(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
B60R 11/02 20060101AFI20240521BHJP
B62D 49/00 20060101ALI20240521BHJP
H01Q 1/22 20060101ALI20240521BHJP
H01Q 1/12 20060101ALI20240521BHJP
G01S 19/14 20100101ALI20240521BHJP
【FI】
B60R11/02 A
B62D49/00 D
B62D49/00 N
H01Q1/22 B
H01Q1/12 E
G01S19/14
(21)【出願番号】P 2023063838
(22)【出願日】2023-04-11
(62)【分割の表示】P 2021133619の分割
【原出願日】2018-01-18
【審査請求日】2023-04-11
(31)【優先権主張番号】P 2017021052
(32)【優先日】2017-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(72)【発明者】
【氏名】花田 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】石橋 文雄
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-512772(JP,A)
【文献】実開昭48-105436(JP,U)
【文献】米国特許第05410325(US,A)
【文献】特開2016-002874(JP,A)
【文献】特開2013-173497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 11/02
B62D 49/00
H01Q 1/22
H01Q 1/12
G01S 19/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビンと、
位置情報を受信する受信装置を有するアンテナユニットと、
前記アンテナユニットを支持する支持フレームと、を備え、
前記アンテナユニットは、前記支持フレームを介して前記キャビンに支持され、
前記アンテナユニットは
、前記支持フレームに対して正規使用位置から機体前方側かつ低位側の非使用位置に位置変位可能に取付けられており、
前記支持フレームは、機体の左右幅方向に延びており、
前記キャビンは、左右一対の前支柱を有し、
前記支持フレームの左端部は左側の前記前支柱に支持され、
前記支持フレームの右端部は右側の前記前支柱に支持されている、
作業車両。
【請求項2】
前記非使用位置での前記アンテナユニットの上方への突出高さは、前記
キャビンのルーフの最高部位以下である、
請求項1記載の作業車両。
【請求項3】
前記アンテナユニットは、前記支持フレームに対する回動枢支軸芯の周りでの回動により、前記正規使用位置から前記非使用位置に位置変位可能であって、
前記回動枢支軸芯は、前記キャビンのルーフの前端よりも前方に位置する、
請求項1又は2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記アンテナユニットは、前記正規使用位置と前記非使用位置とに択一的に固定可能に構成されている請求項1~3のいずれか1項に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャビンを備えた作業車両で、特に、衛星測位システム(GNSS)を利用してトラクタの位置情報を取得しながら、トラクタを目標走行経路に沿って自動走行(自律走行を含む)させるに適した作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自律走行システムを採用した作業車両として、特許文献1に示すトラクタでは、測位衛星からの衛星測位情報を取得するGPSアンテナ(GNSSアンテナ)が、キャビンルーフの上側面部に設けられている。
具体的には、キャビンルーフの上側面部のうち、車体のトレッド幅の略中心部位置の前後方向線と、ホイルベースの略中心部位置の横方向線との交差する部位に、キャビンルーフの上面よりも高位置で略水平面状の取付け座を有する取付けステーが形成され、この取付けステーの取付け座にGPSアンテナが取付けられている。
また、GPSアンテナとして、ジャイロセンサを有するGPSアンテナを使用した場合には、キャビンルーフの傾斜角度をも検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の従来技術には、キャビンルーフの上側面部におけるGPSアンテナの取付け位置を工夫することにより、GPSアンテナの検出精度、又はGPSアンテナとジャイロセンサの検出精度の向上を図る技術が開示されている。
しかしながら、上述の自律走行システムでは、例えば、作業車両に対して各種の指示を行う無線通信端末や作業車両の位置情報を取得するための基地局等、作業車両とは別に各種の外部装置が備えられている。
そのため、作業車両の自律走行等を実際に行うにあたっては、GPSアンテナだけでなく、作業車両と外部装置との間で通信するための各種のアンテナ機器を作業車両に効率良く搭載する必要があり、この面において上述の従来技術には改善の余地がある。
【0005】
しかも、上述の従来技術では、キャビンフレームの上部に設けられるキャビンルーフの上側面部は曲線が多く、しかも、キャビンフレームよりも剛性に劣るため、GPSアンテナを取付ける取付けステーを、キャビンルーフの外観を損なわない状態で補強する必要があり、この面においても改善の余地がある。
【0006】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、作業車両の自律走行等に有効な各種のアンテナ機器を効率良く搭載することができ、且つ、各種のアンテナ機器を頑丈に支持することのできる作業車両を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る作業車両は、キャビンと、位置情報を受信する受信装置を有するアンテナユニットと、前記アンテナユニットを支持する支持フレームと、を備える。前記アンテナユニットは、前記支持フレームを介して前記キャビンに支持される。前記アンテナユニットは、前記支持フレームに対する回動枢支軸芯の周りでの回動により、前記支持フレームに対して正規使用位置から機体前方側かつ低位側の非使用位置に位置変位可能に取付けられている。前記回動枢支軸芯は、前記キャビンのルーフの前端よりも前方に位置する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】トラクタ、基準局、及び、無線通信端末の制御ブロック図
【
図3】トラクタのアンテナユニット取付け部の正面図
【
図4】トラクタのアンテナユニット取付け部の側面図
【
図9】アンテナユニットを非使用位置に変更したときの側面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1、
図2に示す自律走行システムは、目標走行経路を生成し、その生成された目標走行経路に沿って作業車両としてのトラクタ1を自律走行可能に構成されている。この自律走行システムでは、自律走行可能なトラクタ1に加えて、トラクタ1に対して各種の指示等を行う無線通信端末30と、トラクタ1の位置情報を取得するための基準局40とが備えられている。
【0010】
まず、
図1に基づいてトラクタ1について説明する。
このトラクタ1は、後方側に対地作業機(図示省略)を装着可能な機体部2を備え、機体部2の前部が左右一対の前輪3で支持され、機体部2の後部が左右一対の後輪4で支持されている。機体部2の前部にはボンネット5が配置され、そのボンネット5内に駆動源としてのエンジン6が収容されている。ボンネット5の後方側には、運転者が搭乗するためのキャビン7が備えられ、そのキャビン7内には、運転者が操向操作するためのステアリングハンドル8、運転者の運転座席9等が備えられている。
【0011】
エンジン6は、例えばディーゼルエンジンにより構成することができるが、これに限るものではなく、例えばガソリンエンジンにより構成してもよい。また、駆動源としてエンジン6に加えて、或いはエンジン6に代えて、電気モータを採用してもよい。
【0012】
また、本実施形態では作業車両としてトラクタ1を例に説明するが、作業車両としては、トラクタの他、田植機、コンバイン、土木・建築作業装置、除雪車等、乗用型作業車両等が含まれる。
【0013】
機体部2の後方側には、左右一対のロアリンク10とアッパリンク11とからなる3点リンク機構が備えられ、その3点リンク機構に対地作業機が装着可能に構成されている。機体部2の後方側には、図示は省略するが、昇降シリンダ等の油圧装置を有する昇降装置が備えられ、この昇降装置が、3点リンク機構を昇降させることで、対地作業機を昇降させている。
対地作業機としては、耕耘装置、プラウ、施肥装置等が含まれる。
【0014】
トラクタ1には、
図2に示すように、エンジン6の回転速度を調整可能なガバナ装置21、エンジン6からの回転駆動力を変速して駆動輪に伝達する変速装置22、ガバナ装置21及び変速装置22を制御可能な制御部23等が備えられている。変速装置22は、例えば、油圧式無段変速装置からなる主変速装置とギヤ式多段変速装置からなる副変速装置とを組み合わせて構成されている。
【0015】
このトラクタ1は、運転者がキャビン7内に搭乗して走行できるだけでなく、キャビン7内に運転者が搭乗しなくても、無線通信端末30からの指示等に基づいて、トラクタ1を自律走行可能に構成している。
【0016】
トラクタ1は、
図2に示すように、操舵装置24、機体の姿勢変化情報を得るための慣性計測装置(IMU)25、衛星測位システム(GNSS)を構成する測位衛星(航法衛星)45から送信される電波信号を受信するGNSSアンテナ26、無線通信端末30等との間で構築される無線通信ネットワークを介して各種の信号を送受信する無線通信ユニット(アンテナユニット50に組み付けられる無線通信装置の一例)27、基準局40の基準局無線通信装置41からの無線信号(例えば、周波数帯域が920MHzの無線信号)を受信する基地局アンテナ(アンテナユニット50に組み付けられる無線通信装置の一例)29等を備えており、自己の現在位置情報(機体部2の位置情報)を取得しながら、自律走行可能に構成されている。
【0017】
慣性計測装置25、GNSSアンテナ26、無線通信ユニット27、基地局アンテナ29は、
図5~
図7に示すように、ユニットカバー51を備えたアンテナユニット50に収納されている。このアンテナユニット50は、
図3、
図4に示すように、キャビン7の外部の前面側の上部位置において、キャビン7のキャビンフレーム200に固定された左右幅方向に沿う支持フレーム100に取付けられている。
尚、アンテナユニット50の具体的な内部配置構造及び取付け構造については、自律走行システムの説明後において詳述する。
【0018】
操舵装置24は、例えば、ステアリングハンドル8の回転軸の途中部に備えられ、ステアリングハンドル8の回転角度(操舵角)を調整可能に構成されている。制御部23が操舵装置24を制御することで、直進走行だけでなく、ステアリングハンドル8の回転角度を所望の回転角度に調整して、所望の旋回半径での旋回走行も行える。
【0019】
慣性計測装置25は、3軸のジャイロと3方向の加速度計によって、3次元の角速度と加速度が求められる。当該慣性計測装置25の検出値が制御部23に入力され、制御部23は、姿勢・方位演算手段により演算し、トラクタ1の姿勢情報(機体の方位角(ヨー角)、機体の左右の傾き角(ロール角)、機体の進行方向での前後の傾き角(ピッチ角))を求める。
【0020】
衛星測位システム(GNSS)では、測位衛星として、GPS(米国)に加えて準天頂衛星(日本)やグロナス衛星(ロシア)等の衛星測位システムを利用することができる。
【0021】
無線通信ユニット27は、本実施形態においては周波数帯域が2.4GHzのワイファイ(Wifi)ユニットから構成されているが、無線通信ユニット27はWifi以外のブルートゥース(登録商標)等にすることができる。この無線通信ユニット27の無線通信用アンテナ28にて受信した信号は、
図2に示すように、制御部23に入力可能であり、制御部23からの信号は、無線通信用アンテナ28にて無線通信端末30の無線通信装置31等に送信可能に構成されている。
【0022】
ここで、衛星測位システムを用いた測位方法として、予め定められた基準点に設置された基準局40を備え、その基準局40からの補正情報によりトラクタ1(移動局)の衛星測位情報を補正して、トラクタ1の現在位置を求める測位方法を適用可能としている。例えば、DGPS(ディファレンシャルGPS測位)、RTK測位(リアルタイムキネマティック測位)等の各種の測位方法を適用することができる。
【0023】
この実施形態では、例えば、RTK測位を適用しており、
図1及び
図2に示すように、移動局側となるトラクタ1にGNSSアンテナ26を備えるのに加えて、基準局測位用アンテナ42を備えた基準局40が設けられている。基準局40は、例えば、圃場の周囲等、トラクタ1の走行の邪魔にならない位置(基準点)に配置されている。基準局40の設置位置となる基準点の位置情報は予め把握されている。基準局40には、トラクタ1の基地局アンテナ29との間で各種の信号を送受信可能な基準局無線通信装置41が備えられ、基準局40とトラクタ1との間や基準局40と無線通信端末30との間で各種の情報が送受信可能に構成されている。
【0024】
RTK測位では、基準点に設置された基準局40の基準局測位用アンテナ42と、位置情報を求める対象の移動局側となるトラクタ1のGNSSアンテナ26との両方で測位衛星45からの搬送波位相(衛星測位情報)を測定している。基準局40では、測位衛星45から衛星測位情報を測定する毎に又は設定周期が経過する毎に、測定した衛星測位情報と基準点の位置情報等を含む補正情報を生成して、基準局無線通信装置41からトラクタ1の基地局アンテナ29に補正情報を送信している。トラクタ1の制御部23は、GNSSアンテナ26にて測定した衛星測位情報を、基準局40から送信される補正情報を用いて補正して、トラクタ1の現在位置情報を求めている。制御部23は、トラクタ1の現在位置情報として、例えば、緯度情報・経度情報を求めている。
【0025】
自律走行システムでは、トラクタ1及び基準局40に加えて、トラクタ1の制御部23にトラクタ1の自律走行を指示可能な無線通信端末30が備えられている。無線通信端末30は、例えば、タッチパネルを有するタブレット型のパーソナルコンピュータ等から構成され、各種情報をタッチパネルに表示可能であり、タッチパネルを操作することで、各種の情報も入力可能となっている。無線通信端末30には、無線通信装置31と、目標走行経路を生成する経路生成部32とが備えられ、経路生成部32が、タッチパネルにて入力される各種の情報に基づいて、トラクタ1を自律走行させる目標走行経路を生成している。
【0026】
トラクタ1に備えられた制御部23は、無線通信装置31等による無線通信ネットワークを介して、無線通信端末30との間で各種の情報を送受信可能に構成されている。無線通信端末30は、目標走行経路等、トラクタ1を自律走行させるための各種の情報をトラクタ1の制御部23に送信することで、トラクタ1の自律走行を指示可能に構成されている。トラクタ1の制御部23は、経路生成部32にて生成された目標走行経路に沿ってトラクタ1が自律走行するように、GNSSアンテナ26の受信信号から取得するトラクタ1の現在位置情報を求め、慣性計測装置25から機体の変位情報及び方位情報を求め、これらの現在位置情報と変位情報と方位情報に基づいて変速装置22や操舵装置24等を制御可能に構成されている。
【0027】
次に、アンテナユニット50の内部配置構造について説明する。
アンテナユニット50のユニットカバー51は、
図5~
図9に示すように、上方に開口する平面視略長方形状の樹脂製の下側カバー体52と、下方に開口する平面視略長方形状の樹脂製の上側カバー体53とを有する。ここで、
図5は、アンテナユニット50を後方側から見たときの縦断面図を示しており、
図3、
図7や
図8に対して、機体部2における左右方向が逆方向となっている。上側カバー体53の開口接合部は、下側カバー体52の開口接合部に対して脱着自在に水密状態で外嵌接合されている。上側カバー体53の開口接合部と下側カバー体52の開口接合部とは、前面側及び後面側における左右方向の複数個所でネジ54にて固定連結されている。
【0028】
下側カバー体52の底板部52Aには、
図5~
図7に示すように、トラクタ1に取付け可能なユニットベースの一例である金属製のベースプレート55が取付けられている。このベースプレート55と下側カバー体52の底板部52Aとの間には、
図5に示すように、両者間の間隔を設定間隔に保持する複数個(本実施形態では4個)の円筒状の第1ボス56が配置され、各第1ボス56に挿通される第1ボルト57により、ベースプレート55と下側カバー体52の底板部52Aとが固定連結されている。
【0029】
ベースプレート55の長手方向中央部には、
図5~
図7に示すように、機体の左右幅方向の中心位置又は略中心位置に共に配置される慣性計測装置25とGNSSアンテナ26とが上下に重合する状態で設けられている。そのうち、GNSSアンテナ26は慣性計測装置25の上方位置に配置されている。
詳しくは、慣性計測装置25のハウジング25Aは、それの左右方向中心位置がベースプレート55の長手方向中央位置に位置する状態でベースプレート55に第2ボルト58にて固定連結されている。
他方、GNSSアンテナ26のハウジング26Aは、
図5~
図7に示すように、それの左右方向中心位置がベースプレート55の長手方向中央位置に位置する状態で、金属製のハット形のブラケット60を介してベースプレート55に取付けられている。ブラケット60は、慣性計測装置25のハウジング25Aの上方をベースプレート55の長手方向に沿って迂回するハット形に形成されている。このハット形のブラケット60の両脚部60aは、ベースプレート55に第3ボルト61にて固定連結されているとともに、ハット形のブラケット60の前後方向(機体の前後方向でもある)の幅は、慣性計測装置25のハウジング25Aの前後方向幅よりも少し小なる寸法に構成され、ブラケット60の一部が後述する無線通信ユニット27との間を遮蔽する遮蔽壁部に構成されている。
【0030】
上述の慣性計測装置25及びGNSSアンテナ26の配置構成により、トラクタ1への取付け状態では、
図3に示すように、慣性計測装置25及びGNSSアンテナ26が共に機体の左右幅方向の中心位置又は略中心位置において上下に配置されるため、GNSSアンテナ26の受信信号から取得するトラクタ1の現在位置情報の検出精度と、慣性計測装置25から取得する機体の変位情報及び方位情報の検出精度を共に向上することができる。しかも、ユニットカバー51の前後方向での幅が小さくなり、アンテナユニット50のコンパクト化を図ることができる。
さらに、上述の配置構成により、
図5、
図6に示すように、GNSSアンテナ26の上方には樹脂製の上側カバー体53のみが存在するだけであるため、例えば、GNSSアンテナ26の上方に慣性計測装置25を配置する場合のように、慣性計測装置25がGNSSアンテナ26の受信障害物になることがなく、測位衛星45からの搬送波位相(衛星測位情報)を確実に受信することができる。
【0031】
ベースプレート55の長手方向一端部(前進方向に対して機体部2の左右方向の右側端部、
図5中右側端部、
図7中左側端部)には、
図5、
図7に示すように、前後方向で一対の無線通信用アンテナ28を備えた無線通信ユニット(アンテナユニット50に組み付けられる無線通信装置の一例)27のハウジング27Aが第4ボルト62にて固定連結されている。この無線通信ユニット27の無線通信用アンテナ28は、慣性計測装置25及びGNSSアンテナ26とは反対側で、且つ、ベースプレート55の長手方向一端側に配置されている。
図5に示すように、無線通信ユニット27の無線通信用アンテナ28と慣性計測装置25の中心部との間の第1所定距離L1は250mm以上に設定されている。
【0032】
そして、上述の無線通信ユニット27の配設位置及び向き姿勢の工夫により、アンテナユニット50の長手方向でのコンパクト化を図りながら、無線通信ユニット27の無線通信用アンテナ28から慣性計測装置25の中心部までの第1所定距離L1を十分確保することができる。これにより、無線通信ユニット27と慣性計測装置25との間での電波干渉を抑制して、無線通信ユニット27と無線通信端末30の無線通信装置31との間での通信障害を抑制することができる。
特に、上述したように、無線通信ユニット27の無線通信用アンテナ28と慣性計測装置25の中心部との間の第1所定距離L1が250mm以上に設定されている場合には、無線通信ユニット27と慣性計測装置25との間での電波干渉をより効果的に抑制することができる。
さらに、慣性計測装置25の外周は、コネクタ等を除く多くの部分が金属製のハウジング25Aで遮蔽され、且つ、無線通信ユニット27と慣性計測装置25との間に位置する金属製のハット形のブラケット60の一部が遮蔽壁部として機能するから、無線通信ユニット27と慣性計測装置25との間での電波干渉をより一層抑制することができる。
【0033】
ベースプレート55の長手方向他端部(前進方向に対して機体部2の左右方向の左側端部、
図5中左側端部、
図7中右側端部)には、
図5、
図7に示すように、基準局40からの情報を受信する基地局アンテナ(アンテナユニット50に組み付けられる無線通信装置の一例)29が配置されている。このようにして、ベースプレート55には、前進方向に対して機体部2の左右方向の右側から、無線通信ユニット27、GNSSアンテナ26(慣性計測装置25)、基地局アンテナ29の順に機体部2の左右方向に並ぶ状態で配置されている。この基地局アンテナ29は、
図5に示すように、マグネット65を備えた基部29Aと、当該基部29Aから上方に延伸する丸棒状のアンテナバー29Bから構成されている。さらに、基部29Aは、マグネット65を内蔵する円柱状の下側基体29aと、当該下側基体29aの上面中央部に一体形成される截頭円錐台形状の上側基体29bとからなる。そのため、基地局アンテナ29は、マグネット65の磁力で金属製のベースプレート55に取付けられている。
【0034】
また、ベースプレート55には、
図5、
図7に示すように、基地局アンテナ29の基部29Aにおける上側基体29bの円錐状外周面の上下中間位置に上方から当接又は近接して、当該基地局アンテナ29の基部29Aの移動を規制する板金製の移動規制部材66が第5ボルト67で固定連結されている。この移動規制部材66に折り曲げ形成されている上側の規制板片66aには、
図7に示すように、基部29Aの上側基体29bに外嵌される円形の移動規制孔66bと、アンテナバー29Bの通過を許す幅寸法の脱着用切欠き66cとが連通形成されている。
【0035】
上述の基地局アンテナ29の配置構成により、基地局アンテナ29のアンテナバー29Bと無線通信ユニット27の無線通信用アンテナ28との離間距離が大きくなり、基地局アンテナ29のアンテナバー29Bと無線通信ユニット27の無線通信用アンテナ28との間での電波干渉を抑制することができる。
しかも、基地局アンテナ29は、基部29Aに設けたマグネット65の磁力で金属製のベースプレート55に簡単に取付けることができる。それでいて、振動等による基地局アンテナ29の位置ずれは、ベースプレート55にボルト固定される簡素な形状の移動規制部材66で確実に防止することができる。この基地局アンテナ29の取付け構造の簡素化、小型化により、アンテナユニット50のコンパクト化を図ることができる。
【0036】
次に、アンテナユニット50のユニットカバー51について説明する。
図5~
図7に示すように、ユニットカバー51の上側カバー体53の長手方向一端側(前進方向に対して機体部2の左右方向の右側)には、当該上側カバー体53の長手方向中央部の上面位置及び無線通信ユニット27の無線通信用アンテナ28の上端位置よりも上方に突出する第1膨出部53Aが形成されている。そして、
図5に示すように、第1膨出部53Aの内面53aと無線通信用アンテナ28の上端との間の第2所定距離L2は30mm以上に設定されている。
無線通信用アンテナ28の上端と上側カバー体53の第1膨出部53Aの内面53aとの間に形成される第2所定距離L2により、無線通信ユニット27と無線通信端末30の無線通信装置31との間での通信精度の向上を図ることができる。
尚、第1所定距離L1と第2所定距離L2との関係は、
第1所定距離L1>第2所定距離L2に設定してある。
【0037】
また、
図5、
図7、
図8示すように、ユニットカバー51の上側カバー体53の長手方向他端側(前進方向に対して機体部2の左右方向の左側)には、長手方向一端側(前進方向に対して機体部2の左右方向の右側)に形成されている第1膨出部53Aと同一形状の第2膨出部53Bが形成され、ユニットカバー51が左右対称形に構成されている。これは、トラクタ1のキャビン7の前面側の上部位置にアンテナユニット50を取付けたときのデザイン性を考慮したものであるが、この第2膨出部53Bの形成によって新たな技術的な価値が発生する。
つまり、上側カバー体53の第2膨出部53Bは、
図5、
図7に示すように、基地局アンテナ29に対応した部位に形成されることになり、基地局アンテナ29の全高は、ベースプレート55の上面から第2膨出部53Bの上面までの高さよりも十分大きい。そのため、第2膨出部53Bの上面には、
図7に示すように、基地局アンテナ29のアンテナバー29Bが貫通して外部の上方に突出する貫通孔70が形成されている。この貫通孔70の開口周縁には、基地局アンテナ29のアンテナバー29Bの貫通部位の外周面に接触する筒状ゴム等の防振用弾性体71が装着されている。防振用弾性体71としては、アンテナバー29Bの全周に接触して水密性をも発揮するグロメットが用いられている。
【0038】
そして、防振用弾性体71が存在しない場合には、第2膨出部53Bの貫通孔70の開口周縁とアンテナバー29Bの貫通部位の外周面との間に環状の空隙が発生する。トラクタ1の走行振動等が基地局アンテナ29に作用すると、アンテナバー29Bが環状の空隙の範囲で揺れ動くことになり、アンテナバー29Bが根元で折損する可能性がある。しかし、本実施形態では、上述のように、第2膨出部53Bの貫通孔70の開口周縁に設けた防振用弾性体71でアンテナバー29Bの上下中間部を支持し、基地局アンテナ29の支持構造が全体で二点支持構造となるため、走行振動等に起因するアンテナバー29Bの折損を抑制することができる。
特に、第2膨出部53Bの存在によって、ベースプレート55の上面から第2膨出部53Bの上面までの高さが高くなる分だけ、防振用弾性体71で支持されるアンテナバー29Bの支持位置が高くなり、アンテナバー29Bの折損をより一層抑制することができる。
【0039】
尚、当該実施形態では、第2膨出部53Bの貫通孔70の開口周縁に防振用弾性体71を装着したが、この防振用弾性体71は、第2膨出部53Bの上面又は内面に取付けてもよく、さらに、ベースプレート55に設けたブラケット等に取付けてもよい。
【0040】
ベースプレート55の長手方向他端側で、且つ、慣性計測装置25及びGNSSアンテナ26と基地局アンテナ29との間には、
図5、
図7に示すように、他のユニットの取付けスペース73が形成されている。ここで、
図5、
図7は、取付けスペース73に他のユニット72を取り付けず、取付けスペース73が中空空間となっている状態を示している。
【0041】
他のユニットとしては、例えば、自律走行制御の一部を司る後付けの液晶モニタ用のコントローラ等を挙げることができる。本実施形態の自律走行仕様のトラクタ1では、キャビン7内に液晶モニタ47(
図13参照)が設けられ、液晶モニタ47には、自律走行制御の一部を司るコントローラが装備されている。しかし、普通仕様の田植機等の他の作業車両を自律走行仕様に変更する場合には、後付けされる液晶モニタ用として自律走行制御を司るコントローラが必要になる。この場合に、ベースプレート55の確保されている取付けスペース73を使用してコントローラを容易に取付けることができる。
なお、本実施形態では、液晶モニタ47として、経路生成や圃場登録等を行う専用アプリケーションがインストールされたタブレット端末48が用いられている。
【0042】
また、
図5、
図6に示すように、下側カバー体52の底板部52Aの下面側における長手方向の両側部位には、機体前面視では逆「L」字状(
図5参照)に折り曲げ形成され、且つ、機体側面視では略半円弧状(
図6参照)に形成されたステー75が配設されている。この左右一対のステー75の各々は、下側カバー体52の底板部52Aを貫通する第2ボス76を介してベースプレート55に第6ボルト77で固定連結されている。
【0043】
さらに、
図5~
図7に示すように、下側カバー体52の底板部52Aの下面における長手方向中央位置には、機体前方を撮影するカメラ78が取付けられ、カメラ78で撮影された映像は、トラクタ1の無線通信ユニット27と無線通信端末30の無線通信装置31との無線通信を介して、無線通信端末30のタッチパネルに表示可能に構成されている。
【0044】
尚、
図5~
図7においては、ベースプレート55に組付けられた慣性計測装置25、GNSSアンテナ26、無線通信ユニット27、基地局アンテナ29の各々に接続された電線は省略されており、それらの電線をユニットカバー51内で集合して構成した1本のハーネス80の一部が
図7に記載されている。このハーネス80は、
図7に示すように、下側カバー体52の長手方向一端に形成されたハーネス導出孔(図示省略)から外部に導出される。ハーネス導出孔にはグロメット81が装着されている。
【0045】
次に、アンテナユニット50の取付け構造について説明する。
図3、
図4に示すように、アンテナユニット50の支持フレーム100の両端部は、キャビンフレーム200を構成する左右の前支柱201に設けられたミラー取付け部150に亘って固定連結されている。
左右のミラー取付け部150の各々は、
図3、
図4に示すように、前支柱201の上側部に、平面視略「コ」の字状に構成された取付け基材151が溶接等で固着され、この取付け基材151に、バックミラー110の支持アーム111を回動自在に支持するヒンジ部152を備えた板状のミラー取付け部材153がボルト等で固定連結されている。左右のミラー取付け部材153の上端部の各々には、水平面に沿う取付け上面を備えた取付け片153Aが折り曲げ形成されている。
【0046】
支持フレーム100は、
図3、
図4に示すように、機体前面視において左右幅方向の両端部が下方に屈曲する略門の字に折り曲げ形成された断面円形のパイプ状支持材101を備え、パイプ状支持材101の両端部には、水平面に沿う取付け下面を有する取付け板102が固着されている。支持フレーム100の両取付け板102は、左右のミラー取付け部材153の取付け片153Aの取付け上面にボルト103等で固定連結されている。
【0047】
上述のように、左右のミラー取付け部150は、堅牢なキャビンフレーム200の前支柱201の上部に取付けられ、且つ、キャビン7のルーフ190に近い高さ位置に配置されている。そのため、頑丈で且つ地上高もある両ミラー取付け部150を利用して、アンテナユニット50の支持フレーム100を適切な高さ位置に強固に取付けることができる。
しかも、左右のミラー取付け部材153における取付け片153Aの取付け上面と、支持フレーム100の両取付け板102の取付け下面が共に水平面に形成されているため、パイプ状支持材101の中間部を水平方向に沿って配置することが容易となり、当該パイプ状支持材101の水平中間部に取付けられるアンテナユニット50の取付け誤差を抑制することができる。
【0048】
図3、
図4に示すように、支持フレーム100が左右のミラー取付け部150に亘って架設された状態では、支持フレーム100のパイプ状支持材101の水平中間部は、キャビンフレーム200のルーフ190の前端近傍位置を機体の左右幅方向に沿って水平に配置される。
パイプ状支持材101の水平中間部には、
図3、
図4、
図6に示すように、アンテナユニット50の左右一対のステー75を支持する左右一対のブラケット120が固着されている。そのうち、機体の左右幅方向で近接して対面する二組のアンテナユニット50側のステー75と支持フレーム100側のブラケット120とは、機体の左右幅方向に沿う水平な回動枢支軸となる第7ボルト121で枢支連結されている。
そのため、アンテナユニット50は、支持フレーム100に対する第7ボルト121の回動枢支軸芯周りでの回動により、
図3、
図4に示すように、基地局アンテナ29が鉛直方向の上方に突出する正規使用位置(正規使用姿勢)と、
図9に示すように、前方の低位側の非使用位置(非使用姿勢)とに位置変更可能に構成されている。
本実施形態においては、アンテナユニット50の非使用位置は、正規使用位置から90度前方側に回動した位置であり、この非使用位置では、基地局アンテナ29が水平方向の前方に突出する姿勢にある。
【0049】
また、本実施形態においては、アンテナユニット50の正規使用位置と非使用位置との位置変更操作を人為操作で行っているが、このアンテナユニット50の位置変更操作をアクチュエータ等の駆動部で実施してもよい。
【0050】
二組のアンテナユニット50側のステー75と支持フレーム100側のブラケット120とは、
図4、
図6に示すように、第7ボルト121から回動半径方向に偏倚した位置に設けられた第8ボルト122の差し替えにより、アンテナユニット50を正規使用位置と非使用位置とに択一的に固定可能に構成されている。
詳しくは、
図6に示すように、支持フレーム100側のブラケット120には、第8ボルト122が挿通される一つのボルト挿入孔123が形成され、アンテナユニット50側のステー75には、正規使用位置及び非使用位置にあるときにブラケット120側のボルト挿入孔123と合致する二箇所にボルト挿入孔124が形成されている。
【0051】
図4に示すように、アンテナユニット50が正規使用位置にある状態では、基地局アンテナ29が鉛直方向の上方に向く姿勢にあり、基地局アンテナ29の上端は、
図1に示すように、キャビン7のルーフ190よりも上方に突出する。しかし、トラクタ1の輸送時等において、キャビン7のルーフ190よりも上方に突出する基地局アンテナ29が邪魔になる場合には、
図9に示すように、アンテナユニット50を正規使用位置から非使用位置に変更する。非使用位置では、基地局アンテナ29が水平方向の前方に突出する姿勢となり、ユニットカバー51を含むアンテナユニット50の上方への突出高さを、キャビン7のルーフ190の最高部位よりも低くすることができる。
【0052】
アンテナユニット50が正規使用位置に位置するか否かは、慣性計測装置25から取得する変位情報に基づいて検出することができる。そのため、制御部23には、
図2に示すように、アンテナユニット50が正規使用位置に位置することを検出していなければ、慣性計測装置25及びGNSSアンテナ26で取得した情報に基づく自律走行制御の開始を禁止する自律走行牽制部46が設けられている。
上述の自律走行牽制部46により、アンテナユニット50が正規使用位置あるときにのみ、自律走行制御の開始が可能となり、慣性計測装置25及びGNSSアンテナ26で取得した正確な情報に基づいて機体を目標走行経路に沿って精度良く、且つ、安全に自律走行させることができる。
【0053】
尚、本実施形態においては、慣性計測装置25から取得する変位情報に基づいてアンテナユニット50が正規使用位置に位置するか否かを検出したが、アンテナユニット50の位置変位を検出する自動スイッチの信号又は人為操作されるハードスイッチの信号により、アンテナユニット50が正規使用位置に位置するか否かを判別してもよい。
【0054】
次に、アンテナユニット50から導出されたハーネス80の配線構造について説明する。
ハーネス80が配線されるキャビンフレーム200は、
図10、
図11に示すように、運転座席9の前方に位置する左右一対の前支柱201と、運転座席9の後方に位置する左右一対の後支柱202と、前支柱201同士の上端部間を連結する前梁部材203と、後支柱202同士の上端部間を連結する後梁部材204と、前後に並ぶ前支柱201と後支柱202との上端部間を連結する左右の側梁部材205とを備えた略箱枠状に構成されている。
【0055】
各後支柱202の下端部には、
図10、
図11に示すように、リヤフェンダー206の形状に沿わせて側面視で前方上方に膨らむように湾曲したフェンダフレーム207の後端上部が連結され、各フェンダフレーム207の前端下部は、対応する前支柱201の下部から後向きに突出したサイドフレーム208の後端部に連結している。
図10に示すように、フェンダフレーム207は筒状のフレーム材から構成されている。そのうち、キャビン7の右側に位置するフェンダフレーム207の前端下部は、キャビン7の外部の下方に開口し、右側に位置するフェンダフレーム207の内部空間は、キャビン7の内部と外部とを連通する内外連通路210に構成されている。このフェンダフレーム207の内外連通路210には、エアコン内の結露水をキャビン7の外部に放出するドレンホース(図示せず)が配設されている。
【0056】
また、左右の前支柱201、前梁部材203及び各前支柱201の下端部から左右内向きに延びる前下部プレート板211で囲まれる領域には、フロントガラス212が配置されている。
【0057】
そして、
図10、
図11に示すように、アンテナユニット50から導出されたハーネス80は、キャビン7のフロントガラス212の外面における右側縁部(左右幅方向の一側縁部の一例)で、且つ、右側の前支柱201のガラス受け部201aと重合する帯状部位に沿って下方側に延出配置されている。フロントガラス212の下端側の前下部プレート板211にまで至ったハーネス80は、サイドフレーム208に連続する床板支持プレート213の下面に沿って後方側に延出されたのち、右側に位置するフェンダフレーム207の前端下部の開口から内外連通路210を通してキャビン7内に導かれ、右側の操作パネル部214に配置された制御部23に接続されている。
【0058】
フロントガラス212の外面における右側縁部で、且つ、右側の前支柱201のガラス受け部201aと重合する帯状部位は、フロントガラス212をキャビン7の前面部に取付けるためのガラス貼付け部であり、視覚の邪魔にならない位置でもある。そのため、アンテナユニット50から導出されたハーネス80を上述の帯状部位に配置することにより、運転座席9に着座した操縦者の視界を良好な状態に維持したままハーネス80を体裁良く配設することができる。
【0059】
また、
図11に示すように、フロントガラス212の外面における右側縁部の帯状部位には、ハーネス80を挿通する保護用の樹脂製のハーネスカバー250が接着剤等で貼着されている。このハーネスカバー250は、
図12に示すように、フロントガラス212への貼着面251及びハーネス80を受け止めるハーネス受け面252を備えたベース部253と、当該ベース部253の幅方向一端部に一体形成され、且つ、ベース部253のハーネス受け面252に配置されたベース部253の外周面に沿って弧状に湾曲する可撓性のあるバンド部254とからなる。
バンド部254の先端部には係合爪255が形成され、ベース部253のハーネス受け面252の幅方向他端側部位には、係合爪255が係脱自在な係合凹部256と、当該係合凹部256に係合された係合爪255の背面に当接して、当該係合爪255の係合離脱を当接状態で規制する半円状の突条257が形成されている。
これにより、
図12(a)に示すように、係合爪255と係合凹部256との係合を解除することで、ベース部253とバンド部254との間からハーネスカバー250の内部にハーネス80を挿入させて、ハーネス受け面252にてハーネス80の外周部の一部を受けるようにハーネス80を設置することができる。そして、
図12(b)に示すように、係合爪255と係合凹部256とを係合させることで、ベース部253とバンド部254を連結させて、ハーネス80の外周部の全周に亘ってハーネス受け面252にて受ける状態でハーネス80をハーネスカバー250に装着することができる。
【0060】
次に、キャビン7内に配設されるタブレット端末48の配置について説明する。
タブレット端末48は、
図11、
図13に示すように、キャビン7内の右側の操作パネル部214の前端上部に配設されている。このタブレット端末48の配設位置は、運転座席9の左右の両側脇に配置されるアームレスト270,271のうち、右側のアームレスト271の前方延長線上に位置する。詳しくは、右側のアームレスト271の前半部271Aは、前後方向に沿う後半部271Bに対して前端側ほど右側に位置する傾斜姿勢に構成されている。この前半部271Aには、トラクタ1の走行速度を増減速させる主変速レバー272と、ロータリ耕耘機等の作業機の高さ位置を手動で変更調節するダイヤル式の作業部ポジションダイヤル273等が備えられている。
そして、運転座席9に着座したオペレータは、基本的にアームレスト270,271に腕や肘等を置く。そのため、特に、右側のアームレスト271の前半部271Aの前方延長線上にタブレット端末48を配設することにより、主変速レバー272や作業部ポジションダイヤル273等に対する操作と同様に、タブレット端末48の操作を容易に行うことができる。
【0061】
また、タブレット端末48は、
図13に示すように、ステアリングハンドル8の少し右側に偏位した位置に配設されている。このタブレット端末48の配設位置は、運転座席9に着座したオペレータの前方への作業視界を妨げることはない。それでいて、作業のために前方を見ながら目線を少し逸らせば、タブレット端末48の液晶画面48a全体を容易に目視することができる。
【0062】
次に、タブレット端末48を支持する端末支持装置300について説明する。
端末支持装置300は、
図14~
図17に示すように、キャビンフレーム200の右側のフェンダフレーム207側に固定される支柱部310と、タブレット端末48を脱着自在に保持する端末ホルダー320と、支柱部310に対して端末ホルダー320を三次元的に位置調整可能に取付ける端末位置調整機構350と、を備える。
端末位置調整機構350は、
図14~
図17に示すように、支柱部310の構成部材である鉛直方向に沿う円筒のパイプ支柱311に対して、鉛直方向に沿う第1縦軸芯Y1(
図15、
図17参照)周りで回動自在で、且つ、第1縦軸芯Y1方向に高さ調整自在に取付けられる第1可動アーム360と、第1可動アーム360の先端部に対して、鉛直方向に沿う第2縦軸芯Y2(
図15、
図17参照)周りで回動自在に取付けられる第2可動アーム380と、を備える。第2可動アーム380の先端部には、端末ホルダー320が水平方向に沿う横軸芯X(
図15、
図17参照)周りで回動自在に取付けられている。この端末ホルダー320の横軸芯X周りでの回動操作により、端末ホルダー320に保持されたタブレット端末48の液晶画面48aの仰角を調整することができる。
【0063】
支柱部310のパイプ支柱311の下端には、
図14に示すように、略矩形状の取付け板312が固着されている。この取付け板312は、右側のフェンダフレーム207に固着されている略門の字状の第1ブラケット313にボルト314にて固定されている。
また、パイプ支柱311の上端部には、
図14、
図15に示すように、第1縦軸芯Y1方向に沿うスリット315が形成され、スリット315の両側脇には、コの字状に折り曲げ形成された連結部材316が固着されている。
図15に示すように、両連結部材316に亘って調整用ボルト317が挿通され、この調整用ボルト317の雄ネジ部の先端側部位にはナット318が螺合されている。調整用ボルト317とナット318との締め付け側への螺合操作により、両連結部材316が互いに引き寄せられ、パイプ支柱311の上端部の内径が収径される。これにより、
図17に示すように、パイプ支柱311の上端部に摺動自在に挿入されている第1可動アーム360の基端側の第1軸部材361が挟持固定され、第1可動アーム360の第1軸部材361の第1縦軸芯Y1周りでの向き姿勢及び第1縦軸芯Y1方向での高さ位置が固定される。
【0064】
第1軸部材361は、
図16、
図17に示すように、パイプ支柱311の上端部に挿入される筒軸部362の上端に、コの字状に折り曲げ形成された第1ボス受け部363を固着して構成されている。第1ボス受け部363の第1上板部363aと第1下板部363bとの間には、
図15~
図17に示すように、第1可動アーム360の基端部に形成されている筒状の第1ボス部360Aが挿入配置されている。第1ボス受け部363の第1上板部363aと第1下板部363bとに亘って、
図17に示すように、第1ボス部360Aを貫通する第1支軸364が設けられている。該第1支軸364の上端部の雄ネジ部には第1ナット365が螺合されている。第1可動アーム360の第1ボス部360Aは、第1軸部材361の第1ボス受け部363に対して第1支軸364の軸芯である第1縦軸芯Y1周りで回転自在で、且つ、第1縦軸芯Y1周りの任意の向き姿勢で固定自在に構成されている。
【0065】
図14~
図17に示すように、第1可動アーム360の先端部に形成されている筒状の第2ボス部360Bの上端には、コの字状に折り曲げ形成された第2ボス受け部370が固着されている。第2ボス受け部370の第2上板部370aと第2下板部370bとの間には、第2可動アーム380の基端部に形成されている筒状の第3ボス部381が挿入配置されている。
図16、
図17に示すように、第2ボス受け部370の第2上板部370aと第2下板部370bとに亘って、第3ボス部381を貫通する第2支軸371が設けられ、該第2支軸371の上端部の雄ネジ部には第2ナット372が螺合されている。第2可動アーム380の第3ボス部381は、第1可動アーム360の第2ボス受け部370に対して第2支軸371の軸芯である第2縦軸芯Y2周りで回転自在で、且つ、第2縦軸芯Y2周りの任意の向き姿勢で固定自在に構成されている。
【0066】
第2可動アーム380は、
図14~
図17に示すように、第2縦軸芯Y2方向に沿う第3ボス部381と、横軸芯X方向に沿う第4ボス部382と、両ボス部381,382を一体的に結合する連設部383と、を備える。端末ホルダー320の背面の下端部には、平面視略コの字状の第2ブラケット321が固着されている。
図14、
図15、
図17に示すように、第2ブラケット321の左右の側板321a間には、第2可動アーム380の第4ボス部382が挿入配置されている。この第4ボス部382を貫通する第3支軸384は、第2ブラケット321の両側板321aに亘って設けられている。該第3支軸384の一端部の雄ネジ部には第3ナット(図示省略)が螺合されている。端末ホルダー320の第2ブラケット321は、第2可動アーム380の第4ボス部382に対して第3支軸384の軸芯である横軸芯X周りで回転自在で、且つ、横軸芯X周りの任意の向き姿勢で固定自在に構成されている。
【0067】
そして、上述のように、支柱部310に対する第1可動アーム360の第1縦軸芯Y1周りでの向き調節及び第1縦軸芯Y1方向での高調節と、第1可動アーム360に対する第2可動アーム380の第2縦軸芯Y2周りでの向き調節と、第2可動アーム380に対する端末ホルダー320の横軸芯X周りでの向き調節とにより、身長や姿勢、癖が異なるユーザー個々に応じて、端末ホルダー320に保持されたタブレット端末48の位置及び向き姿勢を三次元的に調整することができる。
【0068】
また、支柱部310に第1可動アーム360が固定され、第1可動アーム360に第2可動アーム380が固定され、第2可動アーム380に端末ホルダー320が固定された状態では、端末位置調整機構350の剛性が十分確保され、端末ホルダー320に装着されたタブレット端末48への振動による影響を極力小さくすることができる。さらに、支柱部310は、振動対策が施されたキャビンフレーム200に取付けられているため、タブレット端末48への振動による影響を抑制することができる。
【0069】
端末ホルダー320は、
図14~
図17に示すように、タブレット端末48の下端部を支持する固定ホルダー部330と、タブレット端末48の上端部を支持する可動ホルダー部340と、を備える。可動ホルダー部340は、固定ホルダー部330に沿って上下方向に摺動自在に構成されている。可動ホルダー部340と固定ホルダー部330との間には、
図16、
図17に示すように、タブレット端末48の挾持側である下方側に可動ホルダー部340を移動付勢する挾持付勢部325が設けられている。
【0070】
固定ホルダー部330は、
図14~
図17に示すように、左右の側板331aを前方上方側に向かって折り曲げ形成してある横断面形状が略コの字状の固定取付け基材331と、この固定取付け基材331の両側板331aの下端部に亘って固着される固定支持板332と、固定取付け基材331の背面の下端部に固着される第2ブラケット321と、を備える。
固定支持板332の左右方向の両側部位には、
図14~
図17に示すように、タブレット端末48の下端部を載置支持する載置板部334aと、該載置板部334aの先端から上方に突出する落ち止め板部334bとを備えた下側支持部334が形成されている。固定支持板332と両下側支持部334とにより、タブレット端末48の下端部を上方から差し込み可能な下側キャッチ凹部335が構成され、この下側キャッチ凹部335の内面には、シリコンスポンジゴム等の弾性緩衝材336が貼着されている。
【0071】
可動ホルダー部340は、
図14~
図17に示すように、可動支持板341の背面に、固定取付け基材331の両側板331aの内面に沿って上下方向に摺動自在な左右一対の側板342が固着されている。可動支持板341の上端部には、タブレット端末48の上端部を挾持支持する挾持板部343aと、該挾持板部343aの先端から下方に突出する落ち止め板部343bとを備えた上側支持部343が形成されている。可動支持板341と上側支持部343とにより、タブレット端末48の上端部を下方から差し込み可能な上側キャッチ凹部344が構成され、この上側キャッチ凹部344の内面には、シリコンスポンジゴム等の弾性緩衝材336が貼着されている。
【0072】
固定ホルダー部330の下側キャッチ凹部335に設けた弾性緩衝材336と、可動ホルダー部340の上側キャッチ凹部344に設けた弾性緩衝材336とにより、端末ホルダー320に装着されたタブレット端末48の振動を抑制することができる。
【0073】
可動支持板341の両側板342には、
図15~
図17に示すように、該可動支持板341の可動範囲を規制する長孔345が形成されている。固定取付け基材331の両側板331aには、可動支持板341の両側板342の長孔345を貫通する状態で2本の摺動ガイド棒322が横架されている。そのため、可動ホルダー部340の両長孔345の上端が固定ホルダー部330の上側の摺動ガイド棒322に当接した位置が、固定ホルダー部330に対する可動ホルダー部340の最大下降位置になる。可動ホルダー部340の両長孔345の下端が固定ホルダー部330の下側の摺動ガイド棒322に当接した位置が、固定ホルダー部330に対する可動ホルダー部340の最大上昇位置になる。
【0074】
挾持付勢部325は、
図17に示すように、固定取付け基材331の両側板331aの下端部に横架した下側バネ掛け部材326と、可動支持板341の両側板342の下端部に横架した上側バネ掛け部材327と、両バネ掛け部材326,327間に掛止される引張コイルバネ328と、を備える。引張コイルバネ328により、可動ホルダー部340は、固定ホルダー部330に対して最大下降位置に移動付勢されている。
そのため、タブレット端末48を端末ホルダー320に装着するときには、タブレット端末48の上端部を、可動ホルダー部340の上側キャッチ凹部344の下方から差し込み、その状態で可動ホルダー部340を引張コイルバネ328の弾性付勢力に抗して上方に押し上げる。そして、タブレット端末48の下端が固定ホルダー部330の下側キャッチ凹部335の上端を越えた時点で、タブレット端末48の下端部を固定ホルダー部330の両下側キャッチ凹部335に差し込む。この装着状態では、引張コイルバネ328の弾性付勢力により、固定ホルダー部330の両下側キャッチ凹部335と可動ホルダー部340の上側キャッチ凹部344との三点でタブレット端末48が確実に挾持保持される。
【0075】
操作パネル部214の前端上部には、支柱部310のパイプ支柱311の上端が臨む。且つ、第1可動アーム360の第1軸部材361は、操作パネル部214の前端上部を貫通する。操作パネル部214の前端上部に固定される機器取付け部材390にも、
図15に示すように、操作パネル部214の開口に連通する貫通孔390aが形成されている。操作パネル部214の開口及び機器取付け部材390の貫通孔390aは、パイプ支柱311の両連結部材316に挿通されている調整用ボルト317及びナット318を上方の外部から手指又は工具を差し入れて操作可能な大きさに構成されている。
また、機器取付け部材390の貫通孔390aを覆う可撓性のゴムカバー391が設けられている。このゴムカバー391を捲り上げることにより、機器取付け部材390の貫通孔390aが露出する。
【0076】
〔その他の実施形態〕
(1)上述の実施形態では、無線通信ユニット27の無線通信用アンテナ28をアンテナユニット50のユニットカバー51内に収めたが、必要に応じて、無線通信用アンテナ28を、上側カバー体53に形成される貫通孔から外部の上方に突出させてもよい。
【0077】
(2)上述の実施形態では、無線通信ユニット27の無線通信用アンテナ28と慣性計測装置25の中心部との間の第1所定距離L1を250mm以上に設定したが、この第1所定距離L1は、無線通信ユニット27と慣性計測装置25との間での電波干渉条件に応じて任意に設定することができる。
【0078】
(3)上述の実施形態では、第1膨出部53Aの内面53aと無線通信用アンテナ28の上端との間の第2所定距離L2を30mm以上に設定したが、この第2所定距離L2は、無線通信ユニット27と無線通信端末30の無線通信装置31との間での通信状態に応じて任意に設定することができる。
【0079】
(4)上述の実施形態では、ユニットカバー51の下面側に左右一対のステー75を取付けたが、この取付け構造に限定されるものではなく、作業車両側の取付け条件に応じて任意の取付け構造を採用することができる。
【0080】
(5)上述の実施形態では、慣性計測装置25とGNSSアンテナ26とを各別に構成したが、慣性計測装置25とGNSSアンテナ26とを一体的に構成してもよい。
【0081】
<発明の付記>
本発明の一実施形態では、キャビンを備えた作業車両であって、前記キャビンの外部の上部位置において左右幅方向に沿う支持フレームをキャビンフレームに固定し、前記支持フレームに、慣性計測装置とGNSSアンテナと無線通信装置が組付けられたアンテナユニットを、前記慣性計測装置及び前記GNSSアンテナが機体の左右幅方向の略中心位置に配置する状態で取付けてある。
【0082】
上記構成によれば、アンテナユニットに組付けられている慣性計測装置及びGNSSアンテナが機体の左右幅方向の略中心位置に配置されているので、GNSSアンテナの受信信号から取得する作業車両の現在位置情報の検出精度と、慣性計測装置から取得する機体の姿勢変化情報の検出精度を共に向上することができる。
また、アンテナユニットに組付けられている無線通信装置により、例えば、無線通信端末等の外部装置との間で各種の信号を無線通信することが可能となる。
しかも、アンテナユニットが取付けられる支持フレームは、キャビンの外部の上部位置において左右幅方向に沿う姿勢で剛性の高いキャビンフレームに固定されているので、支持フレームを強固な支持構造に構成することができる。さらに、キャビンフレームはキャビンルーフ近くに及ぶ高さを有するため、支持フレームの取付け位置をキャビンフレームの上部側に設定することにより、慣性計測装置とGNSSアンテナと無線通信装置がそれぞれ適切に機能する高さ位置にアンテナユニットを容易に配置することができる。
【0083】
したがって、慣性計測装置とGNSSアンテナと無線通信装置が組付けられたアンテナユニットの採用と、機体に対する慣性計測装置及びGNSSアンテナの配設位置、及びアンテナユニットの支持構造における上述の合理的な工夫とにより、慣性計測装置及びGNSSアンテナの検出精度を共に向上し、且つ、無線通信装置の通信状態を良好に維持した状態で作業車両に効率良く搭載することができる。しかも、搭載されたアンテナユニットの支持構造を強固に構成することができる。
【0084】
本発明の一実施形態では、前記支持フレームは、前記キャビンフレームの左右に設けられたミラー取付け部に亘って連結されている。
【0085】
上記構成によれば、左右のミラー取付け部は、剛性の高いキャビンフレームから突設され、且つ、キャビンルーフに近い高さ位置に配置されている。そのため、頑丈で且つ地上高もある両ミラー取付け部を利用して、アンテナユニットの支持フレームを適切な高さ位置に強固に且つ容易に取付けることができる。
【0086】
本発明の一実施形態では、前記アンテナユニットは、前記支持フレームに対して正規使用位置から低位側の非使用位置に位置変位可能に取付けられている。
【0087】
上記構成によれば、アンテナユニットが正規使用位置に位置する場合に、例えば、アンテナユニットやアンテナユニットに装備されるアンテナが、キャビンルーフの上面よりも上方に突出配置されることがある。よって、トラック等の輸送車両にて作業車両を輸送する際の車高が高くなり、道路走行時等の高さ制限を受ける等の問題を生じることがある。そこで、本実施形態では、アンテナユニットを支持フレームに対して正規使用位置から低位側の非使用位置に位置変位させることにより、道路走行時等の高さ制限等の問題にも容易に対応することができる。
【0088】
本発明の一実施形態では、前記慣性計測装置及びGNSSアンテナで取得した情報に基づいて機体を自律走行制御する制御部と、前記アンテナユニットが正規使用位置に位置することを検出していなければ、前記制御部による自律走行制御の開始を禁止する自律走行牽制部が設けられている。
【0089】
上記構成によれば、アンテナユニットが正規使用位置に位置することを検出している場合には、自律走行牽制部は働かず、制御部は、慣性計測装置及びGNSSアンテナで取得した情報に基づいて自律走行制御を開始する。アンテナユニットが正規使用位置に位置することを検出していない場合には、自律走行牽制部による牽制が機能し、制御部による自律走行制御の開始が禁止される。これにより、道路走行時等の高さ制限に対応するアンテナユニットの位置変位構造を採用しながらも、慣性計測装置及びGNSSアンテナで取得した正確な情報に基づいて機体を目標走行経路に沿って精度良く、且つ、安全に自律走行させることができる。
【0090】
本発明の一実施形態では、前記キャビン内には、前記慣性計測装置及びGNSSアンテナで取得した情報に基づいて機体を自律走行制御する制御部が設けられ、前記アンテナユニットから導出されたハーネスは、前記キャビンフレームに設けた内外連通路を経由して前記キャビン内の前記制御部まで配設されている。
【0091】
上記構成によれば、キャビン外の上部位置に配置されるアンテナユニットとキャビン内に設けられた制御部とを、キャビンフレームに設けられている内外連通路を経由するハーネスの合理的な取り回しにより接続することができる。
【0092】
本発明の一実施形態では、前記アンテナユニットから導出されたハーネスは、前記キャビンのフロントガラスの外面における左右幅方向の一側縁部で、且つ、前記キャビンの前支柱のガラス受け部と重合する帯状部位に沿って配置されている。
【0093】
上記構成によれば、フロントガラスの外面における左右幅方向の一側縁部で、且つ、前支柱のガラス受け部と重合する帯状部位は、フロントガラスをキャビンの前面部に取付けるためのガラス貼付け部であり、視覚の邪魔にならない位置でもある。そのため、アンテナユニットから導出されたハーネスを上述の帯状部位に配置することにより、運転座席に着座した操縦者の視界を良好な状態に維持したままハーネスを体裁良く配設することができる。
【0094】
本発明の一態様に係るトラクタは、運転部を覆うキャビンと、衛星からの位置情報を受信する受信装置を有するアンテナユニットと、前記アンテナユニットを支持する支持フレームと、を備える。前記アンテナユニットは、前記キャビンのルーフの上方に配置され、かつ、前記支持フレームを介して前記キャビンのキャビンフレームに支持される。前記アンテナユニットは、前記支持フレームに対して正規使用位置から低位側の非使用位置に位置変位可能に取付けられている。
【符号の説明】
【0095】
1 作業車両(トラクタ)
7 キャビン
23 制御部
25 慣性計測装置
26 GNSSアンテナ
27 無線通信装置(無線通信ユニット)
29 無線通信装置(基地局アンテナ)
46 自律走行牽制部
50 アンテナユニット
80 ハーネス
100 支持フレーム
150 ミラー取付け部
200 キャビンフレーム
201 前支柱
201a ガラス受け部
210 内外連通路