(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】消耗状態学習装置、学習済モデルの生成方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/20 20230101AFI20240522BHJP
B60C 19/00 20060101ALI20240522BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240522BHJP
【FI】
G06Q10/20
B60C19/00 H
B60C19/00 J
B60C19/00 Z
G06T7/00 350B
(21)【出願番号】P 2020068675
(22)【出願日】2020-04-06
【審査請求日】2023-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古渡 直哉
【審査官】大野 朋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-158722(JP,A)
【文献】特開2001-287516(JP,A)
【文献】特開2019-035626(JP,A)
【文献】特開2020-041899(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0343126(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
B60C 19/00
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品個体の消耗状態の推定に用いられる機械学習モデルの学習を実行する消耗状態学習装置であって、
製品個体に設けられた情報記録媒体に記録された当該製品個体に固有の識別コードを読み取る識別コード読み取り手段と、
前記製品個体を撮影した画像に基づいて、当該製品個体の消耗状態を示す教師データを生成する教師データ生成手段と、
前記製品個体を含む複数の製品個体の設計データを記憶する記憶手段にアクセスして、前記識別コードにより識別される前記製品個体の前記設計データを取得する取得手段と、
前記画像に基づいて、前記情報記録媒体が設けられた前記製品個体の使用状況を示す使用状況データを生成する使用状況データ生成手段と、
取得される前記設計データ
及び生成される前記使用状況データを含む学習入力データを前記機械学習モデルに入力した際の出力と、前記教師データと、を用いて、前記機械学習モデルの学習を実行する学習手段と、
を含むことを特徴とする消耗状態学習装置。
【請求項2】
前記記憶手段は、前記製品個体が生産された工場、当該製品個体の生産に用いられた生産設備、又は、当該製品個体の生産日時のうちの少なくとも1つを示す生産データをさらに記憶し、
前記取得手段は、前記識別コードにより識別される前記製品個体の前記生産データをさらに取得し、
前記学習手段は、前記生産データをさらに含む前記学習入力データを前記機械学習モデルに入力した際の出力を用いて、前記機械学習モデルの学習を実行する、
ことを特徴とする請求項1に記載の消耗状態学習装置。
【請求項3】
前記機械学習モデルは、個体のタイヤの消耗状態の推定に用いられるものであって、
前記識別コード読み取り手段は、個体のタイヤに設けられた情報記録媒体に記録された当該タイヤに固有の識別コードを読み取り、
前記教師データ生成手段は、前記タイヤを撮影した画像に基づいて、当該タイヤの消耗状態を示す前記教師データを生成し、
前記取得手段は、前記タイヤを含む複数のタイヤの設計データを記憶する前記記憶手段にアクセスして、前記識別コードにより識別される前記タイヤの前記設計データを取得する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の消耗状態学習装置。
【請求項4】
前記タイヤを備えた車両における当該タイヤの位置を示す位置データを生成する位置データ生成手段、をさらに含み、
前記学習手段は、前記位置データをさらに含む前記学習入力データを前記機械学習モデルに入力した際の出力を用いて、前記機械学習モデルの学習を実行する、
ことを特徴とする請求項
3に記載の消耗状態学習装置。
【請求項5】
前記車両の種別を示す車種データを生成する車種データ生成手段、をさらに含み、
前記学習手段は、前記車種データをさらに含む前記学習入力データを前記機械学習モデルに入力した際の出力を用いて、前記機械学習モデルの学習を実行する、
ことを特徴とする請求項
4に記載の消耗状態学習装置。
【請求項6】
前記車両が備えるタイヤの数を示すタイヤ数データを生成するタイヤ数データ生成手段、をさらに含み、
前記学習手段は、前記タイヤ数データをさらに含む前記学習入力データを前記機械学習モデルに入力した際の出力を用いて、前記機械学習モデルの学習を実行する、
ことを特徴とする請求項
4に記載の消耗状態学習装置。
【請求項7】
前記画像に基づいて推定される、前記情報記録媒体が設けられた前記タイヤの残溝量に基づいて、当該タイヤの使用状況を示す使用状況データを生成する使用状況データ生成手段、をさらに含み、
前記学習手段は、生成される前記使用状況データをさらに含む前記学習入力データを前記機械学習モデルに入力した際の出力を用いて、前記機械学習モデルの学習を実行する、
ことを特徴とする請求項
3から
6のいずれか一項に記載の消耗状態学習装置。
【請求項8】
前記機械学習モデルは、個体のタイヤの摩耗状態の推定に用いられるものであって、
前記教師データ生成手段は、前記タイヤの摩耗状態を示す前記教師データを生成する、
ことを特徴とする請求項
3から
7のいずれか一項に記載の消耗状態学習装置。
【請求項9】
前記機械学習モデルは、個体のタイヤの偏摩耗の有無の推定に用いられるものであって、
前記教師データ生成手段は、前記タイヤの偏摩耗の有無を示す前記教師データを生成する、
ことを特徴とする請求項
3から
7のいずれか一項に記載の消耗状態学習装置。
【請求項10】
製品個体の消耗状態の推定に用いられる機械学習モデルの学習を実行する学習済モデルの生成方法であって、
識別コード読み取り手段が、製品個体に設けられた情報記録媒体に記録された当該製品個体に固有の識別コードを読み取るステップと、
教師データ生成手段が、前記製品個体を撮影した画像に基づいて、当該製品個体の消耗状態を示す教師データを生成するステップと、
取得手段が、前記製品個体を含む複数の製品個体の設計データを記憶する記憶手段にアクセスして、前記識別コードにより識別される前記製品個体の前記設計データを取得するステップと、
使用状況データ生成手段が、前記画像に基づいて、前記情報記録媒体が設けられた前記製品個体の使用状況を示す使用状況データを生成するステップと、
学習手段が、取得される前記設計データ
及び生成される前記使用状況データを含む学習入力データを前記機械学習モデルに入力した際の出力と、前記教師データと、を用いて、前記機械学習モデルの学習を実行するステップと、
を含むことを特徴とする学習済モデルの生成方法。
【請求項11】
製品個体の消耗状態の推定に用いられる機械学習モデルの学習を実行するコンピュータに、
製品個体に設けられた情報記録媒体に記録された当該製品個体に固有の識別コードを読み取る手順、
前記製品個体を撮影した画像に基づいて、当該製品個体の消耗状態を示す教師データを生成する手順、
前記製品個体を含む複数の製品個体の設計データを記憶する記憶手段にアクセスして、前記識別コードにより識別される前記製品個体の前記設計データを取得する手順、
前記画像に基づいて、前記情報記録媒体が設けられた前記製品個体の使用状況を示す使用状況データを生成する手順、
取得される前記設計データ
及び生成される前記使用状況データを含む学習入力データを前記機械学習モデルに入力した際の出力と、前記教師データと、を用いて、前記機械学習モデルの学習を実行する手順、
を実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消耗状態学習装置、学習済モデルの生成方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、タイヤ圧監視センサ(TPMS)とRFID(Radio Frequency IDentification)タグとを含み、固有のタイヤ識別コードがTPMSとRFIDタグとの間で共有されるタイヤ組立体が記載されている。
【0003】
特許文献2には、ガソリンスタンドに設けられたカードリーダによって基準IDコードを読み取り、車両ごとのタイヤセンサユニットから送信される信号中のIDコードと基準IDコードとの照合結果に基づき車両を識別する技術が記載されている。特許文献2に記載の技術では、識別された車両から送信される信号に含まれるデータが示す、IDコードに対応するタイヤ状態に関する情報が表示される。
【0004】
特許文献3には、タイヤ内面に貼り付けられ各タイヤに固有の番号を書き込まれたRFIDを読み取った端末が、当該タイヤの着脱に係るタイヤ着脱記録情報をタイヤ中央管理装置に送信する技術が記載されている。特許文献3に記載の技術では、タイヤについての過去に発生したイベントを記録したタイヤ使用履歴データがタイヤ中央管理装置に蓄積される。
【0005】
特許文献4には、地形や建物の3次元形状情報から自動的に認識された環境情報およびセンサのセンサパラメータに基づき、仮想センサデータおよび教師データを出力する機械学習用データベース作成システムが記載されている。
【0006】
特許文献5には、タイヤの使用履歴に関するデータから、機械学習アルゴリズムにより、異常なデータを検出する異常データ検出方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-114483号公報
【文献】特開2013-252777号公報
【文献】特開2005-138738号公報
【文献】国際公開第2018/020954号
【文献】特開2019-74927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1~3に記載の技術では、使用開始後におけるタイヤの状態に関する情報をタイヤ毎に収集することができるが、収集できる情報だけからでは新たなタイヤを設計するための充分な知見が得られない。
【0009】
また、特許文献4、5に記載の技術を用いても、新たなタイヤを設計するための知見を得ることはできない。
【0010】
なお、このことは、新たなタイヤを設計する場面に限らず、新たな製品を設計する場面において一般的にあてはまる。
【0011】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的の一つは、新たな製品の設計に有用な知見を得ることができる消耗状態学習装置、学習済モデルの生成方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明に係る消耗状態学習装置は、製品個体の消耗状態の推定に用いられる機械学習モデルの学習を実行する消耗状態学習装置であって、製品個体に設けられた情報記録媒体に記録された当該製品個体に固有の識別コードを読み取る識別コード読み取り手段と、前記製品個体を撮影した画像に基づいて、当該製品個体の消耗状態を示す教師データを生成する教師データ生成手段と、前記製品個体を含む複数の製品個体の設計データを記憶する記憶手段にアクセスして、前記識別コードにより識別される前記製品個体の前記設計データを取得する取得手段と、取得される前記設計データを含む学習入力データを前記機械学習モデルに入力した際の出力と、前記教師データと、を用いて、前記機械学習モデルの学習を実行する学習手段と、を含む。
【0013】
本発明の一態様では、前記記憶手段は、前記製品個体が生産された工場、当該製品個体の生産に用いられた生産設備、又は、当該製品個体の生産日時のうちの少なくとも1つを示す生産データをさらに記憶し、前記取得手段は、前記識別コードにより識別される前記製品個体の前記生産データをさらに取得し、前記学習手段は、前記生産データをさらに含む前記学習入力データを前記機械学習モデルに入力した際の出力を用いて、前記機械学習モデルの学習を実行する。
【0014】
また、本発明の一態様では、前記学習手段は、前記情報記録媒体が設けられた前記製品個体の使用状況を示す使用状況データをさらに含む前記学習入力データを前記機械学習モデルに入力した際の出力を用いて、前記機械学習モデルの学習を実行する。
【0015】
この態様では、前記画像に基づいて前記使用状況データを生成する使用状況データ生成手段、をさらに含み、前記学習手段は、生成される前記使用状況データをさらに含む前記学習入力データを前記機械学習モデルに入力した際の出力を用いて、前記機械学習モデルの学習を実行してもよい。
【0016】
また、本発明の一態様では、前記機械学習モデルは、個体のタイヤの消耗状態の推定に用いられるものであって、前記識別コード読み取り手段は、個体のタイヤに設けられた情報記録媒体に記録された当該タイヤに固有の識別コードを読み取り、前記教師データ生成手段は、前記タイヤを撮影した画像に基づいて、当該タイヤの消耗状態を示す前記教師データを生成し、前記取得手段は、前記タイヤを含む複数のタイヤの設計データを記憶する前記記憶手段にアクセスして、前記識別コードにより識別される前記タイヤの前記設計データを取得する。
【0017】
この態様では、前記タイヤを備えた車両における当該タイヤの位置を示す位置データを生成する位置データ生成手段、をさらに含み、前記学習手段は、前記位置データをさらに含む前記学習入力データを前記機械学習モデルに入力した際の出力を用いて、前記機械学習モデルの学習を実行してもよい。
【0018】
さらに、前記車両の種別を示す車種データを生成する車種データ生成手段、をさらに含み、前記学習手段は、前記車種データをさらに含む前記学習入力データを前記機械学習モデルに入力した際の出力を用いて、前記機械学習モデルの学習を実行してもよい。
【0019】
あるいは、前記車両が備えるタイヤの数を示すタイヤ数データを生成するタイヤ数データ生成手段、をさらに含み、前記学習手段は、前記タイヤ数データをさらに含む前記学習入力データを前記機械学習モデルに入力した際の出力を用いて、前記機械学習モデルの学習を実行してもよい。
【0020】
また、前記画像に基づいて推定される、前記情報記録媒体が設けられた前記タイヤの残溝量に基づいて、当該タイヤの使用状況を示す使用状況データを生成する使用状況データ生成手段、をさらに含み、前記学習手段は、生成される前記使用状況データをさらに含む前記学習入力データを前記機械学習モデルに入力した際の出力を用いて、前記機械学習モデルの学習を実行してもよい。
【0021】
また、前記機械学習モデルは、個体のタイヤの摩耗状態の推定に用いられるものであって、前記教師データ生成手段は、前記タイヤの摩耗状態を示す前記教師データを生成してもよい。
【0022】
あるいは、前記機械学習モデルは、個体のタイヤの偏摩耗の有無の推定に用いられるものであって、前記教師データ生成手段は、前記タイヤの偏摩耗の有無を示す前記教師データを生成してもよい。
【0023】
また、本発明に係る学習済モデルの生成方法は、製品個体の消耗状態の推定に用いられる機械学習モデルの学習を実行する学習済モデルの生成方法であって、製品個体に設けられた情報記録媒体に記録された当該製品個体に固有の識別コードを読み取るステップと、前記製品個体を撮影した画像に基づいて、当該製品個体の消耗状態を示す教師データを生成するステップと、前記製品個体を含む複数の製品個体の設計データを記憶する記憶手段にアクセスして、前記識別コードにより識別される前記製品個体の前記設計データを取得するステップと、取得される前記設計データを含む学習入力データを前記機械学習モデルに入力した際の出力と、前記教師データと、を用いて、前記機械学習モデルの学習を実行するステップと、を含む。
【0024】
また、本発明に係るプログラムは、製品個体の消耗状態の推定に用いられる機械学習モデルの学習を実行するコンピュータに、製品個体に設けられた情報記録媒体に記録された当該製品個体に固有の識別コードを読み取る手順、前記製品個体を撮影した画像に基づいて、当該製品個体の消耗状態を示す教師データを生成する手順、前記製品個体を含む複数の製品個体の設計データを記憶する記憶手段にアクセスして、前記識別コードにより識別される前記製品個体の前記設計データを取得する手順、取得される前記設計データを含む学習入力データを前記機械学習モデルに入力した際の出力と、前記教師データと、を用いて、前記機械学習モデルの学習を実行する手順、を実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態に係る情報処理装置の構成の一例を示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る情報処理装置の機能の一例を示す機能ブロック図である。
【
図7A】本発明の一実施形態に係る情報処理装置で行われる処理の流れの一例を示すフロー図である。
【
図7B】本発明の一実施形態に係る情報処理装置で行われる処理の流れの一例を示すフロー図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る情報処理装置で行われる処理の流れの一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係る情報処理装置10の構成の一例を示す図である。本実施形態に係る情報処理装置10は、パーソナルコンピュータなどのコンピュータである。
図1に示すように情報処理装置10は、例えば、プロセッサ12、記憶部14、通信部16、表示部18、操作部20、撮影部22、RFIDリーダ部24を含んでいる。
【0028】
プロセッサ12は、例えば情報処理装置10にインストールされるプログラムに従って動作するCPU等のプログラム制御デバイスである。
【0029】
記憶部14は、ROMやRAM等の記憶素子やハードディスクドライブなどである。記憶部14には、プロセッサ12によって実行されるプログラムなどが記憶される。
【0030】
通信部16は、例えばネットワークボードなどの通信インタフェースである。
【0031】
表示部18は、液晶ディスプレイ等の表示デバイスであって、プロセッサ12の指示に従って各種の画像を表示する。
【0032】
操作部20は、キーボードやマウスなどといったユーザインタフェースであって、ユーザの操作入力を受け付けて、その内容を示す信号をプロセッサ12に出力する。
【0033】
撮影部22は、デジタルカメラ等の撮影デバイスであり、撮影によって生成される画像をプロセッサ12に出力する。また、撮影部22が、三次元画像が撮影可能なステレオカメラや、奥行き画像が撮影可能なデプスカメラなどの撮影デバイスであり、撮影によって生成される三次元画像や奥行き画像をプロセッサ12に出力してもよい。本実施形態に係る情報処理装置10が複数の撮影部22を備えていてもよい。また、撮影部22が、一連の三次元画像を含む三次元動画像や、一連の奥行き画像を含む奥行き動画像を撮影可能なビデオカメラであってもよい。
【0034】
RFIDリーダ部24は、本実施形態では例えば、電磁界や電波などを用いた近距離の無線通信によって、RFIDタグ等の情報記録媒体に記録された識別コードを読み取るデバイスである。本実施形態では例えば、個体のタイヤ等の製品個体にRFIDタグ等の情報記録媒体が設けられている。本実施形態に係るRFIDリーダ部24は、当該情報記録媒体に記録された、当該情報記録媒体が設けられた製品個体に固有の識別コードを読み取る。本実施形態に係る情報処理装置10が複数のRFIDリーダ部24を備えていてもよい。本実施形態に係るRFIDリーダ部24が備えるアンテナには指向性があり、当該RFIDリーダ部24は、当該RFIDリーダ部24の位置及び向きを基準とした予め定められた範囲に存在するRFIDタグを検出できるようになっている。
【0035】
なお、情報処理装置10は、DVD-ROMやBlu-ray(登録商標)ディスクなどの光ディスクを読み取る光ディスクドライブ、USB(Universal Serial Bus)ポートなどを含んでいてもよい。
【0036】
本実施形態に係る情報処理装置10では、製品個体の消耗状態の推定に用いられる機械学習モデルの学習が実行される。ここでは一例として、個体のタイヤの消耗状態の推定に用いられる機械学習モデルの学習が実行されることとする。
【0037】
当該機械学習モデルの学習にあたって、本実施形態に係る情報処理装置10は、通信部16を介して、例えば社内に設けられたデータベースである、複数の個体のタイヤに関する情報を管理する製品管理データベース30にアクセスする。
【0038】
図2は、製品管理データベース30に記憶されている製品管理データの一例を示す図である。本実施形態に係る製品管理データは、例えば、個体のタイヤに対応付けられるデータである。
【0039】
図2に示すように、本実施形態に係る製品管理データには、例えば、識別コードデータ、製品データ、設計データ、生産データ、などが含まれる。
【0040】
識別コードデータは、本実施形態では例えば、個体のタイヤに予め割り当てられた、当該タイヤに固有の識別コードを示すデータである。本実施形態では例えば、タイヤに割り当てられた識別コードが記録されたRFIDタグ等の情報記録媒体が当該タイヤに予め取り付けられている。
【0041】
製品データは、本実施形態では例えば、当該タイヤのブランド名などといった当該製品に関する情報を示すデータである。
【0042】
設計データは、本実施形態では例えば、当該タイヤの設計に関する情報を示すデータである。
図2に示す設計データには、当該タイヤに用いられているベルトの種類を示すベルトデータが含まれている。また、当該設計データには、当該タイヤのゴム物性を示すゴム物性データが含まれている。
【0043】
生産データは、本実施形態では例えば、当該タイヤの生産に関する情報を示すデータである。
図2に示す生産データには、当該タイヤが生産された工場の識別番号を示す工場番号が含まれている。また、当該生産データには、当該タイヤの生産に用いられた成形機の種類に対応する成形機番号が含まれている。また、当該生産データには、当該タイヤが生産された日時を示す生産日時データが含まれている。
【0044】
また、本実施形態に係る機械学習モデルの学習にあたって、RFIDリーダ部24によって、タイヤに設けられたRFIDタグ等の情報記録媒体に記録された、当該タイヤに固有の識別コードが読み取られる。また、撮影部22によって、当該タイヤの画像(例えばトレッド面や側面の画像)が撮影される。そして、公知の画像認識技術を用いることで、当該画像に基づいて、当該タイヤの残溝量及び偏摩耗の有無が推定される。ここで、公知の学習済の機械学習モデルを用いることで、タイヤの残溝量及び偏摩耗の有無が推定されてもよい。
【0045】
図3は、上述のタイヤを備えた車両40の上面の一例を模式的に示す図である。
図3に示す車両40は、4つのタイヤ(右前輪タイヤ42、右後輪タイヤ44、左前輪タイヤ46、及び、左後輪タイヤ48)を備えている。車両40が備えるタイヤのそれぞれには、当該タイヤに固有の識別コードが記録されたRFIDタグが設けられている。
図3に示す車両40は、
図3における左方向に低速で走行する。
【0046】
本実施形態では例えば、
図3に示すように、2つの撮影部22(22a及び22b)が、それぞれ、車両40が走行する車線の脇に、撮影方向が車線に対して斜め方向となるよう設けられている。
【0047】
また、本実施形態では例えば、
図3に示すように、2つのRFIDリーダ部24(24a及び24b)が、それぞれ、車両40が走行する車線の脇に、RFIDタグの検出方向が車線に対して斜め方向となるよう設けられている。
【0048】
RFIDリーダ部24aは、撮影部22aと並んで、撮影部22aよりも
図3における左(車両40の走行方向に沿って前方)に配置されている。RFIDリーダ部24bは、撮影部22bと並んで、撮影部22bよりも
図3における左(車両40の走行方向に沿って前方)に配置されている。
【0049】
撮影部22aは、車両40の右前輪タイヤ42のトレッド面及び側面が写る画像を撮影する。当該画像に基づいて、右前輪タイヤ42の残溝量及び偏摩耗の有無が推定される。また、撮影部22aは、車両40の右後輪タイヤ44のトレッド面及び側面が写る画像を撮影する。当該画像に基づいて、右後輪タイヤ44の残溝量及び偏摩耗の有無が推定される。
【0050】
RFIDリーダ部24aは、車両40の右前輪タイヤ42に設けられているRFIDタグに記録された、右前輪タイヤ42の識別コードを読み取る。また、RFIDリーダ部24aは、車両40の右後輪タイヤ44に設けられているRFIDタグに記録された、右後輪タイヤ44の識別コードを読み取る。
【0051】
撮影部22bは、車両40の左前輪タイヤ46のトレッド面及び側面が写る画像を撮影する。当該画像に基づいて、左前輪タイヤ46の残溝量及び偏摩耗の有無が推定される。また、撮影部22bは、車両40の左後輪タイヤ48のトレッド面及び側面が写る画像を撮影する。当該画像に基づいて、左後輪タイヤ48の残溝量及び偏摩耗の有無が推定される。
【0052】
RFIDリーダ部24bは、車両40の左前輪タイヤ46に設けられているRFIDタグに記録された、左前輪タイヤ46の識別コードを読み取る。また、RFIDリーダ部24bは、車両40の左後輪タイヤ48に設けられているRFIDタグに記録された、左後輪タイヤ48の識別コードを読み取る。
【0053】
そして、情報処理装置10は、製品管理データベース30にアクセスして、以上のようにして読み取られた4つの識別コードのそれぞれについての、当該識別コードを示す識別コードデータを含む製品管理データを取得する。このようにして、右前輪タイヤ42、右後輪タイヤ44、左前輪タイヤ46、及び、左後輪タイヤ48の製品管理データが取得される。
【0054】
本実施形態において、例えば、RFIDリーダ部24aによるRFIDタグの検出をトリガとして、撮影部22aが動画像の撮影を開始してもよい。そして、撮影部22aによって撮影される画像に車両40あるいはタイヤが写っていないことが確認された際に、撮影部22aによる動画像の撮影が終了されてもよい。
【0055】
そして、撮影された動画像から、右前輪タイヤ42が写る1又は複数のフレーム画像、及び、右後輪タイヤ44が写る1又は複数のフレーム画像が抽出されてもよい。上述のように、当該動画像では、右前輪タイヤ42が写った後に右後輪タイヤ44が写るため、フレーム画像が撮影されたタイミングに基づいて、右前輪タイヤ42が写る画像、及び、右後輪タイヤ44が写る画像の特定は可能である。そして、抽出されたフレーム画像に基づいて、右前輪タイヤ42、及び、右後輪タイヤ44のそれぞれについて、残溝量及び偏摩耗の有無が推定されてもよい。
【0056】
また、当該動画像の撮影期間中に、RFIDリーダ部24aによって先に読み取られた識別コードが、右前輪タイヤ42の識別コードとして特定され、後に読み取られた識別コードが、右後輪タイヤ44の識別コードとして特定されてもよい。
【0057】
同様に、RFIDリーダ部24bによるRFIDタグの検出をトリガとして、撮影部22bが動画像の撮影を開始してもよい。そして、撮影部22bによって撮影される画像に車両40あるいはタイヤが写っていないことが確認された際に、撮影部22bによる動画像の撮影が終了されてもよい。
【0058】
そして、上述したようにして、撮影部22bにより撮影された動画像に基づいて、左前輪タイヤ46、及び、左後輪タイヤ48のそれぞれについて、残溝量及び偏摩耗の有無が推定されてもよい。
【0059】
また、当該動画像の撮影期間中に、RFIDリーダ部24bによって先に読み取られた識別コードが、左前輪タイヤ46の識別コードとして特定され、後に読み取られた識別コードが、左後輪タイヤ48の識別コードとして特定されてもよい。
【0060】
図4は、
図3に示す車両40とは車両の種別が異なる車両50の上面の一例を模式的に示す図である。
図4に示す車両50は、6つのタイヤ(右前輪タイヤ52、右後輪外タイヤ54、右後輪内タイヤ56、左前輪タイヤ58、左後輪外タイヤ60、及び、左後輪内タイヤ62)を備えている。
【0061】
図4の例でも
図3の例と同様にして、撮影部22aによって撮影される車両50の右前輪タイヤ52のトレッド面及び側面が写る画像に基づいて、右前輪タイヤ52の残溝量及び偏摩耗の有無が推定される。
【0062】
また、撮影部22aによって撮影される車両50の右後輪外タイヤ54のトレッド面及び側面、並びに、右後輪内タイヤ56のトレッド面が写る画像に基づいて、右後輪外タイヤ54及び右後輪内タイヤ56のそれぞれについての残溝量及び偏摩耗の有無が推定される。例えば、撮影される画像の左に写るタイヤが右後輪外タイヤ54として特定され、右に写るタイヤが右後輪内タイヤ56として特定されてもよい。
【0063】
また、撮影部22bによって撮影される車両50の左前輪タイヤ58のトレッド面及び側面が写る画像に基づいて、左前輪タイヤ58の残溝量及び偏摩耗の有無が推定される。
【0064】
また、撮影部22bによって撮影される車両50の左後輪外タイヤ60のトレッド面及び側面、並びに、左後輪内タイヤ62のトレッド面が写る画像に基づいて、左後輪外タイヤ60及び左後輪内タイヤ62のそれぞれについての残溝量及び偏摩耗の有無が推定される。例えば、当該画像の左に写るタイヤが左後輪内タイヤ62として特定され、右に写るタイヤが左後輪外タイヤ60として特定されてもよい。
【0065】
また、
図4の例でも
図3の例と同様に、RFIDリーダ部24aは、車両50の右前輪タイヤ52に設けられているRFIDタグに記録された、右前輪タイヤ52の識別コードを読み取る。
【0066】
また、RFIDリーダ部24aは、車両50の右後輪外タイヤ54及び右後輪内タイヤ56のそれぞれに設けられているRFIDタグに記録された、右後輪外タイヤ54及び右後輪内タイヤ56の識別コードを読み取る。
【0067】
RFIDリーダ部24bは、車両50の左前輪タイヤ58に設けられているRFIDタグに記録された、左前輪タイヤ58の識別コードを読み取る。
【0068】
また、RFIDリーダ部24bは、車両50の左後輪外タイヤ60及び左後輪内タイヤ62のそれぞれに設けられているRFIDタグに記録された、左後輪外タイヤ60及び左後輪内タイヤ62の識別コードを読み取る。
【0069】
そして、情報処理装置10は、製品管理データベース30にアクセスして、以上のようにして読み取られた6つの識別コードのそれぞれについての、当該識別コードに対応する識別コードデータを含む製品管理データを取得する。
【0070】
図4の例でも、RFIDリーダ部24aによるRFIDタグの検出をトリガとして、撮影部22aが動画像の撮影を開始してもよい。そして、撮影部22aによって撮影される画像に車両50あるいはタイヤが写っていないことが確認された際に、撮影部22aによる動画像の撮影が終了されてもよい。また、RFIDリーダ部24bによるRFIDタグの検出をトリガとして、撮影部22bが動画像の撮影を開始してもよい。そして、撮影部22bによって撮影される画像に車両50あるいはタイヤが写っていないことが確認された際に、撮影部22bによる動画像の撮影が終了されてもよい。
【0071】
そして、本実施形態に係る情報処理装置10は、例えば、1つの車両についての動画像の撮影期間が終了すると、当該車両が備えるタイヤにそれぞれ対応付けられる、
図5に例示する学習データを生成する。例えば、
図3に示すような4つのタイヤを備える車両については、4つの学習データが生成され、
図4に示すような6つのタイヤを備える車両については、6つの学習データが生成される。
【0072】
図5に示すように、本実施形態に係る学習データには、例えば、インデックス番号、学習入力データ、教師データが含まれる。本実施形態に係る学習入力データには、製品データ、設計データ、生産データ、位置データ、車種データ、使用状況データが含まれる。本実施形態に係る教師データには、消耗状態データが含まれる。
【0073】
上述のように、本実施形態では、車両が備えるそれぞれのタイヤに対応する、新規のインデックス番号を含む学習データが生成される。
【0074】
当該学習データの製品データ、設計データ、生産データの値には、それぞれ、当該タイヤに設けられたRFIDタグから読み取られた識別コードにより識別される製品管理データに含まれる、製品データ、設計データ、生産データの値が設定される。
【0075】
当該学習データの位置データの値には、当該タイヤを備えた車両における当該タイヤの位置を示す値が設定される。
【0076】
例えば、当該タイヤが右前輪タイヤである場合は、位置データの値には、「右前」が設定される。当該タイヤが右後輪タイヤである場合は、位置データの値には、「右後」が設定される。当該タイヤが左前輪タイヤである場合は、位置データの値には、「左前」が設定される。当該タイヤが左後輪タイヤである場合は、位置データの値には、「左後」が設定される。
【0077】
また、当該タイヤが右後輪外タイヤである場合は、位置データの値には、「右後外」が設定される。当該タイヤが右後輪内タイヤである場合は、位置データの値には、「右後内」が設定される。当該タイヤが左後輪外タイヤである場合は、位置データの値には、「左後外」が設定される。当該タイヤが左後輪内タイヤである場合は、位置データの値には、「左後内」が設定される。
【0078】
当該学習データの車種データの値には、当該タイヤを備えた車両の種別を示す値が設定される。
図5の例では、当該タイヤを備えた車両が4つのタイヤを備えた車両である場合は、車種データの値には、「1」が設定される。また、当該タイヤを備えた車両が6つのタイヤを備えた車両である場合は、車種データの値には、「2」が設定される。
【0079】
当該学習データの使用状況データの値には、当該タイヤについて推定された残溝量に応じた値が設定される。例えば、残溝量を示す値が、所定値d1よりも小さい場合は「1」、所定値d1以上所定値d2未満である場合は「2」、所定値d2以上である場合は「3」が、使用状況データの値に設定される。本実施形態は例えば、タイヤの使用期間(走行期間)が長いほど、当該タイヤに対応する学習入力データに含まれる使用状況データの値は小さくなる。
【0080】
当該学習データの消耗状態データの値には、当該タイヤについて推定された偏摩耗の有無に応じた値が設定される。例えば、偏摩耗があると推定されたタイヤについては「1」が、偏摩耗がないと推定されたタイヤについては「0」が、消耗状態データの値に設定される。
【0081】
そして、以上のようにして複数のタイヤについて生成された学習データを用いて、個体のタイヤの消耗状態の推定に用いられる機械学習モデルの学習が実行される。例えば、学習データに含まれる学習入力データを機械学習モデルに入力した際の出力と、当該学習データに含まれる教師データと、の差が特定されてもよい。そして特定される差に基づいて機械学習モデルのパラメータの値が更新される教師あり学習が実行されてもよい。
【0082】
そして、本実施形態では例えば、このようにして生成される学習済の機械学習モデルが、新たなタイヤの設計に活用される。
【0083】
例えば、タイヤの設計者が製品データ、設計データ、生産データ、位置データ、車種データ、及び、使用状況データの値を含む推定入力データを学習済の機械学習モデルに入力する。すると当該入力に応じた出力に基づいて、当該推定入力データが示す値に対応する製品、設計、生産、位置、及び、車種に関する条件に従ったタイヤが、当該推定入力データに含まれる使用状況データの値に応じた残溝量となるまで使用された際に、偏摩耗が発生する確率を推定できることとなる。
【0084】
本実施形態において、例えば、用途に応じた複数の機械学習モデルの学習が実行されてもよい。例えば、
図5に示す学習入力データのすべてを入力とする機械学習モデルだけでなく、
図5に示す学習入力データの一部を入力とする機械学習モデルの学習が実行されてもよい。例えば、学習入力データに、設計データ、位置データ、車種データ、及び、使用状況データが含まれるようにした、別の機械学習モデルの学習が実行されてもよい。
【0085】
この場合は、タイヤの設計者が設計データ、位置データ、車種データ、及び、使用状況データの値を含む推定入力データを学習済の機械学習モデルに入力する。すると当該入力に応じた出力に基づいて、当該推定入力データが示す値に対応する設計、位置、及び、車種に関する条件に従ったタイヤが、当該推定入力データに含まれる使用状況データの値に応じた残溝量となるまで使用された際に、偏摩耗が発生する確率を推定できることとなる。この場合は、製品データや生産データの値に依らない偏摩耗の発生確率の推定が可能である。
【0086】
また例えば、タイヤを備えた車両の種別毎に異なる複数の機械学習モデルの学習が実行されてもよい。例えば、4輪の車両の学習入力データを入力とする機械学習モデルの学習、及び、6輪の車両の学習入力データを入力とする機械学習モデルの学習が実行されてもよい。そして、4輪の車両の設計には、4輪の車両の学習入力データを用いた学習が行われた学習済の機械学習モデルが用いられ、6輪の車両の設計には、6輪の車両の学習入力データを用いた学習が行われた学習済の機械学習モデルが用いられてもよい。この場合は、学習入力データに車種データが含まれていなくてもよい。
【0087】
また、本実施形態において、遺伝的アルゴリズム等を用いて学習済の機械学習モデルに様々な値の推定入力データの値を入力することで、偏摩耗の発生が起こりにくい入力を特定してもよい。そして、このようにして特定された入力に対応する設計案が新規のタイヤの設計案として採用されるようにしてもよい。
【0088】
なお、本実施形態において、RFIDリーダ部24aが、読み取った識別コードが右後輪外タイヤ54のものであるのか右後輪内タイヤ56のものであるのか判別できない可能性がある。このことを踏まえ、例えば、右後輪外タイヤ54の識別コードに対応する製品管理データの値と、右後輪内タイヤ56の識別コードに対応する製品管理データの値と、が異なる場合には、学習データの生成が行われないようにしてもよい。同様に、左後輪外タイヤ60の識別コードに対応する製品管理データの値と、左後輪内タイヤ62の識別コードに対応する製品管理データの値と、が異なる場合には、学習データの生成が行われないようにしてもよい。
【0089】
また、本実施形態において、製品管理データに製品データが含まれていなくてもよい。そして、タイヤの側面が写る画像に対して文字認識処理を実行することで、当該タイヤのブランド名などといった当該タイヤに関する情報を特定してもよい。そして特定される情報を示す製品データを含む学習入力データが生成されるようにしてもよい。
【0090】
以下、情報処理装置10に実装されている機能、及び、情報処理装置10で行われる処理についてさらに説明する。
【0091】
図6は、本実施形態に係る情報処理装置10で実装される機能の一例を示す機能ブロック図である。なお、本実施形態に係る情報処理装置10で、
図6に示す機能のすべてが実装される必要はなく、また、
図6に示す機能以外の機能が実装されていても構わない。
【0092】
図6に示すように、情報処理装置10には、機能的には例えば、機械学習モデル70、識別コード読み取り部72、製品管理データ取得部74、画像取得部76、学習入力データ生成部78、教師データ生成部80、学習データ生成部82、学習データ記憶部84、学習部86、推定入力受付部88、推定部90、が含まれる。
【0093】
機械学習モデル70は、プロセッサ12及び記憶部14を主として実装される。識別コード読み取り部72は、プロセッサ12及びRFIDリーダ部24を主として実装される。製品管理データ取得部74は、通信部16を主として実装する。画像取得部76は、プロセッサ12及び撮影部22を主として実装される。学習入力データ生成部78、教師データ生成部80、学習データ生成部82、学習部86、推定部90は、プロセッサ12を主として実装される。学習データ記憶部84は、記憶部14を主として実装される。推定入力受付部88は、プロセッサ12及び操作部20を主として実装される。
【0094】
以上の機能は、コンピュータである情報処理装置10にインストールされた、以上の機能に対応する指令を含むプログラムをプロセッサ12で実行することにより実装されてもよい。このプログラムは、例えば、光ディスク、磁気ディスク、磁気テープ、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等のコンピュータ読み取り可能な情報記憶媒体を介して、あるいは、インターネットなどを介して情報処理装置10に供給されてもよい。
【0095】
情報処理装置10における、機械学習モデル70、識別コード読み取り部72、製品管理データ取得部74、画像取得部76、学習入力データ生成部78、教師データ生成部80、学習データ生成部82、学習データ記憶部84、学習部86の機能は、製品個体の消耗状態の推定に用いられる機械学習モデルの学習を実行する消耗状態学習装置としての機能に相当する。
【0096】
また、情報処理装置10における、機械学習モデル70、推定入力受付部88、推定部90の機能は、学習済の機械学習モデル70への入力に対応する条件に従った製品個体の消耗状態を推定する消耗状態推定装置としての機能に相当する。
【0097】
機械学習モデル70は、本実施形態では例えば、アダブースト、ランダムフォレスト、ニューラルネットワーク、サポートベクタマシン(SVM)、最近傍識別器、などの機械学習が実装された機械学習モデルである。上述のように、本実施形態に係る機械学習モデル70は、製品個体の消耗状態の推定に用いられる。機械学習モデル70は、例えば、個々のタイヤの消耗状態(例えば、偏摩耗の有無などといったタイヤの摩耗状態)の推定に用いられる。
【0098】
ここで当該機械学習モデル70は、タイヤの偏摩耗の有無などといった、製品個体についての消耗の有無を判定する判定モデルであってもよい。そしてこの場合に、当該機械学習モデル70が、入力に応じて、例えば、
図5に示す消耗状態データと同様の、消耗の有無を示す1ビットのデータを出力してもよい。
【0099】
また、当該機械学習モデル70は、製品個体の消耗の程度を示すデータを出力する回帰モデルであってもよい。
【0100】
識別コード読み取り部72は、本実施形態では例えば、製品個体に設けられた情報記録媒体に記録された当該製品個体に固有の識別コードを読み取る。ここで上述のように、識別コード読み取り部72が、個体のタイヤに設けられた情報記録媒体に記録された当該タイヤに固有の識別コードを読み取ってもよい。
【0101】
製品管理データ取得部74は、本実施形態では例えば、読み取られる識別コードに対応する製品個体を含む複数の製品個体の設計データを記憶する記憶部にアクセスして、当該識別コードにより識別される製品個体の設計データを取得する。上述の例では、当該記憶部は、製品管理データベース30に相当する。上述のように、当該記憶部が、読み取られる識別コードに対応するタイヤを含む複数のタイヤの設計データを記憶してもよい。
【0102】
ここで上述のように、当該記憶部が、製品個体が生産された工場、当該製品個体の生産に用いられた生産設備(上述の例では成形機)、又は、当該製品個体の生産日時のうちの少なくとも1つを示す生産データをさらに記憶していてもよい。そして、製品管理データ取得部74が、識別コード読み取り部72により読み取られる識別コードにより識別される製品個体の生産データをさらに取得してもよい。
【0103】
画像取得部76は、本実施形態では例えば、上述の情報記録媒体が設けられた製品個体を撮影した画像を取得する。
【0104】
学習入力データ生成部78は、本実施形態では例えば、製品管理データ取得部74により取得される設計データを含む学習入力データを生成する。ここで、学習入力データ生成部78は、製品管理データ取得部74により取得される生産データを含む学習入力データを生成してもよい。
【0105】
また、学習入力データ生成部78は、上述の情報記録媒体が設けられた製品個体の使用状況を示す使用状況データを含む学習入力データを生成してもよい。ここで、学習入力データ生成部78が、画像取得部76が取得する画像に基づいて使用状況データを生成してもよい。例えば、画像取得部76が取得する画像に基づいて推定されるタイヤの残溝量に基づいて、当該タイヤの使用状況を示す使用状況データが生成されてもよい。そして、学習入力データ生成部78が、当該使用状況データを含む学習入力データを生成してもよい。
【0106】
また、学習入力データ生成部78は、タイヤを備えた車両における当該タイヤの位置を示す位置データを生成してもよい。そして、学習入力データ生成部78は、生成される位置データを含む学習入力データを生成してもよい。
【0107】
また、学習入力データ生成部78は、タイヤを備えた車両の種別を示す車種データを生成してもよい。そして、学習入力データ生成部78は、生成される車種データを含む学習入力データを生成してもよい。
【0108】
ここで、学習入力データ生成部78が、車種データの代わりに、車両が備えるタイヤの数を示すタイヤ数データを生成してもよい。例えば、
図3の例では「4」、
図4の例では「6」を示すタイヤ数データを生成してもよい。そして、学習入力データ生成部78は、生成されるタイヤ数データを含む学習入力データを生成してもよい。
【0109】
教師データ生成部80は、本実施形態では例えば、上述の製品個体を撮影した画像に基づいて、当該製品個体の消耗状態を示す教師データを生成する。ここで教師データ生成部80は、タイヤを撮影した画像に基づいて、当該タイヤの消耗状態を示す教師データを生成してもよい。ここで上述のように、教師データ生成部80が、タイヤの摩耗状態(例えば、タイヤの偏摩耗の有無)を示す教師データを生成してもよい。
【0110】
学習データ生成部82は、本実施形態では例えば、学習入力データ生成部78が生成する学習入力データと、教師データ生成部80が生成する教師データと、を含む学習データを生成する。そして、学習データ生成部82は、本実施形態では例えば、生成される学習データを学習データ記憶部84に記憶させる。
【0111】
学習データ記憶部84は、本実施形態では例えば、学習データ生成部82が生成する学習データを記憶する。
【0112】
学習部86は、本実施形態では例えば、学習データに含まれる学習入力データを機械学習モデル70に入力した際の出力と、当該学習データに含まれる教師データと、を用いて、機械学習モデル70の学習を実行する。ここで例えば、学習データに含まれる学習入力データを機械学習モデル70に入力した際の出力と、当該学習データに含まれる教師データと、の差が特定されてもよい。そして特定される差に基づいて機械学習モデル70のパラメータの値が更新される教師あり学習が実行されてもよい。
【0113】
本実施形態では複数の学習入力データによる機械学習モデル70の学習が実行される。そして学習済の機械学習モデル70を用いて、当該機械学習モデル70への入力に対応する条件に従った設計がされたような製品個体の消耗状態が推定される。
【0114】
推定入力受付部88は、本実施形態では例えば、学習済の機械学習モデル70への入力となる推定入力データを受け付ける。ここで例えば、推定入力受付部88は、ユーザの操作に応じた値が設定された推定入力データを受け付けてもよい。
【0115】
推定部90は、本実施形態では例えば、推定入力データを学習済の機械学習モデル70に入力した際の出力に基づいて、推定入力データの値に対応する条件における製品個体の消耗状態が推定される。ここで機械学習モデル70が判定モデルである場合に、機械学習モデル70が、推定入力データの値に対応する条件に従った製品個体が消耗するか否か(例えば、当該条件に従ったタイヤに偏摩耗が発生するか否か)を示す1ビットのデータを出力してもよい。また機械学習モデル70が回帰モデルである場合に、機械学習モデル70が、推定入力データの値に対応する条件に従った製品個体の消耗の程度を示す推定値を出力してもよい。推定部90による推定結果が、例えば、表示部18に表示されるようにしてもよい。
【0116】
ここで上述のように、推定部90が、遺伝的アルゴリズム等を用いて学習済の機械学習モデルに様々な値の推定入力データの値を入力することで、消耗しにくい条件を特定してもよい。そして、消耗しにくい条件を示す画面が表示部18に表示されるようにしてもよい。そして、このようにして特定された条件に対応する設計案が新製品の設計案として採用されるようにしてもよい。
【0117】
ここで、本実施形態に係る情報処理装置10で行われる学習データの生成処理の流れの一例を、
図7A及び
図7Bに例示するフロー図を参照しながら説明する。
【0118】
まず、識別コード読み取り部72が、RFIDリーダ部24a、及び、RFIDリーダ部24bの両方について、識別コードが読み取れるまで待機する(S101)。本処理例では、S101に示す処理で読み取られる識別コードは、前輪のタイヤの識別コードとなる。
【0119】
そして、識別コードが読み取られたことが検出されると、画像取得部76は、撮影部22a及び撮影部22bに、画像の撮影開始指示を送信する(S102)。撮影部22a及び撮影部22bは、当該撮影開始指示の受信に応じて、画像の撮影を開始する。
【0120】
そして、画像取得部76は、撮影部22aによって撮影された画像、及び、撮影部22bによって撮影された画像を取得する(S103)。
【0121】
そして、学習入力データ生成部78は、S103に示す処理で取得されたいずれかの画像に、タイヤが写っているか否かを確認する(S104)。
【0122】
ここで、写っていることが確認された場合は(S104:Y)、S103に示す処理が実行される。
【0123】
S103に示す処理で取得された両方の画像にタイヤが写っていないことが確認されたとする(S104:N)。この場合は、学習入力データ生成部78が、S103に示す処理で取得された一連の画像に基づいて、前輪のタイヤの使用状況、及び、消耗状態を特定する(S105)。ここでは例えば、前輪の2つのタイヤのそれぞれについて、残溝量に基づく使用状況データの値、及び、偏摩耗の有無を示す摩耗状態データの値が特定される。
【0124】
そして、製品管理データ取得部74が、S101に示す処理で読み取られた識別コードを示す識別コードデータを含む製品管理データを製品管理データベース30から取得する(S106)。ここでは例えば、前輪の2つのタイヤのそれぞれについての、当該タイヤに対応する製品管理データが取得される。
【0125】
そして、識別コード読み取り部72が、RFIDリーダ部24a、及び、RFIDリーダ部24bの両方について、識別コードが読み取れるまで待機する(S107)。本処理例では、S107に示す処理で読み取られる識別コードは、後輪のタイヤの識別コードとなる。
【0126】
そして、画像取得部76は、撮影部22aによって撮影された画像、及び、撮影部22bによって撮影された画像を取得する(S108)。
【0127】
そして、学習入力データ生成部78は、S108に示す処理で取得されたいずれかの画像に、タイヤが写っているか否かを確認する(S109)。
【0128】
ここで、写っていることが確認された場合は(S109:Y)、S108に示す処理が実行される。
【0129】
S108に示す処理で取得された両方の画像に、タイヤが写っていないことが確認されたとする(S109:N)。この場合は、学習入力データ生成部78が、S108に示す処理で取得された一連の画像に基づいて、後輪のタイヤの使用状況、及び、消耗状態を特定する(S110)。ここでは例えば、後輪の2つ、あるいは、4つのタイヤのそれぞれについて、残溝量に基づく使用状況データの値、及び、偏摩耗の有無を示す摩耗状態データの値が特定される。
【0130】
そして、製品管理データ取得部74が、S107に示す処理で読み取られた識別コードを示す識別コードデータを含む製品管理データを製品管理データベース30から取得する(S111)。ここでは例えば、後輪の2つ、あるいは、4つのタイヤのそれぞれについての、当該タイヤに対応する製品管理データが取得される。
【0131】
そして、学習入力データ生成部78が、撮影された車両が備えるタイヤのそれぞれに対応付けられる学習入力データを生成する(S112)。ここで前輪のタイヤについては、S105に示す処理で特定された使用状況を示す使用状況データ、及び、S106に示す処理で取得された製品管理データの一部又は全部を含む学習入力データが生成される。後輪のタイヤについては、S110に示す処理で特定された使用状況を示す使用状況データ、及び、S111に示す処理で取得された製品管理データの一部又は全部を含む学習入力データが生成される。また、それぞれの学習入力データについて、当該学習入力データに対応する位置データの値、及び、車種データの値が設定される。
【0132】
そして、教師データ生成部80が、撮影された車両が備えるタイヤのそれぞれに対応付けられる教師データを生成する(S113)。ここで前輪のタイヤについては、S105に示す処理で特定された消耗状態を示す消耗状態データを含む教師データが生成される。後輪のタイヤについては、S110に示す処理で特定された消耗状態を示す消耗状態データを含む学習入力データが生成される。
【0133】
そして、学習データ生成部82が、撮影された車両が備えるタイヤのそれぞれに対応付けられる学習データを生成して、生成された学習データを学習データ記憶部84に記憶させる(S114)。ここでは、各タイヤについて、S112に示す処理で生成された学習入力データと、S113に示す処理で生成された教師データと、を含む学習データが生成される。
【0134】
そして、画像取得部76は、撮影部22a及び撮影部22bに、画像の撮影終了指示を送信する(S115)。撮影部22a及び撮影部22bは、当該撮影終了指示の受信に応じて、画像の撮影を終了する。そして、S101に示す処理に戻る。
【0135】
次に、本実施形態に係る情報処理装置10で行われる学習処理の流れの一例を、
図8に例示するフロー図を参照しながら説明する。ここでは例えば、複数の学習データが学習データ記憶部84に記憶されていることとする。
【0136】
まず、学習部86が、学習データ記憶部84に記憶されている複数の学習データのうち、S202、及び、S203に示す処理が実行されていないものを1つ取得する(S201)。
【0137】
そして学習部86が、S201に示す処理で取得された学習データに含まれる学習入力データを学習済の機械学習モデル70に入力した際の出力を用いた、機械学習モデル70の学習を実行する(S202)。ここで例えば、当該出力と、S201に示す処理で取得された学習データに含まれる教師データと、の差に基づいて、機械学習モデル70のパラメータの値が更新されてもよい。
【0138】
そして学習部86が、学習データ記憶部84に記憶されている複数の学習データのすべてについてS202に示す処理が実行されたか否かを確認する(S203)。
【0139】
学習データ記憶部84に記憶されている複数の学習データのすべてについてS202に示す処理が実行されていないことが確認された場合は(S203:N)、S201に示す処理に戻る。
【0140】
学習データ記憶部84に記憶されている複数の学習データのすべてについてS202に示す処理が実行されたことが確認された場合は(S203:Y)、本処理例に示す処理は終了される。
【0141】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
【0142】
例えば、使用状況は、タイヤの残溝量に基づいて特定されなくてもよい。また、使用状況は、画像に基づいて特定されなくてもよい。例えば、新品時からのタイヤの走行距離に応じた値の使用状況データが生成されてもよい。ここで当該走行距離を示すデータが、通信によって車両から取得されてもよい。また、車両の走行距離メータに示されている走行距離を読み取ったオペレータによって使用状況データの値が手入力されてもよい。上述のように、特定される走行距離が長いほど使用状況データの値が小さくなるようにしてもよい。
【0143】
また、本発明の適用対象はタイヤに限定されない。
【0144】
また、上記の具体的な数値や文字列、並びに、図面中の具体的な数値や文字列は例示であり、これらの数値や文字列には限定されない。
【符号の説明】
【0145】
10 情報処理装置、12 プロセッサ、14 記憶部、16 通信部、18 表示部、20 操作部、22,22a,22b 撮影部、24,24a,24b RFIDリーダ部、30 製品管理データベース、40 車両、42 右前輪タイヤ、44 右後輪タイヤ、46 左前輪タイヤ、48 左後輪タイヤ、50 車両、52 右前輪タイヤ、54 右後輪外タイヤ、56 右後輪内タイヤ、58 左前輪タイヤ、60 左後輪外タイヤ、62 左後輪内タイヤ、70 機械学習モデル、72 識別コード読み取り部、74 製品管理データ取得部、76 画像取得部、78 学習入力データ生成部、80 教師データ生成部、82 学習データ生成部、84 学習データ記憶部、86 学習部、88 推定入力受付部、90 推定部。