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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-21
(45)【発行日】2024-05-29
(54)【発明の名称】粘膜組織モデル
(51)【国際特許分類】
   G09B 23/28 20060101AFI20240522BHJP
   G09B 9/00 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
G09B23/28
G09B9/00 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021567467
(86)(22)【出願日】2020-12-22
(86)【国際出願番号】 JP2020047810
(87)【国際公開番号】W WO2021132204
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-05-22
(31)【優先権主張番号】P 2019231085
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松本 睦
(72)【発明者】
【氏名】見山 彰
(72)【発明者】
【氏名】菅野 武
(72)【発明者】
【氏名】荒田 悠太郎
(72)【発明者】
【氏名】正宗 淳
【審査官】西村 民男
(56)【参考文献】
【文献】特許第6055069(JP,B1)
【文献】登録実用新案第3184695(JP,U)
【文献】国際公開第2019/126369(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/004374(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 1/00- 9/56
17/00-19/26
23/00-29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
模擬粘膜層と模擬粘膜下層を備える内視鏡施術訓練用粘膜組織モデルであって、前記模擬粘膜層と前記模擬粘膜下層のいずれか一方の内部に、又は、各層間にわたって、液体注入部が設けられ、前記模擬粘膜下層の下方に疑似腹腔層をさらに有する、内視鏡施術訓練用粘膜組織モデル。
【請求項2】
前記疑似腹腔層が前記模擬粘膜下層よりも硬度の低い材料から形成された構造体を含む、又は空間を含む、請求項1に記載の内視鏡施術訓練用粘膜組織モデル。
【請求項3】
前記模擬粘膜下層よりも硬度の低い材料がスポンジ状材料である、請求項2に記載の内視鏡施術訓練用粘膜組織モデル。
【請求項4】
エネルギーデバイスで切開及び/又は剥離可能である、請求項1から3のいずれか一項に記載の内視鏡施術訓練用粘膜組織モデル。
【請求項5】
前記液体注入部が液体を吸収すると膨張する材料を含み、前記材料が吸水性ポリマー又はスポンジ状軟質樹脂である、請求項1から4のいずれか一項に記載の内視鏡施術訓練用粘膜組織モデル。
【請求項6】
各層のそれぞれのE硬度が5から55の範囲内である、請求項1から5のいずれか一項に記載の内視鏡施術訓練用粘膜組織モデル。
【請求項7】
少なくとも1層が、含水ポリビニルアルコール系樹脂を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の内視鏡施術訓練用粘膜組織モデル。
【請求項8】
少なくとも1層が、炭化水素樹脂系樹脂を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の内視鏡施術訓練用粘膜組織モデル。
【請求項9】
食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、口腔、咽頭又は喉頭のモデルである、請求項1から8のいずれか一項に記載の内視鏡施術訓練用粘膜組織モデル。
【請求項10】
前記模擬粘膜下層の内部に模擬血管をさらに有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の内視鏡施術訓練用粘膜組織モデル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡施術訓練用粘膜組織モデルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人体に対する負担が少なく、早期回復が期待でき、入院期間を短くすることができる低侵襲手術として内視鏡を用いた手術に対する期待が高まり、その事例が増加している。例えば、口腔、咽頭、喉頭等の咽喉器官や、食道、胃、大腸等の消化管の粘膜組織における腫瘍に対して、腫瘍摘出や病理検査のための内視鏡的粘膜切除術(Endoscopic mucosal resection:EMR)や内視鏡的粘膜下層剥離術(Endoscopic submucosal dissection:ESD)等の施術が一般的になりつつある。
【0003】
一方、上記のような医療行為には高度な技術が要求される。技術向上および医療行為の品質向上のため、これまでに、施術訓練に用いることができる臓器モデルが提案されている(特許文献1~5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-116206号公報
【文献】特開2008-197483号公報
【文献】特開2018-17769号公報
【文献】特開2017-107094号公報
【文献】特開2016-38563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の臓器モデルは、実際の切除術や剥離術において問題となる現象を再現するには不十分であった。そこで、実際の切除術や剥離術において問題となる現象を再現可能な臓器モデルが求められている。
本発明は、従来の臓器モデルよりも実際の切除術や剥離術において問題となる現象を再現することができる内視鏡施術訓練用粘膜組織モデルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、様々な手段を検討した結果、従来の粘膜組織モデルにおいて、模擬血管及び/又は疑似腹腔層を設けることで、従来の臓器モデルよりも実際の切除術や剥離術において問題となる出血及び/又は穿孔を再現できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、以下に関するものである。
(1)模擬粘膜層と模擬粘膜下層をこの順に備える内視鏡施術訓練用粘膜組織モデルであって、前記模擬粘膜層と前記模擬粘膜下層のいずれか一方の内部に、又は、各層間にわたって、液体注入部が設けられ、前記模擬粘膜層の下方に位置する層の内部に模擬血管をさらに有する、粘膜組織モデル。
(2)前記模擬粘膜下層の下方に模擬筋層が設けられ、前記模擬筋層の内部に模擬血管を有する、(1)に記載の粘膜組織モデル。
(3)大気圧以上の圧力で模擬血管内部に模擬血液を含有する、(1)又は(2)に記載の粘膜組織モデル。
(4)前記模擬血管が、模擬血管内へと模擬血液を供給できる装置と接続されている、(1)から(3)いずれかに記載の粘膜組織モデル。
(5)模擬粘膜層と模擬粘膜下層をこの順に備える内視鏡施術訓練用粘膜組織モデルであって、前記模擬粘膜層と前記模擬粘膜下層のいずれか一方の内部に、又は、各層間にわたって、液体注入部が設けられ、前記模擬粘膜下層の下方に疑似腹腔層をさらに有する、粘膜組織モデル。
(6)前記疑似腹腔層が前記模擬粘膜下層よりも硬度の低い材料から形成された構造体を含む、又は空間を含む、(5)に記載の粘膜組織モデル。
(7)前記模擬粘膜下層よりも硬度の低い材料がスポンジ状材料である、(6)に記載の粘膜組織モデル。
(8)エネルギーデバイスで切開及び/又は剥離可能である、(1)から(7)のいずれかに記載の粘膜組織モデル。
(9)前記液体注入部が液体を吸収すると膨張する材料を含み、前記材料が吸水性ポリマー又はスポンジ状軟質樹脂である、(1)から(8)のいずれかに記載の粘膜組織モデル。
(10)各層のそれぞれのE硬度が5から55の範囲内である、(1)から(9)のいずれかに記載の粘膜組織モデル。
(11)少なくとも1層が、含水ポリビニルアルコール系樹脂を含む、(1)から(10)のいずれかに記載の粘膜組織モデル。
(12)少なくとも1層が、炭化水素樹脂系樹脂を含む、(1)から(10)のいずれかに記載の粘膜組織モデル。
(13)食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、口腔、咽頭又は喉頭のモデルである、(1)から(12)のいずれかに記載の粘膜組織モデル。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来のモデルよりも実際の切除術や剥離術において問題となる現象が再現された内視鏡施術訓練用粘膜組織モデルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る内視鏡施術訓練用粘膜組織モデルの断面を示す図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る内視鏡施術訓練用粘膜組織モデルを用いたESD施術訓練の手順を示す図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る内視鏡施術訓練用粘膜組織モデルを用いたESD施術訓練の手順を示す図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る内視鏡施術訓練用粘膜組織モデルを用いたESD施術訓練の手順を示す図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る内視鏡施術訓練用粘膜組織モデルを用いたESD施術訓練の手順を示す図である。
図6】本発明の第1実施形態に係る内視鏡施術訓練用粘膜組織モデルの変形例の断面を示す図である。
図7】本発明の第1実施形態に係る内視鏡施術訓練用粘膜組織モデルの別の変形例の断面を示す図である。
図8】本発明の第1実施形態に係る内視鏡施術訓練用粘膜組織モデルのさらに別の変形例の断面を示す図である。
図9】本発明の第2実施形態に係る内視鏡施術訓練用粘膜組織モデルの断面を示す図である。
図10】本発明の第2実施形態に係る内視鏡施術訓練用粘膜組織モデルの変形例の断面を示す図である。
図11】本発明の第2実施形態に係る内視鏡施術訓練用粘膜組織モデルの別の変形例の断面を示す図である。
図12】本発明の第2実施形態に係る内視鏡施術訓練用粘膜組織モデルのさらに別の変形例の断面を示す図である。
図13】本発明の第3実施形態に係る内視鏡施術訓練用粘膜組織モデルの断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る実施形態を説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。
【0011】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態の内視鏡施術訓練用粘膜組織モデル1を示す図である。本実施形態においては、内視鏡施術訓練用粘膜組織モデル1は、模擬粘膜層2と、模擬粘膜下層3と、液体注入部5と、模擬血管6とを備える。
【0012】
模擬粘膜層2は、最も上側の層を構成する、樹脂から形成された平板状の部分であり、その下面で模擬粘膜下層3の上面と接合されている。
模擬粘膜下層3は、樹脂から形成された平板状の部分であり、その上面で模擬粘膜層2の下面と接合されており、内部に液体注入部5をその上面が模擬粘膜層2の下面と接するように含み、さらに内部に模擬血管6を含む。
【0013】
本実施形態の内視鏡施術訓練用粘膜組織モデル1においては、模擬粘膜層2及び模擬粘膜下層3は、同一又は異なる材料から成形することができる。各層の硬度は、想定する粘膜組織の種類に応じて適宜選択すればよいが、例えば、成形体のE硬度を5~55の範囲とすることが考えられる。より詳細には、模擬粘膜層2のE硬度は、好ましくは15~45である。模擬粘膜下層3のE硬度は、好ましくは15~45である。これらの硬度の範囲とすることで、想定する組織の硬度と近い値となり、訓練者が実際と同様の感覚で施術を行うことができる。本実施形態の内視鏡施術訓練用粘膜組織モデル1においては、液体注入部5に液体を注入することによって模擬粘膜層2が模擬粘膜下層3側とは反対側の方向に膨隆するように、各層の硬度が調整されている。
また、同じ粘膜組織モデルの中で比較すると、模擬粘膜層2は、模擬粘膜下層3よりも高い引張強さを有していることが好ましい。引張強さは、JIS K 7161:1994に従って測定することができる。
また、想定する粘膜組織に応じて各層を着色することもできる。
【0014】
本実施形態の内視鏡施術訓練用粘膜組織モデル1においては、上記範囲のE硬度を有する層を形成するための樹脂として、例えば、ポリビニルアルコール及び水を含有する含水ポリビニルアルコール系材料、又は、親油性樹脂及びオイルを含有する炭化水素系樹脂材料を用いることができる。例えば、含水ポリビニルアルコール系材料の水分量、炭化水素系樹脂材料におけるオイルの量、及び/又はイオン液体の量によって、成形体のE硬度を適切に調整することができる。
【0015】
含水ポリビニルアルコール系材料は、ポリビニルアルコールの架橋体及び水を含有するゲル(含水ポリビニルアルコールゲル)であってもよく、例えば、特開2011―076035号公報、特開2010―277003号公報、特開2010-197637号公報、特開2010-204131号公報、特開2011-075907号公報、特開2011-008213号公報、又は特開2010-156894号公報に記載されたものから選択された材料であることができる。含水ポリビニルアルコール系材料は、臓器に似た硬度、力学物性、弾性、触感、切れ味を有することができる。
【0016】
含水ポリビニルアルコール系材料(又は含水ポリビニルアルコールゲル)は、シリカゾル等のシリカ微粒子を更に含んでいてもよい。シリカ微粒子を含む含水ポリビニルアルコール系材料は、触感、切開時及びクリップ止めの際の感覚、並びに熱凝固挙動のような点で臓器組織に非常に類似した性質を示すことができる。特に、電気メスによる加熱を伴う止血に関して、人体組織に極めて類似した止血挙動が発現される。
【0017】
炭化水素系樹脂材料を構成する親油性樹脂は、硬化型樹脂又は熱可塑性樹脂であることができる。硬化型樹脂の例としては、二液型の軟質ウレタン樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂の例としては、塩化ビニル樹脂、芳香族ビニル-共役ジエン系ブロック共重合体及びその水添物が挙げられる。特に、芳香族ビニル-共役ジエン系ブロック共重合体及びその水素添加物は、オイルとの組み合わせによってE硬度55以下の超軟質の成形体を形成することができる。
【0018】
芳香族ビニル-共役ジエン系ブロック共重合体は、芳香族ビニルから導かれる芳香族ビニルブロック単位(X)と、共役ジエンから導かれる共役ジエンブロック単位(Y)とを有する。芳香族ビニル-共役ジエン系ブロック共重合体においては、一般に、ハードセグメントである芳香族ビニルブロック単位(X)が、ソフトセグメントである共役ジエンゴムブロック単位(Y)を橋かけする擬似架橋(ドメイン)を形成している。
【0019】
芳香族ビニルブロック単位(X)を形成する芳香族ビニルの例としては、スチレン、α-メチルスチレン、3-メチルスチレン、p-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、4-ドデシルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、2-エチル-4-ベンジルスチレン、4-(フェニルブチル)スチレン、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン及びこれらの組み合わせが挙げられる。これらの中では、スチレンが好ましい。
【0020】
共役ジエンブロック単位(Y)を形成する共役ジエンの例としては、ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン及びこれらの組合せが挙げられる。これらの中では、ブタジエン、イソプレン、及び、ブタジエンとイソプレンとの組み合わせ(ブタジエン・イソプレンの共重合体)が好ましい。ブタジエン・イソプレンの共重合体は、ブタジエンとイソプレンとのランダム共重合単位、ブロック共重合単位、又はテーパード共重合単位の何れであってもよい。
【0021】
芳香族ビニル-共役ジエンブロック共重合体の形態は、例えば式:X(YX)n又は(XY)n(nは1以上の整数を示す。)で示される。これらの中で、X(YX)nの形態の共重合体、特にX-Y-Xの形態の共重合体が好ましい。X-Y-Xの形態の共重合体としては、ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレンブロック共重合体、ポリスチレン-ポリイソプレン-ポリスチレンブロック共重合体、及びポリスチレン-ポリイソプレン・ブタジエン-ポリスチレンブロック共重合体が挙げられる。模型本体部を構成する軟質樹脂は、芳香族ビニル-共役ジエン系ブロック共重合体は、これらからなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0022】
芳香族ビニル-共役ジエンブロック共重合体における芳香族ビニルブロック単位(X)の含有量は、芳香族ビニル-共役ジエンブロック共重合体の全体質量を基準として、5質量%以上50質量%以下であることが好ましく、20質量%以上40重量%以下であることがより好ましい。芳香族ビニルブロック単位(X)の含有量は、赤外線分光、NMR分光法等の常法によって測定することができる。
【0023】
上記のような芳香族ビニル-共役ジエンブロック共重合体は、種々の方法により製造することができる。製造方法としては、(1)n-ブチルリチウム等のアルキルリチウム化合物を開始剤として、芳香族ビニル、次いで共役ジエンを逐次重合させる方法、(2)芳香族ビニル、次いで共役ジエンを重合させ、これをカップリング剤によりカップリングさせる方法、(3)リチウム化合物を開始剤として、共役ジエン、次いで芳香族ビニルを逐次重合させる方法等を挙げることができる。
【0024】
芳香族ビニル-共役ジエン系ブロック共重合体の水素添加物は、上記のような芳香族ビニル-共役ジエンブロック共重合体を公知の方法により水素添加することにより生成する共重合体である。好ましい水素添加率は90モル%以上である。水素添加率は、核磁気共鳴スペクトル解析(NMR)等の公知の方法により測定することができる。
【0025】
芳香族ビニル-共役ジエン系ブロック共重合体の水素添加物の例としては、ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック共重合体(SEP)、ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン共重合体(SEPS)、ポリスチレン-ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック-ポリスチレン共重合体(SEBS)、ポリスチレン-ポリ(エチレン-エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン共重合体(SEEPS)が挙げられる。芳香族ビニル-共役ジエン系ブロック共重合体の水素添加物の市販品としては、SEPTON(クラレ社製)、クレイトン(Kraton;シェル化学社製)、クレイトンG(シェル化学社製)、タフテック(旭化成社製)(以上商品名)等が挙げられる。芳香族ビニル-共役ジエン系ブロック共重合体の水素添加物としては、SEEPSが好ましい。
【0026】
芳香族ビニル-共役ジエン系ブロック共重合体及びその水素添加物のメルトフローレート(MFR(温度230℃、荷重2.16kg))は、好ましくは1g/10分以下であり、より好ましくは0.1g/10分未満である。ここでのMFR(温度230℃、荷重2.16kg)は、JIS K7210に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgの条件下で測定される。MFRが上記範囲内にあることは、オイルのブリードアウト抑制、及び適切な力学的強度の点で有利である。
【0027】
芳香族ビニル-共役ジエン系ブロック共重合体及びその水素添加物の形状は、混練前のオイル吸収作業の観点から、粉末又は無定形(クラム)状が好ましい。
【0028】
以上例示した親油性樹脂とともに炭化水素系樹脂材料を構成するオイルは、炭化水素系樹脂材料を軟質化し、弾性率及び硬度を潰瘍模型に適した範囲に調整するために用いられる。このオイルの例としては、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、及び流動パラフィン等の鉱物油系オイル、シリコーンシリコンオイル、ヒマシ油、アマニ油、オレフィン系ワックス、並びに鉱物系ワックスが挙げられる。これらの中では、パラフィン系プロセスオイル及びナフテン系プロセスオイルが好ましい。プロセスオイルの市販品としては、ダイアナプロセスオイルシリーズ(出光興産社製)、JOMOプロセスP(ジャパンエナジー社製)等が挙げられる。上記のうち1種以上のオイルを組み合わせて用いることもできる。
【0029】
親油性樹脂のペレット又はクラムにオイルを吸収させておくことが、作業性の点で好ましい。
【0030】
オイルの量は、想定される臓器の部位及び潰瘍の種類等に応じて調整される。例えば、親油性樹脂(例えば芳香族ビニル-共役ジエン系ブロック共重合体)100質量部に対して、100質量部以上であってもよく、2000質量部以下、又は1600質量部以下であってもよい。オイルの量が少ないと、軟質性が不足する場合があり、オイルの量が過度に多いと親油性樹脂との混合が困難になったり、オイルの染み出し(ブリードアウト)が生じたりする可能性がある。
【0031】
オイルのしみ出しを抑制するため、又は力学物性調整のために、炭化水素系樹脂材料は、例えばポリオレフィン系結晶性樹脂、好ましくはポリエチレン系結晶性樹脂を含んでいてもよいし、炭酸カルシウム等の無機フィラー、又は有機若しくは無機の繊維状フィラーを含んでいてもよい。
【0032】
含水ポリビニルアルコール系材料の成形体は、例えば、ポリビニルアルコール、架橋剤(硼酸等)及び水を含有する成形用組成物を型に注ぎ込んでからゲル化させる方法、又は、同様の成形用組成物を型に注ぎ込んでから、融点以下への冷却による凍結、及び融点以上への加熱による溶解を繰り返してゲル化を促進する方法によって形成することができる。炭化水素系樹脂材料の成形体は、例えば、注形、真空成形、多色を含む射出成形のような成形方法によって形成することができる。
【0033】
模擬粘膜層2及び模擬粘膜下層3の材料として、イオン液体を用いることができ、それにより導電性が付与され得る。イオン液体としては、特に限定されないが、カチオンとアニオンから構成されものが挙げられる。本発明の一実施形態におけるイオン液体は、水やエチレングリコールなどの溶媒を含有しない。
【0034】
カチオンとしては、アミジニウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピラゾリウムカチオン及びグアニジニウムカチオン等が挙げられる。
【0035】
アミジニウムカチオンとしては、1,2,3,4-テトラメチルイミダゾリニウムカチオン、1,3,4-トリメチル-2-エチルイミダゾリニウムカチオン、1,3-ジメチルイミダゾリニウムカチオン、1,3-ジメチル-2,4-ジエチルイミダゾリニウムカチオン、1,2-ジメチル-3,4-ジエチルイミダゾリニウムカチオン、1-メチル-2,3,4-トリエチルイミダゾリニウムカチオン、1,2,3,4-テトラエチルイミダゾリニウムカチオン、1,2,3-トリメチルイミダゾリニウムカチオン、1,3-ジメチル-2-エチルイミダゾリニウムカチオン、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリニウムカチオン、1,2,3-トリエチルイミダゾリニウムカチオン、4-シアノ-1,2,3-トリメチルイミダゾリニウムカチオン、3-シアノメチル-1,2-ジメチルイミダゾリニウムカチオン、2-シアノメチル-1,3-ジメチルイミダゾリニウムカチオン、4-アセチル-1,2,3-トリメチルイミダゾリニウムカチオン、3-アセチルメチル-1,2-ジメチルイミダゾリニウムカチオン、4-メチルカルボキシメチル-1,2,3-トリメチルイミダゾリニウムカチオン、3-メチルカルボキシメチル-1,2-ジメチルイミダゾリニウムカチオン、4-メトキシ-1,2,3-トリメチルイミダゾリニウムカチオン、3-メトキシメチル-1,2-ジメチルイミダゾリニウムカチオン、4-ホルミル-1,2,3-トリメチルイミダゾリニウムカチオン、3-ホルミルメチル-1,2-ジメチルイミダゾリニウムカチオン、3-ヒドロキシエチル-1,2-ジメチルイミダゾリニウムカチオン、4-ヒドロキシメチル-1,2,3-トリメチルイミダゾリニウムカチオン及び2-ヒドロキシエチル-1,3-ジメチルイミダゾリニウムカチオン等が挙げられる。
【0036】
イミダゾリウムカチオンとしては、1,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,3-ジエチルイミダゾリウムカチオン、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1,2,3-トリメチルイミダゾリウムカチオン、1,2,3,4-テトラメチルイミダゾリウムカチオン、1,3-ジメチル-2-エチルイミダゾリウムカチオン、1,2-ジメチル-3-エチル-イミダゾリウムカチオン、1,2,3-トリエチルイミダゾリウムカチオン、1,2,3,4-テトラエチルイミダゾリウムカチオン、1,3-ジメチル-2-フェニルイミダゾリウムカチオン、1,3-ジメチル-2-ベンジルイミダゾリウムカチオン、1-ベンジル-2,3-ジメチル-イミダゾリウムカチオン、4-シアノ-1,2,3-トリメチルイミダゾリウムカチオン、3-シアノメチル-1,2-ジメチルイミダゾリウムカチオン、2-シアノメチル-1,3-ジメチル-イミダゾリウムカチオン、4-アセチル-1,2,3-トリメチルイミダゾリウムカチオン、3-アセチルメチル-1,2-ジメチルイミダゾリウムカチオン、4-メチルカルボキシメチル-1,2,3-トリメチルイミダゾリウムカチオン、3-メチルカルボキシメチル-1,2-ジメチルイミダゾリウムカチオン、4-メトキシ-1,2,3-トリメチルイミダゾリウムカチオン、3-メトキシメチル-1,2-ジメチルイミダゾリウムカチオン、4-ホルミル-1,2,3-トリメチルイミダゾリウムカチオン、3-ホルミルメチル-1,2-ジメチルイミダゾリウムカチオン、3-ヒドロキシエチル-1,2-ジメチルイミダゾリウムカチオン、4-ヒドロキシメチル-1,2,3-トリメチルイミダゾリウムカチオン及び2-ヒドロキシエチル-1,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン等が挙げられる。
【0037】
テトラヒドロピリミジニウムカチオンとしては、1,3-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3-トリメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4-テトラメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,5-テトラメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、8-メチル-1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセニウムカチオン、5-メチル-1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]-5-ノネニウムカチオン、4-シアノ-1,2,3-トリメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、3-シアノメチル-1,2-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、2-シアノメチル-1,3-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、4-アセチル-1,2,3-トリメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、3-アセチルメチル-1,2-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、4-メチルカルボキシメチル-1,2,3-トリメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、3-メチルカルボキシメチル-1,2-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、4-メトキシ-1,2,3-トリメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、3-メトキシメチル-1,2-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、4-ホルミル-1,2,3-トリメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、3-ホルミルメチル-1,2-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、3-ヒドロキシエチル-1,2-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、4-ヒドロキシメチル-1,2,3-トリメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン及び2-ヒドロキシエチル-1,3-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン等が挙げられる。
【0038】
ジヒドロピリミジニウムカチオンとしては、1,2,3-トリメチル-1,4-ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4-テトラメチル-1,4-ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,5-テトラメチル-1,6-ジヒドロピリミジニウムカチオン、8-メチル-1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7,9-ウンデカジエニウムカチオン、5-メチル-1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]-5,7-ノナジエニウムカチオン、4-シアノ-1,2,3-トリメチル-1,6-ジヒドロピリミジニウムカチオン、3-シアノメチル-1,2-ジメチル-1,4-ジヒドロピリミジニウムカチオン、2-シアノメチル-1,3-ジメチル-1,4-ジヒドロピリミジニウムカチオン、4-アセチル-1,2,3-トリメチル-1,6-ジヒドロピリミジニウムカチオン、3-アセチルメチル-1,2-ジメチル-1,4-ジヒドロピリミジニウムカチオン、4-メチルカルボキシメチル-1,2,3-トリメチル-1,4-ジヒドロピリミジニウムカチオン、3-メチルカルボキシメチル-1,2-ジメチル-1,4-ジヒドロピリミジニウムカチオン、4-メトキシ-1,2,3-トリメチル-1,6-ジヒドロピリミジニウムカチオン、3-メトキシメチル-1,2-ジメチル-1,4-ジヒドロピリミジニウムカチオン、4-ホルミル-1,2,3-トリメチル-1,6-ジヒドロピリミジニウムカチオン、3-ホルミルメチル-1,2-ジメチル-1,6-ジヒドロピリミジニウムカチオン、3-ヒドロキシエチル-1,2-ジメチル-1,6-ジヒドロピリミジニウムカチオン、4-ヒドロキシメチル-1,2,3-トリメチル-1,4-ジヒドロピリミジニウムカチオン及び2-ヒドロキシエチル-1,3-ジメチル-1,4-ヒドロピリミジニウムカチオン等が挙げられる。
【0039】
ピリジニウムカチオンとしては、3-メチル-1-プロピルピリジニウムカチオン、1-プロピル-3-メチルピリジニウムカチオン、1-ブチル-3-メチルピリジニウムカチオン、1-ブチル-4-メチルピリジニウムカチオン、1-ブチル-3,4-ジメチルピリジニウムカチオン及び1-ブチル-3,5-ジメチルピリジニウムカチオン等が挙げられる。
【0040】
ピラゾリウムカチオンとしては、1、2-ジメチルピラゾリウムカチオン、1-メチル-2-プロピルピラゾリウムカチオン、1-n-ブチル-2-メチルピラゾリウムカチオン及び1-n-ブチル-2-エチルピラゾリウムカチオン等が挙げられる。
【0041】
グアニジニウムカチオンとしては、イミダゾリニウム骨格を有するグアニジニウムカチオン、イミダゾリウム骨格を有するグアニジニウムカチオン、テトラヒドロピリミジニウム骨格を有するグアニジニウムカチオン、ジヒドロピリミジニウム骨格を有するグアニジニウムカチオン等が挙げられる。
【0042】
イミダゾリニウム骨格を有するグアニジニウムカチオンとしては、2-ジメチルアミノ-1,3,4-トリメチルイミダゾリニウムカチオン、2-ジエチルアミノ-1,3,4-トリメチルイミダゾリニウムカチオン、2-ジエチルアミノ-1,3-ジメチル-4-エチルイミダゾリニウムカチオン、2-ジメチルアミノ-1-メチル-3,4-ジエチルイミダゾリニウムカチオン、2-ジエチルアミノ-1-メチル-3,4-ジエチルイミダゾリニウムカチオン、2-ジエチルアミノ-1,3,4-テトラエチルイミダゾリニウムカチオン、2-ジメチルアミノ-1,3-ジメチルイミダゾリニウムカチオン、2-ジエチルアミノ-1,3-ジメチルイミダゾリニウムカチオン、2-ジメチルアミノ-1-エチル-3-メチルイミダゾリニウムカチオン、2-ジエチルアミノ-1,3-ジエチルイミダゾリニウムカチオン、1,5,6,7-テトラヒドロ-1,2-ジメチル-2H-イミド[1,2a]イミダゾリニウムカチオン、1,5-ジヒドロ-1,2-ジメチル-2H-イミド[1,2a]イミダゾリニウムカチオン、1,5,6,7-テトラヒドロ-1,2-ジメチル-2H-ピリミド[1,2a]イミダゾリニウムカチオン、1,5-ジヒドロ-1,2-ジメチル-2H-ピリミド[1,2a]イミダゾリニウムカチオン、2-ジメチルアミノ-4-シアノ-1,3-ジメチルイミダゾリニウムカチオン、2-ジメチルアミノ-3-シアノメチル-1-メチルイミダゾリニウムカチオン、2-ジメチルアミノ-4-アセチル-1,3-ジメチルイミダゾリニウムカチオン、2-ジメチルアミノ-3-アセチルメチル-1-メチルイミダゾリニウムカチオン、2-ジメチルアミノ-4-メチルカルボキシメチル-1,3-ジメチルイミダゾリニウムカチオン、2-ジメチルアミノ-3-メチルカルボキシメチル-1-メチルイミダゾリニウムカチオン、2-ジメチルアミノ-4-メトキシ-1,3-ジメチルイミダゾリニウムカチオン、2-ジメチルアミノ-3-メトキシメチル-1-メチルイミダゾリニウムカチオン、2-ジメチルアミノ-4-ホルミル-1,3-ジメチルイミダゾリニウムカチオン、2-ジメチルアミノ-3-ホルミルメチル-1-メチルイミダゾリニウムカチオン、2-ジメチルアミノ-3-ヒドロキシエチル-1-メチルイミダゾリニウムカチオン及び2-ジメチルアミノ-4-ヒドロキシメチル-1,3-ジメチルイミダゾリニウムカチオン等が挙げられる。
【0043】
イミダゾリウム骨格を有するグアニジニウムカチオンとしては、2-ジメチルアミノ-1,3,4-トリメチルイミダゾリウムカチオン、2-ジエチルアミノ-1,3,4-トリメチルイミダゾリウムカチオン、2-ジエチルアミノ-1,3-ジメチル-4-エチルイミダゾリウムカチオン、2-ジメチルアミノ-1-メチル-3,4-ジエチルイミダゾリウムカチオン、2-ジエチルアミノ-1-メチル-3,4-ジエチルイミダゾリウムカチオン、2-ジエチルアミノ-1,3,4-テトラエチルイミダゾリウムカチオン、2-ジメチルアミノ-1,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン、2-ジエチルアミノ-1,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン、2-ジメチルアミノ-1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、2-ジエチルアミノ-1,3-ジエチルイミダゾリウムカチオン、1,5,6,7-テトラヒドロ-1,2-ジメチル-2H-イミド[1,2a]イミダゾリウムカチオン、1,5-ジヒドロ-1,2-ジメチル-2H-イミド[1,2a]イミダゾリウムカチオン、1,5,6,7-テトラヒドロ-1,2-ジメチル-2H-ピリミド[1,2a]イミダゾリウムカチオン、1,5-ジヒドロ-1,2-ジメチル-2H-ピリミド[1,2a]イミダゾリウムカチオン、2-ジメチルアミノ-4-シアノ-1,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン、2-ジメチルアミノ-3-シアノメチル-1-メチルイミダゾリウムカチオン、2-ジメチルアミノ-4-アセチル-1,3-ジメチルイミダゾリニウムカチオン、2-ジメチルアミノ-3-アセチルメチル-1-メチルイミダゾリウムカチオン、2-ジメチルアミノ-4-メチルカルボキシメチル-1,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン、2-ジメチルアミノ-3-メチルカルボキシメチル-1-メチルイミダゾリウムカチオン、2-ジメチルアミノ-4-メトキシ-1,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン、2-ジメチルアミノ-3-メトキシメチル-1-メチルイミダゾリウムカチオン、2-ジメチルアミノ-4-ホルミル-1,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン、2-ジメチルアミノ-3-ホルミルメチル-1-メチルイミダゾリウムカチオン、2-ジメチルアミノ-3-ヒドロキシエチル-1-メチルイミダゾリウムカチオン及び2-ジメチルアミノ-4-ヒドロキシメチル-1,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン等が挙げられる。
【0044】
テトラヒドロピリミジニウム骨格を有するグアニジニウムカチオンとしては、2-ジメチルアミノ-1,3,4-トリメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、2-ジエチルアミノ-1,3,4-トリメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、2-ジエチルアミノ-1,3-ジメチル-4-エチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、2-ジメチルアミノ-1-メチル-3,4-ジエチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、2-ジエチルアミノ-1-メチル-3,4-ジエチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、2-ジエチルアミノ-1,3,4-テトラエチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、2-ジメチルアミノ-1,3-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、2-ジエチルアミノ-1,3-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、2-ジメチルアミノ-1-エチル-3-メチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、2-ジエチルアミノ-1,3-ジエチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1,2-ジメチル-2H-イミド[1,2a]ピリミジニウムカチオン、1,3,4,6-テトラヒドロ-1,2-ジメチル-2H-イミド[1,2a]ピリミジニウムカチオン、1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1,2-ジメチル-2H-ピリミド[1,2a]ピリミジニウム、1,3,4,6-テトラヒドロ-1,2-ジメチル-2H-ピリミド[1,2a]ピリミジニウムカチオン、2-ジメチルアミノ-4-シアノ-1,3-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、2-ジメチルアミノ-3-シアノメチル-1-メチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、2-ジメチルアミノ-4-アセチル-1,3-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、2-ジメチルアミノ-3-アセチルメチル-1-メチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、2-ジメチルアミノ-4-メチルカルボキシメチル-1,3-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、2-ジメチルアミノ-3-メチルカルボキシメチル-1-メチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、2-ジメチルアミノ-4-メトキシ-1,3-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、2-ジメチルアミノ-3-メトキシメチル-1-メチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、2-ジメチルアミノ-4-ホルミル-1,3-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、2-ジメチルアミノ-3-ホルミルメチル-1-メチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、2-ジメチルアミノ-3-ヒドロキシエチル-1-メチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン及び2-ジメチルアミノ-4-ヒドロキシメチル-1,3-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン等が挙げられる。
【0045】
ジヒドロピリミジニウム骨格を有するグアニジニウムカチオンとしては、2-ジメチルアミノ-1,3,4-トリメチル-1,4-ジヒドロピリミジニウムカチオン、2-ジエチルアミノ-1,3,4-トリメチル-1,6-ジヒドロピリミジニウムカチオン、2-ジエチルアミノ-1,3-ジメチル-4-エチル-1,6-ジヒドロピリミジニウムカチオン、2-ジメチルアミノ-1-メチル-3,4-ジエチル-1,4-ジヒドロピリミジニウムカチオン、2-ジエチルアミノ-1-メチル-3,4-ジエチル-1,4-ジヒドロピリミジニウムカチオン、2-ジエチルアミノ-1,3,4-テトラエチル-1,6-ジヒドロピリミジニウムカチオン、2-ジメチルアミノ-1,3-ジメチル-1,4-ジヒドロピリミジニウムカチオン、2-ジエチルアミノ-1,3-ジメチル-1,4-ジヒドロピリミジニウムカチオン、2-ジメチルアミノ-1-エチル-3-メチル-1,4-ジヒドロピリミジニウムカチオン、2-ジエチルアミノ-1,3-ジエチル-1,6-ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,6,7,8-テトラヒドロ-1,2-ジメチル-2H-イミド[1,2a]ピリミジニウムカチオン、1,6-ジヒドロ-1,2-ジメチル-2H-イミド[1,2a]ピリミジニウムカチオン、1,6,7,8-テトラヒドロ-1,2-ジメチル-2H-ピリミド[1,2a]ピリミジニウムカチオン、1,6-ジヒドロ-1,2-ジメチル-2H-ピリミド[1,2a]ピリミジニウムカチオン、2-ジメチルアミノ-4-シアノ-1,3-ジメチル-1,4-ジヒドロピリミジニウムカチオン、2-ジメチルアミノ-3-シアノメチル-1-メチル-1,6-ジヒドロピリミジニウムカチオン、2-ジメチルアミノ-4-アセチル-1,3-ジメチル-1,4-ジヒドロピリミジニウムカチオン、2-ジメチルアミノ-3-アセチルメチル-1-メチル-1,4-ジヒドロピリミジニウムカチオン、2-ジメチルアミノ-4-メチルカルボキシメチル-1,3-ジメチル-1,4-ジヒドロピリミジニウムカチオン、2-ジメチルアミノ-3-メチルカルボキシメチル-1-メチル-1,4-ジヒドロピリミジニウムカチオン、2-ジメチルアミノ-4-メトキシ-1,3-ジメチル-1,6-ジヒドロピリミジニウムカチオン、2-ジメチルアミノ-3-メトキシメチル-1-メチル-1,4-ジヒドロピリミジニウムカチオン、2-ジメチルアミノ-4-ホルミル-1,3-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、2-ジメチルアミノ-3-ホルミルメチル-1-メチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、2-ジメチルアミノ-3-ヒドロキシエチル-1-メチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン及び2-ジメチルアミノ-4-ヒドロキシメチル-1,3-ジメチル-1,4-ジヒドロピリミジニウムカチオン等が挙げられる。
【0046】
アニオンとしては、下記に例示する酸からプロトンを除いたアニオンが挙げられる。アニオンは2種以上の混合物であってもよい。
【0047】
アニオンとして、カルボン酸を用いることができ、具体的には、モノカルボン酸{炭素数1~30の脂肪族モノカルボン酸[飽和モノカルボン酸(ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、ステアリン酸及びベヘン酸等)、フッ素原子含有カルボン酸(トリフルオロ酢酸等)及び不飽和モノカルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸及びオレイン酸等)]及び芳香族モノカルボン酸(安息香酸、ケイ皮酸及びナフトエ酸等)}、ポリカルボン酸(2~4価のポリカルボン酸){脂肪族ポリカルボン酸[飽和ポリカルボン酸(シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸及びセバシン酸等);不飽和ポリカルボン酸(マレイン酸、フマール酸及びイタコン酸等)];芳香族ポリカルボン酸[フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸及びピロメリット酸等];脂肪族オキシカルボン酸[グリコール酸、乳酸及び酒石酸等];芳香族オキシカルボン酸[サリチル酸及びマンデル酸等];硫黄原子含有ポリカルボン酸[チオジプロピオン酸等];その他のポリカルボン酸[シクロブテン-1,2-ジカルボン酸、シクロペンテン-1,2-ジカルボン酸、フラン-2,3-ジカルボン酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプタ-2-エン-2,3-ジカルボン酸及びビシクロ[2,2,1]ヘプタ-2,5-ジエン-2,3-ジカルボン酸]等}が挙げられる。
【0048】
アニオンとして、スルホン酸を用いることができ、具体的には、炭素数1~30のアルカンスルホン酸(メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ブタンスルホン酸、オクタンスルホン酸及びドデカンスルホン酸等);炭素数7~30のアルキルベンゼンスルホン酸(オクチルベンゼンスルホン酸及びドデシルベンゼンスルホン酸等)が挙げられる。
【0049】
アニオンとして、無機酸を用いることができ、具体的には、フッ酸、塩酸、硫酸、リン酸、HClO、HBF、HPF、HAsF、及びHSbF等が挙げられる。
【0050】
アニオンとして、ハロゲン原子含有アルキル基置換無機酸(アルキル基の炭素数1~30)を用いることができ、具体的には、HBF(CF4-n(nは0~3の整数)、HPF(CF6-n(nは0~5の整数)、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、トリクロロメタンスルホン酸、ペンタクロロプロパンスルホン酸、ヘプタクロロブタンスルホン酸、トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、トリフルオロ酢酸、ペンタフルオロプロピオン酸、ペンタフルオロブタン酸、トリクロロ酢酸、ペンタクロロプロピオン酸及びヘプタクロロブタン酸等が挙げられる。
【0051】
アニオンとして、ハロゲン原子含有スルホニルイミド(炭素数1~30)を用いることができ、具体的には、ビス(フルオロメチルスルホニル)イミド、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド及びビス(フルオロスルホニル)イミド等が挙げられる。
【0052】
アニオンとして、ハロゲン原子含有スルホニルメチド(炭素数3~30)を用いることができ、具体的には、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド等が挙げられる。
【0053】
アニオンとして、ハロゲン原子含有カルボン酸アミド(炭素数2~30)を用いることができ、具体的には、ビス(トリフルオロアセト)アミド等が挙げられる。
【0054】
アニオンとして、ニトリル基含有イミドを用いることができ、具体的には、HN(CN)等が挙げられる。
【0055】
アニオンとして、ニトリル含有メチドを用いることができ、具体的には、HC(CN)等が挙げられる。
【0056】
アニオンとして、炭素数1~30のハロゲン原子含有アルキルアミンを用いることができ、具体的には、HN(CF等が挙げられる。
【0057】
アニオンとして、シアン酸を用いることができ、具体的には、チオシアン酸等が挙げられる。
【0058】
また、市販のイオン液体を用いることもできる。市販のイオン液体としては、例えばCIL312(N-ブチル-3-メチルピリジニウム・ビストリフルオロメタンスルホニルイミド、日本カーリット社製)、アミノイオンAS100(日本乳化剤社製)、アミノイオンAS300(日本乳化剤社製)、FC-4400(トリ-n-ブチルメチルアンモニウム ビストリフルオロメタンスルホンイミド、3M社製)、ヒシコーリン(ドデシルトリブチルホスホニウムクロライド、日本化学工業社製)が挙げられる。
【0059】
イオン液体の溶解性パラメーター(以下SP値と略記する)は、好ましくは8.0~12.0(cal/cm1/2、であり、更に好ましくは8.5~11.5(cal/cm1/2、特に好ましくは9.0~10.8(cal/cm1/2である。
【0060】
なお、イオン液体のSP値は、以下の方法により求めた数値である。
メタクリル酸メチル50gとイオン液体50gを混合して得られた懸濁液に、メタクリル酸2-ヒドロキシエチルを滴下していき、懸濁液が透明になった時点を目視で確認し、メタクリル酸2-ヒドロキシエチルの滴下量(g)を用いて、以下の計算式からイオン液体のSP値を算出した。
イオン液体のSP値=(9.9P+13.5Q)/100
9.9:メタクリル酸メチルのSP値
P:メタクリル酸メチル及びメタクリル酸2-ヒドロキシエチルの合計重量に基づくメタクリル酸メチルの重量比率(重量%)
13.5:メタクリル酸2-ヒドロキシエチルのSP値
Q:メタクリル酸メチル及びメタクリル酸2-ヒドロキシエチルの合計重量に基づくメタクリル酸2-ヒドロキシエチルの重量比率(重量%)
【0061】
イオン液体の合成方法としては、目的とするイオン液体が得られれば特に限定されないが、例えば「イオン性液体-開発の最前線と未来-」[大野弘幸、2003年発行、シーエムシー出版]に記載されている、ハロゲン化物法、水酸化物法、酸エステル法、錯形成法及び中和法等が挙げられる。
【0062】
イオン液体の含有量は、原料となる樹脂成分100質量部に対して、50~250質量部が好ましく、50~240質量部がより好ましく、70~210質量部がさらに好ましい。イオン液体の含有量を樹脂成分100質量部に対して50質量部以上とすることで体積抵抗率上昇の抑制及び軟質性の付与に寄与し、250質量部以下とすることで材料からイオン液体がブリードアウトすることを抑制することができる。
【0063】
なお、模擬粘膜層2及び模擬粘膜下層3を成形するための樹脂には、必要に応じて、エラストマー、ゴム、可塑剤、フィラ-や安定剤、老化防止剤、耐光性向上剤、紫外線吸収剤、軟化剤、滑剤、加工助剤、着色剤、防曇剤、ブロッキング防止剤、結晶核剤、発泡剤等を配合し、用いることができる。
【0064】
本実施形態においては、液体注入部5は、液体を吸収すると膨張する材料を含有する平板状の構造体である。他の実施形態においては、液体注入部5は、空間に液体を吸収すると膨張する顆粒状の材料が充填された領域となっている。液体注入部5を上面に対向する側から見たときの形状は、略円形又は略矩形であってもよい。
液体を吸収すると膨張する材料としては、特に限定されないが、吸水性ポリマー、スポンジ状軟質樹脂、不織布、セルロース、含水ポリビニルアルコール系材料等を用いることができる。液体注入部に注入される液体としては、特に限定されず、水、生理食塩水、ヒアルロン酸等が挙げられる。
また、液体注入部5の寸法は、模擬粘膜層2が模擬粘膜下層3側とは反対側の方向に膨隆するのを阻害しなければ、特に限定されず、例えば厚さ0.3~1.5mm、上面に対向する側から見たときの直径がφ20~φ50mmであってもよい。また、液体注入後の液体注入部5の厚み方向上方への隆起高さは、特に限定されるものではないが10~20mmであることが好ましい。
【0065】
本実施形態においては、模擬血管6は、模擬粘膜下層3とは別に設けられ、模擬粘膜下層3に埋め込まれたチューブである。チューブであることにより、チューブを含む層が軟質である場合においても、管状構造を維持し易い。チューブの材料としては、軟質な材料が好ましく、例えばA硬度が70以下のエラストマーチューブであってもよい。その具体例としては、エチレン・酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、シリコーン、ポリオレフィン系エラストマー、及びポリスチレン系エラストマーのチューブが挙げられる。模擬血管6の内径は、想定する血管の種類により特に限定されないが0.1mm~2.5mmが好ましく、0.3mm~1.5mmがより好ましく、0.5mm~1mmがさらに好ましい。チューブの外径は、内径の大きさに応じて適宜設定され、特に限定されるものではないが0.3mm~3mmが好ましく、0.3mm~2mmがより好ましく、0.5mm~1mmがさらに好ましい。
模擬血管6は、模擬粘膜下層3内部に複数存在してもよく、例えば1~5本の模擬血管が存在してもよい。また、模擬血管6の形状は、分岐のない管状構造であってもよく、複数の分岐を有していてもよく、網状であってもよい。模擬血管6は、内部に大気圧以上の圧力で模擬血液を含有してもよく、この場合、模擬血管6のチューブが損傷すると模擬血液が模擬血管6の内部から外部へと溶出する。
【0066】
内視鏡施術訓練用粘膜組織モデル1が想定する粘膜組織としては、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、口腔、咽頭、喉頭等が挙げられる。
【0067】
内視鏡施術訓練用粘膜組織モデル1の厚み方向に直角な方向における内視鏡施術訓練用粘膜組織モデル1の最大幅は、EMRやESDにより治療される一般的な腫瘍の大きさに対応する範囲であればよく、例えば2cm以上、3cm以下とすることができる。
また、内視鏡施術訓練用粘膜組織モデル1を上面に対向する側から見たときの形状は、特に限定されるものではなく、略円形や略多角形であってもよい。
【0068】
内視鏡施術訓練用粘膜組織モデル1の厚みは、想定する粘膜組織に合わせて適宜選択することができるが、3~12mm、特に5~7mmの範囲が好ましい。模擬粘膜層2の厚みは、0.3~2.0mm、特に0.5~1.0mmの範囲が好ましい。模擬粘膜下層3の厚みは、1.0~5.0mm、特に2.0~3.0mmの範囲が好ましい。これらの厚みの範囲とすることで、想定する組織と近い値となり、訓練者が実際と同様の感覚で施術を行うことができる。本発明の一実施形態においては、模擬粘膜層2の厚みは、模擬粘膜下層3の厚みよりも薄いことが好ましい。
【0069】
本発明の粘膜組織モデルでの利用に際し、目的を阻害しない範囲で、例えば、顔料、染料等の着色剤、香料、酸化防止剤、抗菌剤等の添加剤を使用しても良い。本発明の粘膜組織モデルを生体の臓器に近似させるために、着色剤により生体の臓器に近似した色に着色することが好ましい。
【0070】
本実施形態に係る内視鏡施術訓練用粘膜組織モデル1は、通常の成形方法によって製造することができる。例えば、模擬粘膜下層3は、対応する形状の型のキャビティ内に、予め製造した液体注入部5を設置してから成形することによって製造することができる。また、模擬血管6を含む層は、対応する形状の型のキャビティ内に、模擬血管6となるチューブを設置してから成形することによって製造することができる。
【0071】
含水ポリビニルアルコール系材料の成形体は、例えば、ポリビニルアルコール、架橋剤(硼酸等)及び水、イオン液体等を含有する成形用組成物を型に注ぎ込んでからゲル化させる方法、又は、同様の成形用組成物を型に注ぎ込んでから、融点以下への冷却による凍結、及び融点以上への加熱による溶解を繰り返してゲル化を促進する方法によって形成することができる。炭化水素系樹脂材料の成形体は、例えば、押出、注形、真空成形、多色を含む射出成形のような成形方法によって形成することができる。
【0072】
内視鏡施術訓練用粘膜組織モデル1は、任意の臓器模型、例えば咽喉器官(口腔、咽頭、喉頭)、上部消化器(胃、食道、十二指腸)又は下部消化器(小腸、大腸)模型に装着して、EMRやESD等の内視鏡施術訓練に用いられる。消化器模型に設けられた模型装着部に潰瘍模型を嵌め込んでもよいし、消化器模型の内壁に潰瘍模型を貼り付けてもよい。消化器模型の模型装着部は、壁が一部欠損して形成された枠又は凹みであってもよいし、模型装着用の冶具が消化器模型の内壁に取り付けられていてもよい。潰瘍模型は、接着剤、粘着剤、両面テープ等を用いて内壁に貼り付けることができる。
施術訓練はエネルギーデバイスを用いて実施することができ、エネルギーデバイスとしては、電気メス、超音波メス、高周波ラジオ波メス等が挙げられる。
【0073】
図2~5は、内視鏡施術訓練用粘膜組織モデル1のESD施術訓練における使用を示す模式図である。
【0074】
第1実施形態に係る内視鏡施術訓練用粘膜組織モデル1を消化器模型の内壁に貼り付けた。本実施形態の内視鏡施術訓練用粘膜組織モデル1においては、液体注入部5は吸水性ポリマーを含有しており、液体注入部5へ液体を注入することにより、実際のESDで行う患部への液体注入による隆起と同様に、模擬粘膜層2が模擬粘膜下層3側とは反対側の方向に膨隆する(図2)。模擬粘膜層2、模擬粘膜下層3の厚み及び硬度が調整されていることにより、液体注入時の隆起の形状は、実際にESDを行った際に観察される生体粘膜の隆起の形状と近い特性を有するだけでなく、生体粘膜に近い柔軟性の感触が生じる。本実施形態においては、液体注入後の内視鏡施術訓練用粘膜組織モデル1の厚み方向上方への隆起高さが10~20mmとなるように調整されている。
【0075】
次に、模擬粘膜層2上に設定した疑似病変部を囲むように、電気メスを用いて模擬粘膜層2を切開する。本実施形態の内視鏡施術訓練用粘膜組織モデル1においては、特定の箇所を囲むように電気メスを用いて切開することにより、実際のESDでの粘膜層の切開と同様に、模擬粘膜層2が部分的に収縮し、模擬粘膜下層3が露出する(図3)。
【0076】
続いて、電気メスを用いて露出した模擬粘膜下層3を切開し、疑似病変部を含む模擬粘膜層2及び模擬粘膜下層3を剥離する(図4)。本実施形態の内視鏡施術訓練用粘膜組織モデル1においては、図5に示すように、模擬血管6に、模擬血液が充填された注射器7が接続されていることから、剥離の際に模擬血管6が損傷すると、実際のESDにおける出血と同様に、模擬血液が模擬血管6の内部から外部へと流出する。この場合、訓練者は、止血を含む訓練を行うことができる。
【0077】
内視鏡的止血術の種類の例としては、出血した潰瘍部位への止血鉗子又はクリップの装着のようないわゆる機械法、及び、各種の熱凝固法がある。
【0078】
熱凝固法としては、ヒータープローブ法、マイクロ波法、高周波法、レーザー照射法、及びアルゴンプラズマ凝固法がある。本実施形態に係る潰瘍模型は、ヒータープローブ法、マイクロ波法、高周波法、又はレーザー照射法による止血の練習に特に適している。特に、含水ポリビニルアルコール系材料の成形体である模型本体部を有する潰瘍模型は、熱凝固法による止血の練習に適している。含水ポリビニルアルコール系材料の熱凝固挙動が、実際の人体組織の挙動に良く似ているからである。
内視鏡的止血術として熱凝固法を用いる場合、模擬粘膜下層3を形成する材料は、含水ポリビニルアルコール系材料であることがより好ましい。
【0079】
図6に示すように、本実施形態の変形例においては、液体注入部5は、模擬粘膜層2と模擬粘膜下層3との層間に位置する。
図7に示すように、別の変形例においては、液体注入部5は、模擬粘膜層2の内部にその下面が模擬粘膜下層3と接するように位置する。
液体注入部5の断面の形状は、液体を吸収した際にその膨張を阻害しなければ、特に限定されず、例えば台形や上方に凸部を有する形状であってもよい。
【0080】
図8に示すように、さらに別の変形例においては、模擬粘膜下層3の下方に模擬筋層4が設けられており、模擬血管6は模擬筋層4内に埋設されたチューブと、該チューブから厚み方向上方の模擬粘膜下層3を通って、液体注入部5最下面まで達するチューブとを備えている。
【0081】
模擬筋層4は、模擬粘膜層2又は模擬粘膜下層3と同一又は異なる材料から成形することができる。模擬筋層4の硬度は、想定する粘膜組織の種類に応じて適宜選択すればよいが、例えば、成形体のE硬度を5~55の範囲とすることが考えられる。より詳細には、模擬筋層4のE硬度は、好ましくは15~45である。上記範囲のE硬度を有する層を形成するための樹脂として、模擬粘膜層2や模擬粘膜下層3と同様に、例えば、ポリビニルアルコール及び水を含有する含水ポリビニルアルコール系材料、又は、親油性樹脂及びオイルを含有する炭化水素系樹脂材料を用いることができる。例えば、含水ポリビニルアルコール系材料の水分量、炭化水素系樹脂材料におけるオイルの量、及び/又はイオン液体の量によって、成形体のE硬度を適切に調整することができる。
本実施形態においては、模擬粘膜下層3の厚みは、1.0~5.0mm、特に2.0~3.0mmの範囲が好ましく、模擬筋層4の厚みは、1.0~5.0mm、特に2.0~3.0mmの範囲が好ましい。これらの厚みの範囲とすることで、想定する組織と近い値となり、訓練者が実際と同様の感覚で施術を行うことができる。本発明の一実施形態においては、模擬粘膜層2の厚みは、模擬粘膜下層3と模擬筋層4との合計厚みよりも薄いことが好ましい。
【0082】
他の実施形態においては、模擬血管6は、模擬粘膜下層3及び/又は模擬筋層4を貫通する孔であってもよいし、チューブとの組み合わせであってもよい。模擬血管6が、チューブではなく模擬粘膜下層3及び/又は模擬筋層4に形成された孔であると、機械法又は熱凝固法による止血手技を、実際の手技を良好に再現して練習することができる。
【0083】
一方、模擬血管6がチューブである場合、チューブの端部は模擬粘膜下層3又は模擬筋層4の外側に突き出ていてもよい。図5に示されるように、チューブの端部は、模擬血液が充填された注射器7と接続されていてもよく、その場合は注射器7から模擬血液が模擬血管6内へ供給される。注射器に代えて、模擬血液を流すことが出来る任意の装置、器具又は設備、例えばチューブラーポンプを用いてもよい。
【0084】
[第2実施形態]
図9は、本発明の第2実施形態の内視鏡施術訓練用粘膜組織モデル1を示す図である。本実施形態においては、内視鏡施術訓練用粘膜組織モデル1は、模擬粘膜層2と、模擬粘膜下層3と、液体注入部5と、疑似腹腔層8とを備える。図9以降の図面においては、前述した第1実施形態と同一要素については同一符号を付し、その説明を省略する。ここでの説明は、前述した第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0085】
疑似腹腔層8は、樹脂から形成された層であり、その上面で模擬粘膜下層3の下面と接合されている。本実施形態においては、疑似腹腔層8は、軟質材料又はスポンジ状材料から形成された平板状の構造体9を含む層である。
【0086】
疑似腹腔層8は、模擬粘膜層2及び模擬粘膜下層3と同一又は異なる材料から成形することができ、その硬度は想定する粘膜組織の種類に応じて適宜選択すればよい。より詳細には、疑似腹腔層8の成形体のE硬度を5~55、より好ましくは15~45の範囲とすることが考えられる。
軟質材料としては、シリコーン、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリレート、ハイドロゲル、イオンゲル等が挙げられる。軟質材料から形成された平板状の構造体9のE硬度は、0~20であることが好ましく、5~15であることがより好ましい。
スポンジ状材料としては、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、ポリオレフィン、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、ポリスチレン等が挙げられる。スポンジ状材料から形成された平板状の構造体9のE硬度は、5~20であることが好ましく、5~15であることがより好ましい。
同じ粘膜組織モデルの中で比較すると該構造体9のE硬度は模擬粘膜下層3のE硬度より低い値とすることで、剥離の際に電気メスが模擬粘膜下層3を貫通した場合に剥離する感覚に変化が起こる。また、前記構造体9は、模擬粘膜下層3とは異なる色に着色されていてもよい。これにより、剥離の際に電気メスが模擬粘膜下層3を貫通した場合に、内視鏡下において視覚的に確認することができる。
【0087】
本実施形態の内視鏡施術訓練用粘膜組織モデルも第1実施形態と同様に、EMRやESD等の施術訓練のために用いられる。本実施形態においては、内視鏡施術訓練用粘膜組織モデル1は疑似腹腔層8を有することから、消化器模型の内壁に潰瘍模型を貼り付けて使用する場合であっても、剥離の際に電気メスが模擬粘膜下層3を貫通した場合に剥離の対象となる材料の硬度が低くなることから、実際のESDで電気メスが腹腔まで貫通し、穿孔が起こった場合と同様の感覚及び視野を再現することができ、またクリップ等を使用した縫縮による穿孔部位閉鎖を行うことができる。
【0088】
図10に示すように、別の変形例においては、疑似腹腔層8は、模擬粘膜下層3の下面側に形成された層であって、液体注入部5の下方位置にスポンジ状材料から形成された平板状の構造体9を層の上面に備えた樹脂層である。
【0089】
図11に示すように、本実施形態の変形例においては、疑似腹腔層8は、模擬粘膜下層3の下面側に形成された層であって、液体注入部5の下方を含む領域に樹脂のない空間部10が形成され、その周辺部に樹脂からなる周辺樹脂部11を備えた構成とされている。
【0090】
図12に示すように、別の変形例においては、疑似腹腔層8は、模擬粘膜下層3の下面側に形成された層であって、液体注入部5の下方位置に凹所を形成する空間部12を備えた樹脂層である。
【0091】
他の実施形態においては、模擬粘膜下層3の下方に模擬筋層4が設けられており、疑似腹腔層8は模擬筋層4の下面に設けられている。
【0092】
[第3実施形態]
図13は、本発明の第3実施形態の内視鏡施術訓練用粘膜組織モデル1を示す図である。本実施形態においては、内視鏡施術訓練用粘膜組織モデル1は、模擬粘膜層2と、模擬粘膜下層3と、模擬筋層4と、液体注入部5と、模擬血管6と、疑似腹腔層8とを備える。図13においては、前述した第1実施形態及び第2実施形態と同一要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0093】
本実施形態の内視鏡施術訓練用粘膜組織モデルも第1実施形態と同様に、EMRやESD等の施術訓練のために用いられる。本実施形態の内視鏡施術訓練用粘膜組織モデル1においては、模擬血管6に、模擬血液が充填された注射器7が接続されていることから、剥離の際に模擬血管6が損傷すると、実際のESDにおける出血と同様に、模擬血液が模擬血管6の内部から外部へと流出する。この場合、訓練者は、止血を含む訓練を行うことができる。また、内視鏡施術訓練用粘膜組織モデル1は疑似腹腔層8を有することから、消化器模型の内壁に潰瘍模型を貼り付けて使用する場合であっても、剥離の際に電気メスが模擬筋層4を貫通した場合に剥離の対象となる材料の硬度が低くなることから、実際のESDで電気メスが腹腔まで貫通し、穿孔が起こった場合と同様の感覚および視野を再現することができ、またクリップ等を使用した縫縮による穿孔部位閉鎖を行うことができる。
【実施例
【0094】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。
【0095】
実施例等で用いた各種原料及び製造方法は以下の通りである。
(1)模擬粘膜層
(A)水添スチレン系熱可塑性エラストマー
・SEEPS(SEPTON 4055、クラレ社製)(MFR(温度230℃、荷重2.16kg)検出限界以下、スチレン含有量30質量%、水添率90モル%以上)
(B)オイル
・パラフィンオイル(ダイアナプロセスオイルPW90、出光興産社製)
(C)疎水性ポリマーと親水性ポリマーとの共重合体
・ポリオレフィン/ポリエーテル共重合体(ペレクトロンPVL、三洋化成工業社製)(MFR(190℃、荷重2.16kgで測定)8~15g/10分)
(D)イオン液体
・CIL-312(日本カーリット社製)
[製造方法]
水添スチレン系熱可塑性エラストマー100質量部に対し、300質量部のオイルを滴下し、十分に染みこませた。数日後、ブラベンダープラスチコーダー(ブラベンダー社製PL2000型)を使用し、水性ポリマーと親水性ポリマーとの共重合体と、イオン液体とを投入した後、180℃、回転速度50回/分、6分間混練し、模擬粘膜層用の樹脂組成物とした。
(2)模擬粘膜下層
オイル滴下量を400質量部とした以外は、(1)模擬粘膜層と同様にして模擬粘膜下層用の樹脂組成物とした。
(3)液体注入部
吸水性ポリマー(日本触媒社製 アクアリック(登録商標)CA)を使用した。
(4)模擬血管
熱可塑性ポリウレタン製の外径φ0.9mm、内径φ0.5mm(ACCESS technoloies社製)のチューブを使用した。
(5)模擬血液
生理食塩水に0.5wt%の粉末食紅黄色5号を分散させた擬似血液を使用した。
(6)疑似腹腔層
オイル滴下量を200質量部とした以外は、(1)模擬粘膜層と同様にして疑似腹腔層用の樹脂組成物とした。
(7)スポンジ状材料から形成された平板状の構造体
厚み1mmの熱可塑性ウレタン性スポンジ(ニューペルカ、三和化工社製)を使用した。
【0096】
[粘膜組織モデルの製造]
[実施例1]
まず、模擬血管6を設置した金型に模擬粘膜下層3を充填させ、160℃で成形した。次に、模擬粘膜下層3の凹部に液体注入部5を充填し、その上に予め成形した模擬粘膜層2を接着し、一体に貼り合わせた。接着には、使用した樹脂専用の接着剤を用いた。次いで、模擬血管6の端部に注射器7をつなぎ合わせた。さらに、模擬粘膜下層3下部にスポンジ状材料から形成された平板状の構造体9と疑似腹腔層8を接着し、一体に貼り合わせることにより粘膜組織モデルを得た。
[実施例2]
まず、模擬血管6を設置した金型に模擬粘膜下層3を充填させ、160℃で成形した。次に、模擬粘膜下層3の凹部に液体注入部5を充填し、その上に予め成形した模擬粘膜層2を接着し、一体に貼り合わせた。接着には、使用した樹脂専用の接着剤を用いた。次いで、模擬血管6の端部に注射器7をつなぎ合わせた。さらに、模擬粘膜下層3下部に中央を空洞構造にした疑似腹腔層8を接着し、一体に貼り合わせることにより粘膜組織モデルを得た。
[比較例1]
模擬血管6を設置しなかった以外は、実施例1と同様にして粘膜組織モデルを得た。
[比較例2]
スポンジ状材料から形成された平板状の構造体9と疑似腹腔層8を接着しなかった以外は、実施例1と同様にして粘膜組織モデルを得た。
【0097】
実施例等で作製した粘膜組織モデルについての各種特性の評価方法は以下の通りである。
【0098】
(1)粘膜層膨隆の再現性の評価
液体注入部に薬液(生理食塩水:10mL)を注入し、模擬粘膜層の膨隆を評価した。粘膜層の膨隆が再現されている場合を○、再現されていない又は全く膨らまない場合を×とした。
(2)出血の再現性の評価
模擬血管に電気メス(エルベ社製 高周波手術装置:VIO100C、条件:バイポーラー、凝固モード、40W)を押し当てた際の、模擬血液の溶出度合いを目視で評価した。血管からの血液の溶出が再現されている場合は○、再現されていない場合は×とした。
(3)止血操作性の再現性の評価
模擬血液が溶出している模擬血管に対して電気メス(条件:バイポーラー、凝固モード、40W)を用いて止血操作を行い、止血操作における模擬血液の溶出度合いを目視で評価した。止血操作による止血が再現されている場合は○、再現されていない場合は×とした。
(4)切開・剥離の感触の再現性の評価
各層に電気メス(条件:モノポーラー、切開モード、40W)を押し当てた際の、各層の切開具合(電気メスに反応し切開できているか)及び層界面での剥離感の再現性を評価した。実際の切開術や剥離術に近い感覚を再現できる場合を○、十分に再現されていないおよび剥離感が得られない場合は×とした。
(5)穿孔の感触の再現性の評価
剥離操作中に穿孔が起こった際の、感触の再現性を評価した。穿孔の感触が再現できる場合は○、再現さていない場合は×とした。
【0099】
実施例及び比較例の粘膜組織モデルを評価した結果を以下に示す。
【表1】
【0100】
表1に示すように、実施例1及び2の粘膜組織モデルは全ての評価基準を満たしたのに対し、比較例1及び2の粘膜組織モデルはいずれかの評価基準について十分な再現性が得られなかった。特に、比較例1の粘膜組織モデルは、模擬血管から模擬血液の溶出が起こらないことから、実際に切除術や剥離術を行う感覚が十分に再現されていなかった。また、比較例2の粘膜組織モデルは、剥離術の際に電気メスが粘膜組織モデルを貫通した場合、消化器模型の内壁に当たり、実際に穿孔が起こった場合の感覚が再現されていなかった。
【符号の説明】
【0101】
1 内視鏡施術訓練用粘膜組織モデル
2 模擬粘膜層
3 模擬粘膜下層
4 模擬筋層
5 液体注入部
6 模擬血管
7 注射器
8 疑似腹腔層
9 スポンジ状材料から形成された平板状の構造体
10 空間部
11 周辺樹脂部
12 空間部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13