(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 21/17 20060101AFI20240522BHJP
B41J 5/36 20060101ALI20240522BHJP
B41J 11/46 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
B41J21/17
B41J5/36
B41J11/46
(21)【出願番号】P 2021049315
(22)【出願日】2021-03-23
【審査請求日】2023-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000161057
【氏名又は名称】株式会社ミヤコシ
(74)【代理人】
【識別番号】100103805
【氏名又は名称】白崎 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100126516
【氏名又は名称】阿部 綽勝
(74)【代理人】
【識別番号】100132104
【氏名又は名称】勝木 俊晴
(74)【代理人】
【識別番号】100211753
【氏名又は名称】岡崎 紳吾
(72)【発明者】
【氏名】江渕 修
(72)【発明者】
【氏名】小松田 誠治
【審査官】大関 朋子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-044716(JP,A)
【文献】特開2018-075808(JP,A)
【文献】特開平07-291523(JP,A)
【文献】特開2017-213775(JP,A)
【文献】特開2016-060074(JP,A)
【文献】特開平09-240068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 21/17
B41J 5/36
B41J 11/46
B41J 29/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の用紙に印刷データに基づく印刷を連続して行う印刷装置において、
印刷を施すための印刷部と、前記用紙を搬送するための搬送ローラと、前記印刷部による印刷を制御するための制御部と、前記用紙の長さ方向に等間隔となるように設けられた複数の被検出部を検出し、該検出に基づく検出信号を前記制御部に発信可能な検出部と、を備え、
前記印刷データに基づいて印刷した印刷画像の印刷距離が、隣り合う前記被検出部同士の間の距離よりも大きくなっており、
前記制御部が、
少なくとも、前記印刷データを入力する入力部と、入力された前記印刷データを格納する記憶部と、前記検出部からの前記検出信号を受信する
と共に、
出力指令を発信する受信部と、出力指令を受信し、前記記憶部に格納された前記印刷データを
前記印刷部に出力する
印刷出力部と、該印刷出力部に前記印刷データの出力を停止させる印刷停止部と、を有し、
前記受信部が、n+1回目の前記検出信号を受信した場合、前記印刷出力部によるn回目の前記印刷データが出力中であるか否かの判定をするものであり、
n回目の前記印刷データの出力が終了している場合、前記受信部がn+1回目の出力指令を前記印刷出力部に発信し、n+1回目の出力指令を受信した前記印刷出力部が前記印刷部に前記印刷データの出力を開始するものであり、
n回目の前記印刷データの出力中に、
前記受信部がn+1回目の前記検出信号を受信した場合、
前記受信部により、停止条件を超えるか否かの判定がなされ、
既に出力した割合が前記停止条件を超える場合、前記受信部がn回目の前記印刷データの出力を停止する
停止指令を前記印刷停止部に発信し、該停止指令を受信した前記印刷停止部が前記印刷出力部によるn回目の前記印刷データの出力を強制的に停止させると同時に、
前記受信部がn+1回目の出力指令を前記印刷出力部に発信し、n+1回目の出力指令を受信した前記印刷出力部が前記印刷部にn+1回目の前記印刷データの出力を開始するものであ
り、
既に出力した割合が前記停止条件を超えない場合、前記受信部が、n+1回目の前記印刷データの出力指令の発信を中止するものであり、
前記停止条件は、前記印刷データの全行数のうちの出力した行数の割合についての任意に設定した閾値である印刷装置。
【請求項2】
前記停止条件の値が、95%以上である請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
前記用紙が、
マージナルパンチ穴及び頁間にミシン目を有する連続帳票であり、
前記被検出部が、任意の位置の
前記マージナルパンチ穴
、若しくは、前記ミシン目である請求項1記載の印刷装置。
【請求項4】
前記受信部が、前記検出部からの前記検出信号及びエンコーダからの計測信号を受信し、それに基づいて指定距離を算出すると共に、用紙を指定距離搬送した後に出力指令を発信するものであり、
前記受信部が、n+1回目の前記検出信号を受信し、
且つ前記用紙を指定距離搬送した
時点で前記印刷出力部によるn回目の前記印刷データが出力中であるか否かの判定をするものであり、
前記指定距離は、前記用紙の搬送経路において、前記被検出部が、前記検出部により検出される位置から、前記印刷部により印刷が開始される位置に到達するまでの距離である請求項
1記載の印刷装置。
【請求項5】
前記印刷装置には、前記用紙にミシン目加工を行うミシン胴が設けられており、
前記検出部がミシン胴の回転位置を検出することで、前記用紙のミシン目の位置を算出する請求項
1記載の印刷装置。
【請求項6】
前記印刷画像が画像を有する画像部と、画像を有さない余白部とを有し、
前記余白部が、少なくとも、前記用紙の搬送方向における前記印刷画像の最上流側に位置して
おり、
前記被検出部が、予め前記用紙に印刷されたマークであり、
該マークが、前記用紙の印刷面の裏面に設けられている請求項
1記載の印刷装置。
【請求項7】
前記用紙を供給するための給紙部と、前記印刷部で印刷された用紙を乾燥するための乾燥部と、該乾燥部で乾燥された用紙を回収するための排紙部とを更に備え、
前記印刷部がラインヘッド式の記録ヘッドを有する請求項1~6のいずれか1項に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状の用紙に印刷データに基づく印刷を連続して行う印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷の分野においては、帯状の用紙を搬送しながら、印刷データに基づく印刷を連続して行う印刷装置が知られている。
【0003】
例えば、輪転紙の表面と裏面の両面にインクジェット印字機を用いた印字ユニットにて印字を施すようにした表裏印字装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
かかる表裏印字装置においては、輪転紙に予め印刷してあるマークをマークセンサで読み取り、当該マークセンサによる検出信号に応じてインクジェット印字機にて印字している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような印刷装置においては、帯状である用紙に、一定容量の印刷データを連続して印刷する場合、印刷データに基づいて印刷した印刷画像の印刷距離に合致するように、用紙に被検出部が設けられる場合がある。
すなわち、当該被検出部の検出に応じて、当該被検出部と隣の被検出部との間に印刷データに基づく印刷画像が印刷されるようになっている。
【0006】
しかしながら、用紙は、水分を吸収したり、用紙に被検出部を設けた後、乾燥等を施すことにより、それ自体が収縮する場合がある。
また、印刷装置において、用紙を搬送する際、用紙に張力を付与することで、用紙が伸張する場合がある。
したがって、被検出部を印刷画像の印刷距離に合わせて設けたとしても、その後の用紙の伸縮により、被検出部間の距離が、印刷距離に合致しなくなる場合が生じ得る。
【0007】
ここで、用紙が収縮した場合、印刷画像の印刷距離が、被検出部間の距離より大きくなるため、印刷部への印刷データの出力と、次の被検出部を検出したことによる検出信号の受信とが重複することになる。そうすると、同時に両方の処理ができないため、エラーが生じるという問題がある。この場合、一般的には、先の印刷部への印刷データの出力が行われ、後に送られた印刷データの印刷は行われないという事態が生じる。
また、場合によっては、制御部に、フリーズ、誤作動、強制終了等が生じる恐れがある。
仮に、同時に両方の処理を行うこと可能とした場合は、先の印刷部への印刷データの出力と後に送られた印刷データが重複して出力されるという事態が生じる。
なお、用紙が伸張した場合は、印刷画像の印刷距離が、被検出部間の距離より小さくなるため、空白部が生じるものの印刷時にエラーは生じない。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、被検出部間の距離が、印刷距離に合致しない場合であっても、印刷にエラーが生じることを防止して印刷を行うことができる印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、制御部が、n回目の印刷データの出力中に、n+1回目の検出信号を受信した場合、n回目の印刷データの出力を停止し、n+1回目の印刷データの出力を開始するものとすることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明は、(1)帯状の用紙に印刷データに基づく印刷を連続して行う印刷装置において、印刷を施すための印刷部と、用紙を搬送するための搬送ローラと、印刷部による印刷を制御するための制御部と、用紙の長さ方向に等間隔となるように設けられた複数の被検出部を検出し、該検出に基づく検出信号を制御部に発信可能な検出部と、を備え、印刷データに基づいて印刷した印刷画像の印刷距離が、隣り合う被検出部同士の間の距離よりも大きくなっており、制御部が、少なくとも、印刷データを入力する入力部と、入力された印刷データを格納する記憶部と、検出部からの検出信号を受信すると共に、出力指令を発信する受信部と、出力指令を受信し、記憶部に格納された印刷データを印刷部に出力する印刷出力部と、該印刷出力部に印刷データの出力を停止させる印刷停止部と、を有し、受信部が、n+1回目の検出信号を受信した場合、印刷出力部によるn回目の印刷データが出力中であるか否かの判定をするものであり、n回目の印刷データの出力が終了している場合、受信部がn+1回目の出力指令を印刷出力部に発信し、n+1回目の出力指令を受信した印刷出力部が印刷部に印刷データの出力を開始するものであり、n回目の印刷データの出力中に、受信部がn+1回目の検出信号を受信した場合、受信部により、停止条件を超えるか否かの判定がなされ、既に出力した割合が停止条件を超える場合、受信部がn回目の印刷データの出力を停止する停止指令を印刷停止部に発信し、該停止指令を受信した印刷停止部が印刷出力部によるn回目の印刷データの出力を強制的に停止させると同時に、受信部がn+1回目の出力指令を印刷出力部に発信し、n+1回目の出力指令を受信した印刷出力部が印刷部にn+1回目の印刷データの出力を開始するものであり、既に出力した割合が停止条件を超えない場合、受信部が、n+1回目の印刷データの出力指令の発信を中止するものであり、停止条件は、印刷データの全行数のうちの出力した行数の割合についての任意に設定した閾値である印刷装置に存する。
【0011】
本発明は、(2)停止条件の値が、95%以上である上記(1)記載の印刷装置に存する。
【0012】
本発明は、(3)用紙が、マージナルパンチ穴及び頁間にミシン目を有する連続帳票であり、被検出部が、任意の位置のマージナルパンチ穴、若しくは、ミシン目である上記(1)記載の印刷装置に存する。
【0013】
本発明は、(4)受信部が、検出部からの検出信号及びエンコーダからの計測信号を受信し、それに基づいて指定距離を算出すると共に、用紙を指定距離搬送した後に出力指令を発信するものであり、受信部が、n+1回目の検出信号を受信し、且つ用紙を指定距離搬送した時点で印刷出力部によるn回目の印刷データが出力中であるか否かの判定をするものであり、指定距離は、用紙の搬送経路において、被検出部が、検出部により検出される位置から、印刷部により印刷が開始される位置に到達するまでの距離である上記(1)記載の印刷装置に存する。
【0014】
本発明は、(5)印刷装置には、用紙にミシン目加工を行うミシン胴が設けられており、検出部がミシン胴の回転位置を検出することで、用紙のミシン目の位置を算出する上記(1)記載の印刷装置に存する。
【0015】
本発明は、(6)印刷画像が画像を有する画像部と、画像を有さない余白部とを有し、余白部が、少なくとも、用紙の搬送方向における印刷画像の最上流側に位置しており、被検出部が、予め用紙に印刷されたマークであり、該マークが、用紙の印刷面の裏面に設けられている上記(1)記載の印刷装置に存する。
【0016】
本発明は、(7)用紙を供給するための給紙部と、印刷部で印刷された用紙を乾燥するための乾燥部と、該乾燥部で乾燥された用紙を回収するための排紙部とを更に備え、印刷部がラインヘッド式の記録ヘッドを有する上記(1)~(6)のいずれか1つに記載の印刷装置に存する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の印刷装置においては、制御部が印刷部に印刷データを連続して出力することで、当該印刷データに基づく印刷画像を、用紙に連続して印刷することができる。
そして、印刷画像の印刷距離が、隣り合う被検出部同士の間の距離よりも大きくなっている場合、n回目の印刷データの出力中に、n+1回目の検出信号を受信するという事態が生じるものの、制御部が、n回目の印刷データの出力を停止すると同時に、n+1回目の印刷データの出力を開始することで、エラーが生じることを回避することが可能となる。
すなわち、制御部は、n回目の印刷データの出力よりも、n+1回目の印刷データの出力を優先させることが可能となっている。
【0018】
この場合、エラーにより、n+1回目の印刷データの印刷が施されないという事態が生じることを防止することができる。
また、制御部に、フリーズ、誤作動、強制終了等のエラーが生じることを防止することができる。
なお、上述したように、印刷画像の印刷距離が、被検出部間の距離より小さくなっている場合は、空白部が生じるものの印刷時にエラーは生じない。
したがって、上記印刷装置によれば、被検出部間の距離が、印刷距離に合致しない場合であっても、制御部が印刷部をコントロールすることができ、印刷にエラーが生じることを防止することができる。
【0019】
本発明の印刷装置においては、被検出部が、予め用紙の裏面に印刷されたマークである場合、印刷面(表面)を汚さずに、被検出部を設けることができる。なお、印刷装置が両面を印刷可能であれば、裏面にマークを設ける印刷と、表面に画像を設ける印刷とを連続して行うことができる。
また、被検出部が、任意の位置のマージナルパンチ穴とする場合、新たにマークを設ける手間を省くことができる。
また、マージナルパンチ穴は、検出され易いという利点もある。
【0020】
本発明の印刷装置においては、制御部が、検出信号を受信する毎に、受信した時点から指定距離搬送後に印刷部に印刷データを出力するものとし、用紙の搬送経路において、被検出部が、検出部により検出される位置(以下「検出位置」ともいう。)から、印刷部により印刷が開始される位置(以下「印刷開始位置」ともいう。)に到達するまでの距離を上記指定距離とすることにより、検出位置と印刷開始位置とが離れている場合であっても、検出部に検出された被検出部から、その検出に基づく印刷を開始させることができる。
【0021】
本発明の印刷装置においては、印刷データの全行数のうちの出力した行数の割合を停止条件として任意に設定することにより、印刷画像のうち、必要な部分は必ず印刷するように設定することができる。これにより、歩留まりを極力向上させることができる。
【0022】
本発明の印刷装置においては、印刷画像が画像部と余白部とを有し、余白部を、少なくとも、用紙の搬送方向における印刷画像の最上流側に位置させることにより、上述したn回目の印刷データの出力の停止を、極力、余白部で行わせることが可能となる。
なお、停止条件を設定する場合は、当該余白部を利用することができる。
これにより、歩留まりをより向上させることができる。
【0023】
本発明の印刷装置においては、給紙部と、乾燥部と、排紙部とを更に備え、印刷部がラインヘッド式の記録ヘッドを有する場合、給紙される用紙に対して、印刷から乾燥及び排紙まで、高速で、一度に加工を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明に係る印刷装置の一実施形態を示す概略側面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る印刷装置の制御部における指定距離を説明するための説明図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る印刷装置の制御部を説明するための説明図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る印刷装置の制御部におけるフローを説明するためのフローチャートである。
【
図5(a)】
図5(a)は、本実施形態に係る印刷装置で印刷される例を説明するための説明図である。
【
図5(b)】
図5(b)は、本実施形態に係る印刷装置で印刷される例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。
また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。
更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0026】
本発明に係る印刷装置は、帯状の用紙に印刷データに基づく印刷を連続して行うものである。
本明細書において、「用紙」は、いわゆる帯状(長尺状)のものであれば特に限定されない。用紙は、印刷されていない印刷用紙だけでなく、予め別の印刷が施されているもの、頁毎にミシン目が入っているもの、マージナルパンチ穴が設けられたもの(例えば、連続帳票)等であってもよい。
また、「印刷データ」は、一定の容量の印刷情報を有するデータである。具体的には、印刷データは、複数の行で構成されている。行は用紙の搬送方向と直角方向であり、1行の幅は印刷データの1ドットの直径に等しい。
なお、連続して出力される印刷データは、それぞれが同一の印刷情報を有するものであっても、異なる印刷情報を有するものであってもよい。
ここで、印刷データの長さは、印刷データの1ドット当たりの直径に、1回の印刷データの全行数を掛けた値に相当する。例えば、用紙の搬送方向の解像度が600dpiである印刷データの場合、1インチにつき600個のドット(600行)が存在するため、1ドット当たりの長さは1/600インチとなる。
そして、この印刷データの全行数が6000行であるとすると、印刷データの長さは10インチとなる。
また、「印刷画像」とは、印刷データに基づいて、繰り返さずに1回のみ印刷した場合の画像を意味する。
また、「印刷距離」とは、印刷画像の用紙の搬送方向における距離を意味する。
また、「n回目」のnは、1以上の整数である。
【0027】
図1は、本発明に係る印刷装置の一実施形態を示す概略側面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る印刷装置100は、用紙Pを供給するための給紙部1と、印刷を施すための印刷部2と、用紙Pを搬送するための複数の搬送ローラ3と、印刷部2による印刷を制御するための制御部4と、用紙Pに設けられた被検出部の検出に基づく検出信号を制御部4に発信可能な検出部5と、用紙Pの搬送量に基づく計測信号を制御部4に発信可能なエンコーダ8と、印刷部2で印刷された用紙Pを乾燥するための乾燥部6と、該乾燥部6で乾燥された用紙を回収するための排紙部7と、を備える。
印刷装置100においては、制御部4が印刷部2に印刷データを連続して出力することで、当該印刷データに基づく印刷画像を、用紙Pに連続して印刷することができる。
また、給紙される用紙Pに対して、上記印刷を行い、乾燥及び排紙まで、高速で一度に加工を行うことが可能となっている。
【0028】
給紙部1は、用紙を給紙するための部位である。なお、印刷装置100においては、用紙Pとして帯状の印刷用紙が用いられている。
印刷装置100において、給紙部1は、ロール状にした用紙Pを、端部から順次給紙している。
なお、給紙部1における給紙の形態は、これに限定されず、例えば、用紙が連続帳票である場合は、ミシン目で折り畳まれた状態から順次給紙するものであってもよい。
【0029】
搬送ローラ3は、用紙Pに搬送すると共に適度な張力を付与するためのものであり、印刷装置100内に複数設けられている。
印刷装置100においては、複数の搬送ローラ3のうち、印刷部2の上流側及び下流側に位置する搬送ローラ3が、駆動機能を有する駆動ローラ3aとなっている。
なお、用紙が連続帳票である場合、搬送ローラ3には、マージナルパンチ穴を利用して搬送するためのトラクタフィードが設けられていてもよい。
【0030】
検出部5は、用紙Pの搬送経路において、印刷部2よりも上流側に設けられる。
そして、検出部5は、用紙Pの長さ方向に等間隔となるように設けられた複数の被検出部を検出する。
検出部5においては、用紙と被検出部とを判別する判別センサーが用いられる。具体的には、用紙と異なる色の被検出部を検出する場合はカラーセンサー、用紙の形状が変化する被検出部を検出する場合はレーザー変位センサー等が好適に用いられる。
また、検出部5は、被検出部の検出に基づく検出信号を制御部4に発信する。
【0031】
ここで、被検出部は、用紙Pに予め設けられる。
被検出部としては、特に限定されないが、例えば、印刷されたマークを採用できる。かかるマークの形状は、検出部5による検出が可能であれば特に限定されない。
また、かかるマークは、用紙の表裏のいずれの面に設けられていてもよい。その中でも、裏面に設けることが好ましい。この場合、印刷面(表面)を汚さずに、被検出部を設けることができる。
なお、印刷装置が両面を印刷可能であれば、裏面にマークを設ける印刷と、表面に画像を設ける印刷とを連続して行うことができる。
【0032】
また、用紙Pが連続帳票である場合、被検出部として、任意に定めた位置のマージナルパンチ穴を利用することができる。この場合、新たにマークを設ける手間を省くことができる。
また、マージナルパンチ穴は、検出され易いという利点もある。
また、用紙Pが、頁間にミシン目を有する場合、被検出部として、当該ミシン目を利用することもできる。この場合、検出部が、当該ミシン目を直接検出してもよく、印刷装置100にミシン目加工を行うミシン胴を設け、ミシン胴の回転位置を検出することで、ミシン目の位置を算出してもよい。
【0033】
エンコーダ8は用紙Pの搬送経路において、印刷部2よりも上流側の搬送ローラ3に設けられる。
エンコーダ8としては、例えば、搬送ローラによる回転の機械的変位量を電気信号に変換し、この信号を処理して速度を検出するロータリエンコーダが好適に採用される。
エンコーダ8は、用紙Pの搬送量を電気信号に変換し、制御部4に、パルス列で出力された計測信号を逐次発信することが可能となっている。
【0034】
印刷部2は、用紙Pに印刷を施すための部位である。
印刷装置100において、印刷部2は、ラインヘッド式の記録ヘッドを有している。
すなわち、印刷装置100においては、ラインヘッド式のインクジェットデジタル印刷が行われる。
印刷部2においては、後述する制御部からの印刷データの出力に基づいて、用紙Pにインクを吹き付けることにより印刷を行う。
【0035】
乾燥部6は、印刷部2により印刷が行われた用紙Pを乾燥するための部位である。
印刷装置100においては、熱風を吹き付けることにより、乾燥を行っている。
なお、乾燥の形態は、これに限定されず、例えば、加熱ドラム等の発熱体に接触させる接触乾燥を行うものであってもよい。
【0036】
排紙部7は、用紙Pを回収するための部位である。
印刷装置100において、排紙部7は、用紙Pをロール状にして回収している。
なお、排紙部7における用紙回収の形態は、これに限定されず、例えば、用紙が連続帳票である場合は、振り落とし等により折り畳んで回収してもよい。
【0037】
制御部4は、検出部5からの検出信号を受信し、受信した時点から用紙Pを指定距離搬送した後に、印刷部2に印刷データを出力する部位である。
なお、指定距離は、制御部4により、エンコーダ8からの計測信号に基づいて算出される。
【0038】
図2は、本実施形態に係る印刷装置の制御部における指定距離を説明するための説明図である。
図2に示すように、指定距離は、用紙Pの搬送経路において、検出位置P1から印刷開始位置P2までの距離Dにおける用紙Pの実際の搬送量から換算された実際の用紙Pの搬送距離である。
具体的には、指定距離は、エンコーダ8が、用紙Pの実際の搬送量を電気信号に変換し、そのパルス列を制御部4に出力し、制御部4が、受信したパルス列を用紙Pの実際の搬送距離に換算することにより、算出される。
したがって、検出位置P1で検出された被検出部は、通常、指定距離搬送後には、印刷開始位置P2に位置することになる。その結果、検出位置P1と印刷開始位置P2とが離れている場合であっても、検出部5に検出された被検出部から、その検出に基づく印刷を開始させることが可能となる。
なお、検出位置P1と印刷開始位置P2とが一致している場合は、指定距離は0となる。
【0039】
図3は、本実施形態に係る印刷装置の制御部を説明するための説明図である。
図3に示すように、制御部4は、少なくとも、印刷データを入力する入力部41と、入力された印刷データを格納する記憶部42と、検出部5からの検出信号及びエンコーダ8からの計測信号を受信し、それに基づいて指定距離を算出すると共に、用紙Pを指定距離搬送した後に出力指令を発信する受信部43と、出力指令を受信し、記憶部42に格納された印刷データを印刷部2に出力する印刷出力部44と、印刷出力部によるn回目の印刷データの出力中に、n+1回目の検出信号を受信し、且つ用紙Pを指定距離搬送した場合、印刷出力部44にn回目の印刷データの出力を停止させる印刷停止部45と、を有する。
なお、制御部4において、受信部43,印刷出力部44及び印刷停止部45は、演算処理を行ういわゆる演算部に相当する。
【0040】
図4は、本実施形態に係る印刷装置の制御部におけるフローを説明するためのフローチャートであり、
図5(a)及び
図5(b)は、本実施形態に係る印刷装置で印刷される例を説明するための説明図である。
制御部4における受信部43,印刷出力部44及び印刷停止部45の作用について、
図4を用いて説明する。
図4に示すように、制御部4においては、印刷を開始すると、まず、受信部43が、検出部5からのn回目の検出信号と、n回目のエンコーダ8からの計測信号とを受信する。
受信部43は、n回目の検出信号を受信した時点から、用紙Pを指定距離搬送した後、n回目の出力指令を印刷出力部44に発信する。
n回目の出力指令を受信した印刷出力部44は、印刷部2に、印刷データの出力を開始する。
印刷装置100においては、n回目の印刷データの出力が終了することにより、用紙Pにn回目の印刷画像が印刷されることになる。
【0041】
次に、受信部43は、検出部5からのn回目の検出信号と、エンコーダ8からのn回目の計測信号とを受信した後、検出部5からのn+1回目の検出信号と、エンコーダ8からのn+1回目の計測信号とを更に受信した場合、n+1回目の検出信号を受信した時点から、用紙Pを指定距離搬送した後に、n回目の印刷が終了しているか否かの判定をする。
すなわち、受信部43は、n+1回目の検出信号を受信し、且つ用紙Pを指定距離搬送した時点で、印刷出力部44によるn回目の印刷データが出力中であるか否かの判定をする。
【0042】
ここで、n回目の印刷が終了している場合(Yes)、受信部43は、n+1回目の出力指令を印刷出力部44に発信する。n+1回目の出力指令を受信した印刷出力部44は、印刷部2に、印刷データの出力を開始する。
印刷装置100においては、n+1回目の印刷データの出力が終了することにより、用紙Pにn+1回目の印刷画像が印刷されることになる。
【0043】
一方で、n回目の印刷が終了していない場合(No)、受信部43は、印刷出力部44がn回目の印刷において既に出力した容量の割合が停止条件を超えるか否かの判定をする。
ここで、停止条件とは、いわゆる閾値であり、印刷データの全行数(100%)のうちの出力した行数の割合である。停止条件の値は、任意に定めることができるので、印刷画像のうち、必要な部分は必ず印刷するように設定することが好ましい。これにより、歩留まりを極力向上させることができる。
なお、停止条件の値は、様々な材質の用紙において、想定され得る収縮量、及び、印刷画像における印刷情報の観点から、95%以上と設定することが好ましい。
【0044】
そして、印刷出力部44がn回目の印刷において既に出力した容量の割合が停止条件を超える場合(Yes)、受信部43は、停止指令を印刷停止部45に発信する。
そうすると、停止指令を受信した印刷停止部45は、印刷出力部44によるn回目の印刷データの出力を強制的に停止させる。
これにより、n回目の印刷が終了することになるので、上述したことと同様に、受信部43は、n+1回目の出力指令を印刷出力部44に発信し、n+1回目の出力指令を受信した印刷出力部44は、印刷部2に、印刷データの出力を開始する。
印刷装置100においては、n+1回目の印刷データの出力が終了することにより、用紙Pにn+1回目の印刷画像が印刷されることになる。
【0045】
したがって、この場合は、
図5(a)に示すように、n回目の印刷画像A1がn回目の被検出部51から印刷が開始され、n+1回目の印刷画像A2がn+1回目の被検出部52から印刷が開始される。
また、n回目の印刷画像A1の印刷距離D1が、n回目の被検出部51とn+1回目の被検出部52との間の距離M1よりも大きくなっており、上述した停止条件を超えているので、n回目の印刷画像A1は、その差の分だけ、カットされた状態となる。
なお、その後の印刷画像A2及び印刷画像A3の関係についても同様である。
【0046】
一方、印刷出力部44がn回目の印刷において既に出力した容量の割合が停止条件を超えない場合(No)、受信部43は、n+1回目の出力指令を中止する。
すなわち、n+1回目の印刷データそのものを削除する。
これにより、印刷出力部44によるn回目の出力が継続されると共に、n+1回目の出力は行われないことになる。
【0047】
したがって、この場合は、
図5(b)に示すように、n回目の印刷画像A1がn回目の被検出部51から印刷が開始され、n+2回目の印刷画像A3がn+2回目の被検出部53から印刷が開始される。
また、n回目の印刷画像A1の印刷距離D1が、n回目の被検出部51とn+1回目の被検出部52との間の距離M1よりも大きくなっており、上述した停止条件を超えていないので、n+1回目の印刷画像は印刷されずに空白となる。
【0048】
図4に戻り、n+1回目の印刷画像が、最終回である場合、n+1回目の印刷データの出力が終了することにより、印刷が終了する。
【0049】
ここで、印刷画像は、画像を有する画像部と、画像を有さない余白部とを有していることが好ましい。
また、当該余白部は、少なくとも、用紙の搬送方向における印刷画像の最上流側に位置していることが好ましい。この場合、上述した、n回目の印刷データの出力の停止を、極力、余白部で行うことができる。これにより、歩留まりをより向上させることができる。
なお、印刷画像の最上流側が余白部であれば、その他は、画像部と余白部とが交互に配列されていてもよい。
【0050】
印刷装置100においては、上述したように、n回目の印刷データの出力中に、n+1回目の検出信号を受信するという事態が生じても、制御部4が、n回目の印刷データの出力を停止すると同時に、n+1回目の印刷データの出力を開始することで、エラーが生じることを回避することが可能となる。
その結果、エラーにより、n+1回目の印刷データの印刷が施されないという事態が生じることを防止することができる。
また、制御部4に、フリーズ、誤作動、強制終了等のエラーが生じることを防止することができる。
したがって、印刷装置100によれば、被検出部間の距離が、印刷距離に合致しない場合であっても、制御部4が印刷部2をコントロールすることができ、印刷にエラーが生じることを防止することができる。
【0051】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
【0052】
本実施形態に係る印刷装置100において、被検出部であるマークは、用紙Pに印刷することにより設けられているが、これに限定されない。
例えば、重ね印刷や両面印刷の場合のように、用紙Pに既に画像が印刷されている場合は、その画像の一部を上記マークとしてもよい。
また、被検出部としてマージナルパンチ穴を示しているが、そのサイズは特に限定されない。
すなわち、いわゆるマージナルパンチ穴ではなく、単なる穴であってもよい。
【0053】
本実施形態に係る印刷装置100は、給紙部1、乾燥部6及び排紙部7を有しているが、必須ではない。
例えば、これらの部位が、別装置として独立していてもよい。
【0054】
本実施形態に係る印刷装置100は、
図1に示すように。片面を印刷する装置となっているが、印刷装置100の印刷部2と、給紙部1との間に、別の印刷部を設け、用紙Pに対し、重ね印刷や両面印刷ができるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明に係る印刷装置は、帯状の用紙に印刷データに基づく印刷を連続して行う場合に好適に用いられる。
本発明に係る印刷装置によれば、被検出部間の距離が、印刷距離に合致しない場合であっても、印刷にエラーが生じることを防止して印刷を行うことができる。
【符号の説明】
【0056】
1・・・給紙部
100・・・印刷装置
2・・・印刷部
3・・・搬送ローラ
3a・・・駆動ローラ(搬送ローラ)
4・・・制御部
41・・・入力部
42・・・記憶部
43・・・受信部
44・・・印刷出力部
45・・・印刷停止部
5・・・検出部
51,52,53・・・被検出部
6・・・乾燥部
7・・・排紙部
8・・・エンコーダ
A1,A2,A3・・・印刷画像
D,M1・・・距離
D1・・・印刷距離
P・・・用紙
P1・・・検出位置
P2・・・印刷開始位置