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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】エネルギーマネージメントシステム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/32 20060101AFI20240522BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20240522BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20240522BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/38 110
H02J7/34 A
H02J7/35 K
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023137736
(22)【出願日】2023-08-28
【審査請求日】2023-09-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510272528
【氏名又は名称】株式会社フィールドロジック
(74)【代理人】
【識別番号】100136847
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼山 嘉成
(72)【発明者】
【氏名】小田切 祥一郎
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-146415(JP,A)
【文献】特開2023-148527(JP,A)
【文献】特開2023-101960(JP,A)
【文献】特開2021-083301(JP,A)
【文献】特開2001-190001(JP,A)
【文献】国際公開第2022/195777(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0058340(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J3/00-5/00
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
H02J13/00
H01M10/42-10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷及び蓄電システムを少なくとも有する構内システムにおける消費電力又は所定期間の消費電力量を検出する検出手段と、前記消費電力又は前記消費電力量の履歴を記憶しておく記憶手段とを備え、前記蓄電システムの充電及び/又は放電を制御するためのエネルギーマネージメントシステムであって、
前記検出手段によって検出された前記消費電力又は前記消費電力量が第1の値を超えた場合に、前記蓄電システムに対して、放電を行うように指令する放電指令信号送出手段と、前記検出手段によって検出された前記消費電力又は前記消費電力量が第2の値を下回った場合に、前記蓄電システムに対して、充電を行うように指令する充電指令信号送出手段との内、少なくともいずれか一方の手段をさらに備え、
前記第1及び/又は前記第2の値を設定するときに、前記第1及び/又は前記第2の値に対応する放電ライン及び/又は充電ラインを表示すると共に、前記記憶手段に記憶されている前記消費電力又は前記消費電力量の履歴を表示し、
前記充電ライン及び/又は前記放電ラインは、グラフィカルユーザーインターフェース上で、ユーザによって、上下可能となっており、
表示されている前記放電ライン及び/又は前記充電ラインの上下方向の位置前記ユーザに決定させることで前記第1及び/又は前記第2の値を決定し、
決定した前記第1及び/又は前記第2の値に基づいて、前記放電指令信号送出手段及び/又は前記充電指令信号送出手段による前記蓄電システムの充電及び/又は放電の制御を開始することを特徴とする、エネルギーマネージメントシステム。
【請求項2】
前記ユーザが入力した前記放電ライン及び/又は前記充電ラインを用いた場合の前記蓄電システムの充電残量の変化又は変化の傾向を描写する充電残量描写手段を備えることを特徴とする、請求項1に記載のエネルギーマネージメントシステム。
【請求項3】
前記ユーザが入力した前記放電ライン及び/又は前記充電ラインを用いた場合の受電電力又は受電電力量の変化又は変化の傾向を描写する受電描写手段を備えることを特徴とする、請求項1に記載のエネルギーマネージメントシステム。
【請求項4】
前記ユーザが入力した前記放電ライン及び/又は前記充電ラインを用いた場合の消費電力又は消費電力量の変化又は変化の傾向を描写する消費描写手段を備えることを特徴とする、請求項1に記載のエネルギーマネージメントシステム。
【請求項5】
前記ユーザが入力した前記放電ライン及び/又は充電ラインを用いると、前記消費電力又は消費電力量が前記第1の値を超えると判断される場合、前記放電ラインを上げさせるように前記ユーザに指示する表示を行うことを特徴とする、請求項4に記載のエネルギーマネージメントシステム。
【請求項6】
前記ユーザが入力した前記放電ライン及び/又は充電ラインを用いると、前記消費電力又は消費電力量が前記第1の値を超えると判断される場合、前記充電ラインを上げさせるように前記ユーザに指示する表示を行うことを特徴とする、請求項4に記載のエネルギーマネージメントシステム。
【請求項7】
前記ユーザが入力した前記放電ライン及び/又は充電ラインを用いると、前記充電残量が所定の下限値に達すると判断される場合、前記放電ラインを上げさせるように前記ユーザに指示する表示を行うことを特徴とする、請求項2に記載のエネルギーマネージメントシステム。
【請求項8】
前記ユーザが入力した前記放電ライン及び/又は充電ラインを用いると、前記充電残量が所定の下限値に達すると判断される場合、前記充電ラインを上げさせるように前記ユーザに指示する表示を行うことを特徴とする、請求項2に記載のエネルギーマネージメントシステム。
【請求項9】
前記ユーザが入力した前記放電ライン及び/又は充電ラインを用いると、前記充電残量が所定の値以上になると判断される場合、前記放電ラインを下げさせるように前記ユーザに指示する表示を行うことを特徴とする、請求項2に記載のエネルギーマネージメントシステム。
【請求項10】
前記ユーザが入力した前記放電ライン及び/又は充電ラインを用いると、前記充電残量が所定の値以上になると判断される場合、前記充電ラインを下げさせるように前記ユーザに指示する表示を行うことを特徴とする、請求項2に記載のエネルギーマネージメントシステム。
【請求項11】
前記放電ライン及び/又は前記充電ラインをユーザに入力させるライン入力手段をさらに備え、
前記第1及び/又は前記第2の値を設定する際、前記ライン入力手段によって入力された前記放電ライン及び/又は前記充電ラインを表示することを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載のエネルギーマネージメントシステム。
【請求項12】
前記放電ライン及び/又は前記充電ラインを自動で算出するための自動算出手段をさらに備え、
前記第1及び/又は前記第2の値を設定する際、前記自動算出手段によって算出された前記放電ライン及び/又は前記充電ラインを表示することを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載のエネルギーマネージメントシステム。
【請求項13】
前記自動算出手段は、人工知能によって、前記放電ライン及び/又は前記充電ラインを、算出することを特徴とする、請求項12に記載のエネルギーマネージメントシステム。
【請求項14】
前記自動算出手段によって算出された前記放電ライン及び/又は前記充電ラインは、ユーザによって、変更可能であることを特徴とする、請求項12に記載のエネルギーマネージメントシステム。
【請求項15】
前記自動算出手段は、
前記充電ラインに基づく充電容量[kWh]が前記蓄電システムの蓄電可能容量[kWh]に相当するように、前記充電ラインを決定し、
前記放電ラインに基づく放電容量[kWh]が前記充電容量[kWh]に相当するように、前記放電ラインを決定することを特徴とする、請求項12に記載のエネルギーマネージメントシステム。
【請求項16】
前記検出手段は、前記構内システムの受電電力又は受電電力量、充電電力又は充電電力量、及び放電電力又は放電電力量に基づいて、前記消費電力又は前記消費電力量を検出することを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載のエネルギーマネージメントシステム。
【請求項17】
前記構内システムが発電システムを備える場合、前記検出手段は、前記構内システムの受電電力又は発電電力量、充電電力又は充電電力量、放電電力又は放電電力量、及び発電電力又は発電電力量に基づいて、前記消費電力又は前記消費電力量を検出することを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載のエネルギーマネージメントシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池に放電及び充電の指令を与えるためのエネルギーマネージメントシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
年々、電力消費が増え続けているところに加えて、エネルギー資源価格が高騰の一途を辿っている。そのため、各電力受給者においては、電力料金コストが、大きな負担となっている。
【0003】
ここで、デマンド料金制を採用している場合の電気料金の計算方法について説明する。
電力受給者の設備に、最大需要電力計(デマンド計)が設置される。デマンド計は、所定の期間(たとえば、30分間)の消費電力(kW)を計測し、所定の期間の平均使用電力(kW)を算出する。一般に、デマンド値と言った場合、瞬時電力値(kW)のことをいうが、電気料金の計算においては、デマンド値と言った場合、所定の期間の平均使用電力(kW)のことをいう場合があるので、本明細書では、両者を区別して表現する。
【0004】
すなわち、本明細書では、両者を区別するために、デマンド値(kW)と言った場合は、瞬時電力値(kW)を意味し、所定期間デマンド値(kW)と言った場合は、所定の期間の平均使用電力(kW)を意味して、用語を使い分けることとする。
【0005】
デマンド計は、計量期間(たとえば、1ヶ月間)の中での最大の所定期間デマンド値(kW)を記憶する。本明細書では、この計量期間内での最大の所定期間デマンド値(kW)を、最大デマンド値(kW)ということにする。
【0006】
デマンド料金制を採用している場合、電力受給者の電気料金は、基本料金と従量料金との和によって計算される。
【0007】
基本料金は、たとえば、過去12ヶ月の毎月の最大デマンド値の中で、最も大きい最大デマンド値に基づいて計算される。したがって、過去12ヶ月の中で、一度でも最大デマンド値が大きくなってしまうと、その最大デマンド値に基づいて、基本料金が適用されてしまう。この最も大きい最大デマンド値を、本明細書では、契約デマンド値(kW)ということにする。
【0008】
なお、本明細書においては、デマンド値(kW)、所定期間デマンド値(kW)、最大デマンド値(kW)、及び契約デマンド値(kW)を総称して「デマンド」と表現し、デマンド値(kW)、所定期間デマンド値(kW)、最大デマンド値(kW)、及び契約デマンド値(kW)が小さい場合を総称して「デマンドが小さい」と表現し、デマンド値(kW)、所定期間デマンド値(kW)、最大デマンド値(kW)、及び契約デマンド値(kW)を下げることを総称して「デマンドを下げる」などと表現することがある。
【0009】
もちろん、電気料金の計算方法は、電力提供者によって区々であるが、デマンド料金制を採用している場合には、最大デマンド値の中で最も大きい最大デマンド値(=契約デマンド値)を決めている。ほとんどの場合、電力提供者は、契約デマンド値が大きければ大きいほど、基本料金ないしは従量料金を高くしている。
【0010】
したがって、契約デマンド値が低くなるようにすれば、電気料金を下げることができる。契約デマンド値を低くするためには、毎月の最大デマンド値を低くする必要があり、毎月の最大デマンド値を低くするためには、所定期間デマンド値やデマンド値を低くする必要がある。
【0011】
このような前提の上で、従来、たとえば、非特許文献1のデマンド監視システムのように、電気の使用状況を監視して、所定期間デマンド値を監視し、目標とする所定期間デマンド値を超えるような場合には、警報を発するシステムが存在した。電力受給者は、デマンド監視システムから警報があった場合に、手動で、負荷の使用を控えるなどして、所定期間デマンド値が大きくならないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特許6393361号公報
【文献】特許6453744号公報
【文献】特許6249022号公報
【文献】特開2019-118238号公報
【非特許文献】
【0013】
【文献】一般財団法人関西電気保安協会,“デマンド監視システム”,令和5年5月16日検索,インターネット,<https://www.ksdh.or.jp/service/security/demand.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
非特許文献1に記載のデマンド監視システムを用いる場合、ユーザが使用負荷を削減したり、消費電力の少ない機器を使用したりするなどして節電することになる。しかし、節電だけによる所定期間デマンド値やデマンド値の削減には、限度がある。
【0015】
そこで、有効なのが、蓄電池を設置して、デマンドが小さい時間帯や電気料金が安い時間帯に充電し、デマンドが大きい時間帯に放電させる方法である。これによって、デマンドを下げることができるので、最大デマンド値を下げることができる。
【0016】
特許文献1ないし4のように、蓄電池の充電及び放電を制御する先行技術は多く存在するが、正しく蓄電池値の充電及び放電を制御しないと高価な蓄電池を十分に活かした制御を行うことはできない。しかし、実運用において蓄電池の充放電制御の設定を行うことは困難である。なぜならば、消費電力の傾向は電力需給者によって千差万別であり、酷暑や酷寒など気象状況にも左右されるためである。
【0017】
蓄電池制御の先行技術には、数値情報である各種パラメータを設けて蓄電池制御を行うものが多いが、これらの制御は、各種パラメータを正しく設定しなければならない。しかし、蓄電池制御の運用を担当する者の多くは専門家ではない設備部門の担当者であるため、これらの各種パラメータ値を決定することは困難であり、十分にシステムの性能を発揮させる事ができていない場合が多い。
【0018】
そこで、本発明は、蓄電池の充放電の制御を容易に行うようにするためのエネルギーマネージメントシステムを提供することを目的とする。
【0019】
また、本発明は、GUI(グラフィカルユーザーインターフェース)を用いて、蓄電池の充放電の制御を容易に行うようにするためのエネルギーマネージメントシステムを提供することを目的とする。
【0020】
また、本発明は、最大デマンド値を引き下げて、電気料金コストを低減することを可能にするエネルギーマネージメントシステムを提供することを目的とする。
【0021】
上記課題に対して、特許文献1ないし4について対比する。
特許文献1には、充放電制御部に対してユーザインタフェースで設定可能な操作部を用いて、手動で設定ができることが請求項5に記載されており、また、図2及び図3には、蓄電池充放電制御設定のGUI例が記載されている。ただし、特許文献1の記載は、グラフを見ながらグラフ上で充放電ラインを設定するものではない。
【0022】
特許文献2には、ピークカットに関する運転計画を表示する手段を備えることが請求項1に記載されている。また、特許文献2の明細書の段落0090や段落0107には、運転計画表示部を参照しながら現在の設定を目視しながら入力できることが記載されている。また、図7には、デマンドの抑制量と順位が設定できる画面が記載されているが、数値情報のみである。このように、特許文献2において、設定情報は、負荷となる設備機器に関する運転に関するもので、放電ラインや充電ラインではない。
【0023】
特許文献3には、蓄電池情報を表示する表示や充放電要求を入力操作できる操作部を有することが請求項に記載されている。特許文献3の図4には、蓄電池充放電制御設定のGUI例が記載されているが、数値情報の入力となっており、グラフで実施の消費電力推移を見ながら放電ラインや充電ラインを設定できるものではない。
【0024】
特許文献4には、ユーザによる操作を受け付ける受付部が請求項に記載されている。特許文献4の図6には、蓄電池充放電制御設定のGUI例が記載されているが、数値情報の入力となっており、グラフで実施の消費電力推移を見ながら放電ラインや充電ラインを設定できるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記課題を解決するために、本発明は、以下のような特徴を有する。本発明は、負荷及び蓄電システムを少なくとも有する構内システムにおける消費電力又は所定期間の消費電力量を検出する検出手段と、消費電力又は消費電力量の履歴を記憶しておく記憶手段とを備え、蓄電システムの充電及び/又は放電を制御するためのエネルギーマネージメントシステムであって、検出手段によって検出された消費電力又は消費電力量が第1の値を超えた場合に、蓄電システムに対して、放電を行うように指令する放電指令信号送出手段と、検出手段によって検出された消費電力又は消費電力量が第2の値を下回った場合に、蓄電システムに対して、充電を行うように指令する充電指令信号送出手段との内、少なくともいずれか一方の手段をさらに備える。
エネルギーマネージメントシステムは、第1及び/又は第2の値を設定するときに、第1及び/又は第2の値に対応する放電ライン及び/又は充電ラインを表示すると共に、記憶手段に記憶されている消費電力又は消費電力量の履歴を表示し、表示されている放電ライン及び/又は充電ラインをユーザに決定させることで第1及び/又は第2の値を決定し、決定した第1及び/又は第2の値に基づいて、放電指令信号送出手段及び/又は充電指令信号送出手段による蓄電システムの充電及び/又は放電の制御を開始する。
【0026】
好ましくは、エネルギーマネージメントシステムは、ユーザが入力した放電ライン及び/又は充電ラインを用いた場合の蓄電システムの充電残量の変化又は変化の傾向を描写する充電残量描写手段を備えるとよい。
【0027】
好ましくは、エネルギーマネージメントシステムは、ユーザが入力した放電ライン及び/又は充電ラインを用いた場合の受電電力又は受電電力量の変化又は変化の傾向を描写する受電描写手段を備えるとよい。
【0028】
好ましくは、エネルギーマネージメントシステムは、ユーザが入力した放電ライン及び/又は充電ラインを用いた場合の消費電力又は消費電力量の変化又は変化の傾向を描写する消費描写手段を備えるとよい。
【0029】
好ましくは、エネルギーマネージメントシステムは、ユーザが入力した放電ライン及び/又は充電ラインを用いると、消費電力又は消費電力量が第1の値を超えると判断される場合、放電ラインを上げさせるようにユーザに指示する表示を行うとよい。
【0030】
好ましくは、エネルギーマネージメントシステムは、ユーザが入力した放電ライン及び/又は充電ラインを用いると、消費電力又は消費電力量が前記第1の値を超えると判断される場合、充電ラインを上げさせるようにユーザに指示する表示を行うとよい。
【0031】
好ましくは、エネルギーマネージメントシステムは、ユーザが入力した放電ライン及び/又は充電ラインを用いると、充電残量が所定の下限値に達すると判断される場合、放電ラインを上げさせるようにユーザに指示する表示を行うとよい。
【0032】
好ましくは、エネルギーマネージメントシステムは、ユーザが入力した放電ライン及び/又は充電ラインを用いると、充電残量が所定の下限値に達すると判断される場合、充電ラインを上げさせるようにユーザに指示する表示を行うとよい。
【0033】
好ましくは、エネルギーマネージメントシステムは、ユーザが入力した放電ライン及び/又は充電ラインを用いると、充電残量が所定の値以上になると判断される場合、放電ラインを下げさせるようにユーザに指示する表示を行うとよい。
【0034】
好ましくは、エネルギーマネージメントシステムは、ユーザが入力した放電ライン及び/又は充電ラインを用いると、充電残量が所定の値以上になると判断される場合、充電ラインを下げさせるようにユーザに指示する表示を行うとよい。
【0035】
好ましくは、エネルギーマネージメントシステムは、放電ライン及び/又は充電ラインをユーザに入力させるライン入力手段をさらに備え、第1及び/又は第2の値を設定する際、ライン入力手段によって入力された放電ライン及び/又は充電ラインを表示するとよい。
【0036】
好ましくは、エネルギーマネージメントシステムは、放電ライン及び/又は充電ラインを自動で算出するための自動算出手段をさらに備え、第1及び/又は第2の値を設定する際、自動算出手段によって算出された放電ライン及び/又は充電ラインを表示するとよい。
【0037】
好ましくは、自動算出手段は、人工知能によって、放電ライン及び/又は充電ラインを、算出するとよい。
【0038】
好ましくは、自動算出手段によって算出された放電ライン及び/又は充電ラインは、ユーザによって、変更可能であるとよい。
【0039】
好ましくは、自動算出手段は、充電ラインに基づく充電容量[kWh]が蓄電システムの蓄電可能容量[kWh]に相当するように、充電ラインを決定し、放電ラインに基づく放電容量[kWh]が充電容量[kWh]に相当するように、放電ラインを決定するとよい。
【0040】
好ましくは、充電ライン及び/又は放電ラインは、グラフィカルユーザーインターフェース上で、ユーザによって、上下可能となっているとよい。
【0041】
好ましくは、検出手段は、構内システムの受電電力又は受電電力量、充電電力又は充電電力量、及び放電電力又は放電電力量に基づいて、消費電力又は消費電力量を検出するとよい。
【0042】
好ましくは、構内システムが発電システムを備える場合、検出手段は、構内システムの受電電力又は発電電力量、充電電力又は充電電力量、放電電力又は放電電力量、及び発電電力又は発電電力量に基づいて、消費電力又は消費電力量を検出するとよい。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、放電ライン及び/又は充電ラインを用いて、蓄電池システムの充放電を制御することが可能となるので、蓄電池の充放電の制御を容易に行うようにするためのエネルギーマネージメントシステムが提供されることとなる。
【0044】
また、放電ライン及び/又は充電ラインを表示すると共に、記憶手段に記憶されている消費電力又は消費電力量の履歴を表示し、表示されている放電ライン及び/又は充電ラインをユーザに決定させることとなるので、GUI(グラフィカルユーザーインターフェース)を用いて、蓄電池の充放電の制御を容易に行うようにするためのエネルギーマネージメントシステムが提供されることとなる。
【0045】
また、放電ラインを設定して、第1の値による放電制御を行うことで、最大デマンド値を引き下げることができ、電気料金コストを低減することを可能にするエネルギーマネージメントシステムが提供されることとなる。
【0046】
充電残量予測手段による充電残量の予測を表示することで、放電ライン及び/又は充電ラインを、視覚的に分かりやすく決定することができる。
【0047】
受電予測手段による受電電力又は受電電力量の予測を表示することで、放電ライン及び/又は充電ラインを、視覚的に分かりやすく決定することができる。
【0048】
消費予測手段による消費電力又は消費電力量の予測を表示することで、放電ライン及び/又は充電ラインを、視覚的に分かりやすく決定することができる。
【0049】
条件に応じて、放電ライン及び/又は充電ラインを上下する指示が表示されることで、放電ライン及び/又は充電ラインを、視覚的に分かりやすく決定することができる。
【0050】
ライン入力手段を用いて、ユーザは、放電ライン及び/又は充電ラインを容易に入力することができる。
【0051】
自動算出手段によって算出された放電ライン及び/又は充電ラインが表示されることで、ユーザは、放電ライン及び/又は充電ラインを決めやすくなる。
【0052】
人工知能によって、自動算出手段が実行されば、好ましい放電ライン及び/又は充電ラインが決めやすくなる。
【0053】
自動算出手段によって算出された放電ライン及び/又は充電ラインは、ユーザによって、変更可能とすれば、事情に合せた充放電の制御を調整可能となる。
【0054】
自動算出手段が、充電ラインに基づく充電容量[kWh]が蓄電システムの蓄電可能容量[kWh]に相当するように、充電ラインを決定し、放電ラインに基づく放電容量[kWh]が充電容量[kWh]に相当するように、放電ラインを決定することで、簡単な計算で、放電ライン及び/又は充電ラインの候補を挙げることが可能となる。
【0055】
消費電力又は消費電力量を、構内システムの受電電力又は受電電力量、充電電力又は充電電力量、及び放電電力又は放電電力量に基づいたり、構内システムに発電システムがある場合には発電電力又は発電電力量に基づいたりして、検出することで、負荷の消費電力又は消費電力量を直接計測しなくてもよくなり、効率的な制御が可能となる。
【0056】
本発明のこれら、及び他の目的、特徴、局面、効果は、添付図面と照合して、以下の詳細な説明から一層明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1図1は、本発明の一実施形態におけるエネルギーマネージメントシステム(以下、「EMS」という。)1及びEMS1を含む構内システム13(以下、「システム13」という。)全体の構成を示すブロック図である。
図2図2は、放電ライン及び充電ラインを設定するときの制御部7の動作の一例(マニュアル設定の場合)を示すフローチャートである。
図3図3は、図2の続きの動作を示すフローチャートである。
図4図4は、放電ライン及び充電ラインを設定するときの制御部7の動作の一例(自動設定機能有りの場合)を示すフローチャートである。
図5図5は、図4における放電ライン及び充電ラインの自動算出処理における制御部7の動作の一例を示すフローチャートである。
図6図6は、放電ライン及び充電ラインを設定するときの制御部7の動作の一例(人工知能による最適ライン設定機能有りの場合)を示すフローチャートである。
図7A図7Aは、放電ライン及び充電ラインの設定後の運用中における制御部7の動作の一例(瞬間値での制御)を示すフローチャートである。
図7B図7Bは、放電ライン及び充電ラインの設定後の運用中における制御部7の動作の一例(30分電力量値での制御)を示すフローチャートである。
図8図8は、本発明の概要を説明するための図である。
図9図9は、制御開始前の消費電力の履歴を示す図である。
図10図10は、充電及び放電によって、最大デマンド値を下げることが可能であることを説明するための図である。
図11図11は、充電ライン及び放電ラインを示すGUIの一例を示す図である。
図12図12は、充電ライン及び放電ラインに加えて、充電残量(以下、「SOC」という。)を示すGUIの一例を示す図である。
図13図13は、SOCが枯渇する場合の充電ライン及び放電ラインの設定例を示す図であり、放電ラインを上げさせる指示を表示する場合のGUIの一例である。
図14図14は、放電ラインを上げることで、SOCが枯渇しないように設定出来た場合のGUIの一例を示す図である。
図15図15は、SOCが枯渇する場合の充電ライン及び放電ラインの設定例を示す図であり、充電ラインを上げさせる指示を表示する場合のGUIの一例である。
図16図16は、充電ラインを上げることで、SOCが枯渇しないように設定出来た場合のGUIの一例を示す図である。
図17図17は、所定期間の消費電力量で消費電力を表した場合のGUIの一例を示す図である。
図18A図18Aは、放電ライン及び充電ラインの自動算出処理の概要を説明するためのGUIの一例を示す図である。
図18B図18Bは、放電ライン及び充電ラインの自動算出処理の概要を説明するためのGUIの一例を示す図である。
図19A図19Aは、消費電力の履歴が充電ラインを下回る状況でのSOC,受電電力、及び消費電力の変化又は変化の傾向の計算及び描写を行うための動作フローを説明するための図である。
図19B図19Bは、消費電力の履歴が放電ラインを上回る状況でのSOC,受電電力、及び消費電力の変化又は変化の傾向の計算及び描写を行うための動作フローを説明するための図である。
図19C図19Cは、SOC、受電電力、及び消費電力の変化又は変化の傾向の演算及び描画の処理の動作フローの一例を示す図である。
図19D図19Dは、SOC、受電電力、及び消費電力の変化又は変化の傾向の演算及び描画の処理の動作フローの一例を示す図である。
図19E図19Eは、SOC、受電電力、及び消費電力の変化又は変化の傾向の演算及び描画の処理の動作フローの一例を示す図である。
図19F図19Fは、SOC、受電電力、及び消費電力の変化又は変化の傾向の演算及び描画の処理の動作フローの一例を示す図である。
図20図20は、放電ラインに達しない範囲で、SOCが設定値になるまで充電させる例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1において、システム13は、EMS1と、蓄電システム2と、発電システム3と、一以上の負荷4と、受変電設備5とを備える。
なお、家庭用や低圧電力受電の場合には、受変電設備5は、なくてよい。
なお、図1では、発電システム3を用いて、発電された電力を、負荷に供給したり、充電に利用したり、系統に逆潮流したり、逆に、逆潮流を禁止して自家消費したりすることを想定しているが、発電システム3は、本発明において、必須の構成ではない。
【0059】
高圧電力が、構内の外の電力の系統6から、受変電設備5に供給される。受変電設備5は、構内の負荷4に合わせた電圧に変電して、構内に電力を供給する。
発電システム3は、再生可能エネルギーや自家発電装置による発電システムである。発電システム3によって発電された電力は、同じく、構内に供給される。
蓄電システム2は、受変電設備5及び発電システム3から供給される電力を、充電及び放電する。蓄電システム2の充放電は、EMS1からの充放電制御信号によって、制御される。
【0060】
EMS1は、受変電設備5若しくは系統6から供給される電力を計測することで、受電電力を検出することができる。EMS1は、充放電制御信号によって、蓄電システム2による充電電力及び放電電力を検出することができる。また、EMS1は、発電システム3による発電電力を検出することができる。このように、EMS1は、受電電力、充電電力、放電電力、及び発電電力を検出する機能を有する。
【0061】
EMS1は、受電電力、充電電力、放電電力、及び発電電力に基づいて、負荷4の消費電力を検出することができる。すなわち、EMS1は、消費電力=受電電力+放電電力-充電電力+発電電力を計算することで、消費電力を検出することができる。
また、EMS1は、蓄電システム2の充電残量(SOC)を検出することができる。
【0062】
なお、EMS1による各検出方法は、周知の技術であるので、詳細な説明は割愛し、あらゆる周知の手法を利用することとする。
【0063】
なお、本発明は、発電システム3の制御(たとえば、売電や託送、自家消費など)にも応用することができ、その場合は、EMS1(又は他の制御装置)が発電システム3に対して、発電制御信号を送信することとし、そのような構成が本発明から除外されるものではない。
【0064】
なお、受電電力が0以下になった場合、負荷4で消費する電力に比べて、発電システム3から出力される発電電力が大きいことを意味するので、EMS1は、蓄電システム2に対して、充電すべき旨の信号を送信する。このような動作によって、発電システム3による発電電力が充電に回されることとなる。なお、発電システム3による余剰電力の充電方法については、周知技術であるので、詳細な説明を割愛する。本発明において、発電システム3による余剰電力の充電に係る構成は除外されない。
【0065】
また、発電システム3が所定の条件を満たした場合(たとえば、発電電力が設定値以上になった場合)、EMS1は、優先して、蓄電システム2に対して、蓄電すべき旨の信号を送信してもよい。これによって、自然エネルギーの有効活用が可能となる。
【0066】
ここで、電力と電力量の違いについて、整理しておく。電力とは、瞬時の電力であり、単位は[kW]である。電力量とは、所定期間の電力の総量(積分)であり、単位は[kWh]である。以下の説明では、消費電力[kW]を用いて、説明する。すなわち、消費電力[kW]が、放電ラインに対応する第1の値[kW]を上回っているか、受電ラインに対応する第2の値[kW]を下回っているか否かで、説明する。
【0067】
ただし、消費電力[kW]を、所定期間の電力量[kWh]の観点で理解することも可能である。その場合、以下の説明において、消費電力[kW]を消費電力量[kWh]と読み替えて、消費電力量[kWh]が、放電ラインに対応する第1の値[kWh]を上回っているか、受電ラインに対応する第2の値[kWh]を下回っているか否かと読み替えて、本発明を理解することが出来る。なお、消費電力量[kWh]を用いた場合のGUIについては、図17で例示することとする。適宜、必要に応じて、消費電力量[kWh]を用いる場合については補足説明する。
【0068】
EMS1は、制御部7と、入力部8と、出力部9と、記憶部10と、操作部11と、表示部12とを含む。
制御部7は、記憶部10に保存されているプログラムを実行することで、EMS1の動作を制御する。記憶部10には、消費電力や受電電力、SOCなどの履歴情報や、充電ライン及び放電ラインに関する情報(第1の値及び第2の値)など、EMS1の制御に必要な情報が保存されている。
なお、消費電力量[kWh]を用いて制御する場合、記憶部10は、消費電力量の履歴を記憶している。
【0069】
入力部8は、受電電力や供給電力に関する信号など、外部の装置やシステムからの情報を入力するためのデバイスである。
出力部9は、蓄電システム2への充放電信号や、発電システム3への発電制御信号などを送信するためのデバイスである。
操作部11は、タッチパネルやキーボード、マウスなど、一般的な入力用のデバイスである。
表示部12は、ディスプレイなど、一般的な出力用のデバイスである。
【0070】
以上のような構成を利用して、蓄電システム2の充放電が制御される。
図8を参照しながら、蓄電池ステム2の充放電を制御する方法の概要について、説明する。
【0071】
図8において、左縦軸が電力[kW]、右縦軸がSOC[%]、横軸が時間[t]としている。図8の設定時点において、制御部7は、過去の消費電力を表示部12に表示する。ユーザは、表示部12に表示された過去の消費電力を確認して、放電ライン及び充電ラインを決定する。ユーザが入力した放電ライン及び充電ラインは、制御部によって、同じく表示部12に表示される。ユーザは、過去の消費電力を見ながら、放電ライン及び充電ラインを入力できるように、制御部7によって、分かりやすいGUIが提供される。
【0072】
GUIを用いて決定された放電ライン及び充電ラインに関する情報が記憶部10に記憶され、設定が完了する。放電ラインに対応するのが第1の値であり、充電ラインに対応するのが第2の値である。設定完了後、EMS1による充放電の制御が開始する。
制御開始後、制御部7は、消費電力が第1の値を超えた場合に、蓄電システム2に対して、放電指令信号を送信し(放電指令信号送出手段)、消費電力が第2の値を下回った場合に、蓄電システム2に対して、充電指令信号を送信する(充電指令信号送出手段)。
【0073】
充電指令信号には、何キロワット[kW]を充電しなさいという情報が含まれている。若しくは、充電指令信号には、所定期間内に何キロワットアワー[kWh]を充電しなさいという情報が含まれている。若しくは、充電指令信号には、単に、値なしで、単に、充電しなさいという情報が含まれている。
発電システム3は、充電指令信号で指定されている電力を放電する。若しくは、発電システム3は、所定期間内に、充電指令信号で指定されている電力量を充電する。若しくは、発電システム3は、充電指令信号に従って、充電を開始する。
【0074】
放電指令信号には、何キロワット[kW]を放電しなさいという情報が含まれている。若しくは、放電指令信号には、所定期間内に何キロワットアワー[kWh]を放電しなさいという情報が含まれている。若しくは、放電指令信号には、単に、値なしで、単に、放電しなさいという情報が含まれている。
発電システム3は、放電指令信号で指定されている電力を放電する。若しくは、発電システム3は、所定期間内に、放電指令信号で指定されている電力量を放電する。若しくは、発電システム3は、放電指令信号に従って、放電を開始する。
【0075】
制御開始後、ユーザからの求めに応じるか又は常時、その他適宜のタイミングで、制御部7は、現在の消費電力や受電電力、放電ライン、充電ライン、SOCを、表示部12に表示する。図8の例では、制御開始後、消費電力が減ってきて、充電ラインを下回ったタイミングで、充電指令信号が制御部7から蓄電ステム2に送信されている。その後、さらに消費電力が充電ラインよりも下回っている間、蓄電システム2によって、充電が行われる。そのため、SOCが増えていく。図8において、受電電力は太線で示されており、消費で力は太線又は破線で示されている(以下、同様)。
【0076】
なお、受電電力量や消費電力量を用いる場合は、棒グラフで、変化が表されるとよい。
【0077】
なお、図8に示していないが、満充電状態になれば、これ以上充電できなくなるので、充電に必要な受電電力が不要になるので、受電電力は、消費電力まで下がることになる。
【0078】
図8を含め以後の説明では、充電時、消費電力の曲線を反転させた電力を、蓄電のための電力としている。すなわち、制御部7は、充電ラインと消費電力との差分の電力[kW](若しくは所定期間を利用する場合は、電力量[kWh]、以下同様。)に関する情報を含めた充電指令信号を送出する。
【0079】
ただし、充電指令信号には、所定の電力[kW](若しくは所定の電力量[kWh]、以下同様。)を充電するように指令する情報が含まれるようにしてもよい。
なお、単に充電する指令のみを受け付ける蓄電池を用いている場合には、充電指令信号には、充電を指令する情報のみが含まれている。この場合、当該蓄電池は、満充電(又は所定の充電状態)まで、又は充電の停止が指示されるまで、充電する。
【0080】
なお、充電指令信号によって、受電した電力が放電ライン以上になると、放電指令信号の送出が必要になってしまうので、充電指令信号に含める電力[kW]の値は、受電した電力が放電ライン以上とならないようにするとよい。
【0081】
なお、SOCが100%になった場合には、蓄電システム2は、これ以上充電できないので、充電を自動的に停止する。若しくは、制御部7が充電停止信号を送出して、蓄電システム2による充電を停止する。
【0082】
消費電力が増えて、充電ライン(第2の値)を上回ると、制御部7は、蓄電システム2に対して充電停止信号を送信する。これに応じて、充電が停止するため、SOCは、そのままの値で維持される。
【0083】
消費電力が増え続けて、消費電力が放電ライン(第1の値)以上となると、制御部7は、放電指令信号を送信する。これに応じて、蓄電システム2は、放電を開始する。図8に示すように、放電を開始すると、SOCが減っていく。放電電力によって、消費電力の一部が賄われるので、受電電力は一定の値で推移していく。
【0084】
足らない電力を全て蓄電システム2が賄うように、最大限放電するように、放電指令信号で指定する。
若しくは、消費電力と放電ラインとの差分の電力[kW]の値を放電電力として放電指令信号に含めて、蓄電システム2に送出するようにする。
若しくは、放電する電力量[kWh]を放電指令信号に含めて、蓄電システム2に送出するようにする。
若しくは、単に、放電する指令のみを受け付ける蓄電池の場合は、空になるまで、又は、放電の停止が指示されるまで、蓄電システム2は放電する。
【0085】
なお、図8に示していないが、SOCが枯渇すると、これ以上の放電ができなくなるので、受電電力が消費電力まで上がることになる。
【0086】
図9及び図10を参照しながら、蓄電及び放電を行うことで、最大デマンド値が下がる理由について説明する。図9に示すように、消費電力の実績値の最大の値によって、最大デマンド値が決まる。図9に示すような実績値において、蓄電池を導入したとする。放電のタイミングは、図10に示すように、消費電力が最大デマンド値に近づいた時点とする。
【0087】
図10に示すように、消費電力が最大デマンド値に近づいた時点で放電を開始したら、放電開始から放電終了までの間、蓄電池から放電される電力が負荷に供給されるので、系統からの受電電力が減ることになる。したがって、最大デマンド値が下がることになる。
【0088】
図10に示すように、放電を行うには、どこかのタイミングで充電をする必要がある。そこで、図10に示すように、消費電力が低い部分(図10では、最小ないし極小の消費電力に近い部分)で、充電を開始して、消費電力が上がってきたら、充電を終了する。充電開始から充電終了までの間、蓄電されることとなる。この蓄電された電力を消費電力が高いときに放電すれば、最大デマンド値を下げることができるようになる。
【0089】
このように、充電開始及び終了のタイミング、並びに、放電開始及び終了のタイミングを、ユーザにとって分かりやすいGUIで設定させるのが、本発明の目的とするところである。図11に示すように、消費電力の履歴に対して、最小ないし極小部分に、充電ラインを引くようにし、消費電力の最大ないし極大部分に、放電ラインを引くようにするGUIを、EMS1が提供する。そして、ユーザが引いた充電ライン及び放電ラインに基づいて、過去の消費電力の実績によって、受電電力がどのように変化するのかを同じくEMS1がGUIで提供する。これによって、ユーザは、充電のタイミングを視覚的に理解して、かつ、最大デマンド値を下げることができると容易に理解出来るようになるのである。専門的知識を持ち合わせないユーザであっても、直感的に、最大デマンド値を下げる設定を行うことができるようになるのである。
【0090】
図11に示したGUIでは、SOCが分からない。そのため、充電残量がたくさん残っているのに、放電ラインを上げすぎて、充電残量を活用できていなかったり、逆に、充電残量がないのに、無理に、放電ラインを下げすぎていたり、または、放電ラインの高さに見合った充電ラインを設定していなかったりと、いうことが考えられる。
【0091】
そこで、図12に示すように、EMS1はSOCを表示するGUIを提供するようにするとよい。これによって、ユーザは、充電残量を確認しながら、充電ライン及び放電ラインを決めることができるので、二つのラインを適切に引くことが可能となる。
【0092】
(マニュアル設定の例)
上記の概略的理解を前提にした上で、図2及び図3を参照しながら、マニュアル設定で放電ライン及び充電ラインを設定するときの動作の例について説明する。初期設定又は運用後の二つのラインを修正の際に、図2及び図3の動作フローが用いられる。
【0093】
制御部7は、記憶部10に保存している消費電力の履歴を表示部12に表示し(S101)、ユーザに放電ライン及び充電ラインを引かせて(S102:ライン入力手段)、ユーザが引いた放電ライン及び充電ラインを表示部12に表示する(S103)。
【0094】
制御部7は、消費電力の履歴に対して、ユーザが引いた放電ライン及び充電ラインを用いた場合のSOC、受電電力、及び消費電力の変化又は変化の傾向を演算する(S104)。ここで、「変化又は変化の傾向」としたのは、演算結果は、必ずしも、正確な予測である必要はなく、ユーザが引いた二つのラインが適切であったか否かを判断する際に参考にできる程度の情報であればよいからである。
【0095】
制御部7は、放電ライン、充電ライン、及び消費電力の履歴に対して、S104の演算結果に基づいたSOC、消費電力、及び受電電力の変化又は変化の傾向を、表示部12に表示する(S105)。
S104及びS105の動作が、充電残量描写手段、受電描写手段、及び消費描写手段である。
この表示によって、ユーザは、引いた放電ライン及び充電ラインによって、最大デマンド値がどのように変化するか視覚的又は直感的に理解することができる。
【0096】
SOC、受電電力、及び消費電力の変化又は変化の傾向の演算方法としては、種々考えられるが、たとえば、放電ラインを超えている(もしくは、充電ラインを下回っている)消費電力[kW]を抽出し、抽出した消費電力[kW]を積分し、積分した値を対象電力量[kWh]として、対象電力量[kWh]が蓄電池総容量[kWh]に対して何[%]変化するかを演算することで、SOC及び受電電力をシミュレーションすることができる。
また、放電時にSOCが枯渇したら受電電力=消費電力としたり、充電時に充電ラインを下回っている消費電力を受電電力に添加したりする。
詳しくは、図19A図19Fを参照しながら、後述する。
【0097】
制御部7は、S104で演算した消費電力が放電ライン(第1の値)を超えているか否かを判断する(S106)。なお、S106の判断は、計算したSOCが枯渇する(所定の下限値(たとえば0%)に達する)か否かの判断でもよい。
超えていない場合、制御部7は、図3のAからの処理に進む。
超えている場合、ユーザが設定したラインが不適切であることを意味するので、制御部7は、放電ラインを上げる指示を表示するか、又は、充電ラインを上げる指示を表示するか、若しくは、その両方の指示を表示して(S107)、S102の動作に戻って、再度、ユーザに二つのラインを引かせる。
【0098】
図3のAからの処理において、制御部7は、SOCの残量が所定の値以上であるか否かを判断する(S108)。
【0099】
SOCが所定の値以上残っているということは、さらに、放電して最大デマンド値を下げることができる可能性があることを意味するか、若しくは、充電量を減らして買電を少なく出来ることを意味している。そこで、制御部7は、放電ラインを下げる指示を表示するか、又は、充電ラインを下げる指示を表示するか、若しくは、その両方の指示を表示して(S109)、図2のBからの処理に戻る。
【0100】
SOCの残量が所定の値未満の場合には、ユーザによって引かれたラインが適切であることを意味するので、制御部7は、放電ライン及び充電ラインを決定してもよいか否かを表示部12に表示する(S110)。
ユーザが決定しない場合は、制御部7は、図2のBからの処理に戻る。
ユーザが決定した場合は、制御部7は、放電ライン及び充電ラインを決定して、記憶部10に保存し(S111)、以後、放電ライン及び充電ラインを用いた、充放電の制御を開始する(S112)。
【0101】
なお、上記に示したマニュアル設定のときの動作の例は、あくまでも一例に過ぎず、処理手順や処理内容などは、適宜変更可能である。
【0102】
(SOC、受電電力、及び消費電力の変化又は変化の傾向の演算及び描画の処理の動作フローの一例の説明)
【0103】
図19Aは、消費電力の履歴が充電ラインを下回る場合のSOC、受電電力、及び消費電力の変化又は変化の傾向の計算及びそれらの描写を説明するための図である。
【0104】
図19Aにおいて、制御部7は、充電ラインを下回っている消費電力の履歴の領域の電力量[kWh]を演算(積分)する(図19Aのステップ1)。次に、演算した電力量が蓄電システム2に充電されたとしたときのSOCを求める(図19Aのステップ2)。
【0105】
たとえば、充電ラインを下回っている領域の電力量が20[kWh]である場合、その分が蓄電システム2へ充電されたと想定する。この場合、充電開始前のSOCが20%、蓄電システム2の蓄電池総容量が100[kWh]だったとすれば、上記20[kWh]分が蓄電システム2に充電されたとして、SOCは40%まで回復すると予測する。
【0106】
上記のSOCの予測に基づいて、制御部7は、表示部12にSOCの変化を描写する(図19Aのステップ3)。たとえば、図19Aに例示したように、充電開始前のSOCから、充電終了後のSOCまでを直線で結ぶようにして、制御部7は、SOCの変化又はその傾向を描写する。なお、実際のSOCの変化は、蓄電システム2の性能に依存するのであり、あくまでも、図19Aは、SOCの変化又はその傾向を示したものに過ぎない。また、図19Aでは、充電指令の開始及び停止から若干遅れてSOCの変化に反映するように図示しているが、このような遅れも、蓄電システム2の性能に依存するのであり、あくまでも、ユーザが理解し易いようにした描画の一例に過ぎない。
【0107】
制御部7は、充電による受電電力の変化を描写する(図19Aのステップ4)。充電期間中は、充電による消費電力が増加するため、消費電力の履歴部分は、点線で描写される(図19Aのステップ4)。充電による消費電力の増加部分は、図19Aに示したex1やex2のように描写される。
ex1の例では、制御部7は、消費電力を充電ラインで反転させて描写することで、充電電力量の変化の傾向を描写している。
ex2の例では、制御部7は、充電ラインを下回っている領域の電力量を充電期間内に充電する場合の蓄電システム2の消費電力を、充電ラインに加算するようにして消費電力の変化の傾向を描写している。なお、ex2の例では、カーブの形状は、蓄電システム2の性能に依存する。
【0108】
なお、例外条件として、充電ラインを下回る消費電力の履歴の総和(積分値)を充電した場合に、途中で、SOCが上限値(たとえば、100%)に達してしまうというのがある。図19Aの例外条件までを考慮した動作フローについては、図19C及び図19Dを用いて後述する。
【0109】
図19Bは、消費電力の履歴が放電ラインを上回る場合のSOC、受電電力、及び消費電力の変化又は変化の傾向の計算及びそれらの描写を説明するための図である。
【0110】
制御部7は、放電ラインを上回っている消費電力の履歴の領域の電力量[kWh]を演算(積分)する(図19Bのステップ1)。次に、演算した電力量が蓄電システム2にから放電されたとしたときのSOCを求める(図19Bのステップ2)。
【0111】
たとえば、放電ラインを上回っている領域の電力量が35[kWh]である場合、その分が蓄電システム2から放電されたと想定する。この場合、放電開始前のSOCが40%、蓄電システム2の蓄電池総容量が100[kWh]だったとすれば、上記35[kWh]が蓄電システム2から放電されたとして、SOCは5%まで低下すると予測する。
【0112】
上記のSOCの予測に基づいて、制御部7は、表示部12にSOCの変化を描写する(図19Bのステップ3)。たとえば、図19Bに例示したように、放電開始前のSOCから、放電終了後のSOCまでを直線で結ぶようにして、制御部7は、SOCの変化又はその傾向を描写する。なお、実際のSOCの変化は、蓄電システム2の性能に依存するのであり、あくまでも、図19Bは、SOCの変化又はその傾向を示したものに過ぎない。また、図19Bでは、放電充電指令の開始及び停止から若干遅れてSOCの変化に反映するように図示しているが、このような遅れも、蓄電システム2の性能に依存するのであり、あくまでも、一例に過ぎない。
【0113】
制御部7は、放電による受電電力の変化を描写する(図19Aのステップ4)。このとき、一例として、制御部7は、放電ラインを上回っている消費電力は、放電で賄えるとして、放電期間中の受電電力は放電ラインに同じになると予測して、受電電力の変化又はその傾向を描写する。
【0114】
放電期間中は、放電によって、消費電力の一部が賄われるので、放電ラインを上回る領域の消費電力について、制御部7は、点線で描写する(図19Aのステップ4)。
【0115】
なお、例外条件として、放電ラインを上回る消費電力の履歴の総和(積分値)を放電する前に、SOCが下限値(たとえば、0%)に達してしまうというのがある。図19Bの例外条件までを考慮した動作フローについては、図19E及び図19Fを用いて後述する。
【0116】
図19A及び図19Bで示した制御部7による充電残量の描写の動作(充電残量描写手段)、受電電力の描写の動作(受電描写手段)、及び消費電力の描写の動作(消費描写手段)は、あくまでも一例であるが、充電残量、受電電力、及び消費電力の少なくとも一つを、消費電力の履歴、放電ライン、及び充電ラインの少なくともいずれか一つと共に表示することで、ユーザが放電ライン及び/又は充電ラインを決定させる際の参考となる情報を分かりやすく表示することができる。
【0117】
次に、図19C図19Fを参照しながら、先述した例外条件まで考慮に入れた場合のSOC、受電電力、及び消費電力の変化又は変化の傾向の演算及び描画の処理の動作フローの一例を説明する。
【0118】
図19Cにおいて、まず、制御部7は、消費電力の履歴が充電ラインを下回った時刻tiを検出する(S701)。制御部7は、時刻tiにおける消費電力[kW]と充電ラインの値[kW]との差の電力[kW]を計算する(S702)。制御部7は、時刻tiの消費電力[kW]を点線で描写する(S703)。もちろん、点線以外であってもよい。
【0119】
次に、制御部7は、計算した差の電力[kW]を、時刻tiのSOCに加算する(S704)。制御部7は、算出したSOCを、時刻tiにおけるSOCとして、描写する(S705)。制御部7は、差の電力[kW]と充電ライン[kW]とを加算した電力を、時刻tiにおける受電電力とする(S706)。たとえば、図19Aのex1のような描写である。
【0120】
次に、制御部7は、時刻tiにおけるSOCは上限値(例えば、100%)に達したか否かを判断する(S707)。
SOCが上限値に達している場合、制御部7は、時刻tiの次の時刻からは、充電しないとして、消費電力及び受電電力を表示し、SOCは、上限値を維持するとして表示し(S708)、処理を終了する。
一方、S707において、SOCが上限値に達していない場合、iをインクリメントして(S709)、S702の動作に戻る。
【0121】
なお、図19Cに示す動作フローでは、繰り返し処理の終了条件がS707でSOCが上限値に達したか否かである。ただし、時刻tiにおける消費電力の履歴が充電ラインを上回ったか否かの判断を終了条件としてさらに加えてもよい。
【0122】
図19Cに示す動作フロー以外に、図19Dに示す動作フローも考えられる。
図19Dにおいて、まず、制御部7は、消費電力の履歴が充電ラインを下回った時刻tiを検出する(S801)。制御部7は、時刻tiにおける消費電力[kW]と充電ラインの値[kW]との差の電力Pi[kW]を計算する(S802)。制御部7は、時刻tiにおける消費電力[kW]が充電ラインを上回ったか否かを判断する(S803)。
【0123】
上回っていない場合、制御部7は、iをインクリメントして(S804)、S802の動作に戻る。
上回っている場合、制御部7は、差の電力Piの総和を計算する(S805)。これにより、消費電力の履歴が充電ラインを下回っている領域の消費電力量(積分値)が求まる。
【0124】
次に、制御部7は、蓄電システム2に、当該総和を充電するだけのSOCが残っているか否かを判断する(S806)。
【0125】
残っている場合、制御部7は、下回っている期間の間、蓄電システム2が当該総和を充電するまでの間のSOCの変化を描写する(S807)。制御部7は、当該総和を充電できた以降は、受電電力は消費電力の履歴に沿うとして描画し(S808)、処理を終了する。
【0126】
一方、残っていない場合、制御部7は、蓄電システム2のSOCが上限値になるまでのSOCの変化を描画する(S809)。制御部7は、SOCの上限値に達した時点以降の受電電力は消費電力の履歴に沿うとして描画し(S810)、処理を終了する。
【0127】
このように、図19C及び図19Dに示すような動作フローの例を用いれば、消費電力の履歴が充電ラインを下回っている場合のSOC、受電電力、及び消費電力の変化又は変化の傾向の演算及び描画が可能となる。
【0128】
次に、図19E及び図19Fを用いて、消費電力の履歴が放電ラインを上回っている場合のSOC、受電電力、及び消費電力の変化又は変化の傾向の演算及び描画処理の動作フローの例について説明する。
【0129】
図19Eにおいて、まず、制御部7は、消費電力の履歴が放電ラインを上回った時刻tiを検出する(S901)。制御部7は、時刻tiにおける消費電力[kW]と充電ラインの値[kW]との差の電力[kW]を計算する(S902)。制御部7は、時刻tiの消費電力[kW]を点線で描写する(S903)。もちろん、点線以外であってもよい。
【0130】
次に、制御部7は、計算した差の電力[kW]を、時刻tiのSOCから減算する(S904)。制御部7は、算出したSOCを、時刻tiにおけるSOCとして、描写する(S905)。制御部7は、時刻tiまでの放電ラインを充電電力として描画する(S906)。たとえば、図19Bのような描写である。
【0131】
次に、制御部7は、時刻tiにおけるSOCは下限値(例えば、0%)に達したか否かを判断する(S907)。
SOCが下限値に達している場合、制御部7は、時刻tiの次の時刻からは、放電しないとして、消費電力及び受電電力を表示し、SOCは、下限値を維持するとして表示し(S908)、処理を終了する。
一方、S907において、SOCが下限値に達していない場合、iをインクリメントして(S909)、S902の動作に戻る。
【0132】
なお、図19Eに示す動作フローでは、繰り返し処理の終了条件がS907でSOCが下限値に達したか否かである。ただし、時刻tiにおける消費電力の履歴が充電ラインを下回ったか否かの判断を終了条件としてさらに加えてもよい。
【0133】
図19Eに示す動作フロー以外に、図19Fに示す動作フローも考えられる。
図19Fにおいて、まず、制御部7は、消費電力の履歴が充電ラインを上回った時刻tiを検出する(S1001)。制御部7は、時刻tiにおける消費電力[kW]と充電ラインの値[kW]との差の電力Pi[kW]を計算する(S1002)。制御部7は、時刻tiにおける消費電力[kW]が充電ラインを下回ったか否かを判断する(S1003)。
【0134】
下回っていない場合、制御部7は、iをインクリメントして(S1004)、S1002の動作に戻る。
上回っている場合、制御部7は、差の電力Piの総和を計算する(S1005)。これにより、消費電力の履歴が充電ラインを上回っている領域の消費電力量(積分値)が求まる。
【0135】
次に、制御部7は、蓄電システム2に、当該総和を放電するだけのSOCが残っているか否かを判断する(S1006)。
【0136】
残っている場合、制御部7は、上回っている期間の間、蓄電システム2が当該総和を放電するまでの間のSOCの変化を描写する(S1007)。制御部7は、当該総和を充電できた以降は、受電電力は消費電力の履歴に沿うとして描画し(S1008)、処理を終了する。
【0137】
一方、残っていない場合、制御部7は、蓄電システム2のSOCが下限値になるまでのSOCの変化を描画する(S1009)。制御部7は、SOCの下限値に達した時点以降の受電電力は消費電力の履歴に沿うとして描画し(S1010)、処理を終了する。
【0138】
このように、図19E及び図19Fに示すような動作フローの例を用いれば、消費電力の履歴が充電ラインを上回っている場合のSOC、受電電力、及び消費電力の変化又は変化の傾向の演算及び描画が可能となる。
【0139】
(マニュアル設定の場合のGUIの例)
次に、図13ないし図16を参照しながら、マニュアル設定の場合のGUIの例について説明する。
消費電力の履歴に対して、ユーザが入力した二つのラインが適切でなく、SOCが枯渇してしまうことにより、放電によっては消費電力を賄いきれない場合、系統6から受電することになる。
【0140】
このような場合、たとえば、制御部7は、図13のようなGUIを表示する。すなわち、図13に示すように、SOCが0%になって枯渇し、それに合わせて、受電電力が消費電力まで上がってしまい、最大デマンド値を放電ラインまで下げることができないことをユーザは知ることができる。なお、先述したとおり、SOCの枯渇は、0%などの下限値を用いることであり、0%よりも大きい値が下限値として用いられてもよい。
【0141】
図13のGUIにおいて、制御部7は、放電ラインを上げさせることを指示する表示を行う。これによって、ユーザは、放電ラインを上げれば、適切な設定になると理解できる。
【0142】
図14は、放電ラインを上げた後のGUIの例である。放電ラインを上げることで、SOCが枯渇しないため、放電ライン以上の消費電力を蓄電システム2の放電で賄うことができるため、最大デマンド値を放電ラインまで下げることができたことをユーザが視覚的又は直感的に理解することができる。
【0143】
または、図15に示すように、制御部7は、消費電力の履歴に対して、SOCが枯渇する場合に、充電が足らないことから、充電ラインを上げさせる指示を表示するようにしてもよい。
SOCが100%に達していなくて、まだ、充電が可能な場合に、図15のGUIを用いるとよいが、限定されない。
【0144】
図16に示すように、充電ラインをユーザが上げたとすると、SOCが枯渇しなくなるので、放電ライン以上の消費電力を蓄電システム2の放電で賄うことができるため、最大デマンド値を放電ラインまで下げることができたことをユーザが視覚的又は直感的に理解することができる。
【0145】
なお、放電ライン及び充電ラインの両方を上げさせる指示を表示するようにしてもよい。
【0146】
なお、所定期間内の消費電力量を履歴として用いる場合は、図17に示すように、所定期間内の消費電力量を棒グラフのようにして表示してもよい。
【0147】
(自動設定機能有りの場合)
次に、自動設定機能が有る場合の動作について、図4を参照しながら、説明する。
制御部7は、表示部12に消費電力の履歴を表示させ(S201)、自動設定機能を利用するか否かをユーザに問う表示をする(S202)。
ユーザが自動設定機能を利用しないことを選択した場合には、制御部7は、図2のBからの処理に進む。
【0148】
一方、ユーザが自動設定機能を利用すると選択した場合、制御部7は、放電ライン及び充電ラインの自動算出処理を実行する(S203)。
制御部7は、自動算出処理によって算出された二つのラインに基づく、受電電力及びSOCの変化を、消費電力の履歴と合わせて、表示部12に表示する(S204)。
【0149】
そして、制御部7は、ユーザに二つのラインを決定させる(S205)。ユーザが決定しない場合、制御部7は、S202の動作に戻る。ユーザが決定した場合は、二つのラインを記憶部10に保存して(S206)、二つのラインを用いた充放電の制御を開始する(S207)。
【0150】
自動算出処理としては、種々考えられるが、一例を、図5図18A、及び図18Bを用いて説明する。
制御部7は、消費電力の履歴において、最小及び最大を認識する(S301)。
次に、制御部7は、最小点から、最小点におけるSOCを踏まえて、蓄電池の充電可能容量(kWh)に相当する面積と同一の面積を有する部分(消費電力の最小点を含む曲線と充電ラインとによって囲まれた部分)を、充電ラインとする(S302及び図18A)。
【0151】
次に、制御部7は、消費電力の最大点を含む曲線と放電ラインとによって囲まれた部分の面積が、S302で求めた面積と同じになるように、放電ラインを決める(S303及び図18B)。
【0152】
そして、制御部7は、買電量や余裕度合いなどを考慮して、充電ライン及び放電ラインを微調整する(S304)。
【0153】
(AIによる最適ラインの決定)
図5に示す自動設定機能は、人工知能(以下、「AI」という。)による放電ライン及び充電ラインによる決定に置き換えることが可能である。
図6を参照しながら、AIによる放電ライン及び充電ラインの決定処理について説明する。
【0154】
まず、前提として、EMS1は、過去の消費電力に対する適切な充電ライン及び放電ラインを教師データとして学習したモデルを備えており、当該学習モデルは、消費電力を入力すれば、充電ライン及び放電ラインを出力することができるものとする。
【0155】
制御部7は、消費電力の履歴を表示する(S401)。制御部7は、AIの学習モデルに対して、消費電力の履歴を入力し、AIが算出した最適な放電ライン及び充電ラインを出力する(S402)。
【0156】
制御部7は、AIが出力した放電ライン及び充電ラインを表示部12に表示する(S403)。制御部7は、放電ライン及び充電ラインに基づいて、SOC及び受電電力並びに消費電力の変化又は変化の傾向を計算する(S404)。制御部7は、放電ライン、充電ライン、消費電力、受電電力、及びSOCの変化又は変化の傾向を表示部12に表示する(S405)。
【0157】
その表示結果を受けて、制御部7は、ユーザが必要と考えれば、放電ライン及び充電ラインを調整させて(S406)、放電ライン及び充電ラインを決定して(S407)、制御を開始する(S408)。
【0158】
このように、マニュアル設定、自動設定機能による設定、又は、AIによる最適ラインの設定を経た上で、制御部7は、蓄電システム2に対して、放電ライン及び充電ラインに従った放電指令信号及び充電指令信号を送信することで、充放電を制御する。図7A及び図7Bを参照しながら、制御中の処理について説明する。
【0159】
(制御中の処理)
図7Aは、消費電力の瞬時値を用いた制御が行われる場合の動作フローを示す。
まず、制御部7は、消費電力を計測する(S501)。なお、たとえば、消費電力を、受電電力とシステム内の発電電力の和によって求めてもよい。
【0160】
制御部7は、S502において、以下のような処理を実行する。
(1)消費電力値が放電ライン値を超えた場合、制御部7は、現在のSOCが放電下限SOC値を下回るまで放電指令信号を送出する。なお、放電下限SOCは、予め設定されているものとする。
(2)現在のSOCが放電下限SOCを下回った場合、制御部7は、放電指令信号を止める。
(3)放電指令信号送出中に、消費電力値が放電ライン値を下回った場合、制御部7は、放電指令信号を止める。
なお、一度放電指令信号を停止した際は、制御のチャタリングを防ぐ為、次回判断までに時間を空ける時限処理を設ける事が望ましい。
【0161】
制御部7は、S503において、以下のような処理を実行する。
(1)消費電力値が充電ライン値を下回った場合、制御部7は、現在のSOCが充電上限SOC値を超えるまで充電指令信号を送出する。なお、充電上限SOC値は、予め設定されているものとする。
(2)現在のSOCが充電上限SOCを上回った場合、制御部7は、充電指令信号を止める。
(3)充電指令信号送出中に、消費電力値が充電ライン値を上回った場合、制御部7は、充電指令信号を止める。
なお、一度充電指令信号を停止した際は、制御のチャタリングを防ぐ為、次回判断までに時間を空ける時限処理を設ける事が望ましい。
【0162】
図7Bは、所定の期間(たとえば、30分)の電力量を消費電力とする場合の運用中の制御の動作フローである。
制御部7は、所定期間の消費電力を計測する(S601)。ここで、制御部7は、所定期間の受電電力とシステム内発電電力の和を消費電力としてもよい。すなわち、制御部7は、毎時00分・30分毎に電力量の演算カウントを開始して、積算量を所定期間デマンド値として演算するとよい。
【0163】
S602の動作において、制御部7は、以下の動作を実行する。
(1)所定期間デマンド値が、放電ライン値を超えた場合、制御部7は、放電指令信号を送出する。
(2)現在のSOCが放電下限SOCを下回った場合、制御部7は、放電指令信号を止める。
(3)所定期間デマンド値が該当単位時間(たとえば、30分間)内で、放電ライン値を超えないと判断した場合、制御部7は、放電指令信号を止める。
【0164】
S603の動作において、制御部7は、以下の動作を実行する。
(1)所定期間デマンド値が充電ライン値を下回った場合、制御部7は、充電指令信号を送出する。
(2)現在のSOCが充電上限SOCを上回った場合、制御部7は、充電指令信号を止める。
(3)充電指令信号送出中に、デマンド値が充電ライン値を上回った場合、制御部7は、充電指令信号を止める。
【0165】
(変形例1)
充電ライン及び放電ラインの形態は、図示した例には限られない。短くてもよいし、破線でもよいし、その他の形態であってもよい。
【0166】
(変形例2)
上記実施形態では、制御開始前に充電ライン及び放電ラインを決める際に、充電ラインを消費電力の履歴が下回っている場合に充電を開始し、充電ラインを消費電力の履歴が上回っている場合に、充電を終了するというようにして、各種情報を制御部7が表示して、ユーザに二つのラインを決定させることとした。
【0167】
この点について、消費電力の履歴が一旦充電ラインを下回った時点で、充電を開始し、SOCが設定値(たとえば、100%)になるまで、充電を行うようにして、SOCや受電電力、消費電力を予測して、制御部7が、他の情報と共に表示するようにして、ユーザに二つのラインを決定させるようにしてもよい。
【0168】
ただし、制御部7は、充電中に、消費電力の履歴が放電ラインを超える場合は、受電を停止して、放電を開始するように、SOCや受電電力、消費電力を予測する。
なお、状況によっては、いつまで経っても、SOCが設定値に届かない可能性もあるので、制御部7は、適宜、設定時間が経過した時点で充電を停止するようにして、SOCや受電電力、消費電力を予測してもよい。
このときのSOCや受電電力、消費電力の変化又はその傾向の実施例を図20に示す。
【0169】
このような設定を用いた場合には、制御開始後は、多少、受電電力が増えてもSOCを増やしておくという運用になる。
そして、制御部7は、充電ラインを実際の消費電力が下回ったら、所定の設定値に到達するまで、設定時間の間、蓄電システム2に充電させる。設定時間内に、もし、実際の消費電力が放電ラインを上回った場合には、制御部7は、蓄電システム2への充電指令を停止して、放電指令に切り替える。
【0170】
(変形例3)
上記実施形態では、放電ライン及び充電ラインの両方を利用する場合を示したが、放電ラインだけを利用する場合や、充電ラインだけを利用する場合も本発明に含まれる。
放電ラインだけを使用する場合においては、充電をどのように行うかは任意である。たとえば、予め決められた条件を満たした場合に充電を行なってもよいし、予め決められた第2の値を用いて充電を行なってもよい。
充電ラインだけを使用する場合においては、放電をどのように行うかは任意である。たとえば、予め決められた条件を満たした場合に放電を行なってもよいし、予め決められた第1の値を用いて放電を行なってもよい。
この場合、放電指令信号送出手段と充電指令信号送出手段とは、少なくともいずれか一方が、EMS1に設けられていればよい。
【0171】
以上、本発明を詳細に説明してきたが、前述の説明はあらゆる点において本発明の例示にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。本明細書に開示されている発明の構成要件は、それぞれ独立に単独した発明として成立するものとする。各構成要件をあらゆる組み合わせ方法で組み合わせた発明も、本発明に含まれることとする。本明細書上の具体的な表現については、あくまでも、例示であり、本発明には、当該例示的表現を概念化したものも含まれることとする。
【産業上の利用可能性】
【0172】
本発明は、エネルギーマネージメントシステムに関し、産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0173】
1 エネルギーマネージメントシステム
2 蓄電システム
3 発電システム
4 負荷
5 受変電設備
6 系統
7 制御部
8 入力部
9 出力部
10 記憶部
11 操作部
12 表示部

【要約】
【課題】蓄電池の充放電の制御を容易に行うようにするためのエネルギーマネージメントシステムを提供する。
【解決手段】構内システムにおける消費電力を検出する検出手段と、消費電力の履歴を記憶しておく記憶手段と、検出手段によって検出された消費電力が第1の値を超えた場合に、蓄電システムに対して、放電を行うように指令する放電指令信号送出手段と、検出手段によって検出された消費電力が第2の値を下回った場合に、蓄電システムに対して、充電を行うように指令する充電指令信号送出手段とを備え、蓄電システムの充電及び/又は放電を制御するためのエネルギーマネージメントシステムであって、第1及び第2の値を設定するときに、第1及び第2の値に対応する放電ライン及び充電ラインを表示すると共に、記憶手段に記憶されている消費電力又は消費電力量の履歴を表示し、表示されている放電ライン及び充電ラインをユーザに決定させる。
【選択図】図12

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18A
図18B
図19A
図19B
図19C
図19D
図19E
図19F
図20