(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-20
(45)【発行日】2024-05-28
(54)【発明の名称】バックコンタクト型太陽電池及びその製造
(51)【国際特許分類】
H01L 31/0224 20060101AFI20240521BHJP
H01L 31/18 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
H01L31/04 262
H01L31/04 440
(21)【出願番号】P 2023534067
(86)(22)【出願日】2021-12-03
(86)【国際出願番号】 EP2021084193
(87)【国際公開番号】W WO2022117826
(87)【国際公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-06-02
(31)【優先権主張番号】102020132245.3
(32)【優先日】2020-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】522412518
【氏名又は名称】エーエヌペーファオ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン、エリク
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-121627(JP,A)
【文献】特開2013-120895(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0279968(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0096821(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0338747(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0117433(US,A1)
【文献】国際公開第2017/168977(WO,A1)
【文献】中国実用新案第209087883(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02-H01L 31/078
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オモテ面(16)及び裏面(14)を有する半導体基板(12)、特にはシリコンウェハ、を含むバックコンタクト型太陽電池(10)であり、前記太陽電池(10)は、前記裏面に第1の極性の電極(36)及び第2の極性の電極(38)を含み、前記第1の極性の電極(36)は、第1の極性の高ドープシリコン層(20)上に配置され、前記高ドープシリコン層(20)は、前記半導体基板上に配置された第1のパッシベーション層(18)上に配置され、前記第2の極性の電極(38)は、前記半導体基板(12)の第2の極性の高ドープベース領域(30)を介して前記半導体基板(12)に直接電気的に且つ機械的にコンタクトするバックコンタクト型太陽電池(10)であって、
前記第2の極性の高ドープベース領域(30)は、前記太陽電池(10)の前記裏面(14)の第2の極性のドープベース領域(24)内に形成され、前記高ドープベース領域(30)におけるドーパント濃度は、前記ドープベース領域(24)におけるドーパント濃度よりも高く、そして前記高ドープベース領域(30)におけるドーパント濃度は、前記太陽電池(10)の前記オモテ面(16)のドープ領域(28)のドーパント濃度よりも高いことを特徴とする、バックコンタクト型太陽電池(10)。
【請求項2】
第2のパッシベーション層(32)が、前記第1の極性の電極(36)がコンタクトしておらず、前記第2の極性の電極(38)がコンタクトしていない前記裏面(14)の表面領域上に配置され、前記第2のパッシベーション層が前記第1のパッシベーション層よりも厚いことを特徴とする、請求項1に記載のバックコンタクト型太陽電池(10)。
【請求項3】
前記太陽電池(10)の半導体基板(12)が、裏面(14)、特には研磨若しくはテクスチャ形成された裏面(14)、及びオモテ面(16)、特にはテクスチャ形成されたオモテ面(16)、を有する、請求項1又は請求項2に記載のバックコンタクト型太陽電池を製造する方法であり、該方法は以下のステップ:第1のパッシベーション層(18)、特には二酸化シリコンを含む第1のパッシベーション層(18)を、前記裏面(14)の表面に付与すること;前記裏面(14)の前記第1のパッシベーション層(18)に第1の極性の高ドープシリコン層(20)、特に全表面の高ドープシリコン層(20)、を
堆積すること;誘電体層(22)を前記裏面(14)に付与し、前記裏面(14)の前記誘電体層(22)及び前記第1の極性の高ドープシリコン層(20)及び前記第1のパッシベーション層(18)を局所的に除去することにより、前記裏面(14)の前記半導体基板のベース領域(24)を露出させること;前記半導体基板(12)の一部を、前記ベース領域(24)内で局所的に除去すること;を含む、前記方法であって、
前記方法は、前記方法がドーパントを含む前駆体層(26)、特にはリンを含む前駆体層、を裏面(14)に設ける(attach)ステップを含むこと、並びに、高温ステップによって前記前駆体層(26)からのドーパントが裏面(14)のベース領域(24)内に拡散し、裏面のベース領域(24)内のドーピングが増加すること、並びに、高ドープベース領域(30)が、背面(14)の前記ドープベース領域(24)におけるドーパント濃度を局所的に増加させることにより形成されること、を特徴とする、方法。
【請求項4】
前記第1のパッシベーション層(18)が前記オモテ面(16)の表面にも付与されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記裏面の、前記半導体基板の前記ベース領域(24)を露出させることが、前記ベース領域(24)内で局所的に、前記第1の極性の高ドープシリコン層(20)をエッチングすること及び/又は前記第1のパッシベーション層(18)をエッチングすること及び/又は前記半導体基板の一部をエッチングすることを含むことを特徴とする、請求項3又は請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記エッチングすることが領域を研磨するための等方性エッチングを含み、及び/又は前記エッチングすることが領域をテクスチャ形成するための異方性エッチングを含むことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ドーパント、特にはリン、を含む前駆体層(26)を、前記裏面(14)に設ける(attach)前記ステップは、前記前駆体層(26)を前記オモテ面(16)にも設けることを含むことを特徴とする、請求項3~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ドーパントが前記前駆体層(26)から前記裏面(14)のベース領域(24)内に拡散する前記高温ステップによって、前記前駆体層(26)からのドーパントが前記オモテ面(16)の表面内に拡散し、前記オモテ面(16)にドープ領域(28)を生み出すことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ドーパント濃度をレーザー照射によって局所的に増大させることにより、前記裏面(14)のドープベース領域(24)内に前記高ドープベース領域(30)が形成されることを特徴とする、請求項3~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、前駆体層(26)、特にリンシリケートガラス、を前記オモテ面(16)から、及び/又は前記裏面(14)から除去するステップを含むことを特徴とする、請求項3~9の
いずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記方法が、前記裏面(14)の第2のパッシベーション層(32)及び/又は前記オモテ面(16)の第3のパッシベーション層(34)を付与するステップを含むことを特徴とする、請求項3~10の
いずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記方法が、前記裏面(14)の前記第2のパッシベーション層(32)を選択的に除去するステップを含むことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記方法が、前記太陽電池(10)の前記裏面(14)に第1の極性の電極(36)及び第2の極性の電極(38)を付与するステップを含むことを特徴とする、請求項3~12の
いずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池及び太陽電池を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、太陽電池は、光を電気エネルギーに変換するための光起電力素子として機能する。光吸収中に半導体基板内に作られる電荷キャリアのペアは、第1の極性を生み出すための第1のドーピング型、例えばn型又はp型、を有するエミッタ領域と、反対の極性を生み出すための反対のドーピング型を有するベース領域との間の移行部で分離される。このようにして生成され分離された電荷キャリアのペアは、エミッタ領域にコンタクトするエミッタコンタクト(emitter contacts)とベース領域にコンタクトするベースコンタクト(base contacts)とを介して外部回路に供給することができる。
【0003】
一方の極性のコンタクトがオモテ面(front side)に配置され、反対の極性のコンタクトが裏面(back side)に配置された太陽電池が知られている。太陽に面する面はオモテ面と呼ばれ、したがって裏面は遠い方を向いている面を指す。オモテ面に配置されたコンタクトによるシャドーイングに起因する損失を最小限に抑え、それにより効率を高めるために、両方のコンタクトタイプ、すなわちエミッタコンタクト及びベースコンタクトが半導体基板の裏面に配置されるバックコンタクト型太陽電池が開発されている。
バックコンタクト型太陽電池は、例えば、US2020/279968A1、US2014/096821A1、US2014/338747A1、CN209087883U、及びUS2017/117433A1から知られている。
【0004】
2つの極性の電極が、太陽電池の裏面にサイドバイサイドで配置される。したがって、生成された電荷キャリアは、太陽電池内で横方向にも流れなければならない。この横方向電流の流れによる抵抗損失を最小限に抑えるとともに、自由電荷キャリアが電極に到達する前に再結合するのを妨げるために、2つの極性の電極は互いに可能な限り近くにあるべきである。これらの電極は極性に応じてp型シリコン又はn型シリコンに接続されるので、pn接合もまた互いに可能な限り近接する。pn接合は、500μm未満の分解能を有する微細な櫛状構造であり、例えば、レーザー照射によって実現することができる。このプロセスでは、パルスレーザービームが、時間的及び場所的に分離されたやり方で表面を溶融することにより、2つの異なるドーパント、例えばホウ素及びリン、をシリコン内へ局所的にドライブし、ドーパントに応じて高p型ドーピング又は高n型ドーピングを生み出す。このことは、例えば、DE102013219564A1に開示されている。そのような微細構造は、低い内部直列抵抗及びη=24%までの効率ηを可能にする。より高い効率は、ベース内での、並びに高ドープコンタクト形成面及びコンタクト非形成面上での再結合機構によって実質的に制限される。ベース内での再結合は、ウェハの品質に左右され、太陽電池のさらなる製造プロセスではわずかに影響を受けるだけであり得る。高ドープのn型表面及びp型表面での再結合は、アモルファス水素化シリコンなどの良好な表面パッシベーションを有するコンタクト非形成領域内では制限されるが、オージェ再結合はシリコン中のドーパント濃度と共に増加する。コンタクト形成領域内では、シリコンが金属とコンタクトしており、その結果、高い界面再結合をもたらす。太陽電池プロセスでは、コンタクト非形成表面でのオージェ再結合は、シリコン中に位置するドーパントが可能な限り少なければ低減することができるのに対して、金属/シリコンコンタクトでの界面再結合は、可能な限り小さいコンタクト面により低減することができる。しかしながら、ドーパント及びコンタクト面を単純に減少させると直列列抗が増加し、これは効率の制限要因となる。
【0005】
このため、例えばDE102013219564A1又はWO2014/100004A1から知られる、不動態化されたコンタクト又は選択的コンタクトも使用される。この場合、電極は、結晶ベースに直接電気的には接続されず、薄いトンネル酸化物によって隔てられるが、この薄いトンネル酸化物は、シリコン表面を不動態化するが、同時に電子が酸化物を通って極性に応じて半導体から電極内へ、又は電極から半導体内へ、トンネルすることができるほど薄い。電子をトンネルするよう励起するためには、トンネル酸化物に電場が存在していなければならない。電場は、トンネル酸化物上の高ドープのn型シリコン又はp型シリコンによって生成され得る。トンネル酸化物の上方のこのシリコンへのドーピングはトンネル酸化物の下方のシリコンベース内にバンド曲がりを引き起こすので、シリコンベースへのより高いドーピングはもはや必要ではない。高ドープn型シリコンでは、電子だけがトンネル酸化物を通過し、電子流とも呼ばれる。一方、高ドープp型シリコンでは、いわゆる正孔流だけが起こる。そして、電子は高ドープp型シリコンからシリコンベースに入る。金属電極自体は、トンネル酸化物の上方の高ドープのn型シリコン又はp型シリコンとのみ、依然として電気的に且つ機械的にコンタクトしている。トンネル酸化物と組み合わせた高ドープシリコン領域の選択性は、ドーピングに応じて、金属/シリコンコンタクト面における一方のタイプの電荷キャリアのほぼ排他的な輸送を確実にするとともに、界面再結合を最小限にする。提示された構造は、さらに、トンネル酸化物側のシリコンベース表面でのオージェ再結合をさらに低減するが、これは、pn接合のための高ドーピング又はベースとのオーミックコンタクトがこの界面で必要とされないためである。不動態化されたコンタクトを有するバックコンタクト型太陽電池は、これまでにη=26.7%という記録的な効率に達している。しかしながら、そのような太陽電池の製造はこれまで非常に複雑であったが、これは、異なるドーピングをされた前記2つの選択的コンタクトは、種々の複雑なマスキングステップ及び構造化ステップを使用してしか付与することができないからである。この場合、マスキング/構造化の高精度及び微細解像度が確保されなければならない。選択的コンタクトの間隔は、大き過ぎるものであってはならず、自由電荷キャリアの拡散長を超えるべきではなく、またベース内の横方向電流の流れによる内部直列抵抗の増加を引き起こすべきではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの欠点は、本発明に係る太陽電池及び本発明に係る前記太陽電池を製造する方法によって解決される。同時に、本発明に係る方法は、低いプロセスコストを有する工業的製造を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、請求項1に係るバックコンタクト型太陽電池が提案される。該バックコンタクト型太陽電池は、オモテ面及び裏面を有する半導体基板、特にシリコンウェハ、を含み、前記太陽電池は、裏面に第1の極性の電極及び第2の極性の電極を備え、ここで、第1の極性の電極を、第1の極性の高ドープシリコン層上に配置し、該高ドープシリコン層を、半導体基板上に配置された第1のパッシベーション層上に配置し、第2の極性の電極を、半導体基板の第2の極性の高ドープベース領域を介して半導体基板に直接電気的に且つ機械的にコンタクトさせることが提案される。
【0008】
したがって、本発明によって提案されるバックコンタクト型太陽電池の場合には、両方のコンタクト概念が組み合わされるように、第1の極性の電極と第2の極性の電極とに異なるコンタクト概念を使用することが提案される。第1の極性の電極については、これらの電極を、トンネル層とも呼ばれるパッシベーション層上に堆積(deposit)された高ドープシリコン層にコンタクトさせることが提案される。第2の極性の電極については、これらの電極を半導体基板に直接コンタクトさせることが提案される。このことは、製造中におけるマスキング及びマスキング除去を必要とする。
【0009】
第2の極性の高ドープベース領域は、太陽電池の裏面の第2の極性のドープベース領域内に形成するものとし、前記高ドープベース領域におけるドーパント濃度はドープベース領域におけるドーパント濃度よりも高いものとし、前記高ドープベース領域内のドーピング濃度は、太陽電池のオモテ面のドープされた領域のドーパント濃度よりも高いものとする。裏面のドープベース領域は、1×1017cm-3~1×1019cm-3という表面のドーパント濃度を有する。オモテ面全体のドーピングもまた、1×1017cm-3~1×1019cm-3という表面のドーパント濃度を有してもよい。ベースコンタクトのための前記高ドープベース領域の、表面のドーパント濃度は、好ましくはドーパント濃度2×1019cm-3を上回る。
【0010】
一実施形態によれば、第2のパッシベーション層には、第1の極性の電極はコンタクトしておらず、第2の極性の電極はコンタクトしていない、裏面の表面領域上に配置されるものとする。この場合、第2のパッシベーション層は、第1のパッシベーション層よりも厚い。異なる極性の2つの電極間の領域は、第2のパッシベーション層が配置されている領域、並びに第1のパッシベーション層及び第2のパッシベーション層を含む積層物が配置されている領域、を含む。
【0011】
したがって、本発明に係る太陽電池の表面は、異なるドープを受けた以下の領域:
●太陽電池の裏面の、半導体基板上に配置された第1のパッシベーション層上の第1の極性の高ドープ多結晶シリコン層、ここで該高ドープ多結晶シリコン層のドーパント濃度はベースのドーパント濃度よりも高い;
●前記裏面の、第2の極性のドープされた単結晶ベース領域、ここで該ドープベース領域のドーパント濃度はベースのドーパント濃度よりも高い;
●前記裏面の、前記ドープベース領域内の第2の極性の高ドープ単結晶ベース領域、ここで該高ドープベース領域のドーパント濃度は、ベースのドーパント濃度及び前記ドープベース領域のドーパント濃度よりも高い;
●オモテ面全体の第1の極性又は第2の極性のドープされた単結晶表面、ここで該ドープされた表面のドーパント濃度はベースのドーパント濃度よりも高い
を含む。
【0012】
さらなる実施形態は、上述の実施形態に係るバックコンタクト型太陽電池を製造する方法に関する。
太陽電池の半導体基板は、裏面、特には研磨若しくはテクスチャ形成された(textured)裏面、及びオモテ面、特にはテクスチャ形成された(textured)オモテ面、を有する。テクスチャ形成は、例えば、湿式化学溶液によって行われる。
第1のパッシベーション層、特には二酸化シリコンを含む第1のパッシベーション層が、裏面の表面上に、及び/又はオモテ面の表面上に、付与される。第1のパッシベーション層は、例えば、好ましくは4nm以下の厚さを有する。第1のパッシベーション層は、例えば、熱プロセス若しくは湿式化学プロセスで、又は堆積によって、作製される。
【0013】
一実施形態によれば、前記方法は、裏面及び/又はオモテ面の第1のパッシベーション層上に第1の極性の高ドープシリコン層、特には全表面にわたる第1の極性の高ドープシリコン層、を堆積(deposit)させるステップをさらに含む。第1の極性の高ドープシリコン層の堆積(deposition)は、例えば、プラズマ支援化学気相成長PECVD、常圧化学気相成長APCVD、低圧化学気相成長LPCVD、又はカソードスパッタリングによって行うことができる。第1の極性の高ドープシリコン層は、おおよそ、50nm~400nmの厚さを有する。前記高ドープシリコン層のドーパント濃度は、半導体基板のドーパント濃度よりも高い。シリコン層内にin situで付与(deposit)されるドーパントは、例えば、ホウ素、アルミニウム又はガリウムである。
【0014】
第1の極性の高ドープシリコン層の堆積(deposition)は、1つのステップではなく2つのステップで行うこともできる。この場合、最初にドープされていないシリコンが堆積(deposit)され、その後にドーパントが導入される。前記ドーパントは、例えば、イオン注入若しくはドーパント源の使用、及びその後の熱プロセスによる拡散若しくはレーザー拡散によって導入される。前記ドーパントは、例えば、ホウ素、アルミニウム又はガリウムである。拡散はまた、後の時点でのみ起こるようにしてもよい。例えば、前記方法は、さらなるドーパントを導入する後のステップも含むことができる。この場合、前記ドーパントの拡散は、一般的な熱プロセスにおいて第2のドーパントの拡散と同時に起こってもよい。
【0015】
一実施形態によれば、誘電体層が裏面に付与されるものとする。前記誘電体層は、例えば、シリコン窒化物、シリコン酸化物、炭化シリコン又は酸化アルミニウムを含む。前記誘電体層は、後に付与されるドーパント、例えばリン、に対するいわゆる拡散障壁として機能し、後に付与される湿式化学溶液に対するエッチング耐性を有する。前記誘電体層は、例えば、第1のパッシベーション層よりも大きい厚さ、好ましくは4nmを超える厚さを有する。
一実施形態によれば、裏面の前記誘電体層及び前記第1の極性の高ドープシリコン層及び前記第1のパッシベーション層を局所的に除去することにより、裏面の半導体基板のベース領域が露出されるものとする。個々の層は、例えば、レーザー照射によって少なくとも部分的に除去される。
【0016】
一実施形態によれば、半導体基板の一部が、裏面の、半導体基板のベース領域内で局所的に除去されるものとする。これもレーザー照射によって実現することができる。
一実施形態によれば、裏面の半導体基板のベース領域を露出させることは、ベース領域内で局所的に、第1の極性の高ドープシリコン層及び/又は第1のパッシベーション層及び/又は半導体基板の一部をエッチングすることを含むものとする。例えば、湿式化学溶液が、先にレーザー照射されたベース領域において前記高ドープシリコン層、第1のパッシベーション層及び半導体基板の一部をエッチングするものとしてもよい。あるいは、湿式化学溶液は、前記高ドープシリコン層のみ又は半導体基板の一部のみをエッチングするものとしてもよい。この場合、その他の層、例えば第1のパッシベーション層又は前記高ドープシリコン層はレーザー照射によって除去される。有利には、高ドープシリコン層(任意に(optionally)半導体基板のオモテ面に堆積(deposit)されている)、及び/又は半導体基板のオモテ面に堆積(deposit)されたパッシベーション層もまた、湿式化学溶液によってエッチングされるようにしてもよい。
【0017】
前記エッチングすることが領域を研磨するための等方性エッチングを含むようにしても、及び/又は前記エッチングすることが領域をテクスチャ形成(texturing)するための異方性エッチングを含むものとしてもよい。例えば、ベース領域は、裏面で湿式化学溶液を使用して等方性エッチングすることにより研磨してもよい。あるいは、ベース領域は、裏面において湿式化学溶液を使用して異方性エッチングすることによりテクスチャ形成する(textured)ことができる。オモテ面が湿式化学溶液を使用した異方性エッチングによりテクスチャ形成される(textured)ことも有利であり得る。異なる層を除去し、また任意に(optionally)表面をテクスチャ形成及び/又は研磨するために、異なる湿式化学溶液を使用してもよい。
【0018】
一実施形態によれば、前記方法は、ドーパントを含む前駆体層、特にはリンを含む前駆体層、を裏面に、又は裏面及びオモテ面に、設ける(attach)ステップを含むものとする。前駆体層は、1つの方法ステップで、又は異なる方法ステップ(複数形)で、オモテ面及び裏面に堆積(deposit)することができる。オモテ面及び裏面の前駆体層は、同じ特性又は異なる特性を有することができる。前駆体層は、第2の極性のドーパントを含む層であり、特にはリンケイ酸ガラス層PSGである。前駆体層は、特には誘電体層上に付与され、特には裏面及びオモテ面の湿式化学エッチングされた領域上に付与される。第1の極性の高ドープシリコン層がp型シリコン層である場合、シリコンを第2の極性によってドープするための前駆体層におけるドーパントは、例えばリンである。前駆体層を付与するためには、例えば、裏面及びオモテ面で、先にエッチングされた領域上でリンケイ酸ガラス層が成長する炉拡散プロセスを行うことができる。特定の場合には、PSG層は、裏面の誘電体層上でも成長し得る。炉拡散プロセスは、炉拡散プロセスの後におけるリンケイ酸ガラス層内に高比率のリンが含まれるように行うことができる。さらなる実施形態では、前駆体層、例えばPSGは、例えばPECVD、LPCVD又はAPCVDによって堆積(deposit)することができる。
【0019】
一実施形態によれば、ドーパントが前駆体層から裏面のベース領域内に且つ/又はオモテ面の表面内に拡散する高温ステップを用いて、裏面のベース領域内のドーピングを増加させ、且つ/又はオモテ面にドープされた領域を生み出すものとする。ドーパントは、裏面のベース領域を、高ドープシリコン層の第1の極性とは逆の第2の極性によってドープし、したがってドープベース領域が形成される。裏面の前記ドープベース領域は、半導体基板のドーパント濃度よりも高いドーパント濃度を有する。裏面では、誘電体層が前駆体層からのドーパントに対する拡散障壁として機能するので、ドーパントは前駆体層から高ドープシリコン層内に拡散しない。オモテ面では、第2の極性による表面のドーピングによってオモテ面にドープされた領域が形成される。オモテ面の前記ドープされた領域のドーパント濃度は、半導体基板のドーパント濃度よりも高い。前記高温ステップは、例えば、前駆体層を付与するための前記炉拡散ステップである。あるいは、前記高温ステップは、追加的な高温ステップであってもよい。
【0020】
前記高温ステップは、例えば、第2ドーパントの一部のみが前駆体層から裏面のベース領域内に拡散するように行うことができる。
【0021】
一実施形態によれば、ドーパント濃度を局所的に増加させることにより、特にはレーザー照射によって増加させることにより、裏面のベース領域内に高ドープベース領域が形成されるものとする。レーザー照射の結果、照射領域内における裏面の表面は局所的に加熱され溶融する。前駆体層からのさらなるドーパントは、照射領域内における表面内へと拡散し、冷却及び再結晶化後に、高ドープベース領域が形成されるように照射領域を第2の極性によってさらにドープする。高ドープベース領域におけるドーパント濃度は、半導体基板のドーパント濃度よりも著しく高く、裏面のドープベース領域におけるドーパント濃度よりも高く、且つオモテ面の前記ドープされた領域におけるドーパント濃度よりも高い。
レーザー照射によって高ドープベース領域を生み出すことにより、ドーピング、特には太陽電池のオモテ面に最適化されたドーピングを、先行する前記炉拡散ステップで有利に作ることができる。オモテ面は、理想的には、裏面のベース領域よりも低度にドープされる。オモテ面及び裏面が1つのみの共通プロセスステップでドープされる場合、ドーピングの妥協が必要とされる。この欠点は、レーザー照射により裏面に高ドープベース領域を作ることによって解決される。
【0022】
一実施形態によれば、前記方法は、前駆体層、特にリンケイ酸ガラス、をオモテ面から、及び/又は裏面から除去するステップを含むものとする。この除去は、例えば、湿式化学洗浄ステップで行われる。有利には、前記湿式化学洗浄ステップ又は化学洗浄後のさらなるステップは、誘電体層の残留している残渣も高ドープシリコン層から除去する。
一実施形態によれば、前記方法は、裏面の第2のパッシベーション層及び/又はオモテ面の第3のパッシベーション層を付与するステップを含むものとする。パッシベーション層は、例えば、二酸化シリコン、シリコン窒化物、酸化アルミニウム、又は2層以上の誘電体層からなる積層物を含む。この場合、裏面のパッシベーション層の厚さ、屈折率及び組成は、オモテ面のパッシベーション層の厚さ、屈折率及び組成とは異なっていてもよい。パッシベーション層の厚さは、有利には、反射がオモテ面で低減され、裏面で増加するように最適化される。第2のパッシベーション層及び/又は第3のパッシベーション層は、有利には、第1のパッシベーション層よりも大きい厚さを有する。第2のパッシベーション層及び/又は第3のパッシベーション層の厚さは、有利には4nmより大きい。
一実施形態によれば、前記方法は、裏面の第2のパッシベーション層を選択的に除去するステップを含むものとする。パッシベーション層は局所的に除去することができるが、これは例えばレーザー照射によってなされる。
【0023】
一実施形態によれば、前記方法は、太陽電池の裏面に第1の極性の電極及び第2の極性の電極を付与するステップを含むものとする。電極は、例えば、1種又は複数種の金属又は他の導電層をスクリーン印刷、蒸着、スパッタリング、又はガルバニック堆積(galvanic deposition)することによって付与することができる。電極は、例えば、銀ペースト、銀/アルミニウムペースト、アルミニウムペースト若しくは純アルミニウム、銅、スズ、パラジウム、銀、チタン、ニッケル、若しくは上述の金属の積層物若しくは合金、又はその他の導電層、特には導電性ポリマー若しくは導電性酸化物、又はそのような層と金属との組み合わせ、を含んでもよい。電極の組成及び付与(deposition)プロセスは、2つの極性の電極について異なっていてもよい。好ましくは、第2の極性の電極は、高ドープベース領域のみにコンタクトしており、ドープベース領域にはコンタクトしていない。
【0024】
本発明はまた、上記の極性がそれぞれ上記の極性とは反対の極性を含む太陽電池及び太陽電池を製造する方法に関する。その場合、太陽電池は、例えば、p型のドープされたベース、それに対応してn型のドープされたエミッタ、及びさらに対応して表面のp型ベースドーピング、を含む。
【0025】
本発明のさらなる特徴、可能な用途、及び利点は、図面の図に示されている本発明の実施形態についての以下の説明から明らかになる。この場合、記載又は図示される特徴はすべて、それ自体又は任意に組み合わせて本発明の主題を形成するが、このことには特許請求の範囲におけるそれら特徴のグループ化又はそれらの従属関係は影響せず、そして明細書又は図面におけるそれら特徴の記載文言又は表示も影響しない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は本発明に係る太陽電池の詳細の模式図である。
【
図2a】
図2a~
図2hは太陽電池を製造する方法の種々のステップにおける
図1に係る太陽電池を示す。
【
図2b】
図2a~
図2hは太陽電池を製造する方法の種々のステップにおける
図1に係る太陽電池を示す。
【
図2c】
図2a~
図2hは太陽電池を製造する方法の種々のステップにおける
図1に係る太陽電池を示す。
【
図2d】
図2a~
図2hは太陽電池を製造する方法の種々のステップにおける
図1に係る太陽電池を示す。
【
図2e】
図2a~
図2hは太陽電池を製造する方法の種々のステップにおける
図1に係る太陽電池を示す。
【
図2f】
図2a~
図2hは太陽電池を製造する方法の種々のステップにおける
図1に係る太陽電池を示す。
【
図2g】
図2a~
図2hは太陽電池を製造する方法の種々のステップにおける
図1に係る太陽電池を示す。
【
図2h】
図2a~
図2hは太陽電池を製造する方法の種々のステップにおける
図1に係る太陽電池を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、半導体基板12、特にはシリコンウェハ、裏面14、及び太陽電池の動作中に太陽に面するオモテ面16を有する太陽電池10の詳細を示す。シリコンウェハ12は、n型ドープされていても、p型ドープされていてもよい。太陽電池10は、シリコンウェハ12の、つまり「ベース」の、n型ドーピングに基づいた例を参照して説明する。
太陽電池10のオモテ面16は、好ましくはテクスチャ形成されている(textured)。太陽電池10の裏面14は研磨又はテクスチャ形成されていてよく、特には異なる領域において研磨又はテクスチャ形成されていてよい。
【0028】
裏面14には、多結晶高ドープp型シリコン層20が設けられる。これにより、裏面14に第1のドーピング濃度を有する第1の極性が形成される。高ドープp型シリコン層20の領域内では、特に二酸化シリコンを含む第1のパッシベーション層18、特には二酸化シリコンを含む第1のパッシベーション層18が、シリコンウェハ12の表面を不動態化する。さらに、第1の極性とは反対の第2の極性のドープベース領域24が設けられる。裏面14のドープベース領域24は、半導体基板12と比較して、同じ極性を有するが、より高いドーパント濃度を有する。
ドープ領域28はオモテ面16に位置する。ドープ領域28も同様に、半導体基板12と比較して、同じ極性を有するが、より高いドーパント濃度を有する。
高ドープベース領域30が、裏面のドープベース領域24内に形成される。高ドープベース領域も同様に、第2の極性を有するが、半導体基板12よりも、ドープベース領域24よりも、そしてドープ領域28よりも、顕著に高いドーパント濃度を有する。
【0029】
太陽電池10は、裏面14に第2のパッシベーション層32、及びオモテ面16に第3のパッシベーション層34をさらに含む。パッシベーション層32は、電極36、38とコンタクトしていない領域内で、高ドープシリコン層20、ドープベース領域24、及び高ドープベース領域30を少なくとも部分的に覆う。第2のパッシベーション層32、例えば誘電体層又は誘電体積層物によって形成された第2のパッシベーション層32は、好ましくは、第1のパッシベーション層18よりも大きい厚さ、好ましくは4nmを超える厚さを有する。第2のパッシベーション層32は、例えば、二酸化シリコン、シリコン窒化物、若しくは酸化アルミニウムからなるものであってもよく、又はこれらの層の積層物からなるものであってもよい。パッシベーション層32の厚さ及び屈折率は、太陽電池によって吸収されなかった電磁放射線のうち可能な限り多くを裏面で反射して太陽電池内へ戻すように、最適化することができる。
【0030】
オモテ面16の第3のパッシベーション層34もまた、好ましくは、第1のパッシベーション層18よりも大きい厚さ、好ましくは4nmを超える厚さを有する。第3のパッシベーション層34は、例えば、二酸化シリコン、窒化シリコン、若しくは酸化アルミニウムからなっていてもよく、又はこれらの層の積層物からなっていてもよい。第3のパッシベーション層34の厚さ及び屈折率は、オモテ面16に入射する電磁放射線のうち可能な限り多くが反射及び吸収されないように、最適化することができる。
【0031】
太陽電池10は、裏面14に、第1の極性の電極36及び第2の極性の電極38を含む。第1の極性の電極36は、第1のパッシベーション層18上に堆積(deposit)された第1の極性の高ドープシリコン層20にコンタクトする。有利には、電極36は、第1のパッシベーション層18を貫通していない。しかしながら、電極36は第1のパッシベーション層18を部分的に貫通し、半導体基板12にコンタクトすることが起こり得る。第2の極性の電極38は、ドープベース領域24内で、好ましくはドープベース領域24の高ドープ領域30内でのみ、半導体基板12と電気的に且つ機械的に直接コンタクトする。
【0032】
電極36、38がコンタクトしていない領域は、第1の極性の第1のパッシベーション層18及び高ドープシリコン層20の積層物によって覆われて不動態化される、またはドープベース領域24及び高ドープベース領域30内の第2のパッシベーション層32によって覆われて不動態化されることができる。第2のパッシベーション層32は、コンタクト非形成領域内で高ドープシリコン層20を覆うこともできる。
好ましくは、第2の極性の電極36が電気的にコンタクトする表面は、第2の極性の高ドープベース領域30の表面に対応する。
【0033】
太陽電池10の製造プロセスについて、
図2a~
図2hを参照して以下に説明する。
図2a~
図2hは、高ドープシリコン層20の領域内の不動態化コンタクト及び高ドープベース領域30の領域内の拡散コンタクトを有するバックコンタクト型太陽電池10を製造するためのプロセスシーケンスを例示する。半導体基板12は、出発原料として、n型ドープであってもp型ドープであってもよい。プロセスシーケンスは、ウェハの、つまり「ベース」の、n型ドーピングに基づいて説明される。
【0034】
図2aは、研磨された裏面14及びテクスチャ形成されたオモテ面16を有するシリコンウェハ12の初期形態を示す。さらなる初期形態(図示せず)によれば、オモテ面及び裏面は、どちらも研磨されていてもよく、またはどちらもテクスチャ形成されていてもよい。図示の実施形態によれば、好ましくは約4nm以下の厚さを有する第1のパッシベーション層18、例えば二酸化シリコンが、例えば熱プロセス若しくは湿式化学プロセスで又は堆積(deposition)によって、オモテ面16及び裏面14に形成される。あるいは、図示されていない第1のパッシベーション層のさらなる実施形態によれば、堆積(deposition)は裏面14でのみ行われてもよい。
次のステップでは、
図2bを参照すると、第1の極性の高ドープシリコン層20、特には全表面の高ドープシリコン層20、が裏面14のトンネル層18上に堆積(deposit)される。以下では、高ドープシリコン層の第1の極性がp型ドーピングであると仮定する。高ドープp型シリコン層20の堆積(deposition)は、例えば、プラズマ支援化学気相成長PECVD、常圧化学気相成長APCVD、低圧化学気相成長(LPCVD)、又はカソードスパッタリングによって行うことができる。高ドープp型シリコン層20は、50nm~400nm程度の厚さを有する。図示されていないさらなる実施形態によれば、高ドープシリコン層の堆積(deposition)は、両面、すなわちオモテ面及び裏面で行うこともできる。
【0035】
高ドープp型シリコン層20の堆積(deposition)は、1つのステップで行う代わりに2つのステップで行うことができる。この場合、p型シリコン層20の堆積(deposition)は、非ドープのシリコンの堆積(deposition)及びその後のドーパントの導入を含む。ドーパントは、例えば、シリコン層に適用されるドーピング源からの炉拡散又はレーザー拡散によって、又はイオン注入によって導入される。ドーパントは、例えば、ホウ素、アルミニウム、又はガリウムである。
前記方法の次のステップでは、
図2cを参照すると、誘電体層22が、裏面14で高ドープシリコン層20上に堆積(deposit)される。層の堆積(deposition)は、裏面14でのみ行われる。オモテ面16の寄生堆積(deposition)を完全に排除することはできない。誘電体層22は、例えば、PECVD、APCVD、LPCVD、又はPVDによって堆積(deposit)される。誘電体層22は、第1のパッシベーション層18の厚さよりも大きい厚さを有し、したがって4nmよりも厚い。
【0036】
図2dは、誘電体層22、第1の極性の高ドープシリコン層20、及び第1のパッシベーション層18を局所的に除去することにより、裏面14において半導体基板12のベース領域24を露出させるさらなる方法ステップを示す。さらに、オモテ面16のパッシベーション層18の除去が示されている。図示されていないさらなる実施形態では、オモテ面16のシリコン層の除去も必要であり得る。
ベース領域24の露出は、例えば、レーザー照射による誘電体層22の局所的な除去によって行われる。また、第2の誘電体層22を完全には除去しないことも考えられる。
高ドープシリコン層20、第1のパッシベーション層18、及び任意に(optionally)半導体基板12の一部も同様に、レーザー照射によって少なくとも部分的に局所的に除去することができる。
【0037】
あるいは、高ドープシリコン層20及び/又は第1のパッシベーション層18は、湿式化学溶液によって局所的に、部分的にエッチングしてもよい。誘電体層22は、有利には、湿式化学溶液が誘電体層22をエッチングしないか、又は高ドープシリコン層20及び第1のパッシベーション層18よりも実質的にゆっくりとエッチングするように選択された。どの層がレーザー照射によって既に先だって除去されているかに応じて、湿式化学溶液は任意に(optionally)、誘電体層22、オモテ面16の第1のパッシベーション層18、並びに任意に(optionally)オモテ面16及び裏面14の半導体基板の一部、の残留する残渣もエッチングする。あるいは、第1のパッシベーション層18は、第1のパッシベーション層及び半導体基板12がエッチングされないように、エッチング障壁として機能することもできる。高ドープシリコン層がオモテ面16にも配置される場合には、さらなる実施形態(図示せず)ではこの層もエッチングされる。
【0038】
前記エッチングすることは領域を研磨するための等方性エッチングを含むものとし、及び/又は前記エッチングすることは領域をテクスチャ形成するための異方性エッチングを含むものとすることができる。例えば、裏面14において、ベース領域24は、湿式化学溶液を使用して等方性エッチングすることによって研磨することができる。あるいは、裏面14において、ベース領域24は、湿式化学溶液を使用して異方性エッチングすることによりテクスチャ形成することができる。湿式化学溶液を使用した異方性エッチングにより、オモテ面16にテクスチャ形成する場合も有利であり得る。異なる層及び表面を除去し、任意に(optionally)テクスチャ形成及び/又は研磨するために、異なる湿式化学溶液を使用してもよい。
【0039】
図2eは、太陽電池10の裏面14全体及びオモテ面16全体の前駆体層26の堆積(deposition)を示す。オモテ面16及び裏面14への堆積(deposition)は、例えば同時に行われる。オモテ面16及び裏面14の前駆体層26は異なる特性を有していてもよく、例えば、厚さ又は前駆体層26に含まれるドーパント量に関して異なる特性を有していてもよい。裏面では、異なる表面上の前駆体層26、誘電体層22、又は露出したベース領域24は、異なるやり方で堆積(deposit)させることができ、したがって異なる特性を有することができる。前駆体層26は、第2の極性のドーパントを含む層、特にはリンケイ酸ガラス層PSGである。前駆体層26を付与するためには、例えば、裏面14及びオモテ面16の高ドープシリコン層20上にリンケイ酸ガラス層が成長する炉拡散プロセスを行うことができる。炉拡散プロセスは、炉拡散プロセスの後にはリンケイ酸ガラス層内に高比率のリンが含まれることになるように行うことができる。あるいは、前駆体層26、例えばPSGは、例えばPECVD、LPCVD又はAPCVDによって堆積(deposit)させることができる。
【0040】
ドーパントが前駆体層26から裏面14のベース領域24内に、及び/又はオモテ面16の表面内に拡散する高温ステップでは、裏面14のベース領域24内のドーピングが増加し、且つ/又はドープ領域28がオモテ面16に形成される。ドーパントは、裏面14のベース領域24を、高ドープシリコン層20の第1の極性とは逆の第2の極性によってドープし、したがってドープベース領域24が形成される。裏面14のドープベース領域24は、半導体基板12のドーパント濃度よりも高いドーパント濃度を有する。裏面14では、誘電体層22が前駆体層26からのドーパントに対する拡散障壁として機能するので、ドーパントは前駆体層26から高ドープシリコン層20内に拡散しないか、又は少量しか拡散しない。オモテ面16では、オモテ面16の前記ドープ領域28は、第2の極性による表面のドーピングによって形成される。オモテ面16の前記ドープされた領域28のドーパント濃度は、半導体基板12のドーパント濃度よりも高い。前記高温ステップは、例えば、前駆体層26を付与するための炉拡散ステップである。あるいは、前記高温ステップは、追加的な高温ステップであってもよい。
【0041】
前記高温ステップは、例えば、第2のドーパントの一部のみが前駆体層から裏面のベース領域内に拡散するように行うことができ、その場合したがって、その後かなりの量のドーパントが好ましくは依然として前駆体層26内に位置する。前記高温ステップはまた、高ドープ層20内のドーパントを活性化する機能も果たすことができる。
【0042】
図2fは、ドーパント濃度を局所的に増加させることにより、特にはレーザー照射によって増加させることにより、ドープベース領域24内に高ドープベース領域30を生み出すことを示す。レーザー照射の結果として、先に堆積(deposit)された前駆体層26は溶融又は蒸発し、裏面の表面は照射された領域内で局所的に加熱され溶融する。前駆体層からのさらなるドーパントは、照射された領域で表面内に拡散し、冷却及び再結晶化後に、照射された領域を第2の極性によってさらにドープし、そのようにして高ドープベース領域30が形成される。高ドープベース領域30におけるドーパント濃度は、半導体基板12、ドープベース領域24、及びオモテ面16のドープ領域28のドーパント濃度よりも顕著に高い。レーザーパラメータを適切に選択することにより、高ドープベース領域30内に局所的に選択的に異なる形で(differently)高ドープ部分を生み出すこともできる。
【0043】
さらに、特に、前駆体層26の残留する残渣がオモテ面16及び裏面14から除去されるものとする。この除去は、レーザー照射後に、例えば湿式化学洗浄ステップで行われる。有利には、誘電体層22の残留する残渣もまた、前記湿式化学洗浄ステップ又は化学洗浄後のさらなるステップによって高ドープシリコン層20から除去される。
【0044】
前記方法は、裏面14の第2のパッシベーション層32、及びオモテ面16の第3のパッシベーション層34を付与するステップをさらに含む(
図2g参照)。パッシベーション層32、34は、例えば、二酸化シリコン、シリコン窒化物、酸化アルミニウム、又は2層以上の誘電体層からなる積層物を含む。この場合、裏面14の第2のパッシベーション層32の厚さ、屈折率及び組成は、オモテ面16の第3のパッシベーション層34の厚さ、屈折率及び組成とは異なっていてもよい。パッシベーション層32、34の厚さは、有利には、反射がオモテ面16で低減され、裏面14で増大するように最適化される。パッシベーション層32、34は、有利には、第1のパッシベーション層18よりも大きい厚さを有する。第2のパッシベーション層32の厚さは、有利には4nmより大きい。パッシベーション層32、34の、熱二酸化シリコンの成長のための高温ステップはまた、高ドープ層20内のドーパントを活性化する機能も果たしてもよい。
【0045】
前記方法は、太陽電池10の裏面14に第1の極性の電極36及び第2の極性の電極38を付与するステップをさらに含む(
図2h参照)。電極36、38は、例えば、1種又は複数種の金属又はその他の導電層のスクリーン印刷、蒸着、スパッタリング、又はガルバニック堆積(deposition)によって付与することができる。電極36、38は、例えば、銀ペースト、銀/アルミニウムペースト、アルミニウムペースト若しくは純アルミニウム、銅、スズ、パラジウム、銀、チタン、ニッケル、若しくは上述の金属の積層物若しくは合金、又はその他の導電層、特には導電性ポリマー若しくは導電性酸化物、又はそのような層と金属との組み合わせ、を含むことができる。電極36、38の組成及び堆積(deposition)プロセスは、2つの極性の電極36、38によって異なり得る。電極36、38は、パッシベーション層32を局所的に貫通することができ、これは特にスクリーン印刷後の高温ステップで起こることができ、電極36、38の極性に応じて、ドープベース領域24、高ドープシリコン層20、又は高ドープベース領域30のいずれかにコンタクトすることができる。好ましくは、第2の極性の電極38は、高ドープベース領域30にのみコンタクトし、ドープベース領域24にはコンタクトしない。
【0046】
任意に(optionally)、電極36、38を付与する前に、これら電極が、選択的に除去された領域内でのみ、高ドープシリコン層20に直接コンタクトする、又は局所的に高ドープベース領域30に直接コンタクトするように、パッシベーション層32を選択的に除去、例えばレーザー照射によって選択的に除去、することができる。
本開示に係る態様には以下の態様も含まれる。
<1>
オモテ面(16)及び裏面(14)を有する半導体基板(12)、特にはシリコンウェハ、を含むバックコンタクト型太陽電池(10)であり、前記太陽電池(10)は、前記裏面に第1の極性の電極(36)及び第2の極性の電極(38)を含む、バックコンタクト型太陽電池(10)であって、
前記第1の極性の電極(36)が、第1の極性の高ドープシリコン層(20)上に配置され、前記高ドープシリコン層(20)が、前記半導体基板上に配置された第1のパッシベーション層(18)上に配置され、前記第2の極性の電極(38)が、前記半導体基板(12)の第2の極性の高ドープベース領域(30)を介して前記半導体基板(12)に直接電気的に且つ機械的にコンタクトすることを特徴とする、バックコンタクト型太陽電池(10)。
<2>
前記第2の極性の高ドープベース領域(30)が、前記太陽電池(10)の前記裏面(14)の第2の極性のドープベース領域(24)内に形成され、前記高ドープベース領域(30)におけるドーパント濃度が、前記ドープベース領域(24)におけるドーパント濃度よりも高く、前記高ドープベース領域(30)におけるドーパント濃度が、前記太陽電池(10)の前記オモテ面(16)のドープ領域(28)のドーパント濃度よりも高いことを特徴とする、<1>に記載のバックコンタクト型太陽電池(10)。
<3>
第2のパッシベーション層(32)が、前記第1の極性の電極(36)がコンタクトしておらず、前記第2の極性の電極(38)がコンタクトしていない前記裏面(14)の表面領域上に配置され、前記第2のパッシベーション層が前記第1のパッシベーション層よりも厚いことを特徴とする、<1>又は<2>に記載のバックコンタクト型太陽電池(10)。
<4>
前記太陽電池(10)の半導体基板(12)が、裏面(14)、特には研磨若しくはテクスチャ形成された裏面(14)、及びオモテ面(16)、特にはテクスチャ形成されたオモテ面(16)、を有する、<1>~<3>の少なくとも1つに記載のバックコンタクト型太陽電池を製造する方法であって、
第1のパッシベーション層(18)、特には二酸化シリコンを含む第1のパッシベーション層(18)が、前記オモテ面(16)の表面上に且つ/又は前記裏面(14)の表面上に付与されることを特徴とする、方法。
<5>
前記方法が、前記裏面(14)の前記第1のパッシベーション層(18)上に第1の極性の高ドープシリコン層(20)、特に全表面の高ドープシリコン層(20)、を堆積(deposit)させるステップを含むことを特徴とする、<3>に記載の方法。
<6>
誘電体層(22)が前記裏面(14)に付与されることを特徴とする、<4>又は<5>に記載の方法。
<7>
前記裏面(14)の前記誘電体層(22)及び前記第1の極性の高ドープシリコン層(20)及び前記第1のパッシベーション層(18)を局所的に除去することにより、前記裏面(14)の前記半導体基板のベース領域(24)が露出されることを特徴とする、<4>~<6>のいずれか1つに記載の方法。
<8>
前記半導体基板(12)の一部が、前記ベース領域(24)内で局所的に除去されることを特徴とする、<7>に記載の方法。
<9>
前記裏面の、前記半導体基板の前記ベース領域(24)を露出させることが、前記ベー
ス領域(24)内で局所的に、前記第1の極性の高ドープシリコン層(20)をエッチングすること及び/又は前記第1のパッシベーション層(18)をエッチングすること及び/又は前記半導体基板の一部をエッチングすることを含むことを特徴とする、<7>又は<8>に記載の方法。
<10>
前記エッチングすることが領域を研磨するための等方性エッチングを含み、及び/又は前記エッチングすることが領域をテクスチャ形成するための異方性エッチングを含むことを特徴とする、<9>に記載の方法。
<11>
前記方法が、ドーパント、特にはリン、を含む前駆体層(26)を、前記裏面(14)に、又は前記裏面(14)及び前記オモテ面(16)に設ける(attach)ステップを含むことを特徴とする、<4>~<10>のいずれか1つに記載の方法。
<12>
前記ドーパントが前記前駆体層(26)から前記裏面(14)のベース領域(24)内に及び/又は前記オモテ面(16)の表面内に拡散する高温ステップによって、前記裏面のベース領域(24)内のドーピングを増加させ、及び/又は前記オモテ面(16)にドープ領域(28)を生み出すことを特徴とする、<11>に記載の方法。
<13>
ドーパント濃度を局所的に増大させることにより、特にはレーザー照射によって増大させることにより、前記裏面(14)のドープベース領域(24)内に高ドープベース領域(30)が形成されることを特徴とする、<4>~<12>のいずれか1つに記載の方法。
<14>
前記方法が、前駆体層(26)、特にリンシリケートガラス、を前記オモテ面(16)から、及び/又は前記裏面(14)から除去するステップを含むことを特徴とする、<11>~<13>の少なくとも1つに記載の方法。
<15>
前記方法が、前記裏面(14)の第2のパッシベーション層(32)及び/又は前記オモテ面(16)の第3のパッシベーション層(34)を付与するステップを含むことを特徴とする、<4>~<14>の少なくとも1つに記載の方法。
<16>
前記方法が、前記裏面(14)の前記第2のパッシベーション層(32)を選択的に除去するステップを含むことを特徴とする、<15>に記載の方法。
<17>
前記方法が、前記太陽電池(10)の前記裏面(14)に第1の極性の電極(36)及び第2の極性の電極(38)を付与するステップを含むことを特徴とする、<4>~<16>の少なくとも1つに記載の方法。