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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】開閉弁およびこれを備えた浴室洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 51/00 20060101AFI20240522BHJP
   A47K 3/00 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
F16K51/00 A
A47K3/00 Q
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020011438
(22)【出願日】2020-01-28
(65)【公開番号】P2021116879
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】濱田 誠
(72)【発明者】
【氏名】市丸 秀仁
(72)【発明者】
【氏名】中塚 悠介
(72)【発明者】
【氏名】小幡 恭士
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-027556(JP,A)
【文献】特開2006-132607(JP,A)
【文献】実開昭63-050764(JP,U)
【文献】実開平04-060167(JP,U)
【文献】特開2017-131407(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 51/00
F16K 1/00-1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室を内部に形成しており、かつ前記弁室の周壁部には、1次流路の終端の第1の開口部が開設されているとともに、前記弁室の下壁部には、前記弁室を2次流路に連通させる弁開口部およびこれを囲む弁座が形成されている弁ケーシングと、
前記弁室内に配され、かつ前記弁開口部を開閉可能とすべく前記弁座に対向して往復動自在な弁体と、
を備えている、開閉弁であって、
前記弁開口部、前記弁座および前記弁体と、前記第1の開口部との相互間を遮り、かつ前記第1の開口部および前記周壁部に対向し、前記周壁部との相互間に隙間状流路を形成する補助壁部を、さらに備えており、
前記補助壁部は、前記弁開口部、前記弁座および前記弁体の全周を囲む筒状であり、
前記補助壁部のうち、前記第1の開口部寄りの半部とは反対側の半部に、前記弁開口部に連通する第2の開口部が設けられていることにより、前記第1の開口部から前記弁室に流入した液体は、前記隙間状流路を通過してから前記弁開口部に到達するように構成されており、
前記第2の開口部は、前記補助壁部の下端部寄りに部分的に設けられ、かつ前記補助壁部の下端において下部が開口した下部切欠き状の開口部、または前記補助壁部の上端寄りに部分的に設けられ、かつ前記補助壁部の上端において上部が開口した上部切欠き状の開口部であることを特徴とする、開閉弁。
【請求項2】
請求項1に記載の開閉弁であって、
前記補助壁部は、前記弁室と上下幅が同一とされている、開閉弁。
【請求項3】
請求項1または2のいずれかに記載の開閉弁であって、
前記補助壁部は、前記弁室の上壁部または前記下壁部に一体形成されている、開閉弁。
【請求項4】
請求項1ないしのいずれかに記載の開閉弁であって、
前記補助壁部は、前記弁ケーシングの各部とは別体で形成されている、開閉弁。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の開閉弁であって、
前記補助壁部の外周面は、凹凸面とされている、開閉弁。
【請求項6】
液体の洗剤を流通させるための洗剤流路と、
この洗剤流路に設けられた開閉弁と、
を備えている、浴室洗浄装置であって、
前記開閉弁として、請求項1ないし5のいずれかに記載の開閉弁が用いられていることを特徴とする、浴室洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉弁、およびこれを備えた浴室洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
浴室洗浄装置の一例としては、特許文献1に記載されているように、浴槽に湯水を噴射するための洗浄ノズルに繋がった湯水流路に、ベンチュリ部を設け、かつこのベンチュリ部に洗剤流路を接続したものがある。ベンチュリ部に湯水が流れる際のベンチュリ効果により、洗剤流路から湯水流路内に洗剤(液体)が流れ込む。このことにより、洗剤が混合された洗浄液が生成され、この洗浄液が洗浄ノズルから浴槽に噴射される。
このような浴室洗浄装置においては、洗剤流路や湯水流路に開閉弁が設けられるが、これらのうち、洗剤流路に設けられる開閉弁には異物の噛み込みが生じ易い。洗剤流路の最上流には、洗剤用のタンクが設けられ、かつこのタンクへの洗剤の投入は、ユーザがタンクの蓋を開けて行なう方式とされているため、この洗剤投入時にゴミなどの異物が前記タンク内に紛れ込み易い。
ここで、洗剤流路の開閉弁に噛み込みを生じると、弁閉状態においても洗剤が開閉弁を通過して、湯水流路に流れ込む。その結果、前記洗剤が浴槽内に進入する虞がある。このような虞は適切に解消することが望まれる。
【0003】
なお、前記した虞を解消する手段として、前記タンクには、異物捕捉用のフィルタが取付けられている。ただし、異物としては、このフィルタを通過するものがある。フィルタのメッシュ開口(目開き)をかなり小さくすれば、異物を略完全に捕捉除去可能であるものの、これではフィルタが早期に目詰まりする。このため、現実的には、フィルタとして、メッシュ開口がある程度のサイズのものを用いざるを得ないこととなって、フィルタを通過した異物が開閉弁に到達し、噛み込みを生じる現象が発生する。
【0004】
本発明者らが、前記した開閉弁の噛み込みを調べたところ、図11に示すような態様での噛み込みが発生することが判明した。
すなわち、同図に示す開閉弁Vxは、弁開口部32および弁座45に対向して往復動自在な弁体5が、弁ケーシング4の弁室44内に設けられており、かつ弁室44の周壁部43には、1次流路3aの終端の第1の開口部31が設けられている。同図に示す異物mは、毛髪、動物の毛、衣類や敷物の繊維などの比較的腰のある繊維状であり、この異物mの先頭部分は、弁開口部32の縁部に当接し、異物mの全体が、弁開口部32から第1の開口部31に跨がった状態で引っ掛かっている。このような態様での異物mの引っ掛かり状態は容易に解除され難く、このような場合に開閉弁Vxにおける異物mの噛み込みが発生する。
【0005】
一方、開閉弁としては、特許文献2に記載のものがある。同文献に記載の開閉弁においては、弁体の周囲に円筒状フィルタを配置している。しかしながら、このような手段によれば、洗剤タンクのフイルタを通過してきた異物が、前記円筒状フィルタをも通過する可能性が高い。これを解消するには、円筒状フィルタのメッシュ開口サイズを小さくすればよいが、そうすると円筒状フィルタに目詰まりを生じ易くなる。洗剤タンクのフィルタ交換などは比較的容易に行なうことが可能であるものの、開閉弁の内部に組み込まれたフィルタの交換は容易ではない。また、円筒状フィルタに目詰まりが発生した場合に、その旨を的確に察知することも難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-131407号公報
【文献】特開2011-179662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、異物の噛み込みを適切に防止または抑制することが可能な開閉弁、およびこれを備えた浴室洗浄装置を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0009】
本発明の第1の側面により提供される開閉弁は、弁室を内部に形成しており、かつ前記弁室の周壁部には、1次流路の終端の第1の開口部が開設されているとともに、前記弁室の下壁部には、前記弁室を2次流路に連通させる弁開口部およびこれを囲む弁座が形成されている弁ケーシングと、前記弁室内に配され、かつ前記弁開口部を開閉可能とすべく前記弁座に対向して往復動自在な弁体と、を備えている、開閉弁であって、前記弁開口部、前記弁座および前記弁体と、前記第1の開口部との相互間を遮り、かつ前記第1の開口部および前記周壁部に対向し、前記周壁部との相互間に隙間状流路を形成する補助壁部を、さらに備えており、前記補助壁部は、前記弁開口部、前記弁座および前記弁体の全周を囲む筒状であり、前記補助壁部のうち、前記第1の開口部寄りの半部とは反対側の半部に、前記弁開口部に連通する第2の開口部が設けられていることにより、前記第1の開口部から前記弁室に流入した液体は、前記隙間状流路を通過してから前記弁開口部に到達するように構成されており、前記第2の開口部は、前記補助壁部の下端部寄りに部分的に設けられ、かつ前記補助壁部の下端において下部が開口した下部切欠き状の開口部、または前記補助壁部の上端寄りに部分的に設けられ、かつ前記補助壁部の上端において上部が開口した上部切欠き状の開口部であることを特徴としている。
【0010】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、1次流路の終端の第1の開口部から弁室に流入した液体は、補助壁部と周壁部との間に形成された隙間状流路を通過してから前記弁開口部に到達し、第1の開口部から弁開口部に向けて直線的あるいは直接的には流れないこととなる。このため、異物が、毛髪などの腰のある繊維状であったとしても、この異物が弁開口部の位置から第1の開口部に跨がった状態で引っ掛かりを生じる現象(図11で示した現象)は発生し難くなる。その結果、開閉弁の噛み込みを適切に防止または抑制することができる。
一方、開閉弁内に円筒状フィルタを組み込む手段(特許文献2)とは異なり、開閉弁の内部において、フィルタの目詰まり、あるいはこれに類する不具合が発生する虞はない。したがって、いわゆるメンテナンスフリーとすることもでき、便利であり、信頼性を高めることもできる。
さらに、前記構成によれば、弁室は、第1の開口部から弁室に流入した液体が、補助壁部の第1の開口部寄りの半部とは反対側の半部まで回り込んでから弁開口部に到達する構成となるため、繊維状の異物が弁開口部から第1の開口部の両者間に跨がって引っ掛かりを生じることは一層発生し難くなる。したがって、開閉弁の噛み込み防止効果がより高められる。
さらに、前記構成によれば、弁室に流れ込む液体と異物との比重差を利用した噛み込み防止効果を得ることも可能となる。具体的には、第2の開口部が、補助壁部の下端部寄りの位置に部分的に設けられている場合、異物の比重が仮に液体よりも小さいと、この異物は弁室の上部寄りの部位に浮くこととなり、第2の開口部を介して弁開口部に到達しない。したがって、前記異物が弁開口部の位置に引っ掛かりを生じることはなく、開閉弁の噛み込みがより徹底して防止される。これと同様な原理により、第2の開口部が、補助壁部の上端部寄りの位置に部分的に設けられている場合には、液体よりも比重が大きい異物の噛み込みがより徹底して防止される。
【0011】
本発明において、好ましくは、前記補助壁部は、前記弁室と上下幅が同一とされている。
【0012】
このような構成によれば、補助壁部の上側および下側に、大きな隙間が形成されないようにすることができる。補助壁部の上側または下側に大きな隙間が形成されていると、異物がこの隙間を通過し、弁開口部に引っ掛かりを生じる虞があるが、前記構成によれば、そのような虞を適切に解消することが可能である。
【0017】
本発明において、好ましくは、前記補助壁部は、前記弁室の上壁部または下壁部に一体形成されている。
【0018】
このような構成によれば、開閉弁の構成部材の増加を抑制し得ることとなり、開閉弁の生産コストが大幅に上昇する不具合を回避することができる。
【0019】
本発明において、好ましくは、前記補助壁部は、前記弁ケーシングの各部とは別体で形成されている。
【0020】
このような構成によれば、従来既存の開閉弁に前記補助壁部を組み込むことにより、本発明が意図する開閉弁の構成を実現することが可能である。したがって、製作が容易である。
【0021】
本発明において、好ましくは、前記補助壁部の外周面は、凹凸面とされている。
【0022】
このような構成によれば、1次流路の第1の開口部から弁室に流れ込んだ液体が、隙間状流路を流れる際に、この液体中の異物が、補助壁部の外周面の凹凸面に捕捉される作用が期待できる。したがって、異物の噛み込み防止をより高めることができる。なお、前記凹凸面に異物が比較的多く捕捉されたとしても、フィルタの目詰まりのような不具合(液体の流れ阻害)はない。
【0023】
本発明の第2の側面により提供される浴室洗浄装置は、液体の洗剤を流通させるための洗剤流路と、この洗剤流路に設けられた開閉弁と、を備えている、浴室洗浄装置であって、前記開閉弁として、本発明の第1の側面により提供される開閉弁が用いられていることを特徴としている。
【0024】
このような構成によれば、本発明の第1の側面により提供される開閉弁について述べたのと同様な効果が得られ、開閉弁における異物の噛み込みに起因する洗剤の漏れを適切に防止することができる。
【0025】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係る浴室洗浄装置の概略構成の一例を示す説明図である。
図2】本発明に係る開閉弁の一例を示す要部断面図である。
図3図2のIII-III断面図である。
図4図2のIV-IV断面図である。
図5】本発明の他の例を示す要部断面図である。
図6】本発明の他の例を示す要部断面図である。
図7開閉弁の他の例を示す要部断面図である。
図8】本発明の他の例を示す要部断面図である。
図9開閉弁の他の例を示す要部平面断面図である。
図10開閉弁の他の例を示す要部平面断面図である。
図11】従来技術の一例を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
なお、図11に示した従来技術と同一または類似の要素には、従来技術と同一の符号を適宜用いることとする。
【0028】
図1に示す浴室洗浄装置Aは、その基本的な構成は、従来既知のものと同様であり、浴槽1に湯水を噴射するための洗浄ノズル20に繋がった湯水流路2に、ベンチュリ部21が設けられている。このベンチュリ部21には、洗剤(液体)用のタンク39に上端が接続された洗剤流路3が開閉弁Vを介して接続されている。開閉弁Vの開状態において、ベンチュリ部21に湯水が流通すると、ベンチュリ効果によって洗剤流路3から湯水流路2に洗剤が進入し、洗剤が混入した湯水が洗浄ノズル20から浴槽1に向けて噴射される。
【0029】
タンク39の洗剤投入部38には、フィルタ38aが設けられており、このフィルタ38aを通過した異物が、開閉弁Vに到達することにより、噛み込みを生じる虞がある。これに対し、開閉弁Vは、本発明に係る開閉弁の具体例に相当し、後述するように、噛み込み防止対策が図られている。
湯水流路2には、開閉弁29や流量制御弁(不図示)などが設けられているが、開閉弁29は、本発明に係る開閉弁の具体例には相当しない。ただし、この開閉弁29に本発明を適用してもよい。
【0030】
次に、開閉弁Vの構成について説明する。
図2に示すように、開閉弁Vは、湯水流路2のベンチュリ部21と一部が一体化されている。ベンチュリ部21は、湯水流路2の一部に、絞り部21aが設けられた構成であり、この絞り部21aに、開閉弁Vの2次流路3bが連通している。
【0031】
開閉弁Vは、電磁開閉弁であり、弁ケーシング4、弁体5、および補助壁部6を備えている。弁ケーシング4は、洗剤流路3の一部を構成する1次流路3a、弁室44、および2次流路3bを形成する弁ケーシング本体部40に、弁室44の上側を閉塞する上壁部41が取付けられた構成である。弁ケーシング本体部40および上壁部41は、たとえば樹脂製である。
1次流路3aの終端の第1の開口部31は、弁室44の周壁部43に開設されている。弁室44の下壁部42には、2次流路3bの上端の弁開口部32、およびこれを囲む上向きボス状の弁座45が設けられている。弁体5は、バネ50および電磁ソレノイド部51の作用により、弁開口部32および弁座45に対向して上下方向に往復動自在であり、弁開口部32を開閉可能である。
【0032】
補助壁部6は、上壁部41に一体形成されており、この上壁部41から下向きに突出し
ている。補助壁部6は、弁開口部32、弁座45、および弁体5の三者の全周を囲む円筒状であり、それら三者と第1の開口部31との相互間を遮り、かつ周壁部43との相互間に、隙間状流路49を形成している。この隙間状流路49は、図4によく表れているように、平面視円形リング状である。
補助壁部6には、隙間状流路49を流れる洗剤を弁開口部32に導くための部位として、第2の開口部62が設けられている。具体的には、この第2の開口部62は、図3に示すように、補助壁部6の下端部寄りの位置に偏って設けられ、たとえば第1の開口部31と略同等の開口面積である。
【0033】
図4によく表れているように、第2の開口部62は、補助壁部6のうち、第1の開口部31寄りの半部Saとは反対側の半部Sbに設けられている。より好ましくは、第2の開口部62は、第1の開口部31とは、弁開口部32を挟んだ反対側の位置に設けられており、本実施形態においては、そのような構成とされている。
補助壁部6の上下高さは、弁室44の上下幅と略同一とされ、補助壁部6の下端部は、下壁部42に接触または接近している。好ましくは、補助壁部6の下端部は、下壁部42に接触し、それらの相互間に隙間が形成されないように構成されている。このことにより、第1の開口部31から弁室44内に洗剤とともに入り込んだ異物が、補助壁部6の下端部と下壁部42との隙間を通過して弁開口部32にショートカットで到達することが適切に防止される。これは、異物の噛み込みを防止する上で好ましい。
【0034】
次に、前記した開閉弁Vを備えた浴室洗浄装置Aの作用について説明する。
【0035】
まず、開閉弁Vを図2に示す弁開状態とした場合、1次流路3aから弁室44に流入した洗剤は、補助壁部6と周壁部43との相互間に形成された隙間状流路49を、図4の矢印Naで示すように流れ、かつその後に矢印Nbで示すように、第2の開口部62を通過することにより、弁開口部32に到達し、2次流路3b側に流れていく。簡略すると、洗剤は、補助壁部6を迂回するように流れてから弁開口部32に到達するようになっており、第1の開口部31から弁開口部32に向けて直線的あるいは直接的には流れない。
【0036】
このため、洗剤中に、たとえば毛髪などの腰のある繊維状の異物が混入していたとしても、この異物が、弁開口部32の位置から第1の開口部31に跨がった引っ掛かり状態にならないことは勿論のこと、弁開口部32の位置まで到達することは難しいため、弁開口部32およびその近傍位置において腰のある繊維状の異物に引っ掛かりを生じることもない。
一方、繊維状の異物であって、腰のない軟質なものについては、洗剤の流れに乗って弁開口部32の位置まで円滑に流れてから2次流路3bに流れていく。したがって、この異物が弁開口部32およびその近傍位置において引っ掛かりを生じることもない。
【0037】
このようなことから、開閉弁Vを閉状態とする際に、繊維状の異物の噛み込みが発生することを適切に防止または抑制することができる。微小な粒状の異物については、弁開口部32の位置で引っ掛かりを生じることはないため、このような異物の噛み込みが発生することはない、または殆どない。
開閉弁Vに異物の噛み込みを生じると、洗剤が湯水流路2に漏出し、湯水流路2を経由して浴槽1に流出する虞があるが、本実施形態によれば、そのような虞を適切に解消することが可能である。
【0038】
また、本実施形態によれば、第2の開口部62が、補助壁部6の下端部寄りの位置に設けられているため、洗剤中の異物が洗剤よりも比重が小さく、弁室44の上部寄りに浮くものである場合、この異物は、第2の開口部62を通過し難くなる。したがって、比重の小さい異物が、弁開口部32およびその周辺部に引っ掛かりを生じることを、より徹底し
て防止することができる。
【0039】
1次流路3aから弁室44に流れ込んだ洗剤に含まれた異物のうち、第2の開口部62を通過しない異物は、隙間状流路49内に捕捉されるが、この隙間状流路49は、流路面積が大きい。したがって、前記した異物の存在によって、隙間状流路49に詰まりが容易に発生することもない。開閉弁Vをいわゆるメンテナンスフリーとすることが可能である。
【0040】
図5図6図8は、本発明の他の実施形態を示し図7図9図10は、開閉弁の他の例を示している。これらの図において、前記実施形態と同一または類似の要素には、前記実施形態と同一の符号を付すこととし、重複説明は省略する。
【0041】
図5図8に示す開閉弁Va~Vdは、補助壁部6a~6dが弁ケーシング4の各部とは別部材として構成された上で、弁室44に組み込まれている。
【0042】
図5に示す開閉弁Vaの補助壁部6a自体の形状やサイズは、前記した補助壁部6と同様である。このため、図5に示す実施形態においても、補助壁部6aの存在により、異物の噛み込み防止効果を適切に得ることが可能である。また、この開閉弁Vaは、従来既存の開閉弁に補助壁部6aを組み込むことによって簡易に作製することができるため、便利である。
【0043】
図6に示す開閉弁Vbの補助壁部6bは、第2の開口部62が補助壁部6bの上端部寄りに設けられた構成である。
本実施形態によれば、洗剤よりも比重が大きく、かつ弁室44の下部寄りの位置に沈む異物は、第2の開口部62を容易に通過しないこととなる。したがって、比重が大きい異物が弁開口部32およびその近傍部分において引っ掛かりを生じることを防止する上で好ましいものとなる。
【0044】
図7に示す開閉弁Vcにおいては、第2の開口部62が補助壁部6cの上端から下端まで一連に延びたスリット状とされている。
本実施形態によれば、先に述べた開閉弁V,Va,Vbと比較すると、異物が第2の開口部62を通過し易くなるが、このような構成であっても、本発明が意図する作用を得ることが可能である。
【0045】
図8に示す開閉弁Vdにおいては、補助壁部6dの外周面が凹凸面63とされている。この凹凸面63は、たとえば小突起状の複数の凸部63aが縦横に規則的または不規則に並んで設けられた構成であるが、これ以外の粗面も含まれる。
本実施形態によれば、弁室44に流入した洗剤中の異物を、補助壁部6dの凹凸面63に捕捉させることが可能であり、異物が繊維状である場合には、とくにこの異物が凹凸面63に絡み付き易くなる。その結果、繊維状などの異物が、第2の開口部62を通過して弁開口部32に到達する可能性が低くなり、このことによって開閉弁Vdにおける異物の噛み込み防止効果を一層高くすることができる。
【0046】
図9および図10に示す開閉弁Ve,Vfにおいては、補助壁部6e,6fが、平面断面視半円弧状、または1/4円弧状とされており、先に述べた第2の開口部に相当する開口部は存在しない。ただし、弁室44のうち、補助壁部6e,6fの第1の開口部31とは反対側の領域Sc,Sdは、弁開口部32と連通した領域となっている。このため、第1の開口部31から弁室44に流入した洗剤は、隙間状流路49を通過して前記した領域Sc,Sdに達すると、弁開口部32に向かうこととなる。
【0047】
開閉弁Ve,Vfは、先に述べた開閉弁V,Va~Vdと比較すると、隙間状流路49の距離がかなり短いものの、第1の開口部31から弁開口部32に向けて洗剤が直線的または直接的に流れないようにしているため、図11に示した態様、およびこれに類する態様で異物の噛み込みが発生することを適切に防止することが可能である
【0048】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る開閉弁、およびこれを備えた浴室洗浄装置の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0049】
補助壁部を弁ケーシングの構成部材に一体形成する場合、弁室の上壁部に代えて、弁室の下壁部に補助壁部を一体形成することもできる。
補助壁部に第2の開口部を設ける場合、この第2の開口部を複数設けることも可能であり、第2の開口部の具体的な形状、開口面積、配置、数などは種々に変更することが可能である。
【0050】
本発明に係る開閉弁は、浴室洗浄装置の洗剤流路に設けられるいわゆる洗剤バルブとして用いるのに適するが、具体的な用途は限定されない。したがって、開閉弁内を流れる液体も、洗剤に限らず、洗剤以外の様々な液体とすることができる。
【符号の説明】
【0051】
A 浴室洗浄装置
V,Va~Vf 開閉弁
Sc,Sd 弁室のうち、補助壁部の第1の開口部とは反対側の領域
3 洗剤流路
3a 1次流路
3b 2次流路
31 第1の開口部(1次流路の)
32 弁開口部
4 弁ケーシング
41 上壁部(弁室の)
42 下壁部(弁室の)
43 周壁部(弁室の)
44 弁室
45 弁座
49 隙間状流路
5 弁体
6,6a~6f 補助壁部
62 第2の開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11