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特許7492213体性感覚発生装置およびコミュニケーションシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】体性感覚発生装置およびコミュニケーションシステム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/01 20060101AFI20240522BHJP
   H10N 30/20 20230101ALI20240522BHJP
   H10N 30/30 20230101ALI20240522BHJP
【FI】
G06F3/01 560
H10N30/20
H10N30/30
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021056173
(22)【出願日】2021-03-29
(65)【公開番号】P2022153111
(43)【公開日】2022-10-12
【審査請求日】2023-06-19
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ▲1▼開催日 令和3年1月6日 ▲2▼集会名、開催場所 令和3年 早稲田大学 創造理工学部 建築学科 設計演習A オンライン
(73)【特許権者】
【識別番号】521132576
【氏名又は名称】滝川 麻友
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】滝川 麻友
【審査官】赤坂 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-332302(JP,A)
【文献】国際公開第2009/069259(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0357249(US,A1)
【文献】特開2017-152035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01- 3/04895
H10N 30/20-30/30
G09B 9/00- 9/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体性感覚発生装置であって、
ユーザが接触する接触部と、
前記ユーザからの圧力を検出する圧力検出部と、
前記接触部に連結された変形可能な変形部と、
前記圧力検出部と前記変形部に接続された制御部とを備え、
前記制御部は、前記圧力検出部から取得した第1の情報を外部に送信し、外部から受信した第2の情報に基づいて前記変形部を変形させ
前記第1の情報と前記第2の情報が同じ前記変形部に関係するものであるとき、前記制御部は、前記第2の情報とは異なる第3の情報に基づいて前記変形部を変形させる
ことを特徴とする体性感覚発生装置。
【請求項2】
請求項に記載の体性感覚発生装置であって、
前記制御部は、第1の情報と第2の情報に基づいて前記第3の情報を生成すること
を特徴とする体性感覚発生装置。
【請求項3】
請求項1に記載の体性感覚発生装置であって、
第3の情報は、前記変形部に、変形のロック、変形の増幅、変形の反転、伸縮の繰り返し、一定期間ごとの追従的な変形、または振動のいずれか1以上を生じさせるものであること
を特徴とする体性感覚発生装置。
【請求項4】
請求項1に記載の体性感覚発生装置であって、
前記制御部は、複数の前記変形部のうち一部の前記変形部を選択し、選択された前記変形部を変形させる
を特徴とする体性感覚発生装置。
【請求項5】
請求項1に記載の体性感覚発生装置であって、
前記変形部は、電気式アクチュエータ、化学式アクチュエータ、ピエゾアクチュエータ、ゲルアクチュエータ、またはバイオメタルのいずれかであること
を特徴とする体性感覚発生装置。
【請求項6】
請求項1に記載の体性感覚発生装置であって、
球体、直方体、立方体、楕円体、平板体、球体を横長に変形させた形状、のいずれかの形状であること
を特徴とする体性感覚発生装置。
【請求項7】
体性感覚を伝達するコミュニケーションシステムであって、
ネットワークによって接続された複数の請求項1から6のいずれかに記載の体性感覚発生装置を含み、
前記複数の体性感覚発生装置が通信する
ことを特徴とするコミュニケーションシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体性感覚発生装置に関する。本発明は、特に、与えられた体性感覚を外部に情報として送信し、外部から受信した情報に基づいて体性感覚を発生することにより、体性感覚を利用した双方向のコミュニケーションを提供する体性感覚発生装置およびコミュニケーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、振動情報に対応する所望の触感を呈示する情報端末が知られている。例えば、特許文献1は、送受信部で振動情報を受信すると、表示部に表示情報を表示させるとともに、タッチセンサを介して入力を受け付けると、振動発生部により振動情報に基づく振動を発生させる情報端末を開示している。この従来の携帯情報端末によれば、端末種別、固体差、又は経年変化等に影響されることなく、振動情報に対応する所望の触感を呈示することができる。
【0003】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-226482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の情報端末は、端末種別、固体差、又は経年変化等に影響されることなく、振動情報に対応する所望の触感を発生することができるものの、発生することができるものは振動に限られるため、再現される皮膚感覚などの体性感覚は表現力がもの足りないものとなってしまう。ここで、皮膚感覚とは、触覚、温度感覚、痛覚などの表在感覚をいうが、振動だけでは、皮膚感覚に起因する様々な感性や表現力を再現することはできず、結果として、これらの感覚を他人に十分に伝達することはできなかった。このように従来の情報端末は体性感覚を十分に伝達できないという第1の課題があった。
【0006】
従来の情報端末では振動情報に対応する所望の触感を受信者に呈示したとしても、当該受信者はその触感に対する応答をすることはできなかった。すなわち、受信者が送信者に対して、皮膚感覚などの体性感覚を伝達する手段が存在しないため、受け取った体性感覚に対して、体性感覚によって応答することは全くできなかった。このように従来の情報端末は体性感覚を利用した双方向のコミュニケーションができないという第2の課題があった。
【0007】
従来の情報端末では振動情報に対応する所望の触感を受信者に呈示したとしても、操作者が表示部を見ながら使用することを前提としているため、表示部を見ることができない視覚や聴覚などに障害がある人が使用するのは難しかった。すなわち、視覚などに障害がある操作者が皮膚感覚などの体性感覚を伝達することはできなかった。このように従来の情報端末は視覚や聴覚に障害がある人たちの双方向のコミュニケーションを実現できないという第3の課題があった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、前記課題を解決するものであって、体性感覚を十分に再現し、且つ体性感覚を利用した双方向のコミュニケーションを提供する体性感覚発生装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る体性感覚発生装置は、ユーザが接触する接触部と、ユーザからの圧力を検出する圧力検出部と、接触部に連結された変形可能な変形部と、圧力検出部と変形部に接続された制御部とを備え、制御部は、圧力検出部から取得した第1の情報を外部に送信し、外部から受信した第2の情報に基づいて変形部を変形させることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る体性感覚発生装置では、さらに、第1の情報と第2の情報が同じ変形部に関係するものであるとき、制御部は、第2の情報とは異なる第3の情報に基づいて同じ変形部を変形させることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る体性感覚発生装置では、さらに、制御部は、第1の情報と第2の情報に基づいて第3の情報を生成すること
を特徴とする。
【0012】
本発明に係る体性感覚発生装置では、さらに、制御部は、複数の変形部のうち一部の変形部を選択し、選択された変形部を変形させることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る体性感覚発生装置では、さらに、制御部は、第2の情報に基づいて、変形部に追従または非追従の変形を行わせることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る体性感覚発生装置では、さらに、変形部は、電気式アクチュエータ、化学式アクチュエータ、ピエゾアクチュエータ、ゲルアクチュエータ、またはバイオメタルのいずれかであることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る体性感覚を伝達するコミュニケーションシステムは、ネットワークによって接続された複数の請求項1から6のいずれかに記載の体性感覚発生装置を含み、複数の体性感覚発生装置が通信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、皮膚感覚に起因する様々な感性や表現力を再現することができるので、これらの感覚を他人に十分に伝達することができる。また、本発明によれば、受け取った体性感覚に対して、体性感覚によって応答することができるので、体性感覚を利用した双方向の新しいコミュニケーションを提供できる。また、本発明によれば、視覚などに障害がある操作者であっても、皮膚感覚などの体性感覚を伝達することができ、双方向のコミュニケーションを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施の形態である体性感覚発生装置を利用した通信状態を示す模式図である。
図2】本発明の第1の実施の形態である体性感覚発生装置の外観を示す斜視図である。
図3】本発明の第1の実施の形態である体性感覚発生装置の構成を示す斜視図である。
図4】本発明の第1の実施の形態である体性感覚発生装置の構成を示す断面図である。
図5】変形部とコアとの連結部分を示す図である。
図6】変形部の構成を示す斜視図である。
図7】制御部の構成を示すブロック図である。
図8】本発明の第1の実施の形態である体性感覚発生装置の送信プロセスを示すフローチャートである。
図9】本発明の第1の実施の形態である体性感覚発生装置の受信プロセスを示すフローチャートである。
図10】2個の体性感覚発生装置の時系列の変形を模式的に示した図である。
図11】制御部が体性感覚の表現力を高めるために行う信号処理のプロセスを示すフローチャートである。
図12】制御部が行う信号処理の内容を示すテーブルである。
図13】双方向のコミュニケーションを行う処理を示すフローチャートである。
図14】本発明に係る体性感覚発生装置の第2の実施の形態を示す断面図である。
図15】本発明に係る体性感覚発生装置の第3の実施の形態を示す断面図である。
図16】1個の体性感覚発生装置と、多数の体性感覚発生装置の接続を示す模式図である。
図17】1個の体性感覚発生装置と、多数の体性感覚発生装置の接続を確立するときのプロセスを示すフローチャートである。
図18】本発明に係る体性感覚発生装置の第4の実施の形態を示す断面図である。
図19】第4の実施の形態である体性感覚発生装置のリング部を閉じた状態を示す断面図である。
図20】第4の実施の形態である体性感覚発生装置の変形部が変形した状態を示す断面図である。
図21】本発明に係る体性感覚発生装置の第5の実施の形態を示す斜視図である。
図22】本発明に係る体性感覚発生装置の第5の実施の形態をマウスに装着した例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態である体性感覚発生装置を利用したコミュニケーションシステムを示す模式図である。本発明に係るローカルの体性感覚発生装置100Lはコミュニケーションの一方であるローカルユーザ101Lの手の中に収まる程度の大きさを有しており、ローカルユーザ101Lの手の内側の皮膚に接触している。ローカルの体性感覚発生装置100Lはブルートゥース(登録商標)による通信手段を用いてローカルユーザ101Lが所有する携帯情報端末103L、例えばスマートフォン、タブレット型端末、携帯電話、またはパーソナルコンピュータ、に接続されている。
【0019】
ローカルユーザ101Lの携帯情報端末103Lは、ネットワーク102、例えばインターネット、携帯電話網、または有線ネットワーク、に接続されている。コミュニケーションの他方であるリモートユーザ101Rも、同一の構成のリモートの体性感覚発生装置100Rを持っており、リモートの体性感覚発生装置100Rはリモートユーザ101Rの手の内側の皮膚に接触している。リモートの体性感覚発生装置100Rも携帯情報端末103Rを介して、ネットワーク102に接続されている。このコミュニケーションシステムでは、ネットワークによって接続された、リモートの体性感覚発生装置100Rとローカルの体性感覚発生装置100Lとがネットワーク102を介して相互に通信する。
【0020】
なお、本実施の形態では、ブルートゥース(登録商標)と携帯情報端末を用いてネットワークに接続しているが、ネットワークへの接続方法はこれに限られない。例えば、体性感覚発生装置をWIFIなどの無線通信を用いてネットワーク102に接続してもよいし、SIM、すなわち携帯電話網への加入者識別手段を用いてネットワーク102に接続してもよい。
【0021】
図2は、本発明に係る体性感覚発生装置100の外観を示す斜視図である。体性感覚発生装置100は、2つの頂部111を有する、球体を横長に変形させた形状を有しており、ユーザにとって握りやすい。ユーザは、2つの頂部111に指を接触させることによって、体性感覚発生装置100の向きと、指が接触している表面上の位置を把握することができる。なお、本発明に係る体性感覚発生装置100はこの形状に限定されず、球体、直方体、立方体、楕円体、平板状体など、いずれの形状であってもよい。また、本発明に係る体性感覚発生装置100の大きさもユーザの手の中に収まる程度に限られず、それよりも大きくまたは小さくしてもよい。
【0022】
図3は、本発明に係る体性感覚発生装置100の構成を示す、一部断面を表示した斜視図である。図4は、本発明に係る体性感覚発生装置100の構成を示す断面図である。
【0023】
体性感覚発生装置100は、接触部112と、外部接続端子113と、コア114と、変形部115と、を備えている。接触部112は、コア114と変形部115を収容し、球体を横長に変形させた形状を形成している。接触部112は、一定の弾性を有する材料で形成され、ユーザが指で押圧すると、弾性変形を生じる。接触部112は略密閉されており、ユーザが接触部112を握ると、内部の空気圧によって、一定の反力が得られる。なお、接触部112の内部には、空気に代えて、流体、液体、粉流体を封入してもよい。外部接続端子113は、例えば、USBなどの、外部パーソナルコンピュータや外部電源に接続するための端子である。外部接続端子113は、接触部112にコネクタを露出しており、その接続穴から配線(図示せず)によってコア114に接続されている。
【0024】
コア114は、例えば球状体であり、その内部に後述する制御部120と、電源部122と、を収容している。変形部115は変形可能な、または伸縮可能な多数の棒状体、軸状体、またはロッド状体のアクチュエータである。変形部115の一端はコア114の表面に連結され、他の一端は接触部112の内面に連結されている。変形部115は、コア114の外面の360度の方向に対して放射状に突出し、接触部112の全内面に連結されている。多数の変形部115はそれぞれ識別番号が割り当てられている。一部の変形部115に圧力が加えられたとき、後述する制御部120は、その変形部115を特定することができ、また外部からの信号に基づいて一部の変形部115だけを変形させることができる。なお、本実施の形態では、体性感覚発生装置100は1つのコア114を有しているが、接触部112の形状を複雑にする場合はその形状に応じて複数のコア114を設けてもよい。
【0025】
図5は、変形部115とコア114との連結部分を示す図である。変形部115の一端には球体の連結体115Aが形成されており、その連結体115Aがコア114の表面に設けられた球状の連結穴114Aに可動自在にはめ込まれている。ユーザが与える外部からの圧力に応じて、連結体115Aが連結穴114Aの中で自由に回転することによって、変形部115の向きが一定の範囲で自由に移動することができ、接触部112の変形を促進させる。
【0026】
図6は、変形部115の構成を示す斜視図である。変形部115は、電磁気現象を利用して電気的なパワーを機械的なパワーに変換する電磁アクチュエータである。変形部115は、例えば前後にスライド可能な、直径異なる3つの筒状のスリーブ118を入れ子状にした組み合わせからなり、電圧が付与されると、それによって生じる電磁気現象によって伸縮する。変形部115のスリーブ118の内側には反発力を生じさせるスプリング117が収容されている。変形部115は、スプリング117にかかる負荷を検出し、その負荷を信号として出力することにより、変形部115にかかる圧力の情報を出力することができる。すなわち、変形部115は、圧力検出部116としても機能する。なお、本実施の形態では、変形部115に圧力検出部116の機能を兼用させたが、変形部115とは別に、圧力検出部116を設けてもよい。
【0027】
なお、本実施の形態では、変形部115は電磁アクチュエータであるが、これに限られない。変形部115は、電気式アクチュエータ、化学式アクチュエータ、ピエゾアクチュエータ、ゲルアクチュエータ、人工筋肉、またはバイオメタルのいずれであってもよい。すなわち、変形部115は電圧またはその他トリガーを付与することによって変形するいかなるデバイスも含まれる。
【0028】
図7は、コア114の内部の構成、特に、制御部120の構成を示すブロック図である。制御部120は、電気的に接続された、ブルートゥース(登録商標)通信部121と、電源部122と、変形部115と、圧力検出部116と、バイブレータ117と、他の出力デバイス118と、を備えている。ブルートゥース(登録商標)通信部121はデジタル機器の近距離間データ通信に使う無線通信規格を用いて携帯通信端末103(103R、103L)とデータのやりとりを行う。電源部122は、例えばリチウムイオン電池であり、外部接続端子113を通じて外部から電力を受け取り、これを蓄える。電源部122は、蓄えた電力を制御部120に供給する。バイブレータ117は、制御部120の制御にしたがって、必要に応じて振動を発生させる。他の出力デバイス118とは、例えば、スピーカ、LEDなどであり、体性感覚以外の感覚、例えば、音、光、色を出力するデバイスである。なお、第1の実施の形態では変形部115が圧力検出部116を兼ねているが、それぞれ異なる機能を有するため、本図では別々の構成要素として記載している。
【0029】
制御部120は、送信部131と、受信部132と、解析部133と、作動部134と、出力部135と、入力部136と、を備えている。送信部131はブルートゥース(登録商標)通信部121に接続され、制御部120からの信号をブルートゥース(登録商標)通信部121に送る。ブルートゥース(登録商標)通信部121は送信部131からの信号を携帯情報端末103に送る。送信部131を通じて信号として送信される情報は、ローカルの体性感覚発生装置100Lの変形部115に与えられた圧力、その圧力が加えられた変形部115の識別番号などを含む情報、例えば、第1の情報である。第1の情報は、ブルートゥース(登録商標)通信部121を通じて、リモートの体性感覚発生装置100Rに送られる。
【0030】
ブルートゥース(登録商標)通信部121は携帯情報端末103からの信号を受信して、それを受信部132に送る。受信部132を通じて受信される情報は、遠隔にいる他の体性感覚発生装置100から受信した信号である。その信号に含まれる情報は、他の体性感覚発生装置100の変形部115に与えられた圧力、その圧力が加えられた変形部115の識別番号などを含む情報、例えば第2の情報である。
【0031】
解析部133は、受信部132が受信した他の体性感覚発生装置100からの第2の情報を解析する。また、解析部133は、入力部136を介して提供される圧力検出部116からの情報を解析し、第1の情報に変換し、これを送信部131に送る。解析部133が処理する第1の情報および第2の情報は、ユーザが指で変形部115に与えた圧力に関する情報と、その圧力が加えられた変形部115の識別番号に加え、変形部115の変形量、体性感覚発生装置100の使用状況を示す情報、その他必要な情報を含んでいてもよい。体性感覚発生装置100の使用状況とは、例えば、その体性感覚発生装置100が放置されているか否か、その体性感覚発生装置100が移動しているか否か、などの状況をいう。作動部134は、出力部135を介して、変形部115と、バイブレータ117と、他の出力デバイス118と、に接続され、解析部133からの第2の情報に基づいてこれらを動作させる。
【0032】
続いて、本発明に係る体性感覚発生装置100の動作について説明する。前提として、ローカルの体性感覚発生装置100Lとリモートの体性感覚発生装置100Rが事前にペアリングされ、それぞれ遠隔地にいる異なるローカルユーザ101Lとリモートユーザ101Rが手の中に保持しているものとする。
【0033】
図8は、ローカルの体性感覚発生装置100Lの送信プロセス、すなわち制御部120が行う圧力情報を送信するときのプロセスを示すフローチャートである。ステップ31において、ユーザがこの体性感覚発生装置100を握ったとき、解析部133は、それぞれの圧力検出部116からその圧力に関する情報が入力部136を介して受け取る。ステップ32において、解析部133はその圧力に関する情報を解析し、必要な情報を付加して、第1の情報を生成する。具体的には、体性感覚発生装置100の内部の多数の変形部115のうち、どの変形部115がどれくらいの圧力で押圧されているかを示す情報を生成する。具体的には、多数の変形部115にそれぞれ一意の識別番号1,2,3・・・が割り振られており、例えば「識別番号1の変形部115が1Nの圧力で押圧されている」「識別番号2の変形部115が1.2Nの圧力で押圧されている」という第1の情報を生成する。ステップ33において、送信部131が第1の情報を、ブルートゥース(登録商標)通信部121を介して信号として外部に送信する。
【0034】
図9は、ローカルの体性感覚発生装置100Lの受信プロセス、すなわち制御部120が行う圧力情報を受信したときのプロセスを示すフローチャートである。ステップ141において、受信部132は外部からの信号を受信する。ステップ142において、解析部133が第2の情報を解析する。具体的には、ペアリングされた遠隔地にあるリモートの体性感覚発生装置100Rの内部の多数の変形部115のうち、どの変形部115がどれくらいの圧力で押圧されているかを示す変形情報を取り出す。具体的には、多数の変形部115にそれぞれ一意の識別番号1,2,3・・・が割り振られており、例えば「識別番号1の変形部115が1Nの圧力で押圧されている」「識別番号2の変形部115が1.2Nの圧力で押圧されている」という第2の情報を抽出する。また、解析部133は、状況に応じて、後述する信号変形処理を行う。ステップ143において、解析部133は、第2の情報に基づいた動作信号を作動部134に送る。
【0035】
ステップ144において、作動部134は、動作信号に基づいて、変形部115と、バイブレータ117と、その他の出力デバイス118を動作させる。具体的には、例えばペアリングされたリモートの体性感覚発生装置100Rの変形部115の識別番号1が1Nの圧力で押された場合、この圧力によって生じる変形量をローカルの体性感覚発生装置100Lの変形部115の識別番号1に生じさせる。同様に、他リモートの体性感覚発生装置100Rの変形部115の識別番号2が1.2Nの圧力で押された場合、この圧力によって生じる変形量をローカルの体性感覚発生装置100Lの変形部115の識別番号2に生じさせる。
【0036】
図10は、2台の体性感覚発生装置100の時系列の変形を模式的に示した図である。ペアリングされたローカルの体性感覚発生装置100Lとリモートの体性感覚発生装置100Rの間で、一方が他方に追従または同期して変形する。同図において、左から右に向かって時間が経過するものとし、時間の経過にともない、ローカルの体性感覚発生装置100Lがリモートの体性感覚発生装置100Rの変形に追従して変形していくことを示している。なお、ローカルの体性感覚発生装置100Lの変形がリモートの体性感覚発生装置100Rの変形より少し遅れているのは、ネットワークでの信号の遅延、制御部120の処理時間による遅延、変形部115の物理的な動作の遅延などがあるためである。しかし、ネットワークの高速化と各機器の性能の向上によって、遅延時間は限りなく少なくすることが可能である。
【0037】
リモートの体性感覚発生装置100Rがリモートユーザ101Rの手で順次変形させられると、ローカルの体性感覚発生装置100Lも追従または同期して、同じように変形する。例えば、リモートユーザ101Rがリモートの体性感覚発生装置100Rをリズミカルに変形させると、ローカルの体性感覚発生装置100Lも同様にリズミカルに変形する。このように、本発明に係る体性感覚発生装置100によれば、リモートの体性感覚発生装置100Rの自由な変形がローカルの体性感覚発生装置100Lに伝達され、その変形が再現されるので、体性感覚を十分に伝達することができる。また、ローカルの体性感覚発生装置100Lがローカルユーザ101Lによって握り返されたとき、その変形に関する情報がリモートの体性感覚発生装置100Rに伝達され、その変形がリモートの体性感覚発生装置100Rにおいても再現されることになる。すなわち、リモートユーザ101Rが握り、続いてローカルユーザ101Lが握り返すことによって、まるで握手をしているような、体性感覚を利用した双方向のコミュニケーションが可能になる。
【0038】
本発明に係る体性感覚発生装置100では、さらに、体性感覚を利用した双方向のコミュニケーションの表現力を高めるための手段を有している。
【0039】
図11は、制御部120が体性感覚の表現力を高めるために行う信号処理のプロセスを示すフローチャートである。ステップ151において、制御部120は、体性感覚発生装置100の状態を判別する。具体的には、体性感覚発生装置100が放置されているのか、体性感覚発生装置100がユーザに握られているのか、体性感覚発生装置100が移動中なのか、などを判別する。ステップ152において、制御部120は判別された状態に応じて、予め用意されたデータベースに問い合わせる。具体的には、データベースは、体性感覚発生装置100の使用状態に応じて行うべき信号処理のテーブルを保持している。
【0040】
ステップ153において、制御部120は、データベースから取得したテーブルに従い、第2の情報に対して、追従または非追従の処理を行う。追従の処理とは、リモートの体性感覚発生装置100Rの変形をローカルの体性感覚発生装置100Lに発生させることをいう。非追従の処理とは、リモートの体性感覚発生装置100Rの変形と異なる変形をローカルの体性感覚発生装置100Lに発生させることをいう。非追従の処理には、ロック、増幅、反転、減衰、重畳、または置換、もしくはこれらのコンビネーションの処理が含まれる。ステップ154において、制御部120は、処理を施した動作信号を変形部115などに出力する。
【0041】
図12は、制御部120が行う信号処理の内容を示すテーブルである。追従の処理、すなわち追従モードは、リモートの体性感覚発生装置100Rの変形を、可能な限り、同じ動作を同じタイミングで、この体性感覚発生装置100に再現させるモードをいう。
【0042】
非追従の処理には、ロックモード、増幅モード、反転モード、減衰モード、重畳モード、置換モード、コンビネーションモードが含まれる。 ロックモードは、リモートの体性感覚発生装置100Rが変形しているにもかかわらず、ローカルの体性感覚発生装置100Lの変形はロックさせる。例えば、リモートユーザ100Rがリモートの体性感覚発生装置100Rを一定の力で押したとき、ローカルの体性感覚発生装置100Lの変形が一定の形状で維持される、すなわち、その変形がロックされる。ロックモードでは、ローカルの体性感覚発生装置100Lを通じてリモートユーザ101Rが体性感覚を送信していることが、ローカルの体性感覚発生装置100Lの変形がロックされることによって、特別な感性がローカルユーザ101Lに伝達される。
【0043】
増幅モードは、リモートの体性感覚発生装置100Rの変形を、増幅させてローカルの体性感覚発生装置100Lに再現させる。例えば、リモートユーザ100Rがリモートの体性感覚発生装置100Rを1Nの力で押したとき、ローカルの体性感覚発生装置100Lでは1.5Nに相当する変形を生じさせる。増幅モードでは、ローカルの体性感覚発生装置100Lでは、リモートユーザ101Rが伝えたい体性感覚が強調されて、ローカルユーザ101Lに伝達される。
【0044】
反転モードは、リモートの体性感覚発生装置100Rの変形に対して反転させた変形を、ローカルの体性感覚発生装置100Lに再現させる。例えば、リモートユーザ101Rがリモートの体性感覚発生装置100Rを押したとき、ローカルの体性感覚発生装置100Lでは膨らませる変形を生じさせる。反転モードでは、リモートユーザ101Rが握ると、リモートの体性感覚発生装置100Rは凹むことになるが、ローカルの体性感覚発生装置100Lでは膨らむことになり、結果として、ローカルユーザ101Lがリモートユーザ101Rの手の動きを明確に感じることができる。
【0045】
減衰モードは、リモートの体性感覚発生装置100Rの変形を、減衰させてローカルの体性感覚発生装置100Lに再現させる。例えば、リモートユーザ100Rがリモートの体性感覚発生装置100Rを1Nの力で押したとき、ローカルの体性感覚発生装置100Lでは0.5Nに相当する変形を生じさせる。減衰モードでは、ローカルの体性感覚発生装置100Lでは、リモートユーザ101Rが伝えたい体性感覚が控えめにローカルユーザ101Lに伝達される。
【0046】
重畳モードは、リモートの体性感覚発生装置100Rの変形に、別の変形を重ね合わせた変形をローカルの体性感覚発生装置100Lに再現させる。例えば、リモートユーザ101Rがリモートの体性感覚発生装置100Rを強く繰り返し押したとき、ローカルの体性感覚発生装置100Lでは同等の変形が生じるとともに、小刻みに伸縮を繰り返す。重畳モードでは、ローカルの体性感覚発生装置100Lは、膨らみ凹む変形に加え、さらに細やかな表現力を付加する。
【0047】
置換モードは、リモートの体性感覚発生装置100Rの変形に代えて、別の変形をローカルの体性感覚発生装置100Lに再現させる。例えば、リモートユーザ101Rがリモートの体性感覚発生装置100Rを強く押したとき、ローカルの体性感覚発生装置100Lでは小刻みに伸縮を繰り返す。置換モードでは、リモートユーザ101Rが特別に想起させたい感性があるときに、ローカルユーザ101Lに対して思い切った表現を伝達することができる。
【0048】
コンビネーションモードは、上述した同期モード、増幅モード、反転モード、減衰モード、重畳モードおよび置換モードを、2つ以上組み合わせ、組み合わせたモードによる変形を同時に発生させる、または時間差を設けて変形を発生させる。コンビネーションモードによって、リモートユーザ101Rが伝達したい感性をより豊かな表現力でローカルユーザ101Lに伝達することが可能になる。
【0049】
なお、本実施の形態ではモードの切り替えは予めデータベースに登録されているものとしたが、ユーザが使用した履歴を記録し、人工知能によって既存のデータベースを更新または最適化していくようにしてもよい。
【0050】
図13は、体性感覚を利用した双方向のコミュニケーションを行う処理を示すフローチャートである。デフォルトの設定では、多数の変形部115がそれぞれ片方向通信モードに設定されている。リモートユーザ101Rが多数の変形部115のうち、一部の変形部115、例えば、識別番号1の変形部115を指で押圧したとき、それによって生成された第1の情報が他の体性感覚発生装置100に送信される。このとき、ローカルの体性感覚発生装置100Lの識別番号1の変形部115に対して、ローカルユーザ101Lが何も操作していない状態では、ローカルの体性感覚発生装置100Lは、識別番号1の変形部115に関して第1の情報を送信しないか、または何も操作が行われていないという情報を含む第1の情報を送信する。
【0051】
ステップ151において、ローカルの体性感覚発生装置100Lにおいて、制御部120は現在変形中の変形部115に圧力が加えられたかどうかを判定する。現在変形中の変形部115に圧力が加えられていないときは、ステップ152において、その変形部115は片方向通信モードのままとなる。一方、現在変形中の変形部115に圧力が加えられているとき、すなわち、リモートユーザ101Rとローカルユーザ101Lが同じ識別番号1の変形部115を押し合っている状態となったとき、ステップ153において、押し合いの対象となっている変形部115は双方向通信モードに移行する。
【0052】
双方向通信モードでは、例えば、識別番号1の変形部115に関して、ローカルの体性感覚発生装置100Lは第1の情報を送信し、且つリモートの体性感覚発生装置100Rが第2の情報を送信して、二つの情報が衝突している状態となっている。すなわち、第1の情報と第2の情報が同一の変形部に関係するものである状態となっている。仮に、双方向通信モードに移行しないとしたならば、ローカルの体性感覚発生装置100Lにおいて、識別番号1の変形部115が第1の情報と第2の情報のどちらを選択すべきかを判別できず、双方向のコミュニケーションができない。
【0053】
そこで、ステップ153で双方向通信モードに移行した後、すなわち、リモートユーザ101Rとローカルユーザ101Lが同じ変形部115を押し合っているとき、言い換えれば第1の情報と第2の情報が同じ変形部115に関係するものであるとき、ステップ154ではローカルの体性感覚発生装置100Lの制御部120が第3の情報を生成する。このとき、第3の情報は、第1の情報と第2の情報は異なる、別の情報である。具体的には、第3の情報は、特定の変形部115に関して第1の情報と第2の情報が発生しているときに、この変形部115をどのように動作させるかを示す情報である。ステップ155において、作動部134は第3の情報に基づいて、変形部115を動作させる。例えば、互いに押し合っていることに、ローカルユーザ101Lが気づくように、識別番号1の変形部115が凹むのではなく、変形がロックされる。すなわち、識別番号1の変形部115がローカルユーザ101Lの指の押圧に対して変形を止める。この結果、ローカルユーザ101Lが互いに押し合っていることに気づくことができる。
【0054】
ローカルユーザ101Lがさらに強い力で押すと、リモートユーザ101Rのリモートの体性感覚発生装置100Rで、識別番号1の変形部115の動作も同様にロックし、その変形を止める。このように、変形部115がロックする動作をすることによって、互いが押し合っていることをローカルユーザ101Lとリモートユーザ101Rが指先を通じて感じることができ、より高度なコミュニケーションをとることができる。
【0055】
なお、本実施の形態では、ローカルユーザ101Lとリモートユーザ101Rが同じ変形部115を押し合っているとき、変形部の変形をロックしたが、これに限られず、変形部115を増幅または反転して変形させてもよいし、伸縮を繰り返してもよい。
【0056】
変形例として、双方向通信モードにおける第3の情報は、予め用意された情報であってもよいし、第1の情報と第2の情報に基づいて生成してもよい。第3の情報を予め用意された情報である場合は、例えば、一律に、変形部115を所定の力でロックするようにする。第3の情報を第1の情報と第2の情報から生成する場合は、例えば、リモートユーザ101Rが1Nの圧力で押し、ローカルユーザ101Lが0.5Nの圧力で押し返したとき、それぞれの圧力に基づいて、リモートユーザ101Rに対して変形部115は1.2Nの圧力で押し返し、ローカルユーザ101Lに対しては0.7Nの圧力で押し返すようにしてもよい。すなわち、0.2Nの圧力を実際の圧力に対して付加することにより、ローカルユーザ101Lは、リモートユーザ101Rが押し返していることを指先の皮膚を通じて感じることができる。
【0057】
変形例として、双方向通信モードにおける第3の情報は、リモートの体性感覚発生装置100Rが送信した第2の情報と追従したものであってもよい。すなわち、リモートユーザ101Rが生じさせた体性感覚発生装置100の変形を、そっくりそのままローカルユーザ101Lの体性感覚発生装置100の変形に一定時間、反映させる。これによって、リモートユーザ101Rが作りたかった形状を、ローカルユーザ101Lはそのままの形で把握することができる。一定期間が経過した後、ローカルユーザ101Lが押し返したときに、この変形量を第1の情報としてリモートの体性感覚発生装置100Rに送信する。今度はローカルユーザ101Lが生じさせた体性感覚発生装置100の変形を、そっくりそのままリモートの体性感覚発生装置100Rの変形に一定時間、反映させる。このように、一定期間ごとに、一方の変形が他方に反映させる追従的な変形を繰り返してもよい。
【0058】
変形例として、リモートユーザ101Rとローカルユーザ101Lが同じ変形部115を押し合っているとき、制御部120は第3の情報に基づいてバイブレータ117を所定の周波数で振動させてもよいし、第3の情報に基づいて他の出力デバイス118、例えば、スピーカ、バイブレータ、LEDを作動させてもよい。これによって、ローカルユーザ101Lはリモートユーザ101Rが押し返していることをさらに明確に感じることができる。
【0059】
図14は、本発明に係る体性感覚発生装置の第2の実施の形態を示す断面図である。第2の実施の形態である体性感覚発生装置150は、接触部112と、コア114と、変形部115と、圧力検出フィルム161と、を備えている。第1の実施の形態では、変形部115が圧力検出部を兼ねていたが、第3の実施の形態では、圧力検出フィルム161が、接触部112を覆うように設けられている。圧力検出フィルム161はユーザが指で押圧すると、その圧力を検出する。圧力検出フィルム161によって検出された圧力の情報が制御部120に伝達される。この第2の実施の形態の体性感覚発生装置100も、第1の実施の形態の体性感覚発生装置100と同様に動作する。
【0060】
図15は、本発明に係る体性感覚発生装置の第3の実施の形態を示す断面図である。第3の実施の形態である体性感覚発生装置160は、接触部112と、コア114と、変形部である人工筋肉層162と、圧力検出フィルム161と、弾力材163と、を備えている。第1の実施の形態では、変形部が圧力検出部を兼ねていたが、第3の実施の形態では、圧力検出フィルム161が、接触部112を覆うように設けられている。圧力検出フィルム161はユーザが指で押圧すると、その圧力を検出する。人工筋肉層162はゲルアクチュエータを利用した人工筋肉からなり、コア114を覆っている。コア114から特定の部位に電圧が供給されると、その部位の人工筋肉が電圧値に応じて伸縮する。人工筋肉層162の外側であって、接触部112の内側には弾力層163が設けられている。弾力層163は柔軟な材質で形成され、ユーザが指で圧力検出フィルム161を押圧すると、その圧力に応じて変形するとともに、圧力を変形部115に伝達する。この第3の実施の形態の体性感覚発生装置100も、第1の実施の形態の体性感覚発生装置100と同様に動作する。
【0061】
図16は、1個の体性感覚発生装置100と、多数の体性感覚発生装置100の接続を示す模式図である。ローカルユーザ101Lの手の中に体性感覚発生装置100が保持されており、多数人のリモートユーザ101Rの手の中に体性感覚発生装置100が保持されている。ネットワーク102を通じて、ローカルの体性感覚発生装置100Lと、多数個のリモートの体性感覚発生装置100Rとの間の接続が確立されている。例えば、講演会で、講師の持っている体性感覚発生装置100と、聴衆の持っている体性感覚発生装置100と、が接続されている。
【0062】
講演者であるローカルユーザ101Lが講演を行い、講演を肯定的に受け取った聴衆、すなわちリモートユーザ101Rが自らの手の中の体性感覚発生装置100を握る。ローカルの体性感覚発生装置100Lは、リモートの体性感覚発生装置100Rからの情報を受信し、ローカルの体性感覚発生装置100Lの一部の変形部115を突出させる。なお、ローカルの体性感覚発生装置100Lの動作は、突出に限らず、凹ませたり、振動させたりしてもよい。また、ローカルの体性感覚発生装置100Lの変形部115が多数のリモートの体性感覚発生装置100Rに割り当てられるので、リモートの体性感覚発生装置100Rの1個に対応する変形部115の数または面積が少なくなる。このため、ローカルの体性感覚発生装置100Lの制御部120は、リモートから送信される複数の第2の情報に対して、第1の実施の形態における追従または非追従の処理を行う。したがって、変形部115の数または面積が少なくなっても、例えば、変形量を増幅することによって、豊かな表現力を付与することができる。
【0063】
図17は、1個の体性感覚発生装置100と、多数の体性感覚発生装置100の接続を確立するときのプロセスを示すフローチャートである。ステップ171において、制御部120は、複数のリモートの体性感覚発生装置100Rからの第1の情報を受信する。ステップ172において、制御部120は、複数のリモートの体性感覚発生装置100Rごとに、複数設けられた変形部115を選択する。例えば、第1のリモートユーザ101Rに対して識別番号1から20の変形部115を割り当て、第2のリモートユーザ101Rに対して識別番号21から40の変形部115を割り当てる。ステップ173において、第1のリモートユーザ101Rが体性感覚発生装置100を押したとき、識別番号1から20の変形部115が変形する。同様に、第2のリモートユーザ101Rが体性感覚発生装置100を押したとき、識別番号21から40の変形部115が変形する。したがって、ローカルユーザ101Lは複数のリモートユーザ101Rとのコミュニケーションを取ることができる。
【0064】
なお、ローカルの体性感覚発生装置100Lの制御部120は、リモートから送信される複数の第2の情報に対して、第2の情報において指定された変形部115が双方向通信モードに移行したとき、第3の情報に基づいて変形部115を変形させる。第3の情報は、第1の情報と第2の情報は異なる、別の情報である。双方向通信モードにおける第3の情報は、予め用意された情報であってもよいし、第1の情報と第2の情報から生成してもよい。例えば、かなり多数のリモートの体性感覚発生装置100Rから第2の情報を受信した場合、制御部120は割り当てルールを変更する。例えば、10人のリモートの体性感覚発生装置100Rに対してローカルの体性感覚発生装置100Lにおいて50個の変形部115を割り当てる。続いて、制御部120は、一定間隔で一定の規則性をもって50個の変形部115を激しく変形させる。これによって、50個の変形部115がまとめて激しく変形することによって、ローカルユーザ101Lは50人からのフィードバック、例えば拍手をする気持ち、をまとめて感じ取ることができる。
【0065】
変形例として、知り合いであるAとBを体性感覚発生装置100に登録しておき、Aがリモートユーザ101Rとしてリモートの体性感覚発生装置100Rを押圧したとき、ローカルの体性感覚発生装置100Lの変形部115は1回振動してから変形を開始する。Bがリモートユーザ101Rとしてリモートの体性感覚発生装置100Rを押圧したとき、ローカルの体性感覚発生装置100Lの変形部115は2回振動してから変形を開始する。このように、変形部115の変形パターンを、相手に応じて変更することによって、ローカルユーザ101Lは誰から着信したのかを知ることができる。
【0066】
変形例として、図17は1個対多数の体性感覚発生装置100の接続について説明したが、1対1の体性感覚発生装置100の接続を確立する場合において、変形部115の一部のみを選択するようにしてもよい。この場合、後から他のリモートの体性感覚発生装置100Rが接続してきた場合に空いている変形部115を後から選択することができる。また、特定の個人を識別すると、複数の変形部115のうち、予め決められた変形部115を自動的に選択するにようにしてもよい。この場合、例えば親しい友人が接続を確立したとき、特定の変形部115が動作することによって、ローカルユーザ101Lは誰が接続してきたかがすぐにわかる。
【0067】
変形例として、1個対多数の体性感覚発生装置100の接続の場合、ローカルの体性感覚発生装置100Lで限定接続モードとオープン接続モードを切り替えられるようにしてもよい。限定接続モードは、ローカルユーザ101Lが許可したリモートユーザ101Rのみとの接続を確立するモードである。オープン接続モードは、ローカルユーザ101Lが許可するかしないかに関係なく、一定の距離の範囲内にいるリモートユーザ101R全員と自動的に接続するモードである。オープン接続モードでは、例えば、学校の教室にいる教師と生徒が、特に教師が許可することなく、教師の体性感覚発生装置100が生徒全員の体性感覚発生装置100と自動的に接続される。これによって、接続の許可のプロセスを不要にして、簡単に不特定多数のユーザと接続することができる。
【0068】
変形例として、例えばオンライン会議などのアプリと連携し、ローカルユーザ101Lとリモートユーザ101Rがオンライン会議の接続を確立したとき、そのアプリが連動して、2つの体性感覚発生装置100を接続するようにしてもよい。また、SNSなどのコミュニケーションアプリで、ローカルユーザ101Lがメッセージを入力する代わりに、体性感覚発生装置100を握りしめることで、そこから想起された体性感覚をメッセージとして、例えば「こんにちは」、をSNSアプリで送信するようにしてもよい。また、SNSなどのコミュニケーションアプリで、ローカルユーザ101Lが「いいね」を入力する代わりに、体性感覚発生装置100を握りしめることで、「いいね」ボタンが押されるようにしてもよい。
【0069】
変形例として、体性感覚発生装置100を親と子供がそれぞれ持ち、互いに体性感覚発生装置100を握ることによって、手を握っているような安心感を生じさせることができる。子供が親と離れた場合、親が持っている体性感覚発生装置100が通常とは異なる非追従の動作を行い、親は迷子が発生しそうな状況を早期に知ることができる。
【0070】
変形例として、オンラインライブ、すなわち、アーティストまたは演奏家がインターネットを通じて生演奏を配信するライブにおいて、アーティスト自身が体性感覚発生装置100を身につけ、またはマイクや楽器に装着し、一方、観客も体性感覚発生装置100を持つことによって、アーティストが観客の反応を体感することができ、また、観客もアーティストの動きを体感することができる。このように、観客が遠隔地にいるようなオンラインライブ、すなわち無観客ライブにおいても、アーティストと観客の双方向の反応をリアルタイムで共有することができる。
【0071】
図18は、本発明に係る体性感覚発生装置の第4の実施の形態を示す断面図である。第4の実施の形態である体性感覚発生装置180は、リング部181と、接触部112と、変形部であるゲルアクチュエータ層182と、圧力検出部である圧力検出層183と、を備えている。第1の実施の形態では、体性感覚発生装置100は球体を横長に変形させた形状をしていたが、第4の実施の形態では、指輪の形状となっている。リング部181は、ユーザの指を通すための着脱自在なリングである。接触部112は弾性部材で形成され、リング部181の外側面の一部に取り付けられ、ゲルアクチュエータ層182を覆っている。ゲルアクチュエータ層182は人工筋肉などのゲルアクチュエータを断面波状に形成した層である。図示しないコア114からゲルアクチュエータ層182の特定の部位に電圧が供給されると、特定の部位の人工筋肉が電圧値に応じて伸縮する。圧力検出層183はリング部181の内側面であって、変形部115と反対の位置に設けられている。ユーザが指を動かすと、圧力検出層183がその動きを検出し、圧力を図示しない制御部に伝達する。
【0072】
図19は、第4の実施の形態である体性感覚発生装置180のリング部181を閉じた状態を示す断面図である。この状態で、圧力検出層183が指の皮膚の表面に接触する。図20は、第4の実施の形態である体性感覚発生装置100の変形部115が変形した状態を示す断面図である。この状態では、体性感覚発生装置100の圧力検出層183が指の動きを検出し、その情報を第1の情報としてリモートの体性感覚発生装置100Rに送信している。一方、リモートの体性感覚発生装置から送信された第2の情報に基づいて、ゲルアクチュエータ層182の3つの突起が縮んでおり、それにともなって接触部112が凹んでいる。このように、第4の実施の形態の体性感覚発生装置100も、第1の実施の形態の体性感覚発生装置100と同様に、体性感覚を利用した双方向のコミュニケーションを提供することができる。
【0073】
図21は、本発明に係る体性感覚発生装置の第5の実施の形態を示す斜視図である。第1の実施の形態では、体性感覚発生装置100は球体を横長に変形させた形状であったが、第2の実施の形態は平板状である。この体性感覚発生装置190は、接触部193と、基板191と、変形部であるゲルアクチュエータ層182と、圧力検出部である圧力検出層183とから構成されている。基板191は、例えばプラスチックから形成され、制御部120などが埋め込まれ、またゲルアクチュエータ層182を支持するための一定の剛性を有する。ゲルアクチュエータ層182は基板191の上に配置され、複数の矩形のゲルアクチュエータ192の集合体である。圧力検出層183は、ゲルアクチュエータ層182の上に配置され、指で押されると、その圧力に応じた情報を制御部120に伝達する。このように、部品化された体性感覚発生装置100は、既存の電子機器に容易に取り付けることができる。
【0074】
図22は、本発明に係る体性感覚発生装置100の第5の実施の形態をマウス195に装着した例を示す斜視図である。マウス195は、上面部と側面部に、2個の体性感覚発生装置100を装着している。マウス195は、例えばパーソナルコンピュータ、に接続されており、パーソナルコンピュータを通じてネットワーク102、例えばインターネット網に接続されている。コミュニケーションの他方であるリモートユーザ101Rも、同様の体性感覚発生装置100が装着されたマウス195を持っており、このリモートの体性感覚発生装置100Rも同様にパーソナルコンピュータを介して、ネットワーク102に接続されている。
【0075】
リモートユーザ101Rがリモートの体性感覚発生装置100Rを押すと、その変形が第1の情報としてリモートの体性感覚発生装置100Rに送信している。一方、リモートの体性感覚発生装置100Rから送信された第2の情報に基づいて、変形部115が突出している。このように、第5の実施の形態の体性感覚発生装置100も、第1の実施の形態の体性感覚発生装置100と同様に、体性感覚を利用した双方向のコミュニケーションを提供することができる。例えば、リモートユーザ101Rとローカルユーザ101Lがゲームをプレイしているとき、体性感覚を伝え合うことによって、ゲームを通じたコミュニケーションを高めることができる。
【0076】
変形例として、第5の実施の形態である体性感覚発生装置100をスマートフォン、タブレットなどの携帯端末の背面に取り付けてもよい。第5の実施の形態である体性感覚発生装置100は平板状であるため、どのような機器にも容易に取り付けることができる。
【0077】
他の変形例として、本実施の形態では、リモートの体性感覚発生装置100Rとローカルの体性感覚発生装置100Lとがネットワーク102を介して相互に通信していたが、リモートの体性感覚発生装置100Rはバーチャルなもの、すなわち、仮想現実で実現されるものであってもよい。すなわち、リモートユーザ101Rがコンピュータによって提供された仮想現実の中に仮想的に生成されたリモートの体性感覚発生装置100Rを握ることにより、現実世界にあるローカルの体性感覚発生装置100Lと通信を行うものであってもよい。
【0078】
他の変形例として、人間の指が通るくらいの穴が設けられたリング部を、ユーザの手が接触する接触部112の表面に設けてもよい。このリング部はゴム等によって形成され、伸縮性または弾性変形性を有し、使用していないときは縮んで薄くなり、接触部112の表面に薄くなって、重なっている。ユーザが指を通すときは、指でリング部を引っ張り、リング部が伸びて拡張された穴に指を通す。ユーザが指をリング部に通したあとは、リング部が縮んで指に密着する。このように、リング部によって体性感覚発生装置100がユーザの指に装着されるので、ユーザが体性感覚発生装置100Lを落としたり、紛失したりすることを防止することができる。
【0079】
以上述べたように、本発明によれば、皮膚感覚に起因する様々な感性や表現力を再現することができるので、これらの感覚を他人に十分に伝達することができる。また、本発明によれば、受け取った体性感覚に対して、体性感覚によって応答することができるので、体性感覚を利用した双方向の新しいコミュニケーションを提供できる。また、本発明によれば、視覚などに障害がある操作者であっても、皮膚感覚などの体性感覚を伝達することができ、双方向のコミュニケーションを行うことができる。
【符号の説明】
【0080】
100,100R,100L,150,160,180,190 体性感覚発生装置
101R リモートユーザ
101L ローカルユーザ
102 ネットワーク
115 変形部
116 圧力検出部
120 制御部
133 解析部
134 作動部


図1
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図3
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