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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】回転電機、及び回転電機の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/28 20060101AFI20240522BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
H02K1/28 A
H02K15/02 K
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020118057
(22)【出願日】2020-07-08
(65)【公開番号】P2022015319
(43)【公開日】2022-01-21
【審査請求日】2023-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505336622
【氏名又は名称】株式会社TOP
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上野 清香
(72)【発明者】
【氏名】三好 広之
【審査官】島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-102049(JP,A)
【文献】特開2006-129583(JP,A)
【文献】特開2014-128115(JP,A)
【文献】特開2020-061808(JP,A)
【文献】特開2010-063351(JP,A)
【文献】特開2017-103851(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/28
H02K 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸に取り付けられて、前記回転軸の軸方向に並ぶ第1ロータコア及び第2ロータコアを含むロータと、を備え、
前記第1ロータコアは、前記第2ロータコア側の表面に、凹部が形成され、
前記第2ロータコアは、前記第1ロータコア側の裏面に、前記第1ロータコアの凹部に嵌め合う凸部が形成されており、
前記第1ロータコアは、前記第2ロータコア側の表面に、複数の凹部が周方向に並んで複数形成され、周方向に隣り合う一対の前記凹部を複数含むように、3つ以上の前記凹部が形成されており、一対の前記凹部同士のなす角度が、他の一対の前記凹部同士のなす角度とは異なるものを含むように、前記凹部が形成されており、
前記第1ロータコアと前記第2ロータコアとは同じロータコアであり、
前記凹部同士のなす角度は、スキュー角度により設定される、
回転電機。
【請求項2】
前記第1ロータコアの複数の前記凹部の一部は、前記第2ロータコア側の表面から反対側の裏面まで貫通する貫通穴であり、前記貫通穴以外の前記凹部は、前記裏面まで貫通しない窪みである、請求項に記載の回転電機。
【請求項3】
前記第2ロータコアは、前記第1ロータコア側の裏面と反対側の表面の、前記軸方向において前記凸部と重なる位置に、凹部が形成されている、請求項1又は請求項2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記ロータは、前記軸方向において前記第2ロータコアの前記第1ロータコア側とは反対側に設けられる第3ロータコアをさらに含み、
前記第3ロータコアは、前記第2ロータコア側の裏面に、前記第2ロータコアの前記凹部が嵌め合わされる凸部が形成されている、請求項に記載の回転電機。
【請求項5】
表面に凹部が形成される第1ロータコアと、裏面に凸部が形成される第2ロータコアと、回転軸とを備える回転電機の製造方法であって、
前記第1ロータコアは、前記第2ロータコア側の表面に、複数の凹部が周方向に並んで複数形成され、周方向に隣り合う一対の前記凹部を複数含むように、3つ以上の前記凹部が形成されており、一対の前記凹部同士のなす角度が、他の一対の前記凹部同士のなす角度とは異なるものを含むように、前記凹部が形成されており、
第1ロータコアの複数の前記凹部の一部は、前記第2ロータコア側の表面から反対側の裏面まで貫通する貫通穴であり、
前記貫通穴にピンを挿入して前記第1ロータコアの位置決めを行いつつ、前記回転軸に前記第1ロータコアを圧入して取り付ける第1ステップと、
前記第1ロータコアと前記第2ロータコアとがステップスキューを構成するように、前記第1ロータコアの前記凹部に前記第2ロータコアの前記凸部を嵌め合わせつつ、前記第1ステップで前記第1ロータコアを取り付けた方向と同じ方向から、前記回転軸に前記第2ロータコアを圧入して取り付ける第2ステップと、
を含む、回転電機の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機、及び回転電機の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばパワーステアリングシステム用などの回転電機(モータ)は、回転軸とロータとステータとを備えている。ロータには開口が形成されており、その開口に回転軸が挿入されて、ロータが回転軸に対して固定されている。例えば特許文献1には、回転軸の軸方向に複数のロータコアが並んだ回転電機が記載されている。特許文献1では、それぞれのロータコアが、回転軸の回転方向に互いにずれて取り付けられることで、ステップスキューを構成する旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-236592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような回転電機においては、複数のロータコアが回転軸に対して固定されているが、例えば回転軸に対するロータコアの固定力が不十分である場合には、回転軸の回転にロータが追従できなくなり、モータの動作不良を招くおそれがある。そのため、複数のロータコアが回転軸に取り付けられる回転電機において、ロータコアの空転を防止することが求められている。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、複数のロータコアが回転軸に取り付けられる回転電機において、ロータコアの空転を防止できることが可能な回転電機、回転電機の製造方法及びロータユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る回転電機は、回転軸と、前記回転軸に取り付けられて、前記回転軸の軸方向に並ぶ第1ロータコア及び第2ロータコアを含むロータと、を備え、前記第1ロータコアは、前記第2ロータコア側の表面に、凹部が形成され、前記第2ロータコアは、前記第1ロータコア側の裏面に、前記第1ロータコアの凹部に嵌め合う凸部が形成されており、前記第1ロータコアは、前記第2ロータコア側の表面に、複数の凹部が周方向に並んで複数形成され、周方向に隣り合う一対の前記凹部を複数含むように、3つ以上の前記凹部が形成されており、一対の前記凹部同士のなす角度が、他の一対の前記凹部同士のなす角度とは異なるものを含むように、前記凹部が形成されており、前記第1ロータコアと前記第2ロータコアとは同じロータコアであり、前記凹部同士のなす角度は、スキュー角度により設定される
【0007】
前記第1ロータコアは、前記第2ロータコア側の表面に、複数の凹部が周方向に並んで複数形成され、周方向に隣り合う一対の前記凹部を複数含むように、3つ以上の前記凹部が形成されており、一対の前記凹部同士のなす角度が、他の一対の前記凹部同士のなす角度とは異なるものを含むように、前記凹部が形成されていることが好ましい。
【0008】
前記第1ロータコアの複数の前記凹部の一部は、前記第2ロータコア側の表面から反対側の裏面まで貫通する貫通穴であり、前記貫通穴以外の前記凹部は、前記裏面まで貫通しない窪みであることが好ましい。
【0009】
前記第2ロータコアは、前記第1ロータコア側の裏面と反対側の表面の、前記軸方向において前記凸部と重なる位置に、凹部が形成されていることが好ましい。
【0010】
前記ロータは、前記軸方向において前記第2ロータコアの前記第1ロータコア側とは反対側に設けられる第3ロータコアをさらに含み、前記第3ロータコアは、前記第2ロータコア側の裏面に、前記第2ロータコアの前記凹部が嵌め合わされる凸部が形成されていることが好ましい。
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る回転電機の製造方法は、表面に凹部が形成される第1ロータコアと、裏面に凸部が形成される第2ロータコアと、回転軸とを備える回転電機の製造方法であって、前記第1ロータコアは、前記第2ロータコア側の表面に、複数の凹部が周方向に並んで複数形成され、周方向に隣り合う一対の前記凹部を複数含むように、3つ以上の前記凹部が形成されており、一対の前記凹部同士のなす角度が、他の一対の前記凹部同士のなす角度とは異なるものを含むように、前記凹部が形成されており、第1ロータコアの複数の前記凹部の一部は、前記第2ロータコア側の表面から反対側の裏面まで貫通する貫通穴であり、前記貫通穴にピンを挿入して前記第1ロータコアの位置決めを行いつつ、前記回転軸に前記第1ロータコアを圧入して取り付ける第1ステップと、前記第1ロータコアと前記第2ロータコアとがステップスキューを構成するように、前記第1ロータコアの前記凹部に前記第2ロータコアの前記凸部を嵌め合わせつつ、前記第1ステップで前記第1ロータコアを取り付けた方向と同じ方向から、前記回転軸に前記第2ロータコアを圧入して取り付ける第2ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数のロータコアが回転軸に取り付けられる回転電機において、ロータコアの空転を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本実施形態に係る回転電機の断面図である。
図2図2は、本実施形態に係るロータユニットの模式的な断面図である。
図3図3は、本実施形態に係る回転軸の模式図である。
図4図4は、本実施形態に係るロータコアの模式図である。
図5図5は、本実施形態に係るロータコアの模式図である。
図6図6は、本実施形態に係るロータコアの模式図である。
図7図7は、本実施形態に係る板部材の模式図である。
図8図8は、それぞれのロータコアの位置関係を示す模式図である。
図9図9は、それぞれのロータコアの位置関係を示す模式図である。
図10図10は、ロータコアの組付け方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0015】
(回転電機の全体構成)
図1は、本実施形態に係る回転電機の断面図である。本実施形態に係る回転電機100は、モータ、さらに言えばブラシレスモータである。回転電機100は、例えば車両の電動ステアリング装置に用いられ、車両のステアリングシャフトに操舵補助力を付与する。ただし、回転電機100の用途はそれに限られない。
【0016】
図1に示すように、回転電機100は、ケーシング10と、ステータ20と、ロータユニット30と、バスバーユニット40と、保持部材50と、基板60と、カバー部材70と、ベアリングB1、B2とを備える。以下、後述の回転軸32の軸方向に沿った方向を、Z方向とする。そして、Z方向に沿った方向のうちの一方の方向を、Z1方向とし、Z方向に沿った方向のうちの他方の方向を、すなわちZ1方向の反対の方向を、Z2方向とする。
【0017】
図1に示すように、ケーシング10は、ステータ20、ロータユニット30、バスバーユニット40、保持部材50、及び基板60を内部に収納する筐体である。ケーシング10は、Z1方向側が開口する中空の部材であり、本実施形態ではZ方向から見て円形となる円筒状の部材である。ケーシング10は、底部12と側部14とを含む。底部12は、ケーシング10のZ2方向側の底面を構成する。底部12には、後述の回転軸32が挿通される開口12Aが形成されている。また、底部12の表面には、軸受けであるベアリングB1が設けられている。ベアリングB1は、Z方向から見て開口12Aを囲うように設けられ、底部12に対して固定されている。側部14は、ケーシング10の側面を構成する。側部14は、底部12の外縁を囲うように設けられ、底部12の外縁からZ1方向に延在する。ケーシング10は、底部12と側部14とで囲われる空間SPに、ステータ20、ロータユニット30、バスバーユニット40、保持部材50、及び基板60を収納する。
【0018】
ケーシング10は、アルミニウム合金の部材で構成される。より詳しくは、ケーシング10は、JISで規格されるADC12の部材で構成される。
【0019】
ステータ20は、回転電機100の固定子である。ステータ20は、ケーシング10内、すなわちケーシング10の空間SP内に設けられる。ステータ20は、ステータコア22と、ステータコイル24とを含む。ステータコア22は、ステータ20のコアであり、Z方向から見た中央位置に、Z方向に貫通する貫通孔22Aが形成されている。ステータコア22は、磁性体で構成されており、さらに言えば、鉄系の部材で構成される。鉄系の部材とは、鉄を主成分とする部材である。より詳しくは、本実施形態に係るステータコア22は、電磁鋼板で構成されている。ステータコア22は、電磁鋼板製の部材がZ方向に積層されて構成されている。ただし、ステータコア22は、電磁鋼板で構成されることに限られず、部材がZ方向に積層されて構成されることにも限られない。
【0020】
ステータコイル24は、ステータ20のコイルである。ステータコイル24は、U相、V相、及びW相の電磁コイルを含む。ステータコイル24は、ステータコア22に巻回されている。
【0021】
ステータ20は、外周面20Aがケーシング10の内周面10Aに接触することで、ケーシング10に対して固定されている。すなわち、ステータ20は、ケーシング10に締り嵌め(圧入)されることにより、ケーシング10と嵌め合っている。
【0022】
ロータユニット30は、回転電機100の回転子である。ロータユニット30は、ケーシング10の空間SP内に設けられる。ロータユニット30は、回転軸32と、ロータ34とを含む。ロータ34は、Z方向から見た中央位置に、Z方向に貫通する貫通孔が形成されている。回転軸32は、シャフトであり、ロータ34の開口(後述のロータコア80の開口91)に挿入されて、ロータ34に対して固定されている。ロータユニット30は、ロータ34の外周面が、ステータコア22の貫通孔22A内に設けられる。ロータユニット30は、回転軸32の軸方向がZ方向に沿うように、貫通孔22A内に設けられる。また、ロータユニット30は、ステータ20に対して回転可能に、貫通孔22A内に設けられる。このように、ロータユニット30が貫通孔22Aに挿入されるため、ステータ20がロータ34の外周に設けられているともいえる。ロータユニット30は、ステータ20との電磁作用により、回転軸32のZ方向に沿った中心軸を回転軸として、回転する。回転軸32とロータ34との詳細な構成については後述する。
【0023】
回転軸32のZ2方向側の端部には、ギア部36が取り付けられている。ギア部36は、ステアリングシャフトに連絡する相手側のギヤ(図示略)に噛み合い、回転軸32の回転をステアリングシャフトに伝達する。また、回転軸32のZ1方向側の端部には、検出体38が取り付けられている。検出体38は、ロータユニット30の回転数を検出するための部材であり、例えばマグネットや磁気センサである。
【0024】
バスバーユニット40は、ケーシング10の空間SP内において、ステータコイル24のZ1側に設けられる。バスバーユニット40は、複数のバスバーとバスバーホルダとを備える板状(ここでは円板状)の部材である。バスバーは、導電性の部材であり、ステータコイル24のU相、V相、W相のそれぞれに接続されている。バスバーホルダは、絶縁性の部材であり、バスバーを覆う。
【0025】
保持部材50は、ケーシング10の空間SP内において、バスバーユニット40のZ1方向側に設けられる。保持部材50は、ベアリングB2を保持する、板状(ここでは円板状)の部材である。保持部材50は、例えば外周面がケーシング10の内周面10Aに対して接触して、ケーシング10に対して固定されている。すなわち、保持部材50は、ケーシング10に締り嵌め(圧入)されている。ただし、保持部材50は、ケーシング10に締り嵌めされることに限られない。保持部材50は、Z方向から見た中央位置に、貫通孔50Aが形成されている。貫通孔50Aには、軸受けであるベアリングB2が設けられている。ベアリングB2は、保持部材50に対して固定されているため、保持部材50を介して、ケーシング10に対して固定されているともいえる。
【0026】
なお、ロータユニット30の回転軸32は、ベアリングB1、B2に回転可能に支持されている。すなわち、回転軸32は、Z2方向側の部分が、ベアリングB1内に回転可能に挿入され、ベアリングB1に挿入された部分よりもZ1方向側の部分が、ベアリングB2内に回転可能に挿入されている。
【0027】
基板60は、ケーシング10の空間SP内において、保持部材50のZ1方向側に設けられる。基板60は、回転電機100のECU(Electronic Control Unit)の回路が設けられる回路基板である。基板60は、基板60とバスバーユニット40との間に設けられる接続部52を介して、バスバーユニット40のバスバーに電気的に接続されている。
【0028】
カバー部材70は、ケーシング10のZ1方向側の端部に設けられる。カバー部材70は、カバー72と端子部74とを含む。カバー72は、ケーシング10の空間SPのZ1方向側の開口を閉塞するカバーである。カバー72は、ケーシング10のZ1方向側の端部の開口を覆うように、ケーシング10に取付けられる。端子部74は、カバー72に取付けられている。端子部74は、基板60の回路に電気的に接続される配線(図示略)と、配線に接続される端子とを含む。
【0029】
(ロータユニットの構成)
次に、ロータユニット30の詳細構成について説明する。図2は、本実施形態に係るロータユニットの模式的な断面図である。図2に示すように、ロータユニット30は、回転軸32及びロータ34に加えて、ロータカバー部35を備えている。ロータカバー部35は、ロータ34を覆う。
【0030】
ロータ34は、Z方向に並んで複数設けられたロータコア80を有する。ロータコア80は、ロータユニット30のコアを構成する部材である。ロータコア80は、磁性体(常磁性体)で構成されており、さらに言えば、鉄系の部材で構成される。鉄系の部材とは、鉄を主成分とする部材である。ロータコア80は、板部材PがZ方向に積層されて構成されている。板部材Pは、本実施形態では電磁鋼板である。たし、ロータコア80は、板部材Pが積層されて構成されることに限られず、例えば一体の部材であってもよい。ロータコア80は、Z方向から見た場合の中央に、Z方向における一方の表面80aからZ方向における他方の表面である裏面80bまで貫通する開口91が形成されている。
【0031】
図2の例では、ロータ34は、Z方向に並ぶ3つのロータコア80A、80B、80Cを有している。ただし、ロータコア80の数は、複数であれば3つに限られず、例えば2つであってもよいし4つ以上であってもよい。
【0032】
ロータコア80には、マグネットMが取り付けられている。マグネットMは、永久磁石(強磁性体)である。マグネットMは、ロータコア80の外周部に取り付けられており、周方向に並んで複数設けられている。ここでの周方向とは、Z方向を軸方向とした場合の周方向である。マグネットMは、周方向に並んで複数設けられることで、ロータコア80の周方向における全区間に亘って設けられるが、周方向に隣り合うマグネットM同士の間には、マグネットMが設けられない間隔があってよい。なお、マグネットMは、ロータコア80の外周部に取り付けられることに限られず、例えばロータコア80に形成された開口内に設けられてもよい。
【0033】
図3は、本実施形態に係る回転軸の模式図である。図3に示すように、回転軸32は、外周面32aに、外周面32aから径方向外側に突出する突起部Nが形成されている。ここでの径方向とは、Z方向を軸方向とした場合の径方向である。本実施形態では、突起部Nは、Z方向に延在する筋状となっており、外周面32aにおいて、周方向に並んで複数形成されている。本実施形態における突起部Nは、ナーリング(ローレット)であるともいえる。図2に示すように、回転軸32は、マグネットMが取り付けられたそれぞれのロータコア80の開口91に挿入されることで、ロータコア80に対して固定される。具体的には、ロータコア80の開口91の内径は、回転軸32の外径の最長部分(突起部Nが形成されている部分)よりも、小さくなっている。そのため、回転軸32がロータコア80の開口91に挿入されると、突起部Nは、ロータコア80の開口91の内周面と接触して、ロータコア80の開口91の内周面から荷重を受けて、弾性変形しつつ塑性変形する。突起部Nがこのように変形することで、回転軸32とロータコア80とが固定される。ただし、回転軸32とロータコア80との固定方法はこれに限られない。例えば、突起部Nの数は複数でなくてもよいし、突起部Nの形状はZ方向に延在する筋状でなくてもよい。また、回転軸32に突起部Nを設けなくてもよい。この場合例えば、回転軸32の全体の外径をロータコア80の開口91の内径より大きくして、回転軸32をロータコア80の開口91に圧入させてもよい。回転軸32がロータコア80に圧入されることで、回転軸32の外周面とロータコアの開口91の内周面とが、周方向の全域にわたって接触して、締り嵌めされる。すなわち、回転軸32は、外周面32aの少なくとも一部がロータコア80(ロータ34)の開口91の内周面に接触することで、ロータコア80(ロータ34)に対して固定されているといえる。
【0034】
このように、ロータコア80は、開口91内に回転軸32が挿入されることで、回転軸32に対して固定されて、回転軸32の回転に伴い、回転軸32と一体で回転する。しかし、ロータコア80は、回転軸32に対する固定が不十分である場合には、回転軸32と一体で回転せずに、回転軸32の回転に追従できず、空転するおそれがある。回転軸32に対する固定が不十分になる例としては、例えば3つ以上のロータコア80に、突起部Nが形成される回転軸32を挿入する場合が挙げられる。この場合には、例えば、回転軸32は、Z2方向側の端部から、ロータコア80Aに挿入され、反対側であるZ1方向側の端部から、ロータコア80Bに挿入され、その後、回転軸32は、Z1方向側の端部から、ロータコア80Cに挿入される。この場合、最後に挿入したロータコア80Cは、ロータコア80Bと同じ側から挿入されるため、回転軸32の、すでにロータコア80Bが挿入されて突起部Nが潰れてしまった部分に位置することになる。そのため、ロータコア80Cの回転軸32に対する固定力が不足して、ロータコア80Cが、回転軸32の回転に追従できずに空転する可能性がある。なお、回転軸32に対する固定が不十分となるケースは、このような例に限られず、例えばロータコア80が2つである場合や、回転軸32に突起部Nが形成されていない場合にも起こり得る。
【0035】
それに対して、本実施形態に係るロータコア80は、以降で説明する凹部92及び凸部94が形成されることで、ロータコア80Cの回転軸32に対する固定力が不足する場合であっても、ロータコア80の空転を防止することができる。以下、ロータコア80の詳細な形状について説明する。
【0036】
(ロータコアの形状)
図4から図6は、本実施形態に係るロータコアの模式図である。図4は、ロータコア80Aの斜視図であり、図5は、ロータコア80Aの上面図であり、図6は、図5のA-A断面図である。以降では、それぞれのロータコア80を代表して、ロータコア80Aの形状を説明するが、本実施形態の例では、全てのロータコア80が同じ形状であるため、ロータコア80B、80Cもロータコア80Aと同じ形状となっている。図4及び図5に示すように、ロータコア80Aは、外周面(側面)80cに、突起部90が形成されている。突起部90は、外周面80cから径方向外側に突出する部分であり、外周面80cにおいて表面80a側から裏面80b側までにわたって形成されている。突起部90は、外周面80cにおいて、周方向に複数設けられている。突起部90は、マグネットMを取り付けるために形成されており、外周面80cの周方向に隣り合う突起部90同士の間の位置に、マグネットMが取り付けられる。
【0037】
図5に示すように、ロータコア80Aの表面80aには、凹部92が形成されている。ここでの凹部92は、表面80aから反対側の裏面80bまで貫通する穴と、裏面80bまで貫通しない窪みとの、いずれを指してもよい。凹部92は、表面80aにおいて、周方向に並んで複数形成されている。それぞれの凹部92は、Z方向から見たロータコア80Aの中心Oを中心とする仮想の円Cの円周上に位置している。さらにいえば、Z方向から見た凹部92の中心を中心Oaとすると、Z方向から見た場合の中心Oから中心Oaまでの長さは、それぞれの凹部92において等しくなっている。なお、本明細書での「等しい」や「同じ」とは、一般的な公差程度異なることも含む。
【0038】
本実施形態においては、凹部92として、凹部92A、92B、92Cの3つが形成されており、凹部92A、92B、92Cが周方向にこの順で並んでいる。ここで、凹部92Aと凹部92Bとがなす角度を、すなわち、Z方向から見て、中心Oと凹部92Aの中心Oaを結ぶ直線と、中心Oと凹部92Bの中心Oaを結ぶ直線とのなす角度を、角度θ1とする。また、凹部92Bと凹部92Cとがなす角度を、すなわち、Z方向から見て、中心Oと凹部92Bの中心Oaを結ぶ直線と、中心Oと凹部92Cの中心Oaを結ぶ直線とのなす角度を、角度θ2とする。また、凹部92Cと凹部92Aとがなす角度を、すなわち、Z方向から見て、中心Oと凹部92Cの中心Oaを結ぶ直線と、中心Oと凹部92Aの中心Oaを結ぶ直線とのなす角度を、角度θ3とする。この場合、角度θ1、θ2、θ3は、全てが同じ角度ではなく、少なくとも一部の角度が他の角度と異なる。図5の例では、角度θ1と角度θ3とは同じ角度であるが、角度θ2が、角度θ1、θ3とは異なる角度になっている。図5の例では、角度θ2が角度θ1、θ3より大きくなっている。角度θ1、θ2、θ3は、凹部92の数とスキュー角度に応じて設定される。例えば、凹部92の数が3つでスキュー角度が6度の場合、角度θ1、θ3は114度で、角度θ2は132度となる。
【0039】
このように、凹部92A、92B、92Cは、スキュー角度に応じて、角度θ1、θ2、θ3が全て同じ角度とならないような位置に設けられることで、ステップスキューの位置決めとしても機能する。ロータコア80Aは、周方向に隣り合う一対の凹部92を複数含むように(図5の例では凹部92A、92Bと、凹部92B、92Cと、凹部92C、92Aとの3つ)、3つ以上の凹部92が形成されており、一対の凹部92同士のなす角度(図5の例では角度θ2)が、他の一対の凹部92同士のなす角度とは異なるものを含むように、それぞれの凹部92が形成されているといえる。このように凹部92が形成されることで、ステップスキューの位置決めとして適切に機能することができる。なお、凹部92の数は3つに限られず任意であってよく、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。また、凹部92は、1つであってもよい。
【0040】
凹部92は、図5の例では、Z方向から見て円形であるが、形状は任意であってよい。また、凹部92の大きさも、任意の大きさであってよい。なお、それぞれの凹部92の大きさと形状は、共通していることが好ましい。
【0041】
図6に示すように、それぞれの凹部92のうちの一部の凹部92は、表面80aから裏面80bまで貫通する貫通穴であり、それ以外の凹部92は、裏面80bまで貫通していない窪みである。本実施形態の例では、凹部92Cが、裏面80bまで貫通する貫通穴となっており、凹部92A、92Bが、裏面80bまで貫通しない窪みとなっている。凹部92Cは、表面80aから裏面80bまでにわたって、Z方向に沿って貫通していることが好ましい。このように、本実施形態では、凹部92A、92Bが窪みで凹部92Cが貫通穴であるが、それに限られず複数の凹部92における貫通穴と窪みとの位置関係は任意であり、例えば、凹部92Cが窪みであり、凹部92A、92Bのいずれかが貫通穴であってもよい。また、複数の凹部92における貫通穴と窪みの数も任意であり、例えば全てが窪みであってもよい。
【0042】
図6に示すように、ロータコア80Aは、裏面80bに、凸部94が形成されている。凸部94は、Z方向において、表面80aに形成される窪みである凹部92(貫通穴以外の凹部92)と重なる位置に形成されている。図6の例では、凹部92A、92Bが窪みであり、凹部92Cが貫通穴である。そのため、裏面80bの、Z方向において表面80aの凹部92Aと重なる位置に、凸部94Aが形成され、Z方向において表面80aの凹部92Bと重なる位置に、凸部94Bが形成されている。言い換えれば、凹部92AのZ方向に沿った中心線AXAは、凸部94Aの中心を通り、凹部92BのZ方向に沿った中心線AXBは、凸部94Bの中心を通る。裏面80bにおける、凸部94Aと凸部94Bと凹部92Cとの位置関係は、表面80aにおける凹部92Aと凹部92Bと凹部92Cとの位置関係と、同じとなる。
【0043】
凸部94の形状及び大きさも、任意であってよいが、凸部94は、凹部92に対して嵌め合い可能な大きさ及び形状となっている。それぞれの凸部94の大きさと形状は、共通していることが好ましい。
【0044】
以上のように、ロータコア80は、表面80aに凹部92が形成され、裏面80bに凸部94が形成されている。図7は、本実施形態に係る板部材の模式図である。上述のように、ロータコア80は、複数の板部材Pが積層して構成される。この場合、例えば、図7に示すような、一方の表面に凹部92が形成されて他方の表面に凸部94が形成された板部材Pを、Z方向に積層することで、表面80aに凹部92が形成されて裏面80bに凸部94が形成されたロータコア80としてよい。ただしそれに限られず、凹部92や凸部94が形成されていない板部材Pを積層してロータコアとした後に、そのロータコアに凹部92や凸部94を形成してもよい。
【0045】
(ロータコア同士の位置関係)
次に、ロータユニット30におけるそれぞれのロータコア80の位置関係について説明する。図8及び図9は、それぞれのロータコアの位置関係を示す模式図である。図8は、Z方向にロータコア80が並んだ状態を示しており、図9は、それぞれのロータコア80の凹部92と凸部94との嵌め合い関係を示している。なお、図8では、ロータコア80同士が離れているが、実際にロータユニット30として組付けられた場合には、図2に示すように、ロータコア80の表面同士が接触することが好ましい。
【0046】
ロータユニット30においては、Z方向で隣り合うロータコア80同士が、互いに対向する表面に形成された凹部92と凸部94とで、嵌め合わされている。すなわち、一方のロータコア80の表面80aに形成された凹部92と、他方のロータコア80の裏面80bに形成された凸部94とが、嵌め合わされている。凹部92と凸部94との嵌め合い方式は任意であり、締り嵌め、中間嵌め、及び隙間嵌めのいずれの嵌め合いであってもよい。以下、具体的に説明する。
【0047】
図8に示すように、ロータユニット30においては、第1ロータコアとしてのロータコア80Aの表面80aと、第2ロータコアとしてのロータコア80Bの裏面80bとが対向するように、ロータコア80Aとロータコア80Bとが取り付けられている。より詳しくは、ロータコア80Bは、ステップスキューを構成するように、ロータコア80Aに対して、周方向に沿った方向Rにずれて取り付けられる。これにより、ロータコア80Aの表面80aの凹部92Cとロータコア80Bの裏面80bの凸部94Aとが同軸となり、ロータコア80Aの凹部92C内にロータコア80Bの凸部94Aが配置されて、凹部92Cと凸部94Aとが嵌め合う。また、ロータコア80Aの表面80aの凹部92Aとロータコア80Bの裏面80bの凸部94Bとが同軸となり、ロータコア80Aの凹部92A内にロータコア80Bの凸部94Bが配置されて、凹部92Aと凸部94Bとが嵌め合う。なお、ロータコア80Aの表面80aの凹部92Bと、ロータコア80Bの裏面80bの凹部92Cとは、同軸とならずに位置がずれている。
【0048】
また、ロータユニット30においては、第2ロータコアとしてのロータコア80Bの表面80aと、第3ロータコアとしてのロータコア80Cの裏面80bとが対向するように、ロータコア80Bとロータコア80Cとが取り付けられている。より詳しくは、ロータコア80Cは、ステップスキューを構成するように、ロータコア80Bに対して、周方向に沿った方向Rにずれて取り付けられる。これにより、ロータコア80Bの表面80aの凹部92Aとロータコア80Cの裏面80bの凸部94Bとが同軸となり、ロータコア80Bの凹部92A内にロータコア80Cの凸部94Bが配置されて、凹部92Aと凸部94Bとが嵌め合う。また、ロータコア80Bの表面80aの凹部92Cとロータコア80Cの裏面80bの凸部94Aとが同軸となり、ロータコア80Bの凹部92C内にロータコア80Cの凸部94Aが配置されて、凹部92Cと凸部94Aとが嵌め合う。なお、ロータコア80Bの表面80aの凹部92Bと、ロータコア80Cの裏面80bの凹部92Cとは、同軸とならずに位置がずれている。
【0049】
ロータコア80Aとロータコア80Bとは、凹部92と凸部94とが嵌め合っているため、例えばロータコア80A、80Bの一方の回転軸32に対する固定が不十分である場合にも、他方のロータコア80と嵌め合っている部分を介して、回転軸32の回転に追従することが可能となり、ロータコア80の空転を防止できる。同様に、ロータコア80Bとロータコア80Cとは、凹部92と凸部94とが嵌め合っているため、例えばロータコア80B、80Cの一方の回転軸32に対する固定が不十分である場合にも、他方のロータコア80と嵌め合っている部分を介して、回転軸32の回転に追従して、ロータコア80の空転を防止できる。また、ロータコア80A、80B、80Cは、以上のような位置関係で取り付けられているため、スキュー角度だけずれたステップスキューを構成する。
【0050】
なお、図9に示すように、本実施形態の例では、角度θ1、θ3とは値が異なる角度θ2を形成する一対の凹部92(凹部92B、92C)のうち、ロータコア80をずらす方向Rとは反対方向側の凹部92Cを、貫通穴としている。これにより、ロータコア80Aに対して方向Rにずらしてロータコア80Bを取り付けた際に、ロータコア80Aの凹部92Bとずれた位置に、ロータコア80Aの凸部94でなく凹部92Cが配置されることになるため、凸部94とロータコア80Aの表面が干渉することを抑制して、ロータコア80同士を適切に組付けできる。
【0051】
(ロータコアの組付け方法)
次に、ロータコア80の組付け方法について説明する。図10は、ロータコアの組付け方法を説明する図である。図10のステップS10に示すように、本組付け方法においては、ロータコア80Aの表面80a側から、ロータコア80Aの開口91に、回転軸32の端部32t1を挿入して、ロータコア80Aに回転軸32を固定する。この際、ロータコア80Aの貫通穴である凹部92Cに位置決めピンPNを挿入して、ロータコア80Aの位置決めを行いつつ、ロータコア80Aに回転軸32を挿入する。
【0052】
次に、ステップS12に示すように、ロータコア80Bの裏面80b側から、ロータコア80Bの開口91に、ロータコア80Aが固定された回転軸32の端部32t1と反対側の端部32t2を挿入して、ロータコア80Bに回転軸32を固定する。この際、ロータコア80Bの凹部92Cに位置決めピンPNを挿入して、ロータコア80Bがロータコア80Aに対してスキュー角度分ずれるように、ロータコア80Bをロータコア80Aに対して位置決めしつつ、ロータコア80Bに回転軸32を挿入する。これにより、ロータコア80Aの凹部92Cとロータコア80Bの凸部94A、及びロータコア80Aの凹部92Aとロータコア80Bの凸部94Bとを同軸として、適切に嵌め合わせることができる。このように、貫通穴である凹部92Cは、凸部94と嵌め合う機能に加えて、組付けの際の位置決めとしての機能も備えている。
【0053】
次に、ステップS14に示すように、ロータコア80Cの裏面80b側から、ロータコア80Cの開口91に、ロータコア80A、80Bが固定された回転軸32の端部32t2を挿入して、ロータコア80Cに回転軸32を固定する。この際、ロータコア80Cの凹部92Cに位置決めピンPNを挿入して、ロータコア80Cがロータコア80Bに対してスキュー角度分ずれるように、ロータコア80Cをロータコア80Bに対して位置決めしつつ、ロータコア80Bに回転軸32を挿入する。これにより、ロータコア80Bの凹部92Aとロータコア80Cの凸部94B、及びロータコア80Bの凹部92Cとロータコア80Cの凸部94Aとを同軸として、適切に嵌め合わせることができる。
【0054】
このようにロータコア80A、80B、80Cに回転軸32を挿入することで、ロータコア80A、80B、80Cが、回転軸32に挿入された状態でZ方向に並び、ステップS16に示すようにロータユニット30が製造される。このロータユニット30や、図1に示すケーシング10やステータ20などを組み立てることで、回転電機100が製造される。なお、図10の例では、端部32t1側からロータコア80Aに挿入され、端部32t2側からロータコア80B、80Cに挿入されるが、それに限られず、例えば、回転軸32は、ロータコア80A、80B、80Cの全てに、端部32t1側や端部32t2側から挿入されてもよい。
【0055】
以上説明したように、本実施形態に係る回転電機100(ロータユニット30は、回転軸32と、回転軸32に取り付けられて、回転軸32の軸方向(Z方向)に並ぶ第1ロータコア(本実施形態ではロータコア80A)及び第2ロータコア(本実施形態ではロータコア80B)を含むロータ34と、を備える。ロータコア80Aは、ロータコア80B側の表面80aに、凹部92が形成されており、ロータコア80Bは、ロータコア80A側の裏面80bに、ロータコア80Aの凹部92に嵌め合う凸部94が形成されている。本実施形態に係る回転電機100は、ロータコア80Aとロータコア80Bとが、凹部92と凸部94とで嵌め合わされることで、例えば一方のロータコアの回転軸32に対する固定が不十分であっても、他方のロータコアを介して、回転軸32の回転に追従することが可能となる。そのため、本実施形態に係る回転電機100によると、ロータコア80の空転を防止できる。
【0056】
また、第1ロータコア(ロータコア80A)は、第2ロータコア(ロータコア80B)側の表面80aに、複数の凹部92が周方向に並んで複数形成されている。本実施形態に係る回転電機100によると、周方向に形成された複数の凹部92によって、相手側のロータコア80Bの凸部94と嵌め合わせることが可能となるため、ロータコア80の空転をより適切に抑制できる。
【0057】
また、第1ロータコア(ロータコア80A)の複数の凹部92の少なくとも1つは、第2ロータコア(ロータコア80B)側の表面80aから反対側の裏面80bまで貫通する貫通穴となっている。そして、ロータコア80Aの裏面80bには、Z方向(軸方向)において貫通穴以外の凹部92(窪み)と重なる位置に、凸部94が形成されている。ロータコア80Aには、貫通穴と、貫通していない窪みとが形成されており、窪みの反対側に、凸部94が形成されている。そのため、本実施形態に係る回転電機100によると、貫通穴によって、凸部94との嵌め合いに加えて、ロータコア80を組み立てる際の位置決めを適切に行うことができる。また、窪みの反対側に凸部94を形成することで、同じ形状のロータコア80を、ロータコア80A、80Bとして利用することができ、部品種類の増加を抑えることができる。さらに言えば、例えばロータコア80が3つ以上あるとき、スキューを付けた場合にも、貫通穴があることで、凸部と凹部とが干渉せず組み立てることが可能となる。また、各ロータコア80を同一形状とすることができ、設計コストを低減できる。
【0058】
また、第1ロータコア(ロータコア80A)は、周方向に隣り合う一対の凹部92を複数含むように、3つ以上の凹部92が形成されている。ロータコア80Aは、一対の凹部92同士のなす角度(本実施形態では角度θ2)が、他の一対の凹部92同士のなす角度(本実施形態では角度θ1、θ3)とは異なるものを含むように、凹部92が形成されている。本実施形態に係る回転電機100は、このように凹部92が形成されているため、凹部92を、凸部94との嵌め合いに加えて、ステップスキューを構成する際の位置決めとしても機能させることが可能となる。
【0059】
また、第2ロータコア(ロータコア80B)は、第1ロータコア(ロータコア80A)側の裏面80bと反対側の表面80aの、Z方向(軸方向)において凸部94と重なる位置に、凹部92が形成されている。そのため、同じ形状のロータコア80を、ロータコア80A、80Bとして利用することができ、部品種類の増加を抑えることができる。
【0060】
また、ロータ34は、Z方向(軸方向)において第2ロータコア(ロータコア80B)の第1ロータコア(ロータコア80A)側とは反対側に設けられる第3ロータコア(ロータコア80C)をさらに含む。ロータコア80Cは、ロータコア80B側の裏面80bに、ロータコア80Bの凹部92が嵌め合わされる凸部94が形成されている。本実施形態に係る回転電機100によると、ロータコア80B、80Cも嵌め合われるため、3つ以上のロータコア80がある場合にも、ロータコア80の空転をより適切に抑制できる。
【0061】
また、回転軸32は、外周面32aの少なくとも一部がロータ34の内周面(ロータコア80の開口91の内周面)に接触することで、ロータ34に対して固定されている。本実施形態に係る回転電機100によると、回転軸32とロータコア80との固定が不十分である場合にも、ロータコア80同士が嵌め合わされているため、ロータコア80の空転を適切に抑制できる。
【0062】
また、本実施形態に係る回転電機100の製造方法は、表面80aに凹部92が形成される第1ロータコア(ロータコア80A)と、裏面80bに凸部が形成される第2ロータコアと、回転軸32とを備える回転電機100を製造する。本製造方法は、回転軸32にロータコア80Aを圧入して取り付ける第1ステップと、ロータコア80Aの凹部92にロータコア80Bの凸部94を嵌め合わせつつ、第1ステップでロータコア80Aを取り付けた方向と同じ方向から、回転軸32にロータコア80Bを圧入して取り付ける第2ステップと、を含む。この製造方法によると、ロータコア80の空転を適切に抑制できる。より詳しくは、回転軸32の同じ場所を通るように、複数回ロータコア80を挿入すると、回転軸32の挿入された箇所が変形して、ロータコア80の空転保持力が低下するおそれがある。それに対し、本製造方法によると、ロータコア80同士を凸部と凹部で嵌め合わせることで、ロータコア80の空転を防止することができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態及び実施例を説明したが、これら実施形態等の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態等の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0064】
30 ロータユニット
32 回転軸
34 ロータ
80、80A、80B、80C ロータコア
80a 表面
80b 裏面
92、92A、92B、92C 凹部
94、94A、94B 凸部
100 回転電機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10