(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】矯正椅子
(51)【国際特許分類】
A61F 5/01 20060101AFI20240522BHJP
A47C 9/00 20060101ALI20240522BHJP
A61G 15/00 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
A61F5/01 D
A47C9/00 Z
A61G15/00 P
(21)【出願番号】P 2023195775
(22)【出願日】2023-11-17
【審査請求日】2023-11-22
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 第30条第2項適用、令和5年4月4日愛知県丹羽郡大口町竹田三丁目39 カイロプラクティックセンターエンゼルにて設置・実施
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594179270
【氏名又は名称】池尾 正雄
(74)【代理人】
【識別番号】100223907
【氏名又は名称】喜多 静夫
(72)【発明者】
【氏名】池尾 正雄
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05487590(US,A)
【文献】米国特許第04893808(US,A)
【文献】特開2018-042691(JP,A)
【文献】実開昭54-074190(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/00-02
A61G 13/00-15/12
A47C 1/00-9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矯正対象者が座る座面部(30b)と、
前記座面部の前上方に配置され、前記矯正対象者の顔が当てられ、前記矯正対象者の頭部を保持する顔当て枕(73)と、
前記顔当て枕を前後方向と一致する回動中心軸で回動させる回動機構(58、72)と、を有
し、
前記回動機構は、
前記座面部が取り付けられたフレーム(10、20)に取り付けられた固定部材(57)と、
前記顔当て枕が取り付けられ、前記固定部材に回動可能に取り付けられた回動部材(72)と、を備え、
前記固定部材及び前記回動部材は、板状であり、互いに重ね合わされて配置されていることを特徴とする矯正椅子。
【請求項2】
前記回動機構は、
前記固定部材に重ね合わされて取り付けられた第1摺動板(58)と、
前記回動部材に重ね合わされて取り付けられるとともに、前記第1摺動板と密着する第2摺動板(71)と、を更に備え、
前記第1摺動板及び前記第2摺動板は、自己潤滑性を有する材料で構成されていることを特徴とする請求項
1に記載の矯正椅子。
【請求項3】
前記回動部材の前記固定部材に対する回動範囲を制限する回動制限機構(57b、77)を更に有することを特徴とする請求項
1に記載の矯正椅子。
【請求項4】
前記回動制限機構は、
前記固定部材及び前記回動部材のいずれか一方に形成された回動制限溝(57b)と、
前記固定部材及び前記回動部材のいずれか他方に取り付けられ、前記回動制限溝に挿通するピン(77)とから構成されていることを特徴とする請求項
3に記載の矯正椅子。
【請求項5】
前記回動部材には、レバー(78)が取り付けられていることを特徴とする請求項
1に記載の矯正椅子。
【請求項6】
前記フレームは、
前記座面部が取り付けられた第1フレーム(10)と、
前記固定部材が取り付けられ、前記第1フレームに上下方向移動可能に取り付けられた第2フレーム(20)とから構成され、
前記第2フレームを上下方向に移動させる駆動部(21)を、更に有することを特徴とする請求項
1~
5のいずれか一項に記載の矯正椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、矯正椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1に示されるように、椅子本体の角度を任意に変更調整して、希望の姿勢で骨盤の歪みを矯正することができる矯正椅子が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示される矯正椅子では、骨盤の歪みを矯正することができても、脊椎の矯正を行なうことはできない。そこで、脊椎の矯正を行なうことができる矯正椅子が望まれていた。
【0005】
本発明は、脊椎を矯正することができる矯正椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた、請求項1に記載の発明である矯正椅子は、
矯正対象者が座る座面部(30b)と、
前記座面部の前上方に配置され、前記矯正対象者の顔が当てられ、前記矯正対象者の頭部を保持する顔当て枕(73)と、
前記顔当て枕を前後方向と一致する回動中心軸で回動させる回動機構(58、72)と、を有し、
前記回動機構は、
前記座面部が取り付けられたフレーム(10、20)に取り付けられた固定部材(57)と、
前記顔当て枕が取り付けられ、前記固定部材に回動可能に取り付けられた回動部材(72)と、を備え、
前記固定部材及び前記回動部材は、板状であり、互いに重ね合わされて配置されていることを特徴とする。
【0007】
これによれば、矯正対象者が、座面部に着座し、顔を顔当て枕に密着させた状態で、施術者が、顔当て枕を回動させることにより、矯正対象者の脊椎を正常な方向に矯正させることができる。この結果、矯正対象者の体が的確に動くようになる。
また、顔当て枕を確実に回動させる機構を実現することができる。
更に、顔当て枕が固定部材と回動部材との摺動面上を回動するので、顔当て枕が前後方向と一致する回動中心軸以外の回動中心軸で回動されることが阻止される。このため、顔当て枕に顔が密着された矯正対象者の脊椎が、矯正すべき方向以外の向きへの変形が抑制される。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記回動機構は、
前記固定部材に重ね合わされて取り付けられた第1摺動板(58)と、
前記回動部材に重ね合わされて取り付けられるとともに、前記第1摺動板と密着する第2摺動板(71)と、を更に備え、
前記第1摺動板及び前記第2摺動板は、自己潤滑性を有する材料で構成されていることを特徴とする。
【0013】
これによれば、互いに密着している第1摺動板及び第2摺動板が自己潤滑性を有するので、施術者は顔当て枕を軽い力で回動させることができる。また、摺動部分に注油を行う必要が無い。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記回動部材の前記固定部材に対する回動範囲を制限する回動制限機構(57b、77)を更に有することを特徴とする。
【0015】
これによれば、顔当て枕が施術者の意図を越えて回動してしまうことを防止することができる。このため、矯正対象者の脊椎の過大な変形を抑制することが可能となる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、
前記回動制限機構は、
前記固定部材及び前記回動部材のいずれか一方に形成された回動制限溝(57b)と、
前記固定部材及び前記回動部材のいずれか他方に取り付けられ、前記回動制限溝に挿通するピン(77)とから構成されていることを特徴とする。
【0017】
これによれば、回動部材の固定部材に対する回動範囲を確実に制限する機構を実現することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記回動部材には、レバー(78)が取り付けられていることを特徴とする。
【0019】
これによれば、施術者がレバーを把持することにより、容易に顔当て枕を回動させることができる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項1~5のいずれか一項に記載の発明において、
前記フレームは、
前記座面部が取り付けられた第1フレーム(10)と、
前記固定部材が取り付けられ、前記第1フレームに上下方向移動可能に取り付けられた第2フレーム(20)とから構成され、
前記第2フレームを上下方向に移動させる駆動部(21)を、更に有することを特徴とする。
【0021】
これによれば、矯正対象者の体格にあわせて、顔当て枕を適正な上下方向の位置に配置させることができる。また、駆動部によって、顔当て枕が取り付けられた第2フレームを移動させるので、顔当て枕の上下方向の調整が容易となる。
【0022】
なお、この欄及び特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例に過ぎず、特許権の権利範囲には影響を及ぼさないものとする。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態の矯正椅子の正面図である。
【
図2】
図1のA視図であり、本発明の一実施形態の矯正椅子の側面図である。
【
図3】
図2のB視図であり、本発明の一実施形態の矯正椅子の裏面図である。
【
図4】本発明の一実施形態の矯正椅子の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(撹拌装置の構造)
以下に、
図1~
図4を用いて、本発明の一実施形態である矯正椅子100について説明する。矯正椅子100は、脊椎の骨のズレや歪みを矯正するための椅子である。なお、脊椎には、頚椎、胸椎、腰椎、仙椎が含まれる。矯正椅子100は、第1フレーム10、第2フレーム20、駆動部21、座部30、支持枠31、回動用アクチュエータ35、胸当て40、手置台49、顔当て部70、操作部90を有している。
【0025】
第1フレーム10は、角パイプで構成された、第1部材11、第2部材12、第3部材13、第4部材14、第5部材15を有している。第1部材11は、前後方向に延在している。第1部材11の後端には、幅方向に延在する第2部材12の長手方向の中央部が接続されている。第1部材11の前端には、幅方向に延在する第3部材13の長手方向の中央部が接続されている。第1部材11~第3部材13を上面視すると、H型形状となっている。第4部材14は上下方向に延在し、その下端が第1部材11の後端部及び第2部材12の上面に接続している。第5部材15は、上下方向に延在し、その下端が第1部材11の前端部よりもやや後方位置の上面に接続している。
【0026】
第2部材12及び第3部材13の両端部の下面には、円盤形状の脚部18がねじ込まれている。
【0027】
座部30は、支持枠31を介して、第4部材14の上端に揺動可能に取り付けられている。座部30は、長方形板状の底板30aの上に、扁平なブロック状の座面部30bが貼り付けられている。座面部30bは、扁平なブロック状の発泡ウレタン等で構成された柔軟部材を、合成皮革や天然皮革等の表皮で包んだ構造のものである。底板30aの前後端には、長方形状の支持板30cが接続されて、この接続部から上方に向かって延在している。底板30aの延在方向と支持板30cの延在方向とは直交している。
【0028】
支持枠31は、基部31aと一対の支持部31bとから構成されている。基部31aは角パイプであり、その後端よりもやや前側の下面が第4部材14の上端に接続している。基部31aは、前側に位置するに従って下側に位置するように、水平方向に対して傾斜している。棒状の補強部材32の両端が、基部31aの前端よりも後側の下面と第4部材14の中間部に接続している。基部31aの両端部には、一対の板状の支持部31bが接続されている。座部30が基部31aの上方に配置され、一対の支持板30cが一対の支持部31bの内側に重ね合わされて配置されている。それぞれの支持部31bは、支軸33(
図1示)によって支持板30cに軸支されている。このような構成によって、座部30は、支持枠31に回動可能に軸支されている。座部30の回転軸は、前後方向と殆ど一致するが、前方に位置するに従って下側に位置するように水平方向から傾斜している。このため、座面部30bは、前方に位置するに従って下側に位置するように水平面から傾斜している。
【0029】
座面部30bは、回動用アクチュエータ35によって、回動し、またその回動位置が維持される。回動用アクチュエータ35は、本体部35aと、この本体部35aから退出する棒状の退出部35bを有している。本実施形態では、回動用アクチュエータ35は、電気モータを用いた電動式である。本体部35aの基端部は、ブラケット36を介して、第1部材11の後端よりもやや前側部分に軸支されている。退出部35bの先端は、ブラケット37を介して底板30aの幅方向の端部(本実施形態では左端部)に軸支されている。
【0030】
図2に示すように、第1フレーム10の後方の床には、操作部90が載置されている。操作部90と回動用アクチュエータ35とは電気的に接続されている。操作部90には、複数のボタン90aが設けられている。施術者がボタン90aを押圧すると、回動用アクチュエータ35が作動して、座面部30bが回動する。
【0031】
第2フレーム20は、角パイプ状であり、第5部材15内に挿通され、第5部材15から退出可能に、第5部材15に取り付けられている。駆動部21は、本体部21aと、この本体部21aから退出する棒状の退出部21bを有している。本体部21aの下端部は、ブラケット22を介して、第1部材11の前端よりもやや後方の位置に接続されている。退出部21bの先端は、ブラケット23を介して、第2フレーム20の中間部に接続されている。操作部90は、駆動部21と電気的に接続されている。施術者がボタン90aを押圧すると、駆動部21が作動して、第2フレーム20が第5部材15から退出し、後述する胸当て部42、手置台49、顎当て部54、一対の顔当て枕73の上下方向の位置を調整することができる。
【0032】
胸当て40は、基板41と、胸当て部42とから構成され、第2フレーム20の後方に配置されて取り付けられている。基板41は、長方形板状であり、上下方向と幅方向を含む面に延在している。胸当て部42は、基板41の後面に貼り付けられ、上述の柔軟部材を上述の表皮で包んだものである。
図4に示すように、胸当て部42は、上面視した場合に扁平な半円形状となるブロック形状である。胸当て部42は、矯正対象者の胸が当たるものである。
【0033】
図2に示すように、基板41の上部の前面には、ブラケット43が取り付けられている。ブラケット43は、第2フレーム20の上部の側面に軸支されている。基板41の下部の前面には、ブラケット44が取り付けられている。第2フレーム20の上下方向の中間部の側面には、板状の揺動部材45が揺動可能に取り付けられている。具体的には、揺動部材45には長穴45aが形成されている。そして、この長穴45aにレバー状の締結部材47の軸47aが挿通している。軸47aの先端にはネジ山が形成され、軸47aが第2フレーム20の側面に形成されたネジ穴(不図示)にねじ込まれている。揺動部材45とブラケット43とは軸支されている。このような構造により、締結部材47を緩めることにより、胸当て部42を上部側の軸支点を中心に回動させることができ、胸当て部42の後面の角度を調整することができる。締結部材47を締め付けると、胸当て部42が第2フレーム20に固定される。
【0034】
第2フレーム20の上下方向の中央部には、角パイブ状の支持部材48が取り付けられている。支持部材48は、第2フレーム20から前方に突出している。支持部材48には、扁平なブロック状の手置台49が載置されて取り付けられている。手置台49は、上述の柔軟部材を上述の表皮で包んだものである。手置台49の上面は、水平面と一致している。手置台49は、矯正対象者の手が置かれるものである。
【0035】
第2フレーム20の上端には固定板51が取り付けられている。固定板51上には、支持板52が固定板51と重ね合わされて載置されている。支持板52の後端部は、ボルト53によって、固定板51の後端部に回動可能に取り付けられている。
図4に示すように、支持板52の前端部には、円弧状の長穴52aが形成されている。レバー状の締結部材55の軸部55aが長穴52aに挿通している。軸部55aの先端には、ネジ山が形成されている。
図2に示すように、支持板52の前端部には、ネジ穴51aが形成されている。ネジ穴51aには、締結部材55の軸部55aの先端部がねじ込まれている。締結部材55を緩めると、支持板52が固定板51に対して揺動自在となる。一方で、締結部材55を締め付けると、支持板52が固定板51に固定される。
【0036】
支持板52の後端には、顎当て部54が取り付けられている。顎当て部54は、ブロック状の柔軟部材に表皮で包んだものである。
図4に示すように、顎当て部54は、上面視した場合に、扁平な半円形状となっている。顎当て部54は、矯正対象者の顎が当たるものである。
【0037】
支持板52上には、ヒンジ部材56が取り付けられている。ヒンジ部材56には、略長方形板状の固定部材57の下端部が取り付けられている。このような構造によって、固定部材57は、支持板52に揺動可能に取り付けられている。固定部材57の揺動中心軸は、幅方向と一致している。固定部材57は、鉄等の金属で構成されている。固定部材57の上端部には、幅方向に延在する棒状のハンドル69が取り付けられている。ハンドル69は、固定部材57の両側端から外側に突出して、施術者が把持できるようになっている。
【0038】
固定部材57の後面には、固定部材57と同一形状の第1摺動板58が複数のネジ59によって重ね合わされて取り付けられている。第1摺動板58は、自己潤滑性を有する低摩擦係数の合成樹脂等で構成されている。自己潤滑性を有する樹脂には、ポリアセタール、MCナイロン(モノマーキャストナイロン)、フッ素樹脂、ポリアミド等が含まれる。
【0039】
固定部材57の前面には、前方に突出するブラケット60が取り付けられている。ブラケット60の前端部には、揺動部材63が揺動可能に軸支されて取り付けられ、揺動部材63が垂れ下がっている。揺動部材63は、縦長な扁平な角パイプ状である。
【0040】
ヒンジ部材56の前方における支持板52上には、ブラケット61が取り付けられている。ブラケット61には、長方形板状の揺動片62の下端部が揺動可能に軸支されて取り付けられている。揺動片62には、長穴62aが形成されている。揺動片62の上部は、揺動部材63の下部に差し込まれている。レバー状の締結部材64(
図3、
図4示)の軸64a(
図2示)が、揺動片62の長穴62aに挿通している。軸64aの先端には、ネジ山が形成され、ナット65がねじ込まれている。このような構造によって、締結部材64を緩めると、固定部材57がその揺動中心軸を中心に揺動し、締結部材64を締め付けると、固定部材57が支持板52に対して固定される。
【0041】
顔当て部70は、第2摺動板71、回動部材72、一対の顔当て枕73を備えている。第2摺動板71及び回動部材72は、固定部材57及び第1摺動板58と同一形状の略長方形状板状である。第2摺動板71は、第1摺動板58と同様の自己潤滑性を有する低摩擦係数の合成樹脂等で構成されている。回動部材72は、鉄等の金属で構成されている。第2摺動板71は、回動部材72に重ね合わされて、複数のボルト74によって回動部材72に取り付けられている。
【0042】
一体となった第2摺動板71及び回動部材72は、その下端部において、一体となった固定部材57及び第1摺動板58の下端部に回動可能に軸支されて取り付けられている。本実施形態では、
図1や
図4に示すように、第2摺動板71、回動部材72、固定部材57、第1摺動板58の下端部に形成された連通穴71a、72a、57a、58aにボルト75の軸部75aが挿通して、一体となった第2摺動板71及び回動部材72が、一体となった固定部材57及び第1摺動板58に軸支されて取り付けられている。ボルト75の軸部の先端は、固定部材57の前面から突出し、ナット76(
図4示)が締結されている。
図4に示すように、回動部材72の回動中心軸Xは、前後方向と一致している。
【0043】
第2摺動板71は、第1摺動板58と重ね合わされて当接している。第1摺動板58及び第2摺動板71は、自己潤滑性を有する材料で構成されているので、回動部材72を回動させる摩擦抵抗は小さく、小さい力で回動部材72を回動させることができる。
【0044】
図3に示すように、固定部材57及び第1摺動板58の上部には、連通穴57a、58aを円弧の中心とする円弧状の回動制限溝57b、58bが連通形成されている。回動部材72には、回動制限溝57b、58b内に挿通するピン77が取り付けられている。このような構造によって、回動部材72の固定部材57に対する回動が制限される回動制限機構が構成されている。
【0045】
図1に示すように、回動部材72の後面には、一対の顔当て枕73が幅方向に間隔をあけて取り付けられている。顔当て枕73は、上下方向に縦長なブロック状である。顔当て枕73は、上述の柔軟部材の表面を上述の表皮で包んだものである。
図4に示すように、顔当て枕73は、上面視した場合に、中心角が90°の略扇形形状である。顔当て枕73は、断面形状が円弧となっている面が内側を向いている。一対の顔当て枕73の間には、前方に凹んだ凹部である保持凹部73aが形成されている。この保持凹部73aに矯正対象者の頭部が押し当てられて保持される。
図2に示すように、一対の顔当て枕73は、座面部30bの前上方に配置されている。
【0046】
回動部材72の上部であり、回動部材72の幅方向の中央部には、レバー78が取り付けられている。レバー78は、回動部材72の上端から上方に突出しており、把持可能となっている。
【0047】
(矯正椅子の使用方法)
以下に、矯正椅子100の使用方法について説明する。脊椎が歪んでいる矯正対象者を、胸が胸当て部42に当たるようにして、座面部30bに着座させる。この際に、手置台49に手を置いてもらい、顔を一対の顔当て枕73に密着してもらう。この状態では、矯正対象者の顔の中心は一対の顔当て枕73の間に位置し、矯正対象者の顔は一対の顔当て枕73の間、つまり、保持凹部73aに埋もれており、矯正対象者の頭部は、一対の顔当て枕73で保持されている状態である。
【0048】
施術者は、レバー78を把持して、回動部材72を回動させる。すると、一対の顔当て枕73で保持されている矯正対象者の頭部もまた回動し、矯正対象者の脊椎が屈曲する。施術者は、矯正対象者のズレた脊椎が正常な脊椎の位置となるように、レバー78を把持して、回動部材72を回動させる。次に、施術者は、ポインターなどと称される押圧具を使って、脊椎の突起に押圧力を加えて矯正する。場合によっては、施術者は、固定部材57を揺動させて、一対の顔当て枕73の揺動位置を変更し、或いは、支持板52を回動させて、一対の顔当て枕73の水平方向の回動位置を変更して、矯正対象者の脊椎を矯正する。
【0049】
(矯正椅子の効果)
以下に、本実施形態の矯正椅子100の効果について説明する。
矯正椅子100は、矯正対象者が座る座面部30bと、座面部30bの前上方に配置され、矯正対象者の顔が当てられ、矯正対象者の頭部を保持する顔当て枕73と、顔当て枕73を前後方向と一致する回動中心軸X(
図4示)で回動させる回動機構を有する。
【0050】
これによれば、矯正対象者が、座面部30bに着座し、顔を顔当て枕73に密着させた状態で、施術者が、顔当て枕73を回動させることにより、矯正対象者の脊椎を正常な方向に矯正させることができる。この結果、矯正対象者の体が的確に動くようになる。
【0051】
また、回動機構は、座面部30bが取り付けられたフレーム10、20に取り付けられた固定部材57と、顔当て枕73が取り付けられ、固定部材57に回動可能に取り付けられた回動部材72と、を備える。
【0052】
これによれば、顔当て枕73を確実に回動させる機構を実現することができる。
【0053】
また、固定部材57及び回動部材72は、板状であり、互いに重ね合わされて配置されている。
【0054】
これによれば、顔当て枕73が固定部材57と回動部材72との摺動面上を回動するので、顔当て枕73が前後方向と一致する回動中心軸X以外の回動中心軸で回動されることが阻止される。このため、顔当て枕73に顔が密着された矯正対象者の脊椎が、矯正すべき方向以外の向きへ変形されることが抑制される。
【0055】
また、回動機構は、固定部材57に重ね合わされて取り付けられた第1摺動板58と、回動部材72に重ね合わされて取り付けられるとともに、第1摺動板58と密着する第2摺動板71とを更に備えている。そして、第1摺動板58及び第2摺動板71は、自己潤滑性を有する材料で構成されている。
【0056】
これによれば、互いに密着している第1摺動板58及び第2摺動板71が自己潤滑性を有するので、施術者は顔当て枕73を軽い力で回動させることができる。また、摺動部分に注油を行う必要が無い。
【0057】
また、矯正椅子100は、回動部材72の固定部材57に対する回動範囲を制限する回動制限機構を更に有する。
【0058】
これによれば、顔当て枕73が施術者の意図を越えて回動してしまうことを防止することができる。このため、矯正対象者の脊椎の過大な変形を抑制することが可能となる。
【0059】
また、回動制限機構は、固定部材57に形成された回動制限溝57bと、回動部材72に取り付けられ、回動制限溝57bに挿通するピン77とから構成されている。
【0060】
これによれば、回動部材72の固定部材57に対する回動範囲を確実に制限する機構を実現することができる。
【0061】
また、回動部材72には、レバー78が取り付けられている。
【0062】
これによれば、施術者がレバー78を把持することにより、容易に顔当て枕73を回動させることができる。
【0063】
また、フレーム10、20は、座面部30bが取り付けられた第1フレーム10と、固定部材57が取り付けられ、第1フレーム10に上下方向移動可能に取り付けられた第2フレーム20とから構成されている。そして、矯正椅子100は、第2フレーム20を上下方向に移動させる駆動部21を更に有する。
【0064】
これによれば、矯正対象者の体格にあわせて、顔当て枕73を適正な上下方向の位置に配置させることができる。また、駆動部21によって、顔当て枕73が取り付けられた第2フレーム20を移動させるので、顔当て枕73の上下方向の調整が容易となる。
【0065】
(他の実施形態)
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う矯正椅子100もまた技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【0066】
以上説明した実施形態では、2つの顔当て枕73が幅方向に離間して配置されているが、幅方向の中央部に矯正対象者の顔が埋もれて、矯正対象者の頭部を保持する保持凹部73aが形成された顔当て枕73であってもよい。
【0067】
以上説明した実施形態では、回動部材72の回動範囲を制限する回動制限機構は、固定部材57及び第1摺動板58に形成された回動制限溝57b、58bと、回動部材72に取り付けられ回動制限溝57b、58b内に挿通するピン77とから構成されている。回動部材72及び第2摺動板71側に回動制限溝を形成し、この回動制限溝に挿通するピン77が固定部材57側に取り付けられて、回動制限機構が構成されている実施形態であってもよい。
【符号の説明】
【0068】
10 第1フレーム(フレーム)
20 第2フレーム(フレーム)
21 駆動部
57 固定部材(回動機構)
57b 回動制限溝(回動制限機構)
58 第1摺動板
71 第2摺動板
72 回動部材(回動機構)
73 顔当て枕
77 ピン
78 レバー
100 矯正椅子
【要約】
【課題】脊椎を矯正することができる矯正椅子を提供することを目的とする。
【解決手段】矯正椅子100は、矯正対象者が座る座面部30bと、座面部30bが取り付けられたフレーム10、20と、フレーム20に取り付けられた固定部材57と、固定部材57に前後方向と一致する回動中心軸で回動可能に取り付けられた回動部材72と、前記回動部材に取り付けられ矯正対象者の顔が当てられ、矯正対象者の頭部を保持する顔当て枕73を有する。
【選択図】
図1