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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】無線機
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/04 20060101AFI20240522BHJP
【FI】
H04B1/04 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020105097
(22)【出願日】2020-06-18
(65)【公開番号】P2021197706
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000100746
【氏名又は名称】アイコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(72)【発明者】
【氏名】足立 紳一郎
【審査官】鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-254927(JP,A)
【文献】特開平06-204900(JP,A)
【文献】特表2017-508378(JP,A)
【文献】特開2012-039637(JP,A)
【文献】特開2008-187308(JP,A)
【文献】特開平10-322240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信を開始するにあたって、その送信周波数が、前回チューニングをとった送信周波数に対して予め定める割合以上離れている場合に、制御手段がアンテナチューナーにチューニング動作を行わせる無線機において、
前記制御手段は、運用周波数帯域に閾値を設け、前記予め定める割合を、前記前回チューニングをとった送信周波数が属する運用周波数帯域が前記閾値以上の場合に、前記閾値未満の場合よりも大きく設定することを特徴とする無線機。
【請求項2】
前記送信の開始は、プレス・トーク・スイッチの押下げ、または電鍵キーの操作による
ものであることを特徴とする請求項1記載の無線機。
【請求項3】
前記運用周波数帯域に前記閾値を複数設けることを特徴とする請求項1または請求項2記載の無線機。
【請求項4】
前記閾値は、10~15MHzであることを特徴とする請求項3記載の無線機。
【請求項5】
前記前回チューニングをとった送信周波数に対して、前記予め定める割合は、前記閾値
が、11MHz以上の場合は±1%以上、11MHz未満では±0.5%以上のずれであることを特徴とする請求項3または4記載の無線機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外に持ち出され、その場所に架設したアンテナ線に接続して使用される無線機に関し、特にそのような場合に必要になるアンテナチューナーのチューニング動作に関する。
【背景技術】
【0002】
アンテナが別体となる無線機において、据置き型の無線機の場合、従来から、専用のアンテナを設置して用いられることが多い。具体的には、高いポールを建てて、その上に取付けられた、効率の良い素子を並べたアンテナに接続して使用されている。
【0003】
一方、近年では、バッテリの大容量化や、前記据置き型の無線機の小型化も進み、屋外に持ち出し可能な無線機となって発売されている。そのような無線機は、使用者が、見通しの良さそうな場所で、適宜架設したアンテナ線に接続されて、無線局となる。前記アンテナ線は、簡易なものでは、釣り竿状に伸縮可能な棒に巻付けられることで、延長して、何分の1波長かのアンテナとして使用される。そのため、運用周波数帯域毎に、長さの異なるものが用意されることもある。
【0004】
しかしながら、前記運用周波数帯域を替える毎に、アンテナ線を繋ぎ替える作業も大変であり、そのため、或る程度の長さのアンテナ線を架設して、前記運用周波数帯域の違いによるインピーダンスのずれは、無線機との間にアンテナチューナーを介在して、このアンテナチューナーをチューニングすることで、整合されている。そのチューニング動作は、送信機から調整キャリアを出力し、適宜、アッテネータなどを介してアンテナ線へ出力し、アンテナからの反射波をSWR(定在波比)測定回路で測定しつつ、伝送経路に介在したインダクタンスとキャパシタンスを調整し、測定されたVSWR(電圧定在波比)が、一般に、1.5以下が理想で、3以下に抑えるように行われる。インピーダンスの調整範囲としては、たとえば16.7Ω~150Ωと幅広く、そのため、調整には数秒から数十秒かかり、その間は、インジケータにチューニング動作中であることが表示されるなどして、送受信はできない。
【0005】
そこで、典型的な従来技術のアンテナチューナーが、本件出願人により、特許文献1で提案されている。この従来技術は、コンデンサおよびコイルの同調素子から成るアンテナチューナーにおいて、運用周波数の切換えに応答して、同調素子の回路定数をVSWRが最小となるように自動チューニングを行うものである。
【0006】
また、特許文献2にも、運用周波数の切換えに応答して、自動アンテナカプラの調整を行うようにした送信機が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実公昭63-16192号公報
【文献】特公昭64-3438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の従来技術は、運用周波数の切換えに連動して、自動的にアンテナチューナーのチューニング動作を行うものであり、運用周波数の切換え、つまり他の局へ選局したり他の帯域に切換えたら、チューニング動作を行うことになる。しかしながら、実際の無線機の使用では、運用周波数帯域はそのままで、僅かに周波数をずらして他の局を捜したりすることも多く、その度に、上述のように時間の掛るチューニング動作が行われてしまうと、通信機会を喪失することになる。
【0009】
そこで、多くの無線機は、新たな送信周波数fnで送信を開始する際、その送信周波数fnが前回チューニングをとった送信周波数fbに対して予め定める割合、たとえば±1%以上離れていると、プレス・トーク・スイッチの押下げを契機に自動的にチューニング動作を行い、離れていないとチューニング動作を行わないように構成されている。
【0010】
ところが、10mや15m等の比較的長いアンテナ線を用いる場合は、その±1%程度でも、VSWR(電圧定在波比)を1.5程度に抑えることができるものの、そのような充分な長さのアンテナ線が使用できない、短縮率の大きい、すなわち波長に対して非常に短いアンテナの場合、VSWR(電圧定在波比)を低く抑えることができないという問題がある。そのため、上記のように自動的にチューニング動作を行ったにも拘わらず、再度、強制的にチューニングを行う操作が必要となってしまう。なお、受信の場合は、周波数が多少ずれても受信は可能であるが、送信の場合は、チューニングにずれがあると、送信電力が無駄になって、到達範囲も狭くなってしまう。
【0011】
本発明の目的は、前回チューニングをとった送信周波数に対して予め定める割合以上離れた周波数で新たに送信を開始する際にアンテナチューナーにチューニング動作を行わせる無線機において、より確実にチューニングを行うことができる無線機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の無線機は、送信を開始するにあたって、その送信周波数が、前回チューニングをとった送信周波数に対して予め定める割合以上離れている場合に、制御手段が運用周波数帯域に閾値を設け、前記予め定める割合を、前記前回チューニングをとった送信周波数が属する運用周波数帯域が前記閾値以上の場合に、前記閾値未満の場合よりも大きく設定することを特徴とする。
【0013】
たとえば屋外において無線局を運用するような場合、適宜移動した場所に架設したアンテナ線に、無線機を接続して使用される。アンテナ線の張り具合は一様ではなく、また運用周波数帯域によって適切なアンテナ長さも大きく変化するので、そのような際にアンテナと無線機とのインピーダンスをマッチングするアンテナチューナーが設けられる。アンテナチューナーは、無線機に、内蔵、つまり一体の物と、外付け、つまり別体の物とがあるが、共に、チューニング動作は、無線機内の制御手段によって制御される。
【0014】
通常、アンテナ線を張り直したり、運用周波数帯域を切換えたりした場合には、前記インピーダンスが大きくずれている可能性があり、チューニング釦の操作などで、強制的にチューニング動作が開始させられることが多い。しかしながら、たとえば運用周波数帯域はそのままで、新しい通信相手を捜したりするために、僅かに周波数をずらしたりした際にも、チューニング動作を行った方がよい場合がある。一方、チューニング動作には、前記の数秒から数十秒かかり、その間は送受信ができない。そのため、毎回、その僅かに周波数をずらした際に自動的(強制的)にチューニング動作を行ってしまうと、それだけ通信機会が損なわれることになる。
【0015】
そこで本発明では、前回チューニングをとった送信周波数に対して予め定める割合以上離れた周波数で新たに送信を開始する際に、制御手段がアンテナチューナーにチューニング動作を自動的( 強制的) に行わせることで、操作性を向上した無線機において、さらに、前記制御手段が運用周波数帯域に閾値を設け、前記予め定める割合を、前記前回チューニングをとった送信周波数が属する運用周波数帯域が前記閾値以上の場合に、前記閾値未満の場合よりも大きく設定する。
【0016】
したがって、相対的に波長が長い低い周波数では、前記予め定める割合が小さくても、確実にチューニング動作を行い、その後の運用中に、使用者が不整合を感じて強制的に再度チューニング動作を行わなければならなくなるようなケースを減少し、操作性を向上することができる。
【0017】
また、本発明の無線機では、前記送信の開始は、プレス・トーク・スイッチの押下げ、または電鍵キーの操作によるものであることを特徴とする。
【0018】
上記の構成によれば、前回チューニングをとった送信周波数に対して予め定める割合以上離れた周波数で新たに送信を開始する際に、アンテナチューナーにチューニング動作を前記自動的(強制的)に行わせるにあたって、そのチューニング動作のトリガを、プレス・トーク・スイッチの押下げ、または電鍵キーの操作で実現する。
【0019】
したがって、使用者が、送信周波数を前記予め定める割合以上ずらした後、最初に、プレス・トーク・スイッチが押下された際、または電鍵キーが操作された際に、チューニング動作が自動的(強制的)に行われることで、専用のチューニング釦が設けられていなくても、チューニング動作の操作性を向上することができる。
【0020】
さらにまた、本発明の無線機では、前記運用周波数帯域に閾値を設け、この閾値以上であるか否かで、前記予め定める割合を切換えることを特徴とする。
【0021】
上記の構成によれば、前記予め定める割合、すなわち前記アンテナチューニングを行うか否かを判断するための、新たに送信を開始する周波数と前回チューニングをとった周波数との差の割合は、周波数帯域に適合して決定されればよいが、運用周波数帯域に閾値を設け、この閾値以上であるか否かで、前記予め定める割合を2つの値に集約する。これによって、制御を簡素化することができる。
【0022】
また、本発明の無線機では、前記閾値は、10~15MHzであることを特徴とする。
【0023】
上記の構成によれば、10MHzで波長は30m、15MHzで波長は20m、1/4波長は、それぞれ7.5m、5mとなる。
【0024】
したがって、比較的架設が容易な前記の長さのアンテナ線に対して、波長が長いか短いかに応じて、前記チューニング動作を行うか否かを判断する前記予め定める割合を、それぞれ適切に設定することができる。
【0025】
さらにまた、本発明の無線機では、前記前回チューニングをとった送信周波数に対して、前記予め定める割合は、前記閾値が、11MHz以上の場合は±1%以上、11MHz未満では±0.5%以上のずれであることを特徴とする。
【0026】
上記の構成によれば、アンテナチューニングを行うか否かを判断する前記予め定める割合を、運用周波数帯域から前記2つの値に集約するにあたって、波長が短くてアンテナ線の長さのずれの影響の出にくい場合は±1%で大きく、波長が長くてずれの影響の出易い場合は±0.5%で小さく設定するので、より適切に、チューニング動作を行うか否かの判定を行うことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の無線機は、以上のように、送信を開始するにあたって、その送信周波数が、前回チューニングをとった送信周波数に対して予め定める割合以上離れている場合に、制御手段がアンテナチューナーにチューニング動作を自動的(強制的)に行わせることで、操作性を向上するようにした無線機において、前記制御手段が運用周波数帯域に閾値を設け、前記予め定める割合を、前記前回チューニングをとった送信周波数が属する運用周波数帯域が前記閾値以上の場合に、前記閾値未満の場合よりも大きく設定する。
【0028】
それゆえ、相対的に波長が長い低い周波数では、前記予め定める割合が小さくても、確実にチューニング動作を行い、その後の運用中に、使用者が不整合を感じて強制的に再度チューニング動作を行わなければならなくなるようなケースを減少し、操作性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施の一形態に係る無線機における送信機のブロック図である。
図2】前記送信機のアンテナチューナーの一構成例を示すブロック図である。
図3】前記アンテナチューナーのチューニング動作を説明するためのフローチャートである。
図4】本発明の実施の他の形態に係る無線機における送信機のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の一形態に係る無線機における送信機1のブロック図である。本発明は、送信にあたって、アンテナチューナーのチューニング動作の制御に特徴を有するものであり、前記アンテナチューナーによってアンテナとのインピーダンスを整合させれば、受信性能も向上するが、受信のための構成は任意であり、その説明を省略する。
【0031】
マイクロフォン21で集音された音声信号は、アナログ/デジタル変換器22でデジタル信号に変換され、DSPやFPGAなどから成る変調回路23において、所定の変調方式で変調信号に変換される。その変調信号は、デジタル/アナログ変換器24でアナログ高周波信号に変換され、バンドパスフィルタ(以下、BPFと称す)25で帯域制限される。BPF25で帯域制限された送信信号は、波形が歪まないように、自動レベル調整回路(以下、ALCと称す)26において、アンプ27への入力レベルが制限された後、前記アンプ27で電力増幅され、ローパスフィルタ(以下、LPFと称す)28を介してアンテナ29から送信される。このLPF28とアンテナ29との間に、アンテナチューナー3が介在される。
【0032】
前記アンテナチューナー3の前後には、切換えスイッチ41,42が設けられており、制御手段である制御部5が前記スイッチ41,42を切換え制御することで、この内蔵アンテナチューナー3を経由するか、並列に設けられたスルーライン43を経由するかが切換えられる。スルーライン43は、良好にインピーダンス整合が取れているアンテナを接続する場合や、或いはアンテナチューナー3を介してもインピーダンス整合が取れない場合、アンテナチューナー3の発熱などによる影響を避ける場合などで、アンテナ29と無線回路とを直結する際に使用される。
【0033】
前記制御部5には、操作部6および表示部7が接続される。表示部7は、送受信の周波数や信号レベルの表示などを行うとともに、後述するチューニング動作中であることを示す表示を行う。操作部6には、本体上に搭載される各種の操作釦(タッチパネルも含む)61以外にも、前記マイクロフォン21と一体のプレス・トーク・スイッチ62や、別途オプション接続可能な電鍵キー63などが含まれる。操作釦61の操作に応答して、制御部5は各種の制御動作や表示動作を行う。制御部5は、プレス・トーク・スイッチ62が押下げられるとマイクロフォン21で集音された音声信号を変調して送信し、押下げが解除されると受信状態となる。なお、制御部5は、CWモードでの通信において、ブレークイン機能がONである場合、電鍵キー63の操作により送信が開始され、操作に合せて変調回路23において、変調信号をON/OFFさせる。
【0034】
図2は、アンテナチューナー3の電気的構成の一例を示すブロック図である。このアンテナチューナー3は、入力端子31と出力端子32との間の信号ライン30に直列に介在されるインダクタL1,L2,L3,L4が、並列のスイッチS1,S2,S3,S4によって選択的に短絡されるとともに、インダクタL1の入力側に並列に接続されるキャパシタC1,C2,C3,C4が、直列のスイッチS11,S12,S13,S14によって選択的に地絡されることで、チューニング動作(インピーダンスの整合)を行うものである。
【0035】
そのチューニング動作のために、前記信号ライン30には、SWR測定回路33が設けられるとともに、その上流側には、アッテネータ34が設けられる。このアッテネータ34の前後にはバイパススイッチ35,36が設けられており、前記制御部5によって、チューニング動作を行う場合は、バイパススイッチ35,36がアッテネータ34側に接続されて、送信回路からの所定のキャリア成分が、たとえば1/10に減衰されて、SWR測定回路33からインダクタL1,L2,L3,L4の列およびキャパシタC1,C2,C3,C4の列に入力される。制御部5は、通常送信時は、バイパススイッチ35,36をスルーライン37側に接続している。図2において、破線で示す構成は、実施の形態2で説明する。
【0036】
チューニング動作では、制御部5は、前記の通り、バイパススイッチ35,36をアッテネータ34側に切換え、前記変調回路23に、送信周波数でのキャリア成分を発生させ、キャリア検出回路38で、それを検出すると、SWR測定回路33によってVSWRをモニタしつつ、スイッチS1~S4;S11~S14を適宜切換え、該VSWRが最小となるように自動チューニングを行う。その間、表示部7には、チューニング動作中であることを表示する。チューニング動作を終了すると、制御部5は、バイパススイッチ35,36をスルーライン37側に切換え、送信を可能にする。
【0037】
このチューニング動作は、図示しないチューニング釦の操作などで、強制的に行うこともできる。ただし、ポータブル無線機で、操作パネルの面積が少ない場合もあり、その場合、専用のチューニング釦は設けられず、操作釦61の操作に応答して、制御部5は、表示部7にメニュー画面を展開して、設定画面を表示させたうえで、モード選択からチューニング動作が選択されることになる。特にそのようなケースに好適に、チューニング動作の操作性を向上するために、本実施形態の制御部5は、図3で示すような動作を行うことで、適宜チューニング動作を行う。
【0038】
図3は、チューニング動作を説明するためのフローチャートである。ステップs1では、メモリなどから、前回チューニングをとった送信周波数fbを読出す。ステップs2では、現在設定されている周波数fnを検出する。ステップs3では、プレス・トーク・スイッチ62が押下されたか否かを判断し、押下されるまで、つまり送信開始まではステップs2に戻って、現在設定されている周波数fnを更新する。なお、CWモードでの通信の場合、ステップs3では、前記のプレス・トーク・スイッチ62の押下に代えて、電鍵キー63の短押しを検出することになる。
【0039】
ステップs3でプレス・トーク・スイッチ62が押下される、または電鍵キー63の操作がされると、ステップs4で、先ずステップs1で読出されている前回の送信周波数fbが、予め定める閾値周波数である11MHz以上であるか否かが判断され、そうであるときにはステップs5に移り、チューニング動作を行うか否かの判定閾値となる予め定める割合、つまり周波数fnとfbとの差が、周波数fbの±1%に設定され、そうでないときにはステップs6に移り、前記判定閾値は、より小さい±0.5%に設定される。
【0040】
ステップs5およびs6では、前記ステップs2における現在の設定周波数fnが、前回の送信周波数fbの、±1%および±0.5%の範囲に、それぞれ入っているか否かが判断され、入っていない場合はステップs7で、スイッチ35,36がアッテネータ34側に切換えられて、チューニング動作が開始される。チューニング動作では、スイッチS1~S4;S11~S14が切換えられ、ステップs8で前記VSWRが最小となってチューニング動作を終了してもよいかを判断し、チューニング動作を継続する場合はステップs7に戻る。ステップs8でチューニング動作を終了すると判定されるとステップs9に移り、現在の設定周波数fnが前回チューニングをとった送信周波数fbに設定されてメモリなどに記憶される。
【0041】
ステップs10では、実際の音声通話を可能にして、すなわちスイッチ35,36をスルーライン37側に切換えて、処理を終了する。ステップs5,s6において、現在の設定周波数fnが、前回の送信周波数fbの±1%,±0.5%の範囲に入っている場合は、ステップs7,s8のチューニング動作およびステップs9の送信周波数fbの更新動作は行われず、直接ステップs10の送信動作に移る。
【0042】
本実施形態の送信機1は、以上のように、前回チューニングをとった送信周波数fbに対して予め定める割合以上離れた周波数fnで新たに送信を開始する際に、制御部5がアンテナチューナー3にチューニング動作を自動的(強制的)に行わせることで、操作性を向上した無線機において、チューニング動作を行うか否かの判定閾値である前記予め定める割合を、運用周波数帯域によって変化させる(差を持たせる)。具体的には、上述の例では、前記予め定める割合を、運用周波数帯域(fb)が、相対的に高い周波数である11MHz以上である場合には相対的に大きい値であるfb±1%の範囲に、相対的に低い周波数である前記11MHz未満である場合には相対的に小さい値であるfb±0.5%の範囲に設定する。
【0043】
ここで、図3のチューニング動作には、数秒から数十秒かかり、その間は送受信ができない。そのため、毎回、僅かに周波数をずらした際に自動的(強制的)にチューニング動作を行ってしまうと、それだけ通信機会が損なわれることになる。これに対して、上述のように、チューニング動作を行うか否かの判定閾値である前記予め定める割合を切換え、相対的に波長が短い高い周波数では、前記予め定める割合をfb±1%として、それ以内ではチューニング動作を行わないことで、チューニング動作を行う回数を減らして、通信機会を拡大することができる。一方、相対的に波長が長い低い周波数では、波長に対して非常に短いアンテナを使用してしまうと、前記fb±1%の範囲ではチューニングをカバーし切れない可能性もある。そのため、前記判定閾値である前記予め定める割合を、より小さいfb±0.5%として、チューニング動作を行った後に、使用者が不整合を感じて強制的に再度チューニング動作を行わなければならないようなケースを減少し、操作性を向上することができる。
【0044】
また、本実施形態の無線機では、前回チューニングをとった送信周波数fbに対して所定の割合以上離れた周波数で送信を開始する際に、制御部5がアンテナチューナー3にチューニング動作を自動的(強制的)に行わせるにあたって、そのチューニング動作のトリガを、最初に、プレス・トーク・スイッチ62が押下されたこと、或いは電鍵キー63が短押しされたこととするので、専用のチューニング釦が設けられていなくても、チューニング動作の操作性を向上することができる。
【0045】
さらにまた、アンテナチューニングを行うか否かの判定閾値である前記予め定める割合は、周波数帯域に適合して適宜決定されればよいところ、本実施形態の無線機では、上述のように運用周波数帯域に、一例として11MHzの閾値を設け、この閾値以上であるか否かで、前記予め定める割合を、たとえばfb±1%とfb±0.5%とで切換えている。したがって、判定閾値をこれら2つの値に集約することで、制御部5による制御を簡素化することができる。前記の11MHzは、前記運用周波数帯域を、1.8~10MHzと、14~50MHzとに分けることを想定している。
【0046】
また、上述の例では、前記判定閾値を切換える閾値周波数が11MHzであるけれど、10~15MHzであることが好ましい。これは、10MHzで波長は30m、15MHzで波長は20m、1/4波長は、それぞれ7.5m、5mとなるので、比較的架設が容易なそのような長さのアンテナ線に対して、実際の送信波長が長いか短いかに応じて、前記チューニング動作を行うか否かの判定閾値を適切に切換えられるためである。
【0047】
そして、アンテナチューニングを行うか否かの判定閾値を運用周波数帯域から前記の2つに分けるにあたって、閾値周波数を11MHzとして、それ以上で波長が短くてアンテナ線の長さのずれの影響の出にくい場合は±1%で大きく、波長が長くてずれの影響の出易い場合は±0.5%で小さく設定するので、より適切にチューニング動作を行うか否かの判定を行うことができる。
【0048】
本実施形態では、判定閾値を切換える閾値周波数を、前記11MHzの1つとしているが、2つ以上、すなわち運用周波数帯域を3つ以上に区分してもよい。また、判定閾値も、±1%と±0.5%としているが、他の値が用いられてもよい。たとえば、高い方の周波数では±1%より大きい、たとえば±1.5%とし、低い方の周波数では±0.5%より小さい、たとえば±0.3%とするものである。
【0049】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の他の形態に係る無線機における送信機1aのブロック図である。この送信機1aは、上述の送信機1に類似し、対応する部分には同一の参照符号を付して、その説明を省略する。上述の送信機1は、アンテナチューナー3が無線機に内蔵、つまり一体であるのに対して、この送信機1aでは、アンテナチューナーが、外付け、つまり別体で構成される点で異なる。
【0050】
したがって、この送信機1aでは、アンテナを接続するためのコネクタには、同軸ケーブルを介してアンテナチューナーが接続され、またはアンテナが接続されることになる。また、この送信機1aに適応するアンテナチューナーには、図2において、破線の構成が付加されることになる。すなわち、図1の送信機1におけるスルーライン43およびスイッチ41,42に対応するスルーライン39およびバイパススイッチ35,38が設けられる。バイパススイッチ35は3つの個別接点を有し、バイパススイッチ38は信号ライン30の最終段に介在される。これらのバイパススイッチ35,38の切換えや、前述のチューニング動作は、送信機1a側の前記制御部5で行われてもよいが、該アンテナチューナー側にも制御部を設けて、それらが協働して行うようにしてもよい。
【0051】
このように構成することで、前記アンテナチューナーによる損失や発熱の影響を小さくすることができ、特に送信電力を大きくする場合に好適である。
【符号の説明】
【0052】
1,1a 送信機
21 マイクロフォン
22 アナログ/デジタル変換器
23 変調回路
24 デジタル/アナログ変換器
25 BPF
26 ALC
27 アンプ
28 LPF
29 アンテナ
3 アンテナチューナー
33 SWR測定回路
34 アッテネータ
35,36,38 バイパススイッチ
38 キャリア検出回路
39,43 スルーライン
41,42 切換えスイッチ
5,5a 制御部
6 操作部
61 操作釦
62 プレス・トーク・スイッチ
63 電鍵キー
7 表示部
図1
図2
図3
図4