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特許7492113温水利用設備および温水利用設備の遠隔制御システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】温水利用設備および温水利用設備の遠隔制御システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 11/07 20060101AFI20240522BHJP
   F24H 15/104 20220101ALI20240522BHJP
   F24H 15/108 20220101ALI20240522BHJP
   F24H 15/457 20220101ALI20240522BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20240522BHJP
   H04Q 9/00 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
G06F11/07 175
G06F11/07 140A
F24H15/104
F24H15/108
F24H15/457
H02J13/00 301A
H02J13/00 301D
H04Q9/00 311J
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020029738
(22)【出願日】2020-02-25
(65)【公開番号】P2021135610
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】茶谷 幸寛
(72)【発明者】
【氏名】吉▲高▼ 豊
(72)【発明者】
【氏名】山田 耕平
(72)【発明者】
【氏名】古川 隆史
(72)【発明者】
【氏名】津川 明彦
【審査官】石坂 知樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-134955(JP,A)
【文献】特開2004-138379(JP,A)
【文献】特開2017-055302(JP,A)
【文献】特開2020-016344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 11/07
H04Q 9/00
H02J 13/00
F24H 15/104
F24H 15/108
F24H 15/457
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部通信網を介してサーバとの通信が可能な温水利用設備であって、
少なくとも給湯機能を含む複数の機能を有する熱源機と、
前記熱源機に発生したエラーを検出するための検出手段と、
検出した前記エラーの内容および前記エラーの発生条件の少なくとも1つに基づいて、前記熱源機のエラーの状態を示すステータス情報を生成するための生成手段と、
前記ステータス情報を前記サーバに対して送信するための通信手段とを備え、
前記ステータス情報は、前記エラーの解除操作による前記熱源機の復帰後における各前記複数の機能の使用の可否を示す情報を含む、温水利用設備。
【請求項2】
通信線を介して前記熱源機と通信するとともに、前記外部通信網を介して前記サーバと通信するように構成されたリモコンをさらに備え、
前記通信手段は、前記リモコンを経由して前記ステータス情報を前記サーバに対して送信する、請求項1に記載の温水利用設備。
【請求項3】
前記生成手段は、さらに、検出した前記エラーの内容を示すエラー情報を生成し、
前記通信手段は、前記ステータス情報とともに前記エラー情報を前記サーバに対して送信する、請求項1または2に記載の温水利用設備。
【請求項4】
前記サーバと、
請求項1からのいずれか1項に記載の温水利用設備とを備え、
前記サーバは、受信した前記ステータス情報に基づく通知を、前記外部通信網を介してユーザの携帯端末装置に対して送信する、温水利用設備の遠隔制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温水利用設備および温水利用設備の遠隔制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2018-185686号公報(特許文献1)には、需要家施設における電力需給システムが開示される。この電力需給システムを管理する電力管理装置は、同システムにて運転エラーの発生が検出されると、運転エラーの種類に応じたエラーコードを、端末装置を経由してサーバへ送信する。サーバは、取得したエラーコードに基づいて、運転エラーの復旧指示を含む対処情報を生成して端末装置へ送信する。端末装置が復旧指示を取得することで、保守事業者によらず運転エラーから復旧することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-185686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載される電力需給システムでは、サーバは、エラーコードから対処情報を生成するために、エラーコードと対処情報との対応関係が登録されたデータベースを構築することが必要となる。
【0005】
従来、熱源機を有する温水利用設備の遠隔制御システムにおいても、特許文献1と同様の遠隔監視機能を搭載したものがある。このような遠隔制御システムでは、熱源機にてエラーが発生した場合、エラーの内容を示すエラーコードが、温水利用設備からインターネットなどの通信網を経由してサーバへ送信される。サーバは、受信したエラーコードに基づいて、温水利用設備における熱源機のエラーの状態を判断し、判断した熱源機のエラーの状態を、通信網を経由して温水利用設備のユーザが所有する携帯端末装置に対して通知する。これによると、サーバからの通知を受け取ったユーザは、熱源機のエラーの状態に基づいて、エラーが早急な修理の依頼を必要とするものか、あるいはユーザ側で対処できるものかを判断することができる。
【0006】
その一方で、上記の遠隔制御システムでは、エラーコードに対応するエラーの状態に関する情報は、サーバに設けられたデータベースに保存されている。エラーコードに対応するエラーの状態は熱源機の機種によって異なる場合があるため、データベースでは、機種ごとにエラーコードとエラーの状態とを紐づけて登録しておく必要がある。そのため、新たな機種が市場に投入されるごとに、サーバ側ではデータベースを更新する作業が必要となり、サーバ側の作業が煩雑なものとなることが懸念される。
【0007】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、温水利用設備の遠隔制御システムにおいて、サーバ側の作業負荷を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある局面では、通信網を介してサーバとの通信が可能な温水利用設備であって、少なくとも給湯機能を含む複数の機能を有する熱源機と、熱源機に発生したエラーを検出するための検出手段と、検出したエラーの内容およびエラーの発生条件の少なくとも1つに基づいて、熱源機のエラーの状態を示すステータス情報を生成するための生成手段と、ステータス情報をサーバに対して送信するための通信手段とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、温水利用設備の遠隔制御システムにおいて、サーバ側の作業負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施の形態に係る温水利用設備の遠隔制御システムの構成例を示す概略図である。
図2】温水利用設備の構成例を示す概略図である。
図3】本実施の形態に係る遠隔制御システムが有する遠隔操作機能を説明するための機能ブロック図である。
図4】本実施の形態に係る温水利用設備の遠隔制御を説明するためのフローチャートである。
図5】エラーコードの一覧を示すテーブルである。
図6】ステータスコードの一覧を示すテーブルである。
図7】エラーコード、エラー発生条件およびステータスコードの対応関係を示すテーブルである。
図8】ステータスコードとステータス情報との対応関係を示すテーブルである。
図9】比較例に係る遠隔制御システムの構成例を示す概略図である。
図10】データベースに保存されているテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は原則的に繰返さないものとする。
【0012】
(温水利用設備の遠隔制御システムの構成例)
図1は、本実施の形態に係る温水利用設備の遠隔制御システムの構成例を示す概略図である。
【0013】
図1を参照して、本実施の形態に係る温水利用設備の遠隔制御システム5は、複数の温水利用設備100と、複数のインターフェイス機器(I/F)20と、外部通信網40と、サーバ50とを備える。
【0014】
温水利用設備100は、例えば、温水暖房機能および風呂機能付給湯装置である。温水利用設備100は、給湯機能を有するとともに、図示しない浴槽への湯張りおよび浴槽の追い焚き、床暖房パネル等の温水暖房端末への暖房水の供給等の機能を有している。図2は、温水利用設備100の構成例を示す概略図である。
【0015】
図2を参照して、温水利用設備100は、熱源機110と、リモートコントローラ(以下、単に「リモコン」とも称する)120とを有する。熱源機110からの湯は、複数の給湯口111に接続された配管を経由して、給湯先へ送出される。給湯先には、カラン、浴室内に配設された浴槽、および温水暖房端末(いずれも図示せず)が含まれる。
【0016】
熱源機110の内部には、回路基板115が装着される。回路基板115には、熱源機110を駆動および制御するためのコントローラ130が搭載される。コントローラ130によって、図示しない燃焼器に対する燃料ガスの供給等を制御するための電磁弁、および燃料ガスと混合される空気を供給するための給気ファン等が制御される。
【0017】
リモコン120は、例えば、2心通信線105によって、熱源機110と接続される。リモコン120は、表示画面およびスイッチを有する。表示画面に従ってスイッチを操作することにより、湯張りおよび給湯設定温度等を設定することができる。
【0018】
リモコン120は、台所および/または浴室に配することができる。リモコン120を用いて、ユーザは、温水利用設備100の各機能について種々の設定を行なうことができる。
【0019】
図1に戻って、複数の温水利用設備100には、製品の機能または種類(機種)が互いに異なる2以上の温水利用設備が含まれている場合がある。図1の例では、複数の温水利用設備100に、複数の機種(機種A,機種B・・・機種X)の温水利用設備100が含まれているものとする。
【0020】
複数の温水利用設備100の各々は、I/F20に通信接続されている。I/F20は、リモコン120を含む一定範囲内に存在する機器を、外部通信網40を介してサーバ50に通信接続するための通信中継器である。例えば、I/F20は、いわゆる無線LAN(Local Area Network)ルータによって構成することができる。外部通信網40は、代表的にはインターネットである。以下では、外部通信網40を、単に、インターネット40とも称する。
【0021】
サーバ50は、インターネット40に接続されて、温水利用設備100に対する遠隔制御(遠隔操作および遠隔監視)を管理するための機能を有する。リモコン120は、無線通信によりI/F20に通信接続されることで、インターネット40を介して、サーバ50と通信することができる。これにより、温水利用設備100はサーバ50と通信接続される。
【0022】
サーバ50に対しては、スマートフォンまたはタブレット端末等の携帯端末装置30から通信接続することも可能である。携帯端末装置30がI/F20と接続可能な範囲に存在する場合には、無線通信によってI/F20と接続されることにより、携帯端末装置30はサーバ50と通信可能である。また、携帯端末装置30が屋外にある場合には、図示しないルータまたは基地局70を介してインターネット40に接続することによって、サーバ50と通信することができる。
【0023】
このように、ユーザは、リモコン120の操作の他、携帯端末装置30を用いて、I/F20と接続可能な範囲の内部および外部の両方において、サーバ50とアクセスすることによって、温水利用設備100に対する遠隔制御を行なうことも可能である。
【0024】
リモコン120および携帯端末装置30には、温水利用設備100のアプリケーションプログラムをインストールすることができる。例えば、アプリケーションプログラムは、サーバ50からダウンロードされた後、インストールされる。遠隔制御システム5では、温水利用設備100の設置工事時に、リモコン120からサーバ50への通信接続を伴う初期設定が実行される。例えば、この初期設定の際に、サーバ50から制御プログラムおよびアプリケーションプログラムを併せてダウンロードすることが可能である。
【0025】
図3は、本実施の形態に係る遠隔制御システム5が有する遠隔操作機能を説明するための機能ブロック図である。
【0026】
図3を参照して、温水利用設備100は、熱源機110およびリモコン120を備える。熱源機110は、コントローラ130、メモリ131、機器類132、センサ群134および通信部136を有する。コントローラ130は、代表的にはマイクロコンピュータによって構成される。通信部136は、2心通信線105を経由して、リモコン120(通信部121)との間で双方向のデータ通信を実行する。機器類132は、加熱のためのバーナや通流を制御するための弁等を含む。メモリ131には、熱源機110の動作を制御するためのプログラムが記憶される。センサ群134は、機器類132の動作を制御するための温度センサおよび流量センサを含む。
【0027】
コントローラ130は、メモリ131に格納されたプログラムを実行することによるソフトウェア処理によって、熱源機110の動作を制御する。具体的には、リモコン120に入力されたユーザからの運転指令が、リモコン120から2心通信線105を経由して、通信部136により受信されると、コントローラ130は、当該運転指令に従って熱源機110を動作させるように、センサ群134による検出値を用いて機器類132の動作を制御する。
【0028】
コントローラ130はさらに、センサ群134による検出値を用いて、機器類132およびセンサ群134の故障または異常(エラー)の発生を検出するように構成される。熱源機110のエラーの発生が検出されると、コントローラ130は、機器類132の動作を停止することにより、熱源機110の運転を強制的に停止する。
【0029】
コントローラ130は、熱源機110の運転停止とともに、発生したエラーの内容に関するエラー情報をリモコン120へ送信する。このエラー情報には、発生したエラーの内容を示す「エラーコード」が含まれる。
【0030】
コントローラ130はさらに、熱源機110のエラーの状態に関するステータス情報をリモコン120へ送信する。このステータス情報には、熱源機110のエラーの状態を示す「ステータスコード」が含まれる。本願明細書において、熱源機110のエラーの状態には、ユーザのエラー解除操作による熱源機110の復帰の可否に関する仕様、および復帰後における熱源機110の各種機能(給湯機能、追い焚き機能、暖房機能)の使用の可否が含まれている。エラー情報およびステータス情報の詳細について後述する。
【0031】
リモコン120は、通信部121,122と、コントローラ124と、メモリ125と、表示画面126と、スイッチ128とを有する。通信部121は、2心通信線105を経由して、熱源機110(通信部136)との間で双方向のデータ通信を実行する。スイッチ128は、代表的には、プッシュボタンやタッチボタンによって構成することができる。スイッチ128の操作に応じて電気信号がコントローラ124へ入力されることより、コントローラ124は、ユーザによるスイッチ128の操作を検知することができる。
【0032】
表示画面126は、コントローラ124による制御に従って、文字や線画等によるユーザが視認可能な情報を表示する。なお、表示画面126がタッチパネルによって構成される場合には、スイッチ128の一部または全部について、当該タッチパネル上にソフトウェア処理によって表示されるソフトスイッチとすることが可能である。
【0033】
コントローラ124は、代表的には、マイクロコンピュータによって構成される。コントローラ124は、メモリ125に格納されたプログラムを実行することによるソフトウェア処理によって、スイッチ128の操作に応じた運転指令を示す信号を、通信部121から熱源機110へ出力する。あるいは、コントローラ124は、表示画面126の表示内容を制御する。通信部122は、例えば無線LANモジュールによって構成される。通信部122は、I/F20を経由してインターネット40に通信接続されることにより、サーバ50(通信部52)との間で双方向のデータ通信を実行する。
【0034】
サーバ50は、通信部52、コントローラ54およびメモリ56を有する。通信部52は、インターネット40を介した通信機能を有する。コントローラ54は、代表的には、マイクロコンピュータによって構成される。メモリ56は、コントローラ54で実行されるプログラムを記憶するためのメモリであるROM(Read Only Memory)、コントローラ54でプログラムを実行する際の作業領域となるメモリであるRAM(Random Access Memory)および、大型の記憶装置の一例としてのHDD(Hard Disk Drive)を含む。
【0035】
サーバ50は、インターネット40およびI/F20を経由して、温水利用設備100との間でデータを授受することができる。温水利用設備100からサーバ50へは、設備情報、センサ情報、エラー情報およびステータス情報を送信することができる。設備情報は、温水利用設備100を特定する設備ID情報を含む。センサ情報は、センサ群134による検出値および、当該検出値から得られた情報を含む。エラー情報は、熱源機110で発生したエラーの内容に関する情報であり、エラーコードを含む。ステータス情報は、熱源機110のエラーの状態に関する情報であり、ステータスコードを含む。
【0036】
なお、サーバ50は、温水利用設備100からエラー情報およびステータス情報を受信した場合には、これらの情報に基づいて、温水利用設備100のユーザが所有する携帯端末装置30にエラー通知を行なうように構成される。このエラー通知では、サーバ50から携帯端末装置30へステータス情報が送信される。
【0037】
携帯端末装置30は、通信部32、制御部34およびタッチパネル36を有する。通信部32は、基地局70を経由してインターネット40に通信接続されることにより、サーバ50(通信部52)との間で双方向のデータ通信を実行する。制御部34は、マイクロコンピュータおよびメモリを含んで構成することができる。タッチパネル36は、サーバ50から取得した情報を表示させることができる。この情報には、上述したサーバ50からのエラー通知(ステータス情報を含む)が含まれている。
【0038】
タッチパネル36は、さらに、ユーザからの熱源機110の運転指令を受け付けることができる。タッチパネル36へ入力されたユーザ指令は、サーバ50にアップロードされる。サーバ50は、アップロードされたユーザ指令を、インターネット40およびI/F20を経由して温水利用設備100へ送信する。
【0039】
なお、温水利用設備100において、リモコン120は、サーバ50からユーザ指令をダウンロードすると、そのユーザ指令を熱源機110のコントローラ130に転送する。コントローラ130は、転送されたユーザ指令に従って機器類132の動作を制御する。
【0040】
このようにして、ユーザは、携帯端末装置30を用いて熱源機110を遠隔制御(遠隔操作および遠隔監視)することができる。
【0041】
以下では、本実施の形態に係る温水利用設備の遠隔制御について説明する。本実施の形態では、温水利用設備100で発生したエラーの遠隔監視を説明する。
【0042】
図4は、本実施の形態に係る温水利用設備の遠隔制御を説明するフローチャートである。図4に示されるように、本実施の形態に係る遠隔制御は、温水利用設備100およびサーバ50による処理が連動することよって実現される。
【0043】
図4を参照して、温水利用設備100のコントローラ130は、ステップ(以下、単に「S」と表記する)11により、熱源機110のセンサ群134からの出力信号(検出値)を取得する。センサ群134による検出値には、温度センサおよび流量センサによる検出値が含まれている。コントローラ130は、S12により、取得した検出値に基づいて、熱源機110にエラーが発生しているか否かを判定する。例えば、コントローラ130は、センサ群134による検出値の少なくとも1つが予め定められた許容値を超えている場合、熱源機110にエラーが発生していると判定する。
【0044】
コントローラ130は、エラーの発生が検出されると、S12をYES判定として、S13以降に処理を進める。コントローラ130は、S13では、機器類132の動作を停止することにより、熱源機110の運転を停止する。
【0045】
コントローラ130は、S14では、エラー発生条件を取得する。エラー発生条件には、エラーが発生したタイミングおよび/またはエラー発生時における熱源機110の運転モードが含まれる。エラー発生条件を取得するのは、同一のエラー内容であっても、エラーが発生したタイミングまたは、エラー発生時の熱源機110の運転モードによって、熱源機110のエラー状態が異なる場合があるためである。
【0046】
次に、コントローラ130は、S15により、エラー情報として、発生したエラーの内容を示すエラーコードを生成する。例えば、コントローラ130は、図5に示すテーブルを参照することにより、エラー内容に対応したエラーコードを生成する。図5は、エラーコードの一覧を示すテーブルである。図5のテーブルは、メモリ131に予め格納しておくことができる。
【0047】
図5のテーブルでは、熱源機110で発生し得る様々なエラーに対して、エラーコードが設定されている。熱源機110のエラーは、機器類132のうちの一部の機器の動作不良または、センサ群134の一部のセンサの異常などにより発生し得る。例えば、エラーには、給湯出湯サーミスタ異常、燃焼用ファン異常、暖房循環ポンプ異常、ふろ循環不良などが含まれる。S15では、コントローラ130は、図5に示す複数のエラーコードの中から、エラー内容に対応するエラーコードを選出する。
【0048】
次に、コントローラ130は、S16により、ステータス情報として、熱源機110のエラー状態を示すステータスコードを生成する。具体的には、コントローラ130は、図6のテーブルを参照することにより、熱源機110のエラー状態に対応したステータスコードを生成する。図6は、ステータスコードの一覧を示すテーブルである。図6のテーブルは、メモリ131に予め格納しておくことができる。
【0049】
図6のテーブルでは、熱源機110のエラー状態として、ユーザのエラー解除操作による熱源機110の復帰の可否、および復帰後の給湯機能、追い焚き機能および暖房機能の各々の使用の可否が設定されている。本願明細書において、「熱源機110の復帰」とは、エラーの検出によって熱源機110の運転を停止させて熱源機110を安全停止モードに移行した状態から、安全停止モードが解除された状態(運転待機状態または運転停止状態)に戻ることを意味する。なお、図中の「可」は使用可能、または復帰可能であることを示し、図中の「不可」は使用不可能、または復帰不可能であることを示している。ユーザによるエラー解除操作には、リモコン120に配されている運転スイッチ(運転SWとも称する)を一旦「切」とし、再び「入」にする操作が含まれる。
【0050】
熱源機110には、発生したエラー内容に応じて、様々なエラー状態が存在する。例えば、給湯栓の開栓時に出湯するための給湯回路において、缶体からの出湯温度を検出する温度センサの故障、または燃焼バーナの燃焼異常などが発生した場合には、熱源機110の運転を禁止して速やかな修理が必要であるため、ユーザのエラー解除操作による熱源機110の復帰が不可能とされる。
【0051】
また、浴槽内の湯を加熱循環するための追い焚き回路において、例えば、追い焚き循環ポンプまたは、風呂熱交換器の入力側または出力側の温度センサの故障が生じた場合には、修理までの間、追い焚き回路が使用不可能となるものの、給湯回路および暖房回路は使用可能である。したがって、ユーザのエラー解除操作による熱源機110の復帰が可能とされるとともに、復帰後に給湯機能および暖房機能が使用可能とされる。
【0052】
一方、温水暖房端末に対して熱媒である温水を循環供給するための暖房回路において、例えば、暖房循環ポンプの故障が生じた場合には、暖房回路が使用不可能となるものの、給湯回路および追い焚き回路は使用可能であることから、ユーザのエラー解除操作による熱源機110の復帰が可能とされるとともに、復帰後に給湯機能および追い焚き機能が使用可能とされる。
【0053】
ただし、熱源機110の機種によっては、暖房循環ポンプの故障が生じた場合に、暖房回路を利用する追い焚き回路も使用不可能とするものがある。この場合には、復帰後において、暖房機能とともに追い焚き機能が使用不可能とされる。さらに、熱源機110の機種によっては、上記の場合において、暖房機能および追い焚き機能とともに、給湯回路から追い焚き回路を経由させて浴槽へ湯張りする風呂注湯機能を使用不可能とするものがある。
【0054】
このように熱源機110の機種によっても、ソフトウェアおよび/またはハードウェアの構成の違いにより、同一のエラー内容に対応するエラー状態が異なる場合がある。例えば、熱源機110の機種には、1つの燃焼部によって給湯用熱交換器と温水暖房用熱交換器との双方を加熱可能に構成されたものがある。この機種では、給湯器用熱交換器側でエラー(例えば、缶体温度センサ異常)が生じた場合には、給湯用熱交換器側の運転(例えば、給湯運転および風呂注湯運転)を禁止するのみならず、温水暖房用熱交換器側の運転(例えば、暖房運転および風呂追い焚き運転)をも禁止するように構成されている。
【0055】
一方、別の機種として、給湯器用熱交換器および温水暖房用熱交換器の各々が燃焼部を備えるものがある。この機種では、給湯器用熱交換器側でエラー(例えば、缶体温度センサ異常)が生じた場合であっても、温水暖房用熱交換器側の運転(例えば、暖房運転および風呂追い焚き運転)を許容するように構成されている。
【0056】
さらには、同一機種であり、かつ同一のエラー内容であっても、エラー発生条件(エラー発生のタイミングおよび、エラー発生時の熱源機110の運転モードなど)によって、エラー状態が異なる場合がある。
【0057】
図6では、この様々なエラー状態に対して、ステータスコードが設定されている。例えば、ステータスコードST1に対応するエラー状態は、ユーザのエラー解除操作による熱源機110の復帰が可能であり、かつ、復帰後において、給湯機能、追い焚き機能および暖房機能のいずれも使用可能であることを示している。ステータスコードST2に対応するエラー状態は、ユーザのエラー解除操作による熱源機110の復帰が可能であるが、復帰後において、追い焚き機能および暖房機能が使用可能であり、給湯機能が使用不可能であることを示している。
【0058】
これらのステータスコードに対し、ステータスコードSTnに対応するエラー状態は、ユーザのエラー解除操作による熱源機110の復帰が不可能であり、よって、給湯機能、追い焚き機能および暖房機能がいずれも使用不可能であることを示している。すなわち、ステータスコードSTnに対応するエラー状態は、エラー発生によってその後の熱源機110の運転が禁止されることを示している。
【0059】
コントローラ130は、S15で生成したエラーコードおよび、S14で取得したエラー発生条件に基づいて、図6に示す複数のステータスコードの中から、熱源機110のエラー状態に対応したステータスコードを選出する。具体的には、コントローラ130は、予め設定されている、エラーコード、エラー発生条件およびステータスコードの対応関係(図7参照)を参照することにより、エラーコードおよびエラー発生条件に基づいてステータスコードを選出することができる。
【0060】
図7は、エラーコード、エラー発生条件およびステータスコードの対応関係を示すテーブルである。図7中のE1,E2,・・・はエラーコードを示し、図7中のC1,C2,・・・はエラー発生条件を示している。エラーコードは、図5に示した複数種類のエラーコードに対応する。エラー発生条件には、エラーが発生したタイミングおよび/またはエラー発生時の運転モードが設定されている。そして、エラーコードおよびエラー発生条件の組合せに対して、ステータスコードが設定されている。ステータスコードは、図6に示したステータスコードに対応する。図7のテーブルは、メモリ131に予め格納しておくことができる。
【0061】
コントローラ130は、図7のテーブルから、S15で生成したエラーコードおよび、S14で取得したエラー発生条件の組合せに対応するステータスコードを選出する。コントローラ130は、図4のS17により、温水利用設備100の設備ID情報とともに、エラーコードおよびステータスコードをサーバ50へ送信する。
【0062】
S17では、コントローラ130は、設備ID情報、エラーコードおよびステータスコードを、リモコン120、I/F20およびインターネット40を経由してサーバ50へ送信することができる。なお、リモコン120が通信部122を有さず、リモコン120とは別体に通信部122(例えば、無線LANモジュール)が設けられている場合には、コントローラ130は、設備ID情報、エラーコードおよびステータスコードを、この通信部122、I/F20およびインターネット40を経由してサーバ50へ送信することができる。
【0063】
なお、本実施の形態では、エラーコードおよびエラー発生条件に基づいてステータスコードを生成する構成例について説明したが、エラーコードとステータスコードとを紐付けたテーブルを予め作成しておくことにより、エラーコードに基づいてステータスコードを生成する構成とすることも可能である。あるいは、エラー発生条件とステータスコードとを紐付けたテーブルを予め作成しておくことにより、エラー発生条件に基づいてステータスコードを生成する構成としてもよい。
【0064】
また、本実施の形態では、熱源機110のコントローラ130が図4に示すS11~S17の処理を実行する構成例について説明したが、S11~S17の処理の少なくとも一部をリモコン120のコントローラ124が実行する構成としてもよい。すなわち、コントローラ130およびコントローラ124のいずれか一方または、コントローラ130およびコントローラ124によって、「検出手段」、「生成手段」および「通信手段」を実現することができる。
【0065】
サーバ50は、温水利用設備100からの設備ID情報、エラーコードおよびステータスコードを受信すると、S21をYES判定として、S22以降の処理を起動する。サーバ50のコントローラ54は、S22では、受信したエラーコードおよびステータスコードを、設備ID情報と紐付けてメモリ56に保存する。
【0066】
コントローラ54は、S23では、受信したステータスコードに基づいて、熱源機110のエラー状態を示すステータス情報を生成する。図8は、ステータスコードとステータス情報との対応関係を示すテーブルである。図8に示すテーブルは、メモリ56に予め格納しておくことができる。
【0067】
図8に示すように、各ステータスコードは、熱源機110のエラー状態を示すメッセージに変換されている。コントローラ54は、例えば、ステータスコードST1を受信した場合には、ステータス情報として、「(リモコン120の)運転SWの「切」「入」を行なうことにより熱源機110を復帰可能です」というメッセージを生成する。または、ステータスコードST2を受信した場合には、コントローラ54は、ステータス情報として、「運転SWの「切」「入」を行なうことにより追い焚き機能および暖房機能のみ使用可能です」というメッセージを生成する。ステータスコードSTnを受信した場合には、コントローラ54は、ステータス情報として、「運転SWの「切」「入」による熱源機110の復帰が不可能です」というメッセージを生成する。この場合、コントローラ54は、当該メッセージとともに、「修理が必要です」というメッセージを生成することができる。
【0068】
図4に戻って、コントローラ54は、S24により、生成したステータス情報を、温水利用設備100のユーザが所有する携帯端末装置30へ送信する。携帯端末装置30は、サーバ50からステータス情報を受信すると、S31をYES判定として、S32の処理を起動する。携帯端末装置30の制御部34は、S32では、受信したステータス情報をタッチパネル36に表示させる。
【0069】
このようにして、熱源機110にエラーが発生した場合には、温水利用設備100からサーバ50を経由して携帯端末装置30に対して、熱源機110のステータス情報が通知される。これによると、ユーザは、エラー解除操作を行なうことで修理までの間に使用を継続できる熱源機110の機能を知ることができる。あるいは、ユーザは、エラー解除操作によっても熱源機110が復帰不能であるため、早急に熱源機110を修理する必要があることを知ることができる。
【0070】
また、温水利用設備100が熱源機110のエラー情報(エラーコード)とともにステータス情報(ステータスコード)を生成してサーバ50へ送信することによって携帯端末装置30にステータス情報を通知できることから、エラー通知におけるサーバ50の負担を軽減することができる。
【0071】
以下に、図9の比較例を参照しながら、本実施の形態の作用効果について説明する。図9は、比較例に係る遠隔制御システムの構成例を示す概略図である。
【0072】
比較例に係る遠隔制御システム500は、基本的構成に関しては、本実施の形態に係る遠隔制御システム5と同様である。ただし、エラーが発生した際の温水利用設備100およびサーバ50による処理が、本実施の形態における温水利用設備100およびサーバ50による処理とは異なる。
【0073】
図9を参照して、比較例に係る遠隔制御システム500では、温水利用設備100は、熱源機のエラーが発生した場合には、設備ID情報とともに、エラー情報(エラーコード)および熱源機の機種を示す情報(以下、機種情報とも称する)をI/F20およびインターネット40を経由してサーバ50へ送信する。エラー情報とともに機種情報を送信するのは、熱源機のエラー状態は、熱源機のエラー内容以外に、熱源機の機種によっても異なる場合があるためである。
【0074】
サーバ50にはデータベース55が接続されている。サーバ50は、温水利用設備100からエラー情報および機種情報を受信すると、エラー情報および機種情報を用いて、データベースに対してステータス情報の問合せを行なう。
【0075】
データベース55には、ステータス情報の生成に必要な情報が予め登録されている。具体的には、データベース55には、エラー情報および機種情報と、ステータス情報との対応関係を設定したテーブルが保存されている。図10は、データベース55に保存されているテーブルを示す。図10に示すように、テーブルには、熱源機の機種ごとに、エラー情報(エラーコード)とステータス情報との対応関係が設定されている。同テーブルによると、同一のエラーコードであっても、熱源機の機種によってステータス情報が異なることが分かる。
【0076】
データベース55は、図10のテーブルを参照することにより、エラーが発生した熱源機の機種およびエラーコードに基づいてステータス情報を生成し、生成したステータス情報をサーバ50へ送信する。サーバ50は、受信したステータス情報を、基地局70を経由して携帯端末装置30へ送信する。
【0077】
このように比較例に係る遠隔制御システム500は、熱源機の機種ごとに、エラーコードとステータス情報とを紐付けてデータベース55に登録するように構成されるため、温水利用設備100に用いられる熱源機の機種が増えるごとに、新たな機種におけるエラーコードとステータス情報とを紐付けて登録しておく必要が生じる。そのために、新たな機種が市場に投入されるごとに、データベース55を更新する作業が必要となる。通常、エラーコードは数百種類にも及ぶことがあるため、このようなデータベースの更新作業は煩雑となることが懸念される。
【0078】
これに対して、本実施の形態に係る遠隔制御システム5は、温水利用設備100がエラー情報および/またはエラー発生条件に基づいてステータス情報を生成してサーバ50へ送信するように構成されているため、サーバ50は、受信したステータス情報に基づいた通知メッセージを生成して携帯端末装置30へ送信する処理を行なうだけでよい。その結果、データベースの設置が不要となるため、上述した新機種の投入に伴うデータベースの更新作業も不要となる。
【0079】
なお、上述した実施の形態では、熱源機110として温水暖房機能および風呂機能付給湯装置を備える構成を例示したが、本発明は熱源機110が温水暖房機能を備えない風呂機能付給湯装置である遠隔操作システムにも適用することも可能である。
【0080】
また、熱源機110としては、燃焼加熱式の給湯装置に限らず、ヒートポンプ加熱式の給湯装置または、燃料電池の排熱回収式の給湯装置等を適用することができる。
【0081】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0082】
5 遠隔制御システム、30 携帯端末装置、40 外部通信網(インターネット)、50 サーバ、100 温水利用設備、105 2心通信線、110 熱源機、120 リモコン。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10