝18aが形成されていて(図2参照)、当該凹溝18aの部分に丁度金属パイプ材料14が嵌り込むように載置可能とされている。パイプ保持機構30の右側部分において、絶縁材91,101が互いに対向する露出面には、上記凹溝18aと同様に、金属パイプ材料14の外周面に対応した半円弧状の凹溝が形成されている。また、電極18の正面(金型の外側方向の面)には、凹溝18aに向って周囲がテーパー状に傾斜して窪んだテーパー凹面18bが形成されている。よって、パイプ保持機構30の右側部分で金属パイプ材料14を上下方向から挟持すると、丁度金属パイプ材料14の右側端部の外周を全周に渡って密着するように取り囲むことができるように構成されている。
【0029】
パイプ保持機構30の左側部分において、電極17,17が互いに対向する面のそれぞれには、金属パイプ材料14の外周面に対応した半円弧状の凹溝17aが形成されていて(図2参照)、当該凹溝17aの部分に丁度金属パイプ材料14が嵌り込むように載置可能とされている。パイプ保持機構30の左側部分において、絶縁材91,101が互いに対向する露出面には、上記凹溝18aと同様に、金属パイプ材料14の外周面に対応した半円弧状の凹溝が形成されている。また、電極17の正面(金型の外側方向の面)には、凹溝17aに向って周囲がテーパー状に傾斜して窪んだテーパー凹面17bが形成されている。よって、パイプ保持機構30の左側部分で金属パイプ材料14を上下方向から挟持すると、丁度金属パイプ材料14の左側端部の外周を全周に渡って密着するように取り囲むことができるように構成されている。
【0030】
図1に示されるように、駆動機構80は、上型12及び下型11同士が合わさるように上型12を移動させるスライド81と、上記スライド81を移動させるための駆動力を発生するシャフト82と、該シャフト82で発生した駆動力をスライド81に伝達するためのコネクティングロッド83とを備えている。シャフト82は、スライド81上方にて左右方向に延在していると共に回転自在に支持されており、その軸心から離間した位置にて左右端から突出して左右方向に延在する偏心クランク82aを有している。この偏心クランク82aと、スライド81の上部に設けられると共に左右方向に延在している回転軸81aとは、コネクティングロッド83によって連結されている。駆動機構80では、制御部70によってシャフト82の回転を制御することにより偏心クランク82aの上下方向の高さを変化させ、この偏心クランク82aの位置変化をコネクティングロッド83を介してスライド81に伝達することにより、スライド81の上下動を制御できる。ここで、偏心クランク82aの位置変化をスライド81に伝達する際に発生するコネクティングロッド83の揺動(回転運動)は、回転軸81aによって吸収される。なお、シャフト82は、例えば制御部70によって制御されるモータ等の駆動に応じて回転又は停止する。
【0031】
図3は、図1に示す成形金型13の断面図である。図3に示されるように、下型11の上面及び上型12の下面には、いずれも段差が設けられている。
【0032】
下型11の上面には、下型11の中央のキャビティ16の底面を基準ラインLV2とすると、第1突起11b、第2突起11c、第3突起11d、第4突起11eによる段差が形成されている。キャビティ16の右側(図3において右側、図1において紙面奥側)に第1突起11b及び第2突起11cが形成され、キャビティ16の左側(図3において左側、図1において紙面手前側)に第3突起11d及び第4突起11eが形成されている。第2突起11cは、キャビティ16と第1突起11bとの間に位置している。第3突起11dは、キャビティ16と第4突起11eとの間に位置している。第2突起11c及び第3突起11dのそれぞれは、第1突起11b及び第4突起11eよりも上型12側に突出している。第1突起11b及び第4突起11eにおいて基準ラインLV2からの突出量は略同一であり、第2突起11c及び第3突起11dにおいて基準ラインLV2からの突出量は略同一である。
【0033】
一方、上型12の下面には、上型12の中央のキャビティ24の底面を基準ラインLV1とすると、第1突起12b、第2突起12c、第3突起12d、第4突起12eによる段差が形成されている。キャビティ24の右側(図3において右側)に第1突起12b及び第2突起12cが形成され、キャビティ24の左側(図3において左側)に第3突起12d及び第4突起12eが形成されている。第2突起12cは、キャビティ24と第1突起12bとの間に位置している。第3突起12dは、キャビティ24と第4突起12eとの間に位置している。第1突起12b及び第4突起12eのそれぞれは、第2突起12c及び第3突起12dよりも下型11側に突出している。第1突起12b及び第4突起12eにおいて基準ラインLV1からの突出量は略同一であり、第2突起12c及び第3突起12dにおいて基準ラインLV1からの突出量は略同一である。
【0034】
また、上型12の第1突起12bは下型11の第1突起11bと対向しており、上型12の第2突起12cは下型11の第2突起11cと対向しており、上型12のキャビティ24は下型11のキャビティ16と対向しており、上型12の第3突起12dは、下型11の第3突起11dと対向しており、上型12の第4突起12eは下型11の第4突起11eと対向している。そして、上型12において第2突起12cに対する第1突起12bの突出量(第3突起12dに対する第4突起12eの突出量)は、下型11において第1突起11bに対する第2突起11cの突出量(第4突起11eに対する第3突起11dの突出量)よりも大きくなっている。これにより、上型12の第2突起12cと下型11の第2突起11cとの間、及び上型12の第3突起12dと下型11の第3突起11dとの間のそれぞれには、上型12及び下型11が嵌合した際に空間が形成される(図3(c)参照)。また、上型12のキャビティ24と、下型11のキャビティ16との間には、上型12及び下型11が嵌合した際に空間が形成される(図3(c)参照)。
【0035】
より詳細に説明すると、ブロー成形時に下型11と上型12とが合わさっていき嵌合する前の時点で、図3(b)に示されるように、上型12のキャビティ24の底面(基準ラインLV1となる表面)と、下型11のキャビティ16の底面(基準ラインLV2となる表面)との間には、メインキャビティ部(第1のキャビティ部)MCが形成される。また、上型12の第2突起12cと下型11の第2突起11cとの間には、メインキャビティ部MCに連通し、当該メインキャビティ部MCよりも容積が小さいサブキャビティ部(第2のキャビティ部)SC1が形成される。同様に、上型12の第3突起12dと下型11の第3突起11dとの間には、メインキャビティ部MCに連通し、当該メインキャビティ部MCよりも容積が小さいサブキャビティ部(第2のキャビティ部)SC2が形成される。メインキャビティ部MCは金属パイプ100におけるパイプ部100aを成形する部分であり、サブキャビティ部SC1,SC2は金属パイプ100におけるフランジ部100b,100cをそれぞれ成形する部分である(図3(c),(d)参照)。そして、図3(c),(d)に示されるように、下型11と上型12とが合わさって完全に閉じられた場合(嵌合した場合)、メインキャビティ部MC及びサブキャビティ部SC1,SC2は、下型11及び上型12内に密閉される。
【0036】
図1に示すように、加熱機構50は、電力供給部55と、電力供給部55と電極17,18とを電気的に接続するブスバー52と、を備える。電力供給部55は、直流電源及びスイッチを含み、電極17,18が金属パイプ材料14に電気的に接続された状態において、ブスバー52、電極17,18を介して金属パイプ材料14に通電可能とされている。なお、ブスバー52は、ここでは、下側電極17,18に接続されている。
【0037】
この加熱機構50では、電力供給部55から出力された直流電流は、ブスバー52によって伝送され、電極17に入力される。そして、直流電流は、金属パイプ材料14を通過して、電極18に入力される。そして、直流電流は、ブスバー52によって伝送されて電力供給部55に入力される。
【0038】
一対の気体供給機構40の各々は、シリンダユニット42と、シリンダユニット42の作動に合わせて進退動するシリンダロッド43と、シリンダロッド43におけるパイプ保持機構30側の先端に連結されたシール部材44とを有する。シリンダユニット42はブロック41上に載置固定されている。シール部材44の先端には先細となるようにテーパー面45が形成されており、電極17,18のテーパー凹面17b,18bに合わさる形状に構成されている(図2参照)。シール部材44には、シリンダユニット42側から先端に向かって延在し、詳しくは図2(a),(b)に示されるように、気体供給部60から供給された高圧ガスが流れるガス通路46が設けられている。
【0039】
気体供給部60は、ガス源61と、このガス源61によって供給されたガスを溜めるアキュムレータ62と、このアキュムレータ62から気体供給機構40のシリンダユニット42まで延びている第1チューブ63と、この第1チューブ63に介設されている圧力制御弁64及び切替弁65と、アキュムレータ62からシール部材44内に形成されたガス通路46まで延びている第2チューブ67と、この第2チューブ67に介設されている圧力制御弁68及び逆止弁69とからなる。圧力制御弁64は、シール部材44の金属パイプ材料14に対する押力に適応した作動圧力のガスをシリンダユニット42に供給する役割を果たす。逆止弁69は、第2チューブ67内で高圧ガスが逆流することを防止する役割を果たす。第2チューブ67に介設されている圧力制御弁68は、制御部70の制御により、金属パイプ材料14を膨張させるための作動圧力を有するガスを、シール部材44のガス通路46に供給する役割を果たす。
【0040】
制御部70は、気体供給部60の圧力制御弁68を制御することにより、金属パイプ材料14内に所望の作動圧力のガスを供給することができる。また、制御部70は、図1に示す(A)から情報が伝達されることによって、熱電対21から温度情報を取得し、駆動機構80及び電力供給部55等を制御する。
【0041】
水循環機構72は、水を溜める水槽73と、この水槽73に溜まっている水を汲み上げ、加圧して下型11の冷却水通路19及び上型12の冷却水通路25へ送る水ポンプ74と、配管75とからなる。省略したが、水温を下げるクーリングタワーや水を浄化する濾過器を配管75に介在させることは差し支えない。
【0042】
〈成形装置を用いた金属パイプの成形方法〉
次に、成形装置10を用いた金属パイプの成形方法について説明する。最初に、焼入れ可能な鋼種の円筒状の金属パイプ材料14を準備する。この金属パイプ材料14を、例えばロボットアーム等を用いて、下型11側に備わる電極17,18上に載置(投入)する。電極17,18には凹溝17a,18aが形成されているので、当該凹溝17a,18aによって金属パイプ材料14が位置決めされる。
【0043】
次に、制御部70は、駆動機構80及びパイプ保持機構30を制御することによって、当該パイプ保持機構30に金属パイプ材料14を保持させる。具体的には、駆動機構80の駆動によりスライド81側に保持されている上型12及び上側電極17,18等が下型11側に移動すると共に、パイプ保持機構30に含まれる上側電極17,18等及び下側電極17,18等を進退動可能としているアクチュエータを作動させることによって、金属パイプ材料14の両方の端部付近を上下からパイプ保持機構30により挟持する。この挟持は電極17,18に形成される凹溝17a,18a、及び絶縁材91,101に形成される凹溝の存在によって、金属パイプ材料14の両端部付近の全周に渡って密着するような態様で挟持されることとなる。
【0044】
なお、このとき、図2(a)に示されるように、金属パイプ材料14の電極18側の端部は、金属パイプ材料14の延在方向において、電極18の凹溝18aとテーパー凹面18bとの境界よりもシール部材44側に突出している。同様に、金属パイプ材料14の電極17側の端部は、金属パイプ材料14の延在方向において、電極17の凹溝17aとテーパー凹面17bとの境界よりもシール部材44側に突出している。また、上側電極17,18の下面と下側電極17,18の上面とは、それぞれ互いに接触している。ただし、金属パイプ材料14の両端部全周に渡って密着する構成に限られず、金属パイプ材料14の周方向における一部に電極17,18が当接するような構成であってもよい。
【0045】
続いて、制御部70は、加熱機構50を制御することによって、金属パイプ材料14を加熱する。具体的には、制御部70は、加熱機構50の電力供給部55を制御し電力を供給する。すると、ブスバー52を介して下側電極17,18に伝達される電力が、金属パイプ材料14を挟持している上側電極17,18及び金属パイプ材料14に供給され、金属パイプ材料14に存在する抵抗により、金属パイプ材料14自体がジュール熱によって発熱する。すなわち、金属パイプ材料14は通電加熱状態となる。
【0046】
続いて、制御部70による駆動機構80の制御によって、加熱後の金属パイプ材料14に対して成形金型13を閉じる。これにより、下型11のキャビティ16と上型12のキャビティ24とが組み合わされ、下型11と上型12との間のキャビティ部内に金属パイプ材料14が配置密閉される。
【0047】
その後、気体供給機構40のシリンダユニット42を作動させることによってシール部材44を前進させて金属パイプ材料14の両端をシールする。このとき、図2(b)に示されるように、金属パイプ材料14の電極18側の端部にシール部材44が押し付けられることによって、電極18の凹溝18aとテーパー凹面18bとの境界よりもシール部材44側に突出している部分が、テーパー凹面18bに沿うように漏斗状に変形する。同様に、金属パイプ材料14の電極17側の端部にシール部材44が押し付けられることによって、電極17の凹溝17aとテーパー凹面17bとの境界よりもシール部材44側に突出している部分が、テーパー凹面17bに沿うように漏斗状に変形する。シール完了後、高圧ガスを金属パイプ材料14内へ吹き込んで、加熱により軟化した金属パイプ材料14をキャビティ部の形状に沿うように成形する。
【0048】
金属パイプ材料14は高温(950℃前後)に加熱されて軟化しているので、金属パイプ材料14内に供給されたガスは、熱膨張する。このため、例えば供給するガスを圧縮空気とし、950℃の金属パイプ材料14を熱膨張した圧縮空気によって容易に膨張させることができる。
【0049】
ブロー成形されて膨らんだ金属パイプ材料14の外周面が下型11のキャビティ16に接触して急冷されると同時に、上型12のキャビティ24に接触して急冷(上型12と下型11は熱容量が大きく且つ低温に管理されているため、金属パイプ材料14が接触すればパイプ表面の熱が一気に金型側へと奪われる。)されて焼き入れが行われる。このような冷却法は、金型接触冷却又は金型冷却と呼ばれる。急冷された直後はオーステナイトがマルテンサイトに変態する(以下、オーステナイトがマルテンサイトに変態することをマルテンサイト変態とする)。冷却の後半は冷却速度が小さくなったので、復熱によりマルテンサイトが別の組織(トルースタイト、ソルバイト等)に変態する。従って、別途焼戻し処理を行う必要がない。また、本実施形態においては、金型冷却に代えて、あるいは金型冷却に加えて、冷却媒体を例えばキャビティ24内に供給することによって冷却が行われてもよい。例えば、マルテンサイト変態が始まる温度までは金型(上型12及び下型11)に金属パイプ材料14を接触させて冷却を行い、その後型開きすると共に冷却媒体(冷却用気体)を金属パイプ材料14へ吹き付けることにより、マルテンサイト変態を発生させてもよい。
【0050】
上述のように金属パイプ材料14に対してブロー成形を行った後に冷却を行い、型開きを行うことにより、例えば略矩形筒状の本体部を有する金属パイプを得る。
【0051】
(硬度低下部の説明)
ここで、成形装置10は、フランジ部100b,100cの硬度をパイプ部100aよりも低下させる硬度低下部110を備える。図4を参照して、硬度低下部110の構成について説明する。図4は、成形金型13の拡大断面図である。
【0052】
図4に示すように、下型11及び上型12は、フランジ部100bを形成するためのフランジ成形面F1,F3を有する。フランジ成形面F1,F3は、互いに対向し、サブキャビティ部SC1を構成する面である。下型11及び上型12は、フランジ部100cを形成するためのフランジ成形面F2,F4を有する。フランジ成形面F2,F4は、互いに対向し、サブキャビティ部SC2を構成する面である。下型11及び上型12は、パイプ部100aを形成するためのパイプ成形面F5,F6を有する。パイプ成形面F5,F6は、メインキャビティ部MCを構成する面である。ここで、下型11のサブキャビティ部SC1のフランジ成形面F1は、第2突起11cの上面に該当する。下型11のサブキャビティ部SC2のフランジ成形面F2は、第3突起11dの上面に該当する。上型12のサブキャビティ部SC1のフランジ成形面F3は、第2突起12cの下面に該当する。上型12のサブキャビティ部SC2のフランジ成形面F4は、第4突起12eの上面に該当する。パイプ成形面F5は、キャビティ16の底面及び両側の側面に該当する。パイプ成形面F6は、キャビティ24の底面及び両側の側面に該当する。
【0053】
硬度低下部110は、成形時におけるフランジ成形面F1,F2,F3,F4の温度をパイプ成形面F5,F6よりも高くする温度調整部120,121によって構成される。成形時におけるフランジ成形面F1,F2,F3,F4の温度が高い場合、金属パイプ材料がフランジ成形面F1,F2,F3,F4と接触した際の冷却速度が低下する。これにより、フランジ部100b,100cに対する冷却時間が長くなることにより焼き入れ性が低下し、当該フランジ部100b,100cの硬度が低くなる。温度調整部120,121がフランジ成形面F1,F2,F3,F4をどの程度の温度にするかは特に限定されない。例えば、温度調整部120,121は、フランジ成形面F1,F2,F3,F4を500~1000℃程度の温度にすれば、フランジ部100b,100cの硬度を十分に低くすることができる。このとき、金型接触時の冷却速度を少なくとも10℃以下にすることができる。
【0054】
温度調整部120は、下型11のうち、フランジ成形面F1,F2に対応する位置に形成される。ただし、パイプ成形面F5の温度が高くなることを回避するため、フランジ成形面F1,F2のうち、基端側の縁部には、温度調整部120が設けられていない。温度調整部120は、当該基端側の縁部よりも幅方向外側の領域に形成されている。なお、温度調整部120は、当該基端側の縁部よりも幅方向外側の全域に形成されているが、少なくともスポット溶接が行われ得る領域にのみ形成されていればよい。例えば、フランジ部100b,100cの先端付近の縁部には、温度調整部120が形成されていなくともよい。また、温度調整部120の上下方向の大きさは図に示すものに限定されない。
【0055】
温度調整部121は、上型12のうち、フランジ成形面F3,F4に対応する位置に形成される。ただし、パイプ成形面F5の温度が高くなることを回避するため、フランジ成形面F3,F4のうち、基端側の縁部には、温度調整部121が設けられていない。温度調整部121は、当該基端側の縁部よりも幅方向外側の領域に形成されている。なお、温度調整部121は、当該基端側の縁部よりも幅方向外側の全域に形成されているが、少なくともスポット溶接が行われ得る領域にのみ形成されていればよい。例えば、フランジ部100b,100cの先端付近の縁部には、温度調整部121が形成されていなくともよい。また、温度調整部121の上下方向の大きさは図に示すものに限定されない。
【0056】
図5(a)は、下型11のフランジ成形面F1,F2を上方から見た図である。図5(b)は、金属パイプ100を上方から見た図である。なお、上型12の温度調整部121は、下型11の温度調整部120と同趣旨の構成を有するため、説明を省略する。図5(a)に示すように、温度調整部120は、フランジ成形面F1,F2の長手方向に沿って連続的に延びている。これにより、図5(b)に示すような金属パイプ100が成形される。
【0057】
図5(b)に示すように、フランジ部100b,100cには、互いに硬度が異なる高硬度部107及び低硬度部106が形成される。低硬度部106の硬度は、高硬度部107に比して低い。これにより、金属パイプ100のフランジ部100b,100cの硬度は、パイプ部100aよりも低くなる。低硬度部106は、成形金型13のフランジ成形面F1,F2,F3,F4のうち、温度調整部120,121が形成される箇所によって形成される。高硬度部107及びパイプ部100aは、成形金型13の成形面のうち、温度調整部120,121が形成されていない箇所によって形成される。従って、高硬度部107及びパイプ部100aは、冷却された成形面との接触によって急冷されて焼き入れが行われることで、高い硬度を有する。低硬度部106は、温度調整部120,121によって温度が高くされた成形面との接触によって、冷却速度が遅くなった状態で焼き入れが行われる(または焼き入れが行われない)ことで、低い硬度を有する。なお、高い硬度部102及びパイプ部100aの硬度は、HV400~500程度に設定される一方、低硬度部106の硬度は、HV100~300程度に設定される。これにより、低硬度部106ではスポット溶接を行い易くなる。
【0058】
なお、図6(a)に示す構造が採用されてもよい。図6(a)に示す温度調整部120は、フランジ成形面F1,F2の長手方向に沿って、間欠的にフランジ成形面F1,F2に形成されている。すなわち、フランジ成形面F1,F2には、長手方向に所定の長さを有する温度調整部120が形成され、長手方向に間隔を開けて、他の温度調整部120が形成される。温度調整部120のピッチは、例えば、金属パイプ100を他部材に固定する際のスポット溶接部SPのピッチに基づいて設定されてよい。これにより、図6(b)に示すような金属パイプ100が成形される。当該金属パイプ100の低硬度部106は、フランジ部100b,100bの長手方向に沿って、間欠的にフランジ部100b,100cに形成されている。フランジ部100b,100cには、長手方向に所定の長さを有する低硬度部106が形成され、長手方向に所定の長さを有する高硬度部107を挟んで、他の低硬度部106が形成される。
【0059】
次に、図7を参照して、温度調整部120の具体的な構成について説明する。なお、上型12の温度調整部121は、下型11の温度調整部120と同趣旨の構成を有するため、説明を省略する。図7(a)は、下型11を上方から見た図である。図7(b)は、下型11を横側から見た図である。温度調整部120は、下型11の他の部分を構成する部材とは、異なる材質の部材123を埋め込むことによって構成される。温度調整部120を構成する部材123として、例えば電気抵抗の高い部材を採用する。温度調整部120を構成する部材123には、通電を行うための通電部124が接続される。これにより、通電部124が部材123に通電することで、温度調整部120の温度が高くなる。その他、温度調整部120を構成する部材123として、下型11の他の部材に比して、冷却速度が遅い材質の部材を採用してよい。これにより、温度調整部120では、水循環機構72の冷却による温度低下が遅くなるため、成形時において、他の部分に比して温度が高くなる。あるいは、図7(c),(d)に示すように、温度調整部120に対応する箇所に、高温部材126を押し付ける機構を設けることで、温度調整部120を部分的に高温としてよい。なお、高温部材126は、成形時には干渉しない位置へ移動する。
【0060】
次に、本実施形態に係る成形装置10の作用・効果について説明する。
【0061】
本実施形態に係る成形装置10は、金属パイプ材料14を膨張させて、パイプ部100a及びフランジ部100b,100cを有する金属パイプ100を成形する成形装置10であって、フランジ部100b,100cの硬度をパイプ部100aよりも低下させる硬度低下部110を備える。
【0062】
成形装置10は、フランジ部100b,100cの硬度をパイプ部100aよりも低下させる硬度低下部110を備える。これにより、パイプ部100aの硬度を低下させることなく、硬度低下部110によってフランジ部100b,100cの硬度を低下させることができる。従って、強度が要求されるパイプ部100aの強度は確保しつつ、フランジ部100b,100cは、加圧しながらの溶接を行い易い状態とすることができる。以上により、フランジ部100b,100cを他の部材に加圧しながら溶接する場合に、容易に溶接を行うことができる。また、加圧して溶接する際に、過度な圧力が不要となるため、過度な圧力の付与に伴うチリの発生、電極の摩耗、溶接品質の不均一などを抑制することができる。
【0063】
成形装置10は、互いに対となり、パイプ部100aを成形するためのパイプ成形面F5,F6及びフランジ部100b,100cを成形するためのフランジ成形面F1,F2,F3,F4を有する下型11及び上型12を更に備える。硬度低下部110は、成形時におけるフランジ成形面F1,F2,F3,F4の温度をパイプ成形面F5,F6よりも高くする温度調整部120,121によって構成される。これにより、温度調整部120,121が、成形時においてフランジ成形面F1,F2,F3,F4の温度をパイプ成形面F5,F6よりも高くすることで、フランジ部100b,100cがフランジ成形面F1,F2,F3,F4と接触したときの冷却時間が長くなる。冷却時間が長くなることで、フランジ部100b,100cでの焼き入れ性が低下し、硬度がパイプ部100aよりも低くなる。なお、本実施形態のように加熱によって硬度低下部を構成した場合、図8のように冷却を行う形態に比して、温度コントロールが容易になる。本実施形態では、構造に対する最適温度の設定が任意で可能となることにより、形状などの制約を回避し易くなる。
【0064】
成形装置10において、温度調整部120,121は、フランジ成形面F1,F2,F3,F4の長手方向に沿って、間欠的にフランジ成形面F1,F2,F3,F4に形成されていてよい。これにより、フランジ部100b,100cの長手方向の沿った部分のうち、溶接を行う部分については硬度を低下させ、その他の部分については硬度を低下させることなく、強度を高くすることができる。
【0065】
本実施形態に係る成形方法は、金属パイプ材料14を膨張させて、パイプ部100a及びフランジ部100b,100cを有する金属パイプ100を成形する成形方法であって、フランジ部100b,100cの硬度をパイプ部100aよりも低下させる。
【0066】
本実施形態に係る成形方法によれは、上述の成形装置10と同様の作用・効果を得ることができる。
【0067】
本実施形態に係る金属パイプ100は、パイプ部100a及びフランジ部100b,100cを有する金属パイプ100であって、フランジ部100b,100cの硬度がパイプ部100aよりも低い。
【0068】
本実施形態に係る金属パイプ100によれば、強度が要求されるパイプ部100aの強度は確保しつつ、フランジ部100b,100cは、加圧しながらの溶接を行い易い状態とすることができる。以上により、フランジ部100b,100cを他の部材に加圧しながら溶接する場合に、容易に溶接を行うことができる。
【0069】
金属パイプ100において、フランジ部100b,100cには、互いに硬度が異なる高硬度部107及び低硬度部106が形成され、低硬度部106の硬度は、高硬度部107に比して低い。これにより、溶接が行われる部分を低硬度部106とすることで、容易に溶接を行えるようにしつつ、他の部分は高硬度部107とすることで、強度を確保することができる。
【0070】
金属パイプ100において、低硬度部106は、フランジ部100b,100cの長手方向に沿って、間欠的にフランジ部100b,100cに形成されていている。これにより、フランジ部100b,100cの長手方向の沿った部分のうち、溶接を行う部分については低硬度部106とし、その他の部分については高硬度部107とすることで、強度を高くすることができる。
【0071】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、成形装置の全体構成は図1に示すものに限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0072】
また、硬度低下部として、図8に示す構成を採用してもよい。図8に示す成形装置において、硬度低下部は、成形開始前において加熱された状態の金属パイプ材料14のうち、フランジ部100b,100cとなる部分14aを冷却する冷却部130によって構成されてよい。なお、図8において、温度が高い部分にはグレースケールが付され、冷却されて温度が低くなっている部分には、グレースケールが付されていない。冷却部130は、銅、アルミなどの材質の吸熱材によって構成される。冷却部130は、高温の金属パイプ材料14の部分14aと接触することで、当該部分14aから吸熱することができる。これにより、成形開始前に予めフランジ部100b,100cとなる部分14aを冷却することで、当該部分14aにおける最大到達温度が低くなる。従って、フランジ部100b,100cの焼き入れ性が低下することで、硬度を低くすることができる。
【0073】
上述の成形装置において、冷却部130は、金属パイプ材料14のうち、フランジ部100b,100cとなる部分14aに固体を接触させることで冷却を行う。これにより、固体がフランジ部100b,100cとなる部分14aから熱を吸収することで、当該部分14aを冷却することができる。
【符号の説明】
【0074】
10…成形装置、11…下型(第1の金型)、12…上型(第2の金型)、13…成形金型、14…金属パイプ材料、14a…部分(フランジ部となる部分)、100…金属パイプ、100a…パイプ部、100b,100c…フランジ部、106…低硬度部、107…高硬度部、110…硬度低下部、120,121…温度調整部、130…冷却部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8