(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】路面形状モニタリングシステム
(51)【国際特許分類】
E01C 23/01 20060101AFI20240522BHJP
G01B 7/34 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
E01C23/01
G01B7/34 A
(21)【出願番号】P 2020139932
(22)【出願日】2020-08-21
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(73)【特許権者】
【識別番号】517177729
【氏名又は名称】仙台スマートマシーンズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】509274441
【氏名又は名称】株式会社ネクスコ・エンジニアリング東北
(74)【代理人】
【識別番号】100095359
【氏名又は名称】須田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100143834
【氏名又は名称】楠 修二
(72)【発明者】
【氏名】桑野 博喜
(72)【発明者】
【氏名】北吉 均
(72)【発明者】
【氏名】高間舘 千春
(72)【発明者】
【氏名】今野 理洋
(72)【発明者】
【氏名】阿部 公一
(72)【発明者】
【氏名】片岡 充英
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-066040(JP,A)
【文献】特開2006-246688(JP,A)
【文献】特表2011-528185(JP,A)
【文献】特開2015-161580(JP,A)
【文献】特開2019-165630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 23/01
G01B 7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に取り付けられ、前記車両の振動で発電する発電素子と、
前記車両に取り付けられ、前記発電素子で発電した電力で駆動して、前記車両の走行中に路面から伝わる振動
の振幅を、変位として測定可能に設けられた
変位センサから成るセンサと、
前記センサに接続され、前記発電素子で発電した電力で駆動して、前記センサの測定データを無線送信可能に設けられた無線通信手段とを
有し、
前記センサは、長さ方向の中央部で鋭角に折曲げた細長い金属板と、それぞれ前記金属板の両端部の表面に貼り付けられた1対の圧電素子とを有し、各圧電素子の間隔に対応した電圧を出力可能に構成されており、前記金属板の両端部が、前記車両のサスペンションのコイルスプリングに、前記コイルスプリングの中心軸に沿って所定の間隔をあけて固定されていることを
特徴とする路面形状モニタリングシステム。
【請求項2】
前記発電素
子は、前記車両のサスペンションのコイルスプリング、ロアアーム、およびテンションロッドのうちの少なくとも一つに取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の路面形状モニタリングシステム。
【請求項3】
前記発電素子は、梁状に設けられた基板と、前記基板の表面に貼り付けられた圧電薄膜とを有することを特徴とする請求項
1または2記載の路面形状モニタリングシステム。
【請求項4】
前記発電素子は、前記金属板の表面に貼り付けられた圧電薄膜を有することを特徴とする請求項
1または2記載の路面形状モニタリングシステム。
【請求項5】
前記発電素子は、前記1対の各圧電素子のうち少なくともいずれか一方の振動により発電するよう構成されていることを特徴とする請求項
1または2記載の路面形状モニタリングシステム。
【請求項6】
GPSにより走行中の前記車両の位置情報を測定可能に設けられた測位手段と、
前記測位手段で測定された前記位置情報に基づいて、前記センサの測定データを、その測定データを測定したときの前記車両の位置と対応させて保存するデータ保存手段とを、
有することを特徴とする請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の路面形状モニタリングシステム。
【請求項7】
前記センサと前記無線通信手段とに接続され、前記発電素子で発電した電力で駆動して、前記センサの動作と前記無線通信手段の動作とを制御可能に設けられた制御部を有することを特徴とする請求項1乃至
6のいずれか1項に記載の路面形状モニタリングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面形状モニタリングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路の路面形状を測定する装置として、例えば、走行する車両に搭載され、走行中に電波距離計などの距離測定部を、水平面内および鉛直面内で回転させながら路面との距離を測定し、車両の速度や各回転角度等に基づいて、路面までの鉛直距離と水平距離とを算出するものがある(例えば、特許文献1参照)。また、前後2つの走行輪の間に、上下移動可能に配置された測定輪を有し、測定輪にその上下移動の変位を算出するための変位測定センサと、測定輪の移動距離を算出するための距離測定エンコーダとを接続したものもある(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
なお、高速道路や一般道の道路形状を定量的に計測して、路面の構造的劣化を評価する指標として、1986年に世界銀行により提案されたIRI(International Roughness Index)がある(例えば、非特許文献1参照)。IRIの算出方法は4種類があるが、最も実用的な方法は、任意の測定装置で路面の縦断プロファイルを測定し、QC(クォーターカー)モデルを用いたQCシミュレーションによりIRIを算出する方法(クラス2)である。このクラス2では、QCモデルを一定の速度(80km/h)で走行させたときの、ばね上重量とばね下重量との差異のシミュレーション累計を、プロファイル長Lで割って基準化した量をIRIとし、評価単位の距離(プロファイル長L)として、100m、150m、300m等が選択される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-325892号公報
【文献】特開2002-188910号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】Sayers et al., “Guidelines for Conducting and Calibrating Road Roughness Measurements”, World Bank Technical Paper Number 46, 1986
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1および2に記載の路面形状測定装置は、電波距離計などの距離測定部や回転機構、あるいは測定輪といった、比較的大型の専用の装置を用いて路面の形状を直接測定しているため、測定時に使用する車両を改良する必要があり、改良のための手間やコストがかさむという課題があった。また、測定時に使用する車両も、測定専用のものとなるため、その車両自体のコストがかさむという課題もあった。また、測定時には、それらの専用の装置を駆動するための駆動電源も必要であり、そのコストもかさむという課題があった。
【0007】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、容易に路面形状の測定を行うことができ、導入までのコストや測定時のコストを低減可能な路面形状モニタリングシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る路面形状モニタリングシステムは、車両に取り付けられ、前記車両の振動で発電する発電素子と、前記車両に取り付けられ、前記発電素子で発電した電力で駆動して、前記車両の走行中に路面から伝わる振動を測定可能に設けられたセンサと、前記センサに接続され、前記発電素子で発電した電力で駆動して、前記センサの測定データを無線送信可能に設けられた無線通信手段とを、有することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る路面形状モニタリングシステムは、センサにより車両の走行中に路面から伝わる振動を測定するものであり、電波距離計や測定輪などの大型の装置により直接、路面形状を計測するものではないため、車両を改良しなくともセンサによる測定を行うことができる。また、発電素子により車両の振動で発電した電力を用いて、センサや無線通信手段を駆動することができる自立電源型のシステムであり、外部からの給電や駆動用の電池等が不要である。このように、本発明に係る路面形状モニタリングシステムは、容易に路面形状の測定を行うことができ、導入までのコストや測定時のコストを低減することができる。
【0010】
本発明に係る路面形状モニタリングシステムで、無線通信手段は、センサの測定データを、車両に搭載した受信手段に無線送信しても、車外の受信手段に無線送信してもよい。本発明に係る路面形状モニタリングシステムは、受信手段で受信された測定データに対していかなる処理を行ってもよく、例えば、測定データを記憶装置に記憶したり、測定データを用いて各種の解析を行ったりしてもよい。
【0011】
本発明に係る路面形状モニタリングシステムで、前記発電素子は、車両の振動が伝わる箇所であれば、車両のどこに設置されていてもよい。また、前記センサは、車両の走行中に路面から伝わる振動を測定可能であれば、車両のどこに設置されていてもよい。発電素子およびセンサは、例えば、前記車両のサスペンションのコイルスプリング、ロアアーム、およびテンションロッドのうちの少なくとも一つに取り付けられていることが好ましい。また、前記センサは、車両の走行中に路面から伝わる振動を測定可能であればいかなるものであってもよく、例えば、振動センサから成っていてもよく、前記車両の走行中に路面から伝わる振動の振幅を、変位として測定可能に設けられた変位センサから成っていてもよい。
【0012】
変位センサから成る場合、前記センサは、長さ方向の中央部で鋭角に折曲げた細長い金属板と、それぞれ前記金属板の両端部の表面に貼り付けられた1対の圧電素子とを有し、各圧電素子の間隔に対応した電圧を出力可能に構成されており、前記金属板の両端部が、前記車両のサスペンションのコイルスプリングに、前記コイルスプリングの中心軸に沿って所定の間隔をあけて固定されていてもよい。この場合、センサにより、サスペンションのコイルスプリングの伸縮を測定することができる。サスペンションのコイルスプリングは路面の凹凸等の形状に応じて伸縮するため、センサにより路面の形状を測定することができる。また、サスペンションのコイルスプリングの伸縮が、ばね上重量とばね下重量との間の変位に相当するため、センサの測定データから、IRIを容易に算出することができる。
【0013】
本発明に係る路面形状モニタリングシステムで、前記発電素子は、車両の振動により発電可能であればいかなるものであってもよく、例えば、梁状に設けられた基板と、前記基板の表面に貼り付けられた圧電薄膜とを有していてもよい。この場合、車両と共に基板が振動し、圧電薄膜で発電を行うことができる。また、前記発電素子は、サスペンションのコイルスプリングに固定される前記金属板の表面に貼り付けられた圧電薄膜を有していてもよい。この場合、センサの振動を利用して発電を行うことができる。さらに、前記発電素子は、その金属板に貼り付けられた前記1対の各圧電素子のうち少なくともいずれか一方の振動により発電するよう構成されていてもよい。この場合、センサの圧電素子を発電にも利用することができる。
【0014】
本発明に係る路面形状モニタリングシステムは、GPSにより走行中の前記車両の位置情報を測定可能に設けられた測位手段と、前記測位手段で測定された前記位置情報に基づいて、前記センサの測定データを、その測定データを測定したときの前記車両の位置と対応させて保存するデータ保存手段とを、有することが好ましい。この場合、センサで測定した路面の形状のデータを、地図上に正確に表示することができる。
【0015】
本発明に係る路面形状モニタリングシステムは、前記センサと前記無線通信手段とに接続され、前記発電素子で発電した電力で駆動して、前記センサの動作と前記無線通信手段の動作とを制御可能に設けられた制御部を有することが好ましい。この場合、制御部により、例えば、センサの測定時間間隔や、無線通信手段の通信時間間隔などを制御することができる。また、制御部により、センサの測定データを解析した後、その解析データを無線通信手段で送信してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、容易に路面形状の測定を行うことができ、導入までのコストや測定時のコストを低減可能な路面形状モニタリングシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態の路面形状モニタリングシステムを示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施の形態の路面形状モニタリングシステムの、(a)センサを示す平面図、(b)センサの使用状態を示す側面図である。
【
図3】本発明の実施の形態の路面形状モニタリングシステムの、(a)山形自動車道の路面形状の測定結果から求めたRMS値、および既存のIRI値を示すグラフ、(b) (a)に示すRMS値とIRI値との相関を示すグラフである。
【
図4】本発明の実施の形態の路面形状モニタリングシステムの、センサの圧電素子の(a)長さ(L)、(b)幅(W)を変化させたときの、発電する電力の電圧のシミュレーション結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態について説明する。
図1乃至
図4は、本発明の実施の形態の路面形状モニタリングシステムを示している。
図1に示すように、路面形状モニタリングシステム10は、センサ11と制御部12と無線通信手段13と発電素子14と電源制御手段15とを有しており、車両に搭載されている。
【0019】
図2(a)に示すように、センサ11は、細長い金属板21と1対の圧電素子22とを有している。金属板21は、ステンレスや銅などから成り、長さ方向の中央部で鋭角に折曲げられている。各圧電素子22は、PZTや窒化アルミなどから成り、互いに対向するよう、それぞれ金属板21の両端部の内側の表面に貼り付けられている。
図2(b)に示すように、センサ11は、車両のサスペンションのコイルスプリング1に取り付けられている。センサ11は、金属板21の両端部が、コイルスプリング1の中心軸に沿って所定の間隔をあけて、コイルスプリング1に固定されている。
【0020】
センサ11は、各圧電素子22を接続して、各圧電素子22の間隔に対応した電圧を出力可能に構成されている。これにより、センサ11は、サスペンションのコイルスプリング1の伸縮による振動の振幅を、変位として測定可能な変位センサとして構成されている。サスペンションのコイルスプリング1は、車両の走行中に路面の凹凸等の形状に応じて伸縮するため、センサ11は、コイルスプリング1の伸縮を測定することにより、路面の凹凸等の形状を測定可能になっている。
図2に示す具体的な一例では、金属板21はステンレス製であり、各圧電素子22は矩形状のPZTから成っている。なお、センサ11は、変位センサに限らず、車両の走行中に路面から伝わる振動を測定可能であればいかなるものであってもよく、例えば、振動センサから成っていてもよい。
【0021】
図1に示すように、制御部12は、センサ11と無線通信手段13とに接続されている。制御部12は、マイクロコンピュータから成り、例えば、センサ11の測定時間間隔や無線通信手段13の通信時間間隔など、センサ11および無線通信手段13の動作を制御可能に設けられている。また、制御部12は、センサ11で測定された車両の振動に対応する変位データを受信して、無線通信手段13に出力するよう構成されている。なお、制御部12は、例えば、受信した変位データをフーリエ変換したデータ、変位データの一定時間ごとのMAX値やRMS値、IRI値等を算出し、変位データと共に、それらの処理データを無線通信手段13に出力可能に構成されていてもよい。
【0022】
無線通信手段13は、制御部12を介してセンサ11に接続されている。無線通信手段13は、無線通信モジュールから成り、制御部12から受信した変位データを無線送信可能に設けられている。
【0023】
発電素子14は、各圧電素子22のいずれか一方から成り、車両の振動により発電可能に設けられている。なお、発電素子14は、センサ11の圧電素子22を利用するものに限らず、車両の振動により発電可能であればいかなるものであってもよく、例えば、梁状に設けられたステンレス等の基板と、その表面に貼り付けられた圧電薄膜とから成っていてもよく、各圧電素子22とは別に、センサ11の金属板21の表面に貼り付けられた圧電薄膜から成っていてもよい。
【0024】
電源制御手段15は、発電素子14に接続され、発電素子14で発電した交流の電力を、直流に変換するよう構成されている。電源制御手段15は、ICチップから成り、無線通信手段13および制御部12に接続されている。また、制御部12を介してセンサ11にも接続されている。これにより、路面形状モニタリングシステム10は、発電素子14で発電した電力を、電源制御手段15を介して、センサ11、無線通信手段13、および制御部12に供給し、これらを駆動可能に構成されている。
【0025】
このように、路面形状モニタリングシステム10は、発電素子14により車両の振動で発電した電力を用いて、センサ11や無線通信手段13、制御部12を駆動可能な自立電源型のシステムである。また、センサ11の測定データを無線通信手段13で無線送信可能であり、電源配線だけでなく、外部との信号配線も不要な、完全自立型の構成を有している。
【0026】
次に、作用について説明する。
路面形状モニタリングシステム10は、サスペンションのコイルスプリング1に取り付けられたセンサ11により、車両の走行中に路面から伝わる振動を測定するものであり、電波距離計や測定輪などの大型の装置により直接、路面形状を計測するものではないため、車両を改良しなくともセンサ11による測定を行うことができる。また、発電素子14による自立電源型のシステムであり、外部からの給電や駆動用の電池等が不要である。このように、路面形状モニタリングシステム10は、容易に路面形状の測定を行うことができ、導入までのコストや測定時のコストを低減することができる。
【0027】
路面形状モニタリングシステム10は、サスペンションのコイルスプリング1の伸縮が、ばね上重量とばね下重量との間の変位に相当するため、センサ11の測定データからIRIを容易に算出することができる。例えば、センサ11の測定データに係数をかけてIRIを算出したり、測定データから変換表を用いてIRIを求めたりすることができる。これにより、演算量を少なくすることができ、演算による誤差の累積等を排除することができる。また、大型の装置を用いず、比較的簡易な構成でIRIを求めることができる。
【0028】
路面形状モニタリングシステム10は、センサ11を取り付けたコイルスプリング1の振動が、0.1Hz~500Hz程度であれば、センサ11により、その振動を変位として測定することができる。
【0029】
なお、路面形状モニタリングシステム10は、車両に搭載された、無線通信手段13からの測定データや処理データを受信可能な受信手段を有していてもよく、無線通信手段13が車外の受信手段に、測定データや処理データを無線送信可能に構成されていてもよい。受信手段は、コンピュータから成ることが好ましく、受信した測定データ等に対していかなる処理を行ってもよい。受信手段は、例えば、測定データ等を記憶装置に記憶したり、測定データ等を用いて各種の解析処理を行ったりしてもよい。
【0030】
また、路面形状モニタリングシステム10は、GPSにより走行中の車両の位置情報を測定可能に設けられた測位手段と、測位手段で測定された位置情報に基づいて、センサ11の測定データを、その測定データを測定したときの車両の位置と対応させて保存するデータ保存手段とを、有することが好ましい。測位手段は、専用のGPS受信機であってもよいが、例えば、車両に搭載されているカーナビゲーションシステムやドライブレコーダーに内蔵されたGPS受信機から成っていてもよい。データ保存手段は、車両に搭載された受信手段や車外の受信手段に内蔵または接続されたメモリ等からなっていることが好ましい。
【0031】
この場合、センサ11の測定データと共に、即時にGPSからの位置情報も取得して、その測定データの測定時刻における位置(緯度、経度)との対応を行うことができ、地図上の位置に正確に測定データやIRI値等を表示することができる。また、例えば、高速道路の路面形状を測定する際には、測定データの測定時間に対応するGPSの位置情報により、高速道路上位置の管理指標であるキロポストを計算することができ、一義的に場所を特定して、対応する測定データやIRI値等を表示することができる。
【実施例1】
【0032】
図1に示す路面形状モニタリングシステム10を車両に搭載し、山形自動車道を山形方面に走行して、路面形状の測定を行った。得られた変位データから、走行距離の約20mごとに、その区間でのRMS値を求めた。求めたRMS値を、既存のIRI値と共に
図3(a)に、そのRMS値とIRI値との相関を、
図3(b)に示す。なお、既存のIRI値は、IRI測定専用の車両により、加速度計測から求められたものである。
図3(a)および(b)に示すように、路面形状モニタリングシステム10により得られたRMS値は、既存のIRI値と相関が高く、良く一致していることが確認された。このことから、非常に高価なIRI測定専用の車両を使用しなくとも、簡易な構成の路面形状モニタリングシステム10により、IRI値を正確に測定可能であるといえる。
【実施例2】
【0033】
次に、センサ11の圧電素子22の長さ(L)を変化させたとき、および、圧電素子22の幅(W)を変化させたときの、発電する電力の電圧を、シミュレーションにより求め、それぞれ
図4(a)および(b)に示す。それぞれ、センサ11の金属板21への貼付位置が異なる4種類の素子について、シミュレーションを行っている。
図4(a)では、圧電素子22の幅(W)を20mmとし、長さ(L)を変化させ、
図4(b)では、圧電素子22の長さ(L)を30mmとし、幅(W)を変化させている。また、圧電素子22の厚みは、0.1mmである。
【0034】
圧電素子22をセンサ11として使用する場合には、変位に対する直線性が良いものが好ましいため、
図4(a)では、圧電素子22が長くなるに従って、線形的に電圧の絶対値が増加する範囲が好ましく、
図4(b)では、圧電素子22の幅の変化に対して電圧が変化しない範囲が好ましい。また、圧電素子22を発電素子14として使用する場合には、
図4(a)および(b)ともに、発電した電圧の絶対値が大きい範囲が好ましい。これらのことから、圧電素子22をセンサ11として使用する場合には、W/Lの値が0.3~2.0の範囲が好ましく、圧電素子22を発電素子14として使用する場合には、W/Lの値が0.1~0.4の範囲が好ましいといえる。
【符号の説明】
【0035】
10 路面形状モニタリングシステム
11 センサ
21 金属板
22 圧電素子
12 制御部
13 無線通信手段
14 発電素子
15 電源制御手段