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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】内視鏡用処置具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/28 20060101AFI20240521BHJP
   A61B 17/94 20060101ALI20240521BHJP
   A61B 18/12 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
A61B17/28
A61B17/94
A61B18/12
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023523457
(86)(22)【出願日】2022-05-23
(86)【国際出願番号】 JP2022021059
(87)【国際公開番号】W WO2022250002
(87)【国際公開日】2022-12-01
【審査請求日】2023-08-30
(31)【優先権主張番号】P 2021087785
(32)【優先日】2021-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504349179
【氏名又は名称】本間 清明
(74)【代理人】
【識別番号】100160370
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 鈴
(72)【発明者】
【氏名】本間 清明
【審査官】神ノ田 奈央
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/155743(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/134752(WO,A1)
【文献】特開2005-319164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/28
A61B 17/94
A61B 18/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡チャネルに挿脱され、処置液が供給される可撓性を有するシースと、
前記シース内に進退可能に配置された操作ワイヤと、
前記シースの後端部に設けられ前記シース内に処置液を注入する注液口を有し、前記操作ワイヤを操作して前記操作ワイヤの先端側に取り付けられた進退伝達棹を進退操作する操作部と、
一つの開放面を閉じる蓋に貫通孔を開口して前記シースの先端部に連結された筒部及び前記筒部から先端に断面円弧状の凹面部を向かい合わせて延びる一対の腕部とを有する処置部支持部材と、
先端側に処置片が設けられ且つ位置固定された交差部を有する一対の開閉用リンク及び前記一対の開閉用リンクの後端側と夫々の先端側が回動自在に連結されて後端側が前記進退伝達棹と回動自在に連結された一対の駆動用リンクを含み、前記一対の開閉用リンクの交差部及び駆動用リンクが平面状側面部を有するリンク機構を備え、
前記筒部の蓋に開口した貫通孔を貫通した進退伝達棹を進退操作して前記リンク機構の一対の駆動用リンクを駆動することにより前記一対の開閉用リンクの先端側の処置片を開閉駆動する内視鏡用処置具であって、
前記処置部支持部材は、
前記筒部が、前記シース内を通して供給される処置液を前記貫通孔を通して前記一対の腕部の間に流出する送液路を構成し、
前記一対の腕部が、断面円弧状の内面部を向かい合わせた中に前記リンク機構を収納し、前記一対の開閉用リンクの交差部及び駆動用リンクの平面状側面部と前記一対の腕部の凹面部との隙間に前記筒部から流出された処置液を流出する処置液給送路を構成する、
内視鏡用処置具。
【請求項2】
前記リンク機構は、前記一対の開閉用リンクの交差部を前記一対の腕部に対して第1連結軸により位置固定し、
前記処置液給送路は、前記処置液が、前記第1連結軸の径よりも幅広で処置液が前記第1連結軸の両側を真っ直ぐに流れるように形成されている請求項1に記載の内視鏡用処置具。
【請求項3】
前記凹面部は、前記一対の腕部の各内面部の曲率中心が前記操作ワイヤの延長中心線に一致するよう形成された凹面であると共に、
前記開閉用リンクの交差部の外側の平面状側面部が同側に対向している前記腕部の対向面の凹面部を挟んだ両側縁部に摺接している請求項2に記載の内視鏡用処置具。
【請求項4】
前記腕部が、前記進退伝達棹の進退動作による前記駆動用リンク及び/又は開閉用リンクの移動を阻止する位置に配置されたストッパを備える請求項1から3何れかに記載の内視鏡用処置具。
【請求項5】
前記進退伝達棹が、前記筒部を貫通する進退伝達棹の先端に前記送液部の短径より幅広径の先端部を備える請求項1から3何れかに記載の内視鏡用処置具。
【請求項6】
前記貫通孔が長円孔形状である請求項1記載の内視鏡用処置具。
【請求項7】
前記貫通孔が長円孔形状である請求項2に記載の内視鏡用処置。
【請求項8】
前記貫通孔が長円孔形状である請求項3に記載の内視鏡用処置具。
【請求項9】
前記貫通孔が長円孔形状である請求項4に記載の内視鏡用処置具。
【請求項10】
前記貫通孔が長円孔形状である請求項5に記載の内視鏡用処置具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡のチャネル内に挿脱され、生体組織の病変部位の処置を行う処置部を先端に有する内視鏡用処置具に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡は、体腔内に挿入され生体組織の病変部位の直接診察や治療を低侵襲により行う内視鏡用処置具のために使用される。この内視鏡用処置具は、内視鏡のチャネル(長尺の穴)内に挿脱可能に収容され、内視鏡の視野内で病変部位の処置(生体組織の患部の除去、サンプル採取、切除、止血等)を行うための処置具を、先端に有する。内視鏡は、一般に、医師が操作し、処置具は別の医師また技師が操作する。
【0003】
以下の特許文献1の内視鏡用処置具に関する説明で使用する用語は、同特許文献中で使用している用語である。
【0004】
特許文献1に示される内視鏡用処置具は、コイルシースに樹脂製シースが被覆されたシース内に進退可能に配置された操作部材と、コイルシースの後端部に設けられコイルシースに処置液を注入する注液口を有し、操作部材を進退操作する操作部と、コイルシースの先端部に連結された先端カバーと、処置部支持部材と、一対の鉗子片と、を備える。この一対の鉗子片が処置部を構成する。
【0005】
前記処置部支持部材は、先端カバー内に設けられた鍔状部と突き当て部とを有する円筒空間部に収容された流路形成部材であって、中央孔に操作部材の先端部が挿通している流路形成部材と、この流路形成部材の先端対向位置より先端カバーの先側に延在する一対のブラケットと、を有する。
【0006】
前記一対の鉗子片は、中途クロス部を一対のブラケットに揺動軸により支持され、中途クロス部より後側部分が菱形リンク部となっていて菱形リンク部の前側の一対のリンクは一対の各鉗子片と一体である。菱形リンク部の後側の一対のリンクは、先端カバー外で操作部材の先端部と連結されている。これにより、処置具は、操作部材の進退動に応じて菱形リンク部が開脚と閉脚し、これによって中途クロス部より先側部分の一対の鉗子片から成る処置部が開閉し、生体患部の処置を行う。
【0007】
そして、内視鏡用処置具は、操作部材が後方に引かれ一対の鉗子片が閉状態のとき、流路形成部材が後方移動し突き当て部に当接して流路形成部材の外周側の通路が閉鎖されると共に、流路形成部材の中心孔とこの中心孔に挿通された操作部材とのギャップである第1の送液部を通り、さらに先端カバーの先端部の第2の送液部を通してコイルシース内を給送される処置液が一対の鉗子片の先端側に流出させる。
【0008】
また、内視鏡用処置具は、操作部材が前方に移動され一対の鉗子片が開状態のとき、操作部材の先端側に設けられた大径部が前方移動し第1の送液部を閉塞と共に、流路形成部材が前方移動し突き当て部から離れ流路形成部材7の外周側のギャップを開放しこのギャップを通り、さらに第2の送液部を通してコイルシース内を給送される処置液が一対の鉗子片の先端側に流出させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2017/134757号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に示される内視鏡用処置具は、一対の鉗子片が閉状態のときと開状態のときのいずれにおいてもコイルシース内を給送される処置液を一対の鉗子片の先端側に流出させる。この内視鏡用処置具は、(1)コイルシース内を給送される処置液が先端カバーの先端で送液圧力が開放されること、(2)先端カバーの先端から一対の鉗子片の先端までの距離が長いこと、(3)液流が先端カバーの内部で絞られかつ曲がりくねって流れることに起因して、第2の送液部から流出する処置液の流れが大きく広がって流速が遅くなる。この流速が遅くなるため、従来の内視鏡用処置具は、生体の被処置部位の流血や淀みや濁りを効果的に洗うことができず、焼灼切開に効果を発揮が十分であるとは言えないという課題があった。
【0011】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、一対の処置片の閉状態と開状態のいずれにおいても、一対の処置片(処置部)/または各処置片に沿って十分大きな流速を有する液体を正確に送液することができ、更に、一対の処置片が開状態のときには、各処置片に沿って勢いよく流れる2つの液流と、一対の処置片の開状態の中間部中央に向かって勢いよく流れる1つの液流とを作り出すことができ、もって生体の被処置部位の流血や淀み、濁りを効果的に洗い除けることができ、焼灼切開に十分な効果を発揮できる内視鏡用処置具を提供することを目的とする。
また、本発明は、リンク機構により先端が開閉する処置片の開閉角度を制限することもできる内視鏡用処置具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するため本発明は、
内視鏡チャネルに挿脱され、処置液が供給される可撓性を有するシースと、
前記シース内に進退可能に配置された操作ワイヤと、
前記シースの後端部に設けられ前記シース内に処置液を注入する注液口を有し、前記操作ワイヤを操作して前記操作ワイヤの先端側に取り付けられた進退伝達棹を進退操作する操作部と、
一つの開放面を閉じる蓋に貫通孔を開口して前記シースの先端部に連結された筒部及び前記筒部から先端に断面円弧状の凹面部を向かい合わせて延びる一対の腕部とを有する処置部支持部材と、
先端側に処置片が設けられ且つ位置固定された交差部を有する一対の開閉用リンク及び前記一対の開閉用リンクの後端側と夫々の先端側が回動自在に連結されて後端側が前記進退伝達棹と回動自在に連結された一対の駆動用リンクを含み、前記一対の開閉用リンクの交差部及び駆動用リンクが平面状側面部を有するリンク機構を備え、
前記筒部の蓋に開口した貫通孔を貫通した進退伝達棹を進退操作して前記リンク機構の一対の駆動用リンクを駆動することにより前記一対の開閉用リンクの先端側の処置片を開閉駆動する内視鏡用処置具であって、
前記処置部支持部材は、
前記筒部が、前記シース内を通して供給される処置液を前記貫通孔を通して前記一対の腕部の間に流出する送液路を構成し、
前記一対の腕部が、断面円弧状の内面部を向かい合わせた中に前記リンク機構を収納し、前記一対の開閉用リンクの交差部及び駆動用リンクの平面状側面部と前記一対の腕部の凹面部との隙間に前記筒部から流出された処置液を流出する処置液給送路を構成する、
ことを第1の特徴とする。
【0013】
また、本発明は、前記第1の特徴の内視鏡用処置具において、前記リンク機構は、前記一対の開閉用リンクの交差部を前記一対の腕部に対して第1連結軸により位置固定し、
前記処置液給送路は、前記処置液が、前記第1連結軸の径よりも幅広で処置液が前記第1連結軸の両側を真っ直ぐに流れるように形成されていることを第2の特徴とする。
【0014】
また、本発明は、前記第2の特徴の内視鏡用処置具において、前記凹面部は、前記一対の腕部の各内面部の曲率中心が前記操作ワイヤの延長中心線に一致するよう形成された凹面であると共に、
前記開閉用リンクの交差部の外側の平面状側面部が同側に対向している前記腕部の対向面の凹面部を挟んだ両側縁部に摺接していることを第3の特徴とする。
【0015】
また、本発明は、前記第1から第3何れかの特徴の内視鏡用処置具において、前記腕部が、前記進退伝達棹の進退動作による前記駆動用リンク及び/又は開閉用リンクの移動を阻止する位置に配置されたストッパを備えることを第4の特徴とする。
【0016】
また、本発明は、前記第1から第3何れかの特徴の内視鏡用処置具において、前記進退伝達棹が、前記円筒部を貫通する進退伝達棹の先端に前記送液部の短径より幅広径の先端部を備えることを第5の特徴とする。
【0017】
また、本発明は、前記第1の特徴の内視鏡用処置具において、前記貫通孔が長円孔形状であることを第6の特徴とする。
【0018】
また、本発明は、前記第2の特徴の内視鏡用処置具において、前記貫通孔が長円孔形状であることを第7の特徴とする。
【0019】
また、本発明は、前記第3の特徴の内視鏡用処置具において、前記貫通孔が長円孔形状であることを第8の特徴とする。
【0020】
また、本発明は、前記第4の特徴の内視鏡用処置具において、前記貫通孔が長円孔形状であることを第9の特徴とする。
【0021】
また、本発明は、前記第5の特徴の内視鏡用処置具において、前記貫通孔が長円孔形状であることを第10の特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、一対の処置片の閉状態と開状態のいずれにおいても、一対の処置片/または各処置片に沿って十分大きな流速を有する液体を正確に噴出することができ、また、一対の処置片が開状態のときには、各処置片に沿って勢いよく流れる2つの液流と一対の処置片が開状態開いて中間部中央に向かって勢いよく流れる1つの液流とを作り出すことができる。このため本発明によれば、生体の被処置部位の流血や淀み、濁りを効果的に洗い除けることができ、焼灼切開に十分な効果を発揮できる内視鏡用処置具を提供することができる。
さらに、本発明によれば、前記腕部に設けたストッパが、前記進退伝達棹の進退動作による移動又はリンクの移動を阻止する位置に配置さていることにより、処置片の開く角度を制限することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態1による内視鏡用処置具を含む内視鏡を説明するための図である。
図2】本発明の実施形態1による内視鏡用処置具の全体を示す図である。
図3】本発明の実施形態1に係る内視鏡用処置具の正面の外観を説明するための図であって、図3(A)は一対の処置片が開いた状態を示すシースを省略した正面外観図であり、図3(B)は一対の処置片が閉じた状態を示すシースを省略した正面外観図である。
図4】本発明の実施形態1の内視鏡用処置具の正面の断面を説明するための図であって、図4(A)は処置片が開いた状態の処置具の先端部分の正面断面図、図4(B)は処置片が閉じた状態の処置具の先端部分の正面断面図、図4(C)は図4(B)におけるIVc―IVc断面図、図4(D)は図4(B)におけるIVd―IVd断面図である。
図5】本発明の実施形態1の内視鏡用処置具の側面の断面を示す図であって、図3(B)におけるV-V断面を示す図である。
図6】本発明の実施形態1の内視鏡用処置具から噴出する処置液の流れを説明するための図であって、図6(A)は処置片が閉じた状態であるときに処置部支持部材の内部を通流する液体が処置部支持部材の先端から流出する状態を示す図であり、図6(B)は処置片が中間の開度にあるときに処置部支持部材の内部を通流する液体が処置部支持部材の先端から流出する状態を示す図であり、図6(C)は処置片が最大の開度にあるときに処置部支持部材の内部を通流する液体が処置部支持部材の先端から流出する状態を示す図である。
図7】本発明の実施形態2による内視鏡用処置具の正面の断面を説明するための図である。
図8】本発明の実施形態3による内視鏡用処置具の処置部支持部材を説明するための図であって、図8(a)は全体斜視図、図8(b)は右側面図、図8(c)は左側面図、図8(d)は上面部、図8(e)は図8(a)のA部分の拡大図、図8(f)は図8(a)のB部分の拡大図である。
図9】本発明の実施形態3による内視鏡用処置具のリンク機構の構造及び動作を説明するための断面図である。
図10】本発明の実施形態による内視鏡用処置具のリンク機構の外観示す斜視図である。
図11】本発明の実施形態3による内視鏡用処置具のリンク機構の原理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明による内視鏡用処置具に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、処置部が位置する側を先端側、操作部が位置する側を後端側と呼ぶものとする。
【0025】
[実施形態1]
[内視鏡]
図1は実施形態1に係る内視鏡用処置具が適用される内視鏡1を示す図である。この内視鏡1は、生体の体腔内に挿入するための細長い挿入部2と、後端側に設けられ挿入部2の先端を上下左右方向に湾曲操作するためのダイヤルを有する内視鏡操作部3と、挿入部2と内視鏡操作部3との間を接続するように配置され、内視鏡用処置具10を挿入する挿入口が開口された処置具導入部4とを備える。この内視鏡1は、処置具導入部4から挿入部2の先端に向かって長手方向に形成された筒状の内視鏡チャネル5が開口され、この内視鏡チャネル5内に、後述する内視鏡用処置具10の生体患部の処置を行う一対の処置片15,16を先端側に取り付けたシース11を挿通するように構成されている。
【0026】
[内視鏡用処置具の基本的構成]
実施形態1に係る内視鏡用処置具10は、体腔内の生体組織の被処置部(患部)を挟み込んで電気的焼灼を行うカップ状鉗子である一対の処置片15,16から構成される処置部を備える。この内視鏡用処置具10は、処置液を送液手段6よりシース11内を通して送り、一対の処置片15,16の先方へ噴流させて体腔内の生体組織の被処置部(患部)を洗浄することができる。なお、一対の処置片15,16は、電気焼灼カップ形鉗子には限られるものではない。
【0027】
本実施形態による内視鏡用処置具10は、図2図3(A),(B),図4(A),(B)に示すように、細長い可撓性のある筒状のシース11と、該シース11を貫通する操作ワイヤ12と、該操作ワイヤ12の後端側に接続される操作部13と、前記操作ワイヤ12の先端側に進退伝達棹17及びリンク機構を介して接続される処置部90と、前記シース11の先端側に回転自在連結部19を介して取り付けられ、前記処置部90を支持する処置部支持部材14とを備える。前記回転自在連結部19は、基端側連結用筒状部20と先端側連結用筒状部23が回転自在に連結されている。
前記処置部90は、一対の駆動用リンク15d,16dと開閉用リンク15b,16bにより開閉される一対の処置片15,16から成り、進退伝達棹17を介して操作ワイヤ12が進退動作されることにより、リンク機構を介して処置片15,16を開閉動作するように構成されている。
【0028】
本実施形態に適用されるリンク機構の原理構成を図11を参照して説明する。本実施形態によるリンク機構は、図11に示す如く、パンタグラフ型の4節リンク機構であって、直線運動を行う進退伝達棹17と接続される第4連結軸85(対偶:pair)により一端が回動自在に重ねて連結された第1リンク81及び第2リンク82(「一対の駆動用リンク」と呼ぶ)と、該第1リンク81及び第2リンク82の他端と一端がそれぞれ第2連結軸86及び第3連結軸87により回動自在に重ねて連結され、位置固定された第1連結軸88により他端が回動自在に重ねて連結される第3リンク83及び第4リンク84(「一対の開閉用リンク」と呼ぶ)とを備え、前記第1リンク81~第4リンク84の重なりあった幅と処置部支持部材の一対の腕部の間隔幅とが略同一になるように設定され、前記進退伝達棹17の進退に応じて、第4連結軸85が前記一対の駆動用リンクに対する力点、第1連結軸88が一対の開閉用リンクの支点となり、一対の開閉用リンクである、該第3リンク83の他端から延びる処置片16と前記第4リンク84の他端から延びる処置片15とが開閉動作するように構成されている。なお、図11中の符号14zは後述するストッパである。
【0029】
このように本実施形態に採用されるリンク機構は、処置片15及び16を一方端から伸ばし第1連結軸88により回動自在に連結した一対の開閉用リンク(第3リンク83及び第4リンク84)と、該一対の開閉用リンクの他方端と第2連結軸86及び第3連結軸87により一方端を連結し、他方端が第4連結軸85により回動自在に連結された一対のンク(第1リンク81及び第2リンク82)とにより構成され、該駆動用リンクの第4連結軸85に操作ワイヤの進退動作力を受けて進退される進退伝達棹17とを備え、進退伝達棹17を進退することによって、開閉用リンクから延ばした一対の処置片15及び16を開閉するように構成されている。
【0030】
内視鏡用処置具10は、シース11の少なくとも体腔内に挿入される部分の外面、および処置部支持部材14の外面に重ねて親水性被膜が形成されていることによって、処置片15,16からシース11までが体腔内に引き攣りなく円滑に導入できるようになっている。
【0031】
シース11は、密着して長くコイル巻きされたコイルシース11aに樹脂製外被11bが被覆され、内視鏡チャネル5に挿脱される可撓性を有する。
【0032】
シース11は、長さが例えば500~2600mmの、可撓性を有しかつ適度の腰の強さ(屈曲耐性)を有する細長筒状体である。本実施形態のシース11は、コイルシース11aと、コイルシース11aの外面に被さる樹脂製外被11bとで構成されている。コイルシース11aは、例えば断面形状が矩形であるステンレス線等の金属材を密着してコイル巻きされたコイルシースが用いられることが好ましい。樹脂製外被11bは、PTFE、PEEK、PPS、ポリエチレン、またはポリイミド、等よりなり、可撓性と電気的絶縁性を有する。親水性被膜は電気絶縁被膜の上に重ねて形成される。
【0033】
シース11は、コイルシース11aの内面と、処置部支持部材14の外面に電気絶縁被膜が形成されている。樹脂製外被11bを設けず、コイルシース11aの内外面に電気絶縁被膜が形成されていてもよい。
【0034】
操作ワイヤ12は、コイルシース11a内に進退可能に配置され、導電性であって回転追従性が大きなトルクワイヤである。操作ワイヤ12は、例えば、全長がステンレス製であるか、またはステンレス製の後端部とナイチノール(ニッケルチタン合金)製の先端部とをステンレスパイプで接続しても良い。
【0035】
図2に示すように、操作部13は、処置片の開閉や回転を操作するための操作部本体13aと、該操作部本体13aに対してスライド自在なスライダ13bと、操作部本体13aの先端側に接続され、処置液を注入するための液注入部13cと、該液注入部13cの先端側に螺合される接続キャップ13dとを備える。
【0036】
操作部13は、コイルシース11aの後端部に設けられコイルシース11a内に処置液を注入する注液口(送液接続口)13c2を有し、操作者により操作ワイヤ12の進退操作および回転操作を行うための機構である。
【0037】
操作部本体13aは、図2に示す如く、2列の側面に直線的な移動を案内する直線ガイドを有する長い矩形枠形状の長矩形枠部13a1と、該長矩形枠部13a1の後端側に延びて操作者が指をかけるための円形枠形状の指掛け孔13a4を有するハンドル部13a2と、前記長矩形枠部13a1の先端側に延びて前記液注入部13cとネジ止めするための雄型接続部13a3とを備える。この円錐状の雄型接続部13a3は、操作ワイヤ12を貫通する貫通孔を有する。
前記スライダ13bは、操作者が指をかけるための孔である指掛け孔13b1,13b2(羽部)を有し、中央部が長矩形枠部13a1の直線ガイドにスライド自在に嵌め込まれ、操作者が、指掛け孔13a4に親指を掛けると共に指掛け孔13b1,13b2に人差し指と中指を掛けで掌を拡げたり窄めたりすることにより、長矩形枠部13a1の直線ガイドに沿ってスライド移動可能に構成されている。このため、本実施形態による内視鏡用処置具10は、操作者が操作部13の操作部本体13aを保持し、指を掛けたスライダ13bを押し引きすることによって、シース11内において操作ワイヤ12を進退することができる。
【0038】
操作ワイヤ12とコイルシース11aは、後端同士が一体に回転可能に接続されている。したがって、スライダ13bを保持し長矩形枠部13a1の周りに回動し操作ワイヤ12とシース11とを一体に回転することにより、シース11の先端側でシース11と操作ワイヤ12とを一体に回転することができる。
【0039】
なお、雄型接続部13a3を長矩形枠部13a1に一体に延びるように延設するのではなく、雄型接続部13a3を長矩形枠部13a1と分離して回らないような保持部を設け、この雄型接続部13a3を長矩形枠部13a1の先端側に相対回転可能に連結する構成とすることにより、スライダ13bの羽部(指掛け孔13b1)を保持し長矩形枠部13a1の周りに回動すると、操作ワイヤ12とコイルシース11aが先端側において相対回転可能になる。
【0040】
液注入部13cは、内部を長手方向に貫通する貫通孔13c1と、貫通孔13c1の中途とつながる注液口13c2と、貫通孔13c1の後端側に形成され操作部本体13aの雄型接続部13a3に螺着する円錐状の雌ねじ部(符号なし)と、貫通孔13c1の先端側に形成され接続キャップ13dが螺着する円錐状の雄ねじ部(符号なし)とを有する。注液口13c2には、送液手段6が接続される。送液手段6は、シリンジあるいはポンプ等であり、生理食塩水やヒアルロン酸、等の処置液をコイルシース11a内に送り込むことができる。
【0041】
そして、シース11内に挿通された操作ワイヤ12が、接続キャップ13dと液注入部13cの貫通孔13c1と操作部本体13aの貫通孔に挿通され、操作ワイヤ12の後端が、長矩形枠部13a1の枠内に通され、スライダ13bに連結されている。操作ワイヤ12と操作部本体13aの貫通孔の後端側の環状隙間を埋めるように液封リング(不図示)が設けられている。
【0042】
また、シース11の後端側は液注入部13cの先端側にフレアに当接され、接続キャップ13dにより固定されている。送液手段6から供給される液体は、注液口13c2からシース11内の操作ワイヤ12の周囲空間を通ってシース11の先端側に送られる。
【0043】
処置部支持部材14は、図3(A),(B)に示すように、コイルシース11aの先端部に後述する回転自在連結部19を介して連結され、一つの開放面を閉じた蓋を有する筒部14aと、この筒部14aから先端側に延びる一対の腕部14b,14bとを備える。処置部支持部材14は、外面に電気絶縁被膜が形成され、その上に重ねて親水性被膜が形成されている。
【0044】
本実施形態による処置片15,16及び開閉用リンク(図11の第3リンク83及び第4リンク84)はステンレス製やナイチノール(ニッケルチタン合金)製等であり、この処置片15及び16がカップ状の一対の生検鉗子を構成している。また、本明細書においては、前記一対の開閉用リンク15b,16bの重ねられて交差する一端が第1連結軸により連結される部分を交差部と呼ぶが、開閉用リンク15b,16bの一端から先端側方向に延びて処置片が構成されるため該処置片の後端部分が重ねられて交差する場合、該後端部分を交差部と呼ぶこともできる。前記処置片15,16は、先端が半円形の刃部が接すると共に半円形刃部に続く直線状刃部が接するように構成され、刃部を除き、外面に電気絶縁被膜が設けられ互いに電気絶縁状態としているため、図3(B)に示す如く、刃部同士が閉じ合さるときに刃部間を電流が流れるように構成されている。一対の処置片15,16は、親水性被膜の上に電気絶縁被膜の上に重ねて形成されている。
【0045】
交差部15a,16aは、特に図4(A)(B)に示す如く、一対の腕部14b,14b間にてX状にクロスして重なると共に軸孔が設けられ、この軸孔に、一対の腕部14b,14bの支持孔18x(図8参照)に両端支持される第1連結軸18が挿入されることにより、一対の処置片15,16が一対の腕部14b,14bにより支持されている。
【0046】
前記処置部支持部材14は、第1連結軸88を中心に回動自在に一方端を連結する開閉用リンク(図11の第3リンク83及び第4リンク84)と、該一対の開閉用リンクの他方端と第2連結軸86及び第3連結軸87により連結する一対の駆動用リンク(第1リンク81及び第2リンク82)とから構成されるリンク機構を支持し、前記開閉用リンクから処置片15及び16を延ばすことによって処置部を形成する。
【0047】
さらに詳述すると、図4に示した本実施形態による処置部支持部材14は、原理図で説明した開閉用リンク(図11の第3リンク83及び第4リンク84)に相当する開閉用リンク15b,16bが段差をもって肉薄に形成されて重なり且つピン孔が形成され、この開閉用リンク15b,16bが一対の駆動用リンク15d,16dのピン孔を有する先端部それぞれとピン連結(図11の第2連結軸86、第3連結軸87で連結)されている。同様に、進退伝達棹17の先端部分も肉薄に形成されかつピン孔が形成され、この先端部分が、一対の駆動用リンク15d,16dのピン孔を有するリンク後端側に挟まれてピン連結(図11の第4連結軸85と連結)されている。一対の駆動用リンク15d,16dの外面には電気絶縁被膜が形成されている。
【0048】
進退伝達棹17の後端部分と操作ワイヤ12の先端部分との連結は、進退伝達棹17の後端面より内部に設けられたワイヤ受け入れ穴に操作ワイヤ12の先端部が嵌入され、進退伝達棹17のワイヤ受け入れ穴の側面部に設けられた雌ねじに締め付けねじをネジ込むことにより連結固定されている。なお、この連結固定は、銀ロウ付け、ハンダ付け、またはカシメ、等であっても良い。
【0049】
[一対の処置片15,16の動作]
一対の処置片15,16は、操作ワイヤ12が先端側に移動されると、一対の駆動用リンク15d,16dが開脚角度を大きくするように動くことにより、開閉用リンク15b,16bが操作ワイヤ12の進退動作力を受けて開状態[図3(A),図4(A)]となり、処置片15,16を開状態とする[図3(B),図4(B)]ように動作する。
また、一対の処置片15,16は、操作ワイヤ12が後端側に移動されると、一対の駆動用リンク15d,16dが開脚角度を小さくするように動くことにより、開閉用リンク15b,16bが操作ワイヤ12の進退動作力を受けて開脚角度が小さくなり処置片15,16を閉じる状態にするように動作する。
【0050】
したがって、本実施形態による処置部支持部材14は、操作者が操作ワイヤ12を進退操作することにより、一対の処置片15,16が開閉し、閉じるときに刃部で生体組織の正常部と被処置部(患部)との分かれ目を挟んで患部をカップ内に取り込み、止血作用が伴う電気焼灼を行うことにより、被処置部を切除またはサンプル採取等の処置を行うことができる。
【0051】
[内視鏡用処置具の特徴的構成]
本実施形態による内視鏡用処置具10は、図3(A),(B)、図4(A),(B)、図5に示すように、処置部支持部材14の筒部14aとコイルシース11aとを、回転自在連結部19を介して連結している。
【0052】
回転自在連結部19は、筒状コイルキャップ21と連結用筒部22とを備える基端側連結用筒状部20と、大径筒部23aと小径筒部23bとを備える2段筒形状であって処置部支持部材14の筒部14aの後端部に固定された先端側連結用筒状部23とを備え、先端側連結用筒状部23が、基端側連結用筒状部20の連結用筒部22の連結用小径筒部22aに対して、相対回転可能・離脱不能に被嵌されている。
【0053】
基端側連結用筒状部20は、筒状コイルキャップ21と連結用筒部22との2つの部品により構成されている。筒状コイルキャップ21は、シース11の先端部に被嵌固定された薄肉筒部21aと、内径がシース11の内径と同一で内端がシース11の先端部に当接している厚肉筒部21bとを備え、薄肉筒部21aと厚肉筒部21bの外周面が一致しかつ外径が処置部支持部材14の筒部14aと同一径に設定されている。
連結用筒部22は、連結用小径筒部22aと、連結用小径筒部22aの先端側に設けられ筒部14a内に摺動可能に嵌合する鍔部22bとを有し、連結用小径筒部22aの略半部が筒状コイルキャップ21の厚肉筒部21bに嵌入されかつ嵌入端が溶接、ロウ付け等により固定され、残りの略半部が筒状コイルキャップ21の厚肉筒部21bより張り出している。
【0054】
先端側連結用筒状部23は、外径が処置部支持部材14の筒部14aと同一径であって筒部14aよりシース11の方向に連結固定された大径筒部23aと、大径筒部23aより先側に延びて筒部14aに嵌入している小径筒部23bとを備える。大径筒部23aと小径筒部23bは、内径が同一径であり、連結用筒部22の連結用小径筒部22aに摺動可能に嵌合している。大径筒部23aは、筒部14aとの突き合わせ端面同士が溶接、ロウ付け等により連結されている。
【0055】
したがって、回転自在連結部19は、操作ワイヤ12がシース11に対し制限なく回転可能である。なお、回転自在連結部19は、外面に電気絶縁被膜が形成され、その上に重ねて親水性被膜が形成されている。
【0056】
[処置液噴出構造の説明]
実施形態1に係る内視鏡用処置具10は、一対の処置片15,16が閉状態および開状態のいずれにおいてもコイルシース11a内を給送される処置液を一対の腕部14b,14bの先端より先方へ勢いよく噴出するため、以下に述べる構成を有する。
【0057】
まず、本実施形態による処置部支持部材14は、処置部支持部材14の基端側の筒部14aの内側凸壁14gに開口した貫通孔14h及び長円孔形状の送液部14h1、14h2[図4(D)]と、処置部支持部材14の先端側に延びる円弧状の一対の腕部14bの湾曲内壁面(凹面部14c,14d)と該一対の腕部14b間に配置される駆動用リンク15d(または16d)と処置片15(または16)の交差部15a(または16a)から開閉用リンク15b(または16b)の外側面との間の間隙を通して処置液を流通するための処置液給送路14e,14f[図4(C)]を構成している。
この処置液給送路14e,14fは、処置液が、開閉用リンク15b,16bを連結する連結軸(第1連結軸)の径よりも幅広で処置液が同連結軸(第1連結軸)の両側を真っ直ぐに流すように形成されている。
【0058】
この構成を成すために本実施形態による処置部支持部材14は、筒部14aの外面および各凹面部14c,14dの外面は、曲率中心が操作ワイヤ12の延長中心線に一致する円筒面であると共に、各凹面部14c,14dの内面(一対の腕部14bの各対向面)についても、曲率中心が操作ワイヤ12の延長中心線に一致するよう形成された凹筒面としている。
なお、本実施形態においては、内側凸壁14g部分に開口した送液部14h1の形状が長円孔形状である例を示したが、本発明は当該構造に限られるものではなく、操作ワイヤを貫通する孔とは別に処置液を流通するための孔を開口して送液部を形成しても良い。
【0059】
そして、本実施形態による処置部支持部材14は、前記構成をなす為に、図4(B)(C)に示す如く、一対の腕部14b,14bの内面の凹面部14c,14dの両側の端縁間のギャップ寸法(隙間の寸法)と、一対の開閉用リンク15b,16bの交差部15a,16aおよび一対の駆動用リンク15d,16dの外側面間の寸法(リンクの幅寸法)は、一致している。各処置片15又は16の交差部15a又は16aの外側の平面状側面部15a1又は16a1は、向かい合っている腕部14bの対向面の凹面部14c,14dを挟んだ両側縁部に摺接(擦りながら接する状態)している。
【0060】
また、図4(B),(D)に示すように、処置部支持部材14の筒部14aは、内側凸壁14gを有し、この内側凸壁14gには進退伝達棹17を挿通案内する長円孔形状の貫通孔14hを設けると共に、さらに、この貫通孔14hはコイルシース11a内を通して供給される処置液を各凹面部14c,14dの幅中央部へ流れさせる一対の送液部14h1,14h2を設けたことにより、各腕部14bの内面に形成された凹面部14c(または14d)と、一方の当該腕部14bと同側の交差部15a(または16a)から開閉用リンク15b(または16b)および一対の駆動用リンク15d(または16d)の側面部とで処置液給送路14e,14fを形成している。この実施の形態の貫通孔14hは、一対の送液部14h1,14h2を有するよう一対の腕部14b,14bの対向方向に長い長円孔形状に開口している。
【0061】
このように本実施形態による処置部支持部材14は、一対の駆動用リンク15d(または16d)の外側面が同側の腕部14bの凹面部14c(または14d)の幅中央部に対応して摺接(擦りながら接する状態)しているため、筒部14a内から凹面部14c(または14d)の幅中央部に流れ込む処置液が、送水圧力と表面張力とが作用することにより真っ直ぐに流れ、凹面部14c(または14d)の幅方向には流路抵抗が増大することにより、腕部14b、14b間のギャップから漏れ出る量が少なく、一対の腕部14b,14bの先端内側から噴出するように作られている。
【0062】
[処置液噴出動作の説明]
続いて、本実施形態による内視鏡用処置具10が、コイルシース11a内を給送される処置液を、処置部90の先端から先端方向に噴出する状態を、図6(A),(B),(C)を参照して説明する。
【0063】
まず、本実施形態による内視鏡用処置具10は、図6(A)に示すように、処置片15,16を閉じた状態で処置液を送水した場合、一対の処置液給送路14e,14fの先端(一対の腕部14b,14bの先端)より流出する処置液が(破線で示す如く)、表面張力で閉じた状態の処置片15,16を包み込んで1本線状の速度が大きい液流となり前方へ勢いよく噴出する。
すなわち、内視鏡用処置具10は、処置部支持部材14の一対の処置液給送路14e,14fを設けたことにより、交差部15a,16aまで送液圧力を保持できると共に、同時に送液圧力の開放位置から一対の処置片15,16の先端までの距離を短くしたため、一対の処置片15,16に沿って必要十分な送液量でかつ十分な流速の被処置液を体腔内の被処置部(切開患部や出血箇所)へ正確に噴出することができる。
【0064】
次いで本実施形態による内視鏡用処置具10は、図6(B)に示すように、処置片15,16が体膣内の被処置部の近傍まで挿入され、中開度の状態に開いた状態で処置液を送水した場合、一対の処置液給送路14e,14fの先端より流出する被処置液が、表面張力により処置片15,16に沿って2つの液流となって流れ、前方で1つの液流となるように噴出する。
【0065】
次いで本実施形態による内視鏡用処置具10は、図6(C)に示すように、処置片15,16を最大開度の状態に開いた状態で処置液を送水した場合、一対の処置液給送路14e,14fの先端より流出する被処置液が、表面張力で処置片15,16の両側外面に沿って前方へ勢いよく流れる2つの液流と、一対の処置片15,16の扇状に開いた中央を前方へ勢いよく流れる1つの液流となるように噴出する。
【0066】
本実施形態による内視鏡用処置具10は、この処置片15,16を最大開度の状態に開いた状態では、例えば、処置片15,16が体腔内の被処置部を広げたとき、広げた被処置部の全域に必要十分な送液量でかつ十分な流速の被処置液を正確に噴出することができる。
【0067】
したがって、本内視鏡用処置具10は、生体の被処置部位(焼灼切開する領域)に出血や淀み、濁りがあって出血等を除くとき、一対の処置片15,16が閉じた状態で生体の被処置部位に近接させ、送液手段6により生理食塩水(処置液)を送ると、処置液が処置部支持部材14の先端から1本の直線状に流出させることができる。
次いで、本内視鏡用処置具10は、一対の処置片15,16をゆっくり開いていくと、液体が処置部支持部材14の先端から2本に分かれて開いていくため、出血や淀み、濁りを両側方へ流し除けることができる。本内視鏡用処置具10は、必要に応じて、一対の処置片15,16の開閉を繰り返し、処置部支持部材14の先端から流出する生理食塩水を1本の直線状の流れと2本に分かれて開いていく流れとを繰り返すことによって、一層効果的に出血や淀み、濁りを両側方へ流し除けることができ、処置に大きく寄与することができる。
【0068】
[実施形態2]
[内視鏡用処置具の基本的構成]
図7は実施形態2に係る内視鏡用処置具10Aの正面の外観を説明するための図である。本実施形態による内視鏡用処置具10Aは、内視鏡用の電気焼灼を行う切開鋏であって、一対の処置片15A,16Aで体腔内の生体組織を挟みつつ所要の電流を通電し生体組織を焼灼し止血しつつ切開する。
【0069】
内視鏡用処置具10Aは、前記実施形態と同様な、シース11と、操作ワイヤ12と、操作部13と、処置部支持部材14と、本実施形態の特徴である一対の処置片15A,16Aから成る処置部91とを備える。
【0070】
この内視鏡用処置具10Aにおいても、実施形態1に係る内視鏡用処置具10と同様に、処置部支持部材14の腕部14b,14bの内面に凹面部が形成されていることにより腕部14b,14bと処置片15A,16Aとの間に処置液給送路が形成されており、筒部14aには進退伝達棹を挿通案内する貫通孔14hを有する内側凸壁14gが形成され、さらに貫通孔14hには図4(C)に示す一対の処置液給送路14e,14fと同様の一対の送液部を有する。
【0071】
そして、内視鏡用処置具10Aにおいても、処置液の流れは図6(A),(B),(C)と同様になる。
【0072】
本実施形態による内視鏡用処置具10Aは、先端部分が拡がった一対の鋏片である処置片15A,16Aから成る処置部91を備え、該鋏片形状の処置片15A,16Aが開閉して患部を挟み込んで通電することにより患部の切開切除の施術を行うものであって、前述の実施形態同様に、切開患部や出血箇所等の患部に対して必要十分な送液量でかつ十分な流速の被処置液を正確に噴出することができる。
【0073】
[実施形態3]
次に本発明の実施形態3による内視鏡用処置具を説明する。本実施形態による処置部支持部材14Aは、前述したコイルシース11aの先端部に回転自在連結部19を介して連結され、図8(a)及び図9(a)に示す如く、内側凸壁14g部分に進退伝達棹17を貫通する長円孔形状の送液部を開口した筒部14aと、この筒部14aから先端側に断面が円弧状に延び、先端部に第1連結軸18を回動自在に支持する支持孔18xが開口された一対の腕部14b,14bと、前記筒部14aの送液部を貫通した先端部分に前記送液部の所定値短径より幅広径の拳骨形状の先端部17aを有する進退伝達棹17とを備える。
【0074】
本実施形態による処置部支持部材14Aの腕部14bは、特に図8(b)(e)に示す如く、腕部の中途部分の縁端部に、進退伝達棹17からの進退力を受けて開く状態の駆動用リンクが突き当たることにより、一対の処置片の最大開き角度を制限するための三角形状の第1のストッパ14zを設けていると共に、特に図8(d)(x)、図10に示す如く、筒部14aの内側凸壁の円周部分に、一対の処置片の最小開き角度を制限するための、前記拳骨形状の先端部17aの幅広底面(基端側面)と突き当たるための第2のストッパ14xを備える。なお、第1のストッパ14zは、三角形状に限られるものではなく、円形状他の形状であっても良い。更に、最大開き角度を制限するためのストッパは、腕部の中途部分に配置するもの限られるものではなく、開角度を広げるために腕部の先端側に配置しても良い。
【0075】
このように、前記ストッパ14zは、進退伝達棹17が先端側へ移動した際に駆動用リンクと当たって先端側への移動範囲を制限することにより、一対の処置片の最大の開く角度を制限する。前記ストッパ14xは、進退伝達棹17が後端側へ移動した際に拳骨形状の先端部17aの幅広底面と当たって後端側への移動範囲を制限するように送液部の所定値短径と同幅とすることにより、一対の処置片の最小の閉じる角度を制限する。また、ストッパ14xは、本例に限られることではなく、腕部の内側の凹面部の幅狭部分に当たるように配置しても良い。
【0076】
このように構成された実施形態3による内視鏡用処置具は、直線運動を行う進退伝達棹17と接続される連結軸73により一端が回動自在に重ねて連結された一対の駆動用リンク50d及び51dと、駆動用リンク50d及び51dの他端と一端がそれぞれ連結軸71及び72により回動自在に重ねて連結され、位置固定され第1連結軸18により他端が回動自在に重ねて連結される一対の開閉用リンク50b及び51bとからリンク機構を構成し、該開閉用リンク50b及び51から延びる一対の処置片50及び51が、図9(a)に示す如く、進退伝達棹17が後端側に引かれることによる閉じた状態から、図9(b)に示す如く、進退伝達棹17が先端側に少し送られることによる支持軸18を中心として少し開いた状態になり、更に、図9(c)に示す如く、進退伝達棹17が先端側に送られることによる最大開き角度まで開いた状態になる。この最大開き角度は、駆動用リンク50dがストッパ14zに当たって移動が制限される最大の角度であって、前述のリンク機構の基本構成図(図11)の如く、進退伝達棹17の先端方向移動を、駆動用リンク50dがストッパ14zに当たって阻止することにより制限される。
なお、本実施形態においては、駆動用リンク50dにストッパ14zが当たる例を示したが、これに限られず、ストッパ14zを開閉用リンクの開閉角度を規制する位置に配置してもよい。
【0077】
この内視鏡用処置具の処置片の最大開き角度を制限する理由は次の通りである。
医師からの意見として、狭い範囲内(大腸、小腸、十二指腸及び胆管、尿管、食道などなど)での高周波を使用して切開剥離採取等を行う際には、内視鏡の端面の近くに処置部を位置づけ、視野を拡大した状態で施術を行う。このため、内視鏡用処置具は、処置片の最大開き角度が大きいと医師の視野を遮ることがある課題と、処置片を大きく開くと片方の処置片が視野から見えなくなる課題と、処置片の背部分が見えないと患部外の腸壁等を傷つける可能性がある課題と、開いた時にもう片方の刃が何処にあるかわからないと危険な課題がある。このため内視鏡用処置具は、最大開き角度を制限して医師に仕様として明らかにする必要があり、一般には両方の刃先が常に視野に入る開き角度として約80度~約90度が要求されている。なお、カップの場合はハサミのように横にして使用せず、患部に上から直角に全体が内視鏡で見える範囲で出して掴む際に、胆管や小腸十二指腸などの狭い範囲では開き角度の要求がある。
【0078】
また、本実施形態による内視鏡用処置具は、進退伝達棹17が後端側に引かれ、進退伝達棹17の拳骨形状の先端部17aの幅広底面がストッパ14xに当たって移動が制限される閉じ最小角度としている。
この内視鏡用処置具の処置片の最小閉じ角度を制限する理由は次の通りである。
ハサミ形状の処置片を閉じる内視鏡用処置具は、刃部の閉じが大きく刃部の交差が生じた場合、病変が焼き付き、刃部が開かなくなることがあり、これを防止するために刃部が交差せずに閉じることが要求されること、内視鏡のチャネル内への出し入れにおいて、交差が行き過ぎた刃がチャネル内壁を傷つける可能性があり、これを防止するためである。
【0079】
このように本実施形態による内視鏡用処置具は、図8の如く、長円孔形状の送液部を内側凸壁に開口した筒部14a及び該筒部符号14aから先端側に円弧状に延びる一対の腕部14cを備える処置部支持部材14Aを備える。この内視鏡用処置具は、処置部支持部材14Aに、前述の実施形態と同様に、拳骨形状の先端部が設けられた長い筒形状の進退伝達棹及び4節リンク機構が組み込まれ、該4節リンク機構が、一対の処置片開閉動作するように構成される。
【0080】
さらに本実施形態による内視鏡用処置具は、前記一対の腕部14bの中途部分に駆動用リンクの先端方向への移動を制限するストッパ14zと、前記筒部14aに進退伝達棹17の拳骨形状の先端部17aの幅広底面が当たるストッパ14xとを設けたことによって、処置片15及び処置片16の最大及び最小開閉角度が制限される。
【0081】
この内視鏡用処置具においても、前述の実施形態による内視鏡用処置具同様に、処置部支持部材の腕部の内面に凹面部が形成されていることにより、腕部(複数)の円弧状内壁とリンク機構の側面とが擦りながら接した状態で処置液給送路を形成しており、筒部の貫通孔を通った処置液を前記処置液給送路に流すことによって、図6に示したと同様に処置液を処置片に沿って噴出することができる。
【0082】
すなわち、本実施形態による内視鏡用処置具においても、進退伝達棹が貫通する送液部を内側凸壁に開口した筒部及び該筒部から先端側に円弧状に延びる一対の腕部を備える処置部支持部材と、該処置部支持部材の一対の腕部の間に摺接状態に挟まれて配置され、4節リンク連結により一対の処置片の開閉を行う4節リンク機構とを備え、前記筒部から流出された処置液を前記一対の腕部の円弧状内壁と4節リンク機構側面との隙間により処置液給送路を形成することによって、図6に示したと同様に処置液を処置片に沿って噴出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明によれば、処置部支持部材の一対の腕部の内面側に処置液給送路を設け、シース内を給送される処置液を処置部支持部材の筒部から腕部に設けた処置液給送路の幅中央部に給送するようにして、一対の開閉用リンクの交差部まで送液圧力を保持すると同時に送液圧力の開放位置から一対の処置片の先端までの距離を短くし、一対の腕部の内面側の処置液給送路から円滑に処置液を送出できるようにしたため、一対の処置片に沿って必要十分な送液量でかつ十分な流速の被処置液を体腔内の被処置部へ正確に送液することができる一対の処置片に沿って十分大きな流速を有する液体を正確に送液できる内視鏡用処置具を提供することができる。
【符号の説明】
【0084】
1…内視鏡、2…挿入部、3…内視鏡操作部、4…処置具導入部、 5…内視鏡チャネル、6…送液手段、10…内視鏡用処置具、11…シース、 11a…コイルシース、11b…樹脂製外被、12…操作ワイヤ、13…操作部 13a…操作部本体、13a1…長矩形枠部、13a2…ハンドル部 13a3…雄型接続部、13a4…指掛け孔、13b…スライダ、
12a1…指掛け孔、12a2…指掛け孔、13c…液注入部、13c1…貫通孔、 13c2…注液口(送液接続口)、13d…接続キャップ、
14…処置部支持部材、14a…筒部、14b…腕部、14c,14d…凹面部、 14e,14f…処置液給送路、14g…内側凸壁、14h…貫通孔、 14h1,14h2…送液部、15,16…処置片、 15a,16a…交差部、15a1,16a1…平面状側面部、 15b,16b…開閉用リンク、15,16…処置片、 15d,16d…駆動用リンク、17…進退伝達棹、18…第1連結軸 19…回転自在連結部、20…基端側連結用筒状部、21…筒状コイルキャップ、 21a…薄肉筒部、21b…厚肉筒部、22…連結用筒部、 22a…連結用小径筒部、22b…鍔部、23…先端側連結用筒状部、
23a…大径筒部、23b…小径筒部
図1
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