(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/13 20060101AFI20240522BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
B60C11/13 A
B60C11/03 300B
(21)【出願番号】P 2020080847
(22)【出願日】2020-04-30
【審査請求日】2023-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 駿
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-296795(JP,A)
【文献】特開2012-111342(JP,A)
【文献】特開2017-024687(JP,A)
【文献】特開2020-055356(JP,A)
【文献】特開平01-204805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/00-11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延在する複数の主溝と、
前記主溝によって区画された陸部と、
前記陸部を貫通する複数のラグ溝と、
前記複数の主溝と前記複数のラグ溝とによって区画された複数のブロックとを含み、
前記複数のブロックは、それぞれ、少なくとも1つの屈曲点を備え、前記ブロックの内側に凸となる屈曲形状を有し、
前記主溝は、子午断面において、トレッド面の法線に対する溝壁の角度が変化する屈曲点を有し、
前記複数のブロックのうち、前記主溝を挟んでタイヤ幅方向に隣り合う第1ブロックおよび第2ブロックにおいて、
前記トレッド面の平面視において、前記第1ブロックと前記第2ブロックとの間の前記主溝の前記第1ブロック側の溝壁の前記屈曲点によって形成される稜線を延長した線と、前記第1ブロックを区画する前記ラグ溝の溝壁を延長した線とのなす
鋭角側の角度は、前記第1ブロックと前記第2ブロックとの間の前記主溝の前記第2ブロック側の溝壁の前記屈曲点によって形成される稜線を延長した線と、前記第2ブロックを区画する前記ラグ溝の溝壁を延長した線とのなす
鋭角側の角度より大きく、
子午断面において、前記第1ブロックと前記第2ブロックとの間の前記主溝の前記第1ブロック側の溝壁の前記トレッド面の法線に対する
鋭角側の角度は、前記第1ブロックと前記第2ブロックとの間の前記主溝の前記第2ブロック側の溝壁の前記トレッド面の法線に対する
鋭角側の角度より小さい、
タイヤ。
【請求項2】
前記トレッド面の平面視において、前記主溝の対向する壁面間の最大距離に対する、前記壁面の稜線間の距離の比が0.15以上0.35以下である請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記トレッド面の平面視において、前記主溝の前記第1ブロック側の端部を延長した線と前記第1ブロックを区画する前記ラグ溝の溝壁を延長した線とのなす角度は90度以上150度以下であり、前記主溝の前記第2ブロック側の端部を延長した線と前記第2ブロックを区画する前記ラグ溝の溝壁を延長した線とのなす角度は20度以上60度以下である請求項1または請求項2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記トレッド面の平面視において、前記第1ブロックの踏面の前記第2ブロック側のエッジのタイヤ周方向の長さL1に対する、前記主溝の前記第1ブロック側の溝壁の角度が一定である区間の長さL2の比L2/L1は0.15以上0.70以下であり、前記長さL2の区間の中点の位置は、前記長さL1の両端部の一方から他方までの間の40%の位置から60%の位置に含まれる請求項1から請求項3のいずれか1つに記載のタイヤ。
【請求項5】
子午断面において、前記長さL2の区間の前記主溝の延在方向の両側の前記溝壁の角度の差が5度以下である請求項4に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記第1ブロックを挟んでタイヤ周方向に第1ラグ溝と第2ラグ溝とが隣り合っており、
前記トレッド面の平面視において、前記第1ブロックと前記第2ブロックとの間の前記主溝の前記第1ブロック側の溝壁の稜線を延長した線と、前記第1ラグ溝の溝壁を延長した線とのなす
鋭角側の角度と、前記主溝の前記第1ブロック側の端部を延長した線と前記第1ラグ溝の溝壁を延長した線とのなす
鋭角側の角度との差が0度以上10度以下であり、
前記トレッド面の平面視において、前記第1ブロックと前記第2ブロックとの間の前記主溝の前記第1ブロック側の溝壁の稜線を延長した線と、前記第2ラグ溝の溝壁を延長した線とのなす
鋭角側の角度と、前記主溝の前記第1ブロック側の端部を延長した線と前記第2ラグ溝の溝壁を延長した線とのなす
鋭角側の角度との差が20度以上40度以下である請求項1から請求項5のいずれか1つに記載のタイヤ。
【請求項7】
子午断面において、前記主溝の溝深さをDとし、溝開口端部同士を結ぶ直線と平行な仮想区分線をD/2の位置に引いてタイヤ径方向外側とタイヤ径方向内側とに区分した場合に、タイヤ径方向外側の断面積SUに対する、タイヤ径方向内側の断面積SDの比SD/SUが0.5未満である請求項1から請求項6のいずれか1つに記載のタイヤ。
【請求項8】
子午断面において、前記主溝の溝深さをDとし、前記トレッド面から前記屈曲点までの深さをD
Eとした場合に、比D
E/Dが0.60以上0.80以下である請求項1から請求項7のいずれか1つに記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
重荷重用タイヤのうち、ウルトラワイドベースタイヤと呼ばれる超偏平タイヤは、ゴミ収集車などに用いられることがある。この種のタイヤは、耐摩耗性能が求められるとともに、更生回数が多いことからケーシングの耐久性能を向上させることが求められる。ケーシングの耐久性能を向上させるための1つとして、石噛みの防止が考えられる。
【0003】
重荷重用タイヤは、様々な路面に使用されているが、大きい石等が散在する荒れた不整地を走行する場合には、溝内に小石が噛み込み易く、しかも一度噛み込んだ石は、タイヤが路面に接地するごとに溝底に向かって押し込まれて溝から外れにくく、この溝内に存在する石が溝底クラック等の故障の原因となってトレッド部が損傷するという問題がある。このような石噛みを防止するための技術が、特許文献1に開示されている。
【0004】
特許文献1のタイヤにおいては、主溝の溝壁のどちらか一方又は両側が変曲点を境に溝垂直方向に対する接地面側の角度と溝底側の角度で構成されており、前者の角度より後者の角度が大きくなるように溝壁が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示の技術は、耐摩耗性能を向上させつつ、石噛みを防止する性能(以下、耐ストンドリリング性能と呼ぶ)を向上させることについて改善の余地がある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は耐摩耗性能および耐ストンドリリング性能を向上させることができるタイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のある態様によるタイヤは、タイヤ周方向に延在する複数の主溝と、前記主溝によって区画された陸部と、前記陸部を貫通する複数のラグ溝と、前記複数の主溝と前記複数のラグ溝とによって区画された複数のブロックとを含み、前記複数のブロックは、それぞれ、少なくとも1つの屈曲点を備え、前記ブロックの内側に凸となる屈曲形状を有し、前記主溝は、子午断面において、トレッド面の法線に対する溝壁の角度が変化する屈曲点を有し、前記複数のブロックのうち、前記主溝を挟んでタイヤ幅方向に隣り合う第1ブロックおよび第2ブロックにおいて、前記トレッド面の平面視において、前記第1ブロックと前記第2ブロックとの間の前記主溝の前記第1ブロック側の溝壁の前記屈曲点によって形成される稜線を延長した線と、前記第1ブロックを区画する前記ラグ溝の溝壁を延長した線とのなす鋭角側の角度は、前記第1ブロックと前記第2ブロックとの間の前記主溝の前記第2ブロック側の溝壁の前記屈曲点によって形成される稜線を延長した線と、前記第2ブロックを区画する前記ラグ溝の溝壁を延長した線とのなす鋭角側の角度より大きく、子午断面において、前記第1ブロックと前記第2ブロックとの間の前記主溝の前記第1ブロック側の溝壁の前記トレッド面の法線に対する鋭角側の角度は、前記第1ブロックと前記第2ブロックとの間の前記主溝の前記第2ブロック側の溝壁の前記トレッド面の法線に対する鋭角側の角度より小さいタイヤである。
【0009】
前記トレッド面の平面視において、前記主溝の対向する壁面間の最大距離に対する、前記壁面の稜線間の距離の比が0.15以上0.35以下であることが好ましい。
【0010】
前記トレッド面の平面視において、前記主溝の前記第1ブロック側の端部を延長した線と前記第1ブロックを区画する前記ラグ溝の溝壁を延長した線とのなす角度は90度以上150度以下であり、前記主溝の前記第2ブロック側の端部を延長した線と前記第2ブロックを区画する前記ラグ溝の溝壁を延長した線とのなす角度は20度以上60度以下であることが好ましい。
【0011】
前記トレッド面の平面視において、前記第1ブロックの踏面の前記第2ブロック側のエッジのタイヤ周方向の長さL1に対する、前記主溝の前記第1ブロック側の溝壁の角度が一定である区間の長さL2の比L2/L1は0.15以上0.70以下であり、前記長さL2の区間の中点の位置は、前記長さL1の両端部の一方から他方までの間の40%の位置から60%の位置に含まれることが好ましい。
【0012】
子午断面において、前記長さL2の区間の前記主溝の延在方向の両側の前記溝壁の角度の差が5度以下であることが好ましい。
【0013】
前記第1ブロックを挟んでタイヤ周方向に第1ラグ溝と第2ラグ溝とが隣り合っており、前記トレッド面の平面視において、前記第1ブロックと前記第2ブロックとの間の前記主溝の前記第1ブロック側の溝壁の稜線を延長した線と、前記第1ラグ溝の溝壁を延長した線とのなす鋭角側の角度と、前記主溝の前記第1ブロック側の端部を延長した線と前記第1ラグ溝の溝壁を延長した線とのなす鋭角側の角度との差が0度以上10度以下であり、前記トレッド面の平面視において、前記第1ブロックと前記第2ブロックとの間の前記主溝の前記第1ブロック側の溝壁の稜線を延長した線と、前記第2ラグ溝の溝壁を延長した線とのなす鋭角側の角度と、前記主溝の前記第1ブロック側の端部を延長した線と前記第2ラグ溝の溝壁を延長した線とのなす鋭角側の角度との差が20度以上40度以下であることが好ましい。
【0014】
子午断面において、前記主溝の溝深さをDとし、溝開口端部同士を結ぶ直線と平行な仮想区分線をD/2の位置に引いてタイヤ径方向外側とタイヤ径方向内側とに区分した場合に、タイヤ径方向外側の断面積SUに対する、タイヤ径方向内側の断面積SDの比SD/SUが0.5未満であることが好ましい。
【0015】
子午断面において、前記主溝の溝深さをDとし、前記トレッド面から前記屈曲点までの深さをDEとした場合に、比DE/Dが0.60以上0.80以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかるタイヤは、耐摩耗性能および耐ストンドリリング性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るタイヤの子午断面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係るタイヤのトレッド面を示す平面図である。
【
図9】
図9は、主溝の溝深さと、トレッド面から段部までの深さとの関係を示す子午断面図である。
【
図10】
図10は、主溝の溝深さと、トレッド面から段部までの深さとの関係を示す子午断面図である。
【
図11】
図11は、主溝の溝深さと、トレッド面から段部までの深さとの関係を示す子午断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の各実施形態の説明において、他の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。各実施形態により本発明が限定されるものではない。また、各実施形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。なお、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0019】
図1は、本実施形態に係るタイヤ1の子午断面図である。
図2は、本実施形態に係るタイヤ1のトレッド面を示す平面図である。本実施の形態によるタイヤ1は、空気入りタイヤであることが好ましい。タイヤ1に充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【0020】
以下の説明において、タイヤの子午断面とは、タイヤの回転軸(図示せず)を含む平面でタイヤを切断したときの断面として定義される。タイヤ径方向とは、タイヤ1の回転軸(図示省略)と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、回転軸を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。タイヤ赤道面CLとは、タイヤ1の回転軸に直交すると共に、タイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面であり、タイヤ赤道面CLは、タイヤ1のタイヤ幅方向における中心位置であるタイヤ幅方向中心線と、タイヤ幅方向における位置が一致する。タイヤ幅は、タイヤ幅方向において最も外側に位置する部分同士のタイヤ幅方向における幅、つまり、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから最も離れている部分間の距離である。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CL上にあってタイヤ1のタイヤ周方向に沿う線をいう。本実施形態では、タイヤ赤道線にタイヤ赤道面と同じ符号「CL」を付す。
【0021】
図1に示すように、本実施形態にかかるタイヤ1は、トレッド部2と、そのタイヤ幅方向両外側のショルダー部3と、各ショルダー部3から順次連続するサイドウォール部4およびビード部5とを有している。また、このタイヤ1は、カーカス層6と、ベルト層7とを含む。
【0022】
図1において、ショルダー部3は、トレッド部2のタイヤ幅方向両外側の部位である。また、サイドウォール部4は、タイヤ1におけるタイヤ幅方向の最も外側に露出したものである。また、ビード部5は、ビードコア51とビードフィラー52とを有する。ビードコア51は、スチールワイヤであるビードワイヤをリング状に巻くことにより形成されている。ビードフィラー52は、カーカス層6のタイヤ幅方向端部がビードコア51の位置でタイヤ幅方向外側に折り返されることにより形成された空間に配置されるゴム材である。
【0023】
カーカス層6は、各タイヤ幅方向端部が、一対のビードコア51でタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返され、かつタイヤ周方向にトロイド状に掛け回されてタイヤの骨格を構成するものである。このカーカス層6は、タイヤ周方向に対する角度がタイヤ子午線方向に沿いつつタイヤ周方向にある角度を持って複数並設されたカーカスコード(図示せず)が、コートゴムで被覆されたものである。カーカスコードは、スチールまたは有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。
【0024】
ベルト層7は、例えば、4層のベルト71、72、73、74を積層した多層構造をなし、トレッド部2においてカーカス層6の外周であるタイヤ径方向外側に配置され、カーカス層6をタイヤ周方向に覆うものである。ベルト71、72、73、74は、タイヤ周方向に対して所定の角度で複数並設されたコード(図示せず)が、コートゴムで被覆されたものである。コードは、スチールまたは有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。
【0025】
トレッド部2は、ゴム材(トレッドゴム)からなり、タイヤ1のタイヤ径方向の最も外側で露出し、その表面がタイヤ1の輪郭となる。トレッド部2の外周表面、つまり、走行時に路面と接触する踏面には、トレッド面21が形成されている。トレッド面21は、タイヤ周方向に延在する複数(本実施形態では6本)の周方向主溝22A、22B、23を有する。そして、トレッド面21は、これら複数の周方向主溝22A、22B、23によって区画され、タイヤ周方向に沿って延在し、タイヤ幅方向に複数(本実施形態では7本)並ぶ陸部20C、20M1、20M2、20Sを有する。
【0026】
周方向主溝22Aは、タイヤ赤道線CLに最も近い周方向主溝である。周方向主溝22Bは、2番目にタイヤ赤道線CLに近い周方向主溝である。周方向主溝22Bは、周方向主溝22Aのタイヤ幅方向外側に設けられた周方向主溝である。周方向主溝23は、周方向主溝22Bのタイヤ幅方向外側に設けられた周方向主溝である。周方向主溝23は、タイヤ接地端Tに最も近い周方向主溝である。主溝とは、JATMAに規定されるウェアインジケータの表示義務を有する溝である。
【0027】
陸部20Cは、タイヤ赤道線CLを挟んで隣り合う周方向主溝22A、22Aの間に設けられている。陸部20Cは、2本の周方向主溝22A、22Aによって区画されている。陸部20M1は、周方向主溝22Aと周方向主溝22Bとの間に設けられている。陸部20M1は、周方向主溝22Aと周方向主溝22Bとによって区画されている。陸部20M2は、周方向主溝22Bと周方向主溝23との間に設けられている。陸部20M2は、周方向主溝22Bと周方向主溝23とによって区画されている。陸部20Sは、周方向主溝23のタイヤ幅方向外側に設けられている。以下の説明では、周方向主溝を単に「主溝」と呼ぶことがある。
【0028】
(トレッド部)
以下、トレッド部2の詳細について説明する。以下の説明において、溝深さは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、トレッド面から溝底までの距離の最大値として測定される。また、溝が部分的な凹凸部やサイプを溝底に有する構成では、これらを除外して溝深さが測定される。
【0029】
図2に示すように、トレッド部2は、ラグ溝24を有する。ラグ溝とは、タイヤ幅方向に延在する横溝であり、タイヤ接地時に開口して溝として機能する。ラグ溝24は、周方向主溝22A、22Bに交差する方向に延在し、タイヤ周方向に複数並んで設けられている。各ラグ溝24は、一方の主溝23から他方の主溝23まで、タイヤ幅方向に延在している。各ラグ溝24は、一方の主溝23からタイヤ幅方向に延在し、陸部20M2、陸部20M1、陸部20C、陸部20M1、陸部20M2を順に貫通し、他方の主溝23に開口している。
【0030】
陸部20Cは、周方向主溝22Aと周方向主溝22Bとに接続して周方向主溝22Aと周方向主溝22Bとを繋げるラグ溝24を有する。陸部20Sは、周方向主溝23のタイヤ幅方向外側に区画され、トレッド部2のタイヤ幅方向最外側に配置されている。陸部20Sは、タイヤ幅方向外側のエッジ部にラグ溝30を有する。ラグ溝30は、陸部20Sに、タイヤ周方向に所定のピッチで設けられる。ラグ溝30は、タイヤ赤道面CLに近い側の端部が陸部20S内で終端している。ラグ溝30は、タイヤ赤道面CLから遠い側の端部がタイヤ接地端Tを越えてタイヤ幅方向に延在し、ショルダー部3に開口している。
【0031】
タイヤ接地端Tは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に荷重をかけない静止状態にて平板に対して垂直に置いて規定荷重に対応する負荷を加えたときのタイヤと平板との接触面におけるタイヤ軸方向の最大幅位置として定義される。
【0032】
規定リムとは、JATMAに規定される「標準リム」、TRAに規定される「Design Rim」、あるいはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、規定内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。また、規定荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。
【0033】
図2に示すように、本例では、トレッド部2の陸部20Cにおいて、周方向主溝22A、22B、23と、タイヤ幅方向に延在するラグ溝24とによって、複数のブロックBKが区画される。
図2に示すように、周方向主溝22A、22B、23は、タイヤ幅方向に振幅をもつジグザグ形状を有する。
【0034】
ラグ溝24において、タイヤ周方向に隣り合うブロックBK同士の間には底上げ部240が設けられている。底上げ部240は、溝底を隆起させて溝の深さを他の部分よりも浅くした部分である。
【0035】
(ブロック)
トレッド部2は、複数のブロックBKを含む。各ブロックBKは、複数の主溝22A、22B、23と、複数のラグ溝24とによって区画される。各ブロックBKは、それぞれ、少なくとも1つの屈曲点Kを備えている。このため、ブロックBKは、平面視においてブロックBKの内側に凸となる屈曲形状を有する。各ブロックBKは、屈曲点Kを複数備えていてもよい。
【0036】
図3は、
図2中のA部を拡大して示す図である。
図3は、トレッド面21を構成する複数のブロックBKのうち、主溝22Aを挟んでタイヤ幅方向に隣り合う第1ブロックBK1の一部と第2ブロックBK2の一部とを示す。
【0037】
図3に示すように、タイヤ幅方向において、第1ブロックBK1は、第2ブロックBK2よりも赤道線CLに近い。トレッド面21の平面視において、第1ブロックBK1と第2ブロックBK2との間の主溝22Aの第1ブロックBK1側の溝壁は、後述する屈曲点を有する。この溝壁の屈曲点によって稜線222Rが形成される。稜線222Rを延長した線H11と、第1ブロックBK1を区画するラグ溝24の溝壁を延長した線H12とは点P11において交差する。線H11と線H12とのなす角度をθ1とする。また、第1ブロックBK1と第2ブロックBK2との間の主溝22Aの第2ブロックBK2側の溝壁の屈曲点によって形成される稜線222Rを延長した線H21と、第2ブロックBK2を区画するラグ溝24の溝壁を延長した線H22とは点P12において交差する。線H21と線H22とのなす角度をθ2とする。このとき、角度θ1は角度θ2より大きい。
【0038】
(主溝の子午断面)
図4は、主溝22Aの構造の一例を示す図である。
図4は、
図3におけるB-B部の子午断面を示す図である。
図4は、第1ブロックBK1と第2ブロックBK2との間の主溝22Aの構造を示す。ブロックBK1の屈曲点Kから、主溝22Aとラグ溝24との交差位置である点P13までの長さを長さLBとする。
図3におけるB-B部は、長さLBの中点(LB/2)の位置を通る。なお、屈曲点Kが複数存在する場合は、ラグ溝24から最も近い屈曲点Kから点P13までの長さを長さLBとする。
【0039】
図4に示すように、主溝22Aのトレッド面21への溝開口端部22Abから溝底221へ向かう間に、段部222が設けられている。段部222の溝中心側の端部222Tは、子午断面において、トレッド面21の法線Nに対する溝壁22Aaの角度が変化する屈曲点となる。つまり、溝壁22Aaは、屈曲点を有する。主溝22Aの断面図である
図4中の端部222Tによる屈曲点は、平面図である
図3において稜線222Rとして見える。
【0040】
ここで、
図4において、主溝22Aの第1ブロックBK1側の溝壁22Aaのトレッド面21の法線Nに対する角度をα1とする。また、主溝22Aの第2ブロックBK2側の溝壁22Aaのトレッド面21の法線Nに対する角度をα2とする。このとき、角度α1は、角度α2より小さい。
図3中のB-B部に限らず、主溝22Aの全域において、角度α1は、角度α2より小さいことが好ましい。
【0041】
上述したように、角度θ1は角度θ2より大きく、角度α1は角度α2より小さい。このように、トレッド平面視にて鋭角である角度θ2を有する第2ブロックBK2の溝壁22Aaの角度α2を、第1ブロックBK1の溝壁22Aaの角度α1より大きくすることによって、第2ブロックBK2のエッジ部の倒れこみを抑制し、ブロック剛性を向上させることができる。なお、角度θ1は例えば90度以上140度以下であり、角度θ2は例えば40度以上90度未満であり、角度α1と角度α2との差は例えば3度以上20度以下である。
【0042】
図3に戻り、トレッド面21の平面視において、主溝22Aの対向する溝壁22Aa、22Aa間の最大距離をW1とする。距離W1は溝開口端部22Ab、22Ab間の距離に相当する。また、対向する壁面の各端部222Tによる稜線222Rの間の距離をW2とする。距離W1および距離W2は、溝中心線220の延在方向に対して直交する方向の距離である。溝中心線220は、主溝22Aの対向する溝壁22Aa、22Aaの距離の中点をつないだ仮想線である。ラグ溝24と交差することによって主溝22Aの壁面が存在しない部分については、線H11、線H21によって壁面を補足して溝中心線220を想定する。溝中心線220は、ジグザグ形状になっている。
【0043】
このとき、距離W1に対する距離W2の比W2/W1は、0.15以上0.35以下であることが好ましい。比W2/W1がこの範囲内の値であれば、耐摩耗性と耐ストンドリリング性能とを向上させることができる。比W2/W1は、0.15以上0.30以下であることがより好ましい。なお、比W2/W1が0.15未満であることは好ましくない。主溝22Aの溝底に曲面を確保できず、グルーブクラックが発生する可能性が高いからである。
【0044】
トレッド面21の平面視において、主溝22Aの第1ブロックBK1側の溝開口端部22Abを延長した線H13と第1ブロックBK1を区画するラグ溝24の溝壁を延長した線H12とは、点P13において交差する。線H13と線H12とのなす角度φ1は、90度以上150度以下であることが好ましい。角度φ1がこの範囲内の値であれば、耐摩耗性と耐ストンドリリング性能とを向上させることができる。角度φ1が90度未満である場合は第1ブロックBK1のエッジ部での歪が大きくなるため、好ましくない。角度φ1が150度を超える場合は第1ブロックBK1の適切な形状が得られないため、好ましくない。角度φ1は、90度以上120度以下であることがより好ましい。
【0045】
また、主溝22Aの第2ブロックBK2側の溝開口端部22Abを延長した線H23と第2ブロックBK2を区画するラグ溝24の溝壁を延長した線H22とは、点P14において交差する。線H23と線H22とのなす角度φ2は、20度以上60度以下であることが好ましい。角度φ2がこの範囲内の値であれば、耐摩耗性と耐ストンドリリング性能とを向上させることができる。角度φ2は、30度以上50度以下であることがより好ましい。角度φ2は、40度であることがさらに好ましい。
【0046】
トレッド面21の平面視において、第1ブロックBK1のトレッド面21の踏面の第2ブロックBK2側のエッジE1のタイヤ周方向の長さをL1とする。長さL1は、点P13と点P16とのタイヤ周方向の長さである。点P16は、主溝22Aの第1ブロックBK1側の端部を延長した線H15とラグ溝24の溝壁を延長した線H14とが交差する点である。長さL1の両端部の一方から他方までの間の長さL2の区間において、主溝22AのブロックBK1側の溝壁の角度は一定であることが好ましい。本例において、長さL2の一端は点P13から長さL1の40%の位置であり、長さL2の他端は点P13から長さL1の60%の位置である。このため、本例では、長さL1の50%すなわち長さL1の中点の位置LMに、長さL2の区間の中点があり、長さL2は長さL1の20%の長さである。つまり、本例において、長さL1に対する長さL2の比L2/L1は0.20である。比L2/L1は0.15以上0.70以下であることが好ましい。長さL2の区間の中点の位置は、長さL1の両端部の一方から他方までの間の40%の位置から60%の位置に含まれていることが好ましい。
【0047】
つまり、ブロックの踏面のタイヤ周方向の両端部間の長さL1に対し、主溝22Aの第1ブロックBK1側の溝壁の角度が一定である区間の長さL2の比L2/L1は0.15以上0.70以下であり、長さL2の区間は、長さL1の両端部の一方(例えば、角度φ1側の点P13)から他方(例えば、角度φ3側の点P16)までの間の40%(すなわち0.4)の位置から60%(すなわち0.6)の位置に含まれる。なお、長さL2の区間において角度の変化が5%以下であれば、溝壁の角度は一定であるとみなすことができる。長さL2の区間において主溝22Aの溝壁の角度の変化を小さくすることにより、第1ブロックBK1の不均一な動きを抑制し、耐摩耗性能を向上させることができる。
【0048】
図5は、主溝22Aの構造の一例を示す図である。
図5は、
図3におけるC-C部の子午断面を示す図である。
図5に示すように、長さL2の区間の主溝22Aの延在方向の両側の溝壁22Aaの法線Nに対する角度をβ1、β2とする。角度β1と角度β2との差は、5度以下であることが好ましい。溝壁22Aaの角度の変化を小さくすることにより、第1ブロックBK1および第2ブロックBK2の不均一な動きを抑制し、耐摩耗性能を向上させることができる。角度β1と角度β2との差は、3度以下であることがより好ましい。
【0049】
再び
図3を参照すると、第1ブロックBK1を挟んでタイヤ周方向にラグ溝24とラグ溝24とが隣り合っている。第1ブロックBK1と第2ブロックBK2との間の主溝22Aの第1ブロックBK1側の溝壁の稜線を延長した線H11とラグ溝24の溝壁を延長した線H12との角度θ1と、主溝22Aの第1ブロックBK1側の端部を延長した線H13とラグ溝24の溝壁を延長した線H12とのなす角度φ1との差は、0度以上10度以下であることが好ましい。角度の差がこの範囲であれば、第1ブロックBK1の不均一な動きを抑制し、耐摩耗性能を向上させることができる。
【0050】
また、主溝22Aの第1ブロックBK1側の溝壁の稜線を延長した線H11と、ラグ溝24の溝壁を延長した線H14とは点P15において交差する。主溝22Aの第1ブロックBK1側の端部を延長した線H15とラグ溝24の溝壁を延長した線H14とは点P16において交差する。線H11と線H14とのなす角度θ3と、線H15と線H14とのなす角度φ3との差は20度以上40度以下であることが好ましい。角度の差がこの範囲であれば、第1ブロックBK1の不均一な動きを抑制し、耐摩耗性能を向上させることができる。
【0051】
ここで、
図3および
図4を参照し、第1ブロックBK1において、主溝22Aとラグ溝24とが交差する部分に着目すると、稜線222Rから溝開口端部22Abまでの領域は、主溝22Aの溝壁面であるとともに、ラグ溝24の近傍ではラグ溝24の面取り部でもある。主溝22Aの溝壁面とラグ溝24の面取り部とが滑らかに繋がっており、その境界は明確になっていない。
【0052】
図6から
図8は、主溝22Aの構造の一例を示す図である。
図6から
図8は、
図3中の周方向主溝22Aの子午断面図である。
図7は、
図3におけるC-C部の断面図である。
図6から
図8に示すように、周方向主溝22Aは、トレッド面21から溝底221に至るまでの間の溝壁22Aaに段部222を有する。段部222は、タイヤ周方向に延在する。段部222は、少なくとも一方の溝壁22Aaに設けられている。段部222は、周方向主溝22Aの溝開口端部22Abから溝底に向かって溝壁22Aaの溝壁角度β1、β2が変化する変曲部をなす。周方向主溝22Aは、その溝開口端部22Abであるトレッド面21から溝底221に向かって段部222までの溝壁22Aaにおいて、トレッド面21の法線に対する溝壁角度β1、β2は、10度以上45度以下であることが好ましい。
図6において、溝壁角度β1は例えば30度、溝壁角度β2は例えば15度である。
図7において、溝壁角度β1は例えば15度、溝壁角度β2は例えば15度である。
図8において、溝壁角度β1は例えば15度、溝壁角度β2は例えば30度である。
【0053】
図6から
図8に示すように、子午断面において、各溝開口端部22Ab同士を結ぶ直線と平行な仮想区分線L3を溝深さDの1/2位置(D/2)に引いてタイヤ径方向外側とタイヤ径方向内側とに区分する。このとき、タイヤ径方向外側の断面積SUに対する、タイヤ径方向内側の断面積SDの比SD/SUは0.5未満であることが好ましい。比SD/SUは0.5未満であれば、主溝22Aについて耐ストンドリリング性能を向上させることができる。
【0054】
図9から
図11は、主溝22Aの溝深さと、トレッド面21から段部222までの深さとの関係を示す子午断面図である。
図9から
図11において、主溝22Aの溝深さをDとし、トレッド面21から、溝壁角度が変化する屈曲点である段部222までの深さをD
Eとした場合に、比D
E/Dは0.60以上0.80以下であることが好ましい。比D
E/Dは0.60以上0.80以下であることは、トレッド面21の摩耗60%~80%の範囲に段部222が設けられていることを意味する。この範囲に段部222が設けられていることにより、ブロックBKの剛性を高めることができ、かつ、主溝22Aに石が入り込むことを防いで耐ストンドリリング性能を向上させることができる。なお、主溝22Aの溝深さDの最大値は、例えば、19.1mmである。
【0055】
(変形例)
主溝22Aは、子午断面において、段部222を有する形状に限定されない。例えば、主溝22Aは、溝壁に屈曲点を有する構造であってもよい。
図12は、主溝22Aの子午断面の変形例を示す図である。
図12に示すように、主溝22Aは、子午断面において、屈曲点222Kを有していてもよい。屈曲点222Kは、
図4中の端部222Tと同様に、平面図である
図3において稜線222Rとして見える。
【0056】
図12において、主溝22Aの第1ブロックBK1側の溝壁22Aaのトレッド面21の法線Nに対する角度α1は、主溝22Aの第2ブロックBK2側の溝壁のトレッド面21の法線Nに対する角度α2より小さい。第2ブロックBK2の溝壁22Aaの角度α2を、第1ブロックBK1の溝壁22Aaの角度α1より大きくすることによって、第2ブロックBK2のエッジ部の倒れこみを抑制し、ブロック剛性を向上させることができる。
【0057】
図12において、溝開口端部22Ab同士の距離W1に対する、屈曲点222K同士の距離W2の比W2/W1は、0.15以上0.35以下であることが好ましい。比W2/W1がこの範囲内の値であれば、耐摩耗性と耐ストンドリリング性能とを向上させることができる。比W2/W1は、0.15以上0.30以下であることがより好ましい。
【0058】
トレッド面21から、溝壁角度が変化する屈曲点222Kまでの深さをDEとした場合に、比DE/Dは0.60以上0.80以下であることが好ましい。比DE/Dは0.60以上0.80以下であることは、トレッド面21の摩耗60%~80%の範囲に屈曲点222Kが設けられていることを意味する。この範囲に屈曲点222Kが設けられていることにより、ブロックBKの剛性を高めることができ、かつ、主溝22Aに石が入り込むことを防いで耐ストンドリリング性能を向上させることができる。
【0059】
以上は、タイヤ赤道線CLに近い第1ブロックBK1と、第1ブロックBK1に隣接する第2ブロックBK2とに着目して説明したが、トレッド部2の各陸部20C、20M1および20M2に含まれる各ブロックBKが上述した各特徴を備えていることが好ましい。例えば、第1ブロックBK1と第2ブロックBK2との位置を入れ換えて着目した場合においても、各ブロックBKが上述した各特徴を備えていることが好ましい。これにより、タイヤの耐摩耗性能および耐ストンドリリング性能を向上させることができる。
【0060】
(実施例)
本実施例では、条件が異なる複数種類のタイヤについて、耐摩耗性能および耐ストンドリリング性能に関する性能試験が行われた(表1から表5を参照)。この性能試験では、サイズ455/55R22.5のタイヤ(重荷重用タイヤ)を、22.5インチ×14.00インチのリムに装着し、規格最大空気圧(900kPa)を充填して、試験車両(2-D・トラクターヘッド)のドライブ軸に装着し、規格最大荷重を加えた状態で実車評価を実施した。
【0061】
耐摩耗性能の評価については、10万km走行後のタイヤ摩耗の状況について、従来例を基準(100)とする指数で示した。この指数が大きいほど、耐摩耗性能に優れていることを示す。
【0062】
耐ストンドリリング性能の評価については、10万km走行後の周方向主溝にストンドリリングが発生した状況について、従来例を基準(100)とする指数で示した。この指数が大きいほど、耐ストンドリリング性能に優れていることを示す。
【0063】
表1から表5の実施例1から実施例45のタイヤは、いずれも、トレッド部に、主溝とラグ溝とによって区画されたブロックを複数有しており、主溝の壁面に段部または屈曲部を有し、角度θ1が90度以上140度以下であり、かつ、角度θ2が40度以上90度以下であり、角度α1とα2との差が3度以上20度以下のタイヤである。また、実施例1から実施例45のタイヤは、比W2/W1が0.15以上0.35以下であるものとそうでないもの、角度φ1が90度以上150度以下であるものとそうでないもの、角度φ2が30度以上80度以下であるものとそうでないもの、長さL2の区間の中点の位置が長さL1の両端部の一方から他方までの間の40%(0.4)の位置から60%(0.6)の位置に含まれるものとそうでないもの、比L2/L1が0.15以上であるものとそうでないもの、角度β1とβ2との差が5度以下であるものとそうでないもの、角度θ1と角度φ1との差が0度以上10度以下であるものとそうでないもの、角度θ3と角度φ3との差が20度以上40度以下であるものとそうでないもの、比SD/SUが0.5未満であるものとそうでないもの、比DE/Dが0.60以上0.80以下であるものとそうでないもの、である。
【0064】
表1中の従来例のタイヤは、トレッド部に、主溝とラグ溝とによって区画されたブロックを複数有しており、角度θ1が150度、角度θ2が100度であり、溝壁の角度α1と角度α2との差が0度、すなわち角度α1と角度α2とが同じタイヤである。
【0065】
表1から表5の試験結果に示すように、各実施例のタイヤは、耐摩耗性能および耐ストンドリリング性能が優れていることが分かる。
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【符号の説明】
【0071】
1 タイヤ
2 トレッド部
3 ショルダー部
4 サイドウォール部
5 ビード部
6 カーカス層
7 ベルト層
20C、20M1、20M2、20S 陸部
21 トレッド面
22A、22B、23 周方向主溝
22Aa 溝壁
22Ab 溝開口端部
24、30 ラグ溝
51 ビードコア
52 ビードフィラー
71、72、73、74 ベルト
220 溝中心線
221 溝底
222 段部
222K 屈曲点
222R 稜線
222T 端部
BK ブロック
BK1 第1ブロック
BK2 第2ブロック
CL タイヤ赤道面
K 屈曲点
T タイヤ接地端