(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】喘息予報システム
(51)【国際特許分類】
G16H 50/00 20180101AFI20240522BHJP
A61B 5/08 20060101ALI20240522BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20240522BHJP
G08B 25/04 20060101ALI20240522BHJP
G08B 25/10 20060101ALI20240522BHJP
G09B 29/00 20060101ALI20240522BHJP
G09B 29/10 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
G16H50/00
A61B5/08
G08B21/02
G08B25/04 K
G08B25/10 A
G09B29/00 F
G09B29/10 A
(21)【出願番号】P 2019001114
(22)【出願日】2019-01-08
【審査請求日】2021-11-22
【審判番号】
【審判請求日】2023-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】320005501
【氏名又は名称】株式会社電通
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】歓崎 浩司
【合議体】
【審判長】佐藤 智康
【審判官】安井 雅史
【審判官】相崎 裕恒
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-506771(JP,A)
【文献】特開2016-158806(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0129786(US,A1)
【文献】特開2009-277176(JP,A)
【文献】国際公開第2017/148876(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H10/00-80/00
A61B5/06-5/22
G08B19/00-21/24
G08B23/00-31/00
G09B23/00-29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の喘鳴を検知する喘鳴検知デバイスと、サーバと、を備え、
前記サーバは、
前記喘鳴検知デバイスから対象者の呼吸音である喘鳴情報および現在位置情報を取得する情報取得部と、
複数の喘鳴検知デバイスから取得される喘鳴情報および現在位置情報に基づいて、喘息発作の地理的な発生状況を示す喘息予報マップを生成するマップ生成部と、
を有する、
ことを特徴とする喘息予報システム。
【請求項2】
前記サーバは、
現在の喘息予報マップに基づいて、喘息の発作が起こりやすいエリアを推定し、当該エリア内に位置する対象者の喘鳴検知デバイスまたは当該対象者の関係者の端末装置に、第1注意情報を配信する注意情報配信部をさらに有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の喘息予報システム。
【請求項3】
前記マップ生成部は、前記喘息予報マップに時間情報または天候情報を紐づけてデータベースに記憶し、
前記注意情報配信部は、現在時刻と同じ時間帯の過去の喘息予報マップまたは現在の天候と同じ天候の過去の喘息予報マップに基づいて、喘息の発作が起こりやすいエリアを推定し、当該エリア内に位置する対象者の喘鳴検知デバイスまたは当該対象者の関係者の端末装置に、第2注意情報を配信する、
ことを特徴とする請求項2に記載の喘息予報システム。
【請求項4】
前記喘鳴検知デバイスは、対象者の衣服に取り付け可能である、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の喘息予報システム。
【請求項5】
対象者の喘鳴を検知する喘鳴検知デバイスから
対象者の呼吸音である喘鳴情報および現在位置情報を取得する情報取得部と、
複数の喘鳴検知デバイスから取得される喘鳴情報および現在位置情報に基づいて、喘息発作の地理的な発生状況を示す喘息予報マップを生成するマップ生成部と、
を備えたサーバ。
【請求項6】
対象者の呼吸音を喘鳴情報として収集し、対象者の喘鳴を検知する喘鳴検知部と、
現在位置情報を取得する現在位置取得部と、
喘鳴情報および現在位置情報を、喘息発作の地理的な発生状況を示す喘息予報マップを生成するサーバへと送信する情報送信部と、
喘息予報マップに基づいて、喘息の発作が起こりやすいエリアを喘息注意エリアとして推定し、喘息注意エリア内に位置する対象者に注意情報を配信するサーバから、当該注意情報を受信すると、喘息の発作が起こりやすい状況にあることを対象者または周囲の関係者に通知する通知部と、
を備えた喘鳴検知デバイス。
【請求項7】
コンピュータが実行する方法であって、
対象者の喘鳴を検知する喘鳴検知デバイスから対象者の呼吸音である喘鳴情報および現在位置情報を取得するステップと、
複数の喘鳴検知デバイスから取得される喘鳴情報および現在位置情報に基づいて、喘息発作の地理的な発生状況を示す喘息予報マップを生成するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
コンピュータに、
対象者の喘鳴を検知する喘鳴検知デバイスから対象者の呼吸音である喘鳴情報および現在位置情報を取得するステップと、
複数の喘鳴検知デバイスから取得される喘鳴情報および現在位置情報に基づいて、喘息発作の地理的な発生状況を示す喘息予報マップを生成するステップと、
を実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、喘息予報システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、日本国内では20~25万人の小学生が小児喘息の持病を持っていると言われている。小児喘息の発作が起きると、夜眠れない、勉強ができない、友達と遊べない、学校に行けない、体育に参加できない、など、通常の生活が送れなくなる。季節の変わり目、夜中、夢中で遊んでいるときなど、大人なら自覚できる喘息発作の予兆を、子どもは感知できないため、この「不安」は大きいと考えられる。
【0003】
特許文献1には、被験者の呼吸音に喘鳴が含まれているか否かを検出する喘鳴検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の装置は、既に喘息の発作を感じてから使用するものであり、小児喘息を持病に持つ子どもが抱えている「発作が出たら苦しい、どうしよう。」という、喘息の発作が起きる前の「不安」を解消することはできない。
【0006】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたものである。本発明の目的は、喘息の発作が起きる前に、現在位置での喘息発作の発生状況を喘息予報として提供できる喘息予報システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に係る喘息予報システムは、
対象者の喘鳴を検知する喘鳴検知デバイスと、サーバと、を備え、
前記サーバは、
前記喘鳴検知デバイスから喘鳴情報および現在位置情報を取得する情報取得部と、
複数の喘鳴検知デバイスから取得される喘鳴情報および現在位置情報に基づいて、喘息発作の地理的な発生状況を示す喘息予報マップを生成するマップ生成部と、
を有する。
【0008】
このような態様によれば、サーバのマップ生成部が、複数の喘鳴検知デバイスから取得される喘鳴情報および現在位置情報に基づいて、喘息発作の地理的な発生状況を示す喘息予報マップを生成するため、対象者に喘息の発作が起きる前に、現在位置での喘息発作の発生状況を喘息予報として提供することが可能となる。これにより、特に小児喘息を持病に持つ子ども(またはその親や先生などの関係者)が喘息予報を取得することで、喘息の発作が起こりやすい状況にあるか否かが事前に分かるようになり、子どもが抱えている「発作が出たら苦しい、どうしよう。」という「不安」を解消できるようになる。
【0009】
本発明の第2の態様に係る喘息予報システムは、第1の態様に係る喘息予報システムであって、
前記サーバは、
現在の喘息予報マップに基づいて、喘息の発作が起こりやすいエリアを推定し、当該エリア内に位置する対象者の喘鳴検知デバイスまたは当該対象者の関係者の端末装置に、第1注意情報を配信する注意情報配信部をさらに有する。
【0010】
このような態様によれば、現在の喘息予報マップに基づいて、喘息の発作が起こりやすいエリアが推定され、当該エリア内に位置する対象者またはその関係者に第1注意情報の配信されるため、当該エリア内に位置する対象者またはその関係者は、対象者本人に喘息の発作が起きる前であっても、喘息の発作が起こりやすい状況にあることを認知して事前に対応できるようになる。
【0011】
本発明の第3の態様に係る喘息予報システムは、第2の態様に係る喘息予報システムであって、
前記マップ生成部は、前記喘息予報マップに時間情報または天候情報を紐づけてデータベースに記憶し、
前記注意情報配信部は、現在時刻と同じ時間帯の過去の喘息予報マップまたは現在の天候と同じ天候の過去の喘息予報マップに基づいて、喘息の発作が起こりやすいエリアを推定し、当該エリア内に位置する対象者の喘鳴検知デバイスまたは当該対象者の関係者の端末装置に、第2注意情報を配信する。
【0012】
このような態様によれば、現在時刻と同じ時間帯の過去の喘息予報マップまたは現在の天候と同じ天候の過去の喘息予報マップに基づいて、喘息の発作が起こりやすいエリアが推定され、当該エリア内に位置する対象者またはその関係者に第2注意情報が配信されるため、当該エリア内に位置する対象者またはその関係者は、対象者本人に喘息の発作が起きる前であっても、喘息の発作が起こりやすい状況にあることを認知して事前に対応できるようになる。
【0013】
本発明の第4の態様に係る喘息予報システムは、第1~3のいずれかの態様に係る喘息予報システムであって、
前記喘鳴検知デバイスは、対象者の衣服に取り付け可能である。
【0014】
小児喘息患者はアトピー性皮膚炎も併発していることが多く、肌に密着しているものを避ける傾向があるが、このような態様によれば、喘鳴検知デバイスは対象者の衣服に取り付け可能であり、肌に密着しないため、対象者は喘鳴検知デバイスを安心して日常的に携帯することができる。
【0015】
本発明の第5の態様に係るサーバは、
対象者の喘鳴を検知する喘鳴検知デバイスから喘鳴情報および現在位置情報を取得する情報取得部と、
複数の喘鳴検知デバイスから取得される喘鳴情報および現在位置情報に基づいて、喘息発作の地理的な発生状況を示す喘息予報マップを生成するマップ生成部と、
を備える。
【0016】
本発明の第6の態様に係る喘鳴検知デバイスは、
対象者の喘鳴を検知する喘鳴検知部と、
現在位置情報を取得する現在位置取得部と、
喘鳴情報および現在位置情報を、喘息発作の地理的な発生状況を示す喘息予報マップを生成するサーバへと送信する情報送信部と、
を備える。
【0017】
本発明の第7の態様に係る方法は、
対象者の喘鳴を検知する喘鳴検知デバイスから喘鳴情報および現在位置情報を取得するステップと、
複数の喘鳴検知デバイスから取得される喘鳴情報および現在位置情報に基づいて、喘息発作の地理的な発生状況を示す喘息予報マップを生成するステップと、
を含む。
【0018】
本発明の第8の態様に係るプログラムは、
コンピュータに、
対象者の喘鳴を検知する喘鳴検知デバイスから喘鳴情報および現在位置情報を取得するステップと、
複数の喘鳴検知デバイスから取得される喘鳴情報および現在位置情報に基づいて、喘息発作の地理的な発生状況を示す喘息予報マップを生成するステップと、
を実行させる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、喘息の発作が起きる前に、現在位置での喘息発作の発生状況を喘息予報として提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、一実施の形態に係る喘息予報システムの構成を示す概略図である。
【
図2】
図2は、喘鳴検知デバイスを拡大して示す図である。
【
図3】
図3は、喘鳴検知デバイスの内部の構成を示す図である。
【
図4】
図4は、喘鳴検知デバイスの構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、サーバの構成を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、喘息予報システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、喘息予報マップの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、添付の図面を参照して、実施の形態の具体例を詳細に説明する。なお、以下の説明および以下の説明で用いる図面では、同一に構成され得る部分について、同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
【0022】
図1は、一実施の形態に係る喘息予報システム1の構成を示す概略図である。
【0023】
図1に示すように、喘息予報システム1は、対象者の喘鳴を検知する喘鳴検知デバイス2と、サーバ3とを有している。喘鳴検知デバイス2とサーバ3とは、インターネット等のネットワーク4を介して互いに通信可能に接続されている。ネットワーク4は、無線回線を含むのであれば、回線の種類や形態は問わない。なお、喘鳴検知デバイス2とサーバ3の少なくとも一部は、コンピュータにより実現される。
【0024】
図1に示すように、ネットワーク4には、対象者の関係者(たとえば、両親や先生など)の端末装置5が通信可能に接続されていてもよい。端末装置5は、対象者の関係者に情報を通知する機能を有するものであり、たとえば、スマートフォンやタブレット端末などのモバイル端末、ノートブックコンピュータ、デスクトップコンピュータ、またはスマートスピーカーなどの電子機器である。
【0025】
図2は、喘鳴検知デバイス2を拡大して示す図であり、
図3は、喘鳴検知デバイス2の内部の構成を示す図である。
図4は、喘鳴検知デバイス2の構成を示すブロック図である。
【0026】
図2および
図3に示すように、喘鳴検知デバイス2は、対象者の衣服に取り付け可能なケース20を有している。図示されて例では、ケース20は、安全ピンなどで衣服の胸元に取り付け可能な名札形状を有しており、日常生活の中で身につけても自然に感じられるものとなっている。ケース20の材質は、布や樹脂など、対象者が持ちたくなる・触りたくなる素材や、汚れても洗える・取り換えられる素材であるのが望ましい。
【0027】
図3および
図4に示すように、ケース20の内部には、通信部21と、制御部22と、喘鳴検知部23と、現在位置取得部24と、警報部25と、各部21~25に電力を供給するバッテリ26と、スイッチ27とが収容されている。なお、図面の理解のしやすさの便宜上、
図3では制御部22の図示が省略されており、
図4ではバッテリ26とスイッチ27の図示が省略されている。
【0028】
通信部21は、喘鳴検知デバイス2とネットワーク4との間の通信インターフェースである。通信部21は、ネットワーク4を介して喘鳴検知デバイス2とサーバ3との間で情報を送受信する。
【0029】
一変形例として、通信部21は、喘鳴検知デバイス2と中継端末(たとえばスマートフォンやタブレット端末、スマートスピーカーなど)との間の通信インターフェースであってもよい。この場合、通信部21は、Bluetooth(登録商標)などの近距離無線通信を利用して、喘鳴検知デバイス2と中継端末との間で情報を送受信し、中継端末は、ネットワーク4を介して中継端末とサーバ3との間で情報を送受信してもよい。
【0030】
喘鳴検知部23は、たとえば超指向性マイクロホンであり、対象者の呼吸音を喘鳴情報として収集し、対象者の喘鳴を検知する。
【0031】
現在位置取得部24は、たとえばGPS、ビーコンなどの電波航法手段による測位情報に基づいて現在位置情報を取得する。喘鳴検知デバイス2は、その場で対象者の喘鳴を検知するものであるから、現在位置取得部24により取得された現在位置情報は、対象者の位置情報を示すものとなる。
【0032】
警報部25は、たとえばLEDライトであり、対象者(または周囲の関係者)に情報を伝達する。なお、警報部25は、対象者(または周囲の関係者)に情報を伝達できる手段であれば、ライトに限定されるものでなく、たとえば音を発するスピーカや振動を生成するバイブレータであってもよい。
【0033】
制御部22は、喘鳴検知デバイス2の各種処理を行う制御手段である。制御部22は、喘鳴検知デバイス2内のプロセッサが所定のプログラムを実行することにより実現されてもよいし、ハードウェアで実装されてもよい。
【0034】
制御部22は、喘鳴検知部23により喘鳴が検知されると、たとえば警報部25のランプを点滅させることで、喘鳴が検知されたことを対象者(または周囲の関係者)に通知する。
【0035】
また、制御部22は、予め定められた繰り返し周期(たとえば、1分ごと、10分ごと、30分ごとなど)で、喘鳴検知部23により収集された喘鳴情報と、現在位置取得部24により取得された現在位置情報とを、通信部21を介してサーバ3へと送信する。
【0036】
次に、サーバ3について説明する。
図5は、サーバ3の構成を示すブロック図である。
【0037】
図5に示すように、サーバ3は、たとえばクラウド型のコンピュータシステムであり、通信部31と、制御部32と、記憶部33とを有している。
【0038】
このうち通信部31は、サーバ3とネットワーク4との間の通信インターフェースである。通信部31は、ネットワーク4を介して喘鳴検知デバイス2および端末装置5とサーバ3との間で情報を送受信する。
【0039】
記憶部33は、たとえばハードディスク等の固定型データストレージである。記憶部33には、制御部32が取り扱う各種データが記憶される。たとえば、記憶部33は、喘息予報マップデータベース331を含んでいる。
【0040】
喘息予報マップデータベース331には、後述するマップ生成部322により生成された、喘息発作の地理的な発生状況を示す喘息予報マップ(
図7参照)が記憶される。喘息予報マップは、時間情報および天候情報のいずれか一方または両方が紐づけられた状態で、喘息予報マップデータベース331に記憶されていてもよい。
【0041】
制御部32は、サーバ3の各種処理を行う制御手段である。
図5に示すように、制御部32は、情報取得部321と、マップ生成部322と、注意情報配信部323と、天候取得部324とを有している。これらの各部は、サーバ3内のプロセッサが所定のプログラムを実行することにより実現されてもよいし、ハードウェアで実装されてもよい。
【0042】
情報取得部321は、対象者の喘鳴情報および現在位置情報を喘鳴検知デバイス2から受信して取得する。
【0043】
天候取得部324は、各地の天候情報を、外部のサーバ(たとえば、気象庁や民間気象サービス等のサーバなど)にアクセスして取得する。
【0044】
マップ生成部322は、複数の喘鳴検知デバイス2から取得される喘鳴情報および現在位置情報に基づいて、喘息発作の地理的な発生状況を示す喘息予報マップを生成し、喘息予報マップデータベース331に記憶する。
【0045】
図7は、喘息予報マップの一例を示す図である。
図7に示す例では、喘息予報マップ上において、喘息の発作を起こした対象者(喘鳴が検知される対象者)の現在位置が、黒色のキャラクタで表示され、喘息の発作を起こしていない対象者(喘鳴が検知されない対象者)の現在位置が、白色のキャラクタで表示されている。また、
図7に示す例では、喘息予報マップ上において、喘息の発作が起こりやすいエリア(たとえば、エリア内に位置する対象者全体に対する喘息の発作を起こした対象者の割合が予め定められた基準値を超えたエリア)が色分けで表示されている。
【0046】
マップ生成部322は、生成した喘息予報マップに、時間情報または天候取得部324により取得された天候情報を紐づけて、喘息予報マップデータベース331に記憶してもよい。
【0047】
注意情報配信部323は、喘息予報マップデータベース331を参照し、現在の喘息予報マップに基づいて、喘息の発作が起こりやすいエリア(以下、喘息注意エリアという)を推定する。注意情報配信部323は、エリア内に位置する対象者全体に対する喘息の発作を起こした対象者の割合(相対値)が予め定められた基準値を超えたエリアを、喘息注意エリアとして推定してもよいし、エリア内に位置する喘息の発作を起こした対象者の人数(絶対値)が予め定められた基準値を超えたエリアを、喘息注意エリアとして推定してもよい。
【0048】
そして、注意情報配信部323は、情報取得部321により取得された対象者の現在位置情報に基づいて、喘息注意エリア内に位置する対象者を特定し、喘息注意エリア内に位置する対象者の喘鳴検知デバイス2、または当該対象者の関係者の端末装置5に、現在のデータから喘息の発作が起こりやすい状況にあると判定できる旨の第1注意情報を配信する。喘鳴検知デバイス2が第1注意情報を受信すると、喘鳴検知デバイス2の制御部22が、たとえば警報部25のランプを点滅させることで、喘息の発作が起こりやすい状況にあることを対象者(または周囲の関係者)に通知する。
【0049】
注意情報配信部323は、喘息予報マップデータベース331を参照し、現在時刻と同じ時間帯の過去の喘息予報マップまたは現在の天候と同じ天候の過去の喘息予報マップに基づいて、喘息の発作が起こりやすいエリア(すなわち、喘息注意エリア)を推定してもよい。
【0050】
そして、注意情報配信部323は、情報取得部321により取得された対象者の現在位置情報に基づいて、喘息注意エリア内に位置する対象者を特定し、喘息注意エリア内に位置する対象者の喘鳴検知デバイス2、または当該対象者の関係者の端末装置5に、過去のデータから喘息の発作が起こりやすい状況にあると判定できる旨の第2注意情報を配信してもよい。喘鳴検知デバイス2が第2注意情報を受信すると、喘鳴検知デバイス2の制御部22が、たとえば警報部25のランプを点滅させることで、喘息の発作が起こりやすい状況にあることを対象者(または周囲の関係者)に通知する。
【0051】
次に、このような構成からなる喘息予報システム1の動作の一例について、
図6を参照して説明する。
図6は、喘息予報システム1の動作の一例を示すフローチャートである。
【0052】
図6を参照し、まず、対象者が所持する喘鳴検知デバイス2が、予め定められた繰り返し周期(たとえば1分ごと)で、対象者の呼吸音を喘鳴情報として収集し、収集した対象者の喘鳴情報と現在位置情報とを、ネットワーク4を介してサーバ3へと送信する。サーバ3の情報取得部321は、対象者の喘鳴情報および現在位置情報を喘鳴検知デバイス2から受信して取得する(ステップS10)。
【0053】
次いで、マップ生成部322が、複数の喘鳴検知デバイス2から取得される喘鳴情報および現在位置情報に基づいて、喘息発作の地理的な発生状況を示す喘息予報マップを生成する(ステップS11)。
【0054】
そして、マップ生成部322は、生成した喘息予報マップに、時間情報または天候取得部324により取得される天候情報を紐づけて、喘息予報マップデータベース331に記憶する(ステップS12)。
【0055】
次に、注意情報配信部323が、喘息予報マップデータベース331を参照し、現在の喘息予報マップに基づいて、喘息の発作が起こりやすいエリア(すなわち、喘息注意エリア)を推定する(ステップS13)。
【0056】
そして、注意情報配信部323は、情報取得部321により取得された対象者の現在位置情報に基づいて、喘息注意エリア内に位置する対象者を特定し、喘息注意エリア内に位置する対象者の喘鳴検知デバイス2、または当該対象者の関係者の端末装置5に、現在のデータから喘息の発作が起こりやすい状況にあると判定できる旨の第1注意情報を配信する(ステップS14)。
【0057】
第1注意情報が配信された喘鳴検知デバイス2の制御部22は、たとえば警報部25のランプを点滅させることで、喘息の発作が起こりやすい状況にあることを対象者(または周囲の関係者)に通知する。
【0058】
また、注意情報配信部323は、喘息予報マップデータベース331を参照し、現在時刻と同じ時間帯の過去の喘息予報マップまたは現在の天候と同じ天候の過去の喘息予報マップに基づいて、喘息の発作が起こりやすいエリア(すなわち、喘息注意エリア)を推定する(ステップS15)。
【0059】
そして、注意情報配信部323は、情報取得部321により取得された対象者の現在位置情報に基づいて、喘息注意エリア内に位置する対象者を特定し、喘息注意エリア内に位置する対象者の喘鳴検知デバイス2、または当該対象者の関係者の端末装置5に、過去のデータから喘息の発作が起こりやすい状況にあると判定できる旨の第2注意情報を配信する(ステップS16)。
【0060】
第2注意情報が配信された喘鳴検知デバイス2の制御部22は、たとえば警報部25のランプを点滅させることで、喘息の発作が起こりやすい状況にあることを対象者(または周囲の関係者)に通知する。
【0061】
ところで、発明が解決しようとする課題の欄でも言及したように、従来の喘鳴検出装置は、既に喘息の発作を感じてから使用するものであり、小児喘息を持病に持つ子どもが抱えている「発作が出たら苦しい、どうしよう。」という、喘息の発作が起きる前の「不安」を解消することはできなかった。
【0062】
これに対し、本実施の形態によれば、サーバ3のマップ生成部322が、複数の喘鳴検知デバイス2から取得される喘鳴情報および現在位置情報に基づいて、喘息発作の地理的な発生状況を示す喘息予報マップ(
図7参照)を生成するため、対象者に喘息の発作が起きる前に、現在位置での喘息発作の発生状況を喘息予報として提供することが可能となる。これにより、特に小児喘息を持病に持つ子ども(またはその親や先生などの関係者)が喘息予報を取得することで、喘息の発作が起こりやすい状況にあるか否かが事前に分かるようになり、子どもが抱えている「発作が出たら苦しい、どうしよう。」という「不安」を解消できるようになる。
【0063】
また、本実施の形態によれば、現在の喘息予報マップに基づいて、喘息の発作が起こりやすいエリアが推定され、当該エリア内に位置する対象者またはその関係者に第1注意情報が配信されるため、当該エリア内に位置する対象者またはその関係者は、対象者本人に喘息の発作が起きる前であっても、喘息の発作が起こりやすい状況にあることを認知して事前に対応できるようになる。
【0064】
また、本実施の形態によれば、現在時刻と同じ時間帯の過去の喘息予報マップ、または現在の天候と同じ天候の過去の喘息予報マップに基づいて、喘息の発作が起こりやすいエリアが推定され、当該エリア内に位置する対象者またはその関係者に第2注意情報が配信されるため、当該エリア内に位置する対象者またはその関係者は、対象者本人に喘息の発作が起きる前であっても、喘息の発作が起こりやすい状況にあることを認知して事前に対応できるようになる。
【0065】
また、小児喘息患者はアトピー性皮膚炎も併発していることが多く、肌に密着しているものを避ける傾向があるが、本実施の形態によれば、喘鳴検知デバイス2は対象者の衣服に取り付け可能であり、肌に密着しないため、対象者は喘鳴検知デバイス2を安心して日常的に携帯することができる。
【0066】
なお、上述した実施の形態の記載ならびに図面の開示は、特許請求の範囲に記載された発明を説明するための一例に過ぎず、上述した実施の記載または図面の開示によって特許請求の範囲に記載された発明が限定されることはない。上述した実施の形態の構成要素は、発明の主旨を逸脱しない範囲で任意に組み合わせることが可能である。
【0067】
また、本実施の形態に係る喘息予報システムのサーバはコンピュータシステムによって構成され得るが、コンピュータシステムに喘息予報システムのサーバを実現させるためのプログラム及び当該プログラムを記録した記録媒体も、本件の保護対象である。
【符号の説明】
【0068】
1 喘息予報システム
2 喘鳴検知デバイス
21 通信部
22 制御部
23 喘鳴検知部
24 現在位置取得部
25 警報部
3 サーバ
31 通信部
32 制御部
321 情報取得部
322 マップ生成部
323 注意情報配信部
324 天候取得部
33 記憶部
331 喘息予報マップデータベース
332 喘息注意エリア判定閾値データベース
4 ネットワーク
5 端末装置