(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】ナノ細孔センシングデバイスと操作方法およびその成形方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/00 20060101AFI20240522BHJP
C12M 1/00 20060101ALN20240522BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALN20240522BHJP
【FI】
G01N27/00 Z
C12M1/00 A
C12Q1/6869 Z
(21)【出願番号】P 2021553295
(86)(22)【出願日】2020-03-11
(86)【国際出願番号】 GB2020050606
(87)【国際公開番号】W WO2020183172
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2023-03-09
(32)【優先日】2019-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511252899
【氏名又は名称】オックスフォード ナノポール テクノロジーズ ピーエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シエ,ピン
(72)【発明者】
【氏名】ミリス,ジャスティン
(72)【発明者】
【氏名】ヒーリー,ケン
【審査官】清水 靖記
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/021815(WO,A1)
【文献】特表2014-529296(JP,A)
【文献】特表2018-510329(JP,A)
【文献】国際公開第2014/132343(WO,A1)
【文献】特開2013-148425(JP,A)
【文献】特開2014-190891(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0133255(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00 - G01N 27/10
G01N 27/14 - G01N 27/24
G01N 33/48 - G01N 33/98
C12M 1/00 - C12M 3/10
C12Q 1/00 - C12Q 3/00
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ細孔検知のためのデバイスであって、
分析物リザーバと出口チャンバとを分離するように配設されている構造であって、前記構造が、ナノ細孔構造のアレイを備え、各ナノ細孔構造が、前記分析物リザーバと前記出口チャンバとの間の前記構造を通る流体接続のための通路を備える、構造と、
前記通路にわたって電位差を課すために、前記分析物リザーバおよび前記出口チャンバ内にそれぞれ接続されている、駆動電極と、
複数の電気変換要素であって、各要素が、それぞれのナノ細孔構造の前記通路に、該ナノ細孔構造内の該電気変換要素における流体電位を測定するために、接続されている、電気変換要素と、
複数の制御端子であって、各制御端子が、制御信号を印加して、それぞれのナノ細孔構造にわたる前記電位差を変化させるために、該ナノ細孔構造に接続されている、制御端子と、を備える、ナノ細孔検知のためのデバイス。
【請求項2】
各ナノ細孔構造に関連付けられた前記電気変換要素および前記制御端子が、直接的に接続されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記
デバイスが、各それぞれのナノ細孔構造における前記電気変換要素における前記流体電位の測定に応答して、制御信号を印加して、該ナノ細孔構造にわたる前記電位差を変化させるように構成されている、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記制御信号の前記印加が、前記制御端子のうちの少なくとも1つと前記駆動電極のうちの少なくとも1つとの間の前記電位差を変化させるように構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記制御信号が、前記接続された制御端子と前記駆動電極のうちの少なくとも1つとの間の前記電位差を同時に変化させるために、複数の前記ナノ細孔構造に
送達可能である、請求項1~4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記電気変換要素が、測定回路から隔離可能である、請求項1~5のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記電気変換要素が、前記制御信号の前記印加前に隔離可能である、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記ナノ細孔構造が、ナノ細孔を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記制御信号が、
分析物が閉塞されていることを前記デバイスが検出するときに、ナノ細孔の前記通路の閉塞を除去するために、
測定中の分析物を拒絶するために、ならびに/または
前記ナノ細孔分析物を通じた分析物の移動の方向および/もしくは速度を変化させるために、
前記ナノ細孔にわたる前記電位差を変化させることを目的として印加される、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記アレイが、電子回路を有し、各電子回路が、それぞれのナノ細孔構造に関連付けられ、前記電気変換要素に接続され、各電子回路が、前記電気変換要素から受信される信号を修正および/または処理するように構成されている、請求項1~9のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項11】
各電子回路が、ナノ細孔構造のグループに関連付けられた、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記アレイが、制御回路を有し、各制御回路が、それぞれのナノ細孔構造に関連付けられ、前記制御端子および/または前記電気変換要素に接続され、前記制御回路が、前記それぞれのナノ細孔構造において、信号に応答して前記駆動電極によって課せられる電位を変化させるように構成されている、請求項1~11のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項13】
各制御回路が、ナノ細孔構造のグループに関連付けられた、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記構造が、
ナノ細孔を組み込む、および/またはナノ細孔を支持するためのウェルを組み込む、ナノ細孔層と、
チャネルを組み込む基層と、を有し、
前記ナノ細孔層および前記基層が、前記ナノ細孔および/またはウェルが整列して前記通路を画定するようにともに挟まれる、請求項1~13のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項15】
前記電気変換要素、前記制御回路、または前記制御端子のうちの少なくとも1つが、前記構造の外面の上または間に配置されている、請求項13に記載のデバイス。
【請求項16】
ナノ細孔検知のためのデバイスを動作させる方法であって、
分析物リザーバと出口チャンバとを分離する構造内に配置されているナノ細孔センサのアレイにわたって
駆動電極間の電位差を課すことであって、各ナノ細孔センサが、前記分析物リザーバと前記出口チャンバとの間に流体接続を提供するための通路を有する、課すことと、
前記ナノ細孔センサによる分析のための分析物を提供することであって、各ナノ細孔センサが、分析物が前記ナノ細孔センサのナノ細孔を通して誘導されるときに、該ナノ細孔センサの電気変換要素における電位の変化を測定するための電気変換要素を有する、提供することと、
前記アレイのナノ細孔センサの電気変換要素の制御端子に制御信号を印加して、該ナノ細孔センサにわたる前記電位差を変化させることと、を含む、方法。
【請求項17】
前記制御端子を前記電気変換要素に切り替え可能に接続することと、前記制御端子に前記制御信号を印加することと、をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
該ナノ細孔センサの前記電気変換要素における流体電位の変化の特性を分析することと、該特性のうちの少なくとも1つに応答して該ナノ細孔センサに前記制御信号を印加することと、をさらに含む、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
制御信号をナノ細孔センサの電気変換要素に印加することにより、該ナノ細孔センサにおいて前記駆動電極によって課せられる電位が変化する、請求項16~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記制御信号を印加する前に、ナノ細孔センサに接続された測定回路から前記電気変換要素を隔離することをさらに含む、請求項16~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
ナノ細孔センサが、該ナノ細孔センサの該電気変換要素における流体電位の変化を測定することに応答して、該ナノ細孔センサに前記制御信号を印加することをさらに含み、前記制御信号は、
閉塞が検出されるときに、ナノ細孔の閉塞を除去すること、
該ナノ細孔センサによって測定されている分析物を拒絶すること、および/または
該ナノ細孔を通じた分析物の移動の速度および/または方向を変化させることを行うように構成されている、請求項16~20のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ナノ細孔センサとして構成可能なナノ細孔構造のアレイを有するナノ細孔検知のためのデバイス、およびナノ細孔センサを動作させるための、またはナノ細孔構造のアレイを作製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノ細孔センサは、ポリマー分子などの単一分子を含む幅広い種を検知するために開発されている。既知のナノ細孔センサデバイスは、Oxford Nanopore Technologies Ltd.によって製造および販売されているMinION(商標)である。その中のナノ細孔ベースの検知は、高抵抗両親媒性膜内に位置する生物学的ナノ細孔を通るイオン電流フローの測定を利用する。MinION(商標)は、ナノ細孔センサのアレイを有する。例えばDNAなどのポリマー分析物などの分子がナノ細孔を移動させるとき、イオン電流の変動の測定を使用して、DNA鎖の配列を判定することができる。タンパク質などのポリヌクレオチド以外の分析物を検出するためのナノ細孔デバイスもまた、WO2013/123379から既知である。
【0003】
MinION(商標)などの生物学的ナノ細孔デバイスの代替品が、固体ナノ細孔デバイスである。
図1は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2016/127007に開示された固体ナノ細孔4を有する単一のセンサデバイス2の一部分を示し、分析物6が、シスリザーバ10から本体8を通過し、固体ナノ細孔4を通じて流体通路12に至る。信号が、固体ナノ細孔4の近くに配置されているセンサ16を介して読み取られる。電極18が、固体ナノ細孔4を通して分析物6を誘導するために、シスリザーバ10およびトランスリザーバ14に設けられる。
【0004】
固体ナノ細孔センサの性能は、検知構成要素、製造技法、およびナノ細孔またはセンサのアセンブリの形成の変動の結果として発生する可能性がある、それらの許容誤差によって制限される。これらおよび他の要因は、帯域幅、感度、およびそのようなナノ細孔センサを制御する能力を損なう。
【0005】
いくつかの態様では、本開示は、複数のナノ細孔センサを有するナノ細孔センサアレイの実装に関連する問題を克服することに関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、いくつかの態様において、検知構成要素への寄生および汚染によって引き起こされるノイズなどの、測定を妨げる要因を軽減することによって測定正確度を同時に改善しながら、分析物の動きを制御する能力を提供することによって、既知のナノ細孔検知デバイスを改善することを試みた。さらに、改善されたデバイスは、ナノ細孔構造、およびナノ細孔構造から実装されるナノ細孔センサが、アレイの制御または性能を阻害することなく、効率的に大きいアレイに形成されることを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様において、本発明は、ナノ細孔検知のためのデバイスを提供し、上記デバイスは、分析物リザーバと出口チャンバとを分離するように配設されている構造であって、構造が、ナノ細孔構造のアレイを備え、各ナノ細孔構造が、分析物リザーバと出口チャンバとの間の構造を通る流体接続のための通路を備える、構造と、
通路にわたって電位差を課すために、分析物リザーバおよび出口チャンバ内にそれぞれ接続されている、駆動電極と、
電気変換要素であって、各要素が、それぞれのナノ細孔構造の通路に、該ナノ細孔構造内の該電気変換要素における流体電位を測定するために、接続または露出された、電気変換要素と、
制御端子であって、各制御端子が、制御信号を印加してそれぞれのナノ細孔構造にわたる電位差を変化させるために、該ナノ細孔構造に接続されている、制御端子と、を有する。
【0008】
構造は支持構造とすることができる。ナノ細孔構造は、対応する通路のアレイ内および/または上に配置することができる。各ナノ細孔構造は、通路の一部分を形成する開口を有することができる。ナノ細孔構造のアレイ内の各ナノ細孔構造は、それぞれの通路を有する。制御端子は、制御信号を印加してそれぞれのナノ細孔構造にわたる流体電位差分布を変化させるために、該構造内のそれぞれの通路に接続することができる。駆動電極とナノ細孔構造との間に流体接続があるように流体が供給されると、そのナノ細孔構造に印加される制御信号は、駆動電極に対してそのナノ細孔構造にわたる電位差を変化させることができる。制御端子は、電気変換要素に接続することができる。制御端子は、電気変換要素に切り替え可能に接続することができる。
【0009】
アレイのナノ細孔構造は、ナノ細孔を有することができ、ナノ細孔を支持することが可能であるか、またはナノ細孔を有する膜を支持することが可能であり得る。
【0010】
ナノ細孔検知デバイスとして動作するとき、デバイスはナノ細孔のアレイを備える。
【0011】
流体が供給されると、流体電位を電気変換要素において測定することができる。流体が供給されると、そのナノ細孔構造にわたる流体電気的分布を変化させることができる。
【0012】
動作中、流体は、分析物リザーバ、出口チャンバ、およびリザーバとチャンバとが流体的に接続されるデバイスの通路内に存在する。リザーバ、チャンバ、およびナノ細孔構造の通路内の流体は、異なる流体であり得る。
【0013】
ナノ細孔構造は、ナノメートル寸法の幅を有する開口を備えることができる。それは、固体ナノ細孔などの固体支持体の貫通孔であり得る。
【0014】
代替的に、一実施形態では、ナノ細孔構造は、ナノメートル寸法の通路を提供するためにナノ細孔を支持することが可能である構造であってもよい。この実施形態では、ナノ細孔構造は、マイクロメートルまたはナノ細孔寸法の開口を備えることができる。ナノ細孔を支持するために使用され得る例示的なナノ細孔構造は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2014/064443に開示されている。ナノ細孔構造によって支持され得るナノ細孔の例は、タンパク質ナノ細孔などの生物学的ナノ細孔である。ナノ細孔は、両親媒性膜などの膜内に提供することができる。膜は、ナノ細孔構造によって支持され得る。
【0015】
ナノ細孔検知に使用される場合、デバイスは、ナノ細孔のアレイを備えることができる。
【0016】
分析物リザーバは、ナノ細孔アレイによる検知のために分析物を受容するように機能することができる。出口チャンバは、ナノ細孔アレイを通過する分析物を受容するように機能することができる。
【0017】
ナノ細孔(存在する場合)は、デバイスのシス側とトランス側とを分離する。分析物リザーバはデバイスのシス側と考えることができ、分析物出口チャンバはトランス側の一部分と考えることができる。
【0018】
デバイスは、流体の有無にかかわらず提供され得る。分析物リザーバ、出口チャンバ、およびナノ細孔構造の通路内の流体は、異なる流体であり得る。
【0019】
さらなる態様において、本発明は、構造を提供し、構造は、ナノ細孔構造のアレイを備え、各ナノ細孔構造は、構造を通る流体接続のための通路を備える。各ナノ細孔構造は、電気変換要素を有し、各要素が、それぞれのナノ細孔構造の通路に、該ナノ細孔構造内の該電気変換要素における流体電位を測定するために、接続または露出されている。各ナノ細孔構造はまた、制御端子をも有し、各制御端子が、制御信号を印加して通路内のまたはそれぞれのナノ細孔構造にわたる流体電位差分布を変化させるために、それぞれのナノ細孔構造に接続されている。
【0020】
構造は支持構造とすることができる。ナノ細孔構造は、対応する通路のアレイ内および/または上に配置することができる。各ナノ細孔構造は、通路の一部分を形成する開口を有することができる。ナノ細孔構造のアレイ内の各ナノ細孔構造は、それぞれの通路を有する。制御端子は、制御信号を印加してそれぞれのナノ細孔構造にわたる流体電位差分布を変化させるために、該構造内のそれぞれの通路に接続することができる。アレイの各開口は、それぞれの電気変換要素および制御端子に関連付けることができる。
【0021】
ナノ細孔構造のアレイ内の各ナノ細孔構造は、ピクセルと考えることができ、各ピクセルは、開口と、電気変換要素と、制御端子と、を備える。ピクセルのアレイは、テレビ画面上のピクセルの配設に類似した方法で直線格子として配設することができる。ナノ細孔構造に存在するときのナノ細孔は通路の一部分を形成し、すなわち、通路の一区画はナノメートル幅である。ナノ細孔は、固体ナノ細孔であり得、すなわち、ナノ細孔幅の開口が固体支持体内に提供される。代替的に、ナノ細孔は、生物学的ナノ細孔が固体支持体の開口内に提供されるハイブリッドナノ細孔であってもよい。生物学的ナノ細孔は両親媒性膜内で支持することができる。両親媒性膜は、WO2014/064443に開示されているような柱によって支持することができる。ナノ細孔を支持することが可能なナノ細孔構造は、マイクロメートル寸法などの、ナノ細孔寸法よりも広い幅の開口を備えることができる。ナノ細孔構造は、両親媒性膜を支持するための手段を備えることができる。分析物リザーバは、分析のために、分析物などの分析物を貯蔵するために使用することができる。分析物は、アレイのナノ細孔センサ内のナノ細孔を通過することができる。ナノ細孔を通過した後、分析物は通路に留まるか、または通路から出て出口チャンバに入ることができる。分析物リザーバ、出口チャンバ、およびナノ細孔構造のアレイの通路に流体が供給されると、駆動電極は、通路にわたって電位差を課すことができる。駆動電極は、開口にわたって電位差を提供して、帯電した分析物がアレイのナノ細孔を通過するように誘導することができる。電位差を変化させて、分析物の移動の速度または方向を変更することができる。
【0022】
アレイ内の各電気変換要素は、センサ電極として機能する。ナノ細孔を通るイオン電流フローの変化は、イオン電流フローの変化によって引き起こされる電位の変動を引き起こし、上記電位は、分析物の存在または特性を判定するために測定され得る。水性であり得るデバイス内の流体は、イオンを含み得る。複数の分析物が移動され得る。
【0023】
駆動電極は、ナノ細孔のアレイにわたって共通の電位差を提供する役割を果たし、複数の分析物をアレイ内で同時に測定することができる。測定は、各ナノ細孔構造内の電気変換要素において行われる。
【0024】
いくつかの実施形態では、各ナノ細孔構造は、関連する制御端子を有することができる。この制御端子は、構造物から外部で生成される制御信号への独立した接続とすることができる。これにより、アレイ内の他のナノ細孔構造にわたる電位差の変化とは無関係に、電位を印加することができる。
【0025】
制御信号は、外部トリガまたはスイッチに応答して、ナノ細孔構造内で生成することができる。または、制御信号は、そのナノ細孔構造の内部の回路から生成することができる。制御信号には、各ナノ細孔構造の電圧レベルを変化させる効果がある。制御信号は、通路と駆動電極との間の電圧を修正するために電気変換要素を介して印加することができる。付加的に、または代替的に、制御信号は、制御端子または通路内のさらなる制御電極などの電気接続を介して印加することができる。
【0026】
デバイスは、分析物リザーバと電気的に接続して設けられた単一の駆動電極と、出口チャンバと電気的に接続して設けられた単一の駆動電極と、を有することができ、駆動電極は、ナノ細孔アレイにわたって共通の電位差を提供する役割を果たす。
【0027】
代替的に、デバイスは、デバイスのシス側および/またはトランス側に複数の駆動電極を備えることができる。
【0028】
個々のナノ細孔構造への制御信号の印加は、ナノ細孔構造にわたる電位差およびそのナノ細孔構造と駆動電極との間の電位差を変化させるように機能することができる。例として、分析物リザーバ内の駆動電極は、-0.1ボルトの電圧レベルを有することができ、一方、出口チャンバ内の駆動電極は、0.2ボルトの電圧レベルを有することができ、そのため、アレイの通路にわたる電位差は0.3ボルトになる。ナノ細孔構造に-2ボルトの電圧を課すための制御信号の印加は、ナノ細孔構造とシスおよびトランス電極との間の、またはそれぞれ-1.9ボルトおよび-1.8ボルトの電位差をもたらす。
【0029】
各ナノ細孔の電気変換要素と制御端子とは直接的に接続することができる。そうする際に、電気変換要素は、センサ電極および制御電極の両方として機能することができる。これは、1つが検知回路に接続するためのものであり、もう1つが制御回路に接続するためのものである、2つの端子を備えた電気変換要素を提供することによって実施することができる。実際には、検知回路および制御回路は同じ回路または構成要素内に存在することができる。任意の回路を構造外に配置し、例えばワイヤボンドを介して構造に接続することができる。
【0030】
制御端子は、上記電気変換要素によるそのナノ細孔構造における流体電位の測定に応答して、制御信号を印加して駆動電極から各それぞれのナノ細孔構造への電位差を変化させるように構成することができる。制御信号の印加は、制御端子のうちの少なくとも1つと駆動電極のうちの少なくとも1つとの間の電位差を変化させるように構成することができる。
【0031】
ナノ細孔構造の制御端子に印加される制御信号は、そのナノ細孔と駆動電極との間の電位差の大きさおよび/または極性を変化させることができ、これによって、分析物がそのナノ細孔構造の通過を通過する速度を変化させることができ、またはその分析物の移動方向を変化させることができる。
【0032】
制御信号は、接続された制御端子と駆動電極のうちの少なくとも1つとの間の電位差を同時に変化させるために、複数のナノ細孔構造に接続可能であり得る。
【0033】
制御信号は、分析物を拒絶すること、またはその移動の速度および/もしくは方向を制御すること以外の目的のために印加することができる。例えば、制御信号を印加して、ナノ細孔構造によって支持される膜への生物学的ナノ細孔の挿入を誘導することができる。電気変換要素を測定回路に接続して、電気変換要素から受信される信号を読み取ることができる。ナノ細孔構造には、測定回路への切り替え可能な接続を提供することができる。上記切り替え可能な接続は、制御信号を印加する前に測定回路を接続解除することができる。このようにして、制御信号を測定回路から接続解除し、制御信号が測定回路の性能に影響を与えることを抑制することができる。
【0034】
言い換えれば、電気変換要素は、制御信号を印加する前に隔離可能であり得る。各ナノ細孔構造の個々の電気変換要素は、制御信号を印加する前に選択的に隔離することができる。
【0035】
制御信号は様々な目的のために印加することができる。
【0036】
制御信号は、分析物の測定とは無関係に印加することができる。例えば、制御信号をナノ細孔構造によって支持される膜に印加して、膜への生物学的ナノ細孔の挿入を誘導することができる。
【0037】
制御信号は、電気変換要素による測定に応答して、ナノ細孔構造に印加することができる。
【0038】
例として、制御信号は、デバイスが、例えば分析物によってナノ細孔を通る通過が閉塞されていると判定するときに、ナノ細孔の閉塞を除去する目的で印加することができる。次に、制御信号を印加して、通過の閉塞を除去することができる。
【0039】
デバイスは、ナノ細孔を通る電流フローの阻害によって引き起こされる電位の変化の測定からナノ細孔が閉塞されていると判定することができる。分析物とナノ細孔との相互作用がない場合、水性試料中にイオン性塩が存在することに起因する、ナノ細孔を通じたイオン電流フローは、開口細孔電流として参照される場合がある。分析物がナノ細孔と相互作用するとき、細孔を通じたイオン電流フローが減少し、イオン電流の減少の変動は、DNAなどの分析物がナノ細孔を移動するときのセンサ電極の電位の経時変化として測定することができる。例えば、分析物が細孔内に固定されることによるナノ細孔の閉塞は、イオン電流フローの減少を引き起こし、その値は経時的にほとんど変化しない。さらなる例では、制御信号を印加して、関心のない、またはもはや関心のない分析物をナノ細孔から排除することができる。測定は、例えばポリヌクレオチドなどの分析物が完全に測定される前に、分析物を排除する決定を行うことができるように、リアルタイムで実行することができる。
【0040】
MinION(商標)デバイスなどのポリヌクレオチドを配列決定するための前述のデバイスに関して、ナノ細孔を通る電流は、各ナノ細孔の一方の側に設けられる電極のそれぞれのアレイと、分析物リザーバのナノ細孔の他方の側に設けられる共通の電極との間の電位差の印加下で測定される。各ナノ細孔には電極が関連付けられているため、アレイの各ナノ細孔にわたる電位差を個別に制御して、分析物を排除することができる。以下に説明する実施形態では、電気変換要素によって各ナノ細孔における局所電位の測定を実行することに関連する様々な利点がある。駆動電極は、ナノ細孔アレイにわたって電位差を提供する役割を果たし、分析物を測定する役割は果たさない。その結果、駆動電極によるナノ細孔における電位差の個別制御は不可能である。ただし、制御端子を用いることによって、各ナノ細孔にわたる電位差を個別に制御することは可能である。
【0041】
ナノ細孔構造のアレイは、回路を有することができ、各回路は、それぞれのナノ細孔構造に関連付けられ、電気変換要素に接続される。各回路は、電気変換要素から受信される信号を修正および/または処理するように構成することができる。この回路は、電気変換要素に制御信号を印加することもできる。この回路は、電気変換要素に印加される制御信号を他の検知および処理機能から隔離することができる。
【0042】
各回路は、ナノ細孔構造のピクセル内に存在することができる。各回路はアドレス指定可能であり得る。各ナノ細孔構造はアドレス指定可能であり得る。アドレス指定機能は、外部プロセッサが、ナノ細孔構造と通信して、測定情報を受信すること、または通路内の分析物の動きを制御することのうちの少なくとも一方を可能にすることができる。このようにして、各個々の通路における検知の測定および制御を独立して制御することができる。回路は、支持構造上に設けることができ、または支持構造内に埋め込むことができる。
【0043】
各電子回路は、ナノ細孔構造のグループに関連付けることができる。例として、電子回路は、4つのナノ細孔構造から成るグループによって共有することができる。グループ内のナノ細孔構造の検知および制御は多重化することができる。このようにして、電子回路をアドレス指定可能にし、多重化を使用して個々のナノ細孔構造を制御することができる。
【0044】
各回路は、それぞれのナノ細孔構造またはナノ細孔構造のグループに関連付けることができる。各回路は、制御端子および/または電気変換要素に接続することができ、そのため、回路は、電気変換要素における測定および/またはそれに取り付けられた外部プロセッサからの測定に応答して駆動電極によって課せられる電位をそれぞれのナノ細孔構造において変化させるように構成される。
【0045】
構造は、ナノ細孔を組み込む、および/または固体フィルムまたはナノ細孔を有する膜を支持するためのウェルを組み込むナノ細孔層を有することができる。ナノ細孔が設けられている場合、ナノ細孔構造はナノ細孔センサとして動作させることができる。ナノ細孔構造が作成された後、ナノ細孔層にナノ細孔を設けることができる。ナノ細孔は、ナノ細孔構造を有するデバイスがそれらに提供された後に、ユーザによって提供され得る。ナノ細孔層は、交換することができ、そのため、デバイスはリサイクル可能である。ナノ細孔構造はまた、チャネルを組み込む基層を含むことができる。ナノ細孔および/またはウェルが通路を画定するように整列するように、ナノ細孔層および基層をともに挟みまたは積層することができる。電気変換要素、回路、または制御端子のうちの少なくとも1つは、構造の外面上または間に配置される。個々のナノ細孔構造は、単一の構造または互いに接続された1つ以上のサブ構造から構成され得る。単一の構造またはサブ構造は、平面またはシート状であり得る。
【0046】
各ナノ細孔構造は、その通路によって画定することができる。通路は、シスとトランスとを流体接続することができる。通路は、例えば、ナノ細孔を支持するためのナノ細孔層、貫通孔を有する層、貫通孔として機能するチャネルを有する基層によって形成される、各ナノ細孔構造内の形成物によって形成することができる。ナノ細孔層および基層の貫通孔は、通路を形成するために整列される。
【0047】
電気変換要素は、通路の一部分を画定する。例として、電気変換要素は、ナノ細孔層と基層との間に挟みまたは積層することができる。ただし、これは通路の他の場所に配置することができる。これは、流体接続があることを条件として通路の周りに構成することができ、電気変換要素と、ナノ細孔層内に設けられるナノ細孔との間の直接流体接続とすることができる。
【0048】
電気変換要素および/または回路は、センス層上に実装することができる。センス層はサブ構造とすることができる。センス層は、ナノ細孔層と基層との間に挟みまたは埋め込むことができ、上記センス層は、ナノ細孔層および基層の貫通孔と整列する貫通孔を有する。明確にするために、ナノ細孔層、センス層、および基層は、ナノ細孔構造のアレイを提供するために積み重ねられるサブ構造とすることができる。
【0049】
ナノ細孔は、ナノ細孔構造内に設けられるとき、通路の一部分を形成する。分析物の拒絶は、例えば、ナノ細孔から分析物を拒絶するなど、ナノ細孔内の分析物の動きを制御するように機能する制御信号を使用して管理することができる。通路内のナノ細孔が閉塞する可能性がある。ナノ細孔の閉塞を検知し、制御信号をナノ細孔構造に印加して閉塞を取り除くことができる。
【0050】
ナノ細孔は、固体膜内に設けられた固体ナノ細孔、すなわちナノメートル幅の孔とすることができる。この膜は、ナノ細孔層であり得るか、またはナノ細孔層上に配置されている膜であり得る。固体ナノ細孔は、ナノ細孔層上に位置付けることができる。代替的に、ナノ細孔は、固体フィルムまたは膜に位置する生物学的ナノ細孔であってもよい。さらに代替的に、ナノ細孔が膜に挿入され得るように、ナノ細孔は、両親媒性膜または脂質二重層などの膜が形成され得るウェルを用いて形成され得る。これらのナノ細孔の例の各々において、アレイ内の各ナノ細孔構造に対して1つのナノ細孔を提供することができる。
【0051】
本発明者らはまた、特に改善が感度および性能を最適化することができる場合、ナノ細孔センサのアーキテクチャを改善することを試みた。本発明者らは、一般に、ナノ細孔構造を有する構造を提供することによってこれを達成することを試み、構造内に配置されているナノ細孔構造は、各ナノ細孔構造に設けられた通路を介して構造の一方の側から他方の側への流体連通を提供する。このようにして、構造はシスとトランスとを分離することができる。各ナノ細孔構造はセンサ電極を有する。センサ電極から導出される信号の減衰を最小限に抑え、ノイズによるその信号への任意の悪影響を回避するために、各ナノ細孔構造には、処理された信号がさらなる処理および/または分析のために通信される前に、センサ電極からの信号を処理するための回路が提供される。回路はナノ細孔構造に埋め込むことができる。ナノ細孔構造をアクティブピクセルと考えることができるように、回路は、ナノ細孔構造と同じフットプリントを占めることができる。独自の回路を有するナノ細孔構造は、制御信号を生成して局所的に印加することにより、本明細書に開示される改善された制御メカニズムを補完し、したがって、アレイの他のナノ細孔構造に対する制御信号の影響を最小限に抑えることができる。
【0052】
したがって、第2の態様において、本発明は、分析物を検知するためのナノ細孔構造を有するデバイスを提供し、ナノ細孔構造は、分析物リザーバと出口チャンバとを分離するように配設されている構造内に構成されており、各ナノ細孔構造は、分析物リザーバと出口チャンバとの間の構造を通る流体接続のための通路を提供し、各ナノ細孔構造が、電気変換要素と、電気変換要素からの信号を検出し、任意選択的に増幅するように構成されている電子回路と、を備え、構造の各々が、接続可能なプロセッサに対して信号の少なくとも一部分を格納すること、送信すること、処理すること、および通信することのうちの1つ以上を行うように構成されている。
【0053】
ナノ細孔構造は、個々のナノ細孔構造が互いに接合されている全体的な構造の一部分として含まれ得る。
【0054】
この構造は、分析物を受容するための分析物チャンバと、分析物を収集するための出口チャンバとを分離するように構成することができる。駆動電極は、ナノ細孔構造内の通路にわたって電位差を課すために、分析物リザーバおよび出口チャンバ内にそれぞれ接続することができる。ナノ細孔が提供される場合、ナノ細孔構造はナノ細孔センサとして機能することができ、デバイスはナノ細孔検知デバイスとすることができる。
【0055】
アレイ内のナノ細孔構造の各々は、補償回路をさらに備えることができる。補償回路機能は、ナノ細孔構造内の回路の他の処理機能とともに組み込むことができる。補償回路は、補償回路のフィードバックループ内に可変利得増幅器および/または可変コンデンサを有することができる。
【0056】
第1の態様において説明したように、構造は、制御信号を印加してナノ細孔構造にわたる電位差を変化させるための制御端子を有することができる。制御信号を制御端子に切り替え可能に印加して、細孔に課せられる構成可能な電圧レベルを調整することができる。
【0057】
補償回路を含むことができる回路を組み込むナノ細孔構造は、規定のフットプリントまたはピクセル空間にパッケージ化することができる。ピクセル間隔のナノ細孔構造のアレイは、モザイク状のアレイに配設することができる。
【0058】
電気変換要素からの信号を、少なくとも部分的に、ナノ細孔構造自体の中で処理することにより、信号を局所的に処理または管理することができる。例えば、他の場所で分析する前に信号に影響を与える減衰またはノイズが最小限に抑えられるように、信号を局所的に増幅することができる。回路はまた、信号、信号値、または信号から導出されるデータを格納することもできる。このようにして、ナノ細孔構造から導出される情報を、要求に応じてナノ細孔構造から遠隔したプロセッサに通信することができる。各ナノ細孔構造、またはナノ細孔構造内の回路は、アドレス指定可能とすることができる。この回路は、ナノ細孔構造外に位置するアナログ-デジタル変換器(ADC)に接続することができる。
【0059】
本発明者らはさらに、感度および性能を改善しながら、一般に、ナノ細孔構造のアレイの製造可能性を改善する構造を提供することを試みた。本明細書のナノ細孔構造のアレイは、改善されたナノ細孔構造を提供することができるだけでなく、ナノ細孔構造のアレイは、制御機能および局所制御の統合を補完することができる。
【0060】
したがって、第3の態様では、本発明は、ナノ細孔構造のアレイを有するデバイスを提供する。構造は、シートに構成することができ、シートは、ナノ細孔のアレイおよび/またはナノ細孔を支持するためのウェルのアレイを有する、ナノ細孔層と、チャネルのアレイを有する基層と、を備え、上記基層が、シートを形成するためにナノ細孔層に挟みまたは積層されており、ナノ細孔および/またはウェルが、チャネルと整列され、ナノ細孔構造の各々が、通路を備え、各通路が、少なくとも部分的に、通路の一方の側にある、ナノ細孔のうちの1つおよび/またはナノ細孔層のウェルのうちの1つと、通路の他方の側にある基層のチャネルと、電気変換要素と、によって画定される。
【0061】
別の態様では、本発明は、ナノ細孔構造のアレイ自体を提供する。ナノ細孔が設けられている場合、アレイの各ナノ細孔構造はナノ細孔センサとして機能する。各ナノ細孔構造は、提供されている場合はナノ細孔、またはウェル、チャネル、および電気変換要素によって画定される貫通孔を有する。
【0062】
シートは、ナノ細孔構造の実質的に平面状のアレイであり得る。ナノ細孔構造にナノ細孔が設けられている場合、それらはナノ細孔センサとして機能することができる。シートは、分析物リザーバと出口チャンバとを分離するようにデバイス内で構成することができる。分析物リザーバおよび出口チャンバは、流体を収容することができる。通路は流体で満たすことができ、分析物リザーバと出口チャンバとの間に流体接続を提供することができる。
【0063】
ナノ細孔層と基層とを別個の層として構成することによって、シートのスケーラビリティを向上させることができる。これらの層は、デバイスの組み立てを容易にし、したがって、製造コストを削減することができる。シートの層化は、効率的な方法でナノ細孔構造の構成要素をまとめることができる。さらに、異なる層上にナノ細孔構造の異なる構成要素を有することにより、それらの構成要素の形成または構成を最適化することが可能になり得る。ある構成要素の作製に使用されるプロセスが、別の構成要素の作製と互換性がないか、または悪影響を与える場合がよくある。さらに、1つの構成要素を形成するための最適な材料は、他の構成要素を形成するための最適な材料とは異なる場合がある。例として、ナノ細孔のアレイおよび/またはナノ細孔のウェルのアレイは、基層とは別個に形成することができる。ナノ細孔層および基層は、異なる材料を含むことができる。別個の層は、ナノ細孔構造の構成要素を最適に構成および/または配置することを可能にすることができる。
【0064】
層の提供により、層を交換可能にすることを可能にすることができる。ナノ細孔層は取り外し可能に取り付けることができる。このようにして、例えばナノ細孔層が汚染された場合にデバイスをリサイクルすることができるように、ナノ細孔層を交換用ナノ細孔と交換することができる。
【0065】
シートの各ナノ細孔構造は、通路によって画定される。ナノ細孔構造の様々な構成要素、すなわちナノ細孔またはナノ細孔ウェル、電気変換要素、およびチャネルが通路を形成する。ナノ細孔層はナノ細孔を有する必要はなく、ナノ細孔を設けることができる。ナノ細孔は、ナノ細孔層のウェル上に構成することができ、そうする際に、ウェル上のこの追加のナノ細孔もまた、通路の要素を形成する。
【0066】
各通路内の電気変換要素は、ナノ細孔層とチャネルの少なくとも一部分との間に配置することができる。電気変換要素は、構造がナノ細孔を設けられており、流体が通路内に供給されるときに電気変換要素の位置において流体の電位を測定するための接続を有して構成することができる。
【0067】
電気変換要素は、シスとトランスとを接続する通路内の流体を介して、その通路内の電気変換要素における流体電位を示す特性を発現させることができる。電気変換要素は、電気接続とすることができる。それは、シスまたはトランスリザーバ内、ナノ細孔構造の表面上、通路内の位置、またはナノ細孔構造内の他のロケーションに配置することができる。
【0068】
電気変換要素は、デバイスの電気変換要素における流体電位を検知する、デバイスもしくはデバイスの領域、および/または、回路、ワイヤ、もしくは回路要素の組み合わせとすることができる。付加的に、または代替的に、回路は、局所電位を示す信号を発生させるための変換要素として提供することができる。
【0069】
説明したように、デバイスは、シートによって少なくとも部分的に分離された分析物リザーバおよび出口チャンバを有することができる。分析物リザーバは、シスとして機能し、センサが提供されている場合、ナノ細孔構造によって分析される分析物を保持することができる。アレイのナノ細孔構造の通路は、分析物リザーバを出口チャンバに接続する。分析物リザーバと出口チャンバとの間の界面は、通路、またはより具体的には、ナノ細孔センサ内のナノ細孔、すなわち、ナノ細孔を備えたナノ細孔構造とすることができる。
【0070】
デバイスは、分析物リザーバと出口チャンバとの間の通路のアレイにわたって電位差を課すために、分析物リザーバおよび出口チャンバに接続された駆動電極を有することができる。
【0071】
シートは実質的に平面状にすることができる。ナノ細孔構造のアレイを組み込む構造であるシートの表面は、分析物リザーバに面し、シス面を画定するためのナノ細孔層上のシス表面と、出口チャンバに面し、トランス面を画定するための、基層のトランス表面と、を有する。電気変換要素のアレイは、少なくとも部分的に、シス面とトランス面との間でシート内に埋め込むことができる。アレイの電気変換要素は、ナノ細孔層と基層との間に挟むことができる。
【0072】
アレイの各ナノ細孔構造は、通路の第1の端部に形成されたウェルを有することができる。ナノ細孔は、各ウェルの第1の端部に構成することができる。電気変換要素は、ナノ細孔に対してウェルの反対側に構成することができる。ウェルはナノ細孔よりもサイズを大きくすることができ、ナノ細孔を取り巻く流体の量を増やすことができる。明確にするために、ウェルの直径は、ナノ細孔の直径よりも大きくすることができる。ナノ細孔は、ウェルにまたがる膜内に存在することができる。膜は、固体膜、両親媒性膜、または脂質二重層であり得る。ナノ細孔は通路の一部分を画定する。ウェルへの進入およびウェルからの脱出は、ナノ細孔およびウェル出口を経由する。
【0073】
ウェルは、ポリマー膜または脂質二重層などの流体膜を支持するように構成することができる。ナノ細孔層は、基層とは異なる材料から作製することができる。ナノ細孔層に異なる材料を使用することにより、ナノ細孔を支持するためにウェルにわたる膜の形成を最適化する表面エネルギーを有するように材料を選択することができる。
【0074】
電気変換要素は、センサ電極とすることができる。センサ電極は、流体が通路内に供給されるときに電気変換要素の位置において流体の電位の変動を測定するためのトランジスタデバイスのベースまたはゲートに直接的に接続可能とすることができる。本明細書に記載されるように、通路の一部分を形成するナノ細孔を備えたナノ細孔構造は、ナノ細孔センサとして機能し、検知は、電気変換要素によって実行される。
【0075】
アレイのナノ細孔構造の電気変換要素は、エッジコネクタまたはワイヤボンドに接続することができる。コネクタは、シート外の測定回路への接続、つまりナノ細孔構造のアレイとは別個の接続を提供することができる。コネクタは、シート外の測定回路への後続の接続のために、シートの縁部において接続につながるビアに接続することができる。トランジスタデバイスは、電界効果トランジスタとすることができる。
【0076】
これまで、ナノ細孔層および基層を有するシートについて説明してきた。電気変換要素は、シート内の層とすることができ、または層の間に挟まれた要素を有することができる。しかし、デバイスのシートは、電気変換要素のアレイを有するセンス層をさらに備えることができ、上記センス層は、ナノ細孔層と基層との間に挟まれている。電気変換要素は、センス層上に形成することができる。電気変換要素は、通路内の流体に接続するための露出部分と、シート内に埋め込まれた埋め込み部分と、を有することができる。付加的に、または代替的に、電気変換要素は、シートから分離している測定回路に接続するための接続部分を有することができる。センス層の中または上に電気変換要素を組み込むことにより、これは、電気変換要素の形成を他の層の製造から分離することを可能にする。センス層は、他の層とは異なる材料、プロセス、および/または技法を使用して作製することができる。
【0077】
電気変換要素は、少なくとも部分的に、通路の壁を覆うことができる。電気変換要素は、断面において、チャネルの壁の一部分を覆うことができる。電気変換要素は、通路および/または通路内のウェルもしくは空洞の基部の周りに環帯を形成することができる。
【0078】
電気変換要素は、センス層の1つの表面上に形成することができる。センス層は、基層とナノ細孔層との間に挟むことができ、電気変換要素は、ナノ細孔層のナノ細孔またはウェルおよび基層のチャネルと整列している。整列されると、センス層の表面は、ナノ細孔層が、電気変換要素を有する表面上に形成または配置されるように、電気変換要素をナノ細孔層に対して露出させることができ、この配設では、電気変換要素はナノ細孔層に面していると言うことができる。代替的に、整列されると、センス層の表面は、電気変換要素が、基層の表面上に形成または配置されるように、電気変換要素を基層に対して露出させることができ、この配設では、電気変換要素は基層に面していると言うことができる。
【0079】
電気変換要素は、少なくとも部分的に、通路の周りのセンス層の表面を形成することができ、出口チャンバに面するように配設されている露出部分を有することができる。露出部分は、ウェルとチャネルとの間でセンス層内に形成される空洞の壁の一部分を形成することができる。空洞は、センサ電極のより広い領域が通路内の流体に露出されることを可能にすることができる。これにより、センサ電極の感度を向上させることができる。
【0080】
電気変換要素は、通路および露出部分の一部分を形成する開口を有することができ、断面において、電気変換要素の露出部分のサイズと、開口のサイズとの比は1:1である。比は約5:1とすることができる。
【0081】
電気変換要素は、通路および露出部分の一部分を形成する開口を有することができ、平面視において、電気変換要素の露出部分のサイズと、開口のサイズとの比は1:1である。電気変換要素は、通路および露出部分の一部分を形成する開口を有することができ、比は約5:1である。開口は円形とすることができる。
【0082】
電気変換要素は、通路内の流体への露出を増加させて、通路内のナノ細孔を通り越す、または通過する分析物によって引き起こされる電圧の変動に対する要素の感度を増加させるために、大きい露出面積を有することができる。
【0083】
センス層は、各ナノ細孔構造の電子回路を組み込むことができる。回路は、電気変換要素から受信される信号を修正および/または処理するために、電気変換要素に接続することができる。次に、各ナノ細孔構造内に電子回路を組み込むことにより、電気変換要素からの信号を局所的に処理して、そこから得られる信号の情報の減衰を抑制し、および/またはノイズによるその信号への任意の悪影響を抑制することができる。それぞれのナノ細孔構造内の各電気回路は、さらなる処理および/または分析のために、上記処理された信号がシート外で通信される前に、センサ電極からの信号を処理することができる。センス層に回路を組み込むことにより、回路をナノ細孔構造に埋め込むことができる。ナノ細孔構造をアクティブピクセルと考えることができるように、回路は、ナノ細孔構造と同じフットプリントを占めることができる。独自の回路を有するナノ細孔構造は、制御信号を生成して局所的に印加することにより、本明細書に開示される改善された制御メカニズムを補完し、したがって、アレイの他のナノ細孔構造に対する制御信号の影響を最小限に抑えることができる。ナノ細孔回路のセンス層内の回路は、補償回路とすることができる。
【0084】
電子回路は、分析物がナノ細孔を通過するか、または上記ナノ細孔に隣接するときに、それぞれの通路におけるナノ細孔の抵抗変化を検出するように構成することができる。回路は、センサ内の流体を介して検出される抵抗変化を検出することができる。
【0085】
デバイスは分析物を検知するのに好適であるとして説明されてきたが、分析物はナノ細孔を使用して測定することができるものであることを理解されたい。例として、分析物は、タンパク質、ポリマー、ポリヌクレオチドなどであってもよい。
【0086】
電子回路は、ポリマーがナノ細孔を通過するときに電気変換要素における電位の変化を検出し、電位の変化を電圧信号に変換し、上記電圧信号を増幅することができる。電子回路は信号をフィルタリングすることができる。電子回路は、電気変換要素から得られた信号をサンプリングおよび/またはデジタル化することができる。
【0087】
各ナノ細孔構造は、各それぞれのナノ細孔構造に対応する複数の電気変換要素を有することができる。同様に、各ナノ細孔構造は、各それぞれのナノ細孔構造および/またはそのナノ細孔構造内に設けられる電気変換要素に対応する複数の回路を有することができる。電気変換要素および/または回路の各々は、アドレス可能なアレイに構成することができる。各ナノ細孔構造は、2つ以上のセンサ電極を有することができる。2つ以上のセンサ電極をナノ細孔構造内の単一の回路に接続することができ、または各センサ電極をそれ自体の回路に接続することができる。
【0088】
ナノ細孔構造のアレイは、マトリックスアレイ内の各ナノ細孔構造から個別に読み出しを可能にするためのアーキテクチャ(ピクセルと呼ばれることもある)に接続することができる。各ナノ細孔構造は、行番号および列番号を有することができる。
【0089】
各電気変換要素は専用の電子回路を有することができ、各電気変換要素および電子回路はフットプリント内に配置することができる。フットプリントは、ナノ細孔構造がアレイ内でモザイク状になるようなピクセルとすることができる。
【0090】
アレイの各ナノ細孔構造は、電気変換要素、ならびに任意選択的に回路および/または制御端子を有するが、本明細書の教示に照らして、各ナノ細孔構造が、複数の電気変換要素、および/または、各回路が1つ以上の機能を提供する複数の回路を有することができることが諒解され得る。例として、ナノ細孔構造は、検知のための電気変換要素と、その電気変換要素からの信号を処理するための対応する回路と、を有することができ、ナノ細孔構造内の通路に制御信号を印加するように適合された第2の電気変換要素と、を有することができ、上記第2の電気変換要素は、上記制御信号を制御可能に印加するための回路を有する。
【0091】
したがって、複数の電気変換要素を、複数のそれぞれのナノ細孔構造を有するモジュールに配設することができる。モジュールは、共通の専用電子回路を有することができ、電気変換要素および電子回路の各々は、複数のナノ細孔構造によって占められるフットプリントに配置される。モジュールは、例えば、各々がそれぞれの電気変換要素を有する4つのナノ細孔構造を有することができ、各電気変換要素は、共通回路に接続される。共通回路は、外部のオフ構造またはシート外の電子回路にアドレス指定可能に接続することができる。
【0092】
複数のナノ細孔構造を二次元マトリックスに配設することができる。複数のナノ細孔構造は、モザイク状のパターンに配設することができる。
【0093】
電気変換要素は、検知のためにトランジスタのベースまたはゲートに接続することができる。トランジスタは、電界効果トランジスタとすることができる。
【0094】
ナノ細孔構造の各々は、制御信号を印加してそれぞれのナノ細孔構造にわたる電位差を変化させるための制御端子を有することができる。制御端子は、電気変換要素に切り替え可能に接続可能とすることができる。制御端子は、ナノ細孔に課せられる構成可能な電圧レベルを変更するために、電源に切り替え可能に接続可能とすることができる。電気変換要素、および流体の電位を測定するための接続は、制御信号から切り替え可能に隔離可能とすることができる。電気変換要素および制御電極は物理的に分離することができる。電気変換要素の少なくとも一部分および制御電極の少なくとも一部分は同じ平面内に延在することができる。電気変換要素の少なくとも一部分および制御電極の少なくとも一部分は、少なくとも部分的に、ウェルのベースを形成する。電気変換要素の少なくとも一部分および制御電極の少なくとも一部分は互いから垂直に延在することができる。制御電極の少なくとも一部分は、少なくとも部分的にチャネル内に構成することができる。通路に対して露出されている電気変換要素の表面積は、通路に対して露出されている制御電極の表面積よりも小さくすることができる。
【0095】
本明細書のデバイスは、ナノ細孔層、基層、またはセンス層のうちの少なくとも1つの中に構成されている導電性ガードを有して構成することができる。寄生容量が接続から得られる測定値に影響を与えるのを抑制するために、導電性ガードは、電気変換要素および電気変換要素に接続された信号導体のうちの少なくとも1つと、ナノ細孔層、基層またはセンス層内の寄生導電性要素との間に延在することができる。入力信号のバッファバージョンを、ガード導体に印加することができる。その結果、入力信号導体から導電性基板までの静電容量にわたる電圧差はない。
【0096】
導電性ガードは、少なくとも部分的に、および絶縁層を有する絶縁ガード導体を含むことができる。導電性ガードは、少なくとも部分的に、基層とチャネルとの間に延在するように構成することができる。
【0097】
本発明者らは、本明細書に開示されるデバイスの動作および製造可能性をさらに検討した。
【0098】
さらなる態様では、本発明は、ナノ細孔検知について説明したようにデバイスを動作させる方法を提供し、方法は、アレイにわたって印加された電位差の下でナノ細孔のアレイを通して分析物を移動させることと、それぞれの電気変換要素によって各ナノ細孔における流体電位の変化を測定することと、測定に応答して、電気変換要素の制御端子に制御信号を印加して、ナノ細孔にわたる電位差を変化させることと、を含む。したがって、さらなる態様において、本発明は、ナノ細孔検知のためのデバイスを動作させる方法を提供し、方法は、分析物リザーバと出口チャンバとを分離する構造内に配置されているナノ細孔センサのアレイにわたって電位差を課すことであって、各ナノ細孔センサが、分析物リザーバと出口チャンバとの間に流体接続を提供するための通路を有する、課すことと、ナノ細孔センサによる分析のための分析物を提供することであって、各ナノ細孔センサが、分析物がナノ細孔センサのナノ細孔を通して誘導されるときに、該ナノ細孔センサの電気変換要素における流体電位の変化を測定するための電気変換要素を有する、提供することと、アレイのナノ細孔センサの電気変換要素の制御端子に制御信号を印加して、該ナノ細孔センサにわたる電位差を変化させることと、を含む。流体電位は、電気変換要素において測定することができる。そのナノ細孔構造にわたる流体電気分布は、デバイスに流体が供給されるときに変化させることができる。動作時、流体は、リザーバ、チャンバ、およびナノ細孔構造の通路内に存在する。リザーバ、チャンバ、およびナノ細孔構造の通路内の流体は、異なる流体であり得る。
【0099】
アレイにわたって課せられる電位差は、通路を通って、または少なくとも通路内へと分析物を誘導する役割を果たす。分析される分析物は、分析物リザーバ内に提供され、出口チャンバに誘導され、これは駆動電極によって達成される。しかしながら、この状況は、分析物を出口チャンバに提供することができ、または出口にある分析物を、例えば駆動電極間の電位差を変えることによって、駆動電極によって分析物リザーバ内に誘導することができるという点において、逆転することができる。
【0100】
いずれの場合も、ナノ細孔センサとして機能するナノ細孔を備えた各ナノ細孔構造の電気変換要素が、流体電位の変化を測定することができる。ナノ細孔構造のアレイは、1つのナノ細孔センサの電気変換要素が、隣接するナノ細孔構造内のナノ細孔を通過する分析物を検出することを阻害されるように寸法決めされている。
【0101】
制御信号を要素に印加して、上記要素が中に存在するナノ細孔センサにわたる電位差を変化させることができる。
【0102】
電気変換素子に接続された制御端子は、制御信号を印加するために、電気変換素子の制御端子に切り替え可能に接続することができる。付加的に、または代替的に、デバイスは、制御信号が印加されている間、上記回路への損傷を抑制するために、任意の検知回路を電気変換要素から隔離するように動作させることができる。
【0103】
方法は、ナノ細孔センサにおいて局所的に電位の変化の特性を分析することと、所定の特性に応答してそのナノ細孔センサに制御信号を印加することと、を含むことができる。方法は、制御信号をナノ細孔センサの電気変換要素に印加して、該ナノ細孔センサにおいて駆動電極によって課せられる電位を変化させることができる。電位差の変化は、帯電し得る分析物または自由に動くナノ細孔の動きを誘導することができる。
【0104】
制御信号は、通路にわたって形成されている膜への細孔の挿入を誘導することと、ナノ細孔の閉塞を除去することと、分析物を拒絶することと、そのナノ細孔を通じた分析物の移動の速度を変化させることと、を含む、複数の動作を実施することができるが、これらに限定されない。
【0105】
分析物を検知するためのナノ細孔構造を有するデバイスの形成において、形成する方法は、構造内にナノ細孔構造を形成し、デバイスの分析物リザーバと出口チャンバとを分離するように構造を配設することであって、そのため、各ナノ細孔構造が、分析物リザーバと出口チャンバとの間の構造を通る流体接続のための通路を提供する、形成し、配設することと、各ナノ細孔構造内に、電気変換要素と、電気変換要素からの信号を測定するように構成されている電子回路とを作製することと、を含み、ナノ細孔構造の各々が、接続可能なプロセッサに対して測定されている信号の少なくとも一部分、または信号から導出される情報を格納すること、送信すること、処理すること、および通信することのうちの少なくとも1つを行うように構成されている。
【0106】
各ナノ細孔構造内に電子回路を作製することにより、センサとして機能するナノ細孔が提供された場合に、そのナノ細孔構造の電気変換要素において測定を行うことができる。
【0107】
センサから取得した測定値は、分析のために構造外回路に直接通信できるが、信号または信号に由来する情報をローカルで処理または調整する機能により、ノイズパフォーマンス、データ管理、または増幅を向上させることができる。例として、ナノ細孔構造内に配置されている回路は、電気変換要素から受信される信号を増幅することができ、信号を局所的に増幅することによって、増幅されるノイズのレベルが最小限に抑えられる。例えば、電気変換要素から受信される信号が、分析のために増幅する前に構造外に通信される場合、上記信号のノイズへの曝露は増加し、その後増幅され、したがって信号対雑音比が低下する。
【0108】
方法は、分析物を受容するための分析物リザーバおよび分析物を収集するための出口チャンバを構成することと、分析物リザーバと出口チャンバとを分離するようにナノ細孔層を構成することと、をさらに含むことができる。この構造により、デバイスのシスとトランスとを分離することができる。
【0109】
方法は、分析物リザーバおよび出口チャンバ内にそれぞれ接続された駆動電極を、ナノ細孔構造の通路にわたって電位差を課すように構成することをさらに含むことができる。課せられる電位差は、複数のナノ細孔構造にわたって共通とすることができる。ナノ細孔構造のアレイにわたって共通の電位差を達成するために、複数の駆動電極を提供することができる。
【0110】
方法は、各それぞれのナノ細孔構造にわたって駆動電極によって課せられる電位を変化させるために、電気変換要素のそれぞれの制御端子に信号を印加するように、切り替え可能な接続を備えた電子回路を構成することをさらに含むことができる。
【0111】
方法は、各ナノ細孔センサの通路内に制御電極を形成することをさらに含むことができ、上記制御電極は、各それぞれのナノ細孔構造にわたって駆動電極によって課せられる電位を変化させるための信号に選択的に接続可能である。
【0112】
分析物を検知するためのナノ細孔構造を有するデバイスの作製において、作製する方法は、シートに構成されているナノ細孔構造のアレイを有するデバイスを形成する方法であって、各ナノ細孔構造が、分析物リザーバと出口チャンバとの間の構造を通る流体接続のための通路を提供するように、デバイスの分析物リザーバと出口チャンバとを分離するようにシートを配設することを含み、方法が、ナノ細孔のアレイおよび/またはナノ細孔を支持するためのウェルなどの支持構造のアレイを有する、ナノ細孔層を形成することと、電気変換要素のアレイを形成することと、チャネルのアレイを有する基層を形成することであって、ナノ細孔および/またはウェルが、電気変換要素およびチャネルと整列するように、上記基層が、シートを形成するためにナノ細孔層に挟みまたは積層されている、形成することと、ナノ細孔構造の各々を通る通路を提供することであって、そのため、各通路が、少なくとも部分的に、通路の一方の側にある、ナノ細孔のうちの1つおよび/またはナノ細孔層のウェルのうちの1つと、通路の他方の側にある基層のチャネルと、電気変換要素と、によって画定される、提供することと、を含む。
【0113】
ナノ細孔層、基層、および電気変換要素のアレイを整列させることは、電気変換要素のアレイをナノ細孔層と基層との間に挟むことを含むことができる。挟むステップは、2つの層を接合または他の様態で接続することを含むことができる。
【0114】
方法は、電気変換要素の各々の少なくとも一部分に隣接して空洞を形成することをさらに含むことができる。これらの空洞は、通路内の流体にさらされる要素の面積を増やすことができる。
【0115】
方法は、センス層上に電気変換要素のアレイを形成することと、ナノ細孔層と基層との間にセンス層を挟むことと、をさらに含むことができる。
【0116】
方法は、センス層上に電気変換要素のアレイを形成することと、センス層内に電子回路のアレイを作製することであって、上記回路が、それぞれの電気変換要素に、電気変換要素から受信される信号を修正および/または処理するために接続されている、作製することと、ナノ細孔層と基層との間にセンス層を挟むことと、をさらに含むことができる。
【0117】
(i)通路内の流体に接続するための露出部分、および(ii)構造内に埋め込まれている埋め込み部分、および/または(iii)構造から分離している測定回路に接続するための接続部分を有するように、配設することをさらに含むことができる。
【0118】
方法は、ナノ細孔層、基層またはセンス層のうちの少なくとも1つの中に導電性ガードを形成することをさらに含むことができ、上記導電性ガードは、寄生容量が接続から得られる測定値に影響を与えるのを抑制するために、電気変換要素、および電気変換要素に接続された信号導体のうちの少なくとも1つと、ナノ細孔層、基層またはセンス層内の寄生導電性要素との間に延在するように構成されている。
【0119】
方法は、各ナノ細孔構造にバッファを提供することをさらに含むことができ、上記バッファは、該ナノ細孔構造の電気変換要素の出力を導電性ガードに接続する。
【0120】
方法は、アレイのナノ細孔構造の各々に両親媒性膜を提供することと、上記膜に生物学的ナノ細孔を挿入することとをさらに含むことができる。
【0121】
方法は、構造を取り外し可能に取り付けること、および/または、ナノ細孔層を除去し、それを別のナノ細孔層と交換することを含むことができる。このようにして、デバイスをリサイクルすることができる。
【0122】
本明細書では多くの態様が説明されており、本明細書の教示に照らして、異なる態様の要素を組み合わせることができる。したがって、多くのさらなる態様は、本明細書および図面の教示に照らして暗黙的であり、これらは、本明細書に記載される態様の2つ以上を組み合わせることが多い。一般に、種々の態様を任意の組み合わせで組み合わせることができる。
(態様例1)
ナノ細孔検知のためのデバイスであって、
分析物リザーバと出口チャンバとを分離するように配設されている構造であって、前記構造が、ナノ細孔構造のアレイを備え、各ナノ細孔構造が、前記分析物リザーバと前記出口チャンバとの間の前記構造を通る流体接続のための通路を備える、構造と、
前記通路にわたって電位差を課すために、前記分析物リザーバおよび前記出口チャンバ内にそれぞれ接続されている、駆動電極と、
複数の電気変換要素であって、各要素が、それぞれのナノ細孔構造の前記通路に、該ナノ細孔構造内の該電気変換要素における流体電位を測定するために、接続されている、電気変換要素と、
複数の制御端子であって、各制御端子が、制御信号を印加して、それぞれのナノ細孔構造にわたる前記電位差を変化させるために、該ナノ細孔構造に接続されている、制御端子と、を備える、ナノ細孔検知のためのデバイス。
(態様例2)
各ナノ細孔構造に関連付けられた前記電気変換要素および前記制御端子が、直接的に接続されている、態様例1に記載のデバイス。
(態様例3)
前記端子が、各それぞれのナノ細孔構造における前記電気変換要素における前記流体電位の測定に応答して、制御信号を印加して、該ナノ細孔構造にわたる前記電位差を変化させるように構成されている、態様例1または2に記載のデバイス。
(態様例4)
前記制御信号の前記印加が、前記制御端子のうちの少なくとも1つと前記駆動電極のうちの少なくとも1つとの間の前記電位差を変化させるように構成されている、態様例1~3のいずれか一項に記載のデバイス。
(態様例5)
前記制御信号が、前記接続された制御端子と前記駆動電極のうちの少なくとも1つとの間の前記電位差を同時に変化させるために、複数の前記ナノ細孔構造に接続可能である、態様例1~4のいずれか一項に記載のデバイス。
(態様例6)
前記電気変換要素が、測定回路から隔離可能である、態様例1~5のいずれか一項に記載のデバイス。
(態様例7)
前記電気変換要素が、前記制御信号の前記印加前に隔離可能である、態様例6に記載のデバイス。
(態様例8)
ナノ細孔構造が、ナノ細孔を含む、態様例1~7のいずれか一項に記載のデバイス。
(態様例9)
前記制御信号が、
分析物が閉塞されていることを前記デバイスが検出するときに、ナノ細孔の前記通路の閉塞を除去するために、
測定中の分析物を拒絶するために、ならびに/または
前記ナノ細孔分析物を通じた分析物の移動の方向および/もしくは速度を変化させるために、
前記ナノ細孔にわたる前記電位差を変化させることを目的として印加される、態様例8に記載のデバイス。
(態様例10)
前記アレイが、電子回路を有し、各電子回路が、それぞれのナノ細孔構造に関連付けられ、前記電気変換要素に接続され、各電子回路が、前記電気変換要素から受信される信号を修正および/または処理するように構成されている、態様例1~9のいずれか一項に記載のデバイス。
(態様例11)
各電子回路が、ナノ細孔構造のグループに関連付けられた、態様例10に記載のデバイス。
(態様例12)
前記アレイが、制御回路を有し、各制御回路が、それぞれのナノ細孔構造に関連付けられ、前記制御端子および/または前記電気変換要素に接続され、前記制御回路が、前記それぞれのナノ細孔構造において、信号に応答して前記駆動電極によって課せられる電位を変化させるように構成されている、態様例1~11のいずれか一項に記載のデバイス。
(態様例13)
各制御回路が、ナノ細孔構造のグループに関連付けられた、態様例12に記載のデバイス。
(態様例14)
前記構造が、
ナノ細孔を組み込む、および/またはナノ細孔を支持するためのウェルを組み込む、ナノ細孔層と、
チャネルを組み込む基層と、を有し、
前記ナノ細孔層および前記基層が、前記ナノ細孔および/またはウェルが整列して前記通路を画定するようにともに挟まれる、態様例1~13のいずれか一項に記載のデバイス。
(態様例15)
前記電気変換要素、前記制御回路、または前記制御端子のうちの少なくとも1つが、前記構造の外面の上または間に配置されている、態様例13に記載のデバイス。
(態様例16)
分析物を検知するための、複数のナノ細孔構造を有するデバイスであって、前記ナノ細孔構造が、分析物リザーバと出口チャンバとを分離するように配設されている構造内に構成されており、各ナノ細孔構造が、前記分析物リザーバと前記出口チャンバとの間の前記構造を通る流体接続のための通路を提供し、
各ナノ細孔構造が、
電気変換要素と、
前記電気変換要素からの信号を検出し、任意選択的に増幅するように構成されている電子回路と、を備え、
前記構造の各々が、接続可能なプロセッサに対して前記信号の少なくとも一部分を格納すること、送信すること、処理すること、および通信することのうちの1つ以上を行うように構成されている、デバイス。
(態様例17)
前記構造が、分析物を受容するための前記分析物リザーバと、前記分析物を収集するための前記出口チャンバとを分離するように構成されている、態様例16に記載のデバイス。
(態様例18)
前記構造内の前記ナノ細孔構造の各々が、補償回路をさらに備える、態様例16に記載のデバイス。
(態様例19)
前記補償回路が、前記補償回路のフィードバックループ内に可変利得増幅器および/または可変コンデンサを有する、態様例18に記載のデバイス。
(態様例20)
前記ナノ細孔構造の各々が、制御端子を有し、各制御端子が、制御信号を印加してそれぞれのナノ細孔にわたる前記電位差を変化させるために、該ナノ細孔に関連付けられた、態様例16~19のいずれか一項に記載のデバイス。
(態様例21)
前記制御端子が、電源に切り替え可能に接続されて、前記ナノ細孔に課せられる構成可能な電圧レベルを変更する、態様例20に記載のデバイス。
(態様例22)
前記構造内の各ナノ細孔構造が、ピクセルに構成されている、態様例16~21のいずれか一項に記載のデバイス。
(態様例23)
前記ピクセルが、ナノ細孔構造のモザイク状のアレイを形成する、態様例22に記載のデバイス。
(態様例24)
シートに構成されているナノ細孔構造のアレイを有するデバイスであって、前記シートが、
ナノ細孔のアレイおよび/またはナノ細孔を支持するためのウェルのアレイを有する、ナノ細孔層と、
チャネルのアレイを有する基層と、を備え、前記基層が、前記シートを形成するために前記ナノ細孔層に挟まれており、前記ナノ細孔および/または前記ウェルが、前記チャネルと整列され、前記ナノ細孔構造の各々が、通路を備え、各通路が、少なくとも部分的に、
前記通路の一方の側にある、前記ナノ細孔のうちの1つおよび/または前記ナノ細孔層の前記ウェルのうちの1つと、
前記通路の他方の側にある前記基層のチャネルと、
電気変換要素と、によって画定される、デバイス。
(態様例25)
各通路内の前記電気変換要素が、前記ナノ細孔層と前記チャネルの少なくとも一部分との間に配置され、流体が前記通路内に供給されるときに前記電気変換要素の位置において前記流体の電位を測定するための接続を有して構成されている、態様例24に記載のデバイス。
(態様例26)
前記シートによって少なくとも部分的に分離された分析物リザーバおよび出口チャンバをさらに備え、前記シートが、前記分析物リザーバを前記出口チャンバに接続するために、前記分析物リザーバと前記出口チャンバとの間に配置されている前記通路のアレイを有する、態様例24または25に記載のデバイス。
(態様例27)
前記分析物リザーバと前記出口チャンバとの間の前記通路のアレイにわたって電位差を課すために、前記分析物リザーバおよび前記出口チャンバに接続された駆動電極をさらに備える、態様例24~26のいずれか一項に記載のデバイス。
(態様例28)
前記シートが実質的に平面であり、分析物リザーバに面し、シス面を画定するための前記ナノ細孔層上のシス表面と、出口チャンバに面し、トランス面を画定するための、前記基層のトランス表面と、を有し、前記アレイの前記電気変換要素が、少なくとも部分的に、前記シス面と前記トランス面との間で前記シート内に埋め込まれている、態様例24~27のいずれか一項に記載のデバイス。
(態様例29)
前記アレイの前記電気変換要素が、前記ナノ細孔層と前記基層との間に挟まれている、態様例24~28のいずれか一項に記載のデバイス。
(態様例30)
前記アレイの各ナノ細孔構造が、前記通路の第1の端部に形成されたウェルを有し、ナノ細孔が、前記ウェルの前記第1の端部に構成されており、前記電気変換要素が、前記ナノ細孔に対して前記ウェルの反対側に構成されている、態様例24~29のいずれか一項に記載のデバイス。
(態様例31)
前記ウェルが、ポリマー膜または脂質二重層などの流体膜を支持するように構成されている、態様例30に記載のデバイス
(態様例32)
前記ナノ細孔層が、前記基層とは異なる材料から作製される、態様例24~31のいずれか一項に記載のデバイス。
(態様例33)
前記電気変換要素が、流体が前記通路内に供給されるときに前記電気変換要素の位置において前記流体の電位の変動を測定するためのトランジスタデバイスのベースまたはゲートに直接的に接続可能なセンサ電極である、態様例24~32のいずれか一項に記載のデバイス。
(態様例34)
各電気変換要素が、任意選択的にビアを介して、シート外の測定回路へのエッジコネクタまたはワイヤボンドに接続されている、態様例24~33のいずれか一項に記載のデバイス。
(態様例35)
前記トランジスタデバイスが、電界効果トランジスタである、態様例33に記載のデバイス。
(態様例36)
前記電気変換要素のアレイを有するセンス層をさらに備え、前記センス層が、前記ナノ細孔層と前記基層との間に挟まれている、態様例24~35のいずれか一項に記載のデバイス。
(態様例37)
前記電気変換要素が、前記センス層上に形成されており、前記電気変換要素が、(i)前記通路内の流体に接続するための露出部分、および(ii)前記シート内に埋め込まれている埋め込み部分、および/または(iii)前記シートから分離している測定回路に接続するための接続部分、を有する、態様例36に記載のデバイス。
(態様例38)
前記電気変換要素が、少なくとも部分的に、前記通路の壁を覆う、態様例24~37のいずれか一項に記載のデバイス。
(態様例39)
前記電気変換要素が、断面において、前記チャネルの壁の一部分を覆う、態様例24~38のいずれか一項に記載のデバイス。
(態様例40)
前記電気変換要素が、前記通路の周りに環状部を形成する、態様例1~39のいずれか一項に記載のデバイス。
(態様例41)
分析物リザーバをさらに備え、前記電気変換要素が、少なくとも部分的に、前記通路の周りの前記基層または前記センス層の表面を形成し、前記分析物リザーバに面するように配設されている露出部分を有する、態様例24~40のいずれか一項に記載のデバイス。
(態様例42)
出口チャンバをさらに備え、前記電気変換要素が、少なくとも部分的に、前記通路の周りの前記センス層の表面を形成し、前記出口チャンバに面するように配設されている露出部分を有する、態様例24~41のいずれか一項に記載のデバイス。
(態様例43)
前記露出部分が、前記ウェルと前記チャネルとの間で前記センス層内に形成される空洞の壁の一部を形成する、態様例42に記載のデバイス。
(態様例44)
前記電気変換要素が、前記通路および露出部分の一部分を形成する開口を有し、断面において、前記電気変換要素の前記露出部分のサイズと、前記開口のサイズとの比が1:1である、態様例24~43のいずれか一項に記載のデバイス。
(態様例45)
前記比が約5:1である、態様例44に記載のデバイス。
(態様例46)
前記電気変換要素が、前記通路および露出部分の一部分を形成する開口を有し、平面視において、前記電気変換要素の前記露出部分のサイズと、前記開口のサイズとの比が1:1である、態様例24~45のいずれか一項に記載のデバイス。
(態様例47)
前記電気変換要素が、前記通路および露出部分の一部分を形成する開口を有し、前記比が約5:1である、態様例46に記載のデバイス。
(態様例48)
前記開口が、円形である、態様例44~47のいずれか一項に記載のデバイス。
(態様例49)
前記センス層が、前記電気変換要素から受信される前記信号を変更および/または処理するために、前記電気変換要素に接続されている電子回路を組み込んでいる、態様例36~48のいずれか一項に記載のデバイス。
(態様例50)
前記電子回路が、分析物が前記ナノ細孔を通過するときにそれぞれの通路におけるナノ細孔の抵抗変化を検出するように構成されており、前記抵抗変化が、前記センサの前記電気変換要素における流体電位の変化を通じて検出される、態様例49に記載のデバイス。
(態様例51)
前記電子回路が、ポリマーが前記ナノ細孔を通過するときに前記電気変換要素における電位の変化を判定し、前記電位の変化を電圧信号に変換し、前記電圧信号を増幅する、態様例49または50に記載のデバイス。
(態様例52)
前記電子回路が、前記信号をフィルタリングする、態様例49~51のいずれか一項に記載のデバイス。
(態様例53)
前記電子回路が、前記電気変換要素から得られる信号をサンプリングおよび/またはデジタル化する、態様例49~52のいずれか一項に記載のデバイス。
(態様例54)
各ナノ細孔構造が、複数の電気変換要素を有する、態様例49~53のいずれか一項に記載のデバイス。
(態様例55)
前記アレイ内の各ナノ細孔構造が、それぞれのナノ細孔に対応する複数の電気変換要素を有し、前記電気変換要素が、アドレス指定可能なアレイに構成されている、態様例49~54のいずれか一項に記載のデバイス。
(態様例56)
各電気変換要素が、専用の電子回路を有し、各電気変換要素および電子回路が、フットプリント内に配置されており、前記フットプリントが、前記アレイ内でモザイク状になっている、態様例49~55のいずれか一項に記載のデバイス。
(態様例57)
複数の電気変換要素が、複数のナノ細孔構造を有するモジュール内に配設され、前記モジュールが、共通の専用電子回路を有し、前記電気変換要素および電子回路の各々が、フットプリント内に配置されており、前記フットプリントが、前記アレイ内でモザイク状になっている、態様例49~56のいずれか一項に記載のデバイス。
(態様例58)
前記複数のナノ細孔構造が、二次元マトリックスに配設されている、態様例1~57のいずれか一項に記載のデバイス。
(態様例59)
前記複数のナノ細孔構造が、モザイク状のパターンに配設されている、態様例1~58のいずれか一項に記載のデバイス。
(態様例60)
前記電気変換要素が、検知のためにトランジスタのベースまたはゲートに接続されている、態様例1~59のいずれか一項に記載のデバイス。
(態様例61)
前記ナノ細孔構造の各々が、制御信号を印加して前記それぞれのナノ細孔構造にわたる前記電位差を変化させるための制御端子を有する、態様例24~60のいずれか一項に記載のデバイス。
(態様例62)
前記制御端子が、前記電気変換要素に切り替え可能に接続可能である、態様例61に記載のデバイス。
(態様例63)
前記制御端子が、前記ナノ細孔に課せられる構成可能な電圧レベルを変更するために、電源に切り替え可能に接続可能である、態様例62に記載のデバイス。
(態様例64)
前記電気変換要素、および前記流体の電位を測定するための接続が、前記制御信号から切り替え可能に隔離可能である、態様例61~63のいずれか一項に記載のデバイス。
(態様例65)
前記電気変換要素および制御電極が物理的に分離されている、態様例61~64のいずれか一項に記載のデバイス。
(態様例66)
前記電気変換要素の少なくとも一部分および前記制御電極の少なくとも一部分が、同じ平面内に延在する、態様例65に記載のデバイス。
(態様例67)
前記電気変換要素の少なくとも一部分および前記制御電極の少なくとも一部分が、少なくとも部分的に、ウェルのベースを形成する、態様例65または66に記載のデバイス。
(態様例68)
前記電気変換要素の少なくとも一部分および前記制御電極の少なくとも一部分が、互いから垂直に延在する、態様例65に記載のデバイス。
(態様例69)
前記制御電極の少なくとも一部分が、少なくとも部分的に前記チャネル内に構成されている、態様例65~68に記載のデバイス。
(態様例70)
前記通路に対して露出されている前記電気変換要素の表面積が、前記通路に対して露出されている前記制御電極の表面積よりも小さい、態様例65~69に記載のデバイス。
(態様例71)
前記ナノ細孔層または基層のうちの少なくとも1つの中で、寄生容量が接続から得られる測定値に影響を与えるのを抑制するために、前記電気変換要素および前記電気変換要素に接続された信号導体のうちの少なくとも1つと、前記ナノ細孔層または基層内の寄生導電性要素との間に延在するように構成されている導電性ガードをさらに備える、態様例24~70に記載のデバイス。
(態様例72)
導電性ガードが、付加的にまたは代替的に、前記センス層の中で、寄生容量が接続から得られる測定値に影響を与えるのを抑制するために、前記電気変換要素および前記電気変換要素に接続された信号導体のうちの少なくとも1つと、前記センス層内の寄生導電性要素との間に延在するように構成されている、態様例36~71のいずれか一項に記載のデバイス。
(態様例73)
前記導電性ガードが、少なくとも部分的に、ガード導体と、ガードされている導体またはからガードされている導体から前記ガード導体を絶縁するように構成されている絶縁層と、を含む、態様例71または72に記載のデバイス。
(態様例74)
前記導電性ガードが、少なくとも部分的に、前記基層と前記チャネルとの間に延在するように構成されている、態様例71~73のいずれか一項に記載のデバイス。
(態様例75)
ナノ細孔検知のためのデバイスを動作させる方法であって、
分析物リザーバと出口チャンバとを分離する構造内に配置されているナノ細孔センサのアレイにわたって電位差を課すことであって、各ナノ細孔センサが、前記分析物リザーバと前記出口チャンバとの間に流体接続を提供するための通路を有する、課すことと、
前記ナノ細孔センサによる分析のための分析物を提供することであって、各ナノ細孔センサが、分析物が前記ナノ細孔センサのナノ細孔を通して誘導されるときに、該ナノ細孔センサの前記電気変換要素における電位の変化を測定するための電気変換要素を有する、提供することと、
前記アレイのナノ細孔センサの電気変換要素の制御端子に制御信号を印加して、該ナノ細孔センサにわたる前記電位差を変化させることと、を含む、方法。
(態様例76)
前記制御端子を前記電気変換要素に切り替え可能に接続することと、前記制御端子に前記制御信号を印加することと、をさらに含む、態様例75に記載の方法。
(態様例77)
該ナノ細孔センサの前記電気変換要素における流体電位の変化の特性を分析することと、該特性のうちの少なくとも1つに応答して該ナノ細孔センサに前記制御信号を印加することと、をさらに含む、態様例75または76に記載の方法。
(態様例78)
制御信号をナノ細孔センサの電気変換要素に印加することにより、該ナノ細孔センサにおいて前記駆動電極によって課せられる電位が変化する、態様例75~77のいずれか一項に記載の方法。
(態様例79)
前記制御信号を印加する前に、ナノ細孔センサに接続された測定回路から前記電気変換要素を隔離することをさらに含む、態様例75~78のいずれか一項に記載の方法。
(態様例80)
ナノ細孔センサが、該ナノ細孔センサの該電気変換要素における流体電位の変化を測定することに応答して、該ナノ細孔センサに前記制御信号を印加することをさらに含み、前記制御信号は、
閉塞が検出されるときに、ナノ細孔の閉塞を除去すること、
該ナノ細孔センサによって測定されている分析物を拒絶すること、および/または
該ナノ細孔を通じた分析物の移動の速度および/または方向を変化させることを行うように構成されている、態様例75~79のいずれか一項に記載の方法。
(態様例81)
分析物を検知するためのナノ細孔構造を有するデバイスを形成する方法であって、
構造内にナノ細孔構造を形成し、前記デバイスの分析物リザーバと出口チャンバとを分離するように前記構造を配設することであって、そのため、各ナノ細孔構造が、前記分析物リザーバと前記出口チャンバとの間の前記構造を通る流体接続のための通路を提供する、形成し、配設することと、
各ナノ細孔構造内に、
電気変換要素と、
前記電気変換要素からの信号を測定するように構成されている電子回路と、を作製することと、を含み、
前記ナノ細孔構造の各々が、接続可能なプロセッサに対して前記測定されている信号の少なくとも一部分、または前記信号から導出される情報を格納すること、送信すること、処理すること、および通信することのうちの少なくとも1つを行うように構成されている、方法。
(態様例82)
前記方法が、分析物を受容するための分析物リザーバおよび前記分析物を収集するための出口チャンバを構成することと、前記分析物リザーバと前記出口チャンバとを分離するように前記ナノ細孔層を構成することと、をさらに含む、態様例81に記載の方法。
(態様例83)
前記方法が、前記分析物リザーバおよび前記出口チャンバ内にそれぞれ接続された駆動電極を、前記ナノ細孔構造の前記通路にわたって電位差を課すように構成することをさらに含む、態様例82に記載の方法。
(態様例84)
前記課せられる電位差が、複数の前記ナノ細孔構造にわたって共通である、態様例83に記載の方法。
(態様例85)
各それぞれのナノ細孔構造にわたって前記駆動電極によって課せられる電位を変化させるために、前記電気変換要素のそれぞれの制御端子に信号を印加するように、切り替え可能な接続を備えた前記電子回路を構成することをさらに含む、態様例85に記載の方法。
(態様例86)
各ナノ細孔センサの前記通路内に制御電極を形成することをさらに含み、前記制御電極は、各それぞれのナノ細孔構造にわたって前記駆動電極によって課せられる電位を変化させるための信号に選択的に接続可能である、態様例81~84のいずれか一項に記載の方法。
(態様例87)
シートに構成されているナノ細孔構造のアレイを有するデバイスを形成する方法であって、各ナノ細孔構造が、分析物リザーバと出口チャンバとの間の前記構造を通る流体接続のための通路を提供するように、前記デバイスの前記分析物リザーバと前記出口チャンバとを分離するように前記シートを配設することを含み、前記方法が、
ナノ細孔のアレイおよび/またはナノ細孔を支持するためのウェルのアレイを有する、ナノ細孔層を形成することと、
電気変換要素のアレイを形成することと、
チャネルのアレイを有する基層を形成することであって、前記ナノ細孔および/または前記ウェルが、前記電気変換要素およびチャネルと整列するように、前記基層が、前記シートを形成するために前記ナノ細孔層に挟まれている、形成することと、
前記ナノ細孔構造の各々を通る通路を提供することであって、そのため、各通路が、少なくとも部分的に、
前記通路の一方の側にある、前記ナノ細孔のうちの1つおよび/または前記ナノ細孔層の前記ウェルのうちの1つと、
前記通路の他方の側にある前記基層のチャネルと、
電気変換要素と、によって画定される、提供することと、を含む、方法。
(態様例88)
前記ナノ細孔層、基層、および電気変換要素のアレイを整列させることは、前記電気変換要素のアレイを前記ナノ細孔層と前記基層との間に挟むことを含む、態様例87に記載の方法。
(態様例89)
前記電気変換要素の各々の少なくとも一部分に隣接して空洞を形成することをさらに含む、態様例87または88に記載の方法。
(態様例90)
センス層上に前記電気変換要素のアレイを形成することと、前記ナノ細孔層と前記基層との間に前記センス層を挟むことと、をさらに含む、態様例87~89のいずれか一項に記載の方法。
(態様例91)
センス層上に前記電気変換要素のアレイを形成することと、前記センス層内に電子回路のアレイを作製することであって、前記回路が、それぞれの電気変換要素に、前記電気変換要素から受信される前記信号を修正および/または処理するために接続されている、作製することと、前記ナノ細孔層と前記基層との間に前記センス層を挟むことと、をさらに含む、態様例87~89のいずれか一項に記載の方法。
(態様例92)
前記電気変換要素を、
(i)前記通路内の流体に接続するための露出部分、および
(ii)前記構造内に埋め込まれている埋め込み部分、および/または
(iii)前記構造から分離している測定回路に接続するための接続部分、を有するように配設することをさらに含む、態様例87~91のいずれか一項への態様例に記載の方法。
(態様例93)
前記ナノ細孔層、基層またはセンス層のうちの少なくとも1つの中に導電性ガードを形成することをさらに含み、前記導電性ガードは、寄生容量が接続から得られる測定値に影響を与えるのを抑制するために、前記電気変換要素、および前記電気変換要素に接続された信号導体のうちの少なくとも1つと、前記ナノ細孔層、基層またはセンス層内の寄生導電性要素との間に延在するように構成されている、態様例87~92のいずれか一項に記載の方法。
(態様例94)
各ナノ細孔構造にバッファを提供することをさらに含み、前記バッファは、該ナノ細孔構造の前記電気変換要素の出力を導電性ガードに接続する、93への態様例に記載の方法。
(態様例95)
前記アレイの前記ナノ細孔構造の各々に両親媒性膜を提供することと、前記膜に生物学的ナノ細孔を挿入することと、をさらに含む、態様例81~94のいずれか一項に記載の方法。
(態様例96)
前記ナノ細孔層が前記構造に取り外し可能に取り付け可能であり、前記方法が、前記ナノ細孔層を除去することと、前記ナノ細孔層を別のナノ細孔層と交換することと、をさらに含む、態様例81~95のいずれか一項に記載の方法。
【0123】
本発明の実施形態は、非限定的な例としてのみ、図面を参照して以下で考察される。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【
図2】単一のセンサ電極、および構造内に構成され、ワイヤを介して測定回路に接続されたナノ細孔アレイ内の対応する生物学的ナノ細孔の断面図である。
【
図3(a)】単一のセンサ電極、および対応する生物学的ナノ細孔の代替的な断面図であり、センサ電極は、ナノ細孔構造アレイの一部分内でナノ細孔層と基層との間に挟まれたセンサ層上に構成され、センサ電極がワイヤを介して電子回路に接続されている、断面図である。
【
図3(b)】センス層が電子回路を組み込んでいる、
図3(a)に相当する図である。
【
図4(a)】電子回路に対するウェルの位置を示している、
図3(b)のナノ細孔センサのレイアウトの概略図である。
【
図4(b)】ナノ細孔を追加する前の2つの隣接するセンサ電極を示す図である。
【
図4(c)】
図4(a)のナノ細孔センサのアレイを有する構造の部分の例を示す図である。
【
図4(d)】
図4(a)のナノ細孔センサのアレイを有する構造の部分の例を示す図である。
【
図4(e)】デバイス内の2つのチャンバを分離するために構造をどのように配設することができるかを示す概略図である。
【
図4(f)】4つのナノ細孔構造の代替レイアウトを示す図である。
【
図5(a)】電気変換素子とインターフェースする電子機能を実装する様々な電子回路を示す図である。
【
図5(b)】電気変換素子とインターフェースする電子機能を実装する様々な電子回路を示す図である。
【
図5(c)】電気変換素子とインターフェースする電子機能を実装する様々な電子回路を示す図である。
【
図5(d)】電気変換素子とインターフェースする電子機能を実装する様々な電子回路を示す図である。
【
図6(a)】アレイのナノ細孔センサ内に構成されているセンサ電極および制御電極の断面概略図である。
【
図6(b)】アレイのナノ細孔センサ内に構成されているセンサ電極および制御電極の断面概略図である。
【
図6(c)】アレイのナノ細孔センサ内に構成されているセンサ電極および制御電極の断面概略図である。
【
図6(d)】アレイのナノ細孔センサ内に構成されているセンサ電極および制御電極の断面概略図である。
【
図6(e)】アレイのナノ細孔センサ内に構成されているセンサ電極および制御電極の断面概略図である。
【
図7(a)】それぞれガードを有するものと、有しないものである、アレイの寄生容量を例解する2つの概略回路を示す図である。
【
図7(b)】
図2に示されるものに対する代替的な断面図であり、ガード導体が構造内に構成され、追加のワイヤを介して測定回路に接続されている、断面図である。
【
図7(c)】ガードが構成されている代替的な断面図である。
【
図7(d)】ガードが構成されている代替的な断面図である。
【
図8】ナノ細孔構造のアレイを含むデバイスのそれぞれの例の側面図である。
【
図9】ナノ細孔構造のアレイを含むデバイスのそれぞれの例の側面図である。
【0125】
実施形態は、典型的には共通の参照番号によって標識された対応する構成要素を含む。明確にするために、対応する構成要素の説明は繰り返されないが、文脈が別途要求する場合を除いて、一般にすべての実施形態に適用される。すべての構成要素がすべての図で標識されているわけではなく、本発明を理解するために例解が必要でない場合、本発明の各実施形態のすべての構成要素が示されているわけでもない。
【0126】
概観において、改善されたナノ細孔検知のためのデバイスが説明される。例示的なデバイスは、分析物リザーバと出口チャンバとを分離するように配設されている構造を有することができる。構造は、ナノ細孔構造のアレイを有することができ、各ナノ細孔構造は、分析物リザーバと出口チャンバとの間の構造を通る流体接続のための通路を備える。制御端子を含めることができ、各制御端子は、制御信号を印加してそれぞれのナノ細孔構造にわたる電位差を変化させるために、該ナノ細孔構造に接続する。さらなる態様において、分析物を検知するための改善されたナノ細孔構造は、電気変換要素からの信号を検出するように構成されている電子回路を含むことができ、ナノ細孔構造の各々が、プロセッサに対して信号の少なくとも一部分を格納すること、送信すること、処理すること、および通信することのうちの少なくとも1つを行うように構成することができる。
【0127】
改善されたナノ細孔検知のためのデバイスのいくつかの実施形態は、シートに構成されたナノ細孔構造のアレイを有し、シートは、ナノ細孔のアレイおよび/またはナノ細孔を支持するためのウェルのアレイを有する、ナノ細孔層と、チャネルのアレイを有する基層と、を備え、上記基層が、シートを形成するためにナノ細孔層に挟みまたは積層されており、ナノ細孔および/またはウェルが、チャネルと整列され、ナノ細孔構造の各々が、通路を備え、各通路が、少なくとも部分的に、通路の一方の側にある、ナノ細孔のうちの1つおよび/またはナノ細孔層のウェルのうちの1つと、通路の他方の側にある基層のチャネルと、電気変換要素と、によって画定される。
【0128】
本発明の態様は、さらに、ナノ細孔検知のためのデバイスを動作させる方法に関し、方法は、アレイのナノ細孔構造の電気変換要素の制御端子に制御信号を印加して、該ナノ細孔センサにわたる電位差を変化させることを含む。
【0129】
追加の実施形態は、分析物を検知するためのナノ細孔構造を有するデバイスを形成する方法に関する。例示的な方法は、各ナノ細孔構造において、電気変換要素と、電気変換要素からの信号を測定するように構成されている電子回路と、を作製することを含むことができる。
【0130】
図2~4(a)は、ナノ細孔構造が組み込まれた構造100の一部分の断面図である。構造100は、ナノ細孔構造のアレイを有し、各ナノ細孔構造は、ナノ細孔116を支持するように適合されている。デバイスのナノ細孔構造は、ナノ細孔を有して構成されている場合、ナノ細孔センサとして機能することができる。本明細書のナノ細孔センサ102は、ナノ細孔を有するナノ細孔構造である。
【0131】
図4(b)~
図4(f)は、
図2~
図4(a)に示される複数のナノ細孔センサ102が、ナノ細孔構造104のアレイの一部分として配設され得ることを例解している。このような配設は、ナノ細孔構造の二次元マトリックス、またはナノ細孔センサのアレイとして参照される場合がある。
【0132】
シートの形態をとることができる構造100は、ナノ細孔構造104のアレイを組み込んでおり(アレイの1つのナノ細孔センサ102のみが示されていることに留意されたい)、
図4(e)に示すように、デバイス、または分析物を分析するためのデバイス内に構成することができる。
【0133】
構造100は、分析物を受容するための分析物リザーバ106と出口チャンバ108とを分離する。構造100は、基層112上に構成されているナノ細孔層110を有し、これは、複数のナノ細孔センサ102を有する構造100の少なくとも一部分をともに形成する。アレイ104内の各ナノ細孔センサ102は、分析物リザーバ106および出口チャンバ108を接続するために、アレイ104のナノ細孔層110および基層112を通って延在するように構成されている通路114または流体通路を有する。分析物リザーバ106は、分析物チャンバ、試料チャンバ、シス、シスリザーバ、または第1の流体リザーバとしても既知であり得る。出口チャンバは、トランス、トランスリザーバ、または第2の流体リザーバとしても既知であり得る。
【0134】
各ナノ細孔センサ102のナノ細孔層110は、任意選択的に、ナノ細孔層110によって支持される膜118内にナノ細孔116を設けられてもよい。代替的に、ナノ細孔116は、いわゆる固体ナノ細孔、すなわち、固体支持層内に設けられるナノメートルサイズの貫通孔であってもよい。さらに代替的に、ナノ細孔116は、いわゆるハイブリッドナノ細孔、すなわち、固体膜の開口内に設けられる生物学的ナノ細孔であってもよい。いずれにせよ、ナノ細孔116は、通路114の第1の端部120、または細孔端部の近位にある膜118内に(例えば、示されるようにセンサの上部に)設けられる。
【0135】
基層112は、第1の端部120に対して通路114の反対側の端部である第2の端部124、またはチャネル端部の近位にある(例えば、図示のナノ細孔センサ102の底部にある)チャネル122を有する。通路114は、一方の側を他方の側に接続するナノ細孔構造100を通って延在する。チャネル122は、通路114の一部分を形成する。チャネル122は、流体抵抗器として機能するように構造的および幾何学的に構成されている。これは、チャネル122のアスペクト比を定義することによって達成することができる。付加的に、または代替的に、チャネル122に流体抵抗を実装するための他の技法が使用されてもよい。
【0136】
チャネル122の流体抵抗は、その寸法、特にそのアスペクト比を変えることによって、ならびに、分析物リザーバ106および出口チャンバ108内の流体のイオン濃度を変えることによって変えることができる。例えば、チャネル122は、抵抗を増加させるために高いアスペクト比を有して構成することができる。付加的に、または代替的に、チャネル122内の流体は、チャネルの抵抗を増加させるために、分析物リザーバ106および出口チャンバ108内の流体と比較して、より低いイオン濃度を有することができる。分析物リザーバ106および出口チャンバ108においてより高いイオン濃度を維持することによって、信号対雑音比が改善する。
【0137】
いくつかの実施形態では、チャネル長さ対チャネル直径または最大横寸法の比であるアスペクト比は、例えば、約100:1~約2000:1であり得る。
【0138】
いくつかの実施形態では、分析物リザーバ106および/または出口チャンバ108内のイオン濃度対チャネル122内のイオン濃度の比であるイオン濃度差は、約1:1~約2000:1、例えば、約1000:1であり得る。
【0139】
チャネル122は、通路114が流体によって占められているときにチャネル122の抵抗とナノ細孔116の抵抗とが実質的に一致し、分析物リザーバ106および出口チャンバ108内の流体の抵抗と比較して比較的高く、そのため、分析物リザーバ106および出口チャンバ108の抵抗が、測定に検知できるほどの影響を及ぼさないように構成することができる。言い換えれば、チャネル122は、ナノ細孔116の抵抗を近似するための流体抵抗器として構成される。これは、分析物リザーバ106および出口チャンバ108内の流体などの他の回路要素の抵抗が、それほど重大ではなく、測定が行われるときにそれを計上するための補償を必要としないことを意味する。
【0140】
信号対雑音比は、チャネル122の流体抵抗をナノ細孔116の抵抗に等しくなるように選択することによって最適化することができる。しかしながら、これは必須ではなく、チャネル122の流体抵抗は、依然として許容可能な信号対雑音比を得ながら、他の要因を考慮に入れるためにこの値から変更され得る。許容可能な信号対雑音比は、例えば、チャネル122の流体抵抗を、例えばナノ細孔116の抵抗の2%以下など、ナノ細孔116の抵抗の10%以下にするなど、チャネル122の流体抵抗をナノ細孔116の抵抗よりも著しく小さくすることによって達成することができる。いくつかの実施形態では、チャネル122の流体抵抗の下限は、所望の信号対雑音比によって設定することができる。他の実施形態では、チャネル122の流体抵抗の下限は、(下記に説明するように)フリック中の隣接するチャネル間のクロストークの閾値によって設定することができる。すなわち、チャネル122の流体抵抗は、望ましくは、チャネル122の端部から電気変換要素までの抵抗よりも著しく大きく、これらの抵抗が、印加電圧の一部分を隣接チャネル122に印加する分圧器を形成するのを防ぐ。
【0141】
チャネル122の流体抵抗の選択において考慮され得る他の要因は以下の通りである。
【0142】
チャネル122の流体抵抗が増加するにつれて、イオンの拡散が減少し、細孔近くのイオンの枯渇が増加し、それにより、信号が得られる典型的なイベントのタイムスケールにわたって信号の減衰が引き起こされる。この効果によって引き起こされる読み取り長さの制限を増やすために、チャネル122の流体抵抗を減らすことができる。多くの実施形態では、この要因は、チャネル122の流体抵抗に上限を設けることができる。
【0143】
チャネル122およびナノ細孔116は分圧器として機能するため、ナノ細孔116の両端の電圧は、それを流れる電流の影響を受ける。チャネル122の流体抵抗が増加するにつれて、ナノ細孔116の両端の電圧の変動が増加し、これは信号処理を複雑にする可能性がある。この効果を制限するために、チャネル122の流体抵抗を低減することができる。
【0144】
流体抵抗がより低いチャネルは作製がより容易であり、歩留まりを向上させまたはコストを削減する代替の作製技法を開拓する可能性がある。
【0145】
チャネル122の流体抵抗を低減することは、帯域幅を増加させるか、または通路114内の追加の静電容量のための余裕をもたらすことができる。
【0146】
これらの要因を考慮に入れると、チャネル122の流体抵抗は、典型的にはナノ細孔116の抵抗の最大50%、または最大25%など、ナノ細孔116の抵抗よりも小さくなり得る。いくつかの実施形態では、チャネル122の最適な流体抵抗は、ナノ細孔116の抵抗の約10%であり得る。
【0147】
チャネル122の流体抵抗対ナノ細孔116の抵抗の比を減少させるとき、信号対雑音比は、その抵抗比に直接比例しない。例えば、いくつかの実施形態では、チャネル122の流体抵抗がナノ細孔116の抵抗の約10%である場合、信号対雑音比は、その最適値の約30%である。
【0148】
チャネル122は、ウェハ内に形成することができ、通路114がそれを通して形成された後、酸化物層を使用して、基層112を通る通路114の直径を低減することができ、したがって、酸化量がアスペクト比を調整することが可能になる。
【0149】
センサ電極126、またはセンサ要素が、ナノ細孔116とチャネル122の少なくとも一部分との間に配置される。センサ電極126は、この例では電気変換要素を形成する。より一般的には、センサ電極126は、WO2016/127007に開示されている様々なタイプのいずれかの電気変換要素を形成するように適合させることができる。
【0150】
センサ電極126は、少なくとも部分的に、ナノ細孔センサ102内の通路114に露出され、流体が通路114内に供給されるときにセンサ電極126の位置において流体の電位を測定するための接続128を有して構成される。ナノ細孔層110および基層112とともに、センサ電極126は、通路114の壁を画定する。接続128は、別個の電子回路130へのワイヤボンドとすることができ、上記電子回路130は、センサ電極126から得られる信号を分析するように構成される。
【0151】
分析物リザーバ106は、第1の流体リザーバとして機能することができ、一方、出口チャンバ108は、第2の流体リザーバとして機能することができる。構造100は、少なくとも部分的に、分析物リザーバ106と出口チャンバ108とを分離することができ、センサ102の通路114は、分析物リザーバ106を出口チャンバ108に接続する。
【0152】
使用中、各ナノ細孔センサ102の通路114は流体によって占められる。さらに、分析物リザーバ106および出口チャンバ108内の駆動電極132は、分析物電極としても既知である少なくとも1つのそれぞれのシス電極132a、および出口電極としても既知である少なくとも1つのそれぞれのトランス電極132bを含み、これらは、分析物リザーバ106と出口チャンバ108との間のアレイ104内のナノ細孔センサ102の通路114にわたって電位差を課すように構成されている。
【0153】
構造100は、実質的に平面状であり得る。アレイ104は、実質的に平面状であり得る。非平面構成が、本発明者らによって想定されているが、本明細書では説明されていない。アレイ104内のナノ細孔センサ102は、分析物リザーバ106に面し、シス面136を画定して配設されているナノ細孔層110のシス表面134と、出口チャンバ108に面し、トランス面140を画定するための基層112のトランス表面138と、を有する。このシス面136およびトランス面140は、
図2、
図3(b)および
図7(b)において破線で示されている。センサ電極126は、シス面136とトランス面140との間で構造100内に埋め込まれている。ナノ細孔116は、通路114の第1の端部120のシス面136上に実質的に位置することができ、一方、通路114の第2の端部124は、実質的にトランス面140上に位置することができる。
【0154】
図2のアセンブリに示されるように、センサ電極126は、少なくとも部分的に、ナノ細孔層110と基層112との間で構造100内の間に埋め込むことができる。言い換えれば、センサ電極126は、ナノ細孔層110と基層112との間に挟まるか、または積層されている。
【0155】
ナノ細孔層110は、通路114の第1の端部120に形成されたウェル142を有する。
図2の例では、ナノ細孔116は、実質的にシス面136上で、ウェル142の一方の側にある、通路114の第1の端部120に構成されている。センサ電極126は、示されるように、ナノ細孔116に対してウェル142の反対側に構成されている。ウェル142は、断面において示されている、その縁を横切る膜118を備えたカップ形のくぼみとして示されている。ウェル142は、ナノ細孔116を通過した分析物を受容するように構成される。ウェル142は、ウェル出口として説明することができるウェル開口142aを介してチャネル122に流体接続されることに留意されたい。ウェル開口142aは、分析物チャンバを出口チャンバに流体接続することを可能にするように機能する。ウェル開口142aはナノ細孔として機能しない。いくつかの実装形態では、ウェル開口142aは、分析物が阻害されずに、すなわち分析物リザーバ106から出口チャンバ108への分析物の移動に影響を与えることなく、そこを通過することを可能にするように構成される。
【0156】
ウェル開口142aは、分析物リザーバ106と出口チャンバ108との間の流体接続を提供するが、ナノ細孔116を通過した分析物は、ウェル142内に留まることができる。ウェル142およびチャネル122は、出口チャンバ108の一部分と考えることができる。
図2に示される例では、ウェル開口142aは、センサ電極126内のウェル142のベースの中央に位置している。
【0157】
ウェル142、より一般的にはナノ細孔層110は、流体膜として参照される場合があるポリマー膜または脂質二重層などの膜118を支持するように構成される。ナノ細孔層110は、基層112とは別個に作製することができる。ナノ細孔層110は、基層112とは異なる材料から形成することができる。ナノ細孔層110は、フォトリソグラフィによって調製された材料、成形ポリマー、またはレーザエッチングされたプラスチックのうちの少なくとも1つから形成することができる。
【0158】
いくつかの実施形態では、センサ電極126は、通路114内に流体が供給されるときにセンサ電極126の位置において流体の電位を測定するために、検知トランジスタ153(
図5(a)に示され、下記にさらに説明される)のベースまたはゲートに直接接続可能である。場合によっては、センサ電極126は、エッジコネクタまたはワイヤボンドに接続することができ、任意選択的に導電性ビアおよび/または相互接続によって、構造外の測定回路の一例である電子回路130に接続することができる。検知トランジスタ153は、電界効果トランジスタ(FET)とすることができ、検知トランジスタ153の構成および構造100へのその任意選択的な統合は、下記の例において説明される。いくつかの実施形態では、検知トランジスタ153(図示せず)は、電子回路130内に配置することができる。
【0159】
図2に示すナノ細孔センサ102は、センサ電極126を基層112上に形成することができる実施例である。
図2のセンサ電極126は、基層112上に直接形成することができるが、代替的に、
図3(a)および
図3(b)に示すように、センス層144上に別個に形成されてもよい。センス層144上にセンサ電極126を形成した後、センス層144をナノ細孔層110と基層112との間に挟むことができ、その結果、
図3(a)に示す構造が得られる。
【0160】
センス層144は、基層112と同様の方法で作製することができ、ウェハが、ウェハの表面に実質的に垂直に、それを通して形成された通路114を有する。代替的に、ウェハを後処理して、通路114を開くことができる。通路114および/またはチャネル122は、フォトリソグラフィもしくは深掘り反応性イオンエッチング(DRIE)またはそれらの組み合わせなどの技法を使用して形成することができる。ウェハは酸化物層によって囲むことができる。ウェハは、CMOSウェハとすることができる。センサ電極126は、センス層144の一方の側で、通路114の周りのセンス層144上に形成することができる。センス層144を通る通路114、およびこれらの通路114の周りに形成されるセンサ電極126は、結果として基層112上のチャネル122と整列させるピッチまたはレイアウトを有するように配設されている。ともに固定されると、センス層144の通路114は、基層112のチャネル122と整列される。
【0161】
例として、ナノ細孔層110は、成形もしくはリソグラフィエッチングすることができるポリマーから作成することができ、基層112は、シリコンウェハから形成することができ、かつ/または、センス層144は、CMOSウェハとすることができる。
【0162】
センス層144は、2つの向きのうちの1つにおいて基層112に整列および接合することができる。1つの向き(図示せず)において、センサ電極126は、接合後も完全に露出したままである。すなわち、センサ電極126は、センス層144の間に挟まれず、センス層144が基層112に固定された後、基層112から遠位にあり、続いて、センス層144とナノ細孔層110との間に挟まれる。他の向きにおいて、
図3(a)に示されるように、センサ電極126は、センス層144の上に形成され、これは次に反転され、その後、基層112に接合され、そのため、観察されるようにセンサ電極126が下向きになり、センス層144と基層112との間に挟まれる。この構成において接合する前に、チャネル122の周りの基層112上の酸化物層の一部分をエッチング除去するか、または他の様態で除去して、接合後に通路114に露出されるセンサ電極126の面積が増加するように空洞146を作成することができる。露出したセンサ電極126の面積を最大化して、通路114内の流体との接触を増加させることができる。
【0163】
ナノ細孔層110のウェル142は、通路114およびセンサ電極126と整列され、センサ電極126が間に挟まれた状態でセンス層144に接合される。
図3(b)を見て、センス層144が下から上に向かって作製されていることに注目すると、最後の段階は、センサ電極126を上に被着させることである。組み立てられると、
図3(b)に示されるように、上にあったセンサ電極126がこの時点で下を向くように、センス層144が裏返される。基層112の酸化物層(灰色の部分)からエッチングされた空洞146は、センサ電極126が十分に露出されていることを意味する。
【0164】
センサ電極126は、少なくとも部分的に、通路114に露出されたままであり、流体が通路114内に供給されるときにナノ細孔116におけるセンサ電極126の位置において流体の電位を測定するための接続を有して構成される。分析物リザーバ106または出口チャンバ108のうちの一方に開けて面するその表面積を最小化するセンサ電極126の配設(例えば、
図2または
図3(a)の配設)は、分析物リザーバ106または出口チャンバ108への曝露を制限して、センサ電極126の表面の汚染を抑制するように機能する。そのような一例が
図3(a)に示され、これは、通路114に実質的に部分的に囲まれたセンサ電極126を示している。流体を投入する前、または生物学的ナノ細孔を支持するための両親媒性膜の形成中に、センサ電極126の表面は、センサ電極126の表面を汚染する可能性のある流体にさらされる可能性があり、したがって、汚染リスクがある場合に、これを軽減することができる。
【0165】
一構成では、センサ電極126の少なくとも一部分は、
図3(a)に示されるように、ウェル142からチャネル122に向かって外方に面するように配設することができる。センサ電極126の露出部分は、分析物がナノ細孔116を通過するときにセンサ電極126における流体電位の変動を検知するために、通路114内の流体への接続を提供する。センサ電極126はまた、構造100内に埋め込まれた埋め込み部分を有することもできる。センサ電極126はまた、
図3(a)に示されるように構造100から分離することができる測定回路または制御回路などの電子回路130に接続するための、ワイヤボンドなどの接続128を有することもできる。
【0166】
実施例の各々において、センサ電極126は、通路114内の流体への曝露のために様々な構成に構成することができ、少なくとも部分的に、通路114の壁を覆うこと、断面において通路114の壁の一部分を覆うこと、通路114の周りに環帯を形成すること、少なくとも部分的に、通路114の周りに基層112またはセンス層144の表面を形成し、分析物リザーバ106に面するように配設されている露出部分を有すること、少なくとも部分的に、通路114の周りにセンス層144の表面を形成し、出口チャンバ108に面するように配設されている露出部分を有すること、のうちの少なくとも1つを行うことができる。特に、空洞146は、通路114に形成されて、センサ電極126の露出の領域が増加され、増加した量の流体と接触することを可能にする領域を作成することができる。空洞146は、基層112およびセンス層144が整列されて接続される前に、基層112および/またはセンス層144に形成される凹部によって形成される。
【0167】
センサ電極126は、ナノワイヤの形態などにおいてウェル内の流体への最小限の曝露を有することができるが、本発明者らは、ナノ細孔センサ102の性能を最適化し、製造可能性を改善するために、本明細書の例を提案した。
【0168】
図2および
図3(a)に示されるように、センサ電極126は、実質的に平面状であり、通路114を収容するように成形されている。言い換えれば、センサ電極126は、分析物リザーバ106と出口チャンバ108との間の妨げられない流体連通を可能にするように構成され、これは、(i)センサ電極126を、通路114もしくはウェル開口142aの周りに延在するように成形すること、および/または(ii)センサ電極126内にセンサ開口148を形成することによって達成することができる。
【0169】
センサ電極126の露出部分のフットプリントは、任意の形状であり得る。
図2のウェル142および
図3(a)の空洞146は、ウェル142の床が円形であるように、または空洞146の平らな面面が湾曲するように、円筒形にすることができる。これらの構成により、センサ電極126の露出部分は円形または円盤状になる。示される例では、露出部分のフットプリントが環帯のように成形されるように、センサ開口148が提供される。センサ電極126の露出面積を最大化することができ、これは、ウェル142および/または空洞146のうちの少なくとも1つの面または表面を覆うことを意味し得る。
【0170】
センサ電極126およびセンサ開口148は、円形として示されているが、他の形状を有してもよい。円形を有するいくつかの実施形態では、センサ電極126の露出部分の半径対センサ開口148の半径の比は、100:1~10:1の範囲内または約2:1であり得る。非円形の場合、面積の平方根の比は同じ値を有し得る。
【0171】
代替的に、センサ電極126の露出部分の面積は、センサ開口148から見たときの面積またはフットプリント間の比に関連して表すことができ、約1:1、または約10:1または約100:1であり得る。
【0172】
例として、センサ電極126は、10μm~50μmの範囲の直径(または最大寸法)を有することができ、センサ開口148は、0.5μmから上方の範囲の直径(または最大寸法)を有することができる。センサ開口148はセンサとして機能せず、そのため、そのサイズは、センサ電極126の残りの領域の制限を最小化することが望ましい範囲内に上限を有しない。
【0173】
センサ電極126は、好適な導電性材料、例えば白金または金から形成することができる。
【0174】
図2および
図3(a)は、別個の電子回路130への接続128を有するセンサ電極126を有するが、
図3(b)は、構造100およびアレイ104が集積回路150を収容することができることを例解している。集積回路150は、電子回路130の機能のうちの1つ以上を組み込むことができる。言い換えれば、別個の電子回路130に実装することができる検知、増幅、制御、フィルタリング、読み出しなどの様々な機能を、代替的に、集積回路150に実装することができる。集積回路150は、別個の層またはウェハ上に形成され、続いて、その上にセンサ電極126を有するセンス層144に接続され得る。しかしながら、本発明者らは、集積回路150が、センサ電極126とともにセンス層144内に作製されることを想定している。集積回路150は、各ナノ細孔センサ102に提供することができる。
【0175】
いくつかの手法では、集積回路150およびセンサ電極126が形成され、一方の側に対して露出されているセンス層144の作製後、検知構造は、
図3(a)に関連してそうであったものと同じ方法で反転され、基層に結合される。接続128(
図3(b)には示されていない)は、集積回路150によって生成された信号またはデータを構造から送出するために、集積回路150をコネクタ151に接続する。接続128は、
図4(e)に示されるようにコネクタ151に接続することができるが、他の構成が実施可能である。センス層144が基層112に接続された状態で、ナノ細孔層110は、センス層144がナノ細孔層110と基層112との間に挟まれるように、その上に形成することができる。前述の
図3(a)の場合と同様に、ともに結合されると、センス層144の通路は、基層112のチャネルと整列し、ナノ細孔層142のウェル142は、通路114の一部分を形成する。
【0176】
使用時、電子回路130および/または集積回路150は、ポリマーなどの分析物がナノ細孔116を通過するときにナノ細孔116における抵抗変化を検出するように構成され、上記抵抗変化は、ナノ細孔センサ102内の流体を通して検出される(厳密に言えば、上記のように、抵抗の測度は実効的な分圧器上の電圧として検出される)。アレイ104において、各ナノ細孔センサ102の集積回路150は、通信可能にアドレス指定可能であり得る。寄生容量、通信からのノイズ、およびバックグラウンドノイズに照らして、オフボードプロセッサを使用して、検出された抵抗を直接読み取ることは困難な場合がある。より良好な信号、すなわちよりクリーンなノイズが低減した信号をプロセッサに提供するために、集積回路150は、ナノ細孔116を通過するポリヌクレオチドまたは他の分析物の検出から導出される信号をローカルに変換もしくは修正するか、または他の様態で処理するように構成することができる。集積回路150は、信号の電圧レベルを増幅することなど、信号を増幅すること、例えばノイズを除去するために信号をフィルタリングすること、信号をサンプリングすること、電子回路130内に実装されたアナログ-デジタル変換器(ADC)を使用して信号をデジタル化することのうちの少なくとも1つを行うように構成することができる。
【0177】
集積回路150は、構造100のアレイ104内のナノ細孔センサ102のフットプリント内に形成することができる。
【0178】
例として、アレイ104の各ナノ細孔センサ102は、
図3(b)に示すナノ細孔センサ102の概略平面図を表すと考えることができる
図4(a)に見られるように、ナノ細孔センサ102のフットプリントであるピクセル101内に含めることができる。見られるように、各ピクセル101は、ナノ細孔センサ102、センサ電極126、および集積回路150を収容する。センサ電極126および集積回路150は、集積回路150によって生成されるノイズ干渉がセンサ電極126によって検出されるのを抑制するように配設することができる。例えば、集積回路150は、
図4(a)に示されるように、ナノ細孔センサ102から分離され得る。この分離は、見られるように、集積回路150をピクセル101の外側に配置されるように構成することによって実施することができる。
【0179】
この分離により、製造プロセスを単純化することもできる。代替的に、集積回路150は、センサ電極126から距離を置くことができる(すなわち、センサ電極126と集積回路150との間の深さ方向の距離、または構造100の厚さが、ノイズ干渉を最小限にするために増加される。
図4(a)の深さ方向は、観察したときにページに出入りする方向であることに留意されたい。
【0180】
示されている例では、ピクセル101は正方形であり、一辺の長さは20μmであるが、他の例では、10μm~50μmの範囲内であり得る。
【0181】
例として、集積回路150は、ピクセル101の約4分の3を占め、一方で、残りの4分の1は、示されている例では10μmの直径を有するセンサ電極126によって占められている。
【0182】
他の配設が想定される。いくつかの実施形態では、センサ電極126は、例えば、ナノ細孔センサ102の面積のほぼ全体をカバーするなど、
図4(a)に示される例よりも大きくてもよい。いくつかの実施形態では、センサ電極126は、例えば、正方形または長方形など、より多くの面積をカバーする他の形状を有してもよい。センサ電極126は、その形状に応じて、最大50μmの寸法を有してもよく、その場合、それは、最大250μm
2の面積を有することができる。
【0183】
パッケージング効率のために、ピクセル101をモザイク状にすることができ、例えば、モザイクを六角形にすることができる。
【0184】
各ナノ細孔センサ102は通路114を有するが、基層112の作製中に、作製方法に応じて、必要とされるよりも多くのチャネル122が基層112内に作成されてもよい。反応性イオンエッチングなどのいくつかの作製方法は、各ピクセル101に対して単一のチャネル122をエッチングすることができる。光支援電気化学エッチングなどの他のいくつかの方法では、チャネル122の高密度アレイを同時にエッチングして、それらのチャネル122の形状を維持する必要がある。この場合、基層112内の未使用のチャネル122は、アレイ104の作製中に閉塞され、そのため、ピクセル101ごとに1つのチャネル122および1つの通路114のみが提供される。基層112内に形成されるチャネル122の密度は変化し得る。
図4(b)は、比較のために、
図4(a)に示されるものよりも閉塞されたチャネル122aの密度が低いナノ細孔センサ102の断面を示している。
図4(b)に示されるように、チャネル122は、センス層144が基層112に追加される前に閉塞され得るか、またはセンス層144の基板によって閉塞され得る。
図4(b)は、2つのナノ細孔センサ102の一部分を有して示されており、それらの各々がそれ自身の通路114を有し、センス層144上にナノ細孔層110がまだ追加されていないことに留意されたい。
【0185】
図4(c)は、6x6レイアウトに配設されている
図4(a)のナノ細孔センサ102のピクセル101を示し、36個のナノ細孔センサ102のアレイ104を提供し、一方で、
図4(d)は、324個のナノ細孔センサ102を有する18x18アレイを備えている。アレイサイズは1000x1000とすることができ、1,000,000個のナノ細孔センサ102を提供する。本例では、
図4(a)に示されるタイプの100万個のナノ細孔センサ102からなるアレイは4cm
2のフットプリントを有するが、5μmと小さいピクセル101を有するナノ細孔センサ102は、25mm
2までの100万個のナノ細孔センサのアレイ104のフットプリントをもたらすことができる。アレイサイズは100,000とすることができる。アレイ104は、1000個~10,000,000個のナノ細孔センサ102の、任意の数のナノ細孔センサ102を含んでもよい。
【0186】
図4(e)は、核酸などのポリマーの分析物を受容し、分析するためのデバイス149内に提供される構造100内に配設されている、本明細書に記載のようなナノ細孔センサ102を有するアレイ104を示す。デバイス149はまた、センサデバイスまたは測定システムとして既知であり得る。アレイ104は、デバイス149の部分構成要素であり得る。アレイ104は、使い捨ての構成要素とすることができ、交換可能とすることができる。付加的に、または代替的に、アレイ104のナノ細孔層110は、使い捨ての構成要素とすることができ、交換可能とすることができる。本発明のいくつかの態様は、デバイス149を全体的に対象とするが、本発明の他の態様はまた、ナノ細孔センサ102、またはナノ細孔構造104のアレイを有するナノ細孔センサ102に存し得る。デバイス149は、上記のような電子回路130を含むことができる。
【0187】
いくつかの実施形態では、ナノ細孔センサ102によって測定される信号の処理は、電子回路130によって実行され得る。集積回路150は、デバイス149の電子回路130によるさらなる分析の前に前処理を実行することができる。
【0188】
いくつかの実施形態では、デバイス149は、分析物リザーバ106および出口チャンバ108を分離および画定するために構造100を収容する。それぞれシスおよびトランスとして参照されることが多いが、分析物は分析物リザーバ106から出口チャンバ108に流れることができる。アレイ104は、分析物リザーバ106と出口チャンバ108とを流体接続するために、各々がそれを通る通路114を有する複数のナノ細孔センサ102を有する。例として、分析物リザーバ106および出口チャンバ108内の駆動電極132は、分析物リザーバ106と出口チャンバ108との間の通路114にわたって電位差を課して、分析物が分析物リザーバ106から出口チャンバ108へと流れるように誘導することができる。駆動電極132は、電位差がすべてのナノ細孔センサ102にわたって実質的に同じであるように構成することができる。
【0189】
付加的に、または代替的に、デバイス149は、他の技法を使用して、分析物リザーバ106から出口チャンバ108へと分析物を誘導するように構成することができる。分析物がナノ細孔116を通過するとき、イオン電流フローの変化によって引き起こされる電位の変動が、センサ電極126によって検出される。
【0190】
センサ電極126は、例えば電界効果トランジスタ(FET)デバイスであり得る(
図5(a)に示され、下記にさらに説明されるような)検知トランジスタ153のベースまたはゲートとして機能するか、またはそれに直接的に接続することができる。検知トランジスタ153は、各ナノ細孔センサ102の集積回路150によって処理することができる信号を出力し、これは、次に、行-列タイプの様式でアドレス指定することができる。例えば、検知トランジスタ153のドレインの電圧は、センサ電極126によって検知される電位に依存し得、ドレインの電圧は、アレイ104内の他のナノ細孔センサ102上の他のドレイン電圧とともに行-列様式で読み取ることができる。次に、処理された信号をアレイ104外でさらに分析して、分析物の1つ以上の特性を判定することができる。
【0191】
上記の例では、各ピクセル101はそれ自体の集積回路150を有するが、集積回路150は、複数のナノ細孔センサ102にサービスするように構成することができる。
図4(f)では、4つのナノ細孔センサ102が、センサモジュール102a(これは、ナノ細孔センサ102のより大きいアレイの一部分であり得る)として示され、集積回路150は、図示のように、中央に配置されている4つのセンサ電極126に共通である。他の構成も可能である。そのようなモジュール構成では、各個々のナノ細孔センサ102から得られる情報またはデータは、情報の制御および/または取り出しのためにアドレス指定可能である。上記の例は、各ナノ細孔センサ102に専用の集積回路150を有するが、ナノ細孔センサ102をセンサモジュール102aに組み合わせると、レイアウトの効率を改善することができる。効率の改善は、例えば、センサモジュール102a内のナノ細孔116の各々に共通のフィルタが使用されるために達成することができる。これは、集積回路150が個々のナノ細孔センサ102間で順番に切り替わるかまたは多重化する場合に可能である。ナノ細孔センサ102間で機能を共有することにより、集積回路150のフットプリントが、低減され得るか、または代替的に、より多くの機能に対応することができる。
【0192】
図5(a)は、アレイ104内の各ナノ細孔センサ102とのセンサ電極126への直接接続の概略図である。移動電圧がトランス電極132bに印加されている間、シス電極132aを接地に接続することができる。ナノ細孔116の抵抗および流体抵抗器として機能するように構成されているチャネル122の抵抗は、各ナノ細孔センサ102の各通路114を介してシス電極132aとトランス電極132bとの間の回路を統制する。このようにして、回路は同様の値の2つの抵抗器を有する分圧器のように挙動する。ナノ細孔抵抗およびチャネル122または流体抵抗器の抵抗は、それらの間に位置付けられている電極が、そこを通過する分析物によって引き起こされるナノ細孔抵抗の変化を検出するために最適に位置付けられるように、ほぼ同じである。センサ電極126は、上記のように、各ナノ細孔116の領域に存在する。センサ電極126は、ナノ細孔116とチャネル122との間に位置することができる。ナノ細孔116およびチャネル122の実効インピーダンスは、分析物リザーバ106および出口チャンバ108のバルク流体抵抗よりもはるかに大きい。これは、
図5(a)を使用して、シス電極132aとトランス電極132bとの間の回路をモデル化することができることを意味する。
【0193】
回路は、ナノ細孔116から測定を行うために、ナノ細孔センサ102のセンサ電極126において流体電位を測定する検知回路152を含む。検知回路152は、例えば、電界効果トランジスタ(FET)であってもよい検知トランジスタ153を含むことができる。この場合、センサ電極126は、検知トランジスタ153のベースに接続することができる。検知回路152は、少なくとも部分的に、集積回路150内に存在することができる。したがって、センサ電極126は、
図5(a)に示されるように、検知回路152のセンサ端子154に接続することができる。
【0194】
任意選択的に、検知回路152は、制御信号に応答して駆動電極132によって課せられるナノ細孔116の両端の電位差を変化させるために、センサ電極126に信号を印加する制御回路155を含み得る。制御回路155は、例えば、電界効果トランジスタ(FET)であってもよい制御端子156を含むことができる。この場合、センサ電極126は、制御端子156のドレインに接続することができる。制御回路155は、少なくとも部分的に、集積回路150内に存在することができる。したがって、センサ電極126は、制御信号を印加するために、
図5(a)に示すように、制御回路155の制御端子156に接続することができる。
【0195】
制御信号の印加は、制御回路155の制御接続とシス電極132aおよび/またはトランス電極132bとの間の電位差を変化させることによって、個々のナノ細孔116にわたって課せられる電位差を変化させることを可能にする。センサ電極126に印加される信号は、種などの帯電した分析物が通路114を通って移動する方向を変えるように誘導する逆電圧とすることができる。
【0196】
場合によっては、印加される電圧は交流電圧であり得るが、他の電圧波形(例えば、ランプ、ステップ、インパルス、DC)が代替的に印加されてもよい。
【0197】
図5(a)の集積回路150は、共通電極が、分析物リザーバ106および出口チャンバ108の各々のために構成されることを可能にし、一方、各ナノ細孔センサ102は、ナノ細孔抵抗の変化によって引き起こされる電位の変化を検出することによって、通路114にわたるイオン電流フローの中断を検出するように動作することができる。さらに、集積回路150は、センサ電極126が、例えば、検知トランジスタ153との接続を介してナノ細孔116を通過する分析物を検出することを可能にするか、または、例えば、制御トランジスタ156を使用してセンサ電極126に印加される電圧を調整することによって、アレイ104内の個々のナノ細孔センサ102の通路114内の、種などの帯電した分析物の流れを制御することを可能にするために、アレイ104内の各ナノ細孔センサ102が個別に制御されることを可能にする。アレイ104内の個々のナノ細孔センサ102の通路114内の種などの帯電した分析物の流れの制御は、ナノ細孔116を通過する分析物、またはナノ細孔116を閉塞する分析物が、制御トランジスタ156によって印加される電圧によって戻されるかまたは排出されることを可能にする。この作用は、「フリック」または「拒絶」として説明することができ、制御電圧を使用することによって行われ、そのため、構造100の一方の側から通路114を通過する分析物が修正される、すなわち、停止、逆転、または加速される。各ナノ細孔センサ102は、制御および検知のために個別にアドレス指定可能であるため、制御電圧を各ナノ細孔116に個別に印加することができる。明確にするために、各ナノ細孔センサ102のセンサ電極126への制御信号の印加は、各ピクセル101におけるナノ細孔116の近くの電圧を制御することができることを意味する。
【0198】
閉塞されているナノ細孔116が検出される場合、検出される分析物がもはや対象ではなく、別の試料が受容され、測定されることを可能にする目的で排出されるべきである場合、および分析物がナノ細孔116の内外に誘導される速度を変えることを含む条件からの少なくとも1つの条件に応答して、ナノ細孔116を通る分析物の動きを変化させるために、制御電圧を印加することができる。
【0199】
電子センサは、必然的に、センサ信号が進行する経路に関連付けられた静電容量、抵抗、およびインダクタンスを有する。これは、寄生として参照される場合がある。これらは、センサを構成する材料の特性、センサの幾何形状、およびセンサを作製することが実現可能である方法に起因する。いかなる種類の静電容量補償もなしに、これらの寄生(最も一般的には抵抗および静電容量)が相互作用して信号の帯域幅を制限する。最も単純なケースでは、抵抗器-コンデンサ回路が帯域幅を1/(2πRC)に制限する。
【0200】
図5(b)は、
図5(a)の代替の概略図であり、ナノ細孔116およびチャネル122の抵抗器モデル161を例解し、分圧器に接続された補償回路160をさらに含む。いくつかの実施形態によれば、補償回路160は、漂遊容量としても既知である寄生入力容量162の影響を受けるセンサ電極126の出力に接続された、利得Gを有するインライン増幅器168を有する。インライン増幅器168の出力は、その入力に接続されたフィードバックループを有し、上記フィードバックループは、利得Hを有するフィードバック増幅器170、および補償容量C
compensationを表すコンデンサCを有する。
【0201】
寄生入力容量162は、チャネル122を表す抵抗器と並列に配設されて示され、これは、ナノ細孔116が存在する膜118、チャネル122の流体壁、センサ電極126、およびコネクタまたはワイヤボンドと関連付けられるトレース容量のうちの少なくとも1つの中の寄生容量を表す。センサ電極126は、事実上、ナノ細孔116とチャネル122との間の分圧器の中点に接続され、補償回路160に接続されている。逆電圧またはフリック電圧への接続は、FETなどのフリックスイッチ164によって表される。任意選択的なガードスイッチ166が、センサ電極126と補償回路160との間に実装されて示されている。FETを使用して実装することができるこのガードスイッチ166は、補償回路160および/またはそれに接続された任意の検知回路を、フリックスイッチ164を介して印加されるフリック電圧から隔離するように機能することができる。
【0202】
全体として、補償回路160は、検知回路152への入力における総寄生入力容量162の影響を軽減する。寄生容量はナノ細孔センサ102の様々な要素に存在するが、それは、
図5(b)に示されるようにモデル化することができる。特定の理論に拘束されることなく、総寄生入力容量162C
pは、以下のように、寄生容量の合計と考えることができる。
C
p=C
membrane+C
fluidic walls+C
electrode+C
trace
【0203】
入力容量が充電される速度は、入力容量を流れる電流に比例する。次に、抵抗によって充電電流が有限値に制限される。補償回路160は、入力容量をより速く充電するために追加の電流を供給するように機能し、したがって帯域幅を増加させる。
【0204】
図5(b)の補償回路160は、寄生入力容量162の影響を受けるセンサ電極126の出力に接続された、利得Gを有するインライン増幅器168を有する。インライン増幅器168の出力は、その入力へのフィードバックループを有し、上記フィードバックループは、利得Hを有するフィードバック増幅器170、および補償容量C
compensationを表す補償コンデンサC172を有する。
【0205】
いくつかの実施形態では、入力電圧は、総寄生入力容量162を充電するための追加の電流を提供するように、増幅され、補償コンデンサ172を通じてフィードバックされる。この回路の実効入力容量は、以下のように表すことができる。
Ceffective=Cin-Ccompensation
ここで、
Ccompensation=C*(G*H-1)
【0206】
補償回路160の構成要素は、総寄生入力容量C
p162が実質的に無効化または相殺されるように構成される。実際には、補償の程度は、構成要素の値およびパラメータ(温度依存性など)の動的な変化によって制限される。補償回路160は、静電容量C、インライン利得Gまたはフィードバック利得Hが調整可能にされた場合、異なる寄生入力容量値の範囲を補償することができ、したがって、フィードバック増幅器170は、
図5(b)において可変として例解されている。利得Gは、固定することができ、そのため、補償回路160からの出力が一定の利得を有し、したがって、補償コンデンサC172および/またはフィードバック利得Hのいずれかを変えることができる。
【0207】
フロントエンド電子機器は、少なくとも部分的に、
図5(c)に比喩的に表されている集積回路150内に存在することができる。制御回路155および/または補償回路160は、任意選択的に、集積回路150内に組み込むことができる。集積回路150または電子回路130は、フリック、逆電圧の印加、およびナノ細孔センサ102からの信号の増幅などによって、ナノ細孔116内の分析物の動きに影響を与えるように動作可能である。集積回路150または電子回路130は、フィルタリングなどの信号のさらなる処理をさらに組み込むことができ、集積回路150の場合、外部プロセッサとの管理された通信のために、センサ102に局所的に情報を格納する回路を含むことができる。
【0208】
図2および
図3(a)に示されるような各ナノ細孔センサ102は、アドレス指定可能であり得る。
図5(c)は、
図4(a)に示されるピクセル101内に集積回路150を組み込み、同じく行選択および列バスを介してアドレス指定可能である、
図3(b)のナノ細孔センサ102を表す。
図5(d)は、
図5(c)に示す行選択および列バス接続を介して、
図4(d)に示される、アレイ104などの、アレイ104内の各ナノ細孔センサ102に接続された行-列読み出し回路174の例である。各ナノ細孔センサ102は、アナログ-デジタル変換器(ADC)180を介して行復号器176および列読み出し178に接続されている。行-列読み出し回路174は、各ナノ細孔センサ102またはナノ細孔センサ102のグループの集積回路150に接続することができるが、アレイ104内の各ナノ細孔センサ102のセンサ電極126に直接的に接続されてもよい。
【0209】
上記の例は、集積回路150に接続可能であり、制御電圧が印加されるときに二重機能のオプションを有するセンサ電極126を説明している(すなわち、センサ電極126は、分析物がナノ細孔116を通過するときにイオン流動の変化を検知し、制御回路155の制御下で、通路114内の電位、ならびに、シス電極132aおよび/またはトランス電極132bの間の通路114にわたる電位差を生成するために使用することができる)。この場合、センサ電極126は、
図5(a)に示され、下記にさらに説明されるように、通路114内に電位を生成するために、集積回路150の端子である制御端子156に直接的に接続される。
【0210】
いくつかの実装形態では、各ナノ細孔センサ102の検知および制御機能は、例えば、以下のように、別個の電極によって実装され得る。
図6(a)は、環帯のように配設されているセンサ電極126および制御電極182を示し、
図6(b)~
図6(e)は、制御電極182がセンサ電極126に加えて提供される構成を有するナノ細孔センサ102の断面概略図である。この場合、制御電極182は、通路114内に電位を生成するために、制御回路155の制御端子156に接続されている。
【0211】
本明細書の例では、センサ電極126は、
図4(a)に例解されるように、環帯として説明されている。センサ電極126はまた、露出したワイヤによって実装することができる。センサ電極126は、ナノワイヤとすることができるが、例えば、
図6(e)に示されるように、ウェル142のベースの実質的に全体、または凹部146の1つの面を占めるより大きい表面積であり得る。同様に、別個の制御電極182は、ナノワイヤであり得るが、
図6(d)に示されるように、大きい表面積を有することができる。
【0212】
製造可能性およびコストの観点から、制御電極182の基本的な実装が
図6(a)に示され、ここで、環のフットプリント(ウェル142の基部に好適である)が実質的に維持され、フットプリントの半分が形成されるセンサ電極126およびセンサ側から物理的に接続解除または結合解除されている残りの半分は、制御電極182を形成する。センサ電極126と制御電極182との間に有線または固体接続はない。センサ電極126および制御電極182は、フットプリントを占める2つの等しいサイズの半円形状を有して示されている。電極は、異なるサイズにすることができ、例えば、制御電極182は、通路114内の流体に関する伝導性を高めるために、センサ電極126よりも大きい表面積を有することができる。
【0213】
別個のセンサ電極126および制御電極182を有することは、別個であることにより、依然として通路114内の流体を介して接続されるとしても、追加の分離度が提供されるため、集積回路150を単純化することができる。しかしながら、例えば、検知回路152の一部分を形成することができる補償回路160を、制御回路155によって印加される電圧から保護するための絶縁スイッチの必要性を回避することが可能であり得る。センサ電極126および制御電極182は、それらの目的のために最適化されるように、形状、サイズ、および構成を調整することができる。
【0214】
図6(b)は、
図3(b)のセンサ電極126が別個のセンサ電極126および制御電極182にどのように分割され得るかを示している。この例では、センサ電極126および制御電極182は同じ平面内に延在する。
図6(c)に示される代替的な構成では、センサ電極126は、空洞146内に存在し、シス表面134およびトランス表面138と平行に延在する平面内に延在し、一方、制御電極182は、チャネル122内に延在し、上記シス表面134およびトランス表面138から垂直に延在する。
図6(c)では、センサ電極126は環帯のような形状であり、制御電極182は円筒のような形状である。さらに別の代替形態において、
図6(d)に示されるように、センサ電極126は、空洞146内に存在し、シス表面134およびトランス表面138と平行に延在する平面内に延在し、一方、制御電極182は、チャネル122および空洞146内に延在し、したがって、観察されるように、垂直面および水平面内に延在する。
図6(b)と同様の
図6(e)は、ウェル142の基部に形成されたセンサ電極126および制御電極182を示しており、これにより、より容易な作製を可能にすることができる。
【0215】
上述したように、電子センサは、必然的に、センサ信号が進行する経路に関連付けられた静電容量、抵抗、およびインダクタンスを有する。これは、寄生容量を含む、寄生として参照される場合がある。上記の補償回路160に加えて、またはその代わりに、アレイ104およびその中のナノ細孔センサ102は、
図7(b)~
図7(d)に示されるように、ガード導体184を組み込んで作製することができ、一方、
図7(a)は、ガード導体184がどのように構成されるかを例解するために、ガード導体184を有しない第1の概略回路201およびガード導体184を有する第2の概略回路202を示す。
【0216】
図7(a)の左側の第1の概略回路201では、寄生容量C
parasiticが、ナノ細孔センサ102の2つの導電性要素203、204の間に示され、これは典型的には、センサ電極126および基層112の導電性基板などの導体である。第1の導電性要素203(例えば、センサ電極126)は、電圧V
sensorを担持することができ、第2の導電性要素204(例えば、導電性基板)は、異なる電圧V
substrateを担持することができる。
【0217】
ガードは、右側の第2の概略回路202に実装されて示されており、第3の導電性要素であるガード導体184は、信号を担持する第1の導電性要素203と第2の導電性要素204との間に、2つの寄生容量Cpar1、Cpar2を直列に接続されたものとしてモデル化することができるように構成される。この第2の概略回路202において、寄生容量は、(i)信号を担持する第1の導電性要素203とガード導体184との間に発生し、すなわちCpar1となり、(ii)ガード導体184と第2の導電性要素204との間に発生し、すなわちCpar2となる。バッファ205(増幅器であり得る)が、第1の導電性要素203とガード導体184との間に接続されて、入力信号のバッファリングされたバージョンをガード導体184に印加する。結果として、第1の導電性要素203とガード導体184との間の寄生容量Cpar1にわたる電圧差はない。
【0218】
コンデンサの場合、電流は
【数1】
によって与えられる。
【0219】
右側の回路図では、V
guard=V
sensor、したがって
【数2】
である。
【0220】
コンデンサCpar1を通じて電流は流れないため、実効容量はゼロである。ガード導体184と基板導体との間の静電容量は依然として充電されなければならないが、バッファ205は、高インピーダンスセンサ入力よりもはるかに多くの電流を供給することが可能であり、そのため、静電容量ははるかに速く充電される。
【0221】
これらの条件は、VguardがVsensorに正確に従うときに満たされ、これは、静電容量をゼロにすることを可能にするのに十分な帯域幅を有するバッファ205の性能に依存する。数MHzの帯域幅を有する精密なバッファ205を実装することができる。
【0222】
図7(b)は、
図2(b)に類似しており、比較のために、観察されるように垂直方向において、チャネル122の長さに沿って酸化物層192の間に延在するガード導体184を示しており、これは、観察されるように水平方向において、センサ電極126の下の基層112の上部に沿って継続する。特に、センサ電極126およびガード導体184の両方は、別個の電子回路130に接続される。この構成では、ガード導体184は、センサ電極126と基層112の基板との間の寄生容量における電流フローを抑制する。導電性ガードは、少なくとも部分的に、ガード導体184と、ガード導体184をガードされている導体またはからガードされている導体から絶縁する、酸化物層192などの絶縁層と、を含むことができる。絶縁層は、ガード導体184の一部分ではなく、ガード導体184を周囲の導体から隔離するように機能する。したがって、絶縁層は、構造100の非導電性構成要素であり得る。ガード導体184は、寄生容量の中央に挿入されてそれらを2つに分割する導体であり得る。これは、コンデンサが本質的に絶縁体であり、したがってガード導体184が既存の絶縁層内に配置されるために可能である。
【0223】
絶縁層を含む導電性ガードは、ナノ細孔116の下のソリューションを上のソリューションから保護する、
図7(c)に示されるように、分析物リザーバ106内の分析物からナノ細孔層110を分離するためにナノ細孔層110の少なくとも一部分にわたって延在することと、同じく
図7(c)に示されるように、センサ電極126および集積回路150をシス106内のソリューションから分離するために、ナノ細孔層110の少なくとも一部分とセンス層144との間に延在することと、同じく
図7(c)に示されるように、少なくとも部分的に、センサ電極126および集積回路150を基層112から分離するために、基層112とセンス層144との間に延在することと、
図7(d)に示すように、第1の導電性ガードがチャネル122の壁と基層112との間に延在し、第2の導電性ガードがセンス層144と基層112との間に延在する、複数の導電性ガードと、のうちのなくとも1つを含む、複数の異なる構成またはそれらの組み合わせに構成することができる。
【0224】
本明細書の教示に照らして、当業者には、本明細書において教示されるガード配設のうちの1つ、またはそれらの組み合わせを実施することができることが諒解されよう。ガード導体184が、例えば、
図4(c)のアレイ104など、ナノ細孔構造のアレイ104内に提供され得ることも諒解されよう。
【0225】
図7(a)~
図7(d)に示されるガードベースの静電容量補償技法は、それらが一般に信号のノイズレベルを検知できるほどには増加させないという利点を有することに留意されたい。しかしながら、そのような技法は、膜118にわたる電位差がナノ細孔116を通して研究されている分析物を駆動するために使用される場合、膜静電容量を補償することができないが、例えば圧力など、別の手段によって分析物を駆動することは可能であり得る。他方、補償回路160は、入力容量全体を補償することができるが、そうすることと引き換えに、ノイズを追加してしまう。補償コンデンサ172のノイズ利得は、周波数とともに増加する。したがって、入力信号のノイズは、このフィードバック利得「G」によってスケーリングされ、全体のノイズに追加される。これは、より高い周波数において、またはより大きい入力容量を補償するときに重大になる。したがって、
図7(b)~
図7(d)に示されるガード導体184は、任意の組み合わせ、および/または補償回路160との組み合わせにおいて、アレイ104内に実装することができる。
【0226】
ナノ細孔センサ102は、いくつかの異なる技法を使用して製造することができ、機能は、例として、本出願において教示されている他のセンサを示す
図2を参照して教示される。アレイ104のナノ細孔センサ102のうちの1つだけが
図2に示されているが、アレイ104の作製は、本明細書の教示から理解することができる。基層112は、基層112の一方の側から他方の側に通過するためにその中に形成されたチャネル122を有する標準的なシリコン(Si)ウェハから形成される。ウェハの表面に実質的に垂直に延在するSiウェハを通して形成された1つのチャネル122のみが
図2に示されている。実際には、アレイ104は、フォトリソグラフィもしくは深掘り反応性イオンエッチング(DRIE)またはそれらの組み合わせなどの技法を使用してウェハにわたって形成されているチャネル122を有する。各ナノ細孔センサ102に対して少なくとも1つのチャネル122が形成される。必要に応じて、熱酸化などの技法を使用して、チャネル122の直径を調整し、アスペクト比を較正することができる。Siウェハおよびチャネルは、例えば、シリコンウェハ上に形成され得る酸化物層に埋め込まれ得る。
【0227】
図2の例は、ナノ細孔センサ102(そのうちの1つのみが示されている)のアレイ104を有する構造100の一部分を概略的に示し、その中に駆動電極132を有する分析物リザーバ106および出口チャンバ108を分離するように構成される。本明細書のすべてのナノ細孔センサ102は、
図4(e)に示されるように、構造100内に配置することができる。ナノ細孔116は、流体で満たされている、分析物リザーバ106と出口チャンバ108との間の通路114内にある。通路114は、分析物リザーバ106と出口チャンバ108とが流体接続されるように流体で満たされている。明確にするために、ナノ細孔116は、分析物リザーバ106と出口チャンバ108との間の流体連通経路にある。
【0228】
図8および
図9は、構造100を含むデバイス149の2つのさらなる例を示している。いずれの場合も、構造100は、上記で詳細に説明したように、ナノ細孔層110、センス層144、および基層112を含む、
図3(a)または
図3(b)のいずれかに示される形態をとる(ただし、いずれの場合も、これは
図2に示す形態をとる構造100に置き換えることができる)。
【0229】
図8および
図9の各例において、構造100は、分析物リザーバ106および出口チャンバ108を分離し、プリント回路基板210に接続されているが、以下のように異なる構成である。
【0230】
図8の例では、分析物リザーバ106および出口チャンバ108は各々、ナノ細孔層110および基層112をそれぞれシールするそれぞれのガスケット216、218によって形成されている。分析物リザーバ106および出口チャンバ108は、
図8に示されるように開いていてもよく、または、例えば、ガスケット216、218にわたって延在するそれぞれの部材によって閉じられていてもよい。
【0231】
図8の例では、プリント回路基板210は、ナノ細孔層110とは反対側の機械的切望212(接着剤)によって基層112に取り付けられている。したがって、プリント回路基板210は、
図8に示されるように、出口チャンバ108の外側に配置される。センス層144は、ワイヤボンド214、または他の任意の好適な電気的接続によってプリント回路基板210に接続されている。ナノ細孔層110は、ワイヤボンド214のためのスペースを提供するために、センス層144よりも小さい面積を有する。
【0232】
図9の例では、プリント回路基板210は、ナノ細孔層110と同じ側のはんだバンプ接続222(例えば、接着剤)によってセンス層144に取り付けられている。したがって、ナノ細孔層110は、はんだバンプ接続222のためのスペースを提供するために、センス層144よりも小さい面積を有する。はんだバンプ接続222は、プリント回路基板210とセンス層144との間の機械的接続および電気的接続の両方を提供する。
【0233】
図9の例では、分析物リザーバ106および出口チャンバ108は各々、例えばプラスチックなどの任意の好適な材料から作成されてもよいそれぞれのフローセル224、226内に形成されている。フローセル224、226は、流体が分析物リザーバ106および出口チャンバ108に出入りして流れることを可能にする。
【0234】
分析物リザーバ106を形成するフローセル224は、ガスケット228によって分析物リザーバ106の周りでプリント回路基板210に対してシールされ、プリント回路基板210は、シーラント230によって、分析物リザーバ106の周りでナノ細孔層110の縁部に対してシールされる。
【0235】
出口チャンバ108を形成するフローセル224は、ガスケット232によって出口チャンバ108の周りで基層112に対してシールされる。
【0236】
図8および
図9の例は、例えば、他のロケーション(例えば、基層112の外縁の周り)にシールを提供するための様々な方法で、および任意の好適な手段によって修正することができる。
【0237】
ナノ細孔センサ102の電気モデルは上で説明されている。より一般的には、
図2に示されていない電圧源が、分析物リザーバ106および出口チャンバ108内に構成されている駆動電極132の間に電位差を印加する。駆動電極132は、ナノ細孔116およびチャネル122を含む通路114にわたって電位を課す。ナノ細孔抵抗およびチャネル抵抗は、分析物リザーバ106および出口チャンバ108の全体的な流体抵抗よりも著しく高く、したがって、ナノ細孔116およびチャネル122は、同等の電気回路における主要な構成要素である。
図2に示されるように、センサ電極126は、通路114内の電気変換要素において流体電位を検知することができるように、ナノ細孔116とチャネル122との間に位置する。言い換えれば、センサ電極126は、通路114における局所的な電位変動を示す信号を検知することができる。
図2の構成は一例であるが、センサ電極126は、分析物リザーバ106または出口チャンバ108に配置することができる。センサ電極126は、流体が通路114に提供されるときに、センサ電極126の位置における流体の電位を測定するためのトランジスタデバイスのベースまたはゲートとして機能することができる。センサ電極126は、DNAのストランドなどの種の物体がナノ細孔116を通って移動するときに、電圧の変動を検出することができる。
【0238】
本明細書の実施形態は、構造100によって単一の出口チャンバ108から分離された単一の分析物リザーバ106を有するデバイス149を説明した。本明細書の教示に照らして、代替的な配設を実施することができ、代替の構成は、(i)構造100によって共通の出口チャンバ108から分離された2つ以上の分析物リザーバ106、(ii)構造100によって2つ以上の出口チャンバ108から分離された共通の分析物リザーバ106、または(iii)構造100によって2つ以上のそれぞれの出口チャンバ108から分離された2つ以上の分析物リザーバ106、を有するデバイス149を含むことができる。
【0239】
ナノ細孔層110は、いくつかの方法で形成することができるウェル142のアレイを有して別個に形成することができ、その方法のうちの1つは、ポリマー層をリソグラフィパターニングすることによるものである。次に、ナノ細孔層110内のウェル142は、各ナノ細孔センサ102がウェル142およびチャネル122によって画定される通路114を有するように、基層112のチャネル122と位置合わせされる。
図2に示されるウェル142は、膜118に配置されているナノ細孔116と比較して相当に大きい。
図2のナノ細孔116は、両親媒性膜などの膜118内の生物学的ナノ細孔である。代替的に、各ナノ細孔116は、固体膜内に位置する固体ナノ細孔であってもよい。固体膜自体が、ナノ細孔層110であってもよい。さらに代替的に、ナノ細孔116は、固体膜に置する生物学的ナノ細孔であってもよい。直径が大きいチャネル122の幅に対するナノ細孔116の寸法に照らして、ウェル142は、ナノ細孔116の下に形成されると言うことができる。したがって、ナノ細孔116は、代替のナノ細孔構成の各々において通路114の一部を画定する。
【0240】
任意の膜118を、本明細書に記載の様々な態様に従って使用することができる。好適な膜118は当該技術分野で周知である。膜118は、両親媒性層または固体層であってもよい。両親媒性層は、親水および親油特性の両方を有する、リン脂質などの両親媒性分子から形成された層である。両親媒性分子は、合成または天然であり得る。非天然型両親媒性物質および単分子層を形成する両親媒性物質は、当該技術分野で既知であり、例えば、ブロックコポリマー(Gonzalez-Perez et al.,Langmuir,2009,25,10447-10450)が含まれる。コポリマーは、トリブロック、テトラブロック、またはペンタブロックコポリマーであってもよい。膜118は、トリブロックまたはジブロックコポリマー膜であってもよい。
【0241】
ブロックコポリマーから形成された膜118は、生物学的脂質膜に勝るいくつかの利点を保持している。トリブロックコポリマーは合成されているため、膜を形成するためかつ細孔および他のタンパク質と相互作用するために必要な正しい鎖長および特性を提供するように、慎重に制御することができる。
【0242】
ブロックコポリマーはまた、脂質サブ材料として分類されないサブユニットから構築されてもよく、例えば、疎水性ポリマーが、シロキサンまたは他の非炭化水素系モノマーから作成されてもよい。ブロックコポリマーの親水性サブセクションはまた、低いタンパク質結合特性を保有し得、これは、生の生体試料に曝露されたときに高度に耐性である膜118の作成を可能にする。このヘッド基単位はまた、非分類脂質ヘッド基に由来してもよい。
【0243】
トリブロックコポリマー膜はまた、生体脂質膜と比較して増加した機械的および環境的安定性、例えば、はるかに高い動作温度またはpH範囲を有する。ブロックコポリマーの合成性質は、ポリマーベースの膜を幅広い用途のためにカスタマイズする基盤を提供する。
【0244】
膜118は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、WO2014/064443またはWO2014/064444に開示されている膜のうちの1つであってもよい。これらの文書はまた、好適なポリマーも開示している。
【0245】
両親媒性分子は、ポリヌクレオチドの結合を促進するために化学修飾または官能化してもよい。
【0246】
両親媒性層は、一分子層または二分子層であり得る。両親媒性層は、典型的には、平面である。両親媒性層は、湾曲してもよい。両親媒性層は、支持されていてもよい。両親媒性層は、凹面であってもよい。両親媒性層は、両親媒性層の周辺領域(ピラーに付着している)が両親媒性層領域よりも高くなるように、隆起ピラーから吊り下げてもよい。これにより、上記のように微粒子が膜に沿って進み、移動する、スライドする、または転動することが可能になる。
【0247】
膜118は、脂質二重層であってもよい。好適な脂質二分子層はWO2008/102121、WO2009/077734、およびWO2006/100484に開示されている。
【0248】
脂質二分子層を形成するための方法は、当該技術分野において既知である。脂質二分子層は、Montal and Mueller(Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,1972;69:3561-3566)の方法によって一般に形成され、脂質一分子層は、水溶液/空気界面上で、その界面に対して垂直な開口部のいずれかの側を通り過ぎて担持される。
【0249】
固体層は、微細電子材料、絶縁材料、例えばSi3N4、Al2O3、およびSiO、有機および無機ポリマー、例えばポリアミド、プラスチック、例えばTeflon(登録商標)またはエラストマー、例えば、二成分付加硬化シリコンゴム、およびガラスを含むが、これらに限定されない、有機および無機材料の両方から形成することができる。固体層は、グラフェンから形成されてもよい。好適なグラフェン層は、WO2009/035647に開示されている。Yusko et al.,Nature Nanotechnology,2011;6:253-260、および米国特許出願第2013/0048499号は、微粒子を使用しない固体層中の膜貫通細孔へのタンパク質の送達を記載している。
【0250】
任意の膜貫通細孔が使用されてもよい。ナノ細孔116は、生物学的または人工的であってもよい。好適なナノ細孔116は、タンパク質細孔、ポリヌクレオチド細孔、および固体細孔を含むが、これらに限定されない。ナノ細孔116はDNA折り紙細孔であってもよい(Langecker et al.,Science,2012;338:932-936)。
【0251】
膜貫通細孔は、膜貫通タンパク質細孔であってもよい。膜貫通タンパク質細孔は、ポリメラーゼによるポリヌクレオチドの処理の副産物などの水和イオンが膜118の一方の側から膜118の他方の側へ流れることを可能にするポリペプチドまたはポリペプチドの集合体である。一実施形態では、膜貫通タンパク質細孔は、印加電位によって駆動される水和イオンが膜118の一方の側から他方の側へ流れることを可能にするナノ細孔116を形成することができる。膜貫通タンパク質細孔は、ポリヌクレオチドがトリブロックコポリマー膜などの膜118の一方の側から他方の側へ流れることを可能にする。膜貫通タンパク質細孔は、DNAまたはRNAなどのポリヌクレオチドを、ナノ細孔116を通じて移動させることを可能にする。
【0252】
膜貫通タンパク質細孔は、モノマーまたはオリゴマーであり得る。細孔は、好ましくは、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、または少なくとも16個のサブユニットなどのいくつかの繰り返しサブユニットから構成することができる。細孔は、六量体細孔、七量体細孔、八量体細孔、または九量体細孔であってもよい。細孔は、ホモオリゴマーまたはヘテロオリゴマーであってもよい。
【0253】
膜貫通タンパク質細孔は、典型的には、それを通ってイオンが流れ得るバレルまたはチャネルを含む。細孔のサブユニットは、典型的には、中心軸を取り囲み、鎖を膜貫通βバレルもしくはチャネルまたは膜貫通α-ヘリックスバンドルもしくはチャネルに供する。膜貫通タンパク質細孔のバレルまたはチャネルは、通常は、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたは核酸との相互作用を促進するアミノ酸を含む。これらのアミノ酸は、バレルまたはチャネルの狭窄部付近に位置する。膜貫通タンパク質細孔は、典型的には、アルギニン、リジン、もしくはヒスチジンなどの1つ以上の正電荷アミノ酸、またはチロシンもしくはトリプトファンなどの芳香族アミノ酸を含む。これらのアミノ酸は、典型的には、細孔と、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、または核酸との間の相互作用を促進する。
【0254】
本発明に従って使用するための膜貫通タンパク質細孔は、βバレル細孔またはαヘリックスバンドル細孔に由来し得る。膜貫通孔は、Msp、α-溶血毒(α-HL)、リセニン、CsgG、ClyA、Sp1、および溶血性タンパク質フラガセトキシンC(FraC)に由来しても、またはそれらに基づいてもよい。膜貫通タンパク質細孔は、CsgGに由来してもよい。CsgG由来の好適な細孔は、WO2016/034591に開示されている。膜貫通孔は、リセニンに由来してもよい。リセニン由来の好適な細孔は、WO2013/153359に開示されている。
【0255】
分析物(例えばタンパク質、ペプチド、分子、ポリペプチド、ポリヌクレオチドを含む)は試料中に存在してもよい。分析物は、任意の好適な試料であり得る。分析物は、生物学的試料であり得る。本明細書に記載される方法の任意の実施形態は、任意の有機体または微生物から得られたまたは抽出された試料に対してインビトロで実施してもよい。有機体または微生物は、通常は、古細菌、原核生物、または真核生物であり、通常は、植物界、動物界、真菌界、モネラ界、および原生生物界の五界のうちの一つに属する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の様々な態様の方法は、任意のウイルスから得られたまたは抽出された試料に対してインビトロで実施してもよい。
【0256】
分析物は、流体試料であってもよい。分析物は、体液を含んでもよい。体液は、ヒトまたは動物から取得してもよい。ヒトまたは動物は、疾患を有する、疾患を有する疑いがある、または疾患の危険性があるものであってもよい。分析物は、尿、リンパ液、唾液、粘液、精液、または羊水であってもよいが、全血、血漿、または血清であり得る。典型的には、試料は、ヒト由来であるが、代替的には、別の哺乳動物由来、例えば、ウマ、ウシ、ヒツジ、もしくはブタなどの商業的家畜由来であってもよく、または代替的に、ネコもしくはイヌなどの愛玩動物由来であってもよい。
【0257】
代替的に、分析物は植物由来のものであってもよい。
【0258】
分析物は、非生物学的試料であってもよい。非生物学的試料は、流体試料であり得る。塩化カリウムなどのイオン塩を試料に添加して、ナノ細孔を通るイオン流動を実現することができる。
【0259】
ポリヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖であってもよい。ポリヌクレオチドの少なくとも一部は、二本鎖であってもよい。
【0260】
ポリヌクレオチドは、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)などの核酸であり得る。ポリヌクレオチドは、DNAの1本の鎖にハイブリダイズされたRNAの1本の鎖を含み得る。ポリヌクレオチドは、当該技術分野で既知の任意の合成核酸、例えば、ペプチド核酸(PNA)、グリセロール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、ロックド核酸(LNA)、またはヌクレオチド側鎖を有する他の合成ポリマーであり得る。ポリヌクレオチドは、任意の長さであり得る。
【0261】
任意の数のポリヌクレオチドを調査することができる。例えば、方法は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、50、100個、またはそれ以上のポリヌクレオチドの特徴付けに関し得る。2個以上のポリヌクレオチドが特徴付けられた場合、それらは、異なるポリヌクレオチドであるか、または同じポリヌクレオチドの2つの実例であり得る。
【0262】
ポリヌクレオチドは、天然型であっても人工であってもよい。
【0263】
方法は、ポリヌクレオチドの2つ、3つ、4つ、または5つ以上の特性を測定することを伴い得る。1つ以上の特性は、(i)ポリヌクレオチドの長さ、(ii)ポリヌクレオチドの同一性、(iii)ポリヌクレオチドの配列、(iv)ポリヌクレオチドの二次構造、および(v)ポリヌクレオチドが修飾されているか否か、から選択することができる。
【0264】
(iii)について、ポリヌクレオチドの配列は、前述のように判定することができる。好適な配列決定方法、特に電気的測定を使用するものは、Stoddart D et al.,Proc Natl Acad Sci,12;106(19):7702-7、Lieberman KR et al,J Am Chem Soc.2010;132(50):17961-72、および国際出願WO2000/28312に記載されている。
【0265】
二次構造は、様々な方法で測定され得る。例えば、方法が電気的測定を伴う場合、二次構造は、滞留時間の変化または細孔を通過するイオン電流の変化を使用して測定され得る。これは、一本鎖および二本鎖ポリヌクレオチドの領域を識別することを可能にする。
【0266】
いかなる修飾の有無を測定してもよい。本方法は、メチル化によって、酸化によって、損傷によって、1つ以上のタンパク質によって、または1つ以上の標識、タグ、もしくはスペーサによってポリヌクレオチドが修飾されているか否かを判定することを含む。特異的修飾は、細孔との特異的相互作用をもたらすことになり、これは下記の方法を使用して測定することができる。
【0267】
本明細書に記載の様々な態様のいくつかの実施形態では、方法は標的ポリヌクレオチドをさらに特徴付けることを含んでもよい。標的ポリヌクレオチドが細孔と接触するとき、標的ポリヌクレオチドの1つ以上の特性を示す1つ以上の測定は、ポリヌクレオチドが細孔に対して転座する際に行われる。
【0268】
本方法は、ポリヌクレオチドが修飾されているか否かを判定することを含み得る。いかなる修飾の有無が測定され得る。本方法は、メチル化によって、酸化によって、損傷によって、1つ以上のタンパク質によって、または1つ以上の標識、タグ、もしくはスペーサによってポリヌクレオチドが修飾されているか否かを判定することを含む。
【0269】
標的ポリヌクレオチドを特徴付けるためのキットも提供される。キットは、本明細書に開示されるような細孔と、膜の構成要素と、を備える。膜は、構成要素から形成することができる。細孔は膜内に存在し得る。キットは、上に開示される膜、例えば両親媒性層またはトリブロックコポリマー膜のいずれかの構成要素を含み得る。
【0270】
本発明はまた、標識ポリヌクレオチドなどの標的分析物を特徴付けるための装置を提供する。この装置は、本明細書に開示されるような複数の細孔と、複数の膜と、を備える。複数の細孔は、複数の膜内に存在し得る。細孔と膜の数は、等しくすることができる。単一の細孔が、各膜に存在し得る。
【0271】
標的分析物を特徴付けるための装置は、複数の膜内に、本明細書に開示されるようなまたは細孔のアレイを含み得る。
【0272】
装置は、方法を実施するための指示書をさらに備えることができる。装置は、分析物分析のための任意の従来の装置、例えば、アレイまたはチップであり得る。方法に関連して上で考察される実施形態のいずれも、本発明の装置に同等に適用される。装置は、本明細書に開示されているキットに存在する特徴のいずれかをさらに備えることができる。
【0273】
装置は、本明細書に開示されるような方法を実行するように設定することができる。
【0274】
装置は、複数の細孔および膜を支持することができ、細孔および膜を使用して、分析物の特徴付けを実施するように動作可能であるセンサデバイスと、特徴付けを実施するために材料を送達するための少なくとも1つのポートと、を備えることができる。
【0275】
代替的に、装置は、複数の細孔および膜を支持することができ、細孔および膜を使用して分析物の特徴付けを実施するように動作可能であるセンサデバイスと、特徴付けを実施するために材料を保持するための少なくとも1つのリザーバと、を備えることができる。
【0276】
装置は、(a)膜および複数の細孔および膜を支持することができ、細孔および膜を使用してポリヌクレオチドの特徴付けを行うように動作可能である、センサデバイスと、特徴付けを実施するための材料を保持するための少なくとも1つのリザーバと、少なくとも1つのリザーバからセンサデバイスへ材料を制御可能に供給するように構成されている流体システムと、それぞれの試料を受け取るための1つ以上の容器と、を備えることができ、流体システムは1つ以上の容器からセンサデバイスへ分析物を選択的に供給するように構成される。
【0277】
装置は、WO2009/077734、WO2010/122293、WO2011/067559、またはWO00/28312に記載されているもののいずれかであり得る。
【0278】
例えば、移動の速度、分析物の拒絶などの、ナノ細孔に関する分析物の動きの制御は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、WO2016/059427に開示されるシステムおよび方法によって管理することができる。ナノ細孔センサによる分析物の拒絶は、ナノ細孔からの分析物の排出を含み得る。
【0279】
上記の説明および図面の特徴は、本明細書の教示に照らして交換可能であり、互換性がある。本発明は、純粋に例として上に記載されており、本発明の趣旨および範囲内で修正を行うことができ、これは、記載された機能の同等物および本明細書に記載された1つ以上の機能の組み合わせに及ぶ。本発明はまた、本明細書に記載されるか、または暗示された任意の個々の機能からなる。
【表1-1】
【表1-2】