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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/10 20180101AFI20240522BHJP
   G16H 50/20 20180101ALI20240522BHJP
【FI】
G16H20/10
G16H50/20
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019216997
(22)【出願日】2019-11-29
(65)【公開番号】P2021086529
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】511061545
【氏名又は名称】ケーディーアイコンズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松岡 喜美子
(72)【発明者】
【氏名】横山 茂樹
【審査官】松尾 真人
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-110376(JP,A)
【文献】特開2004-206555(JP,A)
【文献】特開2018-055435(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
G06Q 10/00-99/00
G06F 16/00-16/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある患者から採取された検体について、当該患者の識別情報及び検査の識別情報の入力を受け付ける受付手段と、
微生物検査における微生物の特定及び薬剤感受性試験の前に、複数の薬剤の各々について薬剤系統名と医療機関における取り扱い有無とが記録されたデータベースから、当該微生物検査の対象となる検体が採取された医療機関において使用される薬剤に関する情報として、当該医療機関で取り扱いのある薬剤の薬剤情報を読み出し、当該患者の患者情報、前記検体の識別情報、及び当該薬剤情報を含む一次情報を生成する生成手段と、
前記生成された一次情報出力する出力手段と
を備え、
前記受付手段は、前記検体に対する薬剤感受性試験の検査結果の入力及び前記微生物を特定した結果を受け付け、
前記受付手段が前記検査結果の入力を受け付けると、前記生成手段は、前記一次情報に含まれる薬剤情報に係る薬剤のうち、前記薬剤感受性試験において少なくとも1以上の特定された微生物に対して薬剤感受性があると判定されたものに絞り込んだ薬剤に関する情報を含む二次情報を生成し、
前記出力手段は、前記生成された二次情報を出力する
情報処理装置。
【請求項2】
前記データベースが、前記複数の薬剤の各々について前記検体の採取場所への臓器移行性の高さに関する情報を含み、
前記生成手段は、前記検体が採取された場所との関係が最も高い臓器への前記薬剤の前記臓器移行性を示す情報を前記データベースから読み出し、当該情報を含む前記一次情報又は前記二次情報を生成する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記データベースが、前記複数の薬剤の各々について前記検体の臓器での排出率の低さに関する情報を含み、
前記生成手段は、前記検体が採取された患者の症状から排出先として望ましくない器官の前記排出率を示す情報を前記データベースから読み出し、当該情報を含む前記一次情報又は前記二次情報を生成する
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記生成手段は、前記薬剤に関する情報として、当該薬剤の薬剤名、薬剤系統、
前記臓器移行性及び前記排出率を1列に並べて表す情報を含む前記一次情報又は前記二次情報を生成する
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
同一の患者について複数回行われた微生物検査においていずれも同じ微生物が特定された場合に、当該微生物検査における2以上の薬剤感受性試験の結果を集計する集計手段を備え、
前記生成手段は、前記一次情報又は前記二次情報として、過去の微生物検査について集計された前記結果を含む前記一次情報又は前記二次情報を生成する
請求項1から4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記データベースが、前記複数の薬剤の各々について前記検体の採取場所への臓器移行性の高さ、及び該臓器での排出率の低さに関する情報を含み、
前記生成手段は、前記複数の薬剤の中から、前記検体が採取された医療機関における取り扱いの有無、前記臓器移行性の高さ、及び前記排出率の低さに基づいて候補薬剤を特定し、当該候補薬剤について前記一次情報を生成する
請求項1に記載の情報処理装置
【請求項7】
前記生成手段は、前記一次情報として、所定の菌群に対するアンチバイオグラムを含む情報を生成する
請求項1に記載の情報処理装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感染症の治療を支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
感染症の治療を支援する技術がある。例えば、特許文献1には、感染症の原因となる微生物の名称及び抗菌薬の名称を微生物に対する抗菌薬の優先指数とともに格納する知識データベースから抽出された抗菌薬及び優先指数をもとに抗菌薬の総合的な優先度である抗菌指数を算出し、抗菌薬を並べ替えて提示する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-331062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
感染症の治療においては、微生物検査の結果を参考にして薬剤を決定して患者に投与することが行われる。しかし、微生物検査には時間を要するので、結果が出る前から治療を開始しなければならないことが多い。また、治療に利用可能な薬剤は多数あるので、その全てについて医師が詳細に把握することは難しい。
そこで、本発明は、感染症の治療全般において適切な薬剤の選択を支援することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、微生物検査における微生物の特定及び薬剤感受性試験の前に、当該微生物検査の対象となる検体が採取された医療機関において使用される薬剤に関する情報を一次情報として出力し、前記微生物の特定及び薬剤感受性試験の後に、少なくとも1以上の特定された微生物に対して薬剤感受性があると判定されたものに絞り込んだ薬剤に関する情報を二次情報として出力する出力部を備える情報処理装置を提供する。
【0006】
また、前記出力部は、前記一次情報又は前記二次情報として、前記検体が採取された場所との関係が最も高い臓器への前記薬剤の移行性を示す情報を出力してもよい。
【0007】
また、前記出力部は、前記一次情報又は前記二次情報として、前記検体が採取された患者の症状から排出先として望ましくない器官の排出率を示す情報を出力してもよい。
【0008】
また、前記出力部は、前記薬剤に関する情報として、当該薬剤の薬剤名、薬剤系統、前記移行性及び前記排出率を1列に並べて表す情報を出力してもよい。
【0009】
また、同一の患者について複数回行われた微生物検査においていずれも同じ微生物が特定された場合に、当該微生物検査における2以上の薬剤感受性試験の結果を集計する集計部を備え、前記出力部は、前記一次情報又は前記二次情報として、過去の微生物検査について集計された前記結果を出力してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、感染症の治療全般において適切な薬剤の選択を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例に係る検査支援システムの全体構成を表す図
図2】サーバ装置のハードウェア構成を表す図
図3】検査用装置及び医師用装置のハードウェア構成を表す図
図4】検査支援システムにおいて実現される機能構成を表す図
図5】指示ラベルに印刷された指示情報の一例を表す図
図6】記憶された指示情報の一例を表す図
図7】実施すべき工程の一例を表す図
図8】作業ラベルに印刷された指示情報の一例を表す図
図9】表示された入力用画像の一例を表す図
図10】指示情報の入力用画像の一例を表す図
図11】検体評価の検査結果の入力用画像の一例を表す図
図12】菌種同定の検査結果の入力用画像の一例を表す図
図13】操作用ボタンの表示態様の一例を表す図
図14】記憶された薬剤情報の一例を表す図
図15】薬剤感受性試験の完了前の報告書の一例を表す図
図16】薬剤感受性試験の完了後の報告書の一例を表す図
図17】ガイド処理における動作手順の一例を表す図
図18】報告処理における動作手順の一例を表す図
図19】変形例の検体評価の検査結果の入力用画像の一例を表す図
図20】変形例の候補関連情報の一例を表す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
[1]実施例
図1は実施例に係る検査支援システム1の全体構成を表す。検査支援システム1は、複数の作業工程からなる微生物検査に関する作業を支援するシステムであり、臨床検査技師等の検査実施者を主なユーザとする。検査支援システム1は、ネットワーク2と、サーバ装置10と、検査用装置20と、医師用装置30とを備える。
【0013】
ネットワーク2は、装置間のデータのやり取りを仲介するシステムであり、例えば、医療施設内に設けられたLAN(Local Area Network)である。ネットワーク2にはサーバ装置10及び検査用装置20が接続されている。なお、ネットワーク2と各装置の接続が図1では有線接続で表されているが、無線接続であってもよい。サーバ装置10は、微生物検査に関する各種の情報(作業及び薬剤の情報等)を記憶し、また、各工程の作業の結果を記憶する装置である。
【0014】
検査用装置20は、微生物検査を行う検査実施者が利用する装置である。検査用装置20は、検査実施者による検査結果等の入力を受け付けてサーバ装置10に送信したり、サーバ装置10が送信してくる各種の情報を表示したりする。検査用装置20には、プリンタ3と、コードリーダ4とが接続されている。プリンタ3は、印刷用の媒体に画像を印刷する装置である。コードリーダ4は、媒体に印刷されたコードを読み取る装置である。
【0015】
コードとは、所定の規格に基づき情報を変換して表した画像であり、例えばバーコード又は二次元コード等である。本実施例では、バーコードを読み取るコードリーダ4が用いられる。検査支援システム1においては、コードを印刷した媒体を微生物検査に用いる器具等に貼り付け、貼り付けた媒体から情報を読み取ることが、微生物検査において繰り返し行われる。器具等に貼り付けられる媒体のことを以下では「ラベル」と言う。
【0016】
ラベルとしては、器具等に貼り付けやすいように例えば裏面に粘着物質が塗布されている媒体が用いられる。なお、ラベルが貼り付けられた器具等は何度も水にぬれたりアルコール消毒をされたりするため、ラベルとしては、耐水性及び耐アルコール性等の耐性(印刷された情報を認識可能に保持する性質も含む)を有するものを用いることが望ましい。ラベルの貼り付け及び読み取りと微生物検査の進め方については後程詳しく説明する。
【0017】
医師用装置30は、微生物検査の対象となる検体の採取元である患者を治療する医師が利用する装置である。医師用装置30には、検査用装置20と同様にプリンタ3が接続されている。医師用装置30は、医師の操作に基づいて、微生物検査を指示するための情報をコード化したものをラベルに印刷する。このラベルも上記の器具に貼り付けられ、コードリーダ4によって読み取られる。
【0018】
図2はサーバ装置10のハードウェア構成を表す。サーバ装置10は、制御部11と、記憶部12と、通信部13とを備えるコンピュータである。制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を備えている。
【0019】
CPUは、RAMをワークエリアとして用いてROMや記憶部12に記憶されたプログラムを実行することによって記憶部12及び通信部13の動作を制御する。記憶部12は、ハードディスク等を備え、制御部11が制御に用いるデータやプログラムなどを記憶する。通信部13は、ネットワーク2を介して通信を行うための通信回路を備え、ネットワーク2を介したデータの送信及び受信を行う。
【0020】
図3は検査用装置20及び医師用装置30のハードウェア構成を表す。検査用装置20及び医師用装置30は、制御部21と、記憶部22と、通信部23と、表示部24と、操作部25とを備えるコンピュータである。制御部21、記憶部22、通信部23は、制御部11、記憶部12、通信部13と同種のハードウェアである。表示部24は、例えばディスプレイを有し、制御部21の制御に基づいて表示面に画像を表示する。操作部25は、キーボード及びマウス等の操作子を備え、ユーザによる操作の内容を表す操作データを制御部21に供給する。
【0021】
サーバ装置10、検査用装置20及び医師用装置30の各記憶部には、微生物検査に関する作業を支援する機能を実現するためのプログラムが記憶されており、このプログラムが実行されることで以下に述べる機能が実現される。なお、微生物検査の検査結果等の各種の情報はデータ化してやり取りされるが、以下では、データを送信し又は受信することを単にそのデータが示す情報を送信し又は受信するとも言う。
【0022】
図4は検査支援システム1において実現される機能構成を表す。サーバ装置10は、指示情報記憶部101と、作業情報記憶部102と、入力用画像記憶部103と、作業結果記憶部104と、薬剤候補特定部105と、薬剤情報記憶部106とを備える。検査用装置20は、開始情報取得部201と、コード読取部202と、工程判定部203と、印刷データ出力部204と、作業情報取得部205と、入力制御部206と、報告書出力部207とを備える。医師用装置30は、指示受付部301と、印刷データ出力部302とを備える。
【0023】
微生物検査は、主として、医師が患者を治療する際に病原体を特定して有効な治療を行えるようにするために実施される。そのため、患者を治療する医師は、検体を採取すると、医師用装置30を操作して微生物検査の指示を行う。なお、医師は、検体を採取する作業も含めて指示を行ってもよい。医師用装置30の指示受付部301は、微生物検査の実施を指示するための医師による操作(以下「指示操作」と言う)を受け付ける。
【0024】
指示操作を受け付ける際に表示される画面については後程図面を参照して説明する。指示受付部301は、例えば、微生物検査の対象となっている患者の識別情報であるカルテID(Identification)、検体の種類、採取日時(検体を採取済みの場合)、検査内容及び指示ラベルの添付先等の入力を指示操作として受け付ける。
【0025】
微生物検査には、例えば、グラム染色をした検体を顕微鏡で見て微生物を4種類に分類する検査(以下「鏡検」と言う検査名で表す)、微生物の菌名を同定する検査(以下「同定」とも言う検査名で表す)及び微生物の薬剤に対する感受性の検査(以下「感受性」とも言う検査名で表す)等の複数の検査が含まれる。常に全ての検査を行うとは限らず、患者及び治療の状況等によっては一部の検査だけを行うよう指示されることがある。
【0026】
また、検体の採取も指示される場合は、検査名ではないが「採取」という名称で表すものとする。なお、検査内容は上記のものに限らない。例えば、PCR(Polymerase Chain Reaction)法等を用いた微生物の遺伝子検査、主に結核菌について調べる抗酸菌検査、QFT(QuantiFeron)検査又は主にインフルエンザウィルス等の病原菌を検出する迅速検査等が検査内容に含まれてもよい。
【0027】
指示受付部301は、指示操作が行われる際に、指示される微生物検査を識別する検査IDを発行し、発行した検査IDを含む指示情報を印刷データ出力部302に供給する。印刷データ出力部302は、医師からの検査指示を示す指示情報をラベルに印刷するための印刷データを図1に表すプリンタ3に対して出力する。プリンタ3は、出力されてきた印刷データが示す指示情報をラベルに印刷する。
【0028】
このように医師からの検査指示を示す指示情報が印刷されたラベルのことを以下では「指示ラベル」と言う。
図5は指示ラベルに印刷された指示情報の一例を表す。図5に表す指示ラベル5には、文字列情報A1及びバーコードB1が印刷されている。文字列情報A1は、「検体:吸引痰」、「採取日時:xxxxxx」、「検査内容:鏡検・同定・感受性」及び「添付先:検体格納用の試験管」という文字列を示している。
【0029】
バーコードB1は、本実施例では、検査対象の検体の採取元である患者のカルテID及び前述のとおり発行された検査IDを示している。指示ラベル5は、医師又は臨床検査技師等によって文字列情報A1により示された添付先(図5の例では検体を格納した試験管)に添付される。医師からの検査指示を示す指示情報は、上記のとおり指示ラベル5に印刷されると共に、指示受付部301によってサーバ装置10に送信される。
【0030】
サーバ装置10の指示情報記憶部101は、受信した指示情報を記憶する。
図6は記憶された指示情報の一例を表す。図6の例では、指示情報記憶部101は、「C001」というカルテIDと、「D01」という検査IDと、検体種類、採取日時、検査内容及び添付先とを指示情報として記憶している。なお、指示情報記憶部101は、作業結果記憶部104と共に、検査履歴記憶部107を構成しており、図6では検査履歴記憶部107が記憶する各種の検査履歴が表されているものとする。
【0031】
検査履歴記憶部107が記憶する他の検査履歴(作業情報、作業結果)については後程説明する。検査用装置20のコード読取部202は、ラベルに印刷されたコードが示す情報を図1に表すコードリーダ4を用いて読み取る。例えば図5に表す指示ラベル5が添付された試験管が医師から検査実施者に渡されると、検査実施者は、指示ラベル5のバーコードB1をコードリーダ4で読み取らせる。
【0032】
コード読取部202は、コードリーダ4で読み取らせたバーコードB1が示すカルテID及び検査IDを読み取る。コード読取部202は、読み取ったカルテID及び検査IDを開始情報取得部201に供給する。開始情報取得部201は、微生物検査における工程の開始を示す開始情報を取得する。開始情報取得部201は本発明の「開始取得部」の一例である。
【0033】
開始情報取得部201は、供給されたカルテID及び検査IDに対応付けられた指示情報を指示情報記憶部101に要求する。指示情報記憶部101は、要求された指示情報を開始情報取得部201に供給する。開始情報取得部201は、供給された指示情報を、開始情報として取得する。このように、開始情報取得部201は、指示ラベルから読み取られた指示情報を開始情報として取得する。
【0034】
また、開始情報取得部201は、バーコードB1でコード化された情報は情報量が少ないので、サーバ装置10に記憶させていた指示情報をコード化された情報(検査ID等)を用いて読み出すことにより、コード化された情報よりも多くの情報を開始情報として取得している。開始情報取得部201は、こうして取得した開始情報を工程判定部203に供給する。
【0035】
工程判定部203は、供給された開始情報に基づいて、これから開始すべき1以上の工程(以下「開始工程」と言う)を判定する。開始工程には、1つの工程はもちろん、順番に行う2以上の工程及び並行して行う2以上の工程のどちらも含まれ得る。微生物検査は、「検体の採取」、「検体の評価」、「鏡検」、「培養」、「菌種同定」及び「薬剤感受性試験」等の複数の作業工程からなる。実施すべき工程は常に同じというわけではなく、医師の指示内容及び検査の途中経過によって異なる。
【0036】
図7は実施すべき工程の一例を表す。図7では、「工程E01:検体採取」、「工程E02:検体評価」、「工程E03:鏡検」、「工程E04:培養」、「工程E05:菌種同定」、「工程E06:薬剤感受性試験」という6つの手順が表されている。E01からE06までは検査支援システム1において各工程に割り当てられた工程IDである。例えば指示内容に「採取」が含まれておらず「鏡検」が含まれている場合は工程E03(グラム染色)から開始される。
【0037】
ただし、検体が喀痰の場合は、工程E02(検体評価)から開始されてもよい。また、グラム染色の分類結果、検体の種類及び患者の状態等によって適した培地が異なる場合があるので、工程E04(培養)は培地の種類毎に異なる手順が用意されている。なお、図7の例では工程E03(鏡検)、工程E05(菌種同定)及びE06(薬剤感受性試験)が1通りの工程になっているが、いずれも状況に応じた複数通りの工程が用意されていてもよい。
【0038】
工程判定部203は、開始情報が喀痰の「採取」を含む指示内容を示す場合は、例えば工程E01及びE02を開始工程として判定する。また、工程判定部203は、開始情報が喀痰以外の検体の「採取」を含む指示内容を示す場合は、例えば工程E01及びE03を開始工程として判定する。いずれの指示内容で検査を実施する場合も、判定された2つの工程が必ず実施されることになる。
【0039】
工程判定部203は、指示された内容から2以上の工程が必ず実施される場合であれば、それら2以上の工程を1度に判定してもよい。なお、工程判定部203は、次の工程の作業結果次第でその次の工程が変化する場合は次の工程だけを開始工程として判定する。また、工程判定部203は、指示内容から2以上の工程が確定する場合でも、次の工程だけを開始工程として判定してもよい。
【0040】
工程判定部203は、指示内容が採取済みの喀痰の「鏡検」を含む場合は、検体の評価が必要なので工程E02を開始工程として判定する。また、工程判定部203は、指示内容が採取済みの喀痰以外の検体の「鏡検」を含む場合は、検体の評価が不要なので工程E03を開始工程として判定する。工程判定部203は、以上のとおり開始工程を判定すると、判定した開始工程の作業内容を示す情報をサーバ装置10から取得する。
【0041】
サーバ装置10の作業情報記憶部102は、微生物検査における複数の工程の各々の作業内容を示す情報(以下「作業情報」と言う)を記憶する。作業情報は、作業対象(検体及びコロニー等)、作業に用いる器具類(顕微鏡、培地及び薬剤等)、作業の手順及び各工程の工程ID等を示す情報である。工程判定部203は、判定した工程の工程ID及び作業情報を要求することを示す要求データをサーバ装置10に送信する。
【0042】
作業情報記憶部102は、受信した要求データが示す工程IDを含む作業情報を要求元の検査用装置20に送信する。工程判定部203は、受信した作業情報を印刷データ出力部204に供給する。印刷データ出力部204は、供給された作業情報、すなわち、開始情報取得部201により取得された開始情報が示す工程の作業内容を示す作業情報をラベルに印刷するための印刷データを自装置に接続されているプリンタ3に対して出力する。印刷データ出力部204は本発明の「印刷出力部」の一例である。
【0043】
印刷データ出力部204は、2以上の開始情報が供給された場合には、本実施例では、それら2以上の開始情報が示す各工程の作業内容を示す作業情報を2以上のラベルにそれぞれ印刷するための印刷データを出力する。プリンタ3は、出力されてきた印刷データが示す作業情報をラベルに印刷する。作業情報が印刷されるラベルを以下では「作業ラベル」と言う。
【0044】
図8は作業ラベルに印刷された指示情報の一例を表す。図8に表す作業ラベル6には、文字列情報A2及びバーコードB2が印刷されている。文字列情報A2は、「検体:吸引痰」、「採取日時:xxxxxx」、「作業内容:M&J分類」及び「添付先:シャーレ」という文字列を示している。このように、印刷データ出力部204は、開始情報が示す工程における作業内容を示す文字列を含む作業情報の印刷データを出力する。
【0045】
より詳細には、印刷データ出力部204は、作業ラベルの貼付け先を文字列とする印刷データを出力する。また、バーコードB2は、本実施例では、検査対象の検体の採取元である患者のカルテID及び検査IDと、判定された工程IDとを示している。このように、印刷データ出力部204は、開始情報が示す工程を識別する識別情報である工程IDを示すバーコードを含む作業情報の印刷データを出力する。
【0046】
以上のとおり、検査実施者が図5に表す指示ラベル5をコードリーダ4で読み取らせると、上記の動作が行われ、作業ラベル6に作業情報が印刷される。検査実施者は、印刷された作業ラベル6を、文字列情報A2により示された添付先(図8の例ではシャーレ)に添付する。検査実施者は、作業ラベル6を添付した器具(図8の例ではシャーレ)を用いて、作業ラベル6に印刷された内容の作業(図8の例ではM&J分類)を実施する。
【0047】
検査実施者は、作業を実施すると、作業の結果の検査支援システム1への入力を、次の手順で行う。検査実施者は、まず、検査用装置20のコードリーダ4で読み取らせる。コード読取部202は、コードリーダ4で読み取らせたバーコードB2が示すカルテID、検査ID及び工程IDを読み取る。コード読取部202は、読み取ったカルテID、検査ID及び工程IDを作業情報取得部205に供給する。
【0048】
なお、コード読取部202は、工程IDを読み取った場合は読取結果を作業情報取得部205に供給し、工程IDを読み取らなかった場合は読取結果を上述したように開始情報取得部201に供給する。作業情報取得部205は、供給されたカルテID、検査ID及び工程IDを、作業ラベルに印刷されたバーコードから読み取られた作業情報として取得する。作業情報取得部205は本発明の「作業取得部」の一例である。
【0049】
作業情報取得部205は、取得した作業情報を入力制御部206に供給する。入力制御部206は、作業情報取得部205により取得された作業情報が示す作業の結果の検査支援システム1への入力を制御する。入力制御部206は、まず、作業の結果を入力するための入力用画像を表示手段に表示させる。入力制御部206は本発明の「表示制御部」の一例である。
【0050】
本実施例では、サーバ装置10がウェブアプリケーションの形態で入力用画像を提供する。サーバ装置10の入力用画像記憶部103は、微生物検査の作業の結果を入力するための入力用画像を記憶する。入力制御部206がサーバ装置10に入力用画像を要求すると、入力用画像記憶部103が要求された入力用画像を要求元の検査用装置20に送信する。入力制御部206は、送信されてきた入力用画像を自装置のディスプレイに表示させる。
【0051】
図9は表示された入力用画像の一例を表す。図9の例では、入力制御部206は、検査支援システム1の画面として、検査を依頼する者(医師等)が使用する操作用ボタンF1(微生物検査依頼)、F2(報告書出力)と、検査実施者が作業結果を入力するための操作用ボタンF3(検体採取)、F4(検体評価)、F5(鏡検)、F6(培養)、F7(菌種同定)、F8(薬剤感受性試験)という操作子画像を表示させている。
【0052】
以下の図10以降を参照して各操作子画像を押す操作がされたときに表示される入力用画像について説明する。まず、図9に表す画面は、医師用装置30においても表示される。医師用装置30の指示受付部301は、入力用画像記憶部103から入力用画像を取得して表示する。医師が操作用ボタンF1を押す操作を行うと、指示受付部301は指示情報を入力するための入力用画像を表示する。
【0053】
図10は指示情報の入力用画像の一例を表す。図10の例では、指示受付部301は、検査ID、検体種類、採取日時、検査内容及び添付先という指示情報の入力欄と、ラベル印刷ボタンF11とを入力用画像として表示させている。検査IDは指示受付部301が発行したIDであるが、他の入力欄の情報は医師が入力したものである。指示情報が入力済みの状態でラベル印刷ボタンF11を押す操作が行われると、例えば図5に表す指示ラベル5への印刷が行われる。
【0054】
操作用ボタンF2を押す操作が行われた場合は、検査結果の報告書が出力される(報告書出力については後程説明する)。このように、操作用ボタンF1、F2への操作は、主に医師用装置30において行われる。一方、操作用ボタンF3~F8への操作は、主に検査用装置20において行われる。例えば操作用ボタンF4を押す操作が行われると、入力制御部206は、図11に表す入力用画像を表示させる。
【0055】
図11は検体評価の検査結果の入力用画像の一例を表す。図11の例では、入力制御部206は、検査ID、検体種類、採取日時及び添付先と、検体の見本画像G1、G2、G3、G4、G5と、ラベル印刷ボタンF12とを入力用画像として表示させている。本実施例では、検体の評価を、M&J(Miller & Jones)分類で行うものとする。M&J分類は、検査対象である検体の外見に基づく判定を行う作業である。
【0056】
M&J分類においては、検体の外見の特徴と5通りの分類(P3、P2、P1、M2、M1)とが次のように対応付けられている。P3:膿性部分が2/3以上。P2:膿性部分が1/3~2/3。P1:膿性部分が1/3以下。M2:粘液性痰の中に膿性痰が少量含まれる。M1:唾液、完全な粘液性痰。検体の見本画像G1、G2、G3、G4、G5は、各々の見本画像に写る検体についての判定結果である分類P3、P2、P1、M2、M1にそれぞれ対応付けられた画像である。
【0057】
検査実施者は、採取された喀痰と見本画像とを見比べて、最も近いと思われる見本画像を選択する操作を行うことで、選択した見本画像に対応付けられている分類を判定する。入力制御部206は、上記のとおり供給された作業情報に基づいて検査ID、検体種類及び採取日時を表示させる。一方、検体の評価結果に応じて次の工程が変化するため、作業ラベルの添付先も評価結果に応じて変化する。
【0058】
本実施例では、分類P1~P3の場合は鏡検に進み、分類M2、M1の場合は検体の採取をやり直すものとする。よって、入力制御部206は、見本画像G1~G3が選択された場合は添付先として次工程の鏡検で用いられる「スライドグラス」を表示させ、見本画像G4、G5が選択された場合は添付先として検体採取で用いられる「試験管」を表示させる。このように、入力制御部206は、実施された工程の作業結果が入力されると、入力された作業結果に応じて決まる次の工程における作業ラベルの添付先を表示させる。
【0059】
検査実施者が見本画像を選択してラベル印刷ボタンF12を押す操作を行うと、入力制御部206は、検体評価の工程の作業結果を示す情報として、判定された分類と、作業情報とを示す結果データをサーバ装置10に送信する。サーバ装置10の作業結果記憶部104は、受信した結果データが示す作業情報及び作業結果を記憶する。作業結果記憶部104は、図6に表すように、指示情報記憶部101が記憶する指示情報のうち検査IDが共通のものに対応付けて作業情報及び作業結果を記憶する。
【0060】
図6の例であれば、「D01」という検査IDに対応付けて、「E02」という検体評価の工程IDと、「P2」という作業結果(検体評価の判定結果)とが記憶されている。このようにして、検査履歴記憶部107(指示情報記憶部101及び作業結果記憶部104)は、各種の検査履歴(指示情報、作業情報及び作業結果)を記憶する。また、図9に表す操作用ボタンF7を押す操作が行われると、入力制御部206は、図12に表す入力用画像を表示させる。
【0061】
図12は菌種同定の検査結果の入力用画像の一例を表す。図12の例では、入力制御部206は、検査ID、検体種類、採取日時及び添付先と、菌名の入力欄と、ラベル印刷ボタンF13とを入力用画像として表示させている。本実施例では、菌種同定の次の薬剤感受性試験の工程でMIC(Mini- mum Inhibitory Concentration)法が用いられるものとする。そのため、入力制御部206は、作業ラベルの添付先としてMIC法で用いられる「マイクロプレート」を表示させている。
【0062】
検査実施者が菌名「xxxxxxxx」を入力してラベル印刷ボタンF13を押す操作を行うと、検体評価の結果と同様に、同定された菌名が作業結果記憶部104により図6に表すように記憶される。以上で述べた「検体評価」及び「菌名同定」と同様に、他の工程についても、各々に対応する操作用ボタンを押す操作が行われることで、作業結果の入力用画像が表示され、検査実施者が作業結果を入力することで、入力された作業結果が作業結果記憶部104に記憶される。
【0063】
また、図11又は図12の例において、ラベル印刷ボタンF12又はF13を押す操作が行われると、入力制御部206は、作業情報と、入力用画像への入力情報(入力用画像を用いて入力された情報)である作業結果とを開始情報取得部201に供給する。開始情報取得部201は、供給された作業情報及び作業結果を新たな工程の開始情報として取得する。
【0064】
開始情報取得部201は、例えば、図11の入力用画像が表示された画面でいずれかの見本画像が選択された場合に、その見本画像に対応付けられた判定結果を開始情報として取得する。また、開始情報取得部201は、図12の入力用画像が表示された画面で菌名が入力された場合に、入力された菌名を開始情報として取得する。
【0065】
他にも、開始情報取得部201は、鏡検の工程の入力用画像が表示された画面でグラム染色された菌の分類結果(陽性球菌等)が入力された場合は、入力された分類結果を開始情報として取得する。また、開始情報取得部201は、培養の工程の入力用画像が表示された画面で培養の結果(菌量、性状、確認培地等)が入力された場合は、入力された培養の結果を開始情報として取得する。
【0066】
開始情報取得部201が取得した開始情報を工程判定部203に供給すると、工程判定部203が供給された開始情報に基づいて上述した開始工程(これから開始すべき1以上の工程)を判定する。なお、工程判定部203は、前回2以上の開始工程を判定したため次に開始すべき開始工程が判定済みの場合は、開始工程の判定を行わない。工程判定部203は、開始工程を判定した場合は、判定した開始工程の作業内容を示す作業情報をサーバ装置10から取得して印刷データ出力部204に供給する。
【0067】
印刷データ出力部204は、供給された作業情報をラベルに印刷するための印刷データをプリンタ3に対して出力する。こうして出力された印刷データが示す作業情報は、図8に表す作業ラベル6と同様に作業ラベルに印刷される。印刷された作業ラベルは、開始工程で用いられる器具等の添付先に添付され、その器具等を用いて開始工程の作業が実施される。
【0068】
以上のとおり、印刷データ出力部204は、開始情報取得部201により取得された入力情報(入力用画像を用いて入力された情報)に応じて決まる開始工程の作業情報を印刷するための印刷データを出力する。このように、検査支援システム1においては、作業情報の印刷、作業の実施、作業情報の読み取り、作業情報の入力というサイクル(以下「作業サイクル」と言う)が繰り返し行われる。
【0069】
作業サイクルが繰り返される状況における各操作用ボタンの表示態様について図13を参照して説明する。
図13は操作用ボタンの表示態様の一例を表す。入力制御部206は、作業情報取得部205によって例えば「検体採取」を開始工程とする作業情報が取得された場合、図13(a)に表すように各操作用ボタンを表示させる。
【0070】
図13(a)において実線で示されている操作用ボタンF3(検体採取)は操作可能なことを表し、破線で示されている他の操作用ボタンは操作不可であることを表している。このように、入力制御部206は、複数の入力用画像(操作用ボタンF1~F8)を含む微生物検査用の画面において、取得された作業情報の入力用画像(図13(a)では操作用ボタンF3)を入力可能な状態で表示し、他の入力用画像は入力不可の状態で表示させる。
【0071】
同様に、入力制御部206は、「鏡検」を開始工程とする作業情報が取得された場合、図13(b)に表すように操作用ボタンF5(鏡検)を操作可能な状態で、他の操作用ボタンを操作不可の状態で表示させる。また、入力制御部206は、「菌種同定」を開始工程とする作業情報が取得された場合、図13(c)に表すように操作用ボタンF7(菌種同定)を操作可能な状態で、他の操作用ボタンを操作不可の状態で表示させる。
【0072】
また、入力制御部206は、操作可能な状態の操作用ボタンと、操作不可の状態の操作用ボタンとを、識別可能な態様で表示させる。入力制御部206は、両操作ボタンの識別のため、例えば、ボタンの輪郭線の太さ又は種類等を異ならせてもよいし、ボタンの大きさ又は形等を異ならせてもよいし、ボタン内部の文字の太さ、色又は書式等を異ならせてもよい。
【0073】
以上のとおり操作の可否に応じて操作用ボタンの表示態様を異ならせることで、表示態様が一律である場合に比べて、先に行った作業の結果を入力すべき箇所を容易に把握することができる。また、図11に示すように見本画像を判定結果として選択させることで、「色」や「大きさ」などを含む外見に基づく判定の結果を、見本画像を選択させない場合に比べて、安定させることができる。
【0074】
検査用装置20の報告書出力部207は、微生物検査の結果を報告するための報告書を生成して出力する。報告書の出力先は、ディスプレイでもよいし、用紙等でもよい。報告書出力部207は、例えば図9に表す操作用ボタンF2(報告書出力)を押す操作が行われた場合に、報告書の対象となる検査の指定を受け付けて、指定された検査に関する情報をサーバ装置10から取得する。
【0075】
報告書出力部207は、まず、サーバ装置10の作業結果記憶部104から、報告対象の微生物検査の作業情報及び作業結果を取得する。また、報告書出力部207は、検体が採取された患者を治療する医療機関における過去の薬剤感受性試験の作業結果を取得する。この作業結果は、後述するアンチバイオグラム(薬剤毎の感受性率を表したグラフ)の生成に用いられる。
【0076】
また、報告書出力部207は、微生物検査の対象となる検体が採取された患者の治療の際に用いられる薬剤の候補(以下「薬剤候補」と言う)をサーバ装置10に問い合わせる。その際、報告書出力部207は、報告対象となる微生物検査の検査IDと、検体が採取された患者を治療する医療機関の機関IDとをサーバ装置10に通知する。
【0077】
サーバ装置10の薬剤候補特定部105は、問い合わせを受けた薬剤候補を特定する。薬剤候補特定部105は、通知された検査IDに対応付けて記憶されている作業情報及び検査結果を作業結果記憶部104から読み出す。また、薬剤候補特定部105は、薬剤候補を特定するために、薬剤情報記憶部106を参照する。薬剤情報記憶部106は、薬剤に関する各種の情報(薬剤情報)を記憶する。
【0078】
図14は記憶された薬剤情報の一例を表す。図14の例では、薬剤情報記憶部106は、「ペニシリン系-1」、「ペニシリン系-2」及び「ペニシリン系-2(抗緑膿菌)」等の薬剤系統毎に、薬剤名と、臓器移行性と、排泄率と、取り扱い有無とを対応付けた薬剤情報を記憶している。「臓器移行性」とは、投与した薬剤が各臓器(腎(=腎・尿路)、肝(=肝・胆汁)、喀痰(=喀痰・気管支分泌液)、骨髄等)に到達する度合いを表した情報であり、「◎」=優、「〇」=良、「△」=可、「×」=不可、「-」=データなしであることが表されている。
【0079】
「排泄率」とは、投与された薬剤が体から排泄される箇所(腎臓、肝臓、その他)毎の排泄量の割合であり、パーセンテージで表されている。「取り扱い有無」としては、病院A及び病院B等における各薬剤の取り扱いの有無(「有」は取り扱いのある薬剤で、「無」は取り扱いのない薬剤)が表されている。各医療機関における取り扱いの有無は、検査支援システム1の管理者等によって予め登録されているものとする。
【0080】
薬剤候補特定部105は、通知された機関IDが示す医療機関で取り扱いのある薬剤の薬剤情報を読み出す。薬剤候補特定部105は、読み出した薬剤情報のうち、前述した作業情報が示す検体の採取場所(同定される微生物が生存する場所)への臓器移行性が高い薬剤を優先して薬剤候補として特定する。また、薬剤候補特定部105は、作業情報が示すカルテIDを用いて患者の基礎疾患の情報を図示せぬ電子カルテシステムから取得する。
【0081】
そして、薬剤候補特定部105は、腎臓に影響のある基礎疾患(慢性腎臓病等)を有する患者については、腎臓の排泄率が閾値未満の薬剤を優先して薬剤候補として特定し、肝臓に影響のある基礎疾患(ウイルス性肝炎等)を有する患者については、肝臓の排泄率が閾値未満の薬剤を優先して薬剤候補として特定する。薬剤候補特定部105は、薬剤感受性試験の検査結果が出る前は、上記の3つの条件(取り扱いの有無、臓器移行性、排泄率)に基づいて薬剤候補を特定する。
【0082】
薬剤候補特定部105は、各薬剤系統について優先度が高い方から所定の数(1~3程度)の薬剤候補を特定し、特定した薬剤の薬剤情報を、問い合わせ元の検査用装置20に送信する。報告書出力部207は、送信されてきた薬剤情報と、作業結果記憶部104から取得した作業情報及び作業結果とに基づいて、報告書を生成して出力する。報告書出力部207は、2通りの報告書を生成する。
【0083】
報告書出力部207は、微生物検査における微生物の特定及び薬剤感受性試験の前に、中間報告書を生成して出力する。また、報告書出力部207は、微生物検査における微生物の特定及び薬剤感受性試験の後に、最終報告書を生成して出力する。中間報告書及び最終報告書は、それぞれ薬剤候補に関する情報(以下「候補関連情報」と言う)を含む。中間報告書に含まれる候補関連情報は本発明の「一次情報」の一例であり、最終報告書に含まれる候補関連情報は本発明の「二次情報」の一例である。また、報告書出力部207は本発明の「出力部」の一例である。
【0084】
図15は中間報告書の一例を表す。図15の例では、報告書出力部207は、患者情報と、検体情報と、検体評価と、鏡検結果と、グラム染色画像と、アンチバイオグラムH1と、薬剤情報J1とを含む報告書を生成している。アンチバイオグラムH1は、検査対象の検体が採取された患者を治療する医療機関において、「腸内細菌群」、「非発酵菌群」、「ブドウ球菌群」及び「腸球菌群」に対する系統が同じ薬剤毎の感受性率を表している。
【0085】
感受性率とは、過去の薬剤感受性試験において有効性が期待できる薬剤であることを示す「S」(S:Susceptible)と判断された割合を示している。例えば「腸内細菌群」に対する感受性率が50%の薬剤であれば、過去の「腸内細菌群」に対する薬剤感受性試験の半分でSと判断されたことを表している。従って、薬剤感受性試験の検査結果が出る前においては、同一の医療機関における治療においてはアンチバイオグラムH1に示される感受性率が高い薬剤ほど効き目があることが見込まれるというように、薬剤を選択する際の参考になる。
【0086】
薬剤情報J1は、薬剤候補特定部105により特定された薬剤候補の薬剤情報である。薬剤情報J1は、例えば「ペニシリン系-2(抗緑膿菌)」の「Pe2」という薬剤であれば、臓器移行性が「〇」で排泄率が「60/-/-」であることが示されている。ここでの臓器移行性は、検体が採取された場所との関係が最も高い臓器への移行性を表している。
【0087】
例えば検体が「吸引痰」であれば「喀痰・気管支分泌液」への臓器移行性を表し、検体が「尿」であれば「腎・尿路」への臓器移行性を表している。なお、薬剤情報J1が「-」となっている薬剤系統については、臓器移行性及び排泄率に基づく優先度が一定以上になる薬剤が取り扱われていなかったことを表している。以上のとおり、報告書出力部207は、微生物検査の対象となる検体が採取された医療機関において使用される薬剤に関する情報(図15の例ではアンチバイオグラムH1及び薬剤情報J1)を候補関連情報として含む中間報告書を出力する。
【0088】
図16は最終報告書の一例を表す。図16の例では、報告書出力部207は、図15に表すアンチバイオグラムH1及び薬剤情報J1に代えて、菌名リストK1と、感受性検査結果Q1と、薬剤情報J2とを含む報告書を生成している。菌名リストK1は、菌名同定の工程の作業結果として入力された菌名、菌量、割合及びコメントである。
【0089】
「菌量」は、例えば所定の倍率(1000倍等)の顕微鏡の1視野に含まれる菌の個数に応じて「1+」、「2+」、「3+」というように表されている。「割合」は、同定された全ての微生物のうちの各微生物の個数の割合を表している。感受性検査結果Q1は、薬剤感受性試験の工程の作業結果として入力された薬剤名(試験に用いられたもの)、感受性及びMIC値である。
【0090】
図16の例では、12個の試験用の薬剤を用いた薬剤感受性試験が行われた結果が示されている。感受性の「ND」は、SIR(薬剤の有効性の指標)の判断がされなかったことを表している。薬剤情報J2は、薬剤感受性試験の検査結果を加味して薬剤候補特定部105により特定された薬剤候補の薬剤情報である。薬剤候補特定部105は、作業結果記憶部104から薬剤感受性試験の検査結果が取得された場合、試験が行われた薬剤の系統について薬剤候補を特定する。
【0091】
具体的には、薬剤候補特定部105は、試験が行われた薬剤の系統と、検査結果が出る前に用いた3つの条件(取り扱いの有無、臓器移行性、排泄率)とに基づいて薬剤候補を絞り込む。そして、薬剤候補特定部105は、絞り込んだ薬剤候補のうち感受性が「R」(R:Resistant。有効性が保証できない)、「I」(I:Intermediate。有効性について評価が定まっていない)及び「ND」であるものを除いたものを最終的な薬剤候補として特定する。
【0092】
図16の例では、「セフェム系-3」、「セフェム系-5」、「テトラサイクリン系」については3つの条件を満たす薬剤を含んでいたが、感受性が「R」又は「ND」であるため薬剤候補から除かれている。また、「マクロイド」については、感受性が「S」だが3つの条件を満たす薬剤を含んでいないため薬剤候補が特定されていない。また、特定された薬剤候補については、図15の例と同様に、臓器移行性及び排泄率が示されている。
【0093】
以上のとおり、報告書出力部207は、少なくとも1以上の特定された微生物に対して薬剤感受性があると判定されたものに絞り込んだ薬剤に関する情報(図16の例では菌名リストK1、感受性検査結果Q1、薬剤情報J2)を候補関連情報として含む最終報告書として出力する。候補関連情報が出力されることにより、何の情報もない場合に比べて、治療に用いる薬剤の選択を容易にすることができる。
【0094】
また、報告書出力部207は、候補関連情報として、検体が採取された場所との関係が最も高い臓器への薬剤の移行性を示す情報(薬剤情報J1、J2の「◎」、「〇」等)を出力する。薬剤の移行性を示す情報が出力されることにより、何の情報もない場合に比べて、薬剤の効果を発揮させたい微生物が存在する臓器に届きやすい薬剤の選択を容易にすることができる。
【0095】
また、報告書出力部207は、候補関連情報として、検体が採取された患者の症状から薬剤の排出先として望ましくない器官の排出率を示す情報(薬剤情報J1、J2の「60/-/-」等の数値)を出力する。排出先として望ましくない器官から薬剤を排出すると、その器官を悪化させるという副作用が生じ得る。本実施例では、排出率を示す情報を出力することで、排出率を示す情報が出力されない場合に比べて、薬剤候補による副作用の発生リスクを低くすることができる。
【0096】
また、報告書出力部207は、薬剤候補に関する情報(候補関連情報)として、その薬剤の薬剤名、その薬剤の薬剤系統、その薬剤の臓器への移行性及びその薬剤の排出率を1列に並べて表す情報を出力する。図15の例であれば、例えば「セフェム系-6」、「△」、「薬剤Ce6」、「(90/-/-)」というように、薬剤系統、臓器への薬剤の移行性、薬剤名、排出率が1列に順番に横方向に並べて表されている。
【0097】
また、図16の例であれば、「セフェム系-6」、薬剤名、感受性、MIC値、「△」、「薬剤Ce6」、「(90/-/-)」というように、薬剤名が2回登場し、また、他の情報が間に挟まっているが、薬剤系統、薬剤名、臓器への薬剤の移行性、薬剤名、排出率が1列に順番に横方向に並べて表されている。薬剤名と共に上記の各情報が並べて表されることで、各情報がバラバラに表される場合に比べて、薬剤候補を投与すべきか否かを検討しやすくすることができる。
【0098】
検査支援システム1は、以上の構成に基づき、ラベルの印刷及び読み取りを通して微生物検査に関する作業をガイドするガイド処理と、作業結果の報告書を出力する報告処理とを行う。
図17はガイド処理における動作手順の一例を表す。図17に表す手順は、例えば医師が入力した指示情報が指示ラベルに印刷されることを契機に開始される。
【0099】
まず、検査用装置20(コード読取部202)は、指示ラベルに印刷されたコードが示す指示情報(本実施例ではカルテID及び検査ID)を読み取る(ステップS11)。ここで読み取られる指示情報は、入力された指示情報の一部(本実施例ではカルテID及び検査ID)である。一方、サーバ装置10(指示情報記憶部101)は、医師用装置30で入力されて送信されてきた指示情報を記憶する(ステップS12)。ここで記憶される指示情報は、入力された指示情報の全体(指示内容等を含む情報)である。
【0100】
次に、検査用装置20(開始情報取得部201)は、指示ラベルから読み取られた一部の指示情報を含む全体の指示情報をサーバ装置10に要求する(ステップS13)。サーバ装置10(指示情報記憶部101)は、要求された指示情報を検査用装置20に送信する(ステップS14)。検査用装置20(開始情報取得部201)は、送信されてきた指示情報を開始情報として取得する(ステップS15)。
【0101】
次に、検査用装置20(工程判定部203)は、取得された開始情報に基づいて、開始工程を判定する(ステップS16)。続いて、検査用装置20(印刷データ出力部204)は、判定された開始工程の作業内容を示す作業情報をラベルに印刷するための印刷データを出力する(ステップS17)。作業情報が印刷された作業ラベルは開始工程で用いられる器具等に添付され、開始工程の作業が実施される。
【0102】
作業実施後に作業ラベルの読み取り操作が行われると、検査用装置20(コード読取部202)は、作業ラベルに印刷されたコードが示す作業情報を読み取る(ステップS21)。ここで読み取られる作業情報は、サーバ装置10に予め記憶されている作業情報の一部(本実施例ではカルテID、検査ID及び工程ID)である。検査用装置20(作業情報取得部205)は、読み取られた作業情報を取得する(ステップS22)。
【0103】
次に、検査用装置20(入力制御部206)は、サーバ装置10に入力用画像を要求する(ステップS23)。サーバ装置10(入力用画像記憶部103)は、要求された入力用画像を要求元の検査用装置20に送信する(ステップS24)。検査用装置20(入力制御部206)は、送信されてきた入力用画像を表示させる(ステップS25)。次に、検査用装置20(入力制御部206)は、入力用画像への作業結果の入力を受け付ける(ステップS26)。
【0104】
続いて、検査用装置20(入力制御部206)は、作業情報及び入力された作業結果を示す結果データをサーバ装置10に送信する(ステップS27)。サーバ装置10(作業結果記憶部104)は、受信した結果データが示す作業情報及び作業結果を記憶する(ステップS28)。次に、検査用装置20(開始情報取得部201)は、取得された作業情報及び入力された作業結果を新たな工程の開始情報として取得する(ステップS31)。
【0105】
続いて、検査用装置20(工程判定部203)は、取得された開始情報に基づいて開始工程を判定する(ステップS32)。次に、検査用装置20(工程判定部203)は、判定した開始工程の作業内容を示す作業情報をサーバ装置10に要求する(ステップS33)。サーバ装置10(作業結果記憶部104)は、要求された作業情報を検査用装置20に送信する(ステップS34)。
【0106】
検査用装置20(印刷データ出力部204)は、判定された開始工程の作業内容を示す作業情報をラベルに印刷するための印刷データを出力する(ステップS35)。作業情報が印刷された作業ラベルは開始工程で用いられる器具等に添付され、開始工程の作業が実施される。以降は、ステップS21からS35までの動作が、微生物検査が完了するまで繰り返し行われる。
【0107】
図18は報告処理における動作手順の一例を表す。図18に表す手順は、例えば医師が報告書の出力操作を行うことを契機に開始される。まず、検査用装置20(報告書出力部207)は、報告書の対象となる検査の指定を受け付ける(ステップS41)。次に、検査用装置20(報告書出力部207)は、指定された検査に関する情報をサーバ装置10に要求する(ステップS42)。
【0108】
サーバ装置10(作業結果記憶部104)は、報告対象の微生物検査の作業情報及び作業結果を検査用装置20に送信する(ステップS43)。次に、検査用装置20(報告書出力部207)は、送信されてきた作業情報が示す検体が採取された患者を治療する医療機関における過去の薬剤感受性試験の作業結果を取得する(ステップS44)。続いて、検査用装置20(報告書出力部207)は、微生物検査の対象となる検体が採取された患者の治療に用いる薬剤候補をサーバ装置10に問い合わせる(ステップS45)。
【0109】
サーバ装置10(薬剤候補特定部105)は、問い合わせを受けた薬剤候補を特定し(ステップS46)、特定した薬剤の薬剤情報を、問い合わせ元の検査用装置20に送信する(ステップS47)。検査用装置20(報告書出力部207)は、送信されてきた薬剤情報と、先に取得した作業情報、作業結果及び過去の薬剤感受性試験の作業結果とに基づいて、報告書(中間報告書又は最終報告書)を生成して出力する(ステップS48)。
【0110】
微生物検査は、検査実施者の経験の程度によって検査の結果得られる情報の正確性が左右されやすい。具体的には、各工程の結果に応じて次の工程を選択する場合において、経験豊富な者に比べて経験が少ない者は適切でない工程を選択する間違いを起こしやすい。本実施例では、上述したとおり、作業情報のラベルへの印刷、作業の実施、ラベルからの作業情報の読み取り、作業結果の入力という作業サイクルが繰り返し行われる。
【0111】
その際、新たな作業工程も検査支援システム1によって特定されてガイドされる。これにより、作業サイクルを共通化して、実施される作業工程を均一化することができる。その結果、ガイドが行われない場合に比べて、微生物検査の品質を担当者の経験の程度にかかわらず安定させることができる。また、経験が少ない者ほど、工程が正しくともその工程で行う作業内容を間違えやすい。
【0112】
本実施例では、開始工程での作業内容を示す文字列を含む作業情報が作業ラベルに印刷されるので、検査経験が少ない者でも、各工程での作業を正しく行うことができる。また、本実施例では、作業情報を読み取らせると、その作業情報が示す作業の結果を入力するための入力用画像が表示されるので、正しい入力用画面を探す手間を省くことができる。また、本実施例では、ラベルの貼付け先を示す文字列を含む作業情報が印刷されるので、ラベルの貼付け先を間違えないようにすることができる。
【0113】
また、本実施例では、微生物検査を開始する際にまだどの工程の作業も行われていない段階でも、医師の指示を示す指示情報が印刷された指示ラベルを用いて、作業ラベルを用いた場合と同じ作業サイクルを実施することができる。これにより、微生物検査を開始する際に特別な作業を行わせる場合に比べて、医師の指示に基づく微生物検査を円滑に開始することができる。
【0114】
[2]変形例
上述した実施例は本発明の実施の一例に過ぎず以下のように変形させてもよい。また、上述した実施例及び以下に示す各変形例は必要に応じて組み合わせて実施してもよい。
【0115】
[2-1]ラベル
実施例では、裏面に粘着物質が塗布されている媒体がラベルとして用いられたが、これに限らない。例えば用紙をラベルとして用いて指示情報等を印刷し、透明なビニールテープでラベルをシャーレ等に添付してもよい。また、実施例では、検査ID等を示すバーコードがラベルに印刷されたが、ラベルに印刷されるコードはこれに限らず、例えばQRコード(登録商標)等の2次元コードであってもよい。
【0116】
2次元コードにすることで、バーコードを用いる場合に比べてコードリーダで読取可能な情報量を増やすことができる。一方、2次元コード用のコードリーダはバーコード用に比べて高価である。そのため、実施例のようにバーコードを用いることで、2次元コードを用いる場合に比べて、ラベルへの印刷及び読み取りを繰り返して作業サイクルを均一化する仕組みを安価に構築することができる。
【0117】
なお、コードを用いずに、指示情報及び作業情報を全て文字列にしてラベルに印刷してもよい。その場合は、コードリーダの代わりに文字を認識するOCR(Optical Character Recognition)の技術により作業情報を読み取る手段を用いて作業情報を読み取ればよい。また、コードや文字列を印刷する代わりに、IC(Integrated Circuit)回路を印刷する技術を用いて、指示情報及び作業情報を無線通信で出力可能なIC回路を印刷してもよい。その場合は、コードリーダの代わりに無線通信装置で作業情報を読み取ればよい。
【0118】
[2-2]見本画像
実施例では、図11に表す検体評価の検査結果の入力用画像として、1つの判定結果に対して1つの見本画像が表示されたが、2以上の見本画像が表示されてもよい。本変形例では、入力制御部206は、見本画像と共に、その見本画像と同じ判定結果に対応付けられる1以上の外見の見本画像を表示させる。
【0119】
図19は本変形例の検体評価の検査結果の入力用画像の一例を表す。図19の例では、入力制御部206は、見本画像G1が選択された場合に、分類P3に対応付けられている検体の見本画像として、見本画像G1、G1-2、G1-3、G1-4、G1-5という2以上の見本画像を表示させている。入力制御部206は、他の見本画像が選択された場合は、選択された見本画像と同じ分類に対応付けられている2以上の見本画像を表示させる。
【0120】
入力制御部206は、ラベル印刷ボタンF14を表示させ、それを押す操作が行われると、実施例と同様に、作業情報と、入力用画像への入力情報である作業結果とを開始情報取得部201に供給する。以上のとおり2以上の見本画像が表示されることで、見本画像が1つだけの場合に比べて、微生物検査で実際に用いている検査対象(例えば検体)に似た見本画像が含まれやすくなり、見本画像に基づいて行われる判定の精度を向上させることができる。
【0121】
図19の例では、見本画像G1、G1-2、G1-3、G1-4、G1-5のうち実際の検体に最も似ているものが選択された状態でラベル印刷ボタンF12を押す操作が行われる。開始情報取得部201は、同一の判定結果に対応付けられた2以上の見本画像のうちのいずれかが選択された場合に、選択された見本画像に対応付けられたその判定結果を開始情報として取得する。
【0122】
その際、入力制御部206は、選択された見本画像を識別する画像IDを作業結果記憶部104に供給する。作業結果記憶部104は、供給された画像IDを作業結果として記憶する。作業結果記憶部104は、こうして各見本画像の選択実績(選択された回数を示す情報)を蓄積する。そして、入力制御部206は、同一の判定結果に対応付けられた2以上の見本画像を表示させる際に、選択の実績に応じた態様でそれら2以上の見本画像を表示させる。
【0123】
入力制御部206は、例えば、図19の例のように複数の見本画像を横に並べて表示させる場合、選択実績が多い見本画像ほど左側に表示させる。なお、複数の見本画像を縦に並べて表示させる場合は選択実績が多い見本画像ほど上側に表示させればよい。また、入力制御部206は、選択実績が多い見本画像ほど大きく表示させてもよいし、画像の輪郭を太くして表示させてもよい。
【0124】
検査対象の外見の見本画像は実際の検査対象に形状、大きさ及び色等が似ているほど判定の参考になる。一方、見本画像は、例えば検査支援システム1を利用する医療機関で実際に撮影された検査対象の画像が用いられる。そのため、形状、大きさ及び色等が明確で正確な判定がしやすい画像と反対に形状等が不明瞭で正確な判定がしにくい画像とが混在している場合がある。
【0125】
その場合、正確な判定がしやすい画像の方が選択されて選択実績も多くなりやすい。本変形例では、選択実績に応じた態様で見本画像を表示させるので、例えば選択実績が多い見本画像ほど目立つ態様で表示させることで、表示態様が一様である場合に比べて、判定の役に立ちやすい見本画像を把握しやすくすることができる。
【0126】
[2-3]候補関連情報
候補関連情報は実施例で述べたものに限らない。感染症の治療では、薬剤を投与してもなかなか完治しないため、何回か微生物検査をやり直す場合がある。そのように同一の患者について複数回行われた微生物検査において、いずれも同じ微生物が特定された場合に、本変形例では、例えば報告書出力部207が、微生物検査における2以上の薬剤感受性試験の結果を集計する。この場合の報告書出力部207は本発明の「集計部」の一例である。
【0127】
報告書出力部207は、例えば最初の薬剤感受性試験の結果と、最終の薬剤感受性試験の結果とを、薬剤系統毎に集計し、アンチバイオグラムを生成する。
図20は本変形例の候補関連情報の一例を表す。図20の例では、報告書出力部207は、最初の薬剤感受性試験の結果R1を破線で表し、最終の薬剤感受性試験の結果R2を実線で表したアンチバイオグラムH2を候補関連情報として生成している。
【0128】
報告書出力部207は、薬剤感受性試験の結果を集計し、例えば、最初の薬剤感受性試験における感受性率(有効性が期待できる薬剤と判断された割合)の平均値と、最終の薬剤感受性試験における感受性率の平均値とを算出する。報告書出力部207は、アンチバイオグラムH2において、算出した最初の結果の平均値で結果R1を表し、算出した最終の結果の平均値で結果R2を表している。
【0129】
報告書出力部207は、候補関連情報としてアンチバイオグラムH2を出力することで、過去の微生物検査について集計された2以上の薬剤感受性試験の結果を出力する。なお、集計される結果は、最初及び最終以外の結果であってもよいし、3以上の結果であってもよい。例えば図20の例では、ペニシリン系-1、ペニシリン系-2、ペニシリン系-2(抗緑膿菌)、グリコペプチド系については、図中の矢印で示すとおり、初回の結果から最終の結果にかけて感受性率が大幅に減少している。
【0130】
これは、感染症の治療を続けるうちに微生物が薬剤への耐性を獲得したことを意味している。原因としては、該当地域の微生物の特性、薬剤の投与方法又は投与頻度等が考えられるが、いずれにしても、アンチバイオグラムH2が得られた医療施設では、ペニシリン系-1等の薬剤系統の薬剤を用いると、耐性を獲得されやすい傾向にあるから、それらの薬剤は優先順位を低くした方がよい。このように、本変形例によれば、上記の候補関連情報を出力しない場合に比べて、耐性が獲得されにくい薬剤の選択を支援することができる。
【0131】
[2-4]入力用画像
入力用画像は、実施例で述べた画像に限らない。例えば、入力制御部206は、実施例では図9に表すように各作業結果の入力用画像を表示させるための操作用ボタンを表示させたが、そのような操作用ボタンの操作を介さずに、各作業結果の入力用画像を最初から表示させてもよい(1画面に収まらなければスクロールさせればよい)。
【0132】
また、入力制御部206は、図13の例では、取得された作業情報の入力用画像を入力可能な状態で表示し、他の入力用画像は入力不可の状態で表示させたが、これに限らない。例えば、入力制御部206は、取得された作業情報の入力用画像を操作用ボタンの操作を介さずに表示させることで入力可能な状態とし、他の入力用画像は表示させないことで入力不可の状態にしてもよい。
【0133】
[2-5]各機能を実現する装置
図4に表す各機能を実現する装置は、上述した装置に限らない。例えば、サーバ装置10が実現する機能の一部又は全部を検査用装置20又は医師用装置30が実現してもよい。また、検査用装置20が実現する機能の一部又は全部を、サーバ装置10又は医師用装置30が実現してもよい。検査用装置20が実現する機能の全部を実現した場合はサーバ装置10又は医師用装置30が本発明の「情報処理装置」の一例となる。
【0134】
また、サーバ装置10、検査用装置20又は医師用装置30がそれぞれ1台の端末で実現する機能を2以上の装置で分担して実現してもよい。また、各機能が実行する動作を2以上の機能で分担して実行してもよい。例えば入力制御部206が行う入力用画像の表示と入力用画像への作業結果の入力の受け付け等の動作を別々の機能が実行してもよい。いずれの場合も、検査支援システム1の全体で図4に表す各機能が実現されていればよい。
【0135】
[2-6]発明のカテゴリ
本発明は、サーバ装置、検査用装置及び医師用装置という各情報処理装置の他、図4に示す各手段を実現する他の装置としても捉えられる。また、本発明は、それらの装置を備える検査支援システムのようなシステムとしても捉えられる。また、本発明は、各情報処理装置が実施する処理を実現するための情報処理方法としても捉えられるし、各情報処理装置を制御するコンピュータを機能させるためのプログラムとしても捉えられる。このプログラムは、それを記憶させた光ディスク等の記録媒体の形態で提供されてもよいし、インターネット等のネットワークを介してコンピュータにダウンロードさせ、それをインストールして利用可能にするなどの形態で提供されてもよい。
【符号の説明】
【0136】
1…検査支援システム、3…プリンタ、4…コードリーダ、5…指示ラベル、6…作業ラベル、10…サーバ装置、20…検査用装置、30…医師用装置、101…指示情報記憶部、102…作業情報記憶部、103…入力用画像記憶部、104…作業結果記憶部、105…薬剤候補特定部、106…薬剤情報記憶部、107…検査履歴記憶部、201…開始情報取得部、202…コード読取部、203…工程判定部、204…印刷データ出力部、205…作業情報取得部、206…入力制御部、207…報告書出力部、301…指示受付部、302…印刷データ出力部。
図1
図2
図3
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図5
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図11
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図20