(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】チェーンガイド
(51)【国際特許分類】
F16H 7/08 20060101AFI20240522BHJP
F16H 57/04 20100101ALI20240522BHJP
【FI】
F16H7/08 B
F16H57/04 C
F16H57/04 J
(21)【出願番号】P 2020040871
(22)【出願日】2020-03-10
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003355
【氏名又は名称】株式会社椿本チエイン
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【氏名又は名称】藤本 信男
(72)【発明者】
【氏名】下坂 晃一
【審査官】山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-209924(JP,A)
【文献】実開昭62-181751(JP,U)
【文献】特開平02-011830(JP,A)
【文献】特開2009-216202(JP,A)
【文献】特開平08-093890(JP,A)
【文献】実開昭62-069010(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 7/08
F16H 57/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付ボルトによりエンジンブロックに取り付けられ走行するチェーンを摺動案内するチェーンガイドであって、
前記取付ボルトが挿通される軸孔が設けられた取付部を備え、
前記軸孔に所定圧で供給される潤滑オイルを前記チェーンに向けて噴射するオイルジェット用通路を有し、
エンジンブロックに対する取付面に、前記エンジンブロックのオイル供給口と前記軸孔とを連通するオイル導入路を有し、
前記取付ボルトを揺動軸として揺動可能に構成され、
前記オイル導入路は、前記エンジンブロックのオイル供給口と対向する位置に、前記揺動軸を中心とした円弧に沿って延びるように形成されたオイル呼び込み溝部を有することを特徴とするチェーンガイド。
【請求項2】
前記オイルジェット用通路は、オイル導入口が前記軸孔の内面に開口するオイルジェット孔により構成され、前記軸孔の内面および前記取付ボルトの側面の少なくとも一方における前記オイルジェット孔のオイル導入口が開口する位置に、周溝が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のチェーンガイド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車エンジン用のタイミングシステムに組み込まれるチェーン伝動システムに備えられ走行するチェーンを案内するチェーンガイドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スプロケット間を走行するチェーンを安定させ張力を適正に保持するために、走行するチェーンを摺動案内する案内面と、案内面をチェーン走行方向に沿って支持する本体部とを備えたチェーンガイドを用いることは慣用されている。
【0003】
例えば、
図19に示すように、チェーンCHがエンジンルーム内のクランク軸に取り付けた駆動スプロケットS1とカム軸に取り付けた一対の従動スプロケットS2との間に無端懸回されており、このチェーンCHがチェーンガイドによってガイドされるチェーン伝動システムが公知である。
この公知のチェーン伝動システムでは、チェーンCHの弛み側となる部分の外側に、循環走行するチェーンCHに摺接しテンショナTと協動して適切な張力を付与するとともに、走行中のチェーンの振動、横振れを防止する滑り機能を備えたチェーンガイド(可動ガイド)SGが配置されている。また、チェーンCHの張り側となる部分には、チェーン走行時の振れを防止するためのチェーンガイド(固定ガイド)FGが配置されている。
可動ガイドSGは、揺動軸B0を中心にチェーンCHの懸回平面内で揺動可能に取り付けられており、テンショナTによりチェーンCHに向けて付勢されている。
固定ガイドFGは、2つの取付軸B1で固定されている。
【0004】
チェーン伝動システムにおけるチェーンの潤滑は、オイルが直接的にチェーンに供給されることにより行わるものではないため、チェーンの潤滑特性の低下を招くおそれがある。そこで、チェーン伝動システムにおけるチェーンの軌道を規制するのみの機能部品に過ぎないものであったチェーンガイドからチェーンに対しオイルを直接的に供給する構成とされたものが提案されている(例えば特許文献1参照。)。
特許文献1に記載のチェーンガイドは、チェーンに接触するシューの表面に長手方向にわたって給油溝が設けられ、シューの背面においてシューと一体に形成されたチェーンガイド本体に油圧式テンショナのピストン内に形成された油路とシューの給油溝とを直接連通するオイル通路が設けられ、油圧式テンショナからオイル通路を経てシューの給油溝内に供給されるオイルがシューの長手方向にわたって移動することでチェーンとシューの接触面全体を潤滑するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1に記載のチェーンガイドであっても、チェーンの耐摩耗性、チェーン走行面の耐摩耗性、タイミングシステムのフリクション性および騒音性能(低騒音性)、並びに、可動ガイドにあっては、揺動軸が挿通される取付部の耐摩耗性および揺動軸と取付部における摺動性といった、チェーン伝動システムに要求される機能性の向上を図ることが困難であるのが実情であった。
【0007】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、チェーン伝動システムの機能性向上を図ることのできるチェーンガイドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のチェーンガイドは、取付ボルトによりエンジンブロックに取り付けられ走行するチェーンを摺動案内するチェーンガイドであって、前記取付ボルトが挿通される軸孔が設けられた取付部を備え、前記軸孔に所定圧で供給される潤滑オイルを前記チェーンに向けて噴射するオイルジェット用通路を有し、エンジンブロックに対する取付面に、前記エンジンブロックのオイル供給口と前記軸孔とを連通するオイル導入路を有し、前記取付ボルトを揺動軸として揺動可能に構成され、前記オイル導入路は、前記エンジンブロックのオイル供給口と対向する位置に、前記揺動軸を中心とした円弧に沿って延びるように形成されたオイル呼び込み溝部を有する構成とすることにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0009】
本請求項1に係るチェーンガイドによれば、潤滑オイルをチェーンに噴射して潤滑オイルをチェーンに対して直接的に供給することで潤滑効率を向上させることが可能となり、チェーン伝動システムの機能性向上を図ることができる。
すなわち、チェーンの耐摩耗性を向上させることができるとともに、チェーン伸びを抑制することができる。また、チェーンとチェーン走行面との摺動抵抗を大幅に低下させるとともに経時的な摺動抵抗の増加を抑制し、チェーン走行面の摩耗を低減することができる。さらにまた、チェーンをチェーンガイドに対して円滑に摺接させることが可能となるため、フリクションロスを低減してエンジンの燃費性能を向上させることができるとともに、摺接による摩擦音を低減してチェーン伝動システムの騒音性能を向上させることができる。
また、テンショナと協動しながらチェーンに適切な張力を付与するように取付ボルトを揺動軸として揺動可能に構成された可動ガイドとして構成される場合には、取付ボルトの取付部に対する高摺動性が得られ、耐摩耗性を向上させることができる。
しかも、オイルジェット用通路を取付部からチェーンに指向するように形成することにより、オイルジェット用通路を最短の長さで形成することが可能となり、必要とされるオイルの量を低減することができるとともにチェーンに対して潤滑オイルを安定して供給することが可能となる。
【0010】
本請求項2に記載の構成によれば、取付部に供給された潤滑オイルを安定してオイルジェット孔に導入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1に係るチェーンガイドの構成例を取付ボルトと共に示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すチェーンガイドの、エンジンブロックに対する取付面側から見た平面図である。
【
図3】
図1に示すチェーンガイドにおける取付部の構成を示す拡大斜視図である。
【
図4】
図1に示すチェーンガイドをオイルジェット孔が形成された位置において揺動軸に垂直な平面で切断したときの断面を概略的に示す図である。
【
図5】
図1に示すチェーンガイドをエンジンブロックに取り付けた状態で示す
図2のA-B-C線組合せ断面図である。
【
図6】実施例2に係るチェーンガイドの構成例を示す斜視図である。
【
図7】
図6に示すチェーンガイドの、エンジンブロックに対する取付面側から見た平面図である。
【
図8】
図6に示すチェーンガイドにおける取付部の構成を示す拡大斜視図である。
【
図9】
図6に示すチェーンガイドをオイルジェット孔が形成された位置において揺動軸に垂直な平面で切断したときの断面を概略的に示す図である。
【
図10】
図6に示すチェーンガイドをエンジンブロックに取り付けた状態で示す
図7のD-E-F線組合せ断面図である。
【
図11】実施例3に係るチェーンガイドの構成例を示す斜視図である。
【
図12】
図11に示すチェーンガイドの、エンジンブロックに対する取付面側から見た平面図である。
【
図13】
図11に示すチェーンガイドをエンジンブロックに取り付けた状態で示す、
図12のG-H-I線組合せ断面図である。
【
図14】実施例4に係るチェーンガイドの構成例を取付ボルトと共に示す斜視図である。
【
図15】
図14に示すチェーンガイドの、エンジンブロックに対する取付面側から見た平面図である。
【
図16】
図14に示すチェーンガイドにおける取付部の構成を示す拡大斜視図である。
【
図17】実施例4に係るチェーンガイドをエンジンブロックに取り付けるための取付ボルトの構成例を示す軸方向に沿った片側断面図である。
【
図18】
図14に示すチェーンガイドをエンジンブロックに取り付けた状態で示す
図15のJ-J線断面図である。
【
図19】従来のエンジンのタイミングシステムの構成を概略的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、取付ボルトによりエンジンブロックに取り付けられ走行するチェーンを摺動案内するチェーンガイドであって、前記取付ボルトが挿通される軸孔が設けられた取付部を備え、前記軸孔に所定圧で供給される潤滑オイルを前記チェーンに向けて噴射するオイルジェット用通路を有する構成のものであれば、その具体的な実施態様は如何なるものであってもよい。
【0013】
本発明のチェーンガイドは、エンジンブロックに固定されチェーンを摺動案内する固定ガイドとして構成されてもよく、エンジンルーム内で揺動可能に軸支され油圧式テンショナと協働しながらチェーンに適切な張力を付与する可動ガイド(テンショナレバー)として構成されてもよい。
また、チェーンガイドのチェーン走行面(摺動面)は、チェーンガイドを摺動性の良好な材料で一体に成形して構成してもよく、チェーンとの摺動性の良好なガイドシューを着脱可能に設けてもよい。
【0014】
本発明のチェーンガイドの具体的な素材としては、チェーンとの摩擦抵抗の少ないものであれば如何なるものでもよく、特に、高温環境下で耐久性を発揮するとともにチェーンの円滑な摺接走行を達成することが可能である素材が好適であり、例えば、ポリアミド6樹脂、ポリアミド46樹脂、ポリアミド66樹脂、ポリアセタール樹脂など合成樹脂材料などの素材を用いるのが好ましい。
【実施例1】
【0015】
本発明の第1実施形態に係るチェーンガイド100は、
図1乃至
図4に示すように、エンジンブロック(図示しない)に対して取付ボルト140を揺動軸として揺動可能に取り付けられ油圧式テンショナ(図示しない)と協動しながらチェーンに適切な張力を付与する可動ガイドとして構成されており、走行するチェーンを摺動案内するシュー110と、シュー110をガイド長手方向(チェーン走行方向)に沿って支持するベース部材115とを備えている。シュー110およびベース部材115は、合成樹脂材料等から形成されている。
【0016】
シュー110は、ガイド長手方向に延びるチェーン走行面(摺動面)111を有し、チェーン走行面111のガイド幅方向の両端縁に上方に突出するガイド部112が立設されている。
【0017】
ベース部材115は、ガイド長手方向に沿って湾曲して形成され、ガイド長手方向における一方の端部近傍にエンジンブロックに取り付けるための取付部120を有し、他方の端部近傍に油圧テンショナに当接するテンショナ当接部128を有する。
取付部120には、円柱状空間を形成し取付ボルト140が挿通される軸孔121が設けられている。
【0018】
チェーンガイド100をエンジンブロックに取り付けるための取付ボルト140は、フランジ付ボルトであって、頭部141と、頭部141に連続する円板状のフランジ部142と、フランジ部142から延出する円柱状の軸部143と、軸部143に段付になっているネジ部144とで構成されている。
【0019】
本実施形態に係るチェーンガイド100は、エンジンブロックに対する取付面116に設けられエンジンブロックのオイル供給口と取付部120における軸孔121とを連通するオイル導入路125と、エンジンからオイル導入路125を介して軸孔121に所定圧で供給される潤滑オイルをチェーンに向けて噴射するオイルジェット用通路130とを有する。
【0020】
オイル導入路125は、軸孔121の開口縁から径方向外方に向かって直線状に延びるように形成された凹溝126により構成され、エンジンブロックのオイル供給口と対向する端部位置に、揺動軸を中心とした円弧に沿って延びるように形成されたオイル呼び込み溝部127を有する。
【0021】
オイルジェット用通路130は、オイル導入口132が軸孔121の内面に開口しオイル吐出口133がチェーン走行面111に開口するように直線状に延びるオイルジェット孔131により構成されている。
オイルジェット孔131は、チェーン走行方向上流側を向く指向状態に傾斜されており、これにより、チェーンの潤滑を確実に行うことができる。
本実施形態においては、オイル導入口132は、軸孔121の軸方向における中央位置であって、軸孔121の円周方向におけるオイル導入路125の幅領域内の周方向位置に形成されている。また、オイル吐出口133は、チェーン走行面111におけるガイド長手方向一端側のガイド幅方向中央位置に形成されている。なお、オイル導入口132およびオイル吐出口133の形成位置は、オイルジェット孔131が前述のように形成されていれば特に限定されるものではないが、オイルジェット用通路130の長さが最短の大きさとなるように形成されていることが好ましい。
【0022】
本実施形態のチェーンガイド100においては、
図5に示すように、エンジンブロック150のチェーンガイド取付面151にオイル供給口156が開口するオイル供給路155からエンジンオイルが潤滑オイルとしてオイル導入路125に所定の供給圧で供給される。このとき、エンジンブロック150のオイル供給口156と対向するオイル導入路125の端部位置には、オイル呼び込み溝部127が設けられていることから、走行するチェーンの張力調整のためにチェーンガイド100が揺動しても潤滑オイルをオイル呼び込み溝部127からオイル導入路125に確実に供給することができる。
オイル導入路125に導入された潤滑オイルは、取付部120における軸孔121の内周と取付ボルト140の軸部143の外周との間に流入し揺動軸としての取付ボルト140と軸孔121との摺動部を潤滑する。さらに、軸孔121内の潤滑オイルは、オイル導入口132からオイルジェット孔131に流入する。オイルジェット孔131に流入した潤滑オイルは、チェーン走行面111に開口するオイル吐出口133から走行するチェーンに向けて噴射され、チェーンを直接的に潤滑するとともにチェーン走行面111を潤滑する。
【実施例2】
【0023】
本発明の第2実施形態に係るチェーンガイドは、オイルジェット用通路の構成が相違することの他は、前述の第1実施形態に係るチェーンガイド100と実質的に同様の構成を有するものであって、
図6乃至
図9に示すように、走行するチェーンを摺動案内するシュー110と、シュー110をガイド長手方向(チェーン走行方向)に沿って支持するベース部材215とを備え、取付ボルトによってエンジンブロック(図示しない)に揺動可能に取り付けられ油圧式テンショナ(図示しない)と協動しながらチェーンに適切な張力を付与する可動ガイドとして構成されている。
【0024】
ベース部材215は、ガイド長手方向に沿って湾曲して形成され、ガイド長手方向における一方の端部近傍にエンジンブロックに取り付けるための取付部220を有し、他方の端部近傍に油圧テンショナに当接するテンショナ当接部228を有する。取付部220には、円柱状空間を形成し取付ボルトが挿通される軸孔221が設けられている。
また、エンジンブロックに対する取付面216には、軸孔221の開口縁から径方向外方に向かって直線状に延びるように形成された凹溝226と、揺動軸を中心とした円弧に沿って延びるように形成されたオイル呼び込み溝部227とにより構成されたオイル導入路225を有する。
【0025】
而して、第2実施形態に係るチェーンガイド200におけるオイルジェット用通路230は、
図9に示すように、オイル導入口232が取付部220における軸孔221の内面に開口しオイル吐出口233がベース部材215のガイド長手方向における一端側の端面に開口するように直線状に延びるオイルジェット孔231により構成されている。オイルジェット孔231は、チェーン走行方向上流側を向く指向状態に傾斜されている。第1実施形態に係るチェーンガイド100と同様に、オイル導入口232の形成位置およびオイル吐出口233の形成位置は、オイルジェット孔231が前述のように形成されていれば特に限定されるものではないが、オイルジェット用通路230の長さが最短の大きさとなるように形成されていることが好ましい。
【0026】
本実施形態のチェーンガイド200においては、
図10に示すように、エンジンブロック150のチェーンガイド取付面151にオイル供給口156が開口するオイル供給路155からエンジンオイルが潤滑オイルとしてオイル導入路225に所定の供給圧で供給される。オイル導入路225に導入された潤滑オイルは、取付部220における軸孔221の内周と取付ボルト140の軸部143の外周との間に流入し揺動軸としての取付ボルト140と軸孔221との摺動部を潤滑する。さらに、軸孔221内の潤滑オイルは、オイル導入口232からオイルジェット孔231に流入する。オイルジェット孔231に流入した潤滑オイルは、ベース部材215のガイド長手方向一端側の端面に開口するオイル吐出口233から走行するチェーンに向けて噴射され、チェーンを直接的に潤滑する。また、潤滑オイルが供給されたチェーンがチェーン走行面111に摺接することでチェーン走行面111を潤滑する。
【実施例3】
【0027】
本発明の第3実施形態に係るチェーンガイドは、オイルジェット用通路の構成が相違することの他は、前述の第1実施形態に係るチェーンガイド100と実質的に同様の構成を有するものであって、
図11および
図12に示すように、走行するチェーンを摺動案内するシュー110と、シュー110をガイド長手方向(チェーン走行方向)に沿って支持するベース部材315とを備え、取付ボルトによってエンジンブロック(図示しない)に揺動可能に取り付けられ油圧式テンショナ(図示しない)と協動しながらチェーンに適切な張力を付与する可動ガイドとして構成されている。
【0028】
ベース部材315は、ガイド長手方向に沿って湾曲して形成され、ガイド長手方向における一方の端部近傍にエンジンブロックに取り付けるための取付部320を有し、他方の端部近傍に油圧テンショナに当接するテンショナ当接部328を有する。取付部320には、円柱状空間を形成し取付ボルトが挿通される軸孔321が設けられている。
また、エンジンブロックに対する取付面316には、軸孔321の開口縁から径方向外方に向かって直線状に延びるように形成された凹溝326と、揺動軸を中心とした円弧に沿って延びるように形成されたオイル呼び込み溝部327とにより構成されたオイル導入路325を有する。
【0029】
而して、第3実施形態に係るチェーンガイド300は、ベース部材315におけるエンジンブロックに対する取付面316に設けられ軸孔321の開口縁からベース部材315のガイド長手方向における一端側に向かって直線状に延びる凹溝状のオイルジェット溝335を有する。そして、チェーンガイド300がエンジンブロックに取り付けられてオイルジェット溝335がエンジンブロックの壁により塞がれることで、オイル導入口332が軸孔321の内面に開口しオイル吐出口333がベース部材315のガイド長手方向における一端側の端面に開口するオイルジェット用通路330が構成される(
図13参照。)。オイルジェット溝335は、チェーン走行方向上流側を向く指向状態に傾斜されている。第1実施形態に係るチェーンガイド100と同様に、オイル導入口332の形成位置およびオイル吐出口333の形成位置は、オイルジェット用通路330が前述のように形成されていれば特に限定されるものではないが、オイルジェット用通路330の長さが最短の大きさとなるように形成されていることが好ましい。
【0030】
本実施形態のチェーンガイド300においては、
図13に示すように、エンジンブロック150のチェーンガイド取付面151にオイル供給口156が開口するオイル供給路155からエンジンオイルが潤滑オイルとしてオイル導入路325に所定の供給圧で供給される。オイル導入路325に導入された潤滑オイルは、取付部320における軸孔321の内周と取付ボルト140の軸部143の外周との間に流入して揺動軸としての取付ボルト140と軸孔321との摺動部を潤滑し、さらに、オイルジェット溝335とエンジンブロック150とにより形成されたオイルジェット用通路330に流入する。オイルジェット用通路330に流入した潤滑オイルは、ベース部材315のガイド長手方向一端側の端面に開口するオイル吐出口333から走行するチェーンに向けて噴射され、チェーンを直接的に潤滑する。また、潤滑オイルが供給されたチェーンがチェーン走行面に摺接することでチェーン走行面111を潤滑する。
【実施例4】
【0031】
本発明の第4実施形態に係るチェーンガイドは、軸孔に対するオイル供給構造が異なる他は、前述の第1実施形態に係るチェーンガイド100と実質的に同様の構成を有するものであって、
図14乃至
図16に示すように、走行するチェーンを摺動案内するシュー110と、シュー110をガイド長手方向(チェーン走行方向)に沿って支持するベース部材415とを備え、取付ボルトによってエンジンブロック(図示しない)に揺動可能に取り付けられ油圧式テンショナ(図示しない)と協動しながらチェーンに適切な張力を付与する可動ガイドとして構成されている。
【0032】
ベース部材415は、ガイド長手方向に沿って湾曲して形成され、ガイド長手方向における一方の端部近傍にエンジンブロックに取り付けるための取付部420を有し、他方の端部近傍に油圧テンショナに当接するテンショナ当接部428を有する。取付部420には、円柱状空間を形成し取付ボルト440が挿通される軸孔421が設けられている。
【0033】
本実施形態に係るチェーンガイド400のオイルジェット用通路430は、オイル導入口432が軸孔421の内面に開口しオイル吐出口433がチェーン走行面111に開口するように直線状に延びるオイルジェット孔431により構成されている(
図18参照。)。オイル導入口432の形成位置およびオイル吐出口433の形成位置は、第1実施形態に係るチェーンガイド100と同じ位置であって、オイルジェット孔431は、チェーン走行方向上流側を向く指向状態に傾斜されている。
取付部420の軸孔421の内面には、オイルジェット孔431のオイル導入口432が開口する位置に、周溝436が形成されており、後述する取付ボルト440に設けられたオイル流出口が円周方向のいずれの位置に位置された場合であっても、軸孔421に供給された潤滑オイルをオイルジェット孔431に誘導することで潤滑オイルを安定してオイルジェット孔431に導入することができるよう構成されている。
【0034】
而して、第4実施形態に係るチェーンガイド400においては、エンジンからのオイルが取付ボルト440に設けられたオイル通路を介してベース部材415における取付部420に設けられた軸孔421に供給されるようにオイル供給構造が形成されている。
本実施形態に係るチェーンガイド400をエンジンブロックに取り付けるための取付ボルト440は、フランジ付ボルトであって、
図17にも示すように、頭部441と、頭部441に連続する円板状のフランジ部442と、フランジ部442から延出する円柱状の軸部443と、軸部443に段付になっているネジ部444とで構成されている。
この取付ボルト440は、オイル流入口446が取付ボルト440の軸方向先端に開口しオイル流出口447が軸部442の側面に開口するように形成されたオイル通路445を有する。
オイル流出口447は、取付ボルト440がチェーンガイド400の軸孔421に挿通された状態において、オイルジェット孔431のオイル導入口432が開口する位置と対向する軸方向位置に形成されている。
【0035】
また、軸部443の側面には、オイル流出口447が開口する位置に、周溝448が形成されており、オイル流出口447が円周方向のいずれの位置に位置された場合であっても、軸孔421に供給された潤滑オイルをオイルジェット孔431に誘導することで潤滑オイルを安定してオイルジェット孔431に導入することができるよう構成されている。
本実施形態においては、チェーンガイド400における軸孔421の内面および取付ボルト440の側面の各々に周溝436,448が形成されているが、チェーンガイド400における軸孔421の内面および取付ボルト440の側面の少なくとも一方に、周溝が形成されていればよい。
【0036】
本実施形態のチェーンガイド400においては、
図18に示すように、エンジンブロック150における取付ボルト440のネジ部444がねじ込まれるボルト取付穴152内にオイル供給口156が開口するオイル供給路155からエンジンオイルが潤滑オイルとして取付ボルト440のオイル通路445に所定の供給圧で供給される。
オイル通路445に供給された潤滑オイルは、取付部420における軸孔421の内周と取付ボルト440の軸部443の外周との間に吐出されて揺動軸としての取付ボルト440と軸孔421との摺動部を潤滑する。さらに、軸孔421内の潤滑オイルは、オイル導入口432からオイルジェット孔431に流入する。オイルジェット孔431に流入した潤滑オイルは、チェーン走行面111に開口するオイル吐出口433から走行するチェーンに向けて噴射され、チェーンを直接的に潤滑するとともにチェーン走行面111を潤滑する。
【0037】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行なうことが可能である。
例えば、上述した複数の実施形態の各構成を、任意に組み合わせてチェーンガイドを構成しても何ら構わない。
また、上述した実施形態では、取付ボルトでエンジンブロックに取付られるものとして説明したが、エンジンブロック等の取付面から突出したピポット軸に、取付部の軸孔を挿入して取り付けるようにしてもよい。
さらにまた、潤滑オイルがエンジンから供給されるものとして説明したが、可動式チェーンガイドとして構成される場合には、油圧式テンショナから潤滑オイルが取付部における軸孔に供給される構成とされてもよい。このような構成のものにおいては、テンショナ当接部から取付部における軸孔に至る油路を形成すればよい。また、エンジンおよび油圧式テンショナの両方から潤滑オイルが供給される構成とされていてもよい。
【符号の説明】
【0038】
100,200,300,400 ・・・ チェーンガイド
110 ・・・ シュー
111 ・・・ チェーン走行面(摺動面)
112 ・・・ ガイド部
115,215,315,415 ・・・ ベース部材
116,216,316 ・・・ 取付面
120,220,320,420 ・・・ 取付部
121,221,321,421 ・・・ 軸孔
125,225,325 ・・・ オイル導入路
126,226,326 ・・・ 凹溝
127,227,327 ・・・ オイル呼び込み溝部
128,228,328,428 ・・・ テンショナ当接部
130,230,330,430 ・・・ オイルジェット用通路
131,231, 431 ・・・ オイルジェット孔
132,232,332,432 ・・・ オイル導入口
133,233,333,433 ・・・ オイル吐出口
335 ・・・ オイルジェット溝
436 ・・・ 周溝
140, 440 ・・・ 取付ボルト
141, 441 ・・・ 頭部
142, 442 ・・・ フランジ部
143, 443 ・・・ 軸部
144, 444 ・・・ ネジ部
445 ・・・ オイル通路
446 ・・・ オイル流入口
447 ・・・ オイル流出口
448 ・・・ 周溝
150 ・・・ エンジンブロック
151 ・・・ チェーンガイド取付面
152 ・・・ ボルト取付穴
155 ・・・ オイル供給路
156 ・・・ オイル供給口
B0 ・・・ 揺動軸
B1 ・・・ 取付軸
CH ・・・ チェーン
FG ・・・ 固定ガイド
SG ・・・ 可動ガイド
S1 ・・・ 駆動スプロケット
S2 ・・・ 従動スプロケット
T ・・・ テンショナ