(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 33/46 20200101AFI20240522BHJP
D06F 103/40 20200101ALN20240522BHJP
D06F 105/62 20200101ALN20240522BHJP
【FI】
D06F33/46
D06F103:40
D06F105:62
(21)【出願番号】P 2020100465
(22)【出願日】2020-06-09
【審査請求日】2023-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】512128645
【氏名又は名称】青島海爾洗衣机有限公司
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO HAIER WASHING MACHINE CO.,LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【氏名又は名称】大西 雅直
(72)【発明者】
【氏名】礒永 久史
【審査官】木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-016384(JP,A)
【文献】特開2004-049284(JP,A)
【文献】特開平11-207083(JP,A)
【文献】特開昭63-214280(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108330652(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0101512(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102660857(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 33/00
D06F 34/00
D06F 37/00
D06F 103/40
D06F 105/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に配置したドラムと、
前記筐体に開閉可能に設けたドアと、
前記ドアをドアロック状態またはロック解除状態に切り替えるドアロック装置と、
給水弁を有し前記ドラムに対して給水を行う給水路と、
主排水弁を有し前記ドラムに対して排水を行う主排水路と、
補助排水弁を有し前記ドラム内の残水を排水する補助排水路と、
前記ドアロック装置、前記給水弁、前記主排水弁および前記補助排水弁を制御する制御部と、
外部電源に接続されて前記ドアロック装置、前記給水弁、前記主排水弁及び前記制御部に給電を行う主給電回路と、
前記外部電源から供給される電力を蓄電する蓄電部と、
停電時に前記蓄電部の電力を前記制御部、前記ドアロック装置および前記補助排水弁に供給する補助給電回路と、を具備することを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
前記ドアロック装置、前記給水弁、前記主排水弁及び前記補助排水弁を第1電圧に基づいて駆動し、
前記制御部を第2電圧に基づいて駆動するように構成され、
前記蓄電部は前記第1電圧を蓄電し、
前記第2電圧は前記蓄電部の第1電圧を電圧変換して生成する、請求項1に記載の洗濯機。
【請求項3】
前記ドラム内の水位を検知する水位検知部を備え、
前記制御部は停電時に前記水位検知部の検出値に基づき、前記ドラム内に残水があると判断した場合に前記補助排水弁を制御して排水する、請求項1又は2に記載の洗濯機。
【請求項4】
前記制御部は前記ドラム内に残水があると判断した場合に、前記補助排水弁を制御して排水したうえで前記ドアロック装置のロック解除を行う、請求項3に記載の洗濯機。
【請求項5】
前記
蓄電部の電圧を監視する電圧監視部を備え、前記制御部は前記補助排水弁を制御して、排水中であっても、前記電圧監視部の監視する電圧が所定の閾値を下回った場合はロック解除を優先させる、請求項4に記載の洗濯機。
【請求項6】
前記ドラムは水平方向若しくは水平方向に対し傾斜した軸回りに取り付けられている、請求項4に記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばドアの開放を阻止するためのドアロック装置を備える洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗濯機はドアの開放を阻止するためのドアロック装置を有するのが一般的である。ドアロック装置は、制御部からの制御信号に従ってドアのロックおよびロック解除を行う。
【0003】
また制御部は、ドラムに対して給水や排水を行う給水路や排水路に設けられた給水弁、排水弁をも制御対象とする。給水弁や排水弁は、制御部からの制御信号に従って弁を開閉し、ドラムへの給水や排水を行う。
【0004】
制御部は、洗濯機の動作を制御するためのプログラムを記憶しており、そのプログラムにしたがってドアロック装置や排水弁、排水弁を制御する。
【0005】
ドアロック装置、給水弁、排水弁および制御部は、外部電源からの給電を受けて動作する。このため、洗濯機の稼働中に停電が発生すると、基本的に全ての機能が停止する。
【0006】
従来の停電対策として、特許文献1~3に示すものが提示されている。特許文献1では、停電や断線により商用電源から電力が供給できない場合に、乾電池等からドアロック装置のソレノイドに電力を供給してドアのロック解除を行うように構成されている。
【0007】
特許文献2では、ドアロックと連動したラッチ付接点を電源リレーと並列に接続することにより、運転途中に停電したことを検出し、電源復帰後に自動で工程途中から運転を再開できるように構成されている。
【0008】
特許文献3では、ブレーキが故障した状態で停電後再運転した場合に、脱水槽が停止するために必要な所定の時間経過後すなわち回転停止後にしかドアロックを解除できないようにして、安全性を担保した洗濯機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2002-70388号公報
【文献】特開2009-78025号公報
【文献】特開2010-88761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
電力事情が悪い地域や、災害に見舞われた地域などでは、停電は頻繁に起こり直ぐには復旧しない場合がある。停電時に衣類が閉じ込められることを防ぐ対処としては、上記特許文献1に示される構成が一つの有効な手段となり得る。
【0011】
しかし、ドアロックを解除するにしても、残水がある場合は大量に水を吸った衣類を取り出さなければならない。特に、水平もしくは水平に対して傾斜した軸回りに回転するドラム式の洗濯機の場合は、残水がある間はドアを開くことができない構造や制御シーケンスになっているのが通例である。このような残水の観点から、新たな停電対策を講じることが必要となる。
【0012】
本発明は、停電時の残水を考慮して、適切にドアロックを解除し衣類を取り出せる洗濯機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち、本発明の洗濯機は、筐体内に配置したドラムと、前記筐体に開閉可能に設けたドアと、前記ドアをドアロック状態またはロック解除状態に切り替えるドアロック装置と、給水弁を有し前記ドラムに対して給水を行う給水路と、主排水弁を有し前記ドラムに対して排水を行う主排水路と、補助排水弁を有し前記ドラム内の残水を排水する補助排水路と、前記ドアロック装置、前記給水弁、前記主排水弁および前記補助排水弁を制御する制御部と、外部電源に接続されて前記ドアロック装置、前記給水弁、前記主排水弁及び前記制御部に給電を行う主給電回路と、前記外部電源から供給される電力を蓄電する蓄電部と、停電時に前記蓄電部の電力を前記制御部、前記ドアロック装置および前記補助排水弁に供給する補助給電回路と、を具備することを特徴とする。
【0014】
本発明の洗濯機において、前記ドアロック装置、前記給水弁、前記主排水弁及び前記補助排水弁を第1電圧に基づいて駆動し、前記制御部を第2電圧に基づいて駆動するように構成され、前記蓄電部は前記第1電圧を蓄電し、前記第2電圧は前記蓄電部の第1電圧を電圧変換して生成することが好適である。
【0015】
本発明の洗濯機において、前記ドラム内の水位を検知する水位検知部を備え、前記制御部は停電時に前記水位検知部の検出値に基づき、前記ドラム内に残水があると判断した場合に前記補助排水弁を制御して排水することが好適である。
【0016】
本発明の洗濯機において、前記制御部は前記ドラム内に残水があると判断した場合に、前記補助排水弁を制御して排水したうえで前記ドアロック装置のロック解除を行うことが好適である。
【0017】
本発明の洗濯機において、前記蓄電部の電圧を監視する電圧監視部を備え、前記制御部は前記補助排水弁を制御して、排水中であっても、前記電圧監視部の監視する電圧が所定の閾値を下回った場合はロック解除を優先させることが好適である。
【0018】
本発明の洗濯機において、前記ドラムは水平方向若しくは水平方向に対し傾斜した軸回りに取り付けられていることが好適である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の洗濯機は、ドアをドアロック状態またはロック解除状態に切り替えるドアロック装置と、補助排水弁を有しドラムの残水を排水する補助排水路と、ドアロック装置および補助排水弁を制御する制御部と、外部電源から供給される電力を蓄電する蓄電部と、停電時に蓄電部の電力を制御部、ドアロック装置および補助排水弁に供給する補助給電回路とを備える。
【0020】
これにより、停電時に制御部の機能を担保し、かつドアロック装置および補助排水弁の動作を確保することで、停電時にドアを開けることができ、また、停電時にある程度水の抜けた状態で衣類を取り出すことができる。
【0021】
本発明の洗濯機では、蓄電部がドアロック装置を駆動すべく第1電圧を蓄電し、補助排水弁を駆動する第2電圧は第1電圧を電圧変換して生成するため、蓄電部が1つで済み、構成の簡素化を図ることができる。
【0022】
本発明の洗濯機では、ドラム内の水位を検知する水位検知部を備え、制御部はドラム内に残水があると判断した場合に補助排水弁を制御して排水するので、補助排水弁の作動を必要時のみに制限して、無駄な電力消費を抑えることができる。
【0023】
本発明の洗濯機では、制御部は残水がある場合に補助排水弁を制御して排水したうえでドアロック装置のロック解除を行うので、残水がある間はドアを開けることができない場合や、残水状態でドアをあけて衣類を取り出すことが望ましくない場合に有効となる。
【0024】
本発明の洗濯機では、蓄電池の電圧を監視する電圧監視部を備え、制御部は補助排水弁を制御して、排水中であっても、電圧監視部の監視する電圧が所定の閾値を下回った場合はロック解除を優先させるので、蓄電量が不十分となってソレノイドの励磁エネルギーが失われる前にロックを解除することができる。
【0025】
本発明の洗濯機において、ドラムが水平方向若しくは水平方向に対し傾斜した軸回りに取り付けられ、残水がある間はドアが開けられない構造やシーケンス制御を伴うものにおいては、排水したうえでドアロック装置のロック解除を行うシーケンスを実行することで、停電時に確実な衣類の取り出しを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施形態に係る洗濯機100の模式的な断面図である。
【
図2】
図1の洗濯機100の給電系統及び制御系統を示すブロック図である。
【
図3】
図2の洗濯機100の具体的な回路図である。
【
図4】
図1の洗濯機100の給電系統及び制御系統を示すタイミングチャート図である。
【
図5】
図1の洗濯機100の給電系統及び制御系統を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態の洗濯機100について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る洗濯機100の模式的な断面図、
図2はその電力系統及び制御系統を示すブロック図である。
【0028】
洗濯機100は、筐体1内に配置したドラム2と、筐体1に開閉可能に設けたドア3と、ドア3をドアロック状態またはロック解除状態に切り替えるドアロック装置4と、給水弁5aを有しドラム2に対して給水を行う給水路5と、主排水弁6aを有しドラム2に対して排水を行う主排水路6と、ドアロック装置4、給水弁5aおよび主排水弁6aを制御する制御部7と、外部電源8に接続されてドアロック装置4、給水弁5a、主排水弁6a及び制御部7に給電を行う主給電回路9と、を備える。
【0029】
洗濯機100は、箱形状の筐体1の内部に、略円筒形状の外槽10が配置され、外槽10の内部に、洗濯物を収容するための略円筒形状のドラム2が水平方向に沿って前後方向に延伸する主軸11により軸支されている。外槽10の前面に形成された衣類投入口10aは、ドア3により開閉され、ドア3が開放された状態でドラム2内に対して洗濯物の出し入れが可能となっている。
【0030】
ドラム2は、主軸11の軸心周りを回転可能である。ドラム4の周面には、多数の通液孔2aが穿設されており、洗浄やすすぎ時に外槽10内に供給された水や溶剤は、通液孔2aを通してドラム2内へ流入し、遠心脱液時にドラム2内で洗濯物から吐き出された水や溶剤は、通液孔2aを通して外槽10側へと飛散する。
【0031】
主軸11は、外槽10の背面壁に装着された軸受11aによって回転自在に支承され、さらに後方に突出した主軸11の先端には、主プーリ12が取り付けられている。筐体1の底部には、モータ13が設置され、モータ13の回転軸に、モータプーリ14が取り付けられている。モータプーリ14の回転動力は、タイミングベルト15を介して主プーリ12に伝達される。これにより、モータ13が駆動されると、モータ13の回転速度が所定の減速比で減速された回転速度で、ドラム2が主軸11の軸心まわりに回転する。
【0032】
筐体1の前面には、ドア3の開放を阻止するためのドアロック装置4が設置されている。ドアロック装置4は、ドラム2の回転数が予め定めた所定回転数以下の場合に、ドア6の開放が可能であるロック解除状態となるように制御され、ドラム4の回転数が所定回転数を越える場合に、ドア6の開放が不可能であるドアロック状態となるように制御される。
【0033】
ドアロック装置4は、係止部4aを有しており、係止部4aは、ドアロック状態においてドア3の開放を阻止するためにドア3を係止する係止位置に配置されると共に、ロック解除状態においてドア3の開放を可能とするためにドア3を係止しない解除位置に配置される。
【0034】
ドアロック装置4は、係止部4aの位置を係止位置及び解除位置のいずれかに切り替えるために、駆動装置としてのソレノイド4bを含んでいる。
【0035】
給水路5は、外槽10の背面壁の上部を貫通する位置に設けられた配管によって構成されたもので、給水弁5aを備え、給水弁5aが開放されると、水や溶剤が給水路5を介して外槽10へと供給される。供給された水や溶剤は通液孔2aを介してドラム2内にも供給される。
【0036】
排水路は6、外槽2の底部を貫通する位置に設けられた配管によって構成されたもので、排水弁6aを備え、排水弁6aが開放されると、ドラム2内や外槽10内に供給された水や溶剤が排水路6を通して機外へと排出される。
【0037】
洗濯機100の制御部7は、例えば、マイクロコンピュータなどで構成されており、CPUと、洗濯機100の動作を制御するプログラムが格納されたROMと、上記プログラムを実行する際に用いられるデータ等が一時的に記憶されるRAMとを備えている。洗濯機100の運転動作は、制御部7によって制御される。
【0038】
制御部7は、ドアロック装置4のロック状態や、給水弁5a、主排水弁6aの開閉状態を制御する。
【0039】
電力系統としては、外部電源に接続されてドアロック装置4、給水弁5a、主排水弁6a及び制御部7に給電を行う主給電回路9が外部電源接続部16を介して外部電源8に接続されている。外部電源8は商用の場合は三相の交流電源であるが、家庭用の場合は二相の交流電源である。
【0040】
このような構成において、例えばドラム2内に注水され且つドアロック装置4がドアロック状態で運転が開始された後に停電が発生すると、ドア3がロック状態のままで制御部7やドアロック装置4、主排水弁6a等が作動し得ない状態となり、衣類が水や溶剤とともに閉じ込められる。
【0041】
そこでこの洗濯機100は、上記構成に加えて、補助排水弁17aを有しドラム2内の残水を排水する補助排水路17と、外部電源8より導入される電力を蓄電する蓄電部18と、蓄電部18に接続されて停電時に制御部7、ドアロック装置4および補助排水弁17aに給電を行う補助給電回路19と、を備える。
【0042】
補助排水路17は、主排水路6とは別経路でドラム2や外槽10内の水や溶剤を機外へ排出するために設けられる。この実施形態の補助排水路17は、主排水路6とは異なる位置において外槽10を貫通する位置に設けた配管によって構成され、補助排水弁17aの下流の配管が主排水路6のうち主排水弁6aの下流の配管に合流させてある。勿論、主排水路6のうち主排水弁5aの上流の配管から補助排水路17の配管を分岐させてもよいし、補助排水路17のうち補助排水弁17aの下流側の配管を主排水路6の配管に合流させなくてもよい。
【0043】
補助排水弁17aも、制御部7によって開閉制御がなされるように、制御部7には必要なプログラムやデータが格納してある。
【0044】
補助排水弁17aは、停電時に蓄電部18の電力を利用して駆動する緊急用であって電力消費量を抑える必要がある。そのため、補助排水弁17aは主排水弁6aよりも小さく、補助排水路17の配管も主排水路6の配管より細径のものが用いられる。
【0045】
蓄電部18は、外部電源接続部16が外部電源8に接続されている間に、外部電源8の電力を直流電力として蓄電する。
【0046】
補助給電回路19は、停電時に主給電回路9の代替回路となるもので、停電時に蓄電部18の電力を制御部7、ドアロック装置4および補助排水弁17aに供給する。
【0047】
これにより、停電時にドアロック装置4のロック解除、ドラム2や外槽10内の残水の排水が可能になる。
【0048】
図3は、
図2のブロック図の具体的な一態様を示す回路図である。外部電源接続部16は、外部電源8である商用のAC200Vに接続される。家庭用の場合はAC100Vである。この外部電源接続部16には整流回路20が接続され、整流回路20はAC200Vを例えばDC310Vに変換する。整流回路20にはDC-DCコンバータ等の主電圧変換部21が接続され、主電圧変換部21は第1出力端子21aに第1電圧であるDC12Vを、第2出力端子21bに第2電圧であるDC5Vを出力する。
【0049】
第1出力端子21aには本発明の蓄電部18として機能するチャージ回路22が接続される。チャージ回路22はDC12Vを蓄電しつつ、出力端子に電圧Vcap1を出力する。このVcap1は本実施形態の場合第1電圧に等しく12Vである。チャージ回路22は、停電後の所定時間の間、ドアロック装置4のソレノイド4bと補助排水弁17aを励磁するに足るエネルギー量を蓄電する。
【0050】
電圧Vcap1は、ドアロック装置4に設けられたソレノイド制御回路40に入力される。ソレノイド制御回路40は、制御部7を構成するマイクロコンピュータユニット(以下、「マイコン」と略称する)70の施解錠信号を受けて、ドアロック装置4に対して給電とともにソレノイド4bの駆動を行う。
【0051】
電圧Vcap1はまた、給水弁5aに付随する給水制御回路50、主排水弁6aに付随する主排水制御回路60、補助排水弁17aに付随する補助排水制御回路170に入力される。給水制御回路50、主排水制御回路60、補助排水制御回路170は、マイコン70の指令を受けて、それぞれ給水弁5a、主排水弁6a、補助排水弁17aの開閉制御を行う。
【0052】
マイコン70は、制御電圧VDDによって動作する。制御電圧VDDは、主電圧変換部21の第2出力端子21bからリレー23を介してマイコン70に供給される。リレー23はC接点方式のもので、通常時は接点がNO側にあり、DC5Vをそのまま制御電圧VDDとしてマイコン70に入力する。
【0053】
リレー23は主電力変換部21の出力電圧DC12Vが停電時に開放電圧よりも下回ると、接点がNO側からNC側に切り替わる。チャージ回路22にはレギュレータ等の副電圧変換部24が接続され、副電圧変換部24はチャージ回路22の電圧Vcap1を電圧Vcap2に変換してリレーのNC端子に入力する。Vcap2はDC5Vに設定され、この電圧DC5Vが制御電圧VDDとしてマイコン70に入力される。
【0054】
主給電回路9は、外部電源接続部16、整流回路20、主電圧変換部21、チャージ回路22を結ぶライン、および、チャージ回路22とドアロック装置制御回路40、給水制御回路50、主排水制御回路60をそれぞれ結ぶラインに構成され、非停電時にドアロック制御回路40、給水制御回路50、主排水制御回路60に給電を行う。また、主給電回路8は、外部電源接続部16、整流回路20、主電圧変換部21、リレー23、マイコン70を結ぶラインに構成され、非停電時にマイコン70に給電を行う。
【0055】
補助給電回路19は、チャージ回路22とドアロック制御回路40、補助排水制御回路170をそれぞれ結ぶラインに構成され、停電時にチャージ回路22からドアロック制御回路40、補助排水制御回路170に電圧Vcap1の給電を行う。また、補助給電回路19は、チャージ回路22、副電圧変換部24、リレー23、マイコン70を結ぶラインに構成され、停電時にチャージ回路22からマイコン70に電圧Vcap2を制御電圧VDDとして給電する。
【0056】
マイコン70には、外槽10内の水位を検知する水位検知部たる水位センサ25が接続され、非停電時、停電時を問わず水位信号がマイコン70に入力される。水位センサ25は、例えば水位に応じて昇降するフロートを通じて残水の有無を検知する。
【0057】
マイコン70には、チャージ回路22の蓄電状況をみるために電圧監視部26が接続されている。電圧監視部26は、チャージ回路22の出力電圧Vcap1を入力し、チャージ電圧に応じたレベル信号をマイコン70に入力する。
【0058】
マイコン70には、停電を検知するために停電検知部27が接続される。停電検知部27は、整流回路20の出力端子から電圧DC310Vが出力されているかを検知するために、当該出力端子に現れる電圧を入力し、その電圧に応じたレベル信号をマイコン70に入力する。
【0059】
図4は停電時にマイコン70が行うシーケンス制御を示すタイミングチャート図であり、
図5はそのシーケンス制御の流れを示すフローチャート図である。
【0060】
<非停電時>
非停電時は、停電検知部27はDC310Vを検知している。リレー23はNO接点側にあり、チャージ回路22はドアロック装置4のソレノイド4bと補助排水弁5aを駆動できるエネルギーを蓄える。通常時はドアロック制御装置7、給水弁5a、主排水弁6aに各々付随するドアロック制御回路40、給水制御回路50、主排水制御回路60にチャージ回路22の出力電圧Vcap1が供給され、マイコン70にリレー23のNO端子側から制御電圧VDDが供給される。
【0061】
<ステップS1>
停電が発生すると、AC200Vの供給が無くなるため、その後まもなく整流後のDC電圧(DC310V,DC12V,DC5V)も下降する。停電検知部27はDC310Vから0Vに向かう主電圧変換部21の入力電圧変化を検知する。これに伴い、制御電圧VDDもDC5Vから電圧降下し始める。
【0062】
<ステップS2>
停電時に主電圧変換部21からのDC12Vがリレー23の開放電圧よりも下回ると、接点がNO側からNC側に自動的に切り替わる。このため、チャージ回路22から副電圧変換部24を経て供給される電圧Vcap2が代替え電源VDDとしてマイコン70に供給される。その結果、VDDは電圧を持ち直す。
【0063】
<ステップS3>
マイコン70は停電を検知すると、水位センサ25からの信号により、現時点の水位を検知し、ドラム2や外槽10内に残水があるか否かを判定する。
【0064】
<ステップS4>
残水があると判断場合は、後述するステップS7でチャージ回路22の電圧が降下していない場合、チャージ回路22に蓄えられたエネルギーを利用し、マイコン70からの指令により補助排水弁17の補助排水制御回路170を駆動して補助排水を行う。
【0065】
<ステップS5,S6>
ステップS3で残水がない場合、または残水の排水後にドラム2や外槽10内に残水が無くなったことをマイコン70が判定したのちに、ドアロック装置4の動作タイミングとして予め定めた所定のロック解除条件を満たした段階で(ステップS5)、チャージ回路22に蓄えられたエネルギーを利用し、ソレノイド4bを励磁し、ドアロック装置4のロックを解除する(ステップS6)。所定の条件は、水位検知後に設定時間を経過した場合やボタン操作が行われた場合など、トリガーとして事前に種々に設定することができる。ドアロック装置4のロックが解除されたら、ドア3を開けて衣類を取り出すことができる。
【0066】
<ステップS7>
なお、ステップS3で残水があっても、チャージ回路22のチャージ電圧がソレノイド4bの励磁エネルギーを確保できる閾値を超えて降下した場合は、補助排水弁17aの動作中においても、ドア3のロック解除を優先させる。
【0067】
本実施形態の洗濯機100は、機械構成として、筐体1内に配置したドラム2と、筐体1に開閉可能に設けたドア3と、ドア3をドアロック状態またはロック解除状態に切り替えるドアロック装置4と、給水弁5aを有しドラム2に対して給水を行う給水路5と、主排水弁6aを有しドラム2に対して排水を行う主排水路6と、補助排水弁17aを有しドラム2の残水を排水する補助排水路17とを備える。
【0068】
またこの洗濯機100は、電力系統および制御系統として、ドアロック装置4、給水弁5a、主排水弁6aおよび補助排水弁17aを制御回路40,50,60,170を通じて制御する制御部たるマイコン70と、外部電源8に接続されてドアロック装置4、給水弁5a、主排水弁6a及びマイコン70に給電を行う主給電回路9と、外部電源8から供給される電力を蓄電する蓄電部たるチャージ回路22と、停電時にチャージ回路22の電力をマイコン70に供給するとともにドアロック装置4および補助排水弁17aに供給する補助給電回路19と、を備える。
【0069】
これにより、停電時にマイコン70の機能を担保し、かつドアロック装置4および補助排水弁17aの動作を確保することで、停電時にドア3を開けることができ、また、停電時にある程度水の抜けた状態で衣類を取り出すことができる。
【0070】
本実施形態の洗濯機100において、ドアロック装置4、給水弁5a、主排水弁6a及び補助排水弁17aを第1電圧(12V、Vcap1)に基づいて駆動し、マイコン70を第2電圧(5V、Vcap2)に基づいて駆動するように構成され、チャージ回路22は第1電圧Vcap1を蓄電し、第2電圧Vcap2はチャージ回路22の第1電圧Vcap1を電圧変換して生成する。これにより、チャージ回路22が1つで済み、コストの削減を図ることができる。
【0071】
また、非停電時は主電圧変換部21からリレー23を介してマイコン70に制御電圧VDDの給電を行い、停電時のみチャージ回路22から第2変換部24及びリレー23を介してマイコン70に制御電圧VDD相当の電圧Vcap2を給電する。マイコン70には洗濯待機時においても常時24時間通電されるため、上記のように非停電時はチャージ回路22を経ずに給電を行うことにより、非停電時のチャージ回路22に含まれるコンデンサ等の素子の劣化を抑えることができる。
【0072】
本実施形態の洗濯機100は、ドラム2内の水位を検知する水位検知部25を備え、マイコン70は停電時に水位検知部25の検出値に基づき、ドラム2内に残水があると判断した場合に補助排水弁17aを制御して排水する。これにより、残水があるときのみ補助排水弁17aを駆動し、それ以外は駆動しないので、無駄な電力消費が抑えられる。
【0073】
本実施形態の洗濯機100において、マイコン70はドラム2内に残水があると判断した場合に、補助排水弁17aを制御して排水したうえでドアロック装置4のロック解除を行う。このため、残水状態でドア3を開けることができない場合や、残水状態でドア3をあけて衣類を取り出すことが望ましくない場合に有効となる。
【0074】
本実施形態の洗濯機100は、チャージ回路22の電圧を監視する電圧監視部26を備え、マイコン70は補助排水弁17aを制御して排水中であっても、電圧監視部26の監視する電圧が所定の閾値を下回った場合はロック解除を優先させる。このため、蓄電量が低下してソレノイド4aの励磁エネルギーが失われる前にロックを解除することができる。
【0075】
本実施形態の洗濯機100において、ドラム2は水平方向に延伸する主軸11の回りに取り付けられている。特に、このような洗濯機100は残水状態でドア3が開けられないので、排水したうえでドア3を開ける本実施形態のシーケンスが有効となる。
【0076】
以上、本発明の実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0077】
上記実施形態では主電圧変換部21はDC-DCコンバータ、副電圧変換部24はレギュレータによって構成したが、電圧変換ができればこれに限らず、適宜のものを採用することができる。
【0078】
上記実施形態では主電圧変換部21は第1電圧12Vと第2電圧5Vを出力し、第2電圧5Vはリレー23を介して制御電圧VDDとして利用するものであった。これに対して、
図6に示すように、主電圧変換部21が第1電圧12Vのみを出力する場合には、平常時においても、チャージ回路22から副電圧変換部24を経て出力される第2電圧相当の電圧Vcap2を制御電圧VDDとしてマイコン70に給電する構成にしてもよい。
【0079】
上記実施形態では副電圧変換部24で第2電圧に相当する電圧Vcap2を生成し、停電時にリレー23を動作させてマイコン70に制御電圧Vcap2を供給したが、
図7に示すようにリレーを無くし、主電圧変換部21の第2電圧(DC5V)についてもチャージ回路22aを設けて蓄電し、これを制御電圧相当の電圧Vcap2として出力する構成にしてもよい。
【0080】
上記実施形態では非停電時にチャージ回路22を出た電圧Vcap1をドアロック装置4や給水制御回路50、主排水制御回路60に供給したが、
図8に示すように主電圧変換部21とチャージ回路22の間のDC12Vをドアロック装置4や給水制御回路50、主排水制御回路60に給電する構成にしてもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、水平方向に沿った主軸11の周りを回転可能なドラム4を有する洗濯機100について説明したが、本発明は、水平方向に対して傾斜する主軸の周りを回転可能なドラム4を有する洗濯機にも適用可能である。また、本発明は、鉛直方向に沿った回転軸の周りを回転可能な洗濯槽(ドラム)を有する縦型洗濯機にも適用可能である。
【0082】
上記実施形態において、ドアロック装置4は、係止部4aを駆動する駆動装置としてソレノイド4bを有しているが、駆動装置は、それに限られない。ドアロック装置4において、例えば駆動装置としてのモータにより係止部4aを駆動してよい。
【0083】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0084】
1 筐体
2 ドラム
3 ドア
4 ドアロック装置
5 給水路
5a 給水弁
6 主排水路
6a 主排水弁
7 制御部
8 外部電源
9 主給電回路
17 補助排水路
17a 補助排水弁
18 蓄電部
19 補助給電回路
22 蓄電部(チャージ回路)
25 水位検知部
26 電圧監視部
70 制御部(マイコン)
100 洗濯機
VDD,Vcap1 第1電圧
Vcap2 第2電圧